説明

液体収容体

【課題】 空気室を形成するためのコストアップを招くことなく、液体収容室内の空気が熱膨張しても液体を空気室に貯留して外部への漏洩を防止することができ、また、空気室への液体の残留による液体の浪費を招くことがない液体収容体を提供する。
【解決手段】 本発明のインクカートリッジ1は、インク収容室7を外部に連通させる大気開放流路11と、大気開放流路11の途中に設けられた空気室13とを備え、空気室13は、インク収容室7内にインク5を貯留可能な空間として区画形成され、大気開放流路11は、一端15aがインク収容室7内の底壁7a内面に接近した位置に開口し他端15bが空気室13の底壁13aを貫通し底壁13a内面に接近した位置に開口する下部開放流路15と、一端17aが空気室13の天井壁13b内面に接近した位置に開口し他端17bが天井壁13bを貫通して外部に開口した大気開放孔である上部開放流路17と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器側の収容体装着部に着脱可能に装着される容器本体内に、大気開放流路に浸入した液体を貯留可能な空気室を備える液体収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
液体収容体として、例えばインクジェット式プリンタに使用されるインクカートリッジが挙げられる。インクジェット式プリンタ用のインクカートリッジは、印刷ヘッドに供給するインクを収容しているインク収容室が容器本体に設けられ、使用の際には所定位置のカートリッジ装着部に着脱可能に嵌合装着される。そして、インク収容室内に収容されたインクは、ホストコンピュータから送られた印刷データに応じて駆動する印刷ヘッドに供給され、印刷ヘッドに設けられたノズルによって用紙等の被印刷物上の目標位置に噴射される。
【0003】
これまで、インクジェット式プリンタに装着される大気開放タイプのインクカートリッジとして、プリンタ側のカートリッジ装着部に着脱可能に装着される容器本体内に、インクを収容するインク収容室と、インク収容室に連通して設けられカートリッジ装着部のインク受け部に接続されるインク供給孔と、インク収容室を外部に連通させてインク収容室内のインクの消費に伴って外部の空気をインク収容室内に導入する大気開放流路と、この大気開放流路の途中に設けられて大気開放流路に浸入したインクを貯留可能な空気室とを備えた構成のものが、各種提案されている。
空気室は、環境温度の変化等でインク収容室内の空気が熱膨張し、この空気の熱膨張によってインク収容室内のインクが大気開放流路を逆流するとき、インクが外部に漏洩することを防止するために設けられている。
【0004】
このようなインクの漏洩防止のための空気室は、例えば、カートリッジが傾斜した時にも、インク収容室への空気導入機能が損なわれることがないように、大気開放流路との接続位置等に工夫が要求される。
また、インク収容室内の空気の熱膨張によって逆流するインク液量を収容し得る十分な容積を確保しておくことも重要となり、容積確保等にも工夫が必要とされる。
【0005】
このような空気室を備えるインクカートリッジとして、空気室はインク収容室の外部の下方位置に独立して設けて、空気室とインク収容室とを専用の空気導入路で連通させるとともに、空気室は比較的に大きな面積を持つ両側壁を気体の通過は許容するが液体は通過させない気液分離膜で形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−209847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、空気室の隔壁に使用した気液分離膜は、一旦インクが接触すると、そのインクの接触域は空気の通過性が低下するため、インク収容室への通気性が当初よりも低下してしまい、インク収容室への通気性の低下が円滑なインク供給を妨げる虞があった。
【0008】
さらに、比較的に大きな面積の気液分離膜を空気室の両端の隔壁として機能させるため、気液分離膜を平坦な壁状に安定支持する支持構造が必要になって、空気室の構成部品の増加が、組立性の悪化やコストアップを招いてしまう。
また、空気室をプリンタ側に設けた場合、プリンタとインクカートリッジ間で大気開放流路を気密に接続する必要があり、接続構造を形成するためのコストアップを招くこととなる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、空気室を形成するためのコストアップを招くことなく、液体収容室内の空気の熱膨張によって液体が大気開放流路を逆流しても、逆流した液体を空気室に貯留して外部への漏洩を防止することができ、また、空気室に貯留した液体は液体収容室内の空気の熱収縮時に速やかに全量を液体収容室に戻すことができて、熱膨張・収縮のサイクルが繰り返されても、空気室への液体の残留による液体の浪費を招くことがない液体収容体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明に係る液体収容体は、機器側の収容体装着部に着脱可能に装着される容器本体と、前記容器本体内に設けられ液体を収容する液体収容室と、前記液体収容室に連通して設けられ前記機器側の液体受け部に接続される液体供給孔と、前記液体収容室を外部に連通させ、前記液体収容室内の液体の消費に伴って外部の空気を前記液体収容室内に導入する大気開放流路と、前記大気開放流路の途中に設けられて前記大気開放流路に浸入した液体を貯留可能な空気室と、を備える液体収容体であって、前記空気室は、前記液体を貯留可能であり、前記大気開放流路は、一端が前記液体収容室の底壁内面近傍に開口し他端が前記空気室の該底壁内面に接近した位置に開口する下部開放流路と、一端が前記空気室の天井壁内面に接近した位置に開口し他端が外部に開口した大気開放孔である上部開放流路と、を有することを特徴とする。
【0011】
このような構成の液体収容体によれば、液体を貯留した液体収容室内の空気の熱膨張によって液体が下部開放流路を逆流したときには、逆流した液体は、下部開放流路の開口位置に広がる空気室に貯留される。そのため、逆流した液体が、外部へ漏洩することを防止することができる。
