説明

液体収容容器、タンクユニット、および、液体噴射システム

【課題】液体収容容器において、液体収容容器の状態が変化した場合でも、液体が大気開放流路から外部に向かって流れ出す可能性を低減できる技術を提供する。
【解決手段】液体収容容器であって、使用姿勢において、大気開放口は、空気室最上面により近い位置であって、第1の角部に含まれる位置に設けられ、空気側開口は、空気室最底面により近い位置であって、第1の角部と対角位置にある第2の角部に含まれる位置に設けられ、液体側開口は、以下の条件(a),(b)を満たす位置に設けられている、液体収容容器。(a)使用姿勢における鉛直方向について、液体室最底面により近い位置。(b)第1の角部と対角位置に相当する位置にある第2の角部に含まれる位置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器、液体収容容器を複数備えたタンクユニット、および、液体収容容器を備えた液体噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例であるプリンターは、記録ヘッドからインクを記録対象物(例えば、印刷用紙)に吐出し印刷を行う。記録ヘッドへのインク供給技術として、記録ヘッド上に配置されたインクカートリッジから記録ヘッドにインクを供給すると共に、液体噴射装置の外側に配置されたインクタンクからチューブを介してインクカートリッジやヘッドにインクを供給する技術が知られている(例えば、特許文献1〜3)。インクタンクはインクカートリッジに比べ、大容量のインクを収容可能である。また、インクタンクはインク注入口を備え、利用者は容易にインク注入口からインクを注入(補充)できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−219483号公報
【特許文献2】特開2005−1284号公報
【特許文献3】特開2005−199693号公報
【特許文献4】特開2007−253328号公報
【特許文献5】特開2004−209847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクタンクは、特許文献1のように、インクを注入するためのインク注入口と、インクタンク内部に空気を導入するためのガス吸入口(大気開放流路)とを備える。インク注入口は、取り外し可能な栓により塞がれている。一方、大気開放流路は、インクの消費に伴い外部から大気をインクタンク内部に取り入れるために、少なくとも気体(空気)は流通可能に構成する必要がある。
【0005】
よって、インクタンク内部にインクが収容された状態で、インクタンクの状態が変化すると、インクが大気開放流路から外部に向かって流れ出す場合がある。例えば、インクタンクを運搬等によりインクタンクの姿勢が変化すると、インクが大気開放流路から外部に向かって流れ出す場合がある。また、例えば、インクタンク内部の温度が変化することで、インクタンク内部の空気が膨張し、インクが大気開放流路へ押し出される場合がある。
【0006】
このような問題は、インクタンクに限らず、液体噴射装置が噴射する液体を内部に収容するための液体収容容器であって、液体注入口と大気開放流路とが別々に設けられている液体収容容器に共通する問題であった。
【0007】
従って、本発明は、液体注入口と大気開放流路とが別々に設けられている液体収容容器において、液体収容容器の状態が変化した場合でも、大気開放流路から外部に向かって液体が流れ出す可能性を低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]液体噴射装置に液体を供給するための液体収容容器であって、
前記液体を収容するための液体収容室と、
前記液体収容室に前記液体を注入するための液体注入口であって、液体注入口を塞ぐ栓部材が脱着可能に取り付けられる液体注入口と、
前記液体収容室内の前記液体の消費に伴って外部の空気を前記液体収容室内に導入するための大気開放流路と、
一端部が前記液体収容室内に配置され、他端部が外部へ向かって開口することで、前記液体収容室内の前記液体を外部に向かって流通させるための導出流路と、を備え、
前記大気開放流路は、
所定の容積を有する空気収容室であって、前記液体収容室に前記液体を注入する際の前記液体収容容器の注入姿勢において、前記液体収容室よりも上方に位置する空気収容室と、
一端部が前記空気収容室内で開口し、他端部が外部へ向かって開口することで前記空気収容室と外部とを連通させる第1の流路と、
一端部が前記空気収容室内で開口し、他端部が前記液体収容室内で開口することで前記空気収容室と前記液体収容室とを連通させる第2の流路であって、メニスカスを形成することで前記液体を保持可能な第2の流路と、を備え、
前記液体収容容器は、前記液体噴射装置に前記液体を供給する際の前記液体収容容器の使用姿勢において、
前記第1の流路の前記一端部である大気開放口は、鉛直方向について、前記空気収容室の空気室最上面と空気室最底面とを結ぶ線分の中点である空気室中点よりも前記空気室最上面に近い位置であって、前記使用姿勢において前記空気収容室の内面を鉛直下方に垂直投影した際に形成される垂直投影面である第1の長方形の最外枠投影面の4つの角部の一つである第1の角部に含まれる位置に設けられ、
前記第2の流路の前記一端部である空気側開口は、前記空気室中点よりも前記空気室最底面に近い位置であって、前記最外枠投影面の前記4つの角部のうち前記第1の角部と対角位置にある第2の角部に含まれる位置に設けられ、
前記第2の流路の前記他端部である液体側開口は、以下の条件(a),(b)を満たす位置に設けられている、液体収容容器。
(a)前記使用姿勢における鉛直方向について、前記液体収容室の液体室最上面と液体室最底面とを結ぶ線分の中点である液体室中点よりも前記液体室最底面に近い位置。
(b)前記使用姿勢において前記液体収容室の内面を鉛直下方に垂直投影した際に形成される垂直投影面である第2の長方形の最外枠投影面の4つの角部の一つである第3の角部であって、前記第1の長方形の最外枠投影面における前記第1の角部と対角位置に相当する位置にある第3の角部に含まれる位置。
【0010】
適用例1に記載の液体収容容器によれば、大気開放流路は、第1の流路と液体収容室との間に、所定の容積を有する空気収容室を備える。よって、外部の温度変化により、液体収容室の空気が膨張することで、液体収容室の液体が大気開放流路側に流入した場合でも、空気収容室によって液体を貯留できる。また、大気開放口、空気側開口、および、液体側開口が適用例1に記載の位置に配置されることで、液体収容容器を使用姿勢、使用姿勢とは天地逆の姿勢、および、横倒しの姿勢にした場合でも、大気開放流路から外部に向かって液体が流れ出す可能性を低減できる。すなわち、液体が大気開放口から大気開放流路に流れ出す可能性を低減できる。
【0011】
[適用例2]適用例1記載の液体収容容器であって、
前記液体注入口は、前記液体収容室を区画形成する壁面のうち、前記液体収容室に対して前記空気収容室が配置されている側の空気側壁面に設けられ、
前記注入姿勢において、前記液体収容室のうち前記空気側壁面が上面となる、液体収容容器。
適用例2に記載の液体収容容器によれば、利用者が液体を前記液体収容室に注入(補充)する際には、注入姿勢にすることを利用者に促すことができる。注入姿勢では、液体収容室は空気収容室よりも下方に位置することから、液体注入時に液体が空気収容室にまで流入する可能性を低減できる。よって、使用姿勢において、空気と直接に接触する液面の高さ位置を所定の範囲内(第2の流路の高さ位置程度)にすることができる。これにより、液体噴射装置に液体を安定して供給することができる。
【0012】
[適用例3]適用例1又は適用例2に記載の液体収容容器であって、
前記導出流路の前記一端部である液体出口は、前記液体収容容器の前記注入姿勢及び前記使用姿勢のそれぞれにおける鉛直方向について、前記液体収容室の最上面と最底面とを結ぶ線分の中点である液体室中点と前記最底面のうち前記最底面により近い位置に位置するように前記液体収容室内に設けられている、液体収容容器。
適用例3の液体収容容器によれば、使用姿勢において、液体出口は液体収容室の最底面寄りに位置することから、液体収容室の液体残量を低減できる。また、注入姿勢において、液体出口は液体収容室の最底面寄りに位置することから、液体収容室の液体の残量が少なくなった状態で液体収容容器を注入姿勢にした場合でも、液体収容室内の液面が液体出口よりも高い位置にある状態をより維持可能となる。すなわち、注入姿勢において、液体出口が空気を介さず液体収容室内の液体と接する状態をより維持可能となる。これにより、液体注入時に空気が液体出口を介して液体噴射装置側に流入する可能性を低減できる。
