説明

液体供給装置

【課題】液体容器が装着部から飛び出すことが防止され、かつ繰り返し使用されるに適した構造を提供する。
【解決手段】カートリッジ装着部110は、挿抜方向50に沿って開口112から奥部へ延びる第1溝115及び第2溝116と、第2溝116の側面123,124から突出されたストッパ126,127と、スライド部材135の付勢に抗してインクカートリッジ30を保持するロックレバー145と、を具備する。インクカートリッジ30は、インク室36と、第1溝115内を移動可能な被ガイド部44と、被ガイド部44に弾性変形可能に設けられたリブ58,60から突出する凸片59,61と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を通じて液体容器が装着部に装着可能であり、装着された状態において当該液体容器を開口へ向かって付勢部材が付勢する液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクを用いて記録用紙に画像を記録する画像記録装置が知られている。この画像記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドを備え、記録ヘッドのノズルからインク滴を記録用紙へ向けて選択的に噴出する。このインク滴が記録用紙に着弾することによって、記録用紙に所望の画像が記録される。この画像記録装置には、記録ヘッドへ供給するインクを貯蔵する液体容器が設けられる。この液体容器として、カートリッジ形式が採用されたものが公知である。カートリッジ形式の液体容器は、画像記録装置に設けられた装着部に対して着脱可能である。このようなカートリッジ形式の液体容器はインクカートリッジとも称される。
【0003】
インクカートリッジ内のインクが無くなると、そのインクカートリッジが画像記録装置の装着部から取り外されて、インクを貯蔵する新たなインクカートリッジが装着部に装着される。装着部において、インクカートリッジの位置決めを行ったり、インクカートリッジの装着状態を保持したりするためのロック構造が公知である。また、ロック構造によりインクカートリッジがロックされている状態において、インクカートリッジが装着部から取り外される向きにインクカートリッジを付勢する付勢部材が公知である。装着部からインクカートリッジが取り外されるときに、ロック構造によるロックが解除され、インクカートリッジは付勢部材から受ける力によって開口へ向かって移動する。これにより、ユーザが装着部からインクカートリッジを取り出すことが容易となる。
【0004】
また、インクカートリッジが勢いよく移動すると、インクカートリッジが装着部から飛び出してしまうことがあり得る。インクカートリッジが装着部から飛び出すと、インクカートリッジが転倒したりして、その際の衝撃でインクカートリッジ内のインクが外部に飛び散るおそれがある。また、インクカートリッジが床などに落下して、インクカートリッジが破損するおそれがある。これらを防止するために、インクカートリッジの飛び出しを防止する構成が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−288866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された構成においては、カートリッジ装着部(101)に弾性変形可能なフック爪(130)が設けられており、このフック爪(130)が、インクカートリッジ(1)が取り出されるときの所定のタイミングにおいて、インクカートリッジ(1)の係止用凹部(32)の縁部(31)に係止する。この係止によって、インクカートリッジ(1)の飛び出しが防止される。
【0007】
しかし、インクカートリッジ(1)の交換が繰り返され、フック爪(130)が何度も繰り返して弾性変形されると、フック爪(130)が疲労して、弾性復帰しなくなったり、変形が小さくなったりするおそれがあり、また、フック爪(130)が疲労により破断するおそれもある。そうすると、インクカートリッジ(1)の飛び出しを防止することができなくなり、機能を回復させるためには、フック爪(130)を有するインクカートリッジ装着部(101)の交換が必要となる。
【0008】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体容器が装着部から飛び出すことが防止され、かつ繰り返し使用されるに適した構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明は、開口を通じて液体容器が装着部に装着可能であり、当該液体容器が当該装着部に装着された状態において、当該液体容器を開口へ向かって付勢部材が付勢する液体供給装置である。上記装着部は、上記液体容器が挿抜される挿抜方向に沿って開口から奥部へ延びる溝と、当該溝において挿抜方向に沿って延出されて互いに対向する一対の側面のうち少なくともいずれか一方の側面から突出されたストッパと、装着状態の上記液体容器を上記付勢部材の付勢に抗して装着された状態に保持し、かつ当該保持を解除可能な保持部材と、を具備する。上記液体容器は、液体を貯留し、かつ装着された状態において当該液体を流出可能な貯留室と、上記装着部に対して挿抜されるときに上記溝に挿入されて上記溝内を移動可能な被ガイド部と、当該被ガイド部において上記ストッパが設けられた一方の側面と対向する位置に設けられており、上記ストッパとの当接によって上記ストッパの突出向きへ弾性変形可能な、凸片を有する変形部と、を具備する。
【0010】
液体容器は開口を通じて装着部へ装着される。装着された状態においては、液体容器は付勢部材により付勢されるが、この付勢に抗して保持部材が液体容器を装着された状態に保持する。また、液体容器の被ガイド部は装着部の溝に挿入されている。
【0011】
保持部材による保持が解除されると、液体容器は付勢部材から受ける力によって開口に向かって移動する。液体容器が開口に向かって移動するとき、被ガイド部が装着部の溝に沿って移動して、変形部の凸片が溝のストッパに当接する。この当接によって、液体容器が停止する。
【0012】
なお、液体容器の停止位置は、変形部の凸片と溝のストッパとが当接する位置に限定されない。例えば、変形部が弾性変形しつつストッパに対して凸片が摺動することによって、液体容器の移動速度が減衰され、凸片がストッパを越えてから液体容器が停止してもよい。
【0013】
(2) 上記変形部は、一対が設けられており、上記被ガイド部において上記溝の一対の側面とそれぞれ対向する一対の側面に、各々の凸片が突出する向きが相反するようにそれぞれ一つずつ設けられたものであり、上記ストッパは、一対が設けられており、上記溝の一対の側面にそれぞれ一つずつ設けられたものであってもよい。
【0014】
これにより、被ガイド部の側面と溝の側面との間に液体容器の移動に適した隙間が設けられても、少なくとも一対の凸片のいずれか一方が対向するストッパと当接するので、液体容器の飛び出しが確実に防止される。
【0015】
(3) 挿抜方向と直交し、かつ上記変形部の凸片が突出する向きに平行な幅方向に沿った上記被ガイド部の一対の側面間の距離Aと、上記一対の変形部の各凸片の先端の間の上記幅方向に沿った距離Bと、上記各ストッパの間の上記幅方向に沿った距離Cと、上記溝の一対の側面の上記幅方向に沿った距離Dと、は下記の式の関係にあってもよい。
式:(距離A)<(距離C)<(距離B)<(距離D)
【0016】
