説明

液体カートリッジの製造方法、再生方法、及び液体カートリッジ

【課題】移動体への異物付着を抑制する。
【解決手段】カートリッジは、磁性体からなる弁体62を有する。弁体62は、インク供給路43x内において移動可能であり、磁化されている。インク供給路43xを画定する壁の外周面に凹部45xが形成されている。カートリッジの製造及び再生の際、弁体62をインク供給路43x内における凹部45xに対向する位置に配置し、この状態で弁体62を磁化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式プリンタ等の液体吐出装置に着脱可能な液体カートリッジの製造方法、再生方法、及び液体カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
液体カートリッジにおいて、液体収容部内や液体供給路内で移動可能な移動体を磁化させ、当該移動体の移動を磁気センサで検知する技術が知られている。例えば特許文献1では、インク供給路内に配置された移動体(回転子)の回転量を磁気センサで検知し、当該回転量に基づいてカートリッジ内のインク残量が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−286123号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に係るカートリッジを製造又は再生する場合、作業性の点等から、移動体を磁化させた後に当該移動体をインク供給路内に配置するという工程が行われる。この場合、磁化した移動体に異物(砂鉄等)が付着し易く、異物が付着した状態で移動体がインク供給路内に配置されることで、インク供給路内に異物が混入し、異物との反応等によるインクの変化に起因して吐出不良が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、移動体への異物付着を抑制することができる液体カートリッジの製造方法、再生方法、及び液体カートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1観点によると、液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部に連通する液体供給路と、前記液体収容部内及び前記液体供給路内の少なくとも一方の空間において移動可能であり、磁化された移動体と、を有する液体カートリッジの製造方法であって、磁化される前の前記移動体を、前記空間に配置する配置工程と、前記配置工程の後、前記空間に配置された前記移動体を磁化させる磁化工程を備えたことを特徴とする、液体カートリッジの製造方法が提供される。
【0007】
本発明の第2観点によると、液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部に連通する液体供給路と、前記液体収容部内及び前記液体供給路内の少なくとも一方の空間において移動可能であり、磁化された移動体と、を有する液体カートリッジの再生方法において、前記空間に前記移動体が配置された状態の前記液体カートリッジを準備する準備工程と、前記準備工程の後、前記空間に配置された前記移動体を磁化させる磁化工程を備えたことを特徴とする、液体カートリッジの再生方法が提供される。
【0008】
本発明の第3観点によると、液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部に連通する液体供給路と、前記液体供給路を画定する壁であって、外周面に凹部を有する壁と、前記液体供給路内の空間において移動可能であり、前記液体供給路を開放する開の位置と閉鎖する閉の位置とを選択的に取る、前記液体供給路内における前記凹部に対向する位置に配置可能な、磁化された弁体と、を備えたことを特徴とする、液体カートリッジが提供される。
【0009】
上記第1及び第2観点によれば、移動体を液体収容部内又は液体供給路内に配置した状態で磁化させることで、移動体への異物付着を抑制することができる。
【0010】
上記第3観点によれば、移動体としての弁体を液体供給路内に配置した状態で効率よく磁化させることができるため、移動体への異物付着を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、移動体を液体収容部内又は液体供給路内に配置した状態で磁化させることで、移動体への異物付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクカートリッジを着脱可能なインクジェット式プリンタを示す外観斜視図である。
