説明

液体供給装置

【課題】液体容器が装着部から飛び出すことを簡易且つ低コストで防止でき、かつ装着部へ液体容器を円滑に装着できる手段を提供する。
【解決手段】カートリッジ装着部110は、溝115の側面117,118に設けられたストッパ124,125と、装着状態のインクカートリッジ30を保持するロックレバー145と、を具備する。インクカートリッジ30は、インク室36と、ストッパ124,125と当接する当接部54,55と、を具備する。ストッパ124,125は、挿抜方向50へ弾性的に曲げ変形可能な弾性片81,86を有する。弾性片81,86が、挿入向き103へ曲げ変形されるに要する力は、脱抜向き104へ曲げ変形されるに要する力より弱い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を通じて液体容器が装着部に装着可能であり、装着された状態において当該液体容器を開口へ向かって付勢部材が付勢する液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクを用いて記録用紙に画像を記録する画像記録装置が知られている。この画像記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドを備え、記録ヘッドのノズルからインク滴を記録用紙へ向けて選択的に噴出する。このインク滴が記録用紙に着弾することによって、記録用紙に所望の画像が記録される。この画像記録装置には、記録ヘッドへ供給するインクを貯蔵する液体容器が設けられる。この液体容器として、カートリッジ形式が採用されたものが公知である。カートリッジ形式の液体容器は、画像記録装置に設けられた装着部に対して着脱可能である。このようなカートリッジ形式の液体容器はインクカートリッジとも称される。
【0003】
インクカートリッジ内のインクが無くなると、そのインクカートリッジが画像記録装置の装着部から取り外されて、インクを貯蔵する新たなインクカートリッジが装着部に装着される。装着部において、インクカートリッジの位置決めを行ったり、インクカートリッジの装着状態を保持したりするためのロック構造が公知である。また、ロック構造によりインクカートリッジがロックされている状態において、インクカートリッジが装着部から取り外される向きにインクカートリッジを付勢する付勢部材が公知である。装着部からインクカートリッジが取り外されるときに、ロック構造によるロックが解除され、インクカートリッジは付勢部材から受ける力によって開口へ向かって移動する。これにより、ユーザが装着部からインクカートリッジを取り出すことが容易となる。
【0004】
また、インクカートリッジが勢いよく移動すると、インクカートリッジが装着部から飛び出してしまうことがあり得る。インクカートリッジが装着部から飛び出すと、インクカートリッジが転倒したりして、その際の衝撃でインクカートリッジ内のインクが外部に飛び散るおそれがある。また、インクカートリッジが床などに落下して、インクカートリッジが破損するおそれがある。これらを防止するために、インクカートリッジの飛び出しを防止する構成が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−288866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された構成においては、カートリッジ装着部(101)に弾性変形可能なフック爪(130)が設けられており、このフック爪(130)が、インクカートリッジ(1)が脱抜されるときの所定のタイミングにおいて、インクカートリッジ(1)の係止用凹部(32)の縁部(31)に係止する。この係止によって、インクカートリッジ(1)の飛び出しが防止される。
【0007】
このようなインクカートリッジ(1)とフック爪(130)との係止は、インクカートリッジ(1)がカートリッジ装着部(101)から脱抜されるときには好ましいものであるが、インクカートリッジ(1)がカートリッジ装着部(101)へ挿入されるときには操作感を損なったり、挿入動作に対して抵抗となったりする。
【0008】
また、画像記録装置にはコストダウンの要望が強く、インクカートリッジの飛び出しを防止する構造は、簡易且つ低コストであることが望ましい。
【0009】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体容器が装着部から飛び出すことを簡易且つ低コストで防止でき、かつ装着部へ液体容器を円滑に挿入し、装着できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明は、開口を通じて液体容器が装着部に装着可能であり、当該液体容器が当該装着部に装着された状態において、当該液体容器を開口へ向かって付勢部材が付勢する液体供給装置である。上記装着部は、上記液体容器が上記装着部に挿抜される方向である挿抜方向に沿って延出されて互いに対向する一対の側面のうち少なくともいずれか一方の側面から上記挿抜方向と交差する方向へ突出されたストッパと、装着状態の上記液体容器を上記付勢部材の付勢に抗して装着された状態に保持し、かつ当該保持を解除可能な保持部材と、を具備する。上記液体容器は、液体を貯留し、かつ装着された状態において当該液体を流出可能な貯留室と、上記ストッパが設けられた一方の側面と対向する位置に設けられており、上記装着部へ挿抜される際に上記ストッパと当接する当接部と、を具備する。上記ストッパは、上記挿抜方向へ弾性的に曲げ変形可能な弾性片を有し、上記液体容器が上記装着部へ挿入される向きである挿入向きへ当該弾性片が曲げ変形されるに要する力が、上記液体容器が上記装着部から脱抜される向きである脱抜向きへ当該弾性片が曲げ変形されるに要する力より弱いものである。
【0011】
液体容器は開口を通じて装着部へ装着される。装着された状態においては、液体容器は付勢部材により付勢されるが、この付勢に抗して保持部材が液体容器を装着された状態に保持する。保持部材による保持が解除されると、液体容器は付勢部材から受ける力によって開口に向かって移動する。液体容器が開口に向かって移動するとき、当接部がストッパの弾性片に当接する。この当接によって、弾性片が脱抜向きへ弾性的に曲げ変形される。液体容器が弾性片を曲げ変形させることによって、液体容器の移動速度が減衰されて、液体容器が停止される。
【0012】
なお、液体容器の停止位置は、当接部と弾性片とが当接する位置に限定されない。例えば、曲げ変形された弾性片に対して当接部が摺動することによって、液体容器の移動速度が減衰され、当接部が弾性片を通過してから液体容器が停止してもよい。
【0013】
装着部へ液体容器が挿入されるときにも、当接部が弾性片に当接する。この当接によって、弾性片が挿入向きへ弾性的に曲げ変形される。弾性片を挿入向きへ弾性的に曲げ変形させるに要する力は、脱抜向きへ曲げ変形させるに要する力より小さいので、装着部へ液体容器が装着されるときに、当接部と弾性片との当接により生ずる抵抗が小さくなる。
【0014】
(2) 上記ストッパは、上記挿抜方向と直交する方向へ突出された上記弾性片と、当該弾性片と当接することによって当該弾性片の上記挿抜方向への曲げ角度をそれぞれ規制する規制部材を有し、当該規制部材は、上記弾性片の上記挿入向きへの曲げ角度が上記脱抜向きへの曲げ角度より小さくなるように配置されたものであってもよい。
