説明

液体吐出装置、及び、液体吐出方法

【課題】液体の加温を適切に行うことにある。
【解決手段】液体を媒体に吐出するヘッドと、該ヘッドが吐出した前記液体の温度を検出する温度センサーと、前記ヘッドが吐出する前の前記液体を加温する加温部と、前記温度センサーの出力値に基づいて、前記加温部を制御するコントローラーと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び、液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置は既によく知られている。かかる液体吐出装置としては、例えば、紙、フィルムなどの各種媒体にインクを吐出して、印刷を行うインクジェットプリンターが知られている。また、当該液体吐出装置の中には、液体を媒体に吐出するヘッドと、当該ヘッドが吐出する前の液体を加温する加温部と、温度センサーの出力値に基づいて加温部を制御するコントローラーと、を有するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−158793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、適正量の液体を適切に吐出させるためには、液体の粘度が所定の値となるように当該粘度をコントロールする必要がある。かかる目的を達成する方法として、液体の温度が適正な温度となるように温度センサーの出力値に基づいて加温部を制御することで、液体の粘度をコントロールする方策が知られている。そして、かかる際に、当該液体の加温が適切に行われることが要請される。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体の加温を適切に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
主たる本発明は、液体を媒体に吐出するヘッドと、
該ヘッドが吐出した前記液体の温度を検出する温度センサーと、
前記ヘッドが吐出する前の前記液体を加温する加温部と、
前記温度センサーの出力値に基づいて、前記加温部を制御するコントローラーと、
を有することを特徴とする液体吐出装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンター1の構成を示すブロック図である。
【図2】プリンター1のヘッド31周辺の概略図である。
【図3】キャリッジ21の横面の概略図である。
【図4】図4A及び図4Bは、キャリッジ21とインクカートリッジ37との位置関係を示す概略図である。
【図5】ヘッド31のノズルの概略図である。
【図6】プラテン14及びフラッシングユニット38を示した概略図である。
【図7】キャリッジ21に設けられたキャリッジ流路部74及びヒーター90を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0008】
液体を媒体に吐出するヘッドと、
該ヘッドが吐出した前記液体の温度を検出する温度センサーと、
前記ヘッドが吐出する前の前記液体を加温する加温部と、
前記温度センサーの出力値に基づいて、前記加温部を制御するコントローラーと、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
かかる場合には、液体の加温を適切に行うことが可能となる。
【0009】
また、前記温度センサーは、フラッシングボックスに備えられていることとしてもよい。
かかる場合には、フラッシング動作を利用して、温度の検出をすることが可能となる。
【0010】
また、前記ヘッドが前記液体を前記媒体に吐出する際に、該媒体を支持する支持部を有し、前記温度センサーは、鉛直方向において、前記支持部に支持された前記媒体の位置と同じ位置に設けられていることとしてもよい。
かかる場合には、液体の加温がより一層適切に行われることとなる。
【0011】
次に、媒体に液体を吐出する液体吐出方法であって、液体を媒体に吐出するヘッドと、該ヘッドが吐出した前記液体の温度を検出する温度センサーと、前記ヘッドが吐出する前の前記液体を加温する加温部と、前記温度センサーの出力値に基づいて、前記加温部を制御するコントローラーと、を有する液体吐出装置を用いて媒体に液体を吐出することを特徴とする液体吐出方法。
かかる場合には、液体の加温を適切に行うことが可能となる。
【0012】
===プリンター1の概要===
以下、図1乃至図5を参照しながら液体吐出装置の一例としてのプリンター1について説明する。図1は、プリンター1の構成を示すブロック図である。図2は、プリンター1のヘッド周辺の概略図である。図3は、キャリッジ21の横面の概略図である。図4A及び図4Bは、キャリッジ21とインクカートリッジ37との位置関係を示す概略図である。図5は、ヘッド31のノズルの概略図である。
【0013】
プリンター1は、紙、フィルム等の媒体に向けて、電磁波の一例としての紫外線(以下、UV)の照射によって硬化する電磁波硬化型インクの一例としての紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を吐出することにより、媒体に画像を印刷する装置である。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。なお、本実施形態のプリンター1は、CMYKの4色のUVインクを用いて画像を印刷する。
