説明

液体供給装置、および液体噴射装置

【課題】噴射される液体の濃度に変動が発生し難い液体供給装置および液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】インクを収容するメインタンク6と、印刷ヘッド4と、インク供給チューブ7A,7Bを介してメインタンク6および印刷ヘッド4に接続され、メインタンク6から供給されるインクを収容し、収容されたインクが印刷ヘッド4に供給されるサブタンク40と、印刷ヘッド4およびサブタンク40が搭載されるキャリッジ11を往復移動させるキャリッジ移動機構3と、サブタンク40内に収容され、キャリッジ11の往復移動の方向に沿って往復移動可能な攪拌球31とを有し、キャリッジ移動機構3は、キャリッジ11の往復移動の移動方向を反転させる際の減速時において、攪拌球31が、サブタンク40に対して相対的に移動することができる攪拌駆動を行うこととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給装置および液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを収容するインクタンクからインク供給路を介して、インクを、印刷ヘッドに供給するインク供給装置が知られている。このようなインク供給装置においては、印刷ヘッドにインクの供給が行われた後、インクの供給が長時間行われない場合には、インク供給路内に残留したインクに含まれる成分が沈降することがある。インクに含まれる成分が沈降すると、印刷ヘッドから噴射されるインクの濃度に変動が発生することがある。
【0003】
特に、インクの成分として無機顔料(たとえば、酸化チタン等)や金属顔料(たとえば、アルミニウム)等を含む場合には、溶媒との比重差の点から、これらの顔料は沈降し易い。以下の説明において、インクに含まれる顔料等、時間の経過と共に沈降する成分を沈降成分と記載することとする。
【0004】
たとえば、特許文献1には、インク流路内に常に一定量のインクを貯留させるサブタンクを設け、このサブタンク内に攪拌球を備えるインク供給装置が開示されている。特許文献1に開示される構成によれば、サブタンク内の攪拌球をサブタンクに対して相対的に移動することで、サブタンク内のインクの攪拌を行うことができる。このような構成のサブタンクを設けることにより、インク供給路内に残留したインクに含まれる沈降成分の沈降を低減させることができる。
【0005】
また、特許文献2および特許文献3には、キャリッジに搭載されるインクカートリッジ内に攪拌子が備えられ、キャリッジと共にインクカートリッジが移動されることで、攪拌子が、インクカートリッジに対して相対的に移動される構成が開示されている。特許文献1,2に開示される構成によれば、攪拌子の移動により、インクに含まれる沈降成分の沈降を低減させることができる。
【0006】
また、特許文献4、特許文献5および特許文献6には、インクカートリッジに攪拌動作を行わせることで、内部に貯留されるインクを攪拌し、インクに含まれる沈降成分の沈降を低減させることができる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−272648号
【特許文献2】特開2009−73091号
【特許文献3】特開2003−159813号
【特許文献4】特開2007−331307号
【特許文献5】特開2007−331308号
【特許文献6】特開2007−160716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1には、サブタンク内において攪拌球を具体的にどのように移動させるかについて開示されていない。
【0009】
また、特許文献2,3に開示される構成は、インクカートリッジをキャリッジの移動により移動させることで攪拌子を移動させる構成である。そのため、インクカートリッジがプリンター筐体内の底部等に設置されている、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンターにおいては、キャリッジの移動によりインクカートリッジを移動させることができないため、インクを攪拌することができない。したがって、印刷ヘッドから噴射されるインクの濃度に変動が発生するという問題がある。
【0010】
また、特許文献4から特許文献6に開示される構成の場合は、攪拌球(攪拌子)を備えない構成であり、攪拌球(攪拌子)によりインクを直接攪拌する構成に比べて、攪拌の程度が劣り、噴射されるインクの濃度に変動が発生し易いという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、噴射される液体の濃度に変動が発生し難い液体供給装置および液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、液体供給装置は、液体を収容する第1液体収容部と、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、液体供給管を介して第1液体収容部および液体噴射ヘッドに接続され、第1液体収容部から供給される液体を収容し、収容された液体が液体噴射ヘッドに供給される第2液体収容部と、液体噴射ヘッドおよび第2液体収容部が搭載されるキャリッジを往復移動させるキャリッジ移動手段と、第2液体収容部内に収容され、キャリッジの往復移動の方向に沿って往復移動することができる攪拌子とを有し、キャリッジ移動手段は、キャリッジの往復移動の移動方向を反転させる際の減速時において、攪拌子を、第2液体収容部に対して相対的に移動させることができる攪拌駆動を行うこととする。
【0013】
液体供給装置をこのように構成することで、キャリッジに搭載される第2液体収容部が、キャリッジの移動と共に往復移動することができる。そして、キャリッジは、往復移動の移動方向を反転させる際の減速時において、攪拌子が、第2液体収容部に対して相対的に移動することができる攪拌駆動を行う。そのため、第2液体収容部内に在る攪拌子が第2液体収容部に対して相対的に移動し、第2液体収容部内の液体が攪拌される。したがって、第2液体収容部内の液体に含まれる沈降成分の濃度の均一化を図ることができる。これにより、液体噴射ヘッドから噴射される液体の沈降成分の濃度の均一化を図ることができる。
【0014】
上記発明に加えて、液体供給装置においては、攪拌駆動は、減速が開始されてから移動方向が反転するまでの時間が、減速により攪拌子が攪拌子の往復移動範囲の一方側から他方側への移動に要する時間よりも長くなるように、キャリッジを往復移動することとする。
【0015】
液体供給装置をこのように構成することで、攪拌駆動により移動される攪拌子が、停止状態にある第2液体収容部に衝突する際の衝撃音を小さくすることができ、また第2液体収容部の損傷を防ぐことができる。
【0016】
上記発明に加えて、液体供給装置においては、攪拌駆動における減速開始から停止するまでの減速度の速度変化の割合は、停止状態から所定速度に加速されるまでの加速度の速度変化の割合よりも大きいこととする。
【0017】
液体供給装置をこのように構成することで、攪拌子の第2液体収容部に対する移動速度を大きくすることができ、攪拌効率の向上を図ることができる。
【0018】
上記発明に加えて、液体供給装置においては、キャリッジの往復移動の幅は、第2液体収容部における撹拌子の移動幅の2倍より大きいこととする。
【0019】
液体供給装置をこのように構成することで、減速が開始されてから移動方向が反転するまでの時間が、減速により攪拌子が攪拌子の往復移動範囲の一方側から他方側への移動に要する時間よりも長くなるように、キャリッジを往復移動させやすくなる。
【0020】
上記発明に加えて、液体供給装置においては、攪拌子の高さは、第2液体収容部の内部の高さの2/6以上かつ5/6以下であることとする。
【0021】
液体供給装置をこのように構成することで、液体の攪拌を効率よく行うことができる。
【0022】
上記発明に加えて、液体供給装置においては、攪拌駆動は、液体噴射駆動に先立って行われることとする。
【0023】
液体供給装置をこのように構成することで、沈降成分が攪拌された液体を液体噴射時に噴射することができる。
【0024】
上記の課題を解決するため、液体噴射装置は、上述した液体供給装置を備えることとする。
【0025】
液体噴射装置をこのように構成することで、液体噴射ヘッドから噴射される液体の沈降成分の濃度の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のインク供給装置を搭載したプリンターの概略構成を示す斜視図である。
【図2】プリンターの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】プリンターに備えられるサブタンクの概略の構成を示す図である。
【図4】プリンターに備えられるサブタンクの概略の構成を示す図である。
【図5】サブタンクの往復移動の仕方を説明する図である。
【図6】サブタンクの往復移動の仕方を説明する図である。
【図7】サブタンクの往復移動の仕方を説明する図である。
【図8】サブタンクの構成を示す図である。
【図9】サブタンクの構成を示す図である。
【図10】サブタンクの構成を示す図である。
【図11】攪拌球の構成を示す図である。
【図12】攪拌球の構成を示す一部切り欠き断面図である。
【図13】攪拌球の構成を示す図である。
