説明

液体供給物の複数の成分を液体遠心クロマトグラフィーによって分離する方法および装置

本発明は、液体供給物の複数の成分を液体−液体遠心クロマトグラフィーによって分離する方法、およびその方法を実施する装置に関する。成分A,Bが異なる分配係数を有し、それによりそれらが軽い溶媒lと重い溶媒Lとによってそれぞれ異なる速度で駆動されると、重い溶媒の注入相と軽い溶媒の注入相とを交互に含む連続するサイクルが一連の少なくとも一組の分離セルの相互接続によって形成されたカラムの両端でそれぞれ行われ、分離された成分FA,FBが両溶媒の注入点に対向するカラムの両端で各相の間に収集される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給物の複数の成分を液体−液体遠心クロマトグラフィーによって分離する方法、およびその方法を実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
擬似移動層(SMB)法または擬似向流(SCC)法と呼ばれる、混合物の複数の成分を分離する公知の技法は、混合物を、一続きに配置され、かつ吸着剤で満たされている各層を有している一組のカラム内に通すことにある。ポンプ、管路および弁からなる複雑なアセンブリは、複数の層を通して液体を循環させることができるようにして、少なくとも1つの成分が分離される供給物と主に脱着剤を含有している溶離液とを注入できるようにするか、吸着されることが好ましい成分を主に含有している抽出物または主として少なくとも吸着されることが好ましい成分からなるラフィネートの取り出しをできるようにしている。そのような装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
SCCにおいて固相を循環させることはできない。SCCは複雑なアルゴリズムによって制御される弁およびポンプの複雑な組によって、シミュレーションされている。カラム内の固相の定期的な交換は非常にコストがかかり、比較的長期に渡って生産を中止する必要がある。この種類の装置は複雑であるため、管理が難しい。その保守もまた負担が重い。
【0004】
液体混合物の溶液中の成分AとBとを分離する他の公知の技法は、一方の液相を他方の液相を通してまたはその逆で濾過できるようになっている遠心力がかけられる「クロマトグラフィー用カラム」内に液体混合物を注入することである(CCCまたはCPCと呼ばれるクロマトグラフィー)。
【0005】
実際には、特許文献2〜5に顕著に示されているように、この種類の装置は、回転駆動される複数のディスクDの積層体を1つまたは2つ以上有している(図4を参照)。各ディスクは、その厚さ方向に周囲全体にわたって、半径方向または斜め方向に配置され、かつ各々の両端部に細い曲がった管路Lの一組の回路によって一続きに構成されている連続した複数のセルCEを有している。すべてのディスクの回路は互いに通じている。セルおよびセル間の連絡回路は、遠心力によって定位置に維持されている固定相と、固定相を通って濾過される他の移動液相とで満たされている。
【特許文献1】仏国特許発明第2,762,793号明細書
【特許文献2】仏国特許発明第2,791,578号明細書
【特許文献3】米国特許第4,551,251号明細書
【特許文献4】米国特許第4,877,523号明細書
【特許文献5】米国特許第4,857,187号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による方法は、少なくとも一組の分離セルの一連の相互接続からなる少なくとも1つの液体−液体遠心クロマトグラフィー用カラムを有する装置内で、分配係数が異なる少なくとも2つの成分の溶液状の供給物の成分を、それらの成分が軽い溶媒とより重い溶媒とによってそれぞれ異なる速度で運ばれるようにして分離することを可能にする。
【0007】
本方法は、
供給物を一組のセルの中間点で注入するステップと、
より軽い溶媒が装置の第1の端部を通して注入されて第1の成分が装置の第2の端部で収集される第1の期間中の第1段階と、より重い溶媒が第2の端部を通して注入されて第2の成分が第1の端部で収集される第2の期間中の第2段階との2つ段階のサイクルを切り換えることを行うステップと、
を有することを本質的に特徴としている。
【0008】
好ましくは、第1および第2の段階のそれぞれの期間および/またはより軽い溶媒およびより重い溶媒の注入速度が、最適な分離を得るために混合物の成分によって調節される。
【0009】
一態様によれば、3つ以上の成分を有している混合物の様々な成分を互いに分離するために、数段のカスケード分離が行われる。
【0010】
この態様は、たとえば、一方では第1の光学異性体を得て、他方では第2の光学異性体とキラルセレクタとの混合物を得るために、2つの光学異性体とキラルセレクタとを有する供給物を第1の装置内に注入し、次に、混合物を第1の装置から第2の光学異性体とキラルセレクタとの分離に適している第2の装置内に注入することを含む、2つの光学異性体の分離に適用される。
【0011】
本発明による装置は、分配係数が異なる少なくとも2つの成分の溶液状の供給物の成分を、それらの成分が軽い溶媒とより重い溶媒とによってそれぞれ異なる速度で運ばれるようにして分離することを可能にする。本装置は、少なくとも一組の分離セルの一連の相互接続からなる少なくとも1つの液体−液体遠心クロマトグラフィー用カラムを有している。各カラムは、一連のセルの中間点で供給物を注入する第1のポンプ(P1)と、カラムの第1の端部を第1の成分(FA)を収集する第1の容器または第1の溶媒(L)を注入する第2のポンプ(P2)に接続する第1の弁(V1)と、カラムの第2の端部を第2の成分(FB)を収集する第2の容器または第2の溶媒(l)を注入する第3のポンプ(P3)に接続する第2の弁(V2)と、第1の溶媒(L)の注入と分離された第2の成分(FB)の受け入れとを含む第1段階から第2の溶媒(l)の注入と分離された第1の成分(FA)との受け入れとを含む第2段階へ交互に切り換えるように交互の弁(V1,V2)を切り換える手段と、ポンプの流速を制御する手段と、に組み合わされている。
