説明

液体吐出ヘッドの回復処理装置、液体吐出装置及び液体吐出ヘッドの回復方法

【課題】液体を吐出する吐出口が形成された吐出口面に付着した液体を払拭する吸収部材を節約する。
【解決手段】回復処理装置は、液体を吸収するシート状の吸収部材9と、吸収部材9をヘッド4a,4bの吐出口面に沿って移動させる移動機構と、吸収部材の移動方向に沿って互いに離間して配置され、吸収部材の一部を吐出口面に押し付ける複数の押圧部10a,10bと、互いに隣接する押圧部の間に位置し、互いに隣接する押圧部の間の部分の吸収部材を吐出口面から離間させる中間部材20と、制御部とを備えている。制御部は、複数の押圧部による払拭動作の後に、吸収部材に液体が付着した領域である液体付着部の、移動方向に沿った液体付着距離の総和よりも長く、かつ互いに隣接する押圧部の間の、吸収部材の移動方向に沿った距離よりも短い距離だけ、吸収部材を移動方向に移動させ、液体付着部とは異なる部分を押圧部に位置させるように制御している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する液体吐出ヘッドの吐出口が形成された吐出口面を払拭する回復処理装置、回復処理装置を備えた液体吐出装置、および液体吐出ヘッドの回復方法に関し、特に、液体を吸収するシート状の吸収部材を利用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例としてのインクジェット記録装置は、液体としてのインクを吐出する吐出口が形成された面(以下で、吐出口面と称す。)を有する液体吐出ヘッド(以下、単にヘッドと称することがある。)を備えている。ヘッドの吐出口面にインクが付着すると、正常な吐出を阻害するといった問題が発生することがある。このような問題を防止する方法として、一般的に、インクジェット記録装置には、吐出口面に付着したインクを拭きとるための払拭ユニットが装備されている。この払拭ユニットは、例えば弾性を有する素材で作られ、吐出口面を払拭するための払拭部材(ワイパーブレード)と、払拭部材を吐出口面に接触させるための当接部材、とを有する。払拭動作は、所定のタイミングで払拭部材を吐出口面に当接し摺擦させることで行われている。ヘッドが搭載されるキャリッジの往復運動中にインクを吐出して記録する、いわゆるシリアル型インクジェット記録装置では、次の2つの払拭方法が知られている。つまり、ヘッドの停止中に当接部材を移動させることにより払拭する方法と、ヘッドを当接部材に当接させた状態でヘッドを移動させることにより払拭する方法である。ヘッドの移動中に払拭する方法は、特に払拭頻度が高いときほど有効である。すなわち、ヘッドの往復運動中に払拭動作を行うことができるため、ヘッドの停止中に払拭動作を行う方法に比べて一回の払拭動作が短時間で済む。
【0003】
特許文献1には、上記の払拭方法に代えて、液体を吸収するシート状の吸収部材を、ヘッドの吐出口面に押し当てた状態で当該吐出口面に沿って摺擦する、回復処理装置および払拭方法が開示されている。シート状の吸収部材を用いた場合、いわゆるワイパーブレードでヘッドの吐出口面を払拭する方法より強力な払拭効果があることが知られている。
【0004】
近年、インクジェット記録装置及び記録方法の多様化に伴い、複数色のインクや相互に反応性を持つインクを同一のヘッドにより吐出することがある。このような場合、シート状の吸収部材の同一の箇所で異なるインクの払拭を行うと、一方のインクの吐出口に他方のインクが混入し、混色や反応による固着で吐出不良といった問題が発生することがある。
【0005】
特許文献1に開示されている例では、複数の吐出口列を有するヘッドの吐出口面に付着した液滴を安定して除去することができ、シート状の吸収部材の使用済みの部分を巻き取っている。このようにして、次の回復動作の際に、液滴の混色や反応による固着で吐出不良といった問題が生じないようにしている。また、吸収部材を吐出口面に押し当てるための弾性部材は、吐出口列分又はヘッド分備わっており、それぞれの弾性部材が吸収部材の別の箇所を吐出口面に押し当てて、それぞれの箇所で別種の液滴を吸収するようにしている。これにより、液滴の混色や反応による固着に起因する吐出不良などの問題を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−061657号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
弾性部材間の距離は、ヘッド間の距離や吐出口列間の距離によって決められる。特許文献1では、ラインヘッドを想定したものであり、2つの弾性部材を備えている。このように、複数の弾性部材により、吸収部材を吐出口面に押し当てて払拭動作を行う場合、以下のような問題が生じる。
【0008】
特許文献1では、弾性部材間の距離や払拭動作(回復動作)時の吸収部材の巻き取り量などの規定が無い。2つの弾性部材の間に相当する吸収部材の領域も吐出口面に接触し得るため、払拭動作後に次の払拭動作に対応できるように、2つの弾性部材により吐出口面に押し付けられた吸収部材の2つの領域とそれらの間の領域全体を巻き取っていると考えられる。この場合、液滴の吸収に大きく寄与する吸収部材の領域は弾性部材により吐出口面に押し付けられる領域であるため、概ね、2つの弾性部材間の距離の分だけの吸収部材が無駄になる。
