説明

液体レベルインジケータの決定

被験者に対して実施されるインピーダンス測定の分析において用いる方法であって、本方法は、処理システムにおいて、多数の周波数のそれぞれにおいて、少なくとも1つのインピーダンス値を決定し、各インピーダンス値は被験者の部位のインピーダンスを表すことと、インピーダンス値の分散を表す分散パラメータ値を決定することと、少なくとも一部は分散パラメータ値に基づいてインジケータを決定することと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者に対して実施されるインピーダンス測定の分析において用いる方法および装置に関し、特に、分散パラメータを用いてインジケータを決定し、それによってインジケータを浮腫の有無または程度を診断する際に用いることができる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における任意の従来の文献(または文献から派生する情報)または既知である任意の印刷物に対する参照は、従来の文献(または文献から派生する情報)または既知の事項が、本明細書が関連する技術分野において共通の一般知識の一部を形成すると承認、許可またはいかなる形式においても示唆するものと理解されず、また理解されてはならない。
【0003】
液体レベルなどの、被験者に関連する生物学的パラメータを決定するための1つの既存の技法は、生体電気インピーダンスの使用を伴う。この技法は、皮膚表面上に配置された一連の電極を用いて、被験者の身体の電気インピーダンスを測定することを伴う。人体表面での電気インピーダンスの変化を用いて、心周期もしくは浮腫、または体質に影響するその他の状態と関連する液体レベルの変化などのパラメータを決定する。
【0004】
リンパ浮腫は、正常なリンパ負荷の存在下において、リンパ輸送能力の低下および/または組織のタンパク質分解能力の低下の結果として生じる、組織内の過剰なタンパク質および浮腫を特徴とする状態である。後天性または二次性リンパ浮腫は、リンパ管の損傷または閉塞によって生じる。その原因となる最も一般的な事象は、手術および/または放射線治療である。しかしながら、リンパ浮腫の発症は予測できず、原因となる事象から数日以内に発症することもあれば、何年も経過した後に任意の時点で発症することもある。
【0005】
特許文献1は、同じ被験者の2つの異なる解剖学的領域で、単一の低周波交流電流で生体電気インピーダンスを測定することによって、浮腫を検出する方法を記載している。2つの測定を分析して、正規母集団から得たデータと比較することによって、組織浮腫の存在の兆候を得る。
【0006】
特許文献2は、被験者の組織浮腫を検知する方法を記載している。同方法は第1および第2の身体部位の測定インピーダンスを決定することを含む。次に、細胞内液に対する細胞外液の比を表す指標を各身体部位に関して計算し、これらの指標を用いて、第1および第2の身体部位に関する指標に基づいて指標比を求める。次に、指標比を用いて組織浮腫の有無または程度を、たとえば指標比を基準または以前に決定された指標比と比較することによって、判断することができる。
【0007】
特許文献3は、被験者に対して実施されるインピーダンス測定の分析において用いる方法を記載している。同方法は、処理システムにおいて、少なくとも1つのインピーダンス値を決定することと、被験者の少なくとも1つの部位のインピーダンスを示すことと、少なくとも1つのインピーダンス値および基準を用いて被験者のパラメータを示すインジケータを決定することと、インジケータの表記を表示することとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第00/79255号
【特許文献2】国際公開第2005/122888号
【特許文献3】国際公開第2008/138602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、既存の構成の1または複数の欠点を実質的に克服する、または少なくとも緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の広範な形態において、本発明は、被験者に対して実施されるインピーダンス測定の分析において用いる方法を提供することを目的とする。本方法は、処理システムにおいて、
a)多数の周波数のそれぞれにおいて、少なくとも1つのインピーダンス値を決定し、各インピーダンス値は被験者の部位のインピーダンスを表すことと、
b)インピーダンス値の分散を表す分散パラメータ値を決定することと、
c)少なくとも一部は分散パラメータ値に基づいてインジケータを決定することと、
を含む。
【0011】
典型的には、本方法は処理システムにおいて、a)第1および第2の身体部位それぞれに対して第1および第2の分散パラメータ値を決定することと、b)第1および第2の分散パラメータ値を用いてインジケータを決定することと、を含む。
【0012】
典型的には、第1の身体部位は罹患身体部位であり、第2の身体部位は非罹患身体部位である。
典型的には、身体部位の少なくとも1つは利き肢であり、別の身体部位は非利き肢である。
【0013】
典型的には、第1の身体部位は第2の身体部位とは異なる身体部位である。
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、
a)第2の分散パラメータ値を用いて、第1の身体部位の予測分散パラメータ値を決定することと、
b)第1の分散パラメータ値および予測分散パラメータ値を用いて、インジケータを決定することと、
を含む。
【0014】
典型的には、予測分散パラメータ値は、
a)利き肢と、
b)四肢の種類の違いと、
のうちの少なくとも1つを考慮に入れて決定される。
【0015】
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、基準正規母集団から得られる少なくとも1つの基準値を用いて、予測分散パラメータ値を決定することを含む。
典型的には、基準正規母集団は、
a)利き肢と、
b)四肢の種類の違いと、
c)民族的帰属と、
d)年齢と、
e)性別と、
f)体重と、
g)身長と、
のうちの少なくとも1つに基づいて選択される。
【0016】
典型的には、少なくとも1つの基準値は、基準正規母集団に対して測定された第1および第2の分散パラメータ値の線形回帰に基づいて決定される。
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、予測分散パラメータ値を次の方程式を用いて決定することを含む。
【0017】
【数1】

式中、DPは第2の分散パラメータ値であり、
DPは予測分散パラメータ値であり、
αは基準母集団における第1および第2の分散パラメータ値の関係に基づいて決定される乗数基準値であり、
Kは基準母集団における第1および第2の分散パラメータ値の関係に基づいて決定される定数基準値である。
【0018】
典型的には、男性被験者では、腕部位に対する第2の分散パラメータに基づく脚部位の予測値は、
a)αの値が0.15から0.022までの範囲内であり、
b)Kの値が0.62から0.72までの範囲内である、
ことに基づく。
【0019】
典型的には、女性被験者では、腕部位に対する第2の分散パラメータに基づく脚部位の予測値は、
a)αの値が0.44から0.41までの範囲内であり、
b)Kの値が0.43から0.46までの範囲内である、
ことに基づく。
【0020】
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、次の方程式を用いてインジケータを決定することを含む。
【0021】
【数2】

式中、Indはインジケータであり、
DPは身体部位に対して決定される分散パラメータ値であり、
DPは身体部位の予測分散パラメータ値であり、
sfは倍率であり、
SEは基準母集団における分散パラメータ値に基づいて決定される標準誤差である。
【0022】
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、次の方程式を用いてインジケータを決定することを含む。
【0023】
【数3】

式中、DPμは基準正規母集団の平均分散パラメータ値であり、
DPは身体部位に対して決定される分散パラメータ値であり、
sfは倍率であり、
SEは基準母集団における分散パラメータ値に対して決定される標準誤差である。
【0024】
典型的には、浮腫の有無を表す閾値が整数となるように、倍率は選択される。
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、次の方程式に基づいてインジケータを決定することを含む。
【0025】
【数4】

式中、Indはインジケータであり、
DPは第1の身体部位の第1の分散パラメータ値であり、
DPは第2の身体部位の第2の分散パラメータ値であり、
sfは倍率である。
【0026】
典型的には、分散パラメータ値は各身体部位のインピーダンス測定の分布を示す。
典型的には、分散パラメータは次の方程式の少なくとも1つの値に基づく。
【0027】
【数5】

【0028】
【数6】

【0029】
【数7】

【0030】
【数8】

式中、Rは印加周波数が無限大のときのインピーダンスであり、
は印加周波数がゼロのときのインピーダンスであり、
は円の中心におけるリアクタンスである。
【0031】
典型的には分散パラメータは次の数式の値に基づく。
【0032】
【数9】