【0015】
液体容器が装着部へ挿入されるときは、規制部材によって曲げ角度が規制された弾性片が比較的小さく曲がるので、弾性片を曲げるために要する力が比較的小さい。一方、液体容器が装着部から脱抜されるときは、規制部材によって曲げ角度が規制された弾性片が比較的大きく曲がるので、弾性片を曲げるために要する力が比較的大きい。これにより、弾性片が挿入向きへ曲げ変形されるに要する力が、弾性片が脱抜向きへ曲げ変形されるに要する力より弱いストッパが、簡易に構成される。
【0016】
(3) 上記ストッパは、挿抜方向において同じ位置に一対が設けられており、上記装着部の一対の側面にそれぞれ一つずつ設けられたものであってもよい。
【0017】
これにより、弾性片と当接部との当接によって、装着部に対して液体容器が挿抜方向と直交する方向へ移動することが防止される。
【0018】
(4) 上記装着部は、上記液体容器が挿抜される挿抜方向に沿って開口から奥部へ延びる溝を有し、当該溝において挿抜方向に沿って延出されて互いに対向する一対の側面に上記ストッパが設けられたものであり、上記液体容器は、上記装着部に対して挿抜されるときに上記溝に挿入されて上記溝内を移動可能な被ガイド部を有するものであってもよい。
【0019】
液体容器が装着部に装着された状態において、被ガイド部は装着部の溝に挿入されている。保持部材による保持が解除されると、液体容器は付勢部材から受ける力によって開口に向かって移動する。液体容器が開口に向かって移動するとき、被ガイド部が装着部の溝に沿って移動して、当接部がストッパの弾性片に当接して曲げ変形させる。また、装着部へ液体容器が挿入されるときにも、被ガイド部が装着部の溝に沿って移動して、当接部がストッパの弾性片に当接して曲げ変形させる。
【0020】
(5) 上記液体容器の当接部は、上記装着部に装着された状態において上記被ガイド部において上記ストッパが設けられた側面と対向する位置に設けられており、当該側面へ突出するものであってもよい。
【0021】
(6) 上記弾性片は、上記脱抜向きへ曲げられた状態において、その突出端部が、当該弾性片が設けられた上記溝の一対の一方の側面より他方の側面側にあり、当該状態において当該突出端部と上記当接部とが当接することによって、当該突出端部が上記溝の一方の側面側へ弾性変形されるものであってもよい。
【0022】
当接部との当接により、弾性片が脱抜向きへ曲げられたときに、弾性片の突出端部が当接部と一方の側面との間に挟み込まれて圧縮されるように弾性変形される。これにより、脱抜向きへ曲げられた弾性片と当接部との摺動摩擦が大きくなる。
【0023】
(7) 上記液体容器は、上記当接部が突出する向きに平行な幅方向に関して、上記当接部を含む上記被ガイド部の幅より幅広な直方体形状の本体を有するものであり、上記当接部は、その先端が本体の幅方向の端面より幅方向において内側に位置するように配置されたものであってもよい。
【0024】
本体の端面より当接部が突出しないので、液体容器が落下した場合や減圧包装された場合において、当接部が破損や変形されるおそれが軽減される。
【0025】
(8) 上記溝は水平方向へ延びるものであって、上記液体容器が上記装着部に装着されたときに、上記液体容器の下方に位置するものであり、上記保持部材は、上記液体容器の鉛直方向上側において上記液体容器と係合するものであってもよい。
【0026】
液体容器が装着部に装着されたときに、溝が液体容器の下方に位置するので、重力によって液体容器の被ガイド部が溝に挿入された状態が維持される。これにより、当接部がより確実にストッパの弾性片と当接し得る。また、下方に配置された当接部と反対側の上方において保持部材が液体容器と係合されるので、保持部材との係合のために必要な形状及び変形部のレイアウトの自由度が高い。
【0027】
(9) 本発明は、上記液体供給装置と、上記液体供給装置から供給された液体を選択的に吐出して被記録媒体に画像記録を行う記録部と、を具備する画像記録装置として捉えられてもよい。
【0028】
(10) 本発明は、開口を通じて液体容器が装着部に装着可能であり、当該液体容器が当該装着部に装着された状態において当該液体容器が開口へ向かって付勢部材により付勢され、当該液体容器が当該装着部から脱抜されるときに、上記装着部において挿抜方向に沿って延出されて互いに対向する一対の側面のうち少なくともいずれか一方の側面から挿抜方向と交差する方向へ突出された弾性片を、当該液体容器が上記装着部へ挿入される向きである挿入向きへ曲げ変形されるに要する力より大きな力で当該液体容器が上記装着部から脱抜される向きである脱抜向きへ曲げ変形させるものであって、液体を貯留し、かつ装着された状態において当該液体を流出可能な貯留室と、上記ストッパが設けられた一方の側面と対向する面から突出されており、上記装着部へ挿抜される際に上記弾性片と当接する凸部と、を具備する液体容器として捉えられてもよい。
【0029】
(11) 上記装着部において当該液体容器の挿抜方向に沿って開口から奥部へ延びる溝に挿入されて上記溝内を移動可能な被ガイド部を更に具備し、上記凸部は当該被ガイド部に設けられたものであってもよい。
【0030】
(12) 上記凸部が突出する向きに平行な幅方向に関して、上記凸部を含む上記被ガイド部の幅より幅広な直方体形状の本体を有し、上記凸部は、その先端が本体の幅方向の端面より幅方向において内側に位置するように配置されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、液体容器が付勢部材からの力を受けて移動するときに、装着部を移動する液体容器の当接部がストッパの弾性片に当接して脱抜向きへ曲げ変形させるので、液体容器は、移動速度が減速されるか停止される。これにより、液体容器が装着部から飛び出すことが防止される。また、装着部へ液体容器が挿入されるときには、当接部が弾性片に当接して挿入向きへ曲げ変形させるが、弾性片を挿入向きへ弾性的に曲げ変形させるに要する力は、脱抜向きへ曲げ変形させるに要する力より小さいので、装着部へ液体容器が装着されるときに、当接部と弾性片との当接により生ずる抵抗が小さくなる。これにより、装着部から液体容器が飛び出すことを確実に防止し、かつ、装着部へ液体容器が装着されるときに生ずる抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るインク供給装置100を備えたプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【図2】図2は、インクカートリッジ30の外観構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、当接部54,55付近のインクカートリッジ30の拡大底面図である。
【図4】図4は、インクカートリッジ30の内部構成を示す断面図である。
【図5】図5は、カートリッジ装着部110の内部構成を示す断面図である。
【図6】図6は、ストッパ124,125付近の構成を示すカートリッジ装着部110の拡大図である。