【図2】プリンタの内部を示す概略側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るインクカートリッジを示す斜視図である。
【図4】カートリッジの内部を示す概略構成図である。
【図5】図4に示す領域Vの部分断面図であり、(a)は球体及び弁体が閉の位置、(b)は球体及び弁体が開の位置にある状態を示す図である。
【図6】図5(a)に示すVI−VI線に沿った部分断面図である。
【図7】カートリッジの製造方法を示すフロー図である。
【図8】カートリッジの再生方法を示すフロー図である。
【図9】センサ部が取り付けられていない状態のバルブユニットを示す断面図であり、(a)は図7のS1(部品組立)、(b)は図7のS3(磁化)のときの図である。
【図10】(a),(b)は弁体の第1変形例を示す図であり、(a)は(b)に示すXA−XA線に沿った断面図、(b)は(a)に示す矢印XB方向から見た図である。(c),(d)は弁体の第2変形例を示す図であり、(c)は(d)に示すXC−XC線に沿った断面図、(d)は(c)に示す矢印XD方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るインクカートリッジ40を着脱可能なインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0015】
プリンタ1は、図1に示すように、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの正面(図1の紙面左手前側の面)には、上から順に、3つの開口10d,10b,10cが形成されている。開口10bは給紙ユニット1b、開口10cはインクユニット1cをそれぞれ筐体1a内部に挿入するためのものである。開口10dには、下端の水平軸を支点として開閉可能な扉1dが嵌め込まれている。扉1dは、筐体1aの主走査方向(筐体1aの正面と直交する方向)に関して、搬送ユニット21(図2参照)と対向配置されている。
【0016】
次いで、図2を参照し、プリンタ1内部の全体構成について説明する。
【0017】
図2に示すように、筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド2、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、及び、プリンタ1各部の動作を制御するコントローラ100が配置されている。空間B,Cにはそれぞれ、給紙ユニット1b及びインクユニット1cが配置される。プリンタ1の内部には、給紙ユニット1bから排紙部31に向けて、図2に示す太矢印に沿って、用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
【0018】
コントローラ100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加え、RAM(Read Only Memory)、ROM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、I/F(Interface)等を有する。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAMには、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。コントローラ100は、I/Fを介して、外部装置(プリンタ1に接続されたPC等)とのデータ送受信等を行う。
【0019】
給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ23が、筐体1aに対して主走査方向に着脱可能となっている。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収容可能である。給紙ローラ25は、コントローラ100による制御の下、給紙モータ(図示せず)の駆動により回転し、給紙トレイ23の最も上方にある用紙Pを送り出す。給紙ローラ25によって送り出された用紙Pは、ガイド27a,27bによりガイドされ且つ送りローラ対26によって挟持されつつ搬送ユニット21へと送られる。
【0020】
搬送ユニット21は、2つのベルトローラ6,7、及び、両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8を有する。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、コントローラ100による制御の下、その軸に接続された搬送モータ(図示せず)の駆動により回転し、図2中時計回りに回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って、図2中時計回りに回転する。
