液体収納容器
【課題】 インクの収納空間を充分に確保した上、輸送時や使用時などに加わる外力によって変形したとしても大きな圧力変動を生じることなく、液体の漏出を防止することができる液体収納容器を提供すること。
【解決手段】 可撓性部材4の外側に保護部材5を配置し、その可撓性部材4に接する面部材3に、保護部材5と対向する開口部10を形成する。
【解決手段】 可撓性部材4の外側に保護部材5を配置し、その可撓性部材4に接する面部材3に、保護部材5と対向する開口部10を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの種々の液体を収納可能な液体収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドを用いて記録媒体へインクなどの液体を付与することにより、記録媒体上に画像を記録する記録装置においては、記録ヘッドに供給するインクを収納するための液体収納容器が用いられている。一般に、このような液体収納容器においては、液体の安定供給や漏れ防止のために、容器内の液体に所定の負圧を付与する構成が採用されている。
【0003】
このような液体収納容器の構成の一つとしては、液体収納容器内に吸収体を備え、その吸収体による液体の保持力を利用して負圧を付与する構成がある。また、このような吸収体を用いずに負圧を発生する液体収納容器としては、負圧発生手段としてばねを用いたものがある。この液体収納容器は、容器の一部を形成する筐体(固定部材)に可撓性部材を取り付けた密閉型の容器であり、その可撓性部材は、容器の内部から外部へのインクの導出に伴って圧縮方向に変形可能である。そしてばねによって、容器内部を拡張させる方向に可撓性部材を付勢することにより、容器内に負圧を発生させる構成となっている。そのばねとしては、例えば、弓形の板バネや、コイルばねを用いることが知られている。また、袋状の可撓性部材の中に、負圧発生手段としてのばねを入れた構成の液体収納容器もある。
【0004】
このように、可撓性部材をばね部材によって容器内部を拡張させる方向に付勢することにより、負圧を発生させる液体収納容器には、その可撓性部材を外部からの圧力や衝撃から保護するために、蓋部材などの保護部材が備えられている。このような保護部材は、液体収納容器の取り扱い時や輸送時の落下などによって加わる衝撃や静的荷重から、液体収納容器を保護する。外部圧力により生じる液体収納容器の構成部材の変形が可撓性部材に伝わった場合には、それに伴う急激な圧力変動や負圧解除が容器内に生じて、インク漏れが発生するおそれがある。保護部材は、このようなインク漏れの発生を防止する。
【0005】
樹脂によって製造される液体収納容器においては、樹脂製の保護部材の外部圧力による変形を避けることは難しい。また、直方体形状の液体収納容器において、外部圧力が加わった時に外装の最大面積部分が最も大きく変形する。そのため、可撓性部材が容器内部を拡張させる方向に最大量変形した時に、蓋部材に可撓性部材が接触しないように、可撓性部材の最大変形量が設計されている。可撓性部材の最大変形量が制限されることで、実質的にインクの収納量が小さくなってしまう。
【0006】
保護部材の変形を防止する対策としては、それを形成する樹脂等の厚みを厚くしたり、樹脂に比べて剛性の高い金属等の材料によって保護部材を形成する方法がある。
【特許文献1】USP5754207
【特許文献2】USP6250751
【特許文献3】特開平06−183023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、液体収納容器外装における最大面積部分の厚みを厚くした場合にはインクの収納量が減少する。また金属等の剛性を高めた材料を用いた場合にはコストが高くなってしまう。
【0008】
図12および図13は、インクの収納量の減少を抑えるために、保護部材の変形を考慮して可撓性部材の形状が規制されている液体収納容器の構成例である。筐体部材1と、この筐体部材1の内周縁に密着された可撓性部材4と、によって、インクなどの液体7の収納空間が形成されている。可撓性部材4の内面には面部材3が位置し、また筐体部材1の開口部には、可撓性部材4を保護する保護部材としての蓋部材5が取り付けられる。液体7の収納空間内に備えられるばね部材2は、面部材3を介して可撓性部材4を図13中の上方、つまり収納空間を拡張させる方向に付勢する。これにより、液体7に負圧が付与される。図13(B)は、蓋部材5が外力により最大に変形したときの状態である。面部材3には、図12(A)の11で示すように、蓋部材5の最大変形形状と略同形状(凹形状)が成形されている。この凹形状と液体収納量の関係を示したものが図13である。可撓性部材4は、常に、蓋部材5の最大変形形状と略同形状に規制され、可撓性部材と面部材が対応している箇所が凹形状になっている。
【0009】
面部材3は、ばね部材2により発生する荷重を伝達するために、低圧力では変形しない金属板や、比較的厚みのある(少なくとも1〜2mm程度以上)樹脂板が用いられている。そのため、蓋部材5の最大変形形状と略同形状に成形されている面部材3の凹部11は、図13(C)のように液体7が使い切られる際に、凹部11の下方に突出している箇所が筐体部材1の内底面に接触する。その結果、面部材3の筐体部材への変位を阻害してしまう。仮に、図13(C)の状態から可撓性部材4がさらに変形した場合、面部材の両端側にある筐体部材と可撓性部材間の距離がより短くなり、液体収納空間内の負圧が急激に高まる。液体がインクの場合、インクをインク供給口6から記録ヘッドに供給することができなくなる。さらに、可撓性部材の一部と筐体部材が接触してしまうと、その状態で供給口へのインク流れが遮断されてしまい、収納空間内にインク残りが生じるおそれがある。
【0010】