(距離A)<(距離C)であることにより、被ガイド部における変形部以外の箇所がストッパ間を容易に通過することができる。(距離C)<(距離B)であることにより、凸片が確実にストッパと当接する。(距離B)<(距離D)であることにより、溝におけるストッパ以外の箇所において変形部が溝内を容易に移動することができる。
【0017】
(4) 上記各変形部は、挿抜方向において同じ位置に配置されており、上記各ストッパは、挿抜方向において同じ位置に配置されていてもよい。
【0018】
これにより、凸片とストッパとの当接によって、溝に対して被ガイド部が幅方向に移動することが防止される。
【0019】
(5) 上記溝は、上記被ガイド部が挿入される第1溝と、挿抜方向と直交し、かつ上記変形部の凸片が突出する向きに平行な幅方向において、当該第1溝より幅広であって当該第1溝に対して上記幅方向へ相対移動自在なスライド部材に設けられた第2溝と、を有し、当該第2溝の一対の側面に上記ストッパがそれぞれ設けられていてもよい。
【0020】
これにより、第1溝の幅方向の中央と被ガイド部の幅方向の中央とがずれていても、凸片とストッパとの当接において、被ガイド部の幅方向の中央とストッパ間における幅方向の中央とが合致するようにスライド部材がスライドするので、一対の凸片に対して各ストッパがバランスよく当接する。
【0021】
(6) 上記溝は、上記一対の側面と、その一対の側面を繋ぐ底面とによって形成されており、上記ストッパは、上記溝における挿入向きの奥部に面している第1傾斜面を有するものであり、上記変形部の凸片は、上記液体容器が上記装着部に装着されているときに、挿抜方向において上記第1傾斜面と対向する第2傾斜面を有するものであり、上記第1傾斜面及び上記第2傾斜面は、いずれも、上記溝の底面に近い側が底面から遠い側よりも上記開口へ近くなるように傾斜しているものであってもよい。
【0022】
ストッパと凸片とが当接するときに、第1傾斜面と第2傾斜面とが接触して、これらの傾斜に沿って液体容器が溝の底面側へ案内されるので、凸片が底面から離れる向きへ移動してストッパを乗り越えることが防止される。
【0023】
(7) 上記ストッパの第1傾斜面又は上記変形部の第2傾斜面のうち少なくとも一方は、当該ストッパが突出している上記溝の側面から遠い側が側面に近い側よりも上記開口へ近くなるように傾斜しているか、当該凸片の先端から遠い側が先端に近い側よりも上記開口へ近くなるように傾斜していてもよい。
【0024】
凸片がストッパに当接して液体容器が停止した後、ユーザが液体容器を引き出すと、第1傾斜面又は第2傾斜面に案内されて、変形部が弾性変形しつつ凸片がストッパに当接しながら移動して、凸片がストッパより開口側へ移動する。
【0025】
(8) 上記液体容器は、上記変形部の凸片が突出する向きに平行な幅方向に関して、上記変形部を含む上記被ガイド部の幅より幅広な直方体形状の本体を有するものであり、上記変形部の凸片は、その先端が本体の幅方向の端面より幅方向において内側に位置するように配置されたものであってもよい。
【0026】
本体の端面より凸片が突出しないので、液体容器が落下したときや減圧包装されたときにおいて、凸片が破損や変形されるおそれが軽減される。
【0027】
(9) 上記変形部が、挿抜方向に沿って延びており弾性変形可能なリブを有し、上記凸片が当該リブから突出するものが挙げられる。
【0028】
(10) 上記溝は水平方向へ延びるものであって、上記液体容器が上記装着部に装着されたときに、上記液体容器の下方に位置するものであり、上記保持部材は、上記液体容器の鉛直方向上側において上記液体容器と係合するものであってもよい。
【0029】
液体容器が装着部に装着されたときに、溝が液体容器の下方に位置するので、重力によって液体容器の被ガイド部が溝に挿入された状態が維持される。これにより、凸片がより確実にストッパと当接し得る。また、下方に配置された変形部と反対側の上方において保持部材が液体容器と係合されるので、保持部材との係合のために必要な形状及び変形部のレイアウトの自由度が高い。
【0030】
(11) 本発明は、上記液体供給装置と、上記液体供給装置から供給された液体を選択的に吐出して被記録媒体に画像記録を行う記録部と、を具備する画像記録装置として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、液体容器が付勢部材からの力を受けて移動するときに、装着部の溝に沿って移動する被ガイド部の変形部の凸片がストッパに当接するので、液体容器は、移動速度が減速されるか停止される。これにより、液体容器が装着部から飛び出すことが防止される。また、凸片がストッパと当接しながら液体容器が移動すると、変形部が弾性変形するが、液体容器が交換されると新たな変形部の凸片がストッパと当接しつつ、その新たな変形部が弾性変形することとなる。これにより、液体容器が繰り返し交換されて液体供給装置が使用されても、疲労した変形部の凸片がストッパと当接することがない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るインク供給装置100を備えたプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【図2】図2は、インクカートリッジ30の外観構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、インクカートリッジ30の外観構成を示す底面図である。
【図4】図4は、インクカートリッジ30の外観構成を示す側面図である。
【図5】図5は、インクカートリッジ30の底面の一部拡大図である。
【図6】図6は、インクカートリッジ30の側面の一部拡大図である。
【図7】図7は、カートリッジ装着部110の外観構成を示す斜視図である。
【図8】図8は、開口112付近における第1溝115及び第2溝116の構成を示す拡大平面図である。
【図9】図9は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態を示す断面図である。
【図10】図10は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される状態及びカートリッジ装着部110から取り外される状態を示す断面図である。
【図11】図11は、インクカートリッジ30の凸片59,61が、カートリッジ装着部110のストッパ126,127に当接した状態を示す拡大平面図である。
【図12】図12は、変形例1を示す拡大部分断面図である。
【図13】図13は、変形例2を示す拡大部分断面図である。
【図14】図14は、変形例3を示す拡大部分断面図である。
【図15】図15は、変形例3において、第1溝115の幅方向51の中央と被ガイド部44の幅方向51の中央とがずれた状態を示す拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係るインク供給装置100を備えたプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【0035】
[プリンタ10の概要]
プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。図1に示されるように、プリンタ10は、インク供給装置100を備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面が外部に開放された開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を介してカートリッジ装着部110に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から抜き出される。プリンタ10が、本発明に係る画像記録装置に相当する。インク供給装置100が、本発明に係る液体供給装置に相当する。
【0036】
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインクが貯留されている。カートリッジ装着部110に装着された状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とがインクチューブ20で接続される。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。記録ヘッド21が、本発明における記録部に相当する。
【0037】
給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、画像が記録用紙に記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対22によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0038】
[インクカートリッジ30]
図2から図4に示されるように、インクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインクを貯留するインク室36である(図1参照)。インク室36は、インクカートリッジ30の外観を形成している本体31により形成される空間であってもよいし、本体31とは別の部材によって形成される空間であってもよい。インクカートリッジ30が、本発明における液体容器に相当する。インク室36が、本発明における貯留室に相当する。
【0039】
インクカートリッジ30は、図2に示された起立状態、つまり、同図の下側の面を底面とし、同図の上側の面を上面として、カートリッジ装着部110に対して矢印50で示される方向(以下「挿抜方向50」と称する。)に沿って挿抜される。すなわち、インクカートリッジ30は、挿抜方向50に沿ってカートリッジ装着部110に挿入され、また、挿抜方向50に沿ってカートリッジ装着部110から抜き出される。インクカートリッジ30は、起立状態のままカートリッジ装着部110に挿抜される。
【0040】
インクカートリッジ30は、略直方体形状の本体31を有する。本体31は、幅方向51に細く、高さ方向52と奥行き方向53が幅方向51よりも大きい扁平形状である。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着されるときに前方側となる本体31の壁が前壁40であり、後方側となる本体31の壁が後壁42である。前壁40と後壁42とは、挿抜方向50において対向している。なお、挿抜方向50は奥行き方向53と平行である。
【0041】
本体31の前壁40における高さ方向52の中央付近には、残量検知部33が設けられている。各図には現れていないが、残量検知部33は、インク室36に通ずるように、一方が開口である箱形である。また、残量検知部33は、光センサ114(図9参照)から出射された赤外光を透過させる透光性の樹脂からなる一対の壁を含む。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、カートリッジ装着部110に設けられた光センサ114に対して、残量検知部33が赤外光を透過させる状態と、残量検知部33が赤外光を遮光又は減衰させる状態とがある。この残量検知部33の状態に応じて、インク室36内のインク残量が所定量未満になったことが判定される。なお、残量検知部33において公知の検出子が設けられてもよいし、インク残量の判定手法としては、公知の手段が採用されればよい。また、光センサ114が赤外光を出射する壁面は垂直であっても傾斜していてもよい。
【0042】
本体31の前壁40における残量検知部33の上側に前壁40を奥行き方向53へ貫通する開口が形成されており、その開口よりも挿抜方向50における後壁42側に、、大気連通口32が設けられている。大気連通口32は、インク室36を形成している壁を奥行き方向53へ貫通する貫通孔である。大気連通口32を介してインク室36の空気層と大気とが連通され得る。各図には現れていないが、大気連通口32は、バルブなどによって開閉可能に構成されている。大気連通口32が開かれることによって、インク室36の気圧が大気圧となる。この大気連通口32は、必ずしも前壁40に設けられる必要はなく、インク室36の内部と外部とを連通させるものであれば配置は限定されない。また、インク室36内が負圧に維持された状態でインクカートリッジ30が使用される場合は、大気連通口32は必ずしも設けられなくてもよい。
【0043】
本体31の前壁40における残量検知部33の下側に、インク供給部37が設けられている。インク供給部37は、円筒形状の外形をなしており、前壁40から挿抜方向50に沿って外側へ突出している。インク供給部37の中心部に、挿抜方向50に延びるインク流路38が形成されている。インク流路38を通ってインク室36から、カートリッジ装着部110に設けられたインクニードル122へインクが流出される。
【0044】
本体31の上壁39における奥行き方向53の中央付近には、係合部43が形成されている。係合部43は、インクカートリッジ30の幅方向51及び高さ方向52に拡がる平面を有する突起である。係合部43には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態で、後述されるロックレバー145が係合する。この係合部43は、インクカートリッジ30を外側に押し出させる付勢力を受けるものである。
【0045】
本体31には、第1突起45及び第2突起46が設けられている。第1突起45は、本体31の前壁40の上端に設けられている。第1突起45の幅は、前壁40の幅と同じである。第1突起45は、前壁40から挿抜方向50に沿って後壁42とは反対側へ延出されている。この第1突起45は、前壁40の幅と同幅であるが、前壁40の幅より狭い幅の板状のものであってもよい。
【0046】
第2突起46は、本体31の前壁40の下端に設けられている。したがって、第2突起46は、インク供給部37の下方に配置されている。第2突起46の幅は、前壁40の幅と同じである。第2突起46は、前壁40から挿抜方向50に沿って後壁42とは反対側へ延出されている。第2突起46の先端は、インク供給部37の先端よりインク室36から離れた位置まで延出されている。
【0047】
本体31の下壁41には、奥行き方向53に渡って延びる被ガイド部44が設けられている。被ガイド部44は、下壁41から下方へ突出されたリブ又は突片によって構成されており、高さ方向52及び奥行き方向53に拡がる一対の面54,55を幅方向51に対向させて形成する。面54,55は、幅方向51において、本体31の右側面47及び左側面48より内側に配置されている。つまり、幅方向51において面54,55が離間する距離Aより、本体31の右側面47と左側面48とが離間する距離Eが長い(距離A<距離E)。被ガイド部44は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿抜される際に、後述される第1溝115に挿入されて移動されるものであり、面54,55は、その第1溝115の側面117,118と対向される。この面54,55が、本発明における被ガイド部の一対の側面に相当する。
