説明

液体バッグ及び液体供給サーバー

【課題】サーバーによる注液を完了したときのバッグ内の残液量を大幅に減少させることのできる液体バッグ及びその液体バッグを用いた液体供給サーバー提供することを目的としている。
【解決手段】水バッグ30は、内部に水を充填することにより膨らみ、液体充填状態で内部が減圧されていて貯水量の減少に伴い収縮する扁平状の袋体からなる。斜め封止ライン34は横方向の封止ライン31に対し、封止角度θが約45°になっている。また、袋体を平面視したときのバッグ面積に対する前記両角部の封着面積の比を0.13となる大きさに封止ライン34を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水等を収容してサーバー設置用貯液タンクとして使用される液体バッグ及びその液体バッグを設置した液体供給サーバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の液体供給サーバーには、一般に多く使用されるものとして、例えば、特許文献1に開示されている飲用水サーバーがある。飲用水サーバーには供給水を貯留する水バッグが使用されている。
【0003】
水バッグには、貯水状態で球体や直方体形状になるものを使用することができる。本出願人が既に特許文献2に開示しているように、直方体形状の水バッグが球体と比べて大きい容積を得られるのでサーバー用バッグとして好ましい。従来の直方体形状の水バッグでは、円筒状のバッグの開口部を封止したり、矩形シートを重ねて四隅を封したりし扁平状袋体を使用している。
【0004】
図8は矩形シートを重ねて四隅を封止した従来の袋体50の平面図である。袋体50は2枚のポリエチレン製シートを重ねて、その四隅に沿って縦横の封止ライン52、53により熱圧着した密封容器である。袋体50の一端側にはコック付き開閉バルブ51が取着されている。袋体50は飲用水を充填することにより略直方体形状に膨れる。
【0005】
図9の(9A)は飲用水54を充填した袋体50をサーバー58内の設置板56上に設置した設置状態を示す。
袋体50は水バッグの水充填状態で内部55が減圧されており、大気圧の作用を受けて開閉バルブ51から出水され、サーバー58の容器受部(図示せず)にセットした紙コップ等の容器に注水される。かかる注水の繰り返しによって貯水量が減少していくに伴い、袋体50が徐々に収縮する。袋体50はサーバー58の内部に配置された設置板56に載置される。設置板56はサーバー前方に向けて約20°傾いた傾斜面を備える。設置板56の前縁には、水バッグの滑落を防止するために滑落規制壁57が設けられており、袋体50の開閉バルブ51の周辺部分は滑落規制壁57に当接した状態でサーバーに設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−58695号公報
【特許文献2】特開2003−206000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開閉バルブ51からの出水に伴って袋体50が徐々に収縮変形し、貯留水の全部を紙コップ等の容器に注水できるのが、飲用水の効率的な利用という観点から最も好ましい。しかしながら、上記従来の水バッグにおいては、図9の(9B)に示すように、貯水残量が減少し僅かになると、滑落規制壁57に当接している部分で完全に扁平変形せずに皺状になったりや折り重なって、注水完了時に残水59が生ずる問題があった。特に、設置板56のバッグ載置面を水平面にした場合には残水量が増える傾向にある。
【0008】
かかる残水は雑菌等の繁殖温床になることもあり、袋体50を回収して再利用するときには衛生上の不具合を招来する。また、回収した袋体50を焼却処分してしまうにしても残水のために燃焼しにくいといった問題を生ずる。球体バッグを使用すると、大気圧が均一に加圧作用して、より完全な扁平変形を行わせることができるが、上述したように、直径と幅を同じくした直方体形状と比較して貯水容積が減少してしまう欠点があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、サーバーによる注液を完了したときのバッグ内の残液量を大幅に減少させることのできる液体バッグ及びその液体バッグを用いた液体供給サーバー提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、本発明の第1の形態は、バッグ内に液体を充填することにより膨らみ、液体充填状態で内部が減圧されていて貯液量の減少に伴い収縮する扁平状の袋体からなり、前記袋体の一端側に開閉バルブを取着し、液体供給サーバーの内部に配置された載置部に載置され、且つ前記載置部の前縁に設けた滑落規制壁に前記開閉バルブの周辺部を当接させて前記液体供給サーバーに設置される液体バッグであって、少なくとも前記一端側の両角部を封着して、前記開閉バルブの周辺部を略凸形状にした液体バッグである。