上述の従来技術における各課題を解決するために、本発明の目的はインクの収納空間を充分に確保した上で、輸送時や使用時などに加わる外力によって容器が変形したとしても、液体が大きな圧力変動を生じることのない液体収納容器を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、安定した圧力を保持した状態で液体の漏出を防止し、適切な液体吐出を行なことができる液体収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決するために、本発明の液体収納容器は、液体の収納空間を形成する壁部の一部を構成する可撓性部材と、前記収納空間内の液体を外部に供給するための供給口と、前記可撓性部材の外側に位置する保護部材と、前記可撓性部材に接しかつ前記保護部材と対向する位置に開口部が形成された面部材と、前記収納空間内に負圧を発生させるように、前記面部材を介して前記可撓性部材を付勢するばね部材と、を備え、前記面部材の重心位置に前記開口部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可撓性部材の外側に保護部材を配置し、その可撓性部材に接する面部材の重心位置であって、保護部材と対向する位置に開口を形成する。
【0014】
保護部材が変形した場合に、面部材の重心位置に形成した開口部によって保護部材と面部材との接触を回避することができる。
【0015】
液体収納容器が輸送時や使用時などに加わる外力によって変形したとしても大きな圧力変動を生じることなく、液体の安定した圧力を保持した状態で液体を漏出することなく、適切な液体吐出を行うことができる。また、面部材の重心位置に開口部を形成する簡単な構成によって、この種の液体収納容器を簡便かつ安価に提供することができる。
【0016】
また、ばね部材として円錐コイルばねを用い、その小径側を面部材に接触させることにより、面部材に外力が加わった場合に面部材がバランスよく変位しやすくなり、液体の圧力変動をより確実に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1から図6は、本発明の第1の実施形態を説明するための図である。図1(A)は、本実施形態における液体収納容器の斜視図、図1(B)は、その分解斜視図である。筐体部材1と、この筐体部材1の内周縁に密着される可撓性部材4と、によって、図3(A)のように、インクなどの液体7の収納空間が形成される。可撓性部材4としては柔軟性のあるシートが用いられ、筐体部材1と溶着等により結合されて、液体7の収納空間の密閉が確保される。可撓性部材4のインク収納側内面には面部材3が位置し、また筐体部材1の開口部には、可撓性部材4を保護する保護部材としての蓋部材5が取り付けられる。
【0019】
面部材3の重心位置には開口10が設けられ、ばね部材は面部材の開口部分に接している。液体7の収納空間内に備えられるばね部材2は、面部材3を介して可撓性部材4を図3(A)中の上方、つまり収納空間を拡張させる方向に付勢する。面部材3は、ばね部材2の付勢力を可撓性部材4に伝達する役割を果たし、液体収納容器の内部負圧を液体吐出が安定する一定の範囲内に維持する。このようにばね部材2は負圧発生手段として機能し、液体7に負圧が付与される。本例においては、ばね部材2によって液体収納容器内の圧力調整を行なう。液体収納容器の内部圧力は、可撓性部材4によって形成される袋状の収納空間が潰れきるまで、液体の吐出に影響を及ぼすような所定圧力以上にならないように調整される。液体の吐出に適した圧力範囲とは、記録ヘッドなどの吐出口から吐出した液体が、記録媒体上で良好な印字状態となりうるための、液体収納容器内の液体の圧力である。また、液体収納容器内から吐出口への液体供給が、良好に継続される範囲のことでもある。筐体部材1の底面には、ばね部材2を位置決めするための段差部1Aが形成されている。
【0020】
液体収納容器内の圧力変化に対して、ばね部材が安定して付勢力を保持することが可能な構成になっている。
【0021】
筐体部材1には、液体7を導出するための液体供給口6が設けられている。液体供給口6は、液体7の漏れを防ぐために、スリットを設けたゴム部材、液体収納容器内の負圧に耐えうるメニスカス力を発生するための吸収体、フィルタのような毛管力発生部材によってシールされている。本発明は、何れの形態の液体供給口6が設けられた液体収納容器にも適用することができる。液体7は負圧が付与されたまま、液体供給口6から導出され、液体収納容器内の液体7の残量に応じて可撓性部材4が変形する。液体7として、記録ヘッドに供給するインクを収納する場合には、所定の負圧が付与されたインクを、液体供給口6から記録ヘッドに供給することになる。液体供給口6に対して、記録ヘッドを直接または間接的に着脱可能に接続することができる。
【0022】
図2(A)は、蓋部材5を外した状態における液体収納容器の斜視図、図2(B)は、面部材3とばね部材2の斜視図である。ばね部材2の一端は、溶着などの手段によって、面部材3の内面に結合されている。本例の面部材3は、平面形状が長方形の板部材であり、その中央重心部分に円形の開口部10が形成されている。その開口部10は、外部圧力を受けて変形する量が最も大きい液体収納容器の側面、つまり蓋部材5の中央部と対向して位置している。本例のばね部材2は円錐コイルばねであり、その小径側が面部材3の開口部10に結合されている。ばね部材2は、液体収納容器の使用状態において、その内部圧力を維持するための荷重を発生するものであり、その形状は問わず、例えば、圧縮コイルばね、円錐コイルばね、板ばね等であってもよい。
【0023】
図3(B)は、蓋部材5の中央部分に、外部圧力による変形が生じた時の説明図である。液体収納容器の最大側面を形成する蓋部材の中央部分は、外部圧力による変形量が最も多い部分である。蓋部材5の中央部分に変形が生じた際には、面部材3に開口部10が形成されているため、外力により変形した蓋部材と面部材との接触が避けられる。したがって、外部からの変形力が液体7の収納空間内に伝わらず、液体収納容器内の圧力変動が回避される。また、圧力板としての面部材3の形状等を大幅に変更していないため、図3(C)のように、液体収納容器内に液体7を残すことなく、液体7を使い切ることができる。
【0024】
本例の場合、面部材3の開口部10は、面部材の重心位置にあり、円錐コイルばねの小径側と略同径になっている。円錐コイルばねの小径側と面部材3とが接している。そのため、図4(A)のように、外部圧力Fによる蓋部材5の変形が面部材3の端側に矢印Aのように伝わった場合にも、容器内の液体に大きな内部圧力の変動が生じない。すなわち、図4(A)のように、外部圧力による変形が面部材3に伝わった場合には、面部材3が内部圧力に対して比較的小さい力で変位し、可撓性部材4もその変位に追従するため、大きな内部圧力の変動が生じることがなく、所定の負圧を維持することができる。また、蓋部材5の中央部分の変形は、面部材3の開口部10によって吸収されるため、液体7の圧力変動による漏れも生じない。
