説明

液体供給装置、液体噴射装置及び液体供給方法

【課題】液体供給流路の途中に設けられたポンプ室内における気泡の滞留を抑制することのできる液体供給装置、及びそのような液体供給装置を備えた液体噴射装置、並びに液体供給方法を提供する。
【解決手段】プリンタ11のインク供給装置14は、インクカートリッジ13から記録ヘッドユニット12に向けてインクを供給するインク流路15a,15b,15c,15dとポンプ43とを備える。インク供給装置14は、ポンプ室の壁面の一部を構成してポンプ室の容積を増減させるように変位するダイアフラム37と、負圧室43bと、負圧室43b内に発生させた負圧によってポンプ室の容積が増加する方向にダイアフラム37を変位させる変位機構と、大気開放機構48とを備え、負圧発生装置47を駆動して上流側からポンプ室内にインクを流入させるとともに、大気開放機構48によって負圧室43b内を大気開放することでポンプ室内からインクを流出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給装置、液体噴射装置及び液体供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体をターゲットに対して噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)が広く知られている。このプリンタは、記録ヘッド(液体噴射手段)に供給されるインク(液体)を記録ヘッドに形成されたノズルから噴射することによりターゲットとしての記録媒体に印刷を施すようになっている。そして、こうしたプリンタにおいて、近時は、例えば特許文献1に記載されるように、インクカートリッジ(液体供給源)と記録ヘッドとの間を接続するインク流路(液体供給流路)の途中に、インクカートリッジ側から記録ヘッド側にインクを加圧供給するためにポンプ駆動するポンプを備えたプリンタが提案されている。
【0003】
すなわち、この特許文献1のプリンタにおいては、インク流路の途中にポンプのポンプ室が設けられ、そのポンプ室内には、インクカートリッジ側からインクを導入するためのインク導入口と、記録ヘッド側にインクを導出するためのインク導出口とが設けられている。また、ポンプ室の壁面の一部がダイアフラムによって構成されているとともに、ポンプ室内には、該ポンプ室の容積を増加する方向にダイアフラムを付勢するばねが設けられている。
【0004】
そして、ポンプ室外に設けられたアクチュエータがばねの付勢力に抗してダイアフラムを押圧してポンプ室の容積を減少する方向に変位させることで、ポンプ室内のインクがインク導出口から記録ヘッド側に供給されるようになっている。また、アクチュエータによる押圧を解除すると、ばねの付勢力によってダイアフラムがポンプ室の容積を増大する方向に変位して、インク導入口を通じてインクカートリッジからポンプ室内にインクが導入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−164698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、こうしたプリンタにあっては、その構造上、例えばインクカートリッジの交換時等にインク流路に空気が入り込み、インク流路に設けられたポンプ室内に気泡となって滞留してしまうことがあった。そして、ポンプ室内に気泡が滞留していると、インクとともに流入してくる空気や壁面を透過して入ってきた空気によって気泡がさらに大きく成長してしまうことがあった。このような気泡がポンプ室内に存在すると、ダイアフラムの変位に伴う圧力変動を気泡が吸収してしまい、記録ヘッドへのインクの供給性が低下する虞があった。また、成長した気泡が記録ヘッド側に流れてしまうと、ドット抜けなどが生じて印刷品質が低下するという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体供給流路の途中に設けられたポンプ室内における気泡の滞留を抑制することのできる液体供給装置、及びそのような液体供給装置を備えた液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の液体供給装置は、液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、該液体供給流路の途中にポンプ室が設けられたポンプとを備えた液体供給装置において、前記ポンプ室の壁面の一部を構成して該ポンプ室の容積を増減させるように変位する変位部材と、該変位部材が前記ポンプ室との隔壁を構成するように、前記ポンプ室の外側に設けられた負圧室と、駆動時に前記負圧室内に負圧を発生させる負圧発生装置を有して、前記負圧室内に発生させた負圧によって前記ポンプ室の容積が増加する方向に前記変位部材を変位させる変位機構と、前記負圧室内を大気開放するための大気開放機構と、を備え、前記変位機構は、前記負圧発生装置を駆動して、上流側から前記ポンプ室内に液体を流入させるとともに、前記大気開放機構によって前記負圧室内を大気開放することで、前記ポンプ室内から前記液体を流出させる。
【0009】
この構成によれば、負圧発生装置を駆動して負圧室内に負圧を発生させることによって変位部材を変位させ、上流側からポンプ室内に液体を流入させることができる。また、負圧発生装置の駆動停止時に大気開放機構により負圧室内を大気開放することで、ポンプ室内から液体を流出させることができる。したがって、液体をポンプ室から吐出させる吐出圧が得られるとともに、混入した気泡を押し出す力が働くために、ポンプ室内における気泡の滞留を抑制することができる。なお、ポンプ室に気泡が滞留していると、上流側から流れてくる空気などによって気泡を大きく成長させてしまう虞があるが、滞留を抑制することによって、気泡を成長させることなく下流側に流すことができる。
【0010】
本発明の液体供給装置は、前記変位部材を前記ポンプ室の容積が減少する方向に付勢する付勢部材をさらに備え、前記変位機構は、前記負圧発生装置の駆動時に、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ポンプ室の容積が増加する方向に前記変位部材を変位させ、前記負圧発生装置の駆動停止時に、前記大気開放機構によって前記負圧室内を大気開放することで、前記付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させて前記ポンプ室を加圧状態とする。
【0011】
この構成によれば、負圧発生装置を駆動して液体供給源側となる上流側からポンプ室内に液体を流入させた後、負圧発生装置の駆動を停止するとともに付勢部材の付勢力を変位部材に作用させることで、ポンプ室を加圧状態とすることができる。したがって、液体をポンプ室から吐出させる吐出圧が得られるとともに、混入した気泡を押し出す力が働くために、ポンプ室内における気泡の滞留を抑制することができる。なお、ポンプ室に気泡が滞留していると、上流側から流れてくる空気などによって気泡を大きく成長させてしまう虞があるが、滞留を抑制することによって、気泡を成長させることなく下流側に流すことができる。また、例えばガス透過性が低い材料でポンプ室を構成した場合でも、空気の透過を完全に防止することは難しいが、負圧発生装置が駆動しているとき以外は常時ポンプ室内を加圧状態に保持することによって、空気が壁面を透過してポンプ室に入ってくることを抑制することができる。さらに、ガス透過性を有するプラスチック等でポンプ室が形成されている場合には、ポンプ室内に混入した空気を加圧力で透過させて液体供給流路外に排出することができる。すなわち、付勢部材の付勢力によって、液体供給装置の電源を切っている間にもポンプ室を加圧状態に保持することができるので、空気を排出する時間を充分確保して、ポンプ室内に混入した気泡を下流側に流すことなく消滅させることもできる。
【0012】
本発明の液体供給装置は、前記液体供給流路における前記ポンプ室よりも上流側となる位置に設けられ、上流側から下流側への液体の通過を許容する第1の一方向弁と、前記液体供給流路における前記ポンプ室よりも下流側となる位置に設けられ、上流側から下流側への液体の通過を許容する第2の一方向弁と、前記液体供給流路における前記第2の一方向弁よりも下流側となる位置に設けられ、常には閉弁状態となっているとともに、液体の消費によって下流側が所定圧力以下に減圧すると開弁状態となる開閉弁とをさらに備える。
【0013】
この構成によれば、液体供給流路におけるポンプ室よりも上流側となる位置に上流側から下流側への液体の通過を許容する第1の一方向弁が設けられているため、ポンプ室内が加圧状態に保持されていても、上流側へ液体が逆流することが抑制される。また、ポンプ室よりも下流側となる位置に上流側から下流側への液体の通過を許容する第2の一方向弁が設けられているため、変位機構を駆動して上流側からポンプ室内に液体を流入させる際に、下流側からポンプ室側へ液体が逆流することが抑制される。さらに、液体供給流路における第2の一方向弁よりも下流側となる位置には、常には閉弁状態となっているとともに、液体の消費によって下流側が所定圧力以下に減圧すると開弁状態となる開閉弁が設けられている。したがって、ポンプ室内が加圧状態に保持されていても、開閉弁が閉弁状態となっているときには液体が供給されない。そして、液体の消費によって下流側が所定圧力以下に減圧すると開閉弁が開弁状態となるので、下流側での液体消費に応じて液体を供給することができる。
【0014】
本発明の液体供給装置は、前記液体供給流路及び前記ポンプ室を形成する第1の形成部材と、前記負圧室を形成する第2の形成部材とが、前記変位部材を挟持する態様で積層構造をなしている。
【0015】
この構成によれば、液体供給流路及びポンプ室を形成する第1の形成部材と、負圧室を形成する第2の形成部材とが、変位部材を挟持する態様で積層構造をなしているため、液体供給装置をコンパクトで省スペースな構成とすることができるとともに、組み立て作業が容易になる。
【0016】
本発明の液体供給装置において、前記変位部材を前記ポンプ室の容積が減少する方向に付勢する付勢部材は、前記ポンプ室の外側に設けられたばね部材である。
この構成によれば、付勢部材としてのばね部材が、例えば負圧室など、ポンプ室の外側に設けられているので、液体と接触することなく変位部材を付勢することができる。したがって、ばね部材が液体と接触して不要な化学変化が生じることを回避できる。また、ばね部材がポンプ室内にある場合には、ばね部材に気泡がトラップされて、クリーニング等によっても排出されにくくなってしまう虞があるが、ばね部材がポンプ室の外側に設けられているので、ポンプ室内における気泡の滞留を抑制することができる。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射手段と、該液体噴射手段に液体を供給する上記液体供給装置とを備えた。
この構成によれば、上記液体供給装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の液体供給方法は、液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路の途中にポンプ室が設けられたポンプを備えた液体供給装置における液体供給方法であって、前記ポンプ室の壁面の一部として該ポンプ室の容積を増減させるように変位する変位部材を、変位機構を駆動して、前記変位部材が前記ポンプ室との隔壁を構成するように前記ポンプ室の外側に設けられた負圧室に負圧を発生させることで、前記ポンプ室の容積が増加する方向に変位させる工程と、前記変位機構の駆動停止時に、前記負圧室内を大気開放することで、前記ポンプ室の容積が減少する方向に前記変位部材を変位させる工程とを備えた。
【0019】
この構成によれば、上記液体供給装置と同様の作用効果を得ることができる。
本発明の液体供給方法は、前記ポンプ室の容積が増加する方向に前記変位部材を変位させる工程では、前記ポンプ室の容積が減少する方向に前記変位部材を付勢する付勢部材の付勢力に抗して前記変位部材を変位させ、前記ポンプ室の容積が減少する方向に前記変位部材を変位させる工程では、前記変位部材に前記付勢部材の付勢力を作用させて前記ポンプ室を加圧状態とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施形態におけるインクジェット式プリンタの模式図。
【図2】(a)吸引駆動時、(b)吐出駆動時におけるインク供給装置の模式断面図。
【図3】インクカートリッジを装着した状態のインク供給システムを示す斜視図。
【図4】インク供給システムの斜視図。
【図5】インク供給システムの分解斜視図。
【図6】カバーの平面図。
【図7】カバーの裏面を示す斜視図。
【図8】カバーの底面図。
【図9】ダイアフラム形成部材とコイルスプリングを示す斜視図。
【図10】ダイアフラム形成部材の平面図。
【図11】ダイアフラム形成部材の裏面を示す斜視図。
【図12】ダイアフラム形成部材の底面図。
【図13】流路形成板の表面(上面)を示す斜視図。
【図14】流路形成板の平面図。
【図15】流路形成板の底面図。
【図16】流路形成板とフィルムとを示す分解斜視図。