また、天地逆の姿勢になっても、下部開放流路の液体収容室内への開口端が液体収容室内の液面位置よりも上方に突出するため、下部開放流路を経由する逆流が起こらず、液体が外部へ漏洩することを防止することができる。
また、下部開放流路の他端が空気室の底壁を貫通し底壁内面に接近した位置に開口しているため、空気室に貯留された液体は、機器の液体の消費による負圧吸引力ないしは、液体収容室内の空気の熱収縮時に、熱収縮に伴う負圧吸引力により、速やかに全量を液体収容室に戻すことができる。したがって、熱膨張・収縮のサイクルが繰り返されても、空気室への液体の残留による貯留液体の浪費を招くことがない。
【0012】
また、空気室は、液体収容室内の空間に区画形成されるもので、機器側の収容体装着部に特別な構造等が不要なため、構造及び構成を簡略化することができ、この構造及び構成の簡略化により、組立性の向上や、コスト低減を図ることができる。
【0013】
なお、本発明においては、大気開放孔は、前記液体収容室の天井壁側に開口していてもよいし、また、前記液体収容室の底壁側に開口していてもよい。
【0014】
また、本発明に係る液体収容体において、前記空気室は、前記液体収容室内の上部の少なくとも一端側の隅部を含んだ直方体形状に区画形成され、前記下部開放流路の両端の開口は、前記液体収容室および前記空気室内の同一方向の一隅に接近する位置に配置され、前記上部開放流路の一端側開口は、前記下部開放流路の他端が開口する隅部と対角位置の隅部に接近した位置に配置されていることが好ましい。
【0015】
このような構成の液体収容体によれば、例えば、液体収容体が横倒しの姿勢で放置された場合に、下部開放流路の液体収容室内の開口が液体収容室内に貯留されている液体中に没しているケースでは、液体収容室内の液体が下部開放流路を伝って空気室に流入するが、空気室を外部に連通させる上部開放流路は、上部開放流路に対して対角位置に位置しているため、空気室に流入した液体に接触することがなく、空気室に流入した液体が外部に漏出することはない。
一方、液体収容体が反対方向に横倒しになっていても、下部開放流路の液体収容室内の開口が液体収容室内に貯留されている液体の上方空間に位置するケースでは、液体収容室内の液体が下部開放流路を介して空気室に流れることがなく、この場合も、液体収容室内の液体が大気開放流路を伝って外部に漏出することがない。したがって、液体収容体がどのような姿勢になっても、液体収容室に貯留されている液体が外部に漏出することを防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る液体収容体において、前記液体収容室の天井壁の一部が前記空気室の天井壁となるように、前記空気室が前記液体収容室内の上部に区画形成されていることが好ましい。
【0017】
このような構成の液体収容体によれば、空気室が液体収容室の上方に位置する通常の使用状態では、液体収容室内の空気の熱膨張によって下部開放流路や上部開放流路を逆流する液体は、重力に逆らって各流路を上昇しなければならないため、逆流が起こりにくくなり、外部への漏出が起こり難くなる。また、空気室の区画は、天井壁が液体収容室と共通であることから、天井壁以外の隔壁を追加するだけで画成でき、空気室の区画形成を容易にすることができ、空気室のための追加構造の削減により、コストの低減を図ることができる。
また、空気室が液体を貯留する液体収容室の上部に位置しているため、空気室に貯留された液体は、液体収容室内の空気の熱収縮時に、熱収縮に伴う負圧吸引力と、重力の双方の作用により、速やかに全量を液体収容室に戻す作用を効果的に得ることができる。したがって、熱膨張・収縮のサイクルが繰り返されても、空気室への液体の残留による貯留液体の浪費を招くことがない。
【0018】
また、空気室は、液体収容室に連通した下部開放流路の他端開口と、外部に連通した上部開放流路の一端開口とを、上下に離間させて配置した単純構造の容器とすることができ、貯留する液体が接触する隔壁部に気液分離膜を使用する必要がないため、気液分離膜に液体が接触することで、通気性が低下することがない。したがって、液体収容室への通気性が途中で低下することがなく、液体収容室への良好な通気性を安定維持することで、円滑な液体供給を長期に渡って安定維持することができる。
【0019】
また、本発明に係る液体収容体において、前記空気室の容積が、前記液体収容室の容積の10%以上かつ30%以下に設定されていることが好ましい。
【0020】
液体収容体が使用環境で晒される温度変化の範囲を考慮し、環境が整備された室内で使用される場合(温度変化が10℃〜40℃の範囲)を想定した場合には、その温度変化を許容して液体の漏れを防止し得る空気室の容積は液体収容室の全容積の約10%程度となる。また、環境が整備されていない最悪の場合(温度変化が−30℃〜60℃の範囲)を想定した場合には、その温度変化を許容して液体の漏れを防止し得る空気室の容積は液体収容室の全容積の約30%程度となる。したがって、通常は、上記構成に示したように、空気室の容積を液体収容室の容積の10%〜30%の範囲に設定しておけば、温度変化によって最大限に逆流が生じたときでも、空気室に逆流した液体が空気室から溢れて外部に漏洩することがなく、しかも、空気室が過大となって液体収容体の大型化を招くこともない。
【0021】
また、本発明に係る液体収容体において、前記上部開放流路の他端である前記大気開放孔が、封止フィルムで封止されていることが好ましい。
【0022】
このような構成の液体収容体によれば、液体収容体が製造されてからユーザが使用するまでの期間は封止フィルムにより大気開放流路が完全に封止されているため、保管や搬送中に大気開放流路から液体が漏洩することを確実に防止でき、また、大気開放流路を介して液体収容室中の液体の水分蒸発が防止できるため、液体の濃度上昇による凝固等の不都合の発生を防止することができる。
【0023】