【0014】
プリンター1は、搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、インク供給ユニット35、照射ユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、インク供給ユニット35、照射ユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0015】
搬送ユニット10は、媒体を搬送方向に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、図3に示すように、給紙ローラー(不図示)と、搬送ローラー13と、支持部の一例としてのプラテン14と、排紙ローラー15とを有する。給紙ローラーは、紙挿入口に挿入された媒体をプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー13は、給紙ローラーによって給紙された媒体を印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーターによって駆動される。プラテン14は、ヘッド31がUVインクを媒体に吐出する際に、媒体を支持する。排紙ローラー15は、媒体をプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0016】
キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター(不図示)とを有する。キャリッジ21は、図2及び図3に示すように、後述するヘッド31及び仮硬化用照射部41、42を備えており、当該ヘッド31及び仮硬化用照射部41、42を移動方向に移動させるためのものである。
【0017】
すなわち、キャリッジ21は、キャリッジモーターによって駆動されて移動方向に移動する。そして、キャリッジ21の当該移動により、当該キャリッジ21に設けられたヘッド31及び仮硬化用照射部41、42も移動することとなる。なお、キャリッジ21は、図2乃至図4Bに示すように、移動方向に沿ったガイド軸24に支持されており、ガイド軸24に沿って往復移動する。
【0018】
ヘッドユニット30は、複数のノズルを有するヘッド31を備える。このヘッド31は、媒体にUVインクを吐出するものである。ヘッド31は、キャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が前記移動方向に移動すると、ヘッド31も前記移動方向に移動する。そして、ヘッド31が前記移動方向に移動しながらUVインクを断続的に吐出することによって、前記移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が媒体に形成される。なお、以下、ヘッド31の移動について、図2の一端側から他端側に向かって移動することを往動と呼び、他端側から一端側に移動することを復動と呼ぶ。本実施形態では、往動の期間中及び復動の期間中にUVインクの吐出が行われる。すなわち、本実施の形態に係るプリンター1は双方向印刷を行なう。
ヘッド31の下面にはUVインクを吐出するための複数のノズルが設けられている。本実施形態のヘッド31は、図5に示すように、CMYKのインク色毎に複数のノズルを有する。複数のノズルは、一定のノズルピッチで、前記搬送方向に並んでいる。このようにヘッド31には、CMYK4色分のノズル列Nc、Nm、Ny、Nkが形成されている。
【0019】
本実施形態では、各ノズル列には、搬送方向に並ぶ180個のノズルがノズルピッチD(例えば360dpi)で設けられている。また、各ノズル列のノズルには、搬送方向下流側のノズルほど若い番号が付されている。各ノズルには、各ノズルからUVインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。このピエゾ素子を駆動信号によって駆動させることにより、前記各ノズルから滴状のUVインクが噴射される。吐出されたUVインクは、媒体に着弾してドットを形成する。
【0020】
インク供給ユニット35は、インクカートリッジ37を有する。このインクカートリッジ37は、UVインクを貯留しており、ヘッド31によるUVインクの吐出に起因してヘッド31内のUVインクの量が減った際に、ヘッド31へUVインクを供給(補給)する役割を果たす。インクカートリッジ37は、本実施の形態においては、図4A及び図4Bに示すように、プリンター1の筐体1aの前記移動方向における中央部に着脱可能に設けられている。なお、図を分かり易くするために、図4A及び図4Bには、一つのインクカートリッジ37のみが表されているが、インクカートリッジ37は、UVインクの色毎に設けられている(本実施の形態においては、CMYKの4色なので、4つのインクカートリッジ37が存在する)。
【0021】
また、インクカートリッジ37とヘッド31との間には、UVインクの流路70が設けられており、インクカートリッジ37からヘッド31へUVインクが供給される際に、UVインクは当該流路70内を移動する。当該流路70については、後に詳述する。
【0022】
