説明

液体吐出装置

【課題】液体吐出ヘッド、プリント配線板、2つの駆動信号供給手段、及び放熱部材を有する液体吐出装置において、これらで構成されるヘッド装置をコンパクトに形成することが可能な液体吐出装置の提供。
【解決手段】プリント配線板100は、インクジェットヘッド4のアクチュエータユニットに形成される複数の入力端子と接続される複数の接続端子110が形成された中央領域部を有するCOF101と、この中央領域部から互いに反対方向に延出し、それぞれL字状をなすFPC102とFPC103とからなり、FPC102とFPC103とに形成される屈曲領域に対して、COF101のドライバIC130とドライバIC131とが実装される実装領域が重なるように配置される。さらに、ドライバIC130とドライバIC131とが、インクジェットヘッド4の占める領域内に、互いに近接して配置され、この領域内にヒートシンク50も配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を吐出する液体吐出装置として、液体を吐出する複数のノズルと、これら複数のノズルから液体を吐出させるための吐出圧を複数のノズル内の液体に対して個別に付与する複数の圧力付与手段とを有する液体吐出ヘッドと、外部から供給された液体吐出用のデータに基づいて、複数の圧力付与手段のためにそれらを駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、この駆動信号生成手段が実装されるとともに、これによって生成された駆動信号を複数の圧力付与手段に供給するためのプリント配線板とを備え、複数の圧力付与手段の駆動により、複数のノズルから印刷媒体に向けて液体を吐出して印刷を行う液体吐出装置が知られている。
【0003】
ところで、近年では、印刷の高画質化及び高速化のニーズに応えるべく、液体吐出ヘッドに配置されるノズルの数を増加している。これに伴い、各ノズルに対応するようにプリント配線板の配線の数も増加する為、プリント配線板の面積を変えずに配線を配置させようとすると、各配線を高密度に配置する必要がある。しかしながら、各配線の間隔を狭くするには限界があった。そこで、多数の配線を備えながら、各配線の間隔を保つように構成可能なプリント配線板が特許文献1に開示されている。このプリント配線板は、駆動信号生成手段を2つ備え、これら2つの駆動信号供給手段が、複数の圧力付与手段の入力端子と接続される複数の接続端子が形成された接続領域部から互いに反対方向に配置されている。その為、複数の接続端子から駆動信号生成手段に繋がる複数の配線を、2つの方向に分散させて配置させることができる。これにより、複数の配線が1箇所に集中して配置されるのを避けることができるので、各配線の間隔を保つことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−324453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような駆動信号供給手段は、駆動信号を生成する際に熱が発生するが、この熱による故障を防ぐために、かかる熱を放熱するための放熱部材と接触させられる。ここで、プリント配線板の引き回しの都合上、平面視で、2つの駆動信号供給手段も、液体吐出ヘッドが占める領域の外側の領域に、互いに離れて配置されるので、各駆動信号供給手段に対して、それぞれ放熱部材を配置しなければならず、2つの放熱部材が必要となる。また、2つの放熱部材が、液体吐出ヘッドが占める領域の外側の領域に配置される為、液体吐出ヘッドを含むヘッド装置が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、液体吐出ヘッド、プリント配線板、2つの駆動信号供給手段、及び放熱部材を有する液体吐出装置において、これらで構成されるヘッド装置をコンパクトに形成することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の液体吐出装置は、液体を吐出する複数のノズルと、これら複数のノズルから液体を吐出させるための吐出圧を前記複数のノズル内の液体に対して個別に付与する複数の圧力付与手段と、を有する液体吐出ヘッドと、外部から供給された液体吐出用のデータに基づいて、前記複数の圧力付与手段のうちの一部のためにそれらを駆動する駆動信号を生成する第1駆動信号生成手段と、同様に、外部から供給された液体吐出用のデータに基づいて、前記複数の圧力付与手段のうちの前記一部を除く残りのためにそれらを駆動する駆動信号を生成する第2駆動信号生成手段と、前記第1および第2駆動信号生成手段が実装されるとともに、これらによって生成された駆動信号を前記複数の圧力付与手段に供給するためのプリント配線板と、前記第1および第2駆動信号生成手段から発生する熱を放熱するための放熱部材と、を備えた液体吐出装置であって、前記液体吐出ヘッドは、その表面に、前記複数の圧力付与手段のそれぞれに前記駆動信号を入力するための複数の入力端子が密集して形成されており、前記プリント配線板は、前記複数の入力端子とそれぞれ電気的に接続される複数の接続端子が形成された接続領域部と、前記接続領域部から互いに反対方向に延出するとともに、それぞれL字状をなす第1および第2延出部と、を有し、 