説明

液体吐出装置およびその制御方法

【課題】設置スペースの広大化を招くことなく、プラテンを退避させるための構成をより自由に設計する。
【解決手段】インク吐出装置10は、インク吐出ラインヘッド16と、ノズルキャップ50と、用紙12をインク吐出位置Eに搬送する搬送装置18と、インク吐出位置Eに位置する用紙12を支持するプラテン22と、プラテン22を支持位置G1からノズル面42aに対して平行な方向で、かつ、用紙12の搬送方向Xに対して直交する方向へ引き出すとともに、ノズルキャップ50が移動するキャップ移動径路Sから外れたプラテン退避位置G2に退避させるプラテン駆動装置24とを備え、プラテン駆動装置24は、支持位置G1から引き出されたプラテン22をノズル面42aに対して平行な方向からずれる方向へ曲げながらプラテン退避位置G2に導くプラテンガイド60を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドのノズル面に対向する位置にプラテンが配設されている液体吐出装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリまたは複写装置等のような従来の一般的な液体吐出装置には、液体を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッドが組み込まれており、液体吐出ヘッドにおける複数のノズルが形成されたノズル面に対向する領域に搬送装置によって吐出対象物(用紙等)が搬送され、当該吐出対象物に対してノズルから液体が吐出される。そのため、ノズル面に対向する位置には、吐出対象物が載置されるプラテンが配置されており、当該プラテンによってノズル面と吐出対象物との距離が適正に保持されている。また、従来の一般的な液体吐出装置には、液体吐出ヘッドの吐出性能を保持するために、ノズルをクリーニングするクリーニング機構が設けられている。このクリーニング機構としては、「各ノズルから液体を連続的に吐出させるフラッシング機構」、「ノズルから液体を強制的に吸引する吸引機構」および「液体吐出ヘッドのノズル面に付着した液体を拭き取るワイピング機構」等があるが、これらのいずれの機構を採用する場合でも、ノズル面に対向する位置に当該機構の一部(キャップ、ワイパ等)を配置しなければならないため、特に、液体吐出ラインヘッドのようなプラテンに対向して固定的に配設された液体吐出ヘッドでは、ノズルをクリーニングする際にプラテンが邪魔になるおそれがあった。
【0003】
そこで、従来では、特許文献1に記載されているように、プラテンを移動可能に構成するとともに、装置本体(ケーシング等)に駆動装置を取り付け、クリーニングを行う際には、駆動装置でプラテンを「用紙の搬送方向」に移動させることによって、当該プラテンをノズル面に対向する位置から退避させるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−142280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術(特許文献1)によれば、プラテンをノズル面に対向する位置から一時的に退避させることができるので、ノズルをクリーニングする際にプラテンが邪魔になるのを防止することができる。しかし、特許文献1の図13、図15および図17に示されているように、プラテンを2つに分割するとともに、2つの分割片のそれぞれを「用紙の搬送方向」における上流側および下流側のそれぞれに退避させていたので、プラテンを退避させるための退避スペースを、他の部品との干渉を避けながら確保するのが困難であり、プラテンの「設計の自由」が著しく制限されるという問題があった。たとえば、ノズル面に対向する位置から見て搬送方向の上流側および下流側には、用紙を搬送する搬送装置を構成するローラが配設されているため、プラテンが当該ローラに干渉するのを防止するためには、プラテンの幅(すなわち搬送方向の長さ)を狭く設計せざるを得ず、これにより用紙を支持する機能が損なわれるおそれがあった。また、特許文献1の図17に示されているように、プラテンの2つの分割片が回動される構成では、ノズル面に対してプラテンが接触するのを防止するために、プラテンをノズル面から十分に離して配置する必要があることから、吐出特性が損なわれるおそれがあった。この問題を解決する手段として、特許文献1に記載されたプラテンを「用紙の搬送方向に対して直交する方向」に退避させることが考えられるが、この場合には、退避させたプラテンが搬送路の外側に大きく出っ張るため、液体吐出装置の設置スペースの幅を搬送路の略2倍程度以上に広く確保しなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、設置スペースの広大化を招くことなく、プラテンを退避させるための構成をより自由に設計することができる、液体吐出装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、吐出対象物に対して液体を吐出する複数のノズルが開口されたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル面に対向して位置し、前記ノズル面に近接するキャップ装着位置と前記ノズル面から離間するキャップ退避位置との間で移動可能に構成され、前記キャップ装着位置において複数の前記ノズルを覆うノズルキャップと、前記吐出対象物を前記ノズル面に対向する液体吐出位置に前記ノズル面に対して平行な方向から搬送する搬送装置と、前記液体吐出位置に位置する吐出対象物を前記ノズル面に対向する支持位置において支持するプラテンと、前記プラテンを前記支持位置から前記ノズル面に対して平行な方向で、かつ、吐出対象物の搬送方向に対して直交する方向へ引き出すとともに、前記ノズルキャップが移動するキャップ移動径路から外れたプラテン退避位置に退避させるプラテン駆動装置とを備え、前記プラテンは、可撓性または屈曲性を有しており、前記プラテン駆動装置は、前記支持位置から引き出された前記プラテンを前記ノズル面に対して平行な方向からずれる方向へ曲げながら前記プラテン退避位置に導くプラテンガイドを有する。
【0008】
