説明

液体吐出ヘッド及びその製造方法

【課題】本発明の目的の一つは、複数の部材が積層された支持部材において、フィルタと支持部材との接合強度を高め、簡便な構成で、液体中の混入物が吐出素子基板へ浸入することを抑制した液体吐出ヘッドを得ることである。
【解決手段】本発明は、液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と前記液体を吐出する吐出口と前記吐出口に連通する液体供給口とを備える吐出素子基板と、前記吐出口素子基板を支持し、前記液体供給口に前記液体を供給するための液体導入路を有する支持部材と、を備える液体吐出ヘッドであって、前記支持部材は、前記液体導入路の一部を構成する貫通穴を有する少なくとも1つの導入路用プレートと、前記液体を濾過するフィルタ部材を配置するための開口を有するフィルタ用プレートと、前記開口に配置された前記フィルタ部材と、からなる積層体が焼成されて形成されている液体吐出ヘッドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出口から吐出することにより被記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドとして、セラミック等から形成される支持部材を備えるインクジェット記録ヘッドが知られている。該インクジェット記録ヘッドは、吐出エネルギー発生素子を備えた基板とインクの吐出口とを備えた吐出素子基板が支持部材に支持された構成を有する。基板には、吐出エネルギー発生素子へ液体と供給するための供給口が基板を貫通するように設けられている。また、支持部材にも貫通孔が設けられている。支持部材と基板とは、インク中の混入物を濾過するフィルタ部材を間に挟んで接合されている。インクはインクカートリッジ等から支持部材の貫通孔から供給口に供給される際にフィルタを通過することとなる。
【0003】
一方、インクジェットヘッド記録ヘッドがフルラインタイプのものである場合には、アルミナなどで形成される支持部材を長尺なものとする必要がある。支持部材が長尺化しても支持部材の記録素子基板を配置する側の平坦性を損なわないように、支持部材を複数のプレートを積層して一体化することで形成することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−34200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、支持部材と別体のフィルタを接着剤で接合しており、製造工程が複雑になることが懸念される。
【0006】
また、フルラインタイプのインクジェット記録ヘッドにおいては、フィルタや支持部材が大型であり、各部材の熱膨張の影響が増大するためフィルタと支持部材との接合強度に不安が生じる場合がある。また、支持部材に別途フィルタを接着する工程が必要となるため、製造工程が複雑になることが懸念される。
【0007】
したがって、本発明は、複数の部材が積層された支持部材において、フィルタと支持部材との接合強度を高め、簡便な構成で、インク等の液体中の混入物が吐出素子基板へ浸入することを抑制した液体吐出ヘッドを得ることを目的の一つとする。また、そのような液体吐出ヘッドを精度よく得ることを可能とする製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一例は、液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と前記液体を吐出する吐出口と前記吐出口に連通する液体供給口とを備える吐出素子基板と、前記吐出口素子基板を支持し、前記液体供給口に前記液体を供給するための液体導入路を有する支持部材と、を備える液体吐出ヘッドであって、前記支持部材は、前記液体導入路の一部を構成する貫通穴を有する少なくとも1つの導入路用プレートと、前記液体を濾過するフィルタ部材を配置するための開口を有するフィルタ用プレートと、前記開口に配置された前記フィルタ部材と、からなる積層体が焼成されることにより形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッドである。
【0009】
また、本発明の一例は、液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と前記液体を吐出する吐出口と前記吐出口に連通する液体供給口とを備える吐出素子基板と、前記吐出口素子基板を支持し、前記液体供給口に前記液体を供給するための液体導入路を有する支持部材と、を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、(1)前記流路導入路の一部を構成する貫通穴を有する少なくとも1つの導入路用プレートと、前記液体を濾過するフィルタ部材を配置するための開口を有するフィルタ用プレートと、前記開口に配置された前記フィルタ部材と、からなる積層体を用意する工程と、(2)前記積層体を焼成することにより一体化する工程と、を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法である。
