説明

液体吐出装置用充填液、液体吐出装置用ヘッド装置、液体吐出装置、液体吐出装置用洗浄液及び液体吐出装置の洗浄方法

【課題】液体流路に充填する充填液の本来の機能を維持した上で、腐食耐久性を向上した液体吐出装置用充填液、液体吐出装置用ヘッド装置、液体吐出装置、液体吐出装置用洗浄液及び液体吐出装置の洗浄方法を提供する
【解決手段】充填液や洗浄液による液体流路内における金属の腐食、溶出を抑制するために、充填液及び洗浄液中に、液体流路内における金属の腐食、溶出を抑制する腐食溶出防止剤を含有させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置の液体流路内に充填する液体吐出装置用充填液、これを用いた液体吐出装置用ヘッド装置、当該液体吐出装置用ヘッド装置を備えた液体吐出装置、インク等の液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置の液体流路内を洗浄する液体吐出装置用洗浄液及びこれを用いた液体吐出装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置を初めとしたインク等の液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置を備えた液体吐出装置においては、吐出液体の充填性の向上、液体流路の保護等の目的で、液体吐出装置用ヘッド装置内に形成される液体流路内に充填液を満たした状態で輸送、または保管されることが多い。この際、使用する液体吐出装置用充填液は、吐出液体と同種の溶媒(主に水)のほかに界面活性剤、保湿剤などを含有させた固形分を含まない溶液が用いられてきた。
【0003】
例えば、充填液を除去してからインク組成物を注入して印刷を行うときに発生する吐出不良を防止するために、塩基性化合物、保湿剤及び水を含むインクジェット記録ヘッド用充填液が提案されている。(特許文献1参照)また、本発明者も、顔料インク、高粘度インクの初期インク充填動作であっても良好なインク充填性が得られるインクジェット記録装置用充填液として、特定の化学構造を有するポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを含有する充填液を提案した。(特許文献2参照)
【0004】
また、インクジェット記録装置を初めとしたインク等の液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置を備えた液体吐出装置においては、製造時の吐出検査後、或いは、修理工程前後などに、液体吐出装置用ヘッド装置内に形成される液体流路の洗浄が必要となるが、従来は、主溶媒(例えば、水)、界面活性剤、保湿剤などを含有させた固形分を含まない溶液が用いられてきた。この場合、洗浄度はある程度確保できたとしても、インク等の液体を再充填した際の充填効率が十分でなかったり、吐出不良が発生するなどの問題があった。
【0005】
このような問題に対処するため、本発明者らは、特定の化学構造を有するポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを含有する洗浄液を使用することによって、高粘度インク、顔料インクにおいても、インク流路の洗浄が十分に行え、洗浄後のインク再充填性に問題を起こさないインクジェット記録装置用洗浄液を提案した(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−108493号公報
【特許文献2】特開2004−66599号公報
【特許文献3】特開2005−146224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2記載の充填液では、インク等の液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置内の液体流路構成部材が充填液との接触により腐食劣化するという問題が生じた。
【0008】
また、特許文献3記載の洗浄液を使用して洗浄を行った場合にも、液体吐出装置用ヘッド装置内の液体流路構成部材が腐食劣化するという問題が生じた。
【0009】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、インクジェット記録装置を初めとした液体吐出装置用ヘッド装置を備えた液体吐出装置において、液体流路に充填する充填液の本来の機能を維持した上で、腐食耐久性を向上した液体吐出装置用充填液、液体吐出装置用ヘッド装置及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の他の目的は、インクジェット記録装置等の液体吐出装置用ヘッド装置を備えた液体吐出装置において、液体流路の洗浄液の本来の機能を維持した上で、腐食耐久性を向上した液体吐出装置用洗浄液及び液体吐出装置の洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置の液体流路内に充填する充填液であり、当該充填液は、前記流体流路内の金属の腐食、溶出を抑制する腐食溶出防止剤を含有することを特徴とする液体吐出装置用充填液としたものである。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の液体吐出装置用充填液において、
前記腐食溶出防止剤がベンゾトリアゾール、またはベンゾトリアゾール誘導体であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2記載の液体吐出装置用充填液において、
前記ベンゾトリアゾール、またはベンゾトリアゾール誘導体の添加量が0.01〜1.0重量%であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の液体吐出装置用充填液において、
前記液体吐出装置用充填液は、界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項4記載の液体吐出装置用充填液において、
前記界面活性剤として下記一般式(1)に示したポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを含有することを特徴とする。
【化1】


(式中、m+n=0〜20、x=0〜10、y=0〜10となる数値を示す。ただし、xとyとが同時に0になることはない。)
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の液体吐出装置用充填液において、
前記液体吐出装置用充填液は、アミノプロパンジオール誘導体を含有することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の液体吐出装置用充填液において、
前記液体吐出装置用充填液は、保湿剤を含有することを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明は、液体の液滴を吐出する液体吐出ノズル部と当該液体吐出ノズル部に連通して当該液体を当該液体吐出ノズル部に供給する液体流路を備えた液体吐出装置用ヘッド装置において、
前記液体流路内に、請求項1乃至7のいずれか1項記載の充填液が充填されていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9の発明は、請求項8記載の液体吐出装置用ヘッド装置において、
前記液体吐出ノズル部は、Niを含む材料で少なくとも一部を形成していることを特徴とする。
【0020】
また、請求項10の発明は、請求項9記載の液体吐出装置用ヘッド装置において、
前記液体吐出ノズル部の表面に樹脂で形成された撥液層を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項11の発明は、請求項10記載の液体吐出装置用ヘッド装置において、
前記撥液層は、シリコーン樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項12の発明は、液体の液滴を吐出する液体吐出ノズル部と当該液体吐出ノズル部に連通して当該液体を当該液体吐出ノズル部に供給する液体流路を備えた液体吐出装置用ヘッド装置を有する液体吐出装置において、
前記液体流路内に、請求項1乃至7のいずれか1項記載の液体吐出装置用充填液を充填していることを特徴とする。
【0023】
また、請求項13の発明は、請求項12記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出装置がインクジェット記録装置であることを特徴とする。
【0024】
また、請求項14の発明は、液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置の液体流路を洗浄する洗浄液であり、当該洗浄液は、前記流体流路内の金属の腐食、溶出を抑制する腐食溶出防止剤を含有することを特徴とする。
【0025】
また、請求項15の発明は、請求項14記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記腐食溶出防止剤がベンゾトリアゾール、またはベンゾトリアゾール誘導体であることを特徴とする。
【0026】
また、請求項16の発明は、請求項15記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記ベンゾトリアゾール、またはベンゾトリアゾール誘導体の添加量が0.01〜1.0重量%であることを特徴とする。
【0027】
また、請求項17の発明は、請求項14乃至16のいずれか1項記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記液体吐出装置用洗浄液は、界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0028】
