液体吐出装置
【課題】液体カートリッジのセンサの異常に伴う問題を回避する。
【解決手段】カートリッジは、インクを収容するリザーバと、リザーバに連通した流路と、流路内で移動可能であり且つ当該流路内のインクの流量を調整するバルブと、センサユニット(バルブを検知する磁気センサとしてのホール素子、及び、磁場を発生させる磁石からなるユニット)とを有する。プリンタのコントローラは、カートリッジがプリンタに装着される際、バルブが移動を開始する前に、カートリッジのセンサユニットの異常の有無を判断する(S4)。
【解決手段】カートリッジは、インクを収容するリザーバと、リザーバに連通した流路と、流路内で移動可能であり且つ当該流路内のインクの流量を調整するバルブと、センサユニット(バルブを検知する磁気センサとしてのホール素子、及び、磁場を発生させる磁石からなるユニット)とを有する。プリンタのコントローラは、カートリッジがプリンタに装着される際、バルブが移動を開始する前に、カートリッジのセンサユニットの異常の有無を判断する(S4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置は、液体が収容された液体カートリッジを着脱可能であり、装着された液体カートリッジから供給される液体を吐出する吐出部を有する。
液体カートリッジにおいて、当該液体カートリッジの液体吐出装置への装着の際に移動する移動体をセンサで検知する技術が知られている。例えば特許文献1によると、移動体(回転子8)の回転量をセンサ(磁気センサ)で検知し、回転量に基づいてカートリッジ内のインク残量が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−286123号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにセンサを用いる構成において、当該センサに異常がある場合、移動体を正確に検知することができず、種々の問題(液体吐出装置において、吐出不良が生じたり、所望のタイミングで吐出動作に移行できない等の問題)が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、液体カートリッジのセンサの異常に伴う上記のような問題を回避することができる液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の観点によると、液体が収容された液体カートリッジを着脱可能な液体吐出装置であって、前記液体カートリッジは、当該液体カートリッジの前記液体吐出装置への装着の際に移動する移動体と、前記移動体を検知するセンサと、を有し、前記液体吐出装置は、前記液体カートリッジが装着される装着部と、前記装着部に装着された前記液体カートリッジから供給される液体を吐出する吐出部と、前記センサの異常の有無を判断する異常判断手段と、を備え、前記異常判断手段は、前記液体カートリッジが前記装着部に装着され始めた後、且つ、前記移動体が前記移動を開始する前に、前記判断を行うことを特徴とする、液体吐出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、移動体が移動を開始する前にセンサの異常の有無を判断することで、センサの異常に伴う問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタを示す外観斜視図である。
【図2】プリンタの内部を示す概略側面図である。
【図3】プリンタに着脱可能なインクカートリッジを示す斜視図である。
【図4】カートリッジの内部を示す概略構成図である。
【図5】図4に示す領域Vの部分断面図であり、(a)はプリンタの中空針が栓に挿入されておらず且つバルブが閉状態にあるとき、(b)はプリンタの中空針が栓に挿入され且つバルブが開状態にあるときの図である。
【図6】図5(a)に示すVI−VI線に沿った部分断面図である。
【図7】カートリッジがプリンタに装着される過程を示す概略部分断面図である。
【図8】カートリッジ及びプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】カートリッジがプリンタに装着される際にプリンタのコントローラが実行する制御内容を示すフロー図である。
【図10】バルブの移動量とカートリッジのホール素子からの出力値との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態に係るインクジェット式プリンタにカートリッジが装着される過程を示す概略図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るインクジェット式プリンタのコントローラが実行する、カートリッジのセンサの異常判断ステップのサブルーチンを示すフロー図である。
【図13】光センサへの入力値と光センサからの出力値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
先ず、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0011】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの正面(図1の紙面左手前側の面)には、上から順に、3つの開口10d,10b,10cが形成されている。開口10bは給紙ユニット1b、開口10cはインクユニット1cをそれぞれ筐体1a内部に挿入するためのものである。開口10dには、下端の水平軸を支点として開閉可能な扉1dが嵌め込まれている。扉1dは、筐体1aの主走査方向(筐体1aの正面と直交する方向)に関して、搬送ユニット21(図2参照)と対向配置されている。
【0012】
次いで、図2を参照し、プリンタ1の内部構成について説明する。
【0013】
筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド2、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、及び、プリンタ1各部の動作を制御するコントローラ100が配置されている。空間B,Cにはそれぞれ、給紙ユニット1b及びインクユニット1cが配置される。プリンタ1の内部には、給紙ユニット1bから排紙部31に向けて、図2に示す太矢印に沿って、用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
【0014】
コントローラ100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加え、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、I/F(Interface)等を有する。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAMには、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。コントローラ100は、I/Fを介して、カートリッジ40のセンサユニット70とのデータ送受信、外部装置(プリンタ1に接続されたPC等)とのデータ送受信等を行う。
【0015】
給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ23が、筐体1aに対して主走査方向に着脱可能となっている。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収容可能である。給紙ローラ25は、コントローラ100による制御の下、給紙モータ125(図8参照)の駆動により回転し、給紙トレイ23の最も上方にある用紙Pを送り出す。給紙ローラ25によって送り出された用紙Pは、ガイド27a,27bによりガイドされ且つ送りローラ対26によって挟持されつつ搬送ユニット21へと送られる。
【0016】
搬送ユニット21は、2つのベルトローラ6,7、及び、両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8を有する。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、コントローラ100による制御の下、その軸に接続された搬送モータ127(図8参照)の駆動により回転し、図2中時計回りに回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って、図2中時計回りに回転する。
【0017】
搬送ベルト8のループ内には、4つのヘッド2と対向するように、直方体形状のプラテン19が配置されている。搬送ベルト8の上側ループは、搬送ベルト8の外周面8aが4つのヘッド2の下面(インクを吐出する吐出口が多数形成された吐出面)2aと所定距離離隔しつつ下面2aと平行に延在するよう、内周面側からプラテン19により支持されている。
【0018】
搬送ベルト8の外周面8aには、弱粘着性のシリコン層が形成されている。給紙ユニット1bから搬送ユニット21へと送られてきた用紙Pは、押さえローラ4によって搬送ベルト8の外周面8aに押え付けられた後、粘着力によって外周面8aに保持されつつ、黒塗り矢印に沿って副走査方向に搬送されていく。
【0019】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向と平行な方向である。主走査方向とは、副走査方向に直交し且つ水平面に平行な方向である。
【0020】
用紙Pが4つのヘッド2の直ぐ下方を通過する際に、コントローラ100による制御の下、各ヘッド2が駆動し、各ヘッド2の下面2aから用紙Pの上面に向けて各色のインクが順に吐出されることで、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。そして用紙Pは、剥離プレート5によって搬送ベルト8の外周面8aから剥離され、ガイド29a,29bによりガイドされ且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ上方に搬送され、筐体1a上部に形成された開口30から排紙部31へと排出される。各送りローラ対28の一方のローラは、コントローラ100による制御の下、送りモータ128(図8参照)の駆動により回転する。
【0021】
ヘッド2は、主走査方向(図1の紙面に直交する方向)に長尺なライン式であり、略直方体の外形形状を有する。4つのヘッド2は、副走査方向に所定ピッチで並び、フレーム3を介して筐体1aに支持されている。各ヘッド2において、上面には、可撓性チューブが取り付けられるジョイントが設けられ、下面2aには、多数の吐出口が形成され、内部には、チューブ及びジョイントを介して対応するインクカートリッジ40から供給されたインクが吐出口に至るまでのインク流路が形成されている。
【0022】
インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、及び、トレイ35内に並んで配置された4つのインクカートリッジ40を有する。図2中最も左方のカートリッジ40は、ブラックのインクを貯留しており、残り3つのカートリッジ40よりも、副走査方向のサイズ及びインク容量が大きい。残り3つのカートリッジ40は、それぞれマゼンタ、シアン、イエローのインクを貯留しており、副走査方向のサイズ及びインク容量が同じである。各カートリッジ40に貯留されたインクは、チューブ及びジョイントを介して、対応するヘッド2に供給される。
【0023】
トレイ35は、内部にカートリッジ40が配置された状態で、筐体1aに対して主走査方向に着脱可能である。したがって、プリンタ1のユーザは、トレイ35を筐体1aから取り出した状態で、トレイ35内の4つのカートリッジ40を選択的に交換することができる。
【0024】
次いで、図3〜図6を参照し、カートリッジ40の構成について説明する。なお、トレイ35内に配置される4つのカートリッジ40は、上述のようにブラックインクのカートリッジが他の色のカートリッジよりも副走査方向のサイズ及びインク容量が大きいことを除き、いずれも同じ構成である。
【0025】