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み、ヘッドの吐出口面を払拭回復する為の、液体を吸収するシート状の吸収部材を節約することのできる、液体吐出ヘッドの回復処理装置、液体吐出装置及び液体吐出ヘッドの回復方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回復処理装置は、液体を吐出する複数の吐出口が形成された吐出口面を有する液体吐出ヘッドの前記吐出口面に対向して配置され、前記液体を吸収するシート状の吸収部材と、前記吸収部材を前記吐出口面に沿って移動させる移動機構と、前記吸収部材の移動方向に沿って互いに離間して配置され、前記吸収部材の一部を前記吐出口面に押し付ける複数の押圧部と、互いに隣接する前記押圧部の間に位置し、前記複数の押圧部が前記吐出口面に前記吸収部材を押し付けているときに、互いに隣接する前記押圧部の間の部分の前記吸収部材を前記吐出口面から離間させる中間部材と、前記複数の押圧部により前記吸収部材を前記吐出口面に押圧して前記吐出口面に付着した前記液体を払拭する払拭動作の後に、前記吸収部材に前記液体が付着した領域である液体付着部の、前記移動方向に沿った液体付着距離の総和よりも長く、かつ互いに隣接する前記押圧部の間の、前記吸収部材の移動方向に沿った距離よりも短い距離だけ、前記吸収部材を前記移動方向に移動させ、前記吸収部材の前記液体付着部とは異なる部分を前記押圧部に位置させるように制御する制御部と、を備えている。
【0011】
本発明の液体吐出装置は、上記の回復処理装置と、液体を吐出する吐出口が形成され、前記回復処理装置によって払拭動作が行われる吐出口面を有するヘッドと、を備えている。
【0012】
本発明の液体吐出ヘッドの回復方法は、液体を吐出する複数の吐出口が形成された吐出口面を有する液体吐出ヘッドの前記吐出口面に対向して配置され、前記液体を吸収するシート状の吸収部材と、前記吸収部材を前記吐出口面に沿って移動させる移動機構と、前記吸収部材の移動方向に沿って互いに離間して配置され、前記吸収部材の一部を前記吐出口面に押し付ける複数の押圧部と、互いに隣接する前記押圧部の間に位置し、前記複数の押圧部が前記吐出口面に前記吸収部材を押し付けているときに、互いに隣接する前記押圧部の間の部分の前記吸収部材を前記吐出口面から離間させる中間部材と、を備えた回復処理装置を用いて、前記液体吐出ヘッドの前記吐出口面の払拭動作を行う方法に関する。ヘッドの回復方法は、前記複数の押圧部により前記吸収部材を前記吐出口面に押圧して前記吐出口面に付着した前記液体を払拭する払拭動作の後に、前記吸収部材に前記液体が付着した領域である液体付着部の、前記移動方向に沿った液体付着距離の総和よりも長く、かつ互いに隣接する前記押圧部の間の、前記吸収部材の移動方向に沿った距離よりも短い距離だけ、前記吸収部材を前記移動方向に移動させ、前記吸収部材の前記液体付着部とは異なる部分を前記押圧部に位置させるステップを含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸収部材を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インクジェット記録装置を示す概略平面図である。
【図2】図1の記録装置に備えられたヘッドを示す模式図である。
【図3】記録装置に搭載された制御系(制御手段)の構成を示すブロック図である。
【図4】記録装置に備えられた回復処理装置を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る回復処理装置に備えられた払拭ユニットの構成及び払拭動作を示す模式図である。
【図6】払拭ユニットを示す模式図である。
【図7】本発明の実施形態において、払拭ユニットによる払拭動作で液体が付着した吸収部材の様子を示す模式図である。
【図8】払拭ユニットに備えられた押圧部がヘッドの吐出口面を押圧する様子を示す摸式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る払拭ユニットの構成及び払拭動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態では、液体吐出装置の一例として、インクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置について説明する。しかし、本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドに付着した液体を払拭する払拭装置とを備えた液体吐出装置全般に適用できる。
【0016】
図1は、記録媒体の搬送ユニット(図示せず)を含む各種機構を備えた記録装置1の概略を示している。なお、以下では、液体吐出装置として、シリアル型のインクジェット記録装置について説明する。シリアル型の記録装置は、搬送ユニットによって記録媒体を図のY方向へと間欠的に搬送すると共に、ヘッド3を記録媒体の搬送方向(図のY方向)と直交する方向(図のX方向)へ移動させながらインクを記録媒体へ吐出して記録動作を行う。また、図1に示す記録装置1は、比較的大判の記録媒体(例えば、A1サイズ)への記録を行えるよう、X方向におけるサイズを大型化した構成となっている。
【0017】
また、記録装置1はキャリッジ2を備えている。キャリッジ2には、ヘッド3が着脱可能に搭載される。キャリッジ2はヘッド3と共にX方向に沿って往復移動可能に構成されている。具体的には、キャリッジ2は、X方向に沿って延在したガイド軸4に沿って移動可能に構成されると共に、ガイド軸4と略平行に移動する無端ベルト5に固定されている。無端ベルト5は、キャリッジモータの駆動力によって往復運動し、それによってキャリッジ2をX方向に往復運動させる。
【0018】