クリーニングユニット(不図示)は、ヘッド31をクリーニングするためのものである。このクリーニングユニットは、ホームポジション(以下、HPと呼ぶ。図4A及び図4B参照)に設けられており、キャップと、吸引ポンプ等とを有している。ヘッド31(キャリッジ21)が移動方向に移動してHPに位置すると、ヘッド31の下面(ノズル面)に不図示のキャップが密着するようになっている。このようにキャップが密着した状態で吸引ポンプが作動すると、ヘッド31内のUVインクが、増粘したUVインクや紙粉と共に吸引される。このようにして、目詰まりしたノズルが不吐出状態から回復することによってヘッドのクリーニングが完了する。
【0023】
また、移動方向においてプラテン14と隣り合う位置(図6参照。プラテン14よりも移動方向において他端側(HP側)の位置)には、フラッシングユニット38が設けられており、ヘッド31(キャリッジ21)が移動方向に移動してフラッシングユニット38に対向する位置(以下、フラッシング位置と呼ぶ)に位置すると、ヘッド31はノズル列に属する各ノズルからUVインクを吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作を実行する。なお、フラッシングユニット38については、後に詳述する。
【0024】
照射ユニット40は、媒体に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。媒体上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることにより、硬化する。本実施形態の照射ユニット40は、ヘッド31により吐出された媒体上のUVインクにUVを照射して、UVインクを仮硬化させる仮硬化用照射部41、42と前記媒体上のUVインクにUVを照射して、UVインクを本硬化させる本硬化用照射部43とを備えている。なお、仮硬化とは、媒体に着弾したUVインクの流動(ドットの広がり)を抑えるためのものであり、本硬化とは、UVインクを完全に硬化させるためのものである。仮硬化用照射部41、42及び本硬化用照射部43は、それぞれ媒体に向けてUVを照射するための光源を備えている。
【0025】
仮硬化用照射部41、42は、図2に示すように、それぞれキャリッジ21に搭載されている。仮硬化用照射部41は、キャリッジ21の前記移動方向の一端側に設けられ、仮硬化用照射部42は、キャリッジ21の前記移動方向の他端側に設けられている。したがって、キャリッジ21の移動に伴って、ヘッド31と仮硬化用照射部41、42とは一体的に移動方向に移動する。換言すると、ヘッド31の各色のノズル列が往復移動する際、仮硬化用照射部41、42は、各色のノズル列に対する相対位置を維持しながら往復移動する。この際に仮硬化用照射部41、42から、媒体に向けてUVが照射される。具体的には、往動の期間には仮硬化用照射部41からUVが照射され、復動の期間には仮硬化用照射部42からUVが照射される。このように仮硬化は、ヘッド31が前記移動方向に移動する期間に行われるものであり、ドットを形成するのと同じパスにおいて行なわれる。
【0026】
本硬化用照射部43は、ヘッド31よりも搬送方向下流側に設けられており、前記移動方向の長さが印刷対象となる媒体の幅よりも長くなっている。そして、本硬化用照射部43は、移動することなく媒体に向けてUVを照射する。この構成により、パスによってドットの形成された媒体が、搬送動作によって本硬化用照射部43の下まで搬送されると、本硬化用照射部43によるUVの照射を受けるようになっている。
【0027】
なお、本硬化用照射部43による照射は、パス(インク吐出)と搬送を交互に行なう搬送によって媒体が本硬化用照射部43に達したら行なわれてもよいし、本硬化用照射部43がより搬送方向下流にあり、1頁などの所定の印刷が完了した後に媒体を排出する搬送動作によって媒体が本硬化用照射部43に達したら行なわれてもよい。
【0028】
なお、本実施形態では、仮硬化用照射部41、42の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いている。LEDは入力電流の大きさを制御することによって、照射量を容易に変更することが可能である。また、本硬化用照射部43の光源としては、ランプ(メタルハライドランプ、水銀ランプなど)を用いている。
【0029】
検出器群50には、リニア式エンコーダー、ロータリー式エンコーダー、紙検出センサー、光学センサー、温度センサー52等が含まれる。リニア式エンコーダーは、キャリッジ21の前記移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダーは、搬送ローラー13の回転量を検出する。紙検出センサーは、給紙中の媒体の先端の位置を検出する。光学センサーは、キャリッジ21に取付けられている発光部と受光部により、媒体の有無を検出する。そして、光学センサーは、キャリッジ21によって移動しながら媒体の端部の位置を検出し、媒体の幅を検出することができる。また、光学センサーは、状況に応じて、媒体の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。温度センサー52については、後に詳述する。
【0030】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0031】
