液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法、およびインクジェット記録装置
【課題】吐出口の周面の大部分を同じ濡れ性の材料により形成することにより、吐出方向がずれないように液体を安定的に吐出することができる液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法、およびインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】吐出口18を形成する天板8の面に、吐出口18を形成する基板1の面およびノズル壁5の面と同じ感光樹脂材料によって、ノズル壁5に接触しない凸部4を設ける
【解決手段】吐出口18を形成する天板8の面に、吐出口18を形成する基板1の面およびノズル壁5の面と同じ感光樹脂材料によって、ノズル壁5に接触しない凸部4を設ける
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液体を吐出可能な液体吐出ヘッド、その液体吐出ヘッドの製造方法、および液体のインクを吐出可能な記録ヘッドを用いて画像を記録するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体吐出ヘッドに形成された吐出口から記録液としてのインクを吐出することにより、記録を行なうインクジェット記録装置は、低騒音、高速記録などの点で優れた記録装置として知られている。このインクジェット記録装置については、近年の記録技術の進歩に伴い、より高速、高精細な記録が要求されるようになりつつある。そのため、吐出口の大きさがさらに微小になり、かつ吐出口がより高密度に形成されるようになってきた。
【0003】
図15から図17は、従来の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための図である。本例の液体吐出ヘッドは、素子基板21に感光性樹脂材料により形成されたノズル壁22上に、シリコン製の天板23を溶着することにより、ノズルNが形成される。本例のノズルNにはヒータ(電気熱変換体)24が備えられており、そのヒータ24によってノズルN内のインクを発泡させることにより、その発泡エネルギーを利用して吐出口25からインクを吐出する構成となっている。また、ノズル内には、インクの発泡方向を規制するための可動弁26が備えられている。
【0004】
図15(a),図16(a),図17(a)は、製造段階における液体吐出ヘッドの断面を吐出口27の方向から見た図である。図15(b),図16(b),図17(b)は、それぞれ図15(a),図16(a),図17(a)のXV−XV,XVI−XVI,XVII−XVIIに沿う断面図である。本例の場合、1つの素子基板21上に2つ分の液体吐出ヘッドを構成し、それをラインLに沿って切断することにより、それぞれの切断面に吐出口25が形成される2つの液体吐出ヘッドを製造する。
【0005】
図15において、素子基板21には、ヒータ24、紫外線感光性樹脂フィルムのノズル底部27、ノズル壁22、および可動弁26が備えられ、天板23には、ノズル上部28を形成する感光性樹脂フィルムがラミネートされている。そして、図16にように、感光性樹脂フィルムのノズル上部28をノズル壁22に接着する。その際、天板23とノズル壁22との接着強度を向上させるために、天板23に荷重を掛けてノズル壁22に突き当て、ノズル壁22の上面に位置するノズル上部28部分を形成する感光性樹脂フィルムを吐出口側に垂れ込ませる。これにより、天板23やノズル壁22に対するノズル上部27の接触面積を増やしている。その後、図17のようにラインLにそって切断することにより、2つの液体吐出ヘッドが製造される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように製造される従来の液体吐出ヘッドは、ノズル上部27を形成する感光性樹脂フィルムの垂れ込み方の微細な管理ができないため、吐出口25の形状が図17(a)中の左右方向において異なるおそれがある。つまり、図18のように、吐出口形状が左右非対称となるおそれがある。このように吐出口形状が左右非対象となった場合には、吐出口5の中心がヒータ24の中心からずれてしまい、インクの吐出方向がずれて画像の記録品位が低下するおそれがある。ノズル上部27を形成する感光性樹脂フィルムをノズル壁22上面にラミネートして、その感光性樹脂フィルムの垂れ込み量を減らした場合には、図9に示すように、吐出口側に垂れ込む感光性樹脂フィルムがノズル壁22に沿って広がってしまうおそれがある。それは、シリコン製の天板28と比較して、感光性樹脂材料により形成されたノズル壁22の濡れ性が高いためである。この場合には、吐出口25における天板23の面を感光性樹脂フィルムによって覆うことができなくなり、その天板23の面が剥き出しになって、吐出口25の周囲を同一材料により形成できなくなるおそれがある。吐出口25を同一材料により形成できなくなった場合には、その吐出口25を形成する複数の材料の濡れ性の違いから、インクの吐出方向がずれて画像の記録品位の低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、吐出口の周面の大部分を同じ濡れ性の材料により形成することにより、吐出方向がずれないように液体を安定的に吐出することができる液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法、およびインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体吐出ヘッドは、基板上に間隔をおいて配置された対の壁部の上面に天板を接合することにより、前記基板と、前記対の壁部と、前記天板と、によって囲まれる吐出口が形成され、前記吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段を備える液体吐出ヘッドであって、前記吐出口を形成する前記天板の面に、前記吐出口を形成する前記基板の面および前記壁部の面と同じ濡れ性の材料によって、前記壁部に接触しない凸部を設けることを特徴とする。
