説明

液体カートリッジ

【課題】収容ケースの嵌合部を毛細管現象で流動する液体を抑止し得る液体カートリッジを提供する。
【解決手段】ケース本体部32と蓋ケース33を嵌合部27,28で嵌合させてなる収容ケース31内に、液体導出部材42が設けられた液体パック34が格納され、収容ケース31の前面32aに、カートリッジ装着部13に取り付けた液体導入部材71に対向するよう液体導出部材42を位置決めする支持部43が設けられ、嵌合部27,28が支持部43を横切る状態で配置され、嵌合部27,28における支持部43の近傍に、この嵌合部27,28に形成される隙間よりも隙間が大きい空間部29,30を形成した。こうすることにより、嵌合部27,28を毛細管現象で流動する液体が空間部29,30で保持され、それから先に延びている嵌合部27,28へ流動することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジの外周部における液体の流動を抑制する液体カートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体をターゲットに噴射させる液体噴射装置の一つとして、インクジェット式プリンタが広く用いられている。このインクジェット式プリンタは、キャリッジと、同キャリッジに搭載された記録ヘッドとを備える。そして、同キャリッジを記録媒体に対して移動させながら、記録ヘッドに形成されたノズルからインクを吐出し、印刷用紙に対して印刷を行うようになっている。また、このようなインクジェット式プリンタにおいては、インクを貯留するための液体収容体としてのインクカートリッジが交換可能に設けられており、記録ヘッドから吐出されるインクは、同インクカートリッジから供給されるようになっている。
【0003】
ところで、上記のようなインクジェット式プリンタにおいて、大型の印刷用紙に印刷を行ったり、インクジェット式プリンタを小型化、薄型化して装置のレイアウトに自由度をもたせたりすることが行われるようになってきている。このような場合には、インク消費量が多くなるため、大容量のインクを貯留できるインクカートリッジを、インクジェット式プリンタのカートリッジ装着部に支持する、いわゆるオフキャリッジ方式が一般に採用されている。
【0004】
そして、上記のようなオフキャリッジ方式においては、インク導出部材が設けられたインクパックを、ケース本体部と蓋ケースからなる収容ケース内に格納してインクカートリッジを形成している。上記のように収容されたインクパックは、そのインク導出部材が収容ケースの前面に形成された支持部によって位置決めがなされている。上記支持部の中央部には受入開口が設けられ、記録装置側のカートリッジ装着部に配置された針状のインク導入部材(インク供給針)が相対的に上記受入開口を経てインク導出部材に突き刺さるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−217499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、インク供給針がインクパックのインク導出部に突き刺さったままであれば、インクの漏洩はない。他方、インクパックが空になってしまった場合には、インクカートリッジをカートリッジ装着部から抜き取って、交換を行う。インクカートリッジを抜き取る際には、露出したインク供給針の表面がインクで濡れていたり、抜き取りの過渡期に僅かな量のインクが飛び散ったりしてインク漏れが生じる。このようなインクカートリッジの抜き取りや取り付けを、ユーザが通常の回数以上にわたって行うことがあると、上記のようにして漏れたインクの量が流動するくらいに溜まってきて、それがケース本体部と蓋ケースの嵌合部の隙間部分を毛細管現象で流動し、上記支持部から離隔した箇所までインク流動する。
【0007】
上記のようなインク流動の生じたインクパックを、手でもって出し入れすると手がインクで汚れたり、装置のカートリッジ装着部にまでインク汚れが及ぶこととなる。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、毛細管現象による液体の流動を抑止し得る液体カートリッジの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の液体カートリッジは、ケース本体部と蓋ケースを嵌合させてなる収容ケース内に、貯留された液体を導出する液体導出部材が設けられた液体収容体が格納され、上記収容ケースの前面に、液体導出部材を固定する支持部が設けられ、上記ケース本体部と蓋ケースとの嵌合部が上記支持部を横切る状態で配置され、上記嵌合部における支持部近傍に、この嵌合部に形成される隙間よりも隙間が大きい空間部を形成したことを要旨とする。
【0010】
上記カートリッジ装着部側の液体導入部材と、液体カートリッジ側の液体導出部材とが合致している箇所から流出した液体が、上記嵌合部を毛細管現象で流動しても、その液体は、嵌合部の隙間よりも大きな隙間からなる上記空間部において貯留される。この貯留現象においても拡大された空間容積を有する隙間部分において液体が毛細管現象を呈して、空間部に保持された状態になる。したがって、上記空間部の箇所で嵌合部における液体の流動がとどめられ、空間部からさらに先に延びている嵌合部への液体流動が抑止される。このような液体の流動抑止の現象により、液体カートリッジの液体汚れを最小の範囲内にとどめることができ、また、液体カートリッジをカートリッジ装着部に着脱する際に、液体で手が汚れるようなことも防止できる。
【0011】
本発明の液体カートリッジにおいて、上記収容ケースの前面の端部と、上記端部に最も近い箇所に存在する支持部との間に、上記空間部が設けられている場合には、上記嵌合部における液体の流動が、上記収容ケースの前面の範囲内に配置された空間部で抑止される。したがって、上記前面の範囲を越えて、例えば、収容ケースの横側面の箇所まで流動することが防止できる。
【0012】
本発明の液体カートリッジにおいて、上記空間部が、収容ケースの前面の両端部近傍にそれぞれ設けられている場合には、上記支持部が収容ケースの前面に複数配置されている構造であっても、上記前面の両端部近傍で液体の流動が抑止され、前面の範囲を越えて、例えば、収容ケースの横側面の箇所まで流動することが防止できる。