また、請求項18の発明は、請求項17記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記界面活性剤として下記一般式(1)に示したポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを含有することを特徴とする。
【化2】


(式中、m+n=0〜20、x=0〜10、y=0〜10となる数値を示す。ただし、xとyとが同時に0になることはない。)
【0029】
また、請求項19の発明は、請求項14乃至18のいずれか1項記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記液体吐出装置用洗浄液は、アミノプロパンジオール誘導体を含有することを特徴とする。
【0030】
また、請求項20の発明は、請求項14乃至19のいずれか1項記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記液体吐出装置用洗浄液は、保湿剤を含有することを特徴とする。
【0031】
また、請求項21の発明は、液体の液滴を吐出する液体吐出ヘッド装置の液体流路内に洗浄液を流通することによって前記液体流路内の前記液体を除去して洗浄する前記液体吐出ヘッド装置を備えた液体吐出装置の洗浄方法において、
前記洗浄液として、 請求項14乃至20のいずれか1項記載の液体吐出装置用洗浄液を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、充填液に、流体流路内の金属の腐食溶出を防止する腐食溶出防止剤を含有させることによって、液体流路に充填する充填液の本来の機能を維持した上で、腐食耐久性を向上した液体吐出装置用充填液、液体吐出装置用ヘッド装置及び液体吐出装置を提供することができる。
【0033】
また、本発明によれば、洗浄液に流体流路内の金属の腐食溶出を防止する腐食溶出防止剤を含有させることによって、液体流路の洗浄液の本来の機能を維持した上で、腐食耐久性を向上した液体吐出装置用洗浄液及び液体吐出装置の洗浄方法を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明者は、液体吐出装置用ヘッド装置内に形成される液体流路の構成部材が充填液との接触により腐食劣化するという問題について検討した。これまで充填液の場合には、液体吐出装置の輸送、保管時等の一時的な使用ということもあり、インクに比べて流路構成部材の腐食劣化にはほとんど影響しないと考えられ、充填液として腐食対策は特になされてこなかった。ところが、短期間であっても輸送、保管時において、一時的な高温環境等の環境変化によって、急激に流路構成部材の腐食劣化が進行したり、充填期間が想定以上に長期化したりして腐食劣化が想定以上に進行するなどの問題が生じることが判明した。さらに、充填液の目的(たとえば充填性向上)のためにpH、粘度、表面張力などの液物性が特定の範囲に設定されている場合等においても、流路構成部材に対する腐食性が増加するなどの副作用も確認されるようになった。
【0035】
このような、知見に基づいてさらに検討を進めた結果、インク等の液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置を搭載した液体吐出装置の液体流路に充填する充填液において、前記流体流路内の金属の腐食溶出を防止する腐食溶出防止剤を含有させることにより、腐食耐久性を大きく向上できることを見出した。
【0036】
また、本発明者は、液体吐出装置用ヘッド装置内に形成される液体流路の構成部材が洗浄液との接触により腐食劣化するという問題について別の面から検討した。これまで洗浄液の場合には、洗浄時の一時的な使用ということもあり、インクに比べて流路構成部材の腐食劣化にはほとんど影響しないと考えられ、洗浄液として腐食対策は特になされてこなかった。ところが、洗浄自体は短時間であっても、洗浄後に洗浄液が液体流路内に残ったまま、長期間放置されたり、想定外の温度にて放置されたりして、流路構成部材の腐食劣化が進行するなどの問題が生じることがわかってきた。さらに、洗浄性向上のためにpH、粘度、表面張力などの液物性が特定の範囲に設定されている場合等においても、流路構成部材に対する腐食性が増加するなどの副作用も確認されるようになった。
【0037】
このような知見に基づいて更なる検討を進めた結果、インク等の液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置を搭載した液体吐出装置内の液体流路を洗浄する洗浄液において、前述の腐食溶出防止剤を洗浄液中に含有させることにより、腐食耐久性を大きく向上できることを見出した。
【0038】
本発明は、これらの究明に基づいてなされたもので、詳細について、以下述べる本発明による実施形態に基づいて詳述する。
【0039】
先ず、初めに、充填液及び洗浄液が使用される液体吐出装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0040】
図1は、本発明による一実施形態に係る液体吐出装置であるインク記録装置の概略構成を示す図である。図1に示すインクジェット記録装置は、装置本体101と、装置本体101に装着した用紙を装填するための給紙トレイ102と、装置本体101に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ103と、インクカートリッジ装填部104とを有する。インクカートリッジ装填部104の上面には、操作キーや表示器などの操作部105が配置されている。インクカートリッジ装填部104は、インク、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインクを収納するインクカートリッジ201の脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。
【0041】
装置本体101内には、図2及び図3に示すように、図示を省略している左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とでキャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって図3で示す矢印A方向に移動走査する。
【0042】
キャリッジ133には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインクのインク滴を吐出する4個の液体吐出装置用ヘッド装置であるインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド134を複数のインク吐出口を主走査方向(キャリッジ走査方向A)と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している(図2参照)。
【0043】
インクを吐出して用紙142に所望の画像を形成する記録ヘッド134を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどのインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0044】
また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135を搭載している。サブタンク135には、図示しないインク供給チューブを介して、インクカートリッジ装填部104に装填されたインクカートリッジ201から各色のインクがそれぞれ供給されて補充される。
【0045】
一方、給紙トレイ103の用紙積載部(圧板)141上に積載した用紙142を給紙するための給紙部として、用紙積載部141から用紙142を1枚づつ分離給送する半月コロ143(給紙コロ)、及び給紙コロ143に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144を備え、この分離パッド144は、給紙コロ143側に付勢されて給紙コロ143による用紙142の繰り出し時に1枚づつ用紙142を分離するようになっている。
【0046】
この給紙部から給紙された用紙142を、記録ヘッド134の下方側に搬送するための搬送手段として、用紙142を静電吸着して搬送するための搬送ベルト151と、給紙部からガイド145を介して送られる用紙142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ152と、図2上で略鉛直上方に送られる用紙142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせるための搬送ガイド153と、押さえ部材154で搬送ベルト151側に付勢された先端加圧コロ155とが備えられ、また、搬送ベルト151表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156が備えられている。
【0047】
搬送ベルト151は、無端状ベルトであり、搬送ローラ157とテンションローラ158との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト151は、例えば、抵抗制御を行っていない厚さ40μm程度の樹脂材、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト151の裏側には、記録ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材161が配置されている。なお、記録ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から用紙142を分離するための分離爪171と、排紙ローラ172及び排紙コロ173とが備えられており、排紙ローラ172の下方に排紙トレイ103が配されている。