【0009】
本発明の液体吐出ヘッドの製造方法は、基板上に間隔をおいて配置された対の壁部の上面に天板を接合することにより、前記基板と、前記対の壁部と、前記天板と、によって囲まれる吐出口が形成され、前記吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記吐出口を形成する前記天板の面に、前記吐出口を形成する前記基板の面および前記壁部の面と同じ濡れ性の材料によって凸部が設けられた天板を用意し、前記凸部が前記壁部に接触しないように、前記壁部の上面に前記天板を接合することを特徴とする。
【0010】
本発明のインクジェット記録装置は、液体のインクを吐出可能な記録ヘッドを用いて、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドとして、上記の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吐出口を形成する基板の面および壁部の面と同じ濡れ性の材料によって、吐出口を形成する天板の面に、壁部と接触しない凸部を設けることにより、吐出口の周面の大部分を同じ濡れ性の材料により形成することができる。これにより、吐出方向がずれないように液体を安定的に吐出することができる。
【0012】
また、凸部と壁部との間の隙間に、凸部と同じ材料の接着材を充填することにより、吐出口の周面の全てを同じ濡れ性の材料により形成することができる。これにより、吐出方向がずれないように液体をより安定的に吐出することができる。また、基板の壁部と天板とを接着する接着材が吐出口内に垂れ込む領域を、凸部と壁部との間の狭い隙間に規制することができる。これにより、接着材の比較的不安定な垂れ込みの形状が吐出口の断面形状に及ぼす影響を小さく抑えて、吐出口を所望の形状に形成することができ、この結果、液体をより安定的に吐出させることができる。また、接着材が接する凸部と壁部の面を大きくして、充分な接着力を確保することができる。
【0013】
また、凸部の両側のそれぞれに同じ大きさの隙間を形成することにより、それらの隙間に接着材を均等に充填させて、凸部を通る中心線を中心として吐出口を左右対称形状とすることができる。これにより、吐出方向がずれないように、液体をより安定的に吐出することができる。また、接着材が充填される隙間を同じ濡れ性の凸部と壁部により形成することにより、その隙間に沿って接着材を偏りなく充填することができる。
【0014】
また、インクジェット記録ヘッドに用いられる記録ヘッドとして、本発明の液体吐出ヘッドを用いることにより、インクを安定的に吐出して、高品位の画像を記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の液体吐出ヘッドにおけるノズル近傍部分の一部切欠きの斜視図である。ヒータボード(基板)1には、液体を加熱発泡するためのヒータ(電気熱変換体)2が複数配置されている。本例のヒータ2は、チッ化タンタル等の抵抗体により形成され、厚さは0.01〜0.5μm、シート抵抗は単位正方形当たり10〜300Ωである。ヒータ2には、通電のためのアルミニウム等の電極(図示せず)が接続されており、その電極の一方は、通電を制御するためのスイッチングトランジスタ(図示せず)が接続されている。スイッチトランジスタは、制御用のゲート素子等の回路からなるICによって駆動が制御され、液体吐出ヘッドの外部からの信号によって、所定の駆動パターンにしたがってヒータ2を駆動する。
【0016】
それぞれのヒータ2に対応する流路は、その一端が吐出口18に連通し、その他端が共通液室16に連通されており、吐出口18共にノズル14を形成している。ノズル14は、後述するように、ヒータボード1と、ノズル壁(壁部)5と、厚さ5〜10μm程度のノズル底部3と、ノズル上部7と、天板8にパターンニングされた凸部4と、により囲まれて、管状に形成されている。可動弁6は、その自由端9が吐出口18の方向に向くように、その支点部10が共通液室16内内の弁支持部材11に取り付けられている。その弁支持部材11は、弁台座12によってヒータボード1に取り付けられる。天板8は、異方性エッチング等により形成されたインク供給開口17を備えており、そのインク供給開口17を通して、外部からの液体が共通液室16内に導入される。共通液室16からノズル14に供給された液体は、ノズル14内の所定の位置に配置されたヒータ2によって加熱されて発泡する。その発泡に伴ってノズル14内の液体が移動する同時に、可動弁6が変位して、液体の流れ方向を規制する。この結果、吐出口18から液体が吐出される。
【0017】
図2(a),図3(a),図4(a),図5(a),図6(a),図7(a),図8(a),図9(a),図10(a)は、製造段階における液体吐出ヘッドの断面を吐出口18の方向から見た図である。図2(b),図3(b),図4(b),図5(b),図6(b)は、それぞれ、図2(a),図3(a),図4(a),図5(a),図6(a)のII−II,III−III,IV−IV,V−V,VI−VI線に沿う断面図である。同様に、図7(b),図8(b),図9(b),図10(b)は、それぞれ、図7(a),図8(a),図9(a),図10(a)のVII−VII,VIII−VIII,IX−IX,X−X線に沿う断面図である。本例の場合、1つのヒータボード1上に2つ分の液体吐出ヘッドを構成し、それをラインLに沿って切断することにより、それぞれの切断面に吐出口18が形成される2つの液体吐出ヘッドを製造する。
【0018】