この構成では、プラテンを吐出対象物の搬送方向に対して直交する方向へ引き出すようにしているので、プラテンを退避させるための退避スペースを液体吐出ヘッドのノズル面から離れた位置において容易に確保することができる。また、プラテンをノズル面に対して平行な方向からずれる方向へ曲げながらプラテン退避位置に導くことができるので、曲げ角度を適宜選択することによって、吐出対象物を搬送する搬送路の外側にプラテンが大きく出っ張るのを防止することができる。たとえば、プラテンを支持位置からノズル面に対して平行な方向へ引き出した後、180度に折り返してプラテン退避位置に導くようにすると、支持位置とプラテン退避位置とが上下方向において重なるように設計することができ、装置全体を小型化することができる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置の制御方法は、吐出対象物に対して液体を吐出する複数のノズルが開口されたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出対象物を前記ノズル面に対向する液体吐出位置に前記ノズル面に対して平行な方向から搬送する搬送装置と、前記液体吐出位置に位置する吐出対象物を前記ノズル面に対向する支持位置において支持するプラテンと、前記プラテンを前記支持位置から前記ノズル面に対して平行な方向で、かつ、吐出対象物の搬送方向に対して直交する方向へ引き出すとともに、前記ノズル面に対して平行な方向からずれる方向へ曲げながら退避させるプラテン駆動装置とを備える液体吐出装置の制御方法であって、(a)前記搬送装置によって前記液体吐出位置に吐出対象物を搬送するとともに、当該吐出対象物に対して前記液体吐出ヘッドの前記複数のノズルから液体を吐出する工程と、(b)液体が付着された吐出対象物を前記液体吐出位置から排出する工程と、(c)液体が付着された吐出対象物に対して前記液体吐出ヘッドによる再度の液体の吐出を行うか否かを判断する工程と、(d)前記(c)工程において再度の液体の吐出を行うと判断されたときに、前記搬送装置によって前記(a)工程における搬送方向とは反対の方向に吐出対象物を搬送し、当該吐出対象物を前記液体吐出位置まで戻す工程と、(e)前記プラテン駆動装置で前記プラテンを吐出対象物の搬送方向に対して直交する方向に移動させることによって、当該方向に吐出対象物の位置をずらす工程と、(f)前記(e)工程において位置がずらされた吐出対象物を前記搬送装置によって前記(a)工程の開始位置までさらに搬送する工程と、(g)前記搬送装置によって前記(a)工程における搬送方向と同じ方向に吐出対象物を搬送するとともに、当該吐出対象物に対して前記液体吐出ヘッドの前記複数のノズルから液体を再度吐出する工程とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上に説明したように構成され、設置スペースの広大化を招くことなく、プラテンを退避させるための構成をより自由に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係るインク吐出装置の構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るインク吐出装置の構成を示す正面図である。
【図3】インク吐出ラインヘッド、キャップ装置、プラテンおよびプラテン駆動装置の相互の位置関係を示す分解斜視図である。
【図4】インク吐出ラインヘッドの構成を底面側から示す斜視図である。
【図5】プラテンおよびプラテン駆動装置の構成を示す斜視図であり、(A)は、プラテンが支持位置に位置している状態を示す斜視図、(B)は、プラテンがプラテン退避位置に位置している状態を示す斜視図である。
【図6】プラテン駆動装置の構成を示す斜視図である。
【図7】プラテンの構成を示す部分拡大斜視図である。
【図8】第1実施形態に係るインク吐出装置の動作態様を示す図であり、(A)は、「プリントポジション」を示す正面図、(B)は、「キャップポジション」を示す正面図、(C)は、「用紙移動ポジション」を示す正面図である。
【図9】インク吐出装置の制御方法の工程を示すフロー図である。
【図10】インク吐出装置の制御方法の工程を段階的に示す工程図である。
【図11】第2実施形態に係るインク吐出装置の要部を示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。
【図12】第2実施形態に係るインク吐出装置の動作態様を示す図であり、(A)は、「プリントポジション」を示す正面図、(B)は、「用紙移動ポジション」を示す正面図、(C)は、「プラテン退避ポジション」を示す正面図である。
【図13】第2実施形態に係るインク吐出装置における「用紙移動ポジション」を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態に係る「液体吐出装置」および「液体吐出装置の制御方法」について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を「インク吐出装置」に適用しているが、本発明は、着色液を吐出させる「着色液吐出装置」や、導電液を吐出させる「導電液吐出装置」等のような他の「液体吐出装置」にも適用可能である。本発明を「着色液吐出装置」または「導電液吐出装置」等に適用した場合には、以下の説明で用いる「インク」を「着色液」または「導電液」等に読み替えるものとする。また、以下の説明で用いる「下」とは、インクを吐出する方向を意味し、「上」とは、その反対の方向を意味するものとする。
【0013】
(第1実施形態)
[第1実施形態に係るインク吐出装置の構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る「液体吐出装置」としてのインク吐出装置10の構成を示す斜視図であり、図2は、インク吐出装置10の構成を示す正面図である。
【0014】
インク吐出装置10は、「吐出対象物」としての用紙12に対してインクを吐出する複数のノズル14(図4)を有する複数(本実施形態では4つ)の「液体吐出ヘッド」としてのインク吐出ラインヘッド16と、インク吐出ラインヘッド16に用紙12を搬送する搬送装置18と、必要に応じて複数のノズル14を覆うキャップ装置20(図2)と、複数のノズル14と対向する位置において用紙12を支持するプラテン22(図2)と、プラテン22を駆動するプラテン駆動装置24とを備えている。本実施形態では、図1および図2に示すように、搬送装置18によって用紙12を搬送するための搬送路Rが構成されており、搬送路Rの途中に位置する4つのヘッド位置P1〜P4のそれぞれに、ブラック(BK)、イエロー(Y)、シアン(C)およびマゼンダ(M)の4色のインクのそれぞれを吐出する4つのインク吐出ラインヘッド16が固定的に配置されている。そして、各インク吐出ラインヘッド16に対応して、キャップ装置20、プラテン22およびプラテン駆動装置24が配置されている。
【0015】
なお、インク吐出ラインヘッド16の数は、特に限定されるものではなく、たとえば1色または複数色のインクを吐出する機能を有するインク吐出ラインヘッド16が1つだけ配設されていてもよい。また、以下の説明では、用紙12の搬送方向を「搬送方向X」といい、搬送方向Xに対して直交する方向を「ライン方向Y」という。
【0016】
<搬送装置>