【0025】
さらに、面部材の開口部が面部材の重心に位置しているため、外部からの圧力Fがかかった場合でも、その力がばね部材を中心として液体収納部内でA,Bに分散される。容器内の大きな圧力変動をばね部材がバランスよく吸収し、配分するために、液体収納部内の圧力変動を緩和することができる。
【0026】
図4(B)は、本例の場合とは逆に、ばね部材2としての円錐コイルばねの大径側が面部材3に接する比較例の説明図である。面部材の重心位置には開口10が設けられている。この比較例の場合には、円錐コイルばねの大径側の部分が面部材3の広範囲に渡って接することになる。液体収納容器の中央部から少し外れた位置に外力Fがかかると、面部材3は全体的に下方に押される。図4(A)のように、円錐ばねの小径部が面部材と接している実施例では、その外力Fが円錐コイルばねのコイル径の外側Aにかかる。図4(B)で示すように、円錐ばねの大径部が面部材に接する実施例の場合には、その外力Fが円錐コイルばねのコイル径の内側にかかる。この時、コイル径の内側で保持される面全体に荷重が掛かるため、結果的に、図4(A)の実施例に比べて、面部材3の全体に大きな荷重が掛かることになる。
【0027】
したがって、図4(A)のように、ばね部材2としての円錐コイルばねの小径側が面部材3に接することは、その円錐コイルばねの全体に掛かる荷重を小さくして、圧力変動を抑える上において有利となる。
【0028】
図5および図6は、開口部10が形成されていない面部材3を備えた液体収納容器の説明図である。図5(A)は、液体収納容器から蓋部材5を外した状態の斜視図、図5(B)は、その液体収納容器に備わる面部材3とばね部材2との結合状態斜視図である。
【0029】
可撓性部材4を用いる液体収納容器は、その初期の使用時には、液体7の漏れが生じない程度の負圧を発生している。このような液体収納容器は、その初期の内部負圧により、図6(A)のように面部材3と可撓性部材4が液体7の収納空間内に向かって引かれ、可撓性部材4は収納空間内に引っ張られた状態で保持されている。この初期の内部負圧を発生させるためには、液体7の収納量を収納空間の内容積よりも数cc程度少なくする必要があり、また液体7の収納量を多く確保するためには、初期の内部負圧によって収納空間内に変位する面部材3の変位量を最小にする必要がある。
【0030】
この図5および図6のように、面部材3に開口部10が設けられていない場合、液体収納容器に外部圧力が加わったときに、最も面積が大きい液体収納容器の側面の中央部分が図6(B)のように大きく変形する。液体収納容器の落下等によって急激な力が外部から加わった場合には、その力が面部材3に伝わって液体7の初期圧力に大きな変動を与え、液体供給口から液体の漏れが生じるおそれがある。また、液体収納容器の物流中に生じる気圧の変動などで、ばね部材の圧縮状態が変化すると、液体収納部内の内部負圧が解除され、液体7の漏れが生じるおそれがある。
【0031】
(第2の実施形態)
図7および図8は、本発明の第2の実施形態を説明するための図である。
【0032】
本例においては、面部材3に複数の開口部10が形成されている。開口部10の1つは、前述した実施形態と同様に、面部材の重心位置にあり、外力を受けたときの最大の変形部分である液体収納容器の側面中央部と対向している。さらに、その中央の開口部10からずれた位置に、他の開口部10a、10bが形成されている。このような他の開口部10a、10bは、図8のように、液体収納容器の側面中央部以外に変形が生じた際の対策として形成されている。
【0033】
図7(A)の面部材3には、中央部の開口部10と、その左右に位置する2つの開口部10a、10bが形成されている。このように開口部10の開口面を総合的に大きく設定することにより、液体収納容器の変形が内部の圧力変動に及ぼす影響をきわめて小さくすることができる。一方、このように開口部10を大きく設定した場合には、面部材3の剛性の低下を招いて、可撓性部材4の平面形状に保持するための平面保持力が損なわれるおそれが生じる。面部材3の強度を補強するためには、図7(B)のように、面部材3の左右の開口部10a、10bの近傍に梁部12を形成すればよい。
【0034】
開口部10a、10bは、面部材の重心位置にある開口10を挟んで対象な位置にあっても良い。この場合液体収納部内の圧力変動を、容器内でバランスよく分散することが可能になる。
【0035】
(第3の実施形態)
図9および図10は、本発明の第3の実施形態を説明するための図である。本実施形態においては、ばね部材2が複数備えられている。
【0036】
本例の場合、ばね部材2として、2つのコイルばね2a、2bが並列的に備えられている。本例においても前述した実施形態同様に、面部材3の重心部に開口部10が形成されている。さらに、ばね部材2aと対向する位置に開口部10aが形成され、ばね部材2bと対向する位置に開口部10bが形成されている。図10で示すように、外力Fによる液体収納容器の中央部以外の変形に対応し、開口部10a、10b、ばね部材2a、2bが外力Fを吸収し分散している。また、面部材3におけるそれぞれの開口部の形成位置は、ばね部材の配備数や配備位置に拘わらず設定することができる。
【0037】
(第4の実施形態)
図11は、本発明の第4の実施形態を説明するための図である。本実施形態においては、ばね部材2として板ばねが用いられている。
【0038】
本例の場合、ばね部材2として、互いに組み合わさる2つの板ばねが用いられている。板ばねは、液体7の収納空間内に位置する2つの面部材3a、3bの間に備えられている。図11で上側にある板ばねは、その中央部分が上側の面部材3aの開口部10aに接し、両端部が下方に湾曲されている。一方、図11で下側にある板ばねは、その中央部分が下側の面部材3bの開口部10bに接して、その両端部が上方に湾曲されている。これらの板ばねの両端部は互いに結合され、上下の面部材3a、3bを互いに離間させる方向、つまり液体7の収納空間を拡大させる方向に付勢している。液体収納空間内における液体7の収納量の減少に伴って、これらの板ばねは互いの結合状態を維持したまま接近する方向に押し潰され、変形することにより、ばね部材2として機能する。これらの板ばねとして同じ形状のものを用いて、ばね2のそれぞれの端部が各面部材3a、3bと接するように、互いに逆向きに組み合わせるようにして結合させても良い。
