説明

液体加熱装置

計測された量の水を加熱する装置は、加熱室(8)と、供給室(10)と、加熱室から供給室の入口へ水を搬送する導管(14)とを備えている。この装置は、沸騰に伴う圧力の上昇によって、加熱された水が導管(14)へと流れ、さらに供給室(10)へと流れるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や他の液体を加熱する装置に関し、特に、短時間で比較的少量の水を加熱する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲み物を作るために水を加熱することは、ほぼ世界中で共通のニーズである。英国や他のヨーロッパの国々では、一般的に、ほとんどの家庭がケトル(湯沸かし器)を所有し、時折飲み物を作るための水を沸騰させるのに使っている。より大きな施設や世界の他の国々においては、まとまった量の水を長時間(場合によって一日中)高温又は沸騰した状態にしておき、「要望に応じて(オンデマンドで)」(つまり、水が室温から熱くなるのを待つことなく)飲み物を作れるようにしておくのがより一般的である。このような例としては、伝統的な電気紅茶湯沸かし器(urn)や、アジアでより一般的ないわゆるエアーポットがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらの構成にはそれぞれ欠点がある。ケトルの場合、水を冷めた状態(蛇口から汲んだときの温度)から加熱するのにかかる時間は、たとえ非常に高電力のケトル(3キロワット程度)を使っているとしても、利用者にとっては不便である。ケトルを充填するときに必要な水の量を見積もることが難しい点や、それによって必要量以上の水を沸騰させてしまい水が沸騰するまでにさらに時間がかかってしまいがちな点を考えると、特にそうである。一方、沸騰した状態や沸騰する直前の状態に水を長時間保っておくとなると、熱損失を補うために相当な量のエネルギーが必要となる。
【0004】
最近、このような欠点を補おうと試みた機器がいくつか商品化されている。これらは、冷水の貯水器からほんの数秒でカップ一杯分の湯を供給することができるといわれている。しかし、これらの機器は多くの場合、管状式フロー式加熱器を基本としており、このような構成にはいくつか重大な欠点があることを本出願人は認識している。まず第一に、管状式フロー式加熱器の場合に典型的なように、水蒸気のポケットにより生じるホットスポットで加熱器が過熱したり、及び/又は管内の圧力が高くなりすぎる危険性を避けるために、管内の水が沸点に達する前に加熱を中止しなければならない。もう一つの欠点は、加熱器は比較的急速に加熱するとはいえ、必然的に初期の水は、目標温度にまで加熱されていない加熱器を通り抜ける。この水が、あとで生成される、これもまだ沸点に達していない水と混ざりあって、水の平均温度を下げてしまう。これら2つの要因が相俟って、実際にこのような機器で生成される水は、これが供給されるころまでには沸点よりもずっと低い温度になってしまい、例えばお茶を作る等に適さなくなる。その結果、消費者へのアピール度は低くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の局面によると、本発明は、計測された量の水を加熱するための装置を提供する。この装置は、加熱室と、供給室と、加熱室から供給室の入口へ液体を搬送する導管とを備え、供給前に導管からの蒸気が供給室内に保持された水を通るように、この入口が構成されている。
【0006】
したがって、当業者には明らかなように、本発明によると、水などの温液を供給することのできる装置は、それぞれ加熱用と供給用の2つの別個の室(chamber)を備え、加熱室で生成され導管を通る蒸気が既に供給室内で保持されている水を通るように供給室の入口が構成されている。これは、既知の構成と比べて2つの重要なメリットをもたらす。まず第一に、供給室内の水を通る蒸気は、凝結するときに水に熱を追加する。これは、供給室内の水のバルク温度(bulk temperature)を上昇させるのに役立ち、したがって、目標温度に達していない可能性のある第1の量の水が加熱室を出てしまうというマイナスの影響を打ち消すことができる。
【0007】
上記構成の2つ目に有利な点は、加熱室を出る蒸気が水を通って凝結するので、装置の最終の注ぎ口から蒸気が吐出されて利用者が蒸気に触れてしまうという危険性がかなり低くなるという点である。その結果として、加熱室は、管状式フロー加熱器で加熱できる温度よりも高い温度に水を加熱するよう構成することができる。つまり、蒸気が発生するほどに沸騰した状態に水を加熱することができるようになる。本発明による構成において蒸気は、管状式フロー加熱器構成に対して有害に影響するほどには影響しないためである。これらの複合効果として、本発明の好適な実施形態では、水と共に蒸気が排気される危険なく、事実上ほぼ沸騰に近い温度でカップ一杯分等の少量の液体を利用者に提供することができる。
【0008】
供給室内の液体を供給するには、いくつかの方法が考えられる。例えば、タイマ装置のようなものや手動操作の供給機構を設けることができる。一連の実施形態では、供給室内の加熱された液体は、単に、注ぎ口に通じる穴を通って流出することができる。この穴の大きさは、安全な最大流出量が得られるような大きさにすることができる。
【0009】
他の実施形態によると、供給室は、供給室内の液体が所定レベルに達すると、その内部の液体を供給するように構成されている。もちろん、これを実現するにあたっては無数の機械的あるいは電子的な方法があるが、このような実施形態においては、水位が所定レベルに達するとサイフォンが作動して供給室内の液体が流出しつづける、簡単なサイフォン装置を用いることが、現状においては好適である。
【0010】
当業者には分かるように、2つの別個の室(chamber)とサイフォン出口とを備えている加熱水供給器は、それ自体が新規性及び進歩性を有する。したがって、別の局面から見ると、本発明は、液体加熱室と、液体供給室と、加熱された液体を加熱室から供給室へ移送するための手段とを備えた液体加熱装置を提供する。装置はさらに、供給室内の液体が所定レベルに達するとサイフォンを作動するよう構成された供給室からの出口を備えている。
【0011】
サイフォン装置は、単独で、所定量が供給されるまで液体を(好ましくは沸騰した液体を)供給し続ける。用途によっては、万一利用者が注ぎ口の下にカップや他の入れ物を置き忘れた場合に備えて、例えば充分な容量のしずく受け等を設けても一向に構わない。
【0012】
しかし、好適な実施形態では、供給開始後に注ぎ口から水が流れ出るのを防ぐ手段が設けられている。したがって、好適な実施形態では、吐出サイフォン装置は、例えばサイフォン管に空気が入るようにする等によってサイフォンを停止させる手段を備えている。好適な一例では、弾性押しボタンが設けられ、ボタンが押されると弁が開いてサイフォン管に空気が流れ、それによってサイフォンを中断させるようになっている。
【0013】
供給室は、供給室の入口装置を出る蒸気が、例えば供給室に保持された液体を通る間に再度凝結するよう構成されているのが好ましいが、蒸気の一部は液体上方の空間を通る可能性がある。したがって、供給室の上部に1つ又はそれ以上の通気口を設け、保持されている液体上方の圧力上昇を防止するのが好ましい。これは、充分な蒸気が蒸気スイッチに届くということ、また、供給速度が速くなりすぎるのを防止できるという点でも有利である。
【0014】
加熱室は、内部の水等の液体を沸騰するまで加熱し、沸騰に伴う圧力上昇によって、加熱された液体が導管を通り供給室に流出されるように構成されているのが好ましい。別の局面から見ると、本発明は、計測された量の水を沸騰するまで加熱する装置を提供する。この装置は、加熱室と、供給室と、加熱室から供給室の入口へ水を搬送する導管とを備え、沸騰に伴う圧力上昇によって、加熱水が導管へと流れ、更に供給室へと流れるように構成されている。つまり、加圧されて危険な沸騰水と蒸気を供給室へ安全に吐出することができる一方、水はよりゆっくりとより一定の流れで出口から供給される。この水の流れは、加熱室から依然入ってくる水とは基本的に無関係である。言い換えると、供給室は、加熱室からの出口と利用者への出口とを効果的に分離する役割を果たしている。
【0015】
一連の好適な実施形態によると、供給室の入口には堰(weir)が備えられる。こうすることによって、管から初期に流出される冷水を有効に堰止め、その水が供給前に供給室からしたたるのを防ぐことができる。これはまた、加熱室から出る加圧された沸騰水及び蒸気を供給器出口から分離する助けにもなる。好ましくは、このような実施形態では、動作の合間に堰の内容物を流出させる流出手段を設ける。好適には、流出手段は、加熱室に戻るように流出するように構成されている。便利な一例では、流出手段は、供給室の導入管の溝穴(slit)(理想的には、堰の高さよりも低い溝穴)を含む。
【0016】
加熱器は、便利であればいかなる形態をとってもよい。例えば、浸漬型加熱器を備えてもよいし、好ましくは、加熱室の壁(より好ましくは加熱室の底面)を形成する加熱器を備えていてもよい。実際のところ、便利な実施形態において、加熱器は、例えば加熱板の下面にシーズ線抵抗発熱素子(sheathed resistance heating element)が接着されている等、通常の家庭用ケトルに用いられるものと概ね類似している。別の実施形態において、厚膜加熱器を用いてもよい。