本例においては、図2(a),(b)に示すように、素子基板(シリコンウエハ)上に、半導体製造工程において用いるものと同様の製造装置を用いてハフニュウムボライドやチッ化タンタル等からなるヒータ2を形成することにより、ヒータボード1を製作する。次に、後述する感光性樹脂フィルムDF1との密着性の向上を目的として、ヒータボード1の表面に洗浄を施す。さらに、密着性の向上を目的として、ヒータボード1の表面に紫外線−オゾン等による表面改質を行った後、例えば、その改質された表面上に、シランカップリング剤をエチルアルコールで1重量%に希釈した液をスピンコートする。
【0019】
次に、ヒータボード1の表面を洗浄してから、図3(a),(b)に示すように、密着性が向上したヒータボード1上に紫外線感光樹脂フィルムDF1をラミネートする。次に、図4(a),(b)に示すように、ノズル底部3、および可動弁6を接着するための弁台座12として残す感光性樹脂フィルムDF1の部分に、フォトマスク15Aを介して紫外線を照射する。
【0020】
次に、図5(a),(b)に示すように、紫外線感光性樹脂フィルムDF2をラミネートする。そして、図6(a),(b)に示すように、ノズル壁5として残す感光性樹脂フィルムDF2の部分に、フォトマスク15Bを介して紫外線を照射する。次に、図7(a),(b)に示すように、キシレンとブチルセルソルブアセテートとの混合液からなる現像液によって紫外線感光樹脂フィルムDF1,DF2を現像する。すなわち、それらの未露光部分を融解させ、露光して硬化した部分をノズル底部3,弁台座12,ノズル壁5として形成する。その後、図8(a),(b)のように、弁台座12に可動弁6を接着剤等によって固定する。
【0021】
天板8としては、図8(a),(b)のように、凸部4が設けられたものを用意する。その凸部4は、感光性樹脂フィルムを材料として予め設けておく。そして、ノズル壁5の上面に、ノズル上部7を形成するための感光性樹脂フィルムDF3をラミネートしてから、図9(a),(b)のように、ノズル壁5の上面に天板8を接着する。凸部4は隣接するノズル壁5同士の間に位置し、凸部4とノズル壁5との間には、図11のように、1つのノズルに対して、同じ大きさの2つの隙間25が左右対称的に形成される。隙間25を形成する凸部4とノズル壁5は、いずれも感光性樹脂材料によって形成されているため、ノズル上部7を形成するための感光性樹脂フィルムDF3は、凸部4とノズル壁5の対向面のそれぞれに沿ってバランスよく垂れ込む。したがって感光性樹脂フィルムDF3は、1つのノズルにおける左右2つの隙間25内に均等に充填されて、図9(a),(b)のように凸部4の両側にノズル上部7を左右対称的に形成する。
【0022】
図12および図13において、tは感光性樹脂フィルムDF3の厚み、sはノズル壁5の幅、Yは凸部4の高さ、Yは隙間25の幅であり、これらは下式の関係にある。
X・Y=t・s/2
このように、隙間25の断面積Z(X・Y)は、吐出口18を形成するノズル壁5と天板8との接触面の幅sと、吐出口18を形成するためにラミネートされる感光性樹脂フィルムDF3の厚みtと、から決定することができる。このように隙間25の大きさを決定することにより、それぞれの隙間25に適量の感光性樹脂フィルムDF3が埋め込まれることになる。
【0023】
このようにして、2つの液体吐出ヘッドの吐出口を一体的に付き合わせたような構造体を製作した後、図10(a),(b)のように、その構造体をラインLに沿って切断することにより2つの液体吐出ヘッドに分ける。その切断には、例えば、厚さ0.05mmのダイヤモンドブレードを取り付けたダイシングマシンを用いることができる。その後、分離された液体吐出ヘッドの吐出口18が形成される面(吐出口面)を一定の圧力を掛けながら研磨して、その吐出口面を平滑化する。
【0024】
このように本例においては、吐出口18の周囲を同一材料(感光性樹脂材料)によって構成することができる上、ノズル上部7が凸部4とノズル壁5に接触する面積が大きいために、それらの間の接着力も大きくすることができる。また、1つのノズルにおける左右2つの隙間25内に、感光性樹脂フィルムDF3が均等に充填されるため、吐出口18を左右対称形状とすることができる。つまり、凸部4を通る中心線を中心として、吐出口18を左右対称形状とすることができる。これらの結果、液体を安定的に吐出させて、高品位の画像を記録することができる。
【0025】
図14は、本発明の液体吐出ヘッドを適用可能なインクジェット記録装置の一例を説明するための正面図である。
【0026】
110は前述した本発明の液体吐出ヘッドであり、6つのインクカートリッジ113から供給される異なるインクを吐出するために、6つ備えられている。給紙部116から供給される記録媒体としての用紙Pは、搬送部114によって矢印方向に搬送される。記録動作時には、液体吐出ヘッド110を用紙Pの表面と対向させ、用紙Pを矢印方向に搬送しつつ、液体吐出ヘッド110から用紙Pの表面に向かってインクを吐出する。これにより、用紙P上(記録媒体上)に画像を記録することができる。112は、液体吐出ヘッド110のインクの吐出状態を良好に維持するための回復ユニットである。
【0027】
(他の実施形態)
吐出口は、基板上に間隔をおいて配置された対の壁部の上面に天板を接合することにより、基板と、対の壁部と、天板と、によって囲まれて形成されればよい。したがって、それらの天板、基板、壁部は、前述した天板8、ヒータボード(基板)、ノズル壁(壁部)5の構成にのみに特定されない。また、液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段は、前述したような電気熱変換体(ヒータ)2を用いる構成のみに特定されず、例えば、ピエゾ素子などを用いる構成であってもよい。
【0028】
また、接着材は感光性樹脂フィルムDF3のみに特定されず、種々の材料を用いることができ、要は、天板に設けられた凸部と、吐出口を形成する壁部(ノズル壁)の面と、の間の隙間に充填することができればよい。その接着材は、吐出口を形成する基板、壁部、凸部のそれぞれの面の形成材料と同じ濡れ性の材料、例えば同じ感光性樹脂材料とする。
【0029】
