説明

液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法

【課題】 液体受け部上に堆積した堆積物がヘッドに接触することを抑制する。
【解決手段】 液体を吐出するヘッド31と、回転軸36cを中心として回転可能であり、法線が前記回転軸方向に沿う断面がN角形であることにより液体受け面37がN個設けられている液体受け部36であって、ヘッド31がフラッシングを行う際にヘッド31が吐出する液体をN個の液体受け面37のうちの一つの液体受け面37で受ける液体受け部36と、液体受け部36を回転させることにより、液体を受ける一つの液体受け面37を順次切り換えるコントローラー60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドに付着した異物等を除去するため、ヘッドから強制的に連続して液体を吐出させるフラッシングと呼ばれるメンテナンスを行う液体吐出装置が知られている(たとえば、特許文献1)。液体吐出装置は、フラッシングを行う際、フラッシングユニットに向けて吐出させた液体を、当該フラッシングユニット内に設けられた液体受け部に着弾させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−150722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、液体受け部に着弾した液体が乾燥して液体受け部上に堆積すると、このような堆積物がヘッドに接触することにより印刷不良を生じさせる場合が想定される。したがって、液体受け部上に堆積した堆積物の高さがヘッドに接触する高さに達する前に、液体受け部をメンテナンスする必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作者が液体受け部の使用状況を容易に把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための主たる発明は、液体を吐出するヘッドと、
回転軸を中心として回転可能であり、法線が前記回転軸方向に沿う断面がN角形であることにより液体受け面がN個設けられている液体受け部であって、前記ヘッドがフラッシングを行う際に前記ヘッドが吐出する液体をN個の液体受け面のうちの一つの液体受け面で受ける液体受け部と、
前記液体受け部を回転させることにより、液体を受ける前記一つの液体受け面を順次切り換えるコントローラーと、
を備えることを特徴とする液体吐出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンター1の構成を示す概略図である。
【図2】プリンター1の構成を示すブロック図である。
【図3A】フラッシングユニット35の側面模式図である。
【図3B】フラッシングユニット35の正面模式図である。
【図4】フラッシングボックスを有するフラッシングユニット35の側面模式図である。
【図5】8パスで印刷するケースにおいて各パスで形成されるラスタラインを示した模式図である。
【図6】ヘッド31の移動を説明するための説明模式図である。
【図7】第一フラッシング動作乃至第三フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け部材36に向けてインクが吐出される様子を示した模式図である。
【図8】第一実施形態に係るプリンター1を比較例に係るプリンター1と比較したときの第一実施形態に係るプリンター1の有効性を説明するための説明模式図である。
【図9】インク受け部材36の他の例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
即ち、液体を吐出するヘッドと、
回転軸を中心として回転可能であり、法線が前記回転軸方向に沿う断面がN角形であることにより液体受け面がN個設けられている液体受け部であって、前記ヘッドがフラッシングを行う際に前記ヘッドが吐出する液体をN個の液体受け面のうちの一つの液体受け面で受ける液体受け部と、
前記液体受け部を回転させることにより、液体を受ける前記一つの液体受け面を順次切り換えるコントローラーと、
を備えることを特徴とする液体吐出装置である。
このような液体吐出装置によれば、操作者が液体受け部の使用状況を容易に把握できる。
【0011】
また、かかる液体吐出装置であって、前記液体受け部を加熱する加熱部を備えることを特徴とする液体吐出装置であってもよい。
このような液体吐出装置とすれば、ヘッドに対向した液体受け面に着弾した液体を乾燥させることで、該液体が隣接する他の液体受け面に垂れ流れることを抑制できる。したがって、液体を受けていない(未使用の)液体受け面に液体がほとんど付着しないので、操作者が液体受け部の使用状況をより容易に把握できる。
【0012】
また、かかる液体吐出装置であって、前記ヘッドは、前記回転軸方向に沿う方向にノズルが並んだノズル列を有し、
前記コントローラーは、
前記ヘッドを前記回転軸方向における第一位置に位置させて、前記ヘッドに前記フラッシングを行わせ、
その後、前記ヘッドを前記回転軸方向へ移動させることにより前記ノズル列の長さよりも短い長さ分前記第一位置よりも前記回転軸方向にずれた第二位置に前記ヘッドを移動させて、前記ヘッドに前記フラッシングを行わせ、
前記液体受け面は、前記液体受け部の前記回転軸方向における端部が中央部によりも鉛直方向下方に位置するように前記中央部から前記端部へ向かって傾斜していることを特徴とする液体吐出装置であってもよい。
このような液体吐出装置とすれば、液体受け部の中央部においてその端部よりも多量の液体が着弾することとなるが、該傾斜によって中央部に着弾した液体を端部に流すことで、液体受け面に堆積する液体の高さを均一化することができ、もって堆積した液体がヘッドに接触することを抑制することができる。
【0013】
また、かかる液体吐出装置であって、前記コントローラーは、前記フラッシングの回数に基づいて、前記一つの液体受け面を切り換えるか否かを決定することを特徴とする液体吐出装置であってもよい。
このような液体吐出装置とすれば、液体受け面に着弾し液体受け面上に堆積した液体がヘッドに接触する高さになる前に液体受け面を切り換えることができ、もって液体受け面に堆積した液体がヘッドに接触することを抑制できる。
【0014】
また、液体を吐出するヘッドと、
回転軸を中心として回転可能であり、法線が前記回転軸方向に沿う断面がN角形であることにより液体受け面がN個設けられている液体受け部であって、前記ヘッドがフラッシングを行う際に前記ヘッドが吐出する液体をN個の液体受け面のうちの一つの液体受け面で受ける液体受け部と、
前記液体受け部を回転させることにより、液体を受ける前記一つの液体受け面を順次切り換えるコントローラーと、
を備える液体吐出装置を用いて媒体に液体を吐出することを特徴とする液体吐出方法である。
このような液体吐出方法によれば、操作者が液体受け部の使用状況を容易に把握できる。
【0015】
===第一実施形態===