前記第1および第2延出部が、それらのL字状の角部分である第1および第2屈曲領域に対して、それぞれ前記接続領域部側に隣接して設けられた、前記第1および第2駆動信号生成手段が実装される第1および第2実装領域を有して構成されるとともに、前記第1および第2実装領域に前記第1および第2駆動信号生成手段が実装された状態で、平面視で前記接続領域部が前記液体吐出ヘッドの占める範囲内に収まるように、前記接続領域部の前記複数の端子が前記液体吐出ヘッドの前記複数の入力端子に接続されており、さらに、前記プリント配線板は、前記第1および第2屈曲領域に対して前記第1および第2実装領域がそれぞれ重なるように、前記第1屈曲領域と前記第1実装領域の間、および、前記第2屈曲領域と前記第2実装領域の間がそれぞれ折り曲げられるとともに、平面視で、前記接続領域部の半分の範囲に対して、前記第1屈曲領域、前記第1実装領域、前記第1駆動信号生成手段がこの順番で重なるように、前記接続領域部と前記第1実装領域との間の部分が折り曲げられ、同様に、平面視で、前記接続領域部の残りの半分の範囲に対して、前記第2屈曲領域、前記第2実装領域、前記第2駆動信号生成手段がこの順番で重なるように、前記接続領域部と前記第2実装領域との間の部分が折り曲げられ、前記放熱部材は、前記接続領域部とともに前記第1および第2駆動信号生成手段を挟む側から、前記第1および第2駆動信号生成手段に対して接触するように配置されることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、平面視で、液体吐出ヘッドが占める領域内に、第1および第2駆動信号生成手段を互いに近接させて配置させることが可能となり、さらに、この範囲内に重なる位置に放熱部材を配置させて第1および第2駆動信号生成手段と接触させているので、駆動信号生成手段を2つ備えた部品点数の多い装置にもかかわらず、液体吐出ヘッド、プリント配線板、2つの駆動信号生成手段、及び放熱部材を集約して、これらで構成されるヘッド装置をコンパクトに形成することができる。
【0009】
第2の発明の液体吐出装置は、前記第1の発明において、前記第1および第2屈曲領域には、第1および第2補助部材がそれぞれ取り付けられており、平面視で、前記第1補助部材が、前記第1屈曲領域と前記第1実装領域との間に重なって配置されており、同様に、平面視で、前記第2補助部材が、前記第2屈曲領域と前記第2実装領域との間に重なって配置されることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、平面視で、第1補助部材が、第1屈曲領域と第1実装領域との間に重なって配置させるように、第1延在部を第1補助部材に沿って配置させ、同様に、平面視で、第2補助部材が、第2屈曲領域と第2実装領域との間に重なって配置されるように、第2延在部を第2補助部材に沿って配置させる。これにより、第1補助部材と第2補助部材を目印にして、プリント配線板を簡単に配置することができる。
【0011】
第3の発明の液体吐出装置は、前記第2の発明において、前記プリント配線板は、前記第1および第2屈曲領域には、前記第1および第2駆動信号生成手段が動作するために必要な給電量以上が供給されるのを抑えるための第1および第2コンデンサが、それぞれ実装されており、前記第1補助部材は、前記第1屈曲領域側と前記第1実装領域側とに貫通する第1貫通穴が形成され、前記第2補助部材は、前記第2屈曲領域側と前記第2実装領域側とに貫通する第2貫通穴が形成され、前記第1貫通穴は、前記第1屈曲領域側の開口と前記第1実装領域側の開口とが、前記第1延在部によって塞がれており、前記第2貫通穴は、前記第2屈曲領域側の開口と前記第2実装領域側の開口とが、前記第2延在部によって塞がれており、さらに、前記第1貫通穴の内部には、前記第1コンデンサが配置され、前記第2貫通穴の内部には、前記第2コンデンサが配置されることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、第1補助部材の第1貫通穴が、第1延在部によって塞がれており、同様に、第2補助部材の第2貫通穴が、第2延在部によって塞がれている。そして、第1コンデンサが第1貫通穴に配置され、第2コンデンサが第2貫通穴に配置されているため、第1のコンデンサが第1延在部によってカバーされるとともに、第2コンデンサが第2延在部によってカバーされるように構成できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体吐出ヘッド、プリント配線板、2つの駆動信号生成手段、及び放熱部材を集約して、これらで構成されるヘッド装置をコンパクトに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリンタ1の概略上面図である。