カートリッジ40は、直方体形状の筐体41(図3及び図4参照)、筐体41の内部に配置されたリザーバ42(図4参照)、リザーバ42に収容されたインクを外部(ヘッド2)に排出するための排出路43a(図5参照)を画定する排出管43、排出路43aに設けられた栓50及びバルブ60(図5参照)、センサユニット70(図5参照)、並びに、接点142及び電力入力部147(図3、図4及び図8参照)を有する。
【0026】
筐体41は、図4に示すように、内部に2つの部屋41a,41bが形成されるように区画されている。右方の部屋41aにリザーバ42、他方の部屋41bに排出管43がそれぞれ配置されている。
【0027】
リザーバ42は、内部にインクを収容するための袋状の部材であり、その開口部に排出管43の基端が接続されている。
【0028】
排出管43は、図4に示すように、先端が筐体41外に突出している。当該先端には、排出路43aの出口を塞ぐように、ゴム等の弾性材料からなる栓50が圧縮状態で設けられている(図5参照)。当該先端及び栓50の外側にはキャップ46が設けられている。キャップ46の中央には開口46aが形成されており、開口46aを介して栓50の先端面が露出している。
【0029】
バルブ60は、図5に示すように、排出管43内に配置されており、Oリング61、弁本体62、及びコイルバネ63を有する。
【0030】
弁本体62は、図5及び図6に示すように主走査方向に軸を有する円柱形状の、磁性体である。
図6に示すように、排出管43における弁本体62が配置された部分は、上壁及び下壁が平坦であり、主走査方向と直交する断面が副走査方向に細長い、円筒状である。排出管43の副走査方向両側の側壁の内面にはそれぞれ、副走査方向に沿って内側に突出する突起43pが形成されている。各突起43pは、弁本体62が移動可能な範囲に亘って、主走査方向に延在している。弁本体62は、排出管43の突起43p及び上下壁に挟持され、断面視において排出路43aの中央で位置決めされている。弁本体62と排出管43の間には、弁本体62と排出管43の突起43p及び上下壁との当接部分を除く部分に、流路が確保されている。
【0031】
Oリング61は、ゴム等の弾性材料からからなり、弁本体62の正面(栓50に対向する面)に固定されている。コイルバネ63は、一端が排出管43の基端に固定されており、他端が弁本体62の背面に接触し、弁本体62をOリング61に向けて常に付勢している。
【0032】
図5(a)に示すようにバルブ60が排出路43aを閉じる閉状態のとき、Oリング61は排出管43の縮径部43xの壁に接触し、縮径部43xにおける開口43yが封止されている。これにより、排出路43aの基端から縮径部43xまでの空間と、縮径部43xから栓50までの空間との連通が遮断され、排出路43aを介したリザーバ42と外部との連通が遮断されている。このときOリング61は、コイルバネ63の付勢力によって、弾性変形している。
【0033】
センサユニット70は、ホール素子71及び磁石72を含む。
磁石72は、磁場を発生させるものである。
ホール素子71は、磁気センサであって、入力された磁場を電気信号に変換し、当該電気信号を接点142を介してコントローラ100に出力する。本実施形態において、ホール素子71は、弁本体62の移動に伴って変化する磁場の大きさに比例した電圧値を示す信号を、コントローラ100に出力する。
ホール素子71は、磁石72と弁本体62とによって作られる磁場が入力される位置に配置されている(図5(a)参照)。
【0034】
ホール素子71及び磁石72は、図5(a)に示すように、それぞれ排出管43の上壁及び下壁に固定され、鉛直方向に互いに対向している。
図5(a)に示すようにバルブ60が閉状態のとき、ホール素子71及び磁石72は、弁本体62を挟んで対向している(即ち、弁本体62は、ホール素子71と磁石72との間の位置にある)。このとき、磁石72が発生した磁場が、弁本体62を介してホール素子71に効率的に届く。したがって、ホール素子71が検知する磁場は大きく、ホール素子71は高い電圧値を示す信号を出力する。
バルブ60が図5(a)に示す閉状態から図5(b)に示す排出路43aを開く開状態へと移行するときに、弁本体62が鉛直方向に関してホール素子71及び磁石72と対向しない位置(即ち、ホール素子71と磁石72との間ではない位置)に移動するのに伴い、ホール素子71が検知する磁場が小さくなり、ホール素子71から出力される信号が示す電圧値が低くなる。
コントローラ100は、ホール素子71から受信した信号が示す電圧値に基づいて、バルブ60が開状態か閉状態かを判断する。
【0035】
次いで、図5〜図10を参照し、カートリッジ40がプリンタ1に装着される過程について説明する。図8では、電力供給線を太線で示し、信号線を細線で示している。
【0036】
カートリッジ40がプリンタ1に装着される前、図5(a)に示すように、栓50には中空針153が挿入されておらず、バルブ60は閉状態に維持されている。この段階では、図8に示すような接点142及び接点152間の電気的接続並びに電力入力部147及び電力出力部157間の電気的接続は、未だなされていない。したがって、この段階において、カートリッジ40及びプリンタ1間での信号の送受信は不能であり、且つ、センサユニット70には電力が供給されていない。
【0037】
カートリッジ装着の際は、プリンタ1のユーザが、トレイ35(図2参照)内にカートリッジ40を配置した状態で、トレイ35を主走査方向(図7(a)の白抜き矢印方向)に移動させて筐体1aの空間Cに挿入する。
【0038】
筺体1aにおける空間Cを画定する底壁には、図7に示すように、ストッパ174が設けられている。ストッパ174は、移動機構175(図8参照)の駆動により空間Cにおいて鉛直方向に移動可能であり、当該移動によって、カートリッジ40と接触してカートリッジ40を空間Cの第1位置で停止させる停止位置(図7(b)参照)と、当該停止を解除する解除位置(図7(c)参照)とを選択的に取り得る。
【0039】
筺体1aにおける空間Cを画定する壁には、図7に示すように、ホール素子171及び磁石172を含むセンサユニット170が設けられている。ホール素子171及び磁石172はそれぞれ、筺体1aにおける空間Cを画定する上下壁に設けられている。
ホール素子171及び磁石172は、ストッパ174よりも入口C1に近い位置において、空間Cを挟んで鉛直方向に互いに対向している。ホール素子171は、入力された磁場を電気信号に変換し、電気信号(磁場の大きさに比例した電圧値を示す信号)をコントローラ100に出力する。
【0040】
筐体1aにおける空間Cを画定する壁(入口C1と反対側の壁)には、中空針153が固定されている。中空針153は、ヘッド2のジョイントに取り付けられたチューブと連通している。
【0041】
コントローラ100は、図9に示すように、先ず、カートリッジ40が、装着部である空間Cの入口C1に差し掛かったか否かを判断する(S1)。このときコントローラ100は、例えば入口C1に設けられたセンサからの検出信号に基づいて、S1の判断を行う。
【0042】
カートリッジ40が入口C1に差し掛かった場合(S1:YES)、コントローラ100は、センサユニット170(ホール素子171及び磁石172)に異常があるか否かを判断する(S2)。
このときコントローラ100は、例えば磁石172が電磁石である場合、磁石172に流す電流値を調整して磁場の大きさを変化させると共に、ホール素子171からの出力値を計測する(図7(a)参照)。コントローラ100は、磁場の大きさに対するホール素子171からの出力値が所定範囲内である場合は異常なし、所定範囲外である場合は異常ありと判断する。或いは、磁石172が永久磁石である場合、コントローラ100は、ホール素子171からの出力がある場合は異常なし、ホール素子171からの出力がない場合は異常ありと判断する。
コントローラ100は、ホール素子171及び磁石172のいずれか一方に異常がある場合、異常あり(S2:YES)と判断する。
【0043】
異常ありの場合(S2:YES)、コントローラ100は、プリンタ1のディスプレイへの画像表示や音声出力等によりエラー報知を行い(S10)、さらにプリンタ1の記録動作が禁止されるようプリンタ1の各部の動作を停止させる(S11)。
【0044】
異常なしの場合(S2:NO)、コントローラ100は、カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続したか否かを判断する(S3)。
【0045】
カートリッジ40は、入口C1に差し掛かった後、ストッパ174に接触する第1位置(図7(b)に示す位置)まで挿入され、この位置で停止する。カートリッジ40が第1位置に至るタイミングと略同じタイミングで、カートリッジ40の接点142とプリンタ1の接点152、及び、カートリッジ40の電力入力部147とプリンタ1の電力出力部157が、それぞれ接触する。これにより、カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続され、電源158から電力出力部157及び電力入力部147を介してセンサユニット70に電力が供給されると共に、カートリッジ40及びプリンタ1間の信号の送受信が可能になる(図8参照)。
接点152は、コントローラ100のI/Fとして機能する。電源158は、筐体1a内に設けられており、プリンタ1の各部に電力を供給する。
【0046】
接点152及び電力出力部157は、筺体1aにおける空間Cを画定する壁(入口C1と反対側の壁)において、第1位置にある各カートリッジ40の接点142及び電力入力部147のそれぞれに対向する位置に、バネ等で入口C1側に付勢された状態で、設けられている。接点152及び電力出力部157は、カートリッジ40が第1位置に至った時に接点142及び電力入力部147に接触し、その後カートリッジ40が第1位置よりも装着方向下流側に移動する際には、カートリッジ40に押され、バネの付勢力に抗して入口C1とは反対側に移動する。
【0047】
なお、中空針153、接点152、電力出力部157、ホール素子171、及び磁石172は、カートリッジ40毎に設けられている。
【0048】
カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続したと判断した場合(S3:YES)、コントローラ100は、カートリッジ40のセンサユニット70(ホール素子71及び磁石72)に異常があるか否かを判断する(S4)。
このときコントローラ100は、ホール素子71については、例えば磁石172が電磁石である場合、磁石172に流す電流値を調整して磁場の大きさを変化させると共に、ホール素子71からの出力値を計測する(図7(b)参照)。コントローラ100は、磁場の大きさに対するホール素子71からの出力値が所定範囲内である場合は異常なし、所定範囲外である場合は異常ありと判断する。或いは、磁石172が永久磁石である場合、コントローラ100は、ホール素子71からの出力がある場合は異常なし、ホール素子71からの出力がない場合は異常ありと判断する。
またコントローラ100は、磁石72については、例えば磁石72が電磁石である場合、磁石72に流す電流値を調整して磁場の大きさを変化させると共に、ホール素子171からの出力値を計測する。コントローラ100は、磁場の大きさに対するホール素子171からの出力値が所定範囲内である場合は異常なし、所定範囲外である場合は異常ありと判断する。或いは、磁石72が永久磁石である場合、コントローラ100は、ホール素子171からの出力がある場合は異常なし、ホール素子171からの出力がない場合は異常ありと判断する。
コントローラ100は、ホール素子71及び磁石72のいずれか一方に異常がある場合、異常あり(S4:YES)と判断する。
【0049】
S4の判断が行われるとき、図7(b)に示すように、磁石172とホール素子71、磁石72と及びホール素子171が、それぞれ鉛直方向に対向し、且つ、これらは鉛直方向に沿って一列に並んでいる。
【0050】
異常ありの場合(S4:YES)、コントローラ100は、エラー報知(S10)及び停止(S11)を行う。
【0051】
異常なしの場合(S4:NO)、コントローラ100は、移動機構175(図8参照)を駆動してストッパ174を下降させ、ストッパ174を停止位置(図7(b)参照)から解除位置(図7(c)参照)に移動させる(S5)。その後コントローラ100は、ホール素子71からの出力値等に基づいて、バルブ60が開状態に切り換わったか否かを判断する(S6)。
【0052】