【0013】
本発明の液体カートリッジにおいて、上記支持部が、上記収容ケースの前面に複数並ぶよう設けられ、上記各支持部に対応するよう複数の液体パックが収容されている場合には、収容ケース内に収容されている複数の液体パックの液体導出部材が配置された支持部で位置決めされるので、複数の液体パックは収容ケース内で正しく配列された状態になり、特定の液体パックに他の液体パックの荷重が集中するようなことがなく、各液体パックからの液体供給を均一にすることができる。同時に、複数種類の液体が漏れた場合であっても、嵌合部を伝う液体流動が上記空間部で抑止される。
【0014】
本発明の液体カートリッジにおいて、上記空間部が、支持部の両側にそれぞれ設けられている場合には、支持部からより近い箇所に空間部を配置することにより、嵌合部を流動する液体の流動範囲を最小限度に食い止めることができる。
【0015】
本発明の液体カートリッジにおいて、上記嵌合部の嵌合方向はケース本体部の略深さ方向に設定され、上記嵌合方向で見て、上記空間部の隙間寸法が、上記嵌合部の隙間寸法よりも大きくなるよう設定されている場合には、上記嵌合方向に空間部の隙間が確保できるので、嵌合部の嵌合構造に適合した空間部の配置が可能となる。
【0016】
本発明の液体カートリッジにおいて、上記嵌合部の嵌合方向はケース本体部の略深さ方向に設定され、上記嵌合方向に略直交する方向で見て、上記空間部の隙間寸法が、上記嵌合部の隙間寸法よりも大きくなるよう設定されている場合には、上記嵌合方向に直交している方向に空間部の隙間が確保できるので、嵌合部の嵌合構造に適合した空間部の配置が可能となる。
【0017】
本発明の液体カートリッジにおいて、上記空間部が、嵌合部のケース本体部および/または蓋ケースの一部に凹部を設けて形成されている場合には、ケース本体部あるいは蓋ケースに対する凹部成形の自由度が拡大され、それにより、嵌合部を流動する液体の挙動に応じた最適の空間部形成ができる。
【0018】
本発明の液体カートリッジにおいて、上記空間部が、嵌合部の一部を形成する壁部材に設けた貫通部によって形成されている場合には、上記貫通部によって形成された空間に液体の保持機能を付与することができ、上記空間部の形成が、液体の流動挙動に適合させて高い自由度のもとで行える。
【0019】
本発明の液体カートリッジにおいて、上記支持部は、ケース本体部側に形成された下側支持部と、蓋ケース側に形成された上側支持部を合致させることにより構成され、支持部の前面部分に形成され上記液体導入部材を受け入れる受入開口が設けられ、上記嵌合部は受入開口を横切るよう配置されている場合には、ケース本体部に蓋ケースを合致させることにより、支持部と上記受入開口が形成されるので、構造簡素化にとって有効である。また、上記嵌合部、すなわちケース本体部と蓋ケースとの割線が受入開口を横切っているので、液体が飛沫等で飛散する箇所の近くに嵌合部が存在していることとなり、液体を確実に嵌合部で流動させることができ、引いては、嵌合部に連なる空間部で流動を食い止めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに、本発明の液体カートリッジを実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1(A)は、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ(以下、プリンタという)の概念図であり、また同図(B)は、上記プリンタの全体的な形状を示す簡略的な斜視図である。なお、本実施例のプリンタは、キャリッジ上に液体収容体としてのインクカートリッジを搭載しないオフキャリッジタイプのプリンタであり、インクカートリッジのレイアウトに自由度を持たせた、小型化、薄型化されたプリンタとなっている。
【0022】
図1に示すように、プリンタ11は、フレーム12を備え、フレーム12の下部には、カートリッジ装着部13が形成されている。そして、このカートリッジ装着部13には、液体容器としてのインクカートリッジ14が着脱可能に装着されている。なお、このインクカートリッジ14は、液体としてのインクを貯留するとともに、廃液としての廃インクを貯留することが可能となっているが、その詳細については後述する。
【0023】
上記プリンタ11は、ガイド部材15を備え、同ガイド部材15は、上記フレーム12に架設されている。そして、このガイド部材15には、キャリッジ16がガイド部材15の軸線方向に移動可能に挿通支持されている。キャリッジ16は、タイミングベルト(図示しない)を介してキャリッジモータ(図示しない)に接続されており、キャリッジモータの駆動によって、ガイド部材15に沿って主走査方向である矢印X方向(図1(B)参照)に往復移動するようになっている。
【0024】
上記キャリッジ16の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド17が設けられている。また、キャリッジ16には、サブタンク18が搭載されている。このサブタンク18は、ポリエチレン等の可撓性部材により形成されているインク供給チューブ19の一端が接続されている。インク供給チューブ19の他端は、上記インクカートリッジ14に接続されている。従って、サブタンク18は、インクカートリッジ14から、インク供給チューブ19を介してインクの供給を受ける。なお、インク供給チューブ19は、耐薬品性に優れたポリエチレン系樹脂等の可撓性部材による内装に、気密遮断性に優れた塩化ビニルや金属膜等を外装として覆った二重構造にするのが望ましい。
【0025】
また、サブタンク18は、上記記録ヘッド17と接続されており、インクカートリッジ14から供給されたインクを記録ヘッド17へと供給する。記録ヘッド17は、その下面に図示しないノズル吐出口を備えており、図示しない圧電素子の駆動により、サブタンク18から供給されたインクをインク滴としてノズル吐出口から吐出するようになっている。そして、ノズル吐出口からインクを吐出すると同時に、キャリッジ16をターゲットとしての印刷用紙(図示しない)に対して往復移動させることで、印刷用紙上に印刷を行うことが可能となっている。
【0026】
