説明

液体吐出装置及び電界付与方法

【課題】ER効果を有する液体を用いて被吐出媒体上に形成されるドットの着弾干渉やにじみ、拡がり、混色などを防止し、生産効率を落とすことなく被吐出媒体上に高品質の画像等を形成する液体吐出装置及び電界付与方法を提供する。
【解決手段】印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yから吐出された記録紙16上に着弾したインク滴100は、その表面にコロナ放電発生部41から照射されるイオン102が付着し、イオン102と下面電極104との間には電界が生成され、この電界がインク滴100に作用しER効果を発現させる。インク滴が記録紙16上に着弾すると同時にコロナ放電部41からインク滴の表面へイオンが付着し、インク滴100はER効果により粘度が上昇するので、着弾干渉によるドットのにじみ、拡がり、複数色の混色などを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出装置及び電界付与方法に係り、特に電気粘性効果を発現する液体を用いた液吐出装置における画像等の形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像やドキュメント等のデータ出力装置としてインクジェット記録装置が普及している。インクジェット記録装置は印字ヘッドに備えられたノズルをデータに応じて駆動させ、該ノズルから吐出されるインクによって記録紙などのメディア上に画像(データ)を形成することができる。
【0003】
インクジェット記録装置では、印字画像の高品質化や生産効率の向上に対する要求が高くなっている。印字画像の高品質化を実現するためには、画像を構成するドットのサイズをできるだけ小さくし、この微小サイズのドットを高密度に配置させればよい。また、生産効率を向上させるためには、印字ヘッドの走査或いはメディアの搬送を高速化し、これに合わせて吐出周期を短くするように走査系、搬送系及び吐出タイミングの制御を行えばよい。
【0004】
一方、ドットを高密度に配置させると隣り合うドットや近隣に位置するドットが互いに重なり、このようなドットを形成するインクを短い吐出周期で吐出させた場合には、先にメディア上に着弾したインクが定着する前に、次のインクがメディア上に着弾してしまい、先に着弾したインクと後に着弾したインクとの相互干渉 (着弾干渉)によって、色むらや線幅のばらつきなどが生じることがある。
【0005】
また、一般的に、低粘度のインクを使用することによりにじみ、ドット拡がり、混色などが生じることがあり、これらの現象によって印字画像の品質を著しく低下させてしまう。
【0006】
インクジェット記録装置では、このような着弾干渉やにじみなどによる印字画像の品質低下を抑制するために、電界を作用させることで粘度が大きくなる電気粘性効果(ER効果)を持ったインクを用いてメディア上に画像を形成する方法が提案されている。ER効果を持ったインクを大別すると、誘電体微粒子が液体内に分散し、電界により分極した粒子が電界方向に橋や鎖状のクラスタを形成し、この橋等が液体の粘度を上昇させる分散型や、液体内の分子やドメインが電界をかけると電界方向に配向し、異方性を示す均一系がある。
【0007】
特許文献1に記載された画像形成方法では、ER効果を有する記録体に電界を付加することで、記録体の浸透を抑制し、にじみや濃度低下を防止するように構成されている。
【0008】
また、特許文献2に記載された記録装置では、記録ヘッドにより電気粘性効果を有する記録液を電界が形成された中間転写媒体に付着させ、中間転写媒体上で記録液の粘度を上昇させてドットの過剰な広がりや混色を防ぎ、記録液が乾燥してその粘度が大きくなった状態、又は記録液の電気粘性効果により記録液の粘度が大きくなった状態で中間転写媒体から被転写媒体への転写が行われるように構成されている。
【0009】
また、特許文献3に記載された記録装置では、記録ヘッドによりER効果を有する記録液滴を電界が印加された被転写媒体上に付着させて被転写媒体上での記録液の粘度を大きくし、この記録液によって形成されたドットのひげ、にじみ、混色を防ぎ、記録液の乾燥及び被転写媒体への浸透が進み、にじみ及び混色がおこらなくなるまで電界を維持するように構成されている。
【特許文献1】特開平2−212149号公報
【特許文献2】特開平5−4342号公報
【特許文献3】特開平5−4343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ER効果を持ったインクは作用させる電界の方向、電界の強度に応じてインク粘度の増加する割合が変わる性質を有し、電界を付加すると瞬時に見かけの粘度が大きくなり、電界を遮断するとその粘度は元に戻ってしまう可逆性を有している。そのために、電界の発生タイミングや発生時間(期間)をインクの吐出に合わせて制御しなければならない。
【0011】
特許文献1に記載された画像形成方法では、電極或いはコロナ帯電器によって発生される電界の下を記録体が付着した記録部材が通過するように構成されており、この構成では、記録体にER効果を発現させ得るだけの電界を発生させることは難しい。
【0012】
