説明

液体カートリッジ、液滴吐出装置、液体カートリッジ読込装置、液体カートリッジ管理システム及び管理方法

【課題】 使用済みの液体カートリッジの液滴吐出ヘッドの使用履歴の情報に基づき再利用の可否を判断でき、再利用の可否に基づき在庫の管理ができ、さらに使用者が使用済みインクカートリッジを返却することにより価格の還元を得られる、液体カートリッジ、液滴吐出装置、液体カートリッジ読込装置、液体カートリッジ管理システム及び管理方法を提供することにある。
【解決手段】 液滴吐出ヘッド23と記憶部21を備えた液体カートリッジ3で、液滴吐出装置1は記憶部21に吐出異常検出回数と吐出異常状況の使用履歴データを書き込み、液体カートリッジ読込装置40は液体カートリッジ3の記憶部21から使用履歴データを読み込み、再生可能か判定し、再販売価格を生成する。管理コンピュータ60は複数の液体カートリッジ読込装置40をネットワーク61を介して接続し、履歴データを収集し、生産管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体カートリッジ、液滴吐出装置、液体カートリッジ読込装置、液体カートリッジ管理システム及び管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置の1つであるインクジェットプリンタは、複数のノズルからインク(液体)を液滴吐出ヘッドから吐出して所定の用紙上に画像形成を行う。インクを供給するために、インクカートリッジ(液体カートリッジ)をインクジェットプリンタのヘッドユニットに搭載されたキャリッジに装着する。インクジェットプリンタは吐出を繰り返すことにより、インクカートリッジに充填されているインクが減少し、やがてインクが空になる。インクが空になると、インクジェットプリンタの使用者は新しいインクカートリッジを購入し、使い終わったインクカートリッジをキャリッジから外し、新しいインクカートリッジをキャリッジに装着する。使い終わったインクカートリッジは、使用者が販売店などに返却することにより回収され、製造業者に送られる。製造業者は現状では使い終わったインクカートリッジを原料にしてインクカートリッジを再生しているが、使い終わったインクカートリッジを洗浄し、インクを再充填して再び販売するようにすれば、インクカートリッジの容器の資源を一層有効利用することができる。
【0003】
ところが、インクジェットプリンタの使用者が使い終わったインクカートリッジを販売店に返却するとは限らず、そのまま家庭のゴミとして捨てられしまうことが多い。また、使い終わったインクカートリッジを洗浄して繰り返し再利用する場合、インクカートリッジが何回再生利用されているかや、インクジェットプリンタで使用されている間にどのような不具合があったか、などの情報は製造業者にはわからず、再生利用に適しているかの判定が難しい問題があった。
【0004】
従来、このような不具合を解消するために、インクカートリッジの使用履歴に関するデータを書き替え可能に格納する領域を備えた記憶部を有する回路基板を備え、ユーザの手に渡ってからのインクカートリッジの使用状況を記憶部に記憶させたデータから判断して、当該インクカートリッジに適した再生処理を施すことを可能とするものが知られている(例えば、特許文献1など参照)。
【0005】
ところで、使用者が新しいインクカートリッジを購入して交換しても、液滴吐出ヘッドの吐出不良等が原因で、正常にインク滴の吐出ができない不具合に対しては、インクジェットプリンタ本体を回収し、吐出不良の原因を調べ、修理をしなければならない。これに対し、特許文献2に開示された液滴吐出ヘッドを一体に備えたインクカートリッジを用いた場合、インクカートリッジを交換すれば液滴吐出ヘッドも一緒に交換されるので、前述の吐出不良の問題はおおよそ解決されることになる。
【0006】
また、使用者は使用済みのインクカートリッジを販売店に返却し、回収してもらっても、利益を得られるわけではないので、回収率の向上には繋がらない。しかし、高価な液滴吐出ヘッドを一体に備えてインクカートリッジを構成し、液滴吐出ヘッドも一緒に回収して再利用するようにすれば、使用済みインクカートリッジを返却した際にいくらかの金額をユーザに還元することも可能となる。特に圧電素子を用いたピエゾ方式の液滴吐出ヘッドは、例えばバブルジェット(登録商標)方式などの他方式の液滴吐出ヘッドに比べて高価な部品なので、ピエゾ方式の液滴吐出ヘッドを一体に備えてインクカートリッジを構成すれば、その回収時にユーザに支払われる還元金額を高く設定することも可能になり、インクカートリッジの回収率の向上に繋がることになる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−94715号公報
【特許文献2】特開平7−17057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明にあっては、製造業者は回収されたインクカートリッジの使用履歴の情報を得ることができるが、液滴吐出ヘッドの使用履歴を得ることができず、液滴吐出ヘッドについては再利用可能か否かの判断ができないという問題があった。したがって、液滴吐出ヘッドの使用履歴が考慮されずにインクカートリッジの再利用が可能であると判断されてしまうと、その再利用されたインクカートリッジの使用途中(インク残量のある段階)に液滴吐出ヘッドが正常に印字できなくなる不具合の発生頻度が高くなってしまうという問題を招く。
【0009】
また、液滴吐出ヘッドは、精密加工部品かつ精密電子部品の要素をもつことから、その寿命は、カートリッジの容器部分に比べユーザの使用状況に一層依存しやすく、ユーザの使用状況によっては当初想定される寿命より早期に故障することもある。よって、液滴吐出ヘッドが再利用可能であるか否かをなるべく正確に把握するには、液滴吐出ヘッド固有の使用履歴を把握する必要がある。ちなみに、特許文献1には、インクカートリッジの使用履歴に関するデータとして、インクカートリッジの再生回数、再生時のメンテナンス処理に関するデータ(洗浄状況)、インクカートリッジの構成部品交換状況、最終使用時期、最終インクエンド時期、使用環境データ、インクカートリッジ製造時期、インクカートリッジ耐久期間、インクカートリッジ再生可能回数などが挙げられている。しかし、これらのデータは、いずれも液滴吐出ヘッド固有の使用履歴が考慮されていないので、上述したとおり、液滴吐出ヘッド付きインクカートリッジの再利用の適否を正しく把握できないものであった。
【0010】
さらにインクカートリッジを再利用する場合、ユーザの使用状況次第で想定寿命より早期に再利用不能になったり、ユーザが返却してくれなかったりなど、回収して再利用に供されるインクカートリッジの数(または割合)およびその回収タイミングは、ユーザ側の要因に多分に依存するため、予測困難であった。そのため、インクカートリッジの回収個数およびその回収タイミングの予測および把握が困難であることから、リサイクル品と新規製品とを作り分ける生産管理が困難であるという問題もある。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであって、その目的は、使用済みの液体カートリッジの液滴吐出ヘッドの使用履歴の情報に基づき再利用の可否を判断でき、再利用の可否に基づき在庫の管理ができ、さらに使用者が使用済みインクカートリッジを返却することにより価格の還元を得られる、液体カートリッジ、液滴吐出装置、液体カートリッジ読込装置、液体カートリッジ管理システム及び管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
