説明

液体吐出装置

【課題】一方の筐体を他方の筐体に対して円滑に回動可能としつつ、記録媒体の詰まりが生じにくい。
【解決手段】プリンタ1内には、プラテン61に向けてU字状に湾曲した用紙Pの搬送経路が形成されており、搬送ローラ対等が設けられている。上筐体にはヘッドユニット(ヘッド10及びキャップ部材40)が収容されている。下筐体には搬送ローラ対等が収容されている。上筐体は下筐体に対して回動する。搬送ガイド31dの下端部には、ヘッドユニットに向かって突出する突出部31xが設けられている。キャップ部材40と搬送ガイド31dとの間には、上筐体が回動する際の干渉防止用の隙間Gが形成されているが、突出部31xは、用紙Pを、斜め下方にプラテン61に向け、隙間Gとは異なる方向に案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の液体吐出ヘッドは、搬送ベルト(支持部材)に支持された用紙に画像を記録する。搬送ベルトの下方には給紙トレイが設けられており、給紙トレイから搬送ベルトに向かって用紙を湾曲させつつ搬送する搬送経路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−51719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において液体吐出ヘッドと支持部材との間で発生した用紙詰まりに対処するためには、液体吐出ヘッドと支持部材との間を開放して、詰まった用紙をユーザが除去できるような空間を形成することが考えられる。このような構成の一例として、装置の筐体を、液体吐出ヘッド側の第1筐体と支持部材側の第2筐体とに分け、第1筐体を第2筐体に対して回動可能とし、液体吐出ヘッド及び支持部材間を開放可能とする構成が考えられる。
【0005】
ところで、第1筐体を第2筐体に対して回動可能とする場合、第1筐体は円弧状の軌跡で移動するので、第1筐体の移動の際に第1筐体側の構成が第2筐体側の構成と干渉するのを防止するため、第1筐体側の構成が移動する隙間を第2筐体側の構成との間に確保しておかなければならない。
【0006】
しかしながら、搬送経路の周辺に隙間が形成されていると、その隙間に用紙が入り込んで詰まりを起こしやすい。特に、特許文献1のように用紙を湾曲させつつ搬送する搬送経路が形成されている場合、用紙が湾曲状態から元に戻ろうとするため、記録媒体が当該隙間に侵入しやすく、当該侵入により用紙詰まりが生じる虞がある。
【0007】
本発明の目的は、第1筐体を第2筐体に対して円滑に回動可能としつつ、記録媒体の詰まりが生じにくい液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の観点による液体吐出装置は、記録媒体に向かって液体を吐出する吐出面を有し、前記吐出面と平行な第1方向に長尺な液体吐出ヘッドを含む記録部と、記録媒体を供給する供給部と、前記吐出面に対向して記録媒体を支持する支持部材と、前記供給部から前記支持部材に向かうU字状の湾曲経路を規定して記録媒体を案内する搬送ガイド、及び、前記搬送ガイドに沿って記録媒体を搬送する搬送ローラを含み、前記吐出面と平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向に記録媒体を搬送する搬送部と、前記記録部を収容した第1筐体と、前記供給部と、前記支持部材と、前記搬送機構とを収容した第2筐体とを備えており、前記第1筐体は、前記第1方向に沿った回転軸を中心に回動可能で、且つ、前記支持部材に支持された記録媒体に向かって前記記録部が液体を吐出する吐出位置と、前記吐出位置よりも前記記録部と前記支持部材とが離隔した離隔位置とを取りうるように構成され、前記回動軸は、前記第1筐体が前記吐出位置にある際に、前記吐出面と直交する第3方向に関して前記支持部材に対して前記吐出面よりも離隔した位置であって、前記第2方向に関して前記記録部よりも下流側の位置に配置されており、前記搬送ガイドは、前記第2方向において前記搬送ローラよりも下流側かつ前記記録部よりも上流側に配置され、前記第2方向下流側に向かうにつれて前記第3方向のうちの前記吐出面から前記支持部材に向かうように傾斜したガイド面を含み、前記ガイド面に沿って記録媒体を案内するガイド部を有しており、前記ガイド部は、前記第1筐体が前記吐出位置にある際に、前記第2方向に関して前記記録部と隙間を隔てて対向しており、前記記録部は、前記第1筐体が前記吐出位置と前記離隔位置との間で移動する際に、前記隙間に対応する領域を通過する。
【0009】