また、特許文献2に記載された記録装置及び、特許文献3に記載された記録装置では、中間転写媒体、被記録媒体(メディア)を記録前に帯電させる方式であり、この方式では空中放電等によって電界の強度が弱められてしまい、その結果、記録液に対してER効果を発現させるために十分な電界を得ることができない。また、記録液がメディアに定着するまでの間、記録液に作用させる電界を保持しなければ、着弾干渉や記録液のにじみ、ドットの拡がりを抑制することができない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ER効果を有する液体を用いて被吐出媒体上に形成されるドットの着弾干渉やにじみ、拡がり、混色などを防止し、生産効率を落とすことなく被吐出媒体上に高品質の画像等を形成する液体吐出装置及び電界付与方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために請求項1に係る発明は、被吐出媒体に電気粘性効果を有する液体を吐出させる吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドから前記被吐出媒体上へ吐出された液滴の着弾と略同時に該液滴の表面に電荷を照射する電荷照射手段と、前記電荷照射手段と対向する位置に設けられ、前記被記録媒体の液滴着弾面と反対側面に接する面形状を有する電極と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
被吐出媒体上に着弾した液滴の表面と被吐出媒体を接触させる電極との間に電界を形成し、被吐出媒体上へ着弾した液滴に、この電界を着弾と略同時に作用させるので、被吐出媒体上へ着弾したインク滴に対して着弾時から確実にER効果を発現させ、効果的に着弾液滴の粘度を上昇させることができる。また、導電性を有する被吐出媒体やある程度の厚みを有する被吐出媒体上の液滴にもER効果を発現させるように電界を生成することが可能になる。
【0016】
電界照射手段によって電荷を照射可能な領域(電荷照射領域)には、吐出ヘッドから吐出される液滴の被吐出媒体上の着弾位置を含んでおり、被吐出媒体に着弾した液滴は着弾と略同時にその表面を帯電させることができる。
【0017】
なお、着弾後も液滴に電荷を照射させ続けることで、該液滴に対して電気粘性効果を維持させることができる。
【0018】
被吐出媒体は、吐出ヘッドによって吐出された液滴を受ける媒体であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、その他材質や形状を問わず様々な媒体を含み、記録媒体、記録メディア、印字媒体、被画像形成媒体などと呼ばれるものを含む。
【0019】
液体にはインク、レジスト、薬液、処理液など、吐出ヘッドに形成された吐出孔 (ノズル)から吐出させることができる様々な液体を含んでいる。なお、固体インクを吐出までに液体化するソリッドインクを含んでいてもよい。
【0020】
吐出ヘッドには、被吐出媒体の全幅に対応する長さにわたって吐出孔が並べられたフルライン型吐出ヘッドや、被吐出媒体の全幅に対応する長さよりも短い長さにわたって吐出孔が並べられた短尺ヘッドを被吐出媒体の幅方向に走査させながら被吐出媒体上に液滴を吐出させるシリアル型吐出ヘッド(シャトルスキャン型記録ヘッド)などがある。
【0021】
また、フルライン型の吐出ヘッドには、被吐出媒体の全幅に対応する長さに満たない短尺の吐出孔列を有する短尺ヘッドを千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、被吐出媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
【0022】
電荷照射手段から照射(放出)される電荷には、正電荷或いは負電荷を有するイオンや電子などがある。電荷照射手段にはイオン或いは電子等の電荷を発生させる電荷発生手段を備えてもよい。
【0023】
電極の電位は0V(GND)としてもよいし、電荷照射手段から照射される電荷の逆電
位としてもよい。
【0024】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記電極は、接地電位或いは前記電界照射手段によって照射される電荷と逆極性を有する電位のうち何れか一方の電位であることを特徴とする。
【0025】
電界照射手段の対向側の電極の電位を接地電位 (アース)或いは電界照射手段によって照射される電荷の電位と逆極性を有する電位にすることで、該電極側を基準電位とした電界を発生させることができる。
【0026】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記吐出ヘッドに対して前記被吐出媒体を相対的に搬送する搬送手段を備え、前記電荷照射手段は、少なくとも前記吐出ヘッドの前記搬送手段の搬送方向下流側に備えられることを特徴とする。
【0027】
電荷照射手段は吐出ヘッドの被吐出媒体相対搬送方向下流側に備えられているので、被吐出媒体上に着弾した液滴に対して、着弾と略同時に電界を作用させ、且つ、継続的にER効果を得ることができる。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記吐出ヘッドの前記搬送手段の搬送方向下流側に配置され、前記被吐出媒体に着弾した液滴の定着を促進させる定着促進手段を備え、前記電荷照射手段は、前記吐出ヘッドによって吐出された液滴が前記被吐出媒体への着弾と略同時から前記定着促進手段によって前記液滴の定着促進が施される領域までの間、前記液体の表面に電荷を照射させることを特徴とする。
【0029】
被吐出媒体上に着弾した液滴には、着弾と同時から被吐出媒体への定着が促進施される領域までの間電荷が与えられるので、該液滴によって被吐出媒体上に形成されるドットのにじみ、拡がりや着弾干渉を防止することができる。
【0030】
液滴の定着を促進させる態様は、UV光や可視光、X線などを含む電磁波、電子線など
の放射線(輻射線)を液滴に照射させる放射線照射手段や、熱や送風によって液滴の溶媒を蒸発させる(乾燥させる)加熱手段(乾燥手段)などを用いて、当該液滴を硬化させる態様や、被吐出媒体内に液滴を浸透させる態様などがある。
