説明

液体ポンプ

【課題】簡素な構造で、液体吐出時は容器内部と外部を確実に連通させて容器内部に空気を供給し、液体の吐出により液体量が減少しても、容器内部が減圧されず、常に安定して一定量の液体を吐出でき、動作の安定性、確実性に優れ、使用後は液体吐出管の先端部を先端収納部に挿入するだけで、容器内部と外部の連通を防ぎ、転倒や不意の動作などによっても液体が外部に漏れず、衛生的で使用性、安全性、保管の確実性、信頼性に優れる液体ポンプの提供。
【解決手段】本体に形設され液体吐出管の先端部が挿抜自在に保持される先端収納部と、本体に形設され本体を液体容器の口部に取り付けた際に一端が液体容器の内部に連通する流体導入孔と、一端が先端収納部の内周壁側に開口し他端が流体導入孔に連通した流体流入口と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体容器の口部に直接接続され、本体に内蔵された乾電池等により駆動されて、該液体容器から移送先容器へ液体を移送する液体ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、灯油等の液体を液体容器から移送先容器へ移送する液体ポンプは、液体容器内に挿入される液体汲み上げ管の先端等に設けられたモータで駆動される羽根車の回転によって液体容器内部の液体を吸入し、液体汲み上げ管に本体を介して連通された液体吐出管から移送先容器へと液体を吐出するように構成されている。
近年、このような液体ポンプとして、本体が液体容器の口部に固定される、いわゆる直付け式の液体ポンプが開発されている。
しかし、液体ポンプの本体を液体容器の口部に直接接続し、液体容器を密閉した状態で液体の移送を行う構造では、液体容器内部の液体の量が減少するに従って、液体容器内が減圧されて液体容器が収縮し、次第に液体の吐出量が減少して、最後には吐出不能になるおそれがあるため、液体吐出時に液体容器内部に空気を供給する必要がある。
例えば、本願出願人が出願した(特許文献1)には、液体汲み上げ部と液体吐出部との連設部を開閉して液体の移送と停止を制御する液体流通弁と、液体容器内外が連通する空気流通部を備えた液体ポンプが開示されている。
【0003】
また、この種の液体ポンプは、使用後(液体の移送を行わない場合)に、液体吐出管の先端部を剥き出しのままにしておくと、その先端部に付着した灯油等の液体により該先端部に埃やゴミ等が付着し易く、移送先容器の口部へ液体吐出管を挿入した際に、それらの埃やゴミ等が移送先容器の液体中に混入する可能性がある。
さらに、液体吐出管を垂れ下げたままにしておくと、液体の移送後に液体吐出管内に残留した液体が、その先端部から吐出され、床を汚す等の不具合が生じることもある。
そこで、この種の液体ポンプについては、液体吐出管の先端部を所定の位置に掛止又は収納する構造を有するものが多数開発されている。
例えば、本願出願人が出願した(特許文献2)には、本体の側部から内部へ水平方向に形成され吐出管先端部が挿入され収納される先端収納部を備えた液体ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3094432号公報
【特許文献2】実用新案登録第3097757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(1)(特許文献1)の液体ポンプは、液体容器の内外を連通させる空気流通部を開閉することができるが、その構造が複雑であり、部品点数も多く、量産性に欠けるため、簡素な構造で簡便かつ確実に空気の流通を制御できる機能性、操作性に優れた液体ポンプの開発が望まれていた。
(2)(特許文献2)の液体ポンプは、本体内部に吐出管先端部を収納する先端収納部を備えているので、別途容器を設ける必要がなく、外観に優れるだけでなく、部品点数を低減することができ、量産性に優れると共に、先端収納部が本体側部から内部へ水平方向に形成されているため、先端収納部への埃やゴミ等の侵入を防ぐことができ、吐出管先端部を汚すことがなく、また、通常の保管状態では、液体吐出管内の残液が先端収納部に漏れ難く、安全性、使用性に優れるものであった。
