説明

液体収納容器

【課題】 いかなる衝撃、姿勢、環境であっても、インクが容器外部へ漏れ出すことのない液体収納容器を提供する。
【解決手段】 液体収納容器100は、上部に大気と連通する大気連通口101を有し、下部に液体収納容器100内のインクを記録ヘッド(不図示)に供給する液体供給口102が設けられている。液体収納容器100の内部にはインクを保持し、記録ヘッドに対して負圧を与える負圧発生部材103が収容されている。液体収納容器100内の大気連通口101が有されている上壁110には、内部に突出する形態で複数個のリブ104が一体的に形成され、このリブ104が配されている液体収納容器100上壁110と負圧発生部材103の上面との間には空間部105が形成されている。この空間部105を形成している液体収納容器100の上壁110と側壁111には毛管力を発生する毛管路120が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に着脱自在に搭載される、記録用のインクなどの液体を収納した液体収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
小型化を図ったインクジェット記録装置に用いられる記録手段の一形態として、記録ヘッドを有するキャリッジに液体収納容器が着脱自在に搭載可能であって、その液体収納容器のインクにて記録を行なうものがある。このようなタイプの液体収納容器は、記録ヘッドに対して、所定の負圧を発生させる必要があり、その一方法として、液体収納容器に負圧発生部材が挿入されており、その負圧発生部材にインクを含浸させたものがある。さらに液体を記録ヘッドへ供給する液体供給口と、大気の導入を許容する大気連通口が有された液体収納容器が、このタイプの代表的な形態として知られている。
【0003】
上述した形態の液体収納容器において、物流時の環境の急激な変化により負圧発生部材からインクが垂れ、最終的には大気連通口からインクが外部へ漏れ出す場合があった。
【0004】
この大気連通口からのインク漏れを防止する構成として、特許文献1に記載の液体収納容器が提案されている。これは、図7に示すように液体収納容器201内の負圧発生部材204と液体収納容器201の上壁の大気連通口203との間に空間(インクバッファ)209を設け、この空間209に負圧発生部材204から漏れ出たインクを貯留し、大気連通口203から容器外部へのインクの漏れ出しを抑制するものである。
【0005】
また、図8(a)、(b)に示すような特許文献2記載の液体収納容器も提案されている。図8に示すように液体収納容器201の上面には2本の大気連通路211が溝によって形成されている。この溝はシールテープ212で覆われている。そして、一方の大気連通路211の一端は、液体収納容器201の上壁を貫通する大気連通口203に繋がり、他端はインクトラップ領域210内に繋がっている。もう一方の大気連通路211の一端はシールテープ212から露出して大気に解放され、他端はインクトラップ領域210内に繋がっている。これにより、液体収納容器210の上部の空間209は大気連通口203から一方の大気連通路211およびインクトラップ領域210を経てもう一方の大気連通路211より大気に通じている。
【0006】
図8のような容器は特許文献1に開示される大気連通口203と負圧発生部材との間の空間(インクバッファ)209に加え、上記のようなインクトラップ領域210を設けてあることにより、たとえインクが大気連通口203を通り容器外部へ向けて移動したとしてもインクトラップ領域210でインクを確実にトラップし、容器外部へインクを出さないようにすることが出来る。
【特許文献1】特開平08−090783号公報
【特許文献2】特開平09−272210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術は液体収納容器に加わる衝撃レベルや液体収納容器の姿勢が決まっている場合には大変有効な手段ではあるが、例えば、ユーザーによりどこへでも持ち運び可能なモバイルタイプの記録装置に装着される液体収納容器においては、様々な衝撃、姿勢、環境下におかれてインクが漏れ出すことが考えられる。
【0008】
つまり、特許文献1及び特許文献2の液体収納容器では、液体収納容器のインクバッファ及びインクトラップ領域にインクが保持されている状態で、大気連通口が下向きの姿勢となるようにモバイルタイプの記録装置を扱われた場合、トラップされたインクは容器外部へ漏れ出すことがあった。
【0009】