なお、キャリッジ16がガイド部材15に沿って往復移動すると、それに合わせて、インク供給チューブ19が撓み、インク供給チューブ19内のインクに圧力変動が生じるが、この圧力変動は、上記サブタンク18によって吸収されるようになっている。すなわち、サブタンク18は、圧力ダンパユニットとして機能している。したがって、記録ヘッド17から吐出されるインクは、圧力変動が抑制された状態となっている。
【0027】
また、図1に示すプリンタ11の概念図では、説明の便宜上、インク供給チューブ19は、1本しか示してないが、実際は、同図(B)に示すように、インクカートリッジ14に収納された液体収容体の1つである各色のインクパック34の数と同じ数のインク供給チューブ19が設けられている。従って、記録ヘッド17のノズルおよびサブタンク18も各色のインクパック34に対応して設けられている。
【0028】
一方、上記キャリッジ16の移動経路上における非印刷領域(ホームポジョン)には、記録ヘッド17のノズル吐出口を封止することができるヘッドメンテナンス機構21が配置されている。そして、ヘッドメンテナンス機構21は、有底状のゴム等の弾性素材により形成されたキャップ部材22を備え、キャップ部材22は、その上部開口が記録ヘッド17のノズル吐出口を覆って封止し得るようになっている。そして、キャリッジ16がホームポジョンに移動したときに、ヘッドメンテナンス機構21が記録ヘッド17側に移動(上昇)して、キャップ部材22によって記録ヘッド17のノズル吐出口を覆うことができるように構成されている。
【0029】
このキャップ部材22は、プリンタ11の休止期間中において記録ヘッド17のノズル吐出口を覆い、ノズル吐出口の乾燥を防止するキャップとして機能する。また、ヘッドメンテナンス機構21は、廃インクチューブ23を備え、同廃インクチューブ23は、その一端が上記キャップ部材22の底部に接続されているとともに、他端が上記インクカートリッジ14に接続されている。さらに、ヘッドメンテナンス機構21は、上記廃インクチューブ23の途中に吸引ポンプ24を備え、吸引ポンプ24を駆動させることにより、吸引ポンプ24より上流側に位置するキャップ部材22の内部を減圧させるようになっている。そして、キャップ部材22が記録ヘッド17のノズル吐出口を覆った状態で、キャップ部材22の内部を減圧させることにより、記録ヘッド17のノズル吐出口からインクを吸引するクリーニング動作を実行することが可能となっている。
【0030】
そして、記録ヘッド17のノズル吐出口から吸引されるインクは、廃インクチューブ23を介して上記インクカートリッジ14に排出されるようになっている。なお、本実施例においては、図1に示すように、ホームポジションは、上記カートリッジ装着部13の右側に位置するようになっている。
【0031】
次に、上記カートリッジ装着部13に装着されるインクカートリッジ14について説明する。図2に示すように、インクカートリッジ14は偏平な略直方体の形状を有している。上記インクカートリッジ14は、ケース本体部32と蓋ケース33よりなる収容ケース31と、その収容ケース31内に収容された複数のインクパック34(図4参照)を備えている。
【0032】
上記インクパック34は、図4に示すように、袋部41とインク導出部材42とを備える。袋部41は可撓性の素材から形成されており、ガスバリヤー性の向上のために、例えば外側をナイロンフィルム、内側をポリエチレンフィルムにより挟み込んだ構成のアルミニウムラミネートフィルムから形成されている。そして、袋部41は、これら2枚の略長方形形状のアルミニウムラミネートフィルムを重ね合わせて、それらの周囲を熱溶着等の方法によって接合することにより形成され、内部にインクを貯留している。
【0033】
上記インク導出部材42は、例えばプラスチックにより形成される略円筒形状をなし、その内部はインク供給口42aを形成している。そして、このインク供給口42aを介してインクパック34内に収容されたインクが取り出される。また、インク供給口42aには、インク供給時にのみ開弁される図示しない弁機構が設けられており、袋部41内のインクが漏れ出ないようになっている。
【0034】
図2に示すように、収容ケース31は、上部に開口を有した略箱形状のケース本体部32と、このケース本体部32の開口を覆う略板形状の蓋ケース33とから構成されている。上記収容ケース31の前面(ケース本体部32の前面)32aの中央部には、収容されるインクパック34の個数と同じ6つの支持部43が設けられている。6つの支持部43は、その各中心が収容ケース31の底面(ケース本体部32の底面)32hと平行な中心ラインL1上に位置するように並んで設けられ、ケース本体部32の上下方向略中央にそれぞれ設けられている。すなわち、ケース本体部32と蓋ケース33との嵌合部をなす割線が上記支持部43の中央部を横切っている。
【0035】
上記ケース本体部32は、図2,図3および図4に示すように、各図の上下方向がケースの深さ方向とされている。上記ケース本体部32に対して蓋ケース33が嵌合した状態で合致して収容ケース31が形成されている。すなわち、図2(A)の(B)−(B)断面である図(B)および図2(A)の(C)−(C)断面である図(C)に示すように、ケース本体部32の側壁板32bに片方の衝合面である頂面32cが設けられている。また、蓋ケース33の板状部33aの周縁部にもう一方の衝合面である下面33cが設けられている。そして、上記側壁板32bの内側面32dが片方の摺動衝合面とされ、蓋ケース33の外周縁の近傍にそって起立した状態で形成した内枠部45の外側面45eが他方の摺動衝合面とされている。なお、上記内枠部45は、嵌合部の一部を形成する壁部材とされている。
【0036】
また、図4に示すように、支持部43は、その下半分を構成する下側支持部43aがケース本体部32に、その上半分を構成する上側支持部43bが蓋ケース33に設けられている。支持部43は、各インクパック34のインク導出部材42を支持する。したがって、支持部43は、ケース本体部32の下側支持部43aにインクパック34のインク導出部材42が支持された状態で、蓋ケース33が取り付けられると、下側及び上側支持部43a,43bが嵌合されて支持部43が構成される。すなわち、ケース本体部32と蓋ケース33の嵌合部が支持部43を横切っている。
【0037】
