説明

液体収容容器及び液体噴射装置

【課題】組み立て工数の削減及び部品点数の削減を実現し得る構成とされた液体収容容器及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】本発明の液体収容容器は、容器内に形成された貯留室に液体を収容する容器本体と、貯留室内に配設されて液体を撹拌する撹拌部材と、撹拌部材を移動可能に支持するとともに容器と一体的に形成された支持構造と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器及び液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドから液体を吐出する液体噴射装置として、インクジェット式プリンタがある。このプリンタは、カートリッジ又はインクタンクに貯留された染料インク又は顔料インクを記録ヘッドから吐出して印刷を行う。
【0003】
顔料インクは、耐ガス性、耐水性に優れるが、溶媒に色材を溶解した染料インクとは異なり、分散媒に顔料を分散させて製造されている。このため、長時間放置すると、顔料及び分散媒の比重差により顔料が沈降し、インクの濃度差が発生してしまう問題がある。
【0004】
この問題に対し、顔料インクを撹拌する機構として、例えば、球状に形成された金属製の撹拌子を内部に配設し、キャリッジの動力に従ってこの撹拌子を転がせることでインクを撹拌するものがある。
【0005】
さらに、インクカートリッジ内に、金属製の撹拌板を配設し、キャリッジの動力に従ってこの撹拌板を揺動させることでインクを撹拌するものが提案されている(特許文献1,2)。これら特許文献1,2には、インク収容室内に設けられた一対の支持部(軸受)によって撹拌部材が回動可能に支持された構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−230189号公報
【特許文献2】特開2006−44153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記文献の構成の場合、以下のような問題がある。
特許文献1には、軸部の先端に撹拌部材が抜け出すのを防止する抜け止め部を有する支持部が記載されているが、この抜け止め部は撹拌部材を軸部に取り付けた後、軸部の先端を熱加工で拡径することにより形成するか、あるいは抜け止め部を別部品として形成するかのいずれかにより形成される。このため、組み立て工数が多くなる。
特許文献2では、撹拌部材に軸受に軸支される回転軸が設けられており、その形状が複雑であるとともに、軸受や回転軸を別部品として形成するため、部品点数が多くなる。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、組み立て工数の削減及び部品点数の削減を実現し得る構成とされた液体収容容器及び液体噴射装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体収容容器は、容器内に形成された貯留室に液体を収容する容器本体と、前記貯留室内に配設されて前記液体を撹拌する撹拌部材と、前記撹拌部材を移動可能に支持するとともに前記容器と一体的に形成された支持構造と、を備え、前記撹拌部材は、前記液体を撹拌する撹拌部と、前記撹拌部から延出する狭幅部および前記狭幅部の前記撹拌部とは反対側に設けられた係止部からなる装着部と、を有し、前記支持構造は、前記容器の壁部から前記貯留室内に突出し、前記係止部を挿通して支持する貫通部を形成する支持部を備えたことを特徴とする。
【0010】
これによれば、液体を撹拌する撹拌部材を支持する支持構造は、容器と一体的に形成されていることから、容器に対して支持構造を別途形成したり、撹拌部材を組み込んだ後に先端を溶融させたりする必要がなくなるため、組み立て工数の削減および部品点数の削減を実現することができる。また、容器内において撹拌部材が支持部にて確実に支持されることとなり、液体の撹拌が良好に行えて顔料の沈降を防止することができる。
【0011】
また、前記支持構造は前記支持部の外周と前記貫通部とを貫通する開口を有し、前記支持部が鉤形の一対の支持柱を対向させて構成されていてもよい。
これによれば、撹拌部材を、鉤形の一対の支持柱によって形成される開口を介して挿通部へと挿入させることにより、支持部に撹拌部材を支持させることができる。撹拌部材の取り付け作業が容易になる。
【0012】
また、前記装着部は、当該装着部と前記撹拌部とが並ぶ方向に直交する方向における前記狭幅部の幅が前記係止部の幅よりも小さく、前記貫通部の直径が、前記狭幅部の幅よりも広く、前記係止部の前記幅よりも狭くなるように形成されている構成としてもよい。
これによれば、一対の支持柱どうしの間に撹拌部材の狭幅部を挿通させて係止部を支持柱に支持させることにより、撹拌部材を支持柱間に垂下させた状態で支持させることが可能となる。これにより、撹拌部材が移動可能に支持されて、容器内の液体を効果的に撹拌することが可能となる。
【0013】
また、前記一対の支持柱は、各々の先端に設けられた爪形状を呈する脱落防止部どうしの間隔が前記狭幅部の前記幅よりも狭くなるように配置されている構成としてもよい。
これによれば、支持部に支持された撹拌部材が支持柱に沿って移動(揺動、摺動)する際、撹拌部材の狭幅部が支持柱の脱落防止部に当接することによってそれ以上の移動が規制されるので、撹拌部材を支持部から脱落させることなく確実に支持することのできる支持構造となっている。
【0014】
また、前記一対の支持柱には、先端に向かって隣り合う他の前記支持柱との距離が広がるように傾斜する傾斜面が形成されている構成としてもよい。
これによれば、支持部に撹拌部材を支持させる際、各支持柱に形成された傾斜面によって開口側から貫通部内へと撹拌部材が誘導され、撹拌部材を支持部に組み込むことが容易になる。
