液体吐出ヘッド
【課題】吐出口から外部に伸びた吐出液体が、吐出口内にある液体から分離するタイミングを大幅に早めることを可能とし、画質の低下を引き起こすサテライト及びミストの一層の低減を可能とする。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、吐出口は互いに並列する側壁部と、前記側壁部同士をつなぐ前記側壁の面と交差する方向に延在する先端壁部と、を含む、吐出口の中心に向かって突出する複数の突起部を備える。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、吐出口は互いに並列する側壁部と、前記側壁部同士をつなぐ前記側壁の面と交差する方向に延在する先端壁部と、を含む、吐出口の中心に向かって突出する複数の突起部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を媒体に向けて吐出して記録を行う液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクなどの液体を吐出する方式としては、液体吐出方式(インクジェット記録方式)が知られており、液滴を吐出するために用いられる吐出エネルギー発生素子として、発熱素子(ヒーター)を利用する方法がある。
【0003】
図10は従来のインクジェットヘッドをもちいた、気泡が大気と連通しないバブルジェット(登録商標)(BJ)吐出方式の一般的な吐出工程を示す模式図である。なお、便宜上ここでは吐出口が形成されたオリフィスプレートから外部に飛び出ている部分の液体を吐出液体、吐出口内部にある液体を流路液体と称して区別する。
【0004】
まず、図10(a)の状態から、ヒーターに通電することによりヒーター表面に膜沸騰現象を生じさせる(図10(b))。この膜沸騰により生じたエネルギーにより吐出口が形成されたオリフィスプレート表面より液体がせり出していく(図10(c))。この時ヒーター近傍の液体は膜沸騰時に生じたエネルギーの慣性力により、ヒーターから離れるように移動していく。この液体の移動により気泡と液体の界面が動くのであたかもヒーター近傍の気体が成長しているような挙動を示すが、このときはヒーターの熱は断熱状態で気泡に伝わらないため、気泡の成長に伴い気体の圧力は低下していくことになる。また、この慣性力は、吐出液体の量をも増大させていく。やがて、液体の慣性力と気体の圧力低下に伴う復元力とがつりあったとき気泡の成長は止まり、最大発泡状態となる(図10(d))。最大発泡状態時の気体部分は大気圧に比べて充分に低い圧力となっているため、この後、気泡は消泡し始め、周囲の液体を気泡のあった場所に急激に取り込もうとする(図10(e))。この消泡に伴う流路液体の動きにより吐出口近傍の液体もヒーター側に引き込まれようとする力が働く。この力の速度ベクトルが、吐出液体が飛翔しようとする速度ベクトルと反対方向となっていることにより主滴となる球状部分と流路液体との間に形成される柱状の液体(液柱)を引き伸ばす。これにより液柱状部分はより細長くなっていく(図10(f))。そして、完全に気泡が消滅した後しばらくしてから、液柱の状態を維持できなくなった吐出液体は液体の粘性を振り切って離脱し液滴となる(図10(g))この液滴のちぎれの際には微小なミストが発生することになる。やがて、飛翔した液滴はその速度差と液体の表面張力により主滴と副滴(サテライト)に更に分離していく(図10(h))。このサテライトは主滴の後方を飛翔するため、主滴との着弾位置がずれて紙面に付着するため、画像品位を低下させる要因となる。
【0005】
図12は従来のインクジェットヘッドを用いた、気泡が大気と連通するバブルスルージェット(BTJ)吐出方式の、一般的な吐出工程を示す模式図であり、図10のBJ吐出方式より、流路の高さが低く形成されている。図10のBJ吐出方式と同様の部分の説明は省略する。消泡過程(図12(e)〜(g))において、メニスカスが吐出口内部に引き込まれる際に、インク流路の手前側と奥側で引き込まれ方に差が生じ、メニスカスが非対称となる(図12(f))。これによりメニスカスと吐出液滴の分離時において、吐出液滴の尾引き後端部が曲がる(図12(g))。この為、尾引きが曲がった部分から生成されたサテライトが主滴の軌道とずれて飛翔し、主滴から離れた位置に着弾してしまう。
【0006】
近年、写真出力等高精細な画像を求められるインクジェットプリンタにおいては、画像品位を低下させるサテライトに関しては、できるだけ少なくすることが望ましい。サテライトの低減に関しては、例えば特許文献1に記載されるように飛翔液滴における尾引き(インクテール)の長さを短くすることが知られている。特許文献1では、吐出口の間隔を部分的に短くすることによりメニスカス力を高め、メニスカス力によって吐出口からの液面のゆれを低減させ飛翔液滴の尾引きを短くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−235874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成は、写真出力等の高画質ヘッドに用いられる吐出口よりも大きな形状を想定しており、吐出される液滴サイズも大きい。このような特許文献1の構成を、上述の写真出力等に用いられる微小な液滴のヘッドに用いた場合、液滴分離のメカニズムは基本的に従来と変わらず、尾引き(液滴長さ)が短くなる量は、吐出速度にもよるがせいぜい5μm程度である。すなわち、特許文献1の構成では、従来のように吐出量が大きい場合にはそれなりにサテライト低減効果があるものの、上述した写真画質相当に用いられる程度に吐出量が小さい場合には、ほとんどサテライトの低減効果は見られない。
【0009】
そこで、本発明者らは、尾引きの長さをもっと短くしてサテライトを低減するためには、吐出液体の分離時間を充分に早めることが必要であると考えた。つまり、吐出口から外部に伸びた吐出液体が、吐出口内にある液体から分離する間も、吐出液体の先頭は進行を続けるため、吐出液体が吐出口内の液体から分離するタイミングが早ければ早いほどほど、飛行する液滴の尾引きの長さは短くなる。この観点からは吐出液体の分離タイミングが消泡工程中まで早くなることが望ましい。
【0010】
しかしながら、従来の分離メカニズムを踏襲したまま、吐出液体の分離タイミングを早めることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の問題を解決する手段として、本発明は、液体を吐出する吐出口と、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、前記吐出口は互いに並列する側壁部と、前記側壁部同士をつなぐ前記側壁部の面と交差する方向に延在する先端壁部と、を含む、前記吐出口の中心に向かって突出する複数の突起部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、吐出口から外部に伸びた吐出液体が、吐出口内にある液体から分離するタイミングを大幅に早めることが可能となり、画質の低下を引き起こすサテライト及びミストの一層の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドにおける、ノズルの断面図を示す図である。(b)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドにおける、吐出口方向から見たヒーターと流路の形状を示す図である。(c)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドにおける、吐出口形状を示す図である。
【図2】図1(b)のA−A線でのヘッド断面図における吐出工程図である。
【図3】図1(b)のB−B線でのヘッド断面図における吐出工程図である。
【図4】図2および図10の液柱の太さの最小径と吐出工程との関係を示すグラフである。
【図5】(a)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの吐出口形状において、突起が1つの形状模式図である。(b)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの吐出口形状において、突起が3つの形状の模式図である。(c)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの吐出口形状において、円吐出口に突起が2つの模式図である。
【図6】(a)は、図1(a)に示すヘッドを用いて液体が吐出される模式図である。(b)は、図1(b)に示すヘッドを用いて液体が吐出される模式図である。(c)は、図1(c)に示すヘッドを用いて液体が吐出される模式図である。
【図7】本発明に適用可能な液体吐出装置の要部を示す概略斜視図である。
【図8】本発明に適用可能な液体吐出記録装置に搭載可能なカートリッジである。
【図9】(a)は、発明に適用可能な液体吐出ヘッドの要部の概略斜視図である。(b)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの要部の吐出口の拡大図である。
【図10】従来の丸型の吐出口を用いたBJ吐出方式の吐出工程図である。
【図11】(a)〜(f)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの製造工程の模式図である。
【図12】従来の丸型の吐出口を用いたBTJ吐出方式の吐出工程図である。
【図13】BTJ吐出方式における本実施例の、突起の垂直方向からみた吐出工程図である。
【図14】BTJ吐出方式における本実施例の、突起方向からみた吐出工程図である。
【図15】本実施例におけるヘッドの例を示す模式図である。
【図16】(a)および(b)は、本実施例におけるヘッドの例を示す模式図である。
【図17】本実施例に適用可能な吐出口の模式図である。
【図18】(a)および(b)は、比較例の吐出口の模式図である。
【図19】(a)および(b)は、比較例の吐出口の模式図である。
【図20】本実施例における突起と、その間に形成される液体の動きの模式図である。
【図21】(a)および(b)は、比較例における突起と、その間に形成される液体の動きの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書における「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する事を示す。さらに、有意無意を問わず、視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成するものも含む。また、媒体に液体を付与することで、媒体の加工を行う場合も含む。また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。さらに、「インク」や「液体」とは、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成を行うものを示す。また、記録媒体の加工、或いは記録媒体に付与される液体の凝固または不溶化等、処理剤として用いられる液体も含む。「流体抵抗」とは液体の動きやすさを示すものであり、例えば狭い部分においては液体が動きにくいので流体抵抗が高くなり、広い部分においては液体が動きやすいので流体抵抗は低くなる。また、本明細書中に用いられる平行や垂直、直線といった用語は、製造誤差程度の範囲は含むものとする。
【0015】
(液体吐出装置について)
図7は本発明を適用できる液体吐出ヘッドおよびこのヘッドを用いる液体吐出装置としての液体吐出記録装置(インクジェットプリンタ)の一例の要部を示す概略斜視図である。
【0016】
液体吐出記録装置は、ケーシング1008内に記録媒体としての用紙1028を、矢印P方向に間欠的に搬送する搬送装置1030を含む。この他に、液体吐出記録装置は、用紙1028の搬送方向Pに直交する方向Sに平行に往復運動せしめられ、液体吐出ヘッドを有する記録部1010と、該記録部1010を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部1006とを含んで構成される。