図4および図5に示すように、支持部43の下側支持部43aと上側支持部43bの各々に設けられた半円弧状の溝部25に、上記インク導出部材42の外周部に設けたフランジ状とされた半円弧状の突条部26がはめ込まれて、インク導出部材42の位置決めが支持部43によって行われている。
【0038】
また、支持部43の前面部分には、インク供給針71を受入れる受入開口43cが設けられている。この受入開口43cは、下側支持部43aに形成した半円形の切欠き部43dと、上側支持部43bに形成した半円形の切欠き部43eを嵌合部において合致させることにより形成されている。そして、図4(B)に示すように、受入開口43cとインク導出部材42のインク供給口42aは同心状に配置されている。なお、受入開口43cとインク供給口42aは円形の形状である。
【0039】
図2に示すように、ケース本体部32の前面32aの右側には、廃インクを回収するための廃液回収口としての廃インク回収口44aが設けられている。廃インク回収口44aには、蓋ケース33の廃インク導入部44bが嵌合可能となっており(図4参照)、廃インク導入部44bをケース本体部32の廃インク回収口44aに嵌合させることにより、廃インク導入部44bと廃インク回収口44aは連通するようになっている。
【0040】
また、ケース本体部32の前面32aには、その両端部の近傍に、位置決め孔51が2つ設けられている。さらに、図3に示すように、ケース本体部32の底面32hの左側には、基板収容凹部46が前面32aと連通するように凹設されている。上記基板収容凹部46の内面46aには、回路基板37が取り付けられている。本実施例では、基板収容凹部46の形状によって、回路基板37は、上記インクパック34が支持されている支持部43の中心ラインL1と同じ位置又はL1ラインより上に位置するように設けられている。回路基板37の表面側には、接続端子37aが形成されている。接続端子37aは、回路基板37に実装されたデータの読み書きが可能な半導体記憶装置(図示せず)と電気的に接続されている。半導体記憶装置は、収容ケース31に収容される各インクパック34のインクの種類、インク残量、シリアル番号や有効期限等のデータを記憶する。
【0041】
したがって、図6及び図7に示すように、上記プリンタ11のフレーム12に設けたカートリッジ装着部13に配置された接続部49にインクカートリッジ14が装着された場合に、接続端子37aが接続部49の端子配設部50に形成した端子機構(図示せず)と電気的に接触される。そして、これらの接続端子37aを介して半導体記憶手段からインクの種類、インク残量、シリアル番号や有効期限等のデータの授受が実行される。
【0042】
ケース本体部32の底面32hの右側には、図6に示すように、上記基板収容凹部46と連続するよう、背面32i側に向かって溝部47が凹設されている。この溝部47の形成は、基板収容凹部46より浅く形成されているとともに、基板収容凹部46から背面32iに向かって背面32iに至る手前で終了している。溝部47の基板収容凹部46側には2つの突起48が下方に突出形成されている。さらに、図4および図5に示すように、ケース本体部32の背面32iには、蓋ケース33と係合するための係合孔53が設けられている。
【0043】
蓋ケース33は、図8および図11に示すように、略長方形の板状部33aと、同板状部33aの周縁よりも内側の位置において板状部33aから枠状に直角に起立している壁部材としての内枠部45とを備えている。そして、図12に示すように、上記内枠部45は、4つの側面、すなわち、第1の側面45a、第2の側面45b、第3の側面45c及び第4の側面45dを備える。そして、上記のように、内枠部45の外側面45eが摺動衝合面とされている。
【0044】
図12において、内枠部45の、第1の側面45aと第4の側面45dとによって形成される第1のコーナー部61付近には、第1の側面45aの内側と外側とを連通させる貫通孔62が形成されている。また、第1の側面45aの外側面からは、上記貫通孔62を囲むようにして、筒状の上記廃インク導入部44bが突設されている。
【0045】
図11に示すように、廃インク導入部44bの内側には、弁装置68が設けられている。この弁装置68は、環状のゴム等の弾性部材により形成されている弁座68aと、略円柱状の弁体68bと、バネ68cとを備える。そして、これらは、廃インク導入部44b内において、上流から下流に向かって、弁座68a、弁体68b、バネ68cの順に並ぶように設けられている。そして、外部からの力が加わっていない状態においては、弁体68bは弁座68aに当接するようにバネ68cによって付勢され、弁装置68は閉状態とされる。
【0046】
さらに、蓋ケース33は、上記内枠部45の内側に、図11及び図12に示すように、上記第1の側面45aと、第2の側面45bと平行になるようにして、くの字状の壁面としての壁部63を備える。なお、この壁部63の高さは、内枠部45の高さと同じとなっている。従って、この壁部63と、第1の側面45a及び第2の側面45bとの間には、溝64が区画形成されている。また、壁部63と第3の側面45c及び第4の側面45dとの間には、略直方体形状の廃インク貯留部65が区画形成されている。
【0047】
そして、壁部63は、その一端63aが上記第1の側面45aに対して、上記貫通孔62の位置よりも上記第1のコーナー部61寄りの位置において接合されている。また、壁部63の他端63bは、上記第2の側面45bと第3の側面45cとによって形成されている第2のコーナー部66において、上記内枠部45に対して接しないようにして位置している。従って、溝64は、第1のコーナー部61付近において上記貫通孔62と連通するとともに、第1のコーナー部61と対峙する第2のコーナー部66付近において、上記廃インク貯留部65と連通している。その結果、貫通孔62を介して廃インクが流入した場合には、廃インクは、第1の側面45a、第2の側面45bに沿って、溝64内を移動し、第2のコーナー部66において、廃インク貯留部65に流入するようになる。
【0048】
廃インク貯留部65には、廃インク吸収材35が収容される。廃インク吸収材35は、多孔質性の素材により形成され、図11に示すように、直方体形状を有し、廃インク貯留部65の内部にちょうど嵌り込む大きさ及び厚さを有している。
【0049】
なお、廃インク貯留部65には、上記第1のコーナー部61付近において壁部63によって形成されている矩形の空間67が形成されており、この空間67には廃インク吸収材35が介在されないようになっている。