【0015】
また、前記撹拌部の一辺に沿って複数の前記装着部が一列に並んで設けられており、前記支持部が前記装着部の数に応じて複数設けられている構成としてもよい。
これによれば、撹拌部材の大きさに係わらず、支持部において撹拌部材を安定して支持させることが可能となる。これにより、液体の撹拌効率が向上し、顔料の沈降を効果的に防止することができる。
【0016】
本発明の液体収容容器は、容器内に形成された貯留室に液体を収容する容器本体と、前記貯留室内に配設されて前記液体を撹拌する撹拌部材と、前記撹拌部材を移動可能に支持するとともに前記容器と一体的に形成された支持構造と、を備え、前記支持構造は、前記容器の壁面から前記貯留室内に突出する軸体と、当該軸体の先端に設けられ前記軸体の径方向に移動可能な複数の脱落防止部と、を有する支持部を有し、前記撹拌部材は、前記液体を撹拌するとともに前記脱落防止部を挿通可能な係止孔を有する撹拌部を有することを特徴とする。
【0017】
これによれば、液体を撹拌する撹拌部材を支持する支持構造は、容器と一体的に形成されていることから、容器に対して支持構造を別途形成したり、撹拌部材を組み込んだ後に先端を溶融させたりする必要がなくなるため、組立て工数の削減および部品点数の削減を実現することができる。また、容器内において撹拌部材が支持部にて確実に支持されることとなり、液体の撹拌が良好に行えて顔料の沈降を防止することができる。
【0018】
また、前記撹拌部の一辺に沿って複数の前記係止孔が一列に並んで設けられており、前記支持部が前記係止孔の数に応じて複数設けられている構成としてもよい。
これによれば、撹拌部材の大きさに係わらず、支持部において撹拌部材を安定して支持させることが可能となる。これにより、液体の撹拌効率が向上し、顔料の沈降を効果的に防止することができる。
【0019】
また、前記容器と一体的に形成されたピンを有し、前記撹拌部材には前記ピンを挿入可能な挿入孔が形成されている構成としてもよい。
これによれば、支持部に支持される撹拌部材の意図しない方向への回転を規制することができるので、液体の撹拌効率が向上する。
【0020】
本発明の液体噴射装置は、主走査方向に沿って往復移動するキャリッジに液体収容容器及び液体噴射ヘッドを搭載し、前記液体収容容器から前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体噴射装置において、上記前記液体収容容器を用いることを特徴とする。
これによれば、長時間使用しない期間があったとしても、液体中の顔料の沈降を防止して容器内における液体の濃度差を無くすことができる。これにより、液体噴射ヘッドに良好な状態の液体を常に供給することが可能となり、記録品質の低下を招くことを阻止することができる。
【0021】
また、前記液体収容容器は、前記撹拌部材が前記主走査方向に移動可能に配設される構成としてもよい。
これによれば、キャリッジの主走査方向への移動にしたがって撹拌部材が移動することになり、記録中のみならず、非記録中にキャリッジを移動させることで非記録中においても液体の撹拌が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係るインクジェット式記録装置の要部を説明する斜視図。
【図2】第1実施形態に係るインクカートリッジの概略構成を示す斜視図。
【図3】インクカートリッジの詳細な構成を示す側面図。
【図4】(a)は、第1インク貯留部内に装着される撹拌板の概略構成を示す平面図、図4(b)は、第2インク貯留部内に装着される撹拌板の概略構成を示す平面図。
【図5】(a)は、図3のA−A線に沿う断面図、(b)は、図3のB−B線に沿う断面図。
【図6】インクカートリッジの支持構造を拡大して示す斜視図。
【図7】(a)は、インクカートリッジ内での撹拌板の移動状態を示す断面図、(b)はインクカートリッジ内での撹拌板の移動状態を示す斜視図。
【図8】(a)撹拌板の回転状態を説明するための図、(b)撹拌板および支持構造の変形例を示す図。
【図9】第2実施形態のインクカートリッジCの概略構成を示す側面図。
【図10】(a)は、図9のC−C断面図、(b)は(a)に示す支持機構の拡大図。
【図11】(a)は、図9のD−D断面図、(b)は(a)に示す支持機構の拡大図。
【図12】支持構造の変形例を示す概略構成図。
【図13】支持構造の変形例を示す概略構成図。
【図14】支持構造の変形例を示す概略構成図。
【図15】支持構造の変形例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置(以下、単にプリンタ1という)の要部を説明する斜視図である。
【0024】
図1に示すように、プリンタ(液体噴射装置)1は、上側が開口する略直方体形状のフレーム2を備えている。フレーム2には、プラテン3が架設されており、不図示の紙送り機構により、このプラテン3上を印刷用紙Pが副走査方向(図1中Y軸方向)に給送されるようになっている。
そして、フレーム2にはプラテン3と平行にガイド部材4が架設されており、このガイド部材4には、キャリッジ5がガイド部材4の軸線方向に移動可能に挿通支持されている。
また、このキャリッジ5は、タイミングベルト5bを介してキャリッジモータ5aに駆動連結されており、キャリッジモータ5aの駆動によってガイド部材4に沿って主走査方向(図1中X軸方向)に往復移動されるようになっている。
【0025】
また、キャリッジ5には、4つのインクカートリッジ(液体収容容器)Cが着脱可能に装着されている。具体的には、第1インクカートリッジC1〜第4インクカートリッジC4が着脱可能に装着されている。
第1インクカートリッジC1は、内部に、ブラックインクを収容している。第2インクカートリッジC2〜第4インクカートリッジC4は、内部に、各種カラーインクを収容している。各種インクは、例えば、分散媒に色材である顔料を分散させた、いわゆる顔料インクである。