【図17】流路形成板のインク流路を説明するための部分底面図。
【図18】流路形成板の空気流路を説明するための部分底面図。
【図19】受け皿と保護板を示す分解斜視図。
【図20】インクカートリッジを装着した状態のインク供給システムを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)に具体化した一実施形態を図1〜図20を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ11は、ターゲット(例えば用紙等の記録媒体)(図示略)に対してインク(液体)を噴射する液体噴射手段としての記録ヘッドユニット12と、この記録ヘッドユニット12に液体供給源としてのインクカートリッジ13に収容されているインクを供給する液体供給装置としてのインク供給装置14を備えている。インク供給装置14には、インクカートリッジ13に上流端が接続されるとともに、記録ヘッドユニット12に下流端が接続された状態で、インクカートリッジ13側となる上流側から記録ヘッドユニット12側となる下流側に向けてインクを供給するインク流路15の一部が設けられている。
【0022】
本実施形態のプリンタ11は、インクジェット式のシリアルプリンタ又はラインプリンタであり、インクカートリッジ13がプリンタ本体側に装着される所謂オフキャリッジタイプのものである。図1に示すように、インク供給装置14とインク供給チューブ15eを通じて接続される記録ヘッドユニット12は、ヘッドユニット本体56と記録ヘッド57とを有している。例えばシリアルプリンタの場合、ヘッドユニット本体56は、電動モータ(キャリッジモータ)の動力により案内機構(いずれも図示せず)により案内されつつ主走査方向(図1では左右方向)に往復移動するキャリッジにより構成される。一方、ラインプリンタの場合、ヘッドユニット本体56は用紙搬送方向と直交する幅方向に延びた状態に固定され、記録ヘッド57は各色のノズルが所定のノズルピッチで最大用紙幅全域に亘って所定のノズルピッチで配列されるように構成される。もちろん、シリアルプリンタの場合、インクカートリッジがキャリッジに搭載される所謂オンキャリッジタイプにおいてインク供給装置14を採用することもできる。
【0023】
なお、本実施形態のプリンタ11には、そのプリンタ11で使用するインクの色数(種類)に対応して複数のインク供給装置14が設けられている。但し、それらの構成は同じであるため、図1にはいずれか一色のインクを供給する一つのインク供給装置14を記録ヘッドユニット12及び一つのインクカートリッジ13とともに図示している。そして、以下においては、この図1に示す一つのインク供給装置14がインクカートリッジ13から汲み取ったインクを記録ヘッドユニット12に向けて供給する場合を例にして説明することにする。また、図1におけるインク供給装置14は、そのインク供給機構の原理を説明するために流路や弁などの構成を模式断面で示したものであり、流路や弁のレイアウト等を含む好ましい形態については別途図面を用いて後述する。
【0024】
図1に示すように、記録ヘッド57には、インク供給装置14の設置数と対応する複数(本実施形態では6つ)のノズル16がプラテン(図示略)と対向するノズル形成面12aに開口形成されている。そして、各インク供給装置14からインク流路15を通じて記録ヘッドユニット12内のインク流路12dに供給されたインクは、インク流路12d上に設けられたバルブユニット17及び脱泡装置58を経由してノズル16へ供給されるようになっている。すなわち、バルブユニット17には、インク流路15から流入したインクを一時貯留する圧力室17aがノズル16と連通するように設けられ、その圧力室17a内には、ノズル16からインクを噴射した場合に、そのインク噴射により消費したインク量に相当する分量のインクが、開閉弁としての流路弁17dの開閉動作に基づきインク流路15から適宜に流入するようになっている。このバルブユニット17及び脱泡装置58の構成は後述する。なお、6つのノズル16は、図1における紙面直交方向に一定のノズルピッチで複数個ずつ配置されてそれぞれノズル列を形成している。このノズル列の方向(図1の紙面直交方向)は、シリアルプリンタでは用紙搬送方向に一致し、ラインプリンタでは用紙幅方向に一致する。
【0025】
また、プリンタ11には記録ヘッド57のノズル16の目詰まり等を解消するべく記録ヘッド57のクリーニングを行うメンテナンスユニット18が設けられている。このメンテナンスユニット18は、記録ヘッド57のノズル形成面12aにノズル16を囲うように当接可能なキャップ19と、このキャップ19内からインクを吸引する際に駆動される吸引ポンプ20と、この吸引ポンプ20の駆動に伴いキャップ19内から吸引されたインクが廃インクとして排出される廃液タンク21とを備えている。そして、クリーニング時には、図1に示す状態からキャップ19を移動させて記録ヘッド57のノズル形成面12aに当接させた状態で吸引ポンプ20を駆動し、キャップ19の内部空間に負圧を発生させることにより記録ヘッド57内から増粘したインクや気泡混じりのインクを廃液タンク21に向けて吸引排出するようにしている。なお、メンテナンスユニット18は、シリアルプリンタでは記録ヘッドユニット12が非印刷時に位置するホームポジションに対応する位置に配置され、ラインプリンタでは記録ヘッド57の直下に配置されることになる。
【0026】
一方、インクカートリッジ13は、内部がインクを収容するインク室22aとされた略箱体形状のケース22を備えている。ケース22の下壁からはインク室22a内に連通する筒部23が下方に向けて突出して形成され、筒部23の先端にはインクを導出可能なインク供給口24が形成されている。そして、インクカートリッジ13をインク供給装置14に接続する際には、このインク供給口24に対してインク供給装置14からインク流路15の上流端を構成するべく突設されたインク供給針25が挿入されるようになっている。また、ケース22の上壁には、インクが収容されたインク室22a内を大気に連通させる大気連通孔26が貫通して形成され、インク室22a内に収容されたインクの液面に対して大気圧を作用させるようになっている。
【0027】
次に、インク供給装置14の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、インク供給装置14は、基台となるガス透過性を有するプラスチック製の第1の形成部材としての第1流路形成部材27と、この第1流路形成部材27上に積層状態に組み付けられる同じくプラスチック製の第2の形成部材としての第2流路形成部材28と、その組み付け時に両流路形成部材27,28の間に挟み込まれるゴム板等からなる変位部材としての可撓性部材29とを備えている。また、第1流路形成部材27の可撓性部材29と反対側の面(裏面)にはフィルム120が溶着されている。さらにフィルム120の下面には保護板130と受け皿140が積層されている。ここで、第1流路形成部材27の上面における複数箇所(本実施形態では3箇所)には、平面視円形状をなす凹部30,31,32が形成されている。すなわち、図1において、右側から左側へ、凹部30、凹部31、凹部32の順に、各凹部30〜32は横並び配置となるように形成されている。
【0028】
一方、この第1流路形成部材27上に積層される第2流路形成部材28の下面における複数箇所(本実施形態では3箇所)には、第1流路形成部材27の上面に形成された各凹部30,31,32と上下方向で互いに対向する平面視円形状の凹部33,34,35が形成されている。すなわち、図1において、右側から左側へ、凹部33、凹部34、凹部35の順に、各凹部33〜35は横並び配置となるように形成されている。なお、第2流路形成部材28における図1において最も左側に形成された凹部35の底部には、大気に連通する大気連通孔35aが形成されている。
【0029】
そして、可撓性部材29は、第1流路形成部材27と第2流路形成部材28との間に、その可撓性部材29における複数箇所(本実施形態では3箇所)が第1流路形成部材27の各凹部30〜32と第2流路形成部材28の各凹部33〜35との間を上下に仕切って介在するように挟み込まれている。その結果、可撓性部材29において第1流路形成部材27の凹部30と第2流路形成部材28の凹部33との間に介在する部分は、両凹部30,33の間で弾性変形することにより変位可能な吸引側弁体36として機能するようになっている。
【0030】
同様に、可撓性部材29において第1流路形成部材27の凹部31と第2流路形成部材28の凹部34との間に介在する部分は、両凹部31,34の間で弾性変形することにより変位可能なダイアフラム37として機能するようになっている。また同様に、可撓性部材29において第1流路形成部材27の凹部32と第2流路形成部材28の凹部35との間に介在する部分は、両凹部32,35の間で弾性変形することにより変位可能な吐出側弁体38として機能するようになっている。
【0031】
そして、図1に示すように、第1流路形成部材27と第2流路形成部材28には、第2流路形成部材28の上面から突設されたインク供給針25と第1流路形成部材27の凹部30との間を連通する第1流路15aが、インク供給装置14におけるインク流路15の一部を構成するべく形成されている。同様に、第1流路形成部材27と第2流路形成部材28及び可撓性部材29には、第2流路形成部材28の凹部33と第1流路形成部材27の凹部31との間を連通する第2流路15bが、インク供給装置14におけるインク流路15の一部を構成するべく形成されている。また同様に、第1流路形成部材27には、第1流路形成部材27の凹部31と凹部32との間を連通する第3流路15cが、インク供給装置14におけるインク流路15の一部を構成するべく形成されている。
【0032】
さらに、第1流路形成部材27と第2流路形成部材28及び可撓性部材29には、第1流路形成部材27の凹部32と第2流路形成部材28の上面側との間を連通する第4流路15dが、インク供給装置14におけるインク流路15の一部を構成するべく形成されている。そして、この第4流路15dにおける可撓性部材29の上面に開口する流路開口端であるインク排出口64は、インク供給装置14の端部に取着される配管接続具59を介してインク流路15の一部を構成するインク供給チューブ15eの一端(上流端)と接続されている。そして、このインク供給チューブ15eの他端(下流端)が記録ヘッドユニット12側のバルブユニット17に接続されている。なお、本実施形態では、第1〜第4流路15a〜15dにより、液体供給流路が構成されている。
【0033】
図1に示すように、各流路15a,15b,15c,15dは、第1流路形成部材27の裏面側を経由する経路で形成されている。そのため、第1流路形成部材27には、第1流路15aを構成する貫通孔90a,30bと両者を連通する溝、第2流路15bを構成する貫通孔90b,31aと両者を連通する溝、第3流路15cを構成する貫通孔31b,32bと両者を連通する溝、第4流路15dを構成する貫通孔32c,91aと両者を連通する溝がそれぞれ形成されている。そして、流路形成部材27の裏面に溶着されたフィルム120と各溝とにより流路15a,15b,15c,15dの一部が囲み形成されている。
【0034】
また、図1に示すように、インク供給装置14において可撓性部材29の吸引側弁体36となる部分は、その中心に貫通孔36aが形成されるとともに、上側の凹部33内に配設されたコイルスプリング40の付勢力により下側の凹部30の内底面に向けて付勢されている。そして、本実施形態では、これらの凹部30,33と吸引側弁体36及びコイルスプリング40により、インク流路15の途中にインク流路15を開閉可能に設けられた第1の一方向弁としての吸引側バルブ41が構成されている。この吸引側バルブ41は、第1流路15aの下流端開口と連通する弁室41aと、第2流路15bの上流端開口と連通する弁室41bとを有している。弁室41aは、吸引側弁体36の中央部が凹部30の底面中央部の弁座30aに当接した閉弁状態の吸引側弁体36と凹部30とで囲み形成された環状の空間域として形成される。このため、吸引側バルブ41が開閉する過程で各弁室41a,41bのインク圧は、各流路15a,15bの開口面積よりも十分広い面積で吸引側弁体36に作用し、各弁室41a,41b間の比較的な小さな差圧でも吸引側バルブ41を感度よく開閉させることが可能となっている。つまり、吸引側弁体36をコイルスプリング40で閉弁方向へ付勢する構造の吸引側バルブ41を採用した割に、吸引側バルブ41を感度よく開閉させることが可能となっている。
【0035】
同様に、インク供給装置14において可撓性部材29のダイアフラム37となる部分は、上側の凹部34内に配設された付勢部材としてのコイルスプリング42の付勢力により下側の凹部31の内底面に向けて付勢されている。そして、本実施形態では、これらの凹部31,34とダイアフラム37及びコイルスプリング42により脈動型のポンプ43が構成され、ダイアフラム37と下側の凹部31とで囲み形成される容積可変の空間域がポンプ43におけるポンプ室43aとして機能するようになっている。
【0036】