液体吐出装置の一例としてのプリンター1の構成例について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、プリンター1の概略断面図である。図2は、プリンター1のブロック図である。
なお、以下の説明において、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、「前後方向」をいう場合は、図1において紙面に直交する方向を示すものとする。
また、第一実施形態においては、プリンター1が画像を記録する媒体としてロール紙2(連続紙)を用いて説明する。
【0016】
第一実施形態に係るプリンター1は、図1及び図2に示すように、搬送ユニット20と、及び、該搬送ユニット20がロール紙2を搬送する搬送経路に沿って、給送ユニット10と、プラテン29と、巻き取りユニット90と、を有し、さらに、ヘッドユニット30と、キャリッジユニット40と、クリーニングユニットと、フラッシングユニット35と、プラテンヒーターユニット70と、インク受けヒーターユニット71と、送風ユニット80と、これらのユニット等を制御しプリンター1としての動作を司るコントローラー60と、検出器群50と、を有している。
【0017】
給送ユニット10は、ロール紙2を搬送ユニット20に給送するものである。この給送ユニット10は、ロール紙2が巻かれ回転可能に支持される巻軸18と、巻軸18から繰り出されたロール紙2を巻き掛けて搬送ユニット20に導くための中継ローラー19と、を有している。
【0018】
搬送ユニット20は、給送ユニット10により送られたロール紙2を、予め設定された搬送経路に沿って搬送するものである。この搬送ユニット20は、図1に示すように、中継ローラー19に対して水平右方に位置する中継ローラー21と、中継ローラー21から見て右斜め下方に位置する中継ローラー22と、中継ローラー22から見て右斜め上方(ロール紙2が搬送される方向において、プラテン29から見て上流側)に位置する第一搬送ローラー23と、第一搬送ローラー23から見て右方(ロール紙2が搬送される方向において、プラテン29から見て下流側)に位置する第二搬送ローラー24と、第二搬送ローラー24から見て鉛直下方に位置する反転ローラー25と、反転ローラー25から見て右方に位置する中継ローラー26と、中継ローラー26から見て上方に位置する送り出しローラー27と、を有している。
【0019】
中継ローラー21は、中継ローラー19から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて下方に向かって弛ませるローラーである。
【0020】
中継ローラー22は、中継ローラー21から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
【0021】
第一搬送ローラー23は、不図示のモーターにより駆動される第一駆動ローラー23aと、該第一駆動ローラー23aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第一従動ローラー23bとを有している。この第一搬送ローラー23は、下方に弛ませたロール紙2を上方に引き上げ、プラテン29に対向する印刷領域Rへ搬送するローラーである。第一搬送ローラー23は、印刷領域R上のロール紙2の部位に対して画像記録がなされている期間、一時的に搬送を停止させるようになっている(すなわち、後述するように、ヘッド31が、左右方向及び前後方向へ移動しつつ、停止しているロール紙2の当該部位にインクを吐出することにより、当該部位に1ページ分の画像記録が成されることとなる)。なお、コントローラー60の駆動制御により、第一駆動ローラー23aの回転駆動に伴って第一従動ローラー23bが回転することによって、プラテン29上に位置させるロール紙2の搬送量(ロール紙の部位の長さ)が調整される。
【0022】
搬送ユニット20は、上述したとおり、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間に巻き掛けたロール紙2の部位を下方に弛ませて搬送する機構を有している。このロール紙2の弛みは、コントローラー60により、不図示の弛み検出用センサーからの検出信号に基づき監視される。具体的には、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間において弛ませたロール紙2の部位を、弛み検出用センサーが検出した場合には、該部位に適切な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20はロール紙2を弛ませた状態で搬送することが可能となる。一方、弛み検出用センサーが弛ませたロール紙2の部位検出しない場合は、該部位に過剰な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20によるロール紙2の搬送が一時的に停止され、張力が適切な大きさに調整される。
【0023】
第二搬送ローラー24は、不図示のモーターにより駆動される第二駆動ローラー24aと、該第二駆動ローラー24aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第二従動ローラー24bとを有している。この第二搬送ローラー24は、ヘッドユニット30により画像が記録された後のロール紙2の部位を、プラテン29の支持面に沿って水平右方向に搬送した後に鉛直下方に搬送するローラーである。これにより、ロール紙2の搬送方向が転換されることになる。なお、コントローラー60の駆動制御により、第二駆動ローラー24aの回転駆動に伴って第二従動ローラー24bが回転することによって、プラテン29上に位置するロール紙2の部位に対して付与される所定の張力が調整される。
【0024】
反転ローラー25は、第二搬送ローラー24から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
【0025】
中継ローラー26は、反転ローラー25から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて上方に向かって搬送するローラーである。
【0026】
送り出しローラー27は、中継ローラー26から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて巻き取りユニット90に送り出すようになっている。
【0027】
このように、ロール紙2が各ローラーを順次経由して移動することにより、ロール紙2を搬送するための搬送経路が形成されることになる。なお、ロール紙2は、搬送ユニット20により、印刷領域Rと対応した領域単位で間欠的にその搬送経路に沿って搬送される(すなわち、印刷領域R上のロール紙2の部位に1ページ分の画像記録が成される毎に、間欠的な当該搬送が行なわれる)。
【0028】