S5の後、カートリッジ40は、第1位置(図7(b)に示す位置)よりも装着方向下流側の第2位置(図7(d)に示す位置)に移動可能となる。
カートリッジ40の第1位置から第2位置への移動に伴い、先ず、図7(c)に示すように、中空針153が栓50の略中心を主走査方向に貫通する。このとき、中空針153の先端に設けられた孔153bが排出路43a内に配置され、孔153bを介して、中空針153内の流路153a(図5(b)参照)と排出路43aとが連通する。なお、このとき栓50に中空針153による貫通孔が形成されるが、栓50における当該貫通孔の周囲が弾性により中空針153の外周面に密着する。これにより、栓50の貫通孔と中空針153との間からのインク漏れが防止される。
その後、中空針153の先端が弁本体62に当接する。そして中空針153の排出路43aへのさらなる進入により、弁本体62がOリング61と共に移動し、Oリング61が縮径部43xの壁から離隔する(図5(b)参照)。このときに、バルブ60が閉状態から開状態に切り換わる。
図7(d)は、図5(b)と同じ段階を示す。
【0053】
バルブ60が開状態にあるとき、排出路43aの基端から縮径部43xまでの空間と、縮径部43xから栓50までの空間とが連通し、排出路43aを介したリザーバ42と外部との連通が許可される。即ち、図5(b)に示すように栓50に中空針153が貫通し且つバルブ60が開状態にあるとき、排出路43a、流路153a等を介して、リザーバ42とヘッド2のインク流路とが連通している。
【0054】
図10に、バルブ60の移動量とホール素子71からの出力値との関係を示す。横軸は、図5(a)に示す閉状態のときの位置から、主走査方向に沿って栓50から離隔する方向への、弁本体62の移動量を意味する。コントローラ100は、ホール素子71からの出力値が閾値Vtに至ったときに、バルブ60が閉状態から開状態に切り換わったと判断する。
【0055】
このようにしてバルブ60が開状態に切り換わると(S6:YES)、コントローラ100は、記録制御(S7)を行い、このルーチンを終了する。
記録制御(S7)において、コントローラ100は、外部装置からの記録指令の受信に伴う処理(給紙モータ125、搬送モータ127、及び送りモータ128(図8参照)並びにヘッド2の駆動制御等)を行う。
【0056】
なお、バルブ60が開状態に切り換わらないまま所定時間が経過した場合(S8:YES)、コントローラ100は、エラー報知(S10)及び停止(S11)を行う。この場合、センサユニット70、栓50、バルブ60、中空針153等に不具合があると推定される。
【0057】
コントローラ100は、カートリッジ40毎に、図9に示す一連の処理を行う。
【0058】
カートリッジ取外しの際は、プリンタ1のユーザがトレイ35を空間Cから取り出す。このとき、4つのカートリッジ40は同時に、対応する接点152及び電力出力部157から離隔する。これにより、接点142及び接点152間の電気的接続並びに電力入力部147及び電力出力部157間の電気的接続が、共に解除され、カートリッジ40及びプリンタ1間の信号の送受信が不能となり、センサユニット70に電力が供給されなくなる。またこのとき、中空針153が栓50から引き抜かれるのに伴い、コイルバネ63の付勢力によって弁本体62がOリング61と共に図5(b)の左方向に移動し、Oリング61が縮径部43xの壁に接触する。これにより、バルブ60が開状態から閉状態に切り換わる。中空針153が栓50から抜かれた後、栓50の貫通孔は、当該貫通孔の周囲部分の弾性により、インク漏れが防止される程度に、小さくなる。
【0059】
ストッパ174は、上記のようにしてカートリッジ40が空間Cから取り出された後、コントローラ100の制御によって停止位置に戻される。そして再びカートリッジ40が空間Cに挿入されてセンサユニット70に異常がない(S4:NO)と判断されるまで、ストッパ174は停止位置で維持される。
【0060】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、コントローラ100は、バルブ60が移動を開始する前に、磁気センサであるホール素子71の異常の有無を判断する(S4)。これにより、センサの異常に伴う問題を回避することができる。
【0061】
コントローラ100は、中空針153が栓50に挿入される前に、磁気センサであるホール素子71の異常の有無を判断する(S4)。したがって、センサの異常有りと判断され、カートリッジ40が再生工程に付された場合でも、栓50に中空針153が挿入される前の状態であるため、栓50を廃棄する必要がなく、経済面及び環境面で優れている。
【0062】
コントローラ100は、磁気センサであるホール素子71の異常の有無を判断する(S4)前に、ホール素子71の異常の有無を判断する手段(異常判断手段:本実施形態ではプリンタ1のセンサユニット170に含まれる磁石172)の異常の有無を判断する(S2)。そして異常判断手段の異常なしと判断した場合に(S2:NO)ホール素子71の異常の有無を判断することで、ホール素子71の異常の有無をより正確に判断することができる。
【0063】
コントローラ100は、S2において、S4で用いる構成要素(ホール素子171及び磁石172)を用いて、判断を行う。したがって、追加の構成要素を設けることなく当該判断を行うことができる。
【0064】
コントローラ100は、バルブ60が移動を開始する前に、磁気センサであるホール素子71に加えて、磁石72の異常の有無をも判断する(S4)。これにより、磁石72の異常に伴う問題を回避することができる。
【0065】
続いて、図11を参照し、本発明の第2実施形態に係るインクジェット式プリンタについて説明する。
第2実施形態に係るプリンタは、ストッパ174及び移動機構175の代わりに支持体154及びこれを移動させる移動機構を有する点、並びに、接点152及び電力出力部157がバネ等で付勢されずに筺体1aにおける空間Cを画定する壁に固定されている点において、第1実施形態のプリンタ1と異なり、その他は第1実施形態のプリンタ1と略同じ構成である。
以下、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0066】
中空針153は、支持体154に固定されている。支持体154は、空間Cにおいて、中空針153を支持した状態で、筐体1aに対して主走査方向に移動可能である。
【0067】
カートリッジ40がプリンタ1に装着される際に、本実施形態のコントローラ100は、S5でストッパ174の代わりに支持体154を移動させる点を除き、第1実施形態と同じ処理を行う。
即ち、本実施形態において、コントローラ100は、S1及びS2を行い、異常なしの場合(S2:NO)、カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続したか否かを判断する(S3)。本実施形態では、図11(a)に示すようにカートリッジ40の接点142及び電力入力部147とプリンタ1の接点152及び電力出力部157とがそれぞれ互いに接触したときに、カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続する(S3:YES)。そしてコントローラ100は、カートリッジ40のセンサユニット70の異常の有無を判断し(S4)、異常なしの場合(S4:NO)、移動機構を駆動して支持体154を中空針153と共に主走査方向(図11(b)の黒塗り矢印方向)に移動させる(S5)。その後コントローラ100は上記と同様の処理(S6、S7等)を行う。
【0068】
このように、本実施形態において、コントローラ100は、S4の判断が終了するまで中空針153を離隔位置(図11(a)に示すように、カートリッジ40から離隔した位置)に維持し、S4の判断が終了した後中空針153を挿入位置(図11(b)に示すように、カートリッジ40に挿入され且つ弁本体62を移動させる位置)に移動させる。
【0069】
続いて、図12及び図13を参照し、本発明の第3実施形態に係るインクジェット式プリンタについて説明する。
第3実施形態に係るプリンタは、センサユニット170を含まない点、当該プリンタに装着されるカートリッジが、磁気センサ(ホール素子71)を含むセンサユニット70の代わりに、光センサを含む点、及び、カートリッジがプリンタに装着される際にコントローラが実行する制御のうちS4(カートリッジのセンサの異常判断ステップ)の内容において、第1実施形態と異なり、その他は第1実施形態のプリンタ1と略同じ構成である。
以下、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0070】
カートリッジのセンサは、発光部及び受光部を有し、例えば物体の有無を非接触状態で検知することができる、反射型の光センサである。センサは、コントローラ100から接点142を介して入力された信号に基づく光量の光を発光部から出射し、受光部により受信された光の光量を示す信号を接点142を介してコントローラ100に出力する。
センサは、バルブ60が閉状態のときに弁本体62と鉛直方向に対向する位置(例えば第1実施形態のホール素子71が配置されている位置)に配置されている。本実施形態において、弁本体62の周面は光が反射可能な鏡面となっている。バルブ60が閉状態のとき、発光部から出射された光が、弁本体62の周面で反射され、受光部により受信される。このときセンサは高い電流値を示す信号をコントローラ100に出力する。バルブ60の位置が開状態のとき、発光部から出射された光のほとんどが、弁本体62の周面で反射されず、受光部により受信されない。このときセンサは低い電流値を示す信号をコントローラ100に出力する。
コントローラ100は、センサから受信した信号が示す電流値に基づいて、バルブ60が開状態か閉状態かを判断する。
【0071】
ここで、カートリッジのセンサ(光センサ)への入力値(入力電流値)とセンサからの出力値(出力電流値)との関係について説明する。入力はコントローラ100からセンサの受光部に対して行われ、出力はセンサの発光部からコントローラ100に対して行われる。図13に太線で示すように、センサからの出力値は、センサへの入力値がIFmax(=飽和入力値)に至るまでは、入力値と正比例の関係にあるが、入力値がIFmaxに至ると飽和する(即ち、入力値≧IFmaxの場合、出力値=ICmax(=飽和出力値))。
【0072】
次に、本実施形態におけるS4(カートリッジのセンサの異常判断ステップ)の内容について説明する。コントローラ100はS4において図12に示すサブルーチンを実行する。
【0073】
コントローラ100は、図12に示すように、先ず、飽和入力値IFmaxよりも小さな第1入力値IF1(例えばIF1=0.8*IFmax)をセンサに入力し、センサからの出力値(第1出力値IC1)を計測する(S31)。
【0074】
次に、コントローラ100は、S31で計測した第1出力値IC1が許容範囲内であるか否かを判断する(S32)。
例えば、コントローラ100は、飽和入力値IFmaxと飽和出力値ICmaxとから、図13に示すような入力値と出力値との一次関数(入力値≦IFmax)を導出する。ここで、当該関数の傾きに係る角度θよりも所定量大きい角度θmaxによる直線Lmaxと、角度θよりも所定量小さい角度θminによる直線Lminとを想定し、これら2本の直線Lmax,Lminの間に挟まれた領域が出力値の許容範囲に該当するものとする。即ち、第1出力値IC1の許容範囲は、直線Lminにおける第1入力値IF1に対応する出力値から直線Lmaxにおける第1入力値IF1に対応する出力値までの範囲である。
【0075】
第1出力値IC1が許容範囲内でない場合(S32:NO)、コントローラ100は、異常ありと判断し(S36)、当該ルーチンを終了する。
第1出力値IC1が許容範囲内である場合(S32:YES)、コントローラ100は、第1入力値IF1よりも小さな第2入力値IF2(例えばIF2=0.4*IFmax)をセンサに入力し、センサからの出力値(第2出力値IC2)を計測する(S33)。
【0076】
次に、コントローラ100は、S33で計測した第2出力値IC2が許容範囲内であるか否かを判断する(S34)。
例えば、コントローラ100は、