【図14】攪拌球の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(プリンター2の全体構成)
本発明の液体供給装置の実施の形態に係るインク供給装置1とこれを搭載した液体噴射装置としてのインクジェットプリンター(以下、単にプリンターと記載する。)2の構成を説明する。
【0028】
図1はインク供給装置1を搭載したインクジェットプリンター(以下、単にプリンターと記載する。)2の概略の構成を示す斜視図である。プリンター2は、液体噴射装置の一例であり、液体としてのインクを、後述する印刷ヘッド4から印刷用紙Pに対して噴射する機能を備える。
【0029】
図1において、プリンター2は、キャリッジ移動手段としてのキャリッジ移動機構3と、液体噴射ヘッドとしての印刷ヘッド4と、用紙搬送機構5と、第1液体収容部としてのメインタンク6と、液体供給管としてのインク供給チューブ7A,7Bと、第2液体収容部としてのサブタンク8と、プリンター2の動作の制御を司る制御部9と、これら構成部を収容する筐体10等を備えている。インク供給装置1は、メインタンク6と、サブタンク8と、インク供給チューブ7A,7B等により構成される。
【0030】
(キャリッジ移動機構3の構成)
キャリッジ移動機構3は、キャリッジ11と、キャリッジモーター(以下、CRモーターと記載する。)12と、CRモーター12の駆動制御を行う制御部9と、ベルト13と、歯車プーリ14と、従動プーリ15等を備えている。
【0031】
ベルト13は、無端ベルトであり、その一部がキャリッジ11の背面に固定されている。このベルト13は、歯車プーリ14と従動プーリ15とによって張設されている。キャリッジ移動機構3、印刷ヘッド4、用紙搬送機構5等は、フレシキブルケーブル17を介して制御部9と接続され、制御部9により駆動が制御される。
【0032】
キャリッジ移動機構3は、図中矢印Mで示す主走査方向にキャリッジ11を往復移動させる機能を有する。具体的には、キャリッジ11の駆動源となるCRモーター12の動力によって、キャリッジ11に固定されるベルト13を駆動し、キャリッジ11を主走査方向Mへ往復移動させる。キャリッジ11の下面には、印刷ヘッド4が備えられている。キャリッジ11を主走査方向Mに移動しながら適宜のタイミングでインクを噴射することで印刷用紙Pへの印刷が行われる。
【0033】
(印刷ヘッド4の構成)
印刷ヘッド4は、インクを噴射する図示外の複数のノズルを有している。また、印刷ヘッド4のインクの噴射方法は、たとえば、ピエゾ式インクジェットあるいはサーマルジェット式インクジェット等を用いることができる。
【0034】
(用紙搬送機構5の構成)
用紙搬送機構5は、印刷用紙Pを搬送するための給紙ローラー18と、この給紙ローラー18を駆動する紙送りモーター19(図2参照)等を備えている。用紙搬送機構5は、給紙ローラー18の駆動により、印刷用紙Pを主走査方向Mと直交する副走査方向に搬送することができる。
【0035】
(メインタンク6の構成)
メインタンク6は、インクを収容している。メインタンク6は、インク供給チューブ7Aを介してサブタンク8と接続されている。したがって、メインタンク6内に収容されるインクをサブタンク8に供給することができる。メインタンク6は、印刷ヘッド4およびサブタンク8よりも下方に配置されている。そして、メインタンク6は、主走査方向Mに往復移動するキャリッジ11に対して、筐体10の底面10Aに固定されている。すなわち、プリンター2は、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンターとして構成されている。メインタンク6とサブタンク8との間には、図示を省略するポンプが備えられ、このポンプにより、メインタンク6内のインクをサブタンク8に供給することができるように構成されている。
【0036】
(サブタンク8の構成)
サブタンク8は、キャリッジ11に取り付けられている。したがって、サブタンク8は、キャリッジ11の主走査方向Mへ往復移動と共に、キャリッジ11と一体的に移動する。サブタンク8は、インク供給チューブ7Aを介してメインタンク6と接続されると共に、インク供給チューブ7Bを介して印刷ヘッド4と接続されている。つまり、メインタンク6からインク供給チューブ7Aを介してサブタンク8に供給されたインクは、一旦、サブタンク8に貯留される。そして、サブタンク8に貯留されたインクは、インク供給チューブ7Bを介して印刷ヘッド4に対して供給される。
【0037】
(インク供給チューブ7A,7Bの構成)
なお、インク供給チューブ7A,7Bの形状としては、特に限定されないが、以下のものを挙げることができる。たとえば、メインタンク6および印刷ヘッド4を単純な直線で繋ぐ直線状、メインタンク6および印刷ヘッド4との間を曲線的に結ぶ弛んだ形状、高い部分と低い部分とが交互に繰り返される部分を含む波形状、あるいは複数のループが連結される部分を含むループ形状等を挙げることができる。
【0038】
また、インク供給チューブ7A,7Bの内部には、インクの流れの方向に沿ってねじられた仕切部(図示省略)が設けられていてもよい。この仕切部は、インク供給チューブ7A,7B内に流入されたインクを攪拌する機能を有している。このように仕切部(図示省略)を設けた場合には、インク供給チューブ7A,7Bに流入されたインクは、ねじれ構造である仕切部に沿うようにインク供給チューブ7A,7B内を流れ、印刷ヘッド4に供給される。これにより、インク供給チューブ7A,7B内のインクを攪拌することができる。
【0039】
インク供給チューブ7A,7Bの材料としては、可撓性を有するものであれば特に限定されるものではなく、エラストマー等を挙げることができる。エラストマーとしては、たとえば、天然ゴム、合成ゴム等の加硫ゴムや、塩化ビニル系、スチレン系、オレフィン系、シリコーン系、フッ素系等のエラストマーを挙げることができる。
【0040】
インク供給チューブ7A,7Bの内径は、インク供給装置1の用途等に併せて決定することができ、特に限定されない。たとえば、インク供給装置1を本実施の形態のようにプリンター2に適用する場合には、インク供給チューブ7A,7Bの内径は、好ましくは、2mm以上5mm以下であり、より好ましくは2mm以上4mm以下である。
【0041】
メインタンク6は、収容されるインクの量が多く重量が重いため、キャリッジ11上に備えることが困難である。また、筐体10内に収容する場合にも、高所より低い場所に設置する方が、重量の重いメインタンク6を支持するための構造を簡単なものとすることができる。したがって、多くの場合、メインタンク6は、筐体10内の底面10Aに備えられている。一方、インクの印刷ヘッド4への供給は、メインタンク6からインク供給チューブ7Aを介して印刷ヘッド4に直接行うよりも、サブタンク8に溜められたインクを印刷ヘッド4に供給する方が、印刷ヘッド4へのインクの供給を安定させることができる。サブタンク8は、印刷ヘッド4よりも高所に配置されることで、サブタンク8内に貯留されているインクが重力の作用を受けて円滑に印刷ヘッド4に供給される。
【0042】
(プリンター2の電気的な構成)
制御部9は、上述のCRモーター12、紙送りモーター19(図2参照)、印刷ヘッド4等の駆動を制御する。すなわち、制御部9は、プリンター2の動作の制御を司る。図2を参照しながら、制御部9の構成と共に、プリンター2の電気的な構成の概略を説明する。
【0043】
プリンター2は、ホストコンピューターHCから入力された画像形成データ等を受け取るインターフェイス20と、制御部9と、紙送りモーター19と、この紙送りモーター19を駆動する紙送りモータードライバー21と、印刷ヘッド4と、印刷ヘッド4を駆動制御する印刷ヘッドドライバー22と、CRモーター12と、このCRモーター12を駆動するCRモータードライバー23と、リニアエンコーダー24、記録用紙検出装置25等を有する。リニアエンコーダー24は、キャリッジ11の移動方向、すなわち主走査方向Mに沿って配置されている。リニアエンコーダー24をキャリッジ11に取り付けられている図示を省略する光センサーにより読み取ることで、キャリッジ11のプリンター2に対する位置および移動方向を検出することができる。
【0044】
制御部9は、CPU(Central Processing Unit)26と、プリンター2の各種動作に係る処理プログラム等が記憶されているPROM(Progromable Read−Only Memory)27と、ホストコンピューターHCからインターフェイス20を介して入力される画像形成データ等が格納・記憶される他、作業用のメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)28と、プリンター2に関する諸情報を記憶するEEPROM(Electrically Erasable Progrommable Read−Only Memory)29と、DCユニット32等を備える。DCユニット32は、図示を省略するPWM回路やタイマ等から構成され、交流を直流に変換するとともに、CPU26からの指令値に応じた直流を紙送りモータードライバー21およびCRモータードライバー23に供給する。CPU26は、モータードライバー21およびCRモータードライバー23を介して紙送りモーター19およびCRモーター12を駆動制御する。たとえば、CRモータ12を駆動制御するときは、CPU26はCRモータードライバー23に制御信号を出力しCRモータードライバー23によってその制御信号に応じてCRモーター12が制御される。
【0045】