【0048】
被ガイド部44には、一対の変形部56,57が設けられている。一対の変形部56,57は、各面54,55の一部を形成するように、各面54,55に一つずつが設けられている。変形部56,57は、奥行き方向53(挿抜方向50)において同じ位置に配置されている。変形部56は、リブ58及び凸片59を有する。変形部57は、リブ60及び凸片61を有する。リブ58,60は、幅方向51において対向されており、凸片59と凸片61とは、幅方向51の外側へ向かってそれぞれ相反する向きへリブ58,60から突出されている。
【0049】
変形部56のリブ58は、被ガイド部44の面54の一部を形成している。面54には、スリット62が設けられており、このスリット62が、リブ58における後壁42側の端である。リブ58の前壁40側は、被ガイド部44の他の部分と一体であり端が存在しない。リブ58は、合成樹脂などによって本体31と一体に形成されており、スリット62が形成されることによって幅方向51へ若干弾性変形可能である。リブ58の弾性変形量は、凸片59が突出する寸法程度であれば十分である。
【0050】
凸片59は、リブ58の面54から幅方向51の外側へ向かって突出されている。凸片59の突出端は、本体31の右側面47より面54側に位置している。つまり、凸片59は右側面47より幅方向51の外側へは突出しない。凸片59は、右側面視において、上側を底辺とし、下側を頂点とする所謂逆三角形状をなしている。この逆三角形状の凸片59における前壁40側の傾斜面63は、三角形の底辺に近い側が底辺に遠い側よりも前壁40に近くなるように傾斜しており、後壁42側の傾斜面64は、三角形の底辺に近い側が底辺に遠い側よりも後壁42に近くなるように傾斜している。
【0051】
変形部57のリブ60は、被ガイド部44の面55の一部を形成している。面55には、スリット65が設けられており、このスリット65が、リブ60における後壁42側の端である。リブ60の前壁40側は、被ガイド部44の他の部分と一体であり端が存在しない。リブ60は、合成樹脂などによって本体31と一体に形成されており、スリット65が形成されることによって幅方向51へ若干弾性変形可能である。リブ60の弾性変形は、凸片61が突出する寸法程度であれば十分である。
【0052】
凸片61は、リブ60の面55から幅方向51の外側へ向かって突出されている。凸片61の突出端は、本体31の左側面48より面55側に位置している。つまり、凸片61は左側面48より幅方向51の外側へは突出しない。各図には現れていないが、凸片61は、左側面視において、上側を底辺とし、下側を頂点とする所謂逆三角形状をなしている。この逆三角形状の凸片61における前壁40側の傾斜面66は、三角形の底辺に近い側が底辺に遠い側よりも前壁40に近くなるように傾斜しており、後壁42側の傾斜面67は、三角形の底辺に近い側が底辺に遠い側よりも前壁40に近くなるように傾斜している。
【0053】
前述されたように凸片59,61は、いずれも本体31の右側面47又は左側面48より外側へ突出せず、各凸片59,61の先端は、幅方向51において、本体31の右側面47及び左側面48より内側に配置されている。つまり、幅方向51において凸片59,61の各先端が離間する距離Bより、本体31の右側面47と左側面48とが離間する距離Eが長い(距離B<距離E)。各凸片59,61は、各リブ58,60から外側へ突出されたものなので、幅方向51において凸片59,61の各先端が離間する距離Bは、被ガイド部44の面54,55が離間する距離Aより長い(距離A<距離B)。
【0054】
[インク供給装置100]
図1に示されるように、インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21へインクを供給するものである。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110を備えている。なお、図1においては、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態が示されている。
【0055】
[カートリッジ装着部110]
図1及び図7に示されるように、カートリッジ装着部110は、プリンタ10の正面側に開口112を有する。開口112を通じてカートリッジ装着部110へインクカートリッジ30が挿抜される。インクカートリッジ30は、カートリッジ装着部110の内部空間の底部を画定している底面に設けられた第1溝115に被ガイド部44が挿入されることによって挿抜方向50へ案内される。
【0056】
カートリッジ装着部110には、光センサ114、ロック機構144、スライド部材135、コイルバネ139及び連結部121などが設けられている。
【0057】
図9に示されるように、カートリッジ装着部110の内部空間における、開口112と挿抜方向50において対向する奥部には、光センサ114が設けられている。光センサ114は、残量検知部33において検出子を検知するものである。光センサ114は、光を出射可能な発光ダイオードなどの発光素子と、発光素子から出射された拡散赤外光を受光可能なフォトトランジスタなどの受光素子とにより構成された光透過型のフォトインタラプタである。これら発光素子と受光素子とが図9における紙面前後方向に対向して配置されている。残量検知部33における検出子が光センサ114に検出されているか否かによって、インクの残量が所定量未満になったかどうかが判定される。
【0058】
なお、残量検知部33には、検出子がなくてもよい。すなわち、光センサ114は、発光素子と受光素子とが水平方向に対向されている。そして、発光素子から出射された光は受光素子に受光される。そして、残量検知部33内にインクがある状態では、発光素子から出射された光が遮断又は減衰され、残量検知部33内にインクがない状態では、発光素子から出射された光が透過されるように構成されていてもよい。また、残量検知部33内にインクがある状態では、発光素子から出射された光が受光素子に到達しないように反射され、残量検知部33内にインクがない状態では、発光素子から出射された光が受光素子に到達するように反射されるように構成されていてもよい。
【0059】
スライド部材135は、カートリッジ装着部110の奥部の下端側に形成された空間130に配置されている。空間130は、カートリッジ装着部110の内部空間と連続している。スライド部材135は、空間130において挿抜方向50に沿ってスライド可能に支持されている。スライド部材135は、インクカートリッジ30の第2突起46の挿入経路に配置されており、第2突起46と当接可能である。
【0060】
