説明

液体吐出ヘッド及び画像形成装置

【課題】ヘッドを大型化することなく、ヘッド部と液体供給部材の連結部の確実なシールを行えない。
【解決手段】フィルタユニット102とヘッドユニット101を通じる流路40はノズル配列方向に沿う長方形状をなし、フィルタユニット102にはヘッドユニット101側に向けて突出する第1リブ122が設けられ、ヘッドユニット101には第1リブ122の外周側に第2リブ112が設けられて、第1リブ122の内周面で流路40のノズル配列方向の両端側壁面及びノズル配列方向と直交する方向の一方の側壁面が形成され、第1リブ122と第2リブ112との間は径方向の第1シール部材141でシールされ、フィルタユニット102とヘッドユニット101との対向面の間には面方向の第2シール部材142が設けられ、第2シール部材142の壁面で流路40のノズル配列方向と直交する方向の他方の側壁面が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置、例えばインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドとしては、例えば、液滴を吐出する複数のノズルが通じる複数の個別液室に液体を供給する共通液室を有するヘッド部に、ヘッド部の共通液室に外部から液体を供給する液体供給部材を連結したものが知られている。この液体供給部材としては、例えば液体内の不純物をろ過するフィルタを有するフィルタユニットなどがある。
【0004】
ここで、ヘッド部と液体供給部材とを連結するとき、液漏れを防ぐために、ヘッド部と液体供給部材との間の連結部分は確実にシールする必要がある。
【0005】
従前の液体吐出ヘッドにあっては、ヘッド部の共通液室に通じて外部から液体を供給するための供給口部は比較的小さな径の筒状部とされているため、液体供給部材との間はOリングなどの径方向のシール部材やチューブ材などでシールをすることが行われている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−305873号公報
【特許文献2】特許第4602786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、液体吐出ヘッドとしては、ノズル数の増加や長尺化に伴って液供給を円滑に行うために共通液室が大容量化していることから、共通液室への供給口部を、少なくともノズル配列方向で共通液室と同程度の大きさの長方形状に開口させたものがある。
【0008】
このような液体吐出ヘッドにおいて、液体供給部材としての例えばフィルタユニットの供給口部とヘッド部の供給口部とを連結する連結部において、Oリングなどの径方向のシール部材のみでシールを行うと、液体吐出ヘッドの幅が大きくなるという課題がある。
【0009】
また、特許文献1に開示されているようなチューブ状部材によるシールを行うと、液体吐出ヘッドの高さが高くなってしまうという課題がある。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、液体吐出ヘッドを大型化することなく、ヘッド部と液体供給部材との間の連結部を確実にシールできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液滴を吐出する複数のノズルが通じる複数の個別液室に液体を供給する共通液室が形成された共通液室部材を有するヘッド部と、
前記液体をろ過するフィルタを有し、前記ヘッド部の共通液室に前記液体を供給する液体供給部材と、を有し、
前記ヘッド部の共通液室部材には、前記共通液室に通じる液体供給口部が設けられ、
前記液体供給部材には、前記液体を供給する供給口部が設けられ、
前記液体供給部材と前記共通液室部材とを連結する連結部には、前記液体供給部材の供給口部と前記共通液室部材の液体供給口部とを通じる流路が形成され、
前記連結部の流路は液体の流れ方向と直交する方向の断面形状がノズル配列方向に沿う長方形状であり、
前記液体供給部材及び前記共通液室部材のいずれか一方の部材には他方の部材側に向けて突出する第1凸部が設けられ、前記他方の部材には前記第1凸部の外周側に対向して前記一方の部材側に向けて突出する第2凸部が設けられて、
前記第1凸部の内周面で前記流路のノズル配列方向の両端側壁面及びノズル配列方向と直交する方向の一方の側壁面が形成され、
前記第1凸部と前記第2凸部との間は径方向の第1シール部材でシールされ、
前記液体供給部材と前記共通液室部材との間には面方向の第2シール部材が設けられ、
前記第2シール部材の壁面で前記流路のノズル配列方向と直交する方向の他方の側壁面が形成されている
構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体吐出ヘッドを大型化することなく、液体吐出ヘッドと液体供給部材との間の連結部を確実にシールできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドをノズル面側から見た外観斜視説明図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面説明図である。
【図3】同じくヘッド部と液体供給部材とを連結する前の状態の図1のA−A線に沿う断面説明図である。
【図4】同ヘッド部の要部断面説明図である。
【図5】共通液室部材をフィルタユニット側から見た平面説明図である。
【図6】フィルタユニットを共通液室部材側から見た平面説明図である。