【図2】キャリッジ2に搭載されるインクジェットヘッド4を含む構成の断面図である。
【図3】図2のI-I線で切断した断面図である。
【図4】フレーム20を含むインクジェットヘッド4の概略上面図である。
【図5】プリント配線板100を構成するCOF101、FPC102及びFPC103を展開したときの概略上面図である。
【図6】プリント配線板100を構成するCOF101、FPC102及びFPC103を折り畳んだときの概略上面図である。
【図7】FPC202の一部拡大上面図である。
【図8】FPC102の一部拡大上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る液体吐出装置の実施形態について説明する。本実施形態は、ノズルから印刷用紙に向けてインクを吐出して、所望の画像や文字等を印刷するプリンタに、本発明を適用したものである。本実施形態のプリンタ1について、図1を参照して説明する。図1は、プリンタ1の概略上面図である。
【0016】
図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ2と、図1の左右方向に延在し、キャリッジ2を左右方向に案内するガイド部材3と、上記のキャリッジ2に搭載されるインクジェットヘッド4(液体吐出ヘッド)と、インクジェットヘッド4にインクを供給するための4本のチューブ5と、これら4本のチューブ5に繋がれ、インクジェットヘッド4に供給されるインクを貯留する4つのカートリッジ6と、を備えている。
【0017】
キャリッジ2は、ガイド部材3に摺動可能に取り付けられており、さらに、無端ベルト(図示省略)とも連結している。無端ベルトは、プリンタ1内に配置されるモーター(図示省略)の駆動軸に取り付けられたプーリ(図示省略)に架けられており、モーターが駆動すると、左右方向に走行する。このとき、無端ベルトと連結するキャリッジ2も、ガイド部材3に案内されて左右方向に移動する。
【0018】
インクジェットヘッド4は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインクを吐出可能な複数のノズル7が形成されており、これら複数のノズル7が形成された下面が印刷用紙Pと対向するように、キャリッジ2に取り付けられている。
【0019】
4本のチューブ5は、合成樹脂などの可撓性を有する材料からなり、これらの一端部がインクジェットヘッド4に接続されており、これらの他端部が4つのカートリッジ6に接続されている。また、4つのカートリッジ6は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインクをそれぞれ貯留しており、4本のチューブを通じてインクジェットヘッド4へインクを供給する。
【0020】
このような構成により、プリンタ1は、印刷用紙Pに印刷を行うときには、印刷用紙Pを搬送機構(図示省略)により前方向に搬送させる動作と、キャリッジ2を左右方向に移動させる動作とを組み合わせて、インクジェットヘッド4の複数のノズル7からインクを吐出して印刷用紙Pに印刷を行う。
【0021】
次に、インクジェットヘッド4について、図2〜図4を用いてさらに詳細を説明する。図2は、キャリッジ2に搭載されるインクジェットヘッド4を含む構成の断面図であり、図3は図2のI-I線で切断した断面図である。また、図4は、フレーム20を含むインクジェットヘッド4の概略上面図である。インクジェットヘッド4は、図2、図3に示すように、複数のノズル7が形成された流路ユニット10と、流路ユニット10のノズル7と反対側の上面に取り付けられたアクチュエータユニット11とからなる。流路ユニット10は、特開2007−125807号公報に開示される流路ユニットと同様に、複数のノズル7と個別に連通する複数の圧力室(図示省略)や、複数の圧力室とから構成されるインク流路(図示省略)を備えている。複数のノズル7は、図1の前後方向に複数並んでノズル列(図示省略)をなしており、これら複数のノズル列が、図1の左右方向に配列されている。また、上記の複数のノズル列は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色毎に、複数列形成されている。さらに、このインク流路は、流路ユニット10の上面に形成されるインク供給口13と連通されており、インク供給口13よりインクが供給される。
【0022】