また、本発明に係る液体収容体において、前記上部開放流路に、気体の通過を許容し液体の通過を許容しない気液分離膜が設けられていることが好ましい。
【0024】
このような構成の液体収容体によれば、想定した温度変化の幅を上回る温度変化をして空気室に充満した逆流液体にさらに圧力がかかる場合でも、気液分離膜によって液体の外部への漏洩を防止することができ、漏洩防止に対する信頼性が向上する。また、温度変化による熱膨張で下部開放流路を逆流した液体が空気室に残留している状態で、液体収容体が横倒しになって、空気室内の上部開放流路の開口が残留する液体中に没するような事態が発生しても、液体が上部開放流路から外部に漏洩することがなくなり、漏洩防止に対する信頼性が向上する。
【0025】
また、本発明に係る液体収容体において、前記液体収容室が、当該液体収容室内を仕切る隔壁によって第1の液体収容室と第2の液体収容室に区画され、これらの第1及び第2の液体収容室相互をそれぞれの底壁に接近した位置で連通させる連結流路を備え、これら第1及び第2の液体収容室の一方が前記下部開放流路を介して前記空気室に連通していることが好ましい。
【0026】
このような構成の液体収容体によれば、液体収容室への当初の液体貯留量を、第1及び第2の液体収容室の一方が完全に満たされ、さらに他方の液体収容室の一部が液体により占有されるように設定すると、逆流時の漏洩防止のために確保する空気室の容積は、他方の液体収容室に貯留される液体の容積分に対応させるだけでよく、液体収容室が分割されていない場合と比較すると、空気室の容積を低減させて、液体収容体の小型化を図ることができる。
【0027】
また、本発明に係る液体収容体において、前記第1の液体収容室及び第2の液体収容室は、容積が略等しくなるように設定されていることが好ましい。
【0028】
このような構成の液体収容体によれば、漏洩防止のために確保する空気室の容積を、液体収容室が分割されていない場合と比較して、約2分の1に低減させることができ、空気室の容積低減による液体収容体の小型化が図り易くなる。
【0029】
また、本発明に係る液体収容体において、前記連結流路の内径が、メニスカスにより気泡の通過を阻止する大きさに設定されていることが好ましい。
【0030】
このような構成の液体収容体によれば、液体収容室への当初の液体貯留量を、例えば、第1及び第2の液体収容室の内、下部開放流路が開口している側の液体収容室はその容積の一部が液体により占有され、他方の密閉状態の液体収容室は全容積が完全に液体で満たされるように、液体の貯留量を設定した場合、下部開放流路が開口している側の液体収容室の液体を使い切るまでは、他方の密閉状態の液体収容室に気泡が入り込むことを防止できる。 すなわち、仮に、連結流路の内径がメニスカスによる表面張力を発生できないほど大きいと、下部開放流路が開口している側の液体収容室の液体を使い切る以前に、一方の液体収容室から他方の密閉状態の液体収容室に気泡が入り込んで、熱膨張時に逆流する液体量が増大して、空気室は液体収容室が分割されていないときと同様の容積が必要となってしまうが、そのような不都合の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る液体収容体では、液体収容室内の空気の熱膨張によって液体が大気開放流路を逆流しても、逆流した液体を空気室に貯留して外部への漏洩を防止することができる。また、天地逆の姿勢になっても、下部開放流路の液体収容室内への開口端が液体収容室内の液面位置よりも上方に突出するため、下部開放流路を経由する逆流が起こらず、液体が外部へ漏洩することを防止することができる。
また、下部開放流路の他端が空気室の底壁を貫通し底壁内面に接近した位置に開口しているため、空気室に貯留された液体は、液体収容室内の空気の熱収縮時に、速やかに全量を液体収容室に戻すことができる。したがって、熱膨張・収縮のサイクルが繰り返されても、空気室への液体の残留による貯留液体の浪費を招くことがない。
また、空気室は、液体収容室内の空間に区画形成されるものであり、空気室を形成するためのコストアップを招くことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係る液体収容体の実施の形態の例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1から図5は、本発明に係る液体収容体の第1の実施の形態としてのインクカートリッジを示したものであって、図1は第1の実施の形態となるインクカートリッジの概略構成を示す縦断面図であり、図2は図1のII−II線断面図であり、図3は図1に示したインクカートリッジの液体収容室内のインクが空気の熱膨張によって下部開放流路を逆流して空気室に貯留された状態の説明図であり、図4は図1に示したインクカートリッジが一側に横倒しになって液体収容室内のインク液が空気室に流入した状態の断面図であり、図5は図1に示したインクカートリッジが図4の場合とは逆側に横倒しになった時の液体収容室内のインク液の状態を示す断面図である。
【0033】
本実施の形態の液体収容体は、一例として、インクジェット式プリンタにおいて、液体噴射部である印刷ヘッドが搭載されたキャリッジ上のカートリッジ装着部に装着されるインクカートリッジである。
本発明の第1の実施の形態として示したインクカートリッジ1は、印刷ヘッドへのインク供給を担うもので、外形形状が略直方体形状に形成されてプリンタ側の収容体装着部(カートリッジ装着部)に着脱可能に装着される容器本体3内に、インク(液体)5を収容するインク収容室(液体収容室)7と、このインク収容室7に連通して設けられプリンタ側のインク受け部(液体受け部)に接続されるインク供給孔9と、インク収容室7を外部に連通させてインク収容室7内のインク5の消費に伴って外部の空気をインク収容室7内に導入する大気開放流路11と、この大気開放流路11の途中に設けられて大気開放流路11を逆流したインク5を貯留可能な空気室13とを備えている。
【0034】