典型的には、インジケータは、
a)被験者の浮腫の有無または程度を評価するために用いる浮腫インジケータと、
b)被験者の水和レベルを評価するために用いる水和インジケータと、
のうちの少なくとも1つである。
【0033】
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、インジケータの表記を表示することを含む。
典型的には、インジケータの表記は、
a)線形インジケータと、
b)目盛と、
c)インジケータにしたがい、目盛上に配置されるポインタと、
を含む線形目盛を含む。
【0034】
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、以前のインジケータ値および基本インジケータ値の少なくとも1つから、インジケータ値における変化の指標を含む表記を表示することを含む。
【0035】
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、
a)少なくとも1つの閾値を、基準を用いて決定することと、
b)閾値を表記の一部として表示することと、
を含む。
【0036】
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、
a)2つの閾値を、基準を用いて決定することと、
b)正常の範囲内にあることを示す閾値を、表記上に表示することと、
を含む。
【0037】
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、
a)正常の範囲と、
b)干渉範囲と、
c)水和範囲と、
d)浮腫範囲と、
のうちの少なくとも1つを表記上に表示することを含む。
【0038】
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、1または複数の周波数のインピーダンス測定を実行させることを含む。
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、
a)少なくとも1つの励起信号を被験者に印加することと、
b)被験者の体内にわたって(across the subject)測定される少なくとも1つの信号を決定することと、
c)少なくとも1つのインピーダンス値を、励起信号の指標および被験者の体内にわたって測定される信号を用いて決定することと、
を含む。
【0039】
典型的には、本方法は、処理システムにおいて、
a)信号発生器を制御して、少なくとも1つの励起信号を被験者に印加することと、
b)被験者の体内にわたって測定される少なくとも1つの信号を、センサを用いて決定することと、
を含む。
【0040】
第2の広範な形態では、本発明は、被験者に対して実施されるインピーダンス測定の分析において用いる装置を提供することを目的とする。本装置は、処理システムであって、
a)多数の周波数のそれぞれにおいて、少なくとも1つのインピーダンス値を決定し、各インピーダンス値は被験者の部位のインピーダンス値を表し、
b)インピーダンス値の分散を表す分散パラメータ値を決定し、
c)少なくとも一部は分散パラメータ値に基づいてインジケータを決定する、
ための処理システムを含む。
【0041】
典型的には、本装置は、
a)1または複数の電気信号を第1の組の電極を用いて被験者に印加するための信号発生器と、
b)被験者に印加される第2の組の電極間の電気信号を測定するためのセンサと、
c)i)信号発生器を制御し、かつ、
ii)測定電気信号の指標を決定する、コントローラと、
を含む。
【0042】
典型的には、コントローラは処理システムを含む。
典型的には、処理システムはコントローラを含む。
第3の広範な形態では、本発明は、被験者に対して実施されるインピーダンス測定を用いることによって、被験者における浮腫の有無または程度を診断するために用いる方法を提供することを目的とする。本方法は、処理システムにおいて、
a)多数の周波数のそれぞれにおいて、少なくとも1つのインピーダンス値を決定し、各インピーダンス値は被験者の部位のインピーダンスを表すことと、
b)インピーダンス値の分散を表す分散パラメータ値を決定することと、
c)少なくとも一部は分散パラメータ値に基づいてインジケータを決定することと、
d)インジケータの表記を表示し、それにより被験者における浮腫の有無または程度を評価できるようにすることと、
を含む。
【0043】
本発明の広範な形態は個別にまたは組み合わせて用いてよく、浮腫、リンパ浮腫、身体組成などを含むが、これらに限定されない状態の範囲および病気の有無または程度を診断するために用いてよいことが理解されよう。
【0044】
本発明の一実施例を、添付図を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】インピーダンス決定機器の一実施例の概略図である。
【図2】インジケータを決定する処理の一実施例のフローチャートである。
【図3A】生体組織に対する理論等価回路の一実施例の概略図である。
【図3B】ヴェッセルプロット(Wessel Plot)として既知のインピーダンスの軌跡の一実施例である。
【図4】四肢浮腫の浮腫インジケータを決定するための処理の一実施例のフローチャートである。
【図5A】四肢のインピーダンスの測定に用いる電極位置の実施例の図である。
【図5B】四肢のインピーダンスの測定に用いる電極位置の実施例の図である。
【図5C】四肢のインピーダンスの測定に用いる電極位置の実施例の概略図である。
【図5D】四肢のインピーダンスの測定に用いる電極位置の実施例の概略図である。
【図6A】浮腫インジケータの表記の第1の実施例の概略図である。
【図6B】浮腫インジケータの表記の第1の実施例の概略図である。
【図6C】浮腫インジケータの表記の第1の実施例の概略図である。
【図7】健肢と患肢のパラメータの関係の実施例のグラフである。
【図8】健康な女性の利き腕および利き脚に対する脚αおよび腕αの測定実施例のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
被験者の生体電気インピーダンスの分析を実施するために適した装置の実施例を、図1を参照して以下に説明する。
図示するように、装置は測定機器100を含み、測定機器100は処理システム102を含み、処理システム102は、1または複数の信号発生器117A、117Bに、それぞれ第1のリード123A、123Bを介して接続され、かつ、1または複数のセンサ118A、118Bに、それぞれ第2のリード125A、125Bを介して接続される。接続はマルチプレクサなどのスイッチ機器を介していてもよいが、スイッチ機器は必須ではない。
【0047】
使用する際には、信号発生器117A、117Bは2つの第1の電極113A、113Bに結合される。その結果、第1の電極113Aおよび113Bは駆動電極として作用し、信号を被験者Sに対して印加することができる。一方、1または1または複数のセンサ118A、118Bは、第2の電極115A、115Bに結合され、第2の電極115A、115Bは感知電極として作用し、被験者Sに流れる信号を感知できる。
【0048】
信号発生器117A、117Bおよびセンサ118A、118Bは、処理システム102と電極113A、113B、115A、115Bとの間の任意の位置に設けられてもよく、測定機器100に一体化されてもよい。ただし、一実施例では、信号発生器117A、117Bおよびセンサ118A、118Bは、電極システム、または被験者Sの近辺に設けられた別のユニットに一体化される。このとき、リード123A、123B、125A、125Bは信号発生器117A、117Bおよびセンサ118A、118Bを処理システム102に接続する。
【0049】
前述のシステムは2つのチャネルを有する機器であり、従来の4端子インピーダンス測定を実行するために用いられ、各チャネルはそれぞれ添字A、Bで指定されることが理解されよう。2つのチャネルを有する機器の使用は例示目的でのみ示すものであり、複数のチャネルを有する機器を代わりに用いて、電極を取り外す必要を生じずに、複数の身体部位を測定できるようにしてもよい。このような機器の一実施例は、同時係属出願の国際公開第2009059351号に記載されている。
【0050】
オプションである外部インターフェース103を用いて、測定機器100を、有線、無線またはネットワーク接続を介して、外部データベースまたはコンピュータシステム、バーコードスキャナなど、1または複数の周辺機器104に接続することもできる。処理システム102は、典型的には、入出力機器105も含み、入出力機器105はタッチスクリーン、キーパッドまたはディスプレイなどの任意の適切な形態であってよい。
【0051】
使用する際には、処理システム102は制御信号を生成するように適合され、制御信号は、信号発生器117A、117Bに1または複数の交流信号を生成させる。交流信号とは、たとえば適切な波形の電圧または電流信号であり、第1の電極113A、113Bを介して被験者Sに印加することができる。次に、センサ118A、118Bは被験者Sに流れる電圧または電流を、第2の電極115A、115Bを用いて決定し、適切な信号を処理システム102に伝送する。
【0052】
したがって、処理システム102は、適切な制御信号を生成し、少なくとも部分的に測定信号を解釈して被験者の生体電気インピーダンスを決定し、随意的に、相対液体レベルなどのその他の情報、または浮腫、リンパ浮腫、身体組成の測定、心機能などの状態の有無もしくは程度を判断するために適している処理システムであれば、任意の形式でよいことが理解されよう。
【0053】
システム102はしたがって、ラップトップ、デスクトップ、PDA、スマートホンなどの、適切にプログラムされたコンピュータシステムであってよい。あるいは、処理システム102はFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)などの専門ハードウェア、または、後ほど詳しく説明するが、プログラムされたコンピュータシステムと専門ハードウェアの組み合わせなどから構成されてもよい。
【0054】
使用する際には、第1の電極113A、113Bが被験者に設置され、1または複数の信号を被験者Sに注入することができる。第1の電極の位置は研究下の被験者Sの部位によって異なる。したがって、たとえば、第1の電極113A、113Bを被験者Sの胸部と首領域に配置し、心機能分析で用いる胸腔のインピーダンスを決定することができる。または、被験者の手首と足首に電極を配置することによって、四肢および/または体全体のインピーダンスを、浮腫分析などで用いるために決定することができる。