ヘッドユニット30は、搬送ユニット20により搬送経路上の印刷領域Rに(プラテン29上に)送り込まれたロール紙2の部位に、液体の一例としてのインクを吐出するためのものである。このヘッドユニット30は、ヘッド31とバルブユニット34とを有している。
【0029】
ヘッド31は、その下面に、列方向にノズルが並んだノズル列を有している。第一実施形態においては、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)等の色ごとにそれぞれ複数のノズル♯1〜♯Mからなるノズル列を有している。各ノズル列の各ノズル♯1〜♯Mは、ロール紙2の搬送方向に交差する交差方向(つまり、当該交差方向が前述した列方向である)に直線状に配列されている。各ノズル列は、当該搬送方向に沿って相互に間隔をあけて平行に配置されている。
【0030】
各ノズル♯1〜♯Mには、インク滴を吐出するための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯Mから吐出される。
【0031】
また、ヘッド31は、後述するように、前記搬送方向(すなわち、前記左右方向)と前記列方向(すなわち、前記前後方向)に往復移動することができるようになっている。
【0032】
バルブユニット34は、インクを一時貯留するためのものであり、不図示のインク供給チューブを介してヘッド31に接続されている。このため、ヘッド31は、バルブユニット34から供給されたインクをノズルからプラテン29上に搬送されて停止された状態のロール紙2の部位に向けて吐出することにより、画像記録を行なうことができる。
【0033】
キャリッジユニット40は、ヘッド31を移動させるためのものである。このキャリッジユニット40は、搬送方向(左右方向)に延びるキャリッジガイドレール41と(図1に二点鎖線で示す)、キャリッジガイドレール41に沿って搬送方向(左右方向)へ往復移動可能に支持されたキャリッジ42と、不図示のモーターとを有する。
【0034】
キャリッジ42は、不図示のモーターの駆動により、ヘッド31と一体となって搬送方向(左右方向)へ移動するよう構成されている。また、キャリッジ42には、列方向(前後方向)に延びる不図示のヘッドガイドレールが設けられており、ヘッド31は、前記モーターの駆動により、当該ヘッドガイドレールに沿って列方向(前後方向)へ移動するよう構成されている。
【0035】
クリーニングユニット(不図示)は、ヘッド31をクリーニングするためのものである。このクリーニングユニットは、ホームポジション(以下、HPと呼ぶ。図1参照)に設けられており、キャップと、吸引ポンプ等とを有している。ヘッド31(キャリッジ42)が搬送方向(左右方向)に移動してHPに位置すると、ヘッド31の下面(ノズル面)に不図示のキャップが密着するようになっている。このようにキャップが密着した状態で吸引ポンプが作動すると、ヘッド31内のインクが、増粘したインクや紙粉と共に吸引される。このようにして、目詰まりしたノズルが不吐出状態から回復することによってヘッドのクリーニングが完了する。
【0036】
また、搬送方向(左右方向)におけるHPとプラテン29との間には、フラッシングユニット35が設けられており、ヘッド31(キャリッジ42)が搬送方向(左右方向)に移動してフラッシングユニット35に対向する位置(以下、フラッシング位置と呼ぶ)に位置すると、ヘッド31は前記ノズル列に属する各ノズルからインクを吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作を実行する。なお、フラッシングユニット35及びフラッシング動作については、後に詳述する。
【0037】
プラテン29は、搬送経路上の印刷領域Rに位置するロール紙2の部位を支持するとともに、該部位を加熱するものである。このプラテン29は、図1に示すように、搬送経路上の印刷領域Rに対応させて設けられ、かつ、第一搬送ローラー23と第二搬送ローラー24との間の搬送経路に沿った領域に配置されている。そして、プラテン29は、プラテンヒーターユニット70が発生させた熱の供給を受けることにより、ロール紙2の該部位を加熱することができる。
【0038】
プラテンヒーターユニット70は、ロール紙2を加熱するためのものであり、不図示のプラテンヒーターを有している。このプラテンヒーターは、ニクロム線を有しており、当該ニクロム線をプラテン29内部に、プラテン29の支持面から一定距離となるように配置させて構成されている。このため、プラテンヒーターは、通電されることによってニクロム線自体が発熱し、プラテン29の支持面上に位置するロール紙2の部位に熱を伝導させることができる。このプラテンヒーターは、プラテン29の全域にニクロム線を内蔵させて構成されているため、プラテン29上のロール紙2の部位に対して熱を均一に伝導することができる。本実施の形態において、プラテン上のロール紙2の部位の温度が45℃となるように、該ロール紙2の部位を均一に加熱する。これにより、該ロール紙2の部位に着弾されたインクを乾燥させることができる。
【0039】
送風ユニット80は、プラテン29上のロール紙2に風を送るためのものである。この送風ユニット80は、ファン81とファン81を回転させるモーター(不図示)とを備えている。ファン81は、回転することにより、プラテン29上のロール紙2に風を送り、ロール紙2に着弾されたインクを乾燥させるためのものである。このファン81は、図1に示すように、本体部に設けられた開閉可能なカバー(不図示)に複数設けられている。そして、この各々のファン81は、カバーが閉じた際に、プラテン29の上方に位置して、当該プラテン29の支持面(当該プラテン29上のロール紙2)と対向するようになっている。
【0040】
巻き取りユニット90は、搬送ユニット20により送られたロール紙2(画像記録済みのロール紙)を巻き取るためのものである。この巻き取りユニット90は、送り出しローラー27から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め下方へ搬送するための中継ローラー91と、回転可能に支持され中継ローラー91から送られたロール紙2を巻き取る巻き取り駆動軸92と、を有している。
【0041】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行なうための制御ユニットである。このコントローラー60は、図2に示すように、インターフェース部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、を有している。インターフェース部61は、外部装置であるホストコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行なうためのものである。CPU62は、プリンター1全体の制御を行なうための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路64により各ユニットを制御する。
【0042】