【0013】
[適用例4]適用例1乃至適用例3のいずれか1つに記載の液体収容容器であって、
前記液体収容室、前記空気収容室、および、前記第2の流路は、
一面が開口した凹状形状の容器本体と、
前記開口を塞ぐフィルムと、により形成されている、液体収容容器。
適用例4に記載の液体収容容器によれば、凹状形状の容器本体と、容器本体の開口を塞ぐフィルムにより、液体収容室、空気収容室、および、第2の流路を容易に形成することができる。また、液体収容容器の内部の気密性を容易に確保できる。
【0014】
[適用例5]適用例4に記載の液体収容容器であって、さらに、
前記フィルムを保護するための蓋部材であって、前記フィルムを覆う蓋部材を備える、液体収容容器。
適用例5に記載の液体収容容器によれば、液体収容容器の内部の気密性をフィルムにより容易に確保できると共に、フィルムの破損による液体漏れを防止することができる。
【0015】
[適用例6]タンクユニットであって、
適用例4に記載の液体収容容器であって、前記開口と対向する対向壁面部は前記開口と略同一形状である液体収容容器を複数備え、
1の前記液体収容容器の前記フィルムを、隣り合う他の前記液体収容容器の前記対向壁面部が覆うように、前記複数の液体収容容器は積層されている、タンクユニット。
適用例6に記載のタンクユニットによれば、1の液体収容容器のフィルムを他の液体収容容器の容器本体により保護できることから、コンパクト化しつつも複数の液体収容容器を組み合わせたタンクユニットを形成できる。
【0016】
[適用例7]タンクユニットであって、
適用例4に記載の液体収容容器を2つ備え、
2つの前記液体収容容器のそれぞれの前記開口と対向するそれぞれの対向壁面部は共通する単一の部材で構成され、
2つの前記容器本体は一体成形されている、タンクユニット。
適用例7に記載のタンクユニットによれば、容易に2つの液体収容容器を形成することができる。また、1回の成形で実質的に2つの液体収容容器を形成できることから、液体収容容器の生産効率を向上させることができる。
【0017】
[適用例8]液体噴射システムであって、
適用例1乃至適用例4のいずれか1つに記載の液体収容容器と、
対象物に前記液体を噴射するためのヘッドを有する液体噴射装置と、
前記液体収容容器と前記液体噴射装置とを接続し、前記液体収容室の前記液体を前記液体噴射装置に流通させる流通管と、を備える、液体噴射システム。
適用例8に記載の液体噴射システムによれば、液体が大気開放流路から外部に向かって流れ出す可能性を低減した液体収容容器を用いて液体噴射装置に液体を供給する液体噴射システムを提供できる。
【0018】
[適用例9]適用例8に記載の液体噴射システムであって、
前記液体噴射装置は、プリンターであり、
前記液体収容容器の前記液体収容室はインクを収容している、液体噴射システム。
適用例9に記載の液体噴射システムによれば、インタが大気開放流路から外部に向かって流れ出す可能性を低減した液体収容容器を用いてプリンターにインクを供給する液体噴射システムを提供できる。
【0019】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、上述した液体収容容器、タンクユニット、液体噴射装置と液体収容容器を備えた液体噴射システムのほか、上述した液体収容容器の製造方法、上述した液体噴射システムを用いた液体噴射方法等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施例の液体噴射システム1を説明するための図である。
【図2】インクタンク30の外観斜視図である。
【図3】インクタンク30を更に説明するための図である。
【図4】大気導入口317から液体導出部306に至る経路を概念的に示す図である。
【図5】インク供給を説明するための図である。
【図6】インクタンク30の分解斜視図である。
【図7】第1の流路310を説明するための図である。
【図8】タンク本体32の斜視図である。
【図9】空気側開口351の配置位置を説明するための図である。
【図10】液体側開口352の設置位置を説明するための図である。
【図11】液体出口349の設置位置を説明するための図である。
【図12】液体収容室340のインク残量が少なくなった状態を示す図である。
【図13】インクタンク30へのインクの注入状態を示す図である。
【図14】使用姿勢におけるインクの様子を説明するための図である。
【図15】注入姿勢におけるインクの様子を説明するための図である。
【図16】他の姿勢におけるインクの様子を説明するための図である。
【図17】他の姿勢におけるインクの様子を説明するための第2の図である。
【図18】第2実施例のインクタンク30aの分解斜視図である。
【図19】第2実施例のタンク本体32aの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0022】
A.第1実施例:
A−1.液体噴射システムの構成:
図1は、第1実施例の液体噴射システム1を説明するための図である。図1(A)は液体噴射システム1の外観斜視図である。図1(B)は、液体噴射システム1の外観斜視図であり、本発明の第1実施例の液体収容容器30を示した図である。なお、図1には方向を特定するために互いに直交するXYZ軸が図示されている。なお、これ以降の図に関しても必要に応じてXYZ軸が図示されている。
【0023】
図1(A)に示すように、液体噴射システム1は、液体噴射装置としてのインクジェットプリンター12(単に「プリンター12」ともいう。)と、タンクユニット50とを備える。プリンター12は、用紙給紙部13と、用紙排出部14と、キャリッジ16と、4つのサブタンク20と、を備える。4つのサブタンク20は色の異なるインクを収容している。具体的には、4つのサブタンク20は、ブラックインクを収容するサブタンク20Bkと、シアンインクを収容するサブタンク20Cnと、マゼンダインクを収容するサブタンク20Maと、イエローインクを収容するサブタンク20Ywである。4つのサブタンク20は、キャリッジ16に搭載されている。
【0024】
用紙給紙部13にセットされた印刷用紙は、プリンター12内部に搬送され、印刷後の印刷用紙が用紙排出部14から排出される。
【0025】
キャリッジ16は、主走査方向(紙巾方向)に移動可能である。この移動は、ステッピングモーター(図示せず)の駆動によりタイミングベルト(図示さず)を介して行われる。キャリッジ16の下面には、記録ヘッド(図示せず)が備え付けられている。この記録ヘッドの複数のノズルからインクが印刷用紙上に噴射され印刷が行われる。なお、タイミングベルトやキャリッジ16等のプリンター12を構成する各種部品は、ケース10内部に収容されていることで保護されている。
【0026】
タンクユニット50は、上面ケース54と、第1の側面ケース56と、第2の側面ケース58と、を備える。これらのケース54,56,58は、ポリプロピレンやポリスチレン等の合成樹脂により成形されている。さらに、図1(B)に示すように、タンクユニット50は、ケース(蓋部材)54,56,58内部に4つの液体収容容器としてのインクタンク30を備える。ケース54,56,58によってタンクユニット50がより安定して所定の場所(例えば、机や棚)に設置される。4つのインクタンク30は、4つのサブタンク20が収容する色に対応したインクを収容している。すなわち、4つのインクタンク30は、ブラックインク、シアンインク、マゼンダインク、イエローインクをそれぞれ収容する。なお、インクタンク30は、サブタンク20よりも多くの量のインクを収容できる。
【0027】
各色を収容したインクタンク30は、対応した色のインクを収容するサブタンク20にホース24によって接続されている。記録ヘッドからインクが噴射されサブタンク20のインクが消費されると、ホース24を介してインクタンク30のインクがサブタンク20に供給される。これにより、液体噴射システム1は、プリンター12の中断動作なしに連続して印刷を続けることができる。ホース24は、合成ゴム等の弾性を有する部材で形成されている。なお、サブタンク20を設けずに、ホース24を介して直接にインクタンク30から記録ヘッドにインクを供給しても良い。
【0028】
図2は、インクタンク30の外観斜視図である。インクタンク30は、タンク本体32とフィルム34とを備える。タンク本体32は凹状形状であり一面が開口している。フィルム34はタンク本体32内部の気密性を確保するために、タンク本体32の開口を塞ぐようにタンク本体32に粘着されている。インクタンク30は、フィルム34と、フィルム34に対向するタンク本体32の対向壁面部ffとが略同一形状である。すなわち、インクタンク30は、フィルム34と対向壁面部ffを底面とする多角柱形状をしている。なお、タンク本体32の詳細は後述する。