【0048】
装置本体101の背面部には、両面給紙ユニット181が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット181は、表面に所望の画像が印写された用紙142を搬送ベルト151の逆方向に回転させて搬送ガイド153まで戻し、両面給紙ユニット181内に取り込んで反転させて再度カウンタローラ152と搬送ベルト151との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット181の上面には手差し給紙部182が設けられている。
【0049】
このインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙142は、ガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ152との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド153で案内されて先端加圧コロ155で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。このとき、帯電ローラ156によって搬送ベルト157が帯電されており、用紙142は、搬送ベルト151に静電吸着されて搬送される。
【0050】
そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している用紙142にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙142を所定量搬送後、次行の記録を行う。記録終了信号又は用紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙142を排紙トレイ103に排紙する。そして、サブタンク135内のインクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ201から所要量のインクがサブタンク135に補給される。
【0051】
このインクジェット記録装置においては、インクカートリッジ201中のインクを使い切ったときには、インクカートリッジ201における筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジ201は、図1に示すように、縦置きで前面装填構成としてあるので、安定したインクの供給を行うことができる。従って、装置本体101の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したり、あるいは装置本体101の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ201の交換を容易に行うことができる。なお、本実施形態においては、液体吐出装置として、キャリッジ133が走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
【0052】
また、本発明による液体吐出装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木 材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を上記媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を上記媒体に付与することをも意味する。さらに、液体とは記録液、インクに限るものではなく、画像形成を行うことができる液体であれば特に限定されるものではない。また、液体吐出装置としては、液体吐出ヘッドから液体を吐出する装置を意味し、画像を形成するものに限らないが、特にインクジェット記録装置としての応用が好適であり、上述の実施形態のインクジェット記録装置の他、他の形態のインクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
【0053】
次に、前記インクジェット記録装置に適用された液体吐出装置用ヘッド装置であるインクジェットヘッドについて図4、図5に基づいて説明する。図4は、本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの要素拡大図、図5は、同ヘッドのチャンネル間方向の要部拡大断面図である。
【0054】
このインクジェットヘッドは、サブタンク135に収容されているインクを受給するインク受給口(不図示)とインク受給口から供給されたインクを貯留して複数の加圧液室2b(図5参照)にインクを供給する供給口1cを有する共通液室1bとなる彫り込みを樹脂成形によって形成したフレーム10を有している。さらに、共通液室1bからのインクの供給を受けると共に、後述する積層圧電素子50によってインクがノズル3aから吐出する際のインクの流圧を発生する加圧液室2bと、加圧液室2b内の液圧が共通液室に及ぶことを抑制する流体抵抗部2aとノズル3aに連通する連通口2cを彫り込みによって形成した流路板20と、ノズル3aを形成するノズルプレート30とを有している。また、インクジェットヘッドは、積層圧電素子50の上下方向への振動に応じて振動する凸部6a及び可撓性フィルムからなるダイヤフラム部6bを有する振動板60を有しており、当該振動板60は、接着層70によって積層圧電素子50及びフレーム10に接着されている。積層圧電素子50は、ベース40上に固定されている。なお、6cは、振動板60に形成されたインク流入口で、共通液室1b内に貯留されたインクを加圧液室2b内に供給可能としている。
【0055】
ベース40は、チタン酸バリウム系セラミックからなり、積層圧電素子50を2列配置して接合している。積層圧電素子50は、厚さ10〜50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層と、厚さ数μm/1層の銀・パラジウム(AgPd)からなる内部電極層51及び52とを交互に積層し、内部電極層51は、外部電極53と接続され、内部電極層52は外部電極54と接続されて外部電極53及び54から電圧を印加することによって、上下方向(矢印C方向)に伸縮振動を行うようになっている。従って、積層圧電素子50の伸縮振動に伴いその上に接着された振動板60が上下振動して加圧液室2bの液圧が変動する。この液圧が加圧状態になったとき(振動板60が上方に突出したとき)にインクが液滴となってノズル3aから吐出され、液滴が用紙142の表面に付着して印刷が行われる。
【0056】
積層圧電素子50は、図5に示すように、ハーフカットのダイシング加工により櫛歯上に分割され、1つ毎に伸縮振動する駆動部5fと伸縮振動せずに振動板60を支持する支持部5g(非駆動部)として使用されている。外部電極54は、ハーフカットのダイシング加工で分割されるように、切り欠き等の加工により長さを制限しており、これらは複数の個別電極となっている。他方の外部電極53は、ダイシングでは分割されずに導通しており共通電極となる。
【0057】
駆動部5fに形成された個別外部電極54にはFPC(フレキシブルプリント基板)55が半田接合されており、また、共通外部電極53はFPC55の接地電極に接合されている。そして、FPC55には図示しないドライバICが実装されており、これにより駆動部5fへの駆動電圧印加が制御されている。
【0058】
振動板60は、薄膜のダイヤフラム部6bと、このダイヤフラム部6bの中央部に形成した駆動部5fとなる積層圧電素子50と接合する島状凸部(アイランド部)6aと、支持部に接合する梁を含む厚膜部と、インク流入口6cとなる開口を電鋳工法によるNiメッキ膜を2層重ねて形成している。ダイヤフラム部の厚さは3μm、幅は35μm(片側)である。この振動板60の島状凸部6aと積層圧電素子50の駆動部5f、振動板50とフレーム10の結合は、ギャップ材を含んだ接着層(70)をパターニングして接着している。
【0059】
流路板20はシリコン単結晶基板を用いて、流体抵抗部2a、加圧液室2bとなる彫り込みによって形成し、さらに、ノズル3aに対する位置に連通口2cとなる貫通口をエッチング工法でパターニングにより形成されている。エッチングで残された部分が加圧液室2bの隔壁2dとなる(図5参照)。また、このヘッドでは、流路版20の加圧液室2bと共通液室と連通する上部液室2eとの間のエッチング幅を狭くする部分を設けて、加圧液室2bから上部液室2eとの間のインクの流れを抑制する流体抵抗部2aとした。
【0060】
液体吐出ノズル部であるノズルプレート30は、金属材料、例えば、電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、インク滴を飛翔させるための微細な吐出口であるノズル3aを多数を形成している。このノズル3aの内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成している。また、このノズル3aの径はインク滴出口側の直径で約20〜35μmである。また各列のノズルピッチは150dpiとした。このノズルプレート30のインク吐出面(ノズル表面側)は、図示しない撥インク性の表面処理を施した撥インク層90を設けている。撥インク層90としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂層、またはNiとPTFE(ポリテトラフロロエチレン)との共析膜などの金属/樹脂複合膜などが用いられているが、特に、樹脂層の撥インク層90を使用する場合には、後述するように、充填液や洗浄液によって、下地となる金属材料からなるノズルプレート30が腐食し、表面が溶出されて撥インク層90が剥離し易くなる。特に、樹脂層の中でもシリコーン樹脂層を使用する場合には、撥インク層90としてはノズルプレート30へのインク付着が防止されて良好な特性を示すが、充填液や洗浄液等の液体透過性がの高い液体と接触すると、下地のNi面が充填液や洗浄液等により極微量でも腐食すると、その影響で撥インク層90がNi界面から剥離するなどの問題が生じることがあり、本発明においては、後述するように、特定の充填液あるいは特定の洗浄液を使用することによって、このような構成でも下地の金属を劣化させずに撥インク層90の剥離を防止することができる。