検出器群50は、プリンター1内の状況を監視するものであり、例えば、搬送ローラーに取り付けられて媒体の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送される媒体の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ42(又はヘッド31)の搬送方向(左右方向)の位置を検出するためのリニア式エンコーダーなどがある。
【0043】
<<<インク受け部材36の構成例について>>>
次に、フラッシングユニット35の構成例について、図3A及び図3Bを用いて説明する。図3Aは、フラッシングユニット35の側面模式図である。図3Bは、フラッシングユニット35の正面模式図である。なお、図3Bは、図3Aのフラッシングユニット35をX方向からみたときの図である。
【0044】
フラッシングとは、ノズル付近のインクの増粘によりノズルが目詰まりしたり、ノズル内に気泡が混入したりして、適正な量のインクが吐出されなくなってしまうことを防止すべく、ノズルを回復させるためのメンテナンスである。具体的には、記録する画像とは関係の無い駆動信号を駆動素子(ピエゾ素子)に印加し、強制的にインクを吐出させる動作である。
【0045】
フラッシングユニット35は、ヘッド31が当該フラッシング動作を行なうことにより吐出されたインクを受けて貯留するためのものである。このフラッシングユニット35は、前述したとおり、搬送方向(左右方向)におけるHPとプラテン29との間(つまり、ロール紙2が搬送される方向において、プラテン29から見て上流側)に設けられている。フラッシングユニット35は、液体受け部の一例としてのインク受け部材36を有している。
【0046】
インク受け部材36は、ヘッド31がフラッシング動作を行なうことにより吐出されたインクを受けるためのものである。図4は、インク受け部材が存在せずフラッシングボックス136でインクを直接受けるフラッシングユニット135の側面模式図である。同図のように、仮にインク受け部材が存在せず、フラッシングボックスでインクを直接受けるとすると、ヘッドとフラッシングボックスとの間の距離が大きいことに起因して、多くのインクミストが発生してしまう。しかし、プリンター1では、インク受け部材36がヘッド31に近い位置で吐出されるインクを受けることにより、かかるインクミストの発生を抑制する役割を果たしている。
【0047】
インク受け部材36は、列方向に沿う方向に設けられた回転軸36cを中心として回転可能である。そして、インク受け部材36の断面(複数の断面のうち、当該断面の法線方向が前記回転軸方向に沿う断面)がN角形である(図3A参照、図3Aでは8角形)。これにより、インク受け部材36にはインク受け面37がN個(図3Aでは8個)設けられている。フラッシングの際には、インク受け面37がヘッド31に対面し、ヘッド31から吐出されるインクをインク受け面37で受ける。そして、インク受け面37に着弾したインクはインク受け面37上に堆積する。
【0048】
また、このインク受け部材36は、該断面がインク受け部材36の列方向における中央部36a(中央部とは、厳密な意味での中央(真ん中)を意味するものではない)から端部36b(端部とは、厳密な意味での端(最端)を意味するものではない)へ向かって徐々に小さくなっている(図3B参照)部材となっている。つまり、インク受け部材36は(具体的には、インク受け部材36のインクを受ける部位は)、端部36bが中央部36aよりも鉛直方向下方に位置するように中央部36aから端部36bへ向かって傾斜している。なお、インク受け部材36のインクを受ける部位の詳細(具体的に、回転軸方向においてどの部分でインクを受けるか)については、後に説明を加える。
【0049】
インク受けヒーターユニット71(「加熱部」に相当)は、インク受け部材36を加熱するためのものであり、不図示のインク受けヒーターを有している。インク受けヒーターは、ニクロム線を有しており、当該ニクロム線をインク受け部材36内部に、インク受け面37から一定距離となるように配置させて構成されている。このため、インク受けヒーターは、通電されることによってニクロム線自体が発熱し、インク受け部材36のインク受け面37上に着弾したインクに熱を伝導させることができる。すなわち、インク受けヒーターによって加熱されたインク受け部材36のインク受け面37にフラッシングによって吐出されるインクが着弾すると、インクの溶媒が速やかに蒸発してインクの粘度が高まる。そうすると、粘度が高まったインクは液体受け面37に定着し、隣接する液体受け面37へほとんど垂れ流れない。
【0050】
インク受け部材36が一つのインク受け面37において所定回数のフラッシングを受けると、コントローラー60は、それまでインクを受けていたインク受け面37とは異なる未使用のインク受け面37に切り換える。すなわち、インクがインク受け面37にある程度の高さに堆積すると、ヘッド31がインク受け面37上に堆積したインクに接触しないように、インク受け部材36を回転させて該異なるインク受け面37に切り換える。この切り換えにおいては、該未使用のインク受け面37がヘッド31に対面するように、コントローラー60はインク受け部材36を1/N回転(360/N度回転)させる。なお、コントローラー60がインク受け部材36を回転させる具体的な手順は後に説明を加える。
【0051】
<<<プリンター1の動作例について>>>
上述した通り、第一実施形態に係るプリンター1には、列方向(前後方向)にノズルが並んだノズル列を有するヘッド31が設けられている。そして、コントローラー60が、当該ヘッド31を搬送方向(左右方向)に移動させながら、ノズルからインクを吐出させ、搬送方向(左右方向)に沿ったラスタラインを形成することにより、印刷領域R上のロール紙2の部位に1ページ分の画像記録を行なう。
【0052】
ここで、第一実施形態に係るコントローラー60は、複数パス(6パス、8パス、16パス等)の印刷を実行する。すなわち、列方向における画像の解像度を高くするために、パス毎に列方向におけるヘッド31の位置を少しずつ変えて印刷を行なう。また、画像形成方法としては、例えば、公知のインターレース(マイクロウィーブ)印刷が実行される。
【0053】
これについて、図5を用いてより具体的に説明する。図5は、8パスで印刷するケースにおいて各パスで形成されるラスタラインを示した模式図である。
【0054】
図5の左側にはヘッド31のノズル列(ノズル)が表されており、当該ヘッド31(ノズル列)が搬送方向に移動しながらノズルからインクが吐出されることにより、ラスタラインが形成される。図に表されているヘッド31(ノズル列)の列方向における位置は、1パス目のときの位置であり、かかる位置を維持したままヘッド31(ノズル列)が搬送方向に移動すると、1パス目の印刷が実行され、図に表された3つのラスタライン(右端にパス1と書かれているラスタラインL1)が形成される。
【0055】