すなわち、可撓性部材29からなるダイアフラム37はポンプ室43aの壁面の一部を構成して、ポンプ室43aの容積を増減させるように変位するようになっている。そして、ポンプ室43aの外側に設けられたばね部材としてのコイルスプリング42は、ダイアフラム37をポンプ室43aの容積が減少する方向に付勢している。
【0037】
また同様に、インク供給装置14において可撓性部材29の吐出側弁体38となる部分は、上側の凹部35内に配設されたコイルスプリング44の付勢力により下側の凹部32の内底面に向けて付勢されている。そして、本実施形態では、これらの凹部32,35と吐出側弁体38及びコイルスプリング44により、ポンプ43よりもインク流路15における下流側にインク流路15を開閉可能に設けられた第2の一方向弁としての吐出側バルブ45が構成されている。この吐出側バルブ45は、第3流路15cの下流端開口と連通する弁室45aと、大気連通孔35aを通じて大気開放されている弁室45bとを有している。弁室45aは、吐出側弁体38の中央部が凹部32の底面中央部の弁座32aに当接した閉弁状態の吐出側弁体38と凹部32とで囲み形成された環状の空間域として形成される。このため、吐出側バルブ45が開閉する過程で弁室45aのインク圧は、第3流路15cの開口面積よりも十分広い面積で吐出側弁体38に作用し、弁室45aの比較的小さなインク圧の変化でも吐出側バルブ45を感度よく開閉させることが可能となっている。つまり、吐出側弁体38をコイルスプリング44で閉弁方向へ付勢する構造の吐出側バルブ45を採用した割に、吐出側バルブ45を感度よく開閉させることが可能となっている。
【0038】
さらに、図1に示すように、第2流路形成部材28の凹部34には、二股状に分岐した空気流路46を介して吸引ポンプ等からなる負圧発生装置47と大気開放機構48が接続されている。負圧発生装置47は、正逆回転可能な駆動モータ49が正転駆動した場合に図示しないワンウェイクラッチを介して伝達される駆動力により駆動して負圧を発生し、空気流路46を介して接続された第2流路形成部材28の凹部34内にも同様に負圧を発生させ得るように構成されている。なお、本実施形態では、空気流路46、負圧発生装置47、駆動モータ49により変位機構が構成されている。
【0039】
そして、第2流路形成部材28の凹部34とダイアフラム37とで囲み形成される容積可変の空間域は、負圧発生装置47の駆動に伴い負圧状態となる負圧室43bとして機能するようになっている。すなわち、ポンプ43は、第1〜第4流路15a〜15d及びポンプ室43aを形成する第1流路形成部材27と、負圧室43bを形成する第2流路形成部材28とが、可撓性部材29を挟持する態様で積層構造をなしている。また、負圧室43bは、ダイアフラム37がポンプ室43aとの隔壁を構成するように、ポンプ室43aの外側に設けられる態様となっている。
【0040】
一方、大気開放機構48は、大気開放孔50が形成されたボックス51内にシール部材52を大気開放孔50側に付設してなる大気開放弁53が収容され、その大気開放弁53が常にはコイルスプリング54の付勢力により大気開放孔50を封止する閉弁方向に付勢された構成をしている。そして、大気開放機構48は、駆動モータ49が逆転駆動した場合に、図示しないワンウェイクラッチを介して伝達される駆動力に基づき作動するカム機構55が作動し、そのカム機構55の作動により大気開放弁53がコイルスプリング54の付勢力に抗して開弁方向に変位するように構成されている。すなわち、大気開放機構48は、空気流路46を介して接続された負圧室43bが負圧状態になっている場合には、大気開放弁53が開弁動作することにより、その負圧室43b内を大気に開放して負圧状態を解消するようになっている。
【0041】
なお、負圧発生装置47、大気開放機構48、及びこれらを駆動させる駆動モータ49はそれぞれ1つずつ設けられ、複数のインク供給装置14に共有される構成となっている。すなわち、負圧発生装置47と大気開放機構48とインク供給装置14とを接続する空気流路46を構成する空気流路用配管46aは、インク供給装置14内に形成された空気流路46bと接続されている。空気流路46bは途中で分岐し、各分岐流路の先端が各インク供給装置14のポンプ43の負圧室43bに接続されている。この構成により、複数のインク供給装置14に対して負圧発生装置47、大気開放機構48、駆動モータ49を1つ設けるだけで、各色のインク供給装置14を駆動することができ、プリンタ11の小型化を図ることが可能となっている。そして、各ポンプ43の負圧室43bと接続された空気流路46bは第1流路形成部材27の裏面を経由しつつ可撓性部材29の上面に開口し、負圧導出口65を形成している。この負圧導出口65は配管接続具59を介して空気供給チューブ46cの一端(上流端)と接続されている。そして、この空気供給チューブ46cの他端(下流端)が記録ヘッドユニット12に接続され、脱泡装置58への負圧の導入が可能となっている。
【0042】
ここで、記録ヘッドユニット12に内蔵されるバルブユニット17及び脱泡装置58の構成及び機能について説明する。図1に示すように、記録ヘッドユニット12内には、大気連通孔12bを通じて大気と連通する大気室12cが設けられている。バルブユニット17は、記録ヘッドユニット12内のインク流路12dに流入したインクを一時貯留する圧力室17aと、圧力室17aと大気室12cとを隔てる隔壁部17bと、バネ17cにより閉弁方向に付勢されて隔壁部17bに当接する流路弁17dとを有する。隔壁部17bは可撓性材料(例えば合成樹脂やゴム等)よりなるフィルム(又はシート)により構成されており、例えばフィルムとともに変位可能な片持ちの金属片(例えば櫛歯状金属片の一片)(図示省略)を流路弁17dの当接箇所に配置している。また、圧力室17aからノズル16へ至るインク流路12dの途中にはインクを一時貯留するインク貯留室12eが設けられている。
【0043】
ノズル16からインクが噴射されてインクが消費されると、圧力室17aの室圧がインクの減量により減圧し、その減圧した圧力室17aと大気室12cとの差圧に基づき隔壁部17bが圧力室17a側へ撓み変形することで流路弁17dがバネ17cの付勢力に抗して開弁位置に移動してインクが圧力室17a側へ流入する。圧力室17aへインクが流入してその室圧が高まると、やがてバネ17cの付勢力が打ち勝って流路弁17dが再び閉弁位置に移動する。
【0044】
このように、インクの消費に連れてバルブユニット17の流路弁17dが開閉動作することでインク供給チューブ15eから記録ヘッドユニット12内へインクが適宜に流入するようになっている。すなわち、流路弁17dは、常には閉弁状態となっているとともに、インクの消費によって下流側が所定圧力以下に減圧すると開弁状態となるように構成されている。
【0045】
一方、脱泡装置58は、記録ヘッドユニット12内の負圧流路12fを通じて空気供給チューブ46cと連通する減圧室58aと、減圧室58aと大気室12cとを隔てる隔壁部58bと、バネ58cに付勢されて隔壁部58bに当接する流路弁58dと、流路弁58dの開弁時に減圧室58aと連通する負圧室58eとを有している。なお、2つの隔壁部17b,58bは共通のフィルム(又はシート)で構成されており、隔壁部58bにおいても、流路弁58dの当接箇所にフィルムとともに変位可能な片持ちの金属片(図示省略)を配置している。
【0046】
また、負圧室58eとインク貯留室12eとはガス透過性を有する合成樹脂材料よりなる隔壁部58fを介して隔てられている。ポンプ43の吸引駆動時に空気供給チューブ46c及び負圧流路12fを通じて減圧室58aに負圧が導入されると、減圧室58aと大気室12cとの差圧に基づき隔壁部58bが減圧室58a側に撓み変形し、流路弁58dがバネ58cの付勢力に抗して開弁位置に移動することで減圧室58aの負圧が負圧室58eに導入される。一方、ポンプ43の吐出駆動時には、空気供給チューブ46c及び負圧流路12fを通じて減圧室58aが大気に開放されるものの、このときバネ58cの付勢力により流路弁58dが閉弁位置に維持されるため、負圧室58eは負圧状態に保持される。つまり、プリンタ11の起動後、ポンプ43が少なくとも1回吸引駆動された後は、負圧室58eがある程度以上の負圧状態に保持され、インク貯留室12eに貯留されたインク中の気泡や溶解空気が隔壁部58fをガス透過することで負圧室58e側へ回収され、これにより脱泡装置58によるインクの脱泡が行われる。
【0047】
そこで次に、以上のように構成されたプリンタ11における作用について、特にインク供給装置14の作用に着目して以下説明する。図2(a)は吸引駆動時のインク供給装置の断面を示し、図2(b)は吐出駆動時のインク供給装置の断面を示す。
【0048】
まず、前提として、図1に示す状態は、新旧インクカートリッジの交換直後であって、吸引側バルブ41の吸引側弁体36、ポンプ43のダイアフラム37、及び、吐出側バルブ45の吐出側弁体38は、いずれもコイルスプリング40,42,44の付勢力で下側の各凹部30,31,32の内底面に押し付けられた状態にあるものとする。そして、大気開放機構48は大気開放弁53が大気開放孔50を封止した閉弁状態にあるものとする。
【0049】
さて、このような図1に示す状態から、インク供給装置14がインクカートリッジ13側から記録ヘッドユニット12側へインクを供給する場合、まず、ポンプ43をポンプ駆動させるために、駆動モータ49が正転駆動される。すると、負圧発生装置47が負圧を発生し、この負圧発生装置47と空気流路46を介して接続されたインク供給装置14の負圧室43bが負圧状態になる。そのため、ポンプ43のダイアフラム37がコイルスプリング42の付勢力に抗して負圧室43b側に弾性変形(変位)し、負圧室43bの容積を減少させる(図2(a)参照)。すると、この負圧室43bの容積減少に伴い、ダイアフラム37を介して負圧室43bと区画されたポンプ室43aは逆に容積が増加する。
【0050】
すなわち、負圧発生装置47の駆動時には、ポンプ43がダイアフラム37をポンプ室43aの容積が増加する方向に変位させて吸引駆動することになる。具体的には、ダイアフラム37が図1に示す下死点位置から図2(a)に示す上死点位置に変位する。そのため、ポンプ室43a内が負圧状態になり、その負圧が第2流路15bを介して吸引側バルブ41の上側の弁室41bに作用し、下側の弁室41aのインク圧力との圧力差に基づき吸引側弁体36をコイルスプリング40の付勢力に抗して上方(すなわち、開弁方向)へ弾性変形(変位)させる。その結果、第1流路15aと第2流路15bが吸引側弁体36の貫通孔36aを介して連通状態となり、インクカートリッジ13内からインクが、第1流路15a、弁室41a、貫通孔36a、弁室41b、第2流路15bを経由して、ポンプ室43a内に吸引される。
【0051】
一方、このポンプ43の吸引駆動時には、ポンプ室43aの負圧が第3流路15cを介してポンプ室43aよりもインク流路15の下流側、すなわち第3流路15cにも作用する。しかし、第3流路15cの下流側が連通する吐出側バルブ45の下側の弁室45aは、吐出側弁体38がコイルスプリング44により閉弁方向に付勢された状態にあり、その閉弁状態は吐出側弁体38に対して第3流路15cの上流側からポンプ43の吐出駆動によって所定の正圧(例えば、13kPa以上の圧力)のインク吐出圧が作用しない限り開弁状態に移行しないように設定されている。したがって、この場合、吐出側バルブ45の吐出側弁体38は、負圧が作用しているため、その閉弁状態が維持される。
【0052】
そして次には、図2(a)に示す状態において、駆動モータ49が逆転駆動される。すると、大気開放機構48のカム機構55の作動により大気開放弁53がコイルスプリング54の付勢力に抗して開弁動作し、負圧状態にある負圧室43bを大気開放する。そのため、ポンプ43のダイアフラム37がコイルスプリング42の付勢力により下方(すなわち、ポンプ室43aの内底面側)へ弾性変形(変位)し、負圧室43bの容積を増加させる(図2(b)参照)。すると、この負圧室43bの容積増加に伴い、ダイアフラム37を介して負圧室43bと区画されたポンプ43のポンプ室43aは逆に容積が減少する。
【0053】
すなわち、負圧発生装置47の駆動停止時に大気開放機構48により負圧室43b内を大気開放することで、コイルスプリング42の付勢力がダイアフラム37に作用するので、ポンプ43がダイアフラム37をポンプ室43aの容積を減少させる方向に変位させて吐出駆動することになる。具体的には、図2(b)に示すように、ダイアフラム37が上死点位置から下死点位置の方向に変位して、ポンプ室43a内に吸引されていたインクを所定の圧力(例えば、30kPa程度の圧力)で加圧する。そのため、ポンプ室43a内からはインクが吐出され、その吐出圧がポンプ室43aよりも上流側では第2流路15bを介して吸引側バルブ41の上側の弁室41bに作用し、吸引側弁体36をコイルスプリング40の付勢力と協働して下方(すなわち、閉弁方向)へ弾性変形(変位)させる。その結果、第1流路15aと第2流路15bが吸引側弁体36の閉弁動作により非連通状態となり、インクカートリッジ13からポンプ室43aへの吸引側バルブ41を経由したインクの吸入が停止されるとともに、ポンプ43の吐出駆動に伴いポンプ室43aから吐出されたインクが吸引側バルブ41を経由してインクカートリッジ13側に逆流することが規制される。