本発明の液体吐出装置によると、ガイド部と記録部との間に干渉防止用の隙間が形成されている。ガイド部のガイド面は第3方向のうちの吐出面から支持部材に向かうように斜めに構成されている。つまり、記録媒体はガイド面に沿って当該隙間から離れる向きに搬送される。したがって、ガイド面に沿って案内される記録媒体は当該隙間と異なる向きに案内されるため、記録媒体はこの隙間には侵入しにくい。すなわち、第1筐体が第2筐体に対して回動する際に液体吐出ヘッドがガイド部に干渉しないように干渉防止用の隙間を設けたとしても、ガイド面がこの隙間に記録媒体が侵入しないように記録媒体を案内するため、用紙詰まりが生じにくい。
【0010】
仮に、ガイド部と記録部との間よりも第2方向上流側に干渉防止用の隙間が形成されているとすると、U字状の湾曲経路のどこかに当該隙間が形成されることとなる。記録媒体がU字状の湾曲経路を搬送されるとき、記録媒体は湾曲状態から元の平面状態に戻ろうとするため、当該隙間に記録媒体の先端部分が侵入しやすく、用紙詰まりが生じる虞がある。
【0011】
また、本発明においては、前記ガイド部において前記第2方向下流側の端部であって前記第3方向に関して前記支持部材に近い側の端部が、前記第2方向に向かって突出していることが好ましい。第1筐体が回動する際、記録部は円弧状の軌跡を描きながら移動する。具体的には、第1筐体が吐出位置から離隔位置に移動する際、記録部は、支持部材から離隔しつつガイド部に近づく向きに移動することになる。そこで、ガイド部において第2方向下流側の端部であって第3方向に関して支持部材に近い側の端部だけを突出させることにより、記録部との隙間を小さくでき、記録媒体の詰まりを抑制できる。
【0012】
また、本発明においては、前記記録部は、前記吐出面の周囲を取り囲む環状部材をさらに備え、前記吐出面と対向可能な対向部材と、前記環状部材を前記対向部材に当接させて前記吐出面を封止する封止位置と、前記環状部材を前記対向部材から離隔させる開放位置とを取り得るように、前記環状部材を前記第3方向に関して移動させる移動機構と、前記吐出位置にある前記第1筐体の回動を規制する規制手段と、前記規制手段による規制が解除されることを示す規制解除信号を受信した場合に、前記環状部材が前記開放位置をとるように前記移動機構を制御する移動制御手段とをさらに備えていることが好ましい。これによると、環状部材を対向部材に当接させることにより吐出面を保護する構成としている場合には、環状部材が対向部材から離隔した状態で第1筐体を回動させるように構成することにより、記録部とガイド部との間の隙間が小さくてもこれらが干渉しにくくなる。つまり、隙間をなるべく小さくでき、装置全体のコンパクト化に寄与する。
【0013】
また、本発明においては、前記開放位置は、前記第1筐体が前記吐出位置にある際に、前記第3方向に関して前記環状部材が前記対向面に対して前記ガイド部よりも離隔した位置であることが好ましい。これによると、ガイド部よりも対向部材から離れた位置に環状部材を移動できるため、隙間をなるべく小さくできる。
【0014】
また、本発明においては、前記第1筐体が前記吐出位置にあるか否かを判断する判断手段をさらに備え、前記移動制御手段は、前記規制解除信号を受信した場合に、前記判断手段により前記第1筐体が前記吐出位置にないと判断された後に前記吐出位置にあると判断されるまでの間、前記環状部材が前記開放位置をとるように前記移動機構を制御することが好ましい。これによると、第1筐体が一旦吐出位置から離隔した後、吐出位置に戻ったと判断されるまで、環状部材が開放位置に保持される。このため、環状部材が封止位置のまま第1筐体が移動してしまい、環状部材とガイド部などの第2筐体側の構成とが干渉してしまうことを確実に防止できる。
【0015】
また、本発明においては、前記第2筐体が、前記搬送ローラとの間に記録媒体を挟み込み、前記搬送ローラの回動に伴って回動する従動ローラを収容していることが好ましい。これによると、搬送ローラと従動ローラとを第2筐体に収容することで、第1筐体が回動しても、搬送ローラと従動ローラとが移動しないため、位置精度の低下を抑制することができる。また、搬送ローラと従動ローラとを第2筐体に収容することで、ローラ対の近辺に第1筐体側との境界を設ける必要がない。したがって、U字状の湾曲経路の途中に干渉防止用の隙間を設ける必要がないため、記録媒体の詰まりが生じにくい。
【0016】
また、本発明においては、前記第2筐体が、前記U字状の湾曲経路において前記供給部よりも下流側かつ前記搬送ローラよりも上流側に配置され、記録媒体に付着した異物を除去する異物除去手段を収容していることが好ましい。これによると、異物除去手段は、搬送ローラよりも上流側に配置されているため、異物除去手段の近辺に第1筐体側との境界を設ける必要がない。そのため、第1筐体の回動の際、異物除去手段内の構成同士が干渉しあったり、異物がこぼれたりすることを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