==発明1==
上記課題を解決するために、本発明の液体カートリッジでは、液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部から供給される液体を液滴として吐出させる液滴吐出ヘッドと、記憶部と、前記記憶部と外部装置との間でデータの授受を可能ならしめるデータ授受部とを備える液体カートリッジであって、前記記憶部が、前記液体カートリッジの製造履歴に関する製造履歴データと、前記液滴吐出ヘッドの使用履歴に関する使用履歴データと、前記液滴吐出ヘッドの再生履歴に関する再生履歴データと、を有する履歴データを書き替え可能に格納する領域を備えていることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、液体カートリッジが有する記憶部に液体カートリッジの製造履歴データと、液滴吐出ヘッドの使用履歴データと再生履歴データとを有する履歴データが格納されているので、液滴吐出動作を繰り返すことにより液体カートリッジの液体収容部に収容された液体が空になったときに、記憶部に格納された履歴データを読み込むことにより、本液滴吐出ヘッドが再利用可能であるか否かの判定ができる。
【0014】
==発明2==
また、本発明の液体カートリッジでは、前記液滴吐出ヘッドを再利用可能なように装着している。
【0015】
この構成によれば、使用済みの液体カートリッジを回収することにより、液滴吐出ヘッドを再生処理し、新しい液体カートリッジに組み込むことができるので、液滴吐出ヘッドに掛かる費用を抑えることができる。これにより、使用者は使用済みの液体カートリッジを販売店などに持ち込むことにより、同等の液体カートリッジを安く購入することができる。
【0016】
==発明3==
また、本発明の液体カートリッジでは、前記液滴吐出ヘッドと前記記憶部が少なくとも対となって再利用され、前記記憶部に記憶された前記履歴データは前記記憶部が再利用されても消去されることなく、そのまま継続して前記履歴データが書き込まれる。
【0017】
この構成によれば、液体カートリッジを再生処理する場合に、液滴吐出ヘッドと記憶部を一対で管理でき、新しい液体カートリッジに組み込まれ再利用されても、液滴吐出ヘッドのそれまでの使用履歴を残すことができるので、複数回再利用された液滴吐出ヘッドが再利用可能か否かの判断をすることができる。
【0018】
==発明4==
また、本発明の液体カートリッジでは、前記使用履歴データは、前記液滴吐出ヘッドの吐出異常検出回数を含む。
【0019】
この構成によれば、液体カートリッジが有する記憶部から使用履歴データを読み込むことにより、本液滴吐出ヘッドが何回吐出異常が検出されたかを知ることができるので、液滴吐出ヘッドが再利用可能であるかを判定することができる。
【0020】
==発明5==
また、本発明の液体カートリッジでは、前記使用履歴データは、前記液滴吐出ヘッドに回復できない吐出異常が残っているか否かの吐出異常状況を含む。
【0021】
この構成によれば、液体カートリッジが有する記憶部から使用履歴データを読み込むことにより、本液滴吐出ヘッドが、回復できない吐出異常が残っているか否かを知ることができるので、液滴吐出ヘッドが再利用可能であるかを判定することができる。
【0022】
==発明6==
また、本発明の液体カートリッジでは、前記再生履歴データは、前記液滴吐出ヘッドの再利用回数を含む。
【0023】
この構成によれば、液体カートリッジが有する記憶部から再生履歴データを読み込むことにより、液滴吐出ヘッドが何回再利用されたかを知ることができるので、液滴吐出ヘッドが再利用可能であるかを判定することができる。
【0024】
==発明7==
また、上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出装置では、前記液体カートリッジを前記データ授受部を介し読み込み及び書き込み可能な状態に装着可能な装着部を有する液滴吐出装置であって、前記液滴吐出ヘッドの吐出異常を検出する吐出異常検出部と、前記液体カートリッジの前記データ授受部により前記記憶部に前記使用履歴データを書き込む使用履歴書き込み部と、を備えていることを要旨とする。
【0025】
この構成によれば、液体カートリッジの液滴吐出ヘッドの吐出異常が検出されると、記憶部の使用履歴データの吐出異常検出回数が更新され、回復できない吐出異常が残っているか否かの吐出異常状況が書き込まれるので、液滴吐出ヘッドが再利用可能であるかを判定することができる。
【0026】
==発明8==
また、本発明の液滴吐出装置では、前記液体カートリッジの前記データ授受部により前記記憶部に保持されている前記製造履歴データを読み込む製造履歴読み込み部と、前記製造履歴データから前記液体カートリッジが前記液滴吐出装置の装着位置において使用可能であるか否かを判定する装着判定部と、を備えている。
【0027】
この構成によれば、液体カートリッジを液滴吐出装置の装着位置に装着した際に、液体カートリッジが有する記憶部に格納された製造履歴データを読み込むことにより、装着位置が正しいか否かを判定することができる。
【0028】
==発明9==
また、上記課題を解決するために、本発明の液体カートリッジ読込装置では、前記液滴吐出装置に装着され、使用済みとなった前記液体カートリッジを前記データ授受部を介し読み込み可能な状態に装着可能な液体カートリッジ装着部を備える液体カートリッジ読込装置であって、前記データ授受部により前記記憶部から前記履歴データを読み込む履歴読み込み部と、前記履歴データから前記液体カートリッジが再生可能か否かを判定して、その判定結果内容を有する再生判定データを生成する再生判定部と、前記再生判定データを表示する表示部と、を備えていることを要旨とする。
【0029】
この構成によれば、使用者が販売店に使用済み液体カートリッジを持ち込むと、販売店の店員は使用済み液体カートリッジを液体カートリッジ読込装置の液体カートリッジ装着部に装着するだけで、再生可能であるか否かが表示部の表示により知ることができる。これにより、使用済み液体カートリッジを再生可能なものと再生できないものに分別することが容易になる。
【0030】
==発明10==
また、本発明の液体カートリッジ読込装置では、前記履歴読み込み部から読み込んだ前記液体カートリッジの前記履歴データに基づいて前記液体カートリッジを回収してその交換として再販売する価格を決める価格判定部を有し、前記表示部に前記価格を表示する。
【0031】
この構成によれば、使用者が販売店に使用済み液体カートリッジを持ち込むと、販売店の店員は使用済み液体カートリッジを液体カートリッジ読込装置の液体カートリッジ装着部に装着するだけで、表示部に同等品を再販売する価格が表示される。これにより、使用者は同等の液体カートリッジを回収した使用済み液体カートリッジの状態に基づき、標準価格から還元分を差し引いた価格で購入することができる。このことにより、使用者は使用済み液体カートリッジを返却すれば同等品を安く買うことができるので、使用済み液体カートリッジの回収率の向上に繋がる。
【0032】
==発明11==
また、本発明の液体カートリッジ読込装置では、前記液体カートリッジの前記履歴データと前記再生判定データをネットワークを介して送信するネットワーク送信部を備えている。
【0033】