そして、次に、ヘッド31(ノズル列)が列方向に移動して、移動後の位置を維持したままヘッド31(ノズル列)が搬送方向に移動すると、2パス目の印刷が実行され、図に表された2つのラスタライン(右端にパス2と書かれているラスタラインL2)が形成される。なお、インターレース(マイクロウィーブ)印刷が採用されているため、前記ラスタラインL1に隣接するラスタラインL2は、ラスタラインL1を形成するインクが吐出されたノズルとは異なるノズルから吐出されたインクにより形成されることとなる。そのため、ヘッド31(ノズル列)の列方向への移動距離は、ノズル間距離(例えば、1/180インチ)の1/8分(1/180×1/8=1/1440インチ)ではなく、これより大きな距離(以下では、この距離を距離dとする)となる。
【0056】
以下、同様の動作が行なわれることにより、3〜8パス目の印刷が実行されて、図に表された残りのラスタライン(右端にパス3〜8と書かれているラスタラインL3〜L8)が形成される。このように、8パスでラスタラインが形成されることにより、列方向における画像の解像度を8倍(=1440÷180)の解像度とすることが可能となる。
【0057】
なお、第一実施形態においては、所謂双方向印刷が行なわれる。すなわち、1パス、3パス、5パス、7パス目の印刷が行なわれるときのヘッド31(ノズル列)の移動方向と2パス、4パス、6パス、8パス目の印刷が行なわれるときのヘッド31(ノズル列)の移動方向は互いに逆方向となる(後に、詳述する)。
【0058】
以下では、プリンター1の動作例としてプリンター1の画像記録動作(換言すれば、インク吐出動作)を説明するが、上述した8パスで印刷する図5のケースを例に挙げて説明する(以下の説明で、図5も随時参照する)。また、説明を分かり易くするために、ノズル列の数は(複数個ではなく)1つであることとして、説明を行なう。また、第一実施形態においては、後述するように、画像記録動作の合間にフラッシング動作が行なわれる。そして、当該フラッシング動作について詳細に説明する。
【0059】
<<<プリンター1の画像記録動作例及びフラッシング動作例について>>>
ここでは、プリンター1の画像記録動作例及び当該画像記録動作の合間に実行されるフラッシング動作例について、図5乃至図7を用いて説明する。図6は、ヘッド31の移動を説明するための説明模式図である。図7は、第一フラッシング動作乃至第三フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け部材36に向けてインクが吐出される様子を示した模式図である。
【0060】
画像記録動作及びフラッシング動作を説明する前に、先ず、図6(の見方)について説明する。
図6には、印刷処理(すなわち、画像記録やフラッシングに係る一連の処理)が行なわれている間に、ヘッド31がどのように移動するかが示されている。ヘッド31は、便宜上、丸印で表され(図には、大きな丸と小さな丸があるが、双方の区別に意味は無い)、ヘッド31の移動が矢印で表されている。ここで、図中左右方向に向いた矢印は、搬送方向におけるヘッド31の移動を表し、上下方向に向いた矢印は、列方向におけるヘッド31の移動を表している。また、各矢印には、S1〜S21の符号が付けられているが、これは、以降の印刷処理の説明で用いられるステップ番号である。
【0061】
また、パス1乃至パス8が付されているステップ番号があるが、これらのステップ番号はインクが吐出されることにより画像記録動作が実行されるステップを表している。
また、フラッシング位置に位置する丸印の中に、白丸印と黒丸印が存在するが、黒丸印はフラッシング動作が行なわれることを意味している(逆に、白丸印はフラッシングが行なわれないことを意味している)。黒丸印には、S6、S11、S16の符号が付けられているが、これは、以降の印刷処理の説明で用いられるステップ番号である。
【0062】
以下、図5乃至図7を参照しつつ、印刷処理について説明する。なお、当該印刷処理は、主としてコントローラー60により実現される。特に、第一実施形態においては、メモリー63に格納されたプログラムをCPU62が処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を行なうためのコードから構成されている。
【0063】
前述した間欠的なロール紙2の搬送が行なわれてロール紙2が停止すると、印刷領域R上のロール紙2の部位に1ページ分の画像記録を行なうための印刷処理が開始される。
【0064】
先ず、コントローラー60は、ヘッド31をHP位置から往方向(ロール紙2が搬送される方向において、上流側から下流側へ向かう方向)へ移動させる(ステップS1)。
【0065】
やがて、ヘッド31が前述したフラッシング位置を通過すると(このときに、フラッシング動作は実行されない)、コントローラー60は、ヘッド31の往方向への移動を継続しつつ、ヘッド31にインクを吐出させて、1パス目の印刷を実行する(ステップS2)。そして、このことにより、図5に示されたラスタラインL1(パス1のラスタライン)が形成される。
【0066】
ヘッド31が第一折り返し位置へ至ると、コントローラー60は、ヘッド31を列方向へ移動させる(ステップS3)。第一実施形態においては、前記距離dだけヘッド31を移動させる。
【0067】
その後、コントローラー60は、ヘッド31を復方向(ロール紙2が搬送される方向において、下流側から上流側へ向かう方向)へ移動させながら、ヘッド31にインクを吐出させて、2パス目の印刷を実行する(ステップS4)。そして、このことにより、図5に示されたラスタラインL2(パス2のラスタライン)が形成される。
【0068】
ヘッド31がフラッシング位置(この位置は、第二折り返し位置でもある)へ至ると、コントローラー60は、ヘッド31を列方向へ移動させる(ステップS5)。第一実施形態においては、前記距離dだけヘッド31を移動させる。
【0069】
そして、移動が完了すると、コントローラー60は、ノズル列に属する各ノズルからインクを吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作(第一フラッシング動作とする)をヘッド31に実行させる(ステップS6)。
【0070】
図7の上図は、第一フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け部材36に向けてインクが吐出される様子を模式的に表した図である。図に示されるように、第一実施形態においては、インク受け部材36に対してヘッド31が前後方向(列方向)においてやや後側に位置した状態でインクを吐出する(ヘッド31の列方向における当該位置を第一フラッシング動作実行位置という)。
【0071】
次に、コントローラー60は、ステップS2乃至ステップS6の処理と同じ処理をさらに二度行なう(ステップS7乃至ステップS11、ステップS12乃至ステップS16)。一度目の処理において、3パス目の印刷(ステップS7)により図5に示されたラスタラインL3(パス3のラスタライン)が、4パス目の印刷(ステップS9)により図5に示されたラスタラインL4(パス4のラスタライン)が、それぞれ形成される。また、フラッシング動作(第二フラッシング動作、ステップS11)も実行される。