【0039】
この時ばね部材2と面部材が接する場所は、面部材の重心にある開口部10a、10b以外の場所になる。しかし、先の実施例で説明したように、面部材の重心位置以外に開口部を設けることで、各ばね部材の弾性力を面部材にバランス良く伝達、吸収させることができる。
【0040】
面部材3の中央部以外の部分が押された場合、面部材とばね部材の接触部が増えるため、面部材3が比較的小さな荷重で変位することができる。液体収納容器内部の液体の急激な圧力変動を防ぎ、内部の負圧を維持することができる。したがって、前述した実施形態と同様に、液体7の漏れを防止することができる。
【0041】
(他の実施形態)
面部材3は、可撓性部材4の形状を規制すべく、その可撓性部材4に接するものであればよく、可撓性部材4の外面に接するものであってもよく、また可撓性部材4の外面に接着されるものであってもよい。可撓性部材4の形状を規制する面部材3に、保護部材5との緩衝を回避するための開口部10が形成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)は本発明の第1の実施形態における液体収納容器斜視図、(B)は液体収納容器の分解斜視図
【図2】(A)は図1(A)の容器から蓋部材を外した状態、(B)は図1(B)のばね部材と面部材との結合状態
【図3】(A)は図1(A)のIII−III線に沿う断面図であり、液体が充分に収納されているときの断面図、(B)は液体収納容器が変形した時の断面図、(C)は液体が外部に供給された後における断面図
【図4】(A)は液体収納容器が変形した時の他の断面図、(B)はばねの大径側が面部材に接する断面図
【図5】(A)は面部材に開口がない液体収納容器の斜視図、(B)は開口がない面部材とばね部材との結合状態斜視図
【図6】(A)は図5(A)の液体収納容器のVI−VI線断面図、(B)は図5(A)のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】(A)は第2の実施形態におけるばね部材と面部材との斜視図、(B)は第2の実施形態の変形例
【図8】第2の実施形態における液体収納容器の断面図である。
【図9】第3の実施形態におけるばね部材と面部材との斜視図
【図10】第3の実施形態における液体収納容器の断面図である。
【図11】第3の実施形態に置けるばね部材と面部材との斜視図
【図12】(A)は蓋部材を外した状態の従来の液体収納容器斜視図、(B)はばね部材と面部材との結合状態斜視図
【図13】(A)は図12(A)の液体収納容器XIII−XIII線に沿う断面図であって、液体が充分に収納されているときの状態、(B)は液体収納容器が変形した時の断面図、(C)は液体が外部に供給された後の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 筐体部材
2 ばね部材
3 面部材
4 可撓性部材
5 蓋部材
6 液体供給口
7 液体
10 開口部
12 梁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの種々の液体を収納可能な液体収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドを用いて記録媒体へインクなどの液体を付与することにより、記録媒体上に画像を記録する記録装置においては、記録ヘッドに供給するインクを収納するための液体収納容器が用いられている。一般に、このような液体収納容器においては、液体の安定供給や漏れ防止のために、容器内の液体に所定の負圧を付与する構成が採用されている。
【0003】
このような液体収納容器の構成の一つとしては、液体収納容器内に吸収体を備え、その吸収体による液体の保持力を利用して負圧を付与する構成がある。また、このような吸収体を用いずに負圧を発生する液体収納容器としては、負圧発生手段としてばねを用いたものがある。この液体収納容器は、容器の一部を形成する筐体(固定部材)に可撓性部材を取り付けた密閉型の容器であり、その可撓性部材は、容器の内部から外部へのインクの導出に伴って圧縮方向に変形可能である。そしてばねによって、容器内部を拡張させる方向に可撓性部材を付勢することにより、容器内に負圧を発生させる構成となっている。そのばねとしては、例えば、弓形の板バネや、コイルばねを用いることが知られている。また、袋状の可撓性部材の中に、負圧発生手段としてのばねを入れた構成の液体収納容器もある。
【0004】
このように、可撓性部材をばね部材によって容器内部を拡張させる方向に付勢することにより、負圧を発生させる液体収納容器には、その可撓性部材を外部からの圧力や衝撃から保護するために、蓋部材などの保護部材が備えられている。このような保護部材は、液体収納容器の取り扱い時や輸送時の落下などによって加わる衝撃や静的荷重から、液体収納容器を保護する。外部圧力により生じる液体収納容器の構成部材の変形が可撓性部材に伝わった場合には、それに伴う急激な圧力変動や負圧解除が容器内に生じて、インク漏れが発生するおそれがある。保護部材は、このようなインク漏れの発生を防止する。
【0005】
樹脂によって製造される液体収納容器においては、樹脂製の保護部材の外部圧力による変形を避けることは難しい。また、直方体形状の液体収納容器において、外部圧力が加わった時に外装の最大面積部分が最も大きく変形する。そのため、可撓性部材が容器内部を拡張させる方向に最大量変形した時に、蓋部材に可撓性部材が接触しないように、可撓性部材の最大変形量が設計されている。可撓性部材の最大変形量が制限されることで、実質的にインクの収納量が小さくなってしまう。
【0006】
保護部材の変形を防止する対策としては、それを形成する樹脂等の厚みを厚くしたり、樹脂に比べて剛性の高い金属等の材料によって保護部材を形成する方法がある。
【特許文献1】USP5754207