【0021】
搬送ベルト8のループ内には、4つのヘッド2と対向するように、直方体形状のプラテン19が配置されている。搬送ベルト8の上側ループは、搬送ベルト8の外周面8aが4つのヘッド2の下面(インクを吐出する吐出口が多数形成された吐出面)2aと所定距離離隔しつつ当該下面2aと平行に延在するよう、内周面側からプラテン19により支持されている。
【0022】
搬送ベルト8の外周面8aには、弱粘着性のシリコン層が形成されている。給紙ユニット1bから搬送ユニット21へと送られてきた用紙Pは、押さえローラ4によって搬送ベルト8の外周面8aに押え付けられた後、粘着力によって当該面8aに保持されつつ、黒塗り矢印に沿って副走査方向に搬送されていく。
【0023】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向と平行な方向である。主走査方向とは、副走査方向に直交し且つ水平面に平行な方向である。
【0024】
用紙Pが4つのヘッド2の直ぐ下方を通過する際に、コントローラ100による制御の下、各ヘッド2が駆動し、各ヘッド2の下面2aから用紙Pの上面に向けて各色のインクが順に吐出されることで、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。そして用紙Pは、剥離プレート5によって搬送ベルト8の外周面8aから剥離され、ガイド29a,29bによりガイドされ且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ上方に搬送され、筐体1a上部に形成された開口130から排紙部31へと排出される。各送りローラ対28の一方のローラは、コントローラ100による制御の下、送りモータ(図示せず)の駆動により回転する。
【0025】
ヘッド2は、主走査方向(図1の紙面に直交する方向)に長尺なライン式であり、略直方体の外形形状を有する。4つのヘッド2は、副走査方向に所定ピッチで並び、フレーム3を介して筐体1aに支持されている。各ヘッド2において、上面には、可撓性チューブが取り付けられるジョイントが設けられ、下面2aには、多数の吐出口が形成され、内部には、チューブ及びジョイントを介して対応するインクカートリッジ40から供給されたインクが吐出口に至るまでのインク流路が形成されている。
【0026】
インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、及び、トレイ35内に並んで配置された4つのインクカートリッジ40を有する。図2中最も左方のカートリッジ40は、ブラックのインクを貯留しており、残り3つのカートリッジ40よりも、副走査方向のサイズ及びインク容量が大きい。残り3つのカートリッジ40は、それぞれマゼンタ、シアン、イエローのインクを貯留しており、副走査方向のサイズ及びインク容量が同じである。各カートリッジ40に貯留されたインクは、チューブ及びジョイントを介して、対応するヘッド2に供給される。
【0027】
トレイ35は、内部にカートリッジ40が配置された状態で、筐体1aに対して主走査方向に着脱可能である。したがって、プリンタ1のユーザは、トレイ35を筐体1aから取り出した状態で、トレイ35内の4つのカートリッジ40を選択的に交換することができる。
【0028】
次いで、図3〜図6を参照し、カートリッジ40の構成について説明する。なお、トレイ35内に配置される4つのカートリッジ40は、上述のようにブラックインクのカートリッジが他の色のカートリッジよりも副走査方向のサイズ及びインク容量が大きいことを除き、いずれも同じ構成である。
【0029】
カートリッジ40は、筐体41(図3及び図4参照)、筐体41の内部に配置されたリザーバ42(図4参照)、及び、筐体41から主走査方向に突出したバルブユニット43を有する。リザーバ42は、内部にインクを収容する袋状の部材であり、その開口部にバルブユニット43が取り付けられている。
【0030】
バルブユニット43は、図5(a)に示すように、2つの供給管44,45、2つのバルブ50,60、キャップ46、及びセンサ部47を有する。
【0031】