【図7】図7は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態を示す断面図である。
【図8】図8は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入される過程における、当接部54,55及びストッパ124,125付近のインクカートリッジ30及びカートリッジ装着部110の拡大図である。
【図9】図9は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される過程における、当接部54,55及びストッパ124,125付近のインクカートリッジ30及びカートリッジ装着部110の拡大図である。
【図10】図10は、変形例1におけるストッパ124,125付近の構成を示すカートリッジ装着部110の拡大図である。
【図11】図11は、変形例2におけるストッパ124,125付近の構成を示すカートリッジ装着部110の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係るインク供給装置100を備えたプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【0035】
[プリンタ10の概要]
プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。図1に示されるように、プリンタ10は、インク供給装置100を備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面が外部に開放された開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を介してカートリッジ装着部110に挿入されることにより、カートリッジ装着部110に装着され、或いはカートリッジ装着部110から脱抜されることにより、カートリッジ装着部110から取り外される。プリンタ10が、本発明に係る画像記録装置に相当する。インク供給装置100が、本発明に係る液体供給装置に相当する。
【0036】
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインクが貯留されている。カートリッジ装着部110に装着された状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とがインクチューブ20で接続される。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。記録ヘッド21が、本発明における記録部に相当する。
【0037】
給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、画像が記録用紙に記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対22によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0038】
[インクカートリッジ30]
図2から図4に示されるように、インクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインク室36である。インク室36は、インクカートリッジ30の外観を形成している本体31により形成される空間であってもよいし、本体31とは別の部材によって形成される空間であってもよい。インクカートリッジ30が、本発明における液体容器に相当する。インク室36が、本発明における貯留室に相当する。
【0039】
インクカートリッジ30は、図2に示された起立状態、つまり、同図の下側の面を底面とし、同図の上側の面を上面として、カートリッジ装着部110に対して矢印50で示される方向(以下「挿抜方向50」と称する。)に沿って挿抜される。すなわち、インクカートリッジ30は、挿抜方向50に沿ってカートリッジ装着部110に挿入され、また、挿抜方向50に沿ってカートリッジ装着部110から脱抜される。インクカートリッジ30は、起立状態のままカートリッジ装着部110に挿抜される。
【0040】
インクカートリッジ30は、略直方体形状の本体31を有する。本体31は、幅方向51に細く、高さ方向52と奥行き方向53が幅方向51よりも大きい扁平形状である。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入されるときに前方側となる本体31の壁が前壁40であり、後方側となる本体31の壁が後壁42である。前壁40と後壁42とは、挿抜方向50において対向している。なお、挿抜方向50は奥行き方向53と平行である。
【0041】
本体31の前壁40における高さ方向52の中央付近には、残量検知部33が設けられている。残量検知部33は、インク室36に通ずるように、一方が開口である箱形である。また、残量検知部33は、光センサ114(図5参照)から出射された赤外光を透過させる透光性の樹脂からなる一対の壁を含む。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、カートリッジ装着部110に設けられた光センサ114に対して、残量検知部33が赤外光を透過させる状態と、残量検知部33が赤外光を遮光又は減衰させる状態とがある。この残量検知部33の状態に応じて、インク室36内のインク残量が所定量未満になったことが判定される。残量検知部33には、検出子45が設けられている。この検出子45がインク残量に応じて回転することによって、検出子45が光センサ114の赤外光を遮光又は減衰させる姿勢と透過させる姿勢とに姿勢変化する。なお、インク残量の判定手法としては、公知の手段が採用されればよい。また、光センサ114が赤外光を出射する壁面は垂直であっても傾斜していてもよい。
【0042】
本体31の前壁40における残量検知部33の上側に、大気連通口32が設けられている。大気連通口32は、前壁40を奥行き方向53へ貫通する貫通孔である。大気連通口32を介してインク室36の空気層と大気とが連通され得る。各図には現れていないが、大気連通口32は、バルブなどによって開閉可能に構成されている。大気連通口32が開かれることによって、インク室36の気圧が大気圧となる。この大気連通口32は、必ずしも前壁40に設けられる必要はなく、インク室36の内部と外部とを連通させるものであれば配置は限定されない。また、インク室36内が負圧に維持された状態でインクカートリッジ30が使用される場合は、大気連通口32は必ずしも設けられなくてもよい。
【0043】
本体31の前壁40における残量検知部33の下側に、インク供給部37が設けられている。インク供給部37は、円筒形状の外形をなしており、前壁40から挿抜方向50に沿って外側へ突出している。インク供給部37の中心部に、挿抜方向50に延びるインク流路38が形成されている。インク流路38を通ってインク室36からカートリッジ装着部110に設けられたインクニードル122へインクが流出される。
【0044】