図2は、キャリッジ2に搭載されるヘッド3の模式図である。図2に示されるように、ヘッド3の吐出口面3bには、Y方向に沿って形成される複数の吐出口3aと、個々の吐出口3aに対応して形成された複数の液路(図示せず)と、複数の液路にインクを供給する共通液室(図示せず)とが形成されている。図2は、6個の別々の吐出口列11〜16が設けられたヘッド3の例を示しているが、本発明はこの例に限定されるものではなく、吐出口の数や位置などに制限はない。また、キャリッジ2にヘッド3が複数搭載されていても良い。一例として、ヘッド3には、Y方向に、同色のインクを吐出する1280個の吐出口3aが、1200dpi(ドット/インチ)の密度で配列されている。
【0019】
ヘッド3の各液路には、インクを吐出口3aから吐出させるための吐出エネルギーを発生させるエネルギー発生素子(不図示)が配置されている。このエネルギー発生素子として、本実施形態では、インクを局所的に加熱して膜沸騰を起こさせ、そのときの圧力によってインクを吐出させる電気熱変換体が用いられる。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、圧電素子などの電気機械変換素子を用いることも可能である。
【0020】
また、ヘッド3には、前述の6個の別々の吐出口列に対応して、それぞれ異なる色材を含有したインク、例えばシアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラックが、それぞれのインクが収容されたインクタンク(図示せず)より供給される。そして、記録装置1に備えられた各インクタンクからは、それぞれ対応する吐出口列11〜16のインク供給口にチューブ(図示せず)が連結されており、各インクが供給される。なお、このインクセットは、記録装置1の機能により任意に設定可能なものであり、利用されるインクの種類や色は上記のもの限定されるものではない。
【0021】
図3は、記録装置1に搭載される制御系(制御手段)の構成を示すブロック図である。主制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、入出力ポート104などを備える。CPU101は、演算、制御、判別、設定などの処理動作を実行する。ROM102は、このCPU101によって実行すべき制御プログラム等を格納する。RAM103は、インクの吐出/非吐出を表す2値のデータを格納するバッファ及びCPU101による処理のワークエリア等として用いられる。
【0022】
入出力ポート104には、搬送ユニットにおける搬送モータ(LFモータ)113、キャリッジモータ114、ヘッド3、回復処理装置7などの各駆動回路105、106、107、108が接続されている。入出力ポート104には、ヘッド3の温度を検出するヘッド温度センサ(温度検出手段)112や、キャリッジ2に固定されたエンコーダセンサ111や、記録装置1の使用環境である温度と湿度を検知する温湿度センサ109などのセンサ類が接続されている。また、主制御部100はインターフェース回路110を介してホストコンピュータ115に接続されている。
【0023】
記録装置1は、回復処理装置7によってヘッド3から強制的にインクを排出させた場合に、そのインク量をカウントする回復処理カウンタ116を備えている。また、記録開始前や記録終了時、記録中に行われる予備吐出をカウントする予備吐出カウンタ117が設けられている。そして、フチ無し記録を行う場合に記録媒体の領域外に記録されるインクをカウンタするフチ無しインクカウンタ118や、記録中に吐出するインクをカウントする吐出ドットカウンタ119なども備えられている。
【0024】
次に、以上の構成を有するインクジェット記録装置1によって実行される記録動作を説明する。ホストコンピュータ115からインターフェースを介して液体吐出用のデータを受信すると、そのデータはRAM103のバッファに展開される。そして、記録動作が指示されると、搬送ユニット(図示せず)が作動し、記録媒体がヘッド3との対向位置へ搬送される。ここで、キャリッジ2はガイド軸4に沿ってX方向へ移動する。キャリッジ2の移動に伴って、ヘッド3からはインク滴が吐出され、記録媒体に1バンド分の画像が記録される。この後、搬送ユニットにより、記録媒体はキャリッジ2と直交するY方向に、1バンド分だけ搬送される。以上の動作を繰り返すことにより、記録媒体には所定の画像が形成される。
【0025】
なお、キャリッジ2の位置は、キャリッジ2の移動に伴ってエンコーダセンサ111から出力されるパルス信号を主制御部100でカウントすることにより検出される。すなわち、エンコーダセンサ111は、X方向に沿って配置されたエンコーダフィルム6(図1参照)に一定の間隔で形成された検出部を検出することによって、パルス信号を主制御部100へ出力する。主制御部100はこのパルス信号をカウントすることにより、キャリッジ2の位置を検出する。キャリッジ2のホームポジション及びその他の位置への移動は、エンコーダセンサ111からの信号に基づいて行われる。
【0026】
(回復処理装置)
図4は、ヘッド3の各吐出口3aからのインクの吐出性能を良好な状態に保つための回復処理装置7を示している。回復処理装置7は、記録装置1の所定の位置に保持固定されている。回復処理装置7は、吸引回復機構7A及び7Bと、これを昇降させる昇降機構(図示せず)と、払拭ユニット8とを備える。吸引回復機構7A及び7Bは吸引回復処理を行う。ここで、吸引回復処理とは、ヘッド3に形成された複数の吐出口3aから強制的にインクを吸引することによって、吐出口3aの内部(吐出口に連通する流路内)のインクを、吐出に適した状態のインクに置き換える処理をいう。具体的には、この吸引回復機構7A及び7Bは、吐出口面3bをキャップで覆うと共に、そのキャップに連通するポンプ(図示せず)によってキャップ内に負圧を発生させ、その負圧によって吐出口3aからインクを強制的に吸引する。なお、各々の吸引回復機構7A及び7Bは、それぞれ、3つの吐出口列11〜13、14〜16に対して吸引回復処理を行う。