また、前述した実施形態において、接着材は、壁部の上面と天板との接着の前に壁部の上面に付与されており、接着のために壁部の上面に天板が押し付けられることにより、隙間内に移動する。しかし、接着材を隙間内に充填することができればよく、接着材の充填方法は、必ずしも前述した実施形態のみに特定されない。
【0030】
また、接着材が充填される隙間の大きさは、前述した実施形態のように、接着の前に壁部の上面に付与される接着材の量に応じて設定する他、壁部の上面から隙間内に移動する接着材の量に応じて設定してもよい。
【0031】
また本発明は、液体吐出ヘッドを用いて種々の液体を吐出するための装置に対して広く適用することができ、その装置は、インクジェット記録装置のみに特定されない。また、そのインクジェット記録装置は、前述した実施形態のような所謂フルラインタイプのみに特定されず、所謂シリアルスキャンタイプなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の液体吐出ヘッドにおける吐出口周辺部分の一部切欠きの拡大斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のII−II線に沿う断面図である。
【図3】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のV−V線に沿う断面図である。
【図6】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のX−X線に沿う断面図である。
【図11】本発明の液体吐出ヘッドにおける吐出口の形状の説明図である。
【図12】本発明の液体吐出ヘッドにおける天板の接合前の吐出口周辺部分の説明図である。
【図13】本発明の液体吐出ヘッドにおける天板の接合後の吐出口周辺部分の説明図である。
【図14】本発明の液体吐出ヘッドを適用可能なインクジェット記録装置の一例を説明するための正面図である。
【図15】従来の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のXV−XV線に沿う断面図である。
【図16】従来の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】従来の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】従来の液体吐出ヘッドにおける吐出口の形状の一例の説明図である。
【図19】従来の液体吐出ヘッドにおける吐出口の形状の他の例の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ヒータボード(基板)
3 ノズル底部
3 凸部
5 ノズル壁(壁部)
7 ノズル上部
8 天板
14 ノズル
18 吐出口
25 隙間
DF1、DF2,DF3 紫外線感光性樹脂フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液体を吐出可能な液体吐出ヘッド、その液体吐出ヘッドの製造方法、および液体のインクを吐出可能な記録ヘッドを用いて画像を記録するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体吐出ヘッドに形成された吐出口から記録液としてのインクを吐出することにより、記録を行なうインクジェット記録装置は、低騒音、高速記録などの点で優れた記録装置として知られている。このインクジェット記録装置については、近年の記録技術の進歩に伴い、より高速、高精細な記録が要求されるようになりつつある。そのため、吐出口の大きさがさらに微小になり、かつ吐出口がより高密度に形成されるようになってきた。
【0003】
図15から図17は、従来の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための図である。本例の液体吐出ヘッドは、素子基板21に感光性樹脂材料により形成されたノズル壁22上に、シリコン製の天板23を溶着することにより、ノズルNが形成される。本例のノズルNにはヒータ(電気熱変換体)24が備えられており、そのヒータ24によってノズルN内のインクを発泡させることにより、その発泡エネルギーを利用して吐出口25からインクを吐出する構成となっている。また、ノズル内には、インクの発泡方向を規制するための可動弁26が備えられている。
【0004】
図15(a),図16(a),図17(a)は、製造段階における液体吐出ヘッドの断面を吐出口27の方向から見た図である。図15(b),図16(b),図17(b)は、それぞれ図15(a),図16(a),図17(a)のXV−XV,XVI−XVI,XVII−XVIIに沿う断面図である。本例の場合、1つの素子基板21上に2つ分の液体吐出ヘッドを構成し、それをラインLに沿って切断することにより、それぞれの切断面に吐出口25が形成される2つの液体吐出ヘッドを製造する。
【0005】
図15において、素子基板21には、ヒータ24、紫外線感光性樹脂フィルムのノズル底部27、ノズル壁22、および可動弁26が備えられ、天板23には、ノズル上部28を形成する感光性樹脂フィルムがラミネートされている。そして、図16にように、感光性樹脂フィルムのノズル上部28をノズル壁22に接着する。その際、天板23とノズル壁22との接着強度を向上させるために、天板23に荷重を掛けてノズル壁22に突き当て、ノズル壁22の上面に位置するノズル上部28部分を形成する感光性樹脂フィルムを吐出口側に垂れ込ませる。これにより、天板23やノズル壁22に対するノズル上部27の接触面積を増やしている。その後、図17のようにラインLにそって切断することにより、2つの液体吐出ヘッドが製造される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように製造される従来の液体吐出ヘッドは、ノズル上部27を形成する感光性樹脂フィルムの垂れ込み方の微細な管理ができないため、吐出口25の形状が図17(a)中の左右方向において異なるおそれがある。つまり、図18のように、吐出口形状が左右非対称となるおそれがある。