本体31の上壁39における奥行き方向53の中央付近には、係合部43が形成されている。係合部43は、インクカートリッジ30の幅方向51及び高さ方向52に拡がる平面を有する突起である。係合部43には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態で、後述されるロックレバー145が係合する。この係合部43は、インクカートリッジ30を外側に押し出させる付勢力を受けるものである。
【0045】
本体31には、突起46が設けられている。突起46は、本体31の前壁40の下端に設けられている。したがって、突起46は、インク供給部37の下方に配置されている。突起46の幅は、前壁40の幅と同じである。突起46は、前壁40から挿抜方向50に沿って後壁42とは反対側へ延出されている。突起46の先端は、インク供給部37の先端よりインク室36から離れた位置まで延出されている。
【0046】
本体31の下壁41には、奥行き方向53に渡って延びる被ガイド部44が設けられている。被ガイド部44は、下壁41から下方へ突出された突片によって構成されており、高さ方向52及び奥行き方向53に拡がる一対の面61,62を幅方向51に対向させて形成されている。面61,62は、幅方向51において、本体31の右側面47及び左側面48より内側に配置されている。つまり、被ガイド部44は、本体31より幅狭である。被ガイド部44は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿抜される際に、後述される溝115に挿入されて移動されるものであり、面61,62は、その溝115の側面117,118と対向される。
【0047】
図3に示されるように、被ガイド部44の面61には、面61から幅方向51の外側へ膨出された当接部54が設けられている。被ガイド部44の面62には、面62から幅方向51の外側へ膨出された当接部55が設けられている。当接部54と当接部55とは、膨出する向きが幅方向51に沿って相反する。また、当接部54と当接部55とは、挿抜方向50に対して同じ位置に配置されている。当接部54,55は、カートリッジ装着部110に対してインクカートリッジ30が装着された状態において、後述される溝115の側面117,118に向かって、それぞれ膨出されている。また、当接部54,55は、カートリッジ装着部110に対してインクカートリッジ30が挿抜されるときに、後述されるストッパ124,125とそれぞれ当接し得る。当接部54,55が、本発明における当接部及び凸部に相当する。本実施形態では、当接部54,55は、底面視において四角形状をなす直方体形状のものであるが、本発明における当接部の形状は特に限定されない。
【0048】
各当接部54,55は、幅方向51の外側へ突出した先端が、幅方向51において本体31の右側面47又は左側面48より内側に位置する。また、幅方向51に対する各当接部54,55の先端の間の距離は、溝115における側面117,118の距離より狭い。したがって、各当接部54,55は、後述されるストッパ124,125と当接しない限り、溝115内に進入して挿抜方向50へ円滑に移動可能である。
【0049】
[カートリッジ装着部110]
図1及び図5に示されるように、カートリッジ装着部110は、プリンタ10の正面側に開口112を有する。開口112を通じてカートリッジ装着部110へインクカートリッジ30が挿入されることにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着され、開口112を通じてカートリッジ装着部110からインクカートリッジ30が脱抜されることにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から取り外される。インクカートリッジ30は、カートリッジ装着部110の内部空間の底部を画定している底面113に設けられた溝115に被ガイド部44が挿入されることによって挿抜方向50へ案内される。
【0050】
カートリッジ装着部110には、光センサ114、ロック機構144、スライド部材135、コイルバネ139、連結部121及びストッパ124,125などが設けられている。
【0051】
図5に示されるように、カートリッジ装着部110の内部空間における、開口112と挿抜方向50において対向する奥部には、光センサ114が設けられている。光センサ114は、残量検知部33において検出子45を検知するものである。光センサ114は、光を出射可能な発光ダイオードなどの発光素子と、発光素子から出射された拡散赤外光を受光可能なフォトトランジスタなどの受光素子とにより構成された光透過型のフォトインタラプタである。これら発光素子と受光素子とが図5における紙面前後方向に配置されている。残量検知部33における検出子45が光センサ114に検出されているか否かによって、インクの残量が所定量未満になったかどうかが判定される。
【0052】
なお、残量検知部33には、検出子45がなくてもよい。すなわち、光センサ114は、発光素子と受光素子とが水平方向に対向されている。そして、発光素子から出射された光は受光素子に受光される。そして、残量検知部33内にインクがある状態では、発光素子から出射された光が遮断又は減衰され、残量検知部33内にインクがない状態では、発光素子から出射された光が透過されるように構成されていてもよい。また、残量検知部33内にインクがある状態では、発光素子から出射された光が受光素子に到達しないように反射され、残量検知部33内にインクがない状態では、発光素子から出射された光が受光素子に到達するように反射されるように構成されていてもよい。
【0053】
スライド部材135は、カートリッジ装着部110の奥部の下端側に形成された空間130に配置されている。空間130は、カートリッジ装着部110の内部空間と連続している。スライド部材135は、空間130において挿抜方向50に沿ってスライド可能に支持されている。スライド部材135は、インクカートリッジ30の突起46の挿入経路に配置されており、突起46と当接可能である。
【0054】
空間130にはコイルバネ139が設けられている。コイルバネ139は、スライド部材135を開口112側、つまり、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される向きへ、つまり開口112へ向かって、インクカートリッジ30を弾性付勢するものである。コイルバネ139は、空間130において挿抜方向50に沿って延出されており、その一端が空間130の奥端を画定している奥壁133と連結されている。コイルバネ139の他端はスライド部材135と連結されている。コイルバネ139が自然長である場合、つまり、スライド部材135に外力が加えられていない状態では、スライド部材135は、開口112側の所定の位置に配置される。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程で、インクカートリッジ30の突起46がスライド部材135に当接して空間130の奥壁133側へ押圧される。これにより、コイルバネ139が収縮されるとともに、スライド部材135が奥壁側の位置(図7参照)へスライドされる。スライド部材135及びコイルバネ139が、本発明における付勢部材に相当する。
【0055】