なお、第1インクカートリッジC1〜第4インクカートリッジC4を互いに区別しないで説明する場合には、単にインクカートリッジCとして説明する。また、ブラックインク及び各種カラーインクを総称して、インクとして説明する。
【0026】
キャリッジ5のプラテン3に対向する面には、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)6が搭載されている。記録ヘッド6の下面には不図示のノズル列の開口が形成されている。
各ノズル列は、各インクにそれぞれ対応しており、不図示の圧電素子の駆動により、印刷用紙P上にインクの液滴が吐出されるようになっている。
【0027】
また、フレーム2内には、メンテナンスユニット7が備えられている。メンテナンスユニット7は、キャリッジ5の移動範囲内であって、印刷用紙Pの搬送経路外の領域である非印刷領域に設けられており、本実施形態では図1中右側に設けられたホームポジションに配設されている。
このメンテナンスユニット7は、非印刷状態のときに記録ヘッド6をキャップ8にて封止し、ノズル内の乾燥や印刷不良を防止するためのヘッドクリーニングを行うものである。
【0028】
(インクカートリッジの第1実施形態)
次に、第1実施形態に係るインクカートリッジについて、図2〜図5を参照して説明する。
図2は、第1実施形態に係るインクカートリッジの概略構成を示す斜視図である。
図3は、インクカートリッジの詳細な構成を示す側面図である。
【0029】
図2及び図3に示すように、インクカートリッジC1〜C4は、略直方体状に形成されたケース10(容器)を備えている。ケース10は、一側面(右壁部)が開口した箱体状に形成されたケース本体(容器本体)11と、右壁部となるフィルム状の蓋部12とから構成されている。
ケース10は、具体的には、上壁部11a、底壁部11b、前壁部11c、背壁部11d及び左壁部11eにより、右壁部側が開口した箱体状に形成されている。
【0030】
そして、ケース本体11の内部には、ケース本体11の開口を蓋部12により封止することにより形成されたインクを貯留可能な第1インク貯留室13A及び第2インク貯留室13Bが設けられている。具体的には、上壁部11a、底壁部11b、前壁部11c及び背壁部11dの右壁部側の側面にフィルム状の蓋部12を溶着することで、密閉された第1インク貯留室13A及び第2インク貯留室13Bが形成されている。
【0031】
ケース本体11の上壁部11aには、インク注入孔14が貫通形成されている。このインク注入孔14からは、インクが第1インク貯留室13A内に注入されるようになっている。
また、上壁部11aには、大気連通孔15a及び連通溝15bが形成されている。大気連通孔15aは、上壁部11aに貫通形成され、第1インク貯留室13Aと外部とを連通している。連通溝15bは、上壁部11aを蛇行するように形成され、大気連通孔15aに連通している。
また、インク注入孔14、大気連通孔15a及び連通溝15bの一部は、上壁部11aに貼着された封止フィルム16によって封止される。
そして、第1インク貯留室13A内は、封止された大気連通孔15a及び連通溝15bを介して、大気開放された連通溝15bの端部によって、大気に開放される。
【0032】
また、ケース本体11の底壁部11bには、インク吐出孔17が貫通形成されている。このインク吐出孔17は、底壁部11bの外側面に突出形成された供給部18内に連続して形成され、供給部18の下面にて開口している。
供給部18内には、不図示の弁機構が備えられ、インクカートリッジC1〜C4をキャリッジ5に装着すると、キャリッジ5に設けられた不図示のインク針が供給部18内に貫挿されて弁機構を開弁し、第2インク貯留室13B内のインクをインク針に供給するようになっている。
【0033】
ケース本体11は、このケース本体11と一体的に形成された複数の支持柱(支持部)21を有し、左壁部11eから第1インク貯留室13A及び第2インク貯留室13B内に向けて立設するように形成されている。支持柱21は第1インク貯留室13A及び第2インク貯留室13B内にそれぞれ2本ずつ形成され、これら2本の支持柱21,21が奥行き方向(Y軸方向)に所定の間隔を空けて並んで設けられている。
【0034】
図3に示すように、第1インク貯留室13A及び第2インク貯留室13B内には、それぞれインク(液体:図6)Kを撹拌する撹拌板25(25A,25B:撹拌部材)が設けられており、それぞれが支持部20によって移動可能に支持されている。
【0035】
本実施形態の支持部20は、ケース本体11の左壁部(壁面)11eから貯留室13A,13B内に突出しており、撹拌板25A,25Bを挿通して支持する貫通部28(図6)と、外周と貫通部28とを貫通する開口28A(図6)とを有して構成されている。
【0036】
具体的に、支持部20は、ケース本体11の左壁部(壁面)11eから貯留室13A,13B内に突出する2本の支持柱(支持軸)21,21によって構成されている。これら2本の支持柱21,21は、鉤形を呈するもので、上記した貫通部28および開口28Aを形成すべく、互いに所定の間隔をおいて配置されている。これら2本の支持柱21,21に、ケース本体11の幅方向(X方向)へ揺動、摺動可能に引っ掛けられるように係合している。このような支持部20によって本実施形態の支持構造が構成されている。
【0037】
図4(a)は、第1インク貯留部内に装着される撹拌板の概略構成を示す平面図、図4(b)は、第2インク貯留部内に装着される撹拌板の概略構成を示す平面図である。
