説明

液体吐出ヘッド及びこれを備える液体吐出装置

【課題】ダミー流路による排気性能を損なわずダミー流路と個別流路との干渉を避けやすい構成とした上で、液体吐出ヘッドをノズル配列方向に小型化する。
【解決手段】複数のノズル48が列をなして開口するノズル開口面49を有した流路ユニット21に、液体導入流路42、共通液室43、共通液室43内の液体をノズル48に供給する個別流路47、及び個別流路47とは独立しており共通液室43に連通してノズル開口面49に開口するダミー流路59を形成する。共通液室43は液体導入流路42からノズル配列方向に延在する上流領域53と、上流領域53の先端部から液体導入流路42側へと折り返してノズル配列方向に延在する下流領域54とを有している。下流領域54の末端部にダミー流路59を連通させ、ノズル開口面49においてダミー流路59の開口を、液体導入流路42側の末端に位置するノズル48に対して液体導入流路42側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ等のように、液体を吐出するよう構成された液体吐出ヘッド及びこれを備える液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例であるインクジェットプリンタは、インクを吐出するよう構成されたインクジェットヘッドを備え、用紙等の被記録媒体にインクジェットヘッドより吐出したインクを着弾させて画像や文字を記録する印刷動作を実行する構成となっている。
【0003】
インクジェットヘッドは、インクを吐出するための複数のノズルを有する流路ユニットを備えており、流路ユニットの下面にはこれら複数のノズルが列をなして開口している。流路ユニットの内部には各ノズルにインクを供給するためのインク流路として、外部からインクが導入されるインク導入流路と、インク導入流路からインクが送られる共通インク室と、各ノズルに個別対応して設けられて共通インク室内のインクを対応するノズルに供給する個別流路とが形成されている。
【0004】
インク流路内には外部からのインクと共にエアが侵入することがあり、プリンタが印刷動作を実行する際にこのエアがノズルまで到達すると、そのノズルより適量のインクが吐出されず印刷精度に影響を与えるおそれがある。このため、従来、個別流路とは独立した排気用のダミー流路を有した流路ユニットが知られている(例えば特許文献1参照)。ダミー流路は共通インク室に連通して下面(ノズル開口面)に開口しており、共通インク室内のエアがこのダミー流路を介して下面より外部へ排出され得るようにしている。
【0005】
また、インクジェットプリンタには、インク流路内のエアを強制的に排出するためのキャップが設けられることがある。キャップは上下に昇降可能に設けられていて通常は下方に退避しており、インクジェットヘッドがキャップの上方に位置したときに必要に応じて上昇する。キャップが上昇すると、キャップの上部に形成されている枠状のリップ部がノズル開口面に密着し、リップ部の内側にはノズル及びダミー流路の各開口が封止される。この状態でリップ部の内側に負圧を印加すると、共通インク室内のエアが各ノズル及びダミー流路内のインクとともに強制的に排出される。この一連の動作はパージ動作とも呼ばれており、これを実行することにより印刷精度を維持又は回復することができる。
【特許文献1】特開2007−125807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17は従来のインクジェットヘッド900の底面図である。インクジェットヘッド900は、流路ユニット901にアクチュエータ911が積層接着されてなり、図17に示すように、流路ユニット901の記録用紙と対向する下面はノズル開口面902となっており、ここには複数のノズル903が列をなして開口している。図18はこの図17のXVIII−XVIII線に沿って切断して示す従来のインクジェットヘッド900の横断面図である。図17及び図18に示すように、インク導入流路904はノズル配列方向の一方側端部に形成されて断面鉛直方向に延在しており、その上端開口を介して外部からインクが導入される。共通インク室905は、このインク導入流路904の下端部からノズル配列方向の他方側に向かって延在している。
【0007】
共通インク室905内のインクはインク導入流路904との連通部分からノズル配列方向の他方側に向かって流れるが、共通インク室905内に侵入したエアも同様にして流れていく傾向にある。このため、共通インク室905の下流端部(すなわち、ノズル配列方向の他方側端部)にダミー流路906を連通させており、これにより共通インク室905内のエアをダミー流路906にトラップしやすくなる。但し、ダミー流路906は個別流路907との干渉を避ける必要があり、ダミー流路906をノズル配列方向の一方側に延在させるよう形成することは難しい。従って、図17に示すように、ダミー流路906の開口は、ノズル開口面902において、ノズル配列方向の他方側末端に位置するノズル903Aに対し、更に他方側に配置されている。
【0008】
図17にはパージ動作を実行する際に弾性体のキャップのリップ部910が密着すべき箇所を二点鎖線で示している。図17に示すように、枠状のリップ部910に関しては、ノズル開口面902との密着度を高めるために外枠側の輪郭形状がノズル開口面902の外形輪郭形状よりも小さく、ノズル903及びダミー流路906の全開口を封止するために内枠側の輪郭形状がこれら開口の配置領域よりも大きいことが望まれる。言い換えると、ノズル開口面902には、上記末端のノズル903Aとノズル開口面902の他方側辺縁902Aとの間に、ダミー流路906の開口を配置するためのスペースと、リップ部910を密着させるためのスペースとを確保しておかなければならず、このことはインクジェットヘッド900をノズル配列方向に小型化する上で障壁の一つとなっている。
【0009】
そこで本発明は、ダミー流路による排気性能を損なわずダミー流路と個別流路との干渉を避けやすい構成とした上で、液体吐出ヘッドをノズル配列方向に小型化することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出するための複数のノズルが所定方向に配列されて開口しているノズル開口面を有した流路ユニットを備える液体吐出ヘッドであって、前記流路ユニットに、液体が導入される液体導入流路と、前記液体導入流路に導入された液体が送られる共通液室と、前記ノズルの各々に個別対応して設けられており前記共通液室内の液体を対応するノズルに供給する個別流路と、前記個別流路とは独立しており前記共通液室に連通して前記ノズル開口面に開口するダミー流路とが形成され、前記共通液室が、前記液体導入流路からノズル配列方向に延在する上流領域と、前記上流領域の先端部から前記液体導入流路側に向かって折り返してノズル配列方向に延在する下流領域とを有し、前記ダミー流路は前記下流領域の末端部に連通しており、前記ダミー流路の開口が、前記ノズル開口面にて、前記複数のノズルのうち前記液体導入流路側の末端に位置するノズルに対して前記液体導入流路側に配置されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、共通液室内に侵入したエアが溜まりやすい共通液室の末端部にダミー流路が連通しているため、ダミー流路にエアをトラップしやすくなり、ダミー流路による排気性能がよくなる。また、ダミー流路の開口がノズルに対して液体導入流路側に配置されているため、パージ動作の実行時には、キャップを液体導入流路側に変位させてノズル開口面に接触させることができる。従って、このキャップの変位分だけ、ノズル開口面のサイズをノズル配列方向に関して小型化することができる。そして、共通液室は液体導入流路からノズル配列方向に延びた後、液体導入流路側へと折り返す構造となっている。このため、上記作用を奏するべく共通液室の下流領域末端に連通するダミー流路の開口をノズル開口面上にて液体導入流路側に配置するにあたって、ダミー流路の構造を簡単にすることができ、且つダミー流路と個別流路との干渉を容易に避けることができる。さらには、共通液室が折り返す複雑な流路構造となっているため、共通液室内を流れる液体もこの流路に沿って折り返すように流れていく。このようにすると、個別流路側から共通液室内に圧力波が伝播してもこの圧力波を共通液室内で分散することができる。
【0012】
前記複数のノズルが、単一の前記共通液室に対して2列配列され、一方の列をなすノズルに対応する前記個別流路が前記上流領域に連通し、他方の列をなすノズルに対応する前記個別流路が前記下流領域に連通していてもよい。このような構成によれば、2列間で互いに対向する隣接ノズルの個別流路を、上流領域と下流領域とに分けて配置することができる。このように隣接ノズルに対応する各個別流路が離れて配置されるため、隣接ノズル間でのクロストーク現象を抑えることができる。
【0013】
前記流路ユニットは複数のプレート部材を積層してなり、前記上流領域及び前記下流領域が前記プレート部材の積層方向に離れて配置され、前記共通液室が、さらに、前記上流領域の前記先端部から前記積層方向に延在して前記下流領域に連通する連通孔を有していてもよい。このような構成によれば、共通液室を階層構造にした上で直列的な一方通行の流路とすることができる。
【0014】
前記ノズル開口面を鉛直下側に向けた状態としたときに、前記下流領域が前記上流領域に対して鉛直上側に配置されていてもよい。このような構成によれば、ダミー流路が連通している下流領域側にエアを導きやすくなり、ダミー流路による排気性能が向上する。
【0015】
前記ノズル開口面を鉛直下側に向けた状態としたときに、前記上流領域が前記下流領域に対して鉛直上側に配置され、前記液体導入流路が前記上流領域の端部から鉛直上側に向かって延在し、前記下流領域の末端部が、前記上流領域の鉛直下側にて、平面視で前記液体導入流路と重なる位置まで延在していてもよい。このような構成によれば、ノズル開口面のうち平面視で液体導入流路と重なる領域を利用してダミー流路の開口を配置することができ、ダミー流路の配置自由度が高くなる。さらには、複数のダミー流路を容易に形成することができる。
【0016】