制御部9は、印刷開始信号や、リニアエンコーダー24および記録用紙検出装置25からの出力信号および画像形成データ等に基づいて印刷ヘッド4の印刷制御や、紙送りモーター19およびCRモーター12等の駆動制御の他、プリンター2の様々な動作制御を司る。なお、制御部9あるいはCPU26については、ホストコンピューターHCを利用するように構成してもよい。
【0046】
(サブタンク8の構成)
次に、サブタンク8の構成について詳しく説明する。サブタンク8は、図3に示すように、図示外のメインタンク6(図1参照)にインク供給チューブ7Aを介して接続すると共に、インク供給チューブ7Bを介して印刷ヘッド4に接続されている。サブタンク8は、内部にインクが貯留される中空部30を有し、インク供給チューブ7A,7Bとの接続部を除いて密閉された容器として構成されている。中空部30には、攪拌子としての攪拌球31が移動可能に収容されている。サブタンク8は、キャリッジ11に対して固定された状態で取りつけられている。したがって、キャリッジ11が移動すると、サブタンク8もキャリッジ11と一体的に移動する。そして、サブタンク8が移動することにより、攪拌球31が、サブタンク8に対して相対的に移動する。攪拌球31が、サブタンク8に対して相対的に移動することにより、サブタンク8内のインクが攪拌される。
【0047】
サブタンク8は、具体的には、たとえば、図4に示すサブタンク40のように構成することができる。サブタンク40は、全体として直方体を呈し、底面41と、上面42と、インク供給チューブ7Aに接続される第1端面43と、インク供給チューブ7Bに接続される第2端面44と、第1端面43と第2端面44とを繋ぐ側面45を備えるものとして構成することができる。この場合、底面41、上面42、第1端面43、第2端面44および側面45によって囲まれた内側が中空部46として形成される。
【0048】
サブタンク40の内部、すなわち中空部46には、攪拌子としての攪拌球31が移動可能に収容されている。攪拌球31が、サブタンク40内で移動することで、サブタンク40内のインクが攪拌される。インクに含まれる成分は、サブタンク40の下部に沈降し蓄積するので、攪拌球31は、サブタンク40の底部に沿って移動するのが望ましい。
【0049】
(攪拌動作)
次に、プリンター2の攪拌動作について説明する。プリンター2のキャリッジ11には、たとえば、上述したサブタンク40が取り付けられているものとする。プリンター2は、キャリッジ移動機構3に、サブタンク40内のインクを攪拌するための攪拌駆動を行わせる攪拌動作を行う。上述したように、サブタンク40はキャリッジ11に対して固定されている。そのため、キャリッジ11が往復移動すると、サブタンク40は、キャリッジ11と一体的に移動する。
【0050】
サブタンク40が往復移動することで、サブタンク40内の攪拌球31が、サブタンク40に対して相対的に移動し、サブタンク40に貯留されているインクを攪拌することができる。なお、この攪拌動作は、印刷動作に先立って実行することが好ましい。攪拌動作を印刷動作に先立って実行することで、攪拌されたインクを印刷時に噴射することができる。つまり、インクに含まれる成分の濃度変動が解消されたインクを噴射することができ、印刷の品質の向上を図ることができる。
【0051】
図5を参照しながら、プリンター2の攪拌動作におけるサブタンク40の往復移動と攪拌球31の移動等につて具体的に説明する。図5の左側(A)は、サブタンク40の移動およびサブタンク40内の攪拌球31の移動の時間変化を概略的に示している。
【0052】
図5(A)に示すように、サブタンク40は、位置Lと位置Rとの間を往復移動する。この位置Lおよび位置Rは、プリンター2が攪拌動作を行う際におけるキャリッジ11の移動範囲であり、キャリッジ11の可動域内に適宜に設定することができる。たとえば、キャリッジ11の可動域の中央部を中心に設定したり、あるいは、印刷域を外れた位置に設定することができる。本実施の形態では、図1に示すように、プリンター2の印刷領域外に位置Lおよび位置Rが設定されている。
【0053】
サブタンク40内における撹拌球が移動する範囲の一端側となる第1端面43から他端側となる第2端面44との間は、距離Dである。攪拌球31は、サブタンク40内の第1端面43から第2端面44までの距離Dを移動することができる。図5(A)は、攪拌動作を開始する前の初期状態として、サブタンク40が位置Lに配置され、攪拌球31がサブタンク40内の第1端面43と第2端面44との間の略中央に位置している状態から攪拌動作が開始される場合を、一例として示している。
【0054】
図5の中央(B)は、CRモーター12を駆動する駆動電流値Iの時間変化を示す。図5の右側(C)は、サブタンク40の移動速度Vの時間変化を示す。V(L)はキャリッジが中央部より左に位置しているときの移動速度を、V(R)はキャリッジが中央部より右に位置しているとき移動速度を示す。なお、図5(A),(B),(C)の時間軸のスケールは同一のスケールで示されている。したがって、図5(C)の右側に記されているP1,R,R,P2,…は、これらが記されている時間におけるサブタンク40および攪拌球31の位置を示すものである。
【0055】
制御部9は、ホストコンピューターHCからの印刷命令を受信すると、印刷動作に先立って、図5(A)に示すように、サブタンク40を位置Lと位置Rとの間で往復移動するように、CRモーター12を駆動制御する。また、制御部9は、サブタンク40が、位置Lから位置R、および位置Rから位置Lに向かって、加速領域A1に示す加速移動を行い、次いで、定速領域A2に示す定速移動を行い、そして、減速領域A3に示す減速移動を行い、停止領域A4に示す停止を行うように、CRモーター12を駆動制御する。サブタンク40が位置Lと位置Rとの間で往復移動する際に、上述の加速移動、定速移動、減速移動および停止を行うことで、サブタンク40内の攪拌球31は、第1端面43と第2端面44との間を往復移動することができる。
【0056】
(加速移動)
加速領域A1における加速移動では、サブタンク40内に在る攪拌球31を、サブタンク40の移動方向に対して相対的に逆方向に移動させることができる所定の加速度でサブタンク40が移動させられる。加速領域A1における該所定の加速度を発生させるための駆動電流値Iは、インクの粘度、攪拌球31の大きさおよび重さ等に依存するものであり、実験等により求めることができる。かかる駆動電流値Iに関する情報を、サブタンク40の移動位置および移動方向に関する情報と共に、速度・位置情報としてPROM27等に予め記憶させておく。該加速度にてサブタンク40を加速移動させることにより、攪拌球31が、状態S1に示すように、サブタンク40内の第1端面43および第2端面44から離れた位置に位置している場合にも、攪拌球31を、状態S2に示すように、第1端面43に当接する位置に移動させることができる。
【0057】
(定速移動)
定速領域A2における定速移動では、サブタンク40は、加速移動終了時の速度である所定の速度を保って一定の速度で移動する。定速領域A2における定速状態を維持するための駆動電流値Iは、インクの粘度、攪拌球31の大きさおよび重さ等に依存するものであり、実験等により求めることができる。かかる駆動電流値Iに関する情報についても、サブタンク40の移動位置および移動方向に関する情報と共に、速度・位置情報としてPROM27等に予め記憶させておく。定速領域A2においては、加速移動終了時に、攪拌球31は、加速移動時の慣性で僅かに、サブタンク40に対してサブタンク40の移動方向に移動し、その後、サブタンク40と共に一定速度で移動する。
【0058】
(減速移動)
サブタンク40が位置P1まで移動すると、サブタンク40が位置Rに停止することができるように減速移動が開始される。すなわち、減速領域A3における減速移動が開始される。減速領域A3における減速移動では、サブタンク40内に在る攪拌球31が、サブタンク40の移動方向に向かってサブタンク40に対して相対的に移動することができる所定の減速度(負の加速度)でサブタンク40が減速させられる。減速領域A3における該所定の減速度を発生させるための駆動電流値Iは、インクの粘度、攪拌球31の大きさおよび重さ等に依存するものであり、実験等により求めることができる。そして、かかる駆動電流値Iに関する情報についても、サブタンク40の移動位置および移動方向に関する情報と共に、速度・位置情報としてPROM27等に予め記憶させておく。該減速度にてサブタンク40を減速移動させることにより、第1端面43あるいは第2端面44に位置している攪拌球31を、反対側の第2端面44あるいは第1端面43に向けて移動させることができる。
【0059】
ところで、インクの粘度は、インクの温度によっても異なる。したがって、攪拌動作を行う際に、サブタンク40内のインクの温度を測定し、この測定されたインクの温度に基づいて、駆動電流値Iを決定するようにしてもよい。つまり、インク温度と駆動電流値Iとの関係をデーターテーブルとしてPROM27等に予め記憶させておき、攪拌動作を行う際に、測定されたインク温度と該データーテーブルとに基づいて、CRモーター12を駆動制御するようにしてもよい。
【0060】