空間130にはコイルバネ139が設けられている。コイルバネ139は、スライド部材135を開口112側、つまり、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から抜き出される向きへ、つまり開口112へ向かって、インクカートリッジ30を弾性付勢するものである。コイルバネ139は、空間130において挿抜方向50に沿って延出された支持ロッド133に外嵌されて、空間130の奥端を画定している奥壁とスライド部材135との間に介在されている。コイルバネ139が自然長である場合、つまり、スライド部材135に外力が加えられていない状態では、スライド部材135は、開口112側の所定の位置に配置される(図10参照)。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程で、インクカートリッジ30の第2突起46がスライド部材135に当接して、スライド部材135が空間130の奥壁側へ押圧される。これにより、コイルバネ139が収縮されるとともに、スライド部材135が奥壁側の位置(図9参照)へスライドされる。スライド部材135及びコイルバネ139が、本発明における付勢部材に相当する。
【0061】
カートリッジ装着部110には、ロック機構144が設けられている。ロック機構144は、インクカートリッジ30が装着位置に配置された状態で、インクカートリッジ30が開口112から飛び出す向き(図9における左向き)へ移動することを規制して、インクカートリッジ30を装着位置に保持する。
【0062】
ロック機構144は、大別すると、ロックレバー145と、ロックレバー145に付勢力を付与するコイルバネ148とにより構成されている。ロックレバー145は、図10に示されるアンロック位置と、図9に示されるロック位置との間で回動可能に支持されている。ロックレバー145に外力が加えられていない状態では、ロックレバー145はコイルバネ148によって常にロック位置側へ付勢されている。ロックレバー145の一端に係合端部146が設けられている。ロック機構144は、係合端部146がインクカートリッジ30の係合部43と係合することにより、カートリッジ装着部110におけるインクカートリッジ30のロックが実現される。ロックレバー145が、本発明における保持部材に相当する。
【0063】
カートリッジ装着部110の内部空間の奥部には、連結部121が設けられている。連結部121には、管状のインクニードル122(図1参照)が設けられている。インクニードル122は、挿抜方向50に沿って延出された管形状の部材である。インクニードル122は、カートリッジ装着部110の背面側においてインクチューブ20と接続されている。カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着されると、インクニードル122がインク供給部37に挿入されて、インク供給部37と連結部121とが連結する。これにより、インク室36からインクニードル122を通じてインクチューブ20へインクが供給される。
【0064】
図8に示されるように、カートリッジ装着部110の内部空間の底部を画定している底面113には、挿抜方向50に沿って開口112からカートリッジ装着部110の内部空間の奥部へ延びる第1溝115が設けられている。第1溝115は、底面113から下方へ陥没する空間を形成しており、挿抜方向50に沿って延びる互いに対向する一対の側面117,118と、その側面117,118をつなぐ底面119とを有する。幅方向51において側面117,118が離間する距離Dは、インクカートリッジ30の被ガイド部44の面54,55が離間する距離Aより長く(距離A<距離D)、凸片59,61の各先端が離間する距離Bより長く(距離B<距離D)、かつ本体31の右側面47と左側面48とが離間する距離Eより短い(距離D<距離E)。したがって、カートリッジ装着部110の内部空間において、インクカートリッジ30の被ガイド部44のみが第1溝115へ挿入可能である。
【0065】
図8に示されるように、カートリッジ装着部110の底面113における開口112側の端には、幅方向51へスライド自在なスライド部材120が設けられている。スライド部材120は、挿抜方向50に対して薄い扁平な平板である。このスライド部材120に、第1溝115と連続する空間を形成する第2溝116が設けられている。第2溝116は、スライド部材120の厚み方向へ貫通する空間を形成している。第2溝116は、挿抜方向50に沿って延びる互いに対向する一対の側面123,124と、その側面123,124をつなぐ底面125とを有する。幅方向51において側面123,124が離間する距離Fは、第1溝115において側面117,118が離間する距離Dより長い(距離D<距離F)。スライド部材120は、第1溝115と第2溝116とが挿抜方向50においてオーバーラップする位置において幅方向51へ若干量のスライドが可能に設けられている。スライド部材120がスライドする距離は、距離Dや距離Fと比較すると十分に短い。したがって、スライド部材120が最大量だけスライドしたとしても、第1溝115と第2溝116とが挿抜方向50において全くオーバーラップしなくなることはない。
【0066】
図8に示されるように、第2溝116の一対の側面123,124には、ストッパ126,127がそれぞれ設けられている。ストッパ126,127は、側面123,124からそれぞれ第2溝116の幅方向51の内側へ向かって突出されている。ストッパ126,127は、挿抜方向50において同じ位置に配置されている。ストッパ126,127は、側面123,124の高さ方向52のほぼ全域に渡ってそれぞれが設けられている。ストッパ126,127は、幅方向51の突出端に向かうにつれて、挿抜方向50の寸法が小さくなるように、突出端へ向かって先細り形状となっている。
【0067】
各ストッパ126,127の先端は、スライド部材120が如何なるスライド位置にあっても、幅方向51において、第1溝115の側面117,118より幅方向51の内側へ突出する。幅方向51において、ストッパ126,127の各突出端が離間する距離Cは、インクカートリッジ30の被ガイド部44の面54,55が離間する距離Aより長く(距離A<距離C)、かつ凸片59,61の各先端が離間する距離Bより短い(距離C<距離B)。したがって、前述された各距離A,B,C,D,E,Fは、以下の式の関係にある。
式:(距離A)<(距離C)<(距離B)<(距離D)<(距離F)<(距離E)
【0068】
[インクカートリッジ30の挿抜動作]
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される際には、ユーザがインクカートリッジ30をカートリッジ装着部110内に押し込むことにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されると、被ガイド部44が第1溝115及び第2溝116に挿入され、インクカートリッジ30の変形部56,57の凸片59,61がストッパ126,127と当接する。このとき、インクカートリッジ30をカートリッジ装着部110内に押し込んでいるユーザは多少の抵抗を感じるが、ユーザがさらにインクカートリッジ30を押し込めば、変形部56,57のリブ58,60が幅方向51において互いに近づく向きに、すなわち、ストッパ126,127の突出向きに弾性変形しつつ、凸片59,61がストッパ126,127に当接しながらストッパ126,127を乗り越える。
【0069】
図9に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されると、スライド部材135は、第2突起46に押圧されて空間130の奥壁側へスライドされる。また、スライド部材135のスライドにともなって、コイルバネ139が自然長から収縮される。コイルバネ139が収縮することにより、スライド部材135はコイルバネ139から開口112側へ向かう付勢力を受ける。これにより、装着位置のインクカートリッジ30が開口112から飛び出す向きへ弾性付勢される。