【0011】
本発明の第2の形態は、第1の形態において、前記一端側の袋縁とそれに隣接する一側辺を結ぶ直線状又は湾曲状の封止ラインに沿って封着した液体バッグである。
【0012】
本発明の第3の形態は、第2の形態において、前記一端側の袋縁とそれに隣接する一側辺を結ぶ線の前記袋縁に対する封止角度が少なくとも35°を超える液体バッグである。
【0013】
本発明の第4の形態は、第1、第2又は第3の形態において、前記袋体を平面視したときのバッグ面積に対する前記両角部の封着面積の比を0.1以上にした液体バッグである。
【0014】
本発明の第5の形態は、第1〜第4の形態のいずれかに係る液体バッグが貯液タンクとして設置される前記載置部と、前記滑落防止壁を内設したサーバー本体を有し、前記開閉バルブを通じて前記液体バッグの貯留液体を排出、供給する液体供給サーバーである。
【0015】
本発明の第6の形態は、第5の形態において、前記載置部は、前記開閉バルブが遊挿可能な空隙を介して配置された一対の傾斜面からなり、前記滑落防止壁は各傾斜面の前縁に突設され、前記空隙から離間するにつれて拡幅する斜め切り欠き形状を有する液体供給サーバーである。
【0016】
本発明の第7の形態は、第6の形態において、前記斜め切り欠き形状の水平軸に対する切り欠き角度は前記封止角度より小さい液体供給サーバーである。
【0017】
本発明の第8の形態は、第5、第6又は第7の形態において、前記液体バッグの貯液体を加熱する加熱手段及び/又は貯液体を冷却する冷却手段を有する液体供給サーバーである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記従来の扁平状袋体の残液対策につき鋭意検討した結果、袋体のバルブ設置側端部の両角部分を封止してその端部付近をより球形ないし円形に近づけることにより、円滑な変形収縮が可能となり残液量を低減できる点に着目してなされたものである。
本発明の第1の形態によれば、少なくとも前記開閉バルブを取着した一端側の両角部を封着して、前記開閉バルブの周辺部を略凸形状にしたので、サーバーによる注液に伴って貯液残量が減少し僅かになっても、大気圧が前記開閉バルブの周辺部に均一に作用して皺状になったりや折り重なったりせずに、より完全に扁平変形させて注液完了時の残水量を大幅に減少させることができる。
本発明に係る前記載置部のバッグ載置面は平坦でも傾斜していてもよい。
【0019】
例えば水バッグの場合には、雑菌等の繁殖温床の元となる残水量の低減化によって、袋体を回収して再利用することができ、水バッグの販売やレンタル提供等において価格低減を実現することができる。また、回収した袋体を焼却処分する場合には残液が僅かになるため焼却作業も円滑に行うことできる。
【0020】
本発明における貯留液体としては、飲用水の他に、ジュース、コーヒー等の嗜好飲料、スープ類、酒類、食塩水や消毒薬等の医薬ないし薬用液体を使用することができる。バッグ素材にはポリエチレン等の柔軟性樹脂材を使用することができる。
【0021】
本発明の第2の形態によれば、前記一端側の袋縁とそれに隣接する一側辺を結ぶ湾曲状の封止ラインに沿って封着することにより、前記一端側の端部付近において円滑な変形収縮が可能となる球形化(貯液状態)ないし平面視した時の円形化を実現でき、サーバーによる注液を完了したときのバッグ内の残液量を大幅に減少させることができる液体バッグを提供することができる。また、前記一端側の袋縁とそれに隣接する一側辺を結ぶ直線状の封止ラインに沿って封着することにより、前記一端側の端部付近において円滑な変形収縮が可能となる略球形化(貯液状態)ないし平面視した時の略円形化を実現でき、サーバーによる注液を完了したときのバッグ内の残液量を大幅に減少させることができる液体バッグを提供することができる。
【0022】
本発明者は、水バッグにおける一端側の袋縁とそれに隣接する一側辺を結ぶ線の前記袋縁に対する封止角度と残水量の関係を検証した検証実験を行った。その実験結果によれば、かかる封止角度が35°を超えると残水量が激減することが判明した。即ち、本発明の第3の形態によれば、前記一端側の袋縁とそれに隣接する一側辺を結ぶ線の前記袋縁に対する封止角度が少なくとも35°を超えるので、サーバーによる注液を完了したときのバッグ内の残液量を大幅に減少させることができる液体バッグを実現することができる。