撹拌板25A,25Bは、インクの比重より大きい比重を有する合成樹脂又は金属等からなる平面視略矩形状の平板であって、インクを撹拌する撹拌部26と支持柱21,21に装着される装着部27とをそれぞれ有して構成されている。装着部27は、撹拌部26の面方向外側に延出する第1部位(狭幅部)27Aと、第1部位27Aの撹拌部26側とは反対側に設けられた第2部位(係止部)27Bと、を有する。そして、これら撹拌部26と装着部27との間には鉤形の切欠部25a,25aが形成されている。
【0038】
撹拌板25A,25Bは、撹拌部26と装着部27とが面方向で並ぶ方向(垂直方向)に直交する方向(水平方向)において、撹拌部26の幅W1(最大幅)と、第1部位27Aの幅W2と、第2部位27Bの幅W3とは、幅W2<幅W3<幅W1となるような寸法に設定されている。また、垂直方向における切欠部25a,25aの幅W4(撹拌部26と第2部位27Bとの間隔)は、支持柱21の幅W5(図6)よりも大きい。
撹拌板25A,25Bの形状は貯留室13A,13Bの形状沿って形成されており、これら貯留室13A,13Bの形状に応じて適宜変更が可能である。本実施形態における撹拌板25A,25Bの厚みは約1mmとするが、撹拌部26の大きさや貯留室13A,13Bの大きさ、インクの粘性などに応じて適宜変更が可能である。
【0039】
図5(a)は、図3のA−A線に沿う断面図であり、図5(b)は、図3のB−B線に沿う断面図である。また、図6は、インクカートリッジの支持構造を拡大して示す斜視図である。図7(a)は、インクカートリッジ内での撹拌板の移動状態を示す断面図、図7(b)はインクカートリッジ内での撹拌板の支持状態を示す斜視図である。
【0040】
図5(a),(b)に示すように、各貯留室13A,13B内にそれぞれ形成される支持部20,20、つまり各支持部20を構成する一対の支持柱21,21はケース本体11と一体的に形成されている。支持柱21は、ケース本体11の左壁部11eから垂直に突出するとともに撹拌板25A,25Bを支持する支持軸22と、支持軸22の先端に設けられ支持軸22の外周面よりも外側に突出する爪形状を呈した脱落防止部23と、を有して鉤形を呈するように構成されている。この脱落防止部23は支持軸22よりも対向する支持柱21側へと突出しており、対向する支持柱21,21における脱落防止部23,23どうしの間に形成される開口28Aが、対向する支持軸22,22どうしの間に形成される貫通部28と外側との連通口となっている。これら支持柱21,21の脱落防止部23,23によって、各支持部20から撹拌板25(25A,25B)が外れることが防止されている。
【0041】
次に、支持部20の構成について詳述する。
図6に示すように、上記第1インク貯留室13Aおよび第2インク貯留室13B内にそれぞれ配置される一対の支持柱21,21は、互いの脱落防止部23,23を対向させた状態でこれらが向き合う方向に所定の間隔を置いて配置されている。これら一対の支持柱21は、対向する脱落防止部23,23どうしの間の間隔L1が、撹拌板25A,25Bにおける装着部27の第1部位27Aの幅W2(図4(a),(b))よりも狭く(L1<W2)なるように配置されている。また、支持軸22,22どうしの間の間隔L2が装着部27の第1部位27Aの幅W2よりも広く、かつ、第2部位27Bの幅W3よりも狭い間隔となるように配置されている。
【0042】
支持柱21,21には、脱落防止部23,23の先端側に隣り合う他の支持柱21との距離が広がるように傾斜する傾斜面24が形成されている。支持柱21,21にそれぞれ形成された傾斜面24,24により、撹拌板25(25A,25B)が開口28Aから貫通部28(支持軸22,22)側へと誘導されやすくなる。
このような一対の支持柱21,21間に撹拌板25(25A,25B)の装着部27(第1部位27A)がはめ込まれるようにして装着されている。
【0043】
支持柱21,21間に撹拌板25(25A,25B)をはめ込む際、支持柱21,21の先端側に装着部27を押し付けて、開口28Aから貫通部28へと挿入させる。つまり、押し付けられた第1部位27Aによって支持柱21,21が左右に押し退けられて、脱落防止部23,23どうしが互いに離間する方向へ撓むことで、撹拌板25(25A,25B)が支持軸22,22間の貫通部28に挿入されるようになっている。
【0044】
本実施形態においては、上述したように、支持柱21,21の先端側にそれぞれ傾斜面24が設けられた構成のため、撹拌板25(25A,25B)の第1部位27Aを傾斜面24,24に沿って押し込むことで支持柱21,21どうしが離間する方向へ撓んで支持軸22,22側へと撹拌板25(25A,25B)がスムーズに移動する(誘導される)ことになる。
【0045】
これにより、撹拌板25(25A,25B)は、各々の重力によって鉛直方向に垂下した状態で2本の支持柱21,21に支持される。上記した支持柱21,21の配置間隔及び撹拌板25(25A,25B)の形状により、撹拌板25(25A,25B)が支持柱21,21に支持された状態において、装着部27の第1部位27Aの両側部が同時に支持軸22,22に接触することはなく、支持軸22,22に対して移動可能に支持されることになる。このため、撹拌板25(25A,25B)は、インクカートリッジCの幅方向(X方向:図7(a))に揺動したり、摺動したりできるように、2本の支持柱21,21に支持される。図7(b)に示すように、撹拌板25(25A,25B)は支持軸22,22に沿って移動し、脱落防止部23,23に当接することでそれ以上の移動は規制され、支持柱21,21からの脱落が防止されている。
【0046】
したがって、インクカートリッジCに外力が加えられ、インクカートリッジCがX軸方向と平行な方向に、所定の加速度又は減速度以上で加速又は減速されると、撹拌板25に対して加わった慣性力及び重力の合力がインクから受ける圧力等を上回り、撹拌板25(25A,25B)が、幅方向(X方向)に揺動(振子運動)したり、摺動(平行移動)したりするようになっている。