図9A,9Bを用いて、液体収納容器からインクが漏れ出す状態の一例を説明する。図9は従来の液体収納容器201の断面図であり、大気連通口203が下向きの形態の図である。図9Aに示すように、落下などの衝撃によりインクが負圧発生部材204内のインク非含浸領域205を侵食するように移動し、インク含浸領域206内に閉塞エア207が形成されてしまった場合において、飛行機輸送等の減圧環境下となってしまうと、図9Bのように閉塞エア207は膨張することになる。このエア膨張が発生すると、負圧発生部材204内のインクは押し出されることとなり、最終的には負圧発生部材204からインクが垂れ出し、リブ208によって形成された負圧発生部材204と液体収納容器201の大気連通口面との間の空間にインクが溜まり、最悪、大気連通口203から外部へインクが漏れることがあった。
【0010】
そこで、本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、衝撃が加わったり、いかなる姿勢、環境であっても、インクが容器外部へ漏れ出すことのない液体収納容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、液体を含浸する負圧発生部材を収納する負圧発生部材収納室と、該負圧発生部材収納室の前記液体を供給する液体供給口と、前記負圧発生部材収納室内を大気と連通する大気連通口とを備えている液体収納容器において、
前記負圧発生部材収納室内の、前記大気連通口が開口する壁面と前記負圧発生部材との間に空間部が形成されており、前記空間部を形成する前記負圧発生部材収納室の壁面上に毛管力を発生する毛管路が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、衝撃や環境変化により、大気連通口が開口する空間部内に負圧発生部材からインクが垂れ出したとしても、空間部の壁面上に毛管力の発生可能な毛管路が設けられているため、この毛管路にインクをトラップすることができる。またインクは毛管力によりトラップされているため、タンク姿勢に追従して移動することなく、インク保持が可能となる。したがって、衝撃が加わったり、いかなる姿勢、環境であっても、インクが容器外部へ漏れ出すことのない液体収納容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態における詳細について図面を用いて説明する。
【0014】
なお、本発明に用いられる液体として、以下の実施形態ではインクを例にとって説明を行なっているが、適用可能な液体としてはインクに限ることなく、例えばインクジェット記録分野にあっては記録媒体に対する処理液などを含むことは言うまでもない。
【0015】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1による液体収納容器100の概略説明図であり、液体収納容器100の最大面積面と平行な面に沿った断面図である。
【0016】
図1において、液体収納容器100は、上部に大気と連通する大気連通口101を有しており、下部に液体収納容器100内のインクをインクジェット記録ヘッド(不図示)に供給する液体供給口102が設けられている。この液体収納容器100の内部にはインクを保持し、記録ヘッドに対して負圧を与える、オレフィン系樹脂の繊維材料である負圧発生部材103が収容されている。液体収納容器100内の大気連通口101が有されている上壁110には、内部に突出する形態で複数個のリブ104が一体的に形成され、液体収納容器100内に圧縮状態で収容される負圧発生部材103と当接し、負圧発生部材103の液体収納容器100内での動きを規制している。このリブ104が配されている液体収納容器100上壁110と負圧発生部材103の上面との間には空間部105が形成されており、この空間部105を形成している液体収納容器100の上壁110と側壁111には毛管力を発生する毛管路120が設けられている。また、液体供給口102には、負圧発生部材103より毛管力の高いシート状の圧接体106が設けられており、負圧発生部材103と圧接している。
【0017】
大気連通口101が設けられている液体収納容器100の外側には迷路状に掘り込まれた大気連通溝107が設けられており、大気連通口101と連通している。この大気連通溝107の上にシールテープ108が貼付されることにより大気連通路が形成され、この迷路状の大気連通路があることによりインクの蒸発は抑制され、記録ヘッドの吐出特性に影響を与えるインクの増粘を防いでいる。
【0018】
液体収納容器100は液体供給口102に向かって徐々に断面積が減少するようにテーパが施されている(不図示)。これは負圧発生部材103を液体供給口102に向かうにつれて毛管力を高めるためである。
【0019】