【0017】
水や他の液体は、例えばポンプによって又は遠隔の液体貯水器からの静水圧によって等、便利であればいかなる方法で加熱室に供給してよい。しかし、現状での好適な実施形態では、液体貯水器が加熱室に隣接して設けられ、選択的に流体流通するようになっている。例えば、加熱室は、より大きい液体貯水器の細分化した一部を備えていてもよく、必要な場合に前記貯水器から選択的に液体を加熱室へと流すことができる。選択的な流体流通は、例えば、少なくとも一部が開閉式になっている壁(wall)又は仕切り(divider)又は阻流板(baffle)によって実現されてもよいが、好ましくは、加熱室の壁に設けられた弁によって実現される。好ましくは、加熱室は、その内部に水が重力あるいは静水圧によって流れるように貯水器の他の部分よりも下方に設けられる。
【0018】
実施形態において、貯水器は着脱可能で、例えば、補充することができる。
【0019】
一連の実施形態において、加熱室が所望レベルに満たされると弁は閉じられる。例えば、前記弁の位置は、加熱室内の水位によって決まる。このような一連の実施形態では、加熱室が所望のレベルに満たされている場合は閉じた状態でいるように構成されているフラップ弁を設ける。好適には、弁は、これを実現するために浮力を有するように構成されている。好適には、弁の末端に下向きに開口したカップを備え、使用時には下にある液体によってそのカップの中に空気が溜まる。したがって、加熱室が所望レベルに満たされるとフラップは弁座に押しつけられる。
【0020】
本発明の少なくともいくつかの実施形態から分かるように、加熱室は1使用サイクルの後水蒸気等で満たされるという事実は、上記のような弁が開いて水が流れ込むと、加熱室内の水蒸気が急速に凝結して加熱室内の圧力が著しく下がり、これによって主貯水器から水が非常にすばやくかつ幾分激しく吸水されるということを意味する。これによって、大きく不所望なノイズが引き起こされる。また、操作が繰り返されるにつれ、簡素なフラップ弁が損傷したり、詰まったりする危険性が高くなる。
【0021】
一連の実施形態によると、フラップ弁よりも強固な自由フローティング弁部材を用いる。有利には、このような弁部材は、液体は通すが弁部材は保持するような筐体に収容される。弁部材には、弁座に当たって弁を閉じる上位置と、筐体の下部に保持される下位置とがある。実施形態において、筐体は、上部と、上部にクリップ留めされた下部とを備え、クリップは、下位置にある弁部材によって筐体の下部を解放するほどには十分に動けないように構成されている。このような実施形態では、たとえ加熱室内に液体が激しく流れ込んでも、弁部材はしっかりと保持されたままである。
【0022】
弁部材は、適切であればいかなる形態をしていてもよい。例えば、ボールを備えていてもよい。あるいは、丸状や円盤状、あるいは太く短い円筒形状であってもよい。一連の好適な実施形態では、弁部材は、例えば切頭円錐状等のように下に向かって細くなっている。こうすることによって、使用中に弁部材が詰まる可能性を最小限にすることができる。
【0023】
加熱室が弁によって貯水器と分離されている全ての実施形態において、弁は、好ましくは、加熱室内の圧力が上昇すると、閉じるように構成されている。もちろん、これは上述のフラップ弁や弁部材の場合も同様である。
【0024】
弁は、貯水器と加熱室とを分離する壁に、簡素な、例えば円形の、孔(orifice)を備えていてもよい。しかし、一連の好適な実施形態では、孔は、中央領域から延びる複数のローブ(lobes)をもつ形状を有している。ローブを通って加熱室からの空気が貯水器に流れ込むことから、所定面積の孔に対して流れ特性が向上することが分かる。
【0025】
好適な実施形態では、弁入口は、主に垂直ではなく主に水平に液体を通すように構成されている。さらに好ましくは、1つ又はそれ以上の阻流板が弁入口の周囲に設けられている。このような手法はそれぞれ、貯水器内の液体水位が低い場合に過剰な空気が加熱室内へ引き込まれるのを防ぐのに役立つ。本出願人が認識するところによると、空気を急激に吸引することによりノイズレベルが高くなることから、上記によってノイズを低減することができる。
【0026】
上述のように、ある実施形態によると、弁は、加熱室が充分に充填されたときに自動的に閉じる。しかし、別の実施形態では、装置は、加熱中に貯水器と加熱室との流体流通を維持するための手段を備えていてもよい。例えば、弁が設けられる場合、加熱中に弁を選択的に開けた状態にしておくための手段が設けられる。この結果、加熱室内の比較的少量の分離された液体を加熱するのではなく、むしろ貯水器及び加熱室内の全ての液体が例えば沸騰するまで加熱される。これによってケトルのような従来の液体加熱容器に近いものとなる。上述の手段を選択的に動作させることによって、単一の装置をどちらのモードでも使用することができる。これは、必要な量の水だけを沸騰させればよいため自由度やエネルギー効率の面で有利であり、また消費者は複数の商品を調理台に置くスペースを確保する必要がなくなる。
【0027】
このような装置は、それ自体が新規性及び進歩性を有する。したがって、別の局面から見ると、本発明は、液体受室と電気発熱素子とを備えている液体加熱装置を提供する。装置は、液体受室内の全ての液体を加熱するように発熱素子が作動できる第1の構成と、加熱室が規定されて、その中で発熱素子がより少量の液体を加熱することができる第2の構成とを有する。装置はさらに、第1及び第2の構成を切り換えるための手段を備えている。
【0028】
本発明の上述の局面による好適な実施形態によると、(上述の局面と同様に)、加熱室と液体受室の残りの部分との間に隔壁が設けられ、それらの間には弁が設けられて液体が加熱室に選択的に流れるようになっている。第2の構成では、弁は閉じている、又は加熱中閉じている。一方、第1の構成では、弁は開いたままになっており、及び/又は、1つ又はそれ以上の補助弁が開いている。したがって、上述の二重機能を有する一連の実施形態では、加熱中に弁(または1つの弁)を選択的に開いた状態にしておくための手段が設けられる。簡素な実施形態では、この手段は、弁部材に作用するアームでもよい。このアームは、例えば、利用者が操作することによって所望の構成の選択が可能なレバー、つまみ、又はスイッチ等に接続される。
【0029】
好ましくは、加熱室には圧力除去弁が備えられ、この圧力除去弁は加熱室内の圧力がしきい値を超えると開く。これは、例えば、出力管がなんらかの理由で詰まった場合に起こりうる。大気に通気する従来の圧力除去弁(例えば、伝統的なエスプレッソコーヒーメーカーにあるのと類似のもの)を設けてもよい。しかし、好適な実施形態では、圧力除去弁は、器具内部の加圧されていない部分へ(例えば、貯水器がある場合はそこへ)過剰圧力を逃すように構成されている。これは、蒸気が圧力によって利用者の近くに排気されてしまうという危険性(可能性は少ないが)を実質的になくすことができるという点でより安全だと考えられる。さらに、好適な一連の実施形態では、圧力除去弁は第2の機能を実行して、水を加熱室に流す役割も果たす。言い換えれば、好適な実施形態において、弁は、その両側にどちらの方向であれ圧力差がある場合に開くように構成されている。好ましくは、弁は、一方向では他方向よりも低い圧力差で開くように構成されている。こうすることによって、弁はより効果的に上述のように機能することができる。なぜなら、加熱サイクルの終わりに加熱室に引き起こされる真空は、一般に、圧力除去が必要となる過剰圧力よりも大気圧に対して低い圧力差を示すからである。
【0030】
このような構成は、それ自体で新規性かつ進歩性を有している。したがって、別の局面から見ると、本発明は、加熱室と、液体貯水器と、それらの間の弁とを備えている液体加熱容器を提供する。弁は、その両側のしきい値圧力差に反応して開き、加熱室と液体貯水器との間に流体が流通するように構成されている。一方向のしきい値圧力差は他方向よりも高い。
【0031】
好ましくは、上述のように、しきい値圧力差が高いのは、加熱室から液体貯水器への方向である。つまり、加熱室のほうがより高い圧力を有する。
【0032】
本発明は、2つの空間を液密封止するための弁にも適用される。この弁は、その両側のしきい値圧力差に反応して開き、流体を流通させるように構成されている。一方向のしきい値圧力差は、他方向よりも高い。
【0033】
好適な一連の構成では、上述の弁は、内部に少なくとも1つの切れ目(slit)が形成されたドーム形の弾性ダイヤフラムを備えている。このドーム形状は、上述の非対称圧力特性を生み出す。ダイヤフラムの凹側の圧力が凸側の圧力よりも次第に高くなるにつれ、例えば凸側が真空になるので、ダイヤフラムのスリットが開かれ、スリットを介して流体が流通する。この機能から、ダイヤフラムは、沸騰水が空になって加熱室内が真空になった場合に加熱室へ水を流すのに適している。したがって、好適な実施形態によると、弁は、貯水器と加熱室との間にダイヤフラムの凹側が貯水器に面した状態で設けられる。この弁を、上述のフラップ弁やフローティング弁部材装置の代わりに用いてもよい。しかし、好ましくは、この弁は、フラップ弁やフローティング弁部材装置に追加して設けられる。これは、水が吸引される有効面積全体を増やすことになるので、加熱室へ水が急速に吸引されるのに伴って発生する不所望なノイズを低減するのに役立つ。