【0047】
従来においては、撹拌板25が2本の支持柱21,21から脱落しないように(外れないように)、支持柱21,21間に撹拌板25を配置した後に支持柱21,21の先端部分を溶融変形させることにより拡径させていたため、製造に手間と時間がかかる。また、ケース本体11に対して支持柱21,21が別部品として設けられていることも多く、この場合には製造工程数が多くなるという問題があった。
【0048】
本実施形態におけるインクカートリッジCは、撹拌板25(25A,25B)をそれぞれ支持する一対の支持柱21,21がケース本体11と一体的に形成されている。そして、これら支持柱21,21間に撹拌板25(25A,25B)を嵌め込むことで組み込むことのできる構成であることから、製造も簡単で作業工数も少なくなる。
よって、本実施形態の構成および製造方法によれば、組み立て工数の削減及び部品点数の削減を実現できる。
【0049】
次に、インクカートリッジCの作用について説明する。
各インクカートリッジCには、インク注入孔14から、インクが予め決められた初期充填量だけ注入される。
【0050】
そして、キャリッジ5にインクカートリッジCを装着すると、図1に示すように、インクカートリッジCの幅方向が、キャリッジ5の主走査方向(X軸方向)と平行になるように配設される。つまり、第1インク貯留室13A,第2インク貯留室13B内の撹拌板25A,25Bが移動可能な方向とキャリッジ5の主走査方向が一致するように配設される。
【0051】
次に、インクの撹拌又は印刷を行う目的で、キャリッジ5を主走査方向に沿って加速又は減速すると、インクカートリッジC内に設けられた撹拌板25A,25Bは、キャリッジ5の移動動作に従って移動し始める。これら撹拌板25A,25Bにより、第1インク貯留室13A,第2インク貯留室13B内のインクを効率的に撹拌することができる。
【0052】
その結果、第1インク貯留室13A,第2インク貯留室13B内のインクが均等に撹拌され、顔料の濃度分布も均一になる。また、撹拌板25A,25Bが垂下するように設けられたことで、小さな外力で容易に移動し、しかも何度も往復移動する。
【0053】
そして、第1インク貯留室13A,第2インク貯留室13B内のインクは、顔料濃度分布が偏りのない状態となり、顔料濃度が均一なインクが供給部18を介して記録ヘッド6に供給される。このため、例えば、比較的長い印刷休止期間の後に印刷を行っても、色濃度の偏りのない印刷物が作成される。
【0054】
また、インクカートリッジCに対して加える外力は、キャリッジ5の主走査方向の移動伴う加減速による慣性力には限らない。インクカートリッジCを長期保管等する場合に、各インクカートリッジCを幅方向等に振ることで、第1インク貯留室13A,第2インク貯留室13B内の撹拌板25A,25Bがそれぞれ移動して、インクが撹拌される。長期保管により、第1インク貯留室13A,第2インク貯留室13Bの底部には、インクに含有される顔料が沈降している場合であっても、撹拌板25,25Bの下端が第1インク貯留室13A,第2インク貯留室13Bの底部に近接しているので、沈降している顔料なども確実に浮遊して撹拌される。
【0055】
このように、本実施形態の構成によれば、撹拌板25(25,25B)を移動可能に支持する支持部20がケース本体11と一体的に形成されていることから、ケース本体11に対して支持部20を別途形成することもなくなり、組み立て工数の削減を実現することができる。
【0056】
また、支持柱21,21の爪形状をなす脱落防止部23,23に撹拌板25の装着部27(切欠部25a)が係合することによって、支持軸22,22から撹拌板25が脱落することが防止され、支持部20によって撹拌板25が確実に支持されるようになっている。また、支持部20を構成する一対の支持柱21,21は、対向する脱落防止部23,23どうしの間隔L1が撹拌板25の第1部位27Aの幅W2よりも狭くなるように配置されていることから、一旦、支持部20に装着された撹拌板25は、脱落防止部23,23どうしの間隔を広げる外力がかからない限り一対の支持柱21,21から取り外すことが困難になる。このため、ケース本体11が倒れるなどした場合にも支持部20から撹拌板25が外れてしまうことが防止され、支持部20に対して撹拌板25が確実に支持されるようになっている。
【0057】
また、一対の支持柱21,21には、それぞれ、脱落防止部23の先端側にかけて隣り合う他の支持柱21との距離を広げるように傾斜する傾斜面24が形成されている。このため、撹拌板25を支持部20の支持柱21,21間に装着させる際に、傾斜面24によって撹拌板25が支持柱21,21の支持軸22,22間に誘導されるので装着しやすい。
【0058】
(変形例)
図8(a)は、撹拌板25A(25B)の回転状態を説明するための図、図8(b)は、撹拌板および支持構造の変形例を示す図である。
なお、本実施形態の撹拌板25A,25Bは、上端側の中央部分に設けられた1つの装着部27によって各インク貯留室13A,13B内に保持されるため、撹拌時に装着部27を支点として面方向(図8(a)中の矢印で示す方向)へ回転してしまうおそれがある。
【0059】
そこで、例えば、図8(b)に示すように、撹拌板25A,25Bそれぞれの撹拌部26の幅方向両側付近に長孔(挿入孔)26a,26aを形成するとともに、これら長孔26a,26aと対向するケース本体11の所定の位置にピン19,19を形成しておき、長孔26a,26a内にピン19,19を挿入させることにより、撹拌板25A,25Bの意図しない方向への回転を防止する構成にしても良い。
【0060】