【0017】
搬送装置1030は、互いに平行に対向配置される一対のローラユニット1022aおよび1022bと、一対のローラユニット1024aおよび1024bと、これらの各ローラユニットを駆動させる駆動部1020とを備えている。駆動部1020が作動すると、ローラユニット1022aおよび1022bと、ローラユニット1024aおよび1024bと、により用紙1028は狭持されて、P方向に間欠送りで搬送される。
【0018】
移動駆動部1006は、ベルト1016と、モータ1018とを有する。ベルト1016は、回転軸に所定の間隔をもって対向配置された、プーリ1026aおよび1026bに巻きかけられ、ローラユニット1022aおよび1022bに平行に配置される。モータ1018は、記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されるベルト1016を順方向および逆方向に駆動させる。
【0019】
モータ1018が作動し、ベルト1016が矢印R方向に回転すると、キャリッジ部材1010aは矢印S方向に所定の移動量だけ移動する。また、ベルト1016が矢印R方向とは逆方向に回転すると、キャリッジ部材1010aは矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動する。さらに、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が、記録部1010のインクを吐出する面に対向して設けられる。
【0020】
記録部1010は、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられたカートリッジ1012を有している。カートリッジは、例えばイエロー,マゼンタ,シアンおよびブラックごとにそれぞれ、1012Y,1012M,1012Cおよび1012Bと、各色設けられている。
【0021】
(カートリッジについて)
図8は上述の液体吐出記録装置に搭載可能なカートリッジの一例を示す。本実施例におけるカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、液体吐出ヘッド100と、インクなどの液体を収容する液体タンク1001とで主要部が構成されている。液体を吐出するための多数の吐出口32が形成された液体吐出ヘッド100は、後述する各実施例に対応したものである。インクなどの液体は、液体タンク1001から図示しない液体供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室へと導かれるようになっている。本実施例におけるカートリッジ1012は、液体吐出ヘッド100と液体タンク1001とを一体的に形成したものであるが、液体吐出ヘッド100に対し、液体タンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。
【0022】
上述の液体吐出記録装置に搭載可能な液体吐出ヘッドについて、説明を行う。
【0023】
(液体吐出ヘッドの構造)
図9(a)は本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの要部を模式的に示す概略斜視図であり、発熱素子を駆動するための電気的な配線などは省略する。図9(a)中の矢印Sは、ヘッドが液滴を吐出する記録動作中に、ヘッドと記録媒体とが相対的に動く方向(主走査方向)を示す。本実施例においては、図7に示すように記録動作中は、ヘッドが記録媒体に対して動く例を示す。
基板34は、液体を流路に供給する長溝状の貫通口からなる供給口33を備える。供給口33の長手方向の両側に、熱エネルギー発生手段である発熱素子(ヒーター)31を、600dpiの間隔で配置したヒーター列を千鳥状に配置することで、1200dpiを達成している。この基板34上には流路を形成するための流路形成部材として、流路壁36と、吐出口32を備える吐出口プレート35が設けられている。
【0024】
(吐出口の形状)
本発明に適用可能な吐出口の形状について図1(a)、1(b)および1(c)を用いて説明を行う。図1(a)にノズルの断面図を、図1(b)にヒーターと流路の形状を吐出口方向から見た図を、図1(c)に吐出口32の形状を示す。
【0025】
本発明の吐出口形状においては、図1(c)に示すように、吐出口外縁に対して内側に少なくとも1つの突起を有するという特徴的な構成となっている。この突起は、対称的に設けられ、突起間の隙間に吐出口の最小径Hを形成している。この突起の幅と突起の隙間の部分は吐出口の他の部分に比べ、著しく流体抵抗が高い第1の領域である高流体抵抗領域55となる。そして、高流体抵抗領域55を境にその両側(突起の両側の位置)に第2の領域として低流体抵抗領域56が設けられる。本発明ではこの高流体抵抗領域と低流体抵抗領域との流体抵抗の差が充分にあることがポイントである。したがって、突起は局所的に設けられていることが望ましく、低流体抵抗領域における流体抵抗は、突起を設けないものに比べ、それほど高くなっていないことが望ましい。このような構造であれば、吐出口の外縁形状は、円、楕円、四角形などいずれの構成をとることも可能である。
【0026】
図9(b)は、図9(a)に示した吐出口の一例を拡大した図である。一般的に、液滴が紙面に着弾する位置のズレによる画質の低下は、同じ吐出口から吐出した液滴によって記録媒体上にラインが形成されるために生じる。つまり、ヘッド走査方向Sにおける液滴の位置ズレより、Sと垂直な方向における液滴のズレの影響を大きく受ける。図9(b)に示すような、一対の突起を有する吐出口形状の場合、突起の形状、特に突起長さにばらつきが生じて非対称になった時の液滴の着弾ズレは、突起の伸びる方向(図9(a)及び9(b)のS方向)に生じる。この為、吐出口の突起は、ヘッドの主走査方向Sに対して平行に配置されるのが好ましい。このように配置を行うことで、突起形状のばらつきによる画質への影響を軽減させる事が可能となる。また,記録媒体の幅以上のヘッドを用いて記録を行うフルライン型ヘッドの場合においても、上述と同じ理由で、突起の方向は、主走査方向(ヘッドが液滴を吐出する記録動作中に、ヘッドと記録媒体とが相対的に動く方向)に形成されるのが望ましい。
【0027】
また、吐出口面(記録媒体に対面する面)35aと、凸状部である突起の吐出口面側には、撥水処理が施されるのが好ましい。吐出口面および突起の吐出面側に撥水層が形成されることにより、吐出される液体の後部の分離がよりスムーズに行われる。
【0028】
(吐出の原理について)
前述のようにサテライト液滴を低減させる為には、液滴の先端から後端までの液滴の長さを短くすることが有効であり、そのために、本発明では液滴の新たな分離メカニズムを用いることにより液滴が分離するタイミングを早めている。この吐出原理について、吐出工程図を用いて説明する。
【0029】
(BJ吐出の例)
図2は本実施例における吐出工程図である。図2は、気泡が大気と連通しないバブルジェット(登録商標)(BJ)吐出方式の吐出状態を示す。図2(a)〜(g)は図1(b)のA−A線でのヘッド断面図、図3(a)〜(g)は図1(b)のB−B線でのヘッド断面図であり、図2(a)〜(g)と図3(a)〜(g)の各工程は対応している。
まず、図2(a)の状態から、最大発泡状態となる図2(d)までの気泡の成長工程については従来と同様である為、説明は省略する。図2(d)の最大気泡発泡状態の気泡は吐出口内にまで成長が及んでいる。
【0030】
最大発泡状態時の気体部分は大気圧に比べて充分に低い圧力となっている。このため、この後、気泡の体積は減少し、周囲の液体を気泡のあった場所に急激に取り込もうとする。この液体の流れによって吐出口内部でもヒーター側に液体が戻されるが、吐出口形状が図1(c)のようになっていることから、低流体抵抗部である突起が設けられていない個所から積極的に液体が引き込まれる。この際、吐出口内部の側面である内側面と柱状の液体との間の低流体抵抗部に形成された液面が、発熱素子側に大きく凹状に落ち込む。一方で、高流体抵抗部である突起間の部分ではこの時点では液体がとどまろうとするため、図2(e)に示されるように吐出口開口端部近傍の吐出口内の液体は高流体抵抗部の突起間にのみ液面(液膜)を張ったように残る状態となる。つまり、吐出口外へ延びる柱状の液体に繋がる液面を、高流体抵抗領域(第1の領域)にて保持しつつ、複数の低流体抵抗領域(第2の領域)にて、ヒーター側に、吐出口内の液体を引き込む。これにより、吐出口内における複数(本実施例では2つ)の低流体抵抗部で、大きく凹状に落ち込んだ液面がそれぞれ形成されている状態になる。この時の柱状の液体(液柱)52の状態を図6(a),6(b)および6(c)に立体的に示す。
【0031】
このとき高流体抵抗部の突起間に残る液体の量が、液柱の径で規定される液量に対して少ないため、突起によって液柱が部分的に細くなり“くびれ部”が形成される。ここで、図6(a)は、突起と垂直な方向からみた、液柱の状態を示したシミュレーションの斜視図である。図6(b)は、突起方向からみた、液柱の“くびれ部”を、拡大したシミュレーションの斜視図である。突起部の上部、液柱の付け根に形成される“くびれ部”は、図6(a)および6(b)の両方向から確認される。
その後、吐出口外へ延びる液柱に繋がる液面(液膜)を突起間の高流体抵抗領域にて保持しつつ、突起上部の高流体抵抗領域にできた液柱のくびれ部にて、吐出口外へ延びる液柱の分離が行われる(図6(c))。このタイミングで吐出液体が分離することで従来よりも1〜2μsec以上従来よりも分離時間を早めることができることになる。すなわち、液滴の吐出速度が15m/secであるとすれば、尾引きの長さが15〜30μm以上短くなる。
【0032】
このとき突起間の液体にはこの消泡に伴うヒーター側に引き込まれようとする力はほとんど働いていないので、従来のように吐出液体が飛翔しようとする速度ベクトルと反対方向となることはなく、液滴の後端部分の速度は従来に比べ、充分に速くなる。そして吐出液体の液柱状の部分を引き伸ばし細長くするような現象は実質的に生じず、この結果、吐出液体の分離はスムーズに行われ、従来、吐出液体(液柱)を分離する時に多数発生していたミストは、格段に抑制される。
【0033】
その後、飛翔した液滴の後端部分がその表面張力により球状となっていき、やがて主滴と副滴(サテライト)に分離する。なお、液滴の後端速度が液滴先端に速度にくらべて差が充分に少なければ、分離したサテライトは飛翔中もしくは紙面上で合体することとなり実質的にサテライトが防止される。
【0034】
図4は、本発明の吐出工程を示す図2(線P)と従来の吐出工程を示す図10(線Q)の液柱の太さの最小径と、吐出工程との関係を示すグラフである。なお、ここで液柱太さの最小径とは、吐出口から外にせり出した液柱の中で、主滴となる球状部分を除いた液柱の吐出方向における断面が最も小さい部分の径のことを示す。また、横軸の(d)〜(g)は図2および10の各工程に対応する。
【0035】
図4において、初期の液柱の太さが違うのは、本発明に対応する吐出口形状が、従来の円形吐出口を二つの半円に分かち、その半円間に突起を挿入した形状となっていて、従来よりも吐出口の最大径が伸びていることに起因する。
【0036】
従来構成では、図面に示されるように時間の経過に伴い、ほぼ一定の割合で液柱の太さの最小径が小さくなっていく。これに対して、本発明の構成では、消泡工程において液柱の太さの最小径の時間による変化率が急激に変化していることがわかる。これは前述したように、消泡に伴う部分的なメニスカスの引き込みにより、突起により保持された液柱に接する液体の量が激減して、液柱の根元にくびれ部が生じたものと思われる。これにより、工程(e)では液柱の太さが極めて細くなり、吐出液体の分離時間が従来のものに対して早められていると考えられる。
【0037】
(BTJ吐出の例)