【0034】
どの段階にかかわらず万一加熱室内の圧力が危険レベルに近づいた場合、凸側の圧力はダイヤフラムの湾曲をスナップ動作で反転させるのに充分な圧力となり、これによってスリットが開いて加熱室内の圧力を減少させることができる。
【0035】
スリットは、例えば十字形状や星形状となるように2つ以上設けてもよい。好ましくは、ダイヤフラムはシリコーンや同様の不活性耐水材料で作られる。これは、長時間水と接触することができる点で従来の金属製圧力除去弁よりも有利である。ここで記載される弁は、より制御可能な最大操作圧力を有するということも分かっている。これによって、通常使用時には漏れが起こるのを依然防止しつつ、故障状態においてはより低圧力で流通するよう設計することができるので、弁をより安全なものにすることができる。
【0036】
沸騰した液体は、圧力によって導管を通って供給室へと流れる。したがって、供給室は、便利であれば加熱室に対していかなる配置で設けられてもよいが(例えば、加熱室の横や下など)、好ましくは、供給室は加熱室の上方に設けられる。特に好適な一連の実施形態では、加熱室及び供給室はそれぞれ、容器の下部及び上部に設けられ、容器はそれらの間に貯水器を規定する。
【0037】
加熱室は、供給室への導管と離して封止されていてもよい。しかし、一連の好適な実施形態では、通気手段が加熱室に設けられる。これには、いくつかの潜在的な利点がある。1つ目の潜在的な利点は、通気することによって加熱の初期段階における加熱室内の圧力上昇を低減し、充分に加熱される前の水が導管から吐出されるのを防ぐことができる。もう1つの利点は、蒸気を逃すことができることである。蒸気は、加熱段階中に弁部材を不安定にするので、冷水が中に入って沸騰により時間がかかってしまう。さらにもう一つの利点は、万一なんらかの理由で排出導管が詰まった場合に、加熱室内の危険な圧力上昇を防ぐ役割を果たすという点である。これは、前述のようなタイプの圧力除去弁に加えて、あるいはその代わりに用いてもよい。
【0038】
通気手段は貯水器に通じていてもよい。例えば、貯水器と加熱室との間に1つ又はそれ以上の開口を単に備えていてもよい。好適な一連の実施形態では、通気手段は、大気に開口している。これは、加圧された空気や蒸気が貯水器を通るときのノイズの潜在的な源をなくすという点で有益である。また、移動した空気を逃すことによって、貯水器から加熱室へと水がスムースに流れる助けにもなる。
【0039】
通気手段は、器具の外部へと通気するよう構成されていてもよいが、これは、蒸気が利用者の近くに吐出される可能性が高くなるので理想的とは言えない。したがって、好ましくは、通気手段は、器具内部の空域(airspace)へ通気する。この空域は、特別に設計された空間であってもよいし、貯水器であってもよい。しかし、好ましくは、通気手段は、供給室へ通気するように構成されている。通気手段は、好ましくは、加熱室の上部から通気し、さらに好ましくは、加熱室の上面から通気する。つまり、加熱室が水で満たされた場合にできる上部空間(headspace)から通気し、液体よりもむしろ気体をそこから確実に吐出できるようにする。
【0040】
一般に、通気手段の大きさは、以下のように決められる。つまり、加熱室内の水を最初に加熱する場合に、加熱室内の圧力は供給室へ水を吐出できるほどには上昇しないが、水が沸騰に近づくにつれて加熱室内に充分な圧力が発生して水を吐出することができるような大きさに決められる。
【0041】
既に述べたように、好適な実施形態によると、加熱室内の液体は沸騰するまで加熱され、導管を介して供給室内へと流される。しかし、本出願人の認識によると、比較的少量の水が加熱されるので、一般的な発熱素子、例えば加熱室の底部下面に取り付けられたシーズ線発熱素子(いわゆる「床下」加熱器)の熱慣性が重要になる。しかし、これを考慮すると、加熱室内の液体が沸点に達する前に故意に発熱素子の電源を切って、発熱素子内の余熱を頼りに液体を沸騰させて吐出することによって、発熱素子にかかる熱応力を低減することができる。これによって、発熱素子が液体に接触することなく通電されて過熱する危険性を低減することができる。
【0042】
もちろん、この効果を実現するために発熱素子をオフにしなければならない温度は、加熱される液体やその量、そして発熱素子自体の熱質量によって決まる。標準的なシーズ線床下発熱素子とおよそ200ml容量の加熱室とを使うと、発熱素子をオフにしなければならない温度はおよそ90℃だということが分かった。したがって、本発明の実施形態によると、制御手段が設けられ、水温が90℃に達した場合に発熱素子の電源を切るように構成されている。従来、このような制御装置は、ケトル用に開発された本出願人による新シリーズの制御装置(詳細については、WO95/34187で開示)の変形の形態で提供されるが、その中のバイメタル作動装置(bimetallic actuator)のうちの1つが、およそ90℃の動作温度を有する装置に置き換えられる。このような制御装置を用いることの有利な点は、例えば貯水器に水がなく、その結果、加熱室内に水がない状態で作動させる等によって万一発熱素子が過熱した場合にもう一つ予備の作動装置を提供することができる点である。
【0043】
これは、それ自体で新規性かつ進歩性を有すると考えられる。したがって、別の局面によると、本発明は、加熱室と、加熱室内の水を加熱するための発熱素子と、所定の温度に達すると発熱素子の電源を切るように構成された温度検知手段とを備えた、計測された量の水を沸騰させる装置を提供する。前記所定の温度は、発熱素子がオフにされたとき水はまだ沸騰していないが、発熱素子内の余熱でその水を沸騰するまで加熱し続けるのに十分な温度に設定される。
【0044】
別の一連の実施形態では、装置は、加熱及び供給サイクルの別の部分を検出することに応じて発熱素子をオフにするように構成されている。一連の実施形態では、装置は、供給室内において水、蒸気、昇温、あるいは昇圧のうち少なくとも1つの存在に反応して発熱素子をオフにするための手段を備えている。例えば、一実施形態では、供給室と共にフロート作動スイッチを設け、供給室内の液体が所定レベルに達すると発熱素子の電源を切るようになっている。他の実施形態では、蒸気感応式作動装置(steam-sensitive actuator)を用いて発熱素子をオフにするようになっている。
【0045】
好適な一連の実施形態では、従来の蒸気スイッチが、加熱室内で発生した蒸気が蒸気スイッチに当たるように加熱室と気体連通して設けられる。好適な実施形態では、蒸気スイッチは垂直管の頂部に設けられており、垂直管の首は導管よりも狭くなっており、及び/又は、垂直管は、沸点に達すると加熱水が垂直管内に流れないように構成されている。
【0046】
上述のいかなる実施形態においても、発熱素子をオフにするための機構は、加熱室内で加熱されている全てのあるいはほぼ全ての液体を吐出するのに充分な圧力があるように構成されていてもよい。しかし、予想される実施形態によると、加熱室及び発熱素子遮断機構の構成は、加熱室内に残っている液体の一部を故意にそのままにしておくような構成であってもよい。これは、新鮮なより冷たい液体が例えば貯水器から加わった場合に発熱素子及び/又は加熱室が受ける「熱衝撃」を低減できるという点で有益である。例えば、本出願人によると、上述の導管を短くすると、加熱サイクルの終わりに液体の一部が加熱室内に残ることが分かっている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下、本発明の好適な実施形態を添付の図面を参照しながら説明する。
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態による容器の切取図である。
【図2】図2は、図1に示す実施形態による加熱室の断面図である。
【図3】図3は、図1に示す実施形態による加熱室の断面図である。
【図4】図4は、図1に示す実施形態による供給室及び吐出口の断面図である。
【図5】図5は、第2の実施形態による供給室を示す、図4と同様の図である。
【図6】図6は、第3の実施形態による加熱室の断面図である。
【図7】図7は、本発明の第4の実施形態による加熱室及び蒸気管の断面図である。
【図8】図8は、第5の実施形態による供給室の断面図である。
【図9】図9は、第6の実施形態による供給室の断面図である。
【図10】図10は、本発明のさらに別の実施形態による加熱室上壁部材の斜視図であり、2つの別個の弁装置を示している。
【図11】図11は、図10に示す壁部材を下から見た場合の断面図である。
【図12】図12は、圧力除去弁の斜視図である。
【図13】図13は、図12に示す弁の断面図である。
【図14】図14は、2つの異なるモードで使用できる、本発明の別の実施形態の模式図である。
【図15】図15は、本発明の別の実施形態による主要構成要素を示す図である。
【図16】図16は、図15に示す実施形態の部分断面図である。
