説明

液体収納容器の製造方法

【課題】液体吸収部材の圧縮時及び挿入時にシワや隙間の発生を抑制し、液体吸収部材の個体差に対応できる液体収納容器の製造方法を提供する。
【解決手段】液体供給部が底面に設けられ繊維シートが積層された液体吸収部材が収容される液体収納容器の製造方法であって、液体吸収部材は繊維シートの積層面が液体収納容器の底面と略垂直をなす方向で収容され、対向する一対の面を圧縮可能なガイドを備える第一の圧縮部材と、対向する一対の面であって前記一対の面と垂直な面を圧縮可能なガイドを備える第二の圧縮部材とを用いて液体吸収部材を繊維シートの積層面と略平行及び略垂直な対向する二面から圧縮寸法まで圧縮する工程と、ガイドを用いて液体吸収部材を挿入する工程とを含み、圧縮工程にて繊維シートの積層面と略垂直な対向する二面を圧縮する圧縮部材の圧縮面の繊維シートの積層方向の幅が圧縮寸法より狭い方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置等に搭載される、液体を貯留する液体収納容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置にはインク等の液体を液体吐出ヘッドに供給する供給系が設けられ、この供給系の上流には液体を保持する液体収納容器が着脱自在に接続される。着脱自在型の液体収納容器としては、液体を保持するための毛管力を有するスポンジ等の液体吸収部材を内部に備えることにより液体を保持するものが知られている。
【0003】
従来、前記液体吸収部材を液体収納容器内に挿入する方法として、図3(a)〜(g)に示す方法が一般的に知られている(特許文献1)。図3(a)は液体吸収部材21の圧縮前の上面図、図3(b)は一方向への圧縮時の上面図、図3(c)は前記方向と略垂直な方向への圧縮時の上面図を示す。また、図3(d)は液体収納容器11への挿入時の、図3(c)における圧縮方向の断面図、図3(e)は液体収納容器11への挿入時の、図3(b)における圧縮方向の断面図、図3(f)は液体収納容器11への挿入時の斜視図を示す。また、図3(g)は液体収納容器11への挿入時における液体吸収部材21の上面図を示す。まず、図3(a)〜(c)に示すように、液体吸収部材21を液体収納容器11の内寸法よりも小さい寸法まで圧縮部材31を用いて順次圧縮する。次に、図3(d)〜(f)に示すように各圧縮部材31の圧縮面に設けられた平板状のガイド32を液体収納容器11内部に挿入させる。その後、液体吸収部材21を圧縮状態のまま上下方向に可動する挿入部材(不図示)を用いて液体収納容器11内に挿入する。なお、図3(g)に示すように、挿入直前まで圧縮した状態を維持したまま液体吸収部材21を液体収納容器11内に挿入する。
【0004】
他の方法としては、以下に示す方法が開示されている(特許文献2)。液体吸収部材の外周面における所定位置を局所的に圧縮量が異なる部分を形成するように圧縮し、液体吸収部材内における所定位置に該局所的に圧縮量が異なる部分が対応して配置されるように圧縮状態の液体吸収部材を液体吸収部材内に挿入する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−314727号公報
【特許文献2】特開2006−130700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液体収納容器に液体を注入する際、液体吸収部材表面にシワが存在する場合や、液体収納容器の内壁の四隅と液体吸収部材の四隅との間に隙間が存在する場合、前記シワや隙間から液体が溢れる場合がある。その結果、液体の使用効率が低下するだけでなく、物流時の姿勢や環境変化によっては溢れた液体が液体収納容器の蓋部に設けられた大気連通口から液体漏れを引き起こすことが懸念される。そのため、液体収納容器内に液体吸収部材を挿入する際、前記シワや隙間が発生しないことが望ましい。また、液体吸収部材の圧縮時にシワが発生すると液体収納容器内に挿入後もシワとして残るため、液体吸収部材の圧縮時にもシワを発生させないことが望ましい。
【0007】