(3)しかし、吐出管先端部の外周壁や内周壁に付着した液体や吐出管先端部から漏れ出る残液を先端収納部の内部に装着される残液受け体に溜める構造であるため、残液受け体に溜まる液体を定期的に廃棄しなければならず、また、残液受け体に液体が溜まった状態で液体容器を倒した時には、溜まった液体が先端収納部から本体の外部に漏れ出して床等を汚してしまうおそれもあり、転倒時に液体が外部に漏れ出ることがなく、衛生的で保管の確実性、信頼性に優れた液体ポンプの開発が望まれていた。
【0006】
本発明は上記要望に応えるものであり、簡素な構造で、液体吐出時は容器内部と外部とを確実に連通させて容器内部に空気を供給することができ、液体の吐出によって液体容器内部の液体の量が減少しても、液体容器内が減圧されることがなく、液体容器の収縮が発生せず、継続的に安定して一定量の液体を確実に吐出することができ、液体吐出動作の安定性、確実性に優れると共に、使用後に液体吐出管の先端部を先端収納部に挿入して収納するだけで、容器内部と外部が連通することを防止でき、転倒や不意の動作などによっても液体が外部に漏れ出ることがなく、衛生的で使用性、安全性、保管の確実性、信頼性に優れた液体ポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の液体ポンプは、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の液体ポンプは、液体容器の口部に直接接続される本体と、前記本体の下部に延設され前記口部から前記液体容器の内部に挿入される液体汲み上げ管と、前記本体に延設され前記本体を介して前記液体汲み上げ管と連通する液体吐出管と、を備えた液体ポンプであって、前記本体に形設され前記液体吐出管の先端部が挿抜自在に保持される先端収納部と、前記本体に形設され前記本体を前記液体容器の前記口部に取り付けた際に一端が前記液体容器の内部に連通する流体導入部と、一端が前記先端収納部の内周壁側に開口し他端が前記流体導入部に連通した流体流入口と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)本体に形設され液体吐出管の先端部が挿抜自在に保持される先端収納部と、本体に形設され本体を液体容器の口部に取り付けた際に一端が液体容器の内部に連通する流体導入部と、一端が先端収納部の内周壁側に開口し他端が流体導入部に連通した流体流入口と、を有することにより、先端収納部から液体吐出管を抜いて使用している時(液体吐出時)は、流体流入口が大気に開放され、流体導入部を通して液体容器の内部と外部が連通するので、液体容器内部の液体の量が減少しても、液体容器内が減圧されず、液体容器が収縮することがなく、継続的に安定して一定量の液体を確実に吐出することができ、液体吐出動作の安定性、確実性に優れる。
(2)一端が先端収納部の内周壁側に開口し他端が流体導入部に連通した流体流入口を有することにより、先端収納部に液体吐出管の先端部を挿入して収納した際に、先端収納部の入口側が液体吐出管によって閉塞されるので、使用していない時に、容器内部からの液体の蒸発、液体の酸化などによる劣化、臭いの漏れなどを防ぐことができると共に、転倒や不意の動作などによって液体吐出管から液体が吐出されても、その液体を流体流入口から流体導入部を通して液体容器の内部に戻すことができ、液体が先端収納部から外部に漏れ出ることがなく、衛生的で使用性、保管の確実性、安全性に優れる。
【0008】
ここで、先端収納部は、液体吐出管の先端部を挿入して収納した際に、先端収納部の流体流入口より入口側が密閉されるものが好ましいが、液体吐出管の先端部の内、少なくとも一部の外周面が、先端収納部の流体流入口より入口側の内周面と隙間なく密着するものが好適に用いられる。これにより、接触部分の摩擦力で液体吐出管の先端部が先端収納部から簡単に抜け落ちることがなく、固定安定性に優れる。また、液体吐出管の先端部が隙間なく挿入されることにより、先端収納部の内部への埃やゴミ等の侵入を防ぐことができる。
尚、先端収納部の内周壁と液体吐出管の外周壁を直接、密着させてもよいが、先端収納部の内周壁や液体吐出管の外周壁或いは先端収納部の入口の周縁部などに環状の弾性体を配設したものが密閉性(気密性、水密性)に優れ、好ましい。
先端収納部の向きは適宜、選択することができるが、本体の側面や背面から内部へ水平方向に延びる孔状に形成されたものが好適に用いられる。また、先端収納部を水平方向に形成する場合、本体の側面や背面に対して直角方向に限らず、任意の方向に傾けて形成することができる。
