説明

液体収容容器、画像形成装置及び弁機構

【課題】弁座部材を組み付ける際に、弁座は半径方向と面方向に圧縮されるため、内周側が歪んで、弁体の当接が不完全になりリークが発生する。
【解決手段】インクを収容する容器本体100の内外を連通する大気開放穴131を構成する筒状のホルダ装着部151内に嵌め込まれた環状のシール部材154及びシール部材154に内側から押圧付勢されて当接する球状部材156からなる弁手段を有し、シール部材154は、ホルダ装着部151との間を封止する第1の弾性部154aと、球状部材156との間を封止する第2の弾性部154bとを有し、第1の弾性部154aと第2の弾性部154bとは異なる材料で形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容容器、画像形成装置及び弁機構に関し、特にインクを収容する液体収容容器、液滴を吐出する記録ヘッドを備えるが画像形成装置、液体収容容器の大気開放弁に適した弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出する装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0004】
このような液滴を吐出する装置を備えて画像を形成する画像形成装置においては、キャリッジ上に記録ヘッドに記録液を供給する小容量の液体収容容器であるサブタンク(ヘッドタンク、バッファタンクと称されるものを含む。)を搭載し、大容量のメインタンク(インクカートリッジ、メインカートリッジ)を装置本体側に設置し、サブタンクに装置本体側のメインタンクからインクを補充供給するようにした装置、あるいは、記録ヘッドとともに交換可能に液体収容容器であるインクカートリッジを搭載するようにした装置が知られている。
【0005】
このようなサブタンクの構成として、特許文献1、2に記載されているように、ケース(容器本体)に装着され、先端部に大気開放穴を介して容器本体の空気流路と連通する大気開放穴が形成されたホルダと、ホルダ内に設けられ、大気開放穴と空気流路とを連通する弁座と、弁座に当接または離隔するように移動する弁体であるボールと、ボールを弁座に当接するように付勢するコイルスプリングと、ホルダ内に設けられるとともに一端部が大気開放穴から外方に突出し、他端部がボールに対向する押圧ピンとを備えた大気解放機構(弁機構)を有し、押圧ピンを外部の駆動ユニットで作動される大気開放ピンにより押圧することで、大気開放機構を開放状態にするようにしたサブタンクが記載されている。
【特許文献1】特開2005−138472号公報
【特許文献2】特開2007−210231号公報
【特許文献3】特開2005‐169674号公報
【0006】
また、特許文献4にはシール部材を弁体またはシール面形成部材に一体化した弁機構が記載されている。
【特許文献4】特開2007−237584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記サブタンクの大気開放機構においては、一つの弾性材で形成されたシール部材(弁座部材)によって構造体であるホルダとの間の封止及び弁体であるボールとの間(弁開閉部)の封止を行っているため、シール部材を構造体に組み込むとき、部品の精度、組付け位置のばらつき等により、シール部材に歪みが生じ、弁体が当接するシール部分が変形し、閉弁時に弁体とシール部材との間に隙間が生じてシール性が損なわれるという課題がある。
【0008】
このように大気開放機構のシール性が損なわれると、リークが発生し、サブタンク内の負圧が維持されず、滴吐出異常となるという課題がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、1つの弁座部材で構造体と弁体との間のシールを行う場合のシール性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体収容容器は、
液体を収容する容器本体の内外を連通する連通路と、
この連通路を構成する筒状の構造体内に嵌め込まれた環状の弁座部材及びこの弁座部材に対して内側から押圧付勢されて当接する弁体を有する弁手段と、を備え、
前記弁座部材は、前記筒状の構造体との間を封止する第1の弾性部と、前記弁体との間を封止する第2の弾性部とを有し、前記第1の弾性部と前記第2の弾性部が異なる材料で形成されている
構成とした。
【0011】
ここで、前記弁座部材の第1の弾性部と前記第2の弾性部が互いに離間して形成されている構成とできる。
【0012】
また、前記弁座部材の第2の弾性部の硬度は前記第1の弾性部の硬度よりも低い構成とできる。
【0013】
また、前記弁座部材の第1の弾性部は軸方向の端面側に形成され、前記第2の弾性部は径方向の内周側に形成されている構成とできる。
【0014】
また、前記弁座部材は軸方向で表裏が対称形状である構成とできる。
【0015】
本発明に係る画像形成装置は、液滴を吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドにインクを供給する請求項1ないし5のいずれかに記載の液体収容容器と、を備えている構成とした。
【0016】
本発明に係る弁機構は、
筒状の構造体内に嵌め込まれた環状の弁座部材及びこの弁座部材に対して内側から押圧付勢されて当接する弁体を有する弁手段と、を備え、
前記弁座部材は、前記筒状の構造体との間を封止する第1の弾性部と、前記弁体との間を封止する第2の弾性部とを有し、前記第1の弾性部と前記第2の弾性部が異なる材料で形成されている
構成とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る液体収容容器及び弁機構によれば、筒状の構造体内に嵌め込まれた環状の弁座部材及びこの弁座部材に対して内側から押圧付勢されて当接する弁体を有する弁手段と、を備え、弁座部材は、筒状の構造体との間を封止する第1の弾性部と、弁体との間を封止する第2の弾性部とを有し、第1の弾性部と第2の弾性部が異なる材料で形成されているので、1つの弁座部材で構造体と弁体との間のシールを行う場合のシール性を向上することができる。