このように吐出口形状が左右非対象となった場合には、吐出口5の中心がヒータ24の中心からずれてしまい、インクの吐出方向がずれて画像の記録品位が低下するおそれがある。ノズル上部27を形成する感光性樹脂フィルムをノズル壁22上面にラミネートして、その感光性樹脂フィルムの垂れ込み量を減らした場合には、図9に示すように、吐出口側に垂れ込む感光性樹脂フィルムがノズル壁22に沿って広がってしまうおそれがある。それは、シリコン製の天板28と比較して、感光性樹脂材料により形成されたノズル壁22の濡れ性が高いためである。この場合には、吐出口25における天板23の面を感光性樹脂フィルムによって覆うことができなくなり、その天板23の面が剥き出しになって、吐出口25の周囲を同一材料により形成できなくなるおそれがある。吐出口25を同一材料により形成できなくなった場合には、その吐出口25を形成する複数の材料の濡れ性の違いから、インクの吐出方向がずれて画像の記録品位の低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、吐出口の周面の大部分を同じ濡れ性の材料により形成することにより、吐出方向がずれないように液体を安定的に吐出することができる液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法、およびインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体吐出ヘッドは、基板上に間隔をおいて配置された対の壁部の上面に天板を接合することにより、前記基板と、前記対の壁部と、前記天板と、によって囲まれる吐出口が形成され、前記吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段を備える液体吐出ヘッドであって、前記吐出口を形成する前記天板の面に、前記吐出口を形成する前記基板の面および前記壁部の面と同じ濡れ性の材料によって、前記壁部に接触しない凸部を設けることを特徴とする。
【0009】
本発明の液体吐出ヘッドの製造方法は、基板上に間隔をおいて配置された対の壁部の上面に天板を接合することにより、前記基板と、前記対の壁部と、前記天板と、によって囲まれる吐出口が形成され、前記吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記吐出口を形成する前記天板の面に、前記吐出口を形成する前記基板の面および前記壁部の面と同じ濡れ性の材料によって凸部が設けられた天板を用意し、前記凸部が前記壁部に接触しないように、前記壁部の上面に前記天板を接合することを特徴とする。
【0010】
本発明のインクジェット記録装置は、液体のインクを吐出可能な記録ヘッドを用いて、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドとして、上記の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吐出口を形成する基板の面および壁部の面と同じ濡れ性の材料によって、吐出口を形成する天板の面に、壁部と接触しない凸部を設けることにより、吐出口の周面の大部分を同じ濡れ性の材料により形成することができる。これにより、吐出方向がずれないように液体を安定的に吐出することができる。
【0012】
また、凸部と壁部との間の隙間に、凸部と同じ材料の接着材を充填することにより、吐出口の周面の全てを同じ濡れ性の材料により形成することができる。これにより、吐出方向がずれないように液体をより安定的に吐出することができる。また、基板の壁部と天板とを接着する接着材が吐出口内に垂れ込む領域を、凸部と壁部との間の狭い隙間に規制することができる。これにより、接着材の比較的不安定な垂れ込みの形状が吐出口の断面形状に及ぼす影響を小さく抑えて、吐出口を所望の形状に形成することができ、この結果、液体をより安定的に吐出させることができる。また、接着材が接する凸部と壁部の面を大きくして、充分な接着力を確保することができる。
【0013】
また、凸部の両側のそれぞれに同じ大きさの隙間を形成することにより、それらの隙間に接着材を均等に充填させて、凸部を通る中心線を中心として吐出口を左右対称形状とすることができる。これにより、吐出方向がずれないように、液体をより安定的に吐出することができる。また、接着材が充填される隙間を同じ濡れ性の凸部と壁部により形成することにより、その隙間に沿って接着材を偏りなく充填することができる。
【0014】
また、インクジェット記録ヘッドに用いられる記録ヘッドとして、本発明の液体吐出ヘッドを用いることにより、インクを安定的に吐出して、高品位の画像を記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の液体吐出ヘッドにおけるノズル近傍部分の一部切欠きの斜視図である。ヒータボード(基板)1には、液体を加熱発泡するためのヒータ(電気熱変換体)2が複数配置されている。本例のヒータ2は、チッ化タンタル等の抵抗体により形成され、厚さは0.01〜0.5μm、シート抵抗は単位正方形当たり10〜300Ωである。ヒータ2には、通電のためのアルミニウム等の電極(図示せず)が接続されており、その電極の一方は、通電を制御するためのスイッチングトランジスタ(図示せず)が接続されている。スイッチトランジスタは、制御用のゲート素子等の回路からなるICによって駆動が制御され、液体吐出ヘッドの外部からの信号によって、所定の駆動パターンにしたがってヒータ2を駆動する。
【0016】