この構成によれば、ネットワーク送信部により、液体カートリッジの履歴データと再生判定データをネットワークを介して送信することができるので、送信されたデータを収集することにより、市場に出荷されている液体カートリッジの販売状況、回収状況、再生可能状況などを把握することが容易になる。
【0034】
==発明12==
また、上記課題を解決するために、本発明の液体カートリッジ管理システムでは、複数の前記液体カートリッジ読込装置がネットワークを介して管理コンピュータと接続され、前記液体カートリッジの前記履歴データと前記再生判定データを収集し管理する液体カートリッジ管理システムであって、前記管理コンピュータは、前記液体カートリッジ読込装置から送信された前記履歴データと前記再生判定データを受信するデータ受信部と、前記履歴データと前記再生判定データに基づいて前記液体カートリッジの在庫情報を更新する在庫情報更新部と、を備えていることを要旨とする。
【0035】
この構成によれば、販売店に設置された液体カートリッジ読込装置から液体カートリッジに関する履歴データと再生判定データがネットワークを介して生産工場に設置されている管理コンピュータに送信され、管理されるので、生産工場では市場に出荷されている液体カートリッジの販売状況、回収状況、再生可能状況などを把握することが容易になる。
【0036】
==発明13==
また、本発明の液体カートリッジ管理システムでは、前記在庫情報に基づいて前記液体カートリッジの生産管理を行う生産管理部をさらに備えている。
【0037】
この構成によれば、販売店に設置された液体カートリッジ読込装置から液体カートリッジに関する履歴データと再生判定データがネットワークを介して生産工場に設置されている管理コンピュータに送信され、管理されるので、生産工場では市場での液体カートリッジの過不足が把握でき、不足分を速やかに生産し供給でき、無駄な在庫を持つ必要がなくなる。
【0038】
==発明14==
また、上記課題を解決するために、本発明の液体カートリッジ管理方法では、前記液体カートリッジを装着可能な前記液体カートリッジ読込装置と、複数の前記液体カートリッジ読込装置をネットワークを介して接続した管理コンピュータと、から構成される液体カートリッジ管理方法であって、前記液体カートリッジが装着された液滴吐出装置における制御部により、前記液体カートリッジの前記記憶部に書き込まれた前記使用履歴データを、使用済みとなった前記液体カートリッジを前記液体カートリッジ読込装置に装着することにより、前記液体カートリッジ読込装置の制御部が読み込む使用履歴読み込みステップと、前記液体カートリッジ読込装置における制御部が、前記使用履歴データと前記再生履歴データに基づき、使用済みとなった前記液体カートリッジの液滴吐出ヘッドの再生が可能か否かを判定して、その判定結果内容を有する再生判定データを生成する再生判定ステップと、前記液体カートリッジ読込装置のネットワーク送信部が、前記履歴データと前記再生判定データを管理コンピュータに送信する送信ステップと、前記管理コンピュータの在庫情報更新部が、ネットワークを介して受信した前記履歴データと前記再生判定データに基づいて前記液体カートリッジの在庫情報を更新する在庫情報更新ステップと、を備えていることを要旨とする。
【0039】
これにより、本発明の液体カートリッジ管理システムと同等の効果が得られる。
【0040】
==発明15==
また、本発明の液体カートリッジ管理方法では、前記液体カートリッジ管理方法において、前記在庫情報更新ステップの後に、前記管理コンピュータの生産管理部が、前記在庫情報に基づいて前記液体カートリッジの生産管理を行う生産管理ステップをさらに備えている。
【0041】
これにより、本発明の液体カートリッジ管理システムと同等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明を具体化した実施例について図面に従って説明する。
【実施例1】
【0043】
==インクジェットプリンタの構成==
まず、本発明を具体化した一実施形態における液滴吐出装置の一種であるインクジェットプリンタ1の概略構成について、図1を参照して説明する。
【0044】
図1は、本発明の実施形態における液滴吐出装置の一種であるインクジェットプリンタ1の概略構成を示す上方から見た平面図である。
【0045】
このインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、後述する液体カートリッジであるインクカートリッジ3を装着するキャリッジ4を備え、このキャリッジ4は1組のキャリッジ軸5に案内されて主走査方向に移動できるようになっている。また、キャリッジ4の一部は歯付きベルト9に固定され、かつ歯付きベルト9は、モータ6の回転軸に固定された駆動プーリ7と従動プーリ8との間に掛け渡されている。
【0046】
さらに、キャリッジ4にはエンコーダ10が取り付けられ、キャリッジ4の移動方向に沿ってリニアスケール11が設けられている。これにより、エンコーダ10によりキャリッジ4に装着したインクカートリッジ3上のインクジェットヘッド23(液滴吐出ヘッド)の位置を検出するようになっている。
【0047】
なお、インクジェットプリンタ1はこれ以外に、図1において、キャリッジ4とシステムコントローラなどと電気的な接続を行うケーブル12と、後述の液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッド23の表面をクリーニングするワイパ13と、そのインクジェットヘッド23のノズル基板のキャッピングを行うキャップ14を有する。
【0048】
このような構成からなるインクジェットプリンタ1では、エンコーダ10の検出信号がモータ制御回路(図示せず)に入力されると、そのモータ制御回路によりモータ6の回転動作が次のように制御される。すなわち、加速、一定速度、減速、反転、加速、一定速度、減速、反転・・・というように制御される。
【0049】
このようなモータ6の動作に伴って、キャリッジ4が主走査方向に往復移動を繰り返し、一定速度の区間が印刷領域に相当するので、その一定速度の際にキャリッジ4に装着したインクカートリッジ3に搭載されるインクジェットヘッド23のノズルから記録紙a上にインクが吐出される。この結果、記録紙aには、そのインクにより所定の文字や画像が記録される。
【0050】
==インクカートリッジの構成==
次に、本発明を具体化した一実施形態における液体カートリッジの一種であるインクカートリッジ3の構成について図2を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態における液体カートリッジの一種であるインクカートリッジ3の概略構成図である。
【0051】
インクカートリッジ3は、液体収容部であるインク室20と、記憶部21と、データ授受部22と、液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッド23を備えている。インク室20の液体であるインクはインクジェットヘッド23に供給される。インクジェットヘッド23はインクジェットプリンタ1のキャリッジ4に装着されたときに、インクジェットプリンタ1の制御部32から制御信号を受けるための接点を有している(図示せず)。記憶部21は書き換え可能なEEPROMなどの半導体記憶素子で構成され、本インクカートリッジ3が製造された時点で製造履歴データが書き込まれ、インクジェットプリンタ1により使用履歴データが書き込まれ、さらに、再生処理された時点で再生履歴データが書き込まれる。データ授受部22は外部装置から記憶部21のデータを読み書きするための入出力部であり、接触式の接点で構成してもよいし、無線式の送受信部(非接触式)で構成してもよい。