【0055】
電極が配置されると、1または複数の交流信号を、第1のリード123A、123Bおよび第1の電極113A、113Bを介して被験者Sに印加する。交流信号の性質は測定機器およびその後行われる分析の性質によって異なる。
【0056】
たとえば、本システムは、生体インピーダンス分光法(BIS)を用いることができる。生体インピーダンス分光法では、非常に低い周波数(4kHz)から高い周波数(1000kHz)までの範囲にわたる多数の周波数のそれぞれにおいてインピーダンス測定を実施し、この範囲内の256以上もの異なる周波数を用いることができる。このような測定は、好ましい実施態様に応じて、複数の周波数を同時に重ね合わせる信号を印加すること、または多数の異なる周波数で交流信号を順次印加することによって実行できる。印加信号の周波数または周波数帯域も実施される分析によって異なってよい。
【0057】
一実施例では、印加信号は被験者Sに対して交流電圧を印加する電圧発生器から生成されるが、代わりに交流電流信号を印加してもよい。一実施例では、典型的には、電圧源は対称的に配置される。各信号発生器117A、117Bは被験者を流れる信号電圧が変化するように、別個に制御可能である。
【0058】
電圧差および/または電流を第2の電極115Aと115Bの間で測定する。一実施例では、電圧は区別して測定される。つまり、各センサ118A、118Bが第2の電極115A、115Bそれぞれの電圧を測定するために用いられ、したがって、シングルエンドシステムと比較すると、電圧の半分を測定するだけでよい。
【0059】
取得信号および測定信号は、ECG(心電図)などの人体が発生する電圧、印加信号が生成する電圧、および環境電磁干渉を原因とするその他の信号の重ね合わせであることになる。したがって、フィルタリングまたはその他の適切な分析を用いて、不要な構成成分を除去してもよい。
【0060】
取得信号は、典型的には、印加周波数におけるシステムのインピーダンスを得るために復調される。重なった周波数を復調するための1つの適切な方法は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて、時間領域データを周波数領域に変換することである。これは、典型的には、印加電流信号が印加周波数の重ね合わせである場合に用いられる。測定信号にウィンドーイングを必要としない別の技法は、スライディングウインドウFFTである。
【0061】
印加電流信号が異なる周波数の掃引から形成される場合は、信号発生器から得られる基準正弦波および余弦波、または測定正弦波および余弦波を測定信号に乗じ、全体のサイクル数にわたって積分する技法などの信号処理技法を用いることが、より典型的である。この処理は直交復調または同期検波として様々に既知であり、すべての非相関信号または非同期信号を拒絶し、およびランダムノイズを大幅に低減する。
【0062】
他の適切なデジタルおよびアナログ復調技法は当業者には既知であろう。
BISの場合は、インピーダンスまたはアドミタンス測定は、記録された電圧と被験者を流れる電流とを比較することによって各周波数の信号から決定される。次に、復調アルゴリズムによって、各周波数の増幅信号および位相信号が生成され、各周波数のインピーダンス値を決定することができる。
【0063】
前述の処理の一部として、第2の電極115Aと115B間の距離を測定し、記録してもよい。同様に、被験者に関するその他のパラメータ、たとえば身長、体重、年齢、性別、健康状態、診療行為とその発生日時を記録してもよい。その他の情報、たとえば、現在の投薬なども記録してもよい。これらの情報は、次に、さらにインピーダンス測定を分析する際に用いることができ、身体組成などを評価するために、浮腫の有無または程度を判断することができる。
【0064】
インピーダンス測定の正確さは、多数の外的要因の影響を受ける。外的要因には、たとえば、被験者と周辺環境間、リードと被験者、電極などとの間の容量結合効果などがあり、これらは、リードの構築、リードの構成、被験者の位置などの要因によって異なる。さらに、典型的には、電極表面と皮膚間の電気接続のインピーダンス(「電極インピーダンス」として既知である)に変動があり、皮膚の水分レベル、メラトニンレベルなどの要因によって異なることもある。誤差が起きる別の原因は、リード内の異なる電気伝導体間の誘導結合、またはリード自体の間の誘導結合の存在である。
【0065】
このような外的要因によって、測定処理およびその後の分析に不正確さが生じることもあるため、したがって、測定処理に対する外的要因の影響を低減できることが好ましい。
不正確さの一形態が生じる原因は、被験者に流れる電圧が非対称であることであり、この状態は「不均衡」と呼ばれる。このような状態では、被験者の体の中心で顕著な信号電圧が発生し、その結果として、被験者の胴体と被験者が位置する支持表面との間の寄生容量から迷走電流が発生する。
【0066】
被験者に流れる電圧が被験者の実質的中心に対して非対称となる不均衡の存在によって、「同相」信号が発生する。同相信号とは、被験者のインピーダンスには関係しない、被験者Sの信号の実質的な基準である。
【0067】
この効果を低減するためには、したがって、被験者Sに信号を印可し、それによって被験者の体の中心で対称電圧となることが好ましい。結果として、被験者S内の基準電圧は測定装置の基準電圧と等しいが、電極の配置に対して考えれば、被験者の実質的な体の中心と近くなる。測定機器の基準電圧は典型的には接地なので、被験者Sの体の中心をできるだけ接地に近づけることとなり、被験者の胴体を流れる信号の大きさが低減され、したがって、迷走電流を最小化できる。
【0068】
一実施例では、感知電極の対称電圧は、差動双方向電圧駆動スキームなどの、対称電圧源を用いることで実現でき、対称電圧を各駆動電極113A、113Bに印加する。ただし、実際の環境ではよくあるように、2つの駆動電極113A、113Bに対する接触インピーダンスが一致しない場合、または被験者Sのインピーダンスが被験者Sの長さに沿って異なる場合には、これは常に効果的とは限らない。
【0069】
一実施例では、本装置は前述の問題を、各駆動電極113A、113Bに印加された差動電圧駆動信号を調整することによって克服し、異なる電極インピーダンスを補償する。それにより、被験者Sを流れる電圧の所望の対称性を回復する。この処理を本明細書では「平衡」と呼び、一実施例では、同相信号の大きさを低減する助けとなり、したがって、被験者に関連する寄生容量による電流損失を低減する。
【0070】
不均衡の程度、したがって、必要な平衡量は、感知電極115A、115Bでの信号をモニタリングし、次にこの信号を用いて、駆動電極113A、113Bを介して被験者に印可される信号を制御することで決定できる。具体的には、不均衡の程度は感知電極115A、115Bで検知された電圧から加算電圧を決定することによって計算できる。
【0071】
一処理例では、各感知電極115A、115Bで感知された電圧を用いて、第1の電圧を計算する。第1の電圧は、測定電圧を組み合わせるか、または加算して得られる。したがって、第1の電圧は差動増幅器を用いて決定できる加算電圧(典型的には、同相電圧または信号と呼ばれる)であってもよい。
【0072】
この点において、典型的には、差動増幅器を用いて、第2の電圧を決定するために2つの感知電圧信号Va、Vbを組み合わせる。第2の電圧は、一実施例では、被験者Sの関心地点間の電圧差Va−Vbである。電圧差は被験者に流れる電流測定と合わせて、インピーダンス値を得るために用いられる。しかしながら、差動増幅器は、典型的には、「同相」信号(Va+Vb)/2も提供し、これが同相信号の基準となる。
【0073】
差動増幅器は同相除去機能を含むが、この機能は、通常は、限定効果しかなく、典型的には高周波では効果を低減する。そのため、大きい同相信号は、差動信号に重なる誤差信号を発生させる。
【0074】
同相信号によって発生する誤差は、各感知チャネルを較正することによって最小化することができる。差動増幅器の両方の入力がゲインおよび位相特性において完全に一致し、信号増幅と直線的に機能する理想的な事例では、同相誤差がゼロとなる。一実施例では、差動増幅器の2つの感知チャネルは差動処理の前にデジタル化される。したがって、較正要因を各チャネルに個別に適用することは容易であり、それにより、特徴を高度な正確さで一致させることができ、したがって低同相誤差が実現できる。
【0075】
したがって、同相信号を決定することによって、印加電圧信号を調整することができ、たとえば、相対的な大きさおよび/または印加信号の位相を調整することによって、同相信号を最小化し、実質的に不均衡を排除する。本処理の一実施例は、同時係属出願の国際公開第2009059351号に詳細に記載されている。
【0076】
インピーダンス測定を分析する際の本装置の動作の一実施例を、図2を参照して以下に説明する。
一実施例では、ステップ200で、処理システム102は電流信号を被験者Sに印加させ、被験者Sを流れる誘導電圧をステップ210で測定する。測定電圧および印加電流を表す信号を、分析のために処理システム102に返す。
【0077】
本処理は浮腫インジケータを決定するために用いられるが、典型的には、浮腫の存在が疑われる被験者Sの少なくとも一部位に実施され、被験者の別な健康な部位に繰り返し実施されてもよい。したがって、たとえば、四肢浮腫の場合には、典型的には、罹患した、または「罹患の可能性のある」四肢(以下、総称して「患」肢という)、および浮腫の「罹患の可能性のない」と思われる四肢(以下、総称して「健」肢という)に実施される。
【0078】
電流および電圧信号の印加は、インジケータを得るために分析を実施する際に使用される個別の処理システムで制御してもよく、単一の処理システムを用いることは例示目的でのみ示されることが理解されよう。
【0079】
ステップ220では、処理システム102は、測定電圧および電流信号を用いて、多数の印加周波数それぞれのインピーダンス値を決定する。一実施例では、これには健肢のインピーダンスを表す第1のインピーダンス値および患肢のインピーダンスを表す第2のインピーダンス値を含む。
【0080】
ステップ230では、処理システム102は、1または複数のインピーダンス値を用いて、分散パラメータ値を決定する。一実施例では、患肢および健肢の第1および第2の分散パラメータ値を決定してもよい。
【0081】
分散パラメータの性質は様々であるが、通常は、理想モデルに関するインピーダンス測定の分布を表す。
一実施例では、分散パラメータDPは次の値によって、またはこれに基づいて計算できる。
【0082】
【数10】