【0027】
払拭ユニット8は、ヘッド3の往復運動の反転位置(例えば、ヘッドのホームポジション)に上下方向(図のZ方向)において対向可能な位置に設けられている。払拭ユニット8は、吐出口から吐出される液体を吸収するシート状の吸収部材9と、吸収部材9を吐出口面3bに接触させるための押圧部10と、この押圧部10を押圧位置と退避位置との間で移動可能にする昇降機構(図示せず)とを備える。図4では、押圧部10が1つのみ示されているが、本発明の回復処理装置7は複数の押圧部を備えている。払拭ユニット8内の吸収部材9には、液体の払拭性を向上させるクリーニング液が染み込まれていても良い。
【0028】
(払拭動作)
図5は、本発明の一実施形態における払拭ユニット8により、2つのヘッド4a,4bを拭く際の払拭動作を時系列的に示したものであり、(a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(f)→(g)の順で経時している。図5(a)における破線X1、X2は、キャリッジ2のX方向の位置の目安を示している。二点鎖線Z1、Z2は、押圧部10a,10bのZ方向の位置を示し、位置Z1は押圧部10a,10bの退避位置を示し、位置Z2は押圧部10a,10bの押圧位置を示している。また、図5(a)の左側方向をバックポジション(BP)側、右側方向をホームポジション(HP)側とする。本実施形態の払拭動作は、キャリッジ2がBP側からHP側に移動する際に行なわれるが、本発明はこれに限定されない。
【0029】
図5(a)は、キャリッジ2が、キャリッジ位置X1よりBP側にあるときの図である。このとき、押圧部10aおよび10bは退避位置Z1に位置している。図5(b)はキャリッジ2がキャリッジ位置X1まで移動した時の図である。そのとき、エンコーダセンサ111から出力されるパルス信号を主制御部100でカウントし、不図示の昇降機構によって押圧部10aおよび10bを退避位置Z1から押圧位置Z2まで押し上げる(図5(c))。この時、押圧部10a,10bとキャリッジ2とのX方向に関する相対位置は次のようになる。つまり、キャリッジ2の移動方向の上流側の第1の押圧部10aは、キャリッジ2の移動方向の下流側の第1のヘッド4aと上流側の第2のヘッド4bとの間にある。また、キャリッジ2の移動方向の下流側の第2の押圧部10bは、第1のヘッド4aよりHP側にある。これにより、第1の押圧部10aは、第2のヘッド4bのみを押圧し、第1のヘッド4aを拭くことは無い。主制御部100は、上記のようにして、両ヘッド4a,4bのインクによる混色を防止するように装置を制御している。さらに、払拭ユニット8は、押圧部10a,10b間に中間部材20を備えている。図にあるように、吸収部材9は、第1の押圧部10a、第2の押圧部10bのZ方向において上方に位置し、中間部材20の下方に位置するように這い回されている。押圧部10a,10bが吸収部材9を吐出口面に押しつけたときであっても、押圧部10a,10b間の吸収部材9は、中間部材20によって吐出口面から離間させられる。これにより、押圧部10a,10b間の吸収部材9に、第1のヘッド4aおよび第2のヘッド4bが接触することが無く、一回の払拭動作では、押圧部10a,10b間の吸収部材9が使用されることはない。中間部材20は、図5のような円筒形状である必要性は無く、他の形状でも良い。図5(d)は第1のヘッド4aを第2の押圧部10bで、第2のヘッド4bを第1の押圧部10aで払拭している様子を示している。図5(e)はキャリッジ2がキャリッジ位置X2まで移動した時の図である。キャリッジ2がキャリッジ位置X2まで移動すると、第2の押圧部10bと第1の押圧部10aを、押圧位置Z2から退避位置Z1まで下げる(図5(f))。この時、キャリッジ位置と、第1の押圧部10aおよび第2の押圧部10bとの、X方向の相対位置は次のようになる。第2の押圧部10bは第1のヘッド4aと第2のヘッド4bとの間にあり、第1の押圧部10aは第1のヘッド4aよりBP側にある。これにより、第2の押圧部10bで第2のヘッド4bを拭くことは無く、混色を防止している。図5(g)はキャリッジ2がキャリッジ位置X2よりHP側にある時の図である。この時、第2の押圧部10bと第1の押圧部10aは、退避位置Z1に位置している。
【0030】
その後、払拭ユニット8に設けられた不図示の移動機構を動かすことで吸収部材9を移動させる。具体的には、巻き取りローラー21が回転し(図5では時計回り)、巻き出しローラー22から巻き出し従動ローラー24を通して、押圧部10a,10b上に、吸収部材9を巻き出している。巻き出された吸収部材9は、巻き取り従動ローラー23を通って、巻き取りローラー21に巻き取られる。これにより、常に払拭されていない部分(未使用の部分)の吸収部材9で、ヘッドの吐出口面の回復動作を行うようにする。
【0031】
(払拭動作時の巻き取り動作)