【0072】
図7の中央図は、第二フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け部材36に向けてインクが吐出される様子を模式的に表した図である。第一フラッシング動作が実行されてから第二フラッシング動作が実行されるまでの間に、ヘッド31は列方向において距離2d分移動しているので(ステップS8において距離d、ステップS10において距離d、それぞれ移動している)、ヘッド31は、第一フラッシング動作が実行されるときよりも距離2d分前側へずれた位置で、インクを吐出する(ヘッド31の列方向における当該位置を第二フラッシング動作実行位置という)。第一実施形態においては、インク受け部材36に対してヘッド31が正対した状態でインクを吐出することとなる。
【0073】
また、二度目の処理により、5パス目の印刷(ステップS12)により図5に示されたラスタラインL5(パス5のラスタライン)が、6パス目の印刷(ステップS14)により図5に示されたラスタラインL6(パス6のラスタライン)が、それぞれ形成される。また、フラッシング動作(第三フラッシング動作、ステップS16)も実行される。
【0074】
図7の下図は、第三フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け部材36に向けてインクが吐出される様子を模式的に表した図である。第二フラッシング動作が実行されてから第三フラッシング動作が実行されるまでの間に、ヘッド31は列方向において距離2d分移動しているので(ステップS13において距離d、ステップS15において距離d、それぞれ移動している)、ヘッド31は、第二フラッシング動作が実行されるときよりも距離2d分前側へずれた位置で(第一フラッシング動作が実行されるときよりも距離4d分前側へずれた位置で)、インクを吐出する(ヘッド31の列方向における当該位置を第三フラッシング動作実行位置という)。第一実施形態においては、インク受け部材36に対してヘッド31が前後方向(列方向)においてやや前側に位置した状態でインクを吐出する。
【0075】
次に、コントローラー60は、最後の2つのパスの印刷を実行する。すなわち、コントローラー60は、ヘッド31を往方向へ移動させながら、ヘッド31にインクを吐出させて、7パス目の印刷を実行する(ステップS17)。そして、このことにより、図5に示されたラスタラインL7(パス7のラスタライン)が形成される。ヘッド31が第一折り返し位置へ至ると、コントローラー60は、ヘッド31を列方向へ移動させる(ステップS18)。第一実施形態においては、前記距離dだけヘッド31を移動させる。その後、コントローラー60は、ヘッド31を復方向へ移動させながら、ヘッド31にインクを吐出させて、8パス目の印刷を実行する(ステップS19)。そして、このことにより、図5に示されたラスタラインL8(パス8のラスタライン)が形成される。
【0076】
ヘッド31がフラッシング位置へ至ると(このときに、フラッシング動作は実行されない)、コントローラー60は、ヘッド31の列方向における位置を元に戻す(ステップS20)。すなわち、ステップS3、S5、S8、S10、S13、S15、S18でヘッド31が移動した方向とは逆方向に、距離7dだけヘッド31を移動させる。
【0077】
そして、コントローラー60は、ヘッド31をフラッシング位置からHP位置へ移動させることにより(ステップS21)、1ページ分の画像記録を行なうための印刷処理を終了させる。
【0078】
ところで、ヘッド31がHP位置へ戻った際(ステップS21終了時)に、直前のインク受け面37切り換えからのフラッシングの回数の累計が所定回数に達していれば、インク受け部材36を1/N回転させてそれまでインクを受けていたインク受け面37に隣接する未使用のインク受け面37に切り換える。ここで、プリンター1の設計者は、インク受け面37に繰返しフラッシングする実験を行い、この実験で得られるフラッシングの回数とインク受け面37に堆積するインクの高さとの関係に基づいて、インク受け面37がフラッシングを受ける所定回数を決定する。より具体的には、所定回数は、堆積するインクの高さがインク受け面37とヘッド31との間の高低差から安全のためのマージンを差引いた高低差になるようなフラッシングの回数である。
【0079】
インク受け部材36がまずインク受け面37の第1面において所定回数のフラッシングを受けると、コントローラー60はインク受け面37を切り換えて、インク受け部材36がインク受け面37の第2面においてフラッシングを受けられるようにする。そして、インク受け部材36がインク受け面37の第2面において同様に所定回数のフラッシングを受けると、コントローラー60は再びインク受け面37を切り換えて、インク受け部材36がインク受け面37の第3面においてフラッシングを受けられるようにする。このように、コントローラー60は、インク受け部材36にN面あるインク受け面37のうちの一つのインク受け面37でインクを受けさせ、その一つのインク受け面37において所定回数のフラッシングを受けるとその都度インク受け面37を隣接するインク受け面37に切り換える。
【0080】
インク受け部材36が第1面から第N面までの全てのインク受け面37においてインクを受けると、インク受け部材36の洗浄などのメンテナンスが必要となる。すなわち、プリンター1の操作者は、インク受け部材36を一目見て、N面全てのインク受け面37でインクを受けているか否かを判別し、全てのインク受け面37でインクを受けていた場合にはインク受け部材36のメンテナンスを行う。
【0081】
<<<プリンター1の有効性>>>
上述の通り、第一実施形態にかかるプリンター1は、インクを吐出するヘッド31と、回転軸を中心として回転可能であり、法線が回転軸方向に沿う断面がN角形であることにより液体受け面37がN個設けられているインク受け部材36であって、ヘッド31がフラッシングを行う際にヘッド31が吐出するインクをN個のインク受け面37のうちの一つの液体受け面37で受けるインク受け部材36とを備えている。そして、コントローラー60は、インク液体受け部材36を回転させることにより、インクを受けるインク受け面37を順次切り換える。そして、このことにより、操作者がインク受け部材36の使用状況を容易に把握できる。
【0082】
すなわち、操作者が、一目見れば、あるインク受け面37がフラッシングによって吐出されるインクを受けたかどうか(使用済みであるか)を把握できる。そして、N個のインク受け面37の全てがフラッシングによって吐出されたインクを受けていれば(使用済みであれば)、操作者はインク受け部材36のメンテナンスが必要であると判別でき、操作者の利便性が向上する。
【0083】
また、第一実施形態にかかるプリンター1によれば、インク液体受け部材36を加熱するインク受けヒーターを備えることにより、インクが液体受け面37から垂れにくくすることができる。