また、例えば液体吸収部材が液体を保持する毛管力を有する繊維材料からなる場合、繊維径や繊維同士の溶着分布のばらつき、繊維量のばらつき、寸法のばらつき等により個々の液体吸収部材は密度、質量、寸法等の個体差を有している。そのため、圧縮部材等により液体吸収部材を圧縮する際、該個体差によっては圧縮応力が均一でなくなり、応力が集中する部分において局所的なシワを生じる可能性がある。更に、液体収納容器内へ液体吸収部材を挿入する際、該個体差や、繊維の積層方向によっては液体吸収部材の四隅の復元力が異なるため、液体収納容器の四隅において隙間を生じる可能性がある。
【0008】
特許文献1に記載の方法においては、局所的なシワや隙間を生じさせないために液体吸収部材の圧縮量を調整することができる。しかしながら、圧縮時、挿入時におけるシワの発生を十分に防止することができず、また前記個体差がある場合は個々に圧縮量を調整しなければならないため、更なる改善が望まれる。特許文献2に記載の方法においては、液体吸収部材の圧縮時にシワを発生させず、液体吸収部材への挿入後にシワを所定の箇所に発生させる。該方法は、特許文献2の実施例に記載されているように2種類の液体吸収部材が挿入され、上部の液体吸収部材が圧縮量、即ち変形量が少なくシワが発生しない構成であれば有効である。しかしながら、前記個体差により上部の液体吸収部材にシワが発生した場合には、外気と連通部とを繋げる可能性があり、インク漏れの原因となることが懸念されるため、更なる改善が望まれる。
【0009】
そこで、本発明は、液体吸収部材の圧縮時及び液体収納容器内への挿入時にシワや隙間の発生を抑制し、更に液体吸収部材の個体差にも対応できる液体収納容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る液体収納容器の製造方法は、液体を外部に供給するための供給部が底面に設けられ、複数の繊維シートが積層された液体を保持するための液体吸収部材が内部に収容されている液体収納容器の製造方法であって、前記液体吸収部材は、前記繊維シートの積層面が前記液体収納容器の底面と略垂直をなす方向で液体収納容器内に収容されており、対向する一対の面を圧縮可能な圧縮面に平板状のガイドを備える第一の圧縮部材と、対向する一対の面であって前記一対の面と垂直な面を圧縮可能な圧縮面に平板状のガイドを備える第二の圧縮部材と、を用いて、前記液体吸収部材を、前記繊維シートの積層面と略平行な対向する二面及び前記繊維シートの積層面と略垂直な対向する二面から圧縮寸法まで圧縮する工程と、前記第一及び第二の圧縮部材のガイドをそれぞれ前記液体収納容器の内部に挿入させ、圧縮された前記液体吸収部材を液体収納容器内に挿入する工程と、を含み、前記圧縮の工程において、前記繊維シートの積層面と略垂直な対向する二面を圧縮する圧縮部材の圧縮面の、前記繊維シートの積層方向の幅が、前記圧縮寸法より狭い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体吸収部材の圧縮時及び液体収納容器内への挿入時にシワや隙間の発生を抑制し、更に液体吸収部材の個体差にも対応が可能となり、信頼性の高い液体収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態における液体収納容器の製造方法の各工程を示す模式図である。
【図2】本実施形態における液体吸収部材の一例の斜視図である。
【図3】従来の液体収納容器の製造方法の各工程を示す模式図である。
【図4】本実施形態における液体収納容器の一例の断面図である。
【図5】本実施形態における液体収納容器を分解した分解斜視図である。
【図6】本実施形態における方法に適用可能な液体吸収部材挿入装置の一例の概略図である。
【図7】シワ発生の無い液体吸収部材及びシワ発生の有る液体吸収部材を上面から観察した模式図である。
【図8】実施例における圧縮寸法に対する圧縮面の幅の割合と圧縮時のシワ発生との関係を示すグラフである。
【図9】実施例における圧縮寸法に対する圧縮面の幅の割合と製品評価との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(液体収納容器の構成)