前記流路ユニットが前記複数のプレート部材の一部として、前記上流領域をなす第1マニホールド孔を有する第1マニホールドプレート部材と、前記下流領域をなす第2マニホールド孔を有する第2マニホールドプレート部材と、前記第1及び第2マニホールドプレート部材の間に介在して前記第1及び第2マニホールド孔を積層方向に仕切るとともに前記連通孔を有する仕切プレート部材とを有し、前記仕切プレート部材が、前記第1マニホールド孔を閉塞して前記上流領域内の圧力変動に応じて弾性変形可能な第1ダンパー壁と、前記第2マニホールド孔を閉塞して前記下流領域内の圧力変動に応じて弾性変形可能な第2ダンパー壁とを構成していてもよい。また、前記流路ユニットが前記複数のプレート部材の一部として、前記上流領域をなす第1マニホールド孔を有する第1マニホールドプレート部材と、前記下流領域をなす第2マニホールド孔を有する第2マニホールドプレート部材と、前記第1及び第2マニホールドプレート部材の間に介在して前記第1及び第2マニホールド孔を積層方向に仕切るとともに前記連通孔を有する仕切プレート部材と、前記第1マニホールドプレート部材に前記仕切プレート部材とは反対側から接する第1ダンパープレート部材と、前記第2マニホールドプレート部材に前記仕切プレート部材とは反対側から接する第2ダンパープレート部材とを有し、前記第1ダンパープレート部材が、前記第1マニホールド孔を閉塞して前記上流領域内の圧力変動に応じて弾性変形可能な第1ダンパー壁を構成し、前記第2ダンパープレート部材が、前記第2マニホールド孔を閉塞して前記下流領域内の圧力変動に応じて弾性変形可能な第2ダンパー壁を構成していてもよい。いずれの構成においても、共通液室がほぼ全体にわたってダンパー壁によって区画されることとなり、クロストーク現象を抑制することができる。
【0017】
前記流路ユニットは複数のプレート部材を積層してなり、前記上流領域及び前記下流領域が、前記プレート部材の積層方向に関して同じ位置に並んで形成され、前記共通液室が、前記上流領域の先端部を前記下流領域に接続する折返し領域を有していてもよい。このような構成によれば、直列的な一方通行の流路構造となった共通液室を容易に実現可能となる。
【0018】
また、本発明に係る液体吐出装置は、前述したような液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドのノズル開口面に離接する枠状のリップ部を有し、該リップ部を前記ノズル開口面に接触させて該リップ部内側に複数のノズル及びダミー流路の各開口を封止するキャップと、前記各開口が封止されている状態で前記リップ部の内側に負圧を印加する負圧印加手段とを備えることを特徴としており、前述した作用効果を奏する液体吐出装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、ダミー流路による排気性能が損なわれず、ダミー流路が個別流路と干渉するのを避けた上で、液体吐出ヘッドをノズル配列方向に小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る液体吐出装置及び液体吐出ヘッドをインクジェットプリンタ及びインクジェットヘッドに適用した実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
[インクジェットプリンタ]
図1は本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概要構成を平面視で示す模式図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、略水平の走査方向に延在する一対のガイドレール2,3を備え、これらガイドレール2,3にキャリッジ4が支持されている。ガイドレール3の各端部にはプーリ5,6が設けられ、これらプーリ5,6の間にはキャリッジ4に固定されたベルト7が巻き掛けられている。図示しない走査用のモータが駆動されると、プーリ5が回転してベルト7が周回し、これによりキャリッジ4がガイドレール2,3に沿って走査方向にスライドする。
【0022】
インクジェットプリンタ1にはカートリッジ装着部8が設けられ、このカートリッジ装着部8には複数(例えば4つ等)のインクカートリッジ9が着脱自在に装着される。各インクカートリッジ9には互いに異なる色(例えばブラック、イエロー、シアン、マゼンタ等)のインクが貯留されている。インクカートリッジ9がカートリッジ装着部8に装着されると、インクカートリッジ9内のインクがインク供給チューブ10を介してキャリッジ4に搭載されているインクジェットヘッド20に供給可能となる。インクジェットヘッド20は、インクカートリッジ9から供給されたインクを下向きに吐出可能に設置されている。つまり、インクジェットヘッド20は、インクを吐出するための複数のノズル48(図4参照)が開口するノズル開口面49(図4参照)を有しているが、このノズル開口面49を下側に向けた状態としてキャリッジ4に搭載されている。
【0023】
インクジェットプリンタ1により実行される動作内容に従って、キャリッジ4の可動範囲を概ね走査方向一方側の印刷領域と、他方側のメンテナンス領域とに分けることができる。そのうち印刷領域の下方では、図示しない搬送機構によって被記録媒体たる用紙(図示せず)が走査方向と直交する略水平の搬送方向に搬送される。インクジェットプリンタ1は、キャリッジ4をこの印刷領域で往復させながらインクジェットヘッド20よりインクを下向きに吐出し、吐出したインクを搬送中の用紙の適宜箇所に着弾させることにより、用紙に画像や文字を記録する印刷動作を実行することができる。
【0024】
メンテナンス領域の下方では、ワイパー12及びキャップ13を備えたメンテナンスステーション11が配設されている。ワイパー12は、キャリッジ4がメンテナンス領域内で移動するときにインクジェットヘッド20のノズル開口面49(図4参照)に接触し、これによりノズル開口面49に付着したインクを拭うワイピング動作が実行される。
【0025】
キャップ13はゴム等の弾性材から皿状に形成されて上側に開口するよう配置され、その上部には略矩形枠状に突出するリップ部14が形成されている。キャップ13は上下に昇降可能に設けられていて通常は下側で退避している。必要に応じて、キャリッジ4はインクジェットヘッド20のノズル開口面49(図4参照)がキャップ13と上下に対向する位置で停止する。この状態でキャップ13が上動すると、リップ部14が下側からノズル開口面49に密着してリップ部14の内側にノズル48(図4参照)の開口が封止される。リップ部14の内側の空間には管15を介してポンプ16が接続されており、この封止の状態でポンプ16が駆動されるとリップ部14の内側の空間に負圧が印加される。この負圧の印加により、インクジェットヘッド20内のインクがノズル周辺で乾燥したインク滓などとともに強制的に吸引され、また、インクジェットヘッド20内に侵入したエアがインクとともに排出される。この動作はパージ動作とも呼ばれており、インクジェットプリンタ1は、これらワイピング動作やパージ動作を実行することによって印刷精度を維持又は回復可能になっている。
【0026】
[インクジェットヘッド]
以下、インクジェットヘッドについて複数の実施形態を説明するが、各実施形態のインクジェットヘッドは前述したインクジェットプリンタ1にそれぞれ好適に適用される。前述したインクジェットプリンタ1はインクジェットヘッドを走査する方式として所謂シリアル方式を採用し、インクカートリッジからインクジェットヘッドにインクを供給する方式として所謂チューブ供給方式を採用しているが、各実施形態に係るインクジェットヘッドは他の方式を採用したプリンタにも適用可能である。
【0027】
[第1実施形態]
図2は本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッド20の分解斜視図である。図2に示すように、インクジェットヘッド20は、複数枚のプレートが積層された流路ユニット21に圧電式のアクチュエータ22を積層接着してなり、これら流路ユニット21及びアクチュエータ22はそれぞれ平面視で略矩形状に形成されている。
【0028】
なお、以下の説明では、この略矩形をなす長辺の延在方向を「X方向」、短辺の延在方向でありX方向に直交する方向を「Y方向」としている。また、インクは、プレートの積層体である流路ユニット21の外面から直交する方向、言い換えるとX及びY方向に直交する方向となるプレート積層方向のうち一側に向けて吐出されるが、以下の説明では図1に例示したプリンタへの搭載状態に基づき、プレート積層方向を「上下方向」、インクの吐出方向を「下方」としている。
【0029】
アクチュエータ22は流路ユニット21に対して上側から重ねて接合される。アクチュエータ22の上面には表面電極24が形成されており、外部機器との電気的接続を行うためのフレキシブルフラットケーブル23が上側から重ねて接合される。このフレキシブルフラットケーブル23の下面には端子(図示せず)が露出しており、接合時にこの端子がアクチュエータ22の表面電極24に電気的に導通される。
【0030】
図2に示すように、流路ユニット21はアクチュエータ22よりも平面視での外形状が大きく、インクジェットヘッド20は、流路ユニット21にアクチュエータ22を重ねたときに流路ユニット21の上面のうちX方向一方側の領域を外部に露出させるように構成される。この露出領域にはY方向に並ぶ4個のインク流入口25が形成されており、各インク流入口25には、インクカートリッジ9(図1参照)の一つが接続される。流路ユニット21の上面には各インク流入口25を覆うフィルタ26が設けられており、各インクカートリッジ9内のインクは、このフィルタ26で濾過された後に対応するインク流入口25に供給される。
【0031】
各インク流入口25は、流路ユニット21内に形成されるインク流路41(図3参照)を介し、流路ユニット21の下面に開口する複数のノズル48(図3参照)と連通している。Y方向他方側の端部に配置されたインク流入口25には2系統のインク流路が連通し、他のインク流入口25の各々には1系統のインク流路が連通しており、この流路ユニット21内には合計5系統のインク流路が形成されている。
【0032】
流路ユニット21の上面には多数の圧力室孔27が形成されている。各圧力室孔27は、Y方向が長手方向となる矩形状に形成されており、アクチュエータ22の下面で塞がれることによってインク流路41(図3参照)の一部である圧力室45(図3参照)を構成する。これら多数の圧力室孔27はX方向に配列された複数の圧力室孔群28を形成している。これら圧力室孔群28はインク流路41の各系統に対応し、ここでは5つの圧力室孔群28が設けられている。各圧力室孔群28は、複数の圧力室孔27AがX方向に等間隔をおいて配列されてなる第1圧力室孔列29と、この第1圧力室孔列29に対してY方向他方側に近接して設けられ、複数の圧力室孔27BがX方向に等間隔をおいて配列されてなる第2圧力室孔列30とを有し、第1圧力室孔列29を構成する圧力室孔27Aと第2圧力室孔列30を構成する圧力室孔27Bとは千鳥状に配列される。この「千鳥状に配列する」とは、一方の圧力室孔列を構成する圧力室孔のうちX方向に隣り合う2つの圧力室孔の各中心線A1,A1の間に、他方の圧力室孔列を構成する圧力室孔の中心線A2を配置することであり、この「中心線」は、各圧力室孔列29,30の配列方向であるX方向に関する圧力室孔27の中心線である。ここでは2つの圧力室孔列29,30の偏りのない千鳥配列を実現するため、上記各中心線A1,A1の中間を通る中心線A1′が上記中心線A2と一致するようにして各圧力室孔列29,30が設けられている。
【0033】