<<<印刷動作について>>>
本実施の形態に係るプリンター1は、所謂インターレース印刷を実行する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいてインターレース印刷を行なう際、プリンター1の各ユニットに以下の処理を行わせる。
【0032】
まず、コントローラー60は、給紙ローラーを回転させ、印刷すべき媒体を搬送ローラー13の所まで送る。次に、コントローラー60は、搬送モーター(不図示)を駆動させることによって搬送ローラー13を回転させる。搬送ローラー13が所定の回転量にて回転すると、媒体は所定の搬送量にて搬送される。
【0033】
媒体がヘッド31の下部まで搬送されると、コントローラー60は、キャリッジユニット20を制御することにより、キャリッジモーターを回転させる。このキャリッジモーターの回転に応じて、キャリッジ21が前記移動方向に移動(具体的には、往動)する。また、キャリッジ21が移動することによって、キャリッジ21に設けられたヘッド31及び仮硬化用照射部41、42も前記移動方向に移動する。コントローラー60は、ヘッド31及び仮硬化用照射部41、42が移動(往動)している間に、断続的にインク滴をヘッド31に吐出させ、仮硬化用照射部41にUV照射を行なわせる(仮硬化用照射部42からのUV照射は行なわれない)。すなわち、コントローラー60は、キャリッジユニット20、ヘッド31、仮硬化用照射部41を制御することにより、ヘッド31を媒体に対して移動(往動)させながら、UVインクを媒体に吐出する吐出動作をヘッド31に実行させ、かつ、仮硬化用照射部41を媒体に対して移動(往動)させながら、媒体上のUVインクにUVを照射する照射動作を仮硬化用照射部41に実行させる。
そして、この1パス目のUVインク吐出動作及び照射動作により、前記移動方向に複数のドットが並ぶドット列が形成される。
【0034】
次に、コントローラー60は、搬送ユニット10を制御して、搬送モーターを駆動させる。搬送モーターは、コントローラー60からの指令された駆動量に応じて回転方向の駆動力を発生する。そして、搬送モーターは、この駆動力を用いて搬送ローラー13を回転させる。搬送ローラー13が所定の回転量にて回転すると、媒体は所定の搬送量にて搬送される。
【0035】
次に、コントローラー60は、キャリッジユニット20を制御することにより、キャリッジモーターを回転させる。このキャリッジモーターの回転に応じて、キャリッジ21が前記移動方向に移動(具体的には、復動)する。また、キャリッジ21が移動することによって、キャリッジ21に設けられたヘッド31及び仮硬化用照射部41、42も前記移動方向に移動する。コントローラー60は、ヘッド31及び仮硬化用照射部41、42が移動(復動)している間に、断続的にインク滴をヘッド31に吐出させ、仮硬化用照射部42にUV照射を行なわせる(仮硬化用照射部41からのUV照射は行なわれない)。すなわち、コントローラー60は、キャリッジユニット20、ヘッド31、仮硬化用照射部42を制御することにより、ヘッド31を媒体に対して移動(復動)させながら、UVインクを媒体に吐出する吐出動作をヘッド31に実行させ、かつ、仮硬化用照射部42を媒体に対して移動(復動)させながら、媒体上のUVインクにUVを照射する照射動作を仮硬化用照射部42に実行させる。
そして、この2パス目のUVインク吐出動作及び照射動作により、前記移動方向に複数のドットが並ぶドット列が形成される。
【0036】
以降、コントローラー60は、媒体の搬送と、(3パス以降の)UVインクの吐出及びUVインクへの仮硬化処理と、を繰り返し、媒体の各画素にドットを形成していく。
【0037】
なお、搬送ユニット10により媒体が搬送されて、媒体上のドット(UVインク)が本硬化用照射部43の下部に至ると、コントローラー60が本硬化用照射部43を制御し、本硬化用照射部43によりUVインクにUVインクが照射される。そして、このことにより、UVインクの本硬化が行なわれる。
【0038】
印刷の終わった媒体は、排紙ローラーによって、排出される。
以上のようにして、媒体に画像が印刷される。
【0039】
なお、当該印刷動作においては、UVインクを媒体に吐出する吐出動作の合間に前述したフラッシング動作が行われる。すなわち、パス間において、ヘッド31(キャリッジ21)が、移動方向に移動してフラッシング位置に位置すると、ノズル列に属する各ノズルからUVインクを吐出してフラッシングを行なう。
【0040】
===フラッシングユニット38について===
前述したとおり、移動方向においてプラテン14と隣り合う位置(プラテン14よりも移動方向において他端側(HP側)の位置)には、フラッシングユニット38が設けられており、ヘッド31(キャリッジ21)が移動方向に移動してフラッシングユニット38に対向する位置(以下、フラッシング位置と呼ぶ)に位置すると、ヘッド31はノズル列に属する各ノズルからUVインクを吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作を実行できるようになっている。ここでは、当該フラッシングユニット38について、図6を用いて説明する。図6は、プラテン14及びフラッシングユニット38を示した概略図である。
【0041】