それぞれのヒータ2に対応する流路は、その一端が吐出口18に連通し、その他端が共通液室16に連通されており、吐出口18共にノズル14を形成している。ノズル14は、後述するように、ヒータボード1と、ノズル壁(壁部)5と、厚さ5〜10μm程度のノズル底部3と、ノズル上部7と、天板8にパターンニングされた凸部4と、により囲まれて、管状に形成されている。可動弁6は、その自由端9が吐出口18の方向に向くように、その支点部10が共通液室16内内の弁支持部材11に取り付けられている。その弁支持部材11は、弁台座12によってヒータボード1に取り付けられる。天板8は、異方性エッチング等により形成されたインク供給開口17を備えており、そのインク供給開口17を通して、外部からの液体が共通液室16内に導入される。共通液室16からノズル14に供給された液体は、ノズル14内の所定の位置に配置されたヒータ2によって加熱されて発泡する。その発泡に伴ってノズル14内の液体が移動する同時に、可動弁6が変位して、液体の流れ方向を規制する。この結果、吐出口18から液体が吐出される。
【0017】
図2(a),図3(a),図4(a),図5(a),図6(a),図7(a),図8(a),図9(a),図10(a)は、製造段階における液体吐出ヘッドの断面を吐出口18の方向から見た図である。図2(b),図3(b),図4(b),図5(b),図6(b)は、それぞれ、図2(a),図3(a),図4(a),図5(a),図6(a)のII−II,III−III,IV−IV,V−V,VI−VI線に沿う断面図である。同様に、図7(b),図8(b),図9(b),図10(b)は、それぞれ、図7(a),図8(a),図9(a),図10(a)のVII−VII,VIII−VIII,IX−IX,X−X線に沿う断面図である。本例の場合、1つのヒータボード1上に2つ分の液体吐出ヘッドを構成し、それをラインLに沿って切断することにより、それぞれの切断面に吐出口18が形成される2つの液体吐出ヘッドを製造する。
【0018】
本例においては、図2(a),(b)に示すように、素子基板(シリコンウエハ)上に、半導体製造工程において用いるものと同様の製造装置を用いてハフニュウムボライドやチッ化タンタル等からなるヒータ2を形成することにより、ヒータボード1を製作する。次に、後述する感光性樹脂フィルムDF1との密着性の向上を目的として、ヒータボード1の表面に洗浄を施す。さらに、密着性の向上を目的として、ヒータボード1の表面に紫外線−オゾン等による表面改質を行った後、例えば、その改質された表面上に、シランカップリング剤をエチルアルコールで1重量%に希釈した液をスピンコートする。
【0019】
次に、ヒータボード1の表面を洗浄してから、図3(a),(b)に示すように、密着性が向上したヒータボード1上に紫外線感光樹脂フィルムDF1をラミネートする。次に、図4(a),(b)に示すように、ノズル底部3、および可動弁6を接着するための弁台座12として残す感光性樹脂フィルムDF1の部分に、フォトマスク15Aを介して紫外線を照射する。
【0020】
次に、図5(a),(b)に示すように、紫外線感光性樹脂フィルムDF2をラミネートする。そして、図6(a),(b)に示すように、ノズル壁5として残す感光性樹脂フィルムDF2の部分に、フォトマスク15Bを介して紫外線を照射する。次に、図7(a),(b)に示すように、キシレンとブチルセルソルブアセテートとの混合液からなる現像液によって紫外線感光樹脂フィルムDF1,DF2を現像する。すなわち、それらの未露光部分を融解させ、露光して硬化した部分をノズル底部3,弁台座12,ノズル壁5として形成する。その後、図8(a),(b)のように、弁台座12に可動弁6を接着剤等によって固定する。
【0021】
天板8としては、図8(a),(b)のように、凸部4が設けられたものを用意する。その凸部4は、感光性樹脂フィルムを材料として予め設けておく。そして、ノズル壁5の上面に、ノズル上部7を形成するための感光性樹脂フィルムDF3をラミネートしてから、図9(a),(b)のように、ノズル壁5の上面に天板8を接着する。凸部4は隣接するノズル壁5同士の間に位置し、凸部4とノズル壁5との間には、図11のように、1つのノズルに対して、同じ大きさの2つの隙間25が左右対称的に形成される。隙間25を形成する凸部4とノズル壁5は、いずれも感光性樹脂材料によって形成されているため、ノズル上部7を形成するための感光性樹脂フィルムDF3は、凸部4とノズル壁5の対向面のそれぞれに沿ってバランスよく垂れ込む。したがって感光性樹脂フィルムDF3は、1つのノズルにおける左右2つの隙間25内に均等に充填されて、図9(a),(b)のように凸部4の両側にノズル上部7を左右対称的に形成する。
【0022】
図12および図13において、tは感光性樹脂フィルムDF3の厚み、sはノズル壁5の幅、Yは凸部4の高さ、Yは隙間25の幅であり、これらは下式の関係にある。
X・Y=t・s/2
このように、隙間25の断面積Z(X・Y)は、吐出口18を形成するノズル壁5と天板8との接触面の幅sと、吐出口18を形成するためにラミネートされる感光性樹脂フィルムDF3の厚みtと、から決定することができる。このように隙間25の大きさを決定することにより、それぞれの隙間25に適量の感光性樹脂フィルムDF3が埋め込まれることになる。
【0023】
このようにして、2つの液体吐出ヘッドの吐出口を一体的に付き合わせたような構造体を製作した後、図10(a),(b)のように、その構造体をラインLに沿って切断することにより2つの液体吐出ヘッドに分ける。その切断には、例えば、厚さ0.05mmのダイヤモンドブレードを取り付けたダイシングマシンを用いることができる。その後、分離された液体吐出ヘッドの吐出口18が形成される面(吐出口面)を一定の圧力を掛けながら研磨して、その吐出口面を平滑化する。
【0024】
このように本例においては、吐出口18の周囲を同一材料(感光性樹脂材料)によって構成することができる上、ノズル上部7が凸部4とノズル壁5に接触する面積が大きいために、それらの間の接着力も大きくすることができる。また、1つのノズルにおける左右2つの隙間25内に、感光性樹脂フィルムDF3が均等に充填されるため、吐出口18を左右対称形状とすることができる。つまり、凸部4を通る中心線を中心として、吐出口18を左右対称形状とすることができる。これらの結果、液体を安定的に吐出させて、高品位の画像を記録することができる。
【0025】
図14は、本発明の液体吐出ヘッドを適用可能なインクジェット記録装置の一例を説明するための正面図である。