図3は図2に示すインクジェットヘッド20を組付状態としてIII−III線に沿って切断して示すインクジェットヘッド20の部分縦断面図である。図3に示すように、流路ユニット21は上から順に、圧力室プレート31、第1接続流路プレート32、第2接続流路プレート33、第1マニホールドプレート34、第1ダンパープレート35、第2ダンパープレート36、第2マニホールドプレート37、カバープレート38、及びノズルプレート39を積層接着した構成となっている。ノズルプレート39はポリイミド等の樹脂シートであり、それ以外の各プレート31〜38は42%ニッケル合金鋼板(42合金)やステンレス等の金属板であり、各々50〜150μm程度の肉厚を有している。
【0034】
各プレート31〜39には、電解エッチング、レーザ加工、プラズマジェット加工等によって開口や凹部が形成されている。各プレート31〜39が積層されるとこれら開口や凹部が互いに連通し、流路ユニット21には、インク流入口25(図2参照)及びノズル48を接続するインク流路41が形成される。
【0035】
前述したインク流入口25(図2参照)及び多数の圧力室孔27は、最上層の圧力室プレート31に形成されている。そのうち各圧力室孔27は、圧力室プレート31を貫通して形成され、直下に配される第1接続流路プレート32によってその下側開口が閉鎖され、流路ユニット21に上側からアクチュエータ22を重ねるとアクチュエータ22の下面によりその上側開口が閉鎖される。これにより流路ユニット21には、インク流路41の一部をなす多数の圧力室45が構成される。これら圧力室45は、前述した多数の圧力室孔27によって構成されるため、前述同様に千鳥状に配列されることとなる。なお、インク流路41の他の要素(インク導入流路42、共通インク室43、接続流路44、及びディセンダ46)については後述する。
【0036】
ノズル48は最下層のノズルプレート39に貫通形成されている。ノズルプレート39の下面は、流路ユニット21の下面であってインクジェットヘッド20の下面となり、ノズル48の下端が開口するノズル開口面49をなしている。
【0037】
図4は図3のIV−IV線に沿って示すインクジェットヘッド20の底面図である。図4に示す多数のノズル48は、各圧力室45(図3参照)の略直下に個別対応して設けられている。つまり、これら多数のノズル48はX方向に配列された5つのノズル群50を形成し、各ノズル群50は5系統のインク流路41(図3参照)の夫々に対応する。各ノズル群50は、複数のノズル48AがX方向に等間隔をおいて配列されてなる第1ノズル列51と、この第1ノズル列51に対してY方向他方側に近接して設けられ、複数のノズル48BがX方向に等間隔をおいて配列されてなる第2ノズル列52とを有している。このように各インク流路41に対して2列のノズル列51,52が設けられており、第1ノズル列51を構成するノズル48Aと、第2ノズル列52を構成するノズル48Bとは前述同様に千鳥状に配列されている。この配列により各ノズル群50が全体としてその解像度を向上させることができる。
【0038】
図3に戻ると、アクチュエータ22は、1枚の厚さが略30μm程度のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなる多数枚の圧電シート61〜66と、絶縁性を有するトップシート67とが上下に積層接着された構成となっている。各圧電シート61〜66のうち下から数えて奇数番目の圧電シート61,63,65の上面には、圧力室45の全てに対応して連続配置された共通電極68が印刷形成され、各圧電シート61〜66の下から数えて偶数番目の圧電シート62,64の上面には各圧力室44に個別に対応して配置された複数の個別電極69が印刷形成されている。共通電極68は、圧電シート61〜66及びトップシート67に設けられた中継配線(図示せず)を介して最上層のトップシート67の上面に印刷形成された表面電極24(図2参照)のうちの共通用表面電極24a(図2参照)に電気的に導通されている。各個別電極69も同様の中継配線(図示せず)を介して表面電極24(図2参照)のうち個別用表面電極24b(図2参照)に電気的に導通されている。図2を参照すると、共通用表面電極24aはトップシート67の上面においてX方向一方側の端部をY方向に延在している。複数の個別用表面電極24bは圧力室孔27と同様にして千鳥状に配列されている。
【0039】
上記構成のインクジェットヘッド20において、フレキシブルフラットケーブル23(図2参照)を介してアクチュエータ22の個別電極69に選択的に電圧が印加されると、この個別電極69と共通電極68との間には電位差が生じ、これら電極68,69間に位置する圧電シート61〜66の活性部が分極方向(すなわち略積層方向)に歪み変形する。この活性部の変形により、電圧が印加された個別電極69に対応する圧力室45に圧力波が作用し、圧力が付与されたインクがノズル48より下方に噴射される。
【0040】
次に、図3乃至図6に基づいて各プレート31〜39とインク流路41を詳細に説明する。5系統のインク流路41のうちY方向他方側の端部に配置された系統のうちの1つを代表して説明するが、他の系統も同様の構成となっている。図5は図3と同様にして図2のV−V線に沿って切断して示すインクジェットヘッド20の部分縦断面図、図6は図3乃至図5に示すVI−VI線に沿って切断して示すインクジェットヘッド20の横断面図である。
【0041】
図3乃至図6に示すインク流路41は上流側から順に、インク導入流路42(図4及び図6参照)、共通インク室43(図3乃至図6参照)、接続流路44(図3,図5及び図6参照)、前述した圧力室45(図3及び図5参照)、及びディセンダ46(図3及び図5参照)を有している。インク流路41の各系統には、前述した第1及び第2ノズル列51,52(図4参照)をなす複数のノズル48(図3乃至図5参照)が対応して設けられており、またインク導入流路42及び共通インク室43が単一のものとなっている。接続流路44、圧力室45及びディセンダ46は、この単一の共通インク室43から各ノズル48にインクを供給する個別流路47を構成し、個別流路47は第1及び第2ノズル列51,52をなす複数のノズル48に個別対応して設けられている。
【0042】
図6を参照すると、インク導入流路42は、圧力室プレート31から第2接続流路プレート33までの各プレートのX方向一方側の端部に形成された貫通孔31a,32a,33aが互いに上下に連通することにより構成される。圧力室プレート31の貫通孔31aの上側開口がインク流入口25を形成し、インク導入流路42はこのインク流入口25から下側へと延びている。圧力室プレート31には上面に開口するインク流入口25を覆うようにフィルタ26が接着貼付されている。
【0043】
共通インク室43は、第2接続流路プレート33からカバープレート38までが積層されると構成され、インク導入流路42から見てY方向他方側に延在する上流領域53と、上流領域53のX方向他方側の端部からX方向一方側に向かって折り返すようにしてX方向に延在する下流領域54とを有している。また、この共通インク室43が全体的に一方通行の折返し構造をなすよう、共通インク室43は、上流領域53と下流領域54のX方向他方側の各端部を互いに接続する折返し領域55を有している。
【0044】
具体的には、第1マニホールドプレート34にはX方向に延在する第1マニホールド孔34aが貫通形成され、第2マニホールドプレート37にも同様の第2マニホールド孔37aが貫通形成されている。第1及び第2マニホールドプレート34,37の上下間に介在する第1及び第2ダンパープレート35,36には、X方向他方側の端部において連通孔35a,36aが貫通形成されている。
【0045】
上流領域53は、第1マニホールド孔34aの上側開口が第2接続流路プレート33によって閉鎖され、その下側開口が第1ダンパープレート35によって閉鎖されることによって構成されている。第1マニホールド孔34aの上側開口は、X方向一方側の端部において第2接続流路プレート33の貫通孔33aと連通しており、上流領域53はX方向一方側の端部においてインク導入流路42と連通する。また、下流領域54は、第2マニホールド孔37aの上側開口が第2ダンパープレート36によって閉鎖され、その下側開口がカバープレート38によって閉鎖されることによって構成される。第1マニホールド孔34aの下側開口は、X方向他方側の端部において第1ダンパープレート35の連通孔35aに連通しており、第2マニホールド孔37aの上側開口は、X方向他方側の端部において第2ダンパープレート36の連通孔36aに連通している。第1及び第2ダンパープレート35,36の各連通孔35a,35bは、プレートの積層時に互いに上下に連通し、これら連通孔35a,36aにより上流領域53及び下流領域54を互いに連通させる折返し領域55が構成される。
【0046】
上流領域53と下流領域54とは上下に互いに離れて配置され、折返し領域55はこれら上流領域53及び下流領域54の上下間を延在している。また、第2マニホールド孔37aは第1マニホールド孔34aと同様にして形成されていることから、下流領域54の末端部(X方向の一方側の端部)は、上流領域53の下側においてインク導入流路42と平面視で重なる位置まで延びている(図4及び図6参照)。
【0047】
第1及び第2ダンパープレート35,36は上流領域53及び下流領域54を積層方向に仕切る仕切プレート40として機能している。図3乃至図5を併せて参照すると、そのうち第1マニホールドプレート34と接する第1ダンパープレート35には、下面側をハーフエッチングして凹部35bが形成されている。この凹部35bは、連通孔35aの形成部位を除くと、平面視で第1マニホールド孔35aとほぼ重なる。第2マニホールドプレート37と接する第2ダンパープレート36にも上面側から同様の凹部36bが形成されている。
【0048】
第1及び第2ダンパープレート35,36が互いに積層されると互いの凹部35b,36bの開口が閉鎖される。すると、上流領域53を区画する底壁は第1ダンパープレート35により構成されるが、この壁が凹部35bの形成により薄肉となった第1ダンパー壁57となる。同様にして、下流領域54を区画する上壁は第2ダンパープレート36の凹部36bの形成により薄肉となった第2ダンパー壁58となる。
【0049】
図3に戻ると、インクを吐出すべくアクチュエータ22が駆動して圧力室45に圧力波が作用したときには、この圧力波が圧力室45に対して上流側となる共通インク室43に伝播する場合がある。これにより共通インク室43の内圧が上昇することがあっても、各ダンパー壁57,58が弾性変形して圧力波を減衰することができる。このため、この圧力波の後退成分が共通インク室43を介して他のノズルに対応する個別流路に伝播する現象である所謂クロストーク現象を抑制することができる。
【0050】
また、本構成例においては、共通インク室43が折返し領域55を介して折り返し構造となっており、共通インク室43内のインクは、上流領域53の末端を区画する側壁に衝突するように流れ、さらに折返し領域55へ導かれて下流領域54へと折り返すよう流れていく。このようにすると、インクの吐出時に共通インク室43内に圧力波が伝播しても、この圧力波を分散することができるようになる。