【0050】
図11において、フィルム36は、長方形状を有しており、例えば、ポリオレフィン、PET等から形成されている。そして、フィルム36は、その周縁部分が上記内枠部45及び壁部63に熱溶着されることにより内枠部45の内側を封止するようになっている。したがって、上記溝64は、フィルム36によって、その開口が封止され、閉断面の廃液流路としての流路64aが形成される。また、上記廃インク貯留部65は、廃インク吸収材35を収容した状態でフィルム36によってその開口が封止され、廃液回収部としての廃インク貯留室65aが形成される。
【0051】
さらに、図11に示すように、フィルム36は、上記廃インク吸収材35の貫通孔35aと対峙する位置に通気孔69を備える。これにより、廃インク貯留部65とフィルム36とによって形成される廃インク貯留室65a内の余剰空気を外部に追い出すことができるようになっている。
【0052】
一方、図8に示すように、蓋ケース33の背面には係合部70が設けられ、上記ケース本体部32の係合孔53に嵌合して、蓋ケース33をケース本体部32に一体固定するようになっている。
【0053】
つぎに、インクカートリッジ14を、上記プリンタ11のフレーム12に設けたカートリッジ装着部13に装着する際に、そのカートリッジ装着部13に設けられインクカートリッジ14と接続する接続部49について説明する。図6はインクカートリッジ14と接続部49の関係を示す要部斜視図、図7はインクカートリッジ14が接続部49に接続された状態を示す要部斜視図である。
【0054】
図6において、接続部49はその正面両端部に位置決めピン52(一方のみ図示)が設けられ、この位置決めピン52はインクカートリッジ14と接続部49が接続されるとき、インクカートリッジ14に設けた位置決め孔51(図2参照)に嵌挿して同インクカートリッジ14を位置決め固定する。
【0055】
上記接続部49の一対の位置決めピン52間には、上記インクカートリッジ14の6個の支持部43と1個の廃インク回収口44aと対応する6個の液体導入部材71と1個の導入連通部72が設けられている。
【0056】
6個の液体導入部材71は、インクカートリッジ14が接続部49に固定される際にインクカートリッジ14の支持部43の位置と対応する位置にそれぞれ設けられ、支持部43に支持されたインクパック34のインク導出部材42に嵌挿可能なように先端が針状に形成されている。すなわち、インク供給針71である。この6個の液体導入部材71は、インクカートリッジ14からのインクを上記インク供給チューブ19へ導出する図示しない貫通孔がそれぞれ貫通形成されている。
【0057】
上記導入連通部72は、インクカートリッジ14が接続部49に固定される際にインクカートリッジ14の廃インク回収口44aの位置と対応する位置にそれぞれ設けられ、廃インク回収口44aを介して廃インク導入部44bに嵌挿可能なように先端が針状に形成されている。この導入連通部72は、上記吸引ポンプ24にて吸引されて廃インクチューブ23から排出されるインクをインクカートリッジ14(廃インク貯留室65a)に導入する図示しない貫通孔がそれぞれ貫通形成されている。
【0058】
図6及び図7における接続部49の右側下部には、端子配設部50が前方に延出形成されている。端子配設部50は端子機構(図示しない)が設けられ、図7に示すように、インクカートリッジ14を装着するとき、ケース本体部32の基板収容凹部46の開口からスライドされて上記端子機構が回路基板37の接続端子37aに電気的に接続される。
【0059】
つぎに、収容ケース31内にインクパック34を格納する手順と、インクカートリッジ14からインクが供給される作用について説明する。
【0060】
図4(A)に示すように、ケース本体部32内にインクパック34を格納する。このとき、6つのインクパック34が半分ずつ重なるような状態で格納され、インク導出部材42の突条部26が溝部25内にはめ込まれて、インク導出部材42が支持部43において固定される。
【0061】
また、蓋ケース33をケース本体部32に合致させるときには、蓋ケース33をケース本体部32の深さ方向に接近させて、内枠部45の外側面45eを側壁板32bの内側面32dに摺動させながら嵌め合わせてゆき、上記側壁板32bの頂面32cに板状部33aの下面33cが衝合したところで蓋ケース33の取り付けが完了する。なお、この完了した状態では、蓋ケース33の上記係合部70がケース本体部32の上記係合孔53に弾性的にはまり込んで、収容ケース31としての一体性が確保される。
【0062】
インクカートリッジ14は、収容ケース31の側面部をガイドにしてカートリッジ装着部13に挿入される。最初に、接続部49の両端部近傍に設けられた位置決めピン52に、ケース本体部32の前面32aの両端部近傍に設けられた位置決め孔51が案内される。位置決めピン52と位置決め孔51は嵌合してインクカートリッジ14の位置が固定される。このとき、インクカートリッジ14の各支持部43、すなわちインクパック34のインク供給口42aに、接続部49のインク供給針71が挿入されて、インク供給口42a内の弁機構(図示しない)が開弁する。又、インクカートリッジ14の廃インク回収口44aを介して廃インク導入部44bに、接続部49の導入連通部72が挿入されて、廃インク導入部44b内の弁装置68が開弁する。
【0063】
したがって、インクカートリッジ14に収容した各インクパック34のインクをインク供給チューブ19を介して記録ヘッド17に供給可能になるとともに、廃インクチューブ23から排出されるインクをインクカートリッジ14の廃インク貯留室65aに導入することが可能になる。
【0064】
さらに、端子配設部50の端子機構(図示しない)がインクカートリッジ14の基板収容凹部46に設けた回路基板37の接続端子37aに電気的に接続される。これによって、プリンタ11は、回路基板37に実装された半導体記憶手段に記憶されたインクの種類、インク残量、シリアル番号や有効期限等のデータを取得できるとともに、データの書き替えを行えるようになる。
【0065】
ついで、インクカートリッジ14と接続部49の接続部分から漏れたインクの流動を抑制する構造を説明する。
【0066】