【0029】
インクタンク30はさらに、栓部材302を有する。栓部材302は液体注入口304に装着されている。栓部材302は液体注入口304から取り外し可能であり、取り外すことで液体注入口304からインクタンク30内部にインクを注入(補充)することができる。
【0030】
また、インクタンク30は、第1の嵌合部324と第2の嵌合部325とを有する。第1の嵌合部324は突起形状である。第2の嵌合部325は、貫通孔325aを有する。第1と第2の嵌合部324、325を用いて、隣り合うインクタンク30が連結(積層)される。すなわち、フィルム34が隣接するインクタンク30の対向壁面部ffによって覆われるように、隣り合うインクタンク30は連結される。これにより、ある1つのインクタンク30のフィルム34を隣り合う他のインクタンク30の対向壁面部ffで保護できるため、コンパクト化しつつも複数のインクタンク30を組み合わせたタンクユニット50を形成できる。
【0031】
さらに、インクタンク30は、大気導入口317と液体導出部306とを備える。大気導入口317は外部の大気をインクタンク30内部に導入するための大気開放流路の一端部である。液体導出部306は筒状であり、一端部がインクタンク30の液体収容室340内に配置され、他端部348が外部へ向かって開口している。すなわち、液体導出部306は、液体収容室340内のインクを外部へ向かって流通させる導出流路を内部に形成している。液体導出部306はホース24(図1(B))に接続され、インクタンク30内部のインクがホース24を介してプリンター12側へ向かって流通する。
【0032】
図3は、インクタンク30を更に説明するための図である。図3は、タンクユニット50の斜視図であり、説明の容易のために上面ケース54(図1(A))の図示は省略している。隣り合うインクタンク30の第2の嵌合部325の貫通孔325aと第1の嵌合部324とが嵌め合わされることで、隣り合うインクタンク30同士が連結される。両端のインクタンク30のうち、フィルム34が外部に露出するインクタンク30(Y軸正方向側のインクタンク30)は、フィルム34が第1の側面ケース56により覆われる。これにより、フィルム34は保護され、外部からの衝撃によりフィルム34が破損しインクが外部へ漏れ出すことを防止できる。タンクユニット50は、プリンター12が噴射するインク色の数に応じて、インクタンク30を新たに追加したり、取り外したりすることができる。インクタンク30のインクをプリンター12側へ供給する際のインクタンク30の使用姿勢は、Z軸負方向が鉛直下方向となり、Z軸正方向が鉛直上方向となる。
【0033】
A−2.インクタンク30の詳細構成:
インクタンク30の詳細構成を説明する前に、理解の容易のため、大気導入口317から液体導出部306に至る経路について図4を参照して概念的に説明する。図4は、大気導入口317から液体導出部306に至る経路を概念的に示す図である。
【0034】
大気導入口317から液体導出部306に至る経路は、大気開放流路300と、液体収容室340とに大きく分けられる。大気開放流路300は、上流から順に第1の流路310と、空気収容室330と、第2の流路350とから構成される。
【0035】
第1の流路310は、一端部である大気開放口318が空気収容室330内で開口し、他端部である大気導入口317が外部へ向かって開口することで、空気収容室330と外部とを連通させる。第1の流路310は、連通流路317a,320、気液分離室312、連通流路314,319と、を有する。連通流路317aは、一端部が大気導入口317に連通し、他端部が連通流路320に連通している。連通流路320は一端部が連通流路317aと連通し、他端部が気液分離室312と連通している。連通流路320は細長い流路であり、液体収容室340に貯留されたインクの水分が拡散により大気開放流路300から蒸発することを抑制する。気液分離室312の上流から下流に向かう間にはシート部材316が配置されている。このシート部材316は、気体を透過すると共に液体を透過しない性質を有する。このシート部材316を大気開放流路300の途中に配置することにより、液体収容室340から逆流してきたインクがシート部材316より上流側に流入することを抑制している。なお、このシート部材316はインクで一旦濡れると、気液分離膜としての本来の機能が損なわれ、空気を透過しなくなる場合がある。よって、後述するように、本実施例では、空気収容室330よりも上流側である第1の流路310にインクが逆流する可能性を低減したインクタンク30を提供する。
【0036】
連通流路319と連通流路314とは、気液分離室312と空気収容室330とを連通させる。ここで、連通流路314の一端部は大気開放口318である。
【0037】
空気収容室330は、上流側から順に、上部収容室337と、連通流路338と、下部収容室339と、を有する。空気収容室330は、第2の流路350よりも流路断面積が大きく、所定の容積を有する。これにより、液体収容室340から逆流してきたインクを貯留し、空気収容室330よりも上流側にインクが流入することを抑制できる。
【0038】
第2の流路350は、一端部351が空気収容室330内で開口し、他端部352が液体収容室340内で開口することで、空気収容室330と液体収容室340とを連通させる。また、第2の流路350は、メニスカス(液面架橋)を形成可能な程度に流路断面積が小さい流路となっている。
【0039】
液体収容室340はインクを収容し、液体導出部306の液体出口349からホース24を介してサブタンク20にインクを流通させる。液体収容室340は液体保持部345を有する。液体保持部345は区画壁342を有する。区画壁342は、液体収容室340内の所定方向へのインクの流れを堰き止めることで、液体保持部345から液体収容室340の他の部分にインクが流れ出ることを抑制する。また、上述のごとく液体収容室340には液体注入口304が設けれ、利用者は容易に液体注入口304からインクを液体収容室340に注入(補充)することができる。
【0040】
さらに理解の容易のために、図5を用いてインクタンク30がサブタンク20にインクを供給する様子について説明する。図5は、インクタンク30からサブタンク20へのインク供給を説明するための図である。図5は、インクタンク30、ホース24、プリンター12の内部の様子を模式的に示している。
【0041】
液体噴射システム1は、所定の水平面sf上に設置されている。インクタンク30の液体導出部306と、サブタンク20の液体受入部202は、ホース24を介して接続されている。サブタンク20は、ポリスチレンやポリエチレン等の合成樹脂により成形されている。サブタンク20は、インク貯留室204と、インク流動路208と、フィルター206とを備える。インク流動路208には、キャリッジ16のインク供給針16aが挿入されている。フィルター206は、インクに異物等の不純物が混入していた場合に、その不純物を捕捉することで記録ヘッド17への不純物の流入を防止する。インク貯留室204のインクは、記録ヘッド17からの吸引によって、インク流動路208、インク供給針16aを流れて、記録ヘッド17に供給される。記録ヘッド17に供給されたインクは、ノズルを介して外部(印刷用紙)へ向かって噴射される。
【0042】
なお、インクタンク30にインクを注入する際の注入姿勢では、X軸負方向が鉛直下方向となるようにインクタンク30は所定の水平面sf上に設置される。注入姿勢で液体注入口304からインクを液体収容室340に注入した後に、液体注入口304を栓部材302で密封し使用姿勢にした場合、液体収容室340内の空気が膨張し、液体収容室340は負圧に維持される。また、空気収容室330は大気開放口318と連通することで大気圧に維持されている。
【0043】
使用姿勢において、メニスカスを形成する第2の流路350は、記録ヘッド17よりも低い位置になるように配置される。これにより、水頭差d1が発生する。なお、使用姿勢において、第2の流路350にメニスカスが形成された状態での水頭差d1を「定常時水頭差d1」とも呼ぶ。
【0044】
インク貯留室204のインクが記録ヘッド17によって吸引されることで、インク貯留室204は所定の負圧以上となる。インク貯留室204が所定の負圧以上になると、液体収容室340のインクがホース24を介してインク貯留室204に供給される。すなわち、インク貯留室204には、記録ヘッド17に流出した量のインクが液体収容室340から自動的に補充されることになる。言い換えれば、インクタンク30内の空気収容室330と接するインク液面と、記録ヘッド(詳細にはノズル)との鉛直方向の高さの差によって発生する水頭差d1よりも、プリンター12側からの吸引力(負圧)が大きくなることでインクが液体収容室340からインク貯留室204へ供給される。