図4に本発明に係る液体収納容器の一例の断面図を示し、図5に該液体収納容器を分解した分解斜視図を示す。図4、5に示す液体収納容器11は、内部に液体吸収部材21が挿入されており、上面には蓋41が溶着(振動溶着)されている。該液体収納容器11はインクジェット記録装置等の液体吐出装置に着脱自在に搭載されるものである。なお、図4、5には示されていないが、液体収納容器11の底面には、液体収納容器11から液体を外部に供給するための供給部として、供給口や液体吐出ヘッドが設けられている。なお、本発明において液体収納容器11の底面、側面とは、液体収納容器11の使用状態、即ち液体吐出装置に装着した状態(供給部を下にした場合)における底面、側面を示す。
【0014】
(液体吸収部材)
液体吸収部材21は、液体を液体収納容器11内に保持するための部材であり、複数の繊維シートが積層された構造を有する。図2に本発明に係る液体吸収部材21の一例の斜視図を示す。図2に示す液体吸収部材21は、繊維シートが繊維シート積層方向24に積層されており、直方体形状を有する。図5に示すように、液体吸収部材21は、繊維シートの積層面が液体収納容器11の底面と略垂直をなす方向で液体収納容器11内に収容されている。なお、以下の説明において、形式的に繊維シート積層方向24をX方向として、22に示す方向をZ方向、23に示す方向をY方向と示す。
【0015】
前記繊維シートの材料としては、毛管力により液体を保持できる材料が好ましい。なお、毛管力は液体に対する濡れ性、内部に存在する空孔の大きさや空孔の割合により規定される。また、圧縮された液体吸収部材21を液体収納容器11内に挿入する際、挿入後圧縮を解放することにより形状が復元するように、圧縮復元性を有する材料が好ましい。これらの条件を満たす材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)繊維、ウレタンフォーム、ポリエステルフェルト繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。液体吸収部材21の作製方法としては、まず、綿状の繊維材料を解きほぐした後、ローラーでシート状にする(シート状繊維材料)。この状態ではシートの厚みは整えていない。得られたシート状繊維材料を複数枚積層して積層体を構成する。なお、積層体を構成するシート状繊維材料の積層枚数は要求される液体吸収部材の目付量に応じて調整される。続いて積層体の厚さを整えながら加熱して繊維を熱融着して溶着体を得る。溶着体を所定の大きさとなるように型抜きして液体吸収部材21を得る。
【0016】
(液体吸収部材挿入装置の構成)
図6に本発明に係る方法に適用可能な液体吸収部材挿入装置の一例の概略図を示す。該装置には圧縮部材31として、対向する一対の面を圧縮可能な圧縮面に平板状のガイドを備える第一の圧縮部材と、対向する一対の面であって前記一対の面と垂直な面を圧縮可能な圧縮面に平板状のガイド32を備える第二の圧縮部材とが備えられている。治具61には前記第一の圧縮部材及び前記第二の圧縮部材のそれぞれ一方が固定されている。また、前記第一の圧縮部材及び前記第二の圧縮部材の他方は、各々エアシリンダ62の先端に装着されている。エアシリンダ62を可動させることで、液体吸収部材21は圧縮寸法まで圧縮される。なお、本発明において圧縮寸法とは、液体収納容器11内に挿入される前の圧縮部材により圧縮された液体吸収部材21のサイズを示し、具体的には圧縮後の対向するガイド32の間隔を示す。圧縮後、液体収納容器11がセットされたステージ63を上昇させ、ガイド32を液体収納容器11の内部に挿入させ、上下方向に可動する挿入部材(図示せず)により圧縮された液体吸収部材21は液体収納容器11内に挿入される。
【0017】
本発明に用いられる圧縮部材31は、液体吸収部材21の繊維シートの積層面と略垂直な対向する二面を圧縮する圧縮部材の圧縮面の、前記繊維シートの積層方向の幅が、圧縮寸法より狭いことを特徴とする。該圧縮面の幅を圧縮寸法より狭くすることで、圧縮時に液体吸収部材21が幅を狭めた圧縮部材の圧縮面の両端から十分にはみ出し、応力を逃がすことができる。これにより、圧縮時、挿入時におけるシワ発生を防ぐことができる。
【0018】
(液体収納容器の製造方法)