式中、Rは印加周波数が無限大のときのインピーダンスであり、
は印加周波数がゼロのときのインピーダンスであり、
は円の中心におけるリアクタンスである。
【0083】
の値は、円の下部に位置するため、負であることに留意されたい。これにより、分散パラメータの値は負になることもある。しかしながら、下記に示す別の方程式を用いることもでき、したがって、分散パラメータは正または負の値のいずれかを持つように、所望に応じて調整できることが理解されよう。
【0084】
【数11】

【0085】
【数12】

【0086】
【数13】

別の方程式を用いて、被験者が浮腫を有する場合に分散パラメータの値が確実に増加するようにできるが、これは必須ではなく、任意の適切な方程式を選択してもよい。
【0087】
具体的な一実施例では、分散パラメータDP値は値αによって計算される。
【0088】
【数14】

この観点では、図3Aは等価回路の実施例であり、効果的に生体組織の電気的動作をモデリングする。等価回路は2つの分岐を有し、それぞれ細胞外液および細胞内液を流れる電流量を表す。生体インピーダンスの細胞外液構成成分を細胞外抵抗Rで表し、細胞内液の構成成分を細胞内抵抗Rで表し、細胞膜を電気容量Cで表す。
【0089】
交流電流(AC)のインピーダンスの細胞外および細胞内構成成分の相対的な大きさは、周波数によって異なる。周波数がゼロのときは、コンデンサは完全な絶縁体として動作し、すべての電流は細胞外液を通じて流れる。したがって、周波数がゼロのときの抵抗Rは細胞外抵抗Rと等しい。周波数が無限大のときは、コンデンサは完全な導電体として動作し、電流は並列抵抗の組み合わせを通じて流れる。周波数が無限大のときの抵抗Rは次のように求められる。
【0090】
【数15】

したがって、角周波数ωの図3Aの等価回路のインピーダンスは、ω=2π周波数であるとき、次のように求められる。
【0091】
【数16】

式中、Rは印加周波数が無限大のときのインピーダンスであり、
は印加周波数がゼロのときのインピーダンスであり、Rと等しく、
τは容量回路の時間定数である。
【0092】
しかしながら、前述の方程式は理想的な状況を表し、細胞膜が不完全なコンデンサであるという事実を考慮していない。これを考慮すると、修正モデルは次のようになる。
【0093】
【数17】

式中、αは0から1までの値であり、理想的なモデルから現実的なシステムへの偏差のインジケータであると考えることができる。
【0094】
一般的な多周波数インピーダンス応答の一実施例を図3Bに示す。周波数が増えるにつれて、リアクタンスもピークまで増加し、その後低下するが、抵抗は継続して増加し続ける。この結果として、円形の軌跡となり、円の中心は、図示するようにx軸の下部となる。
【0095】
パラメータαはリアクタンス軸のゼロより低いコールプロットの下降に関連する。αの値は理想コール方程式(4)からの偏差を表し、緩和時間の分布のスペクトル幅と密接に関連する。この分散は、Grimnes、S and O.G.Martinsen(2000)、Bioimpedance and Bioelectricity Basics、Academic Pressに記載されているように、分子間の相互作用、細胞の相互作用、異方性および細胞の大きさが原因となることもある。
【0096】
前述のように、インピーダンスパラメータRの値は、細胞外液レベルと密接に関連し、インピーダンスパラメータRの値は体液全体のレベルに密接に関連する。したがって、(R−R)は細胞内液レベルに密接に関連する。
【0097】
リアクタンスXは円の中心のリアクタンスXであり、軸下部の円形軌跡の下降の直接的な基準である。リアクタンスXは軌跡の半径から引くことによって、特性周波数のリアクタンスと密接に関連する。特性周波数では、細胞内液および細胞外液を流れる電流の比は、細胞外抵抗に対する細胞内抵抗の比の関数として決定され、細胞膜の電気容量には左右されない。したがって、特定周波数のリアクタンスは、細胞外液レベルのインジケータとして、より正確に用いることができる。円の中心のリアクタンスは特性リアクタンスに直接関連するため、この値は、細胞内液および細胞外液にも関連する。
【0098】
したがって、分散パラメータは細胞内液レベルに対する細胞外液レベルの比に関連するだけではなく、被験者内の緩和時間の分布を反映する理想的な等価回路からの偏差も考慮に入れ、細胞構造の変化を内包する。反対に、細胞外液に対する細胞内液の正比を指標Iとして用いると、典型的には下記の方程式(6)に示すように計算される。したがって、前述の偏差を同程度には考慮していない。
【0099】
【数18】

リンパ浮腫は細胞外液の蓄積によって特徴づけられるので、分散パラメータは健康な母集団と浮腫罹患母集団とでは異なる。違いは、方程式(6)から計算できる細胞外に対する細胞内の正比を用いるよりも、容易に定量化される。
【0100】
分散パラメータアルファおよび細胞外液に対する細胞内液の比の計算において、誤差が伝播する例を以下に説明する。誤差の伝播を決定するために、一般的な測定機器での異なる周波数帯域における、一般的な測定誤差を考慮する必要があり、これを下記表1に示す。
【0101】
【表1】

本例では、(6)の指標Iの相対誤差は次の方程式で求められる。
【0102】
【数19】

同様に、方程式(1)のインジケータIndの相対誤差は次の方程式で求められる。
【0103】
【数20】

上記の表1で記載した測定機器の一般的な誤差の仕様を考慮し、脚のインピーダンス測定の実施例を用いると、次のインピーダンスパラメータ値の例が得られる。
【0104】
=372Ω±1%
=253Ω±2%
=−28Ω±1%
したがって、これは次の誤差を生じる。
【0105】
【数21】