カートリッジ装着部110には、ロック機構144が設けられている。ロック機構144は、インクカートリッジ30が装着位置に配置された状態で、インクカートリッジ30が開口112から飛び出す向き(図5における左向き)へ移動することを規制して、インクカートリッジ30を装着位置に保持する。
【0056】
ロック機構144は、大別すると、ロックレバー145と、ロックレバー145に付勢力を付与するコイルバネ148とにより構成されている。ロックレバー145は、図5に示されるロック姿勢から矢印101で示されるアンロック姿勢側へ回動可能に支持されている。ロックレバー145に外力が加えられていない状態では、ロックレバー145はコイルバネ148によって常にロック姿勢側へ付勢されている。ロックレバー145の一端に係合端部146が設けられている。ロック機構144は、係合端部146がインクカートリッジ30の係合部43と係合することにより、カートリッジ装着部110におけるインクカートリッジ30のロックが実現される。ロックレバー145の他端側は操作部147である。ユーザが操作部147を押下することによって、ロック姿勢のロックレバー145がアンロック姿勢へ姿勢変化される。ロックレバー145が、本発明における保持部材に相当する。
【0057】
カートリッジ装着部110の内部空間の奥部には、連結部121が設けられている。連結部121には、管状のインクニードル122が設けられている。インクニードル122は、挿抜方向50に沿って延出された管形状の部材である。インクニードル122は、カートリッジ装着部110の背面側においてインクチューブ20と接続されている。カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着されると、インクニードル122がインク供給部37に挿入されて、インク供給部37と連結部121とが連結する。これにより、インク室36からインクニードル122を通じてインクチューブ20へインクが供給される。なお、図5,7においてはインクチューブ20が省略されている。
【0058】
カートリッジ装着部110の内部空間の底部を画定している底面113には、挿抜方向50に沿って開口112から奥部へ延びる溝115が設けられている。溝115は、底面113から鉛直下向きへ陥没する空間であり、挿抜方向50に沿って延びる互いに対向する一対の側面117,118と、その側面117,118を連続する底面119とを有する。なお、図5,6には、側面117が現れていない。
【0059】
図6に示されるように、溝115の開口112側において、溝115の側面117,118には一対のストッパ124,125がそれぞれ設けられている。ストッパ124は、溝115の側面117に設けられており、ストッパ125は、溝115の側面118に設けられている。ストッパ124,125は、溝115において挿抜方向51と直交する水平方向102に対向して配置されている。なお、水平方向102は、インクカートリッジ30の幅方向51と平行である。
【0060】
ストッパ124は、弾性片81と、弾性片81の曲げ角度を規制する角部82,83とを有する。弾性片81は、薄い平板形状のゴム材であり、その厚み方向を挿抜方向51と合致させ、長手方向を水平方向102と合致させて配置されている。弾性片81の一端側は、溝115の側面117内へ貫入されており、他端側は側面117から側面118へ向かって突出されている。側面117には、弾性片81が貫入可能な凹部84が形成されており、その凹部84へ弾性片81の一端側が嵌め込まれることによって、弾性片81が、挿抜方向51に対して位置決めされている。角部82,83が、本発明における規制部材に相当する。
【0061】
凹部84は、側面117へ向いて開口されており、その開口において、開口112側に角部82を有し、開口112とは反対側(すなわち、カートリッジ装着部110の奥部側)に角部83を有する。角部82は、水平方向102において側面117とほぼ同じ位置にある。つまり、角部82は、凹部84の内面と側面117との境界である。側面117より側面118側へ突出された弾性片81の一部は、角部82に沿って開口112側へ弾性的に曲がり、側面117と当接し得る。
【0062】
角部83は、水平方向102において側面117より凹部84が凹んでいる側(すなわち、水平方向102において側面117よりも側面118から離れる側)にある。そして、角部83と側面117との間には、挿抜方向50及び水平方向102に対して傾斜している傾斜面85が形成されている。傾斜面85の側面117側の端部は、傾斜面85の角部83側の端部よりも、側面118側に位置している。この傾斜面85によって、角部83と側面117との間に、弾性片81が進入し得る空間が形成されている。側面117より側面118側へ突出された弾性片81の一部は、角部83に沿って開口112と反対側へ弾性的に曲がり、傾斜面85と当接し得る。
【0063】
ストッパ125は、弾性片86と、弾性片86の曲げ角度を規制する角部87,88とを有する。弾性片86は、薄い平板形状のゴム材であり、その厚み方向を挿抜方向51と合致させ、長手方向を水平方向102と合致させて配置されている。弾性片86の一端側は、溝115の側面118内へ貫入されており、他端側は側面118から側面117へ向かって突出されている。側面118には、弾性片86が貫入可能な凹部89が形成されており、その凹部89へ弾性片86の一端側が嵌め込まれることによって、弾性片86が、挿抜方向51に対して位置決めされている。角部87,88が、本発明における規制部材に相当する。
【0064】
凹部89は、側面118へ向いて開口されており、その開口において、開口112側に角部87を有し、開口112とは反対側(すなわち、カートリッジ装着部110の奥部側)に角部88を有する。角部87は、水平方向102において側面118とほぼ同じ位置にある。つまり、角部87は、凹部89の内面と側面118との境界である。側面118より側面117側へ突出された弾性片86の一部は、角部88に沿って開口112側へ弾性的に曲がり、側面118と当接し得る。
【0065】
角部88は、水平方向102において側面118より凹部89が凹んでいる側(すなわち、水平方向102において側面118よりも側面117から離れる側)にある。そして、角部88と側面118との間には、挿抜方向50及び水平方向102に対して傾斜している傾斜面90が形成されている。傾斜面90の側面118側の端部は、傾斜面90の角部88側の端部よりも、側面117側に位置している。この傾斜面90によって、角部88と側面118との間に、弾性片86が進入し得る空間が形成されている。側面118より側面117側へ突出された弾性片86の一部は、角部88に沿って開口112と反対側へ弾性的に曲がり、傾斜面90と当接し得る。
【0066】