【図7】第1シール部材と第2シール部材の交差部分の拡大斜視説明図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部を説明する側面説明図である。
【図9】同機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図1ないし図4を参照して説明する。図1は同液体吐出ヘッドをノズル面側から見た外観斜視説明図、図2は図1のA−A線に沿う断面説明図、図3は同じくヘッド部と液体供給部材とを連結する前の状態の図1のA−A線に沿う断面説明図、図4は同ヘッド部の要部断面説明図である。なお、図2ないし図4は滴吐出方向を下側に向けて図示している。
【0015】
本実施形態の液体吐出ヘッドは、ヘッド部(以下「ヘッドユニット」という。)101と、ヘッドユニット101に連結した液体供給部材としてのフィルタユニット102とを備えている。なお、液体供給部材は、フィルタユニットに限らず、ヘッドタンクなどでもよい。
【0016】
ヘッドユニット101は、ノズル板1と、流路板(液室基板)2と、振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドユニット101のフレーム(本体フレーム)を構成する共通流路部材としての共通液室部材20とを備えている。ここでは、流路板2と振動板部材3とで流路部材5を構成している。
【0017】
ノズル板1には液滴を吐出する複数のノズル4を配列したノズル列が2列形成され、流路板2及び振動板部材3によって、各ノズル4が通じる個別流路としての個別液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。)6、個別液室6に液体を供給する流体抵抗部を兼ねた液体供給路7などを形成している。
【0018】
そして、共通液室部材20の共通流路としての共通液室10から流路部材5のノズル配列方向と直交する方向の端面から複数の個別液室6に液体を供給する。
【0019】
一方、振動板部材3の個別液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域3aを変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0020】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接着剤接合した複数の積層型圧電部材12を有し、圧電部材12にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材に対して所要数の柱状の圧電素子(これを「圧電柱」という。)を所定の間隔で櫛歯状に形成している。また、圧電部材12の圧電柱の外部電極に駆動信号を与えるためのフレキシブル配線基板としてのFPC15が接続されている。
【0021】
共通液室部材20は、このヘッドユニット101全体のフレーム部材(本体フレーム)を兼ねており、例えばエポキシ系樹脂或いは熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイト等で射出成形により形成している。そして、この共通液室部材20は、ノズル配列方向と直交する方向では、ノズル板1の周縁部と流路部材5を構成する振動板部材3の端部に段違いで接着剤にて接合している。
【0022】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電部材12の圧電柱に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電柱が収縮し、振動板部材3の液室壁面を形成する振動領域3aが下降して個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内に液体が流入し、その後圧電柱に印加する電圧を上げて圧電柱を積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域3aをノズル4方向に変形させて個別液室6の容積を収縮させることにより、個別液室6内の液体が加圧され、ノズル4から液滴が吐出(噴射)される。
【0023】
そして、圧電柱に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材3の振動領域3aが初期位置に復元し、個別液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室10から個別液室6内に液体が充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0024】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0025】
次に、この液体吐出ヘッドにおけるヘッドユニット101とフィルタユニット102との連結部の詳細について図5及び図6も参照して説明する。図5は共通液室部材をフィルタユニット側から見た平面説明図、図6はフィルタユニットを共通液室部材側から見た平面説明図である。
【0026】
ヘッドユニット101の共通液室部材20には、共通液室10に通じる液体供給口部111が設けられている。液体供給口部111は、図5にも示すように、液体の流れ方向と直交する方向の断面形状がノズル配列方向に沿う長方形状(長方形状とは、長方形に限らず、長手方向端部が円弧状に形成されているような形状も含む意味である。)をなしている。ここでは、ノズル配列方向において、共通液室10と液体供給口部111とは同じ長さとしているが、これに限るものではない。なお、共通液室部材20には圧電アクチュエータ11を収容する穴部21が設けられている。