【0051】
なお、図2のIII−III線、V−V線が表すとおり、図3には第1圧力室孔列29をなす圧力室孔27Aの縦断面が示され、図5には第2圧力室孔列30をなす圧力室孔27Bの縦断面が示されている。以下では、図3に示すものと図5に示すものとを特に区別する場合には、図3に示す第1圧力室孔列29により構成される圧力室を第1圧力室45A、これを含む個別流路を第1個別流路47A、これに繋がる接続流路及びディセンダを第1接続流路44A及び第1ディセンダ46Aと呼び、図5に示す第2圧力室孔列30により構成される圧力室を第2圧力室45B、以下同様にして第2個別流路47B、第2接続流路44B、第2ディセンダ46Bとそれぞれ呼んで説明する。
【0052】
図3に示す第1接続流路44Aは、第1接続流路プレート32から第2マニホールドプレート37までの各プレートに形成された孔32c,33b,34b,35c,36cや凹溝32b,37bが互いに連通してなり、図5に示す第2接続流路44Bは、第1接続流路プレート32から第1マニホールドプレート34までの各プレートに形成された孔32e,33cや凹溝32d,34cが連通してなる。なお、図3及び図5の各凹溝32b,32d,34c,37bはそれぞれハーフエッチングにより形成されている。
【0053】
図3を参照すると、第2マニホールドプレート37の上面には、第2マニホールド孔37aからY方向他方側に延びる凹溝37bが開口している。第2接続流路プレート33から第2ダンパープレート36までの各プレートには互いに上下に連通する貫通孔33b,34b,35c,36cが形成され、凹溝37bは第2ダンパープレート36の貫通孔36cに連通している。第1接続流路プレート32の下面にはY方向に延びる凹溝32bが開口しており、この凹溝32bは、Y方向他方側の端部において第2接続流路プレート33の貫通孔33bと連通し、Y方向一方側の端部において第1接続流路プレート32に形成された貫通孔32cと連通している。この貫通孔32cは第1圧力室44Aを構成する圧力室孔27Aの下側開口に連通している。このように第1接続流路44Aは共通インク室43の下流領域54と第1圧力室45Aとを接続している。
【0054】
図5を参照すると、第1マニホールドプレート34の上面には第1マニホールド孔34aからY方向一方側に延びる凹溝34cが開口している。第2接続流路プレート33には貫通孔33cが形成されており、第1マニホールドプレートの凹溝34cの上側開口はY方向一方側の端部においてこの貫通孔33cと連通している。第1接続流路プレート32の下面にはY方向に延びる凹溝32dが開口しており、この凹溝32bは、Y方向一方側の端部において第2接続流路プレート33の貫通孔33cと連通し、Y方向他方側の端部において第1接続流路プレート32に形成された貫通孔32eと連通している。この貫通孔32eは第2圧力室44Bを構成する圧力室孔27Bの下側開口に連通している。このように第2接続流路44Bは共通インク室43の上流領域53と第2圧力室45Bとを接続している。
【0055】
また、図3に示す第1ディセンダ46Aは第1圧力室44Aと第1ノズル列51をなすノズル48Aとを接続し、図5に示す第2ディセンダ46Bは第2圧力室44Bと第2ノズル列52をなすノズル48Bとを接続している。これらディセンダ46はそれぞれ、第1接続流路プレート32からカバープレート38までの各プレートに形成された貫通孔32f,33d,34d,35d,36d,37c,38aが互いに上下に連通してなる。ディセンダ46の上流端をなす第1接続流路プレート32の貫通孔32aは圧力室孔27の下側開口と連通し、ディセンダ46の下流端をなすカバープレート38の貫通孔38aはノズル48の上側開口と連通している。ディセンダ46は、圧力室45を介して連通している接続流路44とY方向に関して反対側に配置されている。
【0056】
図6を参照すると、第1個別流路47Aの上流端は、下流領域54をなす第2マニホールド孔37aの側面にX方向に配列された状態で開口し、第2個別流路47Bの上流端は、上流領域53をなす第1マニホールド孔34aの側面に同様にして開口している。例えばX方向一方側の末端に位置する第1個別流路47Aは、図4に示す第1ノズル列51をなすノズル48AのうちX方向一方側の末端に位置するノズル48Aに対応し、X方向一方側の末端に位置する第2個別流路47Bは、図4に示す第2ノズル列52をなすノズル48BのうちX方向一方側の末端に位置するノズル48Bに対応している。例示した2つのノズル48A,48Bは、千鳥配列により、Y方向に分かれて配置されているもののX方向に関して互いに隣接した関係にある。
【0057】
前述したように共通インク室43は、それぞれノズル48の配列方向であるX方向に延在する上流領域53及び下流領域54を有した折返し構造となっている。このため、X方向に隣接する2つのノズルへインクを送る個別流路47を共通インク室43に連通させるに際し、2つの個別流路47(47A、47B)の開口を、X方向に近接させつつも共通インク室43の流路構造の観点からいえば互いに離れた箇所に配置することができる。
【0058】
このため、これら隣接する2つのノズルのうち一方のノズルからインクを吐出するために該ノズルに対応する圧力室内のインクに圧力波を作用させた場合に、その後退成分が接続流路を介して共通インク室に伝播しても、これが他方のノズルに対応する個別流路に伝播しにくくなる。このように、本実施形態によれば、隣接した2つのノズルに対応する2つの個別流路をX方向に簡単に近接させることができるとともに、これら隣接するノズル間で生じうるクロストーク現象を効果的に抑制することができる。
【0059】
図4及び図6に示すように、この流路ユニット21のインク流路41には、インク供給口25を通じてインクとともにインク流路41内に侵入したエアの排出性能を高めるため、個別流路47とは独立した排気用のダミー流路59が設けられている。ダミー流路59は、共通インク室43に連通し(図6参照)、ノズル開口面49に開口している(図4参照)。本実施形態では2つのダミー流路59が設けられている。
【0060】
図7は図4及び図6のVII−VII線に沿って切断して示すインクジェットヘッド20の部分縦断面図、図8は図4及び図6のVIII−VIII線に沿って切断して示すインクジェットヘッド20の部分縦断面図である。以下では、2つのダミー流路を特に区別する場合、図7に示すものを第1ダミー流路59A、図8に示すものを第2ダミー流路59Bと呼んで説明している。
【0061】
図7を参照すると、第2マニホールドプレート37には、第2マニホールド孔37aの側面から、第1ノズル列51(図4参照)が配置されている側であるY方向一方側に延びる貫通孔37dが形成されており、この貫通孔37dのY方向一方側の端部には、カバープレート38に形成された貫通孔38bの上側開口が上下に連通しており、この貫通孔38bの下側開口はノズルプレート39に形成されたダミーノズル39aの上側開口に連通している。ダミーノズル39aの下端はノズル開口面49に開口している。第1ダミー流路59Aは、これら貫通孔37d,38b及びダミーノズル39aが互いに連通してなり、共通インク室43に対してY方向一方側に配置されている。
【0062】
図8を参照すると、第2ダミー流路57Bは、第1ダミー流路とY方向に関して対称に、第2ノズル列52(図4参照)が配置されている側に配置されており、第2マニホールドプレート37に形成された貫通孔37e、カバープレート38に形成された貫通孔38c、及びノズルプレート39に形成されたダミーノズル39bが互いに連通してなる。
【0063】
図6に示すように、第1及び第2ダミー流路59A,58Bは何れも共通インク室43の下流領域54の末端部、すなわちX方向一方側の端部に連通している。前述したように、第2ノズル列52(図4参照)をなすノズル48B(図4参照)は、第1ノズル列51(図4参照)をなすノズル48A(図4参照)に対してX方向一方側に配置されており、この第2ノズル列52と同じ側に配置された第2ダミー流路59Bは、第1ダミー流路59Aに対してX方向一方側に配置されている。このため、第1及び第2ダミー流路59A,58Bにおいて下向きに延びる流路部分をX方向に傾斜させる必要がなく、各ダミー流路59A,58Bの流路構造を簡単にすることができる。
【0064】
図4に示すように、第1ダミー流路59Aは、2つのノズル列51,52のうちY方向一方側に配置された第1ノズル列51に隣接して配置され、第2ダミー流路59Bは、Y方向他方側に配置された第2ノズル列52に隣接して配置されている。第1ダミー流路59Aの開口は、第1ノズル列51をなすノズル48Aのうち、X方向一方側の末端に位置するノズル48Aに対し、更にX方向一方側に配置されている。第2ダミー流路59Bの開口は、第2ノズル列52をなすノズル48Bのうち、X方向一方側の末端に位置するノズル48Bに対し、更にX方向一方側に配置されている。
【0065】
この末端に位置するノズル48Aの開口と第1ダミー流路59Aの開口との間隔は、第1ノズル列51をなすノズル48A同士の間隔とほぼ等しく、第1ダミー流路59Aの開口は、第1ノズル列51をなすノズル48AとともにX方向に配列された開口列を形成している。第2ダミー流路59Bについても同様であり、その開口は、第2ノズル列52をなすノズル48BとともにX方向に配列された開口列を形成している。このように、ノズル開口面49にはノズル48と共にダミー流路59A,58Bが開口しているため、流路ユニット21を構成すべくプレートを積層接着する前段階においてノズルプレート39には、ノズル48と共にこれらダミーノズル39a,39bを形成するためのレーザ加工が施される。前述したように第1及び第2ダミー流路59A,58Bの開口を、第1及び第2ノズル列51,52の開口とともに開口列をなすよう配置しているため、第1及び第2ダミー流路59A,58Bの開口を形成するためだけにレーザの射出回数を増加させる必要がなく、流路ユニット21の製造工程が複雑化するのを避けることができる。なお、この作用を奏するには、レーザの射出面積の範囲内であれば、必ずしもダミーノズルが前述したようにノズル列をなすノズルとともに開口列をなすよう配置されている必要はなく、ノズル列の列方向から僅かに外れて配置されていてもよい。
【0066】
図4には、インクジェットヘッド20を図1のインクジェットプリンタ1に搭載してパージ動作を実行する場合に、リップ部14が密着する箇所が二点鎖線で示されている。パージ動作を適切に実行するには、リップ部14が、ノズル48及びダミー流路59の全開口が配置される領域の外側であって、ノズル開口面49の外形輪郭形状よりも内側に当接する必要がある。従来、図17に示すように、ダミー流路906の開口がX方向他方側に配置されており、ノズル開口面902には、複数のノズル903のうちX方向他方側の末端に位置するノズル903aから見てX方向他方側の領域に、ダミー流路906の開口を配置するためのスペースと、リップ部910を密着させるスペースとが確保されている。