図13に、気泡が大気と連通するBTJ(バブルスルージェット)の、本実施例の吐出状態の模式図を示す。図13(a)〜(g)は突起方向と垂直方向からみた、ヘッド断面図、図14の(a)〜(g)は突起方向からみたヘッド断面図であり、図13(a)〜(g)と図14(a)〜(g)の各工程は対応している。上述のBJ吐出方式と同様である部分の説明は省略する。ここで、BTJになる条件は、先ほどのBJの例(図1(a)、1(b)および1(c))と比べて、ヒーターから吐出口までの距離OHを短くすればよい(20〜30umにする)。この為、気泡がより上方(吐出口方向)へ成長し(図13(d))、メニスカスがより吐出口内部へ引き込まれ、ノズル内の気泡と連通する(図13(f))。このように、低流体抵抗領域において、メニスカスが引き込まれ易くなり、突起間に液膜を張った状態が、より早いタイミングで訪れ、液滴が分離する時間が早くなる。
【0038】
また、図12に示すように、従来の突起の無い吐出口を用いた場合には、吐出液滴の尾引き後端部が曲がり、サテライトが主滴の軌道とずれて飛翔していた。しかし、本実施例のような突起をつけることで、従来のBTJに比べて、吐出液滴の分離時間を早めて尾引きを短くする効果に加えて、図12(g)に見られるような分離時の尾引き曲がりを抑制する効果も得られる。これは、図13、14に示すように、液滴の分離が吐出口の突起間で行われることにより、常に吐出口の中心で液滴が分離する為である。よって、吐出液滴が飛翔する際の軌道の直線性が保たれ、サテライトの発生並びに画像の劣化を抑制できる。
【0039】
(突起の形状について)
本発明に好適に用いられる突起の形状について、より詳細に説明を行う。ここでいう突起の形状とは、液体の吐出方向から吐出口を見た突起の形状、つまり液体を吐出する方向に関する吐出口の断面形状を示す。
【0040】
本実施例における吐出口の形状を図17に示す。前述の高流体抵抗領域55と低流体抵抗領域56とを良好に形成するためには、低流体抵抗領域における最短部分の長さWが、突起により形成される最短距離(突起間隙間)Hよりも長いことが望ましい。
【0041】
なお、突起の数が二つ以下であり、突起の幅が先端の曲率を有する部分と付け根の部分を除いて、ほぼ一様であるときには、突起が無い場合の吐出口の仮想的な外縁の吐出口の最小径(本実施例で突起が2本の場合は、突起の付け根から相対する突起の付け根までの距離。突起が1本の場合は、突起付け根から対応する縁までの距離。)をM、吐出口の最大径をL、突起の半値幅をa、突起先端から突起が凸となる方向の吐出口の縁までの距離H、とした際に、M≧(L−a)/2>Hを満たすと、吐出口における半円部と突起間の面積のバランスが、本発明の吐出方法を実施するのに好適なものとなる。より好ましくは、M≧(L−a)である。また、突起隙間Hは0より大きく、突起間に液膜が保持されれば、本実施例の吐出方式となる。
【0042】
図17のXは、突起領域を示す。突起領域Xとは、突起が吐出口の内側に伸びる方向(突起が凸となる方向)の突起の長さ(x1:突起付け根から突起先端までの長さ)と、突起の幅方向の突起付け根の幅(x2:突起付け根の屈折点から突起先端を越えて反対側の屈折点までの直線距離)と、を2辺にもつ長方形、または正方形からなる。x2において屈折点が明確で無い場合には、吐出口外周において、突起の付け根に接線を引いた際の2つの接点を屈折点とみなす。本実施系においては、0<x2/x1≦1.6の範囲に突起があることで、突起間における液膜の保持力を高め、液滴が分離される瞬間まで突起間のメニスカスを吐出口表面付近で好適に維持し、尾引き長さを短くすることができる。また、M≧(L−x2)/2>Hの範囲にあることで、吐出口における半円部と突起間の面積のバランスが、本発明の吐出方法を実施するために、より好適なものとなる。
【0043】
本発明は、突起間で液膜が形成・保持されることで、液柱が形成された後、早い段階で液柱が液膜の吐出口表面側で切断され、液滴として吐出される為、吐出液滴の尾引きが短くなる。つまり、液滴が分離する瞬間まで突起間に液膜を保持しておくことが重要であり、突起先端の形状は、突起間で形成される液膜を保持しやすい(表面張力が保たれやすい)形状である必要がある。
【0044】
図20は、本実施例において、気泡収縮工程における吐出口内の液体の動きを説明する模式図である。本実施例の吐出口は、半円を広げその間に突起を挿入した形状をとる。この為、気泡収縮工程において、図20に示す低流体抵抗領域の、白抜きで示すように半円状にメニスカスがヒーター側に落ち込む力が働き、斜線で示すように突起間の液膜が保持されやすい。さらに、突起の両サイドに直線部を有しており、この直線部が平行である為、低流体抵抗部のメニスカスが、より半円状に落ち込みやすい。また、本実施例においては、突起先端が曲率を持つ例を示したが、突起先端が、突起が凸となる方向に垂直な直線部を有する形状、例えば突起先端が四角形であっても本実施例の効果はある。
【0045】
上述のような、突起及び吐出口の形状であるため、図6(b)および6(c)のシミュレーションに示すように、突起間の液膜の保持力が高く、図6(b)液柱が形成される間も、図6(c)液柱が液膜から分離されて飛翔した後も、突起間に液膜が保持される。この為、液柱が液膜から分離される場所は、吐出口表面に近くなり、吐出される液滴の尾引き長さを短くすることが可能となり、サテライトの低減に繋がる。
【0046】
さらに、図1(a)の断面図に示すように、液体が吐出される方向における吐出口部の中心軸は、吐出口表面及びエネルギー発生素子と垂直であるのが、メニスカスの位置の対称性及び吐出の安定性から好ましい。吐出口部の中心軸が、吐出口表面もしくは発熱素子と垂直でない場合には、気泡収縮段階で吐出口部内でのメニスカス位置が発熱素子方向へ移動する際に、メニスカス位置の非対称性が強く、本発明の効果を良好に得られない。
【0047】
(比較例の突起形状)
図18(a)、18(b)、19(a)および19(b)に、比較例における突起の形状を示す。図18(a)の吐出口は、円を2つ繋ぎ合わせた形態である。吐出口の長辺は20.0μm、短辺は4.5μmとした。図18(a)の点線の四角で示す突起領域Xにおけるx1(吐出口中心に向かう方向)は2.9μm、x2(突起の付け根の幅)は9.8μmとする。x2/x1=3.4である。吐出シミュレーションを図18(b)に示し、これは、図3の(e)〜(f)、図14の(e)〜(f)の工程間に対応する。図18(b)では、液柱が吐出口内の液体から分離する前に、突起間の液体の保持が崩れ始め、液柱の切れる部分が吐出口内のヒーター側に落ちてしまっている。その為、吐出される液滴の尾引き長さは、本実施例の形状ほど短くならず、サテライトの発生の原因となる。
【0048】
これは、図18(b)の突起は先端にいくにつれて急激に細くなり先端が尖った形状をとる為、気泡が収縮し、吐出口内の液体がヒーター側に引き込まれる時に、メニスカスに働く力が本実施例と異なるからである。気泡収縮の際、吐出口内側の壁面に近いほどヒーター側へインクが移動する速度が遅いため、図21(a)に示すように、液体が吐出口内側に沿うように斜線部で残り、吐出口中心部においてメニスカスが白抜き部のように、2つの円がくっついた形状で落ち込む力が働く。この為、突起間の液体もヒーター側に引きこまれ、突起間に液体が保持されにくくなる。
【0049】
一方、図19(a)の吐出口は、突起形状が非常に緩やかである。吐出口の長辺は20.6μm、短辺は7.7μmとした。図19(a)の点線の四角で示す突起領域Xにおけるx1(吐出口中心に向かう方向)は2.2μm、x2(突起の付け根の幅)は8.2μmとする。x2/x1=3.7である。これを示すシミュレーションを図19(b)に示し、これは、図3の(e)〜(f)、図14の(e)〜(f)の工程間に対応する。図19(b)においても、図18(b)と同様に、液柱が吐出口内の液体から分離する前に、突起間の液体の保持が崩れ始め、液柱の切れる部分が吐出口内のヒーター側に落ちてしまっている。その為、吐出される液滴の尾引き長さは、本実施例の形状ほど短くならず、サテライトの発生の原因となる。
【0050】
これは、気泡が収縮し、吐出口内の液体がヒーター側に引き込まれる際に、メニスカスに働く力が本実施例と異なるからである。図19(b)の突起は非常に緩やかな為、液体を保持する高流体抵抗部とメニスカスをヒーター側に落ち込ませる低流体抵抗部の差がほとんどない。この為、図21(b)に示すように、気泡収縮の際、液体が吐出口内側に沿うように斜線部で残り、吐出口中心部においては白抜き部のようヒーター側に引きこまれる力が働く為、突起間に液体が保持されにくくなる。
【0051】
(本発明に適用可能な吐出口の他の形状)
次に、本実施例では、ヒーター面に対して垂直な方向から見た例を図15、16(a)および16(b)に示す。図15のヘッド構造は、2段吐出口に突起がついた形状である。ヒーター上の流路5に連通するように第1の吐出口6が設けられ、該第1の吐出口6上に、第1の吐出口より小さな第2の吐出口7が設けられ、第2の吐出口7に突起部10が形成される。第1の吐出口6が大きいため吐出液体の目詰まりを抑制し、第2の吐出口7で微小な液滴を形成することが可能となる。さらに、第2の吐出口7の突起で吐出液体の尾引きを短くすることに加えて、抵抗の少ない第1の吐出口部分を有することで、吐出効率が向上する。また、ノズルの前方抵抗が軽減されることで、気泡が吐出口上方に成長しやすくなり、気泡が収縮する際にメニスカスをノズル内部に強く引き込むことができ、突起間に液膜を張った状態がより早く訪れ、液滴の分離時間が早くなる。
【0052】
図16(a)および16(b)は、突起部がテーパー形状の図を示す。図16(a)は、吐出口は吐出方向に対して真っ直ぐな形状をしており、突起は吐出方向に向かって狭まるテーパー形状である。図16(b)は、吐出口及び突起部が吐出方向に向かって狭まるテーパー形状である。このような形状をとることで、吐出方向における抵抗が小さくなる為、前述した2段吐出口と同様の効果が得られ、吐出効率の向上と液滴分離時間の短縮という効果が生まれる。また、図16(b)において、吐出口と突起部のテーパーの角度は同じでもよいが、突起部のほうが、吐出方向に向かってより絞られている形状が好ましい。このように、吐出方向において、吐出口の上側(吐出口プレートの表面側)の方が、下側(ヒーター側)よりも突起間の隙間が狭いと、突起間の液体は、表面エネルギーが増える方向である、突起間が広がる下側には行き難く、上側で液膜が保持されやすい。これにより、吐出液体が吐出口プレート表面に近い場所で分離し易くなり、吐出される液滴の尾引き長さが短くなる効果がある。
【0053】
いずれの場合においても、液体が吐出される方向における吐出口部の中心軸は、吐出口表面及び発熱素子と垂直であり、吐出口部の中心軸に対して2段形状もテーパー形状も対象であるのが、メニスカスの位置の対称性及び吐出の安定性から好ましい。
【0054】
さらに、突起の数は2つに限られることなく、図5(a)に示すように1つの突起、もしくは図5(b)に示すような3つの突起の場合も包含する。突起の数が1つのときの突起間隙間Hとは、突起の先端から吐出口外縁までの最短距離を指す。また、突起部の厚さは吐出口が形成される部材より薄くても良い。さらに、突起が複数ある場合には、それぞれの突起の大きさが異なる形状をとることも可能である。突起の数が多くなりすぎると、吐出口の形状が複雑になり、液体の目詰まりが生じやすくなり好ましくない。
【0055】
(液体吐出ヘッドの製造方法)
基板34は、流路形成部材の一部として機能し、発熱素子、流路、吐出口プレート等の支持体として機能し得るものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス,セラミックス,プラスチックあるいは金属などがあげられる。本実施例では、基板34はSi基板(ウエハ)を用いる。吐出口の形成は、レーザー光による形成の他、吐出口が形成された吐出口プレート35を感光性樹脂として、MPA(Mirror Projection Aligner)などの露光装置により形成することもできる。また、流路壁36を例えばスピンコートなどの手法によって基板34上に形成することによりインク流路壁36と吐出口プレート35とを同一部材として同時に形成することも可能である。また、吐出口はフォトリソグラフィー工程によるパターニングで形成しても良い。