なお、インク供給孔9は、通常、未使用状態の時は、先端開口部が封止フィルムによって封止されている。この封止フィルムは、プリンタのキャリッジ等に設けられているカートリッジ装着部に装着した際、カートリッジ装着部側のインク供給針により突き破られて封止が解除され、インクの供給が可能になる。
【0035】
空気室13は、インク収容室7内の上部の空間(すなわち、空気が流入している空間)に、インク5を貯留可能な密封空間として、区画形成されている。この空気室13の形成位置は、インク収容室7内の上部の空間の少なくとも一端側の隅部7cを含んだ領域(すなわち、一端側に偏った領域)で、形状は直方体形状である。
【0036】
また、本実施の形態の場合、インク収容室7の天井壁7bの一部が前記空気室13の天井壁13bとなるように、空気室13を、インク収容室7内の上部寄りに形成している。そして、空気室13の容積は、インク収容室7の全容積V1の10%以上かつ30%以下の範囲内に設定されている。
【0037】
また、大気開放流路11は、下部開放流路15と、上部開放流路17とに分割されて形成されている。
下部開放流路15は、一端15aがインク収容室7内の底壁7aの内面に接近した位置に開口し、他端15bが空気室13の底壁13aを貫通し該底壁13aの内面に接近した位置に開口している。
上部開放流路17は、一端17aが空気室13の天井壁13bの内面に接近した位置に開口し、他端17bが天井壁13bを貫通して外部に開口した大気開放孔として形成されている。
【0038】
そして、下部開放流路15の両端の開口15a,15bは、図1に示すように、インク収容室7内及び空気室13内の同一方向の一隅7cに接近する位置に設定されている。また、上部開放流路17の一端側開口17aは、図2に示すように、空気室13の矩形断面内で、下部開放流路15の他端15bが開口する隅部13cと対角位置の隅部13dに接近した位置に設定されている。
なお、本実施の形態の場合、空気室13の一方の隅部13cは、インク収容室7における一隅7cに重なっている。
【0039】
本実施の形態では、図1に示すように、上部開放流路17の他端(大気開放孔)17bを、封止フィルム21で封止している。
【0040】
このようなインクカートリッジ1によれば、インク5を貯留したインク収容室7内の空気の熱膨張によって貯留インク5が下部開放流路15を逆流したときには、逆流したインク5は、図3に示すように、下部開放流路15の開口位置に広がる空気室13に貯留される。そのため、逆流したインク5が、外部へ漏洩することを防止することができる。
また、インクカートリッジ1をカートリッジ装着部から外した時等に、天地逆の姿勢とされても、下部開放流路15のインク収容室7内への開口端が、インク収容室7内の液面位置よりも上方に突出するため、下部開放流路15を経由する逆流が起こらず、この場合も、インク5が外部へ漏洩することを防止することができる。
【0041】
また、下部開放流路15の他端15bが空気室13の底壁13aを貫通し該底壁13aの内面に接近した位置に開口しているため、空気室13に貯留されたインク5は、インク収容室7内の空気の熱収縮時に、熱収縮に伴う負圧吸引力と、重力の双方の作用により、速やかに全量をインク収容室7に戻すことができる。したがって、熱膨張・収縮のサイクルが繰り返されても、空気室13へのインク5の残留による貯留インク5の浪費を招くことがない。
【0042】
また、このインクをインク収容室7に戻す作用は、空気室13がインク5を貯留するインク収容室7の上部に位置していることによって、さらに効果的に機能する。なお、空気室13がインク収容室7の下部にある場合であっても、下部開放流路15の他端15bが空気室13の底壁13aを貫通し該底壁13aの内面に接近した位置に開口していれば、同様の効果が得られる。
【0043】
また、空気室13は、インク収容室7に連通した下部開放流路15の他端開口15bと、外部に連通した上部開放流路17の一端開口17aとを、上下に離間させて配置した単純構造の容器で、貯留するインク5が接触する隔壁部に気液分離膜が使用されていないため、空気室13の隔壁にインク5が接触することで、通気性が低下することがない。
したがって、インク収容室7への通気性が途中で低下することがなく、インク収容室7への良好な通気性を安定維持することで、円滑なインク供給を長期に渡って安定維持することができる。
【0044】
また、空気室13は、インク収容室7内の上部の空間に区画形成されるもので、インク収容室7の外部に独立して空気室13を区画形成した従来品と比較すると、機器側の収容体装着部に特別な構造等が不要なため、構造及び構成を簡略化することができ、この構造及び構成の簡略化により、組立性の向上や、コスト低減を図ることができる。
【0045】
また、本実施の形態の場合、例えば、インクカートリッジ1が横倒しの姿勢で放置された場合に、下部開放流路15のインク収容室7内の開口15aがインク収容室7内に貯留されているインク5中に没している状態では、図4に示すように、インク収容室7内のインク5が下部開放流路15を伝って空気室13に流入するが、空気室13を外部に連通させる上部開放流路17は、上部開放流路17に対して対角位置に位置しているため、空気室13に流入したインク5に接触することがないため、空気室13に流入したインク5が外部に漏出することはない。
【0046】
一方、インクカートリッジ1が横倒しになっていても、図5に示すように、下部開放流路15のインク収容室7内の開口15aがインク収容室7内に貯留されているインク5の上方空間に位置するケースでは、インク収容室7内のインク5が下部開放流路15を介して空気室13に流れることがなく、この場合も、インク収容室7内のインク5が大気開放流路11を伝って外部に漏出することがない。
したがって、インクカートリッジ1がどちらの向きで横倒し状態になっても、インク収容室7に貯留されているインク5が外部に漏出することを防止することができる。
【0047】