【0023】
本発明者は、水バッグにおけるの袋体を平面視したときのバッグ面積と両角部の封着面積を比較する比較実験を行った。その実験結果によれば、かかるバッグ面積に対する前記両角部の封着面積の比が0.1以上になると残水量が激減することが判明した。即ち、本発明の第4の形態によれば、前記袋体を平面視したときのバッグ面積に対する前記両角部の封着面積の比を0.1以上にしたので、サーバーによる注液を完了したときのバッグ内の残液量を大幅に減少させることができる液体バッグを実現することができる。
【0024】
本発明の第5の形態によれば、第1〜第4の形態のいずれかに係る液体バッグが前記載置部に貯液タンクとして設置されるので、紙コップ等の容器への注液に伴って貯液残量が減少し僅かになっても、大気圧が前記開閉バルブの周辺部に均一に作用して皺状になったりや折り重なったりせずに、前記液体バッグがより完全に扁平変形して、注液完了時の残水量を大幅に減少させることができる液体供給サーバーを提供することができる。
【0025】
例えば飲料液バッグを貯液タンクに利用する場合には、雑菌等の繁殖温床の元となる残液量の低減化によって、袋体を回収して再利用することができるため、飲料液バッグの販売やレンタル提供等による飲料供給サービス形態における低価格化を実現することができる。
【0026】
本発明の第6の形態によれば、前記載置部は、前記開閉バルブが遊挿可能な空隙を介して配置された一対の傾斜面からなり、前記滑落防止壁は各傾斜面の前縁に突設され、前記空隙から離間するにつれて拡幅する斜め切り欠き形状を有するので、前記液体バッグが各傾斜面に沿って載置されることにより安定して設置され、しかも前記滑落防止壁の斜め切り欠き形状により、前記開閉バルブの周辺部が当接する当接領域を削減して球形化ないし円形化しやすくして、より円滑な変形収縮を可能として残液量の低減を促進することができる。
【0027】
上記検証実験によれば、上述のように前記封止角度の大きさは残水量に影響すると共に、殊に、前記斜め切り欠き形状の水平軸に対する切り欠き角度を前記封止角度より小さくすることも残水量に影響することが判明した。そこで、本発明の第7の形態によれば、前記切り欠き角度は前記封止角度より小さいので、前記開閉バルブの周辺部が当接する当接領域を余分に設けることなく、球形化ないし円形化しやすくして、より円滑な変形収縮を可能として残液量の低減を促進して、注液を完了したときのバッグ内の残液量を大幅に減少させることができる。
【0028】
本発明の第8の形態によれば、前記加熱手段により温水等の加熱液体を紙コップ等の容器に注液できる液体供給サーバーにおいて、前記液体バッグの残液量の大幅な低減を実現することができる。また、前記冷却手段により冷水等の冷却液体を容器に注液できる液体供給サーバーにおいて、前記液体バッグの残液量の大幅な低減を実現することができる。更に、単一の液体バッグの収容液を前記加熱手段又は前記冷却手段により加熱・冷却して、加熱液体及び冷却液体を選択して注液可能にした液体供給サーバーにおいて、前記液体バッグの残液量の大幅な低減を実現することができる。あるいは、前記加熱手段により加熱される液体を収容した液体バッグと、前記冷却手段により冷却される液体を収容した液体バッグを並置又は多段状に設置し、加熱液体及び冷却液体を選択して注液可能にした液体供給サーバーにおいて、各液体バッグの残液量の大幅な低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る冷水サーバーの概略外観斜視図である。
【図2】本発明に係る水バッグ30の水未収用状態における袋体平面図である。
【図3】図3は水バッグ30の水充填状態における外観斜視図である。
【図4】円弧状封止ラインにより封着した袋体の平面図である。
【図5】封止ラインにより切り取るカット面積や封止ラインの封止角度θを種々変化させた実施例を示すデータ表である。
【図6】図5の実施例による実験結果を示すグラフである。
【図7】水バッグ30のサーバーへの設置状態及び注水完了時の状態と、滑落防止壁9、10を示す図である。
【図8】従来の水バッグの平面図である。
【図9】従来の水バッグのサーバーへの設置状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る冷水サーバーの概略外観斜視図である。図2は本発明に係る水バッグ30の水未収用状態における袋体平面図である。図3は水バッグ30の水充填状態における外観斜視図である。