供給管44,45は、共に樹脂等からなり且つ主走査方向に延在し、互いに連結している。供給管44は、先端(リザーバ42から離隔する方向(図5(a)において左方向)の端部。以下同様)を除き、外径が略一定の円筒部材である。供給管44の先端には、外周面から外側に突出した環状のフランジ44fが形成されている。供給管45は、基端(リザーバ42に近づく方向(図5(a)において右方向)の端部。以下同様)近傍を除き、外径が略一定の円筒部材である。供給管45の先端近傍(外径が略一定の部分)は、内径も略一定であり、その内径は供給管44の外径と略同じである。供給管45の先端近傍は、供給管44のうちフランジ44fを除く部分を外側から覆い、供給管44に嵌合している。供給管45の基端は、外周面から外側に突出した環状の鍔45rを有し、リザーバ42に固定されている。供給管45において、鍔45rよりも先端側の外周面には、環状の凹部45xが形成されている。供給管44,45の内径は共に先端から基端に向けて段階的に縮小している。
【0032】
供給管44の内部空間、及び、供給管45のうち供給管44を覆う部分を除いた部分(即ち、基端近傍)の内部空間が、リザーバ42に収容されたインクを対応するヘッド2に供給するためのインク供給路43xとなっている。即ち、インク供給路43xは、先端部(供給管44の内部空間)と基端部(供給管45のうち供給管44を覆う部分を除いた部分の内部空間)とに区分される。先端部に第1バルブ50の球体52、基端部に第2バルブ60の弁体62がそれぞれ主走査方向に移動可能に配置されている。
【0033】
第1バルブ50は、Oリング51、球体52、及びコイルバネ53を有する。
【0034】
Oリング51は、ゴム等の弾性材料からなり、供給管44の先端の内周面に固定されており、図5(a)に示す状態においては球体52とキャップ46との間に介在している。球体52は、SUS等の金属からなり、供給管44の先端部の内径よりも一回り小さな直径を有する。コイルバネ53は、供給管44の基端の壁44pの内面に固定されており、常に球体52に接触して球体52をOリング51に向けて付勢している。
【0035】
第2バルブ60は、弁座61、弁体62、及びコイルバネ63を有する。
【0036】
弁座61は、ゴム等の弾性材料からなる円盤状部材であり、壁44pと供給管45の縮径部(外周面に凹部45xが形成された部分)の壁との間に介在している。弁体62は、磁性体からなる円盤状部材であり、磁化されている。弁体62には、図6に示すようなキー溝62xが厚み方向に貫通して形成されている。キー溝62xは、供給管45の縮径部の内周面から内側に突出し且つ主走査方向に延在する凸条45yと係合している。これにより、弁体62は主走査方向に移動可能且つ回転不能となっている。
【0037】
図5(a)に戻り、弁体62の先端側の表面には、棒64が一体的に固定されている。棒64は、主走査方向に延在する円柱形部材であり、弁座61の中心の貫通孔を通ってインク供給路43xの先端部にまで延出している。図5(a)に示す状態において、棒64の先端は、コイルバネ53の内部に配置され、球体52から離隔している。コイルバネ63は、供給管45の基端の内壁45qの内面に固定されており、常に弁体62に接触して弁体62を弁座61に向けて付勢している。
【0038】
キャップ46は、ゴム等の弾性材料からなる円形板状部材であり、供給管44におけるフランジ44fを含む先端の端面に固定され、当該先端の開口を覆っている。
【0039】
センサ部47は、円筒部材47a、及び、円筒部材47aに内蔵された磁気センサ70を含む。円筒部材47aは、外径が全長に亘って一定であり、且つ、内径が基端を除いて一定である。円筒部材47aの基端には、内周面から内側に突出した環状の凸部47xが形成されている。円筒部材47aは、凸部47xを凹部45xに嵌合させ、キャップ46及び供給管44,45を外側から覆うようにしてこれらに嵌合している。磁気センサ70は、凸部47xに内蔵されており、凹部45x内に配置されている。
【0040】
凸部47xと鍔45rとの間に形成された環状の凹部48に、筐体41の壁が係合している(図4参照)。これにより、バルブユニット43が筐体41に対して固定されている。
【0041】
磁気センサ70は、ホール素子からなり、被検知部材である弁体62との距離に応じて変化する磁束密度に比例した電圧値を示す信号を出力する。
【0042】
図5(a)において、球体52及び弁体62は共に「閉」の位置(インク供給路43xの先端部及び基端部をそれぞれ閉鎖する位置)を取っている。カートリッジ40がプリンタ1に装着されるとき、筐体1aにカートリッジ40毎に設けられた中空針90(図5(b)参照)が、キャップ46を貫通してインク供給路43x内を図5(b)の右方向に進入する。中空針90は、先ず球体52に当接し、球体52をコイルバネ53の付勢力に抗して図5(b)の右方向に移動させ、Oリング51から離隔させる。このとき球体52の位置が「閉」の位置から「開」の位置(インク供給路43xの先端部を開放する位置)に切り換わる。即ち、このとき中空針90の先端に設けられた開口90aを介して中空針90の内部空間90bとインク供給路43xの先端部とが連通する。