図6(a)は、比較例における払拭ユニット8内の吸収部材9、第1の押圧部10a、第2の押圧部10bを模式的に示している。比較例では、両押圧部10a,10b間に中間部材20は存在していない。図6(c)では、第1の押圧部10a、第2の押圧部10bは、図5(c)と同様に押圧位置Z2まで上昇しているものとする。以後、吸収部材9上の、液体が付着した部分、または払拭動作により液体が付着し得る部分を、液体付着部と呼ぶ。図6(a)の構成では第1の押圧部10aによる液体付着部の、吸収部材9の移動方向に沿った距離(液体付着距離)をL1、第2の押圧部10bによる液体付着部の液体付着距離をL2とする。厳密には、液体付着部とは、吸収部材9とヘッドの吐出口面とが接触した部分と、当該部分から滲み出ることにより液体が付着し得る部分と、を合わせた部分を言う。これにより、液体付着距離とは、吸収部材9とヘッドの吐出口面とが接触している領域の、吸収部材9の移動方向に沿った距離と、同方向に沿って液体が滲み出るにじみ距離との和となる。にじみ距離は、以下で詳細に説明するように、液体の組成、吸収部材9の材質などに依存し、払拭ユニット8の設計が決まれば、予め行う実験により一意的に決定することができる。また、図の両矢印I1は、吸収部材9の移動方向に沿った押圧部10a,10b間の距離を示している。
【0032】
上記実施形態では、吸収部材9をヘッドの吐出口面に押し付ける押圧部10a,10bは2つであるが、以下では、特に明示しない限り、M個の押圧部が吸収部材9の移動方向に並べられている場合について考慮する。この場合、一回の払拭動作で形成される液体付着距離の総和は、各押圧部による液体付着距離の和であり、(L1+L2+・・・+LM)と表せる。押圧部間の距離の総和は(I1+I2+・・・+IM-1)と表される。ここで、Ijは、j番目とj+1番目の間の押圧部間の距離を示している。
【0033】
本発明を説明する前に比較例について説明する。比較例では、一回の払拭動作の後、両端の押圧部の間に相当する任意の箇所に、吸収部材の液体付着部が位置しないように、吸収部材9を新しい接触個所(未使用部分)まで移動させる際の吸収部材9の巻き取り量Lは次式で表される。
【0034】
【数1】

【0035】
図6(a)に示すように、押圧部10a,10bが2つの場合、巻き取り量Lは、
【0036】
【数2】

【0037】
であり、比較例における払拭動作では、払拭動作を1回行う毎に、I1分の距離に相当する部分の吸収部材9を無駄にすることがわかる。
【0038】
図6(b)は、本実施形態の払拭ユニット8内の吸収部材9、第1の押圧部10a、第2の押圧部10b、中間部材20を模式的に示しており、第1の押圧部10aおよび第2の押圧部10bは図5(c)と同様に押圧位置Z2まで上昇しているものとする。矢印LBLは第1の押圧部10aから中間部材20までの吸収部材9の長さであり、矢印LBRは第2の押圧部10bから中間部材20までの吸収部材9の長さを示している。矢印LBLと矢印LBRの和LBは、押圧部10a,10b間の吸収部材9の長さとなる。より厳密には、LBは、一回の払拭動作による液体付着部間の長さとして定義される。図6(b)に示す例では、2つの押圧部10a,10bによる、吸収部材9と吐出口面との接触領域は異なっている。しかし、吐出する液体の組成や吐出口面の撥水性によっては、複数の押圧部10a,10bが全て同じ接触領域を有していても良く、全てまたは一部異なっていても良い。また、本実施形態では、押圧部10a,10bは2個備えられているが、押圧部は3つ以上あっても良い。さらに、複数の押圧部10a,10bは、別々の部材によって構成されていても良く、図6(c)のように1つの部材10の異なる部分から構成されていても良い。図6(c)の場合では、複数の押圧部の昇降を容易に同期させることができる。
【0039】
図7(a)および図7(b)は、本発明により払拭動作を数回繰り返したときの吸収部材9の液体付着部を模式的に表した図である。矢印αは、余剰距離を示している。余剰距離αとは、液体が吸収部材9に染み込む際に、互いに隣接する液体付着部が接触しないように予め設定された領域に相当する距離である。また、液体を吸収する吸収部材9上の余剰距離αは、吸収部材9の無駄が低減できる限り、任意の大きさにすることができる予め設定された値である。余剰距離αは、液体の組成や吸収部材9の材質を考慮して液体が隣の払拭個所と接触しないように設けられ、0より大きいが、できるだけ小さい値、つまり0に近い値が好ましい。吸収部材9は、不図示の駆動機構を駆動させることにより、巻き取りローラー21を回転させることで巻き取られる。
【0040】
図7(a)の例では、ある時の払拭動作で形成される2つの液体付着部の間に、前回の払拭動作時に第1の押圧部10aで形成される液体付着部と、次回の払拭動作時に第2の押圧部10bで形成される液体付着部とを配置させ、吸収部材9の無駄を省く。図7(a)において、図中の1〜5は払拭動作の回数を示し、払拭動作を1回終了する毎に、吸収部材9を所定量だけ巻き取っている。つまり、払拭動作の回数が増えるにつれて、所定の巻き取り量LAの分だけ、吸収部材9が図中の巻き取り方向に移動している。図中の1は、一回目の払拭動作後の吸収部材の液体付着部を示しており、その後、所定量の吸収部材9の巻き取り行い、図中の2は二回目の吸収部材9の液体付着部を示している。E1,1は、一回目の払拭動作時に第1の押圧部10aで払拭して形成された液体付着部を示しており、E2,1は一回目の払拭動作時に第2の押圧部10bで払拭して形成された液体付着部を示している。一般的に、Ei,jは、j回目の払拭動作時に第iの押圧部で払拭して形成された液体付着部を示している(iはM以下の自然数。)。
【0041】
押圧部の数M=2のとき、押圧部10a,10b間の吸収部材9の長さをLB、一回の払拭動作後の吸収部材9の巻き取り量をLAとすると、本実施形態では、押圧部間の吸収部材9の長さLBは、巻き取り量LAと余剰距離αとを足した値に設定する。これにより、後の払拭動作において、第2の押圧部10bによる液体付着部が第1の押圧部10aによる液体付着部と重なることは無い。押圧部10a,10b間の吸収部材9の長さLBは、押圧部間に設けられている中間部材20の高さを調節することによって容易に調整できる。