また、本実施の形態のインクカートリッジ1では、空気室13がインク収容室7の上方に位置する通常の使用状態では、インク収容室7内の空気の熱膨張によって下部開放流路15や上部開放流路17を逆流するインク5は、重力に逆らって各流路を上昇しなければならないため、逆流が起こりにくくなり、外部への漏出が起こり難くなる。
また、空気室13の区画は、天井壁13bがインク収容室7と共通であることから、天井壁13b以外の隔壁を追加するだけで画成でき、空気室13の区画形成を容易にすることができ、空気室13のための追加構造の削減により、コストの低減を図ることができる。
【0048】
ところで、T1℃の空気がT2℃に温度変化したときの体積膨張率Aは、次の[1]式で表される。
A=(T2+273)/(T1+273) …[1]
インク収容室7内にインク5が充満していて、インク収容室7内に空気が全く存在していない時は、温度変化があっても、空気の熱膨張力が作用しないので、インク収容室7内に貯留しているインク5の逆流は、発生しない。また、インク収容室7内にインク5が残留していない空の状態では、インク収容室7内の空気が熱膨張をしても、インク5の逆流は発生しない。
インク5の逆流が発生するのは、インク収容室7内にインク5と空気の双方が貯留されている状態のときである。
【0049】
上記インク収容室7の全容積をV1、インク収容室7内に残留している空気体積をV2、インク収容室7内に貯留しているインク5体積をV3、とすると、次の[2]式が成立する。
V1=V2+V3 …[2]
そして、空気室13に逆流するインク5量が最大となるのは、インク収容室7内に残留している空気が熱膨張によりインク収容室7の全容積V1まで膨張し、これにより、インク収容室7内に貯留しているインク5の全量(V3)が全て空気室13に逆流した場合で、次の[3]式が成立する。
V2×A=V1 …[3]
上記の[2],[3]式から、
V3=(A−1)÷(A×V1) …[4]
【0050】
空気室13の容積をV3より大きく設定すると、逆流したインク5の漏洩は確実に防止できるが、空気室13内に無駄な空き空間が残る過大容積となって、インクカートリッジ1の大型化を招く虞がある。一方、空気室13の容積をV3未満に設定すると、逆流が最大量に達したときには、インク5が空気室13から外部に漏洩する虞がある。したがって、空気室13の容積は、V3に設定しておくのが最適である。
そこで、このインク収容室7の全容積V1と、空気室13に装備すべき最大容積V3の比をBとすると、
B=V3/V1 …[5]
となり、この[5]式に上記[4]式を代入すると、
B=(A−1)/A …[6]
となる。
したがって、インク収容室7が使用される環境の温度変化を設定し、その温度変化に対する体積膨張率Aを[1]式から求め、その体積膨張率Aを[6]式に代入することにより、その温度変化を許容してインク5の漏れを防止し得る空気室13の容積比Bを得ることができる。
【0051】
インクカートリッジ1が使用環境で晒される温度変化の範囲を、例えば、次の3通りに設定する。
第1の温度条件は、環境が整備された室内で使用される場合を想定したもので、温度変化が10℃〜40℃の範囲である。
第2の温度条件は、環境が整備されていない最悪の場合を想定したもので、例えば、温度変化が−30℃〜60℃の範囲である。
第3の温度条件は、第1の温度条件と第2の温度条件の中間的な範囲を想定したもので、温度変化が−20℃〜40℃の範囲である。
【0052】
第1の温度条件の時の体積膨張率Aは、[1]式にT1=40、T2=10を代入して、A=1.1060となる。このときの空気室13の容積比Bは、[6]式から、B=0.0958となる。したがって、この温度条件のとき、空気室13の容積は、インク収容室7の全容積の約10%程度に設定すれば、漏洩が生じない最適なインクカートリッジ1が得られることになる。
【0053】
一方、第2の温度条件の時の体積膨張率Aは、[1]式にT1=60、T2=−30を代入して、A=1.3704となる。このときの空気室13の容積比Bは、[6]式から、B=0.2703となる。したがって、この温度条件のとき、空気室13の容積は、インク収容室7の全容積の約30%程度に設定すれば、漏洩が生じない最適なインクカートリッジ1が得られることになる。
【0054】
インクカートリッジ1が通常の使用環境で晒される温度変化の範囲は、上記の第1の温度条件の場合と、第2の温度条件の場合の間にあると考えられる。
したがって、通常は、上記実施の形態に示したように、空気室13の容積を、インク収容室7の容積の10%〜30%の範囲に設定しておけば、温度変化によって最大限に逆流が生じたときでも、空気室13に逆流したインク5が空気室13から溢れて外部に漏洩することがなく、しかも、空気室13が過大となってインクカートリッジ1の大型化を招くこともない。
【0055】
なお、好ましくは、第3の温度条件の時に、逆流したインク5が空気室13から溢れないように、空気室13の容積比を決定すると良い。第3の温度条件の時の体積膨張率Aは、[1]式にT1=40、T2=−20を代入して、A=1.3704となる。このときの空気室13の容積比Bは、[6]式から、B=0.1917となる。したがって、この温度条件のとき、空気室13の容積は、インク収容室7の全容積の約20%程度に設定すれば、漏洩が生じない最適なインクカートリッジ1が得られることになる。
【0056】
さらに、上記インクカートリッジ1では、インクカートリッジ1が製造されてからユーザが使用するまでの期間は封止フィルム21により大気開放流路11が完全に封止されているため、保管や搬送中に大気開放流路11からインク5が漏洩することを確実に防止でき、また、大気開放流路11を介してインク収容室7中のインク5の水分蒸発が防止できるため、インク5の濃度上昇による凝固等の不都合の発生を防止することができる。
なお、使用時の封止フィルム21の除去は、インクカートリッジ1を機器の収容体装着部に装着する前にユーザが手動で封止フィルム21を剥離除去する方法の他に、機器の収容体装着部側に封止フィルム21を破る封止解除針等を設けておく方法等が考えられる。
【0057】
図6は本発明に係る液体収容体の第2の実施の形態であるインクカートリッジの概略構成を示す縦断面図である。