【0056】
図11(a)、11(b)、11(c)、11(d)、11(e)および11(f)は、本実施例のヘッドの製造工程を模式的に示す図である。駆動回路やヒーター31を作り込んだシリコン基板34を用意する(図11(a))。図11(a)のシリコン基板34上に感光性樹脂を塗布し、露光・現像することで、流路となる部分38をパターニングする(図11(b))。次に、流路となる部分38を覆うように、流路壁や吐出口プレートとなる感光性樹脂36を塗布する(図11(c))。感光性樹脂36に、凸形状の突起10を有する吐出口32を露光・現像して、パターニングする(図11(d))。シリコンの結晶方位によるエッチング速度の違いを利用する異方性エッチングの技術を用いて、シリコン基板34の流路形成面と逆側から、インク供給口33を形成する(図11(e))。最後に、流路となる部分にある感光性樹脂38を溶剤によって溶かし出し、溶かされた部分がインク流路となり、中空のヘッドが完成する(図11(f))。こうして製造されたヘッド部分に、電気実装や、インクタンクからヘッド部分にインクを供給する供給路等が形成され、ヘッドカートリッジが作成される。
【0057】
本発明の効果を確認するため、下記実施例にて、様々な構成のヘッドを作成し、各ヘッドに対して評価を行った。
【0058】
(実施例1、比較例1)
本実施例及び比較例において、液体が吐出された状態をストロボ写真にて観察し、吐出液体が分離する時間と、吐出液体の分離直後の液滴の先端から後端までの液滴長さを測定した。なお、吐出液体の分離時間については、ヒーターに電圧を印加してから液柱が液膜から分離するまでの時間とする。吐出速度は13m/sとなるようにヒーターへの電力投入時間を調整した。インクの物性値は、粘度=2.1cps、表面張力=30dyn/cm、密度=1.06g/cm3である。サテライトの個数は、1回の吐出で観察されるサテライト数の、10回平均を示してある。また、ミストとなるパーティクル数も測定した。実施例1、比較例1のヘッドの構成及び測定結果を下記表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
吐出口内には、突起10が1対設けられており、吐出方向における吐出口の断面において、突起の先端は吐出口の重心に向かうように設けられており、突起の先端間を結んだ直線が、吐出口の中心を通る。突起領域Xにおいて、突起が凸となる方向の突起の長さx1は、突起長さbと等しい。突起が無い場合の吐出口の仮想的な外縁の吐出口の最小径Mは、突起の付け根から相対する突起の付け根までの距離であり、表の吐出口直径φと等しい。吐出口の最大径Lは、表のφの値に突起幅aを足した値である。吐出口の最小径Hは、突起間の隙間であり、φの値からb×2の値を引いた値である。突起幅aと突起領域x2との関係は、フォトリソグラフィーで露光の際に突起の付け根が広がる為、突起領域x2の長さは、突起幅aより数ミクロンほど長い。本実施例は、x2/x1=0.8で、x1≧x2である。
【0061】
図1(a)、1(b)および1(c)に示すように、流路5の高さhは14μmである。発熱素子であるヒーター31から吐出口プレート35表面までの距離(OH)は25μmである。流路と連通し、気泡が発生する発泡室内に配置されたヒーター31のサイズは17.6×17.6μmである。吐出口の長径Lは19.6μmである。突起10の付け根から対向突起の付け根までの距離である、吐出口の仮想的な外縁の短径Mは16.6μmである。突起10の長さbは5.9μm、突起の半値幅aは3μm。突起の先端と、対向突起の先端までの距離Hは4.2μmである。突起10の先端は、曲率直径Rが2.2μmで丸みをおびている。吐出量は約5.4ngである。なお、突起は吐出口プレートの厚みと同じ厚みとなっている。この吐出口形状は直径φ16.6μmの円を二つの半円に分かち、その半円間に突起を挿入した形状となっている。このヘッドを、液滴の吐出速度が13m/sとなるようヒーターへの投入電力を調整し吐出を行った。
【0062】
比較例1−1のヘッドとして吐出口の形状を円とし、直径をφ16.6μmとした。それ以外の構成は、実施例1と同様である。吐出量に関しては5.8ngであった。吐出液体分離時間は、実施例1では、8.5μsecであったのに対して、比較例1−1のヘッドでは11μsecであり、実施例1の吐出液体が分離するまでの時間が格段に短くなっていた。液滴の長さは、実施例1では、117μmであるのに対し、比較例1−1のヘッドでは156μmである。これは、液滴長さにおいて、吐出液体が分離する時間差(吐出速度×分離時間差:13m/s×(11μsec−8.5μsec)=32.5μm)以上の液滴の長さが短くなっていた。このときのサテライト数に関しては、実施例1の平均が1.1個であったのに対して、比較例1−1のヘッドでは3個であった。また、ミストとなるパーティクルの個数を測定したところ、実施例1では15個であったのに対して、比較例1−1のヘッドでは3800個であった。上述の結果からも明らかなように本実施例の構成は比較例1に比べて、サテライト数が格段に低減していることがわかる。
【0063】
さらに、本発明のサテライト低減効果を確認するために、比較例1−2に、実施例1と吐出速度は異なるが、液滴長さがほぼ同じである、吐出口形状が直径13μmの円の例を示す。このときの吐出量は3ngであった。比較例1−2のヘッドでは、吐出液体分離時間は10μsec、液滴長さは116μm、サテライト数2.2個であった。
【0064】
本実施例と比較例1−2とを比較すると、尾引きの長さが同程度であっても、本実施例にかかるヘッドのほうがサテライトの個数が少ないことが解る。このことは、単に吐出液体を分離するまでの時間を短くすることで液滴長さを短くする効果のみがサテライト数低減に効いているわけではないことを示している。すなわち、尾引きの長さが多少長くても、本発明の構成では吐出液体の分離のメカニズムおよびタイミングの違いにより、主滴部と吐出液体の後端との速度差が十分に少ないため、このこともサテライトの低減に寄与していると考えることができる。しかも、この本発明の構成による吐出液体の分離のメカニズムにより、従来の構成に比べミストとなるパーティクル数も激減している。
【0065】
(実施例2、比較例2)
表2には、ヘッドの構成(吐出口径、流路、OH距離、突起形状)を変えた以外は、上述の実施例1と同様の条件で測定した結果を示す。実施例2−1は図17に示すように直径11μmの半円の間に突起を挿入した例であり、M、LおよびHと、表の値との関係は実施例1と同様である。本実施例では、x2/x1=1.35で、x1≧x2であり、吐出量は1.7ngである。比較例2は直径11μmの円吐出口であり、吐出量は1.5ngである。突起を有する本実施例のヘッドは、比較例の円に比べて、液体分離時間が早まり、吐出液滴の長さが短くなり、サテライトが低減することが確認できた。また、ミストとなるパーティクル数も激減した。
【0066】
【表2】
【0067】
(実施例3、比較例3)
表3には、ヘッドの構成(流路高さ、OH距離、突起形状)を変えた以外は、上述の実施例2と同様の条件で測定した結果を示す。
【0068】
実施例3−1〜3−5は、図17に示すように直径11μmの半円の間に、表に記載のサイズの突起を挿入した例であり、M、LおよびHと、表の値との関係は実施例1と同様である。本実施例の吐出量は1.7ngである。1.6≧x2/x1の範囲では、実施例3−1〜3−5に示すようにサテライト数が少ない結果が得られた。比較例3−1は直径11μmの円吐出口であり、吐出量は1.6ng。比較例3−2は直径11μmの半円の間に長さ0.7の突起を挿入した形状であり、吐出量は1.7ngである。ここで、比較例3−2の突起領域Xにおけるx1は0.7μm、x2は3.0μmであり、x2/x1=4.3となり、吐出液体分離時間も、液滴長さもサテライトも、本実施例に比べて増加した。
【0069】
【表3】
【0070】
(実施例4、比較例4)
表4は、吐出口の直径をさらに大きくした以外は、上述の実施例3と同様の条件で測定した結果を示す。
【0071】
実施例4は図17に示すように直径13μmの半円の間に、表に記載のサイズの突起を挿入した例であり、M、LおよびHと、表の値との関係は実施例1と同様である。本実施例では、x2/x1=0.8で、x1≧x2である。吐出量は2.3ngである。比較例4は直径13μmの円吐出口であり、吐出量は2.3ngである。このように、突起を有する本実施例のヘッドは、比較例の円に比べて、液体分離時間が早まり、吐出液滴の長さが短くなり、サテライトが低減することが確認できた。また、ミストとなるパーティクル数も激減した。
【0072】
【表4】
【0073】
(実施例5、比較例5)
表5には、ヘッドの構成(吐出口直径、OH距離、流路高さ、突起形状)を、上述の実施例4と変えたヘッドを用いる。また、液滴の吐出速度は、18m/sとなるようヒーターへの投入電力を調整し、インクの物性値は、粘度=2.2cps、表面張力=34dyn/cm、密度=1.06g/cm3とした。
【0074】
実施例5は図17に示すように直径14.3μmの半円の間に、表に記載のサイズの突起を挿入した例であり、M、LおよびHと、表の値との関係は実施例1と同様である。本実施例では、x2/x1=0.9で、x1≧x2である。である。比較例5は直径13.6μmの円の吐出口であり、実施例5と吐出量が4.0ngと揃うように吐出口の直径を選択した。液滴の吐出速度を、上述の実施例より速くした為、サテライトの数は上述の実施例より増えてはいるものの、突起を有する本実施例のヘッドは、比較例の円に比べると、液体分離時間が早まり、吐出液滴の長さが短くなり、サテライトが低減することが確認できた。また、ミストとなるパーティクル数も激減した。
【0075】
【表5】
【0076】
上述の各実施例で説明したように、本実施例のヘッドを用いることでサテライト液滴やミストによる画質の低下を低減させることが可能となる。また、上述の実施例では、エネルギー発生素子としてヒーターを用いた例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば圧電素子を用いた場合でも適用可能である。圧電素子を用いる場合には、気泡による収縮過程は無いが、液室を膨張させる電気信号を圧電素子に与えれば、メニスカスを吐出口内部に引き込むことが出来る。
【0077】
この出願は2005年11月29日に出願された日本国特許出願番号第2005−343943からの優先権を主張するものであり、その内容を引用してこの出願の一部とするものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を媒体に向けて吐出して記録を行う液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクなどの液体を吐出する方式としては、液体吐出方式(インクジェット記録方式)が知られており、液滴を吐出するために用いられる吐出エネルギー発生素子として、発熱素子(ヒーター)を利用する方法がある。
【0003】
図10は従来のインクジェットヘッドをもちいた、気泡が大気と連通しないバブルジェット(登録商標)(BJ)吐出方式の一般的な吐出工程を示す模式図である。なお、便宜上ここでは吐出口が形成されたオリフィスプレートから外部に飛び出ている部分の液体を吐出液体、吐出口内部にある液体を流路液体と称して区別する。
【0004】