水平方向102における弾性片81,86の各先端の間の幅は、インクカートリッジ30の被ガイド部44において、幅方向51における当接部54,55の各先端の間の幅より狭い。幅方向51における当接部54の面61からの突出量は、水平方向102におけう弾性片81の側面117からの突出量よりも大きい。同様に、幅方向51における当接部55の面62からの突出量は、水平方向102における弾性片86の側面118からの突出量よりも大きい。幅方向51における当接部54,55の各先端の間の幅は、水平方向102における弾性片81の先端と側面118との間の距離より大きく、また、水平方向102における弾性片86の先端と側面117との間の距離よりも大きい。また、水平方向102における弾性片81,86の各先端の間の幅は、インクカートリッジ30の被ガイド部44において当接部54,55を含まない箇所の幅方向51における幅より広い。なお、前述したように、水平方向102と幅方向51とは平行である。このような寸法関係により、溝115に挿入された被ガイド部44が挿抜方向50へ移動されると、当接部54,55が弾性片81,86と必ず当接する。また、溝115に挿入された被ガイド部44が挿抜方向50へ移動されるときに、被ガイド部44の面61,62が弾性片81,86を常に曲げ変形させることはない。なお、弾性片81,86の少なくとも一方が当接部54若しくは55に当接するような構成等も考えられ、そのような場合においては、上記の寸法関係全てが必ずしも満たされている必要はない。
【0067】
[インクカートリッジ30の挿抜動作]
インクカートリッジ30は、前壁40側から開口112を通じてカートリッジ装着部110へ挿入される。インクカートリッジ30の挿入に際して、インクカートリッジ30の被ガイド部44がカートリッジ装着部110の溝115に挿入される。被ガイド部44と溝115との接触によって、インクカートリッジ30が挿抜方向50へ案内される。
【0068】
図8に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入向き103へ挿入される過程において、インクカートリッジ30の一対の当接部54,55がストッパ124,125の弾性片81,86とそれぞれ当接する。
【0069】
弾性片81は、当接部54と当接することにより、側面117から突出した部分は挿入向き103へ弾性変形して曲がる。凹部84において、角部83より側面117側には、弾性片81を規制する壁面として傾斜面85があるのみなので、弾性片81は、角部83を支点として傾斜面85に当接するまで曲がる。このときの弾性片81の曲げ角度は、図8に示される角度R1である。弾性片81が傾斜面85に当接するまで曲がりきると、弾性片81は側面117から殆ど突出せず、当接部54は、弾性片81を側面117側へほぼ圧縮変形させることなく、さらに挿入向き103へ移動する。
【0070】
弾性片86は、当接部55と当接することにより、側面118から突出した部分は挿入向き103へ弾性変形して曲がる。凹部88において、角部89より側面118側には、弾性片86を規制する壁面として傾斜面90があるのみなので、弾性片86は、角部88を支点として傾斜面90に当接するまで曲がる。このときの弾性片86の曲げ角度は、図8に示される角度R1である。弾性片86が傾斜面90に当接するまで曲がりきると、弾性片86は側面118から殆ど突出せず、当接部55は、弾性片86を側面118側へほぼ圧縮変形させることなく、さらに挿入向き103へ移動する。
【0071】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入される過程において、各弾性片81,86が曲げ変形される曲げ角度R1は、後述されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される過程において、各弾性片81,86が曲げ変形される曲げ角度R2より小さい。したがって、インクカートリッジ30をカートリッジ装着部110へ挿入するときに弾性片81,86を曲げ変形するに要する力は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜されるときに弾性片81,86を曲げ変形するに要する力より弱い。
【0072】
インクカートリッジ30が更に挿入向き103へ挿入されて、当接部54,55がストッパ124,125の位置を通過すると、傾斜面85,90に沿って曲げられた弾性片81,86は、図6に示されるように、長手方向を水平方向102に合致させるように弾性復帰する。
【0073】
図7に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されると、スライド部材135は、突起46に押圧されて空間130の奥壁側へスライドされる。また、スライド部材135のスライドにともなって、コイルバネ139が自然長から収縮される。コイルバネ139が収縮することにより、スライド部材135はコイルバネ139から開口112側へ向かう付勢力を受ける。これにより、装着状態のインクカートリッジ30が開口112から飛び出す向きへ弾性付勢される。
【0074】
インクカートリッジ30の挿入過程において、ロックレバー145の係合端部146がインクカートリッジ30の上壁39に乗り上げる。これにより、ロックレバー145が反時計回り(図5の矢印101の方向)へ回動して、ロック位置からアンロック位置へ移動する。インクカートリッジ30が更に挿入されると、インクカートリッジ30の係合部43が、ロックレバー145の係合端部146よりカートリッジ装着部110の奥部側へ移動し、ロックレバー145の係合端部146が係合部43と係合する位置へ回動される、すなわち、ロックレバー145が時計回りへ回動して、アンロック位置からロック位置へ移動する(図7参照)。コイルバネ139により弾性付勢されたインクカートリッジ30は開口112から飛び出す向きへ移動しようとするが、ロックレバー145の係合端部146と係合部43とが係合するので、インクカートリッジ30が装着位置に保持される。これにより、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了する。また、装着位置において、連結部121のインクニードル122が、インクカートリッジ30のインク流路38に挿入されて、インク室36からインクが外部へ供給可能となる。なお、インクニードル122がインク流路38に挿入されると、被ガイド部44の幅方向51の中心と、溝115の溝幅の中心とがほぼ合致する。
【0075】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される際には、ユーザがロックレバー145における操作部147を押し下げる。これにより、ロックレバー145が反時計方向へ回動して、ロック姿勢からアンロック姿勢へ姿勢変化する。ロックレバー145がアンロック姿勢になると、係合端部146がインクカートリッジ30の係合部43よりも上方に配置される。これにより、係合端部146が係合部43から離れる。したがって、コイルバネ139からの弾性付勢力を受けて、インクカートリッジ30は、開口112へ向かって脱抜向き104(図9参照)へ移動する。これにより、連結部121のインクニードル122が、インクカートリッジ30のインク流路38から抜ける。
【0076】
コイルバネ139が自然長に復元した後、図9に示されるように、インクカートリッジ30の当接部54,55がストッパ124,125の弾性片81,86と当接する。
【0077】
弾性片81は、当接部54と当接することにより、側面117から突出した部分は脱抜向き104へ弾性変形して曲がる。凹部84において、角部82は水平方向102において側面117とほぼ同じ位置にあるので、弾性片81は、角部82を支点として側面117に当接するまで大きく曲がる。このときの弾性片81の曲げ角度は、図9に示される角度R2である。弾性片81が側面117に当接するまで曲がりきると、弾性片81は側面117から厚み分だけ側面118側へ突出する。