【0045】
液体収容室340のインクが消費されると、空気収容室330の空気G(「気泡G」ともいう。)が連通部350を介して液体収容室340に導入される。これにより液体収容室340の液面は低下する。
【0046】
以上を踏まえて、インクタンク30の詳細構成を図6〜図8を参照して説明する。図6は、インクタンク30の分解斜視図である。図7は、第1の流路310を説明するための図である。図8は、タンク本体32の斜視図である。なお、図7は、図6をX軸正方向側から見た際の第1の流路310を示す図であり、大気導入口317から大気開放口318までの空気の流れを模式的に矢印で示している。なお、図7は、シート部材316、322の図示は省略している。
【0047】
図6に示すように、インクタンク30は、タンク本体32と、栓部材302と、複数のシート部材34,316,322(「フィルム34,316,322」ともいう。)と、を備える。タンク本体32は、ポリプロピレン等の合成樹脂により成形されている。また、タンク本体32は、半透明であり外部から内部のインクの量を確認できる。タンク本体32の形状は、一側面が開口した凹状形状である。タンク本体32の凹部には様々な形状のリブ362が形成されている。なお、説明の便宜上、タンク本体32について、Z軸正方向側の面を上面fa、Z軸負方向側の面を底面fbとする。また、使用姿勢におけるタンク本体32の4つの側面について、X軸正方向側の面を右側面fc、X軸負方向側の面を左側面fd、Y軸正方向側の面(すなわち、開口が形成された面)を正面fe,Y軸負方向側の面を後面ffとする。更に、説明の便宜上、使用姿勢において、X軸方向(左側面fdと右側面fcが対向する方向)を幅方向、Y軸方向(正面feと後面ffが対向する方向)を奥行き方向、Z軸方向(鉛直方向)を高さ方向とする。
【0048】
フィルム34は、リブ362の端面、および、タンク本体32の外枠の端面に隙間が生じないように緻密に貼り付けられている。これにより複数の小部屋が形成されている。具体的には、主に、空気収容室330、液体収容室340、第2の流路である連通部350、液体収容室340の一部分である液体保持部345と、が形成される。すなわち、タンク本体32と同一部材(合成樹脂)を、リブ362の端面、および、タンク本体32の外枠の端面に溶着するよりも、フィルム34を用いることで隙間が生じないようにタンク本体32に貼り付けることができる。すなわち、フィルム34を用いることでインクタンク30内部の気密性を容易に確保できる。一方で、フィルム34の外部衝撃からの保護は、第1の側面ケース56(図3)や隣り合うインクタンク30の対向壁面部ff(図6)により行われる。なお、これらの各部屋(各構成)の詳細は後述する。
【0049】
タンク本体32の右側面fcには、液体注入口304が設けられている。すなわち、液体注入口304は、液体収容室340を区画形成する壁面のうち、液体収容室340に対して空気収容室330が配置されている側の壁面に設けられている。液体注入口304から液体収容室340にインクを注入する際のインクタンク30の注入姿勢は、右側面fcが上面となる。すなわち、注入姿勢において空気収容室330は液体収容室340よりも上方に位置する。
【0050】
また、右側面fcには、第1の流路310が形成されている。第1の流路310は、大気導入口317から取り込まれた空気が大気開放口318を介して空気収容室330に流通させる。ここで、図7を用いて第1の流路310の詳細構成について説明する。
【0051】
図7に示すように、右側面fcには大気導入口317と、連通流路317a,320と、気液分離室312と、連通流路319,314と、大気開放口318とが形成されている。このうち、連通流路317a、連通流路319は右側面fcのうちの背面(タンク本体32内部)に形成されている。
【0052】
気液分離室312の形状は凹状形状であり、凹状の底面に連通流路319の一端部である連通口319aが形成されている。大気開放口318は、空気収容室330と連通し、外部の空気を空気収容室330に導入する。
【0053】
気液分離室312の底面を囲む内壁の全周には土手313が形成されている。シート部材316(図6)は、土手313に粘着されている。このシート部材316は、気体を透過すると共に液体を透過しない性質を有する。フィルム322(図6)は、連通流路320、気液分離室312、連通流路314、連通口318,319a,319bを覆うように右側面fcに粘着されている。これにより、連通流路314、320を形成すると共に、インクタンク30内部のインクが外部へ漏れ出すことを防止している。
【0054】
大気導入口317と連通流路320は、連通流路320の一端部320aとタンク本体32の内側に形成された連通流路317aを介して連通している。連通流路320と気液分離室312は連通流路320の他端部320bを介して連通している。連通流路320は大気導入口317から気液分離室312までの距離を長くするために、気液分離室312の外周に沿って形成されている。これにより、タンク本体32内部のインク中の水分が大気導入口317から外部へ蒸発することを抑制できる。なお、水分蒸発抑制の観点から、連通流路の距離を長くするために連通流路320を蛇行状の流路としても良い。
【0055】
他端部320b、気液分離室312、連通口319aへと流れる空気は、その途中で土手313に粘着されたシート部材316(図6)を通過することになる。気液分離室312と連通流路314は、連通口319a,319b及びタンク本体32の内部に形成された連通流路319を介して連通している。連通流路314は、大気開放口318を介して空気収容室330と連通している。以上の説明からも理解できるように、シート部材316(図6)は、大気開放口318と外部とを区画している。これにより、タンク本体32内部に収容されるインクが外部へ漏れ出すことを抑制できる。
【0056】
図8に示すように、空気収容室330は、角柱形状をしている。使用姿勢において、空気収容室330を区画形成する内面のうち、最も鉛直上方に位置する最上面330hの外形と、最も鉛直下方に位置する最底面330uの外形は長方形である。また、空気収容室330は、最上面330hを含む略直方体形状の上部収容室337と、最底面330uを含む略直方体形状の下部収容室339と、上部収容室337と下部収容室339とを連通させる連通流路338とを備える。大気開放口318は最上面330hに近接した位置であって、上部収容室337の角部に含まれる位置に配置されている。なお、角部の詳細は後述する。
【0057】
第2の流路350は、液体収容室340や空気収容室330に比べ、奥行き方向(Y軸方向)の長さが小さいと共に、高さ方向(Z軸方向)の長さが小さい。すなわち、第2の流路350は、メニスカスが形成可能な程度に流路断面積が小さい。第2の流路350の空気側開口351は、空気収容室330内に配置され、液体側開口352は液体収容室340内に配置されている。
【0058】
液体収容室340は、角柱形状をしている。液体収容室340は、液体保持部345と空気貯留部340tとを有する。使用姿勢において、液体収容室340を区画形成する内面のうち、最も鉛直上方に位置する最上面340hの外形と、最も鉛直下方に位置する最底面330uの外形は長方形である。空気貯留部340tは、液体収容室340の部分のうち、注入姿勢における鉛直方向(X軸方向)について、液体注入口304の液体収容室340側の開口304mよりも高い位置を占める部分である。液体保持部345は、注入姿勢において、インクの液面を所定の高さ以上に保持するために液体収容室340内に設けられている。液体保持部345は、注入姿勢における底面部346(インクタンク30の左側面fd)から対向する面に向かって所定長さ延びる区画壁342を有する。区画壁342は、液体収容室340内部をY軸方向(奥行き方向)全域に亘って形成されている。すなわち、区画壁342は、底面部346を2つの領域に仕切っている。
【0059】
A−3.インクタンクの各構成の配置関係:
次に、インクタンク30の各構成の位置関係について詳細に説明を行う。図9は、大気開放口318と空気側開口351の配置位置を説明するための図である。図9(A)は、図6をY軸正方向側から見た図であり、図9(B)は大気開放口318及び空気側開口351が配置される角部について説明するための図である。なお、図9(A)では、理解の容易のために、上部収容室337にはシングルハッチングを施し、下部収容室339にはクロスハッチングを施している。また、連通流路338の境界を破線で示している。また、図9(B)は、使用姿勢において、空気収容室330を鉛直下方に垂直投影した場合における空気収容室330の最も外側に位置する内壁面を太線で表している。以下、この太線で囲まれる領域を垂直投影面330hh(「最外枠投影面330hh」ともいう。)と規定する。なお、図9(B)には、理解の容易のために、大気開放口318と空気側開口351の形成位置を模式的に図示している。なお、最外枠投影面330hhは、空気収容室330の内壁面を鉛直下方に垂直投影した際に外枠の線を結んで形成される外枠形状に、最も良く形状が一致する長方形状によって規定される。本実施例では、図9(B)に示すように太線に示す外枠形状は長方形状である。また、例えば、図9(B)に示す外枠形状のうち辺330h4の途中が半円状の突起状であっても、該突起状を含む外枠形状と最も良く形状が一致する長方形状によって最外枠投影面330hhは規定される。
【0060】
図9(A)に示すように、使用姿勢におけるタンク本体32の鉛直方向について、大気開放口318は、空気収容室330のうち最底面330uと最上面330hを結ぶ線分S1の中点である空気室中点SM1よりも最上面330hに近い位置に配置されている。本実施例では、大気開放口318は最上面330hに近接して配置されている。また、上部収容室337を区画する内壁面のうち液体収容室340から最も遠い面である右側面fcに形成されている。さらに、大気開放口318は、空気収容室330の角部に配置されている。
【0061】
図9(B)を用いて角部の説明を行う。長方形の垂直投影面330hhの各辺330h1〜330h4をそれぞれ4等分する。対向する各辺の4等分した点を結ぶと、垂直投影面330hhは16等分の領域に区画される。16等分に区画された領域のうち、垂直投影面330hhの角330k1〜330k4を含む領域(クロスハッチングを施した領域)が空気収容室330の角部330s1〜330s4となる。ここで、本実施例では、大気開放口318は角部330s1(「第1の角部330s1」ともいう。)の領域内に位置している。本実施例では、第1の角部330s1の領域内でも、より角330k1に近接した位置に大気開放口318は位置している。
【0062】
図9(A)に示すように、第2の流路350の空気側開口351は、使用姿勢における鉛直方向について、空気室中点SM1よりも最底面330uに近い位置に配置されている。本実施例では、空気側開口351は最底面330uに配置されている。
【0063】
また、図9(B)に示すように、空気側開口351は、大気開放口318が位置する第1の角部330s1と対角位置にある角部330s3(「第2の角部330s3」ともいう。)に配置されている。
【0064】
図10は、液体側開口352の設置位置を説明するための図である。図10(A)は、図6をY軸正方向側から見た図である。図10(B)は、使用姿勢において、液体収容室340を鉛直下方に垂直投影した場合における液体収容室340の最も外側に位置する内壁面を太線で表している。以下、この太線で囲まれる領域面を垂直投影面340hh(「最外枠投影面340hh」ともいう。)と規定する。なお、理解の容易のために、図10(B)には液体側開口352を模式的に示している。なお、最外枠投影面340hhは、最外枠投影面330hhと同様の方法で規定される。
【0065】
図10(A)に示すように、使用姿勢におけるタンク本体32の鉛直方向について、液体側開口352は、液体収容室340のうち最底面340uと最上面340hを結ぶ線分S2の中点である液体室中点SM2よりも最底面340uに近い位置に配置されている。本実施例では、液体側開口352は、鉛直方向について、最底面340uに近接して配置されている液体導出部306よりも僅か上方に配置されている。また、液体側開口352は、液体収容室340を区画する内壁面のうち、正面feを形成するフィルム34(図6)に近接して配置されている。
【0066】
また、図10(B)に示すように、液体側開口352は、液体収容室340の角部であって、大気開放口318が配置されている空気収容室330の角部330s1(図9(B))と対角位置に相当する位置にある角部340s3(「第3の角部340s3」ともいう。)に配置されている。ここで、2つの異なる長方形の垂直投影面330hh、340hhについて、互いに1つの辺が平行になる位置関係に垂直投影面330hh、340hhが位置する場合を考える。すなわち、図9(B)に示す垂直投影面330hhと、図10に示す垂直投影面340hhの位置関係について、右上に位置する角部330s1,340s1同士が対応する角部に相当する。また、右下に位置する角部330s2,340s2同士が対応する角部に相当する。また、左上に位置する角部330s4,340s4同士が対応する角部に相当する。また、左下に位置する角部330s3,340s3同士が対応する角部に相当する。なお、「液体収容室340の角部」は、長方形状の垂直投影面340hhを16等分の領域に区画し、区画した領域のうち角340k1〜340k4を含む領域(クロスハッチングを施した領域)である。
【0067】
図11は、液体出口349の設置位置を説明するための図である。図11(A)は、図6をY軸正方向側から見た図である。図11(B)は、図11(A)に示すタンク本体32を注入姿勢にした場合の図である。なお、図11には、液体導出部306の一端部である液体出口349の液体収容室340内の配置位置も併せて図示している。
【0068】
図11(A)に示すように、使用姿勢における鉛直方向について、液体出口349は、液体収容室340の最底面340uと最上面340hを結ぶ線分S2の中点である液体室中点SM2よりも最底面340uに近い位置に配置されている。また、図11(B)に示すように、注入姿勢における鉛直方向について、液体出口349は、液体収容室340の最底面340u2と最上面340h2を結ぶ線分S3の中点である第2の液体室中点SM3よりも最底面340u2に近い位置に配置されている。本実施例では、液体出口349は、少なくとも使用姿勢おける最底面340uに近接して配置される。
【0069】
このように、使用姿勢における鉛直方向について、液体出口349が所定の範囲内に配置されることで、液体収容室340のインク残量がより少なくなるまで、液体導出部306からインクをサブタンク20(図5)に供給することができる。また、注入姿勢における鉛直方向について、液体出口349が所定の範囲内に配置されることで、液体収容室340のインク残量がより少量の状態で注入姿勢にした場合でも、インクの液面が液体出口349よりも高い状態を維持可能となる。すなわち、液体出口349が空気を介さずインクと接している状態を維持可能となる。これにより、液体注入口304からインクを注入する際に、液体出口349、液体導出部306、ホース24(図5)を介して空気が記録ヘッド17側に流入する可能性を低減できる。
【0070】
A−4.インクタンクのインク注入方法:
図12は、液体収容室340のインク残量が少なくなった状態を示す図である。なお、実際には、液体導出部306とサブタンク20の液体受入部202がホース24を介して接続されているが、図示は省略している。
【0071】
図12に示すように、液体収容室340のインクが所定量以下となると、プリンター12の不具合の発生(ドット抜け等)を防止するために、利用者はインクの補充を行う。例えば、タンク本体32にインク注入時期の目安となるリミット線を付しておき、リミット線よりもインクの水位が下回った場合に利用者はインクを補充する。ここで、図12に示す状態でインクの水位がリミット線を下回ったものとする。インクを液体収容室340に注入する際には、矢印YRで示すように、液体注入口304が鉛直上向きを向くようにインクタンク30が回転される。
【0072】
図13は、インクタンク30へのインクの注入状態を示す図である。図13(A)は、図12に示すインク残量が少ない状態でインクタンク30を使用姿勢から注入姿勢に変化させた際のインクタンク30内部のインクの状態を示す図である。図13(B)は、インクを液体収容室340にインクを正常量注入した状態を示す図である。なお、「液体収容室340にインクを正常量注入」とは、所定量未満のインクが液体収容室340に収容されていることを言う。具体的には、液体注入口304よりも下方にインクの液面が位置する範囲内でインクが液体収容室340に注入されたことをいう。
【0073】