まず、図10(a)の状態から、ヒーターに通電することによりヒーター表面に膜沸騰現象を生じさせる(図10(b))。この膜沸騰により生じたエネルギーにより吐出口が形成されたオリフィスプレート表面より液体がせり出していく(図10(c))。この時ヒーター近傍の液体は膜沸騰時に生じたエネルギーの慣性力により、ヒーターから離れるように移動していく。この液体の移動により気泡と液体の界面が動くのであたかもヒーター近傍の気体が成長しているような挙動を示すが、このときはヒーターの熱は断熱状態で気泡に伝わらないため、気泡の成長に伴い気体の圧力は低下していくことになる。また、この慣性力は、吐出液体の量をも増大させていく。やがて、液体の慣性力と気体の圧力低下に伴う復元力とがつりあったとき気泡の成長は止まり、最大発泡状態となる(図10(d))。最大発泡状態時の気体部分は大気圧に比べて充分に低い圧力となっているため、この後、気泡は消泡し始め、周囲の液体を気泡のあった場所に急激に取り込もうとする(図10(e))。この消泡に伴う流路液体の動きにより吐出口近傍の液体もヒーター側に引き込まれようとする力が働く。この力の速度ベクトルが、吐出液体が飛翔しようとする速度ベクトルと反対方向となっていることにより主滴となる球状部分と流路液体との間に形成される柱状の液体(液柱)を引き伸ばす。これにより液柱状部分はより細長くなっていく(図10(f))。そして、完全に気泡が消滅した後しばらくしてから、液柱の状態を維持できなくなった吐出液体は液体の粘性を振り切って離脱し液滴となる(図10(g))この液滴のちぎれの際には微小なミストが発生することになる。やがて、飛翔した液滴はその速度差と液体の表面張力により主滴と副滴(サテライト)に更に分離していく(図10(h))。このサテライトは主滴の後方を飛翔するため、主滴との着弾位置がずれて紙面に付着するため、画像品位を低下させる要因となる。
【0005】
図12は従来のインクジェットヘッドを用いた、気泡が大気と連通するバブルスルージェット(BTJ)吐出方式の、一般的な吐出工程を示す模式図であり、図10のBJ吐出方式より、流路の高さが低く形成されている。図10のBJ吐出方式と同様の部分の説明は省略する。消泡過程(図12(e)〜(g))において、メニスカスが吐出口内部に引き込まれる際に、インク流路の手前側と奥側で引き込まれ方に差が生じ、メニスカスが非対称となる(図12(f))。これによりメニスカスと吐出液滴の分離時において、吐出液滴の尾引き後端部が曲がる(図12(g))。この為、尾引きが曲がった部分から生成されたサテライトが主滴の軌道とずれて飛翔し、主滴から離れた位置に着弾してしまう。
【0006】
近年、写真出力等高精細な画像を求められるインクジェットプリンタにおいては、画像品位を低下させるサテライトに関しては、できるだけ少なくすることが望ましい。サテライトの低減に関しては、例えば特許文献1に記載されるように飛翔液滴における尾引き(インクテール)の長さを短くすることが知られている。特許文献1では、吐出口の間隔を部分的に短くすることによりメニスカス力を高め、メニスカス力によって吐出口からの液面のゆれを低減させ飛翔液滴の尾引きを短くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−235874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成は、写真出力等の高画質ヘッドに用いられる吐出口よりも大きな形状を想定しており、吐出される液滴サイズも大きい。このような特許文献1の構成を、上述の写真出力等に用いられる微小な液滴のヘッドに用いた場合、液滴分離のメカニズムは基本的に従来と変わらず、尾引き(液滴長さ)が短くなる量は、吐出速度にもよるがせいぜい5μm程度である。すなわち、特許文献1の構成では、従来のように吐出量が大きい場合にはそれなりにサテライト低減効果があるものの、上述した写真画質相当に用いられる程度に吐出量が小さい場合には、ほとんどサテライトの低減効果は見られない。
【0009】
そこで、本発明者らは、尾引きの長さをもっと短くしてサテライトを低減するためには、吐出液体の分離時間を充分に早めることが必要であると考えた。つまり、吐出口から外部に伸びた吐出液体が、吐出口内にある液体から分離する間も、吐出液体の先頭は進行を続けるため、吐出液体が吐出口内の液体から分離するタイミングが早ければ早いほどほど、飛行する液滴の尾引きの長さは短くなる。この観点からは吐出液体の分離タイミングが消泡工程中まで早くなることが望ましい。
【0010】
しかしながら、従来の分離メカニズムを踏襲したまま、吐出液体の分離タイミングを早めることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の問題を解決する手段として、本発明は、液体を吐出する吐出口と、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、前記吐出口は互いに並列する側壁部と、前記側壁部同士をつなぐ前記側壁部の面と交差する方向に延在する先端壁部と、を含む、前記吐出口の中心に向かって突出する複数の突起部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、吐出口から外部に伸びた吐出液体が、吐出口内にある液体から分離するタイミングを大幅に早めることが可能となり、画質の低下を引き起こすサテライト及びミストの一層の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドにおける、ノズルの断面図を示す図である。(b)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドにおける、吐出口方向から見たヒーターと流路の形状を示す図である。(c)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドにおける、吐出口形状を示す図である。
【図2】図1(b)のA−A線でのヘッド断面図における吐出工程図である。
【図3】図1(b)のB−B線でのヘッド断面図における吐出工程図である。
【図4】図2および図10の液柱の太さの最小径と吐出工程との関係を示すグラフである。
【図5】(a)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの吐出口形状において、突起が1つの形状模式図である。(b)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの吐出口形状において、突起が3つの形状の模式図である。(c)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの吐出口形状において、円吐出口に突起が2つの模式図である。
【図6】(a)は、図1(a)に示すヘッドを用いて液体が吐出される模式図である。(b)は、図1(b)に示すヘッドを用いて液体が吐出される模式図である。(c)は、図1(c)に示すヘッドを用いて液体が吐出される模式図である。
【図7】本発明に適用可能な液体吐出装置の要部を示す概略斜視図である。
【図8】本発明に適用可能な液体吐出記録装置に搭載可能なカートリッジである。
【図9】(a)は、発明に適用可能な液体吐出ヘッドの要部の概略斜視図である。(b)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの要部の吐出口の拡大図である。
【図10】従来の丸型の吐出口を用いたBJ吐出方式の吐出工程図である。
【図11】(a)〜(f)は、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの製造工程の模式図である。
【図12】従来の丸型の吐出口を用いたBTJ吐出方式の吐出工程図である。
【図13】BTJ吐出方式における本実施例の、突起の垂直方向からみた吐出工程図である。
【図14】BTJ吐出方式における本実施例の、突起方向からみた吐出工程図である。
【図15】本実施例におけるヘッドの例を示す模式図である。
【図16】(a)および(b)は、本実施例におけるヘッドの例を示す模式図である。
【図17】本実施例に適用可能な吐出口の模式図である。
【図18】(a)および(b)は、比較例の吐出口の模式図である。
【図19】(a)および(b)は、比較例の吐出口の模式図である。
【図20】本実施例における突起と、その間に形成される液体の動きの模式図である。
【図21】(a)および(b)は、比較例における突起と、その間に形成される液体の動きの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書における「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する事を示す。さらに、有意無意を問わず、視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成するものも含む。また、媒体に液体を付与することで、媒体の加工を行う場合も含む。また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。さらに、「インク」や「液体」とは、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成を行うものを示す。また、記録媒体の加工、或いは記録媒体に付与される液体の凝固または不溶化等、処理剤として用いられる液体も含む。「流体抵抗」とは液体の動きやすさを示すものであり、例えば狭い部分においては液体が動きにくいので流体抵抗が高くなり、広い部分においては液体が動きやすいので流体抵抗は低くなる。また、本明細書中に用いられる平行や垂直、直線といった用語は、製造誤差程度の範囲は含むものとする。
【0015】
(液体吐出装置について)
図7は本発明を適用できる液体吐出ヘッドおよびこのヘッドを用いる液体吐出装置としての液体吐出記録装置(インクジェットプリンタ)の一例の要部を示す概略斜視図である。
【0016】
液体吐出記録装置は、ケーシング1008内に記録媒体としての用紙1028を、矢印P方向に間欠的に搬送する搬送装置1030を含む。この他に、液体吐出記録装置は、用紙1028の搬送方向Pに直交する方向Sに平行に往復運動せしめられ、液体吐出ヘッドを有する記録部1010と、該記録部1010を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部1006とを含んで構成される。
【0017】
搬送装置1030は、互いに平行に対向配置される一対のローラユニット1022aおよび1022bと、一対のローラユニット1024aおよび1024bと、これらの各ローラユニットを駆動させる駆動部1020とを備えている。駆動部1020が作動すると、ローラユニット1022aおよび1022bと、ローラユニット1024aおよび1024bと、により用紙1028は狭持されて、P方向に間欠送りで搬送される。
【0018】
移動駆動部1006は、ベルト1016と、モータ1018とを有する。ベルト1016は、回転軸に所定の間隔をもって対向配置された、プーリ1026aおよび1026bに巻きかけられ、ローラユニット1022aおよび1022bに平行に配置される。モータ1018は、記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されるベルト1016を順方向および逆方向に駆動させる。
【0019】
モータ1018が作動し、ベルト1016が矢印R方向に回転すると、キャリッジ部材1010aは矢印S方向に所定の移動量だけ移動する。また、ベルト1016が矢印R方向とは逆方向に回転すると、キャリッジ部材1010aは矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動する。さらに、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が、記録部1010のインクを吐出する面に対向して設けられる。
【0020】
記録部1010は、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられたカートリッジ1012を有している。カートリッジは、例えばイエロー,マゼンタ,シアンおよびブラックごとにそれぞれ、1012Y,1012M,1012Cおよび1012Bと、各色設けられている。
【0021】