【0009】
尚、先端収納部に液体吐出管の先端部が挿入された時に、液体ポンプが作動しないようにすれば、保管時や運搬時などに誤ってスイッチに手が触れるなどしても、液体吐出管から液体が吐出されることがなく、信頼性に優れる。この場合、本体のスイッチをロックする方法は機械的でも電気的でもよい。例えば、液体吐出管の先端部と接する先端収納部の内部や本体の外側部などに接触式のロックスイッチを設け、先端収納部に液体吐出管の先端部が挿入され、ロックスイッチが押圧された時に、本体のスイッチを固定してスイッチを押圧できないようにしてもよいし、回路を切断してスイッチが押圧されてもモータが駆動されないようにしてもよい。また、液体吐出管の先端部が先端収納部に挿入されたことを検出するセンサを液体ポンプの本体に設け、センサからの信号によって回路を切断してもよい。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体ポンプであって、前記先端収納部の内周壁又は前記液体吐出管の前記先端部の外周壁の少なくともいずれか一方に配設され、前記先端収納部に前記液体吐出管の前記先端部を挿入して収納した際に、前記先端収納部の前記流体流入口より入口側をシールするシール部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)先端収納部の内周壁又は液体吐出管の先端部の外周壁の少なくともいずれか一方に配設され、先端収納部に液体吐出管の前記先端部を挿入して収納した際に、先端収納部の流体流入口より入口側をシールするシール部を有することにより、保管時に容器内部と外部が連通することがなく、容器内部の液体の蒸発、酸化などによる劣化、臭いの漏れなどを効果的かつ確実に防止することができ、衛生的で、気密性、水密性に優れると共に、液体吐出管に外力が加わった際や液体容器が転倒した際などに、液体吐出管が先端収納部から抜け落ち難く、液体吐出管の途中や先端収納部の中に液体が残っている場合でも、液体が外部に漏れ出ることを防ぐことができ、液体吐出管の固定安定性、取扱い性、安全性に優れる。
【0011】
ここで、シール部としては、Oリングなどの弾性体が好適に用いられる。また、シール部の数や配置は、適宜、選択することができるが、複数のシール部を有することにより、密閉性に優れる。
先端収納部のシール部より奥側の内径は、液体吐出管のシール部より先端側の外径よりも大きく形成することが好ましい。これにより、先端収納部に対する液体吐出管の挿抜が容易になり、取扱い性に優れる。また、先端収納部の内周壁と液体吐出管の先端部の外周壁との間に空間を形成し、液溜として利用することができるので、不意の動作などにより液体吐出管から液体が吐出された場合でも、その液体が流体流入口から流体導入部を通って液体容器に戻るまでのバッファとして機能し、外部への液体の漏れを防ぐことができる。
また、先端収納部の奥行き方向の長さは、液体吐出管の先端部の挿入部分の長さより長く形成することが好ましい。これにより、先端収納部に収容される液体吐出管の先端側にも液溜を形成することができ、外部への液体の漏れをより確実に防止することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の液体ポンプであって、前記先端収納部の内周壁又は前記液体吐出管の前記先端部の外周壁の少なくともいずれか一方に形設され、前記先端収納部に前記液体吐出管の前記先端部を挿入して収納した際に、前記先端部の流体吐出部と前記先端収納部の前記流体流入口の間で流体を流通させる空間部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)先端収納部の内周壁又は液体吐出管の先端部の外周壁の少なくともいずれか一方に形設され、先端収納部に液体吐出管の先端部を挿入して収納した際に、先端部の流体吐出部と先端収納部の流体流入口の間で流体を流通させる空間部を有することにより、液体吐出管を先端収納部に収納した状態で液体が吐出された場合でも、その液体を確実に流体流入口に導き、流体導入部から速やかに液体容器に戻すことができ、液体が外部に漏れ出すことがなく、保管の信頼性、液体の漏出防止の確実性に優れる。