長孔26a,26aは、長軸が撹拌部26の上下方向に沿う楕円形状を呈している。長軸の長さは、例えば、撹拌板25A,25Bがそれぞれ支持柱21,21上の所定の位置において装着部27を支点として揺動する際に、装着部27とは反対側の下端側が移動する量に応じて設定される。つまり、撹拌板25A,25Bの揺動(範囲)の妨げにならない大きさで形成されている。一方、長孔26a,26aの短軸は、ピン19の直径よりも若干長さを有する程度に設定される。そして、取り付ける際、長孔26a,26a内にピン19,19を同時にはめ込む。
【0061】
これにより、撹拌板25A,25Bの面方向への回転が防止されて撹拌板25A,25Bの移動方向(撹拌方向)を所望の方向へ規制することができるとともに、撹拌板25A,25Bの支持状態が安定するので、インクの撹拌効果が高められる。また、これら長孔26aおよびピン19によって、装着時における支持部20への撹拌板25A,25Bの位置決めを行うことができ、組み立てが容易になる。
【0062】
なお、本実施形態では、支持部20に対して撹拌板25を装着させる際、支持柱21,21が互いに離間する方向へ撓むことによって撹拌板25が支持柱21,21間に挿入されるようになっているが、撹拌板25を可撓性材料より構成しておき、撹拌板25側が変形することによって支持柱21,21間に挿入されるようになっていてもよい。
【0063】
また、撹拌板25がこれを支持する支持部20よりも可撓性を有する材料によって形成されていてもよい。この場合、撹拌板25を支持部20に取り付ける際、撹拌板25側を変形させながら支持柱21,21間へはめ込むことが可能となる。
【0064】
(インクカートリッジの第2実施形態)
次に、第2実施形態のインクカートリッジCについて説明する。
図9は、第2実施形態のインクカートリッジCの概略構成を示す側面図である。
図10(a)は、図9のC−C断面図、図10(b)は(a)に示す支持機構の拡大図であり、図11(a)は、図9のD−D断面図、図11(b)は(a)に示す支持機構の拡大図である。
【0065】
先の実施形態におけるインクカートリッジC1〜C4には、ケース本体11の第1インク貯留室13Aおよび第2インク貯留室13B内に配置される撹拌板25A,25Bを保持するための支持部20として、第1インク貯留室13Aおよび第2インク貯留室13B内にそれぞれ一組の支持柱21,21が設けられていた。
【0066】
これに対して、本実施形態におけるインクカートリッジC1〜C4には、図9〜図11に示すように、ケース本体11の第1インク貯留室13Aおよび第2インク貯留室13B内にそれぞれ2組ずつ合計4つの支持柱21a,21a,21b,21bが設けられている。これら4つの支持柱21a,21a,21b,21bによって本実施形態の支持部20A,20Bが構成されている。
【0067】
支持柱21a,21aどうしおよび支持柱21b,21bどうしは、各第1インク貯留室13Aおよび第2インク貯留室13B内に水平方向に所定の間隔を空けて配置され、撹拌板25A,25Bの上端側をそれぞれ水平姿勢に保持できるようになっている。対をなす支持柱21a,21aどうしの配置間隔と、支持柱21b,21bどうしの配置間隔は、先の実施形態と同様である。
【0068】
一方、撹拌板25A,25Bは、撹拌部26の上端側に互いに所定の間隔を空けて2つの装着部27,27を有している。そして、撹拌板25Aは、一方の装着部27が第1インク貯留室13A内の支持柱21a,21a間にはめ込まれ、他方の装着部27が支持柱21b,21b間にはめ込まれることによって保持されている。また、撹拌板25Bは、一方の装着部27が第2インク貯留室13B内の支持柱21a,21aにはめ込まれ、他方の装着部27が支持柱21b,21bにはめ込まれることによって保持されている。
なお、撹拌板25A,25Bにおける支持柱21a,21aと、支持柱21b,21bとの配置間隔は、各インク貯留室13A,13B内の大きさに応じて設定される。
【0069】
このように、撹拌板25の装着部27の数に応じた複数の支持柱21を備えた支持構造にすることによって、支持構造に支持される撹拌板25の安定化が図れる。撹拌板25の装着部27の数と支持部20A,20Bにおいて各装着部27に対応する対をなす支持柱21,21の数は、撹拌板25の大きさ(幅W1:図9)に応じて適宜設定される。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
図12〜図15は、支持構造の変形例を示す概略構成図である。
例えば、先に示した各実施形態においては、撹拌板25A,25Bが装着部27側を上方にし、撹拌部26側を下方にした縦姿勢で支持柱21,21に支持される構成について述べたが、横姿勢で支持される構成にしても良い。つまり、図12に示すように、撹拌部26と装着部27との並びが水平状態となるように、支持柱21,21を上下に所定の間隔をあけて配置するようにしてもよい。
【0072】
また、先に示した各実施形態においては、一対の支持柱21,21が、爪形状を呈する脱落防止部23,23を対向させた状態で互いに所定に間隔をおいて配置された構成となっていたが、図13(a)に示すように、ケース本体の左壁部から貯留室内に突出する軸体122と、軸体122の先端に設けられた複数の脱落防止部123,123とによって構成される支持柱(支持部)121であってもよい。軸体122は、基端側が一体とされた分岐部122a,122bによって構成されている。この支持柱121は、脱落防止部123,123の爪形状(突出)側が外側に向けられた状態となっており、分岐部122a,122bどうしが先端側にかけて広がっており、各々に設けられた脱落防止部123,123どうしが径方向に移動可能である。すなわち、これら分岐部122a,122bのそれぞれの先端に設けられた脱落防止部123,123(分岐部122a,122b)は、通常の状態において互いに離間しており、外力の負荷によって互いに近接可能となっている。
【0073】