【0106】
【数22】

これはアルファパラメータをより正確に決定することができることを示し、したがって被験者の体液レベルの変化、したがって浮腫の有無または程度にさらに敏感になるべきである。
【0107】
ステップ240では、分散パラメータを用いて、インジケータを決定できる。一実施例では、インジケータは、被験者の体液レベルの指標など、被験者に関する情報を提供する。一実施例では、インジケータは基準に依存する数値の形式であり、浮腫などの状態の有無または程度を決定するために用いることができる。
【0108】
具体的な一実施例では、基準は、少なくとも一部は非罹患身体部位の分散パラメータに基づく。具体的には、罹患身体部位に実際には浮腫がない場合には、分散パラメータは非罹患身体部位の分散パラメータに類似することになり、第1および第2の分散パラメータの差を最小化する。反対に、罹患身体部位が浮腫を有する場合は、液体レベルは非罹患身体部位の液体レベルとは異なることになる。つまり、第1および第2の分散パラメータの差は増加する。その結果、第1および第2の身体部位間の第1および第2の分散パラメータの差の大きさによって、浮腫の有無または程度を表すことができる。したがって、罹患および非罹患身体部位の分散パラメータの差を閾値量と比較することによって、これを浮腫の有無または程度を決定するために用いることができる。
【0109】
一実施例では、差は倍率で拡大され、インジケータおよび閾値を整数などの覚えやすい数にすることができる。これは、インジケータを次のように計算することで実現できる。
【0110】
【数23】

式中、Indはインジケータであり、
DPは罹患身体部位の第1の分散パラメータ値であり、
DPは非罹患身体部位の第2の分散パラメータ値であり、
sfは倍率である。
【0111】
しかしながら、健康な被験者の母集団の研究から、罹患していない個人であっても、四肢などの異なる身体部位間の体液レベルに固有の差があることが分かった。この結果は、四肢の利き肢による分散パラメータの微小な差、および健肢と患肢が、腕と脚のように、異なる種類の四肢である場合に生じる差も含みうる。たとえば、被験者の脚の分散パラメータは、典型的には、腕と脚のどちらにも浮腫がない場合であっても、被験者の腕の分散パラメータとは異なる。
【0112】
したがって、基準を計算するときには、典型的には健肢に対して決定された第2の分散パラメータに基づいて患肢の予測分散パラメータ値を決定する。これは通常、正規母集団から得られる少なくとも1つの基準値を用いることによって実現し、これにより、性別、利き肢および異なる種類の四肢の間の自然変動を調整できる。
【0113】
具体的な一実施例では、予測分散パラメータ値は基準母集団で測定した第1および第2の分散パラメータ値の線形回帰を行って得られるパラメータに基づいて計算される。次に、予測分散パラメータ値は次の方程式を用いて決定できる。
【0114】
【数24】

式中、DPは第2の分散パラメータ値であり、
DPは予測分散パラメータ値であり、
αは基準母集団の第1および第2の分散パラメータ値の関係に基づいて決定される乗数基準値であり、
Kは基準母集団の第1および第2の分散パラメータ値の関係に基づいて決定される定数基準値である。
【0115】
一実施例では、男性被験者では、腕部位の第2の分散パラメータに基づく脚部位の予測値は、αの値が0.15から0.022の範囲内であり、Kの値が0.62から0.72の範囲内であることに基づいている。女性被験者では、腕部位の第2の分散パラメータに基づく脚部位の予測値は、αの値が0.44から0.41の範囲内であり、Kの値が0.43から0.46の範囲内であることに基づいている。
【0116】
予測分散パラメータ値を用いる場合は、インジケータは次の方程式を用いて決定できる。
【0117】
【数25】

式中、Indはインジケータであり、
DPは身体部位に決定される分散パラメータ値であり、
DPは身体部位の予測分散パラメータ値であり、
sfは倍率であり、
SEは基準母集団における分散パラメータ値に基づいて決定される標準誤差である。
【0118】
測定が罹患身体部位に対してのみ行われる場合には、予測分散パラメータ値は代わりに基準母集団から得た平均値に基づくこともあり、次の方程式のインジケータを得ることもあることに留意されたい。
【0119】
【数26】