【0052】
==インクジェットプリンタとインクカートリッジの構成==
次に、本発明を具体化した一実施形態におけるインクジェットプリンタ1にインクカートリッジ3を装着した状態の構成について図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施形態におけるインクジェットプリンタ1にインクカートリッジ3を装着した状態の機能を説明する概略構成図である。
【0053】
インクジェットプリンタ1はインクカートリッジ3を装着する装着部30と、制御部32を備えている。制御部32はさらに、CPU33と、ROM34と、RAM35と、吐出異常検出部36を少なくとも有する。キャリッジ4は、例えばブラックインク用、シアンインク用、マゼンタインク用、イエローインク用などの複数のインクカートリッジ3を装着する複数の装着部30を有する。装着部30は、インクカートリッジ3を装着した際に、インクカートリッジ3に備えてあるデータ授受部22と向き合う位置にデータ授受部31を備えている。さらに装着部30は、インクカートリッジ3が装着されたときに、インクジェットプリンタ1の制御部32から制御信号をインクカートリッジ3のインクジェットヘッド23に送るための接点を有している(図示せず)。
【0054】
データ授受部31は接触式の接点で構成してもよいし、無線式の送受信部(非接触式)で構成してもよい。データ授受部31は制御部32と接続され、制御部32の製造履歴読み込み部38が、データ授受部31と、インクカートリッジ3のデータ授受部22を介して記憶部21の記憶領域にアクセスし、製造履歴データを読み込む。次に、制御部32の装着判定部39が、読み込んだ製造履歴データに基づいてインクカートリッジ3を装着した装着部30が使用可能であるか否かを判定する。
【0055】
制御部32の使用履歴書き込み部37は、データ授受部31と、インクカートリッジ3のデータ授受部22を介して記憶部21の記憶領域にアクセスし、使用履歴データの書き込みを行う。
【0056】
次に、インクジェットプリンタ1の吐出異常検出部36の機能について簡単に説明する。
インクジェットプリンタ1の一実施形態であるピエゾ(圧電素子)方式のインクジェットヘッド23は、図示しないが、振動板と、この振動板を変位させるアクチュエータと、内部に液体が充填され、振動板の変位により、内部の圧力が増減されるキャビティと、キャビティに連通し、キャビティ内の圧力の増減によりインクをインク滴として吐出するノズルとを有する。
【0057】
インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド23の複数のノズル(図示せず)からインク滴(液滴)を吐出して所定の用紙上に画像形成を行う。インクジェットプリンタ1のインクジェットヘッド23には、多数のノズルが設けられているが、インクの粘度の増加や、気泡の混入、塵や紙粉の付着などの原因によって、いくつかのノズルが目詰まりしてインク滴を吐出できない場合がある。ノズルが目詰まりすると、画像内にドット抜けが生じ、画質を劣化させる原因となる。
【0058】
このような不具合を解消するために、インク滴の吐出の有無を検査する方法として、吐出異常検出部36は、振動板の残留振動を検出し、検出された振動板の残留振動に基づいて、液滴の吐出の異常を検出し、各ノズルの動作を確認する吐出異常検出処理を行う。
【0059】
吐出異常が検出されると、制御部32はインクジェットヘッド23に対し、ポンプ吸引、ワイピングなどの回復処理を行う。ポンプ吸引は、インクジェットヘッド23のノズル基板に対し、図1のキャップ14を密着させ、図示しないが、キャップ14に連結された吸引ポンプでノズルからインクを吸引して、目詰まりを回復する方法である。また、ワイピングは、インクジェットヘッド23のノズル基板に対し、図1のワイパ13で表面をクリーニングする目詰まりの回復方法である。
【0060】
==インクカートリッジ読込装置の構成==
次に、本発明を具体化した一実施形態における液体カートリッジ読込装置の一種であるインクカートリッジ読込装置40の概略構成について、図4を参照して説明する。
図4は、液体カートリッジ読込装置の一種であるインクカートリッジ読込装置40の概略構成図である。
【0061】
インクカートリッジ読込装置40は、使用済みインクカートリッジ300を装着する液体カートリッジ装着部であるカートリッジ装着部41と、表示部である表示部49と、制御部43と、ネットワーク送信部47を備えている。制御部43はさらに、CPU44と、ROM45と、RAM46を少なくとも有する。カートリッジ装着部41は、使用済みインクカートリッジ300を装着した際に、使用済みインクカートリッジ300に備えてあるデータ授受部22と向き合う位置にデータ授受部42を備えている。データ授受部42は接触式の接点で構成してもよいし、無線式の送受信部(非接触式)で構成してもよい。
【0062】
データ授受部42は制御部43と接続され、制御部43の履歴読み込み部50が、データ授受部42と使用済みインクカートリッジ300のデータ授受部22を介して記憶部21の記憶領域にアクセスし、履歴データの読み込みを行う。次に、制御部43の再生判定部51が、読み込んだ履歴データに基づき使用済みインクカートリッジ300が再生可能であるか否かを判定し、その判断結果として再生判定データを生成し、再生判定データの内容を表示部49に表示する。
【0063】
制御部43の価格判定部52が、再生判定データ及び読み込んだ履歴データに基づき再販売する価格を生成し、表示部である表示部49に価格を表示する。
【0064】
ネットワーク送信部47は、履歴データと再生判定データを後述するネットワーク61を介して後述する管理コンピュータ60に送信する。
【0065】
==管理コンピュータの構成==
次に、本発明を具体化した一実施形態における液体カートリッジ管理システムを構築する管理コンピュータ60の概略構成について、図5を参照して説明する。
【0066】
図5は、本発明のインクカートリッジ読込装置40と管理コンピュータ60のネットワーク接続の概略構成図である。
【0067】
インクカートリッジ読込装置40は、インクカートリッジ3を販売し、使用済みインクカートリッジ300を回収する販売店に設置されている。各販売店のインクカートリッジ読込装置40は、ネットワーク送信部47を介してネットワーク61に接続されている。管理コンピュータ60は、制御部62を有し、制御部62はさらに、CPU63と、ROM64と、RAM65と、在庫データベース66を少なくとも有する。管理コンピュータ60は、インクカートリッジ3の生産工場に設置され、ネットワーク61に接続されている。インクカートリッジ読込装置40は、使用済みインクカートリッジ300の履歴データと再生判定データをネットワーク送信部47に接続されたネットワーク61を介して、管理コンピュータに送信し、制御部62のデータ受信部67が受信する。
【0068】
履歴データに含まれる製造履歴データは、インクカートリッジ3の、型番とシリアルナンバーに関する識別情報と、充填されているインクの色及び種類に関する液体情報と、インクカートリッジ3を使用可能なインクジェットプリンタ1の機種に関する適合機種情報を含む。