【0026】
110は前述した本発明の液体吐出ヘッドであり、6つのインクカートリッジ113から供給される異なるインクを吐出するために、6つ備えられている。給紙部116から供給される記録媒体としての用紙Pは、搬送部114によって矢印方向に搬送される。記録動作時には、液体吐出ヘッド110を用紙Pの表面と対向させ、用紙Pを矢印方向に搬送しつつ、液体吐出ヘッド110から用紙Pの表面に向かってインクを吐出する。これにより、用紙P上(記録媒体上)に画像を記録することができる。112は、液体吐出ヘッド110のインクの吐出状態を良好に維持するための回復ユニットである。
【0027】
(他の実施形態)
吐出口は、基板上に間隔をおいて配置された対の壁部の上面に天板を接合することにより、基板と、対の壁部と、天板と、によって囲まれて形成されればよい。したがって、それらの天板、基板、壁部は、前述した天板8、ヒータボード(基板)、ノズル壁(壁部)5の構成にのみに特定されない。また、液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段は、前述したような電気熱変換体(ヒータ)2を用いる構成のみに特定されず、例えば、ピエゾ素子などを用いる構成であってもよい。
【0028】
また、接着材は感光性樹脂フィルムDF3のみに特定されず、種々の材料を用いることができ、要は、天板に設けられた凸部と、吐出口を形成する壁部(ノズル壁)の面と、の間の隙間に充填することができればよい。その接着材は、吐出口を形成する基板、壁部、凸部のそれぞれの面の形成材料と同じ濡れ性の材料、例えば同じ感光性樹脂材料とする。
【0029】
また、前述した実施形態において、接着材は、壁部の上面と天板との接着の前に壁部の上面に付与されており、接着のために壁部の上面に天板が押し付けられることにより、隙間内に移動する。しかし、接着材を隙間内に充填することができればよく、接着材の充填方法は、必ずしも前述した実施形態のみに特定されない。
【0030】
また、接着材が充填される隙間の大きさは、前述した実施形態のように、接着の前に壁部の上面に付与される接着材の量に応じて設定する他、壁部の上面から隙間内に移動する接着材の量に応じて設定してもよい。
【0031】
また本発明は、液体吐出ヘッドを用いて種々の液体を吐出するための装置に対して広く適用することができ、その装置は、インクジェット記録装置のみに特定されない。また、そのインクジェット記録装置は、前述した実施形態のような所謂フルラインタイプのみに特定されず、所謂シリアルスキャンタイプなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の液体吐出ヘッドにおける吐出口周辺部分の一部切欠きの拡大斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のII−II線に沿う断面図である。
【図3】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のV−V線に沿う断面図である。
【図6】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】(a)は、本発明の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のX−X線に沿う断面図である。
【図11】本発明の液体吐出ヘッドにおける吐出口の形状の説明図である。
【図12】本発明の液体吐出ヘッドにおける天板の接合前の吐出口周辺部分の説明図である。
【図13】本発明の液体吐出ヘッドにおける天板の接合後の吐出口周辺部分の説明図である。
【図14】本発明の液体吐出ヘッドを適用可能なインクジェット記録装置の一例を説明するための正面図である。
【図15】従来の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のXV−XV線に沿う断面図である。
【図16】従来の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】従来の液体吐出ヘッドの製造過程を説明するための断面図、(b)は、(a)のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】従来の液体吐出ヘッドにおける吐出口の形状の一例の説明図である。
【図19】従来の液体吐出ヘッドにおける吐出口の形状の他の例の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ヒータボード(基板)
3 ノズル底部
3 凸部
5 ノズル壁(壁部)
7 ノズル上部
8 天板
14 ノズル
18 吐出口
25 隙間
DF1、DF2,DF3 紫外線感光性樹脂フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に間隔をおいて配置された対の壁部の上面に天板を接合することにより、前記基板と、前記対の壁部と、前記天板と、によって囲まれる吐出口が形成され、前記吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段を備える液体吐出ヘッドであって、
前記吐出口を形成する前記天板の面に、前記吐出口を形成する前記基板の面および前記壁部の面と同じ濡れ性の材料によって、前記壁部に接触しない凸部を設ける