本実施形態における、液体吸収部材21の製造方法について図1(a)〜(g)を用いて説明する。図1(a)は液体吸収部材21の圧縮前の上面図、図1(b)は繊維シート積層方向24への圧縮時の上面図、図1(c)はY方向23への圧縮時の上面図を示す。また、図1(d)は液体収納容器11への挿入時のY方向23の断面図、図1(e)は液体収納容器11への挿入時の繊維シート積層方向24の断面図、図1(f)は液体収納容器11への挿入時の斜視図を示す。また、図1(g)は液体収納容器11への挿入時における液体吸収部材21の上面図を示す。まず、液体吸収部材21を二つの対向する一対の圧縮部材の各一方が連結された圧縮部材A12にセットする(図1(a))。次に、可動する圧縮部材B13により、液体吸収部材21を繊維シートの積層面と略平行な対向する二面に対し、即ち繊維シート積層方向24から圧縮寸法まで圧縮する(図1(b))。該圧縮においては、圧縮される液体吸収部材21の面の全面が対向する一対の圧縮部材(圧縮部材A12の一方と圧縮部材B13)により圧縮される。次に、可動する圧縮部材C14により、液体吸収部材21を繊維シートの積層面と略垂直な対向する二面に対し、即ちY方向23から圧縮寸法まで圧縮する(図1(c))。該圧縮において、圧縮に用いられる対向する一対の圧縮部材(圧縮部材A12の一方と圧縮部材C14)の圧縮面の、繊維シート積層方向24の幅は、圧縮寸法よりも狭い。これにより、該圧縮においては液体吸収部材21が図1(c)に示すように前記一対の圧縮部材の圧縮面の両端部からはみ出すため、図1(b)に示す工程で圧縮された面の長さを稼ぐことができる。そのため、圧縮時にかかる液体吸収部材21の応力を分散させることができ、圧縮時に生じるシワの発生を抑制することができる。また、液体吸収部材21の材料、密度、質量、寸法等が異なる場合にも、同様に圧縮時の応力を分散させ、シワ発生を抑制することができる。
【0019】
各圧縮部材の圧縮面には、液体吸収部材21を液体収納容器11に挿入するための平板状のガイド32がそれぞれ備えられている。図1(d)〜(f)に示すように、ガイド32を液体収納容器11の内部に挿入した状態で、上下方向に可動する挿入部材(図示せず)を用いて液体吸収部材21を液体収納容器11内に挿入する。この時、図1(g)に示すように、液体吸収部材21を、幅を狭めた圧縮面に備えられたガイド32の両端部ではみ出させ、液体吸収部材21の応力を分散させた状態で、液体収納容器11内に挿入する。
【実施例】
【0020】
以下、実施例において本発明に係る液体収納容器11の具体的な構成と、液体収納容器11の製造方法について説明を行う。なお、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0021】
[実施例1]
本実施例では、内寸が縦50×横25×高さ30mmである液体収納容器11を使用した。液体吸収部材21にはポリプロピレン(PP)繊維からなる繊維シートを複数枚積層したものを使用した。液体吸収部材21の圧縮前の寸法は、縦50×横30×高さ30mmであり、繊維シート積層方向24との関係では、図2に示す方向で、繊維シート積層方向24が30mm(横)、Y方向23が50mm(縦)、Z方向22が30mm(高さ)である。また、液体吸収部材21の圧縮寸法は、縦48.5×横21.5mmとした。圧縮部材としては図1に示す圧縮部材A12、圧縮部材B13及び圧縮部材C14を用いた。
【0022】
まず、図1(a)に示すように、圧縮部材A12の圧縮面二面に接するように液体吸収部材21を配置した。液体吸収部材21の繊維シートの積層面と略垂直な圧縮部材A12の圧縮面、及び該圧縮面と対向する圧縮部材C14の圧縮面の繊維シート積層方向24の幅は17.0mmとし、圧縮寸法(21.5mm)に対し79.1%の割合とした。次に、図1(b)に示すように、圧縮部材A12及び圧縮部材B13により液体吸収部材21の繊維シート積層方向24を30mmから21.5mmまで圧縮した。さらに、図1(c)に示すように、圧縮部材A12及び圧縮部材C14により液体吸収部材21のY方向23を48.5mmまで圧縮した。その後、図1(d)〜(f)に示すように、圧縮部材A12、圧縮部材B13及び圧縮部材C14の各圧縮面に設けられたガイド32を液体収納容器11の内部に挿入させ、圧縮された液体吸収部材21を液体収納容器11内に挿入した。