フラッシングとは、ノズル付近のUVインクの増粘によりノズルが目詰まりしたり、ノズル内に気泡が混入したりして、適正な量のUVインクが吐出されなくなってしまうことを防止すべく、ノズルを回復させるためのメンテナンスである。具体的には、記録する画像とは関係の無い駆動信号を駆動素子(ピエゾ素子)に印加し、強制的にUVインクを吐出させる動作である。
【0042】
フラッシングユニット38は、ヘッド31が当該フラッシング動作を行なうことにより吐出されたUVインクを受けて貯留するためのものである。このフラッシングユニット38は、前述したとおり、移動方向においてプラテン14(の他端14a)と隣り合う位置であって、プラテン14よりも移動方向において他端側(HP側)の位置に、設けられている。フラッシングユニット38は、インク受け部材380とフラッシングボックス382とを有している。
【0043】
インク受け部材380は、ヘッド31がフラッシング動作を行なうことにより吐出されたUVインクを受けるためのものである。仮にインク受け部材が存在せず、フラッシングボックスの底面でUVインクを直接受けるとすると、ヘッド、フラッシングボックスの底面間の距離が大きいことに起因して、多くのインクミストが発生してしまう。インク受け部材380は、ヘッド31に近い位置で吐出されるUVインクをフラッシングボックス382よりも先に一次的に受けることにより、かかるインクミストの発生を抑制する役割を果たしている。
【0044】
本実施の形態において、このインク受け部材380は、スポンジ製であり、フラッシングボックス382内に収容されている。そして、インク受け部材380がその上面(インク受け面)380aで受けたUVインクは、当該インク受け部材380の内部380bへ滲み込むようになっている。なお、当該インク受け部材380の上面380aは、図6に示すように、鉛直方向において、プラテン14に支持された媒体Sの位置よりも若干下方に設けられている。
【0045】
フラッシングボックス382は、インク受け部材380を収容し、UVインクを貯留する。このフラッシングボックス382は、上側に開口382aを有する直方体形状の箱状の部材である。なお、当該フラッシングボックス382の最上端382bは、図6に示すように、鉛直方向において、プラテン14に支持された媒体Sの位置よりも若干上方に設けられている。
【0046】
なお、当該フラッシングボックス382には、前述した温度センサー52が備えられている。本実施の形態において、この温度センサー52は、長尺な形状を有するサーミスタ(本実施の形態においては、一つのみとしたが、複数個あっても構わない)であり、その長手方向が移動方向に沿うようにフラッシングボックス382に掛け渡されている。また、温度センサー52は、図6に示すように、鉛直方向において、プラテン14に支持された媒体Sの位置と同じ位置に設けられている。したがって、温度センサー52は、鉛直方向において、インク受け部材380の前記上面380aよりも上方、かつ、フラッシングボックス382の最上端382bよりも下方に位置することとなる。
【0047】
そして、ヘッド31がフラッシング動作を行なうことによりUVインクがインク受け部材380に向けて吐出されると、当該UVインクの一部が温度センサー52に接触し、当該温度センサー52がUVインクの温度を検出することができるようになっている。すなわち、温度センサー52は、ヘッド31が吐出したUVインク(ヘッド31が吐出した直後のUVインク)の温度を検出する機能を備えている。
【0048】
===流路70について===
前述したとおり、インクカートリッジ37とヘッド31との間には、UVインクが流れる流路70が設けられおり、UVインクは、インクカートリッジ37から、流路70を通って、ヘッド31へ流れるようになっている。ここでは、当該流路70について、図4A、図4B、図7を用いて説明する。図7は、キャリッジ21に設けられたキャリッジ流路部74及びヒーター90を示した概略図である。
【0049】
なお、前述したとおり、インクカートリッジ37はUVインクの色毎に設けられているため、流路70も当該色毎(本実施の形態においては、4色の各色毎)に設けられている。しかしながら、各流路70の構成は同様であるので、以下においては、一つの(例えば、イエローインクに対応した)流路70を例に挙げて説明する。また、図4A、図4B、図7においても、図を分かり易くするために、一つの流路70のみを図示することとし、他の流路70の図示については省略している。
【0050】
本実施の形態において、流路70は、インクカートリッジ37からキャリッジ21までの間に存在するチューブ状の部分(以下、インク供給用チューブ72と呼ぶ。図4A及び図4B参照)と、キャリッジ21内に金属で形成されたトンネル状の部分(以下、キャリッジ流路部74と呼ぶ。図7参照)と、を有している(すなわち、流路70の少なくとも一部がキャリッジ21に配置されたキャリッジ流路部74となっている)。
【0051】
インク供給用チューブ72は、インクカートリッジ37からのUVインクをキャリッジ流路部74へ送る役割を果たす。このインク供給用チューブ72は、フレキシブル(柔軟で自由自在に曲げることが可能)なチューブである。そのため、当該インク供給用チューブ72の位置が、図4A及び図4Bに示すように、変化可能となっている。すなわち、インク供給用チューブ72が位置する位置は、ヘッド31(キャリッジ21)の前記移動方向への移動に伴って変動するようになっている。なお、インク供給用チューブ72の長さは、ヘッド31(キャリッジ21)が前記移動方向における一端側から他端側までのどの位置にいても、キャリッジ21からインクカートリッジ37までの直線距離よりも大きい長さとなっている。