【0027】
フィルタユニット102は、フィルタケース部材30内に液体をろ過するフィルタ120を有している。フィルタケース部材30は、二分割された部材であり、フィルタ120を挟み込んで圧力を加えて接合している。
【0028】
そして、フィルタケース部材30には、上流側の図示しないヘッドタンクから送り込まれる液体をフィルタ120でろ過して、フィルタ下流側の供給口部121からヘッドユニット101に液体を供給する。この供給口部121も、図6に示すように、液体供給口部111と同じ形状である。なお、フィルタケース部材30にはFPC15を通す貫通穴31が形成されている。
【0029】
そして、これらのヘッドユニット101の共通液室部材20とフィルタユニット102のケース部材30とは固定されている。
【0030】
ここで、フィルタユニット102のフィルタケース部材30とヘッドユニット101の共通液室部材20との間で、フィルタケース部材30の供給口部121と共通液室部材20の液体供給口部111とを連結している連結部103には、供給口部121と液体供給口部111とを通じる流路40が形成されている。
【0031】
ここで、連結部103の流路40は、液体供給口部111及び供給口部121の形状に対応して、液体の流れ方向と直交する方向の断面形状がノズル配列方向に沿う長方形状としている。
【0032】
そして、フィルタユニット102のフィルタケース部材30には、共通液室部材20側に向けて突出する第1凸部である第1リブ122が一体に形成されている。
【0033】
また、ヘッドユニット101の共通液室部材20には、第1リブ122の外周側に対向し、フィルタユニット102側に向けて突出する第2凸部である第2リブ112が一体に形成されている。なお、第2リブ112は図5に示すように共通液室部材20の外周全体に設けられているが、第2凸部として機能するのは第1リブ122の外周面に対向する範囲である。
【0034】
これにより、図6に示すように、第1リブ122の内周面で流路40のノズル配列方向の両端側壁面40a、40b及びノズル配列方向と直交する方向の一方の(本実施形態ではノズル配列方向と直交する方向で外方向になる)側壁面40cが形成されている。
【0035】
また、第1リブ122と第2リブ112との間は径方向の第1シール部材141でシールされている。
【0036】
一方、フィルタユニット102のフィルタケース部材30とヘッドユニット101の共通液室部材20の対向する面の間には、第1リブ122で形成される側壁面40cに対向して、ノズル配列方向に沿って、面方向の第2シール部材142が設けられている。
【0037】
これにより、第2シール部材142の壁面で流路40のノズル配列方向と直交する方向の他方の側壁面40dが形成されている。
【0038】
ここで、フィルタユニット102をヘッドユニット101に連結固定する前の状態では、図3に示すように、第1シール部材141はフィルタユニット102のフィルタケース部材30の第1リブ122の外周面側に設けられ、第2シール部材142もフィルタユニット102のフィルタケース部材30側に設けられている。
【0039】
この場合、第1シール部材141及び第2シール部材142とフィルタケース部材30とを二色成形などで形成することによって、容易に第1シール部材141及び第2シール部材142とフィルタケース部材30を一体形成することができる。
【0040】
これにより、フィルタユニット102をヘッドユニット101の共通液室部材20内周面に押し込むだけで適切な位置に第1シール部材141及び第2シール部材142を配置することができて、ヘッドの組み立てが容易になる。また、二色成形を用いることで、別個に製造する場合よりもコストの低減を図れ、フィルタユニット102と第1シール部材141及び第2シール部材142との間のシール性も向上し、部品点数を削減できて、専用金型が不要になるなど、コストの低減を図れる。
【0041】
また、第1シール部材141は、図3に示すように、液体の流れの方向に沿う断面の形状が、第2リブ112側が曲線で形成されている形状である。このような形状とすることで、嵌め込みが容易になり、捩れが防止され、シール性も向上する。
【0042】
また、第2シール部材142の液体の流れの方向の長さaは、フィルタユニット102の第1リブ122の同方向の長さbよりも長く形成されている。このような関係にすることで、面方向シール部材である第2シール部材142によるシール性が向上する。
【0043】
また、フィルタユニット102の第1リブ122の同方向の長さbと共通液室部材20の第2リブ112の同方向の長さcは同じに形成している。このような関係にすることで、第2シール部材142からの反力でフィルタユニット102が撓んでしまうことを防止できる。
【0044】
そして、ヘッドユニット101にフィルタユニット102を組み付けるには、図3に示す状態から図2に示すように、フィルタユニット102をヘッドユニット101に連結して固定する。
【0045】
これにより、第2シール部材142がフィルタユニット102のフィルタケース部材30とヘッドユニット101の共通液室部材20との間で面方向(液体の流れ方向と同じ方向)に押し潰されて、流路40の側壁面40dが形成されるとともに、フィルタユニット102のフィルタケース部材30とヘッドユニット101の共通液室部材20の対向面の間がシールされる。
【0046】
また、第1シール部材141がフィルタユニット102のフィルタケース部材30の第1リブ122の外周面とヘッドユニット101の共通液室部材20の第2リブ112の内周面との間で径方向に押し潰されて、第1リブ122の内周面で流路40の側壁面40a〜40cが形成されるとともに、フィルタユニット102の第1リブ122とヘッドユニット101の第2リブ112との間がシールされる。