【0013】
ここで、空間部は、液体吐出管から液体が吐出された際に、先端部の流体吐出部から先端収納部の流体流入口まで流体が流通できるものであればよいが、先端収納部の内周壁又は液体吐出管の先端部の外周壁の長手方向に沿って、段差状やスリット状(溝状)に形成したものが好適に用いられる。
尚、空間部の長手方向と直交する断面形状は適宜、選択することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の液体ポンプであって、前記本体及び前記液体吐出管の前記先端部に形設され前記先端収納部に前記液体吐出管の前記先端部を挿入して収納した際に、互いに係合する少なくとも一組の移動防止部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1項の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)本体及び液体吐出管の先端部に形設され先端収納部に液体吐出管の先端部を挿入して収納した際に、互いに係合する少なくとも一組の移動防止部を有することにより、液体吐出管に外力が加わった場合や液体容器が転倒した場合でも、液体吐出管が先端収納部に挿入された状態で傾いて隙間が生じたり、液体吐出管が先端収納部から抜け落ちたりすることがなく、液体が外部に漏れ出すことを確実に防止することができ、液体吐出管の固定の安定性、確実性、液体の漏出防止の信頼性に優れる。
【0015】
ここで、移動防止部は、互いに係合して液体吐出管の抜け落ち(脱落)、傾き、回転などの移動を防止できるものであればよいが、液体吐出管の先端部を移送先容器の口部に固定するための鉤状部を利用するものが好ましい。本体側に、液体吐出管側の鉤状部が掛止される断面略L字状や孔状、溝状などの掛止部を形成することにより、互いに係合して液体吐出管の移動を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)使用時(液体吐出時)は、液体容器の内部を確実に大気に連通させ、内部の液体の量が減少しても、液体容器内が減圧されることがなく、継続的に安定して一定量の液体を確実に吐出することができ、液体吐出動作の安定性、確実性に優れると共に、使用後(保管時)は、液体容器を密閉し、容器内部からの液体の蒸発、液体の酸化などによる劣化、臭いの漏れなどを防ぐことができるだけでなく、転倒や不意の動作などによって液体吐出管から液体が吐出されても、その液体が外部に漏れ出ることがなく、衛生的で使用性、保管の確実性、安全性に優れた液体ポンプを提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)保管時に先端収納部と液体吐出管の先端部との間を確実にシールして容器内部と外部が連通することがなく、液体の蒸発、酸化、臭いの漏れなどを効果的かつ確実に防止することができ、衛生的で、気密性、水密性に優れると共に、液体吐出管が先端収納部から抜け落ち難く、液体吐出管の途中や先端収納部の中に液体が残っている場合でも、液体が外部に漏れ出ることを防ぐことができ、液体吐出管の固定安定性、取扱い性、安全性に優れた液体ポンプを提供することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)液体吐出管を先端収納部に収納した状態で液体が吐出された場合でも、その液体を外部に漏らすことなく、確実かつ速やかに液体容器に戻すことができ、衛生的で、保管の信頼性、液体の漏出防止の確実性に優れた液体ポンプを提供することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)保管時や搬送時などに、液体吐出管が先端収納部に挿入された状態で傾いて隙間が生じたり、液体吐出管が先端収納部から抜け落ちたりすることがなく、液体が外部に漏れ出すことを確実に防止することができ、液体吐出管の固定の安定性、確実性、液体の漏出防止の信頼性に優れた液体ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1の液体ポンプの模式斜視図
【図2】実施の形態1の液体ポンプの使用状態を示す部分断面模式側面図
【図3】実施の形態1の液体ポンプの保管状態を示す要部模式側面図