【特許文献2】USP6250751
【特許文献3】特開平06−183023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、液体収納容器外装における最大面積部分の厚みを厚くした場合にはインクの収納量が減少する。また金属等の剛性を高めた材料を用いた場合にはコストが高くなってしまう。
【0008】
図12および図13は、インクの収納量の減少を抑えるために、保護部材の変形を考慮して可撓性部材の形状が規制されている液体収納容器の構成例である。筐体部材1と、この筐体部材1の内周縁に密着された可撓性部材4と、によって、インクなどの液体7の収納空間が形成されている。可撓性部材4の内面には面部材3が位置し、また筐体部材1の開口部には、可撓性部材4を保護する保護部材としての蓋部材5が取り付けられる。液体7の収納空間内に備えられるばね部材2は、面部材3を介して可撓性部材4を図13中の上方、つまり収納空間を拡張させる方向に付勢する。これにより、液体7に負圧が付与される。図13(B)は、蓋部材5が外力により最大に変形したときの状態である。面部材3には、図12(A)の11で示すように、蓋部材5の最大変形形状と略同形状(凹形状)が成形されている。この凹形状と液体収納量の関係を示したものが図13である。可撓性部材4は、常に、蓋部材5の最大変形形状と略同形状に規制され、可撓性部材と面部材が対応している箇所が凹形状になっている。
【0009】
面部材3は、ばね部材2により発生する荷重を伝達するために、低圧力では変形しない金属板や、比較的厚みのある(少なくとも1〜2mm程度以上)樹脂板が用いられている。そのため、蓋部材5の最大変形形状と略同形状に成形されている面部材3の凹部11は、図13(C)のように液体7が使い切られる際に、凹部11の下方に突出している箇所が筐体部材1の内底面に接触する。その結果、面部材3の筐体部材への変位を阻害してしまう。仮に、図13(C)の状態から可撓性部材4がさらに変形した場合、面部材の両端側にある筐体部材と可撓性部材間の距離がより短くなり、液体収納空間内の負圧が急激に高まる。液体がインクの場合、インクをインク供給口6から記録ヘッドに供給することができなくなる。さらに、可撓性部材の一部と筐体部材が接触してしまうと、その状態で供給口へのインク流れが遮断されてしまい、収納空間内にインク残りが生じるおそれがある。
【0010】
上述の従来技術における各課題を解決するために、本発明の目的はインクの収納空間を充分に確保した上で、輸送時や使用時などに加わる外力によって容器が変形したとしても、液体が大きな圧力変動を生じることのない液体収納容器を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、安定した圧力を保持した状態で液体の漏出を防止し、適切な液体吐出を行なことができる液体収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決するために、本発明の液体収納容器は、液体の収納空間を形成する壁部の一部を構成する可撓性部材と、前記収納空間内の液体を外部に供給するための供給口と、前記可撓性部材の外側に位置する保護部材と、前記可撓性部材に接しかつ前記保護部材と対向する位置に開口部が形成された面部材と、前記収納空間内に負圧を発生させるように、前記面部材を介して前記可撓性部材を付勢するばね部材と、を備え、前記面部材の重心位置に前記開口部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可撓性部材の外側に保護部材を配置し、その可撓性部材に接する面部材の重心位置であって、保護部材と対向する位置に開口を形成する。
【0014】
保護部材が変形した場合に、面部材の重心位置に形成した開口部によって保護部材と面部材との接触を回避することができる。
【0015】
液体収納容器が輸送時や使用時などに加わる外力によって変形したとしても大きな圧力変動を生じることなく、液体の安定した圧力を保持した状態で液体を漏出することなく、適切な液体吐出を行うことができる。また、面部材の重心位置に開口部を形成する簡単な構成によって、この種の液体収納容器を簡便かつ安価に提供することができる。
【0016】
また、ばね部材として円錐コイルばねを用い、その小径側を面部材に接触させることにより、面部材に外力が加わった場合に面部材がバランスよく変位しやすくなり、液体の圧力変動をより確実に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1から図6は、本発明の第1の実施形態を説明するための図である。図1(A)は、本実施形態における液体収納容器の斜視図、図1(B)は、その分解斜視図である。筐体部材1と、この筐体部材1の内周縁に密着される可撓性部材4と、によって、図3(A)のように、インクなどの液体7の収納空間が形成される。可撓性部材4としては柔軟性のあるシートが用いられ、筐体部材1と溶着等により結合されて、液体7の収納空間の密閉が確保される。可撓性部材4のインク収納側内面には面部材3が位置し、また筐体部材1の開口部には、可撓性部材4を保護する保護部材としての蓋部材5が取り付けられる。
【0019】
面部材3の重心位置には開口10が設けられ、ばね部材は面部材の開口部分に接している。液体7の収納空間内に備えられるばね部材2は、面部材3を介して可撓性部材4を図3(A)中の上方、つまり収納空間を拡張させる方向に付勢する。面部材3は、ばね部材2の付勢力を可撓性部材4に伝達する役割を果たし、液体収納容器の内部負圧を液体吐出が安定する一定の範囲内に維持する。このようにばね部材2は負圧発生手段として機能し、液体7に負圧が付与される。本例においては、ばね部材2によって液体収納容器内の圧力調整を行なう。液体収納容器の内部圧力は、可撓性部材4によって形成される袋状の収納空間が潰れきるまで、液体の吐出に影響を及ぼすような所定圧力以上にならないように調整される。液体の吐出に適した圧力範囲とは、記録ヘッドなどの吐出口から吐出した液体が、記録媒体上で良好な印字状態となりうるための、液体収納容器内の液体の圧力である。また、液体収納容器内から吐出口への液体供給が、良好に継続される範囲のことでもある。筐体部材1の底面には、ばね部材2を位置決めするための段差部1Aが形成されている。