【0010】
また、本発明の一例は、液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と前記液体を吐出する吐出口と前記吐出口に連通する液体供給口とを備える吐出素子基板と、前記吐出口素子基板を支持し、前記液体供給口に前記液体を供給するための液体導入路を有する支持部材と、を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、(1)前記流路導入路の一部を構成する貫通穴を有する少なくとも1つの導入路用プレートと、前記液体を濾過するフィルタ基板を配置するための開口を有するフィルタ用プレートと、前記開口に配置された前記フィルタ基板と、からなる積層体を用意する工程と、(2)前記積層体を焼成することにより一体化する工程と、(3)前記フィルタ用プレートの表面を研磨する工程と、(4)前記フィルタ基板に穴あけ加工を施し、フィルタ部材とする工程と、をこの順で有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成とすることにより、複数の部材が積層された支持部材において、フィルタ部材と支持部材との接合強度を高め、簡便な構成で、液体中の混入物が吐出素子基板へ浸入することを抑制した液体吐出ヘッドを得ることができる。また、そのような液体吐出ヘッドを精度よく得ることを可能とする製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】図1に示したインクジェット記録ヘッドの概略断面図である。
【図3】フィルタ部材の形状の例を示す概略上面図である。
【図4】本実施形態のインクジェット記録ヘッドの製造工程を説明するための断面工程図である。
【図5】図4(3)における点線の円部分Aの拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す支持部材の断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を説明するための断面工程図である。
【図8】本発明の第4の実施形態を説明するための断面工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と液体の吐出口とを備える吐出素子基板を備える。また、本発明に係る液体吐出ヘッドは、吐出素子基板と接合され、該吐出口素子基板を支持し、該吐出素子基板に液体を供給するための液体の流路となる液体導入路を有する支持部材を備える。
【0014】
支持部材は、液体導入路の一部を構成する貫通穴を有する少なくとも1つの導入路用プレートと、フィルタ部材を配置するための開口を有するフィルタ用プレートと、前記開口に配置されたフィルタ部材と、からなる積層体が焼成されて一体化されて得られる。
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
また、以下の説明では、本発明の適用例としてインクジェット記録ヘッドを例に挙げて説明するが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、バイオッチップ作製や電子回路印刷用途の液体吐出ヘッド等にも適用できる。液体吐出ヘッドとしては、インクジェット記録ヘッドの他にも、例えばカラーフィルター製造用ヘッド等も挙げられる。
【0017】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態を示す。
【0018】
図1はインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。また、図2は、図1のA−A線における垂直断面を示す図である。
【0019】
図2に示すように、吐出素子基板3は、支持部材100の上に接着材4を用いて接着されている。吐出素子基板3は、主に流路形成部材6と基体7から構成されている。流路形成部材6は、インク等の液体を吐出する吐出口と、該吐出口と連通する液体供給口を有する(不図示)。基体7は、インク等の液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を表面側に有する。また、基体7は、前記液体流路にインク等の液体を供給する液体供給口8を有する。
【0020】
吐出素子基板3は、液体供給口が開口する面、つまり図2において下面が支持部材100によって支持されている。支持部材100はインク等の液体を液体供給口8に供給するための液体導入路201を有する。液体導入路201は液体供給口8に連通している。図2の断面においては、1つの吐出素子基板3は複数の液体供給口8を有し、液体導入路201はそれぞれの液体供給口8に対応して設けられている。
【0021】