【0061】
このように構成したインクジェットヘッドにおいては、記録信号に応じて駆動部5fに駆動波形(10〜50Vのパルス電圧)を印加することによって、駆動部5fに積層方向の変位が生起し、振動板60を介して加圧液室2bが加圧されて圧力が上昇し、ノズル3aからインク滴が吐出される。
【0062】
その後、インク滴吐出の終了に伴い、加圧液室2b内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって加圧液室2b内に負圧が発生してインク充填行程へ移行する。このとき、サブタンク135から供給されたインクは共通液室1bに流入し、共通液室1bからインク流入口6cを経て流体抵抗部2aを通り、加圧液室2b内に充填される。
【0063】
流体抵抗部2aは、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果が有る反面、表面張力による最充填(リフィル)に対して抵抗になる。流体抵抗部を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0064】
本実施形態で使用されるインクジェットノズルプレート、インクジェットヘッドは、これらインクジェット記録装置(画像形成装置)への応用が効果的であるが、これに限らず、カラーフィルター、有機EL等の製造装置、その他各種パターニング装置にも応用可能である。
【0065】
このような液体吐出装置においては、輸送、保管時に、インク等の吐出液体が外気に曝されることによってノズル部上で付着、固化して、液体の吐出不良を防止するために、吐出液体が流れる液体流路内に充填液を充填することが行われている。このような充填液は、充填液の除去後の吐出液体の充填性等を向上させるため、界面活性剤や保湿剤等の種々の添加剤が添加されており、これらの添加剤等によって、保存中等に金属で形成されたノズル部等の液体流路内で、金属が腐食、溶出することが見出された。
【0066】
同様に、液体吐出装置の製造時の吐出検査後や修理工程前後等に、吐出液体が流れる液体流路内に残存する吐出液体を除去するために、液体流路内に洗浄液を流して液体流路を洗浄することが行われる。この場合に使用される洗浄液は、洗浄後の吐出液体の充填性等を向上させるため、界面活性剤や保湿剤等の種々の添加剤が添加されており、これらの添加剤等によって、液体流路内に残存した洗浄液によって金属で形成されたノズル部等の液体流路内で、金属が腐食、溶出することが見出された。
【0067】
本発明においては、このような充填液や洗浄液による液体流路内における金属の腐食、溶出を抑制するために、充填液及び洗浄液中に、液体流路内における金属の腐食、溶出を抑制する腐食溶出防止剤を含有させたものである。なお、この場合の液体流路としては、インク等の吐出液体が液滴としてインクタンク等の液体収納タンクから液体が吐出されるノズル部までの経路を含むが、必ずしも上記範囲の全領域である必要はなく、充填液が充填される領域或いは洗浄液で洗浄される領域であれば十分である。
【0068】
本発明による充填液及び洗浄液で使用される腐食溶出防止剤としては、金属で形成された液体流路の金属の酸化によって腐食、金属の溶出が生じることを抑制するものであればよく、例えば、防錆剤や酸化防止剤などが挙げられ、用いる充填液或いは洗浄液および液体流路部材によって、腐食防止効果、副作用を考慮して適宜選択することになる。充填液或いは洗浄液中の腐食溶出防止剤の含有量は、0.001〜5.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1.0重量%である。0.001重量%未満では、腐食溶出防止効果がほとんどなくなり、5.0重量%を超えると充填液物性或いは洗浄液物性に悪影響するなどの副作用が生じることになる。
【0069】
具体的には、防錆剤としては、主に被腐食部材表面に吸着して表面を保護することにより腐食防止効果を発現しているもので、たとえば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体等が挙げられる。これらの中で、本発明ではベンゾトリアゾールおよびその誘導体が特に好ましい。ここでベンゾトリアゾール誘導体とは、構造中にベンゾトリアゾール骨格を有し、種々の置換基を有したり、高分子鎖をグラフト化した化合物およびその塩などを意味する。これらは水溶性を改善するため、さらに防錆機能を向上するために種々のものが用いられる。具体例としては、1,2,3−ベンゾトリアゾールナトリウム塩、4−メチルベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、トリルトリアゾールアミン、2−(2‘−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0070】
次に酸化防止剤であるが、自身が酸化されることにより腐食反応を防ぐ機能を示し、本発明で用いる場合は特に限定されるものではない。たとえば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。具体的には、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
【0071】
アミン系酸化防止剤としては、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、等が挙げられる。
【0072】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が挙げられる。
【0073】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、等が挙げられる。
【0074】
これら以外にも、アスコルビン酸、アスコルビン酸Na、タンニン酸、シュウ酸、没食子酸、タウリンなどの抗酸化作用のある天然物も本発明の腐食溶出防止剤として使用できる。
【0075】
詳細は後述するが、特に、ベンゾトリアゾール、またはベンゾトリアゾール誘導体である場合には、その添加量が0.01〜1.0重量%である場合に大きな効果が認められる。
【0076】
本発明による充填液或いは洗浄液には、上記腐食溶出防止剤以外に、溶媒、界面活性剤、保湿剤、その他添加剤等を含有させることができる。主に、吐出液体と共通な構成成分で固形分を含まないものが用いられることが多い。例えば、インクジェット記録装置においては、色材を含まないインク構成成分から形成されていたりする。但し、本発明では上記腐食溶出防止剤以外の構成成分は限定されるものではない。
【0077】
溶媒としては主に水が中心であり、さらに、水溶性有機溶媒なども混合して用いることもできる。水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコーノレ、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプローラクタム等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチローラクトン等を用いることができる。このような水溶性有機溶媒の最適な配合量は、充填液の場合には、10重量%より少ないと保湿力が低下するので10〜70重量%が好適であり、洗浄液の場合には、30重量%より多いと粘度が増大し過ぎて洗浄力が低下するので30重量%以下が好ましい。
【0078】
界面活性剤は充填性を上げるため、充填液の混合安定性を上げるためなどに添加される。例えば、アニオン界面活性剤としてはアルキルアリル又はアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテルエステル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、エーテルカルボキシレート、スルホコハク酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、脂肪酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ナフテン酸塩等がある。
【0079】
カチオン界面活性剤としてはアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩等がある。
【0080】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリコキシド等がある。
【0081】
両性界面活性剤としては、イミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン誘導体、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン等がある。
【0082】
本発明では、ノニオン系界面活性剤である下記一般式(1)に示したポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを含有する場合に、腐食耐久性だけでなく、充填性および充填液の保存性を向上させることができるので好適である。
【化3】