搬送装置18は、図1および図2に示すように、用紙12をヘッド位置P1〜P4のそれぞれに対応して位置する「インク吐出位置E(図8(A))」に供給するとともに、当該「インク吐出位置E」から排出するものであり、複数(本実施形態では20個)のローラ(後述するローラ30a〜30fを含む。)からなるローラユニット30と、ローラユニット30の複数のローラに巻き掛けられた搬送ベルト32と、当該複数のローラのうち少なくとも1つに接続された駆動モータ(図示省略)とを有している。
【0017】
図2に示すように、搬送装置18におけるヘッド位置P1に対応する部分では、「インク吐出位置E(図8(A))」よりも搬送方向Xの上流側に配置された2つのローラ30aおよび30bとこれらの間に掛け渡された搬送ベルト32とによって、用紙12を「インク吐出位置E」に供給する用紙供給部34が構成されている。また、「インク吐出位置E」よりも搬送方向Xの下流側に配置された2つのローラ30cおよび30dとこれらの間に掛け渡された搬送ベルト32とによって、用紙12を「インク吐出位置E」から排出する用紙排出部36が構成されている。そして、「インク吐出位置E」の上流側に位置するローラ30bと下流側に位置するローラ30cとの間には、搬送ベルト32を搬送路Rから下方に逃すための2つのローラ30eおよび30fが、ローラ30bおよび30cよりも下方に配置されており、これによって「インク吐出位置E」の下方には、キャップ装置20を配設するための略U状のスペースが確保されており、当該スペース内に後述するノズルキャップ50を移動させるためのキャップ移動径路S(図8(A))が確保されている。
【0018】
なお、ヘッド位置P2〜P4のそれぞれに対応する3つの部分についても、ヘッド位置P1に対応する部分と同様に構成されている。
【0019】
<液体吐出ラインヘッド>
図3は、インク吐出ラインヘッド16、キャップ装置20、プラテン22およびプラテン駆動装置24の相互の位置関係を示す分解斜視図であり、図4は、インク吐出ラインヘッド16の構成を下面側から示す斜視図である。
【0020】
インク吐出ラインヘッド16は、図1および図2に示すように、搬送路Rのヘッド位置P1〜P4のそれぞれに、搬送方向Xに対して直交する方向(すなわちライン方向Y)に延びて固定的に配置され、搬送装置18の用紙供給部34から「インク吐出位置E(図8(A))」に供給された用紙12に対してインクを吐出するものであり、図3に示すように、ヘッドホルダー40とノズルプレート42とを有している。
【0021】
ヘッドホルダー40は、図4に示すように、ライン方向Yに延びる略直方体状に構成されており、ヘッドホルダー40の下面に対してノズルプレート42が配設されている。ノズルプレート42は、インクを吐出する複数のノズル14が開口されたノズル面42aを有しており、ノズル面42aにおける複数のノズル14が形成された領域(以下、「ノズル領域」という。)Qの長さ(すなわちライン方向Yの長さ)は、複数のノズル14が用紙12における幅方向の一端から他端に亘って対応するように、用紙12の幅よりも長めに設計されている。一方、ノズル領域Qの幅(すなわち搬送方向Xの長さ)は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、ノズル面42aにおける搬送方向Xの中央部にノズル領域Qが位置するように、ノズル面42aの幅よりも十分に狭く設計されている。
【0022】
図示していないが、ノズルプレート42の上面には、複数のノズル14のそれぞれに個別に連通する複数の圧力室を有する流路ユニットと、複数の圧力室のそれぞれに個別に対応する複数の駆動部を有するアクチュエータと、アクチュエータの各駆動部に駆動電圧を付与する配線基板とが一体的に接合されており、これらの構成要素がヘッドホルダー40の内部に収容されている。そして、配線基板がヘッドホルダー40から引き出されて制御装置に接続されており、当該制御装置から出力された制御信号に基づいてアクチュエータに駆動電圧が与えられるようになっている。また、流路ユニットには、インクチューブを介してヘッドホルダー40の外部に配設されたインクタンクが接続されており、当該インクタンクから送出されたインクが流路ユニットに与えられるようになっている。なお、ノズル14からインクを吐出させる方式は、特に限定されるものではなく、「アクチュエータ」を用いてインクを吐出させる方式に代えて、「発熱体で加熱したときの圧力」を用いてインクを吐出させる方式を採用してもよい。
【0023】
<キャップ装置>
キャップ装置20は、図3に示すように、キャップユニット46と、キャップユニット46が上下方向(すなわちノズル面42aに対して近接または離間する方向)に移動する際にキャップユニット46を案内するキャップガイド48とを有している。
【0024】
キャップユニット46は、ノズルキャップ50とノズルキャップ50を支持するキャップホルダー52とを有しており、ノズルキャップ50がインク吐出ラインヘッド16のノズル面42a(図4)に対向して位置している。そして、キャップユニット46が、キャップガイド48の内部に収容されている。ノズルキャップ50の基本的な機能は、ノズル面42aに当接して複数のノズル14を覆うことであり、ノズルキャップ50の開口側の端部50aは、ノズル面42a(図4)を傷付けることがないようにゴム等のような緩衝性を有する材料で形成されている。また、当該端部50aの平面視形状は、ノズル領域Q(図4)を覆うことができるように、ライン方向Yに延びる略長方形に設計されている。さらに、ノズルキャップ50は、インクを強制的に吸引する吸引機能等(図示省略)を有している。そして、キャップホルダー52におけるライン方向Yの両端面には、突起状の作用部54が形成されており、作用部54に対してカム(図示省略)の動力が伝達されるように構成されている。当該カムの動力が作用部54に付与されると、ノズルキャップ50がキャップユニット46と共に上記キャップ移動径路S(図8(A))を上下方向に移動され、これによりノズルキャップ50がノズル面42aに近接する「キャップ装着位置F1(図8(B))」とノズル面42aから離間する「キャップ退避位置F2(図8(A))」との間で移動されるようになっている。
【0025】
<プラテン駆動装置>
図5は、プラテン22およびプラテン駆動装置24の一部の構成を示す斜視図であり、(A)は、プラテン22が「支持位置G1」に位置している状態を示す斜視図、(B)は、プラテンが「プラテン退避位置G2」に位置している状態を示す斜視図である。また、図6は、プラテン駆動装置24の全体構成を示す斜視図である。本実施形態では、プラテン駆動装置24に対してプラテン22が一体に形成されているので、以下には、先にプラテン駆動装置24について説明する。
【0026】