【0067】
本実施形態では、ダミー流路59の開口がX方向一方側に配置されているため、ノズル開口面49のX方向他方側の領域から、ダミー流路59の開口を配置するためのスペースを省略可能となる。また、従来、図17に示すように、ノズル開口面902においては、インク導入流路904の直下の領域がデッドスペースとなっており、元々ダミー流路906の開口を配置するだけのスペースが十分に確保されている。これは、従来の共通インク室905が、図18に示すようにインク導入流路904から一方向へと延在するだけの構造であったことに起因する。また、圧力室プレート31のインク導入流路904上にはフィルタを接着貼付させるために、インク導入流路904周辺には余肉面積が必要であり、ノズル開口面902のうちこの部分と平面視で重なる領域がデッドスペースと化していた。
【0068】
従って、ダミー流路59の開口の配置をインク導入流路42が配置されたX方向一方側に転換するに際しては、ノズル開口面49をX方向一方側に大型化する必要はなく、このデッドスペースを利用すればよい。そして、ノズル開口面49に対するリップ部14の密着箇所を、ダミー流路59の開口を配置するためのスペース分だけ、X方向一方側に相対的に変位させるとよい。この結果として、ノズル開口面49を、X方向他方側の領域に確保されていたダミー流路の配置スペース分だけ、ノズル48の配列方向であるX方向に小型化することができるようになる。
【0069】
また、インク供給口25からインク流路41内に侵入したエアは、共通インク室43内をインクとともに下流側へと流れていく傾向にあり、下流領域54の末端部に溜まりやすい。ダミー流路59がこのような下流端部54の末端部に連通しているため、ダミー流路59による排気性能がよくなる。
【0070】
そして、共通インク室43はインク導入流路42から見てX方向他方側に延在したのち再びX方向一方側へ向かって折り返すよう構成され、下流領域54の末端部がX方向一方側に配置されている。このため、下流領域54の末端部に連通するダミー流路59をX方向一方側で開口させるにあたって、ダミー流路59を斜めに延びるよう形成する等構造を複雑にする必要がなく、また、ダミー流路59と個別流路47との干渉を容易に避けることができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、上流領域53が下流領域54に対して上側に配置され、インク導入流路42がこの上流領域53に対して上側に延びている。このため、下流領域54をインク導入流路42と平面視で重なる位置まで延在させることができ、上記デッドスペースを有効活用したダミー流路59の配置が容易になる。従って、ノズル開口面49のX方向一方側に特別にスペースを確保することなく、複数のダミー流路59を配置することもできる。このように複数のダミー流路59を設けておけば、ある一つのダミー流路がインクの乾燥により目詰まりするような状況となっても、残りのダミー流路を利用してエアを排出可能な状況を保つことが可能となることから、パージ動作の信頼性が向上する。本実施形態によれば、この信頼性が向上したインクジェットヘッドをX方向に小型化した上で実現することができるようになる。
【0072】
[第2実施形態]
図9は本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッド120の横断面図である。このインクジェットヘッド120は、第1実施形態に対して共通インク室の構造が相違している。以下では第1実施形態と同一の構成には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0073】
図9に示すように、インクジェットヘッド120の流路ユニット121は上側から順に、圧力室プレート31、第1接続流路プレート32、第2接続流路プレート33、第2マニホールドプレート137、第2ダンパープレート136、第1ダンパープレート135、第1マニホールドプレート134、カバープレート38、及びノズルプレート39を積層接着して構成されている。
【0074】
流路ユニット121の内部にはインク流路141が形成されている。インク導入流路142は、圧力室プレート31から第1ダンパープレート135までの各プレートに形成された貫通孔31a,32a,33a,137f,136e,135eが互いに上下に連通してなり、インク供給口25から下方に延びている。共通インク室143は、X方向他方側の端部の折返し領域155において、上下に互いに離れて配置された上流領域153及び下流領域154の間を接続した構成であり、全体として一方通行の折返し構造をなしている。下流領域154は上流領域153に対して上側に配置されている。
【0075】
第1及び第2マニホールドプレート134,137には、X方向に延在する第1及び第2マニホールド孔134a,137aが夫々貫通形成されているが、X方向一方側の端部の位置が互いに相違している。すなわち、第2マニホールド孔137aにおいては、インク導入流路142を構成する貫通孔137fと干渉しないよう、当該端部が貫通孔137fに対してX方向他方側に位置しており、第1マニホールド孔134aにおいては、当該端部がインク導入流路142を構成する貫通孔135eと平面視で重なる位置まで延在している。上流領域153は、第1マニホールド孔134aの上側開口が第1ダンパープレート135によって閉鎖され、その下側開口がカバープレート138によって閉鎖されることによって構成される。第1マニホールド孔134aの上側開口は第1ダンパープレート135の貫通孔135eと連通し、上流領域153はX方向一方側の端部においてインク導入流路142と連通する。下流領域154は、第2マニホールド孔137aの上側開口が第2接続流路プレート33によって閉鎖され、その下側開口が第2ダンパープレート136によって閉鎖されることによって構成されている。第1マニホールド孔134aの上側開口はX方向他方側の端部において第1ダンパープレート135の連通孔135aに連通し、第2マニホールド孔137aの下側開口はX方向他方側の端部において第2ダンパープレート136の連通孔136aに連通している。第1及び第2ダンパープレート135,136の各連通孔135a,135bはプレート積層時に互いに上下に連通し、これら連通孔135a,136aにより上流領域153及び下流領域154を互いに連通させる折返し領域155が構成される。
【0076】
第1及び第2ダンパープレート135,136は上流領域153及び下流領域154を積層方向に仕切る仕切プレート140として機能しており、第1実施形態と同様にこの仕切プレート140に薄肉で弾性変形可能な第1及び第2ダンパー壁157,158を集約的に配置している。第1ダンパープレート135には、上流領域153の上壁が第1ダンパー壁157を構成するよう上面側から凹部135bが形成され、第2ダンパープレート136には、下流領域154の底壁が薄肉の第2ダンパー壁158を構成するよう下面側から凹部136bが形成されている。
【0077】
本実施形態では、第1及び第2ダンパープレート135,136にもインク導入流路142を構成する貫通孔135e,136eが形成されているため、凹部135b,136bのX方向一方側の端部は、これら貫通孔135e,136eとの干渉を避けるため、これら貫通孔135e,136eに対してX方向他方側に位置している。
【0078】
本実施形態のノズル開口面は図4に示す第1実施形態とほぼ同様の構成であり、上流領域153には第1ノズル列51(図4参照)をなすノズル48A(図4参照)に対応する第1個別流路147Aが連通し、下流領域154には第2ノズル列52(図4参照)をなすノズル48B(図4参照)に対応する第2個別流路147Bが連通しており、第1実施形態と同様クロストーク現象の緩和が図られている。なお、第1及び第2個別流路147A,147Bの断面形状は、図3及び図5に示す第1実施形態と概ね同様であるため、その詳細説明と図示を省略する。
【0079】
図9に示すように、共通インク室143には2つのダミー流路159A,159Bが連通している。なお、ダミー流路159A,159Bの断面形状は、図7及び図8に示す第1実施形態に対し、仕切プレート140にもダミー流路用の貫通孔を形成する必要がある点を除けば概ね同様であるため、その詳細説明と図示を省略する。第1及び第2ダミー流路159A,159Bは、X方向一方側に向かって延在する共通インク室143の下流領域154の末端部に連通しており、その開口は、第1実施形態と同様にして第1及び第2ノズル列51,52(図4参照)のそれぞれX方向一方側の末端に位置するノズル48A,48B(図4参照)に対して更にX方向一方側に配置されている。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様、ダミー流路による排気性能を損なわずダミー流路と個別流路との干渉を避けやすい構成とした上で、ダミー流路を有したインクジェットヘッドをノズル配列方向に小型化することができる。
【0080】
図6及び図9を参照すると、第1及び第2実施形態はいずれも、折返し構造の共通インク室の上流領域及び下流領域が上下に離れて配置され、インク導入流路が上流領域に対して上方に延び、排気用のダミー流路がエアの溜まりやすい下流領域の末端部に連通している。前述したように図6に示す第1実施形態では、上流領域53の下側に配置した下流領域54の末端部をインク導入流路42の下側まで延在可能となり、ダミー流路59の配置自由度が高くなる。他方、図9に示す第2実施形態では、下流領域153を上流領域154の上側に配置しているため、インクともに上流領域153を経て折返し領域155に達したエアが鉛直上側の下流領域154へと導かれやすくなり、ダミー流路159による排気性能が更に高くなる。このことは、第1実施形態を後述する第3実施形態と置き換えたり、第2実施形態を後述する第4実施形態と置き換えたりしても同様である。
【0081】
また、第1及び第2実施形態はいずれも、上下に延びるインク導入流路の下端部に接続された共通インク室がノズル配列方向に沿って延びる上流領域と、インク導入流路側に向かって折り返すようにして延びる下流領域とを有し、これら領域が仕切プレートを介して上下に離れて配置され、この仕切プレートに各領域の上壁又は下壁を構成する薄肉の2つのダンパー壁を集約的に配置している。第1実施形態では、上流領域53を下流領域54の上側に配置したため、仕切プレート40をインク導入流路42の下側に配置することによってダンパー壁57,58をインク導入流路42と干渉させずに共通インク室43に沿って設けることができる。このため、共通インク室43の流路長に対するダンパー壁57,58の面積が大きく確保され、共通インク室43に伝播した圧力波の減衰効果が高くなる。
【0082】
[第3実施形態]