(式中、m+n=0〜20、x=0〜10、y=0〜10となる数値を示す。ただし、xとyとが同時に0になることはない。)
【0083】
これら界面活性剤の含有量は、0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.0重量%である。含有量が0.01重量%より低いと充填性あるいは洗浄性上の向上効果が薄れ、10重量%より高いと充填液或いは洗浄液そのものの保存安定性、発泡性などの問題が生じる。一般式(1)において、m、n、x、yの値を変えることにより、疎水性、親水性の制御ができる。m、nを増やすとアルキル部が長くなり疎水性に傾き、x、yを増やすとオキシアルキレン部が長くなり親水性に傾く。さらに、x、yの比率を変えることによっても特性が変化し、泡性状等が異なり、使用用途にあったものを選択できる。特に、m+n=2〜20、x=1〜10、y=1〜10との範囲のものを使用する場合には、充填液及び洗浄液のどちらにおいても、界面活性能と、気泡性、保存性のバランスがよくなるので好適である。
【0084】
保湿剤は主に流路内での充填液或いは洗浄液の乾燥防いだり、発泡を防ぐなどの目的で含有される。例えば、水溶性多価アルコール、含窒素炭化水素溶媒、含硫黄炭化水素溶媒などが挙げられ、これらは、複数含有してもよい。これらの中で特に水溶性多価アルコールは好適であり、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等が挙げられる。
【0085】
その他の添加剤としては、pH調整剤、防腐防黴剤等が挙げられる。pH調整剤としては、たとえば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、第4級アンモニウム水酸化物やジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン、水酸化アンモニウム、第4級ホスホニウム水酸化物等が挙げられる。特に腐食防止という点ではpHは重要であり、pH調整剤としてアミノプロパンジオール誘導体を用いた場合に腐食溶出防止効果が非常に高くなる。
【0086】
アミノプロパンジオール誘導体は、水溶性の有機塩基性化合物であり、たとえば、1−アミノ−2,3−プロパンジオール、1−メチルアミノ−2,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられ、特に2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールが好ましい例として挙げられる。さらに、充填液及び洗浄液中に、アミノプロパンジオール誘導体及び保湿剤を含有させるとより腐食耐久性が向上するので好ましく、pH調整剤としてのアミノプロパンジオール誘導体を用いる場合には、好適な添加量は、0.1〜5重量%である。
【0087】
防腐防黴剤としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ぺンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム等が挙げられる。
【0088】
また、本発明においては、上記充填液が充填された或いは上記洗浄液で洗浄された液体吐出装置用ヘッド装置、液体流路内に上記充填液が充填されたあるいは、液体流路を上記洗浄液で洗浄された液体吐出装置についても有効であるが、液体吐出装置の好例がインクジェット記録装置である。この場合に、液体流路構成部材の少なくとも一部が、Niを含む材料から形成されている場合には、充填液や洗浄液によって、Niが腐食、溶出され易いため、本発明による充填液及び洗浄液を使用した場合に特に効果的である。なお、本発明による充填液及び洗浄液としては、基本的にほぼ同等の組成のものを使用することが可能なため、特に区別して使用する必要がなく、充填液及び洗浄液としての機能を併せ持つ洗浄充填液として使用することも可能である。
【0089】
さらに、Niから形成されたノズル面に撥液層を、樹脂、特にシリコーン樹脂から形成されている場合には、Ni/樹脂層界面においてNiとしての腐食溶出量は非常に極微量となるが、極微量のNi溶出でもNi/樹脂層が界面剥離を引き起こし易いため、本発明による充填液及び洗浄液の使用は最も効果的である。
【実施例】
【0090】
次に、具体的な実施例に基づいて本発明を説明する。
【0091】
〔実施例1〕
Ni電鋳ノズル表面(表面積:3.0cm)上に、シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン社製)をスプレー法にて塗布して約1.0μm厚のシリコーン層を形成した。この際、ノズル孔及びノズル板裏面を水溶性樹脂でマスキングし、シリコーン層塗布形成後、剥離除去して形成した。これを200℃、1時間加熱硬化させて撥インク層とし、Ni/シリコーン樹脂からなるノズルプレートを作製した。このノズルプレートを試験管に入れ、以下の組成で作製した充填液に浸漬し、50℃にて38kHz、1W/cmの超音波を48時間照射した後のNi溶出量(部品単位面積当たりのNi溶出量)をICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置(島津製作所製、ICP−1000IV)を用いて測定した。
【0092】
<充填液>
以下の組成の充填液を作製し、0.1μmフィルターでろ過した。
・ベンゾトリアゾール 0.008重量部
・ソフタノールEP−7025(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=7、y=2.5を示す下記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
0.100重量部
・純水 99.892重量部
【化4】

【0093】
〔実施例2〕
実施例1において、充填液を以下の組成とした。
【0094】
<充填液>
・ベンゾトリアゾール 0.01重量部
・ソフタノールEP−7025(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=7、y=2.5を示す上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
0.1重量部
・グリセリン 20重量部
・純水 79.89重量部
【0095】
〔実施例3〕
実施例1において、充填液を以下の組成とした。
【0096】
<充填液>
・ベンゾトリアゾール 0.05重量部
・ソフタノールEP−7025(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=7、y=2.5を示す上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
0.5重量部
・グリセリン 20重量部
・2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール
1.0重量部
・純水 78.45重量部
【0097】
〔実施例4〕
実施例1において、充填液を以下の組成とした。
【0098】
<充填液>
・ベンゾトリアゾール 1.0重量部
・ソフタノールEP−7025(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=7、y=2.5を示す上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
1.0重量部
・グリセリン 20重量部
・1,3−ブタンジオール 10重量部
・2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール
1.0重量部
・純水 67重量部
【0099】
〔実施例5〕
実施例1において、充填液を以下の組成とした。
【0100】
<充填液>
・ベンゾトリアゾール 1.2重量部
・ソフタノールEP−7025(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=7、y=2.5を示す上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
0.1重量部
・グリセリン 20重量部
・純水 78.7重量部
【0101】
〔実施例6〕
実施例1において、充填液を以下の組成とした。
【0102】
<充填液>
・4−メチルベンゾトリアゾールトリメチルアンモニウム塩
0.1重量部
・ソフタノールEP−9050(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=9、y=5を示す上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
0.1重量部
・グリセリン 20重量部
・2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
0.8重量部
・純水 79重量部
【0103】
〔実施例7〕
実施例1において、充填液を以下の組成とした。
【0104】
<充填液>
・メカヒビター#23(日本メカケミカル製防錆剤)
1重量部
・サーフィノール104E(日信化学工業製アセチレン系界面活性剤)
0.5重量部
・グリセリン 20重量部
・純水 78.5重量部
【0105】
〔実施例8〕
Ni電鋳ノズル表面(表面積:3.0cm)上に、撥インク層として電界メッキによりNi/PTFE(ポリテトラフロロエチレン)共析層を形成したノズルプレートを作製した。このノズルプレートを試験管に入れ、以下の組成で作製した充填液に浸漬し、50℃にて38kHz、1W/cmの超音波を48時間照射した後のNi溶出量(部品単位面積当たりのNi溶出量)をICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置(島津製作所製ICP−1000IV)を用いて測定した。