プラテン駆動装置24は、図5に示すように、プラテン22を「支持位置G1」からノズル面42a(図4)に対して平行な方向で、かつ、搬送方向Xに対して直交する方向(すなわちライン方向Y)へ引き出すとともに、ノズルキャップ50が移動する上記キャップ移動径路S(図8(A))から外れたプラテン退避位置G2(図5(B))に退避させるものであり、図6に示すように、各ヘッド位置P1〜P4(図1)のそれぞれに対応して2つずつ設けられたプラテンガイド60と、各ヘッド位置P1〜P4(図1)のそれぞれに共通に設けられたプラテン昇降装置62とを有してる。
【0027】
プラテンガイド60は、図5に示すように、「支持位置G1」から引き出されたプラテン22をノズル面42aに対して平行な方向からずれる方向へ曲げながらプラテン退避位置G2に導くものであり、本実施形態では、図6に示すように、4つのプラテンベルトプーリ64a〜64dと、4つのプラテンベルトプーリ64a〜64dに巻き掛けられたプラテンベルト66と、4本のシャフト68a〜68dと、4本のシャフト68a〜68dのうちのいずれか1つ(本実施形態ではシャフト68a)に接続された駆動モータ70(図1)とを有しており、4つのプラテンベルトプーリ64a〜64dのそれぞれが4本のシャフト68a〜68dのそれぞれに取り付けられている。したがって、駆動モータ70(図1)によってシャフト68aを回転させると、シャフト68aの回転力がプラテンベルト66に伝達され、プラテンベルト66のうちプラテン22が形成された部分が、プラテンベルトプーリ64a〜64dに案内されて、「支持位置G1」に対応する位置と「プラテン退避位置G2」に対応する位置との間を移動される。
【0028】
また、プラテンガイド60は、図5(A)および図7に示すように、「支持位置G1」に対応する位置において、プラテンベルト66を収容するとともに、プラテン22を支持する溝状のプラテン支持部材72を有している。プラテン支持部材72は、図7に示すように、ライン方向Yに延びる断面略四角形のパイプ状の本体部72aの上面にライン方向Yに延びるスリット72bを形成した構造を有しており、本体部72aの内部空間がプラテンベルト66を収容する「ベルト収容空間K」となっており、本体部72aの上面がプラテン22を支持する「プラテン支持面L」となっている。プラテン支持部材72の長さは、用紙12を支持するプラテン22を確実に支持できるように、用紙12の幅とほぼ同じ長さか、それよりも長めに設計されている。
【0029】
プラテン昇降装置62は、図6に示すように、各ヘッド位置P1〜P4(図1)のそれぞれに共通に設けられたプラテンガイドプレート74と、プラテンガイドプレート74を上下方向に案内するガイドシャフト76と、プラテンガイドプレート74の下面に当接されてプラテンガイドプレート74を昇降させるためのカム78と、カム78を回転させる駆動モータ(図示省略)とを有しており、プラテンガイドプレート74の上面に上記プラテン支持部材72が載置されている。したがって、カム78によってプラテンガイドプレート74を上下方向に移動させると、プラテン支持部材72が上下方向に移動され、それに伴ってプラテン22の高さが変更される。
【0030】
<プラテン>
プラテン22は、(図8(A))に示すように、「インク吐出位置E」に位置する用紙12をノズル面42aに対向する「支持位置G1」において支持するものであり、図5(A)に示すように、2つプラテンベルト66のそれぞれに6個ずつ形成された合計12個の載置部80によって構成されている。本実施形態の載置部80は、全て同じ形状に形成されており、2つのプラテンベルト66のそれぞれに形成された6個の載置部80は、ライン方向Yに一定の間隔を隔てて形成されている。したがって、プラテン22は、全体として可撓性または屈曲性を有していることになる。また、一方のプラテンベルト66に形成された6個の載置部80と他方のプラテンベルト66に形成された6個の載置部80とは、搬送方向Xにおいて隙間Mを隔てて対向して配置されている。この隙間Mによって、所謂「縁なしプリント」および用紙12への印字直前に行う「予備吐出」の際にノズル14(図4)から吐出されたインクをノズル14側とは反対側へ逃すための開口部82がライン方向Yに連続して構成されている。なお、「予備吐出」は、用紙12への印字直前にノズル14からインクを吐出させるものに限らず、用紙12の搬送を行うことなく、インクの吐出だけを行うものであってもよい。以下に、載置部80の具体的構成について説明する。
【0031】
図7に示すように、一方のプラテンベルト66に形成された載置部80は、プラテン支持部材72のプラテン支持面Lで支持される本体部84と、プラテンベルト66に固定された固定部86と、本体部84と固定部86とを連結する連結部88とを有している。本体部84は、搬送方向Xに延びる略棒状に形成されており、本体部84の上面は、「支持位置G1(図8(A))」においてノズル面42a(図4)に対して平行となる平面に形成されており、当該上面が用紙12が載置される「用紙載置面N」となっている。また、本体部84における隙間Mとは反対側に位置する端部には、隙間M側に向かうにつれてノズル面42a(図8(A))に近づくように傾斜するガイド面90が形成されており、本体部84における隙間M側の端部には、隙間M側に向かうにつれてノズル面42a(図8(A))から遠ざかるように傾斜するガイド面92が形成されている。したがって、ガイド面90が上流側に位置する通常の搬送動作(図10(A))の際には、「インク吐出位置E」に与えられる用紙12の先端をガイド面90で案内することができ、ガイド面92が上流側に位置する逆送り動作(図10(C))の際には、隙間Mを通過した用紙12の先端をガイド面92で案内することができ、いずれの動作においてもプラテン22に対する用紙12の引っ掛かりを防止することができる。
【0032】
固定部86は、接着剤または固定ねじ等の接合材を用いてプラテンベルト66に対して強固に接合される部分であり、図7に示すように、固定部86における搬送方向Xの長さは、プラテンベルト66の幅とほぼ同じ長さに設計されており、固定部86におけるライン方向Yの長さは、プラテンベルト66がプラテンベルトプーリ64a〜64d(図6)をスムーズに通過できるように、プラテンベルトプーリ64a〜64dにおける外面の曲率等を考慮して設計されている。連結部88は、本体部84と固定部86とを、これらの機能を損なうことなく連結する部分であり、図7に示すように、連結部88における搬送方向Xの長さは、プラテン支持部材72におけるスリット72bの幅よりも短く設計されており、連結部88における上下方向の長さは、プラテン支持部材72におけるスリット72bが形成された部分の厚さよりも十分に長く設計されている。
【0033】
他方のプラテンベルト66に形成された載置部80は、一方のプラテンベルト66に形成された載置部80に対して逆向きに配置されており、プラテン22の全体構成は、隙間Mを挟んだ搬送方向Xの両側で対称になっている。したがって、通常の搬送動作(図10(A))および逆送り動作(図10(C))のいずれの場合でも、用紙12がプラテン22に引っ掛かるのを有効に防止することができるとともに、用紙12を確実に支持することができる。