該データーテーブルの内容となるインク温度とこのインク温度に対応する駆動電流値Iは、インク温度毎に、上述の加速移動、定速移動および減速移動を行うことができる駆動電流値Iを実験等により求め、求めた結果をデーターテーブルとしてROM27等に記憶させておく。インク温度によるインクの粘度変化は、インクの種類等によって異なる。したがって、該データーテーブルをインクの種類毎に備え、プリンター2に設置されるメインタンク6内のインクの種類に応じて、適切なデーターテーブルを用いることが好ましい。なお、プリンター2がある程度の期間同じ場所に設置されている場合は、サブタンク40内のインクの温度は、プリンター2が設置されている環境の温度に平衡していると考えられる。したがって、プリンター2が設置されている場所の気温をインク温度としてもよい。
【0061】
(停止状態の維持)
停止領域A4においては、駆動電流値Iを0として、サブタンク40を所定時間、停止状態に維持する。そして、この停止状態の後、制御部9は、サブタンク40が、位置Rから位置Lに向かって、上述の加速度移動、定速移動、減速移動を行うようにCRモーター12を駆動制御する。サブタンク40が位置Rから位置Lに向かって移動する際には、位置P2から減速移動が開始される。
【0062】
サブタンク40が位置Lと位置Rとの間で往復移動する際に、上述の加速移動、定速移動、減速移動および停止を行うことで、サブタンク40内の攪拌球31は、第1端面43と第2端面44との間を往復移動することができる。攪拌球31が第1端面43と第2端面44との間を往復移動することで、サブタンク40内のインクが攪拌される。
【0063】
(加速移動開始のタイミング)
制御部9は、図5(A)に示すように、減速移動を開始してから加速移動を開始するまでの時間T1が、サブタンク40の減速移動により攪拌球31が第1端面43(第2端面44)から第2端面44(第1端面43)に移動するまでの時間T2以上となるように、CRモーター12を駆動制御することが好ましい。これに対し、T1<T2とした場合には、たとえば、状態S3に示す状態のときに、サブタンク40を加速移動させることになる。
【0064】
つまり、攪拌球31の移動方向と反対方向に対してサブタンク40を加速移動させることになり、サブタンク40の第2端面44と攪拌球31とが双方の移動速度の合計で衝突することになる。そのため衝突時の衝撃音が大きくなったり、あるいはサブタンク40を損傷する虞が高くなる。これに対し、T1≧T2とすることで、停止状態にあるサブタンク40に攪拌球31が衝突するため、衝突時の衝撃音を小さくすることができ、またサブタンク40の損傷を防ぐことができる。
【0065】
時間T1は、インクの粘度や距離D等に応じた値となる時間T2に依存するものである。所定の加速度、所定の減速度、所定の速度で攪拌球31が移動するときの時間T2を予め実験等により求めることで、時間T1を決定することができる。したがって、実験等により求めた時間T2に基づいて、時間T1に関する情報を加速移動開始タイミング情報としてPROM27等に予め記憶させておく。
【0066】
(制御部9によるサブタンク40の移動制御)
PROM27には、位置L,Rおよび位置P1,P2に対するサブタンク40の位置と移動方向および上述の所定の加速度、所定の減速度、所定の速度に関する速度・位置情報と、加速移動開始タイミング情報とが記憶されている。制御部9は、リニアエンコーダー24からの信号に基づき、サブタンク40の位置L,位置Rおよび位置P1,P2に対する位置と移動方向とを検出しながら、PROM27に記憶されている速度・位置情報および加速移動開始タイミング情報に基づき、サブタンク40が上述の加速移動、定速移動、減速移動と加速移動開始のタイミングで往復移動を行うことができるようにCRモーター12を駆動制御する。
【0067】
次に、サブタンク40に上述した動作を行わせるCRモーター12の駆動制御について説明する。上述したように、図5(B)は、CRモーター12の駆動電流値Iを示すグラフである。また、図5(C)は、CRモーター12の駆動により移動されるサブタンク8(キャリッジ11)の移動速度Vと時間経過との関係を示すグラフであり、PROM27には、図5(C)に示す移動速度Vに対応する速度テーブルが記憶されている。
【0068】
サブタンク8は、位置Lまたは位置Rに停止している停止状態から加速させられながら加速領域A1を移動する。この加速領域A1では、CRモーター12は、オープン制御が行われる。つまり加速領域A1における駆動電流値Iは、サブタンク8の移動速度が目標速度V1に到達するまで、CRモーター12の起動時の初期値から上昇する。
【0069】
サブタンク40が、加速領域A1を加速移動させられ、移動速度が目標速度V1に到達すると、駆動電流値Iは一定に保持され、次いで、移動速度が目標速度V2に達すると駆動電流値Iは少し下降させられる。そして、サブタンク40の移動速度が目標速度V3に達すると、制御部9のCRモーター12の制御は、速度PID制御に移行する。定速領域A2では、速度PID制御が行われ、サブタンク8の移動速度が定速速度V3になるデューティ値にてCRモーター12の駆動が行われる。
【0070】
そして、サブタンク8が位置P1に到達すると、制御部9は、駆動電流の印加方向を逆転し、サブタンク8を減速させ、位置Rに停止するように位置PID制御が行われる。CRモーター12は、位置RにてT1>T2となるように所定時間停止された後、位置Rから位置Lに向けて上述の位置Lから位置Rへの同様の速度制御にて駆動される。位置Rから位置Lに向けてサブタンク40が移動される際には、サブタンク8が位置P2に到達したときに、制御部9は、駆動電流の印加方向を逆転し、サブタンク8を減速させ、位置Lに停止するように位置PID制御が行われる。
【0071】
図5に示す例は、サブタンク40の往復移動の移動幅W1は、距離Dの2倍よりも大きく設定されている。そのため、T1<T2としても、攪拌球31が第1端面43と第2端面44に接触しない状態でサブタンク40内を移動する移動不良を起こす虞が少ない。これに対し、図6に示すように、サブタンク40の往復移動の移動幅W2が、距離Dの2倍よりも小さい場合には、T1<T2となると、攪拌球31が第1端面43と第2端面44に接触しない状態でサブタンク40内を移動する移動不良を起こし易い。
【0072】
つまり、図6に示すように、たとえば、攪拌球31がサブタンク40に対して状態S4に示す位置に在るときに、サブタンク40を加速移動させることになり、また、攪拌球31がサブタンク40に対して状態S5に示す位置に在るときに減速移動が開始される。その結果、攪拌球31が第1端面43および第2端面44に接触しない状態で、攪拌球31がサブタンク40内を往復移動する移動不良を起こす虞が高くなる。一方、図6の例では、撹拌球31がサブタンク40に対して状態S4に示す位置に在るときにサブタンク40を加速移動させることで、サブタンクの往復移動の周期を短くでき、サブタンクの往復移動に要する時間を短縮できる。
【0073】
一方、図7に示すように、サブタンク40の往復移動の移動幅W2が、距離Dの倍よりも小さい場合であっても、T1≧T2とすることで、移動不良の発生を防ぐことができる。なお、サブタンク40の往復移動の移動幅W2と距離Dの関係は、種々の条件によって決まるが、図5のようにサブタンク40の往復移動の移動幅W1を距離Dの倍よりも大きくすることで、T1≧T2の関係にし易くなる。
【0074】
(加速度と減速度の速度変化の割合について)
制御部9は、図5に示すように、サブタンク40の減速開始から停止するまでの減速度の速度変化の割合(負の加速度)が、サブタンク40の停止状態から所定速度に加速されるまでの速度変化の割合(加速度)よりも大きくなるように、CRモーター12を駆動制御する。攪拌動作を開始する前の初期状態において、攪拌球31が、サブタンク40内の第1端面43および第2端面44から離れた位置に位置している場合であっても、2回目以降の加速移動時に際しては、第1端面43あるいは第2端面44に位置している。
【0075】
したがって、サブタンク40の減速移動時に、攪拌球31は、サブタンク40内を移動する。つまり、サブタンク40内のインクは、サブタンク40が減速されるときの攪拌球31の移動により攪拌される。このため、サブタンク40の移動を加速移動時の速度変化の割合よりも、減速移動時の速度変化の割合を大きくすることで、攪拌球31のサブタンク40に対する移動速度を大きくすることができ、攪拌効率の向上を図ることができる。
【0076】
(本実施の形態の主な効果)
以上のような構成のプリンター2は、液体としてのインクを収容する第1液体収容部としてのメインタンク6と、インクを噴射する液体噴射ヘッドとしての印刷ヘッド4と、液体供給管としてインク供給チューブ7A,7Bを介してメインタンク6および印刷ヘッド4に接続され、メインタンク6から供給されるインクを収容し、収容されたインクが印刷ヘッド4に供給される第2液体収容部としてのサブタンク40と、印刷ヘッド4およびサブタンク40が搭載されるキャリッジ11を往復移動させるキャリッジ移動手段としてのキャリッジ移動機構3と、サブタンク40内に収容され、キャリッジ11の往復移動の方向に沿って往復移動可能な攪拌子としての攪拌球31とを有し、キャリッジ移動機構3は、キャリッジ11の往復移動の移動方向を反転させる際の減速時において、攪拌球31を、サブタンク40に対して相対的に移動させることができる攪拌駆動を行うこととする。
【0077】