【0054】
一方、このポンプ43の吐出駆動時には、ポンプ室43aから吐出されたインクの圧力(例えば、30kPa程度の圧力)が第3流路15cを介してインク流路15の下流側にも作用する。そのため、このポンプ43の吐出圧が閉弁状態にある吐出側弁体38を開弁動作させ、吐出側バルブ45における下側の弁室45aを介して第3流路15cと第4流路15dが連通する。その結果、ポンプ室43a内からインクが、第3流路15c、弁室45a、第4流路15d、インク供給チューブ15eを経由して、バルブユニット17に加圧状態で供給される。ちなみに、吐出側バルブ45におけるコイルスプリング44の付勢力は、吐出側バルブ45の弁室45aにインクがポンプ43の吐出駆動に伴い流入してきた場合には、そのインクの吐出圧力により吐出側弁体38が上方へ弾性変形できるように、例えば13kPa程度に設定されている。
【0055】
そして、以後は、ダイアフラム37に加圧されてポンプ室43aから吐出されるインクの吐出圧がインク流路15における吸引側バルブ41の弁室41bを含むその下流側の各流路域(ポンプ室43a及び吐出側バルブ45の弁室45aを含む)に均衡する加圧状態が保持される。その後において、記録ヘッド57からインクがターゲット(図示略)に向けて噴射されると、そのインク噴射に伴うインクの消費量に相当する分量のインクがバルブユニット17の開弁に伴いインク流路15内から記録ヘッドユニット12側に供給される。そのため、この下流側(記録ヘッドユニット12側)でのインク消費に伴い、その消費量に対応するインク量のインクが、コイルスプリング42の付勢力でポンプ室43aの容積が減少する方向へ付勢されたダイアフラム37の押圧力に基づき記録ヘッドユニット12側(下流側)へ加圧状態で供給される。
【0056】
その結果、ポンプ室43a内の容積及び吐出側バルブ45の弁室45aの容積が次第に減少し、遂にはダイアフラム37が下死点位置付近まで変位するとともに、吐出側弁体38が第4流路15dを閉塞する閉弁位置付近まで変位するようになる。ちなみに、本実施形態では、この時点でダイアフラム37に押圧されてポンプ室43aから吐出されるインクの吐出圧は13kPa程度となる。
【0057】
すると、駆動モータ49が再び正転駆動され、大気開放機構48では大気開放弁53が大気開放孔50を閉塞する閉弁位置に変位するとともに、負圧発生装置47が負圧を発生して負圧室43bが負圧状態となり、ダイアフラム37がコイルスプリング42の付勢力に抗して、負圧室43b側に弾性変形(変位)する。すなわち、再び、ポンプ43が吸引駆動を開始する。その結果、ダイアフラム37がポンプ室43aの容積を増加させるべく上死点位置に変位し、ポンプ室43a内が負圧状態になるため、その負圧の作用で吸引側弁体36が開弁方向へ弾性変形(変位)する。したがって、第1流路15aと第2流路15bが吸引側弁体36の貫通孔36aを介して連通状態となり、インクカートリッジ13内からインクが再びポンプ室43a内に吸引される。以後、上記と同様のポンプ43の吐出駆動が実行されて、ポンプ室43a内からインクが下流側のインク流路域を経由して記録ヘッドユニット12へと加圧供給される。
【0058】
なお、本実施形態においては、印刷を終了する場合には、駆動モータ49を正転駆動してポンプ43を吸引駆動し、その後に駆動モータ49を逆転駆動して負圧室43bを大気開放しておく。すなわち、ポンプ室43a内における気泡の滞留を抑制するために、プリンタ11の電源を切っている間にも、コイルスプリング42の付勢力をダイアフラム37に作用させることで、ポンプ室43aが加圧状態に保持されるようにする。
【0059】
次に上記のように構成された複数のインク供給装置14を一ユニット化したインク供給システムの例を図3〜図20に基づいて説明する。
図3は複数個のインクカートリッジが装着されたインク供給システムの斜視図、図4はインクカートリッジが装着されていない状態のインク供給システムの斜視図を示す。なお、以下の説明において、インク供給針25の配列方向と平行な方向をX方向、その配列方向と直交する方向をY方向とし、XY平面と直交しインク供給針25の突出方向である上方向をZ方向とする。
【0060】
図3に示すインク供給システム61は、プリンタ11内の所定箇所に配置され、インクカートリッジ13が装着されるカートリッジホルダとして機能する。インク供給システム61は略四角板形状の積層体構造を有しており、その上面には複数本(本例では6本)のインク供給針25(図4参照)がX方向に1列に並んだ状態でその上面から垂直(Z方向)に突設されている。複数個(本例では6個)のインクカートリッジ13は、各インク供給針25が各々の筒部23のインク供給口24(図1参照)に挿入されることで、インク供給システム61の上側にX方向に隣同士がほぼ隣接する1列に配列された状態で装着される。
【0061】
本例のインク供給システム61では、6個のインクカートリッジ13に収容された例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトイエロー、黒など6色のインクを個別に供給可能な6つのインク供給装置14が一ユニット化された構造をとる。つまり、インク供給システム61は、6つのインク供給装置14を構成する6つのポンプ43、6つの吸引側バルブ41(第1の一方向弁)及び6つの吐出側バルブ45(第2の一方向弁)をそれぞれ同一平面上に配置することで、複数の板状の構成部材を積層した積層構造の採用を可能としている。そして、複数の構成部材のうち少なくとも一つを単一(共通)の流路形成部材とし、その単一の流路形成部材上に他の構成部材(必ずしも単一である必要はなく例えばインク供給装置毎の構成部材であってもよい)を積層することで、インク供給システム61の一部品化(一ユニット化)を実現している。但し、本実施形態では、後述するように、インク供給システム61を構成するために積層される複数の構成部材のすべてが、6つのインク供給装置14に共通の単一の構成部材としてそれぞれ構成されている。なお、インク供給システム61として一ユニット化されるインク供給装置14の個数は6個に限らず、例えば2〜10個の範囲内のその他の複数個、さらには10個を超える複数個に適宜変更してよいし、必ずしもプリンタ11の色数(インクカートリッジ数)に合わせる必要もない。例えばプリンタ11に、3個のインク供給装置14を一ユニット化したインク供給システムを2個搭載するなど、1台のプリンタ11に複数個のインク供給システムを搭載する構成も採用できる。
【0062】
図3及び図4に示すように、インク供給システム61は、ポンプ43と吸引側バルブ41と吐出側バルブ45とを色数に応じた複数個(例えば6個)ずつ有する四角板状の本体62と、本体62の一端側部から水平に延出する板状の配管接続部63とを有している。
【0063】
図4に示すように、本体62には、その上面から垂直(Z方向)に突出してX方向に1列に配置された6本のインク供給針25と、X方向に沿って3個ずつ2列で配置されて配列された6つのポンプ43と、X方向に沿って1列に配置された6つの吸引側バルブ41と、X方向に沿って1列に配置された6つの吐出側バルブ45とが内蔵されている。
【0064】
また、図3及び図4に示すように、配管接続部63の上面には、6つのインク排出口64と1つの負圧導出口65が開口している。6つのインク排出口64は、各ポンプ43が各インクカートリッジ13から吸引したインクを所定の吐出圧で外部へ加圧供給するための排出口となる。1つの負圧導出口65は、脈動型のポンプ43を吸引駆動させるために負圧発生装置47(図1参照)からインク供給システム61内に導入された負圧を他の用途(本例では脱泡装置58)のために導出するための導出口となる。
【0065】
配管接続部63には、記録ヘッドユニット12に繋がる6本のインク供給チューブ15eと1本の空気供給チューブ46c(いずれも図1参照)をフレキシブル板上に束ねて構成されるフレキシブル配管板の一端部に固定された配管接続具59(図1参照)が接続される。各インク排出口64から排出された各インクは各インク供給チューブ15eを通じて記録ヘッドユニット12内の各バルブユニット17に加圧供給され、一方、ポンプ43の吸引駆動時に負圧導出口65から導出される負圧は空気供給チューブ46c(図1参照)を通じて記録ヘッドユニット12内の脱泡装置58に供給されるようになっている。なお、本例のインク供給システム61では、空気流路用配管46a(図1参照)と接続される接続用の管部106(図16参照)が裏面に突設されており、インク供給システム61内に形成されている空気流路46bは、その管部106から各ポンプ43の負圧室43bを経由しつつ負圧導出口65に至る経路で内部を通っている。
【0066】
インク供給システム61は6枚の部材70,80,90,120,130,140を積層した積層構造にて構成されている。インク供給システム61を構成する上側5枚の各部材70,80,90,120,130は、上側から積層方向に通した複数本(本例では19本)のネジ66を所定の締結力で締結することで積層方向に加圧された状態で複数箇所にて固定されている。そして、5枚の部材70,80,90,120,130が複数本のネジ66で固定されてなる積層体の下側には、受け皿140が、2本のネジ67を下側から積層方向に通して締結することで最下層に固定されている。
【0067】
以下、インク供給システム61の詳細な構成を説明する。図5は、インク供給システム61の分解斜視図を示す。図5に示すように、インク供給システム61は、上から順に、第2流路形成部材28に相当する四角板状の第2の形成部材としてのカバー70、可撓性部材29に相当する可撓性部材としてのダイアフラム形成部材80、第1流路形成部材27に相当する第1の形成部材としての流路形成板90、フィルム120、保護板130、受け皿140から構成される。フィルム120は、組み立て前に予め流路形成板90の裏面に溶着される。組み立て時には、ダイアフラム形成部材80に一体成形された吸引側弁体36、ダイアフラム37及び吐出側弁体38の上側にそれぞれ対応するコイルスプリング40,42,44をセットする。そして、上側5枚の四角板状の各部材70,80,90,120,130を複数本(本例では19本)のネジ66を用いて図5の上下方向(積層方向)に所定の締め付け力で締結する。この締結により、カバー70とダイアフラム形成部材80間に各コイルスプリング40,42,44が圧縮状態に収容された状態で、カバー70、ダイアフラム形成部材80、流路形成板90、フィルム120及び保護板130が積層構造をなして固定されてなる積層体が組み立てられる。そして、各部材70,80,90,120,130が固定されてなる積層体の底面側に受け皿140を配置し、2本のネジ67を下側から締結して受け皿140を最下層に固定することで、図4に示すインク供給システム61は組み立てられている。
【0068】
ここで、カバー70、流路形成板90及び受け皿140は、それぞれプラスチック製であり、合成樹脂材料を用いた例えば金型成形(射出成形等)により四角板状の所定形状に成形されている。ダイアフラム形成部材80はエラストマ又はゴムを材料とし、例えば金型成形(射出成形等)により四角板状の所定形状に成形されている。フィルム120は、流路形成板90の合成樹脂材料と溶着可能な合成樹脂材料を表面層に有するラミネートフィルムよりなり、略四角状の所定形状に裁断されている。保護板130は金属製であり、複数の孔130a,130b,132とともに四角板状の所定形状に打ち抜かれている。
【0069】
カバー70とダイアフラム形成部材80と流路形成板90は、各コイルスプリング40,42,44を間に収容した状態で積層することにより、ポンプ43、吸引側バルブ41及び吐出側バルブ45を同一平面上に6つずつ配置する状態に形成するための構成部材である。このうちカバー70はインク供給針25を設ける基板を兼ねている。
【0070】
流路形成板90の裏面には第1〜第4流路15a,15b,15c,15d及び空気流路46b(図1、図2を参照)を形成するための複数の溝101〜105(図15、図16参照)が形成されている。流路形成板90の裏面にフィルム120を溶着することで、インク供給針25、吸引側バルブ41、ポンプ43及び吐出側バルブ45の各間をそれぞれ接続する各流路15a,15b,15c,15d及び空気流路46bを流路形成板90の裏面側に形成するようにしている。
【0071】
また、吸引側バルブ41及び吐出側バルブ45にコイルスプリング40,44を使用するのは、逆止弁(一方向弁)の閉弁を確実なものとするためである。例えば吐出側バルブ45の閉弁が不完全でインクが漏れると、色毎のインク流路でインクの搬送量がばらついてしまう。また、吸引側バルブ41の閉弁が不完全でインクが漏れると、例えばインクカートリッジ13を外した場合に逆流したインクがインク供給針25から無駄に漏れ出てしまう。このように無駄にインクが消費されると、色毎のインク消費量に差が生じてしまう。そのため、吸引側弁体36及び吐出側弁体38の逆止弁は極力漏れのない構造が必要で、本実施形態では、ダイアフラム式の弁体36,弁体38に加え付勢用のコイルスプリング40,44も設けている。もちろん、このような構成を採用すると、コイルスプリング40,44の付勢力に抗して開弁できるように弁体36,38のダイアフラム面積を広くする必要があり、バルブ41,45に広い配置面積が必要になる。