【0031】
本実施形態に係る冷水サーバーは、縦型キャビネット形状のサーバー本体1からなる。サーバー本体1は全体として直方体形状となっており、内部に水バッグ30を収容するバッグ収容空間2を有する。サーバー本体1の前面部3には、開放部7が形成されている。バッグ収容空間2には、一対の傾斜板4、5からなるバッグ載置部が設けられている。傾斜板4、5は夫々、開放部7に向けて低くなるように約20°傾斜している。傾斜板4、5は水バッグ30の開閉バルブ33が遊挿可能な空隙6を開けて離間している。傾斜板4、5の各前縁部11、12には、前面部3と一体的に水バッグ30の滑落を防ぐための滑落防止壁9、10が突設されている。滑落防止壁9、10の間には、開閉バルブ33突出用のU字状の切欠き8が形成されている。滑落防止壁9、10は切欠き8を介してサーバー本体1の両サイドに向け拡幅する斜め切り欠き形状を有し、正面視略台形形状を有する。
【0032】
傾斜板4、5は、略全面に亘って銅又はその他の熱伝導率の良い冷却板からなり、板面上に水バッグ30が載置される。傾斜板4、5の下側には、板面の略全面に亘って蛇行状に配設した冷媒通路15、16が取着されている。サーバー本体1の底部収納部には冷媒冷却用のコンプレッサー17が配置されている。冷媒通路15、16は配管等を介してコンプレッサー17の出口18と回収口19に接続され冷媒循環経路を構成している。コンプレッサー17で冷却された冷媒を冷媒通路15、16に供給して、傾斜板4、5の冷却板が冷却され、傾斜板4、5に載置した水バッグ30の収容水を冷却し、冷水を供給可能にしている。
【0033】
開放部7のU字状切欠き8の下方には、注水用のコップが載置されるコップ台13が突出形成され、切欠き8より突き出た開閉バルブ33より出水された水をコップに注水することができる。コップ台13には水受けトレイ14が設けられている。水バッグ30をバッグ収容空間2内に収納し、開閉バルブ33の周辺部を滑落規制壁9、10に当接させて設置された後、L字形の蓋体20を被せ、切欠き8から開閉バルブ33を前方に突出させた状態として冷水サーバーの組み立てが完了する。蓋体20にも被着したときに切欠き8に対応する位置に同形状の切欠き21が形成されている。
【0034】
水バッグ30は、図3に示すように、内部に水を充填することにより膨らみ、液体充填状態で内部(残エアー部分60)が減圧されていて貯水量の減少に伴い収縮する、図2に示す扁平状の袋体からなる。この袋体は、2枚のポリエチレン製矩形シートを重ねて、その四隅に沿って縦横の封止ライン31、32により熱圧着し、更に一端側の両角部は斜め封止ライン34により封着した密封容器である。袋体の一端側にはコック付き開閉バルブ33が取着されている。水バッグ30は、図3に示すように、飲用水を充填することにより略直方体形状に膨れる。開閉バルブ33のノズルはバッグ内側に向けて取着されているが、外側に向けて取着して使用してもよい。
【0035】
図2の網目部分は封止ライン34の封着によって切り取られた三角形状の切り取り部分35を示す。斜め封止ライン34は横方向の封止ライン31に対し、封止角度θが約45°になっている。また、図2のように袋体を平面視したときのバッグ面積に対する前記両角部の合計封着面積の比を0.13となる大きさに封止ライン34を設けている。封止ライン34の封着作用によって、水バッグ30は、図2の平面視状態で開閉バルブ33の周辺部が略凸形状になっている。従って、袋体の一端側の袋縁(封止ライン31)とそれに隣接する一側辺(封止ライン32)を結ぶ直線状の封止ラインに沿って封着することにより、前記一端側の端部付近において円滑な変形収縮が可能となる略球形化(貯液状態)ないし平面視した時の略円形化を実現できるので、サーバーによる注水を完了したときのバッグ内の残水量を大幅に減少させることができる。なお、封止ライン34の封着により略凸形状の部分における水漏れは生じないので、切り取り部分35を切断除去してもよいし、残存させたまま使用することもできる。
【0036】
なお、封止ライン34は直線状に限らず円弧状に形成するようにしてもよい。図4は円弧状封止ライン36により封着した袋体を示す。一端側の袋縁(封止ライン31)とそれに隣接する一側辺(封止ライン32)を結ぶ線37に対して外側に凹にした湾曲状の封止ライン36に沿って封着することにより、直線状の封止ライン34と同様に、円滑な変形収縮が可能となる球形化(貯液状態)ないし平面視した時の円形化を実現でき、サーバーによる注液を完了したときのバッグ内の残液量を大幅に減少させることができる。円弧半径を大きくすると、切り取り面積が少なくなるので、後述の封着面積の有効範囲との関係を満足するように調整するのが好ましい。