【図17】図17は、供給室下部の斜視図である。
【図18】図18は、供給室上部の斜視図である。
【図19】図19は、供給室の断面図である。
【図20】図20は、供給室の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
初めに図1を参照すると、外体2を備えている湯供給容器が示されており、外体2は、利用者が吐出口6の下にカップや他の入れ物を置くことができるスペースを定める、前面の「アンダーカット」部4を有している。容器内部は、3つの主要部分に分割される。容器の下部は加熱室10であり、これについてはあとで図2及び図3を参照にしてさらに詳しく説明する。容器の上部は供給室10になっており、これについてはあとで図4を参照してさらに詳しく説明する。加熱室8と供給室10との間には、貯水部12が設けられている。貯水部は、本体に設けられた適切な開口(図示せず)を使って充填することができる。導管14は、貯水部12を通り、加熱室8と供給室10とをつないでいる。
【0049】
図2及び図3では、加熱室8をさらに詳しくみることができる。加熱室の基部は、ケトルや他の湯沸かし器に関する技術分野の当業者には周知のように、床下発熱素子装置によって規定されている。したがって、中央部が略平面で、周縁部には上方向に開口した溝18が形成された金属製の(好ましくはステンレス鋼製の)板16を備えている。溝18には、加熱室カバー部材22の下方向に懸垂する壁部20が収容される。溝18にはまた、L形断面の封止材も設けられており、当技術分野では周知であり且つWO96/18331でさらに詳しく述べられているように、周辺溝18の壁は使用時にはクランプ留めされ、加熱板16と下方向に懸垂する壁部20との間を確実かつ水密に封止することができる。
【0050】
上記環状壁部20は、加熱室カバー部材22の略平面上部26から下方向に懸垂している。上記環状壁20の半径方向外側には、下方向に懸垂するさらに別の環状壁28がカバー部材22の周縁に設けられている。上記壁28の外側周囲には封止材30が密着され、図1を参照すれば分かるように、封止材30は、主容器の壁2に室部材を封止する働きをしている。本実施形態で用いられる特定のタイプの封止材については、EP−A−1683451でさらに詳しく述べられているが、封止材の特定の形態は本発明の本質的なものではない。
【0051】
加熱室はしたがって、略ディスク形状のおよそ200〜500ml程度の容量の空間を密閉する。
【0052】
金属板16の下面には、薄いアルミニウム加熱拡散板が設けられ、この板には、弧状のシーズ線電気発熱素子(sheathed electric heating element)34が従来の方法で蝋付けされている。代わりに、厚膜プリント素子を用いてもよい。
【0053】
加熱室カバー部材22の中央には、水流入孔(orifice)36が設けられている。図1から分かるように、室壁部材22は、貯水部12と加熱室8との間の分割障壁を形成している。したがって、孔36を通って、水は貯水部12から加熱室へと流れることができる。孔36は、半径方向に伸びる4つのローブ(lobes)38によって形成され、全体に同じ面積を持つ円形の開口と比べてよりよい流れが得られる。孔36の下には、フラップ弁40が設けられる(図3で最も良く示されている)。フラップ弁40は長く伸びた矩形形状をしており、これも図3から分かるように、室カバー部材の上面26の下側に設けられた切り込み(rebate)42に収容される。フラップ弁40はシリコーンゴムからできており、一対の鋲44によってカバー部材の上面に積み重ねられる。フラップ弁40は、ほぼ全長にわたって平面であるが、孔の真下にあるその末端部には、円筒形の下方向に開口したカップ46が一体的成形されている。
【0054】
図2及び図3の右側には、垂直に伸びる円筒状の管48が示され、管の上端には、導管14の下端が収容される。垂直管48の下端は、足部材50に収容される。足部材は、下縁周囲に溝を設けて溝の間を水や蒸気が通過することができるようになっている一方で、大きな破片等の進入に対しての粗フィルタの役割も果たしている。垂直管48の真下には、加熱板16が浅いくぼみ52と共に形成される。このくぼみによって、90℃方向転換した水が管48内に容易に流れ込むことができる。管48は、室カバー部材の上面26に適切に形成された開口に適合するように成形される。本実施形態で示す構成は、加熱室から吐出される水の量を最大にしようとするものである。しかし、他の実施形態においては、例えば突然冷水が侵入することによる熱衝撃から発熱素子を保護するため等の目的で、ある程度の水を加熱室内に残しておくことが望ましい場合もある。こうするには、管48を短くして加熱板16に届かないようにしたり、溝を大きく形成したりすればよい。
【0055】
次に、上部供給室10について説明する。供給室の下から突き出ているのは、導管14の上端を受容する導入管54である。図に示すように、導入管54は、供給室の最大高さの約4分の3の高さまで供給室内を垂直に伸びている。導入管54は、直径がより大きい同軸の円筒管56内に上方に伸びている。円筒管56は、供給室頂部58から下方向に懸垂している。下方向に懸垂する管56は、供給室基部60の少し上の位置まで下方に伸びている。
【0056】
供給室は、傾斜頂部58とそれに対応して先細りしている側壁62とを備えている上部と、供給室基部60を形成する下部との2つの部分から構成されている。これら2つの部分は、それらの間に設けられたオーリングシール64と共にスナップ嵌合される。傾斜頂部58の最も高い部分と交わる側壁62の上部の近傍には、一連の開口66が壁62のわずかにくぼんだ部分に設けられ、使用時には供給室上部の蒸気を主容器本体内へ逃がすことができる。
【0057】
供給室の入口構成54、56とは反対側には、供給室基部60が一段下がって、浅い水溜め68が形成されている。排出管70の下方に開口した一端は、この水溜めの真上にかつその底面から数ミリメートル離れたところに位置している。図から分かるように、排出管は、初めは水溜め68から垂直上方に延び、次に水平に短い距離延び、そして垂直下方に延びて、ある角度をもった注ぎ口6に終端している。また、供給室頂部58は、排出管70が現れる辺りで低くなり、管の形状に伴って湾曲している箇所を容易に収容できるようになっていることが分かる。
【0058】
図5は、本発明の第2の実施形態による供給室の変形例10’を示す。図4で説明した上記実施形態と異なる点は、排出管の構成である。ここでの排出管74は、くぼんだ水溜め領域68’の底面を貫通し、供給室頂部58から下方に懸垂している直径のより大きい同軸円筒管76の内部に上方に延びている。これによって、供給室の出口は入口と同様の構成となっている。同軸管のうち内側管74は、供給室頂部58までほんの数ミリメートル届かない位置まで延びている。一方、外側管76は、水溜め領域68’の底面にわずかに届かない位置まで延びている。供給室頂部58には、2つの出力管74、76と共通の軸上に開口78が形成されている。この開口は、弾性的に変形可能なプラグ80によって、通常閉じている。このプラグの心軸80aの基部には、開口78の内側に面する端部からわずかに突出して延びる環状のスカートが形成されている。プラグ80は、供給室頂部58の上面に当たっている弁の拡大頭部の下面に設けられた環状周縁リング80bによって、通常はこの位置に保持されている。しかし、プラグ80の頭部に圧力が加えられた場合には、プラグは、リム80bが上方に回転し、上部室壁58の外面から離れるように変形する。それと同時に心軸部80aが開口を通って突出し、それによって心軸の基部が開口78の縁端から離れる。この結果、プラグ80による開口78の封止が破られ、空気が開口を通って排出管74、76に流れ込む。
【0059】
以下、上記実施形態の動作を図1〜5を参照して説明する。
【0060】
初めに、容器2を水で満たして貯水器12を充填する。加熱室8が空の場合は、貯水器内の水圧によって、フラップ弁40が開き、孔36を介して加熱室8が充填される。加熱室8内の水位が上昇し始めると、フラップ弁40の末端部に設けられたカップ46に閉じ込められている空気によってフラップ弁が回転して閉位置にまで上昇し、切り込み42に押しつけられる。したがって、一旦所定レベルにまで加熱室8が充填されると、弁は閉じ、それ以上水は流れ込まない。
【0061】
沸騰水を供給するよう要求された場合、発熱素子30が通電されて、加熱室内の比較的少量の水を急速に加熱する。加熱室は本来密閉されているので、水が加熱されると、加熱室内の圧力が上昇し始める。これによって、一方では、凹部42に対する閉鎖圧がフラップ弁40にさらに加わり、例えば加熱されている水の流れが乱れた結果、加熱室内にそれ以上の水が漏れ込むのを阻止することができる。他方では、圧力によって、水は排出管48を上昇し導管14に流れ込み始める。
【0062】
加熱室8内の水温がほぼ90℃に達すると、制御装置(図示せず)のバイメタル作動装置が動作温度に達し、スナップ動作で自身の湾曲を反転させて一組の電気的な接点を開にし、発熱素子34への電力供給を遮断する。しかし、発熱素子34への通電は遮断されるものの、その有限(及び既知)の熱質量によって、発熱素子内に熱が蓄積され、この熱が通電が遮断された後も放出され続ける。この熱は、加熱室8内の比較的少量の水を沸騰させるのに充分である。