【0020】
液体収納容器内の圧力変化に対して、ばね部材が安定して付勢力を保持することが可能な構成になっている。
【0021】
筐体部材1には、液体7を導出するための液体供給口6が設けられている。液体供給口6は、液体7の漏れを防ぐために、スリットを設けたゴム部材、液体収納容器内の負圧に耐えうるメニスカス力を発生するための吸収体、フィルタのような毛管力発生部材によってシールされている。本発明は、何れの形態の液体供給口6が設けられた液体収納容器にも適用することができる。液体7は負圧が付与されたまま、液体供給口6から導出され、液体収納容器内の液体7の残量に応じて可撓性部材4が変形する。液体7として、記録ヘッドに供給するインクを収納する場合には、所定の負圧が付与されたインクを、液体供給口6から記録ヘッドに供給することになる。液体供給口6に対して、記録ヘッドを直接または間接的に着脱可能に接続することができる。
【0022】
図2(A)は、蓋部材5を外した状態における液体収納容器の斜視図、図2(B)は、面部材3とばね部材2の斜視図である。ばね部材2の一端は、溶着などの手段によって、面部材3の内面に結合されている。本例の面部材3は、平面形状が長方形の板部材であり、その中央重心部分に円形の開口部10が形成されている。その開口部10は、外部圧力を受けて変形する量が最も大きい液体収納容器の側面、つまり蓋部材5の中央部と対向して位置している。本例のばね部材2は円錐コイルばねであり、その小径側が面部材3の開口部10に結合されている。ばね部材2は、液体収納容器の使用状態において、その内部圧力を維持するための荷重を発生するものであり、その形状は問わず、例えば、圧縮コイルばね、円錐コイルばね、板ばね等であってもよい。
【0023】
図3(B)は、蓋部材5の中央部分に、外部圧力による変形が生じた時の説明図である。液体収納容器の最大側面を形成する蓋部材の中央部分は、外部圧力による変形量が最も多い部分である。蓋部材5の中央部分に変形が生じた際には、面部材3に開口部10が形成されているため、外力により変形した蓋部材と面部材との接触が避けられる。したがって、外部からの変形力が液体7の収納空間内に伝わらず、液体収納容器内の圧力変動が回避される。また、圧力板としての面部材3の形状等を大幅に変更していないため、図3(C)のように、液体収納容器内に液体7を残すことなく、液体7を使い切ることができる。
【0024】
本例の場合、面部材3の開口部10は、面部材の重心位置にあり、円錐コイルばねの小径側と略同径になっている。円錐コイルばねの小径側と面部材3とが接している。そのため、図4(A)のように、外部圧力Fによる蓋部材5の変形が面部材3の端側に矢印Aのように伝わった場合にも、容器内の液体に大きな内部圧力の変動が生じない。すなわち、図4(A)のように、外部圧力による変形が面部材3に伝わった場合には、面部材3が内部圧力に対して比較的小さい力で変位し、可撓性部材4もその変位に追従するため、大きな内部圧力の変動が生じることがなく、所定の負圧を維持することができる。また、蓋部材5の中央部分の変形は、面部材3の開口部10によって吸収されるため、液体7の圧力変動による漏れも生じない。
【0025】
さらに、面部材の開口部が面部材の重心に位置しているため、外部からの圧力Fがかかった場合でも、その力がばね部材を中心として液体収納部内でA,Bに分散される。容器内の大きな圧力変動をばね部材がバランスよく吸収し、配分するために、液体収納部内の圧力変動を緩和することができる。
【0026】
図4(B)は、本例の場合とは逆に、ばね部材2としての円錐コイルばねの大径側が面部材3に接する比較例の説明図である。面部材の重心位置には開口10が設けられている。この比較例の場合には、円錐コイルばねの大径側の部分が面部材3の広範囲に渡って接することになる。液体収納容器の中央部から少し外れた位置に外力Fがかかると、面部材3は全体的に下方に押される。図4(A)のように、円錐ばねの小径部が面部材と接している実施例では、その外力Fが円錐コイルばねのコイル径の外側Aにかかる。図4(B)で示すように、円錐ばねの大径部が面部材に接する実施例の場合には、その外力Fが円錐コイルばねのコイル径の内側にかかる。この時、コイル径の内側で保持される面全体に荷重が掛かるため、結果的に、図4(A)の実施例に比べて、面部材3の全体に大きな荷重が掛かることになる。
【0027】
したがって、図4(A)のように、ばね部材2としての円錐コイルばねの小径側が面部材3に接することは、その円錐コイルばねの全体に掛かる荷重を小さくして、圧力変動を抑える上において有利となる。
【0028】
図5および図6は、開口部10が形成されていない面部材3を備えた液体収納容器の説明図である。図5(A)は、液体収納容器から蓋部材5を外した状態の斜視図、図5(B)は、その液体収納容器に備わる面部材3とばね部材2との結合状態斜視図である。
【0029】
可撓性部材4を用いる液体収納容器は、その初期の使用時には、液体7の漏れが生じない程度の負圧を発生している。このような液体収納容器は、その初期の内部負圧により、図6(A)のように面部材3と可撓性部材4が液体7の収納空間内に向かって引かれ、可撓性部材4は収納空間内に引っ張られた状態で保持されている。この初期の内部負圧を発生させるためには、液体7の収納量を収納空間の内容積よりも数cc程度少なくする必要があり、また液体7の収納量を多く確保するためには、初期の内部負圧によって収納空間内に変位する面部材3の変位量を最小にする必要がある。
【0030】
この図5および図6のように、面部材3に開口部10が設けられていない場合、液体収納容器に外部圧力が加わったときに、最も面積が大きい液体収納容器の側面の中央部分が図6(B)のように大きく変形する。液体収納容器の落下等によって急激な力が外部から加わった場合には、その力が面部材3に伝わって液体7の初期圧力に大きな変動を与え、液体供給口から液体の漏れが生じるおそれがある。また、液体収納容器の物流中に生じる気圧の変動などで、ばね部材の圧縮状態が変化すると、液体収納部内の内部負圧が解除され、液体7の漏れが生じるおそれがある。
【0031】
(第2の実施形態)
図7および図8は、本発明の第2の実施形態を説明するための図である。