【0031】
なお、定着促進手段によって着弾液滴を完全に硬化及び浸透させるまで電荷を照射させる必要はなく、被吐出媒体上での混合やにじみを起こさない程度や被吐出媒体のハンドリングによって画像等の劣化が起こらない程度に液滴を硬化、浸透させるまで、電荷を照射すればよい。
【0032】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記搬送手段は前記被吐出媒体を保持する保持手段を含み、前記保持手段は前記電極と兼用されることを特徴とする。
【0033】
搬送手段内で被吐出媒体を保持する保持手段と被吐出媒体に接触するように設けられた電極とを兼用することで、装置の小型化及び装置構成の簡素化をすることができ、コストダウンに寄与する。
【0034】
保持手段は、少なくとも被吐出媒体の被吐出領域に接触する部分に電極として機能する導電性部材を備えればよい。もちろん、保持手段全体を電極として機能する導電性部材で構成してもよいし、搬送手段全体を導電性部材で構成してもよい。
【0035】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記吐出ヘッドは複数の吐出ヘッドを有し、少なくとも各ヘッドの前記被吐出媒体搬送方向の下流側の隣り合う位置に前記電荷照射手段を備えたことを特徴とする。
【0036】
複数の吐出ヘッドを有する場合にはヘッドごとに電荷照射手段を備えるように構成されるので、各ヘッドから吐出された液滴に対して確実にER効果を発現させることが可能になる。
【0037】
複数の吐出ヘッドを備える態様では、各ヘッドから異なる種類の液体を吐出させてもよいし、同一種類の液体を吐出させてもよい。例えば、カラー画像を形成する画像形成装置では、複数色に対応して色ごとに吐出ヘッドを備える態様や、色材と処理液に対応して吐出ヘッドを備える態様がある。
【0038】
また、本発明は前記目的を達成する方法発明を提供する。即ち、請求項7記載の発明に係る電気粘性効果を有する液体の電界付与方法は、吐出ヘッドから被吐出媒体上へ電気粘性効果を有する液体を吐出し、前記吐出ヘッドから吐出された液体が前記被吐出媒体上に着弾すると略同時に該液滴の表面に電荷を照射し、前記被吐出媒体の液滴着弾面と反対側面に接するように設けられた電極と、前記被吐出媒体に着弾した液滴の表面にある電荷と、の間に電界を形成し、前記被吐出媒体上に着弾した液滴に電気粘性効果を発現させることを特徴とする。
【0039】
被吐出媒体上に着弾した液滴の定着を促進させる定着促進工程を備え、着弾と略同時から定着促進が施される領域まで電荷を照射させる態様が好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、電荷照射手段から照射され被吐出媒体上に着弾した液滴の表面に付着した電荷と、電荷照射手段に対向し被吐出媒体に接触するように設けられた電極と、の間に電界を発生させて、この電界を被吐出媒体上に着弾した液滴に着弾と略同一タイミングから作用させ、着弾と略同時に電気粘性効果を発現させるので、この液滴によって形成されるドットのにじみ、拡がりや着弾干渉を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0042】
〔本発明に係るインクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色(Bk、M、C、Y)ごとに設けられた印字ヘッドを有する印字部12と、各印字ヘッドに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印字済みの記録紙16(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
【0043】
本インクジェット記録装置10では、電気粘性効果(ER効果)を有するインク(ERインク)が用いられる。ERインクは電界を作用させると粘度が上昇する機能を有しており、記録紙16上に着弾したインクに電界を作用させることで、様々なメディアが利用されるインクジェット記録装置において、記録紙16上でのインク(インクにより形成されるドット)のにじみ、拡がりや、混色等の他のインク滴との干渉が防止(抑制)される。
【0044】
また、ERインクには分散型インクや均一系インクといった、その構成が異なる複数の種類があるが、本インクジェット記録装置10には何れの種類のERインクを用いてもよい。なお、本明細書では、特に断らずに、ERインクを単に「インク」と記載することがある。
【0045】
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッドに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッドと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0046】
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0047】
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0048】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0049】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
【0050】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33(保持手段)が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0051】