この第2の実施の形態のインクカートリッジ23は、第1の実施の形態で示したインクカートリッジ1における上部開放流路17に、気体の通過を許容しインク5の通過を許容しない気液分離膜25を設けたもので、それ以外の構成は、第1の実施の形態のものと同一である。第1の実施の形態と同一の構成については、図中に同一符号あるいは相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略する。
【0058】
このような構成にすると、想定した温度変化の幅を上回る温度変化をしたために、空気室13に充満した逆流インク5にさらに圧力がかかる場合でも、気液分離膜25によってインク5の外部への漏洩を防止することができ、漏洩防止に対する信頼性が向上する。
また、温度変化による熱膨張で下部開放流路15を逆流したインク5が空気室13に残留している状態で、インクカートリッジ1が横倒しになって、空気室13内の上部開放流路17の開口が残留するインク5中に没するような事態が発生しても、インク5が部開放流路から外部に漏洩することがなくなり、漏洩防止に対する信頼性が向上する。
【0059】
図7は本発明に係る液体収容体の第3の実施の形態であるインクカートリッジの概略構成を示す縦断面図である。
この第3の実施の形態のインクカートリッジ31は、第1実施の形態のインクカートリッジ1におけるインク収容室7が、該インク収容室7内を垂直方向に仕切る隔壁32によって第1のインク収容室71と第2のインク収容室72に分割され、これらの第1及び第2のインク収容室71,72相互をそれぞれの底壁に接近した位置で連通させる連結流路33を備え、さらに、インク収容室7の一隅側に位置する第2のインク収容室72が下部開放流路15を介して前記空気室13に連通した構成で、大気開放流路11を構成している下部開放流路15や上部開放流路17の各開口端の位置や、空気室13の装備位置、空気室13の形状等は、第1の実施の形態と共通で良い。
【0060】
なお、この第3の実施の形態において、第1のインク収容室71及び第2のインク収容室72は、容積が略等しくなるように、隔壁32の位置等が寸法設定されている。
さらに、この第3の実施の形態において、連結流路33は、その内径が、メニスカスにより気泡の通過を阻止する大きさに設定されている。本実施形態では、連結流路33の一端33a及び他端33bは、それぞれ第1のインク収容室71及び第2のインク収容室72の底壁71a,72aの内面に接近した位置にてそれぞれ開口している。
【0061】
以上に説明した第3の実施の形態のインクカートリッジ31では、各インク収容室71,72への当初のインク貯留量を、図7に示すように、第1のインク収容室71が完全に満たされ、さらに第2のインク収容室72の一部がインク5により占有されるように設定すると、逆流時の漏洩防止のために確保する空気室13の容積は、第2のインク収容室72に貯留されるインク5の容積分に対応させるだけでよく、インク収容室が分割されていない場合と比較すると、空気室13の容積を低減させて、インクカートリッジ1の小型化を図ることができる。
なお、分割された第1及び第2のインク収容室71,72は、その底壁に接近した位置で連結流路33により連通して連通管として機能するため、第1のインク収容室71の底壁にインク供給孔9が設けられていれば、貯留しているインク5の全量をインク供給孔9から外部に供給することができ、貯留しているインク5の一部がインク供給孔9に流れずに未使用のまま残ってしまうということもない。
【0062】
また、上記インクカートリッジ31のように、第1のインク収容室71と第2のインク収容室72との容積を略等しく設定すると、漏洩防止のために確保する空気室13の容積を、インク収容室7が分割されていない場合と比較して、約2分の1に低減させることができ、空気室13の容積低減によるインクカートリッジ1の小型化が図り易くなる。
【0063】
さらに、本実施の形態のように、連結流路33の内径がメニスカスの表面張力を利用できる大きさに設定されていると、各インク収容室71,72への当初のインク5の貯留量を、例えば、下部開放流路15が開口している側の第2のインク収容室72はその容積の一部がインク5により占有され、他方の密閉状態の第1のインク収容室71は全容積が完全にインク5で満たされるように、インク5の貯留量を設定した場合、下部開放流路15が開口している第2のインク収容室72のインク5を使い切るまでは、他方の密閉状態の第1のインク収容室71に気泡が入り込むことを防止できる。
【0064】
すなわち、もしも、連結流路33の内径がメニスカスの表面張力を発生できないほど大きいと、下部開放流路15が開口している第2のインク収容室72のインク5を使い切る以前に、第2のインク収容室72側から第1のインク収容室71に気泡が入り込むことで、熱膨張時に逆流するインク液量が増大して、空気室13はインク収容室7が分割されていないときと同様の容積が必要となってしまうが、本実施の形態のようにすれば、そのような不都合の発生を防止することができる。
【0065】
図8は本発明に係る液体収容体の第4の実施の形態であるインクカートリッジの概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)の断面図と逆側からみた平面図である。
この第4の実施の形態のインクカートリッジ41は、第1の実施の形態のインクカートリッジ1における上部開放流路の形状を及び大気開放孔の位置を変更したものであり、その他の形状は第1の実施の形態と同様である。
【0066】
本実施の形態では、図8(a)及び図8(b)に示すように、上部開放流路87は、一端側開口87aが空気室13の天井壁13bの内面近傍においてインクカートリッジ41の厚み方向(図8の紙面垂直方向)に開口し、裏側に形成された蛇道形状の流路87cに連通している。流路87cは、距離を稼ぐために迂回を繰り返しながらインクカートリッジ41の底壁7aの方向に導かれ、他端87bが底壁7aを貫通して外部に開口した大気開放孔として形成されている。