サブタンク40がキャリッジ11に搭載されることで、サブタンク40をキャリッジ11の移動と共に往復移動することができる。そして、キャリッジ11は、往復移動の移動方向を反転させる際の減速時において、攪拌球31が、サブタンク40に対して相対的に移動することができる攪拌駆動を行う。この攪拌動作により、サブタンク40内に在る攪拌球31が、サブタンク40に対して相対的に移動し、サブタンク40内のインクが攪拌される。したがって、サブタンク40内のインクに含まれる沈降成分の濃度の均一化を図ることができる。そのため、印刷ヘッド4から噴射されるインクの沈降成分の濃度の均一化を図ることができる。
【0078】
また、本実施の形態におけるキャリッジ移動機構3の攪拌駆動においては、キャリッジ11の移動方向を反転させる際の減速が開始されてから移動方向を反転するまでの時間が、減速により攪拌球31が攪拌子の往復移動範囲の一方側から他方側に移動するのに要する時間よりも長くなるように、キャリッジ11が往復移動させられる。
【0079】
このように攪拌駆動が行われる場合には、移動する攪拌球31がサブタンク40に衝突する際、サブタンク40が停止状態とされている。そのため、サブタンク40に攪拌球31が衝突する際の衝突時の衝撃音を小さくすることができ、またサブタンク40の損傷を防ぐことができる。
【0080】
また、本実施の形態では、攪拌駆動における減速開始から停止するまでの減速度の速度変化の割合は、停止状態から所定速度に加速されるまでの加速度の速度変化の割合よりも大きいものとされている。
【0081】
攪拌球31は、サブタンク40の減速移動時にサブタンク40内を移動する。したがって、サブタンク40の移動を加速移動時の速度変化の割合に比べて減速移動時の速度変化の割合を大きくすることで、攪拌球31のサブタンク40に対する移動速度を大きくすることができ、攪拌効率の向上を図ることができる。
【0082】
また、本実施の形態では、攪拌駆動は、液体噴射駆動としての印刷動作に先立って行われる。
【0083】
このように、攪拌動作を印刷動作に先立って実行することで、攪拌されたインクを印刷時に噴射することができるため、印刷の品質の向上を図ることができる。
【0084】
なお、プリンター2は、サブタンク40が位置L−R間を移動可能に構成されている。位置Lと位置Rは、たとえば、キャリッジ11の移動範囲の任意の場所に設定することができるが、印刷領域外に設定することで、ユーザーに印刷動作との区別を認識させることができる。これにより、キャリッジ11が往復移動しているにも拘わらず、印刷用紙Pに印刷が行われないことに対して、ユーザーがプリンター2の故障と誤認識してしまうことを防止できる。
【0085】
また、本実施の形態では、キャリッジ11の往復移動の幅Wは、サブタンク40における撹拌子31の移動幅Dの2倍より大きいことが好ましい。
【0086】
キャリッジ11の往復移動の幅Wと移動幅Dとをこのように設定することで、減速が開始されてから移動方向が反転するまでの時間T1が、減速により攪拌子31が攪拌子31の往復移動範囲の一方側から他方側への移動に要する時間T2よりも長くなるように、キャリッジ11を往復移動させやすくなる。
【0087】
(サブタンク8の他の構成)
サブタンク8は次のように構成することもできる。図8は、サブタンク8の他の例を示す斜視図である。図8におけるサブタンク50は、図3におけるサブタンク8に相当する。
【0088】
図8に示すように、サブタンク50は、凹曲面を備えた底面51と、上面52と、インク供給チューブ7Aに接続された第1端面53と、インク供給チューブ7Bに接続された第2端面54と、側面55とを有し、内部が中空部56として形成されている。また、図8に示すように、底面51は、第1端面53、第2端面54および側面55に接続され、かつ、連続した面を有している。また、上面52も、第1端面53、第2端面54および側面55と接続され、かつ、連続した面を有している。
【0089】
サブタンク50の底面51は、中空部56の側から下方に向かって湾曲する凹曲面57を有する。そのため、サブタンク50内に供給されたインクの沈降物は、凹曲面57の凹部分に集まり易い。また、攪拌球31の曲率を、凹曲面57の曲率よりも大きくすることで、攪拌球31は、凹曲面57の最も低い部分に接触しながら移動することができる。
【0090】
インクの沈降物は、撹拌球31の移動する軌道に多く残留し易い。したがって、攪拌球31が移動することによって、インクの沈降物をより効率的に撹拌することができる。
【0091】
サブタンク8は、他の例として、図9に示す構成としてもよい。図9は、サブタンク8の他の一例を示す斜視図である。図9におけるサブタンク60は、図3におけるサブタンク8に相当する。
【0092】
図9に示すように、サブタンク60は、底面61、上面62および側面63が全体として円筒形の円筒部64を有している。そして、円筒部64の両端は、インク供給チューブ7A,7Bが接続される第1端面65および第2端面66によって塞がれている。円筒部64の底面61には、中空部67の側から下方に向かって湾曲する凹曲面68が形成される。そのため、サブタンク60内に供給されたインクの沈降物は、凹曲面68の凹部分に集まり易い。また、攪拌球31の曲率を、凹曲面68の曲率よりも大きくすることで、攪拌球31は、凹曲面68の最も低い部分に接触しながら移動することができる。なお、円筒部64は、主走査方向Mと直交する断面形状が楕円形を呈するようにしてもよい。
【0093】
さらに、サブタンク8は、図10に示す構成としてもよい。図10は、サブタンク8の他の一例を示す斜視図である。 図10におけるサブタンク70は、図3におけるサブタンク8に相当する。図10におけるサブタンク70は、底面71、上面72および側面73が全体として円筒形の円筒部74を有している。そして、円筒部74の両端は、インク供給チューブ7A,7Bが接続される第1端面75および第2端面76によって塞がれている。
【0094】
第1端面75および第2端面76が、中空部77の側から主走査方向Mに沿って外側に膨出した凹曲面78である以外は、図9におけるサブタンク60と同様の形状を有する。図10におけるサブタンク70は、円筒形状を有する円筒部74と、その端面となる第1端面75および第2端面76とが接続され連続した面として構成されている。第1端面75および第2端面76を形成する凹曲面78は、曲率中心が中空部77側に位置する曲面である。すなわち凹曲面78は、円筒部74の両端部が閉じる方向に湾曲する面である。
【0095】
図4に示すサブタンク40は、第1端面43と底面41との接続部は、第1端面43と底面41の内側に位置する角部47となっている。また、第2端面44と底面41との接続部も、第2端面44と底面41の内側に位置する角部47となっている。攪拌球31が第1端面43および第2端面44に当接しても、角部47と攪拌球31との間に隙間ができ、この隙間部分については、インクの攪拌が行われ難い。図8に示すサブタンク50についても同様に、第1端面53および第2端面54と底面51との接続部については、インクの攪拌が行われ難い。図9に示すサブタンク60についても同様に、第1端面65および第2端面66と底面61との接続部については、インクの攪拌が行われ難い。
【0096】
これに対して、図10に示すサブタンク70のように、第1端面75および第2端面76を凹曲面78とすることで、第1端面75および第2端面76と円筒部78との接続部分に攪拌球31が接触しやすくなる。そのため、第1端面75あるいは第2端面76と円筒部75との接続部分のインクを、攪拌球31より撹拌し易くすることができる。
【0097】
ところで、たとえば、図4に示すサブタンク40においては、攪拌球31が、サブタンク40の減速時に第1端面43あるいは第2端面44に衝突する。したがって、サブタンク40の移動方向を反転させる際に、攪拌球31と第1端面43あるいは第2端面44とが衝突する衝突音が発生し易い。図8に示すサブタンク50についても同様に、サブタンク50の移動方向の反転時に、攪拌球31が第1端面53あるいは第2端面54に衝突し衝突音が発生し易い。図9に示すサブタンク60についても同様に、サブタンク60の移動方向の反転時の、攪拌球31が第1端面65あるいは第2端面66に衝突し衝突音が発生し易い。
【0098】
一方、サブタンク70においては、第1端面75および第2端面76を形成する凹曲面78は、中空部77の側から外側に向かって上方に傾斜する傾斜面を有している。すなわち、第2液体収容部としてサブタンク70の内部には、攪拌球31が往復移動する移動範囲の両端側に位置する第1端面75および第2端面76に、攪拌球31の移動範囲の内側となる中空部77側からサブタンク70の端部側に向かって上方に傾斜する傾斜面を有する凹曲面78が形成されている。
【0099】
したがって、サブタンク70の減速移動時に、第1端面75あるいは第2端面76に到達した攪拌球31は、凹曲面78に沿って上方に移動する。そのため、攪拌球31が、凹曲面78(第1端面75,第2端面76)に接触する際の衝突音の発生を抑えることができる。また、サブタンク70が加速移動あるいは減速移動するときに、第1端面75あるいは第2端面76に到達した攪拌球31は、凹曲面78に沿って上方に移動する。また、加速移動あるいは減速移動が終了すると、凹曲面78に沿って上方に移動した攪拌球31は、下方に向かって凹曲面78を下る。つまり、中空部77の側から外側に向かって上方に傾斜する斜面を形成する凹曲面78が備えられることで、攪拌球31を上下方向に移動させることができる。これにより、サブタンク70内のインクを上下方向にも攪拌することができる。
【0100】