【0043】
その後、球体52は棒64に当接し、棒64と共に弁体62をコイルバネ53の付勢力に抗して図5(b)の右方向に移動させ、弁座61から離隔させる。このとき弁体62の位置が「閉」の位置から「開」の位置(インク供給路43xの基端部を開放する位置)に切り換わる。即ち、このときインク供給路43xの先端部と基端部とが互いに連通することで、インク供給路43x及び中空針90を介したリザーバ42とヘッド2との連通が許可される。
【0044】
カートリッジ40がプリンタ1に装着されるとき、例えば中空針90のインク供給路43x内への進入の前又は進入と同時に、カートリッジ40の接点とコントローラ100のI/Fとして機能するプリンタ1の接点とが接触し、カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続される。コントローラ100は、これら接点を介して、磁気センサ70から出力された信号を受信し、且つ、磁気センサ70に信号を送信する。
【0045】
磁気センサ70は、コントローラ100から送信された信号に基づく電圧で駆動される。図5(a)に示すように弁体62の位置が「閉」のとき、磁気センサ70が検知する磁束密度は小さく、磁気センサ70は低い電圧値を示す信号を出力する。弁体62の位置が図5(a)に示す「閉」から図5(b)に示す「開」に移行し、弁体62と磁気センサ70との距離が近づくに伴い、磁気センサ70が検知する磁束密度が大きくなり、磁気センサ70から出力される信号が示す電圧値は高くなる。コントローラ100は、磁気センサ70から受信した信号が示す電圧値の変化に基づいて、弁体62の位置を判断する。
【0046】
なお、カートリッジ交換の際等にカートリッジ40がプリンタ1から取り外されるとき、中空針90が図5(b)の左方向に移動し、球体52がコイルバネ53の付勢力によって中空針90の先端に当接しつつOリング51に近づく方向に移動する。そして球体52とOリング51とが接触するときに、球体52の位置が「開」から「閉」に切り換わる。一方、このとき弁体62はコイルバネ63の付勢力によって図5(b)の左方向に移動し、弁体62が弁座61に接触するときに、弁体62の位置が図5(b)に示す「開」から図5(a)に示す「閉」に切り換わる。また、このときプリンタ1の接点とカートリッジ40の接点とが離隔し、カートリッジ40とプリンタ1との電気的接続が解除される。
【0047】
次いで、図7を参照し、カートリッジ40の製造方法について説明する。
なお、製造方法に係る各工程は、カートリッジ製造装置、及び、作業者のいずれが行ってもよい。
【0048】
先ず、カートリッジ40を構成する部品のうち、センサ部47を除く部品(筐体41、リザーバ42、及びバルブユニット43のうちセンサ部47を除く部品)を組み立てる(S1)。このとき弁体62は、未だ磁化されておらず、図9(a)に示すように、インク供給路43xの基端部に配置され、コイルバネ63の付勢力によって「閉」の位置を取っている。球体52もこのとき「閉」の位置を取っている。
【0049】
次に、弁体62を、インク供給路43x内における凹部45xに対向する位置に配置する(S2)。このとき、例えば図9(b)に示すように、棒95をキャップ46に貫通させつつ管44内に挿入する。そして、球体52及び弁体62の位置を「閉」から「開」に切り換える。即ち、弁体62を図9(a)に示す位置からコイルバネ63の付勢力に抗して図9(a)の右方向に移動させる。そして図9(b)に示すように弁体62が凹部45xの主走査方向略中央に到達したときに、棒95の進入を停止させる。
【0050】
次に、弁体62をインク供給路43x内における凹部45xに対向する位置(図9(b)参照)に配置した状態で磁化させる(S3)。このとき、凹部45x内に磁石(永久磁石、電磁石等)を配置し、当該磁石により弁体62の周囲に磁場を形成し、弁体62を磁化させる。このとき形成される磁場の向きは、例えば図9(b)に示す矢印Mの方向である。その後、棒95を管44から引き抜き、球体52及び弁体62の位置を「開」から「閉」に戻す。
【0051】