式中、DPμは基準正規母集団の平均分散パラメータ値であり、
sfは倍率であり、
SEは基準母集団における分散パラメータ値に基づいて決定される標準誤差である。
【0120】
したがって、前述の分散パラメータを用いて、浮腫の有無または程度を診断できることが理解されよう。さらに、従来技術の技法とは対照的に、分散パラメータはより信頼できる結果を提供する傾向があり、以下でより詳細に記載する。
【0121】
前述の実施例では、分散パラメータの順番は逆でもよいことが理解されよう。たとえば方程式(9)では、予測値を測定値から減じることもでき、これは用いる分散パラメータの性質によって、たとえば、分散パラメータが方程式(1)、(1A)、(IB)、(1C)、(2)またはそれらの変形に基づくか否かによって異なる。典型的には、浮腫の程度が増加するにつれてインジケータIndの大きさも増加するように、順序は選択される。ただし、これは必須ではなく、任意の適切な構成を用いてもよい。
【0122】
インピーダンス測定を実施して四肢浮腫のインジケータを決定する一処理例を、図4を参照してより詳細に、以下に説明する。
本実施例では、ステップ400で、被験者の詳細を決定し、処理システム102に提供する。被験者の詳細は、典型的には、利き肢、医療行為があればその詳細および、被験者の年齢、体重、身長、性別、民族的帰属などの被験者に関する情報等を含む。被験者の詳細を用いて、以下に詳細に説明するが、適切な基準正規母集団の選定、および報告書作成を行うこともできる。
【0123】
被験者の詳細を処理システム102に適切な入力手段、入出力機器105などを介して提供してもよいことが理解されよう。このようにして、被験者測定を実施するたびに、被験者に関する情報を測定機器100に入力することができる。
【0124】
しかしながら、より典型的には、情報は一回で入力され、適切なデータベースなどで保存される。データベースなどは周辺機器104として、外部インターフェース103を介して接続されてもよい。データベースには、被験者の詳細を表す被験者の情報と合わせ、被験者に対して記録されている以前の浮腫インジケータ、基本測定またはインピーダンス測定に関する情報が含まれる。
【0125】
本事例では、オペレータが被験者の詳細を提供するよう要求されるときに、オペレータは処理システム102を用いて、データベース検索オプションを選択し、被験者の詳細を取得できる。一般的に、検索は、医療機関に入院する際に個人に割り当てられる固有番号などの被験者識別子に基づいて行われるが、代替的に氏名などに基づいて行ってもよい。このようなデータベースは、通常、HL7付属遠隔データベースの形式であるが、任意の適切なデータベースを用いてもよい。
【0126】
一実施例では、被験者は、被験者識別子を表す暗号データを含むリストバンドまたは他の装置を与えられる。本事例では、測定機器100を、バーコードまたはRFID(無線ICタグ)などの周辺機器104に連結し、被験者識別子を検知して処理システム102に提供させることができる。次に、処理システム102は被験者の詳細をデータベースから引き出す。次に、処理システム102はデータベースから引き出した被験者の詳細の表記を表示し、さらに処理を進める前に、オペレータが被験者の詳細を検証して、その正確性を確認できるようにする。
【0127】
ステップ410では、患肢、または「罹患の可能性のある」四肢を決定する。このステップは好ましい実施態様にしたがい、多くの方法の中から任意の一方法で実現してもよい。したがって、たとえば、患肢を入出力機器105などの適切な入力装置を用いて表示することができる。代替的に、本情報を被験者の詳細から直接得ることもできる。被験者の情報には患肢の表記、または、患肢の指標となる、施した医療行為の詳細が含まれている。
【0128】
ステップ420では、オペレータは電極を被験者Sに配置し、リード123、124、125、126を接続し、インピーダンス測定が行えるようにする。一般的な構成は図5Aに示すように、電極を、指の関節の付け根と、手首の骨の突起の間とで手に付け、図5Bに示すように、足指の付け根と足首の前面とで足に着ける。図5Cおよび5Dに示す構成によって、右腕531および右脚533をそれぞれ測定でき、同等の構成を用いて、左脚と左腕のインピーダンスを測定できることが理解されよう。
【0129】
本構成は等電位の理論を用いており、電極の位置によって、インピーダンス測定の再生可能な結果が生じていることが理解されよう。たとえば、電流を図5Cの電極113Aおよび113Bの間から注入するとき、腕全体は等電位であるから、電極115Bは左腕532に沿ってどこでも設置できる。
【0130】
これにより、オペレータによる電極設置状態が悪い場合に生じる測定の変動を大きく削減できるため、有利である。また、部位別の身体測定を実施するために必要となる電極数も大幅に削減され、各四肢を個別に測定するために用いるような図示した限定接続も可能になる。
【0131】
しかしながら、任意の適切な電極およびリード構成を用いてもよいことが理解されよう。
ステップ430では、患肢および健肢のインピーダンスを測定する。この測定は、1または複数の電流信号を被験者に印加し、次に被験者Sに流れる対応する誘導電圧を測定することによって実現される。実際には、信号発生器117A、117B、およびセンサ118A、118Bが、印加電流および測定電圧を表す信号を処理システム102に返し、それによりインピーダンスを測定できることが理解されよう。
【0132】
次のステップ440では、各四肢の分散パラメータDPを、前述の方程式(1)または(2)を用いて決定する。
ステップ450では、基準を選択する。典型的には、基準は研究中の被験者に関連する正規母集団(浮腫を罹患していない被験者)で行った同等の測定から得る。したがって、正規母集団は、典型的には、施した医療行為、民族的帰属、性別、身長、体重、利き肢、患肢などの要因を考慮して選択される。
【0133】
したがって、試験被験者が、女性で、利き脚の両側にリンパ浮腫を有するならば、正規母集団データベースから抽出する標準データは、正規母集団データベース内に存在する女性被験者の利き脚インピーダンス比測定から計算されることになる。
【0134】
したがって、この段階では、処理システム102は、典型的には、データベースなどに保存されている基準母集団にアクセスする。これは被験者の詳細を用いて、処理システム102が自動的に行ってもよい。したがって、たとえば、データベースは,被験者の詳細の特定な組が与えられるときに用いるべきである、正規母集団を特定するルックアップテーブルを含んでいてもよい。代替的に、以前の手順において医療資格を有するオペレータによって行われた選択に基づく発見的アルゴリズムを用いて、所定の規則を作成し、それにしたがって、選択を行ってもよい。代替的に、好ましい実施態様によっては、この作業はオペレータの制御下で実施されてもよい。
【0135】
当業者には、オペレータが自分自身の基準を現場で保存してもよいことが理解されよう。しかしながら、適切な基準が利用できない場合は、処理システム102を用いて、たとえば適切なサーバ構成を介して、中央保管所から基準を抽出することができる。一実施例では、これを利用回数制料金で行うこともできる。
【0136】
代替的には、適切な基準が利用できない場合は、前述した所定の標準基準値を用いてもよい。しかしながら、異なる値を適宜用いることができ、これらの値は例示目的でのみ示すことが理解されよう。
【0137】
ステップ460では、罹患身体部位の予測分散パラメータ値を、非患身体部位から得る第2の分散値および基準値を用いて、前述のように方程式(8)に関して決定する。
次のステップ470では、方程式(9)を用いてインジケータを決定できる。前述のように、典型的には、これは罹患腕の予測パラメータ値と測定分散パラメータ値との差を拡大することで達成される。浮腫の存在を示す閾値でのインジケータの値が記憶可能な値に相当するように実施される。一実施例では、倍率を設定して、「10」を超えるインジケータ値は浮腫を意味し、「10」を下回る値は浮腫がないことを示すために用いられる。
【0138】
ステップ480において、インジケータの表記をオプションで表示できる。このような浮腫インジケータの表記の実施例を図6Aおよび6Bを参照して以下に説明する。
本実施例では、表記は線形インジケータ600の形であり、関連する目盛601およびポインタ602を有する。目盛601に対するポインタ602の位置は被験者パラメータを表す。本実施例では、被験者パラメータは被験者の健肢および患肢に対して決定された液体レベルの比を表すインピーダンス比に基づく。
【0139】
図6Aの実施例では、インジケータの表記は平均インジケータ610も含む。平均インジケータ610は正規母集団の平均インジケータを表し、目盛601上で「0」の値に設定される。上限および下限閾値は平均610からの3つの標準偏差として設定され、それぞれ目盛601上に「−10」および「+10」に設定される。
【0140】
使用する際には、上限および下限閾値611、612は正常な範囲620、検索範囲621、および浮腫範囲622を画定する。これらの範囲は線形表示上に背景色を用いて表示することができる。たとえば、標準範囲620は斜線付き緑で、検索範囲621は斜線なしで、浮腫範囲622は斜線付き赤で表示される。これにより、オペレータは迅速に範囲内のポインタ602の位置を評価でき、表示された体液レベル情報に基づき、浮腫を迅速かつ正確に診断できるようになる。
【0141】
したがって、図6Aの実施例では、ポインタ602は16.6の値に位置し、ポインタ602は浮腫範囲622に配置される。これにより、被験者Sの液体レベルはおそらく患肢の浮腫を表すことを使用者に示す。
【0142】
本実施例では、決定値16.6に対応するために、線形インジケータは「20」の値まで延在する。しかしながら、線形インジケータは決定表示値を表示するために必要な任意の値まで延在できることは理解されよう。線形目盛が明白であることを確保するために、特に、極端な表示値を表示する場合には、線形表示600は、目盛がより高い値まで延在するように、切れ目を含んでいてもよい。この実施例を図6Cに示す。図6Cでは、切れ目605を用いて線形インジケータ600を2つの部分、600Aおよび600Bに区切っている。本実施例では、線形インジケータ部分600Aは「−10」から「+20」まで延在し、第2の線形インジケータ部分600Bは「+70」から「+90」まで延在する。それにより、「80」のインジケータ値はインジケータ部分605Bにおいて、ポインタ602の適切な配置で表示される。
【0143】
線形インジケータ600は、オペレータに容易に任意の浮腫の潜在的な重症度を示すので好ましいが、線形インジケータ600は必須ではなく、代わりに、特に外れインジケータ値を測定する場合に、目盛を修正してもよい。したがって、たとえば、線形インジケータは全体に、または一部の長さで、決定インジケータ値を表示できるように、対数目盛などを含んでいてもよい。
【0144】
インジケータ値が「−10」から「+10」までの値の場合は、被験者Sは正常の範囲620内にあり、したがって、被験者Sは浮腫を持たないことを示す。最後に、インジケータ値が「−10」より低い場合は、被験者Sは検索範囲621にあり、測定をさらに検査する必要があることを示す。具体的には、患肢のインピーダンス値が健肢のインピーダンス値よりも大幅に低いことは極めてあり得ないことであり、したがって、患肢の不正確な指定または電極の不正確な接続などの測定誤差があった可能性が高いことを示す。
【0145】
図6Bの実施例では、基準が利用できないため、表記は平均610または下限または上限閾値611、612を含まない。本事例では、インジケータ値は初期設定の標準値を用いて目盛が付いている。本例は方程式(7)に基づいてインジケータを決定する場合に用いてもよい。
【0146】
結果として、「10」を超える浮腫インジケータ値はまだ浮腫を表すが、基準が利用可能な場合よりも信頼性の低いインジケータともいえる。これを考慮に入れ、閾値611、612、したがって、特定の範囲620、621、622を表記から排除し、オペレータに対して、目盛の付いた被験者パラメータ値は、被験者の浮腫状態を暗示するものの、決定するものではないことを強調する。
【実施例】
【0147】
実験実施例
正規母集団の調査をImpedimed SFB7装置を用いて行い、コールパラメータの「正常」値を測定した。健康であると自己診断する65名の女性と、健康であると自己診断する29名の男性が試験に参加し、母集団の統計を表2に示す。各四肢のコールパラメータの平均偏差および標準偏差を利き肢および非利き肢の両方で測定した。
【0148】
【表2】