アクチュエータユニット11は、特開2009−83182号公報に開示されるアクチュエータユニットと同様に、流路ユニット10の上面に開口する複数の圧力室を覆う振動板(図示省略)と、この振動板の流路ユニット10と反対側に積層される圧電層(図示省略)と、振動板と圧電層の間に配置される共通電極と、圧電層の共通電極と反対側の面に形成される複数の個別電極とを備えている。圧電層は、個別電極と共通電極の積層する積層方向に分極が施されている。さらに、複数の個別電極は、流路ユニット10に形成される複数の圧力室にそれぞれ重なるように配置されており、個別電極と共通電極とが挟む圧電層の領域(以下、「活性層」と称する)が各圧力室に対して個別に設けられている。また、図4に示すように、アクチュエータユニット11の上面11aには、複数の個別電極のそれぞれと導通する複数の入力端子12が密集して形成されている。
【0023】
そして、複数の個別電極のうちいずれかに駆動電圧が印加されると、この駆動電圧が印加された個別電極と共通電極との間に電位差が生じ、この個別電極に対応する活性層が、上記の積層方向に延びるとともに積層方向と直交する方向に縮むように変形する。この活性層の変形により振動板が圧力室側に凸変形して、圧力室内のインクに吐出圧が付与される為、ノズル7からインクが吐出される。尚、複数の圧力室のそれぞれに対応する複数の活性層と、これらに対応する複数の個別電極、及び、共通電極による構成が、本発明の「複数の圧力付与手段」の一例である。
【0024】
また、流路ユニット10は、図2に示すように、その上面がフレーム20に接合されており、このフレーム20を介してキャリッジ2に固定されている。フレーム20は、貫通口22、24が形成されており、貫通口22は、インク供給口13を露出させるように開口されており、上記4本のチューブ5と接続されるサブタンク(図示省略)が嵌め込まれる。このサブタンクは、インク供給口13と接続されており、4本のチューブ5からのインクを、インク供給口13へ供給する。また、貫通口24は、アクチュエータユニット11を露出させる程度の大きさである。
【0025】
さらに、アクチュエータユニット11には、アクチュエータユニット11と接続されるプリント配線板100と、このプリント配線板100をアクチュエータユニット11から上方に引き出させ、その姿勢を保持するための保持部材26と、この保持部材26の上方に並んで配置される補助部材40(第1補助部材)と補助部材41(第2補助部材)、及び、ヒートシンク50(放熱部材)が積層されており、フレーム20の貫通口24から上方に飛び出すように配置されている。
【0026】
プリント配線板100は、アクチュエータユニット11と接続されるCOF101と、このCOF101と接続されるFPC102とFPC103とからなる。COF101、FPC102及びFPC103は、可撓性を有する基板で構成されている。また、COF101は、アクチュエータユニット11の上面11aに形成される入力端子12と接続される接続端子110と、補助部材40の上面40aに接触して配置される端子部111と、補助部材41の上面aに接触して配置される端子部112とを備えている。
【0027】
また、COF101は、ドライバIC130(第1駆動信号生成手段)と、ドライバIC131(第2駆動信号生成手段)とが実装されている。これら2つのドライバIC130とドライバIC131とは、アクチュエータユニット11の複数の入力端子12に対して、これら複数の入力端子12と電気的に接続される複数の個別電極のそれぞれに、駆動電圧を印加するための駆動信号を生成する。そして、上記の流路ユニット10が、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのノズル列を、各色毎に複数備える場合、ドライバIC130は、平面視で、各色ノズル列毎に左から数えて奇数列のノズル列に対し、各ノズル列に属するノズル7からインクを吐出させるための駆動信号を生成する。それに対し、ドライバIC131は、上記の流路ユニット10の各ノズル列毎に左から数えて偶数列に対し、各ノズル列に属するノズル7からインクを吐出させるための駆動信号を生成する。上記の構成により、アクチュエータユニット11に形成される複数の入力端子12に対して、ドライバIC130とドライバIC131の2つのドライバICで分担するように構成できる。
【0028】
また、FPC102とFPC103はそれぞれ、端子部111と接続される端子部120と、端子部112と接続される端子部121とを備えている。端子部120は、補助部材40の上面40a側に配置されており、端子部121は、補助部材41の上面41a側に配置されている。さらに、FPC102とFPC103とは、補助部材40の下面40b側と、補助部材41の下面41b側とに、折り返されて配置されている。また、FPC40は、補助部材40の上面40aと対向する面に、コンデンサ140が実装されており、同様に、FPC41は、補助部材41の上面41aと対向する面に、コンデンサ141が実装されている。
【0029】
また、FPC102は、後述にて詳しく説明するが、L字状をなしており、図3に示すように、FPC102は、補助部材40の下面40bに沿って図中左側に延在し、図中上側に折り曲げられて配置されている。同様に、FPC103も、L字状をなしており、補助部材41の下面41bに沿って図中右側に延在し、さらに、図中上側に折り曲げられて配置されている。