次に、図5(a)に示すように、センサ部47を取り付け(S4)、リザーバ42内にインクを分注する(S5)。このとき、例えば、上述した筐体1aの中空針90と同様に、分注器(図示せず)の中空針をキャップ46に貫通させつつ管44内に挿入する。そして、球体52及び弁体62の位置を「閉」から「開」に切り換える。中空針を介した分注は、球体52及び弁体62の位置を「開」に維持しつつ、行われる。分注が完了すると、分注器の中空針を管44から引き抜き、球体52及び弁体62の位置を「開」から「閉」に戻す。
【0052】
これにより、カートリッジ40が完成する。
【0053】
次いで、図8を参照し、カートリッジ40の再生方法について説明する。
なお、再生方法に係る各工程は、S12,S13,S13a,S13bの工程を除き、カートリッジ再生装置、及び、作業者のいずれが行ってもよい。
【0054】
先ず、再生工程に付されたカートリッジ40を準備する(S11)。このときバルブユニット43は、図5(a)に示すように第1バルブ50、キャップ46、及びセンサ部47が取り付けられた状態にある。また、弁体62は、インク供給路43xの基端部に配置され、コイルバネ63の付勢力によって「閉」の位置を取っている。
【0055】
次に、磁気センサ70を用いて弁体62の磁力を検出する(S12)。S12では、先ず弁体62を、S2と同様に、凹部45xの主走査方向略中央に配置する。そして、弁体62を当該位置に固定した状態で、磁気センサ70を用いて弁体62の磁力を検出する。ここで、磁気センサ70への信号の送信及び磁気センサ70から出力された信号の受信、そして受信した信号に基づく弁体62の磁力の検出は、カートリッジ再生装置のコントローラが行う。
【0056】
そしてカートリッジ再生装置のコントローラは、S12で検出された磁力が、所定値以上であれば磁化不要(S13:NO)、所定値未満であれば磁化必要(S13:YES)と判断する。当該所定値はカートリッジ再生装置のコントローラのメモリに記憶されている。
【0057】
磁化が必要な場合(S13:YES)、カートリッジ再生装置のコントローラは、当該再生装置のディスプレイに「磁化必要」と表示する(S13a)。そして、センサ部47を取り外す(S14)。その後は、S2,S3,S4,S5と同様の一連の工程(弁体62をインク供給路43x内における凹部45xに対向する位置に配置する工程(S15)、当該位置で弁体62を磁化させる工程(S16)、センサ部47を取り付ける工程(S17)、及び、インクを分注する工程(S18))を行う。これにより、再生品としてのカートリッジ40が完成する。
磁化が不要な場合(S13:NO)、カートリッジ再生装置のコントローラは、当該再生装置のディスプレイに「磁化不要」と表示する(S13b)。そして、S14〜S17の工程を省略し、S18が行われる。
【0058】
以上に述べたように、本実施形態のカートリッジ40、カートリッジ40の製造方法及び再生方法によると、弁体62をインク供給路43x内に配置した状態で磁化させる(S3,S16)ことで、弁体62への異物付着を抑制することができる。ひいては、インク供給路43x内への異物混入によるインクの変化に起因する吐出不良を抑制することができる。
【0059】
特に再生方法においては、弁体62を磁化させた後にインク供給路43x内に配置する場合、弁体62への異物付着の問題のみならず、磁化工程の前にカートリッジ40を分解して弁体62を取り出す作業が必要となり、作業が煩雑化するという問題もある。本実施形態の再生方法によると、このような分解作業が不要であり、作業の煩雑化の問題をも解決することができる。
【0060】
弁体62が配置されるインク供給路43xを画定する壁は、外周面に凹部45xを有する。本実施形態の製造方法及び再生方法では、磁化工程(S3,S16)の前に、弁体62をインク供給路43x内における凹部45xに対向する位置に配置し(S2,S15)、この状態で磁化を行う。この場合、上述のように凹部45x内に磁石を配置し、磁石と弁体62との距離が比較的小さい状態で磁化を行うことができる。したがって、磁化を効率よく行うことができる。
【0061】
本実施形態のカートリッジ40によると、凹部45x以外の部分において、インク供給路43xの流路面積を大きくし、流路抵抗の増大を抑制している。したがって、凹部45xによる磁化工程の効率化を維持し、且つ、インク供給路43x全体としての大型化を回避しつつ、流路抵抗の増大を抑制することができる。
【0062】
しかも本実施形態のカートリッジ40によると、凹部45x内に磁気センサ70が取り付けられている。これにより、配置効率が向上し、カートリッジ全体のさらなる小型化が実現される。また、弁体62の比較的近くに磁気センサ70が配置されるため、磁気センサ70の検知精度も向上する。