(カートリッジについて)
図8は上述の液体吐出記録装置に搭載可能なカートリッジの一例を示す。本実施例におけるカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、液体吐出ヘッド100と、インクなどの液体を収容する液体タンク1001とで主要部が構成されている。液体を吐出するための多数の吐出口32が形成された液体吐出ヘッド100は、後述する各実施例に対応したものである。インクなどの液体は、液体タンク1001から図示しない液体供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室へと導かれるようになっている。本実施例におけるカートリッジ1012は、液体吐出ヘッド100と液体タンク1001とを一体的に形成したものであるが、液体吐出ヘッド100に対し、液体タンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。
【0022】
上述の液体吐出記録装置に搭載可能な液体吐出ヘッドについて、説明を行う。
【0023】
(液体吐出ヘッドの構造)
図9(a)は本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの要部を模式的に示す概略斜視図であり、発熱素子を駆動するための電気的な配線などは省略する。図9(a)中の矢印Sは、ヘッドが液滴を吐出する記録動作中に、ヘッドと記録媒体とが相対的に動く方向(主走査方向)を示す。本実施例においては、図7に示すように記録動作中は、ヘッドが記録媒体に対して動く例を示す。
基板34は、液体を流路に供給する長溝状の貫通口からなる供給口33を備える。供給口33の長手方向の両側に、熱エネルギー発生手段である発熱素子(ヒーター)31を、600dpiの間隔で配置したヒーター列を千鳥状に配置することで、1200dpiを達成している。この基板34上には流路を形成するための流路形成部材として、流路壁36と、吐出口32を備える吐出口プレート35が設けられている。
【0024】
(吐出口の形状)
本発明に適用可能な吐出口の形状について図1(a)、1(b)および1(c)を用いて説明を行う。図1(a)にノズルの断面図を、図1(b)にヒーターと流路の形状を吐出口方向から見た図を、図1(c)に吐出口32の形状を示す。
【0025】
本発明の吐出口形状においては、図1(c)に示すように、吐出口外縁に対して内側に少なくとも1つの突起を有するという特徴的な構成となっている。この突起は、対称的に設けられ、突起間の隙間に吐出口の最小径Hを形成している。この突起の幅と突起の隙間の部分は吐出口の他の部分に比べ、著しく流体抵抗が高い第1の領域である高流体抵抗領域55となる。そして、高流体抵抗領域55を境にその両側(突起の両側の位置)に第2の領域として低流体抵抗領域56が設けられる。本発明ではこの高流体抵抗領域と低流体抵抗領域との流体抵抗の差が充分にあることがポイントである。したがって、突起は局所的に設けられていることが望ましく、低流体抵抗領域における流体抵抗は、突起を設けないものに比べ、それほど高くなっていないことが望ましい。このような構造であれば、吐出口の外縁形状は、円、楕円、四角形などいずれの構成をとることも可能である。
【0026】
図9(b)は、図9(a)に示した吐出口の一例を拡大した図である。一般的に、液滴が紙面に着弾する位置のズレによる画質の低下は、同じ吐出口から吐出した液滴によって記録媒体上にラインが形成されるために生じる。つまり、ヘッド走査方向Sにおける液滴の位置ズレより、Sと垂直な方向における液滴のズレの影響を大きく受ける。図9(b)に示すような、一対の突起を有する吐出口形状の場合、突起の形状、特に突起長さにばらつきが生じて非対称になった時の液滴の着弾ズレは、突起の伸びる方向(図9(a)及び9(b)のS方向)に生じる。この為、吐出口の突起は、ヘッドの主走査方向Sに対して平行に配置されるのが好ましい。このように配置を行うことで、突起形状のばらつきによる画質への影響を軽減させる事が可能となる。また,記録媒体の幅以上のヘッドを用いて記録を行うフルライン型ヘッドの場合においても、上述と同じ理由で、突起の方向は、主走査方向(ヘッドが液滴を吐出する記録動作中に、ヘッドと記録媒体とが相対的に動く方向)に形成されるのが望ましい。
【0027】
また、吐出口面(記録媒体に対面する面)35aと、凸状部である突起の吐出口面側には、撥水処理が施されるのが好ましい。吐出口面および突起の吐出面側に撥水層が形成されることにより、吐出される液体の後部の分離がよりスムーズに行われる。
【0028】
(吐出の原理について)
前述のようにサテライト液滴を低減させる為には、液滴の先端から後端までの液滴の長さを短くすることが有効であり、そのために、本発明では液滴の新たな分離メカニズムを用いることにより液滴が分離するタイミングを早めている。この吐出原理について、吐出工程図を用いて説明する。
【0029】
(BJ吐出の例)
図2は本実施例における吐出工程図である。図2は、気泡が大気と連通しないバブルジェット(登録商標)(BJ)吐出方式の吐出状態を示す。図2(a)〜(g)は図1(b)のA−A線でのヘッド断面図、図3(a)〜(g)は図1(b)のB−B線でのヘッド断面図であり、図2(a)〜(g)と図3(a)〜(g)の各工程は対応している。
まず、図2(a)の状態から、最大発泡状態となる図2(d)までの気泡の成長工程については従来と同様である為、説明は省略する。図2(d)の最大気泡発泡状態の気泡は吐出口内にまで成長が及んでいる。
【0030】
最大発泡状態時の気体部分は大気圧に比べて充分に低い圧力となっている。このため、この後、気泡の体積は減少し、周囲の液体を気泡のあった場所に急激に取り込もうとする。この液体の流れによって吐出口内部でもヒーター側に液体が戻されるが、吐出口形状が図1(c)のようになっていることから、低流体抵抗部である突起が設けられていない個所から積極的に液体が引き込まれる。この際、吐出口内部の側面である内側面と柱状の液体との間の低流体抵抗部に形成された液面が、発熱素子側に大きく凹状に落ち込む。一方で、高流体抵抗部である突起間の部分ではこの時点では液体がとどまろうとするため、図2(e)に示されるように吐出口開口端部近傍の吐出口内の液体は高流体抵抗部の突起間にのみ液面(液膜)を張ったように残る状態となる。つまり、吐出口外へ延びる柱状の液体に繋がる液面を、高流体抵抗領域(第1の領域)にて保持しつつ、複数の低流体抵抗領域(第2の領域)にて、ヒーター側に、吐出口内の液体を引き込む。これにより、吐出口内における複数(本実施例では2つ)の低流体抵抗部で、大きく凹状に落ち込んだ液面がそれぞれ形成されている状態になる。この時の柱状の液体(液柱)52の状態を図6(a),6(b)および6(c)に立体的に示す。
【0031】
このとき高流体抵抗部の突起間に残る液体の量が、液柱の径で規定される液量に対して少ないため、突起によって液柱が部分的に細くなり“くびれ部”が形成される。ここで、図6(a)は、突起と垂直な方向からみた、液柱の状態を示したシミュレーションの斜視図である。図6(b)は、突起方向からみた、液柱の“くびれ部”を、拡大したシミュレーションの斜視図である。突起部の上部、液柱の付け根に形成される“くびれ部”は、図6(a)および6(b)の両方向から確認される。
その後、吐出口外へ延びる液柱に繋がる液面(液膜)を突起間の高流体抵抗領域にて保持しつつ、突起上部の高流体抵抗領域にできた液柱のくびれ部にて、吐出口外へ延びる液柱の分離が行われる(図6(c))。このタイミングで吐出液体が分離することで従来よりも1〜2μsec以上従来よりも分離時間を早めることができることになる。すなわち、液滴の吐出速度が15m/secであるとすれば、尾引きの長さが15〜30μm以上短くなる。
【0032】
このとき突起間の液体にはこの消泡に伴うヒーター側に引き込まれようとする力はほとんど働いていないので、従来のように吐出液体が飛翔しようとする速度ベクトルと反対方向となることはなく、液滴の後端部分の速度は従来に比べ、充分に速くなる。そして吐出液体の液柱状の部分を引き伸ばし細長くするような現象は実質的に生じず、この結果、吐出液体の分離はスムーズに行われ、従来、吐出液体(液柱)を分離する時に多数発生していたミストは、格段に抑制される。
【0033】
その後、飛翔した液滴の後端部分がその表面張力により球状となっていき、やがて主滴と副滴(サテライト)に分離する。なお、液滴の後端速度が液滴先端に速度にくらべて差が充分に少なければ、分離したサテライトは飛翔中もしくは紙面上で合体することとなり実質的にサテライトが防止される。
【0034】
図4は、本発明の吐出工程を示す図2(線P)と従来の吐出工程を示す図10(線Q)の液柱の太さの最小径と、吐出工程との関係を示すグラフである。なお、ここで液柱太さの最小径とは、吐出口から外にせり出した液柱の中で、主滴となる球状部分を除いた液柱の吐出方向における断面が最も小さい部分の径のことを示す。また、横軸の(d)〜(g)は図2および10の各工程に対応する。
【0035】
図4において、初期の液柱の太さが違うのは、本発明に対応する吐出口形状が、従来の円形吐出口を二つの半円に分かち、その半円間に突起を挿入した形状となっていて、従来よりも吐出口の最大径が伸びていることに起因する。
【0036】
従来構成では、図面に示されるように時間の経過に伴い、ほぼ一定の割合で液柱の太さの最小径が小さくなっていく。これに対して、本発明の構成では、消泡工程において液柱の太さの最小径の時間による変化率が急激に変化していることがわかる。これは前述したように、消泡に伴う部分的なメニスカスの引き込みにより、突起により保持された液柱に接する液体の量が激減して、液柱の根元にくびれ部が生じたものと思われる。これにより、工程(e)では液柱の太さが極めて細くなり、吐出液体の分離時間が従来のものに対して早められていると考えられる。
【0037】
(BTJ吐出の例)
図13に、気泡が大気と連通するBTJ(バブルスルージェット)の、本実施例の吐出状態の模式図を示す。図13(a)〜(g)は突起方向と垂直方向からみた、ヘッド断面図、図14の(a)〜(g)は突起方向からみたヘッド断面図であり、図13(a)〜(g)と図14(a)〜(g)の各工程は対応している。上述のBJ吐出方式と同様である部分の説明は省略する。ここで、BTJになる条件は、先ほどのBJの例(図1(a)、1(b)および1(c))と比べて、ヒーターから吐出口までの距離OHを短くすればよい(20〜30umにする)。この為、気泡がより上方(吐出口方向)へ成長し(図13(d))、メニスカスがより吐出口内部へ引き込まれ、ノズル内の気泡と連通する(図13(f))。このように、低流体抵抗領域において、メニスカスが引き込まれ易くなり、突起間に液膜を張った状態が、より早いタイミングで訪れ、液滴が分離する時間が早くなる。
【0038】
また、図12に示すように、従来の突起の無い吐出口を用いた場合には、吐出液滴の尾引き後端部が曲がり、サテライトが主滴の軌道とずれて飛翔していた。しかし、本実施例のような突起をつけることで、従来のBTJに比べて、吐出液滴の分離時間を早めて尾引きを短くする効果に加えて、図12(g)に見られるような分離時の尾引き曲がりを抑制する効果も得られる。これは、図13、14に示すように、液滴の分離が吐出口の突起間で行われることにより、常に吐出口の中心で液滴が分離する為である。よって、吐出液滴が飛翔する際の軌道の直線性が保たれ、サテライトの発生並びに画像の劣化を抑制できる。
【0039】
(突起の形状について)
本発明に好適に用いられる突起の形状について、より詳細に説明を行う。ここでいう突起の形状とは、液体の吐出方向から吐出口を見た突起の形状、つまり液体を吐出する方向に関する吐出口の断面形状を示す。
【0040】
本実施例における吐出口の形状を図17に示す。前述の高流体抵抗領域55と低流体抵抗領域56とを良好に形成するためには、低流体抵抗領域における最短部分の長さWが、突起により形成される最短距離(突起間隙間)Hよりも長いことが望ましい。
【0041】