【0106】
<充填液>
以下の組成の充填液を作製し、0.1μmフィルターでろ過した。
・L−アスコルビン酸(抗酸化剤) 1.5重量部
・ソフタノール30(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=3、y=0を示す上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
1.0重量部
・グリセリン 20重量部
・2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
0.8重量部
・純水 76.7重量部
【0107】
〔比較例1〕
実施例1において、ベンゾトリアゾール及びソフタノールEP−7025の添加を行わず、純水のみからなるものを充填液として用いた。
【0108】
〔比較例2〕
実施例1において、充填液にベンゾトリアゾールを添加せず、その他は同様にして充填液を調製した。
【0109】
〔比較例3〕
実施例2において、充填液にベンゾトリアゾールを添加せず、その他は同様にして充填液を調製した。
【0110】
〔比較例4〕
実施例3において、充填液にベンゾトリアゾールを添加せず、その他は同様にして充填液を調製した。
【0111】
〔比較例5〕
実施例8において、充填液にL−アスコルビン酸を添加せず、その他は同様にして充填液を調製した。
【0112】
実施例1〜8及び比較例1〜5についてNi溶出量の測定結果を図6に示す。この結果からベンゾトリアゾールを添加しない充填液を使用した比較例1〜5の場合には、10.1〜32.7μg/cm、と大きなNi溶出量を示した。これに対して、ベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾールトリメチルアンモニウム塩等のベンゾトリアゾール誘導体、メカヒビター#23等の防錆剤、L−アスコルビン酸等の抗酸化剤を添加した本発明による実施例のものでは、0.8〜6.4μg/cmと小さなNi溶出量に抑制されて、Ni電鋳ノズル表面に形成されたシリコーン樹脂からなる撥インク層の剥離は認められず、良好な耐食性を示した。
【0113】
〔実施例9〕
シリコン液室に用いる熱酸化SiO層を形成したシリコンプレートを試験管に入れ、実施例6で作製した充填液に浸漬し、50℃にて38kHz、1W/cmの超音波を48時間照射した後のSi溶出量(部品単位面積当たりのNi溶出量)をICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置(島津製作所製、ICP−1000IV)を用いて測定した。
【0114】
〔比較例6〕
実施例9において、充填液に4−メチルベンゾトリアゾールトリメチルアンモニウム塩を添加せず、その他は同様にして充填液を調製した。
【0115】
実施例9及び比較例6の充填液を使用した場合におけるSi溶出量を測定した結果を図7に示す。この結果から明らかなように、4−メチルベンゾトリアゾールトリメチルアンモニウム塩を含まない比較例6のものでは、15.6μg/cmと大きなSi溶出量を示す。これに対して、本発明による実施例9のものでは、約1/5以下のSi溶出量に抑制され、良好な耐食性を有している。
【0116】
〔実施例10〕
種々のインク流路部品に用いるSUS304(ステンレス鋼)プレートを試験管に入れ、実施例4で作製した充填液に浸漬し、50℃にて38kHz、1W/cmの超音波を48時間照射した後のSUSの主な構成元素であるFe、Ni、Cr溶出量(部品単位面積当たりのFe、Ni、Cr溶出量)をICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置(島津製作所製、ICP−1000IV)を用いて測定した。
【0117】
〔比較例7〕
実施例10において、充填液にベンゾトリアゾールを添加せず、その他は同様にして充填液を調製した。
【0118】
実施例10及び比較例7の充填液を使用した場合におけるFe、Ni、Cr溶出量を測定した結果を図8に示す。この結果から明らかなように、ベンゾトリアゾールを含まない比較例7のものでは、Fe、Ni、Cr溶出量が、それぞれ4.0、4.3、3.1μg/cmと大きなFe、Ni、Cr溶出量を示す。これに対して、本発明による実施例10のものでは、それぞれ、0.1、0.2、0.1μg/cmと大幅に抑制されて良好な耐食性を有していることが明らかである。
【0119】
〔実施例11〕
実施例3で作製した充填液及び実施例1で作製したNi/シリコーンノズルプレートを用いてヘッドを作製し、前述した図1〜図3にて示したプリンタ(リコー社製IPSiO G707)に装着して、以下の評価を行なった。
【0120】
ノズル前面からポンプで吸引しながら供給口から充填液を充填した。次に同様にして、ノズル前面からポンプで充填液を吸引しながら供給口から下記組成のインクを充填した。この場合、ヘッド流路中の容量よりも多い1mlのインクを吸引後、印字を行なったところ、全ノズルからのインクの吐出が確認され、充填液によりインクの充填が良好に保たれていることが確認された。
【0121】
<インク>
以下の組成物を混合攪拌後、1.0μmフィルターでろ過して作製した。
【0122】
・CAB−O−JET 200(スルホン基付加型)
20重量部
・ECTD3NEX(日光ケミカルズ製、ポリオキシエチレントリドデシルエーテル酢酸ナトリウム界面活性剤 1.5重量部
・グリセリン 15重量部
・1,3−ブタンジオール 7.5重量部
・2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール
0.5重量部
・純水 55.5重量部
【0123】
さらに、同様にノズル前面からインクを十分に吸引し、供給口から充填液を充填して、ノズル面にキャップをして60℃で5日間放置後、再度、インクを充填し印字を行なったところ、不吐出、曲がりなどの吐出不良は認められなかった。ノズルプレート表面を顕微鏡にて観察したところ、シリコーン層には特に変化は認められなかった。
【0124】
〔比較例8〕
実施例11において、充填液として実施例3で作製したものの代わりに比較例4で作製したものを用いた。そして、実施例1で作製したNi/シリコーンノズルプレートを有するヘッドを作製し、これを図1〜図3に示すプリンタ(リコー社製IPSiO G707)に装着して、以下の評価を行なった。
【0125】
ノズル前面からポンプで吸引しながら、供給口から充填液を充填した。次に同様にして、ノズル前面からポンプで充填液を吸引しながら、供給口から実施例11と同じインクを充填した。この場合、ヘッド流路中の容量よりも多い1mlのインクを吸引後、印字を行なったところ、全ノズルからの吐出が確認され、充填液によりインクの充填が良好に保たれていることが確認された。しかしながら、さらに、同様にノズル前面からインクを十分に吸引し、供給口から充填液を充填して、ノズル面にキャップをして60℃で5日間放置後、再度、インクを充填し印字を行なったところ、不吐出はなかったが、曲がりなどの吐出不良が確認され、ノズルプレート表面を顕微鏡にて観察したところ、ノズル近傍のシリコーン層が一部浮いているのが確認できた。
【0126】
次に、本発明による洗浄液について、実施例に基づいて説明する。
【0127】
〔実施例12〕
Ni電鋳ノズル表面(表面積:3.0cm)上に、シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン社製、SR−2411)をスプレー法にて塗布して約1.0μm厚のシリコーン層を形成した。この際、ノズル孔及びノズル板裏面を水溶性樹脂でマスキングし、シリコーン層塗布形成後、剥離除去して形成した。これを200℃、1時間加熱硬化させて撥インク層とし、Ni/シリコーン樹脂からなるノズルプレートを作製した。このノズルプレートを試験管に入れ、以下の組成で作製した洗浄液に浸漬し、50℃にて38kHz、1W/cmの超音波を48時間照射した後のNi溶出量(部品単位面積当たりのNi溶出量)をICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置(島津製作所製、ICP−1000IV)を用いて測定した。
【0128】
<洗浄液>
以下の組成の洗浄液を作製し、0.1μmフィルターでろ過した。
【0129】
・ベンゾトリアゾール 0.008重量部
・ソフタノールEP−7025(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=7、y=2.5を示す下記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
0.100重量部
・純水 99.892重量部
【化5】

【0130】
次に、上記作製したNi/シリコーンノズルプレートを用いてヘッドを作製し、前述した図1〜図3にて示したプリンタ(リコー製IPSiO G707)に装着して、以下の評価を行なった。予め、以下のインクを充填し、印字を行ない全ノズルからインクが吐出されていることを確認した。次に、ノズル前面から外部のポンプでインクを吸引した後、インクジェット記録装置の供給ポンプを用いて供給口から洗浄液を供給し、ノズル前面からポンプで洗浄液を吸引する動作を5回繰り返した。この際、最後の吸引洗浄液を回収し、500nmの吸光度測定を行い、インクの同波長の吸光度との比較により、回収した洗浄液中のインク濃度(重量%)を算出した。
【0131】
<インク>
以下の組成物を混合攪拌後、1.0μmフィルターでろ過して作製した。
【0132】
・CAB−O−JET200(スルホン基付加型)
20重量部
・ECTD3NEX(日光ケミカルズ製、ポリオキシエチレントリドデシルエーテル酢酸ナトリウム界面活性剤)
1.5重量部
・グリセリン 15重量部