【0023】
[実施例2]
液体吸収部材21の繊維シートの積層面と略垂直な圧縮部材A12の圧縮面、及び該圧縮面と対向する圧縮部材C14の圧縮面の繊維シート積層方向24の幅を15.0mmとし、圧縮寸法(21.5mm)に対し69.8%の割合とした。それ以外は実施例1と同様に液体吸収部材21を圧縮し、液体収納容器11内に挿入した。
【0024】
[実施例3]
液体吸収部材21の繊維シートの積層面と略垂直な圧縮部材A12の圧縮面、及び該圧縮面と対向する圧縮部材C14の圧縮面の繊維シート積層方向24の幅を13.0mmとし、圧縮寸法(21.5mm)に対し60.5%の割合とした。それ以外は実施例1と同様に液体吸収部材21を圧縮し、液体収納容器11内に挿入した。
【0025】
[実施例4]
液体吸収部材21の繊維シートの積層面と略垂直な圧縮部材A12の圧縮面、及び該圧縮面と対向する圧縮部材C14の圧縮面の繊維シート積層方向24の幅を19.0mmとし、圧縮寸法(21.5mm)に対し88.4%の割合とした。それ以外は実施例1と同様に液体吸収部材21を圧縮し、液体収納容器11内に挿入した。
【0026】
[比較例1]
液体吸収部材21の繊維シートの積層面と略垂直な圧縮部材A12の圧縮面、及び該圧縮面と対向する圧縮部材C14の圧縮面の繊維シート積層方向24の幅を21.5mmとし、圧縮寸法(21.5mm)と同一(100%)とした。それ以外は実施例1と同様に液体吸収部材21を圧縮し、液体収納容器11内に挿入した。
【0027】
[参考例1]
液体吸収部材21の繊維シートの積層面と略垂直な圧縮部材A12の圧縮面、及び該圧縮面と対向する圧縮部材C14の圧縮面の繊維シート積層方向24の幅を11.0mmとし、圧縮寸法(21.5mm)に対し51.2%の割合とした。それ以外は実施例1と同様に液体吸収部材21を圧縮し、液体収納容器11内に挿入した。
【0028】
(圧縮時におけるシワ発生の有無)
前記実施例1〜4、比較例1、参考例1において、図1(a)〜(c)の工程により液体吸収部材21を圧縮した状態で、シワ発生の有無を確認した。シワ発生の確認方法としては、図1(a)〜(c)の順に従って液体吸収部材21を圧縮した後、上面から観察することで圧縮時におけるシワ発生の有無を確認した。図7(a)に、圧縮時にシワ発生が無い状態の液体吸収部材21を上面から観察した模式図を示す。また、図7(b)に、圧縮時にシワ71が発生した状態の液体吸収部材21を上面から観察した模式図を示す。シワ発生の有無を確認した結果を表1、図8に示す。なお、表1、図8において圧縮時のシワ発生は以下の基準で評価した。
○:シワが発生していない
△:小さなシワが発生している
×:シワが発生している。
【0029】
(挿入時におけるシワ発生の有無)
圧縮時、液体吸収部材21にシワを発生させずに圧縮できた場合においても、液体収納容器11内に挿入する際にシワが発生する場合、液体注入や物流の際好ましくない。そこで、前記実施例1〜4、比較例1、参考例1において、圧縮された液体吸収部材21を液体収納容器11内に挿入した際のシワ発生の有無について、前記圧縮時におけるシワ発生の有無と同様に確認した。結果を表1に示す。なお、表1において挿入時のシワ発生の評価基準は、前記圧縮時のシワ発生の評価基準と同様である。
【0030】
(製品評価)
前記実施例1〜4、比較例1、参考例1において、圧縮時又は挿入時におけるシワ発生の有無による、液体収納容器11の製品としての利用可否について、以下の基準で評価した。結果を表1、図9に示す。
×:製品として利用不可である
○:製品として利用可能である。
【0031】
【表1】

【0032】
圧縮時におけるシワ発生について、表1、図8より、圧縮面の圧縮寸法に対する幅の割合が79.1%以下(幅が17.0mm以下)である実施例1〜3、参考例1では、圧縮時のシワ発生は見られなかった。これは、図1(c)に示すように、圧縮面の幅を圧縮寸法より狭くすることで圧縮時に液体吸収部材21が幅を狭めた圧縮部材の両端から十分にはみ出し、圧縮時にかかる応力を逃がすことができるためである。また、圧縮面の圧縮寸法に対する幅の割合が88.4%(幅が19.0mm)である実施例4では圧縮時に小さいシワが発生したが、製品機能上問題無いレベルであった。一方、圧縮面の圧縮寸法に対する幅の割合が100%(幅が21.5mm)である比較例1では、圧縮時にシワが発生した。これは、圧縮面の幅を狭めておらず、圧縮時にかかる応力を逃がすことができないためである。以上より、液体吸収部材21の圧縮時におけるシワ発生の抑制には、前記圧縮面の幅がより狭い方が好ましいことが確認された。