【0084】
具体的には、インク受け部材36はインク受けヒーターによって加熱されており、フラッシングによるインクが液体受け面37に着弾するとインクの溶媒が速やかに蒸発してインクの粘度が高まる。そうすると、粘度が高まったインクは着弾した液体受け面にそのまま定着し、着弾したインクが隣接する液体受け面37へ垂れ流れることを抑制できる。そして、インクが着弾した液体受け面37から隣接する液体受け面37へインクが垂れ流れることを抑制できることにより、インクが着弾していない(ヘッド31に対向していない)液体受け面37にはインクがほとんど付着しない。したがって、操作者は、インク受け部材36の液体受け面37のうちどの面で既にインクを受けたか(使用済みであるか)どの面でインクを受けていないか(未使用であるか)をより明確に視認できるようになるので、インク受け部材36の使用状況をより容易に把握できる。
【0085】
また、第一実施形態にかかるプリンター1によれば、ヘッド31は、回転軸方向に沿う方向にノズルが並んだノズル列を有している。そして、コントローラー60は、ヘッド31を回転軸方向における第一位置に位置させて、ヘッド31にフラッシングを行わせ、その後、ヘッド31を回転軸方向へ移動させることによりノズル列の長さよりも短い長さ分第一位置よりも回転軸方向にずれた第二位置にヘッド31を移動させて、ヘッド31に前記フラッシングを行わせ、インク受け面37は、インク受け部材36の回転軸方向における端部36bが中央部36aによりも鉛直方向下方に位置するように中央部36aから端部36bへ向かって傾斜している。そして、このことにより、インク受け部材36の中央部36aにおいてその端部36bよりも多量のインクが着弾することとなるが、該傾斜によって中央部36aに着弾したインクを端部36bに流すことで、インク受け面37に堆積するインクの高さを均一化することができ、もって堆積したインクがヘッド31に接触することを抑制することができる。
【0086】
上記につき、第一実施形態に係るプリンター1と比較例に係るプリンター1とを比較しながら、図8を用いて説明する。図8は、第一実施形態に係るプリンター1を比較例に係るプリンター1と比較したときの第一実施形態に係るプリンター1の有効性を説明するための説明模式図である。図8の上図が比較例に係るプリンター1を、図8の下図が第一実施形態に係るプリンター1を、それぞれ表しており、いずれの図においても、1ページ分の画像記録終了時におけるインク受け部材36表面のインクの様子が表されている。比較例に係るプリンター1の第一実施形態に係るプリンター1との相違は、図8から明らかなように、インク受け部材36が、より簡易な柱形状を有するN多角柱状の部材であることである。
【0087】
上述したように、コントローラー60が、第一位置でフラッシング動作を行ない、その後、ノズル列の長さよりも短い長さ分第一位置よりも列方向にずれた第二位置でフラッシング動作を行なう場合には、フラッシング動作によるインク吐出が複数回行なわれるインク受け部材36上の領域(以下、便宜上、複数回領域と呼ぶ)とフラッシング動作によるインク吐出が1回のみ行なわれるインク受け部材36上の領域(以下、便宜上、一回領域と呼ぶ)とがインク受け部材36上に現れる。第一実施形態においては、図8において、符号A1で示した領域が複数回領域(具体的には、この領域は、インク吐出が二回行なわれる領域と三回行なわれる領域とを含んでいる)となり、符号A2で示した領域が一回領域となる(図7も合わせて参照)。
【0088】
そして、比較例においては、かかる事項に起因して、以下の問題点が生じ得る。すなわち、複数回領域A1には複数回のインク吐出により、一回のインク吐出の一回領域A2よりも多くのインクが着弾する。したがって、インク受け面37の複数回領域に着弾したインクI1は、一回領域に着弾したインクI2よりも高く堆積することとなる。
【0089】
そして、1ページ分の画像記録が繰り返されると(つまり、何ページも連続して画像記録が行なわれると)堆積したインクが積み重なっていき、中央部36aにおいて当該積み重ねられたインクI1とヘッド31とが接触してしまう不都合が生じ得る。
【0090】
これに対し、第一実施形態に係るプリンター1では、インク受け部材36が、端部36bが中央部36aよりも鉛直方向下方に位置するように該中央部36aから端部36bへ向かって傾斜している。そのため、複数回領域A1に着弾したインクは重力により傾斜に沿って当該一回領域A2へ流れることにより(中央部36aから端部36bへ流れることにより)、インク受け面37の中央部36aに堆積するインクI3と端部36bに堆積するインクI4の高さを均一化することができる。すなわち、インク受け面37の中央部36aにおいてインクが高く堆積することを抑制できる。したがって、インクの堆積物がヘッド31に接触することを抑制できる。
【0091】
また、第一実施形態にかかるプリンター1によれば、コントローラー60は、フラッシングの回数に基づいて、インク受け面37を切り換えるか否かを決定することにより、インク受け面37に堆積したインクがヘッド31に接触することを抑制できる。
【0092】
すなわち、インクがインク受け面37においてヘッド31に接触しない高さの範囲において、インク受け部材36の各液体受け面が受けられるフラッシングの回数の上限は、実際に液体受け面にインクを着弾させてみることで計測できる。ここでは、該フラッシングの回数の上限を所定回数とする。そして、プリンター1では、一つのインク受け面37に対して行われたフラッシングの回数をカウントし、カウントした回数が所定回数に達すると、インク受け面37を切り換えることとするので、インク受け面37に堆積したインクの高さがヘッド31に接触するような高さに達することがない。したがって、インク受け面37に堆積したインクがヘッド31に接触することを抑制できる。
【0093】
===その他の実施の形態===
上記の第一実施形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、液体吐出方法等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0094】
(1)上記の第一実施形態においては、液体吐出装置(液体噴射装置)をインクジェット式プリンターに具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【0095】
(2)上記の第一実施形態においては、インク受け部材36の傾斜が曲線的な傾斜であったが、図9に示すように直線的な傾斜であってもよい。
【0096】