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
【0052】
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示、図6中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の反時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の右から左へと搬送される。
【0053】
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0054】
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に記録紙16の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0055】
吸着ベルト搬送部22により形成される記録紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0056】
次に、図2及び図3を用いて印字部12の詳細構造を説明する。
【0057】
図2は、印字部12及びその周辺の詳細構造を示す構成図であり、図3は、印字部12周辺を上側から見た平面構造を示す平面図である。
【0058】
印字部12は、各色に対応した印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yと、各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yの印字領域全域をカバーするように設けられ、各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yから吐出されるインクに付着させるイオンをコロナ放電により発生させ、放出(放射)させるコロナ放電発生部41と、記録紙16上に着弾したインク滴を記録紙16に定着させるインク定着促進部42と、を備えている。
【0059】
また、図3に示すように、印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを記録紙搬送方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってノズルが複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
【0060】
記録紙16の送り方向(以下、記録紙搬送方向という。)に沿って上流側から黒(Bk)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
【0061】
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(即ち、1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録するシングルパス印字を行うことができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0062】
なお、本例では、BkMCYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
【0063】
図2及び図3に示したコロナ放電発生部41は、記録紙16上に着弾したインク滴100に作用させる電界(図2中不図示、図7中符号120として記載)を発生させるために、インク滴表面に付着させるイオン102(電荷)をコロナ放電により生成し、放出する手段である。
【0064】
コロナ放電発生部41には、針状電極、コロトロン、スコロトロン等を適用することができる。なお、コロナ放電発生部41に代わり、電子(負電荷)を発生させる電子線照射装置を用いて、記録紙16上に着弾したインク滴100の表面にイオン102に代えて電子を放出させてもよい。
【0065】
本例に適用されるコロナ放電発生部41は、印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yの長手方向(主走査方向と略平行な方向)に沿って、各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yと略同一の長さを有する複数のワイヤー状の電極が用いられる。該電極には高圧電源(図2中不図示、図6中符号94として図示)より数キロVから数十キロVの電圧が印加されると、図2に示すように、該電極を中心として放射状にイオン102が放出される。なお、図2中、斜線で図示した符号103はイオン102の放出領域を示しており、この放出領域103は各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yから吐出されるインク滴の記録紙16上における着弾位置を含むようにコロナ放電発生部41の配置が決められている。
【0066】
また、コロナ放電発生部41から放出されたイオン102が記録紙16と反対方向へ拡散しないように、イオン102の放出方向を規制する規制部材43を備えている。
【0067】
なお、各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yが有するノズル内のインクにイオンが付着して、ノズル内のインクの粘度上昇によって吐出異常が起こることを避けるために、コロナ放電発生部41によって放出されるイオン102からノズル内のインクを保護する保護部材を備える態様が好ましい。該保護部材はコロナ放電発生部41から放出されるイオン102を電気的に中和させる部材でもよいし、該イオン102からノズルを遮蔽する部材でもよい