上述のサブタンク40,50,60,70(サブタンク40等)の第1端面43,53,65,75(第1端面43等)および第2端面44,54,66,76(第2端面44等)に接続されるインク供給チューブ7A,7Bの接続部は、サブタンク40等の内部の高さHに対して1/3〜2/3の範囲に設けることが好ましい。
【0101】
該接続部を高さHに対して1/3未満の高さに設けると、インクに含まれる沈降成分が沈降したときに、沈降成分の濃度が濃いインクが印刷ヘッド4に送られてしまい、印刷結果の品質を損なう虞がある。逆に、該接続部を高さHに対して2/3よりも高い高さに設けると、インク内に気泡が発生したときに、気泡が印刷ヘッド4に送られ易くなり、印刷ヘッド4において噴射不良を招く原因になり易い。
【0102】
(攪拌球31の構成)
攪拌球31は、インクの比重よりも高い比重の材質を用いることが好ましい。たとえば、2.5g/cm以上の比重の材質を用いることが好ましい。特に、インクの顔料として、たとえば酸化チタンの沈降性物質を含む沈降性インクは、染料系のインクに比べ比重が大きい。攪拌球31の比重を2.5g/cm以上とすることで、比重の大きなインクに対して沈み易くすることができ、インクの攪拌を行い易くなる。
【0103】
なお、撹拌子の比重は、撹拌子が比重の異なる複数の部材からなる場合は、撹拌子全体の質量を撹拌子全体の体積で割ったものである。また、インクに撹拌子が沈む場合は、撹拌子の比重がインクの比重より高いとすることもできる。
【0104】
攪拌球31の材質としては、ステンレスや、ケイ酸塩を主成分とするガラス、あるいは酸化ジルコニウム等を挙げることができる。攪拌球31の比重がインクの比重よりも高いことによって、サブタンク40,50,60,70(サブタンク40等)の内部で沈降した沈降成分の撹拌を効果的に行うことができる。
【0105】
インク内の沈降成分が沈降する場合、沈降成分の濃度は、サブタンク40等の下側ほど高く、上側ほど低くなる。したがって、攪拌球31が沈降成分の濃度の濃い下側の部分だけで移動しても、沈降成分の攪拌を十分に行えない虞がある。そこで、攪拌球31の高さに対応する直径は、サブタンク40等の内部の高さHに対して2/6以上5/6以下に設定することが好ましい。
【0106】
2/6以上とすることで、攪拌球31が移動したときに、サブタンク40等の底面41,51,61,71等(底面41等)および上面42,52,62,72(上面42等)に亘るインクの流れを発生させ易くなる。また5/6以下とすることで、攪拌球31の上方にサブタンク40等の第1端面43等(第1端面53,65,75)および第2端面44等(第2端面54,66,76)に亘るインクの流れを発生させ易くなる。すなわち、攪拌球31の移動方向に沿う方向に、インクの流れを発生させ易くなる。したがって、攪拌球31の直径を、サブタンク40等の内部の高さHに対して2/6以上5/6以下に設定することで、インクの攪拌を効率よく行うことができる。
【0107】
印刷ヘッド4からインクが噴射される際、すなわち印刷動作時におけるキャリッジ11の往復移動により攪拌球31が移動すると、攪拌球31が、サブタンク40等の第1端面43等および第2端面44等に当たり、衝突音が発生する虞がある。そこで、印刷動作時におけるキャリッジ11の往復移動における加速度および減速度を、攪拌駆動におけるキャリッジ11の加速度および減速度よりも小さいものとすると共に、攪拌球31の重さおよび形状を、印刷動作時におけるキャリッジ11の往復移動によっては攪拌球31が移動しないように設定することが好ましい。
【0108】
このようにキャリッジ11の往復移動時の加速と減速、および攪拌球31の重さと形状を設定することで、印刷動作時におけるキャリッジ11の往復移動時に、攪拌球31が、サブタンク40等の第1端面43等および第2端面44等に当たり難くすることができ衝突音の発生を防止できる。印刷動作時のキャリッジ11の往復移動によっては移動しないようにしながら、攪拌駆動時のキャリッジ11の往復移動においては移動することができる攪拌球31の重さおよび形状は、キャリッジ11の往復移動時の加速度および減速度やインクの粘度等に依存するものであり、実験等により求めることができる。
【0109】
キャリッジ11の移動により移動し難い攪拌球31の形状としては、攪拌球31の表面に凹凸を形成、攪拌球31が移動する際のインクに対する抵抗を増すことが考えられる。逆に、攪拌球31を表面が滑らかな球体とすることで、攪拌球31が移動する際のインクに対する抵抗を少ないものとすることができ、キャリッジ11の移動により移動し易いものとなる。
【0110】
(攪拌球の他の構成)
さらに、攪拌球は以下のように構成してもよい。攪拌球31は、上述したように、ステンレスや、ケイ酸塩を主成分とするガラス、あるいは酸化ジルコニウム等の材質から形成することができる。しかしながら、一般に、サブタンク40等は、ポリエチレン材等からなる硬質の樹脂から形成されている。そのため、攪拌球31が往復移動する際、サブタンク40等の内壁に衝突すると、衝突音がする虞がある。
【0111】
そこで、攪拌球を図11に示す攪拌球80のように構成することが好ましい。図11は、攪拌球80の断面の構成を示す図である。攪拌球80は、コア部81とこのコア部81を被覆する弾性部82とにより構成されている。コア部81を弾性部82により被覆することで、攪拌球80がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝突音を低減することができる。なお、弾性部82は、ショア硬度Aを10度以上70度以下とすることで、攪拌球80の移動を確保しつつ、攪拌球80がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝突音を低減することができる。弾性部82のショアA硬度が10度未満となると、弾性部82の弾性変形が大きくなり、攪拌球80の転がり抵抗が大きくなり、攪拌球80の移動がスムーズに行えない虞がある。一方、弾性部82のショアA硬度が70度を超える場合は、衝突音の発生を有効に防止することができなくなる。
【0112】
また、弾性部82の反発係数を高くすることで、攪拌球80が、サブタンク40等の内壁に当たって跳ね返るときの速度を速くすることができる。これにより、攪拌をより効率的に行うことができる。なお、サブタンク40等に対する攪拌球80の反発係数を0.4以上0.9以下とすることが好ましい。反発係数を0.4以上とすることで、インクの流体抵抗に抗して、攪拌球80の跳ね返り後の速度を高くすることができる。また、反発係数を0.9以下とすることで、攪拌球80がサブタンク40等に衝突する際に発生する衝突音を抑え易くすることができる。なお、弾性部82は、ショア硬度Aを25度以上55度以下とすることで、攪拌球80がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝突音を低減することに加えて、反発係数を上述の0.4以上0.9以下に設定し易い。
【0113】
コア部81は、インクの比重よりも大きな比重に構成され、弾性部82を含めて、攪拌球80は、インクの比重よりも高い比重に構成されている。攪拌球80の比重は、2.5g/cm以上であることが好ましい。特に、インクの顔料として、たとえば酸化チタンの沈降性物質を含む沈降性インクは、染料系のインクに比べ比重が大きい。攪拌球80の比重を2.5g/cm以上とすることで、比重の大きなインクに対して沈み易くすることができ、インクの攪拌を行い易くなる。
【0114】
コア部81は、たとえば、ケイ酸塩を主成分とするガラス(比重:約2.9g/cm)、ステンレス(比重:約7.82g/cm)、酸化ジルコニウム(比重:約6.4g/cm)、ニッケル(比重:約8.9g/cm)、鉛(比重:約11.34g/cm)等の材質から形成することができる。これらの材質によりコア部81を形成することで、攪拌球80の比重を容易に高くすることができる。弾性部82は、弾性を有しているものであれば特に限定されず、たとえば、エラストマー等を挙げることができる。エラストマーとしては、たとえば、天然ゴム、合成ゴム等の加硫ゴムや、塩化ビニル系、スチレン系、オレフィン系、シリコーン系、フッ素系等のエラストマーを挙げることができる。また、合成ゴムとしては、クロロプレンゴム等を挙げることができる。インクに対する耐変質性の点から、シリコーン系のエラストマーにより弾性部82を形成することが好ましい。
【0115】
攪拌球は、図12に示す攪拌球90のように構成することができる。図12は、攪拌球90の断面の構成を示す一部切り欠き段面図である。図12に示すように、攪拌球90は、コア部91とこのコア部91を被覆する弾性部92とにより構成されている。弾性部92の表面には、全体に亘って複数の突起部93が形成されている。つまり、弾性部92の表面は、凹凸面94に形成されている。コア部91は、コア部81と同様の材質により形成することができる。
【0116】
突起部93は、サブタンク40等が攪拌移動させられ、攪拌球90がサブタンク40等の内壁に衝突したときに、その衝撃で変形することができるように、太さやその他の形状等が設定されている。攪拌球90が、サブタンク40等の内壁に衝突したとき、突起部93が変形する。そのため、弾性部92の弾性に加えて、突起部93の変形によっても衝撃を吸収することができる。つまり、突起部93を設けることにより、攪拌球90がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝突音をより低減することができる。また、弾性部92の表面が凹凸面94に形性されることで、攪拌球90が移動したり、回転した際に、攪拌球90の周囲に乱流が発生し易くなり、インクが攪拌され易くなる。