支持部材は、少なくとも1つの導入路用プレートと、フィルタ用プレートと、フィルタ部材とからなる積層体が焼成されてなる。導入路用プレートは液体導入路の一部を構成する貫通穴を有する。フィルタ用プレートは、フィルタ部材を配置するための開口を有し、該開口にフィルタ部材が配置される。図2において、積層体は、上から順に、第1の導入路用プレート101a、第2の導入路用プレート101b、フィルタ用プレート102、及び第3の導入路用プレート101cから構成される。それぞれの導入路用プレートに設けられた貫通穴が連通し、液体導入路201が形成されている。液体導入路201のすべてがフィルタ部材と繋がっており、インクタンク等から送られてきた液体は必ずフィルタ部材により濾過されることになる。また、図2の断面図においては、1つの吐出素子基板3に到達する複数の液体導入路は1枚のフィルタ部材が配置されている。
【0022】
また、図2において、フィルタ用プレート102の開口に配置されたフィルタ部材1の上面は第2の導入路用プレートの下面に接し、フィルタ部材1の下面は第3の導入路用プレートの上面に接している。なお、本明細書において、吐出素子基板が配置される側を上方向とし、その反対側を下方向とする。
【0023】
プリンタ本体装置との電気的接続を得るために、吐出素子基板3には、電気配線基板5が接合される。吐出素子基板3と電気配線基板5の接合部は、熱硬化性の樹脂等によって封止され、保護される(不図示)。
【0024】
フィルタ部材は複数の吐出素子基板のそれぞれに対応して1枚ずつ設けられていることが好ましい。また、支持部材は、一つの吐出素子基板に供給する複数の前記液体導入路につき1枚のフィルタ部材を有することが好ましい。
【0025】
支持部材における吐出素子基板3を接合する領域の平面精度は5μm程度に高めることが望ましい。
【0026】
導入路用プレート及びフィルタ用プレートの材料は、熱による形状変化の影響を受け難い低線膨張材料であるアルミナであることが好ましい。
【0027】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、支持部材100のフィルタ用プレート102にフィルタ部材1が吐出素子基板3毎に形成されている。このような構成によって、液体導入路201を通過する全てのインクが必ずフィルタ部材1を通過するように設計している。
【0028】
フィルタ部材1の材質は、Fe、Cr及びNiからなる合金を用いることが好ましい。また、フィルタ部材1のその他の材質としては、アルミナやジルコニア等の低線膨張材料も好ましく用いることができる。
【0029】
フィルタ部材1は、濾過機能を有するものである。フィルタ部材の形状としては、例えば図3に示すように、メッシュ(1)や穴形状(2)等が挙げられる。フィルタの穴径は、例えば、インクを吐出する吐出口の最小開口面積よりも小さくなるように設定することができ、たとえば6μm以下である。
【0030】
支持部材100にフィルタ部材1を形成する方法について図4を用いて説明する。
【0031】
図4(1)に示すように、第1の導入路用プレート101a、第2の導入路用プレート101b、フィルタ用プレート102、及び第3の導入路用プレート101cを用意する。第1の導入路用プレートには液体導入路の一部となる第1の貫通穴201aが形成されている。同様に、第2の導入路用プレート及び第3の導入路用プレートにはそれぞれ液体導入路の一部となる第2の貫通穴201b及び第3の貫通穴201cが形成されている。
【0032】
次に、図4(2)に示すように、フィルタ用プレート102のフィルタ用の開口にフィルタ部材1を配置する。そして、第1の導入路用プレート101a、第2の導入路用プレート101b、フィルタ部材1が配置されたフィルタ用プレート102、及び第3の導入路用プレート101cを上からこの順で積層する。第1の貫通穴201a、第2の貫通穴201b及び第3の貫通穴201cがそれぞれ連通するように積層する。
【0033】
フィルタ部材1の厚みはフィルタ用プレート102の厚みよりも大きく設定されている。これによって、後の焼成工程においてプレートをプレスする際に隙間をなくすことができる。
【0034】
次に、図4(3)に示すように、積層体をプレスしながら焼成して一体化させる。具体的には、プレス/焼成治具10によって複数のプレートをプレスすることで、フィルタ部材1が第2の導入路用プレート101bと第3の導入路用プレート101cとの間の隙間を無くすことができる。
【0035】
焼成工程は、複数のプレートをプレスした状態で900〜1000℃の範囲で焼成することが好ましい。
【0036】
焼成工程において、各プレートには焼成用の接着材を塗布することができる。フィルタ部材とプレートとの間にも焼成用の接着材を塗ることができるが、液体導入路を塞がないように注意することが望ましい。
【0037】
ここで、図4(3)における点線の円部分Aの拡大断面図を図5に示す。図5において、302は、フィルタ部材1と第2の導入路用プレート101b又は第3の導入路用プレート101cと接した部分であるフィルタ結合部である。この部分はメッシュ状のフィルタ部材内に軟化したプレートが101b、101cが入り込んでいる。
【0038】