【0069】
制御部62の在庫情報更新部68は、受信した履歴データに含まれる使用履歴データを、履歴データに含まれる製造履歴データのシリアルナンバーに対応する在庫データベース66の領域に書き込む。また、受信した再生判定データが再生不可である場合、製造履歴データの型番に対応する在庫データベース66の在庫数から1を減算する。次に、制御部62の生産管理部69は、製造履歴データの型番に対応するインクカートリッジ3の在庫数が所定値未満となった場合、新規生産をするよう生産指示を出す。
【0070】
==装着判定処理の動作==
次に、インクジェットプリンタ1のキャリッジ4の装着部30にインクカートリッジ3を装着した際に、装着したインクカートリッジ3が装着部30において使用可能であるか否かを判定するインクジェットプリンタ1の制御部32の装着判定部39の処理を、図6に基づいて説明する。
図6は、インクジェットプリンタ1の制御部32の装着判定部39の処理を示すフローチャートである。
【0071】
先ず、ステップS101では、インクカートリッジ3をインクジェットプリンタ1のキャリッジ4の装着部30に装着されているか否かを判定し、装着されているとき(Yes)は、ステップS103に移行し、装着されていないとき(No)は、装着されるまでステップS101で待機する。
【0072】
次に、ステップS103では、インクカートリッジ3の記憶部21に保持されている製造履歴データを読み込み、RAM35に書き込む。
【0073】
次に、ステップS105では、RAM35に書き込んだ製造履歴データの適合機種情報がROM34に保持されている機種情報と一致しているか否かを判定し、一致しているとき(Yes)は、ステップS107に移行し、一致していないとき(No)は、ステップS111に移行する。
【0074】
次に、ステップS107では、RAM35に書き込んだ製造履歴データの液体情報がROM34に保持されている装着した装着部30の液体情報と一致しているか否かを判定し、一致しているとき(Yes)は、ステップS109に移行し、一致していないとき(No)は、ステップS111に移行する。
【0075】
次に、ステップS109では、インクカートリッジ3がこれを装着した装着部30に適合し、使用可能であると判定し、処理を終了する。
【0076】
一方、ステップS111では、インクカートリッジ3がこれを装着した装着部30に不適合であると判定し、インクジェットプリンタ1の有する表示部(図示せず)に警告メッセージを表示し、ステップS113に移行し、使用不可であると判定し、処理を終了する。
【0077】
==使用履歴データ更新処理の動作==
次に、インクジェットプリンタ1が所定回数の印刷(液滴吐出)作業が行われる毎や、正常に印刷ができない場合(吐出異常)に行う、インクジェットヘッド23の吐出異常検出処理の実行時に、制御部32がインクカートリッジ3の記憶部21に使用履歴データを書き込む処理を、図7に基づいて説明する。
図7は、インクジェットプリンタ1の制御部32がインクカートリッジ3の記憶部21に使用履歴データを書き込む処理を示すフローチャートである。
【0078】
先ず、ステップS121では、吐出異常検出部36がインクジェットヘッド23に対し吐出異常検出処理を行う。
【0079】
次に、ステップS123では、吐出異常検出部36がインクジェットヘッド23で吐出異常があったか否かを判定し、吐出異常があったとき(Yes)は、ステップS125に移行し、吐出異常がなかったとき(No)は、ステップS137に移行する。
【0080】
次に、ステップS125では、インクカートリッジ3の記憶部21から使用履歴データを読み込み、使用履歴データに含まれる吐出異常検出回数をRAM35に書き込む。
【0081】
次に、ステップS127では、使用履歴書き込み部37が、RAM35に書き込んだ吐出異常検出回数に1を加算し、吐出異常検出回数をインクカートリッジ3の記憶部21に書き込む。
【0082】
次に、ステップS129では、インクジェットヘッド23に対しポンプ吸引、ワイピングなどの回復処理を行う。
【0083】
次に、ステップS131では、回復処理が行われたインクジェットヘッド23に対し再び吐出異常検出処理を行う。
【0084】
次に、ステップS133では、吐出異常検出部36がインクジェットヘッド23で吐出異常があったか否かを判定し、吐出異常があったとき(Yes)は、ステップS135に移行し、吐出異常がなかったとき(No)は、ステップS137に移行する。
【0085】
ステップS135では、吐出異常状況=“有”をインクカートリッジ3の記憶部21に書き込み、処理を終了する。
【0086】
一方、ステップS137では、吐出異常状況=“無”をインクカートリッジ3の記憶部21に書き込み、処理を終了する。
【0087】
==インクカートリッジ読込装置の動作==
次に、インクカートリッジ読込装置40の制御部43が行う処理を、図8に基づいて説明する。
図8は、インクカートリッジ読込装置40の制御部43が行う処理を示すフローチャートである。
【0088】
なお、使用者が販売店に返却した使用済みインクカートリッジ300が再生判定データ=“不可”となった場合に、使用者に対してインクカートリッジ3を再販売する価格として価格Hを、再生判定データ=“可”となった場合に、使用者に対してインクカートリッジ3を再販売する価格として価格Lを設定してあるものとする。インクカートリッジ3の標準価格と価格Hと価格Lの関係は、標準価格>価格H>価格Lとする。また、再生判定可能とする吐出異常検出回数の最大値をMAX1、同じく再生判定可能とするインクジェットヘッド23の再利用回数の最大値をMAX2と設定してあるものとする。
【0089】
先ず、ステップS141では、使用済みインクカートリッジ300がインクカートリッジ読込装置40のカートリッジ装着部41に装着されているか否かを判定し、装着されているとき(Yes)は、ステップS143に移行し、装着されていないとき(No)は、ステップS141で待機する。
【0090】
次に、ステップS143では、履歴読み込み部50が使用済みインクカートリッジ300の記憶部21から履歴データを読み込み、RAM46に書き込む。
【0091】
次に、ステップS145では、再生判定部51が、RAM46に書き込んだ履歴データに含まれる使用履歴データの吐出異常状況が“有”であるか否かを判定し、“有”であったとき(Yes)は、ステップS147に移行し、“有”でなかったとき(No)は、ステップS157に移行する。
【0092】
次に、ステップS147では、再生判定部51が、再生判定データ=“不可”をRAM46に書き込む。
【0093】
次に、ステップS149では、価格判定部52が、価格データ=価格HをRAM46に書き込む。
【0094】
次に、ステップS151では、RAM46に書き込んだ再生判定データと価格データを表示部49に表示する。
【0095】
次に、ステップS153では、ネットワーク送信部47が、RAM46に書き込んだ履歴データと、再生判定データの各内容をネットワーク61を介して管理コンピュータ60に送信し、処理を終了する。
【0096】
一方、ステップS157では、再生判定部51が、RAM46に書き込んだ履歴データに含まれる使用履歴データの吐出異常検出回数がMAX1より大きいか否かを判定し、大きいとき(Yes)は、ステップS147に移行し、大きくないとき(No)は、ステップS159に移行する。
【0097】