【0047】
なお、フィルタユニット102のケース部材30とヘッドユニット101の共通液室部材20とはネジによる締結、熱かしめ、ラチェット、接着などによって固定される。
【0048】
このように、この液体吐出ヘッドにおいては、連結部103では、流路40のノズル配列方向と直交する方向の側壁面40dの部分は面方向の第2シール部材142で形成され、ヘッドユニット101とフィルタユニット102との間がシールされ、その他の側壁面は第1凸部である第1リブ122で形成され、径方向の第1シール部材141でシールされることになる。
【0049】
これにより、フィルタユニット102とヘッドユニット101に設ける凸部(リブ)の数ないし領域を少なくすることができる。
【0050】
つまり、フィルタユニット102側にヘッドユニット101の液体供給口部111と同形状(平面で見て)の第1リブ122を形成し、Oリングなどの径方向シール部材でシールしようとすると、ヘッドユニット101の共通液室部材20側にも第1リブ122の外周全体を囲む第2リブ112を形成しなければならない。
【0051】
この結果、本体フレームを構成する共通液室部材20の幅(ノズル配列方向と直交する方向の幅)を大きくしなくてはならない。このことは、流路板2や振動板部材3、ノズル板1の大型化を招き、1ヘッド当たりのコストが高くなるだけでなく、ヘッド部内の流路が長くなることで、滴吐出特性にも影響を与えるおそれがある。
【0052】
逆に、フィルタユニット102の供給口部121とヘッドユニット101の液体供給口部111との間を筒状の面方向シール部材でシールしようとすると、面方向シール部材からの反力がフィルタユニット102及びヘッドユニット101に加わることになる。この反力によって、フィルタユニット102が変形して、シール部材のシール性が大幅に低下するおそれがある。また、ヘッドユニット101に反力が加わることで、滴吐出に影響を与えるおそれもある。
【0053】
そこで、本実施形態では、連結部における流路の一部(本実施形態ではノズル配列方向と直交する方向の他方の側壁面)を面方向シール部材で形成するとともにシールし、他の部分(本実施形態ではノズル配列方向と直交する方向の一方の側壁面及びノズル配列方向の両側壁面)を凸部で形成して径方向シール部材でシールする。
【0054】
これにより、ノズル配列方向と直交する方向におけるフィルタユニット102及び共通液室部材20に設ける流路のノズル配列方向と直交する方向での1つの側壁面を形成するための凸部を省略することができて、ノズル配列方向と直交する方向の幅の増加を抑えることができる。
【0055】
また、フィルタユニット102側及びヘッドユニット101側のいずれかに面方向シール部材で形成されない側壁面を形成する凸部を設け、径方向シール部材でシールすることで、面方向シール部材を押し潰すことによる反力によってフィルタユニット102が変形することを低減できる。
【0056】
次に、第1シール部材141と第2シール部材142との交差部分について図11を参照して説明する。図11は同交差部分の拡大斜視説明図である。
【0057】
第1シール部材141と第2シール部材142とは、それぞれの端部にて滑らかに交差しており、第2シール部材142には少なくとも交差部分に切欠き部143が設けられている。
【0058】
つまり、第1シール部材141と第2シール部材142とを交差させることにより、第1シール部材141と第2シール部材142との端部間における液漏れを防止することができる。
【0059】
また、第1シール部材141と第2シール部材142との交差部分に切欠き部143を設けることで、第1シール部材141と第2シール部材142が潰されたときの逃げ部として作用させることができて、シール性の低下を防止することができる。
【0060】
なお、上記実施形態では、圧電型ヘッドで説明しているが、発熱抵抗体を設けたサーマル型ヘッドでも、その他静電型ヘッドであっても、同様に本発明を適用することができる。
【0061】
また、上述した液体吐出ヘッドとこの液体吐出ヘッドに液体を供給するタンクを一体化することでヘッド一体型液体カートリッジ(カートリッジ一体型ヘッド)を得ることができる。
【0062】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は同装置の機構部の側面説明図、図8は同機構部の要部平面説明図である。
【0063】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0064】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドと同ヘッドに供給するインクを収容するタンクを一体化した記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0065】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有し、一方の記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方の記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0066】