【0052】
キャリッジ流路部74は、インク供給用チューブ72から受け取ったUVインクをヘッド31へと送る役割を果たす。このキャリッジ流路部74は、キャリッジ21の鉛直方向における最上部に設けられている。図7に示すように、キャリッジ流路部74の一端側に位置する部分X1が、キャリッジ流路部74の入口(インク供給用チューブ72と繋がる部分)となっており、キャリッジ流路部74の他端側に位置する部分X2が、キャリッジ流路部74の出口(図示していないが、当該出口と該出口よりも下方に位置するヘッド31とが繋がっている)となっている。
【0053】
また、キャリッジ21には、加温部の一例としてのヒーター(発熱体)90が備えられている。このヒーター90は、キャリッジ流路部74内を移動するUVインク(つまり、ヘッド31が吐出する前のUVインク)を加温する役割を果たす。なお、本実施の形態において、ヒーター90は、キャリッジ流路部74と隣り合った状態で、キャリッジ流路部74よりも鉛直方向(図7において、紙面を貫く方向)において下側(図7において、紙面を貫く方向奥側。図7の点線部分参照)に設けられている。
【0054】
また、当該ヒーター90は、コントローラー60によって、UVインクの温度が適正な所定温度(すなわち、UVインクを適切に吐出させる観点から決められるUVインクの適正温度。以下、T度とする)となるようにコントロールされている。すなわち、コントローラー60は、前述した温度センサー52から温度データを取得し、当該温度データがT度となるようにヒーター90を制御する。具体的には、当該温度データがT度よりも小さければ、ヒーター90の加温能力を上げる制御を行い、一方、当該温度データがT度よりも大きければ、ヒーター90の加温能力を下げたり、ヒーター90を切ったりする制御を行う。このように、コントローラー60は、温度センサー52の出力値に基づいて、ヒーター90を制御する。
【0055】
===本実施の形態に係るプリンター1の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係るプリンター1は、UVインクを媒体に吐出するヘッド31と、該ヘッド31が吐出したUVインクの温度を検出する温度センサー52と、ヘッド31が吐出する前のUVインクを加温するヒーター90と、温度センサー52の出力値に基づいて、ヒーター90を制御するコントローラー60と、を有している。このことにより、UVインクの加温を適切に行うことが可能となる。
【0056】
すなわち、前述したとおり、適正量の液体(UVインク)を適切に吐出させるためには、UVインクの粘度が所定の値となるように当該粘度をコントロールする必要がある。かかる目的を達成する方法として、UVインクの温度が適正な温度となるように温度センサーの出力値に基づいてヒーターを制御することで、UVインクの粘度をコントロールする方策が知られている。そして、かかる際に、UVインクの加温が適切に行われることが要請される。
【0057】
比較例に係るプリンター1においては、本実施の形態に係るプリンター1と同様、UVインクの温度を検出する温度センサー52とヘッド31が吐出する前のUVインクを加温するヒーター90が設けられており、当該温度センサー52の出力値に基づいて、ヒーター90が制御されていた。しかしながら、本実施の形態に係るプリンター1とは異なり、温度センサー52は、ヘッド31やキャリッジ21に設けられており、ヘッド31が吐出する前のUVインクの温度が検出されていた。そして、かかる事項に起因して、以下の不都合が生じており、前記要請に応えるものとはなっていなかった。
【0058】
すなわち、比較例においては、ヘッド31が吐出する前のUVインクの温度が検出されていたため(ヘッド31が吐出したUVインクの温度が検出されていたわけではないため)、ヘッド31が吐出したUVインクの温度を適正な温度にコントロールすることについて正確性を欠いていた。つまり、ヘッド31やキャリッジ21を途中通過するUVインクの温度は適正な温度に正確にコントロールできるものの、吐出されて媒体に着弾され、実際に画像を形成することとなるUVインク(つまり、ヘッド31により吐出されたUVインク)の温度は適正な温度に正確にコントロールできないという不都合が発生していた。
【0059】
これに対し、本実施の形態においては、ヘッド31が吐出したUVインクの温度を検出することとしたため、ヘッド31が吐出したUVインク、つまり、吐出されて媒体に着弾され実際に画像を形成することとなるUVインク、の温度を適正な温度に正確にコントロールすることが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、UVインクの加温が適切に行われることとなる。
【0060】
また、本実施の形態においては、温度センサー52を、フラッシングボックス382に備えることとした。そのため、フラッシング動作を利用して、温度の検出をすることが可能となる。
【0061】