第1入力値IF1とS31で計測した第1出力値IC1とで定まる座標点Xで交わる、直線Lmax,Lminにそれぞれ平行な2本の直線Lmax’,Lmin’を想定する。そしてコントローラ100は、直線Lmax’における第2入力値IF2に対応する出力値から直線Lmin’における第2入力値IF2に対応する出力値までの範囲を、第2出力値IC2の許容範囲と想定し、判断を行う。換言すると、座標点(IF1,IC1)と座標点(IF2,IC2)とを結ぶ線分の横軸に対する傾きがθminからθmaxの範囲内にあるか否かを判断する。
【0077】
第2出力値IC2が許容範囲内でない場合(S34:NO)、コントローラ100は、異常ありと判断し(S36)、当該ルーチンを終了する。
第2出力値IC2が許容範囲内である場合(S34:YES)、コントローラ100は、異常なし(正常)と判断し(S35)、当該ルーチンを終了する。
【0078】
なお、飽和入力値IFmax、飽和出力値ICmax、第1入力値IF1、第2入力値IF2、角度θmax,θmin等は、プリンタ1のメモリ(ROMやRAM)、又は、カートリッジがメモリを有する場合はカートリッジのメモリに、記憶されてよい。コントローラ100は上記メモリに記憶されているデータを適宜読み出して上述のような処理を実行する。
【0079】
このように、本実施形態において、コントローラ100は、センサからの出力値の計測のみではなく、センサに信号を入力し、センサの異常の有無を判断する。
本実施形態によっても、第1実施形態と同じ構成による同様の効果(即ち、バルブ60が移動を開始する前に、センサの異常の有無を判断する(S4)ことにより、センサの異常に伴う問題を回避することができるという効果等)を得ることができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0081】
カートリッジの構造は、様々に変更可能である。即ち、リザーバ42、筐体41、排出路43a、栓50、バルブ60、センサ等の構成(形状、位置等)を適宜変更したり、新たな構成部品を追加したり、一部の構成部品を省略したりしてよい。
カートリッジに含まれるバルブの数は、任意である。
センサは、上述の実施形態のような磁気センサや反射型の光センサに限定されず、その他様々なタイプのセンサ(例えば、透過型の光センサ、物体に接触するか否かで物体の有無を検知するメカスイッチ型のセンサ等)を適用可能である。
【0082】
移動体は、上述の実施形態のような流路の開閉を行うバルブ60の他、流量調整を行う任意のバルブであってよい。
また、移動体は、液体カートリッジの液体吐出装置への装着の際に移動するものである限りは、バルブに限定されず、その他任意の部材であってよい。例えば、移動体は、筐体41の前面に配置され且つカートリッジの液体吐出装置への装着の際に装着部を画定する壁に押圧される、装着検知に係る部材であってもよい。或いは、移動体は、排出管43の外部に配置され且つ排出管43の径方向に移動可能な部材であって、当該移動によって排出管43を外側から押圧し変形させることで、排出管43内部の空間を収縮又は閉塞させる部材であってもよい。
【0083】
移動体は、センサの種類に応じて様々な材料からなってよい。
第1実施形態において、移動体としてのバルブ60(弁本体62)は、磁性体からなるが、磁化されていても、磁化されていなくても、どちらでもよい。センサを磁気センサとし、且つ、移動体を磁石又は磁化された磁性体とした場合、磁石(磁場発生手段)を省略してもよい。
【0084】
中空針153の排出路43aへの進入は、上述の実施形態のように液体吐出装置のコントローラによる制御によってもよいし、液体吐出装置のユーザの手動によってもよい。
【0085】
カートリッジと液体吐出装置との間で信号の送受信が可能となるタイミングや、液体吐出装置からカートリッジへの電力供給が可能となるタイミングは、上述したものに限定されず、任意に変更可能である。また、カートリッジ及び液体吐出装置における接点、電力入力部、電力出力部等の位置も、任意に変更可能である。
【0086】
異常判断を行うとき、第1実施形態では、カートリッジのホール素子71と液体吐出装置の磁石172、及び、カートリッジの磁石72と液体吐出装置のホール素子171が、それぞれ互いに対向しているが、これに限定されない。即ち、第1磁場検出手段、第1磁場発生手段、第2磁場検出手段、及び第2磁場発生手段の位置は、特に限定されない。
【0087】
第1実施形態において、ホール素子171及び磁石172の一方又は両方を省略してもよい。(例えば第1実施形態のようにバルブ60が閉状態のときにホール素子71と弁本体62とが対向する構成では、ホール素子71に異常が無ければ、バルブ60が閉状態のときにホール素子71からの出力がある。このような場合、ホール素子171及び磁石172の両方を省略し、ホール素子71からの出力がないことをもって、センサ(ホール素子71)の異常ありと判断することができる。)
異常判断手段は、カートリッジのセンサの構成に応じて適宜変更可能である(即ち、カートリッジのセンサの異常の有無を、第1実施形態では磁石172を用いて、また第3実施形態ではコントローラ100により、判断しているが、これに限定されず、他の構成要素を適宜に用いて判断してよい)。
また、カートリッジが磁場発生手段を有さない場合又は有する場合のいずれにおいても、液体吐出装置は、磁場発生手段の異常の有無を判断しなくてよい。
【0088】
本発明において、カートリッジの装着部への「装着」の始まりは、カートリッジが装着部の入り口にさしかかったときであり、「装着」の完了は、カートリッジがそれ以上動かなくなるまで装着部に装着されたときである。第1実施形態において、装着の始まりは「S1:YES」と判断された時点、装着の完了は図7(d)に示す状態となった時点である。第2実施形態において、装着の始まりは「S1:YES」と判断された時点、装着の完了は図11(a)に示す状態となった時点(即ち、「S3:YES」と判断された時点)である。
本発明において、異常判断を行うタイミングは、カートリッジが装着部に装着され始めた後(上記装着の始まりの時点以降)且つ移動体が移動を開始する前である限り、特に限定されない。例えば、異常判断手段は、中空部材が栓に挿入された後に、カートリッジのセンサの異常の有無を判断してもよい。
【0089】
カートリッジのセンサの異常の有無の判断の前に、液体吐出装置に設けられた異常判断手段の異常の有無を判断しなくてもよい。
【0090】
液体カートリッジが収容する液体は、インクに限定されず、例えば、画質を向上させるために記録前の記録媒体に塗布される画質向上液、搬送ベルトを洗浄するための洗浄液等であってもよい。
【0091】
本発明に係る液体吐出装置のヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式でもよい。
【0092】
本発明に係る液体吐出装置に含まれるヘッドの数は4に限定されず、1以上であればよい。
【0093】
本発明に係る液体吐出装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 インクジェット式プリンタ(液体吐出装置)
2 ヘッド(吐出部)
40 インクカートリッジ(液体カートリッジ)
42 リザーバ(液体収容室)
43a 排出路(流路)
50 栓
60 バルブ(移動体)
70 センサユニット
71 ホール素子(センサ,第1磁場検出手段)
72 磁石(第1磁場発生手段)
100 コントローラ(異常判断手段,第2異常判断手段,判断手段,計測手段,入力手段,移動手段)
153 中空針(中空部材)
154 支持体(移動手段)
170 センサユニット
171 ホール素子(第2異常判断手段,第2磁場検出手段)
172 磁石(異常判断手段,第2磁場発生手段)
174 ストッパ
C 空間(装着部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置は、液体が収容された液体カートリッジを着脱可能であり、装着された液体カートリッジから供給される液体を吐出する吐出部を有する。
液体カートリッジにおいて、当該液体カートリッジの液体吐出装置への装着の際に移動する移動体をセンサで検知する技術が知られている。例えば特許文献1によると、移動体(回転子8)の回転量をセンサ(磁気センサ)で検知し、回転量に基づいてカートリッジ内のインク残量が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−286123号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにセンサを用いる構成において、当該センサに異常がある場合、移動体を正確に検知することができず、種々の問題(液体吐出装置において、吐出不良が生じたり、所望のタイミングで吐出動作に移行できない等の問題)が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、液体カートリッジのセンサの異常に伴う上記のような問題を回避することができる液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の観点によると、液体が収容された液体カートリッジを着脱可能な液体吐出装置であって、前記液体カートリッジは、当該液体カートリッジの前記液体吐出装置への装着の際に移動する移動体と、前記移動体を検知するセンサと、を有し、前記液体吐出装置は、前記液体カートリッジが装着される装着部と、前記装着部に装着された前記液体カートリッジから供給される液体を吐出する吐出部と、前記センサの異常の有無を判断する異常判断手段と、を備え、前記異常判断手段は、前記液体カートリッジが前記装着部に装着され始めた後、且つ、前記移動体が前記移動を開始する前に、前記判断を行うことを特徴とする、液体吐出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、移動体が移動を開始する前にセンサの異常の有無を判断することで、センサの異常に伴う問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタを示す外観斜視図である。
【図2】プリンタの内部を示す概略側面図である。
【図3】プリンタに着脱可能なインクカートリッジを示す斜視図である。
【図4】カートリッジの内部を示す概略構成図である。
【図5】図4に示す領域Vの部分断面図であり、(a)はプリンタの中空針が栓に挿入されておらず且つバルブが閉状態にあるとき、(b)はプリンタの中空針が栓に挿入され且つバルブが開状態にあるときの図である。
【図6】図5(a)に示すVI−VI線に沿った部分断面図である。
【図7】カートリッジがプリンタに装着される過程を示す概略部分断面図である。
【図8】カートリッジ及びプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】カートリッジがプリンタに装着される際にプリンタのコントローラが実行する制御内容を示すフロー図である。
【図10】バルブの移動量とカートリッジのホール素子からの出力値との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態に係るインクジェット式プリンタにカートリッジが装着される過程を示す概略図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るインクジェット式プリンタのコントローラが実行する、カートリッジのセンサの異常判断ステップのサブルーチンを示すフロー図である。
【図13】光センサへの入力値と光センサからの出力値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
先ず、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0011】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの正面(図1の紙面左手前側の面)には、上から順に、3つの開口10d,10b,10cが形成されている。開口10bは給紙ユニット1b、開口10cはインクユニット1cをそれぞれ筐体1a内部に挿入するためのものである。開口10dには、下端の水平軸を支点として開閉可能な扉1dが嵌め込まれている。扉1dは、筐体1aの主走査方向(筐体1aの正面と直交する方向)に関して、搬送ユニット21(図2参照)と対向配置されている。