【0063】
加熱室8内の水が沸点に達すると、蒸気が発生して加熱室内の圧力が急激に上昇する。この圧力によって、沸騰水は排出管48を上昇し導管14に流れ込み、そして供給室10の入口構成54、56に流れ込む。加熱室内のほとんどの水は沸点になるが、最初に加熱室から吐出される少量の水は、沸騰するまで加熱される前に排出管48に流れ込むため、わずかに温度が低い。
【0064】
図4から分かるように、加圧された沸騰水が導管14を上昇し導入管54に流れ込むと、その水は、より直径の大きい管56の内部で供給室の屋根58に当たる。水はその後、小径導入管54の周囲の外側導入管56を下方に通過して、室底部60と管56の下端との間の隙間を通って流れ出る。それによって供給室10がいっぱいになり始めると、加熱室からの沸騰水は、供給室10の底にある主要部分に入る。
【0065】
特に、加熱室8がほとんど空の場合には、沸騰水と共に蒸気が導管14を上昇する。この蒸気も、外側円筒管56の内部で供給室の屋根58に当たって吐出される傾向にある。ここで、蒸気の一部は凝結するが、蒸気の一部は管56の下端の下を通って供給室に保持されている水を通る。このように蒸気が水に入って水を通りぬける効果としては、初期に吐出されたぬるい水と混ざることによって沸点からわずかに温度が下がってしまう供給室10内の水を沸点に温め直すことができるという点が挙げられる。水を通る間に凝結しない蒸気は、供給室頂部の水面上の空間を通り、そこから供給室の一番高い部分に設けられた通気口66を通って排気される。
【0066】
供給室内の水位が上がると、排出管70の下方に伸びる最初の部分内の水位も同様に上がる。主要室10内の水位が充分に上がった場合、排出管70内の水は水平部分に達し、重力によって吐出口6に向かって流れ落ち始める。これによってサイフォンが作動し、実質的に供給室内の全ての水が流出される。ただし、凹んだ水溜め領域68の底に、サイフォンでは流出できないわずかな量の水だけが確実に残る。加熱室から供給室へ沸騰水がまだ吐出されている最中に水の供給は始まるが、供給室10への入口構成(本実施形態では、「水トラップ」を形成する二重同軸管)によって結果的に、加圧されて危険な沸騰水と蒸気とを安全に供給室10へ吐出することができる一方で、出口から供給される水は、加熱室から引き続き入ってくる水とは基本的に無関係に、低速の一定した流れとなる。言い換えると、供給室は、加熱室からの出口と利用者への出口とを効果的に分離する役割を果たしている。
【0067】
供給室の底部60はゆるやかに傾斜しているので、室内の水は最後まで水溜め領域68に集まり、水溜め68の底部の非常に薄い層を除いて、排出管サイフォンによって流出される。水溜めに残る水の量は、一般的にわずか数ミリリットル程度であるので、たとえ次の処理サイクルでそれまでに冷えた残りの水が新しく入ってくる沸騰水と混ざったとしても、供給室内の水のバルク温度への影響は無視できるほどである。
【0068】
したがって、上記実施形態によると、安全かつ制御された方法で、非常に短時間の間に所定量の水を沸騰するまで加熱して注ぎ口から供給できることが分かる。これは、水が沸点まで充分に加熱されても、さらに、沸点に達しなかった少量の水が必然的に混ざったとしても実現可能である。このようなぬるい水によるマイナスの影響は、沸騰処理の終わりに発生する蒸気を供給される前の水に通すことによって軽減することができる。蒸気は凝結して、水のバルク温度をほぼ又は完全に沸点に戻すことができる。したがって、利用者に供給される水は、少なくともほぼ沸点の水であり、お茶を作る等、沸騰水が必要とされるどのような用途にも使用できる。
【0069】
図2、図3及び加熱室8についての説明に戻ると、加熱室は、供給サイクルの終わりには、蒸気で満たされた状態となる。蒸気が冷えて凝結し始めると、加熱室8内の圧力は急激に減少し、それによってフラップ弁40が開いて貯水器12から冷水が吸水され、次の動作サイクルのために加熱室8が再度充填される。
【0070】
上記実施形態では、一旦排出管70内でサイフォンが作動すると、供給室10が空になるまで作動しつづける。したがって、装置は常に一定同量の沸騰水を供給する。しかし、図5に示す改良された実施形態では、供給する沸騰水の量を多少制御することが可能になる。この実施形態では、供給室10’が水で満たされると、内側同軸管74の周囲の下方に懸垂する排出管76内部で水位が上昇する。供給室内の水位が上昇し続けて管76内の水位が内部同軸管74の頂点に達すると、サイフォンが作動して、排出管74を通って注ぎ口6へと水が流出する。通常、このサイフォンは、供給室10’内のほぼ全ての水を注ぎ口6から流出させる。しかし、本実施形態では、利用者は、弾性のプラグ80を押して、下方に懸垂する管76内に空気を入れることもできる。こうすることによって、サイフォンを中断させて水がこれ以上供給室から流出されないようにすることができる。それによって、所望量に達した場合にボタンを押すことによって、供給される水量を制御するのに効果的な機構を提供している(なお、当然のことながら、排出管74及び注ぎ口6内に実際に存在する水は、弁ボタン80が押された後であっても供給される)。
【0071】
図6は、最初の2つの実施形態と比べて加熱室を改良した、本発明の別の実施形態を示す。本実施形態が異なる点は、前述のフラップ弁構成の代わりに、ボール弁構成が用いられているという点である。加熱室カバー部材122には、円形の中央開口182が形成され、この開口には、周方向に離間した一連の4つの足184が一体成形されている。これらの足は、開口182を囲む室カバー部材122の下面から下方向に懸垂している。各足184の末端部には、外側に面する鉤状の突起184aが設けられている。これらの突起は、シルクハット形のケージ(cage)部材186の環状上縁の切取部(undercut)と噛み合っている。したがって、ケージ部材186は、突起184aにひっかけられて、開口182の垂直方向真下の所定位置に保持される。
【0072】
足184とそれらの間のケージ部材186は円筒形の空間を規定し、その中で中空の浮ボール188が短い上下移動距離を上がったり下がったりすることができる。図6に示す低位置では、水は明らかに開口182を通って貯水器から加熱室108に流れ込むことができる。しかし、浮ボール188が開口182の下側に押しつけられている場合、浮ボールが封止材となり、水がこれ以上加熱室108に入るのを防ぐ。さらに、図6を注視すれば分かるように、ボール188が低位置にある場合、ボール188の表面と足184との間の隙間は、ケージ部材186が充分に開放されるように足を内方向に曲げるには不十分である。この結果、ケージ部材186は比較的簡易な爪式はめあい機構(click-fit mechanism)で保持されてはいるが、ボール188が比較的非圧縮性であるかぎり、ケージ部材186が足184から離れることはない。
【0073】
本実施形態が動作において異なる点は、供給が起こった後に加熱室108内の圧力減少によって貯水器から水が急速に、場合によっては激しく、吸水された場合、ボール弁装置はより激しい力に耐えることができ、また開位置で詰まる可能性もない。また、室内の圧力と中空ボール188の本来の浮力との両方によって、加熱室108が水で満たされている場合及び加熱中に確実に弁を閉じた状態にしておくことができる。
【0074】
図7は、図6で説明された上記実施形態の変形例を示す。なお、本実施形態では、比較的幅広で垂直の円筒形上昇管200が加熱室カバー部材222から延び、その下端は加熱室208に開口している。垂直上昇管200の頂部では、小開口204の後ろに本出願人による標準的なR48蒸気スイッチ202が設けられている。このスイッチは、沸騰したときに自動的にオフになる家庭用ケトルでより一般的に使われている。当業者には周知のように、このスイッチは、軸を中心に動いて一組の電気接点を開にする揺れ腕(rocker arm)に作用するスナップ動作式バイメタル作動装置(snap acting bimetallic actuator)を備えている。
【0075】
本実施形態では、発熱素子34は、加熱室208内の水が90℃に達した時点で遮断されるのではなく、充分な蒸気が蒸気スイッチ202のバイメタルに届いた時点で遮断される。管の頂部に設けられる小開口204は、所望の性能が得られるように調整することができる。開口204は比較的狭いので、加熱室内の水が沸騰した場合でも、蒸気圧によって水が管200を上昇することはない。さらに、蒸気スイッチ202は蒸気管200の頂部にあるので(これは従来の自動ケトルの構造とは逆である)、蒸気スイッチは、水がちょうど沸騰した時点あるいは沸騰する直前に作動すると考えられる。これは、前述の実施形態に関して述べられた動作と類似しており、したがって、発熱素子は沸騰前にオフにされ、発熱素子内の余熱を使って水を完全に沸騰させる。バイメタルを拡散板に接触させて水温を感知する場合と比べてこの実施形態が有利な点は、加熱板の表面上に水あか(スケール)が堆積して、水温に比べて加熱板の運転温度が上がってしまうような場合に対して許容度が広い点である。また、本実施形態では、蒸気スイッチそのものの形状や制御装置に既存の構成要素を使うこともできる。制御装置は、空だきするのを防ぐために引き続き必要とされる。本実施形態では、例えば、標準的なU17制御装置を用いてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、適切な時点で水温を感知するための比較的厳しい許容誤差を有するバイメタルが不要となる。それ以外の点では、本実施形態の動作は前述の実施形態の動作と同一である。