【0078】
弾性片86は、当接部55と当接することにより、側面118から突出した部分は脱抜向き104へ弾性変形して曲がる。凹部88において、角部87は水平方向102において側面118とほぼ同じ位置にあるので、弾性片86は、角部87を支点として側面118に当接するまで大きく曲がる。このときの弾性片86の曲げ角度は、図9に示される角度R2である。弾性片86が側面118に当接するまで曲がりきると、弾性片86は側面118から厚み分だけ側面117側へ突出する。
【0079】
脱抜向き104へ移動する当接部54,55が弾性片81,86を曲げ変形させた状態において、当接部54,55が通過する溝115の正味の幅は、水平方向102における側面117と側面118との間の距離から各弾性片81,86の厚みを除したものとなる。この幅に対して、水平方向102において当接部54,55の先端の間の距離は広い。したがって、当接部54,55は、側面117,118に沿って曲がる各弾性片81,86を、更に側面117,118側へ圧縮変形させながら、さらに脱抜向き104へ移動する。
【0080】
弾性片81,86を曲げ変形するに要する力と、弾性片81,86を圧縮変形するに要する力とが、コイルバネ139からの弾性付勢力を受けて脱抜向き104へ移動するインクカートリッジ30に対して抵抗力となり、インクカートリッジ30が移動する速度が減衰されて、やがてインクカートリッジ30が停止する。インクカートリッジ30が停止した後、ユーザによって、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から引き出される。なお、インクカートリッジ30が停止する位置は、当接部54,55とストッパ124,125の弾性片81,86とが当接する位置に限定されない。
【0081】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、インクカートリッジ30がコイルバネ139からの弾性付勢力を受けて脱抜向き104へ移動するときに、当接部54,55がストッパ124,125の弾性片81,86に当接して脱抜向き104へ曲げ変形させるので、インクカートリッジ30は、移動速度が減速されるか停止される。これにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から飛び出すことが防止される。
【0082】
また、カートリッジ装着部110へインクカートリッジ30が挿入されるときには、当接部54,55が弾性片81,86に当接して挿入向き103へ曲げ変形させるが、弾性片81,86を挿入向き103へ弾性的に曲げ変形させるに要する力は、脱抜向き104へ曲げ変形させるに要する力より小さいので、カートリッジ装着部110へインクカートリッジ30が挿入されるときに、当接部54,55と弾性片81,86との当接により生ずる抵抗が小さくなる。これにより、カートリッジ装着部110からインクカートリッジ30が飛び出すことを確実に防止し、かつ、カートリッジ装着部110へインクカートリッジ30が挿入されるときに生ずる抵抗を小さくすることができる。
【0083】
また、ストッパ124,125は、溝115の側面117,118に、挿抜方向50において同じ位置に一対が設けられているので、弾性片81,86と当接部54,55との当接によって、カートリッジ装着部110の溝115に対してインクカートリッジ30が水平方向102へ移動することが防止される。
【0084】
また、弾性片81,86は、脱抜向き104へ曲げられた状態において、その突出端部が側面117,118から厚み分だけ突出しており、当接部54,55が当接することによって、側面117,118に押しつけられるように厚み方向へ圧縮変形されるので、脱抜向き104へ曲げられた弾性片81,86と当接部54,55との摺動摩擦が大きくなり、インクカートリッジ30をカートリッジ装着部110へ挿入するときの抵抗を大きくすることなく、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から飛び出すことを確実に防止することができる。
【0085】
また、各当接部54,55の先端が、幅方向51において本体31の右側面47又は左側面48より内側に位置しているので、インクカートリッジ30が床などに落下したときや、インクカートリッジ30がフィルム状の袋に包まれて減圧包装されたときなどにおいて、膨出端54,55が破損したり変形したりするおそれが軽減される。
【0086】
また、ロックレバー145は、各当接部54,55が配置された側と反対側の重力方向上側において、インクカートリッジ30の係合部43と係合するので、当接部54,55,と干渉することなく、係合部43を配置することができ、インクカートリッジ30の各構造をレイアウトする自由度が高い。
【0087】
なお、前述された実施形態では、インクカートリッジ30において一対の当接部54,55のみが設けられているが、複数の当接部54,55が挿抜方向50へ離間されて設けられてもよい。
【0088】
[変形例1]
前述された実施形態においては、ストッパ124,125において、弾性片81,86が角部82,83,87,88によって曲げ位置が規制されることにより、挿入向き103へ曲げ変形するに要する力が脱抜向き104へ曲げ変形するに要する力より弱いものとされたが、角部82,83,87,88のような規制部材を用いることなく、挿入向き103への曲げ変形に要する力と脱抜向き104への曲げ変形に要する力とが異なるように構成されてもよい。
【0089】
図10に示されるように、ストッパ124,125において、凹部84,89の挿抜方向50の両側に傾斜面85,90,91,92が設けられており、これら傾斜面85,90,91,92は、挿抜方向51に対して弾性片81,86を中心として対称な形状である。
【0090】
弾性片81,86には、開口112と反対側を向く面、つまりカートリッジ装着部110の奥側を向く面に鉛直方向(図10において紙面と垂直な方向)へ延びるV字形状の溝
93,94が水平方向102に沿って複数並んで形成されている。この溝93,94によって、弾性片81,86は、脱抜向き104へ曲げ変形するに要する力より挿入向き103へ曲げ変形するに要する力が小さくなる。
【0091】
このような構成によっても、前述された実施形態と同様に、カートリッジ装着部110からインクカートリッジ30が飛び出すことを確実に防止し、かつ、カートリッジ装着部110へインクカートリッジ30が装着されるときに生ずる抵抗を小さくすることができる。
【0092】
[変形例2]
図11に示されるように、ストッパ124,125において、凹部84,89の挿抜方向50の両側に傾斜面85,90,91,92が設けられており、これら傾斜面85,90,91,92は、挿抜方向51に対して弾性片81,86を中心として対称な形状である。
【0093】