【0037】
水バッグ30における上記封着面積及び封止角度は各種実験に基づいて設定されている。
図5は封止ラインによる切り取るカット面積や封止ラインの封止角度θを種々変化させた実施例(試作1〜7)をまとめた表である。図6は図5の実施例による実験結果を示すグラフである。試作1、2は400×600(mm)サイズの矩形袋体であり、試作3〜7は430×535(mm)サイズの矩形袋体である。試作4は本実施形態と同じものである。試作1、2、3、4、6、7には、図2に示すように、縦横方向の各辺からの距離X、Yのところで直線状封止ラインを設け、夫々のX、Yの値は、(170、130)、(170、170)、(175、127)、(175、175)、(175、100)、(170、250)であり、直線状封止ラインのカット角度である封止角度θは、夫々、37.4°、45°、36°、45°、29.7°、55°である。カット面積は両角部でカットした部分の合計面積である。試料5は封止ラインを設けていない従来品である。
【0038】
封止角度θと残水量の関係を検証した検証実験によれば、図6の(6A)に示すように、封止角度θが35°を超えると残水量が激減することが判明した。従って、本実施形態に係る水バッグ30のように、封止角度θが少なくとも35°を超えることにより、サーバーによる注水を完了したときのバッグ内の残水量を大幅に減少させることが可能になる。封止角度が55°の試作7でも、従来品と比べて残水量が低減しており、図6の(6A)のグラフから、封止角度θの上限は約80°付近まで実用可能となる。
【0039】
本実施形態のバッグ載置部は、開閉バルブ33が遊挿可能な空隙6を介して配置された一対の傾斜板4,5からなる。また、図7の(7C)に示すように、滑落防止壁9,10は各傾斜面の前縁に突設され、空隙6から離間するにつれて拡幅する斜め切り欠き形状を有する。従って、水バッグ30が各傾斜面に沿って載置されることにより安定して設置され、しかも滑落防止壁9、10の斜め切り欠き形状により、開閉バルブ33の周辺部が当接する当接領域を削減して球形化ないし円形化しやすくして、より円滑な変形収縮を可能として残水量の低減を促進することができる。
【0040】
上記検証実験によれば、上述のように封止角度の大きさは残水量に影響するという実験結果が得られたが、更に、滑落防止壁9、10の斜め切り欠き形状の水平軸に対する切り欠き角度αが封止角度θより小さくすることも残水量削減に効果かあることが判明した。本実施形態においては、切り欠き角度αを封止角度θより小さい約20°の角度にしたので、滑落防止壁9、10に、開閉バルブ33の周辺部が当接する当接領域を余分に設けることなく、球形化ないし円形化しやすくして、より円滑な変形収縮を可能として残水量の低減を促進して、注水を完了したときのバッグ内の残水量を大幅に減少させることができる。
【0041】
水バッグにおけるの袋体を平面視したときのバッグ面積Aと両角部の合計封着面積(カット面積)Bを比較する比較実験によれば、図6の(6B)に示すように、バッグ面積Aに対するカット面積Bの比が0.1以上になると残水量が激減することが判明した。従って、本実施形態に係る水バッグ30のように、面積比B/Aを0.1以上にすることにより、サーバーによる注液を完了したときのバッグ内の残液量を大幅に減少させることのできる液体バッグを実現することができる。面積比B/Aが0.19の試作7でも、従来品と比べて残水量が低減しており、図6の(6B)のグラフから、面積比の上限が約0.3付近まで実用可能となる。
【0042】
図7の(7A)は水バッグ30のサーバーへの設置状態を示し、同図(7B)は水バッグ30の注水完了時の状態を示す。水バッグ30は飲用水39の充填状態で内部38が減圧されており、大気圧の作用を受けて開閉バルブ33から出水され、水受けトレイ14に載置された、紙コップ等の容器に注水される。かかる注水の繰り返しによって貯水残量が減少し僅かになっても、大気圧が開閉バルブ33の周辺部に均一に作用して皺状になったり折り重なったりせずに、(7B)に示すように、水バッグ30がより完全に扁平変形して、注液完了時の残水量を大幅に減少させることができる。(7B)の40は残水量が多い従来品の収縮状態を示す。特に、バッグ載置部は、開閉バルブ33が遊挿可能な空隙6を介して配置された一対の傾斜面からなり、滑落防止壁9、10は各傾斜面の前縁に突設され、空6から離間するにつれて拡幅する斜め切り欠き形状を有するので、水バッグ30が各傾斜面に沿って載置されることにより安定して設置され、しかも滑落防止壁9,10の斜め切り欠き形状により、開閉バルブ33の周辺部が当接する当接領域を削減して球形化ないし円形化しやすくして、より円滑な変形収縮を可能として残液量の低減を促進することができる。