単一のコールパラメータのうち、αは正規母集団内のすべての四肢で、最も低い偏差を持つパラメータであり(COV=1〜3%)、したがって、健康な個人にとって、一般的により一定したパラメータであることを示す。
【0149】
コールパラメータの組み合わせの変形も調査した。対照母集団において最も低い偏差計数を持つパラメータはR/R、R/Xであった。R/Rは大きい偏差(10%〜15%)を有し、このインピーダンス比を用いて、被験者における固有の偏差と、浮腫またはリンパ浮腫の存在に起因する偏差とをうまく区別することは難しいことを示唆する。
【0150】
正常な腕から脚の比を同じコールパラメータの基準データから計算したが、結果は再度、最低の偏差(<5%)を有するパラメータがα、R/R、R/Xとなった。
両側のアプローチを評価するために、脚リンパ浮腫の患者から脚のデータを取得した。データは臨床試験中に収集し、30名のボランティアに参加を要請した。各被験者を提供された治療歴に基づいて、対照群、両側リンパ浮腫群または片側リンパ浮腫群に分類した。被験者は仰臥位で横になり、標準設置マーカを用いて、手と脚に電極を取り付けた。3つの掃引周波数の生体インピーダンス測定を各四肢で記録した。
【0151】
適確な基準に合致した被験者の母集団の統計を表3に示す。被験者の平均年齢は、健康な母集団から以前に収集した正常なデータよりもはるかに高かった。両方の治験での平均身長は類似しており、対照被験者の平均体重は以前に収集した正常なデータと類似していた。しかしながら、片側および両側を罹患した被験者の体重は重かった。リンパ浮腫を罹患した脚の液体量によって、体重が増加したものと予測される。
【0152】
【表3】

表2のCOVを検討すると、R/R以外の他のパラメータが正規母集団においてより安定していることを示唆する。これらのパラメータはR/R、R/Xおよびαパラメータである。
【0153】
各四肢のインジケータをR/R、R/Xおよびαパラメータから得た。αに基づいて計算したインジケータの結果を、標準母集団からの基準を用いて、表4に示す。インジケータは、方程式(10)で示すように、基準正規母集団から得たαの基準値を用いて各四肢に対して個別に計算する。
【0154】
【表4】

本実施例では、測定値から基準分散パラメータを引き(この逆の状況が方程式(10)で示されている)、αはリンパ浮腫の増加と共に減少するため、インジケータ値は負である。本実施例では、倍率は−10がリンパ浮腫を意味するように選択される。
【0155】
表5では、リンパ浮腫の存在を表すことにおいて、分散パラメータαの特異性と感受性を示す。これらの結果は各四肢のR/R比を用いた場合と比べて大きく改善されている。腕の感受性は患腕を測定しなかったため、計算できないことに留意されたい。
【0156】
【表5】

本アプローチの最大の懸念は、被験者の腕のうち3つに記録された高インジケータ値である。これらの非患腕について計算されたインジケータは正常の範囲内になると予測される。さらに、片側被験者の健脚のいくつかで、リンパ浮腫を陽性と評価しているが、これは偽陽性ではなく、両方の脚にリンパ浮腫があるという兆候かもしれない。
【0157】
結果から、一本の患肢を測定することによって、リンパ浮腫の存在を評価する能力が強調される。つまり、患肢を一回測定することのみを必要とする技法を実施することが可能となる。
【0158】
変動が低係数であった脚に対する腕の比は、ここでもR/R、R/Xおよびαであった。脚に対する腕の比から、利き脚および非利き脚に対するインジケータを、方程式(7)と同様に計算した。最大の効率を示したパラメータは分散パラメータαの脚に対する腕の比である。表6は、本方法を用いる特異性と感受性がここでも低いことを示す。
【0159】
【表6】

前述の結果から、おそらく腕と脚の関係は一対一の関係ではないことが示唆される。健肢に対する患肢の比を用いる方法は、片側のリンパ浮腫でうまく機能する。患肢を、同等ではあるが反対側の脚と比較するからである。患肢に対する健肢の比は1に非常に近い。これは、一定の補正なしに四肢間の線形関係を想定することに等しい。つまり、y=mx+cであり、ここではcの阻害はなく、mは正常な比である。
【0160】
本方法は本質的に、健肢を用いて、患肢が罹患していなかったと仮定した場合に患肢に期待される状態を予測するものである。次に、期待される結果の測定結果からの偏差を健康な母集団の正常な偏差と比較し、リンパ浮腫の存在を評価する。脚に対して腕を比較する場合には、断面積および長さなど、ジオメトリおよび構造に様々な違いがある。そのため、2つの測定間に追加の補正が必要となることを示し、腕と脚の関係が線形であり得ることが示唆される。前述の概念は図7に図形で示す。
【0161】
健康な女性の利き腕および利き脚に対する、正常な脚αと正常な腕αの偏差の例を図8に示す。本データはImpediMed SFB7を用いて収集した。本事例では、外れ値は除外していない。
【0162】
回帰分析を健康な男性および女性に実施し、選択したパラメータに最も合致する線を決定するために利き肢および非利き肢のデータを収集した。正常な女性のデータからは、すべてのパラメータで、男性のデータ(R=2)よりも強い相関関係(R>0.5)が示される。
【0163】
結果として得た一次方程式を用いて、腕のデータから脚のデータを予測し、性別および利き肢で分類した。最も功績のよいパラメータはαであった。方程式を次に示す。
・女性利き脚:αleg=0.4416αarm+0.4379、SE=0.0136
・女性非利き脚:αleg=0.4176αarm+0.4581、SE=0.0136
・男性利き脚:αleg=0.1572αarm+0.6227、SE=0.0113
・男性非利き脚:αleg=0.0217αarm+0.7145、SE=0.0109
次に、前述の回帰方程式を用いて、前述の方程式(8)を使用し、測定腕αから期待脚αを予測した。次に、測定脚αから予測脚α引いた。実際の結果と予測結果とのこの差を、正規母集団の標準誤差と比較した。インジケータ値を方程式(9)にしたがって計算した。
【0164】
腕の測定から予測した脚αの実施例の結果を表7に示す。
【0165】
【表7】

前述の結果から、分散パラメータαを、健肢の測定に基づいて、患肢の予測値と共に用いることで、リンパ浮腫の特定を高い信頼性を以て提供できることが強調される。この結果は、表8に示す感受性および特異性の測定値から強調される。提示したすべての方法のうち、本結果は最高の特異性および感受性を呈する。
【0166】
【表8】

両側被験者UB500−01−03は10を超えるインジケータを記録していないことに留意されたい。この結果は、被験者が非常に軽症なリンパ浮腫を大腿部の最上部のみに罹患していることで説明できる。測定生体インピーダンスに対するリンパ浮腫の影響は、正常な状態から大幅に変更されるほど、重大ではなかったと考えられる。しかしながら、両方の脚では、8を超えるインジケータ値を得たことに留意されたい。
【0167】
健肢のインジケータが10を超えている他の片側被験者では、別の脚にリンパ浮腫が進行している兆候を示している可能性がある。
したがって、前述の結果から、分散パラメータを用いることで、リンパ浮腫の存在を予測することにおいて、最善の結果が得られることが分かった。
【0168】
当業者には多数の変形や修正が明らかであろう。当業者に明らかであるそのような変形や修正は、前述した広範な発明の精神と範囲内に含まれるものと考えられるべきである。
したがって、たとえば、前述とは異なる実施例を、交換可能なように適宜用いてもよいことが理解されよう。さらに、前述の実施例は人間の被験者に焦点をあてていたが、前述の測定機器および技法は、霊長類、家畜、競走馬などの演芸動物等を含むがこれらに限定されない、任意の動物に使用可能であることが理解されよう。
【0169】
前述の処理は、個人の身体組成を含む個人の健康状態を判断し、浮腫またはリンパ浮腫などを含むがこれらに限定されない状態および病気の範囲の有無または程度を診断するために用いることができる。そのため、前述の実施例は浮腫インジケータという用語を用いているが、これは例示目的のみで用いたものであり、限定を意図するものではないことが理解されよう。したがって、浮腫インジケータは、身体組成などの、より一般的な健康状態の情報に関するインピーダンス測定を分析する際に用いられる場合は、より一般的にインジケータと称される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に対して実施されるインピーダンス測定の分析において用いるための方法であって、前記方法は、処理システムにおいて、
a)多数の周波数のそれぞれにおいて、少なくとも1つのインピーダンス値を決定し、各インピーダンス値は前記被験者の部位の前記インピーダンスを表すことと、
b)前記インピーダンス値の分散を表す分散パラメータ値を決定することと、
c)少なくとも一部は、前記分散パラメータ値に基づいてインジケータを決定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記処理システムにおいて、
a)第1および第2の身体部位それぞれに対して第1および第2の分散パラメータ値を決定することと、
b)前記第1および第2の分散パラメータ値を用いて前記インジケータを決定することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の身体部位は罹患身体部位であり、前記第2の身体部位は非罹患身体部位である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記身体部位の少なくとも1つは利き肢であり、別の身体部位は非利き肢である、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の身体部位は前記第2の身体部位とは異なる身体部位である、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記処理システムにおいて、
a)前記第2の分散パラメータ値を用いて、前記第1の身体部位の予測分散パラメータ値を決定することと、
b)前記第1の分散パラメータ値および予測分散パラメータ値を用いて、インジケータを決定することと、
を含む、請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
予測分散パラメータ値は、
a)利き肢と、
b)四肢の種類の違いと、
のうちの少なくとも1つを考慮に入れて決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記処理システムにおいて、基準正規母集団から得られる少なくとも1つの基準値を用いて、予測分散パラメータ値を決定することを含む、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基準正規母集団は、
a)利き肢と、
b)四肢の種類の違いと、
c)民族的帰属と、
d)年齢と、
e)性別と、
f)体重と、
g)身長と、
のうちの少なくとも1つに基づいて選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの基準値は、前記基準正規母集団に対して測定された第1および第2の分散パラメータ値の線形回帰に基づいて決定される、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記処理システムにおいて、前記予測分散パラメータ値を方程式
【数1】