次に、毛管路120の構成について詳細に説明する。毛管路120は空間部105を形成する液体収納容器100の上壁110から側壁111まで連続かつ一体的に設けられている。この毛管路120の端部121は側壁111に在り、負圧発生部材103と接するように配されている。図2に液体収納容器100内部から見た上壁110の図について示す。図2に示すように、毛管路120はリブ104以外の上壁110に縦横無尽に配されており、途切れておらず、連続かつ一体的に設けられている。また毛管路120は大気連通口101を包囲し、かつ大気連通口101とは接さないように構成されている。
【0020】
次に毛管路120の毛管力について説明する。この毛管路120の毛管力Mmは負圧発生部材103の毛管力をMfとすると、以下のような関係が保たれるように設定されている。
【0021】
Mf > Mm
これは、毛管路120を通って毛管路120の端部121まで案内されるインクが負圧発生部材103と接触した際、負圧発生部材103側にインクが吸収されるように、負圧発生部材103の毛管力Mfより毛管路120の毛管力Mmを低く設定している。また、毛管路120の毛管力Mmは、液体収納容器100の大気連通口101が下向きとなる姿勢において、インクを毛管路120の端部121まで引き上げることができる程度の毛管力が発生するように設定されている。これにより、液体収納容器100がいかなる姿勢であっても、インクは毛管路120の端部121まで案内されることとなる。ここで、本実施形態の毛管路120の断面は、微小幅のV字形状を採用しているが(不図示)、本発明とするところの毛管路120はこれに限った訳ではなく、上記の間係式を満足する毛管力を発生する毛管路120の断面であるならば、いかなる断面形状であっても、問題なく適用することは可能である。また本実施形態では、毛管路120は液体収納容器100の壁面を掘り込んで形成されているが、これもこの形状に限った訳ではなく、壁面から突出したレール状の形態であっても問題なく適用することは可能である。
【0022】
次に、毛管路120の作用、効果について図3A〜3Dを用いて説明する。図3Aは本発明の液体収納容器100の初期(Initial)状態における断面図であり、図3Bは本発明の液体収納容器100が、大気連通口101が下向きの姿勢で落下などの衝撃が加わった後の断面図であり、図3Cは図3Bの後に減圧環境に持ち運ばれた時の液体収納容器100の断面図であり、図3Dは図3Cの後で常圧に戻った状態の液体収納容器100の断面図である。
【0023】
通常、本発明に係る液体収納容器100は図3Aに示す形態を採っている。インクは負圧発生部材103全域に含浸している訳ではなく、インク非含浸領域130を有している。これは、環境変化によってインク移動が発生した場合のインクバッファとするために設けられている。つまり、ディスクトップタイプの記録装置に搭載される液体収納容器100において、起こりうるレベルの環境変化ではインクが漏れ出さないようにするために、上記インク非含浸領域130が設けられている。
【0024】
図3Bに、図3Aの状態において大気連通口101が下向きの姿勢で強い衝撃が加わった場合の液体収納容器100の状態を示す。本発明の目的とするところは、いかなる衝撃、姿勢、環境であっても、負圧発生部材103から垂れ出たインクを外部へ漏れ出すことのない極めて信頼性の高い液体収納容器100を提供することである。その背景にはモバイルタイプの記録装置に搭載され、ユーザーにいかなる扱いを受けたとしてもインクの漏れ出しのない信頼性の高い液体収納容器100を提供するところにある。よって、後述する図3Bを用いた説明は、衝撃において最も大気連通口101からインクが漏れ出しやすい形態すなわち大気連通口101が下向きの状態で、記録装置ごとの落下による強い衝撃が液体収納容器100に加わった場合の本発明に係る液体収納容器100の作用効果についての説明である。
【0025】
図3Bのように、強い衝撃が液体収納容器100に加わると、インクには強い慣性力が加わり、インク非含浸領域130を侵食するようにインクが大気連通口101側に移動する。衝撃が強く負圧発生部材103内では収まりきれない場合は、インクは負圧発生部材103を通り越し、空間部105内にインクが垂れることになる(点線矢印方向)。この場合、負圧発生部材103から垂れたインクは、液体収納容器100の上壁110上に落ちて広がる。ここで、上壁110上には、縦横無尽に毛管路120が張り巡らされているため、滴下してきたインクは毛管路120と接触することになる。たとえ、毛管路120と接触しない場合が発生したとしても、記録装置本体の持ち運び時に起こる姿勢変化により、最終的には毛管路120とインクは接触することになる。垂れたインクが毛管路120と接触すると、インクは毛管路120の毛管力により引っ張られ、毛管路120内にインクが入り込む。この毛管路120に入り込んだインクは毛管力によりしっかり保持されているため、記録装置本体の姿勢変化が生じ、液体収納容器100の姿勢が変化したとしても、大気連通口101までインクが流れて到達することはなく、大気連通口101からのインクの漏れ出しは発生しない。