【図4】(a)実施の形態1の液体ポンプの保管状態を示す部分断面模式平面図(b)図4(a)のA部拡大模式平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における液体ポンプについて、以下図面を参照しながら説明する。
図1は実施の形態1の液体ポンプの模式斜視図であり、図2は実施の形態1の液体ポンプの使用状態を示す部分断面模式側面図である。
図1及び図2中、1は実施の形態1の液体ポンプ、2は液体ポンプ1の本体、2aは本体2の蓋部、3は本体2の下部に配設され液体容器10の口部10aに固定される取り付けキャップ部(図2)、4は本体2の下部に延設され取り付けキャップ部3を貫通して液体容器10の内部に口部10aから挿入される液体汲み上げ管(図2)、5は本体2の内部で液体汲み上げ管4と連通し本体2の前端部から延設された液体吐出管、5aは移送先容器の口部に挿入される液体吐出管5の先端部(図1)、6は本体2の側部から内部に水平方向に延びる孔状に形成され液体吐出管5の先端部5aが挿通されて収納される先端収納部、6aは先端収納部6の入口(図1)、7は液体吐出管5の先端部5aの根元側外周に配設されたOリングを用いたシール部(図1)、9aは液体吐出管5の先端部5aの基部に形設された移動防止部としての鉤状部、9bは先端収納部6の入口6aの上縁部に本体2の側面から外方へ突設された移動防止部としての断面略L字状の掛止部(図1)である。
【0022】
鉤状部9aと掛止部9bで一組の移動防止部となるが、移動防止部は、互いに係合して先端収納部6における液体吐出管5の抜け落ち(脱落)、傾き、回転などの移動を防止できるものであればよく、本実施の形態に限られるものではない。掛止部9bは孔状や溝状などに形成してもよい。尚、鉤状部9aは、液体ポンプ1の使用時に、移送先容器の口部の周面に形設された溝等に掛止して液体吐出管5の先端部5aを移送先容器の口部に固定することができる。
【0023】
次に、実施の形態1の液体ポンプの先端収納部の詳細について説明する。
図2中、2bは本体2の蓋部2aから下方に延設され後述する流体導入部6bの上端開口部を封止する流体導入部封止部、6bは本体2に形設され本体2を液体容器10の口部10aに取り付けた際に下端が液体容器10の内部に連通する流体導入部、6cは一端が先端収納部6の内周壁側に開口し他端が流体導入部6bに連通した流体流入口である。
これにより、液体ポンプ1を液体容器10に取り付け、液体容器10から移送先容器へ液体を移送する際に、先端収納部6から進入した空気が流体流入口6cから流体導入部6bを通り、液体容器10の内部に供給されるので、液体の移送よって液体の量が減少しても、液体容器10の内部が減圧されることがなく、スムーズかつ確実な液体の吐出(移送)を行うことができる。
【0024】
次に、実施の形態1の液体ポンプの保管状態について説明する。
図3は実施の形態1の液体ポンプの保管状態を示す要部模式側面図であり、図4(a)は実施の形態1の液体ポンプの保管状態を示す部分断面模式平面図であり、図4(b)は図4(a)のA部拡大模式平面図である。
図4(b)中、8は先端収納部6の内周壁の長手方向に沿って、段差状やスリット状(溝状)に形成された空間部である。
【0025】
まず、液体ポンプ1の使用後は、図3及び図4に示すように、液体吐出管5の先端部5aを先端収納部6に挿入する。このとき、鉤状部9aと掛止部9bが係合して液体吐出管5の移動を防止する。
そして、液体吐出管5の先端部5aの根元側外周部が先端収納部6に嵌合し、その入口6aが閉塞されると共に、図4に示すように、先端収納部6の流体流入口6cより入口6a側でシール部7の外周が先端収納部6の内周壁に密着して、先端収納部6の内部の気密性、水密性を保つことができる。
これにより、保管時に液体容器10の内部と外部が連通することがなく、液体容器10の内部の液体の蒸発、酸化などによる劣化、臭いの漏れなどを防止できる。また、液体吐出管5に外力が加わった際や液体容器10が転倒した際などに、液体吐出管5が先端収納部6から抜け落ち難く、液体吐出管5の途中や先端収納部6の中に液体が残っている場合でも、液体が外部に漏れ出ることを防ぐことができる。