インクカートリッジ14を接続部49から抜き取る際には、露出したインク供給針71の表面がインクで濡れていたり、抜き取りの過渡期に僅かな量のインクが飛び散ったりしてインク漏れが生じる。このようなインクカートリッジ14の抜き取りや取り付けを、ユーザが通常の回数以上にわたって行うことがあると、上記のようにして漏れたインクの量が流動するくらいに溜まってきて、それがケース本体部32と蓋ケース33の嵌合部の隙間部分を毛細管現象で流動し、上記支持部43から離隔した箇所まで流動する。
【0067】
上述のように、上記ケース本体部32は、図2,図3および図4に示すように、各図の上下方向がケースの深さ方向とされている。上記ケース本体部32に対して蓋ケース33が嵌合した状態で合致して収容ケース31が形成されている。すなわち、図2(A)の(B)−(B)断面である図(B)および図2(A)の(C)−(C)断面である図(C)に示すように、ケース本体部32の側壁板32bに片方の衝合面である頂面32cが設けられている。また、蓋ケース33の板状部33aの周縁部にもう一方の衝合面である下面33cが設けられている。
【0068】
そして、上記側壁板32bの内側面32dが片方の摺動衝合面とされ、蓋ケース33の外周縁の近傍にそって起立した状態で形成した内枠部45の外側面45eが、他方の摺動衝合面とされている。
【0069】
ケース本体部32に対して蓋ケース33が嵌合している嵌合部は、図2に示すように、当り嵌合部27と摺動嵌合部28によって構成されている。すなわち、当り嵌合部27は、ケース本体部32側の上記頂面32cと、蓋ケース33側の上記下面33cとが面当りをする関係で形成されている。一方、摺動嵌合部28は、蓋ケース33側の内枠部45の上記外側面45eと、ケース本体部32側の側壁板32bの上記内側面32dとが摺動しながら面接触をする関係で形成されている。
【0070】
上記のように、ケース本体部32と蓋ケース33との嵌合関係は、上記の当り嵌合部27と摺動嵌合部28との複合構造によって、形成されている。
【0071】
上記当り嵌合部27および摺動嵌合部28は、外観的には隙間のない状態に見えるが、実際には、頂面32c,下面33c,内側面32d,外側面45eの各表面には僅かな凹凸があるため、各面の接触箇所には部分的に接触している箇所と隙間状態になっている箇所がある。したがって、このような隙間状態の箇所においてインクの毛細管現象が発生して、上記のようなインク流動が発生する。
【0072】
上記インク流動を抑止するために、上記当り嵌合部27および摺動嵌合部28の隙間よりも隙間が大きい空間部29を上記支持部43から離れた位置に形成し、上記各嵌合部27,28を流動してきたインクが上記空間部29に貯留されて、インク流動が空間部29において抑止される。
【0073】
上記収容ケース31の前面32aの端部、すなわち前面32aとそれに連続する横側面31aとのなす角部分(角部分の稜線部分)と、上記端部に最も近い箇所に配置された支持部43との間に、図8(B)に示した空間部29が形成されている。この箇所における空間部29は、下面33cとされている部分の板状部33aに設けた凹部29aと、内枠部45を切り欠いて形成した貫通部29bとが、空間として連続した状態で構成されている。このような凹部29aや貫通部29bによって形成された空間部29の断面状態は、図10(B)に示されている。上記凹部29aの深さ方向は、ケース本体部32の深さ方向とは逆方向とされている。また、図8(C)に示すように、上記貫通部29bを四角い窓穴状の貫通空間にすることもできる。
【0074】
上記空間部29は、図2,図8,図10(B)に示すように、収容ケース31の前面32aの左右端部近傍に配置されている。したがって、当り嵌合部27や摺動嵌合部28を伝わってきたインクは、上記左右2箇所の空間部29においてその流動が抑止され、収容ケース31の横側面31a側へ流動することがない。なお、上記空間部29を、凹部29aだけで構成することもでき、あるいは、貫通部29bだけで構成することもできる。
【0075】
一方、図2,図8,図9,図10(C)に示すように、各支持部43の左右位置に空間部30が配置されている。この空間部30が設けられる箇所は、図9に拡大して示すように、蓋ケース33側の下面33cと内枠部45の外側面45eである。下面33cに形成された凹部30aは、ケース本体部32の深さ方向とは逆方向の深さを有している。また、外側面45eに形成された凹部30bは、ケース本体部32の深さ方向に略直交する向きの深さを有している。そして、両凹部30aおよび30bは連通した空間とされている。上記空間部30の部分の断面状態は図10(C)に示されている。
【0076】
上記空間部30は、隣り合う支持部43の間に2つ配置されているが、これを1つにすることもできる。このように1つにする場合は、凹部30a,30bによって得られる空間容積を大きく設定するのが望ましい。なお、上記空間部30を、凹部30aだけで構成することもでき、あるいは、凹部30bだけで構成することもできる。また、凹部30bを図8(C)に示したような四角い窓穴状の貫通空間の形態で実施することもできる。
【0077】
上記空間部29および30の隙間寸法は、インクの粘度や表面張力等のインクの物性に応じて適宜設定される。
【0078】
上記の実施例では、凹部29a,30a,30b等が蓋ケース33側に形成されているが、これらを図13に示すように、ケース本体部32側に形成することができる。さきに説明した例と同様の部分には同じ符号を付している。
【0079】
さらに、図13(D)に示すように、頂面32cと下面33cの両方にそれぞれ凹部30cと29cを形成して、両凹部30cと29cで1つの空間部38を形成することもできる。このような2つの凹部で1つの空間部を構成することは、内枠部45の外側面45eと側壁板32bの内側面32dとの間においても、同様に実施することができる。
【0080】
上記実施例によって得られる作用効果を列記すると、つぎのとおりである。
【0081】