インクを液体収容室340に注入する場合、液体注入口304に装着されている栓部材302を取り外し、液体注入口304からインクを注入する。液体注入口304は、使用姿勢において鉛直方向と平行となる面に設けられていることから(図6)、利用者はインク注入時には、液体注入口304が鉛直方向上向きとなる注入姿勢に姿勢を変える。よって、使用姿勢のままインクが液体収容室340に注入されることを防止できる。使用姿勢のままインクを液体収容室340に注入した場合、インクが空気収容室330に多量に流入する。この結果、インク注入直後は、空気収容室330内に大気と直接に接するインク液面が形成される。これにより、図5に示す定常時水頭差d1から大きくはずれた水頭差が発生し、インクをインクタンク30からプリンター12側に安定して供給できない場合が生じる。
【0074】
一方、本実施例では、インク注入を行う場合、利用者は鉛直方向について空気収容室330が液体収容室340よりも上方に位置する注入姿勢にインクタンク30の姿勢を変化させる。これにより、インク注入時に、空気収容室330にインクが流入する可能性を低減でき、水頭差を所定の範囲内に維持することができる。なお、インクの注入は、ホース24によりインクタンク30とサブタンク20が接続された状態で行われる。記録ヘッド17(図5)のノズルにはメニスカス(液面架橋)が形成されており、外力(ピエゾ素子がインクに加える圧力)が加わらなければインクはノズルから噴射されない構成となっている。すなわち、記録ヘッド17のノズルは一定の力でインクを保持しているため、ノズルと連通する液体導出部306内のインクは液体収容室340側へ逆流することなく、液体導出部306内に保持される。
【0075】
図13(A)に示すように、インク残量が少ない状態で使用姿勢から注入姿勢に姿勢を変化させた場合において、液体保持部345はインクが液体収容室340の他の部分に流れ出すことを抑制する。すなわち、区画壁342は、液体出口349から離れる方向(Z軸正方向)へのインクの流れを堰き止める。このため、注入姿勢において、液体保持部345では他の部分よりも水位を高く維持することができる。より詳細には、区画壁342によって、液体保持部345の水位を液体出口349の高さ以上に維持することが可能となる。これにより、インク残量が少ない場合でも、液体導出部306内のインクと液体保持部345のインクとは空気を介さず連続して存在することが可能となる。よって、インク注入時に空気(気泡)が液体出口349から液体導出部306に流入し、ホース24を介してサブタンク20へ流入する可能性を低減することができる。これにより、インク注入時に記録ヘッド17(図5)側に空気が流れ込まないため、空打ちによるドット抜けを抑制し、印字品質の低下を抑制することができる。
【0076】
図13(B)に示すように、液体収容室340に正常量のインクが注入された場合、注入姿勢において、液体収容室340のインク液面は液体注入口304よりも下方に位置する。ここで、注入姿勢において、液体注入口304の高さH1は、大気開放口318の高さH2よりも低いことから、液体収容室340に正常量のインクが注入された場合に、インクが大気開放口318から溢れ出ることを防止できる。また、インク液面が液体注入口304に到達する程度にインクを液体収容室340に過多に注入させた場合でも、液体注入口304の高さH1は、大気開放口318の高さH2よりも低いことから、インクが大気開放口318から溢れ出ることを防止できる。
【0077】
さらに、注入姿勢における鉛直方向について、液体収容室340は液体注入口304の開口304mよりも高い位置を占める空気貯留部340tであって、注入姿勢においてインクを液体収容室340内に過多に注入した場合でも所定量の空気を液体収容室340内に貯留する空気貯留部340tを有する。言い換えれば、液体収容室340は、注入姿勢においてインクの注入量に拘わらず少なくとも所定量の容積の空気を貯留するための空気貯留部340tを有する。すなわち、注入姿勢において、開口304mの高さ以上に位置し、鉛直下向き以外の周囲を液体収容室340の内壁面により囲まれた空気貯留部340tを有することで、液体収容室340に所定容量以上の空気を貯留できる。これにより、後述するインクタンク30の状態が変化した場合でも、液体収容室340内には所定量以上の空気が存在するため、液体収容室340のインクが大気開放口318から外部に向かって流れ出す可能性をより一層低減できる。
【0078】
A−5.インクタンクの状態変化:
次に、図14〜図16を用いて、インクタンクの状態が変化した場合のインクタンク30内部のインクの様子について説明する。なお、図14〜図16は、液体収容室340に適量(例えば、図13(B)に示す量)のインクが収容された状態で、運搬等によりインクタンク30の状態が変化した時のインクの様子をドットで示している。なお、液体注入口304には栓部材302が取り付けられている。これにより、インクが液体注入口304から外部へ漏れ出すことを防止している。また、液体導出部306の他端部348は液体が外部に向かって漏れ出さないよう構成されている。具体的には、他端部348にはホース24が取り付けられ、インクタンク30はプリンター12に接続されている(図1)。ホース24の途中にはバルブが取り付けられ、運搬時等にはバルブを閉状態にすることが可能である。バルブが閉状態になると、ホース24の内部流路が遮断される。これにより、運搬等によりインクタンクの状態が変化した場合に、インクタンク30からホース24を介してプリンター12側にインクが流れることを防止している。
【0079】
図14は、使用姿勢におけるインクの様子を説明するための図である。図14(A)は、使用姿勢において、インクタンク30が低温環境下に晒されている場合のインクタンク30内部のインクの様子を示している。図14(B)は、使用姿勢において、インクタンク30が高温環境下に晒されている場合のインクタンク30内部のインクの様子を示している。ここで、低温環境下とは、例えばインクタンク30の周囲の温度がー20℃〜20℃である環境下を指し、高温環境下とは、例えばインクタンク30の周囲の温度が低温環境下よりも高い温度(20℃〜60℃)である環境下を指す。
【0080】
図14(A)に示すように、低温環境下では第2の流路350内にメニスカスが形成されている。ここで、図14(A)は、注入姿勢で液体注入口304からインクを液体収容室340に適量注入した後に、液体注入口304を栓部材302で封止した後に使用姿勢にした状態である。すなわち、注入姿勢から使用姿勢に姿勢を変化させると、液体収容室340内の空気が膨張し、液体収容室340は負圧に維持される。一方、空気収容室330は大気開放口318と連通することで大気圧に維持されている。よって、液体収容室340内に存在する空気の圧力と空気収容室330内に存在する空気の圧力との差が所定の範囲内にあるときは、液体収容室340のインクは、図14(A)に示すように、空気収容室330には流入しない。
【0081】
図14(B)に示すように、インクタンク30が晒される環境が、低温環境下から高温環境下に変化すると、液体収容室340内の空気が膨張する。そうすると、液体収容室340内のインクが空気の膨張により押し出され、インクの一部が第2の流路350、空気収容室330に流入する。しかしながら、本実施例の大気開放口318は、空気収容室330の使用姿勢における最上面330hに近接して配置されている。よって、使用姿勢において、液体収容室340のインクが空気収容室330に流入した場合に、大気開放口318を介して外部に向かってインクが漏れ出す(流れ出す)可能性を低減できる。
【0082】
図15は、注入姿勢におけるインクの様子を説明するための図である。図15(A)は、注入姿勢において、インクタンク30が低温環境下に晒されている場合の、インクタンク30内部のインクの様子を示している。図15(B)は、使用姿勢において、インクタンク30が高温環境下に晒されている場合の、インクタンク30内部のインクの様子を示している。
【0083】
図15(A)に示すように、低温環境下では第2の流路350内にメニスカスが形成されている。注入姿勢において、液体収容室340内の空気の圧力と空気収容室330内に存在する空気の圧力との差が所定の範囲内にあるときは、液体収容室340のインクは、空気収容室330には流入しない。
【0084】
図15(B)に示すように、インクタンク30が晒される環境が、低温環境下から高温環境下に変化すると、液体収容室340内の空気が膨張する。そうすると、液体収容室340のインクが空気の膨張により押し出され、インクの一部が第2の流路350、空気収容室330に流入する。しかしながら、使用姿勢において、本実施例の大気開放口318は空気収容室330の上面に相当する内壁面に形成されていることから、液体収容室340のインクが空気収容室330に流入した場合に、大気開放口318を介して外部に向かってインクが流れ出す可能性を低減できる。