【0067】
上部開放流路87の一端側開口87aは、図8(a)に示すように、空気室13の矩形断面内で、下部開放流路15の他端15bが開口する隅部13cと対角位置の隅部13dに接近した位置に設定されている。また、本実施の形態では、図8(b)に示すように、上部開放流路87の他端(大気開放孔)87bは、封止フィルム21で封止されている。
【0068】
本実施の形態では、大気開放孔となる大気開放流路87の他端87bを底壁7aの側に形成するように構成されている。したがって、天井壁7bの側に開口が形成されないように構成することができる。一般のインクカートリッジの場合、天井壁7bの外表面は内部のインクの種類や型番等を示す商品ラベル等が貼り付けられることが多いため、開口が形成されると、その美観が損なわれたり、ラベルの貼付面積が減少して視認性が劣ったりする可能性がある。しかしながら、本実施形態のように、下方に大気開放孔が形成されるように上部開放流路87を構成することにより、ラベルの貼付面積を十分に確保して視認性を向上させるとともに、違和感のない美しいインクカートリッジを提供することが可能となる。
【0069】
図9は本発明に係る液体収容体の第5の実施の形態であるインクカートリッジの概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)の断面図と逆側からみた平面図である。
この第5の実施の形態のインクカートリッジ141は、第4の実施の形態のインクカートリッジ41におけるインク収容室7を仕切壁132によって第1のインク収容室171と第2のインク収容室172の二つに分割したものである。ここで仕切壁132は、インク収容室7の底壁7aと天井壁7bとの間に略水平方向に沿って配置されており、したがって、本実施形態では、第1のインク収容室171と第2のインク収容室172が上下に形成された構成となっている。
【0070】
本実施の形態では、図9(a)及び図9(b)に示すように、上部開放流路87は、一端側開口87aが空気室13の天井壁13bの内面近傍においてインクカートリッジ141の厚み方向(図9の紙面垂直方向)に開口し、裏側に形成された蛇道形状の流路87cに連通している。流路87cは、距離を稼ぐために迂回を繰り返しながらインクカートリッジ141の底壁7aの方向に導かれ、他端87bが底壁7aを貫通して外部に開口した大気開放孔として形成されている。
【0071】
上部開放流路87の一端側開口87aは、図9(a)に示すように、空気室13の矩形断面内で、下部開放流路115の他端115bが開口する隅部113cと対角位置の隅部113dに接近した位置に設定されている。また、本実施の形態では、図9(b)に示すように、上部開放流路87の他端(大気開放孔)87bは、封止フィルム21で封止されている。
【0072】
下部開放流路115は、一端側開口115aが第1のインク収容室171の底壁を構成する仕切壁132の内面に接近した位置に開口し、他端側開口115bが空気室13の底壁13aを貫通し該底壁13aの内面に接近した位置に開口している。すなわち、下部開放流路115によって、第1のインク収容室171と空気室13とは、連通している。
【0073】
また、第1のインク収容室171と第2のインク収容室172とは、インク収容室間連通流路133によって連通している。インク収容室間連通流路133の一端側開口133aは、第2インク収容室172の底壁172aの内面に接近した位置に開口し、他端側開口133bは、第1インク収容室171の矩形断面内で、下部開放流路115の一端側開口115aが開口する隅部113cとは異なる位置で第1のインク収容室171の底壁を構成する仕切壁132の内面に接近した位置に開口している。
【0074】
本実施形態のように、インク収容室7が上下に2つのインク収容室171,172とに分割されているような場合であっても、空気室13に連通する下部開放流路115の一端側開口115aが第1のインク収容室171の底壁となる仕切壁132に接近して開口しており、他端側開口115bが空気室13の底壁13a近傍であって、上部開放流路87の一端側開口87aと対角線上に位置するように開口していれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施の形態では、第4の実施形態と同様に、大気開放孔となる大気開放流路87の他端87bをインク収容室7の底壁7aの側に形成するように構成されている。したがって、天井壁7bの側に開口が形成されないように構成することができる。一般のインクカートリッジの場合、天井壁7bの外表面は内部のインクの種類や型番等を示す商品ラベル等が貼り付けられることが多いため、開口が形成されると、その美観が損なわれたり、ラベルの貼付面積が減少して視認性が劣ったりする可能性がある。しかしながら、本実施形態のように、下方に大気開放孔が形成されるように上部開放流路87を構成することにより、ラベルの貼付面積を十分に確保して視認性を向上させるとともに、違和感のない美しいインクカートリッジを提供することが可能となる。
【0076】
なお、本発明に係る液体収容体の用途は、上記実施の形態に示したインクカートリッジに限らない。例えば、本発明の液体収容体は、複数の液体収容体を収容体装着部に着脱可能に装着し、液体噴射装置の液体噴射ヘッドに液体を供給するのに適したものである。ここで言う液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式記録装置の液体噴射ヘッド(印刷ヘッド)、液晶ディスプレイのカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置の色剤噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、さらにはバイオチップを製造するバイオチップ製造装置の生体有機物噴射ヘッド及び精密ピペットしての試料噴射ヘッドなどが該当する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る液体収容体の第1の実施の形態であるインクカートリッジの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1に示したインクカートリッジの液体収容室内のインク液が、空気の熱膨張によって下部開放流路を逆流して、空気室に貯留された状態の説明図である。