そして、このような支持柱121に撹拌板25をはめ込む際には、支持柱121の先端側の脱落防止部123,123(分岐部122a,122b)を撹拌板25の装着部27に形成された係合孔27a内に挿入させて、撹拌板25を分岐部122a,122bに係止させることにより支持柱121に撹拌板25が支持されることになる(図13(b))。このとき、分岐部122a,122bは、脱落防止部123,123側を近接させた状態で係合孔27a内を挿通し、係合孔27aを通過後に元の状態に復帰することによって、脱落防止部123,123が撹拌板25の装着部27に係止することになる。
【0074】
撹拌板25を支持柱121に組み込む際、係合孔27aによって分岐部122a,122bが脱落防止部23,23どうしを互いに近接させるように撓むことにより、脱落防止部123,123が係合孔27a内を通過して、分岐部122a,122bに装着部27が係止することになる。係合孔27aを通過した脱落防止部123,123どうしが離間する(分岐部122a,122bの撓みが元に戻る)ことによって、撹拌板25が支持柱121に支持されることになる。
【0075】
係合孔27aは、平面視略円形状を呈し、分岐部122a,122bが離間した状態の脱落防止部123,123どうしに装着部27が係合可能であるとともに、分岐部122a,122bに対して移動可能に支持される大きさ(直径)で形成されている。
【0076】
なお、係合孔27aの平面視における形状は、円形状に係わらず、四角形状、矩形状など種々のものを採用することができる。
あるいは、基端側が一体とされた分岐部122a,122bを有する支持構造以外にも、単に、先に示した第1実施形態における支持柱21,21を、爪形状を呈した脱落防止部23,23どうしが互いに逆向きになるように配置させた支持構造としてもよい。
【0077】
例えば、図14に示すように、撹拌板25における撹拌部126の一辺126aに沿って一対の係合孔126b,126bを一列に並べて形成しておき、これら一対の係合孔126b,126b内にそれぞれ一対の支持柱21,21を挿入させることによって、支持部20に撹拌板25を支持させる構成としてもよい。
【0078】
あるいは、係合孔126bごとに1本の支持柱21を設けてもよい。この場合、脱落防止部23を上方に向けた状態にし、各支持柱21,21の脱落防止部23,23に撹拌板25に設けられたそれぞれの係合孔126b,126bを係合させて取り付ける構成にしてもよい。
【0079】
また、図15(a),(b)に示すように、ケース本体の左壁部から貯留室側に向かって垂直に突出するとともに、撹拌板25の装着部27の第2部位27Bを壁面方向に挿通して支持する貫通孔131aを有する支持部131を備えて構成されている。この場合、撹拌板25が可撓性を有する材料からなり、図15(a)に示すように装着部27の第2部位27Bを湾曲させた状態で貫通孔131a内に挿入させて、図15(b)に示すように元の状態に復帰させることで第2部位27Bが支持部131の上面が側に係合し、支持部131に撹拌板25が移動可能に支持されることとなる。
【0080】
ここで、貫通孔131aの直径が、装着部27の第1部位27Aの幅W2(図4)よりも広く、第2部位27Bの幅W3(図4)よりも狭い寸法となっている。この貫通孔131aは、左壁部11e側へ向かって長さを有していても良い。これにより、撹拌板25が貫通孔131aの長さ方向に沿って移動可能となる。
【0081】
このような構成によっても、支持部131に対して確実に撹拌板25が支持されることになり、撹拌板25がキャリッジの移動に伴って揺動(移動)することが可能となる。
また、支持部131に対応する撹拌板25の構成としては、装着部27の第2部位27Bが図15(c)に示すように、装着部27における第2部位27bの先端側が貫通孔131aの直径よりも小さく構成され、貫通孔131a内に挿入しやすい構成とされていてもいいし、図15(d)に示すように平面視円形状とされていても良い。そして、貫通孔131a内に挿入された第2部位27bの一部が支持部131の上端面に係合することによって、撹拌板25が支持部131に支持される。
【0082】
なお、上述した実施形態においては、液体噴射装置としてインクジェットプリンターを例にして説明したが、インクジェットプリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
また、インクカートリッジCを装着する装置としては、液体噴射装置に限らず、液体を消費する装置であればよい。
【0083】
また、上述の実施形態においては、液体噴射装置として、インク等の液体を噴射する液体噴射装置を例にして説明したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に適用することができる。液体噴射装置が噴射可能な液体は、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体を含む。
【0084】
また、上述した実施形態において、液体噴射装置から噴射される液体としては、インクのみならず、特定の用途に対応する液体を適用可能である。液体噴射装置に、その特定の用途に対応する液体を噴射可能な噴射ヘッドを設け、その噴射ヘッドから特定の用途に対応する液体を噴射して、その液体を所定の物体に付着させることによって、所定のデバイスを製造可能である。例えば、液体噴射装置は、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、及び面発光ディスプレイ(FED)の製造等に用いられる電極材、色材等の材料を所定の分散媒(溶媒)に分散(溶解)した液体(液状体)を噴射する液体噴射装置に適用可能である。
【0085】