また、本実施の形態において、温度センサー52は、鉛直方向において、プラテン14に支持された媒体の位置と同じ位置に設けられていることとした。そのため、温度センサー52、ヘッド31間の鉛直方向における距離が、媒体、ヘッド31間の鉛直方向における距離と同じとなることから、吐出されて媒体に着弾され実際に画像を形成することとなるUVインク、の温度を適正な温度により一層正確にコントロールすることが可能となる。したがって、UVインクの加温がより一層適切に行われることとなる。
【0062】
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、液体吐出方法等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0063】
上記実施の形態においては、液体吐出装置(液体噴射装置)をインクジェット式プリンターに具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【0064】
また、上記実施の形態においては、インクとして電磁波硬化型インクを例に挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば、電磁波硬化型でない他のインクであってもよい。
【0065】
また、上記実施の形態においては、電磁波硬化型インクとして紫外線硬化型インクを例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、電子線、X線、可視光線、赤外線等の電磁波で硬化するインクであってもよい。
【0066】
また、上記実施の形態においては、媒体を支持する支持部としてプラテン14を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、媒体を支持する機能を有するものであれば、他のものであってもよい。
【0067】
また、上記実施の形態においては、ヒーター90はキャリッジ21に設けられていることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ヘッド31に設けられていることとしてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態においては、温度センサー52としてサーミスタを例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、熱電対等であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 プリンター、1a 筐体、10 搬送ユニット、13 搬送ローラー、14 プラテン、14a 他端、15 排紙ローラー、20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、24 ガイド軸、30 ヘッドユニット、31 ヘッド、35 インク供給ユニット、37 インクカートリッジ、38 フラッシングユニット、40 照射ユニット、41 仮硬化用照射部、42 仮硬化用照射部、43 本硬化用照射部、50 検出器群、52 温度センサー、60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、63 メモリー、64 ユニット制御回路、70 流路、72 インク供給用チューブ、74 キャリッジ流路部、90 ヒーター、110 コンピューター、380 インク受け部材、380a 上面、380b 内部、382 フラッシングボックス、382a 開口、382b 最上端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を媒体に吐出するヘッドと、
該ヘッドが吐出した前記液体の温度を検出する温度センサーと、
前記ヘッドが吐出する前の前記液体を加温する加温部と、
前記温度センサーの出力値に基づいて、前記加温部を制御するコントローラーと、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記温度センサーは、フラッシングボックスに備えられていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記ヘッドが前記液体を前記媒体に吐出する際に、該媒体を支持する支持部を有し、
前記温度センサーは、鉛直方向において、前記支持部に支持された前記媒体の位置と同じ位置に設けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
媒体に液体を吐出する液体吐出方法であって、
液体を媒体に吐出するヘッドと、該ヘッドが吐出した前記液体の温度を検出する温度センサーと、前記ヘッドが吐出する前の前記液体を加温する加温部と、前記温度センサーの出力値に基づいて、前記加温部を制御するコントローラーと、を有する液体吐出装置を用いて媒体に液体を吐出することを特徴とする液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240232(P2012−240232A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109674(P2011−109674)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】