上述のように、フィルタ用プレートよりも厚いフィルタ部材を用いてプレスして焼成することにより、図4(4)に示すように、フィルタ部材表面とプレートとの間に隙間ができないように形成することができる。これらによって、フィルタ部材1が強固に固定される。また、高い面精度のプレス/焼成治具10の面に支持部材100の記録素子接合面がならうことで、支持部材100の平面精度を高めることが可能となる。また、記録素子基板3の吐出口から吐出されたインク滴が記録媒体に精度良く記録することが可能となる。
【0039】
導入路用プレートの厚さは、例えば、0.5〜1.5mmとすることができる。
【0040】
フィルタ用プレートの厚さは、例えば、0.5〜1.5mmとすることができる。また、フィルタ部材の厚さは、例えば、0.8〜1.8mmとすることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態を示す。第2の実施形態において、第1の実施形態と異なる点を以下に説明する。
【0042】
図6は、第2の実施形態を示す支持部材100の断面図である。複数のプレートの最上層である第1の導入路プレート101a上に吐出素子基板3が接合される。本明細書において、支持部材の吐出素子基板が配置される面を第一の面と称し、その反対側の支持部材の面を第二の面と称す。
【0043】
図6に示すように、複数のプレートを積層して焼成する際、それぞれのプレートの層間において接合ズレが生じ、液体の流れによどみが発生する可能性がある。そこで、本実施形態のような構成とすれば、接合ズレによって生じる段差の影響を受け難くなる。
【0044】
つまり、本実施形態の構成は、積層体において、第一の面に導入路用プレートが配置され、該第一の面に配置された導入路用プレートの前記第一の面と反対側に隣接してフィルタ用プレートが配置されている。
【0045】
このような構成とすることにより、接合ズレ301のような段差がインクの流れる方向に対して、吐出素子基板3とフィルタ部材1との間に発生しなくなるため、流体の流れによどみが発生し難くすることが可能となる。また、フィルタ用プレート102の下側に配置された第2の導入路用プレート101bと第3の導入路用プレート101cで接合ズレが生じてよどみによる洗浄不足が発生しても、フィルタ部材1によって吐出素子基板3への異物の侵入を防ぐことができる。したがって、吐出口からインク滴を精度良く吐出することが可能となる。
【0046】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態を示す。
【0047】
図7は、第3の実施形態を示す支持部材100にフィルタ部材1を形成する製造方法の構成図である。
【0048】
まず、図7(1)に示すように、焼成前のアルミナ製のプレートに液体導入路となる貫通穴を形成し、導入路用プレートを用意する。また、焼成前のアルミナ製のプレートにフィルタ部材を配置する開口を有するフィルタ用プレートを用意する。
【0049】
次に、図7(2)に示すように、フィルタ部材1を配置したフィルタ用プレート102、第1の導入路用プレート101a、第2の導入路用プレート101b、及び第3の導入路用プレート101cを上からこの順で積層する。
【0050】
次に、図7(3)に示すように、プレス/焼成治具10によって、プレートをプレスしながら焼成する。
【0051】
焼成温度は、例えば900〜1000℃である。
【0052】
次に、図7(4)に示すように、後工程の研磨時に液体導入路とフィルタ部材内に入り込む異物を減らすために、液体導入路とフィルタ部材に後工程で除去が可能な樹脂11を含浸させる。除去可能な樹脂としては、例えば熱溶解する樹脂を用いることができる。
【0053】
次に、図7(5)に示すように、研磨治具12によって、支持部材100の第一の面と第二の面を最表層に組み込まれたフィルタ部材1とともに研磨する。
【0054】
次に、図7(6)に示すように、除去可能な樹脂11を除去する。熱溶解で除去可能な樹脂を用いた場合は、例えば、研磨後に1000℃程度の熱処理を施し、除去可能な樹脂11を加熱によって溶解させる。これにより、液体導入路とフィルタ部材に含浸させた除去可能な樹脂11が取り除かれる。
【0055】
除去可能な樹脂としては、熱可塑性樹脂、ポジ型の感光性樹脂、ゴム系の樹脂等が挙げられる。
【0056】
以上の方法により、液体導入路やフィルタ部材内への研磨カスが侵入することなく、フィルタ部材の目詰まりを抑制して、支持部材の表面を研磨することができる。したがって、高い平面精度を有する支持部材を形成することができる。
【0057】
また、本実施形態における支持部材の構成は、積層体が、吐出素子基板が配置される第一の面にフィルタ用プレート及び前記フィルタ部材が配置されている。つまり、積層体の最上層に、フィルタ部材及びフィルタ用プレートが配置されている。
【0058】
(第4の実施形態)
以下に、本発明の第4の実施形態を示す。
【0059】
図8は第4の実施形態に係る製造方法を説明するための概略工程図である。
【0060】
まず、図8(1)に示すように、焼成前のアルミナ製のプレートに液体導入路となる貫通穴を形成し、導入路用プレート101a、101b、101cを用意する。また、焼成前のアルミナ製のプレートにフィルタ部材を配置する開口を有するフィルタ用プレート102を用意する。
【0061】