なお、突起の数が二つ以下であり、突起の幅が先端の曲率を有する部分と付け根の部分を除いて、ほぼ一様であるときには、突起が無い場合の吐出口の仮想的な外縁の吐出口の最小径(本実施例で突起が2本の場合は、突起の付け根から相対する突起の付け根までの距離。突起が1本の場合は、突起付け根から対応する縁までの距離。)をM、吐出口の最大径をL、突起の半値幅をa、突起先端から突起が凸となる方向の吐出口の縁までの距離H、とした際に、M≧(L−a)/2>Hを満たすと、吐出口における半円部と突起間の面積のバランスが、本発明の吐出方法を実施するのに好適なものとなる。より好ましくは、M≧(L−a)である。また、突起隙間Hは0より大きく、突起間に液膜が保持されれば、本実施例の吐出方式となる。
【0042】
図17のXは、突起領域を示す。突起領域Xとは、突起が吐出口の内側に伸びる方向(突起が凸となる方向)の突起の長さ(x1:突起付け根から突起先端までの長さ)と、突起の幅方向の突起付け根の幅(x2:突起付け根の屈折点から突起先端を越えて反対側の屈折点までの直線距離)と、を2辺にもつ長方形、または正方形からなる。x2において屈折点が明確で無い場合には、吐出口外周において、突起の付け根に接線を引いた際の2つの接点を屈折点とみなす。本実施系においては、0<x2/x1≦1.6の範囲に突起があることで、突起間における液膜の保持力を高め、液滴が分離される瞬間まで突起間のメニスカスを吐出口表面付近で好適に維持し、尾引き長さを短くすることができる。また、M≧(L−x2)/2>Hの範囲にあることで、吐出口における半円部と突起間の面積のバランスが、本発明の吐出方法を実施するために、より好適なものとなる。
【0043】
本発明は、突起間で液膜が形成・保持されることで、液柱が形成された後、早い段階で液柱が液膜の吐出口表面側で切断され、液滴として吐出される為、吐出液滴の尾引きが短くなる。つまり、液滴が分離する瞬間まで突起間に液膜を保持しておくことが重要であり、突起先端の形状は、突起間で形成される液膜を保持しやすい(表面張力が保たれやすい)形状である必要がある。
【0044】
図20は、本実施例において、気泡収縮工程における吐出口内の液体の動きを説明する模式図である。本実施例の吐出口は、半円を広げその間に突起を挿入した形状をとる。この為、気泡収縮工程において、図20に示す低流体抵抗領域の、白抜きで示すように半円状にメニスカスがヒーター側に落ち込む力が働き、斜線で示すように突起間の液膜が保持されやすい。さらに、突起の両サイドに直線部を有しており、この直線部が平行である為、低流体抵抗部のメニスカスが、より半円状に落ち込みやすい。また、本実施例においては、突起先端が曲率を持つ例を示したが、突起先端が、突起が凸となる方向に垂直な直線部を有する形状、例えば突起先端が四角形であっても本実施例の効果はある。
【0045】
上述のような、突起及び吐出口の形状であるため、図6(b)および6(c)のシミュレーションに示すように、突起間の液膜の保持力が高く、図6(b)液柱が形成される間も、図6(c)液柱が液膜から分離されて飛翔した後も、突起間に液膜が保持される。この為、液柱が液膜から分離される場所は、吐出口表面に近くなり、吐出される液滴の尾引き長さを短くすることが可能となり、サテライトの低減に繋がる。
【0046】
さらに、図1(a)の断面図に示すように、液体が吐出される方向における吐出口部の中心軸は、吐出口表面及びエネルギー発生素子と垂直であるのが、メニスカスの位置の対称性及び吐出の安定性から好ましい。吐出口部の中心軸が、吐出口表面もしくは発熱素子と垂直でない場合には、気泡収縮段階で吐出口部内でのメニスカス位置が発熱素子方向へ移動する際に、メニスカス位置の非対称性が強く、本発明の効果を良好に得られない。
【0047】
(比較例の突起形状)
図18(a)、18(b)、19(a)および19(b)に、比較例における突起の形状を示す。図18(a)の吐出口は、円を2つ繋ぎ合わせた形態である。吐出口の長辺は20.0μm、短辺は4.5μmとした。図18(a)の点線の四角で示す突起領域Xにおけるx1(吐出口中心に向かう方向)は2.9μm、x2(突起の付け根の幅)は9.8μmとする。x2/x1=3.4である。吐出シミュレーションを図18(b)に示し、これは、図3の(e)〜(f)、図14の(e)〜(f)の工程間に対応する。図18(b)では、液柱が吐出口内の液体から分離する前に、突起間の液体の保持が崩れ始め、液柱の切れる部分が吐出口内のヒーター側に落ちてしまっている。その為、吐出される液滴の尾引き長さは、本実施例の形状ほど短くならず、サテライトの発生の原因となる。
【0048】
これは、図18(b)の突起は先端にいくにつれて急激に細くなり先端が尖った形状をとる為、気泡が収縮し、吐出口内の液体がヒーター側に引き込まれる時に、メニスカスに働く力が本実施例と異なるからである。気泡収縮の際、吐出口内側の壁面に近いほどヒーター側へインクが移動する速度が遅いため、図21(a)に示すように、液体が吐出口内側に沿うように斜線部で残り、吐出口中心部においてメニスカスが白抜き部のように、2つの円がくっついた形状で落ち込む力が働く。この為、突起間の液体もヒーター側に引きこまれ、突起間に液体が保持されにくくなる。
【0049】
一方、図19(a)の吐出口は、突起形状が非常に緩やかである。吐出口の長辺は20.6μm、短辺は7.7μmとした。図19(a)の点線の四角で示す突起領域Xにおけるx1(吐出口中心に向かう方向)は2.2μm、x2(突起の付け根の幅)は8.2μmとする。x2/x1=3.7である。これを示すシミュレーションを図19(b)に示し、これは、図3の(e)〜(f)、図14の(e)〜(f)の工程間に対応する。図19(b)においても、図18(b)と同様に、液柱が吐出口内の液体から分離する前に、突起間の液体の保持が崩れ始め、液柱の切れる部分が吐出口内のヒーター側に落ちてしまっている。その為、吐出される液滴の尾引き長さは、本実施例の形状ほど短くならず、サテライトの発生の原因となる。
【0050】
これは、気泡が収縮し、吐出口内の液体がヒーター側に引き込まれる際に、メニスカスに働く力が本実施例と異なるからである。図19(b)の突起は非常に緩やかな為、液体を保持する高流体抵抗部とメニスカスをヒーター側に落ち込ませる低流体抵抗部の差がほとんどない。この為、図21(b)に示すように、気泡収縮の際、液体が吐出口内側に沿うように斜線部で残り、吐出口中心部においては白抜き部のようヒーター側に引きこまれる力が働く為、突起間に液体が保持されにくくなる。
【0051】
(本発明に適用可能な吐出口の他の形状)
次に、本実施例では、ヒーター面に対して垂直な方向から見た例を図15、16(a)および16(b)に示す。図15のヘッド構造は、2段吐出口に突起がついた形状である。ヒーター上の流路5に連通するように第1の吐出口6が設けられ、該第1の吐出口6上に、第1の吐出口より小さな第2の吐出口7が設けられ、第2の吐出口7に突起部10が形成される。第1の吐出口6が大きいため吐出液体の目詰まりを抑制し、第2の吐出口7で微小な液滴を形成することが可能となる。さらに、第2の吐出口7の突起で吐出液体の尾引きを短くすることに加えて、抵抗の少ない第1の吐出口部分を有することで、吐出効率が向上する。また、ノズルの前方抵抗が軽減されることで、気泡が吐出口上方に成長しやすくなり、気泡が収縮する際にメニスカスをノズル内部に強く引き込むことができ、突起間に液膜を張った状態がより早く訪れ、液滴の分離時間が早くなる。
【0052】
図16(a)および16(b)は、突起部がテーパー形状の図を示す。図16(a)は、吐出口は吐出方向に対して真っ直ぐな形状をしており、突起は吐出方向に向かって狭まるテーパー形状である。図16(b)は、吐出口及び突起部が吐出方向に向かって狭まるテーパー形状である。このような形状をとることで、吐出方向における抵抗が小さくなる為、前述した2段吐出口と同様の効果が得られ、吐出効率の向上と液滴分離時間の短縮という効果が生まれる。また、図16(b)において、吐出口と突起部のテーパーの角度は同じでもよいが、突起部のほうが、吐出方向に向かってより絞られている形状が好ましい。このように、吐出方向において、吐出口の上側(吐出口プレートの表面側)の方が、下側(ヒーター側)よりも突起間の隙間が狭いと、突起間の液体は、表面エネルギーが増える方向である、突起間が広がる下側には行き難く、上側で液膜が保持されやすい。これにより、吐出液体が吐出口プレート表面に近い場所で分離し易くなり、吐出される液滴の尾引き長さが短くなる効果がある。
【0053】
いずれの場合においても、液体が吐出される方向における吐出口部の中心軸は、吐出口表面及び発熱素子と垂直であり、吐出口部の中心軸に対して2段形状もテーパー形状も対象であるのが、メニスカスの位置の対称性及び吐出の安定性から好ましい。
【0054】
さらに、突起の数は2つに限られることなく、図5(a)に示すように1つの突起、もしくは図5(b)に示すような3つの突起の場合も包含する。突起の数が1つのときの突起間隙間Hとは、突起の先端から吐出口外縁までの最短距離を指す。また、突起部の厚さは吐出口が形成される部材より薄くても良い。さらに、突起が複数ある場合には、それぞれの突起の大きさが異なる形状をとることも可能である。突起の数が多くなりすぎると、吐出口の形状が複雑になり、液体の目詰まりが生じやすくなり好ましくない。
【0055】
(液体吐出ヘッドの製造方法)
基板34は、流路形成部材の一部として機能し、発熱素子、流路、吐出口プレート等の支持体として機能し得るものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス,セラミックス,プラスチックあるいは金属などがあげられる。本実施例では、基板34はSi基板(ウエハ)を用いる。吐出口の形成は、レーザー光による形成の他、吐出口が形成された吐出口プレート35を感光性樹脂として、MPA(Mirror Projection Aligner)などの露光装置により形成することもできる。また、流路壁36を例えばスピンコートなどの手法によって基板34上に形成することによりインク流路壁36と吐出口プレート35とを同一部材として同時に形成することも可能である。また、吐出口はフォトリソグラフィー工程によるパターニングで形成しても良い。
【0056】
図11(a)、11(b)、11(c)、11(d)、11(e)および11(f)は、本実施例のヘッドの製造工程を模式的に示す図である。駆動回路やヒーター31を作り込んだシリコン基板34を用意する(図11(a))。図11(a)のシリコン基板34上に感光性樹脂を塗布し、露光・現像することで、流路となる部分38をパターニングする(図11(b))。次に、流路となる部分38を覆うように、流路壁や吐出口プレートとなる感光性樹脂36を塗布する(図11(c))。感光性樹脂36に、凸形状の突起10を有する吐出口32を露光・現像して、パターニングする(図11(d))。シリコンの結晶方位によるエッチング速度の違いを利用する異方性エッチングの技術を用いて、シリコン基板34の流路形成面と逆側から、インク供給口33を形成する(図11(e))。最後に、流路となる部分にある感光性樹脂38を溶剤によって溶かし出し、溶かされた部分がインク流路となり、中空のヘッドが完成する(図11(f))。こうして製造されたヘッド部分に、電気実装や、インクタンクからヘッド部分にインクを供給する供給路等が形成され、ヘッドカートリッジが作成される。
【0057】
本発明の効果を確認するため、下記実施例にて、様々な構成のヘッドを作成し、各ヘッドに対して評価を行った。
【0058】
(実施例1、比較例1)
本実施例及び比較例において、液体が吐出された状態をストロボ写真にて観察し、吐出液体が分離する時間と、吐出液体の分離直後の液滴の先端から後端までの液滴長さを測定した。なお、吐出液体の分離時間については、ヒーターに電圧を印加してから液柱が液膜から分離するまでの時間とする。吐出速度は13m/sとなるようにヒーターへの電力投入時間を調整した。インクの物性値は、粘度=2.1cps、表面張力=30dyn/cm、密度=1.06g/cm3である。サテライトの個数は、1回の吐出で観察されるサテライト数の、10回平均を示してある。また、ミストとなるパーティクル数も測定した。実施例1、比較例1のヘッドの構成及び測定結果を下記表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