【0072】
本実施形態では、そのような広い配置面積が必要となる逆止弁構造を信頼性確保の点からあえて採用するが、他の工夫により省スペース化を実現している。例えば、インク供給システム61に装着された全インクカートリッジ13の投影範囲内にポンプ43及びバルブ41,45をほぼ全て配置し、その投影面積とほぼ等しい平面サイズにインク供給システム61を構成している。
【0073】
本実施形態のインク供給システム61では、相対的に大径のポンプ43を互いにほぼ接するような配置で6個を2列に配列し、その隣接エリアにポンプ43のおよそ半分程度の比較的小径の吸引側バルブ41と吐出側バルブ45とをそれぞれ互いにほぼ接するような配置で6個を1列ずつ配列することで、所定の四角エリア内にポンプ43及び各バルブ41,45を周密に配列している。そして、ポンプ43の列間にできる隙間を利用してインク供給針25を配列している。このようなレイアウトを採用することで、インク供給システム61を厚みだけでなく平面サイズも小型に構成することができる。しかし、このように周密なレイアウトを採用すると、インク供給針25と吸引側バルブ41、吸引側バルブ41とポンプ43、ポンプ43と吐出側バルブ45が、それぞれ比較的離れて位置することになり、第1〜第4流路15a,15b,15c,15d及び空気流路46bの流路長が比較的長くなってしまう。そこで、第1〜第4流路15a,15b,15c,15d及び空気流路46bを流路形成板90の裏面に配置することで、ポンプ43及びバルブ41,45の周密なレイアウト(つまり平面サイズの小型化)を犠牲にすることなく、長くなった流路15a,15b,15c,15d,46bを効率よくレイアウトできるようにしている。
【0074】
次にインク供給システム61を構成する各部材の構成を説明する。
図6はカバーの表面側を示す平面図、図7はカバーの裏面側から見た斜視図、図8はカバーの裏面側を示す底面図である。
【0075】
図4及び図6に示すように、カバー70は、複数本のインク供給針25が上面(表面)に突設された四角板状の基板部71を有する。基板部71の上面のうちインク供給針25の列設位置寄りのおよそ2/3の領域内には、上側(Z方向)へ略円錐台状に膨出する6個のポンプハウジング部72が、X方向に一定の間隔で3個ずつ並べた2列配置の状態で形成されている。
【0076】
そして、6本のインク供給針25は、2列のポンプハウジング部72の列間に相当する隙間領域に、X方向に一定のピッチ(インクカートリッジ13のX方向の幅より若干広いピッチ)で配置されている。このとき、6本のインク供給針25は、図6の平面視においてY方向に並んで対をなす3組のポンプハウジング部72における組毎の中心点間を結ぶ線分を挟む両側に位置している。
【0077】
各インク供給針25の周囲には、カバー70を上下方向に貫通する貫通孔68が形成されている。そして、インクカートリッジ13をインク供給システム61のインク供給針25に対し着脱したときにインク供給針25の周辺にインクが漏れた場合には、その漏れたインクは貫通孔68を通じてカバー70の表面側から裏面側に排出されるようになっている。なお、本実施形態においては、1つのインク供給針25につき2つの貫通孔68が形成されている。
【0078】
また、基板部71の上面のうち残りおよそ1/3の領域内には、ポンプハウジング部72より小径の略円錐台状に膨出する6個の吸引バルブハウジング部73と、これとほぼ同径の略円錐台状に膨出する6個の吐出バルブハウジング部74とが、それぞれX方向にほぼ隣接する1列配置の状態で形成されている。6個の吸引バルブハウジング部73は、図6における上から2列目のポンプハウジング部72の隣の列に配列され、6個の吐出バルブハウジング部74は、吸引バルブハウジング部73の列の隣に配列されている。また、6個の吸引バルブハウジング部73と6個の吐出バルブハウジング部74は、Y方向にもほぼ隣接して位置している。
【0079】
また、カバー70の表面にはその周囲を囲むように所定高さの延出部71aがほぼ全周に亘って形成されている。また、基板部71においてネジ66の締結箇所となる各位置には、ネジ挿通孔75aを有する複数個(19個)のボス部75が突設されている。さらに基板部71においてネジ67の締結箇所となる各位置には、ネジ挿通孔76aを有する複数(2個)のボス部76が突設されている。ボス部75は、延出部71aの内側となる位置にその内周に沿ってほぼ等間隔に複数個設けられるとともに、各ハウジング部72〜74の列間に相当する位置にX方向にほぼ等間隔で複数個ずつ設けられている。また、ボス部76は、2列目のポンプハウジング部72をX方向に挟む両側の位置に一対設けられている。
【0080】
図7及び図8に示すように、カバー70の裏面には、各ポンプハウジング部72に対応する各位置に負圧室43bを構成する6個の凹部34が凹設されている。また、カバー70の裏面には、各吸引バルブハウジング部73に対応する各位置に6個の凹部33が凹設され、さらに各吐出バルブハウジング部74に対応する各位置に6個の凹部35が凹設されている。各凹部33、34,35は、略円錐台状に凹む内周面に形成されており、各凹部33、35は凹部34の径のおよそ半分の小径となっている。
【0081】
また、凹部34の底部にはコイルスプリング42(図1、図9参照)の上端部が外挿される円柱状の凸部34aが突設されている。また、凹部33,35の底部内径はコイルスプリング40,44の外径より若干広く形成され、その底部に当接したコイルスプリング40,44の上端部を凹部33,35のほぼ中央部に位置決めできるようになっている。なお、凹部35の底面中央部には小径の大気連通孔35aが形成されている。この大気連通孔35aの存在により、吐出側バルブ45は、記録ヘッド57のクリーニング時にノズル16からインクが強制的に吸引された際に閉弁してその下流域の負圧を高めるチョーク弁として機能する。
【0082】
また、カバー70の裏面には、各インク供給針25と対応する位置に各インク供給針25と連通する6個の貫通孔25aがX方向に一定のピッチで形成されている。
また、カバー70の裏面には、Y方向で隣り合う2個の凹部34を相互に連通する溝77が形成されている。この溝77は、その長手方向両側に位置する2個の凹部34内(つまり負圧室43b)に負圧を導入するための空気流路46bの一部を形成するためのものである。さらに、カバー70の裏面には、各凹部33からその径方向外側へ向かって所定距離だけ延びる溝33aが形成されている。この溝33aは、吸引側バルブ41内のインクを、ポンプ室43aへ供給するための第2流路15bの一部を形成するものである。
【0083】
さらにカバー70の裏面には、Y方向で隣り合う2個の凹部34と両凹部34を相互に連通する溝77との周囲に沿ってほぼ一定幅の帯状に延びる略8の字形状のシール部78aが形成されている。また、凹部33と溝33aの周囲に沿ってほぼ一定幅の帯状に延びるシール部78bと、凹部35の周囲に沿ってほぼ一定幅の帯状に延びるシール部78cとがそれぞれ形成されている。また、図8において1列目一番左に位置する凹部34の左側位置には長楕円の領域を囲む環状のシール部78dがシール部78aに連接するように形成されている。さらに貫通孔25aの周囲にも一定幅の環状のシール部78eが形成されている。なお、各シール部78a〜78eは、カバー70の底面からおよそ数10〜数100μmの範囲内の高さで凸設されている。また、カバー70の裏面には、1列目の凹部34をX方向に挟む両側の位置に、一対の位置決め用のピン79が突設されている。これらのピン79は、カバー70を流路形成板90に対して位置決めするために用いられる。
【0084】
次にダイアフラム形成部材80の構成を説明する。
図9はダイアフラム形成部材を上面側から見た斜視図、図10はダイアフラム形成部材の平面図、図11はダイアフラム形成部材を裏面側から見た斜視図、図12はダイアフラム形成部材の底面図である。
【0085】
図9〜図12に示すダイアフラム形成部材80は、ゴム弾性を有するゴム又はエラストマからなり、平面視においてカバー70とほぼ同じ大きさの略四角形状を有するシート本体81と、シート本体81の一端部(図10における左下端部)から延出して配管接続部63のシール部を構成する略四角形状の延出部82とを有している。シート本体81には、カバー70側の各凹部34と対応する位置に配置された6つの円板状のダイアフラム37と、各凹部33と対応する位置に配置された6つの吸引側弁体36と、各凹部35と対応する位置に配置された6つの吐出側弁体38とがそれぞれ形成されている。ダイアフラム37は凹部34に対応して大径に形成され、吸引側弁体36及び吐出側弁体38はそれぞれ凹部33,35と対応してダイアフラム37のおよそ半分の小径に形成されている。
【0086】
図9、図10に示すように、ダイアフラム37はその上面中央部に偏平な円柱状の凸部37aを有し、この凸部37aはコイルスプリング42の一端部(下端部)が外挿されてその位置決めに用いられる。
【0087】
また、図9〜図12に示すように、ダイアフラム形成部材80において2列のダイアフラム37の列間となる隙間領域には、カバー70側のインク供給針25の貫通孔25aと対応する各位置に6個の貫通孔81aが形成されている。さらにX方向に貫通孔81aの間となる位置であって、かつY方向に並ぶ3組のダイアフラム37の組毎の中心点を結ぶ線上に相当する各位置には3個の貫通孔81bがそれぞれ形成されている。これら3個の貫通孔81bは、カバー70側の溝77とともに、負圧室43bへ負圧を導入するための空気流路46bの一部を構成するものである。
【0088】
また、ダイアフラム形成部材80において各吸引側弁体36の近傍位置には、6個の貫通孔81cが形成されている。これらの貫通孔81cは、吸引側バルブ41とポンプ43とを連通する第2流路15bの一部を構成するもので、カバー70の裏面に形成された溝33a(図7、図8参照)の先端部に連通するようになっている。
【0089】
また、図9、図10に示すように、吸引側弁体36の中央部には貫通孔36a(図1参照)を有する円筒部36bが突設されている。円筒部36bは、吸引側弁体36を下方へ付勢するコイルスプリング40の下端部が内挿されてその位置決めに用いられる。さらに吐出側弁体38の中央部には有底の円筒部38aが突設されている。円筒部38aは、吐出側弁体38を下方へ付勢するコイルスプリング44の下端部が内挿されてその位置決めに用いられる。
【0090】
図9、図10に示すように、ダイアフラム形成部材80の表面(上面)には、Y方向に並ぶ2個のダイアフラム37と貫通孔81bとの周囲をシールするシール部83aと、各吸引側弁体36と貫通孔81cとの周囲をシールするシール部84aと、各吐出側弁体38の周囲をシールするシール部85aとがそれぞれ形成されている。また、図11、図12に示すように、ダイアフラム形成部材80の裏面(下面)にも、Y方向に並ぶ2個のダイアフラム37と貫通孔81bとの周囲をシールするシール部83bと、各吸引側弁体36と貫通孔81cとの周囲をシールするシール部84bと、各吐出側弁体38の周囲をシールするシール部85bとがそれぞれ形成されている。
【0091】
さらに、図9〜図12に示すように、ダイアフラム形成部材80の上面及び下面には貫通孔81aの周囲に円環状のシール部86a,86bがそれぞれ形成されている。また、ダイアフラム形成部材80の上面及び下面には、カバー70側のシール部78dと対応する位置にシール部87a,87bが形成されている。なお、各シール部83a〜87a,83b〜87bは底面から例えば数10〜数100μm程度の高さの凸条に形成されており、カバー70側の対応するシール部よりも細く、かつカバー70側の対応するシール部の幅方向ほぼ中央位置に対応して位置するように設けられている。また、ダイアフラム形成部材80の表面側の各シール部83a〜87aと、その裏面側の各シール部83b〜87bは、それぞれ面対称となる形状に形成されている。
【0092】
また、ダイアフラム形成部材80の表面及び裏面には、これら各面からほぼ垂直に延出する凸条のシール部88がシート本体81の周縁に沿ってほぼ全周に亘って形成されている。このシール部88の周方向における1箇所には切り欠き88aが形成されている。シール部88により、カバー70とダイアフラム形成部材80の間の周縁部、及びダイアフラム形成部材80と流路形成板90の間の周縁部は切り欠き88aを除く部分で液漏れが発生しないようにシールされる。また、インク流路のシールから漏れたインクは、カバー70とダイアフラム形成部材80の隙間や、ダイアフラム形成部材80と流路形成板90の隙間に溜まるが、その溜まった廃インクは切り欠き88aから外側へ流れ落ちるようになっている。
【0093】
また、ダイアフラム形成部材80の延出部82には、インク排出口64となる6個の貫通孔82aと、負圧導出口65となる1個の貫通孔82bとが形成されている。なお、ダイアフラム形成部材80には、ネジ66,67を挿通するための複数のネジ挿通孔89a及び凹部89bがそれぞれ形成されている。また、1列目のダイアフラム37の周辺には、複数のピン孔89cが形成されている。