図10は本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッド220の横断面図である。このインクジェットヘッド220は、第1実施形態に対してダンパー壁の配置が相違しており、ダミー流路及び接続流路の共通インク室に対する連通部位や、ノズル開口面上におけるダミー流路の開口とノズルの配置関係などは第1実施形態と同様である。以下では上記各実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその詳細説明を省略する。
【0083】
図10に示すように、このインクジェットヘッド220の流路ユニット221は上側から順に、圧力室プレート31、第1接続流路プレート32、第2接続流路プレート33、第1ダンパープレート235、第1マニホールドプレート34、仕切プレート240、第2マニホールドプレート37、第2ダンパープレート236、カバープレート38、及びノズルプレート39を積層接着して構成されている。
【0084】
流路ユニット221の内部にはインク流路241が形成されている。インク導入流路242は、圧力室プレート31から第1ダンパープレート235までの各プレートに形成された貫通孔31a,32a,33a,235eが互いに上下に連通することにより構成され、インク供給口25から下方に延びている。共通インク室243は、第1実施形態と同様、第1マニホールド孔34aの上下の開口を閉鎖してなる上流領域253と、第2マニホールド孔37aの上下の開口を閉鎖してなる下流領域254とを有し、上流領域253が下流領域254の上側に配置されている。上流領域253と下流領域254のX方向他方側の各端部を接続する折返し領域255は、第1及び第2マニホールドプレート34,37の上下間に介在する仕切プレート240に形成された連通孔240aによって構成され、第1マニホールド孔34aの下側開口及び第2マニホールド孔37aの上側開口は、この仕切プレート140により夫々閉鎖されるとともに、連通孔240aを介して互いに連通している。
【0085】
第1マニホールド孔34aの上側開口は第1ダンパープレート235により閉鎖される。第1ダンパープレート235には上面側からハーフエッチングにより凹部235aが形成され、このため第1ダンパープレート235によって構成される上流領域253の上壁が、薄肉で弾性変形可能な第1ダンパー壁257となる。同様に、第2マニホールド孔37aの下側開口を閉鎖する第2ダンパープレート236には下面側から凹部236aが形成され、第2ダンパープレート236により構成される下流領域254の底壁が第2ダンパー壁258となる。凹部235a,236aのX方向他方側の端部は、仕切プレート240に形成された連通孔240aと平面視で重なる位置まで延在している。なお、本実施形態のノズル開口面は図4に示す第1実施形態とほぼ同様の構成であり、上流領域253には第1ノズル列51(図4参照)をなすノズル48A(図4参照)に対応する第1個別流路247Aが連通し、下流領域254には第2ノズル列52(図4参照)をなすノズル48B(図4参照)に対応する第2個別流路247Bが連通しており、第1実施形態と同様クロストーク現象の緩和が図られている。なお、第1及び第2個別流路247A,247Bの断面形状は、図3及び図5に示す第1実施形態と概ね同様であるため、その詳細説明と図示を省略する。
【0086】
図6及び図10を参照すると、第1及び第3実施形態はいずれも、上下に離れて配置された共通インク室の上流領域及び下流領域の夫々に関してその上壁又は底壁を薄肉のダンパー壁としており、これにより共通インク室がほぼ全体にわたってダンパー壁で区画されるようにして圧力波の減衰効果をなるべく高くしている。図6に示す第1実施形態では、仕切プレート40に本来の2つの領域を仕切る機能と2つのダンパー壁57,58を構成する機能とを併せ持たせているため、流路ユニット21の構成に必要なプレートの枚数が少なくなる。他方、図10に示す第3実施形態では、これら領域253,254を仕切る仕切プレート240側とは反対側にダンパー壁257,258を設けたため、仕切プレート240に形成される連通孔240aと干渉させずにダンパー壁257,258を共通インク室243に沿って設けることができる。このため、共通インク室243の流路長に対するダンパー壁257,258の面積が大きく確保され、共通インク室243に伝播した圧力波の減衰効果がより高くなる。このことは、第1実施形態を第2実施形態と置き換えたり、第3実施形態を後述する第4実施形態と置き換えたりしても同様である。
【0087】
[第4実施形態]
図11は本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッド340の横断面図である。このインクジェットヘッド340は、第2実施形態の共通インク室の流路構造と第3実施形態のダンパー壁の配置とを組み合わせたものであり、ダミー流路や個別流路の共通インク室に対する連通部位や、ノズル開口面上におけるダミー流路の開口とノズルの配置関係などは第2実施形態と同様である。以下では、上記各実施形態と同一の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0088】
図11に示すように、このインクジェットヘッド340は、流路ユニット321は上側から順に、圧力室プレート31、第1接続流路プレート32、第2接続流路プレート33、第2ダンパープレート336、第2マニホールドプレート137、仕切プレート340、第1マニホールドプレート134、第1ダンパープレート335、カバープレート38、及びノズルプレート39を積層接着して構成されている。
【0089】
流路ユニット321の内部にはインク流路341が形成されている。インク導入流路342は、圧力室プレート31から仕切プレート340までの各プレートに形成された貫通孔31a,32a,33a,336e,137f,340bが互いに上下に連通してなり、インク供給口25から下方に延びている。共通インク室343は、第1マニホールド孔134aの上下の開口が閉鎖されてなる上流領域353と、第2マニホールド孔137aの上下の開口が閉鎖されてなる下流領域354とを有し、下流領域354が上流領域353に対して上側に配置されている。折返し領域355は仕切プレート340に形成された連通孔340aにより構成され、上流領域353をなす第1マニホールド孔134aの上側開口と下流領域354をなす第2マニホールド孔137aとはこの連通孔340aを介して互いに上下に連通している。なお、本実施形態のノズル開口面は図4に示す第1実施形態とほぼ同様の構成であり、上流領域353には第1ノズル列51(図4参照)をなすノズル48A(図4参照)に対応する第1個別流路347Aが連通し、下流領域354には第2ノズル列52(図4参照)をなすノズル48B(図4参照)に対応する第2個別流路347Bが連通しており、第1実施形態と同様クロストーク現象の緩和が図られている。なお、第1及び第2個別流路347A,347Bの断面形状は、図3及び図5に示す第1実施形態と概ね同様であるため、その詳細説明と図示を省略する。
【0090】
第1マニホールド孔134aの下側開口は第1ダンパープレート335により閉鎖される。第1ダンパープレート335には下面側からハーフエッチングにより凹部335aが形成され、このため第1ダンパープレート335によって構成される上流領域353の底壁が、薄肉で弾性変形可能な第1ダンパー壁357となる。同様に、第2マニホールド孔137aの上側開口を閉鎖する第2ダンパープレート336には下面側から凹部336aが形成され、第2ダンパープレート336により構成される下流領域354の上壁が第2ダンパー壁358となる。凹部335a,336aのX方向他方側の端部は、仕切プレート340に形成された連通孔340aと平面視で重なる位置まで延在している。
【0091】
前述したとおり、本実施形態は、第2実施形態と同様の観点からダミー流路による排気性能がより高くなり、第3実施形態と同様の観点から圧力波の減衰効果がより高くなる。
【0092】
さらに、本実施形態においては、第1及び第2ダンパー壁357,358を仕切プレート240に対して反対側に設けているとともに、上流領域353を下流領域354に対して鉛直下側に配置しており、これにより上流領域353に対応する第1ダンパー壁357が平面視でインク導入流路342と重なる位置まで延在している。従って、インク導入流路342からのインクが共通インク室343へと導入される時点において、そのインクの圧力波を第1ダンパー壁357によって吸収されやすい。また、そのようなインクが上流領域353に折り返されて流動していくため、圧力波が分散される効果もあり、インク導入流路342に近い側の第1個別流路347Aに対する圧力変動が抑制されやすくなる。このように、インク導入時に発生し得る共通インク室343内の圧力変動の緩和に効果がある。
【0093】
[第5実施形態]
図12は本発明の第5実施形態に係るインクジェットヘッド420の底面図、図13は図12のXIII−XIII線に沿って切断して示すインクジェットヘッド420の部分縦断面図、図14は図12のXIV−XIV線に沿って切断して示すインクジェットヘッド420の部分縦断面図である。このインクジェットヘッド420は、第1乃至第4実施形態に対し、共通インク室の上流領域及び下流領域の配置関係が相違している。以下では上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその詳細説明を省略する。
【0094】
図13及び図14に示すように、流路ユニット421は上側から順に、圧力室プレート431、第1接続流路プレート432、第2接続流路プレート433、第1マニホールドプレート434、第2マニホールドプレート437、ダンパープレート435、カバープレート38、及びノズルプレート39を積層接着して構成されている。
【0095】
図12に示すように、本実施形態のノズル48は、図4に示した第1実施形態と概ね同様に、X方向に配列された第1及び第2ノズル列51,52をなすようにしてノズル開口面49に開口している。
【0096】
図12にはインク流路441の要素の一部としてインク導入流路442及び共通インク室443が平面視で投影されている。インク導入流路442は、第1実施形態と同様にして圧力室プレート431から第2接続流路プレート433までの各プレートに形成された貫通孔431a,432a,433aが互いに上下に連通することによって構成されている(図15,図16参照)。
【0097】
図13及び図14を参照すると、第1及び第2マニホールドプレート434,437には、略同一の形状の第1及び第2マニホールド孔434a,437aが夫々貫通形成されており、共通インク室443は第1マニホールド孔434aの上側開口が第2接続流路プレート33により閉鎖され、第2マニホールド孔437aの下側開口がダンパープレート435により閉鎖されることによって構成される。
【0098】