液体収容容器として、走査型記録ヘッドを載置するキャリッジにインクカートリッジを装着する場合を例にして説明したが、これに限らない。例えば、キャリッジとは異なる位置にインクカートリッジを装着する場合(いわゆるオフキャリッジ型)であってもよい。
また、ライン型ヘッド(非走査型記録ヘッド)にインクカートリッジを装着する場合であってもよい。
【0086】
また、流体噴射装置としては、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体収容容器、液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…プリンタ(液体噴射装置)、5…キャリッジ、6…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、10…ケース(容器)、11…ケース本体(容器本体)、11e…左壁部(壁面)、13A,13B…貯留室、19…ピン、20,20A,131…支持部、21,21a,21b,22,121…支持柱、21,121…支持柱、23,123…脱落防止部、24…傾斜面、25A,25B…撹拌板(撹拌部材)、26,126…撹拌部、27…装着部、27a,126b…係止孔、27A…第1部位(狭幅部)、27B…第2部位(係止部)、28…貫通部、28A…開口、K…インク(液体)、L1,L2…間隔、W1,W2,W3,W4,W5…幅、122…軸体、126b…係合孔、126a…一辺、131a…貫通孔、C…インクカートリッジ(液体収容容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に形成された貯留室に液体を収容する容器本体と、
前記貯留室内に配設されて前記液体を撹拌する撹拌部材と、
前記撹拌部材を移動可能に支持するとともに前記容器と一体的に形成された支持構造と、を備え、
前記撹拌部材は、前記液体を撹拌する撹拌部と、前記撹拌部から延出する狭幅部および前記狭幅部の前記撹拌部とは反対側に設けられた係止部からなる装着部と、を有し、
前記支持構造は、前記容器の壁部から前記貯留室内に突出し、前記係止部を挿通して支持する貫通部を形成する支持部を備えた
ことを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記支持構造は前記支持部の外周と前記貫通部とを貫通する開口を有し、
前記支持部が鉤形の一対の支持柱を対向させて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記装着部は、当該装着部と前記撹拌部とが並ぶ方向に直交する方向における前記狭幅部の幅が前記係止部の幅よりも小さく、
前記貫通部の直径が、前記狭幅部の幅よりも広く、前記係止部の前記幅よりも狭くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記一対の支持柱は、各々の先端に設けられた爪形状を呈する脱落防止部どうしの間隔が前記狭幅部の前記幅よりも狭くなるように配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記一対の支持柱には、先端に向かって隣り合う他の前記支持柱との距離が広がるように傾斜する傾斜面が形成されている
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記撹拌部の一辺に沿って複数の前記装着部が一列に並んで設けられており、
前記支持部が前記装着部の数に応じて複数設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の液体収容容器。
【請求項7】
容器内に形成された貯留室に液体を収容する容器本体と、
前記貯留室内に配設されて前記液体を撹拌する撹拌部材と、
前記撹拌部材を移動可能に支持するとともに前記容器と一体的に形成された支持構造と、を備え、
前記支持構造は、前記容器の壁面から前記貯留室内に突出する軸体と、当該軸体の先端に設けられ前記軸体の径方向に移動可能な複数の脱落防止部と、を有する支持部を有し、
前記撹拌部材は、前記液体を撹拌するとともに前記脱落防止部を挿通可能な係止孔を有する撹拌部を有する
ことを特徴とする液体収容容器。
【請求項8】
前記撹拌部の一辺に沿って複数の前記係止孔が一列に並んで設けられており、
前記支持部が前記係止孔の数に応じて複数設けられている
ことを特徴とする請求項1から5または請求項7に記載の液体収容容器。
【請求項9】
前記容器と一体的に形成されたピンを有し、
前記撹拌部材には前記ピンを挿入可能な挿入孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の液体収容容器。
【請求項10】
主走査方向に沿って往復移動するキャリッジに液体収容容器及び液体噴射ヘッドを搭載し、前記液体収容容器から前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体噴射装置において、
前記液体収容容器として、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の液体収容容器を用いることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項11】
前記液体収容容器は、前記撹拌部材が前記主走査方向に移動可能に配設されることを特徴とする請求項10に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−24931(P2012−24931A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162539(P2010−162539)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】