を用いて決定することを含み、
式中、DPは前記第2の分散パラメータ値であり、
DPは前記予測分散パラメータ値であり、
αは基準母集団における第1および第2の分散パラメータ値の関係に基づいて決定される乗数基準値であり、
Kは基準母集団における第1および第2の分散パラメータ値の関係に基づいて決定される定数基準値である、
請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
男性被験者では、腕部位に対する第2の分散パラメータに基づく脚部位の前記予測値は、
a)αの値が0.15から0.022までの範囲内であり、
b)Kの値が0.62から0.72までの範囲内である、
ことに基づく、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
女性被験者では、腕部位に対する第2の分散パラメータに基づく脚部位の前記予測値は、
a)αの値が0.44から0.41までの範囲内であり、
b)Kの値が0.43から0.46までの範囲内である、
ことに基づく、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記処理システムにおいて、前記インジケータを方程式
【数2】

を用いて決定することを含み、
式中、Indは前記インジケータであり、
DPは前記身体部位に対して決定される分散パラメータ値であり、
DPは前記身体部位の予測分散パラメータ値であり、
sfは倍率であり、
SEは基準母集団における分散パラメータ値に基づいて決定される標準誤差である、
請求項6から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記処理システムにおいて、前記インジケータを方程式
【数3】

を用いて決定することを含み、
式中、DPμは基準正規母集団の平均分散パラメータ値であり、
DPは前記身体部位に対して決定される分散パラメータ値であり、
sfは倍率であり、
SEは基準母集団における前記分散パラメータ値に対して決定される標準誤差である、
請求項6から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記倍率は、浮腫の有無を表す閾値が整数値となるように選択される、請求項14または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、前記処理システムにおいて、前記インジケータを方程式
【数4】

に基づいて決定することを含み、
式中、Indは前記インジケータであり、
DPは第1の身体部位の第1の分散パラメータ値であり、
DPは第2の身体部位の第2の分散パラメータ値であり、
sfは倍率である、
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記分散パラメータ値は、各身体部位のインピーダンス測定の分布を示す、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記分散パラメータは方程式
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

のうちの少なくとも1つの値に基づき、
式中、Rは印加周波数が無限大のときのインピーダンスであり、
は印加周波数がゼロのときのインピーダンスであり、
は円の中心におけるリアクタンスである、
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記分散パラメータは方程式
【数9】

の値に基づく、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記インジケータは、
a)前記被験者の浮腫の有無または程度を評価するために用いる浮腫インジケータと、
b)被験者の水和レベルを評価するために用いる水和インジケータと、
のうちの少なくとも1つである、請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記処理システムにおいて、前記インジケータの表記を表示することを含む、請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記インジケータの表記は、
a)線形インジケータと、
b)目盛と、
c)前記インジケータにしたがい、前記目盛上に配置されるポインタと、
を含む線形目盛を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、前記処理システムにおいて、以前のインジケータ値および基本インジケータ値の少なくとも1つから、インジケータ値における変化の指標を含む表記を表示することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、前記処理システムにおいて、
a)少なくとも1つの閾値を、基準を用いて決定することと、
b)前記閾値を前記表記の一部として表示することと、
を含む、請求項21から請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、前記処理システムにおいて、
a)2つの閾値を、基準を用いて決定することと、
b)正常の範囲内にあることを示す前記閾値を、前記表記上に表示することと、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、前記処理システムにおいて、
a)正常の範囲と、
b)干渉範囲と、
c)水和範囲と、
d)浮腫範囲と、
のうちの少なくとも1つを前記表記上に表示することを含む、請求項21から請求項26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、前記処理システムにおいて、1または複数のインピーダンス測定を実行させることを含む、請求項1から請求項27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、前記処理システムにおいて、
a)少なくとも1つの励起信号を前記被験者に印加することと、
b)前記被験者の体内にわたって測定される、少なくとも1つの信号を決定することと、
c)少なくとも1つのインピーダンス値を、前記励起信号の指標および前記被験者の体内にわたって測定される前記信号を用いて決定することと、
を含む、請求項1から請求項28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法は、前記処理システムにおいて、
a)信号発生器を制御して、前記少なくとも1つの励起信号を前記被験者に印加することと、
b)前記被験者の体内にわたって測定される少なくとも1つの信号を、センサを用いて決定することと、
を含む、請求項1から請求項29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
被験者に対して実施されるインピーダンス測定の分析において用いるための装置であって、前記装置は処理システムを含み、同処理システムは、
a)多数の周波数のそれぞれにおいて、少なくとも1つのインピーダンス値を決定し、各インピーダンス値は前記被験者の部位の前記インピーダンス値を表し、
b)前記インピーダンス値の分散を表す分散パラメータ値を決定し、
c)少なくとも一部は前記分散パラメータ値に基づいてインジケータを決定する、
ためのものである、装置。
【請求項32】
a)1または複数の電気信号を第1の組の電極を用いて前記被験者に印加するための信号発生器と、
b)前記被験者に印加される第2の組の電極間の電気信号を測定するためのセンサと、
c)i)前記信号発生器を制御し、かつii)前記測定された電気信号の指標を決定するための、コントローラと、
を含む、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記コントローラは前記処理システムを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記処理システムは前記コントローラを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
請求項30から請求項33のいずれか一項に記載の装置において、前記装置は請求項1から請求項29のいずれか一項に記載の方法を行うためのものである、装置。
【請求項36】
被験者に対して実施されるインピーダンス測定を用いることによって、前記被験者の浮腫の有無、または程度を診断するために用いる方法であって、前記方法は、処理システムにおいて、
a)多数の周波数のそれぞれにおいて、少なくとも1つのインピーダンス値を決定し、各インピーダンス値は前記被験者の部位の前記インピーダンスを表すことと、
b)前記インピーダンス値の分散を表す分散パラメータ値を決定することと、
c)少なくとも一部は前記分散パラメータ値に基づいてインジケータを決定することと、
d)前記インジケータの表記を表示し、それにより前記被験者における浮腫の有無または程度を評価できるようにすることと、
を含む、方法。

【図1】
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【図3A】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6C】
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【図2】
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【図3B】
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【図4】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−508100(P2013−508100A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535543(P2012−535543)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001399
【国際公開番号】WO2011/050393
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(505186876)インぺディメッド リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】IMPEDIMED LIMITED
【Fターム(参考)】