【0012】
次いで、図2を参照し、プリンタ1の内部構成について説明する。
【0013】
筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド2、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、及び、プリンタ1各部の動作を制御するコントローラ100が配置されている。空間B,Cにはそれぞれ、給紙ユニット1b及びインクユニット1cが配置される。プリンタ1の内部には、給紙ユニット1bから排紙部31に向けて、図2に示す太矢印に沿って、用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
【0014】
コントローラ100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加え、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、I/F(Interface)等を有する。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAMには、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。コントローラ100は、I/Fを介して、カートリッジ40のセンサユニット70とのデータ送受信、外部装置(プリンタ1に接続されたPC等)とのデータ送受信等を行う。
【0015】
給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ23が、筐体1aに対して主走査方向に着脱可能となっている。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収容可能である。給紙ローラ25は、コントローラ100による制御の下、給紙モータ125(図8参照)の駆動により回転し、給紙トレイ23の最も上方にある用紙Pを送り出す。給紙ローラ25によって送り出された用紙Pは、ガイド27a,27bによりガイドされ且つ送りローラ対26によって挟持されつつ搬送ユニット21へと送られる。
【0016】
搬送ユニット21は、2つのベルトローラ6,7、及び、両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8を有する。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、コントローラ100による制御の下、その軸に接続された搬送モータ127(図8参照)の駆動により回転し、図2中時計回りに回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って、図2中時計回りに回転する。
【0017】
搬送ベルト8のループ内には、4つのヘッド2と対向するように、直方体形状のプラテン19が配置されている。搬送ベルト8の上側ループは、搬送ベルト8の外周面8aが4つのヘッド2の下面(インクを吐出する吐出口が多数形成された吐出面)2aと所定距離離隔しつつ下面2aと平行に延在するよう、内周面側からプラテン19により支持されている。
【0018】
搬送ベルト8の外周面8aには、弱粘着性のシリコン層が形成されている。給紙ユニット1bから搬送ユニット21へと送られてきた用紙Pは、押さえローラ4によって搬送ベルト8の外周面8aに押え付けられた後、粘着力によって外周面8aに保持されつつ、黒塗り矢印に沿って副走査方向に搬送されていく。
【0019】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向と平行な方向である。主走査方向とは、副走査方向に直交し且つ水平面に平行な方向である。
【0020】
用紙Pが4つのヘッド2の直ぐ下方を通過する際に、コントローラ100による制御の下、各ヘッド2が駆動し、各ヘッド2の下面2aから用紙Pの上面に向けて各色のインクが順に吐出されることで、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。そして用紙Pは、剥離プレート5によって搬送ベルト8の外周面8aから剥離され、ガイド29a,29bによりガイドされ且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ上方に搬送され、筐体1a上部に形成された開口30から排紙部31へと排出される。各送りローラ対28の一方のローラは、コントローラ100による制御の下、送りモータ128(図8参照)の駆動により回転する。
【0021】
ヘッド2は、主走査方向(図1の紙面に直交する方向)に長尺なライン式であり、略直方体の外形形状を有する。4つのヘッド2は、副走査方向に所定ピッチで並び、フレーム3を介して筐体1aに支持されている。各ヘッド2において、上面には、可撓性チューブが取り付けられるジョイントが設けられ、下面2aには、多数の吐出口が形成され、内部には、チューブ及びジョイントを介して対応するインクカートリッジ40から供給されたインクが吐出口に至るまでのインク流路が形成されている。
【0022】
インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、及び、トレイ35内に並んで配置された4つのインクカートリッジ40を有する。図2中最も左方のカートリッジ40は、ブラックのインクを貯留しており、残り3つのカートリッジ40よりも、副走査方向のサイズ及びインク容量が大きい。残り3つのカートリッジ40は、それぞれマゼンタ、シアン、イエローのインクを貯留しており、副走査方向のサイズ及びインク容量が同じである。各カートリッジ40に貯留されたインクは、チューブ及びジョイントを介して、対応するヘッド2に供給される。
【0023】
トレイ35は、内部にカートリッジ40が配置された状態で、筐体1aに対して主走査方向に着脱可能である。したがって、プリンタ1のユーザは、トレイ35を筐体1aから取り出した状態で、トレイ35内の4つのカートリッジ40を選択的に交換することができる。
【0024】
次いで、図3〜図6を参照し、カートリッジ40の構成について説明する。なお、トレイ35内に配置される4つのカートリッジ40は、上述のようにブラックインクのカートリッジが他の色のカートリッジよりも副走査方向のサイズ及びインク容量が大きいことを除き、いずれも同じ構成である。
【0025】
カートリッジ40は、直方体形状の筐体41(図3及び図4参照)、筐体41の内部に配置されたリザーバ42(図4参照)、リザーバ42に収容されたインクを外部(ヘッド2)に排出するための排出路43a(図5参照)を画定する排出管43、排出路43aに設けられた栓50及びバルブ60(図5参照)、センサユニット70(図5参照)、並びに、接点142及び電力入力部147(図3、図4及び図8参照)を有する。
【0026】
筐体41は、図4に示すように、内部に2つの部屋41a,41bが形成されるように区画されている。右方の部屋41aにリザーバ42、他方の部屋41bに排出管43がそれぞれ配置されている。
【0027】
リザーバ42は、内部にインクを収容するための袋状の部材であり、その開口部に排出管43の基端が接続されている。
【0028】
排出管43は、図4に示すように、先端が筐体41外に突出している。当該先端には、排出路43aの出口を塞ぐように、ゴム等の弾性材料からなる栓50が圧縮状態で設けられている(図5参照)。当該先端及び栓50の外側にはキャップ46が設けられている。キャップ46の中央には開口46aが形成されており、開口46aを介して栓50の先端面が露出している。
【0029】
バルブ60は、図5に示すように、排出管43内に配置されており、Oリング61、弁本体62、及びコイルバネ63を有する。
【0030】
弁本体62は、図5及び図6に示すように主走査方向に軸を有する円柱形状の、磁性体である。
図6に示すように、排出管43における弁本体62が配置された部分は、上壁及び下壁が平坦であり、主走査方向と直交する断面が副走査方向に細長い、円筒状である。排出管43の副走査方向両側の側壁の内面にはそれぞれ、副走査方向に沿って内側に突出する突起43pが形成されている。各突起43pは、弁本体62が移動可能な範囲に亘って、主走査方向に延在している。弁本体62は、排出管43の突起43p及び上下壁に挟持され、断面視において排出路43aの中央で位置決めされている。弁本体62と排出管43の間には、弁本体62と排出管43の突起43p及び上下壁との当接部分を除く部分に、流路が確保されている。
【0031】
Oリング61は、ゴム等の弾性材料からからなり、弁本体62の正面(栓50に対向する面)に固定されている。コイルバネ63は、一端が排出管43の基端に固定されており、他端が弁本体62の背面に接触し、弁本体62をOリング61に向けて常に付勢している。
【0032】
図5(a)に示すようにバルブ60が排出路43aを閉じる閉状態のとき、Oリング61は排出管43の縮径部43xの壁に接触し、縮径部43xにおける開口43yが封止されている。これにより、排出路43aの基端から縮径部43xまでの空間と、縮径部43xから栓50までの空間との連通が遮断され、排出路43aを介したリザーバ42と外部との連通が遮断されている。このときOリング61は、コイルバネ63の付勢力によって、弾性変形している。
【0033】
センサユニット70は、ホール素子71及び磁石72を含む。
磁石72は、磁場を発生させるものである。
ホール素子71は、磁気センサであって、入力された磁場を電気信号に変換し、当該電気信号を接点142を介してコントローラ100に出力する。本実施形態において、ホール素子71は、弁本体62の移動に伴って変化する磁場の大きさに比例した電圧値を示す信号を、コントローラ100に出力する。
ホール素子71は、磁石72と弁本体62とによって作られる磁場が入力される位置に配置されている(図5(a)参照)。
【0034】
ホール素子71及び磁石72は、図5(a)に示すように、それぞれ排出管43の上壁及び下壁に固定され、鉛直方向に互いに対向している。
図5(a)に示すようにバルブ60が閉状態のとき、ホール素子71及び磁石72は、弁本体62を挟んで対向している(即ち、弁本体62は、ホール素子71と磁石72との間の位置にある)。このとき、磁石72が発生した磁場が、弁本体62を介してホール素子71に効率的に届く。したがって、ホール素子71が検知する磁場は大きく、ホール素子71は高い電圧値を示す信号を出力する。
バルブ60が図5(a)に示す閉状態から図5(b)に示す排出路43aを開く開状態へと移行するときに、弁本体62が鉛直方向に関してホール素子71及び磁石72と対向しない位置(即ち、ホール素子71と磁石72との間ではない位置)に移動するのに伴い、ホール素子71が検知する磁場が小さくなり、ホール素子71から出力される信号が示す電圧値が低くなる。
コントローラ100は、ホール素子71から受信した信号が示す電圧値に基づいて、バルブ60が開状態か閉状態かを判断する。
【0035】
次いで、図5〜図10を参照し、カートリッジ40がプリンタ1に装着される過程について説明する。図8では、電力供給線を太線で示し、信号線を細線で示している。
【0036】
カートリッジ40がプリンタ1に装着される前、図5(a)に示すように、栓50には中空針153が挿入されておらず、バルブ60は閉状態に維持されている。この段階では、図8に示すような接点142及び接点152間の電気的接続並びに電力入力部147及び電力出力部157間の電気的接続は、未だなされていない。したがって、この段階において、カートリッジ40及びプリンタ1間での信号の送受信は不能であり、且つ、センサユニット70には電力が供給されていない。
【0037】
カートリッジ装着の際は、プリンタ1のユーザが、トレイ35(図2参照)内にカートリッジ40を配置した状態で、トレイ35を主走査方向(図7(a)の白抜き矢印方向)に移動させて筐体1aの空間Cに挿入する。
【0038】
筺体1aにおける空間Cを画定する底壁には、図7に示すように、ストッパ174が設けられている。ストッパ174は、移動機構175(図8参照)の駆動により空間Cにおいて鉛直方向に移動可能であり、当該移動によって、カートリッジ40と接触してカートリッジ40を空間Cの第1位置で停止させる停止位置(図7(b)参照)と、当該停止を解除する解除位置(図7(c)参照)とを選択的に取り得る。