【0012】
一態様によれば、本装置は、少なくとも3つの異なる成分を有している混合物の成分を分離する少なくとも2つのカスケード分離カラムを有している。
【0013】
本装置は、供給物の連続的な注入だけではなく、不連続的な注入にも適している。
【0014】
本発明による方法および装置のその他の特徴と利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として示す実施形態の以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
装置は、混合物(A,B)をその2つの成分Aと成分Bとに分離する遠心力がかけられる少なくとも1つの液体−液体遠心クロマトグラフィー用カラム(Col)を本質的に有している(図1,2)。ポンプP1が、分離される液体混合物(A,B)を連続的にまたは不連続的にカラムの中間点で注入する。
【0016】
カラムは、第1の端部E1で、第1の弁V1を介して、第1の成分Aを収集する第1の容器FAまたは重い溶媒Lを収容している容器に注入ポンプP2を介して通じている入口に接続されている。カラムは、反対側の端部E2で、第2の弁V2を介して、成分Bを収集する他の容器FBに通じている出口または軽い溶媒lを収容している容器に注入ポンプP3を介して通じている入口に接続されている。
【0017】
図1,2に示した実施形態では、成分AおよびBは、Bは重い溶媒LによってAよりも速く運ばれ、Aは軽い溶媒lによってBよりも速く運ばれるような分配係数を有していると見なされている。
【0018】
期間t1の第1段階(図1)では、ポンプP2は重い溶媒Lをいくらかの時間の間圧送し、それから溶媒Lは「移動相」状態になるが、軽い溶媒lは装置内で固定相状態である。
【0019】
期間t2の第2段階(図2)では、ポンプP3は軽い溶媒lをいくらかの時間の間圧送し、それから溶媒lは「移動相」状態になるが、重い溶媒Lは装置内で固定相状態である。
【0020】
ポンプP1によってサンプル(A,B)を連続的に注入し、弁V1およびV2を周期的に切り換え、したがって図1の接続モードから図2の接続モードへ交互に切り換えた後、成分Aは容器FAに達し、成分Bは容器FBに達する。
【0021】
この分離現象が、少量の混合物A,Bを、所与の時点でかつ限定された時間の間に、例えば相互接続されている200のセルを備えたカラムの中間部に注入した図3に示されている。分離現象は、カラムの一方の端部に向かって移動している成分A(灰色)と、反対側の端部に向かって移動している他の成分B(黒色)とによって知ることができる。AとBとが、各サイクルで複数のセルの間で往復していて、これによって循環距離を人工的に長くすることになることが、図3から明確に理解できる。あたかもセルの数が増加したように全てが作動する。
【0022】
期間t1およびt2と注入された溶媒の流速とは、(図3に示しているように)カラムの両端部に向けて成分を速く分けるために変更することができる。
【0023】
もちろん、混合物A,Bが連続して注入される場合、成分AおよびBも連続して収集される。
【0024】
本発明の装置内では、2つの液相を充填するのに約10分必要で、生産形式が変更されない限り、停止する必要はない。
【0025】
これらの液相は、SMB型の分離装置で使用される複数の固相よりも相当安価である。同じ生産量については、前述の装置での移動相の消費量は10分の1程度に減少する。
【0026】
図5の例では、装置は、各々が図4に示されているようなディスクの積層体からなり、かつ回転駆動される2つの平行なドラムT1,T2を有している。これら2つのドラムは連続して接続されている。2つのドラムは同方向に、または、連続した相互接続回路を簡略化できる場合には図示のように反対方向に回転させることができる。混合物は、2つのドラムを接続している管路の中間点で、ポンプP1によって注入される。上昇モード(より軽い移動相)ではポンプP2がドラムT1の入口に接続され、下降モード(より重い移動相)ではポンプP3がドラムT2の入口に接続される。
【0027】
混合物をカラム内へ注入する中間点は、混合物の複数の成分の効果的な分配係数を考慮して、最良と思われる位置に選択可能であることが明らかである。
【0028】
図6のいくつかのユニットを備えた分離装置によって、カスケード分離を実現することができる。最初の混合物が3つの成分A,B,Cを有しており、第1のユニットが成分Aと成分B,Cとを分離するのに適している場合、第1の分離後、残りの混合物B,Cを第2の分離ユニット内に注入し、成分Bと成分Cとを分離することができる。
【0029】
これは、たとえば、2つの光学異性体を分離する場合に有利である。そのため、キラルセレクタが、2つの光学異性体に通常追加される。当業者には公知のように、これによって、第1のユニットのそれぞれの出口で、第1の異性体と、キラルセレクタと混合している第2の異性体とを別々に得ることができる。第2の異性体とキラルセレクタとの残りの混合物を第2の分離ユニット内に注入した場合、キラルセレクタをすべて回収することができ、これは、キラルセレクタのコストが高いことを考えると有利である。
【0030】
下記の2つの表は、本発明の方法(CPCPCと呼ぶ)の利点をまとめており、第1の表は従来の液体−液体遠心クロマトグラフィー法に関し、第2の表はSMB型の分離装置に関するものである。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