上記カートリッジ装着部13側のインク供給針71と、インクカートリッジ14側のインク導出部材42とが合致している箇所から流出したインクが、上記嵌合部27,28を毛細管現象で流動しても、そのインクは、嵌合部27,28の隙間よりも大きな隙間からなる上記空間部29,30において貯留される。この貯留現象においても拡大された空間容積を有する隙間部分においてインクが毛細管現象を呈して、空間部29,30に保持された状態になる。したがって、上記空間部29,30の箇所で嵌合部27,28におけるインクの流動がとどめられ、空間部29,30からさらに先に延びている嵌合部27,28へのインク流動が抑止される。このようなインクの流動抑止の現象により、インクカートリッジ14のインク汚れを最小の範囲内にとどめることができ、また、インクカートリッジ14をカートリッジ装着部13に着脱する際に、インクで手が汚れるようなことも防止できる。
【0082】
上記収容ケース31の前面32aの端部と、上記端部に最も近い箇所に存在する支持部43との間に、上記空間部29が設けられていることにより、上記嵌合部27,28におけるインクの流動が、上記収容ケース31の前面32aの範囲内に配置された空間部29で抑止される。したがって、上記前面32aの範囲を越えて、例えば収容ケース31の横側面31aの箇所まで流動することが防止できる。
【0083】
上記空間部29が、収容ケース31の前面32aの両端部近傍にそれぞれ設けられていることにより、上記支持部43が収容ケース31の前面32aに複数配置されている構造であっても、上記前面32aの両端部近傍でインクの流動が抑止され、前面32aの範囲を越えて、例えば収容ケース31の横側面31aの箇所まで流動することが防止できる。
【0084】
上記支持部43が、上記収容ケース31の前面32aに複数並ぶよう設けられ、上記各支持部43に対応するよう複数のインクパック34が収容されている。このため、収容ケース31内に収容されている複数のインクパック34のインク導出部材42が配置された支持部43で位置決めされるので、複数のインクパック34は収容ケース31内で正しく配列された状態になり、特定のインクパック34に他のインクパック34の荷重が集中するようなことがなく、各インクパック34からのインク供給を均一にすることができる。同時に、複数色のインクが漏れた場合であっても、嵌合部27,28を伝うインク流動が上記空間部29,30で抑止される。
【0085】
上記空間部30が、支持部43の両側にそれぞれ設けられていることにより、支持部43からより近い箇所に空間部30を配置して、嵌合部27,28を流動するインクの流動範囲を最小限度に食い止めることができる。
【0086】
上記嵌合部27,28の嵌合方向はケース本体部32の略深さ方向に設定され、上記嵌合方向で見て、上記空間部29,30の隙間寸法が、上記嵌合部27,28の隙間寸法よりも大きくなるよう設定されているため、上記嵌合方向に空間部29,30の隙間が確保でき、嵌合部27,28の嵌合構造に適合した空間部29,30の配置が可能となる。
【0087】
上記嵌合部27,28の嵌合方向はケース本体部32の略深さ方向に設定され、上記嵌合方向に略直交する方向で見て、上記空間部29,30の隙間寸法が、上記嵌合部27,28の隙間寸法よりも大きくなるよう設定されているため、上記嵌合方向に直交している方向に空間部29,30の隙間が確保できるので、嵌合部27,28の嵌合構造に適合した空間部29,30の配置が可能となる。
【0088】
上記空間部29,30は、嵌合部27,28のケース本体部32および/または蓋ケース33の一部に凹部29a,30a,30bを設けて形成されているので、ケース本体部32あるいは蓋ケース33に対する凹部成形の自由度が拡大され、それにより、嵌合部27,28を流動するインクの挙動に応じた最適の空間部形成ができる。
【0089】
上記空間部29,30が、嵌合部27,28の一部を形成する内枠部45に設けた貫通部29bによって形成されているため、上記貫通部29bによって形成された空間にインクの保持機能を付与することができ、上記空間部29,30の形成が、インクの流動挙動に適合させて高い自由度のもとで行える。
【0090】
上記支持部43は、ケース本体部32側に形成された下側支持部43aと、蓋ケース33側に形成された上側支持部43bを合致させることにより構成され、支持部43の前面部分に形成され上記液体導入部材71を受け入れる受入開口43cが設けられ、上記嵌合部27,28は受入開口43cを横切るよう配置されている。このため、ケース本体部32に蓋ケース33を合致させることにより、支持部43と上記受入開口43cが形成されるので、構造簡素化にとって有効である。また、上記嵌合部27,28、すなわちケース本体部32と蓋ケース33との割線が受入開口43cを横切っているので、インクが飛沫等で飛散する箇所の近くに嵌合部27,28が存在していることとなり、インクを確実に嵌合部27,28で流動させることができ、引いては、嵌合部27,28に連なる空間部29,30で流動を食い止めることができる。
【0091】
上記インクパック34が、可撓性のあるフィルム材で構成されたパックであるから、インクの重量で変形しやすい袋状のパックを確実にインクカートリッジ14内に収容することができる。
【0092】
上記各実施例は、インクジェット式プリンタを対象にしたものであるが、本発明によってえられたインクカートリッジを装着した液体噴射装置は、インクジェット式プリンタ用のインクだけを対象にするのではなく、グルー,マニキュア,導電性液体(液体金属)等を噴射することができる。さらに、上記実施例では、液体の一つであるインクを用いたインクジェット式プリンタについて説明したが、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド,液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド,有機ELディスプレイ,FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド,バイオチップ製造に用いられる生体有機噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッド全般に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】インクジェット式プリンタの概念図および斜視図である。
【図2】インクカートリッジを上方から見た斜視図および部分断面図である。
【図3】インクカートリッジを下方から見た斜視図である。
【図4】インクカートリッジの分解斜視図および部分的な断面図である。