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記凸部は、前記吐出口を形成する前記対の壁部の一方の面との間、および前記吐出口を形成する前記対の壁部の他方の面との間のそれぞれに、同じ大きさの隙間を形成することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記隙間に、前記材料と同じ濡れ性の接着材を充填したことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記材料は、同じ感光性樹脂材料であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記接着材は、前記壁部の上面と前記天板との接着の前に前記壁部の上面に付与されており、前記接着のために前記壁部の上面に前記天板が押し付けられることにより、前記隙間内に移動することを特徴とする請求項3または4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記隙間の大きさは、前記壁部の上面から前記隙間内に移動する前記接着材の量に応じて設定することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記隙間の大きさは、前記接着の前に前記壁部の上面に付与される前記接着材の量に応じて設定することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記吐出エネルギー発生手段は、前記基板上に備えられた電気熱変換体を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
基板上に間隔をおいて配置された対の壁部の上面に天板を接合することにより、前記基板と、前記対の壁部と、前記天板と、によって囲まれる吐出口が形成され、前記吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記吐出口を形成する前記天板の面に、前記吐出口を形成する前記基板の面および前記壁部の面と同じ濡れ性の材料によって凸部が設けられた天板を用意し、
前記凸部が前記壁部に接触しないように、前記壁部の上面に前記天板を接合する
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項10】
液体のインクを吐出可能な記録ヘッドを用いて、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドとして、請求項1から8のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項1】
基板上に間隔をおいて配置された対の壁部の上面に天板を接合することにより、前記基板と、前記対の壁部と、前記天板と、によって囲まれる吐出口が形成され、前記吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段を備える液体吐出ヘッドであって、
前記吐出口を形成する前記天板の面に、前記吐出口を形成する前記基板の面および前記壁部の面と同じ濡れ性の材料によって、前記壁部に接触しない凸部を設ける
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記凸部は、前記吐出口を形成する前記対の壁部の一方の面との間、および前記吐出口を形成する前記対の壁部の他方の面との間のそれぞれに、同じ大きさの隙間を形成することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記隙間に、前記材料と同じ濡れ性の接着材を充填したことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記材料は、同じ感光性樹脂材料であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記接着材は、前記壁部の上面と前記天板との接着の前に前記壁部の上面に付与されており、前記接着のために前記壁部の上面に前記天板が押し付けられることにより、前記隙間内に移動することを特徴とする請求項3または4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記隙間の大きさは、前記壁部の上面から前記隙間内に移動する前記接着材の量に応じて設定することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記隙間の大きさは、前記接着の前に前記壁部の上面に付与される前記接着材の量に応じて設定することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記吐出エネルギー発生手段は、前記基板上に備えられた電気熱変換体を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
基板上に間隔をおいて配置された対の壁部の上面に天板を接合することにより、前記基板と、前記対の壁部と、前記天板と、によって囲まれる吐出口が形成され、前記吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記吐出口を形成する前記天板の面に、前記吐出口を形成する前記基板の面および前記壁部の面と同じ濡れ性の材料によって凸部が設けられた天板を用意し、
前記凸部が前記壁部に接触しないように、前記壁部の上面に前記天板を接合する
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項10】
液体のインクを吐出可能な記録ヘッドを用いて、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドとして、請求項1から8のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とするインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−6563(P2009−6563A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169386(P2007−169386)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
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