【0030】
補助部材40は、その上面40aから下面40bに貫通する貫通穴42が形成されており、同様に、補助部材41は、その上面41aから下面41bに貫通する貫通穴44が形成されている。そして、これらの貫通穴42と貫通穴44とは、FPC102とFPC103とによって塞がれており、さらに、貫通穴42と貫通穴44の内部に、コンデンサ140とコンデンサ141がそれぞれ配置されている。貫通穴42と貫通穴44の内部には、シリコン等の充填材が充填されている。
【0031】
保持部材26は、アクチュエータユニット11の一部と接触する基部27と、この基部27から上方に立設するフック28と、同様に基部27から上方に立設する案内部29とを備えている。基部27は、アクチュエータユニット11とともにプリント配線板30を挟むように配置されており、上面には、弾性体51と弾性体52とが配置されている。さらに、側面にはCOF101が固定されている。フック28は、ヒートシンク50の上面に係合するように構成されている。案内部29は、プリント配線板100を上方に案内するように構成されている。上記の構成によれば、弾性体51と弾性体52とが、保持部材26の基部27と、ヒートシンク50、補助部材40及び補助部材41とに挟まれて収縮されており、弾性体51と弾性体52の復元力が、補助部材40と補助部材41とに作用する。これにより、補助部材40の上面40a側に配置されるコンデンサ140と、補助部材41の上面41a側に配置されるコンデンサ141とを、ヒートシンク50側に付勢させることができる為、コンデンサ140とコンデンサ141とをヒートシンク50に確実に接触させることができる。その為、ヒートシンク50は、ドライバIC130とドライバIC131から発生する熱を放熱することができる。
【0032】
上記の構成によれば、インクジェットヘッド4のアクチュエータユニット11の占める領域内に、ドライバIC130とドライバIC131を互いに近接させて配置させることができるとともに、さらに、ヒートシンク50もアクチュエータユニット11の占める範囲内に配置させてドライバIC130とドライバIC131とを接触させている。これにより、ドライバICを2つ備えた部品点数が多いにも関わらず、インクジェットヘッド4と、COF101、FPC102及びFPC103と、ドライバIC102、ドライバIC103、及び、ヒートシンク50を集約して配置することができる為、これらをコンパクトに配置することができる。
【0033】
また、FPC102が、補助部材40の貫通穴42を塞ぐように配置されており、同様に、FPC103が、補助部材41の貫通穴43を塞ぐように配置されている。そして、貫通穴42の内部には、コンデンサ140が配置されるように構成されており、同様に、貫通穴43の内部には、コンデンサ141が配置されるように構成される。これにより、コンデンサ140とコンデンサ141を、FPC102とFPC103により確実にカバーすることができる。
【0034】
次に、プリント配線板100を構成するCOF101、FPC102及びFPC103の構成について図5、図6を参照してさらに詳しく説明する。図5は、プリント配線板100を構成するCOF101、FPC102及びFPC103を展開したときの概略上面図である。また、図6は、プリント配線板100を構成するCOF101、FPC102及びFPC103を折り畳んだときの概略上面図である。
【0035】
COF101は、図5に示すように、長尺形状を有しており、接続端子110が形成された中央領域部101A(接続領域部)を備えており、この中央領域部101Aの左側でCOF101の一端部には端子部111が形成され、COF101の他端部には端子部112が形成されている。さらに、複数の接続端子110のうちの一部と端子部111とを導通させる配線114と、複数の接続端子110のうちの残りと端子部112とを導通させる配線115とが、COF101には形成されている。
【0036】
また、COF101は、端子部111と中央領域部101Aとの間に実装領域101Bがあり、その実装領域101BにはドライバIC130が実装されている。同様に、端子部112と中央領域部101Aとの間に実装領域101Cがあり、その実装領域101CにはドライバIC131が実装されている。ドライバIC130と各色ノズル列の奇数列の入力端子12とは、複数の配線114を通じて接続されており、ドライバIC131と各色ノズル列の偶数列の入力端子12とは、複数の配線115を通じて接続されている。複数の配線114は、実装領域101Bと中央領域部101Aとの間に形成されるのに対し、複数の配線115は、実装領域101Cと中央領域部101Aとの間に形成される。これにより、複数の配線114と複数の配線115とを、別々の領域に分散させて形成することができる。その為、複数の配線114と複数の配線115が同じ領域に形成される場合に比べると、配線が密集して配置されるのを避けることができる。