【0070】
インクカートリッジ30の挿入過程において、ロックレバー145の係合端部146がインクカートリッジ30の上壁39に乗り上げる。これにより、ロックレバー145が反時計回りへ回動して、ロック位置からアンロック位置へ移動する(図10参照)。インクカートリッジ30がさらに挿入されると、インクカートリッジ30の係合部43が、ロックレバー145の係合端部146よりカートリッジ装着部110の奥側へ移動し、ロックレバー145の係合端部146が係合部43と係合する位置へ回動される、すなわち、ロックレバー145が時計回りへ回動して、アンロック位置からロック位置へ移動する(図9参照)。コイルバネ139により弾性付勢されたインクカートリッジ30は開口112から飛び出す向きへ移動しようとするが、ロックレバー145の係合端部146と係合部43とが係合するので、インクカートリッジ30が装着位置に保持される(図9参照)。これにより、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了する。また、装着位置において、連結部121のインクニードル122が、インクカートリッジ30のインク流路38に挿入されて、インク室36からインクが外部へ供給可能となる。
【0071】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される際には、ユーザがロックレバー145における操作部147を押し下げる。これにより、ロックレバー145が反時計方向へ回動して、ロック位置からアンロック位置へ移動する(図10参照)。ロックレバー145がアンロック位置になると、係合端部146がインクカートリッジ30の係合部43よりも上方に配置される。これにより、係合端部146が係合部43から離れる。したがって、コイルバネ139からの弾性付勢力を受けて、インクカートリッジ30は、開口112から飛び出す向き(図9における左向き)へ移動する。これにより、連結部121のインクニードル122が、インクカートリッジ30のインク流路38から抜ける。
【0072】
図10に示されるように、コイルバネ139が自然長に復元した後、図11に示されるように、インクカートリッジ30の凸片59,61がストッパ126,127と当接する。この凸片59,61とストッパ126,127との当接によって、開口112から飛び出す向きへ弾性付勢されて移動するインクカートリッジ30が停止する。
【0073】
インクカートリッジ30が停止した後、そのインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から引き出されると、変形部56,57のリブ58,60が幅方向51における凸片59,61の先端間の距離Bを短くする向きに、すなわち、ストッパ126,127の突出向きに弾性変形しつつ、凸片59,61がストッパ126,127に対して摺動しながらストッパ126,127を乗り越える。これにより、ユーザは、停止した後のインクカートリッジ30を引き出すことができる。
【0074】
なお、インクカートリッジ30の停止位置は、凸片59,61とストッパ126,127とが当接する位置に限定されない。例えば、リブ58,60が、凸片59,61の先端間の距離Bを短くするように弾性変形して、ストッパ126,127に対して凸片59,61が摺動することによって、凸片59,61がストッパ126,127の間を通過してもよい。凸片59,61がストッパ126,127の間を通過する時に、凸片59,61とストッパ126,127との摺動抵抗によってインクカートリッジ30の移動速度が減衰され、凸片59,61がストッパ126,127を越えてからインクカートリッジ30が停止してもよい。
【0075】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、インクカートリッジ30がスライド部材135からの力を受けて移動するときに、カートリッジ装着部110の第1溝115に沿って移動する被ガイド部44の凸片59,61が、第2溝116に設けられたストッパ126,127に当接するので、インクカートリッジ30は、移動速度が減速されるか停止される。これにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から飛び出すことが防止される。
【0076】
また、凸片59,61がストッパ126,127と当接しながらインクカートリッジ30が移動すると、リブ58,60が弾性変形するが、インクが消費されたインクカートリッジ30が新たなものに交換されると、新たなインクカートリッジ30の凸片59,61がストッパ126,127と当接しつつ、その新たなリブ58,60が弾性変形することとなる。これにより、インクカートリッジ30が繰り返し交換されてインク供給装置100が使用されても、疲労したリブ58,60に設けられた凸片59,61がストッパ126,127と当接することがない。
【0077】
また、リブ58,60は、幅方向51に並んだ一対のリブ58,60に凸片59,61が一対設けられており、これに対応して、ストッパ126,127が一対設けられているので、被ガイド部44の面54,55と第1溝115の側面117,118との間にインクカートリッジ30の移動に適した隙間が設けられても、少なくとも一対の凸片59,61のいずれか一方が対向するストッパ126,127と当接するので、インクカートリッジ30の飛び出しが確実に防止される。
【0078】
また、(距離A)<(距離C)であることにより、被ガイド部44におけるリブ58,60以外の箇所がストッパ126,127間を容易に通過することができる。(距離C)<(距離B)であることにより、凸片59,61が確実にストッパ126,127と当接する。(距離B)<(距離D)であることにより、第1溝115において凸片59,61が第1溝115内を容易に移動することができる。
【0079】
また、リブ58,60及び凸片59,61は、挿抜方向50において同じ位置に配置されており、各ストッパ126,127は、挿抜方向50において同じ位置に配置されているので、凸片59,61とストッパ126,127との当接によって、第1溝115に対して被ガイド部44が幅方向51に移動することが防止される。
【0080】
また、凸片59,61は、その先端が本体31の右側面47及び左側面48より幅方向51において内側に位置するように配置されているので、インクカートリッジ30が落下したり、減圧包装されたりするときにおいて、凸片59,61が破損や変形されるおそれが軽減される。
【0081】
また、第1溝115は水平方向へ延びるものであって、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されたときに、インクカートリッジ30の下方に位置するので、重力によってインクカートリッジ30の被ガイド部44が第1溝115及び第2溝116に挿入された状態が維持される。これにより、凸片59,61がより確実にストッパ126,127と当接し得る。また、ロックレバー145は、インクカートリッジ30の鉛直方向上側においてインクカートリッジ30の係合部43と係合するので、係合部43がリブ58,60や凸片59,61の配置に緩衝されずに自由にレイアウトされる。
【0082】
[変形例1]