・1,3−ブタンジオール 7.5重量部
・純水 56重量部
【0133】
さらに、ノズル面に保湿キャップをしてプリンタを50℃、60%RH環境下にて1ヶ月間放置した後、インクを再充填し以下の条件で吐出安定性を評価した。
【0134】
即ち、以下の印刷パターンチャートを100枚連続で印字後、もう1枚同チャートを印写した時の5%チャートベタ部の筋,白抜け,噴射乱れの有無を目視にて以下の基準で評価した。なお、印刷パターンは、画像領域中、印字面積が、紙面全面積中、各色印字面積が5%であるチャートにおいて、各インクを100%dutyで印字した。印字条件は、記録密度は360dpi、ワンパス印字とした。
【0135】
A:ベタ部にスジ、白抜け、噴射乱れが無い。
B:ベタ部にスジ、白抜け、噴射乱れが若干認められる。
C:ベタ部全域にわたってスジ、白抜け、噴射乱れが認められる。
【0136】
〔実施例13〕
実施例12において、洗浄液を以下の組成とし、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例1と同様に洗浄放置後の再充填性を評価した。
<洗浄液>
・ベンゾトリアゾール 0.01重量部
・ソフタノールEP−9050(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=9、y=5を示す上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
5重量部
・グリセリン 10重量部
・純水 89.49重量部
【0137】
〔実施例14〕
実施例12において、洗浄液を以下の組成とし、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例12と同様に洗浄放置後の再充填性を評価した。
【0138】
<洗浄液>
・ベンゾトリアゾール 0.05重量部
・ソフタノールEP−7025(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=7、y=2.5を示す上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
0.5重量部
・グリセリン 10重量部
・2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール
1.0重量部
・純水 88.45重量部
【0139】
〔実施例15〕
実施例12において、洗浄液を以下の組成とし、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例12と同様に洗浄放置後の再充填性を評価した。
【0140】
<洗浄液>
・ベンゾトリアゾール 1.0重量部
・ソフタノールEP−7025(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=7、y=2.5を示す上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
1.0重量部
・グリセリン 10重量部
・1,3−ブタンジオール 5重量部
・2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール
1.0重量部
・純水 82重量部
【0141】
〔実施例16〕
実施例12において、洗浄液を以下の組成とし、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例12と同様に洗浄放置後の再充填性を評価した。
【0142】
<洗浄液>
・ベンゾトリアゾール 1.5重量部
・ソフタノールEP−7025(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=7、y=2.5を示すの上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
0.1重量部
・グリセリン 10重量部
・純水 88.4重量部
【0143】
〔実施例17〕
実施例12において、洗浄液を以下の組成とし、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例12と同様に洗浄放置後の再充填性を評価した。
【0144】
<洗浄液>
・4−メチルベンゾトリアゾールトリメチルアンモニウム塩
0.1重量部
・ソフタノールEP−9050(日本触媒製界面活性剤で、m+n=9〜11、x=9、y=5を示すの上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
0.1重量部
・グリセリン 10重量部
・2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
0.8重量部
・純水 89重量部
【0145】
〔実施例18〕
実施例12において、洗浄液を以下の組成とし、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例12と同様に洗浄放置後の再充填性を評価した。
【0146】
<洗浄液>
・メカヒビター#23 (日本メカケミカル製防錆剤)
1重量部
・サーフィノール104E(日信化学工業製アセチレン系界面活性剤)
0.5重量部
・グリセリン 10重量部
・純水 88.5重量部
【0147】
〔実施例19〕
Ni電鋳ノズル表面(表面積:3.0cm)上に、撥インク層として電界メッキによりNi/PTFE共析層を形成したノズルプレートを作製した。このノズルプレートを以下の組成で作製した洗浄液に浸漬し、50℃、1ヶ月放置後のNi溶出量をICP発光分光分析装置(島津製作所製、ICP−1000IV)を用いて測定した。
【0148】
<洗浄液>
以下の組成の洗浄液を作製し、0.1μmフィルターでろ過した。
【0149】
・L−アスコルビン酸 1.5重量部
・ソフタノール 30(日本触媒製の界面活性剤で、m+n=9〜11、x=3、y=0を示す上記一般式(1)のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
1.0重量部
・グリセリン 10重量部
・2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
0.8重量部
・純水 86.7重量部
【0150】
次に、上記作製したNi/PTFE共析ノズルプレートを用いてヘッドを作製し、前述した図1〜図3にて示したプリンタ(リコー製IPSiO G707)に装着して、以下の評価を行なった。予め、以下のインクを充填し、印字を行ない全ノズルからインクが吐出されていることを確認した。次に、ノズル前面から外部のポンプでインクを吸引した後、インクジェット記録装置の供給ポンプを用いて供給口から洗浄液を供給し、ノズル前面からポンプで洗浄液を吸引する動作を5回繰り返した。この際、最後の吸引洗浄液を回収し、708nmの吸光度測定を行い、インクの同波長の吸光度との比較により、回収した洗浄液中のインク濃度(重量%)を算出した。さらに、実施例12と同様に洗浄放置後の吐出安定性を評価した。
【0151】
<インク>
・C.I.アシッドブルー9 4重量部
・グリセリン 10重量部
・エチレングリコール 5重量部
・純水 81重量部
【0152】
〔比較例9〕
実施例12において、ベンゾトリアゾール、ソフタノールEP−7025を添加せず、純水を洗浄液とし、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例12と同様に洗浄放置後の吐出安定性を評価した。
【0153】
〔比較例10〕
実施例12において、ベンゾトリアゾールを添加しなかった以外は同様にして洗浄液調製し、これを用いて、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例12と同様に洗浄放置後の吐出安定性を評価した。
【0154】
〔比較例11〕
実施例13において、ベンゾトリアゾールを添加しなかった以外は同様にして洗浄液を調製し、これを用いて、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例13と同様に洗浄放置後の吐出安定性を評価した。
【0155】
〔比較例12〕
実施例14において、ベンゾトリアゾールを添加しなかった以外は同様にして洗浄液を調製し、これを用いて、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例14と同様に洗浄放置後の吐出安定性を評価した。
【0156】
〔比較例13〕
実施例19において、ベンゾトリアゾールを添加しなかった以外は同様にして洗浄液を調製し、これを用いて、Ni溶出量と洗浄後の洗浄液中のインク濃度を測定した。さらに、実施例19と同様に洗浄放置後の吐出安定性を評価した。
【0157】
図9には、実施例12〜19及び比較例9〜13の洗浄液を使用した場合のNi溶出量、残留インク濃度、放置後吐出安定性の測定結果を示している。この結果から、比較例のものと比べ、本実施例のものでは、残留インク濃度は左程変わらないが、Ni溶出量が大幅に減少し、1ケ月放置後のインクの吐出安定性が比較例のものに比べて改善されていることが明らかである。
【0158】
〔実施例20〕
シリコン液室に用いる熱酸化SiO層を形成したシリコンプレートを実施例17で作製した洗浄液に浸漬し、50℃、1ヶ月放置後のSi溶出量をICP発光分光分析装置(島津製作所製ICP−1000IV)を用いて測定した。
【0159】
〔比較例14〕
実施例20において、洗浄液に4−メチルベンゾトリアゾールトリメチルアンモニウム塩を添加しなかった以外は同様にして洗浄液を調製した。
【0160】
図10は、実施例20と比較例14の洗浄液を使用した場合におけるSi溶出量を測定した結果を示す。この結果から、本実施例に係る洗浄液は、比較例のものに比べて、Si溶出量が大幅に減少し、良好な耐食性を示すことが明らかである。