【0037】
FPC102とFPC103はそれぞれ、端子部122と、この端子部122と端子部120とを導通させる配線125が形成されており、FPC103は、端子部123と、この端子部123と端子部121とを導通させる配線126とが形成されている。さらに、端子部120と端子部122との間には屈曲領域102A(第1屈曲領域)があり、この屈曲領域102Aにおいて、複数の配線125が約90°曲がって配置されている。同様に、端子部121と端子部123との間には屈曲領域103A(第2屈曲領域)があり、この屈曲領域103Aにおいて、複数の配線125が約90°曲がって配置されている。そして、COF101とFPC102が接続されたときに、COF101の中央領域部101Aから端子部111までの部分と、端子部111と接続されるFPC102とを含む部分が、平面視で、L字状をなすように配置されている。また、COF101とFPC103が接続されたときに、COF101の中央領域部101Aから端子部112までの部分と、端子部112と接続されるFPC103とを含む部分が、平面視で、L字状をなすように配置されている。
【0038】
また、FPC102とFPC103とは、ドライバIC130とプリンタ100の本体電源(図示省略)とを電気的に接続するための給電用配線127aと、ドライバIC131とプリンタ100の本体電源(図示省略)とを電気的に接続するための給電用配線127bと、をそれぞれ備えている。さらに、FPC102とFPC103とは、ドライバIC130とグランド電位とを繋ぐグランド配線127bと、ドライバIC131とグランド電位とを繋ぐグランド配線128bと、をそれぞれ有している。
【0039】
また、FPC102とFPC103には、コンデンサ140と、コンデンサ141とが実装されている。コンデンサ140は、給電用配線127aとグランド配線127bとに接続されており、コンデンサ141は、給電用配線128aとグランド配線128bとに接続されている。
【0040】
FPC102は、屈曲領域102Aには補助部材40が取り付けられており、同様に、FPC103は、屈曲領域103Aには補助部材41が取り付けられている。また、FPC102は、屈曲領域102AとドライバIC130との間の折り曲げ線150に沿って折り曲げられており、FPC103も同様に、屈曲領域103AとドライバIC131との間の折り曲げ線151で折り曲げられている。また、COF101は、ドライバIC130とドライバIC131とが配置される領域と、複数の接続端子110が形成される中央領域部101Aとの間の折り曲げ線152と折り曲げ線153に沿って、それぞれ折り曲げられている。また、FPC102は、折り曲げ線154に沿って折り曲げられて、上方に引き出されており、同様に、FPC103は、折り曲げ線155に沿って折り曲げられて、上方に引き出されている。そして、図6に示すように、COF101の中央領域部101Aのうち中心線Cの左側の範囲において、インクジェットヘッド4から上方に向かう方向に、屈曲領域102A、補助部材40、COF101の実装領域101B、ドライバIC130の順に重なるように折り曲げられている。同様に、COF101の中央領域部101Aのうち中心線Cの右側の範囲において、インクジェットヘッド4から上方に向かう方向に、屈曲領域103A、補助部材41、COF101の実装領域101C、ドライバIC131の順に重なるように折り曲げられている。尚、本実施形態において、COF101の中央領域部101Aから端子部111までの部分と、FPC102とを含む部分が、本発明の「第1延出部」の一例であり、同様に、COF101の中央領域部101Aから端子部112までの部分と、FPC103とを含む部分が、本発明の「第2延出部」の一例である。
【0041】
このように、補助部材40が、屈曲領域102Aと実装領域101Bとの間に配置され、補助部材41が、屈曲領域102Bと実装領域101Cとの間に配置されているので、屈曲領域102Aと実装領域101B、および、屈曲領域103Aと実装領域101Cが直接接触するのを避けて配置することができる。また、補助部材40と補助部材41とに沿って配置させることができる為、COF101、FPC102及びFPC103を折り曲げる際に、補助部材40と補助部材41とを目印にして折り曲げることができる。その為、上記のように、折り曲げ部分を複数有する配線の引き回しにも関わらず、COF101、FPC102及びFPC103に折癖を付けることなく、確実に所望の形状となるように配置させることができる。また、COF101、FPC102及びFPC103に折癖を付ける必要が無いため、これらに形成される配線114、115、125、及び126が折れ曲がって、これらの配線に応力が加わることを避けることができる。これにより、配線114、115、125及び126が断線するのを防ぐことができる。
【0042】