[第1実施形態に係るインク吐出装置の動作]
<プリントポジション>
インク吐出装置10を用いてプリント動作を行う際には、図8(A)に示す「プリントポジション」が選択される。「プリントポジション」は、プラテン22を「支持位置G1」で支持するとともに、ノズルキャップ50を「キャップ退避位置F2」で支持する態様である。なお、「支持位置G1」とは、プラテン22における「用紙載置面N(図7)」が、搬送装置18における用紙供給部34および用紙排出部36のそれぞれの上面と同じ高さになる位置(以下、「第1高さH1」という。)であって、かつ、用紙12を支持することが可能な位置をいう。
【0034】
「プリントポジション」において、ヘッド位置P1〜P4(図1)のそれぞれに対応する「インク吐出位置E」に用紙12が供給されると、「支持位置G1」に位置するプラテン22によって当該用紙12が支持され、インク吐出ラインヘッド16の複数のノズル14から当該用紙12に対してインクが吐出される。本実施形態では、プラテン22に構成された開口部82(図5(A))から下方へインクを逃すことができるので、所謂「縁なしプリント」にも対応することができる。また、開口部82がプラテン22の長手方向に延びて形成されているため、様々なサイズの用紙12に対して「縁なしプリント」を行うことができる。そして、ノズル14の機能を維持し、或いは、回復するための「予備吐出」の際には、「インク吐出位置E」に用紙12が存在しない状態で、増粘したインクや気泡が混じったインク等がノズル14から吐出されるが、これらのインクを開口部82から下方に逃すことができる。開口部82から下方に逃されたインクは、ノズルキャップ50によって回収することができる。
【0035】
<キャップポジション>
プリント動作の停止時にノズルキャップ50でノズル領域Q(図4)を覆う際には、図8(B)に示す「キャップポジション」が選択される。たとえば、プリント動作を行わないときに、ノズル14内の増粘したインクや気泡が混じったインクを吸引装置(図示省略)で吸引して除去する「クリーニング動作」や、ノズル内のインクの自然蒸発による増粘固着を防止するためにノズル面をキャッピングする「メンテナンス動作」において、「キャップポジション」が選択される。「キャップポジション」は、プラテン22を「プラテン退避位置G2(図5(B))」で支持するとともに、ノズルキャップ50を「キャップ装着位置F1」で支持する態様である。
【0036】
「プリントポジション」から「キャップポジション」に移行する際には、プラテン駆動装置24が駆動されることによって、プラテン22が「支持位置G1」からノズル面42aに対して平行な方向で、かつ、搬送方向Xに対して直交する方向(すなわちライン方向Y)へ引き出され、その後、プラテンベルトプーリ64aおよび64b((図5(A))によって2段階に曲げられながら移動され、180度に折り返されてプラテン退避位置G2(図5(B))に退避させられる。この退避動作とほぼ同時にカムによってキャップユニット46が上昇され、ノズルキャップ50が「キャップ退避位置F2(図8(A))」から「キャップ装着位置F1(図8(B))」に移動される。このとき、ノズルキャップ50が移動するキャップ移動径路S(図8(A))は、プラテン22を退避させることによって開かれているので、プラテン22に対するノズルキャップ50の衝突を防止することができる。
【0037】
このように動作することで、ノズル面42aに対してノズルキャップ50が当接され、吸引装置(図示省略)でノズルキャップ50内に負圧を発生させることによって、ノズル14内から増粘したインク等を排出させることができる。また、次回のプリント指示が来るまでの間にノズル面42aをキャッピングして、ノズル14の状態を良好に保持することができる。さらに、プラテン22は、180度に折り返されて搬送路R(図1)の下方に位置するプラテン退避位置G2(図5(B))に退避させられるので、プラテン退避位置G2に位置するプラテン22が搬送路Rの外側に大きく出っ張るのを防止することができ、装置全体が大型化するのを防止することができる。
【0038】
<用紙移動ポジション>
「用紙移動ポジション」は、後述する「インク吐出装置の制御方法」における「用紙12の位置をライン方向Yにずらす工程(図9のステップS13)」で用いられる動作態様であり、図8(c)に示すように、プラテン22を「支持位置G1(図8(A))」が存在する上記「第1高さH1」よりもノズル面42aに近接する「第2高さH2」で支持するとともに、ノズルキャップ50を「キャップ退避位置F2」で支持する態様である。「プリントポジション」から「用紙移動ポジション」に移行する際には、プラテン昇降装置62(図6)が駆動されることによって、プラテン22が「第1高さH1」から「第2高さH2」まで持ち上げられる。
[インク吐出装置の制御方法]
図9は、インク吐出装置の制御方法の工程を示すフロー図であり、図10は、インク吐出装置の制御方法の工程を段階的に示す工程図である。なお、図9および図10では、ノズルキャップ50の動作に関するクリーニング工程等は省略している。
【0039】
たとえば、「クリーニング動作」によってもノズル14内の増粘されたインクや気泡や異物が取り除かれなかったり、ワイピングされた後の増粘インクや紙粉などが逆にノズル14内に入り込んだり、電気的な不具合などで複数のノズル14のうちの少なくとも1つのインク吐出機能が損なわれたりしたときには、用紙12の表面に形成される画像における当該ノズル14に対応した位置には、インクが吐出されない所謂「ピン抜け」が生じるが、本実施形態では、このような「ピン抜け」を、用紙12の位置をライン方向Yにずらした後、再度のプリント動作を行うことによって解消することができる。つまり、本実施形態では、図10に示すように、ヘッド位置P4に対応する「インク吐出位置E」の下流側にピン抜け検出装置100を配設し、ピン抜け検出装置100の出力に基づいて、制御装置(図示省略)によって「再プリント動作」を実行することができるように構成されている。以下には、当該「再プリント動作」の制御を含む「インク吐出装置の制御方法」について説明する。
【0040】
図9に示すように、制御装置(図示省略)による制御信号に基づいてプリント動作が開始されると、まず、ステップS1において搬送装置18による通常の搬送動作が開始され、ヘッド位置P1〜P4のそれぞれに対応する「インク吐出位置E」に向けて用紙12が搬送される。続いて、ステップS3において、各インク吐出ラインヘッド16によるインク吐出動作が実行される。図10(B)に示すように、最も下流側のヘッド位置P4に位置するインク吐出ラインヘッド16によるインク吐出動作が完了すると、当該インク吐出ラインヘッド16に対応する「インク吐出位置E」から用紙12が排出される。本実施形態では、ステップS1およびS3が一体となって用紙12に対して画像が形成されるため、これらの工程は「プリント動作」として同時に進行されることになる。なお、図10(A)は、用紙12がステップS1およびS3の開始位置にある状態を示しており、図10(B)は、用紙12がステップS1およびS3の終了位置にある状態を示している。