【0026】
さらに、毛管路120によりトラップされるインクが増えて、上壁110上の毛管路120の総体積以上にインクが増えてしまうと、インクは毛管路120を移動し、毛管路120の端部121まで到達することとなる(実線矢印方向)。ここで、前述したように、毛管路120はインクを毛管路120の端部121まで引き上げることができる程度の毛管力を有しているため、図3Bの垂直方向となる側壁111上の毛管路120内にも、問題なくインクは移動可能となっている。
【0027】
インクが毛管路120の端部121まで移動すると、毛管路120と負圧発生部材103は接触状態となっているため、インクも負圧発生部材103と接触状態となる。この際、上記の間係式に示したように、負圧発生部材103の毛管力よりも毛管路120の毛管力の方が低く設定されているため、インクは負圧発生部材103内に吸収されることになる。これにより、インクは毛管路120から負圧発生部材103内に移動することとなるため、毛管路120内にはインクが存在しなくなる。この状態となることで、毛管路120は再びインクトラップ機能を発揮することができ、繰り返し強い衝撃が加わったとしても毛管路120内には累積インクがなく、何度でもインクトラップ可能となる。また、負圧発生部材103から垂れ出したインクを、再び負圧発生部材103内に戻すことができるため、液体収納容器100のインク消費可能量を減らすこともない。
【0028】
ここで、さらに液体収納容器100の信頼性を向上させるために、図4A,4Bに示すような毛管路形態を採用しても良い。図4Aは、液体収納容器100内部から見た上壁110上の毛管路の図であり、図4Bは、液体収納容器100内部から見た側壁111上の毛管路120の図である。
【0029】
図4Aに示す上壁110上の毛管路120は大気連通口101が配されている領域の毛管路120の幅が最も広く、側壁111に向かうに連れてその幅が狭くなっている形状となっている。この形態を採ることにより、インクを積極的に大気連通口101より離すことができるため、大気連通口101からのインクの漏れ出しに関して更なる信頼性の向上を図ることができる。さらに、図4に示す側壁111上の毛管路120は上壁110側に対して毛管路の端部121に向かうに従ってその幅が狭くなっている。このため、側壁111付近に到達した毛管路120内のインクは負圧発生部材103内に速やかに吸収される。
【0030】
次に負圧発生部材103からのインクの漏れ出しに関しては、更に過酷な状況となり得る、衝撃後の減圧環境下での、本発明に係る液体収納容器100の作用効果について、図3Cを用いて説明する。図3Cは、強い衝撃の後に、記録装置本体を飛行機に持ち運ばれ場合を想定したもので、図3Bの後に減圧環境となった場合の液体収納容器100の状態を示している。この状況が大気連通口101からのインクの漏れ出しに関して、インクの漏れ量が多く、最も過酷な状況である。
【0031】
図3Bを用いて前述したように、強い衝撃で、インクは慣性力により負圧発生部材103内のインク非含浸領域130へ侵食するように移動することになる。このインク移動の発生により、今までそのインクが存在していた領域にはエアが入り込むこととなり、図に示すような閉塞エア140が形成されることとなる。この状態で、減圧環境となってしまうと、負圧発生部材103内の閉塞エア140は、図3Bに示す閉塞エア140の体積と比較して体積膨張することになり、この閉塞エア140の体積膨張により負圧発生部材103内のインクは押し出され、最終的には負圧発生部材103からインクが大量に漏れ出すことがある。
【0032】
この大量のインク漏れ出しに対しても、前述したように毛管路120の毛管力によってインクを保持することが可能となっている。また、毛管力によるインクトラップであるため、これも前述したように、液体収納容器100の姿勢によらず、インクの漏れ出しは発生しない。
【0033】
減圧環境が解除され、常圧に戻った場合の液体収納容器100内の状態を図3Dに示す。常圧に復帰すると、負圧発生部材103内の閉塞エア140も体積収縮し、負圧発生部材103内にはインクを保持することが可能な領域が復元される。この状態において、毛管路120の端部121までインクが到達している場合であると、インクは負圧発生部材103内に吸収されることとなる。これにより、前述したように、漏れ出したインクは再び負圧発生部材103内に吸収され、毛管路120は再びインクトラップ機能を発揮することができる状態となる。