次に、ステップS159では、再生判定部51が、RAM46に書き込んだ履歴データに含まれる再生履歴データのインクジェットヘッド23の再利用回数がMAX2より大きいか否かを判定し、大きいとき(Yes)は、ステップS147に移行し、大きくないとき(No)は、ステップS161に移行する。
【0098】
次に、ステップS161では、再生判定部51が、再生判定データ=“可”をRAM46に書き込む。
【0099】
次に、ステップS163では、価格判定部52が、価格データ=価格LをRAM46に書き込み、ステップS151に移行する。
【0100】
なお、ステップS143の処理は、使用履歴読み込みステップに対応する。
また、ステップS145、S147、S157、S159、S161の処理は、再生判定ステップに対応する。
また、ステップS153の処理は、送信ステップに対応する。
【0101】
==管理コンピュータの動作==
次に、管理コンピュータ60の制御部62の処理を、図9に基づいて説明する。
図9は、管理コンピュータ60の制御部62の処理を示すフローチャートである。
【0102】
先ず、ステップS171では、ネットワーク61を介してインクカートリッジ読込装置40から送信されてきた時点で、データ受信部67が履歴データと再生判定データを受信する。
【0103】
次に、ステップS173では、在庫情報更新部68は、受信した履歴データに含まれる製造履歴データのシリアルナンバーに対応する在庫データベース66の領域に使用履歴データと再生判定データを書き込む。
【0104】
次に、ステップS175では、在庫情報更新部68は、再生判定データが”不可”であるか否かを判定し、”不可”であるとき(Yes)は、ステップS177に移行し、”不可”でないとき(No)は、処理を終了する。
【0105】
次に、ステップS177では、在庫情報更新部68は、受信した履歴データに含まれる製造履歴データの型番に対応する在庫データベース66の領域の在庫数データから“1”を減算し、在庫数データを更新する。
【0106】
次に、ステップS179では、生産管理部69は、ステップS177で更新した在庫数データが所定値未満であるか否かを判定し、未満であるとき(Yes)は、ステップS181に移行し、未満でないとき(No)は、処理を終了する。
【0107】
次に、ステップS181では、生産管理部69は、受信した履歴データに含まれる製造履歴データの型番に対応するインクカートリッジ3の新規生産を生産部門に指示し、処理を終了する。
【0108】
なお、ステップS171、S173、S175、S177の処理は、在庫情報更新ステップに対応する。
また、ステップS179、S181の処理は、生産管理ステップに対応する。
【0109】
==インクカートリッジの物流の構成==
次に、本発明の実施形態におけるインクカートリッジ3の物流の構成について、図10を参照して説明する。
図10は、インクカートリッジ3の物流の構成図である。
【0110】
インクカートリッジ3は生産工場82で生産され、生産されたインクカートリッジ3は販売店81に納品され、使用者80は、販売店81からインクカートリッジ3を購入し使用する。生産工場82には管理コンピュータ60が設置され、複数存在する販売店81にはインクカートリッジ読込装置40がそれぞれ設置され、ネットワーク61を介して管理コンピュータ60と接続されている。以下、インクカートリッジ3の物流について説明する。
【0111】
先ず、使用者80は販売店81からインクカートリッジ3を購入する(ステップS1)。インクカートリッジ3は使用者80が所有するインクジェットプリンタ1に装着され、印刷(液滴吐出)作業が繰り返される。
【0112】
インクジェットプリンタ1は所定回数の印刷作業が行われると、インクジェットヘッド23の液滴吐出動作に問題がないか、吐出異常検出処理を行う(図7におけるステップS121)。吐出異常が見つかった場合、インクジェットプリンタ1の使用履歴書き込み部37(図3)はインクカートリッジ3の記憶部21(図3)に使用履歴データを書き込む(ステップS2)。
【0113】
印刷作業を続けるとやがてインクカートリッジ3のインク室20(図2、図3)内のインクが空になる。使用者80は新しいインクカートリッジ3を購入するために、インクジェットプリンタ1から使用済みインクカートリッジ300を取り外し、販売店81に返却する(ステップS3)。
【0114】
販売店81では、使用者80から返却された使用済みインクカートリッジ300をインクカートリッジ読込装置40のカートリッジ装着部41(図4)に装着する。装着後、表示部49(図4)に使用済みインクカートリッジ300に対する再生判定データと、再販売価格が表示される(ステップS4)。販売店81は、表示部49(図4)に表示されるインクカートリッジ3の販売価格に基づいて使用者80にインクカートリッジ3を販売する。また、販売店81は、表示部49に表示される再生判定データに基づいて、再生可能と表示された場合、再生可能な使用済みインクカートリッジ300として生産工場82に返送する(ステップS6)。一方、表示部49に再生不可と表示された場合、販売店81は、再生不可インクカートリッジ309として生産工場82に返送する(ステップS9)。
なお、生産工場と廃棄工場が別々に存在する場合は、再生可能な使用済みインクカートリッジ300を生産工場に返送し、再生不可インクカートリッジ309は廃棄工場に送付する。
【0115】
販売店81がインクカートリッジ読込装置40のカートリッジ装着部41に使用済みインクカートリッジ300を装着し、再生判定が実施されてその判定結果の内容を有する再生判定データが生成され、表示部49に表示されると同時に、インクカートリッジ読込装置40はネットワーク送信部47からネットワーク61を介して生産工場82の管理コンピュータ60に履歴データと再生判定データを送信する(図8におけるステップS153)。管理コンピュータ60のデータ受信部67(図5)は履歴データと再生判定データを受信する(図9におけるステップS171)。管理コンピュータ60の在庫情報更新部68(図5)は受信した履歴データの識別情報に基づき、在庫データベース66(図5)の対応する領域に使用履歴データと再生判定データが書き込まれる(ステップS5)。
【0116】
管理コンピュータ60の生産管理部69(図5)は、所定の型番のインクカートリッジ3の在庫が所定値未満となると、生産工場82に対し、所定の型番のインクカートリッジ3について新規生産を指示する(ステップS11)。
【0117】
再生可能な使用済みインクカートリッジ300が生産工場82に返送される(ステップS6)と、生産工場82は使用済みインクカートリッジ300に対し再生処理を行い(ステップS7)、新規インクカートリッジ3として、販売店81に出荷される(ステップS8)。
【0118】
一方、再生不可インクカートリッジ309が生産工場82に返送される(ステップS9)と、生産工場82は再生不可インクカートリッジ309に対し、不良解析を行い(ステップS10)、廃却処分される。
【0119】
以上説明したように、本実施形態によれば、印刷作業が繰り返される間にインクカートリッジ3のインクジェットヘッド23の使用履歴データが記憶部21に書き込まれるので、インクジェットヘッド23が何回吐出異常を検出したかが把握できる。また、インクジェットヘッド23に回復できない吐出異常があるか否かを把握できるので、販売店81に設置されたインクカートリッジ読込装置40では使用済みインクカートリッジ300が再生可能であるか否かを判定することができる。また、使用履歴データと再生履歴データにより、使用済みインクカートリッジ300の消耗度合いを把握することができ、再生可能であるか否かを判定することができる。