【0063】
本実施形態の再生方法によると、弁体62の磁力を検出し(S12)、検出された磁力に基づいて磁化工程(S16)を行う。即ち、弁体62の磁力が所定値以上の場合、磁化不要と判断し(S13:NO)、磁化工程(S16)を行わない。また、弁体62の磁力が所定値未満の場合、磁気センサ70による弁体62の検知精度が低下してしまうため、磁化必要と判断し(S13:YES)、磁化工程(S16)を行う。このように必要に応じて磁化工程を行うようにすることで、全ての弁体62について一様に磁化工程を行う場合に比べ、作業効率を向上させることができる。
【0064】
しかも本実施形態の再生方法では、弁体62の磁力の検出工程(S12)を、カートリッジ40に具備されている磁気センサ70を用いて行っている。このように既存の部材を用いることで、効率よく検出工程を行うことができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0066】
カートリッジの構造は、様々に変更可能である。例えば、筐体41、リザーバ42、バルブユニット43各部の構成(形状、位置等)を適宜変更してよい。カートリッジに含まれるバルブの数は、1又は3以上であってよい。また、袋状のリザーバを省略し、筐体に直接液体を収容してもよい(この場合、筐体が液体収容部として機能する)。
【0067】
弁体は、全体が磁性体からなることに限定されず、磁性体からなる部品と非磁性体からなる部品との結合体であってもよい(図10参照)。図10(a),(b)に示す第1変形例に係る弁体162は、磁性体からなる部品162bと非磁性体からなる部品162aとの結合体である。部品162bは、一方向に細長い矩形板であり、部品162aの表面に形成された凹部内に挿入され、接着剤等で凹部に固定されている。部品162aは略円盤状の部材であり、その周面にはキー溝62x(図6参照)と同様の回転防止のためのキー溝162xが2つ形成されている。部品162aの背面には棒64と同様の棒164が一体的に固定されている。図10(c),(d)に示す第2変形例に係る弁体262は、磁性体からなる部品262bと非磁性体からなる部品262aとの結合体である。部品262a,262bは共に同じサイズの略円盤状の部材である。部品262aの表面に形成された2つの凸部262yに部品262bの凹部が嵌合することで、互いに固定されている。これら部品262a,262bが一体となった結合体の周面には、キー溝62x(図6参照)と同様の回転防止のためのキー溝262xが2つ形成されている。部品262aの背面には棒64と同様の棒264が一体的に固定されている。第2変形例によれば、接着剤を用いずに嵌合により部品262a,262bを互いに固定しているため、接着剤による種々の不具合(磁気センサによる検知精度の悪化等)を防止することができる。
弁体の形状は、円盤状に限定されず、様々に変更可能である。例えば、液体供給路内における液体の流動方向から見て円形状ではなく矩形状等であってもよい。この場合、回転防止のためのキー溝が不要である。
【0068】
移動体は、液体収容部内の空間において移動可能であってもよい。このような移動体としては、例えば、リザーバ42の鉛直方向上方の内面に取り付けられ且つリザーバ42内の液体の減少に伴って下降する移動体や、袋状のリザーバが省略され直接液体を収容する筐体内において液面上に浮くように設けられ且つ筐体内の液体の減少に伴って下降する移動体等が挙げられる。このような移動体は、液体収容部内に残存する液体の量を検知するための被検知部材として用いることができる。
【0069】
移動体は、液体収容部内、液体供給路内、又は、これら液体収容部及び液体供給路に跨った空間において、液体に接触することに限定されず、液体に接触しなくてもよい(例えば、上述した被検知部材として用いられる移動体のうち、リザーバ42の鉛直方向上方の内面に取り付けられる移動体は、リザーバ42内の液体に接触しなくてもよい)。
【0070】
本発明に係るカートリッジが適用される液体吐出装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等であってもよい。また、液体吐出装置に含まれるヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式でもよく、ヘッドの数は4に限定されず、1以上であればよい。
【0071】
カートリッジの液体収容部にはインク以外の液体が収容されてよい。
【0072】