さらに、不意の動作により、液体吐出管5から液体が吐出された場合でも、液体が流体流入口6cから流体導入部6bを通り、液体容器10の内部に戻り、液体が外部に漏れ出ることを防ぐことができる。このとき、空間部8を有することにより、先端収納部6の内部に溜まった液体を確実に流体流入口6cに導き、流体導入部6bから速やかに液体容器10に戻すことができる。
尚、シール部7の数や配置は本実施の形態に限られるものではなく、適宜、選択することができ、特に複数のシール部7を有するものは、密閉の確実性に優れ好ましい。また、シール部7は、液体吐出管5の先端部5aの外周壁に設ける代わりに、先端収納部6の内周壁に設けてもよいし、これらの両方に設けてもよい。
【0026】
本実施の形態では、先端収納部6の内径は、液体吐出管5のシール部7より先端側の外径よりも大きく形成した。これにより、先端収納部6に対する液体吐出管5の挿抜が容易になり、取扱い性に優れる。また、先端収納部6の内周壁と液体吐出管5の先端部5aの外周壁との間に空間を形成し、液溜として利用することができ、不意の動作などにより液体吐出管5から液体が吐出された場合でも、液体が流体流入口6cから流体導入部6bを通って液体容器10に戻るまでのバッファとして機能し、外部への液体の漏れを防ぐことができる。
尚、先端収納部6の奥行き方向の長さは、液体吐出管5の先端部5aの挿入部分の長さより長く形成した。これにより、先端収納部6に収容される液体吐出管5の先端側にも液溜を形成することができ、外部への液体の漏れをより確実に防止することができる。
流体導入部6b及び流体流入口6cの形状や配置などは、本実施の形態に限定されるものではなく、適宜、選択することができる。特に、流体流入口6cの位置を先端収納部6の底部に形成した場合、液体の排出性に優れ好ましい。
また、空間部8の形状、数、配置は適宜、選択することができ、液体吐出管5の先端部5aの外周壁の長手方向に沿って形成してもよい。
【0027】
以上説明したように、実施の形態1における液体ポンプによれば、以下の作用を有する。
(1)本体に形設され液体吐出管の先端部が挿抜自在に保持される先端収納部と、本体に形設され本体を液体容器の口部に取り付けた際に一端が液体容器の内部に連通する流体導入部と、一端が先端収納部の内周壁側に開口し他端が流体導入部に連通した流体流入口と、を有することにより、先端収納部から液体吐出管を抜いて使用している時(液体吐出時)は、流体流入口が大気に開放され、流体導入部を通して液体容器の内部と外部が連通するので、液体容器内部の液体の量が減少しても、液体容器内が減圧されず、液体容器が収縮することがなく、継続的に安定して一定量の液体を確実に吐出することができ、液体吐出動作の安定性、確実性に優れる。
(2)一端が先端収納部の内周壁側に開口し他端が流体導入部に連通した流体流入口を有することにより、先端収納部に液体吐出管の先端部を挿入して収納した際に、先端収納部の入口側が液体吐出管によって閉塞されるので、使用していない時に、容器内部からの液体の蒸発、液体の酸化などによる劣化、臭いの漏れなどを防ぐことができると共に、転倒や不意の動作などによって液体吐出管から液体が吐出されても、その液体を流体流入口から流体導入部を通して液体容器の内部に戻すことができ、液体が先端収納部から外部に漏れ出ることがなく、衛生的で使用性、保管の確実性、安全性に優れる。
(3)先端収納部の内周壁又は液体吐出管の先端部の外周壁の少なくともいずれか一方に配設され、先端収納部に液体吐出管の前記先端部を挿入して収納した際に、先端収納部の流体流入口より入口側をシールするシール部を有することにより、保管時に容器内部と外部が連通することがなく、容器内部の液体の蒸発、酸化などによる劣化、臭いの漏れなどを効果的かつ確実に防止することができ、衛生的で、気密性、水密性に優れると共に、液体吐出管に外力が加わった際や液体容器が転倒した際などに、液体吐出管が先端収納部から抜け落ち難く、液体吐出管の途中や先端収納部の中に液体が残っている場合でも、液体が外部に漏れ出ることを防ぐことができ、液体吐出管の固定安定性、取扱い性、安全性に優れる。
(4)先端収納部の内周壁又は液体吐出管の先端部の外周壁の少なくともいずれか一方に形設され、先端収納部に液体吐出管の先端部を挿入して収納した際に、先端部の流体吐出部と先端収納部の流体流入口の間で流体を流通させる空間部を有することにより、液体吐出管を先端収納部に収納した状態で液体が吐出された場合でも、その液体を確実に流体流入口に導き、流体導入部から速やかに液体容器に戻すことができ、液体が外部に漏れ出すことがなく、保管の信頼性、液体の漏出防止の確実性に優れる。