【0018】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る液体収容容器を備えているので、液体収容容器のリークが低減して、吐出不良を生じることなく、安定した画像形成を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0020】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0021】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0022】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット5によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0023】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0024】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0025】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
【0026】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0027】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0028】
さらに、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0029】
また、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0030】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0031】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0032】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0033】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0034】
次に、本発明に係る液体収容容器としてのサブタンク35の一例について図3ないし図6をも参照して説明する。なお、図3は同サブタンクの外観斜視説明図、図4は同サブタンクの分解斜視説明図、図5は同サブタンクの模式的側面説明図、図6は図5のA−A線に沿う概略断面説明図である。なお、ここでは、図を簡単にするために記録ヘッド34が1つの色の液滴を吐出する場合のサブタンク構成で説明する。上述した画像形成装置のように2つの色の液滴を吐出するようにした場合には、2つのサブタンクを一体形成する。
【0035】
サブタンク35は、記録液であるインクを収容するインク収容部100を形成する容器本体(ケース本体)101に、インク収容部100の開口(サブタンク35の一面)を封止する可撓性を有するフィルム状部材(可撓性フィルム状部材)102を接着又は溶着などで貼り付け、更にインク収容部100内部にはケース本体101とフィルム状部材102との間にフィルム状部材102を外方に付勢するための弾性部材であるバネ(スプリング)103を設けている。
【0036】
さらに、フィルム状部材102にはバネ103に対応して凸部形状となる膨らみ部102aを形成してその外面に補強部材104を貼り付けている。そして、フィルム状部材102の変位に応じて変位する検知レバー106をケース101の側部に設けた支持部107,107に揺動可能に取り付けている。
【0037】
また、ケース101にはインク収容部100にインクを補充するためのインク導入路部111を設け、このインク導入路部111とインクカートリッジ10に接続された供給チューブ36とを接続するための連結手段112を着脱自在に装着できるようにしている。
【0038】
さらに、ケース101の下部にはインク収容部100から記録ヘッド34にインクを供給するための連結部材113を取り付け、この連結部材113には記録ヘッド34のインク供給路114を形成し、インク収容部100との間にはフィルタ115を介装している。
【0039】
また、ケース101の上部分にはインク収容部100から空気を出すための空気流路121を形成している。この空気流路121は、インク収容部100に開口が臨む入口流路部分122と、この入口流路部分122に続く流路部分123とを含み、下流側でケース101に設けた大気開放穴131に連通し、更に大気開放穴131よりも使用状態で下側になる部分に蓄積部126を連続して形成している。
【0040】
この大気開放穴131を開閉することで、サブタンク35内を密閉状態にし、あるいは、サブタンク35内を、大気開放穴131を通じて大気開放状態を切り替えるための大気開放手段である大気開放弁機構132を設けている。
【0041】
また、ケース101の上部にはサブタンク35内の気体(空気)の量が所定量以上になったこと(又はインク残量が所定量以下になったこと)を検知するための2本の検知電極141、142を装着している。検知電極141、142がいずれもインクに浸されている状態と少なくとも一方がインクに浸されていない状態とで検知電極141、142間の導通状態が変化することによって気体の量(又はインクの量)を検知することができる。
【0042】