【0077】
図8は、さらに別の実施形態による供給室を示す。これは、図5で示した供給室を変形したものである。前述の実施形態と共通して、二重管入口354、356及び二重管出口374、376が備えられている。しかし、本実施形態では、室頂部358には、バイメタルを外した状態の本出願人によるR48蒸気スイッチの変形型390を収容する凹部が設けられている。このスイッチは、単にオーバーセンター式ラッチスイッチとして動作する。オーバーセンター式トリップレバーの「先端」392は、従来のようにバイメタルによって作動されるのではなく、回動可能に取り付けられたレバー394の端部によって作動される。回動レバー394のもう一方の端部には、下方に懸垂するアームが備えられ、そのアームの下端には、中空のフロート396が一体形成されている。
【0078】
使用時、加熱室(図示せず)内の水がほぼ沸騰し始めて上述の方法で導入管354、356を介して供給室308に吐出されると、加熱室内の水位が上昇し始める。これによってフロート396が持ち上がり、それによってアーム394が後ろに揺れてトリップレバー392に作用し、レバーが傾いて加熱室の発熱素子の電源をオフにする。このようにして加熱器をオフにする方法は、加熱板の温度を感知するセンサー(バイメタル等)を使うよりも確実である場合がある。というのも、加熱板の温度は、ある時間が経過すると、加熱室内に堆積したスケールによって影響を受ける可能性があるからである。また、このようなセンサーやバイメタルの許容誤差にも影響を受けにくいからである。
【0079】
図9は、別の実施形態を示す。この実施形態は、図8に示す実施形態と類似であるが、ここでの蒸気スイッチ490は完全に従来のものであり(つまり、バイメタルが保持されている)、フロートアームの代わりに蒸気管498によって、蒸気スイッチのバイメタルは供給室408の内部につながっている。したがって、本実施形態では、供給室内にある蒸気が、発熱素子をオフにするトリガとして使われる。上述の説明から分かるように、供給室408内の水を通る蒸気は比較的少ないが、これは、図7と比べて(すなわち、通常の蒸気管や蒸気スイッチ構成と比べて)蒸気スイッチ490が供給室に近い位置にあるということで補うことができる。
【0080】
図10は、本発明の別の実施形態の加熱室カバー部材500を示す。前述の実施形態と同様に、カバー部材は、下方にある加熱室と上方にある供給室とをつなぐ垂直方向に突出する管502を有する。カバー部材500はまた、専用の弁が嵌め込まれる開口504を有する。これについては、図12及び図13を参照しながらあとで詳しく説明する。
【0081】
カバー部材500の中央には、中空の円筒状突起506が設けられる。この突起の頂部には穴508が形成され、側壁周囲には一連の4つの垂直溝穴(slots)510が間隔を置いて配置されている。それに対応して弧状の阻流板(baffle)512が、各溝穴510とわずかに離れて向かい合わせに設けられている。溝穴510があることによって、水は垂直ではなく主に水平に貯水器を流れ出る。阻流板512は、溝穴に流れ込む流れを阻害する。これら溝穴と阻流板の両方の助けによって、貯水器内の水位が低い場合に過剰量の空気が加熱室に引き込まれる(これは、不所望なノイズが発生する大きな要因となる)のを防いでいる。
【0082】
図11で示すように、この弁構成は、前述の実施形態の構成とは異なる。本実施の形態では、弁部材514はボール弁ではなく、下向きに先細りした切頭円錐形状をしている。前述の実施形態のようなケージではなく、弁筐体は下方向に突出した3つの突起(ボス)516(このうちの2つが図示されている)から構成され、これらの突起には三つのローブから成る(tri-lobed)弁止め板518が取り付けられている。この弁構成は非常に頑丈で、弁部材が詰まるということがない。もちろん、他の形状の弁部材や他の筐体構成を用いてもよい。
【0083】
カバー部材の円状開口504(図10参照)についての説明に戻ると、この開口は使用時にシリコーンゴム製のグロメット弁(grommet valve)520によって閉じられる。以下、図12及び図13を参照しながらこの弁についてさらに詳しく説明する。弁の外周には一対の環状フランジ522、524が設けられ、それらの間に溝(チャネル)が規定され、従来のグロメットのように室カバー部材の円状開口504の縁を封止収容できるようになっている。弁の内部は、ドーム形のダイヤフラム526によって閉じられている。弁520は、ダイヤフラム526の凹面が貯水器側に、凸面が加熱室側になるように開口504に嵌め込まれる。
【0084】
ダイヤフラムには、4つの四分円フラップ(flaps)を規定する2つの直交する切れ目(slit)528がダイヤフラムを貫通するように形成されている。通常の状態では、4つのフラップは、ドーム状に形成されたシリコーンの本来の弾力性によって合わさって保持されている。これによって、加熱室内の水が沸騰しているあいだは液密なシールが提供される。ある一例では、沸騰中の加熱室内の圧力は、およそ14キロパスカル(kPa)である。しかし、加熱室が空になってその中の空気が冷えると、例えば−50kPa程度の真空状態となる。弁520の両側のこのような圧力差(貯水器側の大気圧プラス小さな水頭圧力と、加熱室側の−50kPの相対的な真空)によって、4つのフラップはそれぞれの本来の弾力性に抗って分離され、これによって水が貯水器から加熱室に入るようになる。この貯水器から加熱室へ流れる水の経路は、カバー部材500の中心に配置された弁の機能を補うものである。より大きな総表面積を通過させて水を吸引することで、ノイズの発生をさらに軽減することができる。
【0085】
弁520はまた、さらなる機能も行う。万一沸騰中に加熱室内の圧力が危険なレベルにまで上昇した場合、例えば、排出管がなんらかの理由で塞がれた場合、4つのダイヤフラムフラップはそれぞれ湾曲が逆になり、さらに分離されて、加熱室内の過剰な圧力を安全に貯水器内へ逃す(それによって利用者から遠ざける)ための機構を提供する。これは、例えば、およそ70kPaの圧力で起こる。
【0086】
図14は、2つの異なるモードで作動することのできる本発明の一実施形態を示す。図に示すように、装置602は全体的に、上部に注ぎ口604があり後部に取っ手がある等、通常の水差しケトルと似ている。容器内部の底部を形成する金属板の下面に設けられたシーズ線発熱素子(sheathed heating element)606も、従来のものである。しかし、従来のケトルとは異なり、容器の内部は、水平隔壁608によって2つの個々の部分に分割されている。上部分は貯水器610を構成し、下部分は加熱室612を構成する。隔壁608には弁614を設けて、水を加熱室に流入させることができるようになっている。導管616は、加熱室612から供給室618へ垂直に延びている。供給室は、前述の実施形態のものと機能的に同じであり、容器の上部に配置される。供給口620は、供給室612から下方に延びて容器の後ろから突き出ている。容器は、カップやマグカップを排水管の下におけるよう窪んでおり、容器からお湯が供給される場合にお湯を受けることができるようになっている。したがって、この容器は、前述の実施形態と全く同一の方法で少量の水を迅速に沸騰させて供給できるようにする構成要素を全て備えていることが分かる。
【0087】
しかし、本実施形態ではさらに、容器の取っ手の頂部に延びてつまみ(ノブ)624と結合する垂直部分を有する、L字状のレバーが設けられている。水平部分622bは、弁614の真上で突起形状で終端している。レバー622は、軸626を中心に容器の壁に取り付けられている。
【0088】
使用時、利用者は、つまみ624の位置によって2つの構成のうちの1つで容器を作動させることができる。つまみ624が後方位置にある場合、レバー622の末端は弁部材614から離れて持ち上げられているので、容器は前述の実施形態と全く同一の方法で、封止された加熱室内の少量の水を急速に沸騰させて供給するように動作することができる。
【0089】
しかし、利用者がつまみ624を前に押すと、レバー622の末端が弁部材622に当たって、弁が閉じるのを防ぐ。つまり、上記実施形態で述べられたように動作するのではなく、水は貯水器610と加熱室612との間を自由に循環することができるので、加熱器606は、単に容器内の全ての水(つまり、加熱室612と同様に貯水器610内の水も全て)を加熱する。これは、従来のケトルの動作と似ている。当技術分野では周知のように、蒸気スイッチや他の沸騰検知器を使うこともできる。一旦加熱又は沸騰すると、容器を持ち上げて注ぎ口604から水をそそぐことができる。したがって、本実施形態では、大幅にコストを追加することなく、2つの目的に使用することができる器具を実現することができる。
【0090】