【0041】
そして、ステップS5において、ピン抜け検出装置100の出力に基づいて「ピン抜け」の有無が検出され、ステップS7において、「ピン抜けの有無」が判断される。なお、ピン抜け検出装置100としては、たとえば、用紙12に形成された画像をスキャンすることによって画像情報を取得し、当該画像情報に基づいて「ピン抜け」を検出する装置等が用いられる。ステップS7において「ピン抜け無し」と判断されると、プリント動作を終了し、「ピン抜け有り」と判断されると、ステップS9において「再プリントの条件」が設定される。つまり、「ピン抜け有り」との判断は、「抜けピン箇所に再度のインクの吐出を行う。」との判断を行ったことを意味する。なお、ステップS9で設定される「再プリントの条件」とは、「ピン抜け」の位置に基づいて再プリントを適正に行うための各種の条件を意味し、後述するステップS13における「用紙12のずれ幅」も当該条件に含まれる。
【0042】
ステップS9において「再プリントの条件」が設定されると、ステップS11において、搬送装置18によって用紙12が逆送され、当該用紙12が「インク吐出位置E」まで戻される。つまり、ステップS1における搬送動作の搬送方向とは反対の方向に用紙12が搬送され、「インク吐出位置E」の下方に位置するプラテン22の用紙載置面Nに当該用紙が再び載置される。このとき、用紙12が戻される位置は、図10(C)に示すように、少なくとも2つのプラテン22で用紙12を支持することができる位置であることが望ましい。
【0043】
続くステップS13では、ステップS9で算出された「用紙12のずれ幅」に従って、プラテン駆動装置24によって用紙12がライン方向Yにずらされる。すなわち、まず、図8(C)に示すように、プラテン昇降装置62(図6)によってプラテン22が「第1高さH1」から「第2高さH2」まで持ち上げられ、これに伴ってプラテン22に載置された用紙12が持ち上げられる。そして、プラテンガイド60によってプラテン22が上記「用紙12のずれ幅」に応じた距離だけライン方向Yに移動される。この移動時における動作態様は、上記「用紙移動ポジション」であり、プラテン22の高さは「第2高さH2」に保持されている。したがって、用紙12をライン方向Yにずらす際には、用紙12と搬送ベルト32の表面との摩擦抵抗を軽減することができ、用紙12の位置が不所望にずれるのを防止することができる。また、図10(c)に示すように、少なくとも2つのプラテン22で用紙12が支持されている場合には、1つのプラテン22で用紙12が支持されている場合よりも、用紙12がより安定的に支持されるので、用紙12の不所望な位置ずれをより確実に防止することができる。
【0044】
用紙12をライン方向Yにずらす動作が完了すると、プラテン昇降装置62によってプラテン22を「第1高さH1」まで降下させる。降下が完了したときのプラテン22の位置は、ノズル面42aに対向し、かつ、位置をずらす前の「支持位置G1」からライン方向Yに離間した位置であり、位置をずらす前の「支持位置G1」を「第1支持位置」とすると、位置をずらした後の「支持位置G1」は、再プリント動作の際に用紙12を支持する意味で「第2支持位置」ということになる。
【0045】
ステップS13における「用紙ずらし工程」が完了すると、ステップS15において、搬送装置18によって用紙12がさらに逆送され、当該用紙12がステップS1の開始位置(図10(A))まで戻される。その後は、ステップS1に戻って、通常の搬送動作による再プリント動作が実行される。
【0046】
なお、本実施形態では、ステップS5において「ピン抜け」の有無を検出するとともに、ステップS7において「ピン抜け」の有無を判断し、「ピン抜け」がある場合にステップS9以降の再プリント動作を実行しているが、たとえば、ステップS5において画像の「解像度」を検出するとともに、ステップS7において「解像度」の適否を判断し、「解像度」が所定値よりも低い場合にステップS9以降の再プリント動作を実行してもよい。また、ステップS5においてインクの所謂「着弾ずれ」の有無を検出するとともに、ステップS7において「着弾ずれ」の有無を判断し、「着弾ずれ」がある場合にステップS9以降の再プリント動作を実行するようにしてもよい。そして、「ピン抜け」、「解像度」および「着弾ずれ」のうちの少なくとも2つを検出し、これらの検出結果に基づいて上記各再プリント動作を組み合わせて実行するようにしてもよい。なお、所謂「着弾ずれ」とは、上記異物の付着等に起因してノズル14の機能が損なわれたり、「インク吐出位置E」の周辺環境(空気流れ)等に起因してインクの吐出方向がずれたりした場合に、用紙12の表面における適正位置からずれた位置にインクが付着する現象をいう。
【0047】
さらに、本実施形態では、ステップS5の「ピン抜け検出工程」とステップS7の「ピン抜け判断工程」とをステップS3の「プリント工程」の後に行っているが、これらの工程をプリント動作を実行する前(すなわちステップS1の前)に行うようにしてもよい。この場合には、ステップS3の「プリント工程」の後に、予め行われたステップS7の判断に基づいて再プリント動作が実行され、或いは、プリント動作が終了される。
【0048】
(第2実施形態)
[第2実施形態に係るインク吐出装置の構成]
図11は、第2実施形態に係るインク吐出装置の要部を示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。図12(A)は、第2実施形態に係るインク吐出装置の要部を示す正面図である。
【0049】
このインク吐出装置は、図11に示すように、第1実施形態に係るインク吐出装置10に対して、拍車ローラユニット110を付加するとともに、図12(A)に示すように、インク吐出ラインヘッド16の下部における搬送方向Xの角部に拍車ローラユニット110を配設するためのスペースTを確保し、さらに、プラテン昇降装置62によるプラテン22の高さ調整を少なくとも3段階で行うようにしたものであり、他の構成は第1実施形態に係るインク吐出装置10と同様である。
【0050】