また、記録ヘッド234のタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0067】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0068】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0069】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0070】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0071】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0072】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0073】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0074】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0075】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0076】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0077】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、キャリッジの小型化を図れ、高画質画像を安定して形成することができる。
【0078】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0079】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0080】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0081】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0082】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1 ノズル板
2 流路板
3 振動板部材
4 ノズル
6 液室(個別流路、圧力室)
10 共通液室
12 圧電部材
20 共通液室部材
30 フィルタケース部材
40 流路
101 ヘッドユニット(ヘッド部)
102 フィルタユニット(液体供給部材)
103 連結部
111 液体供給口部
112 第2リブ(第2凸部)
120 フィルタ
121 供給口部
122 第1リブ(第1凸部)
141 第1シール部材
142 第2シール部材
233 キャリッジ
234a、234b 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルが通じる複数の個別液室に液体を供給する共通液室が形成された共通液室部材を有するヘッド部と、
前記液体をろ過するフィルタを有し、前記ヘッド部の共通液室に前記液体を供給する液体供給部材と、を有し、
前記ヘッド部の共通液室部材には、前記共通液室に通じる液体供給口部が設けられ、
前記液体供給部材には、前記液体を供給する供給口部が設けられ、
前記液体供給部材と前記共通液室部材とを連結する連結部には、前記液体供給部材の供給口部と前記共通液室部材の液体供給口部とを通じる流路が形成され、
前記連結部の流路は液体の流れ方向と直交する方向の断面形状がノズル配列方向に沿う長方形状であり、
前記液体供給部材及び前記共通液室部材のいずれか一方の部材には他方の部材側に向けて突出する第1凸部が設けられ、前記他方の部材には前記第1凸部の外周側に対向して前記一方の部材側に向けて突出する第2凸部が設けられて、
前記第1凸部の内周面で前記流路のノズル配列方向の両端側壁面及びノズル配列方向と直交する方向の一方の側壁面が形成され、
前記第1凸部と前記第2凸部との間は径方向の第1シール部材でシールされ、
前記液体供給部材と前記共通液室部材との間には面方向の第2シール部材が設けられ、
前記第2シール部材の壁面で前記流路のノズル配列方向と直交する方向の他方の側壁面が形成されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1凸部と前記第2凸部とは、前記液体の流れの方向の長さが同じであることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1シール部材は、液体の流れの方向に沿う断面の形状が、前記第2凸部側が曲線で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1シール部材と前記第2シール部材とは端部で交差していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1シール部材及び前記第2シール部材の少なくともいずれかには、少なくとも交差部分に切り欠きが設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1シール部材と前記第1凸部が設けられている部材は一体形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−107345(P2013−107345A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255550(P2011−255550)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】