弾性片81,86は、曲げ変形に要する力が異なる2つの部材が厚み方向に張り合わされている。詳細に説明するに、弾性片81,86において、開口112を向く面を構成する第1部材95,96は、開口112と反対側を向く面を構成する第2部材97,98より曲げ剛性が強い。このような第1部材95と第2部材97とが厚み方向(挿抜方向50)に張り合わされて1つの弾性片81が構成されており、第1部材96と第2部材98とが張り合わされて1つの弾性片86が構成されている。これにより、弾性片81,86は、脱抜向き104へ曲げ変形するに要する力より挿入向き103へ曲げ変形するに要する力が小さくなる。
【0094】
このような構成によっても、前述された実施形態と同様に、カートリッジ装着部110からインクカートリッジ30が飛び出すことを確実に防止し、かつ、カートリッジ装着部110へインクカートリッジ30が装着されるときに生ずる抵抗を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0095】
10・・・プリンタ(画像記録装置)
21・・・記録ヘッド(記録部)
30・・・インクカートリッジ(液体容器)
31・・・本体
36・・・インク室(貯留室)
44・・・被ガイド部
54,55・・・当接部
81,86・・・弾性片
82,83,87,88・・・角部(規制部材)
100・・・インク供給装置(液体供給装置)
110・・・カートリッジ装着部(装着部)
112・・・開口
115・・・溝
117,118・・・側面
124,125・・・ストッパ
135・・・スライド部材(付勢部材)
139・・・コイルバネ(付勢部材)
145・・・ロックレバー(保持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を通じて液体容器が装着部に装着可能であり、当該液体容器が当該装着部に装着された状態において、当該液体容器を開口へ向かって付勢部材が付勢する液体供給装置であって、
上記装着部は、上記液体容器が上記装着部に挿抜される方向である挿抜方向に沿って延出されて互いに対向する一対の側面のうち少なくともいずれか一方の側面から上記挿抜方向と交差する方向へ突出されたストッパと、装着状態の上記液体容器を上記付勢部材の付勢に抗して装着された状態に保持し、かつ当該保持を解除可能な保持部材と、を具備し、
上記液体容器は、液体を貯留し、かつ装着された状態において当該液体を流出可能な貯留室と、上記ストッパが設けられた一方の側面と対向する位置に設けられており、上記装着部へ挿抜される際に上記ストッパと当接する当接部と、を具備し、
上記ストッパは、上記挿抜方向へ弾性的に曲げ変形可能な弾性片を有し、上記液体容器が上記装着部へ挿入される向きである挿入向きへ当該弾性片が曲げ変形されるに要する力が、上記液体容器が上記装着部から脱抜される向きである脱抜向きへ当該弾性片が曲げ変形されるに要する力より弱いものである液体供給装置。
【請求項2】
上記ストッパは、上記挿抜方向と直交する方向へ突出された上記弾性片と、当該弾性片と当接することによって当該弾性片の上記挿抜方向への曲げ角度をそれぞれ規制する規制部材を有し、当該規制部材は、上記弾性片の上記挿入向きへの曲げ角度が上記脱抜向きへの曲げ角度より小さくなるように配置されたものである請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
上記ストッパは、挿抜方向において同じ位置に一対が設けられており、上記装着部の一対の側面にそれぞれ一つずつ設けられたものである請求項1又は2に記載の液体供給装置。
【請求項4】
上記装着部は、上記液体容器が挿抜される挿抜方向に沿って開口から奥部へ延びる溝を有し、当該溝において挿抜方向に沿って延出されて互いに対向する一対の側面に上記ストッパが設けられたものであり、
上記液体容器は、上記装着部に対して挿抜されるときに上記溝に挿入されて上記溝内を移動可能な被ガイド部を有するものである請求項1から3のいずれかに記載の液体供給装置。
【請求項5】
上記液体容器の当接部は、上記装着部に装着された状態において上記被ガイド部において上記ストッパが設けられた側面と対向する位置に設けられており、当該側面へ突出するものである請求項4に記載の液体供給装置。
【請求項6】
上記弾性片は、上記脱抜向きへ曲げられた状態において、その突出端部が、当該弾性片が設けられた上記溝の一対の一方の側面より他方の側面側にあり、当該状態において当該突出端部と上記当接部とが当接することによって、当該突出端部が上記溝の一方の側面側へ弾性変形されるものである請求項4又は5に記載の液体供給装置。
【請求項7】
上記液体容器は、上記当接部が突出する向きに平行な幅方向に関して、上記当接部を含む上記被ガイド部の幅より幅広な直方体形状の本体を有するものであり、
上記当接部は、その先端が本体の幅方向の端面より幅方向において内側に位置するように配置されたものである請求項5又は6に記載の液体供給装置。
【請求項8】
上記溝は水平方向へ延びるものであって、上記液体容器が上記装着部に装着されたときに、上記液体容器の下方に位置するものであり、上記保持部材は、上記液体容器の鉛直方向上側において上記液体容器と係合するものである請求項4から7のいずれかに記載の液体供給装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の液体供給装置と、
上記液体供給装置から供給された液体を選択的に吐出して被記録媒体に画像記録を行う記録部と、を具備する画像記録装置。
【請求項10】
開口を通じて液体容器が装着部に装着可能であり、当該液体容器が当該装着部に装着された状態において当該液体容器が開口へ向かって付勢部材により付勢され、当該液体容器が当該装着部から脱抜されるときに、上記装着部において挿抜方向に沿って延出されて互いに対向する一対の側面のうち少なくともいずれか一方の側面から挿抜方向と交差する方向へ突出された弾性片を、当該液体容器が上記装着部へ挿入される向きである挿入向きへ曲げ変形されるに要する力より大きな力で当該液体容器が上記装着部から脱抜される向きである脱抜向きへ曲げ変形させるものであって、
液体を貯留し、かつ装着された状態において当該液体を流出可能な貯留室と、上記ストッパが設けられた一方の側面と対向する面から突出されており、上記装着部へ挿抜される際に上記弾性片と当接する凸部と、を具備する液体容器。
【請求項11】
上記装着部において当該液体容器の挿抜方向に沿って開口から奥部へ延びる溝に挿入されて上記溝内を移動可能な被ガイド部を更に具備し、上記凸部は当該被ガイド部に設けられたものである請求項10に記載の液体容器。
【請求項12】
上記凸部が突出する向きに平行な幅方向に関して、上記凸部を含む上記被ガイド部の幅より幅広な直方体形状の本体を有し、
上記凸部は、その先端が本体の幅方向の端面より幅方向において内側に位置するように配置されたものである請求項11に記載の液体容器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−849(P2012−849A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137801(P2010−137801)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】