【0094】
次に流路形成板90の構成を説明する。図13は流路形成板の上面側から見た斜視図、図14は流路形成板の上面を示す平面図、図15は流路形成板の裏面(底面)を示す底面図、図16は流路形成板とフィルムを示す分解斜視図である。なお、図15では、溝に対応する流路の符号も付している。
【0095】
図13〜図16に示す流路形成板90は、ダイアフラム形成部材80の延出部82と対応する位置に延出部91が形成され、ダイアフラム形成部材80と平面視でほぼ同じ四角板形状を有している。
【0096】
図13、図14に示すように、流路形成板90の上面には、6個の凹部31が各ダイアフラム37と対応する位置に凹設され、6個の凹部30が各吸引側弁体36と対応する位置に凹設され、さらに6個の凹部32が各吐出側弁体38に対応する位置に凹設されている。また、流路形成板90には、インク供給針25と対応する位置に貫通孔90aが形成されている。6個の貫通孔90aは、2列の凹部31の列間の隙間領域に、X方向に一定ピッチで一列に並んで位置している。貫通孔90aは、第1流路15aの一部を構成し、インク供給針25から供給されたインクはこの貫通孔90aを通って流路形成板90の裏面側へ送られる。
【0097】
また、図13、図14に示すように、凹部30においてその中央部に突設された弁座30aの外側となる偏心位置には、貫通孔30bが形成されている。貫通孔30bは、第1流路15a(図1、図2参照)の一部を構成し、流路形成板90の裏面側から吸引側バルブ41内(弁室41a)へ流入するインクの流入路となる。また、各凹部30の外側近傍位置には貫通孔90bが形成されている。貫通孔90bは、第2流路15b(図1、図2参照)の一部を構成し、吸引側バルブ41の弁室41bを出て流路形成板90の裏面側へ流れるインクの流出路となる。
【0098】
また、図13、図14に示すように、ポンプ室43aを構成する凹部31には、一対の貫通孔31a,31bが形成されている。一方の貫通孔31aは、第2流路15b(図1、図2参照)の一部を構成し、ポンプ室43aへ吸引されるインクの流入路となる。一方、他方の貫通孔31bは、第3流路15c(図1、図2参照)の一部を構成し、ポンプ室43aから吐出されるインクの流出路となる。また、凹部32にはその底面中央部に位置する円板状の弁座32aよりも外周側となる位置に貫通孔32bが形成され、弁座32aの中心部に貫通孔32cが形成されている。貫通孔32bは、第3流路15c(図1、図2参照)の一部を構成し、ポンプ43から吐出されたインクの吐出側バルブ45内への流入路となる。一方、貫通孔32cは、第4流路15d(図1、図2参照)の一部を構成し、吐出側バルブ45から流出するインクの流出路となる。
【0099】
また、図13、図14に示すように、延出部91には、6個の貫通孔91a(インク排出孔)と1個の負圧導出孔91bとが形成されている。6個の貫通孔91aは第4流路15d(図1、図2参照)の一部となり、1個の負圧導出孔91bは空気流路46b(図1、図2参照)の一部となる。
【0100】
また、流路形成板90の図14における右上端部には、1列目の凹部31の右側近傍位置に、一対の貫通孔90e,90fと、両貫通孔90e,90fを連通する溝90gとが形成されている。これら貫通孔90e,90f及び溝90gは、負圧室43bに負圧を導入するための空気流路46b(図1参照)の一部となる。
【0101】
さらに、2列の凹部31の列間の隙間領域には、Y方向に組をなす3組の凹部31の組毎の中心点間を結ぶ線分のほぼ中点に相当する各位置に3つの貫通孔92がそれぞれ形成されている。この貫通孔92は、空気流路46bの一部を構成し、負圧の導入路となり、導入された負圧は、ダイアフラム形成部材80の貫通孔81bを通ってカバー70の裏面の溝77に至り、この溝77を経由してそのY方向両側に位置する2個の負圧室43bに導入されるようになっている。
【0102】
図13及び図14に示すように、凹部30,31,32の周囲には、カバー70のシール部78a,78b,78c,78d,78eとほぼ面対称となる形状で帯状に延びるシール部93a,93b,93c,93d,93eが、例えば0.5〜2mm幅で数10〜数100μm程度の高さで突設されている。各シール部93a,93b,93c,93d,93eは、ダイアフラム形成部材80の裏面側のシール部83b,84b,85b,86b,87bと対応して位置する。インク供給システム61が組み立てられた際は、ダイアフラム形成部材80のゴム弾性を有するシール部が、カバー70のシール部と、流路形成板90のシール部との間に挟まれて圧接され、凹部30,31,32のシール性が確保される。
【0103】
また、流路形成板90においてネジ66,67の締結箇所には、ネジ挿通孔94a,95aを有するボス部94,95が突設されている。さらに流路形成板90においてダイアフラム形成部材80のピン孔89cと対応する位置には、ピン孔89cの内径より若干小さな外径を有する円柱状のピン96が突設されている。また。流路形成板90においてカバー70の各ピン79と対応する位置には、ピン79の外径より若干大きな内径を有する位置決め孔97が設けられている。
【0104】
複数(本例では19個)のボス部94がダイアフラム形成部材80のネジ挿通孔89aに挿通され、かつピン96がピン孔89cに挿通されることで、ダイアフラム形成部材80は流路形成板90に対して、吸引側弁体36、ダイアフラム37及び吐出側弁体38がそれぞれ凹部30,31,32と対向して位置する状態に位置決めされる。そして、位置決め孔97にカバー70側のピン79が挿入されることで、カバー70が、流路形成板90及び流路形成板90上に位置決めされたダイアフラム形成部材80に対して位置決めされる。
【0105】
ここで、ボス部94,95の突出高さは、ネジ66の締結時にボス部94,95の上端面がカバー70の裏面に当接することで流路形成板90とカバー70との間隔を所定値に規定するように設定されている。すなわち、ネジ66を締結すると、流路形成板90のシール部93a,93b,93c,93d,93eと、カバー70のシール部78a,78b,78c,78d,78eとの間にダイアフラム形成部材80のシール部83a,83b,84a,84b,85a,85b,86a,86b,87a,87bが挟まれて圧接されることでシールが確保される。このとき、ネジ66が過度に強く締結されても、ダイアフラム形成部材80のシール部83a,83b,84a,84b,85a,85b等が過剰に押し潰されて過剰な押し潰し変形が起きないように、ボス部94,95でシール部の押し潰し量を規定している。すなわち、ボス部94,95の突出高さは、ネジ66が過度の締結力で締結された場合でもボス部94,95がカバー70の裏面に当接して流路形成板90とカバー70との各々のシール部における間隔が所定値未満にならないように規制することで、シール部83a,83b,84a,84b,85a,85b等の過剰な押し潰し変形を招かない値に設定されている。また、ボス部94,95の突出高さは、ネジ66の締結過程で、ボス部94,95の端面がカバー70の裏面に当接するまでは、ダイアフラム形成部材80のシール部83a,83b,84a,84b,85a,85b等を適切なシール性を確保しうる適度な変形量で圧縮できるように設定されている。
【0106】
また、流路形成板90においてダイアフラム形成部材80の切り欠き88aと対応する位置には切り欠き98が形成されている。この切り欠き98は下方ほど外側へ張り出す所定角度の斜面を底面側に有している。
【0107】
次に流路形成板90の裏面(底面)側の構成を説明する。図15に示すように、流路形成板90の裏面には、流路15a〜15d,46b(図1、図2参照)の側壁をなす隔壁100が所定の流路経路に沿って延びるように形成されている。この隔壁100は流路15a〜15d,46bごとに袋小路状に閉じており、この隔壁100の内側にその間隔(隣り合って略平行に延びる部分の間隔)を溝幅とする複数の溝(以下、「第1〜第5溝101〜105」という)がそれぞれ形成されている。本実施形態では、図16に示すように、流路形成板90の流路形成面(底面)にフィルム120を溶着することで、第1〜第5溝101〜105とフィルム120とで囲み形成された空間域が、流路形成板90の裏面を経由する流路111〜115となる。このとき、4種類の第1〜第4溝101〜104は、それぞれ第1〜第4インク流路111〜114となり、6つのインク供給装置14の個々に設けられている。また、他の1種類の第5溝105は、空気流路115となり、6つのインク供給装置14の各負圧室43b近くを経由する経路で1つ設けられている。
【0108】
また、流路形成板90の裏面における一隅部には、1本の負圧導入用の管部106が裏面から垂直に突出している。管部106には負圧発生装置47と接続される空気流路用配管46aの一端部が接続され、この管部106がインク供給システム61への負圧の導入口となる。空気流路用の溝105は、3つの貫通孔92を経由しつつ管部106から負圧導出孔91bに至る経路で延びている。
【0109】
また、流路形成板90の裏面において図15における上側左右両端位置には、流路形成板90に対して保護板130を位置決めするための一対のピン107が突設されている。さらに流路形成板90の裏面周縁には隔壁100とほぼ同じ高さの延出部108がほぼ全周に亘って形成されている。
【0110】
図16に示すように、フィルム120は流路形成板90とほぼ同じ外周形状を有する略四角形状に形成され、隔壁100と延出部108の各端面(図16では上端面)に溶着されるようになっている。フィルム120は、例えばアルミ箔等の金属箔を樹脂層で挟むラミネートフィルムよりなり、表面の樹脂層(熱可塑性樹脂)により流路形成板90との溶着性を確保している。なお、フィルム120は、流路形成板90側の延出部91に対応する延出部121と、流路形成板90側の管部106及びピン107を避けるための凹部120a,120bとをそれぞれ有している。
【0111】
図17は、流路形成板の裏面におけるインク流路に係る部分を示す部分底面図である。また、図18は流路形成板の裏面における主に空気流路の部分を示す部分底面図である。なお、図17、図18では、流路(溝)以外の部分(ボス部等)は省略している。また、図17では、2つのインク供給装置14に対応する部分を示している。ここで、図17、図18には、図15と同様に溝に対応する流路の符号を付しており、以下の説明では、必要に応じて溝101をフィルム溶着後の流路とみなして説明する。
【0112】
図15及び図17に示すように、インク流路用の第1〜第4溝101〜104は、流路形成板90の裏面に溶着されたフィルム120との間で囲み形成されることで、それぞれ第1インク流路111、第2インク流路112、第3インク流路113及び第4インク流路114となる。
【0113】
6つのインク供給装置14を構成する6組のインク流路111〜114は、ポンプ43が1列目にあるインク供給装置14と2列目にあるインク供給装置14とで、インク供給針25、ポンプ43、吸引側バルブ41、吐出側バルブ45の位置関係が少し異なることなどを理由に、その流路経路などがインク供給装置14ごとで多少異なる。しかし、経路が少し異なること以外は各組のインク流路111〜114は基本的に同じ構造となっている。そのため、図17では、配管接続部63(図3、図4参照)と反対側に位置する2つのインク供給装置14に着目して各インク流路について説明する。
【0114】
図17において、上下に並ぶ2つの凹部31のうち上側の凹部31と、左右に並ぶ凹部30,32のうち左側の凹部30,32が1つのインク供給装置14に対応するもので、下側の凹部31と右側の凹部30,32が他の1つのインク供給装置14に対応するものである。
【0115】
図17に示すように、第1インク流路111(第1溝101)は、インク供給針25と対応する貫通孔90aと、吸引側バルブ41(凹部30)の貫通孔30bとを連通する流路である。よって、ポンプ43の吸引駆動時には、インク供給針25から貫通孔90aを通って流路形成板90の裏面側へ流出したインクは、第1インク流路111を通って貫通孔30bまで流れ、貫通孔30bから吸引側バルブ41へ流入する。
【0116】
また、第2インク流路112は、吸引側バルブ41(凹部30)の近傍の貫通孔90bと、ポンプ43(凹部31)の貫通孔31aとを連通する流路である。よって、ポンプ43の吸引駆動時には、その吸引駆動によるインク圧(負圧)で開弁した吸引側バルブ41を通って貫通孔90bから流路形成板90の裏面側へ流出したインクは、第2インク流路112を通って貫通孔31aまで流れ、貫通孔31aからポンプ室43aへ流入する。
【0117】
さらに第3インク流路113は、ポンプ43(凹部31側)の貫通孔31bと、吐出側バルブ45(凹部32)の貫通孔32bとを連通する流路である。よって、ポンプ43の吐出駆動時には、ポンプ室43aから吐出されて流路形成板90の裏面側へ貫通孔31bから流出したインクは、第3インク流路113を通って貫通孔32bまで流れ、貫通孔32bから吐出側バルブ45へ流入する。