製造方法及び再生方法においては、移動体を、液体供給路内、液体収容部内、又は、これら液体収容部及び液体供給路に跨った空間に配置した状態で磁化させればよく、上記空間における移動体の位置は任意である(即ち、移動体を凹部に対向する位置に配置することに限定されない)。
【0073】
再生方法において、検出工程(S12)は、磁気センサ70を取り外した後、磁気センサ70とは別のセンサを用いて行ってもよい。
また、検出工程(S12)で検出された弁体62の磁力に応じて異なる方法で磁化を行ってよい。
検出工程(S12)を行わず、全ての移動体について、同様の方法で、磁化を行ってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 インクジェット式プリンタ(液体吐出装置)
40 インクカートリッジ(液体カートリッジ)
42 リザーバ(液体収容部)
43 バルブユニット
43x インク供給路(液体供給路)
45x 凹部
62;162;262 弁体(移動体)
70 磁気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体収容部と、
前記液体収容部に連通する液体供給路と、
前記液体収容部内及び前記液体供給路内の少なくとも一方の空間において移動可能であり、磁化された移動体と、
を有する液体カートリッジの製造方法であって、
磁化される前の前記移動体を、前記空間に配置する配置工程と、
前記配置工程の後、前記空間に配置された前記移動体を磁化させる磁化工程を備えたことを特徴とする、液体カートリッジの製造方法。
【請求項2】
前記移動体が、前記液体供給路内の空間において移動可能であり、前記液体供給路を開放する開の位置と閉鎖する閉の位置とを選択的に取る弁体であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記液体供給路は、外周面に凹部を有する壁によって画定され、
前記配置工程において、前記弁体を前記液体供給路内における前記凹部に対向する位置に配置することを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
液体を収容する液体収容部と、
前記液体収容部に連通する液体供給路と、
前記液体収容部内及び前記液体供給路内の少なくとも一方の空間において移動可能であり、磁化された移動体と、
を有する液体カートリッジの再生方法において、
前記空間に前記移動体が配置された状態の前記液体カートリッジを準備する準備工程と、
前記準備工程の後、前記空間に配置された前記移動体を磁化させる磁化工程を備えたことを特徴とする、液体カートリッジの再生方法。
【請求項5】
前記移動体が、前記液体供給路内の空間において移動可能であり、前記液体供給路を開放する開の位置と閉鎖する閉の位置とを選択的に取る弁体であることを特徴とする、請求項4に記載の再生方法。
【請求項6】
前記液体供給路は、外周面に凹部を有する壁によって画定され、
前記準備工程の後且つ前記磁化工程の前に、前記弁体を前記液体供給路内における前記凹部に対向する位置に配置する配置工程を備えたことを特徴とする、請求項5に記載の再生方法。
【請求項7】
前記準備工程の後且つ前記磁化工程の前に、前記空間に配置された前記移動体の磁力を検出する検出工程をさらに備え、
前記磁化工程が前記検出工程で検出された前記磁力に基づいて行われることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の再生方法。
【請求項8】
前記液体カートリッジが、前記移動体の移動を検知する磁気センサを有し、
前記磁気センサを用いて前記検出工程を行うことを特徴とする、請求項7に記載の再生方法。
【請求項9】
液体を収容する液体収容部と、
前記液体収容部に連通する液体供給路と、
前記液体供給路を画定する壁であって、外周面に凹部を有する壁と、
前記液体供給路内の空間において移動可能であり、前記液体供給路を開放する開の位置と閉鎖する閉の位置とを選択的に取る、前記液体供給路内における前記凹部に対向する位置に配置可能な、磁化された弁体と、
を備えたことを特徴とする、液体カートリッジ。
【請求項10】
前記凹部に前記弁体の移動を検知する磁気センサが取り付けられたことを特徴とする、請求項9に記載の液体カートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−16927(P2012−16927A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157034(P2010−157034)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】