【0161】
〔実施例21〕
種々のインク流路部品に用いるSUS304プレートを実施例15で作製した洗浄液に浸漬し、50℃、1ヶ月放置後のSUSの主な構成元素であるFe、Ni、Cr溶出量をICP発光分光分析装置(島津製作所製、ICP−1000IV)を用いて測定した。
【0162】
〔比較例15〕
実施例21において、洗浄液にベンゾトリアゾールを添加しなかった以外は同様にして洗浄液を調製した。
【0163】
図11は、実施例21と比較例15の洗浄液を使用した場合におけるFe、Ni、Cr溶出量を測定した結果を示している。この結果から、本実施例に係る洗浄液は、Fe、Ni、Cr溶出量とも比較例のものに比べ大幅に減少して良好な耐食性を示している。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明による一実施形態のインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1で示すインクジェット記録装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】図1で示すインクジェット記録装置で使用されるヘッド装置の機能を説明するための上面図である。
【図4】本発明による一実施形態のインクジェット記録装置で使用されるヘッド装置の概略構成を示す断面図である。
【図5】図4で示すヘッド装置の縦断面図である。
【図6】本発明による実施例1〜8及び比較例1〜5の充填液を使用した場合におけるNi溶出量の測定結果を示す表である。
【図7】本発明による実施例9及び比較例6の充填液を使用した場合におけるSi溶出量の測定結果を示す表である。
【図8】本発明による実施例10及び比較例7の充填液を使用した場合におけるFe、Ni、Cr溶出量の測定結果を示す表である。
【図9】本発明による実施例12〜19及び比較例9〜13の洗浄液を使用した場合におけるNi溶出量、残留インク濃度及び1ケ月放置後のインク吐出安定性の測定結果を示す表である。
【図10】本発明による実施例20及び比較例14の洗浄液を使用した場合におけるSi溶出量の測定結果を示す表である。
【図11】本発明による実施例21及び比較例15の洗浄液を使用した場合におけるFe、Ni、Cr溶出量の測定結果を示す表である。
【符号の説明】
【0165】
1b 共通液室
1c 開口
2a 流体抵抗部
2b 加圧液室
2d 隔壁
3a ノズル
5f 駆動部
5g 支持部
6a 凸部
6b ダイヤフラム部
6c インク流入口
10 フレーム
20 流路板
30 ノズルプレート
40 ベース
50 積層圧電素子
51、52 内部電極
53、54 外部電極
60 振動板
90 撥インク層
101 装置本体
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
142 用紙
143 給紙コロ
144 分離パッド
145 ガイド
151 搬送ベルト
152 再度カウンタローラ
153 搬送ガイド
154 押え部材
155 加圧コロ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 テンションローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置の液体流路内に充填する充填液であり、当該充填液は、前記流体流路内の金属の腐食、溶出を抑制する腐食溶出防止剤を含有することを特徴とする液体吐出装置用充填液。
【請求項2】
請求項1記載の液体吐出装置用充填液において、
前記腐食溶出防止剤がベンゾトリアゾール、またはベンゾトリアゾール誘導体であることを特徴とする液体吐出装置用充填液。
【請求項3】
請求項2記載の液体吐出装置用充填液において、
前記ベンゾトリアゾール、またはベンゾトリアゾール誘導体の添加量が0.01〜1.0重量%であることを特徴とする液体吐出装置用充填液。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の液体吐出装置用充填液において、
前記液体吐出装置用充填液は、界面活性剤を含有することを特徴とする液体吐出装置用充填液。
【請求項5】
請求項4記載の液体吐出装置用充填液において、
前記界面活性剤として下記一般式(1)に示したポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを含有することを特徴とする液体吐出装置用充填液。
【化1】


(式中、m+n=0〜20、x=0〜10、y=0〜10となる数値を示す。ただし、xとyとが同時に0になることはない。)
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の液体吐出装置用充填液において、
前記液体吐出装置用充填液は、アミノプロパンジオール誘導体を含有することを特徴とする液体吐出装置用充填液。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の液体吐出装置用充填液において、
前記液体吐出装置用充填液は、保湿剤を含有することを特徴とする液体吐出装置用充填液。
【請求項8】
液体の液滴を吐出する液体吐出ノズル部と当該液体吐出ノズル部に連通して当該液体を当該液体吐出ノズル部に供給する液体流路を備えた液体吐出装置用ヘッド装置において、
前記液体流路内に、請求項1乃至7のいずれか1項記載の充填液が充填されていることを特徴とする液体吐出装置用ヘッド装置。
【請求項9】
請求項8記載の液体吐出装置用ヘッド装置において、
前記液体吐出ノズル部は、Niを含む材料で少なくとも一部を形成していることを特徴とする液体吐出装置用ヘッド装置。
【請求項10】
請求項9記載の液体吐出装置用ヘッド装置において、
前記液体吐出ノズル部の表面に樹脂で形成された撥液層を備えたことを特徴とする液体吐出装置用ヘッド装置。
【請求項11】
請求項10記載の液体吐出装置用ヘッド装置において、
前記撥液層は、シリコーン樹脂で形成されていることを特徴とする液体吐出装置用ヘッド装置。
【請求項12】
液体の液滴を吐出する液体吐出ノズル部と当該液体吐出ノズル部に連通して当該液体を当該液体吐出ノズル部に供給する液体流路を備えた液体吐出装置用ヘッド装置を有する液体吐出装置において、
前記液体流路内に、請求項1乃至7のいずれか1項記載の液体吐出装置用充填液を充填していることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項13】
請求項12記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出装置がインクジェット記録装置であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項14】
液体の液滴を吐出する液体吐出装置用ヘッド装置の液体流路を洗浄する洗浄液であり、当該洗浄液は、前記流体流路内の金属の腐食、溶出を抑制する腐食溶出防止剤を含有することを特徴とする液体吐出装置用洗浄液。
【請求項15】
請求項14記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記腐食溶出防止剤がベンゾトリアゾール、またはベンゾトリアゾール誘導体であることを特徴とする液体吐出装置用洗浄液。
【請求項16】
請求項15記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記ベンゾトリアゾール、またはベンゾトリアゾール誘導体の添加量が0.01〜1.0重量%であることを特徴とする液体吐出装置用洗浄液。
【請求項17】
請求項14乃至16のいずれか1項記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記液体吐出装置用洗浄液は、界面活性剤を含有することを特徴とする液体吐出装置用洗浄液。
【請求項18】
請求項17記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記界面活性剤として下記一般式(1)に示したポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを含有することを特徴とする液体吐出装置用洗浄液。
【化2】


(式中、m+n=0〜20、x=0〜10、y=0〜10となる数値を示す。ただし、xとyとが同時に0になることはない。)
【請求項19】
請求項14乃至18のいずれか1項記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記液体吐出装置用洗浄液は、アミノプロパンジオール誘導体を含有することを特徴とする液体吐出装置用洗浄液。
【請求項20】
請求項14乃至19のいずれか1項記載の液体吐出装置用洗浄液において、
前記液体吐出装置用洗浄液は、保湿剤を含有することを特徴とする液体吐出装置用洗浄液。
【請求項21】
液体の液滴を吐出する液体吐出ヘッド装置の液体流路内に洗浄液を流通することによって前記液体流路内の前記液体を除去して洗浄する前記液体吐出ヘッド装置を備えた液体吐出装置の洗浄方法において、
前記洗浄液として、 請求項14乃至20のいずれか1項記載の液体吐出装置用洗浄液を用いたことを特徴とする液体吐出装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−12361(P2009−12361A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178021(P2007−178021)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】