図12を参照すると、第1及び第2マニホールド孔434a,437aは全体としてU字状に形成され、インク導入流路42を構成する貫通孔433aの直下からX方向他方側に延びる上流部470と、この上流部470のY方向一方側にこの上流部470と平行してX方向に延在する下流部471と、この上流部470と下流部471のX方向他方側の各端部を接続するよう平面視略円弧状に延びる折返し部472とを含んでいる。このため、共通インク室443もU字状の折返し構造をなすよう構成され、共通インク室443は、上流部470によって構成される上流領域453、折返し部472により構成される折返し領域455、及び下流部471によって構成される下流領域454を有している。
【0099】
図13及び図14を参照すると、これら3つの領域は積層方向に関して互いに同じ位置に配置される(折返し領域455については図示略)。また、図12を併せて参照すると、マニホールド孔434a,437aの下流部471は、インク導入流路42を構成する第2接続流路プレート33の貫通孔433aに対し、平面視でY方向にずれた位置に形成されている。
【0100】
なお、図13及び図14に示すように、第2マニホールド孔437aの下側開口はダンパープレート435により閉鎖されるが、このダンパープレート435には下面側からハーフエッチングにより凹部435bが形成されている。詳細図示を省略するが、この凹部435bは平面視でU字状をなしており、第1及び第2マニホールド孔434a,437aと平面視で重なるように形成されている。このような凹部435bがカバープレート38の上面で閉鎖されることにより、共通インク室443を区画する底壁は薄肉で弾性変形可能なダンパー壁457をなすこととなる。このように、本実施形態においては、ダンパー壁457が共通インク室443を区画する共通インク室443のほぼ全体にわたって設けられることとなるため、共通インク室443内に伝播した圧力室45側からの圧力波の後退成分の減衰効果が高くなる。
【0101】
図13に示す第1個別流路447Aは共通インク室443の下流領域454に連通している。第1接続流路444Aは、第1及び第2接続流路プレート432,433に形成された孔432c,433b及び凹溝432bが互いに連通して構成されており、下流領域454から上方に向けて延びた後、第1ノズル列51をなすノズル48Aが配置されている側であるY方向一方側へと延び、さらに第1圧力室45AのY方向一方側の端部に向かって上方へと延びている。第1圧力室45Aは、そのY方向一方側の端部に接続された第1ディセンダ446Aを介し、ノズル48Aに接続されている。
【0102】
図14に示す第2個別流路447Bは、共通インク室443の上流領域453に連通しており、第1個別流路447Aと共通インク室443を基準にしてY方向に対称に配置されている。つまり、第2接続流路444Bは、第1及び第2接続流路プレート432,433に形成された孔432e,433c及び凹溝432dが互いに連通して構成されており、上流領域453から上方に向けて延びた後、第2ノズル列51をなすノズル48Bが配置されている側であるY方向他方側へと延び、さらに第2圧力室45BのY方向一方側の端部に向かって上方へと延びている。第2圧力室45Bは、そのY方向他方側の端部に接続された第2ディセンダ446Bを介し、ノズル48Bに接続されている。
【0103】
図12乃至図14に示すように、第1及び第2ノズル列51,52はY方向に関して上流領域453及び下流領域454の間に配置されており、第1及び第2ディセンダ456A,456Bはともにこの間の領域を上下に貫通するようにして形成されている。
【0104】
図12に示すように、本実施形態においても2つのダミー流路459A,459Bがノズル開口面49に開口している。これらダミー流路459A,459Bの開口は、第1及び第2ノズル列51,52のX方向一方側の末端に位置するノズル48A1,48B1に対して更にX方向一方側に配置され、第1及び第2ノズル列をなすノズルとともにX方向に配列された開口列を形成している。これにより、第1実施形態と同様にして流路ユニット421の製造工程が複雑化するのを避けることができるが、必ずしもダミーノズルが前述したようにノズル列をなすノズルとともに開口列をなすよう配置されている必要はなく、ノズル列の列方向から僅かに外れて配置されていてもよい。
【0105】
図15は図12のXV−XV線に沿って切断して示すインクジェットヘッド420の部分縦断面図、図16は図12のXVI−XVI線に沿って切断して示すインクジェットヘッド420の部分縦断面図である。このXV−XV線,XVI−XVI線が表すとおり、図15には第1ノズル列とともに開口列をなすよう配置された第1ダミー流路の縦断面形状が示され、図16には第2ノズル列とともに開口列を成すよう配置された第2ダミー流路の縦断面形状が示されている。
【0106】
図15を参照すると、第1ダミー流路459Aは、第1マニホールドプレート434からノズルプレート39までの各プレートに形成された貫通孔434e,437d,435e,38bやダミーノズル39aが互いに連通することによって構成され、共通インク室443の下流領域454の末端部に連通している。具体的には、第1マニホールドプレート434には、第1マニホールド孔434aの下流部471からY方向一方側に延びる貫通孔434eが形成されており、この貫通孔434eの下側開口はY方向一方側の端部において、第2マニホールドプレート437からカバープレート38までの各プレートに形成されて互いに上下に連通する貫通孔437d,435e,38bに連通している。カバープレート38の貫通孔38bの下側開口は、ノズルプレート39に形成されたダミーノズル39aの上側に開口している。
【0107】
図16を参照すると、第2ダミー流路459Bも同様にして構成されて共通インク室443の下流領域454の末端部に連通している。第2ダミー流路459Bは第2ノズル列52に対応して配置されることから、第2ダミー流路459Bのダミーノズル39bは、第1ダミー流路459のダミーノズル39aに比べてY方向他方側に配置されている。従って、第1マニホールドプレート434に形成される貫通孔についても、第2ダミー流路459Bを構成するための貫通孔437eは、第1ダミー流路459Aを構成するための貫通孔437dに比べてY方向への寸法が短くなっている。
【0108】
図12に戻ると、本実施形態においても、共通インク室443がインク導入流路442から見てX方向他方側に延在する上流領域453と、この上流領域453の先端部からインク導入流路442が配置されている側であるX方向一方側に向かって折り返して延在する下流領域454とを有している。ダミー流路459A,459Bはこの下流領域454の末端部に連通しており、第1及び第2ノズル列51,52に対してインク導入流路442が配置されている側であるX方向一方側に配置されている。このため、第1乃至第4実施形態と同様にして、リップ部14のノズル開口面49に対する密着箇所を、X方向一方側にダミー流路459A,459Bを配置するために確保したスペース分だけ、X方向一方側に相対的に変位させれば、パージ動作を適切に実行可能となる。このようにして、ダミー流路による排気性能を損なわずダミー流路と個別流路との干渉を避けた上で、ダミー流路を有したインクジェットヘッドをX方向に小型化することができるようになる。
【0109】
図6,図9乃至図12を参照すると、第1乃至第5実施形態はいずれも、共通インク室がインク導入流路からノズル配列方向に沿って延びる上流領域と、上流領域の先端部からインク導入流路側に向かって折り返すよう延びる下流領域とを有しており、この構造とダミー流路のレイアウトの特徴とに基づきノズル配列方向(X方向)に小型化可能なヘッドを実現している。図6,図9乃至図11に示す第1乃至第4実施形態では、上流領域及び下流領域が上下に離れて平面視で重なるように配置されているため、流路ユニットをノズル配列方向と直交する方向(Y方向)への大型化を抑えることができる。他方、図12に示す第5実施形態では、上流領域及び下流領域が積層方向(上下方向)に関して同じ位置に配置されているため、流路ユニットの構成に必要なプレートの枚数が少なくなり、積層方向への大型化を抑えることができる。また、第1乃至第4実施形態の折返し領域は、第5実施形態と比較して流路断面積を容易に大きくすることができるとともにその流路長を短くすることができる。このため、第1乃至第4実施形態では共通インク室内のインクの流れがスムーズとなる。
【0110】
これまで、本発明に係る実施形態について説明したが、上記実施形態の構成は本発明の範囲内において適宜変更可能である。
【0111】
例えば、第1ノズル列に対応する接続流路が上流領域に連通し、第2ノズル列に対応する接続流路が下流領域に連通している場合を例示したが、逆であってもよい。また、単一の共通インク室に対応して2つのノズル列を配列する構成を例示したが、単一の共通インク室に対応して1列又は3列以上のノズル列が配列されていてもよい。
【0112】
また、ダミー流路の構造は一例を示しているに過ぎず、本発明の範囲内、すなわち共通インク室の下流領域の末端部に連通しておりノズル開口面においてインク導入流路側で開口していれば、どのような流路構造となっていてもよい。例えば、個別流路と全く同じ構造であってもよいし、パージ動作による排気効率を上げるためにインクを吐出するノズルへのインク流路よりも流路抵抗を低くするように構成されていてもよい。さらに個別流路と同じ構造ではなくてもアクチュエータと接着される圧力室プレートに形成された孔によってダミー流路の一部が構成されるようにしてもよい。このような場合には、ダミー流路内のインクにも圧力波を作用させることができるよう、ダミー流路に対応する個別電極をアクチュエータに設けてダミー流路内のインクをノズル開口面より吐出可能としてもよい。また、単一の共通インク室に対して2つのダミーノズルを配置する場合を例示したが、ダミーノズルの個数は1つまたは3つ以上であってもよい。
【0113】
流路ユニットを構成するプレートの枚数は適宜変更可能である。例えば第1乃至第4実施形態の第1マニホールドプレートは共通インク室の上流領域をなす第1マニホールド孔が形成されたプレート部材であるが、このプレート部材を2枚以上のプレート群に替えてもよい。第5実施形態の第1及び第2マニホールドプレートは、互いに上下に連通してともに共通インク室をなすマニホールド孔が形成されたプレート部材であるが、このプレート部材を1枚のプレートに替えてもよく、3枚以上のプレート群に替えてもよい。また、本実施形態では、流路ユニットが複数枚のプレートを積層してなる積層型流路ユニットであるが、本発明の範囲内であれば一体的に形成されているなどしても適用できる。 リップ部14の平面視形状を矩形枠状として、パージ動作時に全てのノズルの開口が同一の空間内に封止される構成を例示したが、染料インクを噴射するノズルの開口と、顔料インクを噴射するノズルの開口とで別々の空間に封止されるよう、リップ部の平面視形状を日の字状に形成してもよい。このように形成しても、リップ部14のサイズが大きくなる方向はノズル列の並ぶ方向(Y方向)であるため、本発明が奏するノズル配列方向(X方向)に関するヘッドの小型化を阻害することはない。