【0120】
また、使用済みインクカートリッジ300の消耗度合いにより、新しいインクカートリッジ3を再販売する価格を決めることができ、消耗の少ない使用済みインクカートリッジ300を返却した使用者80にはインクの詰め替え代程度の価格(価格L)で販売し、消耗の多い、または再生不可の場合には、標準価格よりも安く価格Lよりも高い価格(価格H)で販売する。使用者80は使用済みインクカートリッジ300を販売店81に返却することにより、新しいインクカートリッジ3を安く購入することができるので、使用済みインクカートリッジの回収率を高める効果に繋がる。
【0121】
販売店81に使用済みインクカートリッジ300が返却されると、インクカートリッジ読込装置40からネットワーク61を介して生産工場に設置された管理コンピュータ60に履歴データが送信されてくるので、インクカートリッジ3の市場在庫が瞬時に把握でき、所定値よりも不足した時点で新規生産指示を出し、市場に供給することができる。これにより無駄な在庫を保持する必要がなくなる。
【0122】
また、インクジェットヘッド23付きの使用済みインクカートリッジ300は再利用するためにメーカー(生産工場)に回収されるので、インクジェットヘッド23に対する品質保証や長寿命化の確認をメーカーでできるという利点が生じ、信頼性が高まり、資源を有効に何回も使うことができるので、環境負荷が減少するという効果が生じる。
【0123】
また、インクジェットヘッド23がインクジェットプリンタ1本体から分離されることにより、インクジェットプリンタ1本体を安く生産することができる。
【0124】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下、変形例を挙げて説明する。
【0125】
(変形例1)
次に本発明の第1変形例について説明する。前記実施形態では、インクカートリッジ読込装置40の動作を図8のように、ステップS149では価格H、ステップS163では価格Lになるように説明したが、使用済みインクカートリッジ300を返却してくれた使用者80には一律同じ価格Lで販売するようにしてもよい。
このとき、インクジェットヘッド23にかかる費用を、インクジェットヘッド23が再利用されることが期待できる再利用回数で割った価格を、1回使用における償却価格としてのインクジェットヘッド23の使用料を使用者に負担してもらうことで、期待できる再利用回数が多い場合は1回の負担料金は、軽微な値として設定することができる。
これにより、再生不可な使用済みインクカートリッジ300を返却した場合でも、使用者80は価格Lで購入することができ、回収効率のさらなる向上に繋がる。
【0126】
また、使用者80は、使用済みインクカートリッジ300を販売店81に返却するだけで、同等のインクカートリッジ3を購入しない場合は、差額を返金してもらえるようにしてもよい。
【0127】
(変形例2)
次に、本発明の第2変形例について説明する。製造履歴データは、識別情報、液体情報、適合機種情報の他に、製造工場、製造年月日の情報を含んでもよい。これにより管理コンピュータ60は、不具合の多発する製造工場、製造年月日を特定することが可能になる。
【0128】
また、使用履歴データは、吐出異常検出回数、吐出異常状況の他に、回復処理の種類に関するポンプ吸引回数、ワイピング回数などや、インクジェットヘッド23の累積吐出回数、累積印刷枚数などの情報を含んでもよい。これにより、管理コンピュータ60は、インクジェットヘッド23の不具合の原因についてより多くの情報を得ることができ、再生処理方法の選択ができ、速やかな再生処理を行うことができる。
【0129】
また、再生履歴データは、インクジェットヘッド23の再利用回数の他に、再生処理時の交換部品履歴の情報を含んでもよい。これにより、再生不可の使用済みインクカートリッジ300を解体し、使える部品を選別し、他のインクカートリッジの再生処理に利用できるようになる。
【0130】
(変形例3)
次に、本発明の第3変形例について説明する。前記実施形態では、液体カートリッジ読込装置としてインクカートリッジ読込装置40のような構成で説明したが、インクカートリッジ3を装着するカートリッジ装着部41をインクカートリッジ読込装置40から独立させ、汎用のパーソナルコンピュータ(以下、PC)に接続ケーブル(USB、IEEE1394、SCSI、シリアルポートなど)で接続し、制御部43での処理プログラムをPCに実行させるようにすることも考えられる。このような構成にすれば、PCに接続されたディスプレイ(CRT、液晶など)を表示部49とし、PCに搭載されているネットワーク接続機能をネットワーク送信部47とし、処理プログラムを記憶媒体(CD−ROM、FD、MOなど)からPCにインストールすればよい。このようなカートリッジ装着部41と接続ケーブルとPCで構成された読取装置ならば比較的安価に用意することができる。
【0131】
(変形例4)
次に、本発明の第4変形例について説明する。前記実施形態では、液滴吐出装置としてインクジェットプリンタ、液体カートリッジとしてインクカートリッジの場合について説明したが、これに限らず薬品や食品等の液体吐出消費機器のカートリッジを用いた液体部室の消費管理、及び、リサイクル再供給にも適用が可能である。例えば、調味料供給装置付き電子レンジ等の調味料の液体物質供給、回収、管理方法にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明を具体化した一実施形態における液滴吐出装置の一種であるインクジェットプリンタ1の概略構成を示す平面図。
【図2】液体カートリッジの一種であるインクカートリッジ3の概略構成図。
【図3】インクジェットプリンタ1にインクカートリッジ3が装着した状態の機能を説明する概略構成図。
【図4】液体カートリッジ読込装置の一種であるインクカートリッジ読込装置40の概略構成図。
【図5】インクカートリッジ読込装置40と管理コンピュータ60のネットワーク接続の概略構成図。
【図6】インクジェットプリンタ1の制御部32の装着判定部39の処理を示すフローチャート。
【図7】インクジェットプリンタ1の制御部32がインクカートリッジ3の記憶部21に使用履歴データを書き込む処理を示すフローチャート。
【図8】インクカートリッジ読込装置40の制御部43が行う処理を示すフローチャート。
【図9】管理コンピュータ60の制御部62の処理を示すフローチャート。
【図10】インクカートリッジ3の物流の構成図。
【符号の説明】
【0133】