【0039】
筺体1aにおける空間Cを画定する壁には、図7に示すように、ホール素子171及び磁石172を含むセンサユニット170が設けられている。ホール素子171及び磁石172はそれぞれ、筺体1aにおける空間Cを画定する上下壁に設けられている。
ホール素子171及び磁石172は、ストッパ174よりも入口C1に近い位置において、空間Cを挟んで鉛直方向に互いに対向している。ホール素子171は、入力された磁場を電気信号に変換し、電気信号(磁場の大きさに比例した電圧値を示す信号)をコントローラ100に出力する。
【0040】
筐体1aにおける空間Cを画定する壁(入口C1と反対側の壁)には、中空針153が固定されている。中空針153は、ヘッド2のジョイントに取り付けられたチューブと連通している。
【0041】
コントローラ100は、図9に示すように、先ず、カートリッジ40が、装着部である空間Cの入口C1に差し掛かったか否かを判断する(S1)。このときコントローラ100は、例えば入口C1に設けられたセンサからの検出信号に基づいて、S1の判断を行う。
【0042】
カートリッジ40が入口C1に差し掛かった場合(S1:YES)、コントローラ100は、センサユニット170(ホール素子171及び磁石172)に異常があるか否かを判断する(S2)。
このときコントローラ100は、例えば磁石172が電磁石である場合、磁石172に流す電流値を調整して磁場の大きさを変化させると共に、ホール素子171からの出力値を計測する(図7(a)参照)。コントローラ100は、磁場の大きさに対するホール素子171からの出力値が所定範囲内である場合は異常なし、所定範囲外である場合は異常ありと判断する。或いは、磁石172が永久磁石である場合、コントローラ100は、ホール素子171からの出力がある場合は異常なし、ホール素子171からの出力がない場合は異常ありと判断する。
コントローラ100は、ホール素子171及び磁石172のいずれか一方に異常がある場合、異常あり(S2:YES)と判断する。
【0043】
異常ありの場合(S2:YES)、コントローラ100は、プリンタ1のディスプレイへの画像表示や音声出力等によりエラー報知を行い(S10)、さらにプリンタ1の記録動作が禁止されるようプリンタ1の各部の動作を停止させる(S11)。
【0044】
異常なしの場合(S2:NO)、コントローラ100は、カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続したか否かを判断する(S3)。
【0045】
カートリッジ40は、入口C1に差し掛かった後、ストッパ174に接触する第1位置(図7(b)に示す位置)まで挿入され、この位置で停止する。カートリッジ40が第1位置に至るタイミングと略同じタイミングで、カートリッジ40の接点142とプリンタ1の接点152、及び、カートリッジ40の電力入力部147とプリンタ1の電力出力部157が、それぞれ接触する。これにより、カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続され、電源158から電力出力部157及び電力入力部147を介してセンサユニット70に電力が供給されると共に、カートリッジ40及びプリンタ1間の信号の送受信が可能になる(図8参照)。
接点152は、コントローラ100のI/Fとして機能する。電源158は、筐体1a内に設けられており、プリンタ1の各部に電力を供給する。
【0046】
接点152及び電力出力部157は、筺体1aにおける空間Cを画定する壁(入口C1と反対側の壁)において、第1位置にある各カートリッジ40の接点142及び電力入力部147のそれぞれに対向する位置に、バネ等で入口C1側に付勢された状態で、設けられている。接点152及び電力出力部157は、カートリッジ40が第1位置に至った時に接点142及び電力入力部147に接触し、その後カートリッジ40が第1位置よりも装着方向下流側に移動する際には、カートリッジ40に押され、バネの付勢力に抗して入口C1とは反対側に移動する。
【0047】
なお、中空針153、接点152、電力出力部157、ホール素子171、及び磁石172は、カートリッジ40毎に設けられている。
【0048】
カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続したと判断した場合(S3:YES)、コントローラ100は、カートリッジ40のセンサユニット70(ホール素子71及び磁石72)に異常があるか否かを判断する(S4)。
このときコントローラ100は、ホール素子71については、例えば磁石172が電磁石である場合、磁石172に流す電流値を調整して磁場の大きさを変化させると共に、ホール素子71からの出力値を計測する(図7(b)参照)。コントローラ100は、磁場の大きさに対するホール素子71からの出力値が所定範囲内である場合は異常なし、所定範囲外である場合は異常ありと判断する。或いは、磁石172が永久磁石である場合、コントローラ100は、ホール素子71からの出力がある場合は異常なし、ホール素子71からの出力がない場合は異常ありと判断する。
またコントローラ100は、磁石72については、例えば磁石72が電磁石である場合、磁石72に流す電流値を調整して磁場の大きさを変化させると共に、ホール素子171からの出力値を計測する。コントローラ100は、磁場の大きさに対するホール素子171からの出力値が所定範囲内である場合は異常なし、所定範囲外である場合は異常ありと判断する。或いは、磁石72が永久磁石である場合、コントローラ100は、ホール素子171からの出力がある場合は異常なし、ホール素子171からの出力がない場合は異常ありと判断する。
コントローラ100は、ホール素子71及び磁石72のいずれか一方に異常がある場合、異常あり(S4:YES)と判断する。
【0049】
S4の判断が行われるとき、図7(b)に示すように、磁石172とホール素子71、磁石72と及びホール素子171が、それぞれ鉛直方向に対向し、且つ、これらは鉛直方向に沿って一列に並んでいる。
【0050】
異常ありの場合(S4:YES)、コントローラ100は、エラー報知(S10)及び停止(S11)を行う。
【0051】
異常なしの場合(S4:NO)、コントローラ100は、移動機構175(図8参照)を駆動してストッパ174を下降させ、ストッパ174を停止位置(図7(b)参照)から解除位置(図7(c)参照)に移動させる(S5)。その後コントローラ100は、ホール素子71からの出力値等に基づいて、バルブ60が開状態に切り換わったか否かを判断する(S6)。
【0052】
S5の後、カートリッジ40は、第1位置(図7(b)に示す位置)よりも装着方向下流側の第2位置(図7(d)に示す位置)に移動可能となる。
カートリッジ40の第1位置から第2位置への移動に伴い、先ず、図7(c)に示すように、中空針153が栓50の略中心を主走査方向に貫通する。このとき、中空針153の先端に設けられた孔153bが排出路43a内に配置され、孔153bを介して、中空針153内の流路153a(図5(b)参照)と排出路43aとが連通する。なお、このとき栓50に中空針153による貫通孔が形成されるが、栓50における当該貫通孔の周囲が弾性により中空針153の外周面に密着する。これにより、栓50の貫通孔と中空針153との間からのインク漏れが防止される。
その後、中空針153の先端が弁本体62に当接する。そして中空針153の排出路43aへのさらなる進入により、弁本体62がOリング61と共に移動し、Oリング61が縮径部43xの壁から離隔する(図5(b)参照)。このときに、バルブ60が閉状態から開状態に切り換わる。
図7(d)は、図5(b)と同じ段階を示す。
【0053】
バルブ60が開状態にあるとき、排出路43aの基端から縮径部43xまでの空間と、縮径部43xから栓50までの空間とが連通し、排出路43aを介したリザーバ42と外部との連通が許可される。即ち、図5(b)に示すように栓50に中空針153が貫通し且つバルブ60が開状態にあるとき、排出路43a、流路153a等を介して、リザーバ42とヘッド2のインク流路とが連通している。
【0054】
図10に、バルブ60の移動量とホール素子71からの出力値との関係を示す。横軸は、図5(a)に示す閉状態のときの位置から、主走査方向に沿って栓50から離隔する方向への、弁本体62の移動量を意味する。コントローラ100は、ホール素子71からの出力値が閾値Vtに至ったときに、バルブ60が閉状態から開状態に切り換わったと判断する。
【0055】
このようにしてバルブ60が開状態に切り換わると(S6:YES)、コントローラ100は、記録制御(S7)を行い、このルーチンを終了する。
記録制御(S7)において、コントローラ100は、外部装置からの記録指令の受信に伴う処理(給紙モータ125、搬送モータ127、及び送りモータ128(図8参照)並びにヘッド2の駆動制御等)を行う。
【0056】
なお、バルブ60が開状態に切り換わらないまま所定時間が経過した場合(S8:YES)、コントローラ100は、エラー報知(S10)及び停止(S11)を行う。この場合、センサユニット70、栓50、バルブ60、中空針153等に不具合があると推定される。
【0057】
コントローラ100は、カートリッジ40毎に、図9に示す一連の処理を行う。
【0058】
カートリッジ取外しの際は、プリンタ1のユーザがトレイ35を空間Cから取り出す。このとき、4つのカートリッジ40は同時に、対応する接点152及び電力出力部157から離隔する。これにより、接点142及び接点152間の電気的接続並びに電力入力部147及び電力出力部157間の電気的接続が、共に解除され、カートリッジ40及びプリンタ1間の信号の送受信が不能となり、センサユニット70に電力が供給されなくなる。またこのとき、中空針153が栓50から引き抜かれるのに伴い、コイルバネ63の付勢力によって弁本体62がOリング61と共に図5(b)の左方向に移動し、Oリング61が縮径部43xの壁に接触する。これにより、バルブ60が開状態から閉状態に切り換わる。中空針153が栓50から抜かれた後、栓50の貫通孔は、当該貫通孔の周囲部分の弾性により、インク漏れが防止される程度に、小さくなる。
【0059】
ストッパ174は、上記のようにしてカートリッジ40が空間Cから取り出された後、コントローラ100の制御によって停止位置に戻される。そして再びカートリッジ40が空間Cに挿入されてセンサユニット70に異常がない(S4:NO)と判断されるまで、ストッパ174は停止位置で維持される。
【0060】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、コントローラ100は、バルブ60が移動を開始する前に、磁気センサであるホール素子71の異常の有無を判断する(S4)。これにより、センサの異常に伴う問題を回避することができる。
【0061】
コントローラ100は、中空針153が栓50に挿入される前に、磁気センサであるホール素子71の異常の有無を判断する(S4)。したがって、センサの異常有りと判断され、カートリッジ40が再生工程に付された場合でも、栓50に中空針153が挿入される前の状態であるため、栓50を廃棄する必要がなく、経済面及び環境面で優れている。
【0062】
コントローラ100は、磁気センサであるホール素子71の異常の有無を判断する(S4)前に、ホール素子71の異常の有無を判断する手段(異常判断手段:本実施形態ではプリンタ1のセンサユニット170に含まれる磁石172)の異常の有無を判断する(S2)。そして異常判断手段の異常なしと判断した場合に(S2:NO)ホール素子71の異常の有無を判断することで、ホール素子71の異常の有無をより正確に判断することができる。
【0063】
コントローラ100は、S2において、S4で用いる構成要素(ホール素子171及び磁石172)を用いて、判断を行う。したがって、追加の構成要素を設けることなく当該判断を行うことができる。
【0064】
コントローラ100は、バルブ60が移動を開始する前に、磁気センサであるホール素子71に加えて、磁石72の異常の有無をも判断する(S4)。これにより、磁石72の異常に伴う問題を回避することができる。
【0065】