本発明の分離装置は、SMB装置に比べて溶媒の消費が実質的に10分の1になることがわかる。
【0034】
また、供給物を、カラムの中間点で、連続的にだけでなく不連続的に注入できることもわかる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の方法による、分離カラムおよび関連した循環手段を備え、分離される混合物が中間点で注入される分離ユニットの第1のサイクル動作段階を示す模式図である。
【図2】第2のサイクル動作段階にある同じユニットを示す模式図である。
【図3】例として、連続する分離を、図1および図2に模式的に示した2つのサイクル段階で動作中の200セルの分離ユニット内に所与の時間で注入された混合物の成分の時間関数として示す図である。
【図4】遠心力がかけられ、かつ分離される成分と溶媒とが循環する一連の相互接続されている半径方向の複数のセルを周囲全体に有しているディスクの形態のカラム(分離カラムの一部)の一例を示す図である。
【図5】遠心力がかけられる、連続して相互接続された2つのマルチディスク分離セットであって、それらを接続する中間回路内に混合物が注入される2つのマルチディスク分離セットの配置構成例を示す図である。
【図6】場合によっては3つ以上の成分を有する混合物の分離を可能にする分離セットのカスケード接続を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一組の分離セル(CE)の一連の相互接続からなる少なくとも1つの液体−液体遠心クロマトグラフィー用カラム(col)を有する装置内で、分配係数が異なる少なくとも2つの成分(A,B)の溶液状の供給物の成分を、それらの成分が軽い溶媒とより重い溶媒とによってそれぞれ異なる速度で運ばれるようにして分離する方法において、
前記供給物を前記一組のセルの中間点で注入するステップと、
より軽い溶媒が前記装置の第1の端部を通して注入されて第1の成分が前記装置の第2の端部で収集される第1の期間(t1)中の第1段階と、より重い溶媒が前記第2の端部を通して注入されて第2の成分が前記第1の端部で収集される第2の期間(t2)中の第2段階との2つ段階のサイクルを切り換えることを行うステップと、
を有することを特徴とする、分配係数が異なる少なくとも2つの成分の溶液の供給物の成分を分離する方法。
【請求項2】
前記第1および第2の段階のそれぞれの前記期間(t1,t2)および/または前記より軽い溶媒およびより重い溶媒の注入速度を、最適な分離を得るために前記混合物の前記成分によって調節する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
数段のカスケード分離を行って、3つ以上の成分を有している混合物の様々な成分を互いに分離する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
一方では第1の光学異性体を得て、他方では第2の光学異性体とキラルセレクタとの混合物を得るために、2つの光学異性体とキラルセレクタとを有する供給物を第1の装置内に注入することと、前記混合物を前記第1の装置から前記第2の光学異性体と前記キラルセレクタとの分離に適している第2の装置内に注入することとによって、前記2つの光学異性体を分離する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記供給物は連続してまたは不連続に注入される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一組の分離セル(CE)の一連の相互接続からなる少なくとも1つの液体−液体遠心クロマトグラフィー用カラム(col)を有し、分配係数が異なる少なくとも2つの成分(A,B)の溶液状の供給物の成分を、それらの成分が軽い溶媒とより重い溶媒とによってそれぞれ異なる速度で運ばれるようにして連続的に分離する装置において、
各カラムは、一連の前記セルの中間点で前記供給物を注入する第1のポンプ(P1)と、前記カラムの第1の端部を第1の成分(FA)を収集する第1の容器または第1の溶媒(L)を注入する第2のポンプ(P2)に接続する第1の弁(V1)と、前記カラムの第2の端部を第2の成分(FB)を収集する第2の容器または第2の溶媒(l)を注入する第3のポンプ(P3)に接続する第2の弁(V2)と、前記第1の溶媒(L)の注入と分離された前記第2の成分(FB)の受け入れとを含む第1段階から前記第2の溶媒(l)の注入と分離された前記第1の成分(FA)との受け入れとを含む第2段階へ交互に切り換えるように交互の弁(V1,V2)を切り換える手段と、ポンプの流速を制御する手段と、に組み合わされていることを特徴とする、分配係数が異なる少なくとも2つの成分の溶液の供給物の成分を連続的に分離する装置。
【請求項7】
少なくとも3つの異なる成分を有している混合物の成分を分離する少なくとも2つのカスケード分離カラムを有している、請求項6に記載の装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−525655(P2007−525655A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518263(P2006−518263)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001653
【国際公開番号】WO2005/011835
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【出願人】(598121628)
【Fターム(参考)】