ところで、高画質の画像を印刷したりベタ印刷をしたりする場合には、複数のノズル7のうちほぼ全てのノズルから同時にインクが吐出されることがあり、アクチュエータユニット11の複数の個別電極のほぼ全てに駆動電圧が印加される。そして、給電用配線127aと給電用配線128aには一度に大きな電流が流れるが、このとき、ドライバIC130とドライバIC131自身の電気抵抗により、ドライバIC130とドライバIC131とに印加される電圧が下がる電圧降下の現象が発生する。この電圧降下により下がる電圧の大きさは、電流の大きさに比例するため、ドライバIC130とドライバIC131とに供給される電流が大きいと、電圧降下により下がる電圧が大きくなる。これにより、アクチュエータユニット11の複数の個別電極に印加される駆動電圧が小さくなり、ノズル7からインクを吐出できるだけの吐出圧を圧力室に付与することができなくなる。しかしながら、FPC102とFPC103とには、コンデンサ140とコンデンサ141とが実装されている為、ドライバIC130とドライバIC131とに大きな電流が流れようとすると、グランド配線127bと128bとに放電して、ドライバIC130とドライバIC131とに電流が流れないようにすることができる。これにより、ドライバIC130とドライバIC131とに大きな電流が流れるのを抑え、電圧降下を防ぐことができる。
【0043】
ところで、本実施形態では、FPC102は、図2に示すように、屈曲領域102Aが補助部材40の上面40aから下面40b側に折り曲げられて配置されている。そもそも、本実施形態のような、ドライバIC130とドライバIC131とが互いに近接して配置させるレイアウトでは、屈曲領域102Aを補助部材40の下面40b側に折り曲げずに補助部材40の上面40aに沿ってまっすぐ延ばして配置すると、FPC102がドライバIC131と干渉してしまう。その為、屈曲領域102Aを補助部材40の下面40b側に折り曲げて、FPC102とドライバIC131との干渉を防いでいる。
【0044】
ここで、上記のようなFPC102の配置をする場合、FPC102とドライバIC131が干渉するのを避けるのであれば、例えば、図7に示すような、FPC202を用いて構成することができる。このFPC202は、ドライバIC230からFPC202の左端までの領域229が小さく、本実施形態のような配置をした場合に、補助部材40の上面40aから領域229がはみ出さないように配置できる。しかしながら、複数の配線225を領域229に配置する場合、平面視で、図8に示すFPC102の領域129に比べて配線を配置する面積が小さい為、複数の配線225を複数の配線125と同じ数だけ配置しようとすると、各配線の間隔を小さくする必要がある。特に、領域229では、複数の配線225は約90°曲がって形成されている為、各配線の間隔を小さくして製造するのが非常に難しい。従って、本実施形態では、FPC102を用いて、FPC102を折り曲げるという手間を必要とするが、複数の配線125の製造のし易さを優先した構成を採用している。
【0045】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0046】
(変更形態1)
本実施形態においては、FPC102とFPC103には、補助部材40と補助部材41とが取り付けられているものを一例として挙げたが、本発明においては、補助部材40と補助部材41を取り付ける必要はない。これにより、補助部材40と補助部材41が配置されない分、部品点数を減らして簡単な構成を実現することができる。
【0047】
(変更形態2)
また、本実施形態においては、コンデンサ140とコンデンサ141を保護するための充填材を、補助部材40の貫通穴42と補助部材41の貫通穴43とに充填していたが、例えば、充填材を充填しなくてもよい。これにより、貫通穴42と貫通穴43とに充填材を充填する工程が省ける分、製造時の工程数を減らすことができる。
【0048】
(変更形態3)
また、本実施形態においては、プリント配線板100は、COF101、FPC102とFPC103の3枚で構成されていたが、例えば、COF101、FPC102とFPC103が一体で成型されたものであってもよい。
【0049】
(その他の変更形態)
さらに、本実施形態においては、キャリッジ2が左右方向に移動しながら、インクジェットヘッド4の複数のノズル7からインクを印刷用紙Pに吐出して印刷を行うシリアル型のヘッドを有するプリンタを例示したが、ライン型のヘッドを有するプリンタにおいても本発明を適用することができる。
【0050】
また、インクを印刷用紙に吐出して印刷を行うプリンタに限られず、例えば、配線基板の配線パターンを形成するために、導電性液体を吐出することが可能な液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置においても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
4 インクジェットヘッド
7 ノズル