前述された実施形態における凸片59,61やストッパ126,127の形状は変更されてもよい。例えば、図12に示されるように、ストッパ126においてカートリッジ装着部110の奥部側に面している面128が、挿抜方向50において、第2溝126の底面125に近い側が底面125から遠い側よりも開口112に近くなるように傾斜されていてもよい。換言すれば、面128は、第2溝126の底面125に近い側が底面125より遠い側よりも、カートリッジ装着部110の奥部から遠くなるように傾斜されていてもよい。なお、ストッパ127においてカートリッジ装着部110の奥部側に面している面については図示されていないが、面140と同様に傾斜されている。この面140が本発明における第1傾斜面に相当する。
【0083】
カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態において、凸片59の傾斜面64は、挿抜方向50において、第1溝115の底面119に近い側が底面119から遠い側よりも開口112に近くなるように傾斜している。換言すれば、傾斜面64は、第1溝115の底面119に近い側が底面119から遠い側よりもカートリッジ装着部110の奥部から遠くなるように傾斜している。なお、凸片61については図示されていないが、凸片59と同様の形状である。この傾斜面64が、本発明における第2傾斜面に相当する。
【0084】
前述された実施形態においては、凸片59,61は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態において、底面119から遠い側が第1溝115の底面119に近い側よりも開口112に近くなるように傾斜している傾斜面64,67を有している。よって、変形部56,57が幅方向51に弾性変形しつつも、傾斜面64,67に沿って、凸片59,61がストッパ126,127を上方に乗り越えてしまうかもしれない。したがって、変形部56,57の幅方向51の弾性変形によるインクカートリッジ30の移動速度を減速させる効果が低減されてしまうかもしれない。一方、変形例1においては、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110の開口112へ向かって移動して、ストッパ126と凸片59とが当接するときに、ストッパ126の面128と凸片59の傾斜面64とが接触して、これらの傾斜に沿ってインクカートリッジ30が第2溝116の底面125側へ案内される。これにより、凸片59が底面125から離れる向きへ、すなわち、上方に移動してストッパ126を乗り越えることが防止される。よって、変形部56,57の幅方向51の弾性変形によるインクカートリッジ30の移動速度を減速させる効果がより確実に得られる。
【0085】
[変形例2]
また、図13に示されるように、ストッパ126においてカートリッジ装着部110の奥部側に面している面128が、第2溝116の側面123から遠い側が側面123に近い側よりも開口112へ近くなるように傾斜している。換言すれば、面128における第2溝116の側面123から遠い側が側面123に近い側よりもカートリッジ装着部110の奥部から遠くなるように傾斜している。同様に、ストッパ127においてカートリッジ装着部110の奥部側に面している面129が、第2溝116の側面124から遠い側が側面124に近い側よりも開口112へ近くなるように傾斜している。換言すれば、面129における第2溝116の側面124から遠い側が側面124に近い側よりもカートリッジ装着部110の奥部から遠くなるように傾斜している。
【0086】
前述されたようにして、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110の開口112へ向かって移動し、ストッパ126,127と凸片59,61とが当接してインクカートリッジ30が停止した後、ユーザがインクカートリッジ30を引き出すと、ストッパ126,127の面128,129に案内されて、リブ58,60が互いに近づく向きへ弾性変形しつつ凸片59,61がストッパ126,127に当接しながら移動して、凸片59,61がストッパ126,127より開口112側へ移動する。これにより、ユーザは、ストッパ126,127によって大きな抵抗を感じることなく、停止した後のインクカートリッジ30を引き出すことができる。
【0087】
[変形例3]
また、図14に示されるように、ストッパ126,127ではなく、インクカートリッジ30の凸片59,61の傾斜面64,66が、カートリッジ装着部110に装着された状態において、凸片59,61の先端から遠い側が先端に近い側よりも開口112へ近くなるように傾斜していても、換言すれば、凸片59,61の先端から遠い側が先端に近い側よりもカートリッジ装着部110の奥部から遠くなるように傾斜していても、前述と同様に、ストッパ126,127と凸片59,61とが当接してインクカートリッジ30が停止した後、ユーザがインクカートリッジ30を引き出すと、凸片59,61の傾斜面64,66に案内されて、リブ58,60が互いに近づく向きへ弾性変形しつつ凸片59,61がストッパ126,127に当接しながら移動して、凸片59,61がストッパ126,127より開口112側へ移動する。
【0088】
ところで、第1溝115の幅方向51の中央と被ガイド部44の幅方向51の中央とがずれた状態インクカートリッジ30が開口112へ向かって移動してきた場合、インクカートリッジ30の凸片59,61の一方が他方に比べて、挿抜方向50におけるストッパ126,127とのオーバーラップ量が大きい状態で、凸片59,61がストッパ126,127と当接する可能性がある。例えば、図15に示されるように、挿抜方向50における凸片59とストッパ126とのオーバーラップ量が挿抜方向50における凸片61とストッパ127とのオーバーラップ量よりも大きい場合、凸片59が最初にストッパ126と当接したときに、凸片61はストッパ127と当接しない。インクカートリッジ30が更に移動すると、ストッパ126が凸片59の傾斜面64に沿って移動することにより、スライド部材120が図15中において右側に移動する。スライド部材120が図15において右側に移動すると、ストッパ127が凸片61に接近し、当接する。このように、スライド120により、一対の凸片59,61がストッパ126,127にバランスよく当接するようになる。
【0089】
[変形例4]
前述の実施形態においては、弾性変形可能な変形部56,57として、弾性変形可能なリブ58,60と、リブ58,60から突出された凸片59,61とを有する構成が示されたが、リブ58,60は弾性変形せず、凸片59,61が例えばゴムなどの弾性材料で形成され、リブ58,60上に配置されていてもよい。この場合、凸片59,60がストッパ126,127と当接したときに、凸片59,61がストッパ126,127の突出向きに弾性変形する。
【0090】
なお、本発明を次のように定義することもできる。
装着部に対して挿抜方向に沿って挿抜される液体容器であって、
液体を貯留する貯留室を有する本体と、
上記本体に設けられており、上記貯留室に貯留された液体を外部へ流出させる液体供給部と、
上記本体よりも鉛直方向下方に配置されており、挿抜方向に沿って延びる面と、を具備し、上記挿抜方向に沿って延びる面は、挿抜方向と直交する方向に弾性変形可能な、凸片を有する変形部を備える液体容器。
【0091】
この液体容器が前述のような装着部へ装着されると、液体容器は付勢部材により付勢されるが、この付勢に抗して保持部材が液体容器を装着された状態に保持される。また、液体容器の挿抜方向に沿って延びる面は装着部の溝内に位置する。