以下、図15〜20を参照して、本発明のさらに別の実施形態について説明する。図15は、本発明による湯供給器の主要な内部部品を示す。図の下側には加熱室902を示し、上側には供給室904を示す。分かりやすくするために、各図では器具本体の図示は省略されているが、使用時には、加熱室及び供給室は筐体内に設けられ、加熱室902の上に貯水器を形成する。この図では供給口906が示されているが、供給口は使用時には筐体から突き出ている。参照符号907によって、前述の実施形態のものと類似のフロート弁装置が概略的に示されている。
【0091】
図から分かるように、2本の管が加熱室902の内部と供給室904の内部とをつないでいる。2つの管のうち太いほうの管は、加熱室用の排出導管908であり、前述の実施形態のように、この導管を通って加熱された水が供給室904に上昇し、注ぎ口906から供給される。もう一方の管は通気管910であり、この機能については、後の説明で明らかにする。
【0092】
図16は、供給室904を後ろから見た図を、加熱室902の縦断面と共に示す。前述の実施形態のように、加熱水用の排出導管908は、加熱室902内を加熱室の底部を形成する加熱板912に向かって延びている。これは、前述の実施形態と同様である。通気管910は、加熱室の屋根の隆起部分916に形成された狭い開口914に通じている。
【0093】
図17及び図18はそれぞれ、供給室の下部904a及び上部904bの斜視図である。最初に図17を見ると、右上の角には、垂直に延びた上昇管918があり、加熱室からの導水管908に通じている。垂直上昇管918の一部を間隔をあけて取り囲んでいるのは、弧状の壁920であり、上昇管918からの流れを遮る堰を形成して、供給室の側壁とともに、導入上昇管918付近に少量の水を保持する役割を果たす。導入上昇管には小さな溝穴(slit)922が設けられ、供給室904aの床面から堰920の高さよりも低い高さにまで延びている。したがって、この溝穴922から、堰920の後ろに保持された水が導管908を下降して再び加熱室902に流出する。
【0094】
供給室下部904aの左上の角には、図16に示す通気管910に接続された、もう一つの細い上昇導入管924が設けられている。通気上昇管924の前には、弧状の堰926が同様に設けられ、また、この上昇管924にも溝穴928が同様に形成される。ただし、この場合の溝穴は、対応する堰926の高さよりも上の高さまで垂直に延びている。
【0095】
供給室下部904aの前部の底面932には、加熱水を供給する吐出口906に通じる開口930が設けられる。図から分かるように、供給室932の底面は、後方から供給開口930に向かって下降するように傾斜している。供給室下部904aのほぼ中央には、煙突部(chimney section)934が一体成形されている。この煙突部は、供給室上部904bの合致する煙突部936(図18)と共に、供給室904を貫通し、その内部とは封止された通路を形成する。この通路の目的は、供給室上部904bの上に取り付けられた蒸気スイッチ(図示せず)の一部を形成するスナップ動作式バイメタル作動装置へ通気できるようにすることである。
【0096】
図18に示す供給室上部904bは、大まかに言うと、下部904aの蓋となって密閉空間を提供する。直角状の垂直阻流板938は、入口堰920よりも外側に、ただし、垂直方向には入口堰920には達しないように、供給室上部904bの内部の屋根から下方に懸垂している。この構成は、図19の組み立てられた状態の供給室の断面図により明らかに示されている。
【0097】
通気上昇導入管924の真上の供給室上部940bの屋根には、開口940が設けられている。これは、図20の組み立てられた状態の供給室の断面図により明らかに示されている。
【0098】
以下、図16〜図20に示す実施形態の動作を、特に前述の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0099】
最初に、貯水器からフロート弁装置907を通って加熱室902に水が流れる。加熱室902内の水が排出導管908の下端を覆ったとしても、通気管910が空気を加熱室902から逃すことができるので、水は弁907を通ってスムースに流入することができる。
【0100】
前述の実施形態のように、加熱室902内の水は加熱器912によって加熱されるが、この段階では、通気管910は、加熱室902内部の圧力上昇を抑えることにより、導管908から供給室904へ冷水が早く吐出されないように補助する。しかし、加熱が進むにつれ、加熱室902内の圧力は上昇し、多少の水は導管908を上昇し供給室904へ流れる。最初にゆっくりと吐出される水はおそらく沸騰していないが、入口堰920があることによって、この初期の「漏れ(dribble)」は供給室の主要部へ入らない。逆に、この水は堰920の後ろに保持される。加熱室内の水が沸騰すると、大量の水が導管908を上昇し導入上昇管918へ流れ、上昇管918の頂部から供給室上部904bの屋根と直角阻流板938とによって形成された空間内へ噴出する。この空間から、沸騰水は垂直阻流板938の内側縁を流れ落ちて供給室の主要部に入る。この主要部では、水は吐出開口930に向かって流れ、そこから吐出口906を通って流れ出る。したがって、他の実施形態と同様に、供給室の構成は、加熱室から吐出され急速に流入する沸騰水と、吐出906からのよりスムースでより制御された流れとを効果的に分離するようになっていることが分かる。
【0101】
少なくとも加熱室902からの出力が最大の間は、導管908から供給室へ流れる沸騰水の流量は吐出口906からの流出量よりも多くなり、供給室は沸騰水で満たされ始める。したがって、加熱室から沸騰水と共に排出される蒸気は、供給室内の水を少なくとも部分的に通過する。
【0102】
導水管908や、場合によっては通気管910を押し上げられたぬるい水は、各上昇管918、924から漏れる傾向があり、それぞれ堰920、926によって貯留される。供給が終了し、加熱室内の圧力が減少すると、この水は水導入上昇管918及び通気上昇管924のそれぞれの溝穴(slot)922、928を通って再び加熱室に流出する。つまり、この初期の水の漏れによって、吐出口906から供給される水の温度が下がることはない。
【0103】
図15では、加熱室902の上面に圧力放出弁(例えば、図15には示していないが、前述の実施形態に関連して述べたタイプのもの)を収容するための穴を示しているが、通気管910は、圧力放出弁を別途必要としなくてもよい。
【0104】
当業者には明らかなように、上記実施形態は、本発明を実施しうる数多くの可能な方法のうちのいくつかの例にすぎない。例えば、上記実施形態では沸騰水を生成する場合について説明したが、お茶やコーヒー、あるいは飲み物に使われる加熱乳等の醸造した飲み物など、他の液体を加熱する場合にも本発明は適用可能である。さらに、上記実施形態ではいくつかの有利な特徴を組み合わせているが、これらの特徴全てを一緒に備えていることは必須であるとはみなされていない。例えば、サイフォン出力構成や供給室は、たとえ蒸気が供給室内の水を通る構成と共に用いなくとも、有利である。同様に、二重作用の圧力除去弁も、通気孔や堰と同様に、他にも数多くの用途が考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱室と、供給室と、前記加熱室から前記供給室の入口へ水を搬送する導管とを備え、
沸騰に伴う圧力の上昇によって、加熱された水が前記導管へと流れ、さらに前記供給室へと流れるように構成されている、計測された量の水を沸騰するまで加熱する装置。
【請求項2】
加熱室と、供給室と、前記加熱室から前記供給室の入口へ液体を搬送する導管とを備え、
供給前に前記導管からの蒸気が前記供給室内に保持された水を通るように前記入口が構成されている、計測された量の水を加熱する装置。
【請求項3】
前記装置は注ぎ口を備え、
前記供給室は穴を備え、
前記穴は前記注ぎ口に通じており、水が前記穴を通って前記供給室から流出できる請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記供給室は、前記供給室内の液体が所定レベルに達するとその液体を供給するように構成されている請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記供給室は、サイフォン装置を備え、
水が前記所定レベルに達するとサイフォンが作動して、前記供給室内の液体を流出しつづける請求項3に記載の装置。
【請求項6】
液体加熱室と、液体供給室と、加熱された液体を前記加熱室から前記供給室へ移送するための手段とを備え、
前記供給室内の液体が所定レベルに達するとサイフォンを作動させるように構成された前記供給室の出口をさらに備えている液体加熱装置。
【請求項7】
前記サイフォンは、所定量が供給されるまで液体を供給し続ける請求項4又は5に記載の装置。
【請求項8】
前記サイフォン装置は、前記サイフォンを停止させる手段を備えている請求項5〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