【図5】ケース本体部の内側と外側を示す斜視図である。
【図6】インクカートリッジと接続部の接続前の関係を示す要部斜視図である。
【図7】インクカートリッジと接続部が接続した状態を示す要部斜視図である。
【図8】インクカートリッジの蓋ケースを下方から見た斜視図および部分拡大図である。
【図9】蓋ケースの空間部の部分を拡大した斜視図である。
【図10】収容ケースの正面図と部分的な断面図である。
【図11】インクカートリッジの蓋ケースを下方から見た分解斜視図である。
【図12】インクカートリッジの蓋ケースの平面図である。
【図13】他の空間部の形成状態を示す斜視図と断面図である。
【符号の説明】
【0094】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、12…フレーム、13…カートリッジ装着部、14…インクカートリッジ、15…ガイド部材、16…キャリッジ、17…記録ヘッド、18…サブタンク、19…インク供給チューブ、21…ヘッドメンテナンス機構、22…キャップ部材、23…廃インクチューブ、24…吸引ポンプ、25…溝部、26…突条部、27…当り嵌合部、28…摺動嵌合部、29…空間部、29a…凹部、29b…貫通部、29c…凹部、30…空間部、30a…凹部、30b…凹部、30c…凹部、31…収容ケース、31a…横側面、32…ケース本体部、32a…前面、32b…側壁板、32c…頂面、32d…内側面、32h…底面、32i…背面、33…蓋ケース、33a…板状部、33c…下面、34…インクパック、35…廃インク吸収材、35a…貫通孔、36…フィルム、37…回路基板、37a…接続端子、38…空間部、41…袋部、42…インク導出部材、42a…インク供給口、L1…中心ライン、43…支持部、43a…下側支持部、43b…上側支持部、43c…受入開口、43d…半円形の切欠き部、43e…半円形の切欠き部、44a…廃インク回収口、44b…廃インク導入部、45…内枠部、45a…第1の側面、45b…第2の側面、45c…第3の側面、45d…第4の側面、45e…外側面、46…基板収容凹部、46a…内面、47…溝部、48…突起、49…接続部、50…端子配設部、51…位置決め孔、52…位置決めピン、53…係合孔、61…第1のコーナー部、62…貫通孔、63…壁部、63a…一端、63b…他端、64…溝、64a…流路、65…廃インク貯留部、65a…廃インク貯留室、66…第2のコーナー部、67…空間、68…弁装置、68a…弁座、68b…弁体、68c…バネ、69…通気孔、70…係合部、71…液体導入部材、インク供給針、72…導入連通部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体部と蓋ケースを嵌合させてなる収容ケース内に、貯留された液体を導出する液体導出部材が設けられた液体収容体が格納され、上記収容ケースの前面に、液体導出部材を固定する支持部が設けられ、上記ケース本体部と蓋ケースとの嵌合部が上記支持部を横切る状態で配置され、上記嵌合部における支持部近傍に、この嵌合部に形成される隙間よりも隙間が大きい空間部を形成したことを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項2】
上記収容ケースの前面の端部と、上記端部に最も近い箇所に存在する支持部との間に、上記空間部が設けられている請求項1記載の液体カートリッジ。
【請求項3】
上記空間部は、収容ケースの前面の両端部近傍にそれぞれ設けられている請求項2記載の液体カートリッジ。
【請求項4】
上記支持部が、上記収容ケースの前面に複数並ぶよう設けられ、上記各支持部に対応するよう複数の液体パックが収容されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。
【請求項5】
上記空間部が、支持部の両側にそれぞれ設けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。
【請求項6】
上記嵌合部の嵌合方向はケース本体部の略深さ方向に設定され、上記嵌合方向で見て、上記空間部の隙間寸法は、上記嵌合部の隙間寸法よりも大きくなるよう設定されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。
【請求項7】
上記嵌合部の嵌合方向はケース本体部の略深さ方向に設定され、上記嵌合方向に略直交する方向で見て、上記空間部の隙間寸法は、上記嵌合部の隙間寸法よりも大きくなるよう設定されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。
【請求項8】
上記空間部は、嵌合部のケース本体部および/または蓋ケースの一部に凹部を設けて形成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。
【請求項9】
上記空間部は、嵌合部の一部を形成する壁部材に設けた貫通部によって形成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。
【請求項10】
上記支持部は、ケース本体部側に形成された下側支持部と、蓋ケース側に形成された上側支持部を合致させることにより構成され、支持部の前面部分に形成され上記液体導入部材を受け入れる受入開口が設けられ、上記嵌合部は受入開口を横切るよう配置されている請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。
【請求項11】
上記液体収容体は、可撓性のあるフィルム材で構成された液体パックである請求項1〜10のいずれか一項に記載の液体カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−189001(P2008−189001A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126858(P2008−126858)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【分割の表示】特願2004−92012(P2004−92012)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】