【0034】
上述した液体収納容器100内の構成を採ることで、負圧発生部材103からインクが漏れ出したとしても、姿勢差や環境によらずインクをトラップし続けることができ、且つそのトラップしたインクを溜め込むのではなく、負圧発生部材103に戻すことが可能であるため、大気連通口101からのインクの漏れ出しを確実に抑制することが可能となっている。また、インクは負圧発生部材103内に戻るため、液体収納容器100におけるインク使用可能量の減少も発生しない。
【0035】
(実施形態2)
次に、図5を参照して、本発明の実施形態2について説明する。ここでは実施形態1の構成と同一の部位に対応する部位に同一符号を付し、実施形態1と比較して異なる点と、実施形態2における作用効果についてのみ説明する。
【0036】
図5は本発明の実施形態2による液体収納容器100の最大面積面と平行な面に沿った断面図である。本実施形態の液体収納容器100は、負圧発生部材103の二箇所の部分103a,103bが液体収納容器100の側壁111に沿って延び、かつ上壁110と当接する形態となっている。この負圧発生部材103が液体収納容器100の上壁110と当接する位置には毛管路120が形成されている。また、毛管路120は液体収納容器100の上壁110のみに有り、毛管路120の端部121は前記負圧発生部材103の上壁110との当接位置にある。
【0037】
本実施形態における作用効果は、実施形態1と同様である。すなわち、衝撃あるいは衝撃後の減圧などで発生する負圧発生部材103からのインク漏れが、液体収納容器100上壁110上に設けられた毛管路120により保持される。そして毛管路120は、その端部121において負圧発生部材103と当接しているため、当接部より毛管路120内のインクを負圧発生部材103が吸収することが可能となっている。この繰り返しにより、大気連通口101からのインクの漏れ出しを確実に抑制することが可能となっている。
【0038】
(実施形態3)
次に、図6を参照して、実施形態3について説明する。ここでも実施形態2と同様、実施形態1の構成と同一の部位に対応する部位に同一符号を付し、実施形態1と比較して異なる点と、実施形態3における作用効果についてのみ説明する。
【0039】
図6は本発明の実施形態2による液体収納容器100の最大面積面と平行な面に沿った断面図である。本実施形態の液体収納容器100は、実施形態1における毛管路120の代わりに、インクを吸収可能なインク保持部材150が配されている。インク保持部材150は、負圧発生部材103と同等材質のオレフィン系樹脂の繊維材料で構成されており、毛管力は負圧発生部材103の毛管力より低く設定されている。インク保持部材150は実施形態1と同様、液体収納容器100の上壁110及び側壁111に連続かつ一体的に設けられており、このインク保持部材150が配される液体収納容器の位置には一段掘り込んだ溝151があり、その溝151にインク保持部材150が収納された形態となっている。液体収納容器100の側壁111におけるインク保持部材150の端部152は負圧発生部材103と接触した状態が維持されている。
【0040】
本実施形態における作用効果は、実施形態1による作用効果と同様である。すなわち、衝撃あるいは衝撃後の減圧などで発生する負圧発生部材103からのインク漏れが、液体収納容器100上壁110上に設けられたインク保持部材150により保持される。そしてインク保持部材150は、その端部152において負圧発生部材103と当接しているため、当接部よりインク保持部材150内のインクを負圧発生部材103が吸収することが可能となっている。この繰り返しにより、大気連通口101からのインクの漏れ出しを確実に抑制することが可能となっている。
【0041】
以上説明した実施形態1〜3による液体収納容器100によれば、衝撃や環境変化により負圧発生部材103からインクが垂れ出したとしても、空間部105を形成する上壁100及び側壁111上に毛管力の発生可能な毛管路120又はインク保持部材150が設けられているため、インクをトラップすることができる。またインクは毛管力によりトラップされているため、タンク姿勢に追従して移動することなく、インク保持が可能となっている。
【0042】