【0114】
上記各実施形態は本発明をインクジェットプリンタ及びこれを備えたインクジェットヘッドに適用したものであるが、インク以外の液体、例えば着色液を吐出して液晶表示装置のカラーフィルタを製造する装置や、導電液を吐出して電気配線を形成する装置などに使用する液体吐出装置及びこれに搭載される液体吐出ヘッドにも好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
このように本発明は、ダミー流路による排気性能を損なわずにダミー流路と個別流路との干渉を避けやすい構成とした上で、液体吐出ヘッドをノズル配列方向に小型化可能となるという優れた作用効果を奏するものであり、インクジェットヘッド及びこれを備えたインクジェットプリンタ等に適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係る液体吐出装置の一例として示すインクジェットプリンタの概要構成を示す平面視模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例として示すインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図3】図2に示すインクジェットヘッドを組付状態として図2のIII−III線に沿って切断して示すインクジェットヘッドの部分縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿って示すインクジェットヘッドの底面図である。
【図5】図2に示すインクジェットヘッドを組付状態として図2のV−V線に沿って切断して示すインクジェットヘッドの部分縦断面図である。
【図6】図3乃至図5のVI−VI線に沿って切断して示すインクジェットヘッドの横断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿って示すインクジェットヘッドの部分縦断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿って示すインクジェットヘッドの部分縦断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例として示すインクジェットヘッドの横断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例として示すインクジェットヘッドの横断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例として示すインクジェットヘッドの横断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例として示すインクジェットヘッドの流路ユニットの底面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線に沿って切断して示すインクジェットヘッドの部分縦断面図である。
【図14】図12のXIV−XIV線に沿って切断して示すインクジェットヘッドの部分縦断面図である。
【図15】図12のXV−XV線に沿って切断して示すインクジェットヘッドの部分縦断面図である。
【図16】図12のXVI−XVI線に沿って切断して示すインクジェットヘッドの部分縦断面図である。
【図17】従来のインクジェットヘッドの底面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線に沿って切断して示す従来のインクジェットヘッドの横断面図である。
【符号の説明】
【0117】
1 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
13 キャップ
14 リップ部
16 ポンプ(負圧印加手段)
20,120,220,320,420 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
21,121,221,321,421 流路ユニット
34,134,434 第1マニホールドプレート(第1マニホールドプレート部材)
35,135,235,335 第1ダンパープレート(第1ダンパープレート部材)
36,136,236,336 第2ダンパープレート(第2ダンパープレート部材)
37,137,447 第2マニホールドプレート(第2マニホールドプレート部材)
40,240 仕切プレート(仕切プレート部材)
42,142,242,342 インク導入流路(液体導入流路)
43,143,243,343,443 共通インク室(共通液室)
47,447 個別流路
48 ノズル
49 ノズル開口面
51,451 第1ノズル列
52,452 第2ノズル列
53,153,253,353,453 上流領域
54,154,254,354,454 下流領域
55,155,255,355,455 折返し領域
57,157,257,357 第1ダンパー壁
58,157,257,357 第2ダンパー壁
59,459 ダミー流路
435 ダンパープレート
457 ダンパー壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数のノズルが列をなして開口するノズル開口面を有した流路ユニットを、備える液体吐出ヘッドであって、
前記流路ユニットは、液体が導入される液体導入流路と、前記液体導入流路からの液体が送られる共通液室と、前記ノズルの各々に個別対応して設けられており前記共通液室内の液体を対応するノズルに供給する個別流路と、前記個別流路とは独立しており前記共通液室に連通して前記ノズル開口面に開口するダミー流路とを有し、前記共通液室は、前記液体導入流路からノズル配列方向に沿って延在する上流領域と、前記上流領域の先端部から前記液体導入流路側に向かって折り返してノズル配列方向に沿って延在する下流領域とを有し、
前記ダミー流路は前記下流領域の末端部に連通し、前記ノズル開口面において前記ダミー流路の開口が、前記複数のノズルのうち前記液体導入流路側の末端に位置するノズルに対して前記液体導入流路側に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記流路ユニットは複数のプレート部材を積層してなり、
前記上流領域及び前記下流領域が前記プレート部材の積層方向に離れて配置され、
前記共通液室が、さらに、前記上流領域の前記先端部から前記積層方向に延在して前記下流領域に連通する折返し領域を有していることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記ノズル開口面を下側に向けた状態としたときに、前記下流領域が前記上流領域に対して上側に配置されることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズル開口面を下側に向けた状態としたときに、前記上流領域が前記下流領域に対して上側に配置され、前記液体導入流路が前記上流領域に対して上側に向かって延在し、
前記下流領域の末端部が、前記上流領域の下側において、平面視で前記液体導入流路と重なる位置まで延在していることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記流路ユニットが、前記複数のプレート部材の一部として、
前記上流領域をなす第1マニホールド孔を有する第1マニホールドプレート部材と、
前記下流領域をなす第2マニホールド孔を有する第2マニホールドプレート部材と、
前記第1及び第2マニホールドプレート部材の間に介在して前記第1及び第2マニホールド孔を積層方向に仕切り、前記折返し領域をなす連通孔を有する仕切プレート部材とを有し、
前記仕切プレート部材が、前記第1マニホールド孔を閉鎖して前記上流領域内の圧力変動に応じて弾性変形可能な第1ダンパー壁と、前記第2マニホールド孔を閉鎖して前記下流領域内の圧力変動に応じて弾性変形可能な第2ダンパー壁とを構成していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記流路ユニットが前記複数のプレート部材の一部として、
前記上流領域をなす第1マニホールド孔を有する第1マニホールドプレート部材と、
前記下流領域をなす第2マニホールド孔を有する第2マニホールドプレート部材と、
前記第1及び第2マニホールドプレート部材の間に介在して前記第1及び第2マニホールド孔を積層方向に仕切り、前記折返し領域をなす連通孔を有する仕切プレート部材と、
前記第1マニホールドプレート部材に前記仕切プレート部材と反対側から接する第1ダンパープレート部材と、
前記第2マニホールドプレート部材に前記仕切プレート部材と反対側から接する第2ダンパープレート部材とを有し、
前記第1ダンパープレート部材が、前記第1マニホールド孔を閉鎖して前記上流領域内の圧力変動に応じて弾性変形可能な第1ダンパー壁を構成し、前記第2ダンパープレート部材が、前記第2マニホールド孔を閉鎖して前記下流領域内の圧力変動に応じて弾性変形可能な第2ダンパー壁を構成していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記流路ユニットは複数のプレート部材を積層してなり、
前記上流領域及び前記下流領域が前記プレート部材の積層方向に関して同じ位置に並んで形成され、
前記共通液室が、前記上流領域及び前記下流領域と前記積層方向に関して同じ位置において、前記上流領域の前記先端部を前記下流領域に接続する折返し領域を有していることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記複数のノズルが、単一の前記共通液室に対して2列に分かれて配列され、
一方の列をなすノズルに対応する前記個別流路が前記上流領域に連通し、他方の列をなすノズルに対応する前記個別流路が前記下流領域に連通していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドのノズル開口面に離接可能な枠状のリップ部を有し、該リップ部を前記ノズル開口面に密着させることにより該リップ部の内側に前記ノズル開口面に開口している複数のノズル及びダミー流路を封止するキャップと、
前記各開口が封止されている状態で前記リップ部の内側に負圧を印加する負圧印加手段と、を備えることを特徴とする液体吐出装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−76372(P2010−76372A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250215(P2008−250215)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】