4つのヘッド位置P1〜P4の1つに着目すると、拍車ローラユニット110は、図12(A)に示すように、プラテン22に対向して2つ配設されており、一方の拍車ローラユニット110は、1つの拍車ローラホルダ112と、6つの拍車ローラ114と、6つの付勢ばね116とを有している。拍車ローラホルダ112は、ライン方向Yに延びる板状部材であり、拍車ローラホルダ112におけるライン方向Yの両端部は、保持部材118によってライン方向Yに移動可能に保持されている。また、拍車ローラホルダ112における幅方向(すなわち搬送方向X)の一方端縁には、6つの凹部112aがライン方向Yに間隔を隔てて形成されており、6つの凹部112aのそれぞれに対して、拍車ローラ114が1つずつ配設されている。拍車ローラ114は、外周面に用紙12に接触する複数の突起を有する略円板状の部材であり(図12(A))、拍車ローラ114の回転軸は、ライン方向Yに延びて形成されている。そして、6つの拍車ローラ114のそれぞれが付勢ばね116を介して凹部112aの内部で少なくとも上下方向に移動可能に保持されている。一方の拍車ローラユニット110における6つの拍車ローラ114のそれぞれは、一方のプラテンベルト66に形成されたプラテン22の6つの載置部80に対向して配置されている。
【0051】
他方の拍車ローラユニット110は、一方の拍車ローラユニット110と同様に構成されており、2つの拍車ローラユニット110のそれぞれは、インク吐出ラインヘッド16の下部に構成されたスペースT内に配設されている。拍車ローラホルダ112は、上述のように保持部材118によってライン方向Yに移動可能に保持されてはいるが、上下方向に移動できるようには構成されておらず、プラテン22と拍車ローラ114との距離は、プラテン昇降装置62でプラテン22を昇降させることによって調整できるようになっている。
[第2実施形態に係るインク吐出装置の動作]
図12は、第2実施形態に係るインク吐出装置の動作態様を示す図であり、(A)は「プリントポジション」を示す正面図、(B)は「用紙移動ポジション」を示す正面図、(C)は「プラテン退避ポジション」を示す正面図である。図12(A)に示した「プリントポジション」は、図8(A)に示した第1実施形態の「プリントポジション」に対応しており、図12(B)に示した「用紙移動ポジション」は、図8(C)に示した第1実施形態の「用紙移動ポジション」に対応している。図12(C)に示した「プラテン退避ポジション」は、第1実施形態では存在しないものである。なお、第2実施形態においても、図8(B)に示した第1実施形態の「キャップポジション」に対応する「キャップポジション」は存在するが、拍車ローラ114に関する特別な構成が見当たらないため、図12では、これを省略している。
【0052】
第2実施形態の「プリントポジション」では、図12(A)に示すように、プラテン22が「第1高さH1」で支持されており、プラテン22の用紙載置面Nには、拍車ローラ114が付勢ばね116によって押し付けられている。したがって、プリント動作の際には、用紙載置面Nに載置された用紙12を拍車ローラ114で適度に押さえることができる。「プリントポジション」から「用紙移動ポジション」に移行する際には、図12(B)に示すように、プラテン昇降装置62によってプラテン22が「第1高さH1」から「第2高さH2」まで持ち上げられ、「第2高さH2」で支持される。すると、図13に示すように、拍車ローラ114は、プラテン22に押されることによって、拍車ローラホルダ112に対してより上方に移動され、拍車ローラ114と拍車ローラホルダ112とを連結する付勢ばね116がさらに引き伸ばされる。これにより付勢ばね116のより大きな復元力が拍車ローラ114に対して下向きに作用し、拍車ローラ114が用紙12を押さえる力が大きくなる。したがって、用紙12をライン方向にずらす際(図9のステップS13)には、用紙12が不所望にずれるのを確実に防止することができる。なお、用紙12をライン方向にずらす際には、拍車ローラホルダ112の全体が用紙12と共にライン方向Yに移動される。
【0053】
第2実施形態では、「プリントポジション」において、プラテン22に対して拍車ローラ114が当接されているため、そのままの状態でプラテン22を「プラテン退避位置G2(図5(B)」に退避させたのでは、プラテン22と拍車ローラ114との間の摩擦によってプラテン22および拍車ローラ114が傷付くおそれがある。そこで、プラテン22を退避させる際には、「プラテン退避ポジション」が用いられる。「プラテン退避ポジション」は、図12(c)に示すように、プラテン22を「支持位置G1(図9(A))」が存在する「第1高さH1」よりもノズル面42aから離間する「第3高さH3」で支持するとともに、ノズルキャップ50を「キャップ退避位置F2」で支持する態様である。「プリントポジション」から「プラテン退避ポジション」に移行する際には、プラテン昇降装置62(図6)が駆動されることによって、プラテン22が「第1高さH1」から「第3高さH3」まで降下される。「プラテン退避ポジション」では、プラテン22が拍車ローラ114から離間されるため、プラテン22を退避させる際に、プラテン22および拍車ローラ114が摩擦によって傷付くのを防止することができる。
【0054】
なお、インク吐出装置10は、クリーニング動作などによってノズル面42aに付着したインクを拭き取るワイピング機構を備えていてもよい。その場合のワイパは、プリント動作時には、インク吐出ラインヘッド16によるインクの吐出動作の妨げにならないように配置されている。そして、ワイピング動作を行うときには、まず、プラテン22が退避され、続いて、ワイパが昇降装置(図示省略)によってノズル面42aに接触する位置まで移動され、その後、当該ワイパがライン方向Yに摺動されることによって、ノズル面42aに付着したインクが除去される。
【符号の説明】
【0055】
10… インク吐出装置(液体吐出装置)
E… インク吐出位置
F1… キャップ装着位置
F2… キャップ退避位置
G1… 支持位置
G2… プラテン退避位置
H1… 第1高さ
H2… 第2高さ
H3… 第3高さ
S… キャップ移動径路
X… 搬送方向
Y… ライン方向
10… インク吐出装置
12… 用紙(吐出対象物)
14… ノズル
16… インク吐出ラインヘッド(液体吐出ヘッド)
18… 搬送装置
20… キャップ装置
22… プラテン
24… プラテン駆動装置
42a… ノズル面
42… ノズルプレート
50… ノズルキャップ
60… プラテンガイド
62… プラテン昇降装置
66… プラテンベルト
72… プラテン支持部材
74… プラテンガイドプレート
80… 載置部
82… 開口部
100… ピン抜け検出装置
110… 拍車ローラユニット
114… 拍車ローラ
116… 付勢ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出対象物に対して液体を吐出する複数のノズルが開口されたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズル面に対向して位置し、前記ノズル面に近接するキャップ装着位置と前記ノズル面から離間するキャップ退避位置との間で移動可能に構成され、前記キャップ装着位置において複数の前記ノズルを覆うノズルキャップと、