続いて、図11を参照し、本発明の第2実施形態に係るインクジェット式プリンタについて説明する。
第2実施形態に係るプリンタは、ストッパ174及び移動機構175の代わりに支持体154及びこれを移動させる移動機構を有する点、並びに、接点152及び電力出力部157がバネ等で付勢されずに筺体1aにおける空間Cを画定する壁に固定されている点において、第1実施形態のプリンタ1と異なり、その他は第1実施形態のプリンタ1と略同じ構成である。
以下、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0066】
中空針153は、支持体154に固定されている。支持体154は、空間Cにおいて、中空針153を支持した状態で、筐体1aに対して主走査方向に移動可能である。
【0067】
カートリッジ40がプリンタ1に装着される際に、本実施形態のコントローラ100は、S5でストッパ174の代わりに支持体154を移動させる点を除き、第1実施形態と同じ処理を行う。
即ち、本実施形態において、コントローラ100は、S1及びS2を行い、異常なしの場合(S2:NO)、カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続したか否かを判断する(S3)。本実施形態では、図11(a)に示すようにカートリッジ40の接点142及び電力入力部147とプリンタ1の接点152及び電力出力部157とがそれぞれ互いに接触したときに、カートリッジ40とプリンタ1とが電気的に接続する(S3:YES)。そしてコントローラ100は、カートリッジ40のセンサユニット70の異常の有無を判断し(S4)、異常なしの場合(S4:NO)、移動機構を駆動して支持体154を中空針153と共に主走査方向(図11(b)の黒塗り矢印方向)に移動させる(S5)。その後コントローラ100は上記と同様の処理(S6、S7等)を行う。
【0068】
このように、本実施形態において、コントローラ100は、S4の判断が終了するまで中空針153を離隔位置(図11(a)に示すように、カートリッジ40から離隔した位置)に維持し、S4の判断が終了した後中空針153を挿入位置(図11(b)に示すように、カートリッジ40に挿入され且つ弁本体62を移動させる位置)に移動させる。
【0069】
続いて、図12及び図13を参照し、本発明の第3実施形態に係るインクジェット式プリンタについて説明する。
第3実施形態に係るプリンタは、センサユニット170を含まない点、当該プリンタに装着されるカートリッジが、磁気センサ(ホール素子71)を含むセンサユニット70の代わりに、光センサを含む点、及び、カートリッジがプリンタに装着される際にコントローラが実行する制御のうちS4(カートリッジのセンサの異常判断ステップ)の内容において、第1実施形態と異なり、その他は第1実施形態のプリンタ1と略同じ構成である。
以下、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0070】
カートリッジのセンサは、発光部及び受光部を有し、例えば物体の有無を非接触状態で検知することができる、反射型の光センサである。センサは、コントローラ100から接点142を介して入力された信号に基づく光量の光を発光部から出射し、受光部により受信された光の光量を示す信号を接点142を介してコントローラ100に出力する。
センサは、バルブ60が閉状態のときに弁本体62と鉛直方向に対向する位置(例えば第1実施形態のホール素子71が配置されている位置)に配置されている。本実施形態において、弁本体62の周面は光が反射可能な鏡面となっている。バルブ60が閉状態のとき、発光部から出射された光が、弁本体62の周面で反射され、受光部により受信される。このときセンサは高い電流値を示す信号をコントローラ100に出力する。バルブ60の位置が開状態のとき、発光部から出射された光のほとんどが、弁本体62の周面で反射されず、受光部により受信されない。このときセンサは低い電流値を示す信号をコントローラ100に出力する。
コントローラ100は、センサから受信した信号が示す電流値に基づいて、バルブ60が開状態か閉状態かを判断する。
【0071】
ここで、カートリッジのセンサ(光センサ)への入力値(入力電流値)とセンサからの出力値(出力電流値)との関係について説明する。入力はコントローラ100からセンサの受光部に対して行われ、出力はセンサの発光部からコントローラ100に対して行われる。図13に太線で示すように、センサからの出力値は、センサへの入力値がIFmax(=飽和入力値)に至るまでは、入力値と正比例の関係にあるが、入力値がIFmaxに至ると飽和する(即ち、入力値≧IFmaxの場合、出力値=ICmax(=飽和出力値))。
【0072】
次に、本実施形態におけるS4(カートリッジのセンサの異常判断ステップ)の内容について説明する。コントローラ100はS4において図12に示すサブルーチンを実行する。
【0073】
コントローラ100は、図12に示すように、先ず、飽和入力値IFmaxよりも小さな第1入力値IF1(例えばIF1=0.8*IFmax)をセンサに入力し、センサからの出力値(第1出力値IC1)を計測する(S31)。
【0074】
次に、コントローラ100は、S31で計測した第1出力値IC1が許容範囲内であるか否かを判断する(S32)。
例えば、コントローラ100は、飽和入力値IFmaxと飽和出力値ICmaxとから、図13に示すような入力値と出力値との一次関数(入力値≦IFmax)を導出する。ここで、当該関数の傾きに係る角度θよりも所定量大きい角度θmaxによる直線Lmaxと、角度θよりも所定量小さい角度θminによる直線Lminとを想定し、これら2本の直線Lmax,Lminの間に挟まれた領域が出力値の許容範囲に該当するものとする。即ち、第1出力値IC1の許容範囲は、直線Lminにおける第1入力値IF1に対応する出力値から直線Lmaxにおける第1入力値IF1に対応する出力値までの範囲である。
【0075】
第1出力値IC1が許容範囲内でない場合(S32:NO)、コントローラ100は、異常ありと判断し(S36)、当該ルーチンを終了する。
第1出力値IC1が許容範囲内である場合(S32:YES)、コントローラ100は、第1入力値IF1よりも小さな第2入力値IF2(例えばIF2=0.4*IFmax)をセンサに入力し、センサからの出力値(第2出力値IC2)を計測する(S33)。
【0076】
次に、コントローラ100は、S33で計測した第2出力値IC2が許容範囲内であるか否かを判断する(S34)。
例えば、コントローラ100は、
第1入力値IF1とS31で計測した第1出力値IC1とで定まる座標点Xで交わる、直線Lmax,Lminにそれぞれ平行な2本の直線Lmax’,Lmin’を想定する。そしてコントローラ100は、直線Lmax’における第2入力値IF2に対応する出力値から直線Lmin’における第2入力値IF2に対応する出力値までの範囲を、第2出力値IC2の許容範囲と想定し、判断を行う。換言すると、座標点(IF1,IC1)と座標点(IF2,IC2)とを結ぶ線分の横軸に対する傾きがθminからθmaxの範囲内にあるか否かを判断する。
【0077】
第2出力値IC2が許容範囲内でない場合(S34:NO)、コントローラ100は、異常ありと判断し(S36)、当該ルーチンを終了する。
第2出力値IC2が許容範囲内である場合(S34:YES)、コントローラ100は、異常なし(正常)と判断し(S35)、当該ルーチンを終了する。
【0078】
なお、飽和入力値IFmax、飽和出力値ICmax、第1入力値IF1、第2入力値IF2、角度θmax,θmin等は、プリンタ1のメモリ(ROMやRAM)、又は、カートリッジがメモリを有する場合はカートリッジのメモリに、記憶されてよい。コントローラ100は上記メモリに記憶されているデータを適宜読み出して上述のような処理を実行する。
【0079】
このように、本実施形態において、コントローラ100は、センサからの出力値の計測のみではなく、センサに信号を入力し、センサの異常の有無を判断する。
本実施形態によっても、第1実施形態と同じ構成による同様の効果(即ち、バルブ60が移動を開始する前に、センサの異常の有無を判断する(S4)ことにより、センサの異常に伴う問題を回避することができるという効果等)を得ることができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0081】
カートリッジの構造は、様々に変更可能である。即ち、リザーバ42、筐体41、排出路43a、栓50、バルブ60、センサ等の構成(形状、位置等)を適宜変更したり、新たな構成部品を追加したり、一部の構成部品を省略したりしてよい。
カートリッジに含まれるバルブの数は、任意である。
センサは、上述の実施形態のような磁気センサや反射型の光センサに限定されず、その他様々なタイプのセンサ(例えば、透過型の光センサ、物体に接触するか否かで物体の有無を検知するメカスイッチ型のセンサ等)を適用可能である。
【0082】
移動体は、上述の実施形態のような流路の開閉を行うバルブ60の他、流量調整を行う任意のバルブであってよい。
また、移動体は、液体カートリッジの液体吐出装置への装着の際に移動するものである限りは、バルブに限定されず、その他任意の部材であってよい。例えば、移動体は、筐体41の前面に配置され且つカートリッジの液体吐出装置への装着の際に装着部を画定する壁に押圧される、装着検知に係る部材であってもよい。或いは、移動体は、排出管43の外部に配置され且つ排出管43の径方向に移動可能な部材であって、当該移動によって排出管43を外側から押圧し変形させることで、排出管43内部の空間を収縮又は閉塞させる部材であってもよい。
【0083】
移動体は、センサの種類に応じて様々な材料からなってよい。
第1実施形態において、移動体としてのバルブ60(弁本体62)は、磁性体からなるが、磁化されていても、磁化されていなくても、どちらでもよい。センサを磁気センサとし、且つ、移動体を磁石又は磁化された磁性体とした場合、磁石(磁場発生手段)を省略してもよい。
【0084】
中空針153の排出路43aへの進入は、上述の実施形態のように液体吐出装置のコントローラによる制御によってもよいし、液体吐出装置のユーザの手動によってもよい。
【0085】
カートリッジと液体吐出装置との間で信号の送受信が可能となるタイミングや、液体吐出装置からカートリッジへの電力供給が可能となるタイミングは、上述したものに限定されず、任意に変更可能である。また、カートリッジ及び液体吐出装置における接点、電力入力部、電力出力部等の位置も、任意に変更可能である。
【0086】
異常判断を行うとき、第1実施形態では、カートリッジのホール素子71と液体吐出装置の磁石172、及び、カートリッジの磁石72と液体吐出装置のホール素子171が、それぞれ互いに対向しているが、これに限定されない。即ち、第1磁場検出手段、第1磁場発生手段、第2磁場検出手段、及び第2磁場発生手段の位置は、特に限定されない。
【0087】
第1実施形態において、ホール素子171及び磁石172の一方又は両方を省略してもよい。(例えば第1実施形態のようにバルブ60が閉状態のときにホール素子71と弁本体62とが対向する構成では、ホール素子71に異常が無ければ、バルブ60が閉状態のときにホール素子71からの出力がある。このような場合、ホール素子171及び磁石172の両方を省略し、ホール素子71からの出力がないことをもって、センサ(ホール素子71)の異常ありと判断することができる。)
異常判断手段は、カートリッジのセンサの構成に応じて適宜変更可能である(即ち、カートリッジのセンサの異常の有無を、第1実施形態では磁石172を用いて、また第3実施形態ではコントローラ100により、判断しているが、これに限定されず、他の構成要素を適宜に用いて判断してよい)。
また、カートリッジが磁場発生手段を有さない場合又は有する場合のいずれにおいても、液体吐出装置は、磁場発生手段の異常の有無を判断しなくてよい。
【0088】
本発明において、カートリッジの装着部への「装着」の始まりは、カートリッジが装着部の入り口にさしかかったときであり、「装着」の完了は、カートリッジがそれ以上動かなくなるまで装着部に装着されたときである。第1実施形態において、装着の始まりは「S1:YES」と判断された時点、装着の完了は図7(d)に示す状態となった時点である。第2実施形態において、装着の始まりは「S1:YES」と判断された時点、装着の完了は図11(a)に示す状態となった時点(即ち、「S3:YES」と判断された時点)である。