【0032】
本例においては、面部材3に複数の開口部10が形成されている。開口部10の1つは、前述した実施形態と同様に、面部材の重心位置にあり、外力を受けたときの最大の変形部分である液体収納容器の側面中央部と対向している。さらに、その中央の開口部10からずれた位置に、他の開口部10a、10bが形成されている。このような他の開口部10a、10bは、図8のように、液体収納容器の側面中央部以外に変形が生じた際の対策として形成されている。
【0033】
図7(A)の面部材3には、中央部の開口部10と、その左右に位置する2つの開口部10a、10bが形成されている。このように開口部10の開口面を総合的に大きく設定することにより、液体収納容器の変形が内部の圧力変動に及ぼす影響をきわめて小さくすることができる。一方、このように開口部10を大きく設定した場合には、面部材3の剛性の低下を招いて、可撓性部材4の平面形状に保持するための平面保持力が損なわれるおそれが生じる。面部材3の強度を補強するためには、図7(B)のように、面部材3の左右の開口部10a、10bの近傍に梁部12を形成すればよい。
【0034】
開口部10a、10bは、面部材の重心位置にある開口10を挟んで対象な位置にあっても良い。この場合液体収納部内の圧力変動を、容器内でバランスよく分散することが可能になる。
【0035】
(第3の実施形態)
図9および図10は、本発明の第3の実施形態を説明するための図である。本実施形態においては、ばね部材2が複数備えられている。
【0036】
本例の場合、ばね部材2として、2つのコイルばね2a、2bが並列的に備えられている。本例においても前述した実施形態同様に、面部材3の重心部に開口部10が形成されている。さらに、ばね部材2aと対向する位置に開口部10aが形成され、ばね部材2bと対向する位置に開口部10bが形成されている。図10で示すように、外力Fによる液体収納容器の中央部以外の変形に対応し、開口部10a、10b、ばね部材2a、2bが外力Fを吸収し分散している。また、面部材3におけるそれぞれの開口部の形成位置は、ばね部材の配備数や配備位置に拘わらず設定することができる。
【0037】
(第4の実施形態)
図11は、本発明の第4の実施形態を説明するための図である。本実施形態においては、ばね部材2として板ばねが用いられている。
【0038】
本例の場合、ばね部材2として、互いに組み合わさる2つの板ばねが用いられている。板ばねは、液体7の収納空間内に位置する2つの面部材3a、3bの間に備えられている。図11で上側にある板ばねは、その中央部分が上側の面部材3aの開口部10aに接し、両端部が下方に湾曲されている。一方、図11で下側にある板ばねは、その中央部分が下側の面部材3bの開口部10bに接して、その両端部が上方に湾曲されている。これらの板ばねの両端部は互いに結合され、上下の面部材3a、3bを互いに離間させる方向、つまり液体7の収納空間を拡大させる方向に付勢している。液体収納空間内における液体7の収納量の減少に伴って、これらの板ばねは互いの結合状態を維持したまま接近する方向に押し潰され、変形することにより、ばね部材2として機能する。これらの板ばねとして同じ形状のものを用いて、ばね2のそれぞれの端部が各面部材3a、3bと接するように、互いに逆向きに組み合わせるようにして結合させても良い。
【0039】
この時ばね部材2と面部材が接する場所は、面部材の重心にある開口部10a、10b以外の場所になる。しかし、先の実施例で説明したように、面部材の重心位置以外に開口部を設けることで、各ばね部材の弾性力を面部材にバランス良く伝達、吸収させることができる。
【0040】
面部材3の中央部以外の部分が押された場合、面部材とばね部材の接触部が増えるため、面部材3が比較的小さな荷重で変位することができる。液体収納容器内部の液体の急激な圧力変動を防ぎ、内部の負圧を維持することができる。したがって、前述した実施形態と同様に、液体7の漏れを防止することができる。
【0041】
(他の実施形態)
面部材3は、可撓性部材4の形状を規制すべく、その可撓性部材4に接するものであればよく、可撓性部材4の外面に接するものであってもよく、また可撓性部材4の外面に接着されるものであってもよい。可撓性部材4の形状を規制する面部材3に、保護部材5との緩衝を回避するための開口部10が形成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)は本発明の第1の実施形態における液体収納容器斜視図、(B)は液体収納容器の分解斜視図
【図2】(A)は図1(A)の容器から蓋部材を外した状態、(B)は図1(B)のばね部材と面部材との結合状態
【図3】(A)は図1(A)のIII−III線に沿う断面図であり、液体が充分に収納されているときの断面図、(B)は液体収納容器が変形した時の断面図、(C)は液体が外部に供給された後における断面図
【図4】(A)は液体収納容器が変形した時の他の断面図、(B)はばねの大径側が面部材に接する断面図
【図5】(A)は面部材に開口がない液体収納容器の斜視図、(B)は開口がない面部材とばね部材との結合状態斜視図
【図6】(A)は図5(A)の液体収納容器のVI−VI線断面図、(B)は図5(A)のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】(A)は第2の実施形態におけるばね部材と面部材との斜視図、(B)は第2の実施形態の変形例
【図8】第2の実施形態における液体収納容器の断面図である。
【図9】第3の実施形態におけるばね部材と面部材との斜視図
【図10】第3の実施形態における液体収納容器の断面図である。
【図11】第3の実施形態に置けるばね部材と面部材との斜視図
【図12】(A)は蓋部材を外した状態の従来の液体収納容器斜視図、(B)はばね部材と面部材との結合状態斜視図
【図13】(A)は図12(A)の液体収納容器XIII−XIII線に沿う断面図であって、液体が充分に収納されているときの状態、(B)は液体収納容器が変形した時の断面図、(C)は液体が外部に供給された後の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 筐体部材
2 ばね部材
3 面部材
4 可撓性部材
5 蓋部材
6 液体供給口