【0042】
図7(b)では、ある時の払拭動作で形成される2つの液体付着部の間に、第1の押圧部で形成される液体付着部と、第2の押圧部で形成される液体付着部との夫々を、2つ以上配置させて、吸収部材9の無駄を省いている。図7(b)において、押圧部10a,10b間の吸収部材9の長さLBは、巻き取り量LAの自然数倍(図では3倍)の距離と吸収部材9の余剰距離αを足した値である。このように、押圧部間の吸収部材9の長さLBをある程度自由に設定できることで、押圧部の厚さと中間部材20の大きさやレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0043】
図8(a)、図8(b)、図8(c)は払拭動作時の模式図であり、吸収部材9と吐出口面との接触部(接触距離LP)が、押圧部と吐出口面との接触方法の違いによって変化することを示している。図8では1つの押圧部10のみが示されているが、実際には、本発明の払拭ユニットは2つ以上の押圧部を備えている。
【0044】
図8(a)は、押圧部10の上面が吐出口面と接触している様子を示す拡大図である。押圧部10は弾性部材であり、例えばゴムにより作られる。押圧部10が弾性変形を起こさずに吸収部材9を介して吐出口面に押圧した場合、吸収部材9と吐出口面との接触距離LPは、押圧部10の厚みと等しい。図8(b)は、押圧部10のエッジ部が吐出口面を押圧している様子を示す模式図である。押圧部10は弾性部材であるため、エッジ部が弾性変形を起こし、図8(b)のような状態となることがある。この場合、エッジ部の弾性変形部が接触距離LPとなり、接触距離LPは押圧部の幅よりも小さくなり得る。図8(c)は、押圧部10の側面部が吐出口面を押圧している様子を示す模式図である。押圧部10全体が弾性変形を起こすと、図8(c)のような状態となることがある。この場合、押圧部10の側面部のうち、吐出口面を押圧している部分の距離が接触距離LPとなり、接触距離LPは押圧部の幅よりも大きくも小さくもなり得る。
【0045】
ちなみに前述の「液体付着部」は、吸収部材9と吐出口面との接触距離LPと、にじみ距離との和に相当する。一回の払拭動作において形成される、吸収部材9と吐出口面との接触距離LPと、にじみ距離との和を、液体付着距離と呼ぶ。にじみ距離とは、吸収部材9と吐出口面との接触により吸収部材9に液体が染み込み、一回の払拭動作で、吸収部材9が接触距離LP以外に汚れる距離を示している。にじみ距離は、接触距離LPの両端部から染み出してくるので、接触距離LPの両端から染み出した液体の距離の和である。にじみ距離は、ヘッドが吐出する液体が一種類のみであっても複数種類であっても、実験により予め決定することができる。にじみ距離は、吸収部材9にクリーニング液が染み込んで無い場合には、液体の組成と吸収部材9の材質に依存する。また、クリーニング液が染み込んでいる場合には、液体の組成と吸収部材9の材質に加え、クリーニング液の種類および吸収部材9へのクリーニング液の染み込み量に依存する。にじみ距離は、これらの要因によっては変化するが、実験により予め明確に設定することができる。
【0046】
一回の回復動作時の液体付着距離の総和は(L1+L2+・・・+LM)となる。以下、押圧部の個数をM、余剰距離をα、押圧部間の距離の総和を(I1+I2+・・・+IM-1)とする。本発明の好ましい一形態として、一回の払拭動作後の吸収部材9の巻き取り量LAは、次式で表される。
【0047】
【数3】

【0048】
つまり、吸収部材9の巻き取り量LAは、一回の払拭動作による液体付着距離の総和(L1+L2+・・・+LM)と、押圧部の個数Mと余剰距離αとの積と、の和である。
【0049】
また、本実施形態では、巻き取り量LAを、図6(a)の比較例の形態の巻き取り量LAよりも少なくする。つまり、次の関係式が成り立つようにする。
【0050】
【数4】

【0051】
このように、一回の巻き取りにおける吸収部材9の移動量を少なくすることで、結果的に、同一の長さの吸収部材を用いて数多くの払拭動作を行うことになり、その結果として、吸収部材9の無駄を省くことができる。
【0052】
式(1)、(3)より、(4)式は、下記の(5)式に書き換えられる。
【0053】
【数5】

【0054】
ここで、αとαMは、共に0より大きいため、本実施形態では、下記(6)式の関係が満たされる。
【0055】
【数6】

【0056】
つまり、余剰距離αは、押圧部間の距離の総和を押圧部の数Mで割った値よりも小さい。このように、予め余剰距離αを設定しておくことで、吸収部材9の無駄を省くことが出来る。
【0057】
また、Nを任意の自然数とすると、押圧部間の吸収部材9の長さLBは、次式の関係を満たす。ここで、押圧部の数Mが3以上であるとき、互いに隣接する押圧部間の吸収部材の長さLBは、どの押圧部間でも同一であるものとする。
【0058】
【数7】

【0059】
つまり、押圧部間の吸収部材の長さLBは、液体付着距離の総和の自然数倍と、互いに隣接する押圧部間に相当する吸収部材の間に存在すべき余剰距離の総和α(NM+1)と、の和である。(3)式による吸収部材の移動量に対して、互いに隣接する押圧部間の吸収部材の長さLBが(7)式の条件を満たしていれば、既に液体が付着している液体付着部を重複して使用することが防止される。また、各払拭動作後の吸収部材の移動量LAが一定であるため、装置の制御が容易であるという利点もある。