吐出口と、供給開始後に前記吐出口から水が流れるのを防止する手段とを備えている、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記供給室は、その上部に1つ又はそれ以上の通気口を備えている、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記供給室の入口に堰(weir)を備えている、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記堰の内容物を流出させる流出手段をさらに備えている請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記流出手段は、前記加熱室に戻るように流出するように構成されている請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記流出手段は、前記供給室の導入管の溝孔(slit)を含む請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
加熱器は、前記加熱室の底面を形成する、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記加熱室と選択的に流体流通する液体貯水器を備えている、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記貯水器は、前記加熱室に隣接する請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記加熱室は、より大きい液体貯水器の細分化された一部を備え、必要な場合に前記貯水器から選択的に液体を前記加熱室へ流すことができる請求項17に記載の装置。
【請求項19】
選択的に流体流通する手段は、少なくとも一部が開閉式(retractable)になっている壁(wall)、仕切り(divider)、あるいは阻流板(baffle)を備えている請求項16、17及び18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記加熱室は、前記貯水器よりも下方にある請求項16〜19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記貯水器は、着脱可能である請求項16〜20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
前記加熱室の壁に弁を備えている請求項16〜21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
前記弁は、前記加熱室が所定レベルにまで満たされると閉じられる請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記弁は、浮力を有するように構成されている請求項22又は23に記載の装置。
【請求項25】
前記弁は、下方向に細くなっている請求項22、23又は24に記載の装置。
【請求項26】
前記弁は、前記加熱室の圧力が上昇するにつれ弁を閉じるように構成されている請求項22〜25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
前記弁は、前記貯水器と前記加熱室とを分離する壁に孔(orifice)を備えている請求項22〜26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
前記弁入口の周辺には、1つ又はそれ以上の阻流板(baffle)が設けられている請求項22〜27のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
加熱中に前記貯水器と前記加熱室との流体流通を維持するための手段を備えている請求項16〜28のいずれかに記載の装置。
【請求項30】
加熱中に1つあるいは前記弁を選択的に開いた状態にしておくための手段を備えている請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記貯水器は、着脱可能である請求項16〜30のいずれかに記載の装置。
【請求項32】
前記供給室は、前記加熱室の上方にある、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項33】
前記加熱室及び前記供給室は容器の下部及び上部にそれぞれ設けられ、前記容器はそれらの間に前記貯水器を規定する請求項16〜31のいずれかに記載の装置。
【請求項34】
前記加熱室は、通気手段を備えている、先行する請求項のいずれかに記載の装置又は容器。
【請求項35】
前記通気手段は、大気に開口している請求項34に記載の装置又は容器。
【請求項36】
前記通気手段は、器具内部の空域に通気するように構成されている請求項34又は35に記載の装置又は容器。
【請求項37】
前記通気手段は、前記供給室に通気するように構成されている請求項34〜36のいずれかに記載の装置又は容器。
【請求項38】
前記通気手段は、前記加熱室の上部から通気するように構成されている請求項34〜37のいずれかに記載の装置又は容器。
【請求項39】
前記供給室内において水、蒸気、昇温、あるいは昇圧のうち少なくとも1つの存在に反応して前記加熱室内の前記加熱器をオフにするための手段を備えている、先行する請求項のいずれかに記載の装置又は容器。
【請求項40】
蒸気感応式作動装置(steam-sensitive actuator)を使用して前記加熱器をオフにする、先行する請求項のいずれかに記載の装置又は容器。
【請求項41】
前記加熱室内で発生した蒸気が当たるように前記加熱室と気体連通した蒸気スイッチを備えている、先行する請求項のいずれかに記載の装置又は容器。
【請求項42】
前記加熱室は、前記加熱室内の圧力がしきい値を超えると開く圧力除去弁を備えている、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項43】
前記圧力除去弁は、前記装置内部の加圧されていない部分に過剰圧力を逃すように構成されている請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記圧力除去弁は、前記加熱室に水を流すように構成されている請求項42又は43に記載の装置。
【請求項45】
前記圧力除去弁は、その両側にどちらの方向であれ圧力差がある場合に開くように構成されている請求項43、43又は44に記載の装置。
【請求項46】
前記圧力除去弁は、一方向では他方向よりも低い圧力差で開くように構成されている請求項45に記載の装置。
【請求項47】
加熱室と、液体貯水器と、それらの間の弁とを備え、
前記弁は、その両側のしきい値圧力差に反応して開き、前記加熱室と液体貯水器との間に流体が流通するように構成され、
一方向の前記しきい値圧力差は他方向よりも高い、液体加熱容器。
【請求項48】
前記弁は、内部に少なくとも1つの切れ目(slit)が形成されたドーム形の弾性ダイヤフラムを備えている請求項42〜47のいずれかに記載の装置又は容器。
【請求項49】
前記圧力除去弁は、前記貯水器と前記加熱室との間に前記ダイヤフラムの凹側が前記貯水器に面した状態で設けられる請求項48に記載の装置又は容器。
【請求項50】
液体受室と電気発熱素子とを備え、
前記液体受室内の全ての液体を加熱するように前記発熱素子が作動することができる第1の構成と、加熱室が規定されて、その中で前記発熱素子がより少量の液体を加熱することができる第2の構成とを有し、
前記第1及び第2の構成を切り換えるための手段をさらに備えている液体加熱装置。
【請求項51】
前記加熱室と前記液体受室の残りの部分との間に隔壁を備え、それらの間に弁を設けて前記加熱室に選択的に液体を流すことができる請求項50に記載の装置。
【請求項52】
加熱中に前記弁を選択的に開いた状態にしておくための手段を備えている請求項51に記載の装置。
【請求項53】
前記加熱室内の水温が90℃に達すると加熱器の電源を切るように構成されている制御手段を備えている、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項54】
加熱室と、前記加熱室内の水を加熱する発熱素子と、所定温度に達すると前記発熱素子の電源を切るように構成された温度検知手段とを備え、
前記所定温度は、前記発熱素子がオフにされたとき水はまだ沸騰していないが、前記発熱素子内の余熱でその水を沸騰するまで加熱し続けるのに十分な温度に設定されている、計測された量の水を沸騰させる装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2011−507650(P2011−507650A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540172(P2010−540172)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004252
【国際公開番号】WO2009/081159
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(503052542)ストリックス リミテッド (7)
【Fターム(参考)】