【0092】
保持部材による保持が解除されると、液体容器は付勢部材から受ける力によって開口に向かって移動する。液体容器が開口に向かって移動し、液体容器の挿抜方向に沿って延びる面が装着部の溝に沿って移動して、凸片が溝のストッパに当接する。この当接によって、液体容器は停止する。または、変形部が弾性変形しつつ凸片がストッパに対して擦動しながら液体容器が移動することによって、液体容器の移動速度が減衰され、凸片がストッパを越えてから液体容器が停止する。
【0093】
また、液体容器の挿抜方向に沿って延びる面が液体容器の本体よりも鉛直方向下方に配置されており、重力によって液体容器の挿抜方向に沿って延びる面が溝内に位置する状態が維持される。よって、凸片がより確実にストッパと当接し得る。
【0094】
上記変形部は、上記凸片が突出する向きと反対向きに弾性変形可能であってよい。
【0095】
上記挿抜方向に沿って延びる面は、第1の面と、挿抜方向と直交し、かつ、上記凸片が突出する向きに平行な幅方向に、第1の面から離れた第2の面とを有していてよく、上記第1の面および上記第2の面は、互いに近づく向きに弾性変化可能な第1の変形部と第2の変形部とをそれぞれ有していよい。
【0096】
上記幅方向における上記第1の面と第2の面との距離は、上記本体の上記幅方向の一対の端面間の距離よりも小さくてよく、上記変形部の凸片は、その先端が本体の幅方向の端面より幅方向において内側に位置してよい。
【符号の説明】
【0097】
10・・・プリンタ(画像記録装置)
21・・・記録ヘッド(記録部)
30・・・インクカートリッジ(液体容器)
31・・・本体
36・・・インク室(貯留室)
44・・・被ガイド部
47・・・右側面
48・・・左側面
54,55・・・面
58,60・・・リブ(変形部)
59,61・・・凸片
63・・・傾斜面(第2傾斜面)
100・・・インク供給装置(液体供給装置)
110・・・カートリッジ装着部(装着部)
112・・・開口
115・・・第1溝
116・・・第2溝
117,118・・・側面
119・・・底面
120・・・スライド部材
123,124・・・側面
125・・・底面
126,127・・・ストッパ
135・・・スライド部材(付勢部材)
140・・・面(第1傾斜面)
145・・・ロックレバー(保持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を通じて液体容器が装着部に装着可能であり、当該液体容器が当該装着部に装着された状態において、当該液体容器を開口へ向かって付勢部材が付勢する液体供給装置であって、
上記装着部は、上記液体容器が挿抜される挿抜方向に沿って開口から奥部へ延びる溝と、当該溝において挿抜方向に沿って延出されて互いに対向する一対の側面のうち少なくともいずれか一方の側面から突出されたストッパと、装着状態の上記液体容器を上記付勢部材の付勢に抗して装着された状態に保持し、かつ当該保持を解除可能な保持部材と、を具備し、
上記液体容器は、液体を貯留し、かつ装着された状態において当該液体を流出可能な貯留室と、上記装着部に対して挿抜されるときに上記溝に挿入されて上記溝内を移動可能な被ガイド部と、当該被ガイド部において上記ストッパが設けられた一方の側面と対向する位置に設けられており、上記ストッパとの当接によって上記ストッパの突出向きへ弾性変形可能な、凸片を有する変形部と、を具備する液体供給装置。
【請求項2】
上記変形部は、一対が設けられており、上記被ガイド部において上記溝の一対の側面とそれぞれ対向する一対の側面に、各々の凸片が突出する向きが相反するようにそれぞれ一つずつ設けられたものであり、
上記ストッパは、一対が設けられており、上記溝の一対の側面にそれぞれ一つずつ設けられたものである請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
挿抜方向と直交し、かつ上記変形部の凸片が突出する向きに平行な幅方向に沿った上記被ガイド部の一対の側面間の距離Aと、
上記一対の変形部の各凸片の先端の間の上記幅方向に沿った距離Bと、
上記各ストッパの間の上記幅方向に沿った距離Cと、
上記溝の一対の側面の上記幅方向に沿った距離Dと、は下記の式の関係にある請求項2に記載の液体供給装置。
式:(距離A)<(距離C)<(距離B)<(距離D)
【請求項4】
上記各変形部は、挿抜方向において同じ位置に配置されており、上記各ストッパは、挿抜方向において同じ位置に配置されている請求項2又は3に記載の液体供給装置。
【請求項5】
上記溝は、上記被ガイド部が挿入される第1溝と、挿抜方向と直交し、かつ上記変形部の凸片が突出する向きに平行な幅方向において、当該第1溝より幅広であって当該第1溝に対して上記幅方向へ相対移動自在なスライド部材に設けられた第2溝と、を有し、当該第2溝の一対の側面に上記ストッパがそれぞれ設けられた請求項4に記載の液体供給装置。
【請求項6】
上記溝は、上記一対の側面と、その一対の側面を繋ぐ底面とによって形成されており、上記ストッパは、上記溝における挿入向きの奥部に面している第1傾斜面を有するものであり、
上記変形部の凸片は、上記液体容器が上記装着部に装着されているときに、挿抜方向において上記第1傾斜面と対向する第2傾斜面を有するものであり、
上記第1傾斜面及び上記第2傾斜面は、いずれも、上記溝の底面に近い側が底面から遠い側よりも上記開口へ近くなるように傾斜している請求項1から5のいずれかに記載の液体供給装置。
【請求項7】
上記ストッパの第1傾斜面又は上記変形部の第2傾斜面のうち少なくとも一方は、当該ストッパが突出している上記溝の側面から遠い側が側面に近い側よりも上記開口へ近くなるように傾斜しているか、当該凸片の先端から遠い側が先端に近い側よりも上記開口へ近くなるように傾斜している請求項6に記載の液体供給装置。
【請求項8】
上記液体容器は、上記変形部の凸片が突出する向きに平行な幅方向に関して、上記変形部を含む上記被ガイド部の幅より幅広な直方体形状の本体を有するものであり、
上記変形部の凸片は、その先端が本体の幅方向の端面より幅方向において内側に位置するように配置されたものである請求項1から7のいずれかに記載の液体供給装置。
【請求項9】
上記変形部は、挿抜方向に沿って延びており弾性変形可能なリブを有し、上記凸片は当該リブから突出するものである請求項1から8のいずれかに記載の液体供給装置。
【請求項10】
上記溝は水平方向へ延びるものであって、上記液体容器が上記装着部に装着されたときに、上記液体容器の下方に位置するものであり、上記保持部材は、上記液体容器の鉛直方向上側において上記液体容器と係合するものである請求項1から9のいずれかに記載の液体供給装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の液体供給装置と、
上記液体供給装置から供給された液体を選択的に吐出して被記録媒体に画像記録を行う記録部と、を具備する画像記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−848(P2012−848A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137800(P2010−137800)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】