7 液体
10 開口部
12 梁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の収納空間を形成する壁部の一部を構成する可撓性部材と、
前記収納空間内の液体を外部に供給するための供給口と、
前記可撓性部材の外側に位置する保護部材と、
前記可撓性部材に接しかつ前記保護部材と対向する位置に開口部が形成された面部材と、
前記収納空間内に負圧を発生させるように、前記面部材を介して前記可撓性部材を付勢するばね部材と、
を備え、前記面部材の重心位置に前記開口部を形成することを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記面部材は、前記可撓性部材を介して前記保護部材と対向することを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記面部材に、前記開口部を複数形成することを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記保護部材が、液体収納容器の最大面積側面であり、前記面部材が該保護部材に対向していることを特徴とする請求項1に記載された液体収納容器。
【請求項5】
前記ばね部材は、圧縮コイルばねであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項6】
前記ばね部材は、円錐コイルばねであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項7】
前記面部材に形成される前記開口部は、前記コイルばねの径と略同径であることを特徴とする請求項5または6に記載の液体収納容器。
【請求項8】
前記コイルばね部材の中心軸は、前記面部材の重心位置と一致することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項9】
前記円錐コイルばねは、その小径側が前記面部材と接することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項10】
前記ばね部材は、板ばねであることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項11】
前記面部材の複数の開口部は、該面部材の重心位置にある開口部を中心に対象な位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載された液体収納容器。
【請求項12】
前記液体収納容器の液体収納側側面に凹部が設けられ、前記ばね部材を保持することを特徴とする請求項1に記載された液体収納容器。
【請求項13】
前記インク収納空間内に、液体のインクを収納してなることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項1】
液体の収納空間を形成する壁部の一部を構成する可撓性部材と、
前記収納空間内の液体を外部に供給するための供給口と、
前記可撓性部材の外側に位置する保護部材と、
前記可撓性部材に接しかつ前記保護部材と対向する位置に開口部が形成された面部材と、
前記収納空間内に負圧を発生させるように、前記面部材を介して前記可撓性部材を付勢するばね部材と、
を備え、前記面部材の重心位置に前記開口部を形成することを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記面部材は、前記可撓性部材を介して前記保護部材と対向することを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記面部材に、前記開口部を複数形成することを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記保護部材が、液体収納容器の最大面積側面であり、前記面部材が該保護部材に対向していることを特徴とする請求項1に記載された液体収納容器。
【請求項5】
前記ばね部材は、圧縮コイルばねであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項6】
前記ばね部材は、円錐コイルばねであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項7】
前記面部材に形成される前記開口部は、前記コイルばねの径と略同径であることを特徴とする請求項5または6に記載の液体収納容器。
【請求項8】
前記コイルばね部材の中心軸は、前記面部材の重心位置と一致することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項9】
前記円錐コイルばねは、その小径側が前記面部材と接することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項10】
前記ばね部材は、板ばねであることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項11】
前記面部材の複数の開口部は、該面部材の重心位置にある開口部を中心に対象な位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載された液体収納容器。
【請求項12】
前記液体収納容器の液体収納側側面に凹部が設けられ、前記ばね部材を保持することを特徴とする請求項1に記載された液体収納容器。
【請求項13】
前記インク収納空間内に、液体のインクを収納してなることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の液体収納容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−196674(P2007−196674A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346185(P2006−346185)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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