次に、図8(2)に示すように、フィルタ基板2を配置したフィルタ用プレート102、第1の導入路用プレート101a、第2の導入路用プレート101b、及び第3の導入路用プレート101cを上からこの順で積層する。
【0062】
次に、図8(3)に示すように、プレス/焼成治具10によって、プレートをプレスしながら焼成する。焼成温度は、例えば900〜1000℃である。
【0063】
次に、図8(4)に示すように、研磨治具12によって、支持部材100の表面を研磨し、平坦化する。
【0064】
次に、図8(5)に示すように、平坦化されたフィルタ基板2に穴あけ加工13を施す。穴あけ加工方法は、例えばレーザー加工、エッチング加工である。
【0065】
図8(6)に示すように、穴あけ加工によりフィルタ基板2はフィルタ部材となる。研磨工程の後にフィルタ基板2に穴あけ加工13をすることで、液体導入路内への研磨カスの侵入を低減することができる。本実施形態においては、フィルタ基板2に施す穴あけ加工13のサイズは例えば直径10μm程度である。
【0066】
これらによって、支持部材100の平面精度を高めることが可能となり、吐出記録素子基板3の吐出口からインク滴を記録媒体に精度良く吐出することが可能となる。本実施形態においては、複数のプレートの最上層にフィルタ部材1及びフィルタ用プレートを配置した構成である。しかし、フィルタ部材1の配置位置に関係なく、どの層においても、研磨後に穴あけ加工をすることで、同様な効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 フィルタ部材
2 フィルタ基板
3 吐出素子基板
4 接着材
5 電気配線基板
6 流路形成部材
7 基体
8 液体供給口
10 プレス/焼成治具
11 除去可能な樹脂
12 研磨治具
13 穴あけ加工
100 支持部材
101a 第1の導入路用プレート
101b 第2の導入路用プレート
101c 第3の導入路用プレート
102 フィルタ用プレート
201 液体導入路
201a 第1の貫通穴
201b 第2の貫通穴
201c 第3の貫通穴
302 フィルタ結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と前記液体を吐出する吐出口と前記吐出口に連通する液体供給口とを備える吐出素子基板と、前記吐出口素子基板を支持し、前記液体供給口に前記液体を供給するための液体導入路を有する支持部材と、を備える液体吐出ヘッドであって、
前記支持部材は、前記液体導入路の一部を構成する貫通穴を有する少なくとも1つの導入路用プレートと、前記液体を濾過するフィルタ部材を配置するための開口を有するフィルタ用プレートと、前記開口に配置された前記フィルタ部材と、からなる積層体が焼成されることにより形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記支持部材は複数の前記吐出素子基板を支持し、前記フィルタ部材は複数の前記吐出素子基板のそれぞれに対応して1枚ずつ設けられている請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記支持部材は、一つの前記吐出素子基板に供給する複数の前記液体導入路につき1つの前記フィルタ部材を有する請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記積層体において、前記吐出素子基板が配置される第一の面に前記導入路用プレートが配置されている請求項1乃至3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記積層体において、前記第一の面に前記導入路用プレートが配置され、該第一の面に配置された導入路用プレートの前記第一の面と反対側に隣接して前記フィルタ用プレートが配置されている請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記積層体において、さらに、前記フィルタ用プレートの前記第一の面と反対側に少なくとも1つの前記導入路用プレートが配置されている請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記積層体において、前記吐出素子基板が配置される第一の面に前記フィルタ用プレート及び前記フィルタ部材が配置されている請求項1乃至3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第一の面に表れている前記フィルタ用プレート及び前記フィルタ部材は平坦化されている請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記フィルタ部材は、Fe、Cr及びNiからなる合金からなる請求項1乃至8のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記支持部材はアルミナからなる請求項1乃至9のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と前記液体を吐出する吐出口と前記吐出口に連通する液体供給口とを備える吐出素子基板と、前記吐出口素子基板を支持し、前記液体供給口に前記液体を供給するための液体導入路を有する支持部材と、を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、