【0117】
また、攪拌球は、図13に示す攪拌球95のように構成することができる。図13は、攪拌球95の外観を示す図である。図13に示すように、攪拌球95は、コア部91とこのコア部91を被覆する弾性部96とにより構成されている。弾性部96の表面には、凸条状の突起部97が、全体に亘って亀甲の格子状に形成されている。つまり、弾性部96の表面は、凹凸面98に形成されている。突起部97は、サブタンク40等が攪拌移動させられ、攪拌球95がサブタンク40等の内壁に衝突したときに、その衝撃で変形することができるように、凸条の太さやその他の形状等が設定されている。攪拌球95が、サブタンク40等の内壁に衝突したとき、突起部97が変形する。そのため、弾性部96の弾性に加えて、突起部97の変形によっても衝撃を吸収することができる。つまり、突起部97を設けることにより、攪拌球95がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝突音をより低減することができる。また、弾性部96の表面が凹凸面98に形成されることで、攪拌球90が移動したり、回転した際に、攪拌球90の周囲に乱流が発生し易くなり、インクが攪拌され易くなる。
【0118】
攪拌球は、図14に示す攪拌球100のように構成することができる。図14は、攪拌球100の断面の構成を示す図である。図13に示すように、攪拌球100は、コア部101とこのコア部101を被覆する弾性部102とにより構成されている。弾性部102は、たとえば、発泡ウレタン等により形成される発泡体とされている。弾性部102を発泡体とすることで、攪拌球100が、サブタンク40等の内壁に衝突したとき、弾性部102が変形し易く、衝撃が吸収され易い。そのため、弾性部102を発泡体とすることで、攪拌球100がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝突音をより低減することができる。
【0119】
上述した攪拌子31,80,90,95,100(以下、攪拌球31等と記載する。)の比重は、インクの比重に対して、2倍以上8倍以下とすることが好ましい。攪拌球31等の比重をインクの比重の2倍以上とすることで、攪拌球31等が沈み易くなり、攪拌球31等を沈降物が溜まり易いサブタンク40の底部に沿って移動させ易くなり、インクの攪拌を効率的に行うことができる。特に、インクの顔料として酸化チタンを含む場合には、インクの比重が重くなる。
【0120】
そのため、攪拌子31等の比重をインクの比重に併せて重くする必要があるが、攪拌球31等の比重が大きくなるほど、攪拌球31等の移動の慣性力は大きくなる。そのため、攪拌球31等がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝撃が大きくなり、衝突音が大きくなり易い。そこで、攪拌球31等のインクに対する比重を8倍以下とすることで、攪拌球31等をインクに沈み易くすると共に、攪拌球31等がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝突音の低減を図ることができる。
【0121】
なお、攪拌子は、攪拌球31のように球体を呈するほか、ラグビーボールのような楕円球体あるいは、角部が丸い多面体等の形状としてもよい。
【0122】
(本実施の形態の主な効果)
以上のようにプリンター2は、液体としてのインクを収容する第1液体収容部としてのメインタンク6と、インクを噴射する液体噴射ヘッドとしての印刷ヘッド4と、第2液体収容部としてのサブタンク40等と、キャリッジ移動手段としてのキャリッジ移動機構3と、攪拌子としての攪拌球80とを有し、キャリッジ移動機構3は、キャリッジ11の往復移動の移動方向を反転させる際の減速時において、攪拌球80が、サブタンク40等に対して相対的に移動することができる攪拌駆動を行う。そして、攪拌球80は、コア部81とこのコア部を覆う弾性部82とを有し、比重がインクよりも大きなものとされている。
【0123】
サブタンク40等がキャリッジ11に搭載されることで、サブタンク40等をキャリッジ11の移動と共に往復移動することができる。そして、キャリッジ11は、往復移動の移動方向を反転させる際の減速時において、攪拌球80が、サブタンク40等に対して相対的に移動することができる攪拌駆動を行う。この攪拌動作により、サブタンク40等内に在る攪拌球80が、サブタンク40等に対して相対的に移動し、サブタンク40等内のインクが攪拌される。したがって、サブタンク40等内のインクに含まれる沈降成分の濃度の均一化を図ることができる。そのため、印刷ヘッド4から噴射されるインクの沈降成分の濃度の均一化を図ることができる。さらに、攪拌球80は、コア部81が弾性部82により覆われ弾性を有している。攪拌球80が弾性を有することで、攪拌球80がサブタンク40等内で移動する際にサブタンク40等に衝突しても、衝突により発生する衝突音を低減することができる。また、攪拌球80に弾性部82を設けることで、サブタンク40等の側に攪拌球80との衝突の衝撃を緩衝する部材を設けなくても該衝撃を緩衝することができる。そのため、サブタンク40等の構造の複雑化を抑えながら、サブタンク40等と攪拌子80との衝突時の衝撃を緩衝することができる。
【0124】
また、本実施の形態における攪拌球は、攪拌球90,95として示すように、弾性部92,96の表面は、突起部93,97により形成される凹凸面94,98として構成されている。攪拌球90,95の表面が凹凸面94,98に凹凸に形成されることで、攪拌球90,95が移動したり、回転した際に、攪拌球90,95の周囲に乱流が発生し易くなり、インクが攪拌され易くなる。また、突起部93,97は、攪拌球90,95がサブタンク40に衝突した際に変形することができるように構成されている。このように突起部93,97を構成することで、攪拌球90,95がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝撃を緩衝することができる。このため、攪拌球90,95がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝突音をより低減することができる。
【0125】
また、本実施の形態における攪拌球は、攪拌球100として示すように、弾性部102が発泡体である。弾性部102を発泡体とすることで、攪拌球100が、サブタンク40等の内壁に衝突したとき、弾性部102が変形し易く、衝撃が吸収され易い。そのため、弾性部102を発泡体とすることで、攪拌球100がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝突音をより低減することができる。なお、攪拌球90,95の弾性部92,95を発泡体で形成してもよい。この場合には、突起部93,97において突起部93,97がより柔軟に変形し易くなる。そのため、攪拌球90,95が、サブタンク40等の内壁に衝突したときの衝撃が一層吸収され易くなる。
【0126】
また、弾性部102の発泡体は、発泡体の多孔質内にインクを吸収することができるように構成してもよい。このように弾性部102の発泡体を構成することで、攪拌球100がサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝突音をさらに低減することができる。これは、次のような理由によるものと考えられる。インクを吸収することができるように発泡体を構成すると、攪拌球100がサブタンク40等の内壁に衝突した際の衝撃で弾性部102が変形したときに、多孔質内に吸収されているインクが多孔質内から攪拌球100の外部に向かって移動可能となる。インクが多孔質内から攪拌球100の外部に向かって移動することにより、攪拌球100のサブタンク40等の内壁に衝突したときの衝撃が緩衝され、衝突音の低減が図られると考えられる。
【0127】
また、本実施の形態における攪拌球31,80,90,95,100の比重を、インクの比重に対して、2倍以上8倍以下とすることで、攪拌球31等が沈み易くなり、攪拌球31等を沈降物が溜まり易いサブタンク40の底部に沿って移動させ易くなる。つまり、攪拌球31等によるインクの攪拌を効率的に行うことができる。
【0128】
なお、本実施の形態における攪拌球31,80,90,95,100の高さは、サブタンク40等の内部の高さHに対して2/6以上5/6以下に設定することが好ましい。2/6以上とすることで、攪拌球31等が移動したときに、サブタンク40等の底面41,51,61,71および上面42,52,62,72に亘るインクの流れを発生させ易くなる。また5/6以下とすることで、攪拌球31等の上方にサブタンク40等の第1端面43等(第1端面53,65,75)および第2端面44等(第2端面54,66,76)に亘るインクの流れを発生させ易くなる。すなわち、攪拌球31等の移動方向に沿う方向に、インクの流れを発生させ易くなる。したがって、攪拌球31等の直径を、サブタンク40等の内部の高さHに対して2/6以上5/6以下に設定することで、インクの攪拌を効率よく行うことができる。
【0129】
上述の沈降性インクとは、一般的な顔料インクに比べて、溶媒と顔料との比重差が大きいインクを示す。具体的には、分散溶媒(水は比重1、有機溶媒は1以下)の比重に対して、比重差が1以上の沈降性物質を顔料として有するインクを言う。上述の酸化チタンの比重は3.7〜4.2g/cmであり、酸化チタンを含むインクは沈降性インクである。