さらに、毛管路120又はインク保持部材150はその端部121又は152などにおいて負圧発生部材103と接触するように構成されているため、毛管路120又はインク保持部材150にトラップされたインクは負圧発生部材103まで案内される。この際、毛管路120及びインク保持部材150の毛管力は負圧発生部材103の毛管力より低く設定されているため、毛管路120又はインク保持部材150を通ってきたインクは負圧発生部材103と接触し、負圧発生部材103内に吸収されることとなる。これにより、毛管路120又はインク保持部材150がインクで満杯になることなく、いつでも機能するため、溜まったインクが溢れ、外部に漏れ出ることはなく、信頼性の高い液体収納容器を提供できる。さらに、インクは負圧発生部材103内に戻るため、液体収納容器100におけるインク使用可能量も減少しない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態1による液体収納容器の概略説明図であり、液体収納容器の最大面積面と平行な面に沿った断面図である。
【図2】本発明の実施形態1による液体収納容器の上壁を内部から見た図である。
【図3A】本発明の実施形態1による液体収納容器のInitial状態における断面図である。
【図3B】本発明の実施形態1による液体収納容器の、大気連通口下向き姿勢で落下などの衝撃が加わった後の状態を示す断面図である。
【図3C】本発明の実施形態1による液体収納容器の、図3Bの状態の後に減圧環境に持ち運ばれた時の状態を示す断面図である。
【図3D】本発明の実施形態1による液体収納容器の、図3Cの状態の後で常圧に戻った状態を示す断面図である。
【図4A】本発明の実施形態1による液体収納容器の上壁を内部から見た図であり、実施形態1における毛管路の変形例を示す図である。
【図4B】本発明の実施形態1による液体収納容器の側壁を内部から見た図であり、実施形態1における毛管路の変形例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態2による液体収納容器の概略説明図であり、液体収納容器の最大面積面と平行な面に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施形態3による液体収納容器の概略説明図であり、液体収納容器の最大面積面と平行な面に沿った断面図である。
【図7】特許文献1に示される液体収納容器における最大面積面に平行な断面図である。
【図8】特許文献2に示される液体収納容器を説明するための図であり、(a)は液体収納容器の気連通口を有する天面を示す図であり、(b)は液体収納容器の最大面積面に平行な断面図である。
【図9A】本発明が解決しようとする課題を説明するための図で、大気連通口が下向きの状態の液体収納容器内のインク状態を示す断面図である。
【図9B】本発明が解決しようとする課題を説明するための図で、図9Aの状態の後に減圧環境に持ち運ばれた時の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
100 液体収納容器
101 大気連通口
102 液体供給口
103 負圧発生部材
104 リブ
105 空間部
106 圧接体
107 大気連通溝
108 シールテープ
110 液体収納容器の上壁
111 液体収納容器の側壁
120 毛管路
121 毛管路の端部
130 インク非含浸領域
140 閉塞エア
150 インク保持部材
151 溝
152 インク保持部材の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を含浸する負圧発生部材を収納する負圧発生部材収納室と、該負圧発生部材収納室の前記液体を供給する液体供給口と、前記負圧発生部材収納室内を大気と連通する大気連通口とを備えている液体収納容器において、
前記負圧発生部材収納室内には、前記大気連通口が開口する壁面と前記負圧発生部材との間に空間部が形成されており、該空間部を形成する前記負圧発生部材収納室の壁面上に毛管力を発生する毛管路が設けられていることを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記毛管路は、前記大気連通口が開口する壁面上に少なくとも設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記毛管路は、前記大気連通口を包囲しかつ前記大気連通口と連通しないように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記毛管路の少なくとも一部は、前記負圧発生部材と接触するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項5】
前記毛管路の毛管力は前記負圧発生部材の毛管力よりも小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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