(1)前記液体導入路の一部を構成する貫通穴を有する少なくとも1つの導入路用プレートと、前記液体を濾過するフィルタ部材を配置するための開口を有するフィルタ用プレートと、前記開口に配置された前記フィルタ部材と、からなる積層体を用意する工程と、(2)前記積層体を焼成することにより一体化する工程と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記工程(2)は、前記積層体をプレスしながら焼成する工程である請求項11に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記フィルタ部材は、前記フィルタ用プレートよりも厚い請求項11又は12に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記工程(1)において、前記吐出素子基板が配置される第一の面に前記導入路用プレートを配置する請求項11乃至13のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記工程(1)において、前記第一の面に前記導入路用プレートを配置し、該第一の面に配置した導入路用プレートの前記第一の面と反対側に隣接させて前記フィルタ用プレートを配置する請求項14に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記工程(1)において、さらに、前記フィルタ用プレートの前記第一の面と反対側に少なくとも1つの前記導入路用プレートを配置する請求項15に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記工程(1)において、前記吐出素子基板が配置される第一の面に前記フィルタ用プレート及び前記フィルタ部材を配置する請求項11乃至13のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記工程(2)の後に、
(3)前記フィルタ部材及び前記貫通穴に樹脂を侵入させる工程と、
(4)前記フィルタ部材及び前記フィルタ用プレートの表面を研磨する工程と、
(5)前記樹脂を除去する工程と、
をこの順で有する請求項17に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項19】
前記樹脂は熱により溶解する樹脂であり、前記工程(5)は前記樹脂を加熱することにより溶解させて前記フィルタ部材及び前記貫通穴から除去する工程である請求項18に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項20】
液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と前記液体を吐出する吐出口と前記吐出口に連通する液体供給口とを備える吐出素子基板と、前記吐出口素子基板を支持し、前記液体供給口に前記液体を供給するための液体導入路を有する支持部材と、を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、
(1)前記液体導入路の一部を構成する貫通穴を有する少なくとも1つの導入路用プレートと、前記液体を濾過するフィルタ基板を配置するための開口を有するフィルタ用プレートと、前記開口に配置された前記フィルタ基板と、からなる積層体を用意する工程と、(2)前記積層体を焼成することにより一体化する工程と、
(3)前記フィルタ用プレートの表面を研磨する工程と、
(4)前記フィルタ基板に穴あけ加工を施し、フィルタ部材とする工程と、
をこの順で有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項21】
前記工程(1)において、前記吐出素子基板が配置される第一の面に前記フィルタ用プレート及び前記フィルタ基板を配置し、
前記工程(3)は、前記フィルタ用プレートと前記フィルタ基板の表面を研磨する工程である請求項20に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項22】
前記フィルタ部材は、Fe、Cr及びNiからなる合金からなる請求項11乃至21のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項23】
前記支持部材はアルミナである請求項11乃至22のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−111230(P2012−111230A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237066(P2011−237066)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】