図2及び図3に示すコロナ放電発生部41は、各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yから吐出されるインクが着弾する印字領域及びインク定着促進部42によるインク定着促進領域をカバーし得るように、各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yの記録紙搬送方向下流側にそれぞれ設けられている。
【0068】
また、図2に示すように、記録紙16の直下(印字面と反対側の面)には面状の下面電極104が配置される。本例では、下面電極104は吸着ベルト搬送部22のベルト33と兼用される。
【0069】
このような構成によって、記録紙16に着弾したインク滴には、着弾とほぼ同時に電荷が付与され、更に、電荷を付与し続けることで電気粘性効果を維持し続けることが可能になる。
【0070】
図2に示す態様では、下面電極104は0V(GND)とするが、下面電極104はインク液滴表面のイオン102の電位と逆電位(逆極性の電位)としてもよい。
【0071】
即ち、下面電極104であるベルト33は、記録紙16との接触面に金属等の導電性部材が用いられ(或いは、記録紙16との接触部分に導電部材を備え)、記録紙16の搬送機能及び記録紙16上に着弾したインク滴に作用させる電界の基準電位電極(記録紙16の下面電極104接触面(裏面)を基準電位にする電極)として機能する。
【0072】
なお、ベルト33が巻き掛けられているローラ31及びローラ32は、少なくともベルト33と接触する面に導電性材料が用いられ、ローラ31及びローラ32を0Vに接続することで、ローラ31及びローラ32を介してベルト33 (即ち、下面電極104)は0V電位となる。
【0073】
本例では、ローラ31及びローラ32の両方を0V電位にする態様を示したが、ローラ31及びローラ32のうち少なくとも何れか一方を0V電位にすればよい。
【0074】
また、印字ヘッド12Yの後段には、インク定着促進部42が設けられている。インク定着促進部42は、記録紙16上に着弾したインク滴を記録紙16への定着を促進させる手段であり、例えば、熱や送風によって画像面を乾燥させる加熱ファンや、浸透系インクを用いる場合のインク溶媒の浸透を促進させる手段、UV硬化型インクにUV光を照射させるUV光源などがある。
【0075】
また、これらのほかにも、熱硬化型インクを硬化させるヒータやソリッドインクを冷却等によって固化させる手段、化学反応によりインク滴を固化させる手段などがある。
【0076】
なお、必ずしも定着促進部42によってインクを完全に定着させる(反応が完了した状態にする)必要はなく、その後の工程 (下流側の工程)のハンドリングによって画像劣化が起こらない程度にインク滴を硬化、浸透させればよい。
【0077】
ここでいうハンドリングとは[1]搬送時のローラやガイド等と画像面との擦れ、[2]ストッカー(プリント集積部)におけるプリント同士の擦れ、[3]仕上ったプリントを実際に取り扱うときに種々の物体による擦れ、などを意味している。
【0078】
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
【0079】
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yによるインク吐出幅よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0080】
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yにより印字された画像を読み取り、各印字ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
【0081】
印字検出部24の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面の表面状態や光沢度を制御する。
【0082】
こうして生成されたプリント物は、図1に示す、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0083】
〔ヘッドの構造〕
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12Bk,12M,12C,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
【0084】
図4(a) は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図4(b) はその一部の拡大図である。また、図4(c) は印字ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図5はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図4(a) 、(b) 中の5−5線に沿う断面図)である。
【0085】
記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図4(a) 〜(c) 及び図5に示したように、インク滴が吐出されるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
【0086】