吐出口内には、突起10が1対設けられており、吐出方向における吐出口の断面において、突起の先端は吐出口の重心に向かうように設けられており、突起の先端間を結んだ直線が、吐出口の中心を通る。突起領域Xにおいて、突起が凸となる方向の突起の長さx1は、突起長さbと等しい。突起が無い場合の吐出口の仮想的な外縁の吐出口の最小径Mは、突起の付け根から相対する突起の付け根までの距離であり、表の吐出口直径φと等しい。吐出口の最大径Lは、表のφの値に突起幅aを足した値である。吐出口の最小径Hは、突起間の隙間であり、φの値からb×2の値を引いた値である。突起幅aと突起領域x2との関係は、フォトリソグラフィーで露光の際に突起の付け根が広がる為、突起領域x2の長さは、突起幅aより数ミクロンほど長い。本実施例は、x2/x1=0.8で、x1≧x2である。
【0061】
図1(a)、1(b)および1(c)に示すように、流路5の高さhは14μmである。発熱素子であるヒーター31から吐出口プレート35表面までの距離(OH)は25μmである。流路と連通し、気泡が発生する発泡室内に配置されたヒーター31のサイズは17.6×17.6μmである。吐出口の長径Lは19.6μmである。突起10の付け根から対向突起の付け根までの距離である、吐出口の仮想的な外縁の短径Mは16.6μmである。突起10の長さbは5.9μm、突起の半値幅aは3μm。突起の先端と、対向突起の先端までの距離Hは4.2μmである。突起10の先端は、曲率直径Rが2.2μmで丸みをおびている。吐出量は約5.4ngである。なお、突起は吐出口プレートの厚みと同じ厚みとなっている。この吐出口形状は直径φ16.6μmの円を二つの半円に分かち、その半円間に突起を挿入した形状となっている。このヘッドを、液滴の吐出速度が13m/sとなるようヒーターへの投入電力を調整し吐出を行った。
【0062】
比較例1−1のヘッドとして吐出口の形状を円とし、直径をφ16.6μmとした。それ以外の構成は、実施例1と同様である。吐出量に関しては5.8ngであった。吐出液体分離時間は、実施例1では、8.5μsecであったのに対して、比較例1−1のヘッドでは11μsecであり、実施例1の吐出液体が分離するまでの時間が格段に短くなっていた。液滴の長さは、実施例1では、117μmであるのに対し、比較例1−1のヘッドでは156μmである。これは、液滴長さにおいて、吐出液体が分離する時間差(吐出速度×分離時間差:13m/s×(11μsec−8.5μsec)=32.5μm)以上の液滴の長さが短くなっていた。このときのサテライト数に関しては、実施例1の平均が1.1個であったのに対して、比較例1−1のヘッドでは3個であった。また、ミストとなるパーティクルの個数を測定したところ、実施例1では15個であったのに対して、比較例1−1のヘッドでは3800個であった。上述の結果からも明らかなように本実施例の構成は比較例1に比べて、サテライト数が格段に低減していることがわかる。
【0063】
さらに、本発明のサテライト低減効果を確認するために、比較例1−2に、実施例1と吐出速度は異なるが、液滴長さがほぼ同じである、吐出口形状が直径13μmの円の例を示す。このときの吐出量は3ngであった。比較例1−2のヘッドでは、吐出液体分離時間は10μsec、液滴長さは116μm、サテライト数2.2個であった。
【0064】
本実施例と比較例1−2とを比較すると、尾引きの長さが同程度であっても、本実施例にかかるヘッドのほうがサテライトの個数が少ないことが解る。このことは、単に吐出液体を分離するまでの時間を短くすることで液滴長さを短くする効果のみがサテライト数低減に効いているわけではないことを示している。すなわち、尾引きの長さが多少長くても、本発明の構成では吐出液体の分離のメカニズムおよびタイミングの違いにより、主滴部と吐出液体の後端との速度差が十分に少ないため、このこともサテライトの低減に寄与していると考えることができる。しかも、この本発明の構成による吐出液体の分離のメカニズムにより、従来の構成に比べミストとなるパーティクル数も激減している。
【0065】
(実施例2、比較例2)
表2には、ヘッドの構成(吐出口径、流路、OH距離、突起形状)を変えた以外は、上述の実施例1と同様の条件で測定した結果を示す。実施例2−1は図17に示すように直径11μmの半円の間に突起を挿入した例であり、M、LおよびHと、表の値との関係は実施例1と同様である。本実施例では、x2/x1=1.35で、x1≧x2であり、吐出量は1.7ngである。比較例2は直径11μmの円吐出口であり、吐出量は1.5ngである。突起を有する本実施例のヘッドは、比較例の円に比べて、液体分離時間が早まり、吐出液滴の長さが短くなり、サテライトが低減することが確認できた。また、ミストとなるパーティクル数も激減した。
【0066】
【表2】
【0067】
(実施例3、比較例3)
表3には、ヘッドの構成(流路高さ、OH距離、突起形状)を変えた以外は、上述の実施例2と同様の条件で測定した結果を示す。
【0068】
実施例3−1〜3−5は、図17に示すように直径11μmの半円の間に、表に記載のサイズの突起を挿入した例であり、M、LおよびHと、表の値との関係は実施例1と同様である。本実施例の吐出量は1.7ngである。1.6≧x2/x1の範囲では、実施例3−1〜3−5に示すようにサテライト数が少ない結果が得られた。比較例3−1は直径11μmの円吐出口であり、吐出量は1.6ng。比較例3−2は直径11μmの半円の間に長さ0.7の突起を挿入した形状であり、吐出量は1.7ngである。ここで、比較例3−2の突起領域Xにおけるx1は0.7μm、x2は3.0μmであり、x2/x1=4.3となり、吐出液体分離時間も、液滴長さもサテライトも、本実施例に比べて増加した。
【0069】
【表3】
【0070】
(実施例4、比較例4)
表4は、吐出口の直径をさらに大きくした以外は、上述の実施例3と同様の条件で測定した結果を示す。
【0071】
実施例4は図17に示すように直径13μmの半円の間に、表に記載のサイズの突起を挿入した例であり、M、LおよびHと、表の値との関係は実施例1と同様である。本実施例では、x2/x1=0.8で、x1≧x2である。吐出量は2.3ngである。比較例4は直径13μmの円吐出口であり、吐出量は2.3ngである。このように、突起を有する本実施例のヘッドは、比較例の円に比べて、液体分離時間が早まり、吐出液滴の長さが短くなり、サテライトが低減することが確認できた。また、ミストとなるパーティクル数も激減した。
【0072】
【表4】
【0073】
(実施例5、比較例5)
表5には、ヘッドの構成(吐出口直径、OH距離、流路高さ、突起形状)を、上述の実施例4と変えたヘッドを用いる。また、液滴の吐出速度は、18m/sとなるようヒーターへの投入電力を調整し、インクの物性値は、粘度=2.2cps、表面張力=34dyn/cm、密度=1.06g/cm3とした。
【0074】
実施例5は図17に示すように直径14.3μmの半円の間に、表に記載のサイズの突起を挿入した例であり、M、LおよびHと、表の値との関係は実施例1と同様である。本実施例では、x2/x1=0.9で、x1≧x2である。である。比較例5は直径13.6μmの円の吐出口であり、実施例5と吐出量が4.0ngと揃うように吐出口の直径を選択した。液滴の吐出速度を、上述の実施例より速くした為、サテライトの数は上述の実施例より増えてはいるものの、突起を有する本実施例のヘッドは、比較例の円に比べると、液体分離時間が早まり、吐出液滴の長さが短くなり、サテライトが低減することが確認できた。また、ミストとなるパーティクル数も激減した。
【0075】
【表5】
【0076】
上述の各実施例で説明したように、本実施例のヘッドを用いることでサテライト液滴やミストによる画質の低下を低減させることが可能となる。また、上述の実施例では、エネルギー発生素子としてヒーターを用いた例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば圧電素子を用いた場合でも適用可能である。圧電素子を用いる場合には、気泡による収縮過程は無いが、液室を膨張させる電気信号を圧電素子に与えれば、メニスカスを吐出口内部に引き込むことが出来る。
【0077】
この出願は2005年11月29日に出願された日本国特許出願番号第2005−343943からの優先権を主張するものであり、その内容を引用してこの出願の一部とするものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口と、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記吐出口は互いに並列する側壁部と、前記側壁部同士をつなぐ前記側壁部の面と交差する方向に延在する先端壁部と、を含む、前記吐出口の中心に向かって突出する複数の突起部を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
液体が吐出される方向から前記吐出口をみて、前記側壁部と前記先端壁部との接続部に屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
液体が吐出される方向から前記吐出口をみて、前記側壁部と前記先端壁部との接続部に曲面部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数の突起部は板状部材からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記複数の突起部は、互いに対向する2本の突起からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項1】
液体を吐出する吐出口と、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記吐出口は互いに並列する側壁部と、前記側壁部同士をつなぐ前記側壁部の面と交差する方向に延在する先端壁部と、を含む、前記吐出口の中心に向かって突出する複数の突起部を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
液体が吐出される方向から前記吐出口をみて、前記側壁部と前記先端壁部との接続部に屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
液体が吐出される方向から前記吐出口をみて、前記側壁部と前記先端壁部との接続部に曲面部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数の突起部は板状部材からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記複数の突起部は、互いに対向する2本の突起からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−207235(P2011−207235A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163503(P2011−163503)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【分割の表示】特願2007−548036(P2007−548036)の分割
【原出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【分割の表示】特願2007−548036(P2007−548036)の分割
【原出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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