【0085】
図16は、他の姿勢におけるインクの様子を説明するための図である。図16(A)は、天地逆の姿勢におけるインクタンク30のインクの様子を示している。図16(B)は、液体注入口304が鉛直下向きの姿勢(以下、「下向き姿勢」とも呼ぶ。)におけるインクタンク30のインクの様子を示している。
【0086】
図16(A)に示すように、インクタンク30が使用姿勢と上下が逆の関係にある天地逆の姿勢になった場合、液体側開口352は、天地逆の姿勢における液体収容室340の最上面近傍に配置されている。よって、インクが液体側開口352を介して空気収容室330に流入する可能性を低減できる。これにより、大気開放口318を介してインクが外部に向かって流れだす可能性を低減できる。
【0087】
図16(B)に示すように、下向き姿勢になった場合、液体側開口352は、下向き姿勢にける液体収容室340の最上面近傍に配置されている。よって、インクが液体側開口352を介して空気収容室に流入する可能性を低減できる。これにより、大気開放口318を介してインクが外部に漏れ出す可能性を低減できる。
【0088】
図17は、他の姿勢におけるインクの様子を説明するための第2の図である。図17(A)は、フィルム34(図6)が底面となる姿勢(以下、「フィルム底面姿勢」とも呼ぶ。)におけるインクタンク30を模式的に示した図である。図17(B)は、フィルム34が上面となる姿勢(以下、「フィルム上面姿勢」とも呼ぶ。)におけるインクタンク30を模式的に示した図である。
【0089】
図17(A)に示すように、インクタンク30がフィルム底面姿勢となった場合、空気側開口351及び液体側開口352は底面に配置される。このため、インクタンク30が晒される環境の変化(例えば、低温環境下から高温環境下に変化)により、液体収容室340のインクが空気収容室330に流入する場合がある。しかしながら、フィルム底面姿勢において大気開放口318は最上面近傍に配置されていることから、大気開放口318を介して外部にインクが流れ出す可能性を低減できる。
【0090】
図17(B)に示すように、インクタンク30がフィルム上面となった場合、空気側開口351及び液体側開口352は、上面に配置されていることから液体収容室340のインクが空気収容室330に流入する可能性を低減できる。これにより、大気開放口318を介してインクが外部に流れ出す可能性を低減できる。
【0091】
このように、第1実施例のインクタンク30は、大気開放口318、空気側開口351、及び、液体側開口352が予め定めた位置範囲に配置されていることから(図9〜図11)、インクタンク30の状態が変化(例えば、インクタンクの姿勢の変化やインクタンクが晒される環境等の変化)が生じてもインクが大気開放口318から外部に向かって流れ出す可能性を低減できる。これにより、シート部材316がインクで濡れる可能性を低減でき、シート部材316の機能低下を抑制できる。また、液体収容室340は空気貯留部340tを有することから、インクタンク30の状態が変化した場合に、液体収容室340のインクが大気開放口318から外部に向かって流れ出す可能性をより一層低減できる。
【0092】
また、液体注入口304は液体収容室340を区画形成する壁面のうち、液体収容室340に対して空気収容室330が配置されている側の壁面fc(右側面fc)に設けられている。すなわち、液体注入口304は、使用姿勢において鉛直方向と平行となる面(左側面fc)に設けられている。よって、利用者がインクタンク30にインクを補充する際には、利用者にインクタンクを使用姿勢から注入姿勢に姿勢を変えることを促すことができる。また、注入姿勢において、液体収容室340よりも上方に空気収容室330が位置することから、インク注入時に空気収容室330にインクが流入する可能性を低減できる。これにより、使用姿勢において、ヘッド17とインクタンク30内の大気と接するインク液面の高さの差によって生じる水頭差を所定の範囲内にすることができる。よって、インクタンク30からプリンター12にインクを安定して供給することができる。
【0093】
また、インクタンク30は凹状形状のタンク本体32とタンク本体の開口を封止するフィルム34によって、空気収容室330や液体収容室340や第2の流路350が形成されている(図6)。よって、複雑な形状の各部屋330,340,350を容易に形成することができる。
【0094】
B.第2実施例:
図18は、第2実施例のインクタンク30aの分解斜視図である。図19は、第2実施例のタンク本体32aの斜視図である。第1実施例との違いは、1つのインクタンク30aが2つの大気開放流路300と、2つの液体収容室340(図4)を備える点である。なお、第1実施例と同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。また、第2実施例のインクタンク30aが備える、液体注入口304、空気側開口351、液体側開口352、大気開放口318の位置関係は第1実施例の位置関係(図9〜11、13)と同様である。
【0095】
図18に示すように、インクタンク30aは、タンク本体32aと、2枚のフィルム34と、2枚のシート部材316と、フィルム322と、2つの栓部材302と、蓋部材42,44と、備える。なお、第2実施例の連通流路320pは第1実施例と異なり蛇行状の流路としている。また、1枚のフィルム322aが2つの連通流路320pと2つの気液分離室312を覆うように塞いでいる。
【0096】
タンク本体32aは、ポリプロピレン等の合成樹脂により成形されている。また、タンク本体32は、半透明であり外部から内部のインクの量を確認できる。タンク本体32aのY軸正方向側の面とY軸負方向側の面とは開口しており、該開口はそれぞれフィルム34によって封止される。蓋部材42,44はポリプロピレンやポリスチレン等の合成樹脂により成形されている。蓋部材42,44はフィルム34を覆うようにタンク本体32aに取り付けられることで、フィルム34を外部の衝撃等から保護する。また、図19に示すように、タンク本体32aは内部に、タンク本体32aの内部空間を2分割する仕切壁384を有する。なお、理解の容易のために仕切壁384にはシングルハッチングを付している。
【0097】
以上の説明から理解できるように、第2実施例のインクタンク30aは、第1実施例の構成を備える2つのタンク本体32の後面ff(「対向壁面部ff」ともいう。)を共通する単一の部材384(仕切壁384)で構成すると共に、第1実施例の2つのタンク本体32が一体成形された構成であるとも言える。
【0098】
このように、第2実施例のインクタンク30aは、第1実施例のインクタンク30を2つ組み合わせたインクタンクを容易に形成できる。これにより、インクタンク30aの生産効率を向上させることができる。
【0099】
C.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0100】
C−1.第1変形例:
上記実施例では、空気収容室330は、容積の異なる直方体形状の上部収容室337と直方体形状の下部収容室350と、それらを連通させる連通流路338を備えていたが、空気収容室330の形状はこれに限定されるものではない。すなわち、液体収容室340から逆流してきたインクを貯留できる所定の容積を有する構成であれば良い。例えば、空気収容室330を直方体形状の1室のみから構成しても良いし、3室以上の収容室を有する構成としても良い。
【0101】
C−2.第2変形例:
上記実施例では、大気開放口318は、垂直投影面330hhの角部330s1〜330s4のうち、液体収容室340から最も離れた2つの角部330s1、330s2のうちの第1の角部330s1に含まれる位置に配置されていたが(図9(B))、これに限定されるものではない。垂直投影面330hhの他の角部330s2〜330s4のいずれかに含まれる位置に大気開放口318を配置しても良い。但し、大気開放口318は、使用姿勢における鉛直方向について、空気室中点SM1よりも最上面330hに近い位置に配置されている必要がある。なお、大気開放口318がいずれかの角部330s1〜330s4に含まれる位置に配置することで、対応させて空気側開口351、液体側開口352の配置位置も変化させる。すなわち、空気側開口351は、垂直投影面330hhについて大気開放口318が含まれる角部と対角関係にある角部に配置される。また、液体側開口352は、垂直投影面340hhについて大気開放口318が含まれる角部と対角関係に相当する位置にある角部に配置される。このようにしても、上記実施例と同様に、インクタンク30の状態が変化した場合でもインクが大気開放口318から外部に向かって流れ出す可能性を低減できる。