【0118】
また、第4インク流路114は、吐出側バルブ45(凹部32)の貫通孔32cと、延出部91の貫通孔91aとを連通する流路である。よって、ポンプ43の吐出駆動時には、その吐出駆動により加圧されたインク圧で開弁した吐出側バルブ45を通って貫通孔32cから流路形成板90の裏面側へ流出したインクは、第4インク流路114を通って貫通孔91aまで流れ、貫通孔91aを通って配管接続部63のインク排出口64から流出する。
【0119】
次に負圧が導入される空気流路について説明する。図18に示すように、負圧導入用の管部106から導入した負圧は流路形成板90の表面側の溝90g及び貫通孔90fを経由してその裏面側の空気流路115へ導入される。空気流路115は、貫通孔90fから1列目のポンプ43のポンプ室43a(凹部31)の裏面に相当する位置を順次経由しつつ負圧導出孔91bに至るまで延びている。そして、空気流路115は、各ポンプ室43a(凹部31)の裏面に相当する位置でそれぞれ分岐して図18における下側へ延びる3つの空気流路115aを有し、各分岐した3つの空気流路115aはそれぞれ対応する3つの貫通孔92に連通している。よって、ポンプ43の吸引駆動時にインク供給システム61の管部106を通って空気流路115に導入した負圧は、その途中で分岐した空気流路115aを通って貫通孔92から流路形成板90の表面側へ導出される。そして、その貫通孔92から導出した負圧は、ダイアフラム形成部材80の貫通孔81bを通ってカバー70の裏面の溝77のその長手方向中央部に至り、その溝77に沿ってその長手方向両側に位置する2つの負圧室43bにそれぞれ導入されるようになっている。
【0120】
図19は保護板と受け皿とを示す分解斜視図である。図19に示す保護板130は、フィルム120とほぼ同じ外周形状を有する例えば金属板よりなる。保護板130は、配管接続部63に対応する延出部131と、ネジ66,67の締結位置に複数のネジ孔130a,130bとを有している。また、保護板130の流路形成板90側の管部106と対応する位置には管部106を挿通するための孔132が形成されている。
【0121】
また、受け皿140は、保護板130とほぼ同じ外周形状で、配管接続部63に対応する延出部141を有する。受け皿140の周縁部には底面から所定高さの延出部142がほぼ全周に亘って形成されている。そして、受け皿140の延出部142においてダイアフラム形成部材80の切り欠き88aと対応する位置には、外側へ延出する排液路143(ドレン部)が設けられている。排液路143は受け皿に溜まった廃インクを外側へ排出できるように外側ほど低くなる斜面に形成された所定幅の流路面143aと、延出部142が流路面143aの両側に沿って外側へ屈曲して延びる一対のガイド143bとを有している。排出される廃インクの流れ方向がガイド143bによって案内されつつ流路面143a上を廃インクが流れるようになっている。また、受け皿140において、保護板130の孔132と対応する位置には、負圧導入用の管部106を挿通するための筒部144が突設されている。また、受け皿140において保護板130のネジ孔130aと対応する位置には、ネジ孔130aに螺入されたネジ66の保護板130の裏面側へ突出した先端部が受け皿140と干渉することを回避しうる円形の凹部140aが複数形成されている。また、受け皿140には、保護板130のネジ孔130bと対応する位置に、ネジ67を挿通するためのネジ挿通孔140bが形成されている。
【0122】
このように構成される各部材70、80,90,120,130を、流路形成板90の裏面にフィルム120を予め溶着してから積層し、各挿通孔に挿通したネジ66を所定の締結力で締め付けることで、各部材70、80,90間のシール性が確保された状態で、各部材70、80,90,120,130からなる積層体を組み立てる。さらに、この積層体の底面側に負圧導入用の管部106が筒部144に挿通された状態で受け皿140を積層状態に配置し、2本のネジ67をネジ挿通孔に差し込んで下側から締結することで、インク供給システム61が組み立てられる。
【0123】
このとき、ネジ締結前に各部材70、80,90,120,130を積層した状態では、流路形成板90のボス部94,95及びピン96が、ダイアフラム形成部材80のネジ挿通孔89a及びピン孔89cにそれぞれ挿通されることで、ダイアフラム形成部材80が流路形成板90に対して、吸引側弁体36、ダイアフラム37及び吐出側弁体38がそれぞれ凹部30,31,32と対向する状態に位置決めされる。また、カバー70は各ピン79が位置決め孔97に差し込まれることで、流路形成板90に対して、吸引側弁体36、ダイアフラム37及び吐出側弁体38がそれぞれ凹部33,34,35と対向する状態に位置決めされる。
【0124】
そして、積層された各部材70、80,90,120,130にネジ66を締め付けた場合、流路形成板90側のボス部94,95がカバー70の裏面に当接して、カバー70と流路形成板90との間に所定の間隔が確保される。このとき、ボス部94,95の高さは、ネジ66の締結時にシール部78a,78b,78c,78d,78eとシール部93a,93b,93c,93d,93eとの間に挟まれたダイアフラム形成部材80のシール部83a〜87a,83b〜87bが、シールが確保される程度の力で押圧され、かつ過度に押し潰されない値に設定されている。よって、ネジ66を締結してボス部94,95がカバー70の裏面に当接した後にさらにネジ66が締め付けられても、ダイアフラム形成部材80のシール部83a〜87a,83b〜87bがそれ以上押し潰されることが規制されるので、シール部83a〜87a,83b〜87bは適した量だけ押し潰され、過度に押し潰されることが回避される。
【0125】
例えばネジ66が過度に強く締め付けられた場合に、ダイアフラム形成部材80において吸引側弁体36と吐出側弁体38をそれぞれ囲む各シール部84a,84b,85a,85bが過度に押し潰される構成であると、押し潰されたゴムが弁室の内側へ押し出され、吸引側弁体36や吐出側弁体38が弛むように変形する。その結果、ネジ66の締め付け力のばらつきによって弁体の弛みの有無に起因する弁体の開閉タイミングのばらつきが発生してしまう。
【0126】
この場合、例えば吸引側弁体の開閉タイミングがずれて、負圧室43bが大気開放されて閉弁しているはずの吸引側バルブ41が完全には閉弁していない状況が発生する。そして、このような状況下でインクカートリッジ13が取り外されると、インク供給システム内の加圧インクが逆流してインク供給針25からインクが漏れる心配がある。しかし、本実施形態の構成では、ダイアフラム形成部材80のシール部84a,84bが過度に押し潰されることがないので、吸引側弁体36の開閉タイミングのばらつきが発生しにくく、負圧室43bが大気開放されたときには、吸引側バルブ41は確実に閉弁する。その結果、ユーザがインクカートリッジ13を取り外した際に、シール部84a,84bの過度な押し潰しが原因で、インク供給システム61内の加圧インクが逆流してインク供給針25からインクが漏れる事態を極力回避できる。
【0127】
また、吐出側バルブ45の閉弁が不完全でインク漏れが発生すると、インク色ごとのインク流路間でインク送り量のばらつきが発生する。しかし、本実施形態の構成では、ダイアフラム形成部材80のシール部85a,85bが過度に押し潰されることがないので、吐出側弁体38の開閉タイミングのばらつきが発生しにくく、ポンプ43の吸引駆動時には吐出側バルブ45は確実に閉弁する。その結果、吐出側バルブ45の閉弁が確実でインク漏れが発生しないので、インク色ごとのインク流路間でインク送り量のばらつきが発生しにくい。
【0128】
また、上記のシール部の過度の押し潰しを回避できても、吸引側弁体36及び吐出側弁体38の閉弁付勢力が弱ければ、吸引側バルブ41及び吐出側バルブ45を介してインク漏れが発生し、上述したインクカートリッジ13の脱着時におけるインク供給針25からのインク漏れや、インク流路間におけるインク送り量のばらつきが発生する。そのため、吸引側バルブ41及び吐出側バルブ45が大型化するものの、閉弁を確実なものとすべく、吸引側弁体36及び吐出側弁体38を閉弁方向に付勢するコイルスプリング40,44(付勢手段)を備えた逆止弁構造を敢えて採用した。
【0129】
そして、吸引側バルブ41及び吐出側バルブ45が大型化しても、インク供給システム61の本体62に、6つのインク供給装置14を構成する6つポンプ43、6つの吸引側バルブ41及び6つの吐出側バルブ45を同一平面上に比較的周密に配置することで、インク供給システム61をコンパクトに構成した。この場合、比較的大径のポンプ43を2列に配列しその列間の隙間領域に6本のインク供給針25を等間隔に1列で配列し、さらにポンプ列の隣の領域に6つの吸引側バルブ41と6つの吐出側バルブ45とをそれぞれポンプ列と平行な方向に沿ってほぼ隣接して1列に配列した。
【0130】
このレイアウトはポンプ43及び各バルブ41,45を周密に配置できるものの、インク供給針25、ポンプ43、各バルブ41,45の位置が相対的に離れてしまい、インク流路15a,15b,15c,15dが相対的に長くなってしまう。しかし、本実施形態では、流路形成板90の裏面に複数の溝101〜104を設け、その裏面にフィルム120を溶着することで、溝101〜104とフィルム120とで囲み形成されたインク流路15a,15b,15c,15dを、流路形成板90においてポンプ43及び各バルブ41,45が形成された側の面(表面)と反対側の裏面に配置した。そのため、ポンプ43及び各バルブ41,45の比較的周密なレイアウトを犠牲にすることなく、インク流路15a,15b,15c,15dを同じ一部品内に組み込むことができた。
【0131】
図20は、6個のインクカートリッジ13を装着したインク供給システム61の平面図を示す。図20に示すように、6個のインクカートリッジ13の配置エリア(図20の平面視において6個のインクカートリッジ13を含む最小矩形エリア)をインク供給システム61の上面へその積層方向に投影した投影範囲を「カートリッジ投影範囲」と呼ぶと、6つのポンプ43はそれぞれの中心が全てカートリッジ投影範囲内に収まるように、6本のインク供給針25の各位置に対してレイアウトされている。また、1列に配列された6つの吸引側バルブ41はそれぞれの中心が全てカートリッジ投影範囲内に収まるように、6本のインク供給針25に対してレイアウトされている。さらに1列に配列された6つの吐出側バルブ45もそれぞれの中心が全てカートリッジ投影範囲内に収まるように、6本のインク供給針25に対してレイアウトされている。つまり、本実施形態では、6つのポンプ43、6つの吸引側バルブ41及び6つの吐出側バルブ45の各中心の全てが、6本のインク供給針25の各位置から決まるカートリッジ投影範囲内に収まるようにレイアウトされている。
【0132】
そして、6本のインク供給針25、6つのポンプ43、6つずつの各バルブ41,45を比較的周密にレイアウトしたその外側周縁部に、ネジ締結用のボス部75,76及び延出部71aを有する比較的コンパクトなサイズに本体62を構成した。そして、カートリッジ投影範囲がこのコンパクトな本体62の上面に収まっている。このため、プリンタ11内にインク供給システム61(カートリッジホルダ)及び6個のインクカートリッジ13を配設するために確保する必要がある配設スペースを比較的小さく抑えることができる。この結果、プリンタ11自体をコンパクトに構成することができる。
【0133】
また、フィルム120の下側に金属板よりなる保護板130を配置したので、ネジ66を締め付けた際にプラスチック製の流路形成板90がネジ66の締め付け箇所で特に強く押される力の分布により波打ち状に変形することを回避できる。よって、ネジ66の締結状態においても、流路形成板90の平坦性が担保されるので、例えば流路形成板の波打ち変形に起因するシール性能の低下や、弁体の開閉タイミングのばらつきの発生などを回避することができる。
【0134】
また、インクカートリッジ13の着脱時にカバー70の上面におけるインク供給針25の周辺に漏れた廃インクは貫通孔68を通じてカバー70の裏面側に位置するダイアフラム形成部材80上に流れる。そして、そのダイアフラム形成部材80の上面に溜まった廃インクは、切り欠き88aを通ってその外側へ流れ出て、流路形成板90の側壁の切り欠き98に沿って下方へ流れ、受け皿140の排液路143に落ち、さらに排液路143に沿って外側へ排出されて例えば廃液タンク21に回収される。また、万一、カバー70とダイアフラム形成部材80との間、ダイアフラム形成部材80と流路形成板90との間のシール部からインクが漏れ出たとしても、その漏れ出たインクは切り欠き88aから外側に流れ落ち、同様に排液路143を経て例えば廃液タンク21に回収される。よって、プリンタ11内がインク供給システム61から漏れた廃インクによって汚れることを回避できる。