【0033】
また、挿入時におけるシワ発生については、圧縮面の圧縮寸法に対する幅の割合が60.5%以上、79.1%以下(幅が13.0mm以上、17.0mm以下)である実施例1〜3では、液体収納容器11内に挿入した際にシワが発生しなかった。一方、前述したように圧縮面の圧縮寸法に対する幅の割合が88.4%(幅が19.0mm)である実施例4では、圧縮時に小さいシワが発生したため、挿入時にも小さいシワが発生した。また、圧縮面の圧縮寸法に対する幅の割合が51.2%(幅が11.0mm)である参考例1では、液体収納容器11に挿入した際にシワが発生した。これは、液体吸収部材21の圧縮時に液体吸収部材21が圧縮部材の両端からはみ出す量が大きくなり、挿入時に液体収納容器11の内壁に当たる量が増え、はみ出した部分に一時的に応力が集中するため、シワ発生に繋がると考えられる。
【0034】
以上より、本実施例においては圧縮面の圧縮寸法に対する幅の割合を60.5%以上、79.1%以下(幅が13.0mm以上、17.0mm以下)とすることで、圧縮時におけるシワ発生を抑制できた。さらに液体収納容器11への挿入時におけるシワ発生を抑制することができ、信頼性の高い液体収納容器11が製造できた。なお、シワ発生を防止するのに有効な圧縮面の圧縮寸法に対する幅の割合の好ましい範囲は、液体吸収部材21を構成する繊維シートの材料により変動する。したがって、該材料によっては圧縮面の圧縮寸法に対する幅の割合を参考例1よりさらに小さくした場合にも、圧縮部材の両端からはみ出す液体吸収部材21の量が少なくシワが発生しない場合もある。
【符号の説明】
【0035】
11 液体収納容器
12 圧縮部材A
13 圧縮部材B
14 圧縮部材C
21 液体吸収部材
22 Z方向
23 Y方向
24 繊維シート積層方向
31 圧縮部材
32 ガイド
41 蓋
61 治具
62 エアシリンダ
63 ステージ
71 シワ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を外部に供給するための供給部が底面に設けられ、複数の繊維シートが積層された液体を保持するための液体吸収部材が内部に収容されている液体収納容器の製造方法であって、
前記液体吸収部材は、前記繊維シートの積層面が前記液体収納容器の底面と略垂直をなす方向で液体収納容器に収容されており、
対向する一対の面を圧縮可能な圧縮面に平板状のガイドを備える第一の圧縮部材と、対向する一対の面であって前記一対の面と垂直な面を圧縮可能な圧縮面に平板状のガイドを備える第二の圧縮部材と、を用いて、前記液体吸収部材を、前記繊維シートの積層面と略平行な対向する二面及び前記繊維シートの積層面と略垂直な対向する二面から圧縮寸法まで圧縮する工程と、
前記第一及び第二の圧縮部材のガイドをそれぞれ前記液体収納容器の内部に挿入させ、圧縮された前記液体吸収部材を液体収納容器に挿入する工程と、を含み、
前記圧縮の工程において、前記繊維シートの積層面と略垂直な対向する二面を圧縮する圧縮部材の圧縮面の、前記繊維シートの積層方向の幅が、前記圧縮寸法より狭い液体収納容器の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮の工程において、前記液体吸収部材を、前記繊維シートの積層面と略平行な対向する二面から圧縮した後、前記繊維シートの積層面と略垂直な対向する二面から圧縮する請求項1に記載の液体収納容器の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により製造される液体収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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