そこで、液体収容容器としてのサブタンク35における弁機構としての大気解放機構に適用した本発明の第1実施形態について図7ないし図11を参照して説明する。なお、図7は同大気解放機構の外観斜視説明図、図8は同じく断面説明図、図9は同大気開放機構のシール部材の斜視説明図、図10は同じく正面説明図、図11は同じく断面説明図である。また、図においてシール部材の第2の弾性部154b以外の断面を示すハッチングは省略している。
【0043】
ケース101に設けた大気開放穴131の周囲には円筒状の構造体であるホルダ装着部151を一体で形成し、ホルダ装着部151の外周面にホルダ155を装着し、このときホルダ装着部151の先端面とホルダ155の内面とに密着する弁座部材としての環状のシール部材154を保持している。なお、ホルダ155は、止め部155aをケース101に形成した係合部151aに嵌め込んで固定している。
【0044】
また、ホルダ装着部151内には、シール部材154に接離(当接及び離間)可能な弁体としての球状部材156を配し、この球状部材156はスプリング157によって、シール部材154の開口153を閉じる方向に付勢されている。
【0045】
このシール部材154は、構造体であるホルダ装着部151との間を封止する(シールする)第1の弾性部(構造体シール部)154aと、弁体である球状部材156との間を封止する(シールする)第2の弾性部(弁体シール部)154bとを有し、第1の弾性部154aと第2の弾性部154bとは材質を異ならせて、つまり異なる材料で形成している。
【0046】
このシール部材154の第1の弾性部154aは、天然ゴム、フッ素ゴム、EPDMなどの素材で形成しており、また、硬度としては70度以上であることが回転に対する捩れを低減することができるので好ましい。これに対し、第2の弾性部154bは、シリコンゴムで形成しており、硬度としては40度以下であることが、異物を挟み込んでも一定のシール性を保つことができるので好ましい。
【0047】
さらに、ホルダ155には弁体としての球状部材156よりも大気側に、弁が開く方向に球状部材156を押圧する大気開放可動部材158が、進退可能な状態で装着されている。この大気開放可動部材158の外周側はホルダ155の開口部159に進退可能に嵌合されている。
【0048】
また、大気開放機構132の弁体である球状部材156を開閉させるため、駆動アクチュエータ部172を備え、図示しない外部駆動機構によって押し出されるプランジャ171を有し、プランジャ171はアクチュエータ部172のフレーム173との間に設けたリターンスプリング174によって進退可能な動作をする。このような構成で大気開放可動部材158をプランジャ171で押圧して、球状部材156をスプリング157の付勢に抗して押込むことでシール部154の開口153を開いて開放状態(開弁状態)とする。
【0049】
このように構成した大気開放機構132における組み付け方法は、ホルダ155にシール部材154、ボール156、スプリング157を組み込み、シール部材154を挟み込むように、図7で矢示B方向にケース101のホルダ装着部151に嵌め込み、同図で矢示C方向に回転して、ホルダ155の2箇所の凸部(止め部155a)を、ケース(構造体)101に形成した引っ掛け部(係合部)151aに係合させて、固定する。
【0050】
そのため、図12に示す比較例のように、O−リングなどの環状シール部材200を使用した場合、シール部材200はホルダ155の内面とケース(構造体)101のホルダ装着部151の先端面に密着し、ホルダ155の回転に合わせて捩じられることにより変形し、弁体である球状部材ボール156とのシール面に隙間201を生じ、リークが発生する場合がある。
【0051】
そこで、本発明におけるシール部材134は、ホルダ装着部151との間を封止する第1の弾性部(構造体シール部)154aと、球状部材156との間を封止する第2の弾性部(弁体シール部)154bとを有し、第1の弾性部154aと第2の弾性部154bとは材質を異ならせて形成している。
【0052】
この場合、シール部材154の第1の弾性部154aは天然ゴム、フッ素ゴム、EPDMなどの素材で形成し、硬度としては70度以上としているので、ホルダ155の回転による捩れによる変形を低減することができて、組み付け時のシール部材154の変形を抑制することができ、一方、第2の弾性部154bはシリコンゴムで形成しており、弁体である球状部材156との間を確実に封止できる。
【0053】
このように、筒状の構造体内に嵌め込まれた環状の弁座部材及びこの弁座部材に対して内側から押圧付勢されて当接する弁体を有する弁手段を備え、弁座部材は、筒状の構造体との間を封止する第1の弾性部と、弁体との間を封止する第2の弾性部とを有し、第1の弾性部と第2の弾性部が異なる材料で形成されているので、1つの弁座部材で構造体と弁体との間のシールを行う場合のシール性を向上することができる。
【0054】
そして、弁体シール部となる第2の弾性部154bを構造体シール部となる第1の弾性部154aより低い硬度にすることにより、シール部材の捩れや歪み等の変形を抑制しながら、弁体シール部134bは異物を挟み込んでもリークしにくくすることができ、信頼性の高い弁機構とすることができる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態について図13ないし図16を参照して説明する。なお、図13は同実施形態の大気解放機構の断面説明図、図14は同大気開放機構のシール部材の斜視説明図、図15は同じく正面説明図、図16は同じく断面説明図である。
【0056】
このシール部材154は、基材154cに、構造体であるホルダ装着部151との間を封止する(シールする)第1の弾性部(構造体シール部)154aと、弁体である球状部材156との間を封止する(シールする)第2の弾性部(弁体シール部)154bとを設け、第1の弾性部154aと第2の弾性部154bとは材質を異ならせて、つまり異なる材料で形成している。