(5)本体及び液体吐出管の先端部に形設され先端収納部に液体吐出管の先端部を挿入して収納した際に、互いに係合する少なくとも一組の移動防止部を有することにより、液体吐出管に外力が加わった場合や液体容器が転倒した場合でも、液体吐出管が先端収納部に挿入された状態で傾いて隙間が生じたり、液体吐出管が先端収納部から抜け落ちたりすることがなく、液体が外部に漏れ出すことを確実に防止することができ、液体吐出管の固定の安定性、確実性、液体の漏出防止の信頼性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、簡素な構造で、液体吐出時は容器内部と外部とを確実に連通させて容器内部に空気を供給することができ、液体の吐出によって液体容器内部の液体の量が減少しても、液体容器内が減圧されることがなく、液体容器の収縮が発生せず、継続的に安定して一定量の液体を確実に吐出することができ、液体吐出動作の安定性、確実性に優れると共に、使用後に液体吐出管の先端部を先端収納部に挿入して収納するだけで、容器内部と外部が連通することを防止でき、転倒や不意の動作などによっても液体が外部に漏れ出ることがなく、衛生的で使用性、安全性、保管の確実性、信頼性に優れた液体ポンプを提供し、その普及に貢献することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 液体ポンプ
2 本体
2a 蓋部
2b 流体導入部封止部
3 取り付けキャップ部
4 液体汲み上げ管
5 液体吐出管
5a 先端部
6 先端収納部
6a 入口
6b 流体導入部
6c 流体流入口
7 シール部
8 空間部
9a 鉤状部
9b 掛止部
10 液体容器
10a 口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器の口部に直接接続される本体と、前記本体の下部に延設され前記口部から前記液体容器の内部に挿入される液体汲み上げ管と、前記本体に延設され前記本体を介して前記液体汲み上げ管と連通する液体吐出管と、を備えた液体ポンプであって、
前記本体に形設され前記液体吐出管の先端部が挿抜自在に保持される先端収納部と、前記本体に形設され前記本体を前記液体容器の前記口部に取り付けた際に一端が前記液体容器の内部に連通する流体導入部と、一端が前記先端収納部の内周壁側に開口し他端が前記流体導入部に連通した流体流入口と、を備えたことを特徴とする液体ポンプ。
【請求項2】
前記先端収納部の内周壁又は前記液体吐出管の前記先端部の外周壁の少なくともいずれか一方に配設され、前記先端収納部に前記液体吐出管の前記先端部を挿入して収納した際に、前記先端収納部の前記流体流入口より入口側をシールするシール部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液体ポンプ。
【請求項3】
前記先端収納部の内周壁又は前記液体吐出管の前記先端部の外周壁の少なくともいずれか一方に形設され、前記先端収納部に前記液体吐出管の前記先端部を挿入して収納した際に、前記先端部の流体吐出部と前記先端収納部の前記流体流入口の間で流体を流通させる空間部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体ポンプ。
【請求項4】
前記本体及び前記液体吐出管の前記先端部に形設され前記先端収納部に前記液体吐出管の前記先端部を挿入して収納した際に、互いに係合する少なくとも一組の移動防止部を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の液体ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−225188(P2012−225188A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91207(P2011−91207)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(502345658)株式会社徳信洋行 (3)
【Fターム(参考)】