【0135】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)負圧発生装置47を駆動してインクカートリッジ13側となる上流側からポンプ室43a内にインクを流入させた後、負圧発生装置47の駆動を停止するとともにコイルスプリング42の付勢力をダイアフラム37に作用させることで、ポンプ室43aを加圧状態とすることができる。したがって、インクをポンプ室43aから吐出させる吐出圧が得られるとともに、混入した気泡を押し出す力が働くために、ポンプ室43a内における気泡の滞留を抑制することができる。なお、ポンプ室43aに気泡が滞留していると、上流側から流れてくる空気などによって気泡を大きく成長させてしまう虞があるが、滞留を抑制することによって、気泡を成長させることなく下流側に流すことができる。
【0136】
(2)ポンプ室43aを形成する第1流路形成部材27はガス透過性を有するプラスチック製であるが、負圧発生装置47の駆動時、すなわちポンプ43が吸引駆動するとき以外は、コイルスプリング42の付勢力によってポンプ室43a内を常時加圧状態に保持することができる。したがって、空気が壁面を透過してポンプ室43aに入ってくることを抑制することができるとともに、ポンプ室43a内に混入した空気をインク流路外に排出することができる。
【0137】
(3)印刷を終了する場合には、駆動モータ49を正転駆動してポンプ43を吸引駆動し、その後に駆動モータ49を逆転駆動して負圧室43bを大気開放しておくようにしたため、コイルスプリング42の付勢力によって、プリンタ11の電源を切っている間にもポンプ室43aを加圧状態に保持することができる。したがって、空気を排出する時間を充分確保して、ポンプ室43a内に混入した気泡を下流側に流すことなく消滅させることができる。
【0138】
(4)インク流路15におけるポンプ室43aよりも上流側となる位置に上流側から下流側へのインクの通過を許容する吸引側バルブ41が設けられているため、ポンプ室43a内が加圧状態に保持されていても、上流側へインクが逆流することが抑制される。また、ポンプ室43aよりも下流側となる位置に上流側から下流側へのインクの通過を許容する吐出側バルブ45が設けられているため、負圧発生装置47を駆動して上流側からポンプ室43a内にインクを流入させる際に、下流側からポンプ室43a側へインクが逆流することが抑制される。
【0139】
(5)インク流路15における吐出側バルブ45よりも下流側となる位置には、常には閉弁状態となっているとともに、インクの消費によって下流側が所定圧力以下に減圧すると開弁状態となる流路弁17dが設けられている。したがって、ポンプ室43a内が加圧状態に保持されていても、流路弁17dが閉弁状態となっているときには下流側(記録ヘッド12側)にインクが供給されない。そして、インクの消費によって下流側が所定圧力以下に減圧すると流路弁17dが開弁状態となるので、下流側でのインク消費に応じてインクを供給することができる。
【0140】
(6)負圧発生装置47を駆動して負圧室43b内に負圧を発生させることによってダイアフラム37を負圧室43b側に変位させ、上流側からポンプ室43a内にインクを流入させることができる。また、負圧発生装置47の駆動停止時に大気開放機構48により負圧室43b内を大気開放することで、コイルスプリング42の付勢力をダイアフラム37に作用させてポンプ室43aを加圧状態とすることができる。
【0141】
ここで、例えばアクチュエータでコイルスプリング42を押圧してポンプ室43aの容積を減少させる場合には、アクチュエータの駆動を停止すると、ポンプ室43aを加圧状態に保持することはできない。また、加圧空気の加圧力によってポンプ室43aを加圧状態とする場合には、加圧装置の駆動停止後には、加圧空気が漏れて加圧力が弱まる虞があるが、コイルスプリング42によってダイアフラム37を付勢することによって、加圧力を弱めることなく加圧状態を保持することができる。すなわち、負圧発生装置47を駆動して負圧室43b内に負圧を発生させた後、負圧発生装置47を駆動停止するとともに大気開放機構48によって負圧室43b内を大気開放することで、負圧発生装置47の駆動停止時にも、ポンプ室43aを加圧状態に保持することができる。
【0142】
(7)インク流路15a,15b,15c,15dやポンプ室43aを形成する第1流路形成部材27と、負圧室43bを形成する第2流路形成部材28とが、可撓性部材29を挟持する態様で積層構造をなしているため、インク供給装置14やプリンタ11をコンパクトで省スペースな構成とすることができるとともに、組み立て作業が容易になる。
【0143】
(8)コイルスプリング42が負圧室43bに設けられているので、インクと接触することなくダイアフラム37を付勢することができる。したがって、コイルスプリング42がインクと接触して不要な化学変化が生じることを回避できる。また、コイルスプリング42がポンプ室43a内にある場合には、コイルスプリング42に気泡がトラップされて、クリーニング等によっても排出されにくくなってしまう虞があるが、コイルスプリング42がポンプ室43aの外側に設けられているので、ポンプ室43a内における気泡の滞留を抑制することができる。
【0144】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・第1流路形成部材27、流路形成板90をガス透過性の低い材料、例えばポリプロピレン(PP)などによって構成してもよい。この場合にも、ポンプ室43a内を加圧状態に保持することによって、空気が壁面を透過してポンプ室43aに入ってくることを抑制することができる。
【0145】
・変位部材は、ポンプ室43aの容積を増減させるように変位可能な構成であれば他の構成にしてもよい。例えば、ポンプ室43a内を往復移動可能なピストンによってポンプ室43a内の容積を変化させるようにしてもよい。
【0146】
・負圧室43b内を一気に大気開放することでダイアフラム37にコイルスプリング42の付勢力を作用させるようにしているが、例えば徐々に大気開放を行うなどして、加圧力を調整するようにしてもよい。
【0147】
・付勢部材はコイルスプリング42に限らない。例えば、可撓性部材としてのフィルム部材に付勢部材としてのゴム部材を貼りつけて一体化させることで、付勢力を得るようにしてもよい。
【0148】
・コイルスプリング42を引っ張りばねとして、ポンプ室43a内に配置してもよい。
・インク供給装置14は、第1流路形成部材27、第2流路形成部材28及び可撓性部材29を積層状態に組み付けたインク供給システム61に限らず、ポンプや一方向弁等を個別に液体供給流路としてのチューブなどに接続して構成するようにしてもよい。
【0149】
・ダイアフラム形成部材80は、プリンタ11内の全てのインク供給装置14間で共有される一部材とする必要はない。例えば一つのインク供給システム61内でダイアフラム形成部材を複数部品としてもよい。
【0150】
・ポンプと第1の一方向弁(吸引用一方向弁)及び第2の一方向弁(吐出用一方向弁)とを備えたインク供給装置が記録ヘッドユニットに搭載された構成も採用できる。すなわち、前記実施形態のインク供給システム61をキャリッジに搭載する。このような構成においても、積層構造のインク供給システム61の採用により、配管作業の低減及びインク供給装置の薄型化を実現できる。
【0151】
・上記実施形態では、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置及び液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0152】
11…液体噴射装置としてのプリンタ、12…液体噴射手段としての記録ヘッドユニット、13…液体供給源としてのインクカートリッジ、14…液体供給装置としてのインク供給装置、15a,15b,15c,15d…液体供給流路を構成するインク流路、17d…開閉弁としての流路弁、27…第1の形成部材としての第1流路形成部材、28…第2の形成部材としての第2流路形成部材、29…変位部材としての可撓性部材、41…第1の一方向弁としての吸引側バルブ、42…付勢部材及びばね部材としてのコイルスプリング、43…ポンプ、43a…ポンプ室、43b…負圧室、45…第2の一方向弁としての吐出側バルブ、47…変位機構を構成する負圧発生装置、48…大気開放機構、70…第2の形成部材としてのカバー、80…可撓性部材としてのダイアフラム形成部材、90…第1の形成部材としての流路形成板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、該液体供給流路の途中にポンプ室が設けられたポンプとを備えた液体供給装置において、
前記ポンプ室の壁面の一部を構成して該ポンプ室の容積を増減させるように変位する変位部材と、
該変位部材が前記ポンプ室との隔壁を構成するように、前記ポンプ室の外側に設けられた負圧室と、
駆動時に前記負圧室内に負圧を発生させる負圧発生装置を有して、前記負圧室内に発生させた負圧によって前記ポンプ室の容積が増加する方向に前記変位部材を変位させる変位機構と、
前記負圧室内を大気開放するための大気開放機構と、
を備え、
前記変位機構は、前記負圧発生装置を駆動して、上流側から前記ポンプ室内に液体を流入させるとともに、前記大気開放機構によって前記負圧室内を大気開放することで、前記ポンプ室内から前記液体を流出させることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記変位部材を前記ポンプ室の容積が減少する方向に付勢する付勢部材をさらに備え、
前記変位機構は、前記負圧発生装置の駆動時に、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ポンプ室の容積が増加する方向に前記変位部材を変位させ、
前記負圧発生装置の駆動停止時に、前記大気開放機構によって前記負圧室内を大気開放することで、前記付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させて前記ポンプ室を加圧状態とすることを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記液体供給流路における前記ポンプ室よりも上流側となる位置に設けられ、上流側から下流側への液体の通過を許容する第1の一方向弁と、
前記液体供給流路における前記ポンプ室よりも下流側となる位置に設けられ、上流側から下流側への液体の通過を許容する第2の一方向弁と、
前記液体供給流路における前記第2の一方向弁よりも下流側となる位置に設けられ、常には閉弁状態となっているとともに、液体の消費によって下流側が所定圧力以下に減圧すると開弁状態となる開閉弁とをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記液体供給流路及び前記ポンプ室を形成する第1の形成部材と、前記負圧室を形成する第2の形成部材とが、前記変位部材を挟持する態様で積層構造をなしていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記変位部材を前記ポンプ室の容積が減少する方向に付勢する付勢部材は、前記ポンプ室の外側に設けられたばね部材であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の液体供給装置。
【請求項6】
液体を噴射する液体噴射手段と、該液体噴射手段に液体を供給する請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の液体供給装置とを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路の途中にポンプ室が設けられたポンプを備えた液体供給装置における液体供給方法であって、
前記ポンプ室の壁面の一部として該ポンプ室の容積を増減させるように変位する変位部材を、変位機構を駆動して、前記変位部材が前記ポンプ室との隔壁を構成するように前記ポンプ室の外側に設けられた負圧室に負圧を発生させることで、前記ポンプ室の容積が増加する方向に変位させる工程と、
前記変位機構の駆動停止時に、前記負圧室内を大気開放することで、前記ポンプ室の容積が減少する方向に前記変位部材を変位させる工程とを備えたことを特徴とする液体供給装置における液体供給方法。
【請求項8】
前記ポンプ室の容積が増加する方向に前記変位部材を変位させる工程では、前記ポンプ室の容積が減少する方向に前記変位部材を付勢する付勢部材の付勢力に抗して前記変位部材を変位させ、
前記ポンプ室の容積が減少する方向に前記変位部材を変位させる工程では、前記変位部材に前記付勢部材の付勢力を作用させて前記ポンプ室を加圧状態とすることを特徴とする請求項7に記載の液体供給装置における液体供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−18291(P2013−18291A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225931(P2012−225931)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2008−190201(P2008−190201)の分割
【原出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】