即ち、本実施形態における印字ヘッド50は、図4(a) 、(b) に示すように、インクを吐出する複数のノズル51が記録紙搬送方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
【0087】
また、図4(c) に示すように、短尺の2次元に配列された印字ヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、印字媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
【0088】
図5に示すように、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
【0089】
圧力室52の天面を構成している加圧板 (振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0090】
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53は図4(b) に示すように、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
【0091】
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0092】
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。例えば、主走査方向にノズル列が1列配置されていてもよいし、副走査方向に複数のノズルを有する配置でもよい。
【0093】
また、本例ではアクチュエータ58の変形によって圧力室52内のインクに吐出力を与える方式を示したが、圧力室52(インク室)内にインクを加熱するヒータを備え、インクを加熱して得られるバブルの圧力によってインクを吐出させるサーマル方式を用いてもよい。
【0094】
〔ノズルのメンテナンスの説明〕
次に、本インクジェット記録装置10のノズルメンテナンスについて説明する。
【0095】
一般に、インクジェット記録装置では、印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。また、ノズル51内のインクにER効果が発現した結果、ノズル内のインク粘度が上昇してしまうことがある。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
【0096】
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべく不図示のキャップ(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
【0097】
更に、図1〜3に示す、印字検出部24の検出結果に基づいて各ノズルの吐出異常を判断し、吐出異常と判断されたノズルを対象に予備吐出が行われる。
【0098】
一方、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50に前記キャップを当て、吸引ポンプ (不図示)で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク(不図示)へ送液する。
【0099】
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0100】
〔制御系の説明〕
図6はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0101】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。
【0102】
画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0103】
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0104】
画像メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、画像メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0105】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバである。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがってインク定着促進部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
【0106】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成したドットデータをヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0107】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0108】
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。
【0109】
画像メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータ(画像情報)に変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをBkCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