【0102】
C−3.第3変形例:
上記実施例では、インクタンク30、30aは、液体保持部345を有していたが、液体保持部345を有さなくても良い。すなわち、液体収容室340に区画壁342を設けなくても良い。このようにしても、上記実施例と同様に、インクが大気開放口318から外部に向かって流れ出す可能性を低減することができる。
【0103】
C−4.第4変形例:
上記実施例及び変形例では、液体収容容器としてプリンター12に用いられるインクタンク30,30aを例に説明を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば液晶ディスプレー等の色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等の液体噴射装置に液体を供給可能な液体収容容器に本発明は適用できる。ここで、液体収容容器は、液体を注入する液体注入口と、液体収容容器内部に空気を導入するための大気開放口とが別に設けられている。上記の各種の液体噴射装置に液体収容容器を使用する際には、各種の液体噴射装置が噴射する液体の種類に応じた液体(色材,導電ペースト,生体有機物等)を、液体収容容器内部に収容すれば良い。また、各種液体噴射装置と各種液体噴射装置に対応した液体収容容器を備える液体噴射システムとしても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1…液体噴射システム
10…ケース
12…プリンター
13…用紙給紙部
14…用紙排出部
16…キャリッジ
16a…インク供給針
17…記録ヘッド
20…サブタンク
20Bk…サブタンク
20Ma…サブタンク
20Cn…サブタンク
20Yw…サブタンク
24…ホース
30…インクタンク
30a…インクタンク
32…タンク本体
32a…タンク本体
34…フィルム(シート部材)
42…蓋部材
50…タンクユニット
54…上面ケース
56…第1の側面ケース
58…第2の側面ケース
202…液体受入部
204…インク貯留室
206…フィルター
208…インク流動路
300…大気開放流路
302…栓部材
304…液体注入口
304m…開口
306…液体導出部
310…第1の流路
312…気液分離室
313…土手
314…連通流路
316…シート部材
317…大気導入口
317a…連通流路
318…大気開放口
319…連通流路
319a…連通口
320…連通流路
320a…一端部
320b…他端部
320p…連通流路
322…フィルム
322a…フィルム
324…第1の嵌合部
325…第2の嵌合部
325a…貫通孔
330…空気収容室
330h…最上面
330u…最底面
330s1…第1の角部
330s3…第2の角部
330hh…垂直投影面
337…上部収容室
338…連通流路
339…下部収容室
340…液体収容室
340h…最上面
340t…空気貯留部
340u…最底面
340k3…角部
340hh…垂直投影面
342…区画壁
345…液体保持部
348…他端部
349…液体出口
350…第2の流路
351…空気側開口
352…液体側開口
362…リブ
384…仕切壁
fa…上面
fb…底面
fc…右側面
fd…左側面
fe…正面
ff…後面(対向壁面部)
sf…水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置に液体を供給するための液体収容容器であって、
前記液体を収容するための液体収容室と、
前記液体収容室に前記液体を注入するための液体注入口であって、液体注入口を塞ぐ栓部材が脱着可能に取り付けられる液体注入口と、
前記液体収容室内の前記液体の消費に伴って外部の空気を前記液体収容室内に導入するための大気開放流路と、
一端部が前記液体収容室内に配置され、他端部が外部へ向かって開口することで、前記液体収容室内の前記液体を外部に向かって流通させるための導出流路と、を備え、
前記大気開放流路は、
所定の容積を有する空気収容室であって、前記液体収容室に前記液体を注入する際の前記液体収容容器の注入姿勢において、前記液体収容室よりも上方に位置する空気収容室と、
一端部が前記空気収容室内で開口し、他端部が外部へ向かって開口することで前記空気収容室と外部とを連通させる第1の流路と、
一端部が前記空気収容室内で開口し、他端部が前記液体収容室内で開口することで前記空気収容室と前記液体収容室とを連通させる第2の流路であって、メニスカスを形成することで前記液体を保持可能な第2の流路と、を備え、
前記液体収容容器は、前記液体噴射装置に前記液体を供給する際の前記液体収容容器の使用姿勢において、
前記第1の流路の前記一端部である大気開放口は、鉛直方向について、前記空気収容室の空気室最上面と空気室最底面とを結ぶ線分の中点である空気室中点よりも前記空気室最上面に近い位置であって、前記使用姿勢において前記空気収容室の内面を鉛直下方に垂直投影した際に形成される垂直投影面である第1の長方形の最外枠投影面の4つの角部の一つである第1の角部に含まれる位置に設けられ、
前記第2の流路の前記一端部である空気側開口は、前記空気室中点よりも前記空気室最底面に近い位置であって、前記最外枠投影面の前記4つの角部のうち前記第1の角部と対角位置にある第2の角部に含まれる位置に設けられ、
前記第2の流路の前記他端部である液体側開口は、以下の条件(a),(b)を満たす位置に設けられている、液体収容容器。
(a)前記使用姿勢における鉛直方向について、前記液体収容室の液体室最上面と液体室最底面とを結ぶ線分の中点である液体室中点よりも前記液体室最底面により近い位置。
(b)前記使用姿勢において前記液体収容室の内面を鉛直下方に垂直投影した際に形成される垂直投影面である第2の長方形の最外枠投影面の4つの角部の一つである第3の角部であって、前記第1の長方形の最外枠投影面における前記第1の角部と対角位置に相当する位置にある第3の角部に含まれる位置。
【請求項2】
請求項1記載の液体収容容器であって、
前記液体注入口は、前記液体収容室を区画形成する壁面のうち、前記液体収容室に対して前記空気収容室が配置されている側の空気側壁面に設けられ、
前記注入姿勢において、前記液体収容室のうち前記空気側壁面が上面となる、液体収容容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体収容容器であって、
前記導出流路の前記一端部である液体出口は、前記液体収容容器の前記注入姿勢及び前記使用姿勢のそれぞれにおける鉛直方向について、前記液体収容室の最上面と最底面とを結ぶ線分の中点である液体室中点よりも前記最底面に近い位置に位置するように前記液体収容室内に設けられている、液体収容容器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液体収容容器であって、
前記液体収容室、前記空気収容室、および、前記第2の流路は、
一面が開口した凹状形状の容器本体と、
前記開口を塞ぐフィルムと、により形成されている、液体収容容器。
【請求項5】
請求項4に記載の液体収容容器であって、さらに、
前記フィルムを保護するための蓋部材であって、前記フィルムを覆う蓋部材を備える、液体収容容器。
【請求項6】
タンクユニットであって、
請求項4に記載の液体収容容器であって、前記開口と対向する対向壁面部は前記開口と略同一形状である液体収容容器を複数備え、
1の前記液体収容容器の前記フィルムを、隣り合う他の前記液体収容容器の前記対向壁面部が覆うように、前記複数の液体収容容器は積層されている、タンクユニット。
【請求項7】
タンクユニットであって、
請求項4に記載の液体収容容器を2つ備え、
2つの前記液体収容容器のそれぞれの前記開口と対向するそれぞれの対向壁面部は共通する単一の部材で構成され、
2つの前記容器本体は一体成形されている、タンクユニット。
【請求項8】
液体噴射システムであって、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液体収容容器と、
対象物に前記液体を噴射するためのヘッドを有する液体噴射装置と、
前記液体収容容器と前記液体噴射装置とを接続し、前記液体収容室の前記液体を前記液体噴射装置に流通させる流通管と、を備える、液体噴射システム。
【請求項9】
請求項8に記載の液体噴射システムであって、
前記液体噴射装置は、プリンターであり、
前記液体収容容器の前記液体収容室はインクを収容している、液体噴射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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