【0060】
(3)式より、(7)式は次式に書き換えられる。
【0061】
【数8】

【0062】
つまり、互いに隣接する押圧部間の吸収部材の長さLBは、巻き取り量LAの自然数倍と余剰距離αとの和である。ここで、図7(a)はN=1(倍)、M=2(個)の場合を示しており、図7(b)はN=3(倍)、M=2(個)の場合を示している。(3)式および(8)式を満足させることで、液体付着部を重複して使用することなく、常にきれいな吸収部材で、ヘッドの払拭動作を行うことが可能となる。
【0063】
(3)式および(8)式に加え、(6)式を満足させることで、ヘッドの払拭動作時において、比較例よりも吸収部材9の巻き取り量を抑えることが可能となり、結果として、吸収部材9を節約できる。払拭動作一回当たりに節約できる量は少なくても、何回も繰り返し払拭動作を行うことで、図に示すように吸収部材9の端部以外では余剰距離以外の部分を全て液体の吸収に使用できるため、吸収部材の使用量を大幅に軽減できる。
【0064】
次に、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。このインクジェット記録装置は、上記実施形態と概ね同様の構成をしており、以下では主に上記実施形態と異なる構成および動作について説明する。本実施形態では、キャリッジ2に搭載されているヘッド3は1つであり、このヘッド3の吐出口面に複数の吐出口列11〜16が形成されている。
【0065】
(払拭動作)
図9は、回復処理装置7に備えられた払拭ユニット8によって1つのヘッド3の吐出口面を拭く際の払拭動作を時系列的に示したものである。図9(a)〜(g)は(a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(f)→(g)の順で経時している。図9(a)における破線で示した位置X3、X4は、キャリッジのX方向の位置を示している。二点鎖線で示した位置Z3、Z4は、押圧部10a,10bのZ方向の位置を示している。押圧部位置Z3は押圧部10a,10bの退避位置を示し、押圧部位置Z4は押圧部10a,10bの押圧位置を示している。また、キャリッジ位置X3より左側の方向をバックポジション(BP)側、キャリッジ位置X4より右側の方向をHP側とする。第2の実施形態の払拭動作も、キャリッジ2がBP側からHP側に移動する際に行なわれる。時系列的な払拭動作全体の動作は、第1の実施形態と同様の為、その説明を省略する。
【0066】
図9(c)は、キャリッジ位置X3をエンコーダセンサ111から出力されるパルス信号を主制御部100でカウントし、不図示の昇降駆動を動かすことで押圧部10a,10bを退避位置Z3から押圧位置Z4まで押し上げる所を表している。この時、キャリッジの位置と押圧部10a,10bのX方向の相対位置は次のようになる。第2の押圧部10bはヘッド3に設けられた吐出口列16、15、14よりHP側であり、第1の押圧部10aは吐出口列16、15、14と吐出口列13、12、11との間にある。これにより、第1の押圧部10aで吐出口列16、15、14を拭くことは無く、混色を防止している。これにより、吸収部材9の、吐出口列16、15、14および吐出口列13、12、11の払拭跡が、互いに接触することは無い。また、キャリッジ2がキャリッジ位置X4まで移動すると、第2の押圧部10bと第1の押圧部10aを、押圧位置Z4から退避位置Z3まで下げる(図9(f))。この時、キャリッジ位置と押圧部10a,10bとのX方向の相対位置は次のようになる。第2の押圧部10bは吐出口列16、15、14と吐出口列13、12、11との間にあり、第1の押圧部10aは吐出口列16、15、14よりBP側にある。これにより、第2の押圧部10bで吐出口列13、12、11を拭くことは無く、混色を防止している。図9(g)は、キャリッジ2がキャリッジ位置X4よりHP側にある時の図である。この時、第2の押圧部10bと第1の押圧部10aは、退避位置Z3に位置している。その後、巻き取りローラー21を回転駆動することで(図9では時計回り)、押圧部10a,10b上にきれいな吸収部材9を巻き出している。これにより、常にきれいな部分の吸収部材9で、ヘッド3の回復動作を行うようにする。
【0067】
制御部による押圧部の昇降の制御については、上記実施形態によらず、以下のように制御すればよい。つまり、制御部は、複数の押圧部のうちの夫々の押圧部が、それぞれに対応する液体を吐出する吐出口が形成された部分のみを払拭するように、昇降機構を駆動して押圧部を退避位置と押圧位置との間で移動させるように制御する。これにより、1つの押圧部は、常に1種類の液体のみを払拭するため、別種の液体の混合を防止できる。
【0068】
(払拭動作時の巻き取り動作)
第2の実施形態も第1の実施形態と同様に、第1の押圧部10aによる液体吐出部の液体吐出距離をL1、第2の押圧部10aによる液体吐出部の液体吐出距離をL2、互いに隣接する押圧部間の吸収部材9の長さをLB、余剰距離をα、押圧部の個数をMとする。このとき、(3)式および(8)式を満足させることで、液体付着部を重複して使用することなく、常にきれいな吸収部材で、ヘッドの払拭動作を行うことが可能となる。さらに(6)式を満足させることで、ヘッドの払拭動作時において、比較例よりも吸収部材9の巻き取り量を抑えることが可能となり、結果として、吸収部材9を節約できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、紙や布、革、不織布、OHP用紙等、さらには、金属などの媒体に液体を吐出する機器全般に適用可能である。具体的な例としては、インクジェット記録方法を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ等の事務機器や、工業用生産機器などを挙げることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 記録装置(液体吐出装置)