【0110】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられるドットデータに基づいて各色の印字ヘッド12Bk,12M,12C,12Yのアクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0111】
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。
【0112】
なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0113】
印字検出部24は、図1〜図3で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所定の信号処理を行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
【0114】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる読取情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
【0115】
コロナ放電制御部92は、システムコントローラ72からの指令に応じてコロナ放電発生部41の制御を行う。印字ヘッド50(12Bk、12M、12C、12Y)の打滴制御に合わせて、印字ヘッド50の印字領域及びインク定着領域にイオンを放出するようにコロナ放電の制御が行われる。ER効果を発現させるために必要な電界強度は数キロ(V/
mm)から数十キロ(V/mm)であり、本例のコロナ放電では、数キロV〜数十キロV
の電圧が高圧電源94からコロナ放電発生部41へ供給される。
【0116】
〔電気粘性インクの詳細説明〕
次に、図7を用いて、本インクジェット記録装置10に用いられるERインクについて説明する。
【0117】
本インクジェット記録装置10では、記録紙16の印字面(表面)側16Aに着弾したインク滴100の表面にはコロナ放電発生部41から放出されたイオン102が付着し、インク滴100の表面を正の電荷で帯電させる。
【0118】
一方、図7に示す下面電極104は負の電位に接続され、記録紙16のベルト33と接触するベルト接触面(裏面)側16Bは負電位となり、その結果、インク滴100を貫通するようにイオン102から下面電極104に向かう電界120が形成される(電界120による電流が発生する)。
【0119】
なお、図7に示す電界120は、イオン102及び下面電極104間に発生する電界の概略を示しており、実際には、1つの液滴に対して複数のイオンと下面電極104との間に複数の電界が発生し、これらを合成した合成電界が各液滴に作用する電界となる。
【0120】
図6にも説明したように、ER効果を発現させるには数キロ(V/mm)から数十キロ(
V/mm)の強度を有する電界をインク滴に印加する必要があり、このような高電圧を大
気中で放電させないように維持することは非常に難しい。
【0121】
即ち、インク滴100の表面と記録紙16の裏面側16Bとの間にER効果を発現させるために必要な電界を発生させることで、ER効果を発現させるために必要な電界強度(電圧)を維持し、効果的にER効果を発現させることができる。
【0122】
なお、図2でも説明したように、記録紙16の裏面側16Bは、図7に示すように、インク滴100の表面に付着するイオンと逆電位としてもよいし、図2に示すように0Vと
してもよい。
【0123】
また、下面電極104を用いて記録紙16の裏面側16Bを所定の基準電位に固定することで、インク滴100の表面と記録紙16の裏面側16Bとの間に確実に電界を発生させることができ、ER効果を確実に発現させることができる。
【0124】
また、金属薄板などの導電性メディアやある程度の厚みを持ったメディアなど、メディアを帯電させる方法ではインクに電界を作用させにくく、ER効果を発現させることが困難なメディアを用いてもER効果を発現させることができる。
【0125】
〔変形例〕
次に、図8を用いて、上述したインクジェット記録装置10の変形例を説明する。
【0126】
図8は本実施形態の変形例に係るインクジェット記録装置10の印字部12の構成を示す概略構成図である。なお、図8中、図2と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0127】
図8に示す応用例では、吸着ベルト搬送部22を用いたベルト搬送に代わり、ドラム200を用いたドラム搬送が用いられる。ドラム200の記録紙保持面202には下面電極104が設けられ、該下面電極104はドラム200を介して0Vとなっている。
【0128】
図8に示すドラム200を反時計回り(図8中矢印線で示す方向)に回動させると、ドラム200に保持(例えば、吸着保持)されている記録紙16は印字ヘッド12Bk側から印字ヘッド12Y側へ向かって搬送され、各印字ヘッド12Bk、12M、12C、12Yから打滴されるインク滴によって記録紙16上に所望の画像が形成される。
【0129】
なお、図8では、図を簡略化するために、図1及び図2に示したインク定着促進部42の後段に設けられている印字検出部24は省略されている。
【0130】
本例では、印字ヘッド12Bkの記録紙搬送方向上流側にもコロナ放電発生部41が設けられており、印字ヘッド12Bkの印字領域よりも記録紙搬送方向上流側にも、イオン放出領域が設けられている。
【0131】
このように構成することで、記録紙搬送方向の最上流側にある印字ヘッド12Bkから打滴されたインクが記録紙16上に着弾したタイミングから該インク滴に確実にイオンを付着させることができる。