【図4】図1に示したインクカートリッジが一側に横倒しになって、液体収容室内のインク液が空気室に流入した状態の断面図である。
【図5】図1に示したインクカートリッジが図4の場合とは逆側に横倒しになった時の液体収容室内のインク液の状態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る液体収容体の第2の実施の形態であるインクカートリッジの概略構成を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る液体収容体の第3の実施の形態であるインクカートリッジの概略構成を示す縦断面図である。
【図8】本発明に係る液体収容体の第4の実施の形態であるインクカートリッジの概略構成を示す縦断面図である。
【図9】本発明に係る液体収容体の第5の実施の形態であるインクカートリッジの概略構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 インクカートリッジ(液体収容体)
3 容器本体
5 インク(液体)
7 インク収容室(液体収容室)
7a 底壁
7b 天井壁
9 インク供給孔(液体供給孔)
11 大気開放流路
13 空気室
13a 底壁
13b 天井壁
13c 隅部
13d 隅部
15 下部開放流路
15a 一端(一端側開口)
15b 他端(他端側開口)
17 上部開放流路
17a 一端(一端側開口)
17b 他端(他端側開口、大気開放孔)
21 封止フィルム
23 インクカートリッジ
25 気液分離膜
31 インクカートリッジ
32 隔壁
33 連結流路
71 第1のインク収容室
72 第2のインク収容室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器側の収容体装着部に着脱可能に装着される容器本体と、
前記容器本体内に設けられ液体を収容する液体収容室と、
前記液体収容室に連通して設けられ前記機器側の液体受け部に接続される液体供給孔と、
前記液体収容室を外部に連通させ、前記液体収容室内の液体の消費に伴って外部の空気を前記液体収容室内に導入する大気開放流路と、
前記大気開放流路の途中に設けられて前記大気開放流路に浸入した液体を貯留可能な空気室と、を備える液体収容体であって、
前記空気室は、前記液体を貯留可能であり、
前記大気開放流路は、一端が前記液体収容室の底壁内面近傍に開口し他端が前記空気室の底壁内面に接近した位置に開口する下部開放流路と、一端が前記空気室の天井壁内面に接近した位置に開口し他端が外部に開口した大気開放孔である上部開放流路と、を有することを特徴とする液体収容体。
【請求項2】
前記大気開放孔は、前記液体収容室の天井壁側に開口していることを特徴とする請求項1に記載の液体収容体。
【請求項3】
前記大気開放孔は、前記液体収容室の底壁側に開口していることを特徴とする請求項1に記載の液体収容体。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の液体収容体において、
前記空気室は、前記液体収容室内の上部の少なくとも一端側の隅部を含んだ直方体形状に区画形成され、
前記下部開放流路の両端の開口は、前記液体収容室および前記空気室内の同一方向の一隅に接近する位置に配置され、
前記上部開放流路の一端側開口は、前記下部開放流路の他端が開口する隅部と対角位置の隅部に接近した位置に配置されていることを特徴とする液体収容体。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の液体収容体において、
前記液体収容室の天井壁の一部が前記空気室の天井壁となるように、前記空気室が前記液体収容室内の上部に区画形成されていることを特徴とする液体収容体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の液体収容体において、
前記空気室の容積が、前記液体収容室の容積の10%以上かつ30%以下に設定されていることを特徴とする液体収容体。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の液体収容体において、
前記上部開放流路の他端である前記大気開放孔が、使用時に除去可能な封止フィルムで封止されていることを特徴とする液体収容体。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の液体収容体において、
前記上部開放流路に、気体の通過を許容し液体の通過を許容しない気液分離膜が設けられていることを特徴とする液体収容体。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の液体収容体において、
前記液体収容室が、当該液体収容室内を仕切る隔壁によって第1の液体収容室と第2の液体収容室に区画され、これらの第1及び第2の液体収容室相互をそれぞれの底壁に接近した位置で連通させる連結流路を備え、これら第1及び第2の液体収容室の一方が前記下部開放流路を介して前記空気室に連通していることを特徴とする液体収容体。
【請求項10】
請求項9に記載の液体収容体において、
前記第1の液体収容室及び第2の液体収容室は、容積が略等しくなるように設定されていることを特徴とする液体収容体。
【請求項11】
請求項1〜9の何れか一項に記載の液体収容体において、
前記連結流路の内径が、メニスカスにより気泡の通過を阻止する大きさに設定されていることを特徴とする液体収容体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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