上記実施形態では、水バッグ30を1個収容する冷水サーバーであるが、複数個の水バッグをサーバー本体1内に並置又は多段状に設置するようにしてもよいし、例えば、バッグ載置部などに加熱部を設けて、温水を注水可能にしてもよく、更に、冷却通路及び加熱通路を各水バッグ載置部に設けたりして冷水、温水を注水可能することができる。
【0043】
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明によれば、より完全に扁平変形させて注液完了時の残水量を大幅に減少させることができる液体バッグ及びそれを貯液タンクとして使用して液体供給コストの低減を実現できる液体供給サーバーを提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 サーバー本体
2 バッグ収容空間
3 前面部
4 傾斜板
5 傾斜板
6 空隙
7 開放部
8 切欠き
9 滑落防止壁
10 滑落防止壁
11 前縁部
12 前縁部
13 コップ台
14 水受けトレイ
15 冷媒通路
16 冷媒通路
17 コンプレッサー
18 出口
19 回収口
20 蓋体
21 切欠き
30 水バッグ
31 封止ライン
32 封止ライン
33 開閉バルブ
34 封止ライン
35 切り取り部分
36 封止ライン
37 線
38 内部
39 飲用水
40 従来品の収縮状態
50 袋体
51 開閉バルブ
52 封止ライン
53 封止ライン
54 飲用水
55 内部
56 設置板
57 滑落規制壁
58 サーバー
59 残水
60 残エアー部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッグ内に液体を充填することにより膨らみ、液体充填状態で内部が減圧されていて貯液量の減少に伴い収縮する扁平状の袋体からなり、前記袋体の一端側に開閉バルブを取着し、液体供給サーバーの内部に配置された載置部に載置され、且つ前記載置部の前縁に設けた滑落規制壁に前記開閉バルブの周辺部を当接させて前記液体供給サーバーに設置される液体バッグであって、少なくとも前記一端側の両角部を封着して、前記開閉バルブの周辺部を略凸形状にしたことを特徴とする液体バッグ。
【請求項2】
前記一端側の袋縁とそれに隣接する一側辺を結ぶ直線状又は湾曲状の封止ラインに沿って封着した請求項1に記載の液体バッグ。
【請求項3】
前記一端側の袋縁とそれに隣接する一側辺を結ぶ線の前記袋縁に対する封止角度が少なくとも35°を超える請求項2に記載の液体バッグ。
【請求項4】
前記袋体を平面視したときのバッグ面積に対する前記両角部の封着面積の比を0.1以上にした請求項1、2又は3に記載の液体バッグ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液体バッグが貯液タンクとして設置される前記載置部と、前記滑落防止壁を内設したサーバー本体を有し、前記開閉バルブを通じて前記液体バッグの貯留液体を排出、供給することを特徴とする液体供給サーバー。
【請求項6】
前記載置部は、前記開閉バルブが遊挿可能な空隙を介して配置された一対の傾斜面からなり、前記滑落防止壁は各傾斜面の前縁に突設され、前記空隙から離間するにつれて拡幅する斜め切り欠き形状を有する請求項5に記載の液体供給サーバー。
【請求項7】
前記斜め切り欠き形状の水平軸に対する切り欠き角度は前記封止角度より小さい請求項6に記載の液体供給サーバー。
【請求項8】
前記液体バッグの貯液体を加熱する加熱手段及び/又は貯液体を冷却する冷却手段を有する請求項5、6又は7に記載の液体供給サーバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−131908(P2011−131908A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291860(P2009−291860)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】