【0132】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、記録紙16上に着弾したERインクへ電界を付与ために、イオン102を放出させるコロナ放電発生部41と記録紙16の裏面側に下面電極104を備えたので、効果的にER効果を発現させることができ、更に、導電性メディアやある程度の厚みを有するメディアなどでもER効果を発現させることができる。
【0133】
また、コロナ放電発生部41によってイオン102を放出させる領域(電界印加領域)はインクの着弾位置からインクの定着位置までをカバーするように構成するので、ドットにじみ、ドット拡がり、着弾干渉を抑制した状態で記録紙16にインクを定着させることができる。
【0134】
下面電極104をローラ又はベルトで構成することで、下面電極104に記録紙搬送手段としての機能を持たせることができ、装置構成を簡素化することができ、コストダウンに寄与する。
【0135】
本実施形態では、印字ヘッドに備えられたノズルから吐出されるインクによって記録メディア上に画像を記録するインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、被吐出媒体(ウエハ、プリント基板等)上に液体(水、処理液、レジスト等)を吐出させる液体吐出装置(ディスペンサ等)にも広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の基本構成図
【図2】図1に示した印字部の詳細を示す構成図
【図3】図1に示したインクジェット記録装置の印字周辺の要部平面図
【図4】印字ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図5】図4の5−5断面に沿った断面図
【図6】本実施形態に係るインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図7】電気粘性インクの原理を説明する図
【図8】図2に示す印字部の変形例を示す構成図
【符号の説明】
【0137】
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12Bk,12M,12C,12Y,50…印字ヘッド、16…記録紙、22…吸着ベルト搬送部、33…ベルト、41…コロナ放電発生部、42…インク定着促進部、72…システムコントローラ、90…プログラム格納部、92…コロナ放電制御部、94…高圧電源、102…イオン、104…下面電極、120…電界、200…ドラム、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吐出媒体に電気粘性効果を有する液体を吐出させる吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドから前記被吐出媒体上へ吐出された液滴の着弾と略同時に該液滴の表面に電荷を照射する電荷照射手段と、
前記電荷照射手段と対向する位置に設けられ、前記被記録媒体の液滴着弾面と反対側面に接する面形状を有する電極と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記電極は、接地電位或いは前記電界照射手段によって照射される電荷と逆極性を有する電位のうち何れか一方の電位であることを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記吐出ヘッドに対して前記被吐出媒体を相対的に搬送する搬送手段を備え、
前記電荷照射手段は、少なくとも前記吐出ヘッドの前記搬送手段の搬送方向下流側に備えられることを特徴とする請求項1又は2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記吐出ヘッドの前記搬送手段の搬送方向下流側に配置され、前記被吐出媒体に着弾した液滴の定着を促進させる定着促進手段を備え、
前記電荷照射手段は、前記吐出ヘッドによって吐出された液滴が前記被吐出媒体への着弾と略同時から前記定着促進手段によって前記液滴の定着促進が施される領域までの間、前記液体の表面に電荷を照射させることを特徴とする請求項3記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記搬送手段は前記被吐出媒体を保持する保持手段を含み、前記保持手段は前記電極と兼用されることを特徴とする請求項3又は4記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記吐出ヘッドは複数の吐出ヘッドを有し、
少なくとも各ヘッドの前記被吐出媒体搬送方向の下流側の隣り合う位置に前記電荷照射手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
吐出ヘッドから被吐出媒体上へ電気粘性効果を有する液体を吐出し、前記吐出ヘッドから吐出された液体が前記被吐出媒体上に着弾すると略同時に該液滴の表面に電荷を照射し、前記被吐出媒体の液滴着弾面と反対側面に接するように設けられた電極と、前記被吐出媒体に着弾した液滴の表面にある電荷と、の間に電界を形成し、前記被吐出媒体上に着弾した液滴に電気粘性効果を発現させることを特徴とする電界付与方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−76202(P2006−76202A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264136(P2004−264136)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
2.USB
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】