3 ヘッド
3b 吐出口面
7 回復処理装置
8 払拭ユニット
9 吸収部材
10a 第1の押圧部
10b 第2の押圧部
20 中間部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数の吐出口が形成された吐出口面を有する液体吐出ヘッドの前記吐出口面に対向して配置され、前記液体を吸収するシート状の吸収部材と、
前記吸収部材を前記吐出口面に沿って移動させる移動機構と、
前記吸収部材の移動方向に沿って互いに離間して配置され、前記吸収部材の一部を前記吐出口面に押し付ける複数の押圧部と、
互いに隣接する前記押圧部の間に位置し、前記複数の押圧部が前記吐出口面に前記吸収部材を押し付けているときに、互いに隣接する前記押圧部の間の部分の前記吸収部材を前記吐出口面から離間させる中間部材と、
前記複数の押圧部により前記吸収部材を前記吐出口面に押圧して前記吐出口面に付着した前記液体を払拭する払拭動作の後に、前記吸収部材に前記液体が付着した領域である液体付着部の、前記移動方向に沿った液体付着距離の総和よりも長く、かつ互いに隣接する前記押圧部の間の、前記吸収部材の移動方向に沿った距離よりも短い距離だけ、前記吸収部材を前記移動方向に移動させ、前記吸収部材の前記液体付着部とは異なる部分を前記押圧部に位置させるように制御する制御部と、を備えた回復処理装置。
【請求項2】
前記払拭動作の後に前記吸収部材を移動させる移動量は、前記押圧部の個数と予め設定された余剰距離の積と、一回の払拭動作で付着する前記液体付着部の前記液体付着距離の総和と、の和であり、
前記押圧部が前記吸収部材を前記吐出口面に押し付けているときに、互いに隣接する前記押圧部間に相当する前記吸収部材の長さは、前記移動量の自然数倍と前記余剰距離との和であり、
前記余剰距離は、互いに隣接する前記押圧部間の距離の総和を、前記押圧部の数で割った値よりも小さい、請求項1に記載の回復処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回復処理装置と、
液体を吐出する吐出口が形成され、前記回復処理装置によって払拭動作が行われる吐出口面を有する液体吐出ヘッドと、を備えた液体吐出装置。
【請求項4】
前記押圧部を、前記吐出口面から退避した退避位置と前記吐出口面を押圧する押圧位置との間で移動させる昇降機構と、
前記液体吐出ヘッドが搭載され、前記吸収部材の移動方向と同方向に往復移動可能に構成されたキャリッジと、を備え、
前記液体吐出ヘッドの吐出口面には、互いに異なる種類の液体を吐出する複数の吐出口が、前記キャリッジの移動方向に沿って離間して形成されており、
前記複数の押圧部のうちの夫々の押圧部が、対応する液体を吐出する前記吐出口が形成された部分のみを払拭するように、前記制御部は前記昇降機構を駆動して前記押圧部を前記退避位置と前記押圧位置との間で移動させるように制御する、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
液体を吐出する複数の吐出口が形成された吐出口面を有する液体吐出ヘッドの前記吐出口面に対向して配置され、前記液体を吸収するシート状の吸収部材と、
前記吸収部材を前記吐出口面に沿って移動させる移動機構と、
前記吸収部材の移動方向に沿って互いに離間して配置され、前記吸収部材の一部を前記吐出口面に押し付ける複数の押圧部と、
互いに隣接する前記押圧部の間に位置し、前記複数の押圧部が前記吐出口面に前記吸収部材を押し付けているときに、互いに隣接する前記押圧部の間の部分の前記吸収部材を前記吐出口面から離間させる中間部材と、を備えた回復処理装置を用いて、前記液体吐出ヘッドの前記吐出口面の払拭動作を行う液体吐出ヘッドの回復方法であって、
前記複数の押圧部により前記吸収部材を前記吐出口面に押圧して前記吐出口面に付着した前記液体を払拭する払拭動作の後に、前記吸収部材に前記液体が付着した領域である液体付着部の、前記移動方向に沿った液体付着距離の総和よりも長く、かつ互いに隣接する前記押圧部の間の、前記吸収部材の移動方向に沿った距離よりも短い距離だけ、前記吸収部材を前記移動方向に移動させ、前記吸収部材の前記液体付着部とは異なる部分を前記押圧部に位置させるステップを含んでいる、液体吐出ヘッドの回復方法。
【請求項6】
前記払拭動作の後に前記吸収部材を移動させる移動量は、前記押圧部の個数と予め設定された余剰距離の積と、一回の払拭動作で付着する前記液体付着部の前記液体付着距離の総和と、の和であり、
前記押圧部が前記吸収部材を前記吐出口面に押し付けているときに、互いに隣接する前記押圧部間に相当する前記吸収部材の長さは、前記移動量の自然数倍と前記余剰距離との和であり、
前記余剰距離は、互いに隣接する前記押圧部間の距離の総和を、前記押圧部の数で割った値よりも小さい、請求項5に記載の液体吐出ヘッドの回復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−51141(P2012−51141A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193581(P2010−193581)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】