前記吐出対象物を前記ノズル面に対向する液体吐出位置に前記ノズル面に対して平行な方向から搬送する搬送装置と、
前記液体吐出位置に位置する吐出対象物を前記ノズル面に対向する支持位置において支持するプラテンと、
前記プラテンを前記支持位置から前記ノズル面に対して平行な方向で、かつ、吐出対象物の搬送方向に対して直交する方向へ引き出すとともに、前記ノズルキャップが移動するキャップ移動径路から外れたプラテン退避位置に退避させるプラテン駆動装置とを備え、
前記プラテンは、可撓性または屈曲性を有しており、
前記プラテン駆動装置は、前記支持位置から引き出された前記プラテンを前記ノズル面に対して平行な方向からずれる方向へ曲げながら前記プラテン退避位置に導くプラテンガイドを有する、液体吐出装置。
【請求項2】
前記プラテンガイドは、前記プラテンを前記支持位置から前記ノズル面に対して平行な方向へ引き出した後、180度に折り返して前記プラテン退避位置に導く、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記プラテンガイドは、複数のローラと前記複数のローラに巻き掛けられた無端ベルトとを有しており、
前記プラテンは、前記無端ベルトに間隔を隔てて固定され、かつ、前記支持位置において上面に吐出対象物が載置される複数の載置部を有している、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記プラテンガイドは、前記支持位置において前記複数の載置部を支持する溝状のプラテン支持部材を有しており、
前記プラテン支持部材の内部に前記無端ベルトが収容されている、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記プラテンは、前記支持位置に位置しているときに前記ノズルから吐出された液体を前記ノズル側とは反対側へ逃すための開口部を有している、請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記プラテン駆動装置は、前記ノズル面に対向する第1支持位置と、前記ノズル面に対向し、前記第1支持位置から前記吐出対象物の搬送方向に対して直交する方向に離間する第2支持位置との間で前記プラテンを移動させる、請求項1ないし5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第1支持位置および前記第2支持位置の両方が存在する第1高さと、前記第1高さよりも前記ノズル面に近接する第2高さとの間で前記プラテンを昇降させるプラテン昇降装置をさらに備える、請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1高さおよび前記第2高さのそれぞれに位置する前記プラテンに対して、前記プラテンに載置された吐出対象部を介して前記ノズル面側から当接される拍車ローラを備えており、
前記プラテン昇降装置は、前記第1高さよりも前記ノズル面から離間する第3高さに前記プラテンを移動させる機能を有しており、
前記第3高さにおいては、前記プラテンに対する前記拍車ローラの当接状態が解除される、請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッドは複数存在し、
前記複数の液体吐出ヘッドは、前記吐出対象物の搬送方向に間隔を隔てて並んで配設されており、
前記プラテンと前記プラテン駆動装置と前記プラテン昇降装置とが、前記複数の液体吐出ヘッドのそれぞれに対応して配設されている、請求項1ないし8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体吐出ヘッドは、前記吐出対象物の搬送方向に対して直交する方向に延びるラインヘッドである、請求項1ないし9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
吐出対象物に対して液体を吐出する複数のノズルが開口されたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出対象物を前記ノズル面に対向する液体吐出位置に前記ノズル面に対して平行な方向から搬送する搬送装置と、
前記液体吐出位置に位置する吐出対象物を前記ノズル面に対向する支持位置において支持するプラテンと、
前記プラテンを前記支持位置から前記ノズル面に対して平行な方向で、かつ、吐出対象物の搬送方向に対して直交する方向へ引き出すとともに、前記ノズル面に対して平行な方向からずれる方向へ曲げながら退避させるプラテン駆動装置とを備える液体吐出装置の制御方法であって、
(a)前記搬送装置によって前記液体吐出位置に吐出対象物を搬送するとともに、当該吐出対象物に対して前記液体吐出ヘッドの前記複数のノズルから液体を吐出する工程と、
(b)液体が付着された吐出対象物を前記液体吐出位置から排出する工程と、
(c)液体が付着された吐出対象物に対して前記液体吐出ヘッドによる再度の液体の吐出を行うか否かを判断する工程と、
(d)前記(c)工程において再度の液体の吐出を行うと判断されたときに、前記搬送装置によって前記(a)工程における搬送方向とは反対の方向に吐出対象物を搬送し、当該吐出対象物を前記液体吐出位置まで戻す工程と、
(e)前記プラテン駆動装置で前記プラテンを吐出対象物の搬送方向に対して直交する方向に移動させることによって、当該方向に吐出対象物の位置をずらす工程と、
(f)前記(e)工程において位置がずらされた吐出対象物を前記搬送装置によって前記(a)工程の開始位置までさらに搬送する工程と、
(g)前記搬送装置によって前記(a)工程における搬送方向と同じ方向に吐出対象物を搬送するとともに、当該吐出対象物に対して前記液体吐出ヘッドの前記複数のノズルから液体を再度吐出する工程とを備える、液体吐出装置の制御方法。
【請求項12】
前記液体吐出装置は、前記プラテンを昇降させるプラテン昇降装置を備えており、
前記(e)工程では、前記プラテン昇降装置で吐出対象物を持ち上げる、請求項11に記載の液体吐出装置の制御方法。
【請求項13】
前記(c)工程を前記(a)工程よりも前に行うようにした、請求項11または12に記載の液体吐出装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−234735(P2010−234735A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87433(P2009−87433)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】