【0130】
沈降性物質とは、インクの組成物にあっては、たとえば、無機顔料、金属顔料、および中空樹脂粒子から選択される少なくとも1種とすることができる。
【0131】
無機顔料としては、たとえば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0132】
金属顔料としては、たとえば、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタンなどの単体、または、これらの金属の合金などを挙げることができる。
【0133】
中空樹脂粒子としては、たとえば、米国特許4880465号や特許3562754号などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を挙げることができる。なお、中空樹脂粒子としては、たとえば、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されているものである。中空樹脂粒子は、白色顔料として使用することができる。
【0134】
以下、メインタンク6に収容される沈降性インクのインク組成物において、白色系顔料を含む場合、白色系顔料としては、たとえば、上記の酸化チタンや中空樹脂粒子を用いることができる。白色系顔料の含有量(固形量)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5質量%以上20質量%以下、より好ましくは8質量%以上15質量%以下である。白色系顔料の含有量が上記範囲を超えると、印刷ヘッド4の目詰まり等が発生する場合がある。また白色系顔料の含有量が上記範囲未満であると、白色度が不足する場合がある。そして、分散性向上のため、白色系顔料の粒径を、好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下とする。
【0135】
沈降性インクのインク組成物は、顔料を定着させる樹脂を含むことができる。樹脂としては、アクリル系樹脂(例えば、アルマテックス(三井化学社製))、ウレタン系樹脂(例えば、WBR−022U(大成ファインケミカル社製))等が挙げられる。樹脂の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。
【0136】
沈降性インクのインク組成物は、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0137】
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオ−ル、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
【0138】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0139】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0140】
また、沈降性インクのインク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0141】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デンシ−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0142】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0143】
さらに、沈降性インクのインク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
【0144】
上記界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0145】
沈降性インクのインク組成物は、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、たとえば、インク組成物をインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
【0146】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0147】
上記多価アルコールの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。
【0148】
沈降性インクのインク組成物は、溶媒として水を含有することができる。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0149】
さらに、沈降性インクのインク組成物は、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0150】
なお、沈降性インクのインク組成物として、水系インク組成物を例として説明しているが、紫外線硬化型インク等を用いてもよい。紫外線硬化型インクを用いる場合には、沈降し得る成分として、たとえば、光重合開始剤等を挙げることができる。
【0151】
なお、上述の実施の形態におけるプリンター2の概念には、インク以外の他の液体(液体そのものや、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流動性を有する材質を含む)を噴射したり噴射したりする流体噴射装置を含むようにすることもできる。そのようなものとしては、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する流体噴射装置等がある。
【0152】
さらに、本発明のプリンター2の概念に含まれるものとしては、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置等がある。
【符号の説明】
【0153】
1 … インク供給装置(液体供給装置) 2 … プリンター(液体噴射装置) 3 … キャリッジ移動機構(キャリッジ移動手段) 4 … 印刷ヘッド(液体噴射ヘッド) 6 … メインタンク(第1液体収容部) 7A,7B … インク供給チューブ(液体供給管) 8,40,50,60,70 … サブタンク(第2液体収容部) 11 … キャリッジ 30,46,56,67,77 … 中空部(内部)
31 … 攪拌球(攪拌子) 78 … 凹曲面(傾斜面) 75 … 第1端面(傾斜面) 76 … 第2端面(傾斜面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する第1液体収容部と、
上記液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
液体供給管を介して上記第1液体収容部および前記液体噴射ヘッドに接続され、上記第1液体収容部から供給される液体を収容し、収容された上記液体が上記液体噴射ヘッドに供給される第2液体収容部と、
上記液体噴射ヘッドおよび上記第2液体収容部が搭載されるキャリッジを往復移動させるキャリッジ移動手段と、
上記第2液体収容部内に収容され、上記キャリッジの往復移動の方向に沿って往復移動することができる攪拌子と、
を有し、
上記キャリッジ移動手段は、上記キャリッジの往復移動の移動方向を反転させる際の減速時において、上記攪拌子を、上記第2液体収容部に対して相対的に移動させる攪拌駆動を行う、
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体供給装置であって、
前記攪拌駆動は、
前記減速が開始されてから移動方向が反転するまでの時間が、前記減速により前記攪拌子が前記攪拌子の往復移動範囲の一方側から他方側への移動に要する時間よりも長くなるように、前記キャリッジを往復移動する、
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体供給装置であって、
前記攪拌駆動における減速開始から停止するまでの減速度の速度変化の割合は、停止状態から所定速度に加速されるまでの加速度の速度変化の割合よりも大きい、
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の液体供給装置において、
前記キャリッジの前記往復移動の幅は、前記第2液体収容部における前記撹拌子の移動幅の2倍より大きい、
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の液体供給装置であって、
前記攪拌子の高さは、
前記第2液体収容部の内部の高さの2/6以上かつ5/6以下である、
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の液体供給装置において、
前記攪拌駆動は、前記液体噴射駆動に先立って行われる、
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の液体供給装置を備えることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−35554(P2012−35554A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179205(P2010−179205)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】