本発明において、異常判断を行うタイミングは、カートリッジが装着部に装着され始めた後(上記装着の始まりの時点以降)且つ移動体が移動を開始する前である限り、特に限定されない。例えば、異常判断手段は、中空部材が栓に挿入された後に、カートリッジのセンサの異常の有無を判断してもよい。
【0089】
カートリッジのセンサの異常の有無の判断の前に、液体吐出装置に設けられた異常判断手段の異常の有無を判断しなくてもよい。
【0090】
液体カートリッジが収容する液体は、インクに限定されず、例えば、画質を向上させるために記録前の記録媒体に塗布される画質向上液、搬送ベルトを洗浄するための洗浄液等であってもよい。
【0091】
本発明に係る液体吐出装置のヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式でもよい。
【0092】
本発明に係る液体吐出装置に含まれるヘッドの数は4に限定されず、1以上であればよい。
【0093】
本発明に係る液体吐出装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 インクジェット式プリンタ(液体吐出装置)
2 ヘッド(吐出部)
40 インクカートリッジ(液体カートリッジ)
42 リザーバ(液体収容室)
43a 排出路(流路)
50 栓
60 バルブ(移動体)
70 センサユニット
71 ホール素子(センサ,第1磁場検出手段)
72 磁石(第1磁場発生手段)
100 コントローラ(異常判断手段,第2異常判断手段,判断手段,計測手段,入力手段,移動手段)
153 中空針(中空部材)
154 支持体(移動手段)
170 センサユニット
171 ホール素子(第2異常判断手段,第2磁場検出手段)
172 磁石(異常判断手段,第2磁場発生手段)
174 ストッパ
C 空間(装着部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容された液体カートリッジを着脱可能な液体吐出装置であって、
前記液体カートリッジは、
当該液体カートリッジの前記液体吐出装置への装着の際に移動する移動体と、
前記移動体を検知するセンサと、を有し、
前記液体吐出装置は、
前記液体カートリッジが装着される装着部と、
前記装着部に装着された前記液体カートリッジから供給される液体を吐出する吐出部と、
前記センサの異常の有無を判断する異常判断手段と、を備え、
前記異常判断手段は、前記液体カートリッジが前記装着部に装着され始めた後、且つ、前記移動体が前記移動を開始する前に、前記判断を行うことを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体カートリッジは、
液体を収容する液体収容室と、
前記液体収容室に連通し、前記液体が流れる流路と、を有し、
前記移動体は、前記流路内において移動可能であり、当該移動によって前記流路の内部を流れる液体の流量を調整するバルブであることを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体カートリッジは、前記流路の出口を塞ぐように圧縮状態で設けられた弾性を有する栓を有し、
前記液体吐出装置は、前記装着部に設けられ且つ前記吐出部に連通する中空部材を備え、
前記異常判断手段は、前記中空部材が前記栓に挿入される前に、前記判断を行うことを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記センサが、入力された磁場を電気信号に変換して出力する第1磁場検出手段であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体カートリッジが、磁場を発生させる第1磁場発生手段をさらに有することを特徴とする、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記異常判断手段が、前記第1磁場検出手段と対向可能であり且つ磁場を発生させる第2磁場発生手段を含むことを特徴とする、請求項4又は5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体カートリッジが前記装着部に装着され始めた後、且つ、前記移動体が前記移動を開始する前に、前記第1磁場発生手段の異常の有無を判断する第2異常判断手段であって、前記第1磁場発生手段と対向可能であり且つ入力された磁場を電気信号に変換して出力する第2磁場検出手段を含む、第2異常判断手段をさらに備えたことを特徴とする、請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記異常判断手段が前記判断を行う前に、前記異常判断手段の異常の有無を判断する判断手段をさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記判断手段は、前記異常判断手段の構成要素を用いて前記判断を行うことを特徴とする、請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記異常判断手段は、前記センサからの出力値を計測する計測手段を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記異常判断手段は、前記センサに信号を入力する入力手段をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記装着部において移動可能であり、当該移動によって、前記液体カートリッジと接触して当該液体カートリッジを前記装着部の第1位置で停止させる停止位置と、前記停止を解除する解除位置とを選択的に取り得るストッパと、
前記異常判断手段による判断が終了するまで、前記ストッパを前記停止位置に維持し、前記異常判断手段による判断が終了した後、前記ストッパを前記解除位置に移動させる、ストッパ制御手段と、をさらに備え、
前記液体カートリッジは、前記ストッパが前記停止位置から前記解除位置に移動した後、前記第1位置よりも前記装着部への装着方向下流側の第2位置に移動可能であり、
前記液体カートリッジが前記第1位置から前記第2位置に移動する際に、前記移動体が前記移動をすることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記装着部に設けられ且つ前記吐出部に連通する中空部材と、
前記中空部材を前記装着部において移動させる移動手段であって、前記異常判断手段による判断が終了するまで、前記中空部材を、前記液体カートリッジから離隔した離隔位置に維持し、前記異常判断手段による判断が終了した後、前記中空部材を、前記液体カートリッジに挿入され且つ前記移動体を移動させる挿入位置に移動させる、移動手段と、をさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項1】
液体が収容された液体カートリッジを着脱可能な液体吐出装置であって、
前記液体カートリッジは、
当該液体カートリッジの前記液体吐出装置への装着の際に移動する移動体と、
前記移動体を検知するセンサと、を有し、
前記液体吐出装置は、
前記液体カートリッジが装着される装着部と、
前記装着部に装着された前記液体カートリッジから供給される液体を吐出する吐出部と、
前記センサの異常の有無を判断する異常判断手段と、を備え、
前記異常判断手段は、前記液体カートリッジが前記装着部に装着され始めた後、且つ、前記移動体が前記移動を開始する前に、前記判断を行うことを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体カートリッジは、
液体を収容する液体収容室と、
前記液体収容室に連通し、前記液体が流れる流路と、を有し、
前記移動体は、前記流路内において移動可能であり、当該移動によって前記流路の内部を流れる液体の流量を調整するバルブであることを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体カートリッジは、前記流路の出口を塞ぐように圧縮状態で設けられた弾性を有する栓を有し、
前記液体吐出装置は、前記装着部に設けられ且つ前記吐出部に連通する中空部材を備え、
前記異常判断手段は、前記中空部材が前記栓に挿入される前に、前記判断を行うことを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記センサが、入力された磁場を電気信号に変換して出力する第1磁場検出手段であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体カートリッジが、磁場を発生させる第1磁場発生手段をさらに有することを特徴とする、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記異常判断手段が、前記第1磁場検出手段と対向可能であり且つ磁場を発生させる第2磁場発生手段を含むことを特徴とする、請求項4又は5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体カートリッジが前記装着部に装着され始めた後、且つ、前記移動体が前記移動を開始する前に、前記第1磁場発生手段の異常の有無を判断する第2異常判断手段であって、前記第1磁場発生手段と対向可能であり且つ入力された磁場を電気信号に変換して出力する第2磁場検出手段を含む、第2異常判断手段をさらに備えたことを特徴とする、請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記異常判断手段が前記判断を行う前に、前記異常判断手段の異常の有無を判断する判断手段をさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記判断手段は、前記異常判断手段の構成要素を用いて前記判断を行うことを特徴とする、請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記異常判断手段は、前記センサからの出力値を計測する計測手段を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記異常判断手段は、前記センサに信号を入力する入力手段をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記装着部において移動可能であり、当該移動によって、前記液体カートリッジと接触して当該液体カートリッジを前記装着部の第1位置で停止させる停止位置と、前記停止を解除する解除位置とを選択的に取り得るストッパと、
前記異常判断手段による判断が終了するまで、前記ストッパを前記停止位置に維持し、前記異常判断手段による判断が終了した後、前記ストッパを前記解除位置に移動させる、ストッパ制御手段と、をさらに備え、
前記液体カートリッジは、前記ストッパが前記停止位置から前記解除位置に移動した後、前記第1位置よりも前記装着部への装着方向下流側の第2位置に移動可能であり、
前記液体カートリッジが前記第1位置から前記第2位置に移動する際に、前記移動体が前記移動をすることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記装着部に設けられ且つ前記吐出部に連通する中空部材と、
前記中空部材を前記装着部において移動させる移動手段であって、前記異常判断手段による判断が終了するまで、前記中空部材を、前記液体カートリッジから離隔した離隔位置に維持し、前記異常判断手段による判断が終了した後、前記中空部材を、前記液体カートリッジに挿入され且つ前記移動体を移動させる挿入位置に移動させる、移動手段と、をさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−76336(P2012−76336A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222785(P2010−222785)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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