1…液滴吐出装置としてのインクジェットプリンタ、3…液体カートリッジとしてのインクカートリッジ、4…キャリッジ、5…キャリッジ軸、6…モータ、13…ワイパ、14…キャップ、20…液体収容部としてのインク室、21…記憶部、22…データ授受部、23…液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッド、30…装着部、31…データ授受部、32…制御部、33…CPU、34…ROM、35…RAM、36…吐出異常検出部、37…使用履歴書き込み部、38…製造履歴読み込み部、39…装着判断部、40…液体カートリッジ読込装置としてのインクカートリッジ読込装置、41…カートリッジ装着部、42…データ授受部、43…制御部、44…CPU、45…ROM、46…RAM、47…ネットワーク送信部、49…表示部、50…履歴読み込み部、51…再生判定部、52…価格判定部、60…管理コンピュータ、61…ネットワーク、62…制御部、63…CPU、64…ROM、65…RAM、66…在庫データベース、67…データ受信部、68…在庫情報更新部、69…生産管理部、300…使用済みインクカートリッジ、309…再生不可インクカートリッジ、a…記録紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部から供給される液体を液滴として吐出させる液滴吐出ヘッドと、記憶部と、前記記憶部と外部装置との間でデータの授受を可能ならしめるデータ授受部とを備える液体カートリッジであって、前記記憶部が、前記液体カートリッジの製造履歴に関する製造履歴データと、前記液滴吐出ヘッドの使用履歴に関する使用履歴データと、前記液滴吐出ヘッドの再生履歴に関する再生履歴データと、を有する履歴データを書き替え可能に格納する領域を備えていることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項2】
前記液体カートリッジは、前記液滴吐出ヘッドを再利用可能なように装着していることを特徴とする請求項1に記載の液体カートリッジ。
【請求項3】
前記液体カートリッジは、前記液滴吐出ヘッドと前記記憶部が少なくとも対となって再利用され、前記記憶部に記憶された前記履歴データは前記記憶部が再利用されても消去されることなく、そのまま継続して前記履歴データが書き込まれることを特徴とする請求項1または2に記載の液体カートリッジ。
【請求項4】
前記使用履歴データは、前記液滴吐出ヘッドの吐出異常検出回数を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。
【請求項5】
前記使用履歴データは、前記液滴吐出ヘッドに回復できない吐出異常が残っているか否かの吐出異常状況を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。
【請求項6】
前記再生履歴データは、前記液滴吐出ヘッドの再利用回数を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の液体カートリッジを前記データ授受部を介し読み込み及び書き込み可能な状態に装着可能な装着部を有する液滴吐出装置であって、前記液滴吐出ヘッドの吐出異常を検出する吐出異常検出部と、前記液体カートリッジの前記データ授受部により前記記憶部に前記使用履歴データを書き込む使用履歴書き込み部と、を備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
前記液滴吐出装置は、前記液体カートリッジの前記データ授受部により前記記憶部に保持されている前記製造履歴データを読み込む製造履歴読み込み部と、前記製造履歴データから前記液体カートリッジが前記液滴吐出装置の装着位置において使用可能であるか否かを判定する装着判定部と、を備えていることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の液滴吐出装置に装着され、使用済みとなった請求項1から5のいずれか一項に記載の液体カートリッジを前記データ授受部を介し読み込み可能な状態に装着可能な液体カートリッジ装着部を備える液体カートリッジ読込装置であって、前記データ授受部により前記記憶部から前記履歴データを読み込む履歴読み込み部と、前記履歴データから前記液体カートリッジが再生可能か否かを判定して、その判定結果内容を有する再生判定データを生成する再生判定部と、前記再生判定データを表示する表示部と、を備えていることを特徴とする液体カートリッジ読込装置。
【請求項10】
前記液体カートリッジ読込装置は、前記履歴読み込み部から読み込んだ前記液体カートリッジの前記履歴データに基づいて前記液体カートリッジを回収してその交換として再販売する価格を決める価格判定部を有し、前記表示部に前記価格を表示することを特徴とする請求項9に記載の液体カートリッジ読込装置。
【請求項11】
前記液体カートリッジ読込装置は、前記液体カートリッジの前記履歴データと前記再生判定データをネットワークを介して送信するネットワーク送信部を備えていることを特徴とする請求項9及び10に記載の液体カートリッジ読込装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載の複数の液体カートリッジ読込装置がネットワークを介して管理コンピュータと接続され、請求項1から6のいずれか一項に記載の液体カートリッジの前記履歴データと前記再生判定データを収集し管理する液体カートリッジ管理システムであって、前記管理コンピュータは、前記液体カートリッジ読込装置から送信された前記履歴データと前記再生判定データを受信するデータ受信部と、前記履歴データと前記再生判定データに基づいて前記液体カートリッジの在庫情報を更新する在庫情報更新部と、を備えていることを特徴とする液体カートリッジ管理システム。
【請求項13】
前記液体カートリッジ管理システムは、前記在庫情報に基づいて前記液体カートリッジの生産管理を行う生産管理部をさらに備えていることを特徴とする請求項12に記載の液体カートリッジ管理システム。
【請求項14】
請求項1から6のいずれか一項に記載の液体カートリッジを装着可能な請求項9から11のいずれか一項に記載の液体カートリッジ読込装置と、複数の前記液体カートリッジ読込装置をネットワークを介して接続した管理コンピュータと、から構成される液体カートリッジ管理方法であって、
前記液体カートリッジが装着された液滴吐出装置における制御部により、前記液体カートリッジの前記記憶部に書き込まれた前記使用履歴データを、使用済みとなった前記液体カートリッジを前記液体カートリッジ読込装置に装着することにより、前記液体カートリッジ読込装置の制御部が読み込む使用履歴読み込みステップと、
前記液体カートリッジ読込装置における制御部が、前記使用履歴データと前記再生履歴データに基づき、使用済みとなった前記液体カートリッジの液滴吐出ヘッドの再生が可能か否かを判定して、その判定結果内容を有する再生判定データを生成する再生判定ステップと、
前記液体カートリッジ読込装置のネットワーク送信部が、前記履歴データと前記再生判定データを管理コンピュータに送信する送信ステップと、
前記管理コンピュータの在庫情報更新部が、ネットワークを介して受信した前記履歴データと前記再生判定データに基づいて前記液体カートリッジの在庫情報を更新する在庫情報更新ステップと、
を備えていることを特徴とする液体カートリッジ管理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の液体カートリッジ管理方法において、前記在庫情報更新ステップの後に、前記管理コンピュータの生産管理部が、前記在庫情報に基づいて前記液体カートリッジの生産管理を行う生産管理ステップをさらに備えていることを特徴とする液体カートリッジ管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−35483(P2006−35483A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215323(P2004−215323)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】