【0057】
これにより、シール部材154の構造体シール部となる第1の弾性部154aと弁体シール部となる第2の弾性部154bを離間して配置している。
【0058】
このように構成することで、構造体シール部となる第1の弾性部154aの歪みや変形が弁体シール部となる第2の弾性部154bに対して影響を与えないようにすることができる。
【0059】
次に、本発明の第3実施形態について図17ないし図19を参照して説明する。なお、図17は同実施形態のシール部材の斜視説明図、図18は同じく正面説明図、図19は同じく断面説明図である。
ここでは、シール部材154は軸方向の表裏が対称形状になる形状に形成している。これにより、シール部材154をホルダ155に組み込むとき、方向性に関係なく作業できるため、組付けミスのない、品質の安定した弁機構とすることができる。
【0060】
なお、上記実施形態において、サブタンクの大気開放機構に本発明に係る弁機構を適用した例で説明したがこれに限るものではない。また、液体収容容器とサブタンクに適用した例で説明したこれに限るものではなく、またサブタンクであって内部に負圧を発生させる負圧発生手段を備えたタンク構成に限るものではない。本発明に係る画像形成装置は、プリンタ単機能構成のものに限らず、プリンタ/ファクシミリ/複写などの複合機能を有する画像形成装置であっても良く、したがってまた、液体収容容器もこれらの画像形成装置に適用するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る液体収容容器である同画像形成装置のサブタンクの外観斜視説明図である。
【図4】同サブタンクの分解斜視説明図である。
【図5】同サブタンクの模式的側面説明図である。
【図6】図5のA−A線に沿う概略断面説明図である。
【図7】同実施形態における本発明に係る弁機構としての大気解放機構の外観斜視説明図である。
【図8】同じく断面説明図である。
【図9】同大気開放機構のシール部材の斜視説明図である。
【図10】同じく正面説明図である。
【図11】同じく断面説明図である。
【図12】比較例に係る大気解放機構の断面説明図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る大気解放機構の断面説明図である。
【図14】同大気開放機構のシール部材の斜視説明図である。
【図15】同じく正面説明図である。
【図16】同じく断面説明図である。
【図17】本発明の第3実施形態におけるシール部材の斜視説明図である。
【図18】同じく正面説明図である。
【図19】同じく断面説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1…装置本体
2…給紙トレイ
3…排紙トレイ
33…キャリッジ
34…記録ヘッド
35…サブタンク(液体収容容器)
131…大気開放穴
132…大気開放機構
151…ホルダ装着部
154…シール部材(弁座部材)
154a…第1の弾性部
154b…第2の弾性部
154c…基材
155…ホルダ
156…球状部材(ボール、弁体)
157…スプリング(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器本体の内外を連通する連通路と、
この連通路を構成する筒状の構造体内に嵌め込まれた環状の弁座部材及びこの弁座部材に対して内側から押圧付勢されて当接する弁体を有する弁手段と、を備え、
前記弁座部材は、前記筒状の構造体との間を封止する第1の弾性部と、前記弁体との間を封止する第2の弾性部とを有し、前記第1の弾性部と前記第2の弾性部が異なる材料で形成されている
ことを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容容器において、前記弁座部材の第1の弾性部と前記第2の弾性部が互いに離間して形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体収容容器において、前記弁座部材の第2の弾性部の硬度は前記第1の弾性部の硬度よりも低いことを特徴とする液体収容容器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の液体収容容器において、前記弁座部材の第1の弾性部は軸方向の端面側に形成され、前記第2の弾性部は径方向の内周側に形成されていることを特徴とする液体収容容器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液体収容容器において、前記弁座部材は軸方向で表裏が対称形状であることを特徴とする液体収容容器。
【請求項6】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドにインクを供給する請求項1ないし5のいずれかに記載の液体収容容器と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
筒状の構造体内に嵌め込まれた環状の弁座部材及びこの弁座部材に対して内側から押圧付勢されて当接する弁体を有する弁手段と、を備え、
前記弁座部材は、前記筒状の構造体との間を封止する第1の弾性部と、前記弁体との間を封止する第2の弾性部とを有し、前記第1の弾性部と前記第2の弾性部が異なる材料で形成されている
ことを特徴とする弁機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−297970(P2009−297970A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153486(P2008−153486)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】