11 アクチュエータユニット
12 入力端子
40、41 補助部材
42、43 貫通穴
50 ヒートシンク
100 プリント配線板
101 COF
101A 中央領域部
102、103 FPC
102A、103A 屈曲領域
110 接続端子
140、141 ドライバIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルと、これら複数のノズルから液体を吐出させるための吐出圧を前記複数のノズル内の液体に対して個別に付与する複数の圧力付与手段と、を有する液体吐出ヘッドと、
外部から供給された液体吐出用のデータに基づいて、前記複数の圧力付与手段のうちの一部のためにそれらを駆動する駆動信号を生成する第1駆動信号生成手段と、
同様に、外部から供給された液体吐出用のデータに基づいて、前記複数の圧力付与手段のうちの前記一部を除く残りのためにそれらを駆動する駆動信号を生成する第2駆動信号生成手段と、
前記第1および第2駆動信号生成手段が実装されるとともに、これらによって生成された駆動信号を前記複数の圧力付与手段に供給するためのプリント配線板と、
前記第1および第2駆動信号生成手段から発生する熱を放熱するための放熱部材と、を備えた液体吐出装置であって、
前記液体吐出ヘッドは、
その表面に、前記複数の圧力付与手段のそれぞれに前記駆動信号を入力するための複数の入力端子が密集して形成されており、
前記プリント配線板は、
前記複数の入力端子とそれぞれ電気的に接続される複数の接続端子が形成された接続領域部と、
前記接続領域部から互いに反対方向に延出するとともに、それぞれL字状をなす第1および第2延出部と、を有し、
前記第1および第2延出部が、それらのL字状の角部分である第1および第2屈曲領域に対して、それぞれ前記接続領域部側に隣接して設けられた、前記第1および第2駆動信号生成手段が実装される第1および第2実装領域を有して構成されるとともに、
前記第1および第2実装領域に前記第1および第2駆動信号生成手段が実装された状態で、平面視で前記接続領域部が前記液体吐出ヘッドの占める範囲内に収まるように、前記接続領域部の前記複数の端子が前記液体吐出ヘッドの前記複数の入力端子に接続されており、
さらに、前記プリント配線板は、
前記第1および第2屈曲領域に対して前記第1および第2実装領域がそれぞれ重なるように、前記第1屈曲領域と前記第1実装領域の間、および、前記第2屈曲領域と前記第2実装領域の間がそれぞれ折り曲げられるとともに、
平面視で、前記接続領域部の半分の範囲に対して、前記第1屈曲領域、前記第1実装領域、前記第1駆動信号生成手段がこの順番で重なるように、前記接続領域部と前記第1実装領域との間の部分が折り曲げられ、同様に、平面視で、前記接続領域部の残りの半分の範囲に対して、前記第2屈曲領域、前記第2実装領域、前記第2駆動信号生成手段がこの順番で重なるように、前記接続領域部と前記第2実装領域との間の部分が折り曲げられ、
前記放熱部材は、
前記接続領域部とともに前記第1および第2駆動信号生成手段を挟む側から、前記第1および第2駆動信号生成手段に対して接触するように配置される
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1および第2屈曲領域には、第1および第2補助部材がそれぞれ取り付けられており、
平面視で、前記第1補助部材が、前記第1屈曲領域と前記第1実装領域との間に重なって配置されており、同様に、平面視で、前記第2補助部材が、前記第2屈曲領域と前記第2実装領域との間に重なって配置されることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記プリント配線板は、前記第1および第2屈曲領域には、前記第1および第2駆動信号生成手段が動作するために必要な給電量以上が供給されるのを抑えるための第1および第2コンデンサが、それぞれ実装されており、
前記第1補助部材は、前記第1屈曲領域側と前記第1実装領域側とに貫通する第1貫通穴が形成され、前記第2補助部材は、前記第2屈曲領域側と前記第2実装領域側とに貫通する第2貫通穴が形成され、
前記第1貫通穴は、前記第1屈曲領域側の開口と前記第1実装領域側の開口とが、前記第1延在部によって塞がれており、前記第2貫通穴は、前記第2屈曲領域側の開口と前記第2実装領域側の開口とが、前記第2延在部によって塞がれており、
さらに、前記第1貫通穴の内部には、前記第1コンデンサが配置され、前記第2貫通穴の内部には、前記第2コンデンサが配置されることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−11357(P2011−11357A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155049(P2009−155049)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】