(3)上記の第一実施形態においては、インク受け面37の切り換えのタイミングであるインク受け面37がフラッシングを受ける所定回数を、設計者がインク受け面37に繰返しフラッシングする実験から得られるフラッシングの回数とインク受け面37に堆積するインクの高さとの関係に基づいて決定することとした。これに加えて、設計者は、一つのインク受け面37からインクが垂れない限界のフラッシングの回数を所定回数も加味して該所定回数を決定することとしてもよい。すなわち、設計者は、インク受け面37に繰返しフラッシングする実験を行い、ヘッド31から吐出されたインクが着弾したインク受け面37から隣接するインク受け面37へインクが垂れ流れない範囲での最大のフラッシングの回数を計測する。インク受け面37の切り換えのタイミングである所定回数は、フラッシングの回数とインク受け面37に堆積するインクの高さとの関係に基づいて算出されるフラッシングの回数と、インク受け面37からインクが垂れ流れない範囲での最大のフラッシングの回数と、のうち、小さい方のフラッシングの回数としてもよい。これにより、インク受け面37からインクが垂れ流れることを抑制できることから、未使用のインク受け面37にインクが付着することを抑制でき、したがってインク受け面37の使用状況をより明確に視認できるようになる。
【0097】
(4)上記の第一実施形態においては、ヘッド31がHP位置へ戻った際(ステップS21終了時)に、インク受け部材36を回転させてインク受け面37を切り換えることとしたが、これに限られない。例えば、第一フラッシング動作(ステップS6)、第二フラッシング動作(ステップS11)、第三フラッシング動作(ステップS16)の何れかが終了した時点において、インク受け部材36を回転させてインク受け面37を切り換えることとしてもよい。このような実施形態であっても、インク受け面37に堆積したインクがヘッド31に接触することを抑制できる。
【0098】
より具体的には、第一フラッシング動作(ステップS6)が終了した時点において、直前のインク受け面37切り換えからのフラッシングの回数の累計が所定回数に達していれば、3パス目の印刷(ステップS7)、ヘッド31の列方向への移動(ステップS8)、又は4パス目の印刷(ステップS9)の際に、インク受け部材36を回転させてインク受け面37を切り換える。なお、第一フラッシング動作(ステップS6)中にはインク受け面37を切り換えないのは、インク受け部材36の角がヘッド31に接触するのを避けるためである。
【0099】
同様に、第二フラッシング動作(ステップS11)が終了した時点において、直前のインク受け面37切り換えからのフラッシングの回数の累計が所定回数に達していれば、5パス目の印刷(ステップS12)、ヘッド31の列方向への移動(ステップS13)、又は6パス目の印刷(ステップS14)の際に、インク受け部材36を回転させてインク受け面37を切り換える。
【0100】
同様に、第三フラッシング動作(ステップS16)が終了した時点において、直前のインク受け面37切り換えからのフラッシングの回数の累計が所定回数に達していれば、7パス目の印刷(ステップS17)、ヘッド31の列方向への移動(ステップS18)、又は8パス目の印刷(ステップS19)の際に、インク受け部材36を回転させてインク受け面37を切り換える。
【符号の説明】
【0101】
1 プリンター、2 ロール紙、10 給送ユニット、18 巻軸、
19 中継ローラー、20 搬送ユニット、21 中継ローラー、
22 中継ローラー、23 第一搬送ローラー、23a 第一駆動ローラー、
23b 第一従動ローラー、24 第二搬送ローラー、
24a 第二駆動ローラー、24b 第二従動ローラー、
25 反転ローラー、26 中継ローラー、27 送り出しローラー、
29 プラテン、30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
34 バルブユニット、35 フラッシングユニット、36 インク受け部材、
36a 中央部、36b 端部、36c 回転軸、37 インク受け面、
40 キャリッジユニット、41 ガイドレール、42 キャリッジ、
50 検出器群、60 コントローラー、61 インターフェース部、
62 CPU、63 メモリー、64 ユニット制御回路、
70 プラテンヒーターユニット、71 インク受けヒーターユニット、
80 送風ユニット、81 ファン、90 巻き取りユニット、
91 中継ローラー、92 巻き取り駆動軸、110 ホストコンピューター、
135 フラッシングユニット、136 フラッシングボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッドと、
回転軸を中心として回転可能であり、法線が前記回転軸方向に沿う断面がN角形であることにより液体受け面がN個設けられている液体受け部であって、前記ヘッドがフラッシングを行う際に前記ヘッドが吐出する液体をN個の液体受け面のうちの一つの液体受け面で受ける液体受け部と、
前記液体受け部を回転させることにより、液体を受ける前記一つの液体受け面を順次切り換えるコントローラーと、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記液体受け部を加熱する加熱部を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記ヘッドは、前記回転軸方向に沿う方向にノズルが並んだノズル列を有し、
前記コントローラーは、
前記ヘッドを前記回転軸方向における第一位置に位置させて、前記ヘッドに前記フラッシングを行わせ、
その後、前記ヘッドを前記回転軸方向へ移動させることにより前記ノズル列の長さよりも短い長さ分前記第一位置よりも前記回転軸方向にずれた第二位置に前記ヘッドを移動させて、前記ヘッドに前記フラッシングを行わせ、
前記液体受け面は、前記液体受け部の前記回転軸方向における端部が中央部によりも鉛直方向下方に位置するように前記中央部から前記端部へ向かって傾斜していることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記フラッシングの回数に基づいて、前記一つの液体受け面を切り換えるか否かを決定することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
液体を吐出するヘッドと、
回転軸を中心として回転可能であり、法線が前記回転軸方向に沿う断面がN角形であることにより液体受け面がN個設けられている液体受け部であって、前記ヘッドがフラッシングを行う際に前記ヘッドが吐出する液体をN個の液体受け面のうちの一つの液体受け面で受ける液体受け部と、
前記液体受け部を回転させることにより、液体を受ける前記一つの液体受け面を順次切り換えるコントローラーと、
を備える液体吐出装置を用いて媒体に液体を吐出することを特徴とする液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−116132(P2012−116132A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269067(P2010−269067)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】