ガイド部と記録部との間に干渉防止用の隙間が形成されている。ガイド部のガイド面は第3方向のうちの吐出面から支持部材に向かう方向に斜めに構成されている。つまり、記録媒体はガイド面に沿って当該隙間から離れる方向に搬送される。したがって、ガイド面に沿って案内される記録媒体は当該隙間と異なる方向に案内されるため、記録媒体はこの隙間には侵入しにくい。すなわち、第1筐体が第2筐体に対して回動する際に液体吐出ヘッドがガイド部に干渉しないように干渉防止用の隙間を設けたとしても、ガイド面がこの隙間に記録媒体が侵入しないように記録媒体を案内するため、用紙詰まりが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタを示す外観斜視図である。
【図2】プリンタの内部を示す概略側面図である。
【図3】ロック機構の一部を示す正面図である。
【図4】ロック機構の一部を示す説明図であり、図4(a)は回転禁止状態を示し、図4(b)は回転許可状態を示す。
【図5】図5(a)は、環状部材及びヘッドの底面図である。図5(b)は、環状部材、ヘッド及び対向部材の正面図である。
【図6】紙粉除去ユニットに設けられたオーガ部材の平面図である。
【図7】上筐体が離隔位置にある場合のプリンタの内部を示す概略側面図である。
【図8】上筐体が吐出位置から離隔位置へと移動する際の各部の位置関係を示すヘッド周辺の縦断面図である。図8(a)は上筐体が吐出位置にある状態に対応し、図8(b)は移動し始めてすぐの状態に対応する。
【図9】上筐体が吐出位置から離隔位置へと移動する際の各部の位置関係を示すヘッド周辺の縦断面図である。図9(a)は、図8(a)からさらに移動した状態に対応し、図9(b)は、図9(a)からさらに移動した状態に対応する。
【図10】制御部の構成を示すブロック図である。
【図11】キャリッジ移動機構が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
プリンタ1は、図1及び図2に示すように、共に直方体形状で且つサイズが略等しい上筐体1a及び下筐体1bを有する。上筐体(第1筐体)1aは下面が開口し、下筐体(第2筐体)1bは上面が開口している。上筐体1aが下筐体1b上に重なり、互いの開口面を封止することで、プリンタ1内部の空間が画定される(図2参照)。上筐体1aの天板上部には、排紙部1eが設けられている。上筐体1a及び下筐体1bにより画定される空間には、後述の給紙ユニット1cから排紙部1eに向けて、図2に示す破線の太矢印R1〜R5に沿って、用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。また、プリンタ1内には、プリンタ1の各部を制御する制御部100が設けられている。制御部100の詳細な構成については後述する。
【0021】
なお、図2において、紙面に直交する方向であって、手前から奥に向かう方向を主走査方向(第1方向)、主走査方向と直交し、右方に向かう方向を副走査方向(第2方向)、主走査方向及び副走査方向の両方に直交する方向を鉛直方向(第3方向)とする。
【0022】
上筐体1aには、主走査方向に沿った回転軸1xが設けられている。下筐体1bには、回転軸1xを回転可能に支持する軸受1yが設けられている。これにより、上筐体1aを下筐体1bに対して回転軸1xを中心に図1のA方向に回動させることができる。上筐体1aは、回動すると、回転軸1xを中心とした円弧状の軌跡をたどる。回転軸1x及び軸受1yは、図2に示すように、鉛直方向に関して上筐体1aの中央よりやや下方であって、副走査方向に関して端部(図中右端部)付近の位置に配置されている。この位置は、後述のヘッド10の吐出面10aより上方の位置(鉛直方向に関してプラテン61に対して吐出面10aよりも離隔した位置)である。上筐体1aは、回動することで、下筐体1bに近接した位置(図2に示す位置)と、この位置のときよりも下筐体1bから離隔した位置(図1に示す位置)とを取り得る。図2に示す位置は、後述のヘッド10から前処理液やインクなどの液体を吐出させる位置であり、以下において吐出位置と称する。図1に示す位置は、以下において離隔位置と称する。
【0023】
上筐体1aが離隔位置にあるとき、用紙搬送経路の一部が外部に露出され、そこにユーザの作業空間が確保される。上筐体1aが離隔位置に位置することで、作業空間が確保されると、ユーザは、用紙搬送経路においてジャム処理(用紙搬送経路における用紙Pの詰まりを解消する作業)を行うことができる。上筐体1aと下筐体1bとの間には、上筐体1aを下筐体1bに対して図1のA1方向へと(吐出位置から離隔位置に向けて)付勢するばね(不図示)が設けられている。本実施形態において、上筐体1aは、水平面に対して略35度の傾斜角度まで開くことができる。
【0024】
上筐体1aの一方の側面(図1の紙面右手前側の面)には、上筐体1aの位置を検出する筐体位置センサ121が設けられている。上筐体1aが吐出位置にある際には、筐体位置センサ121は、下筐体1bの所定箇所へと光を射出し、当該所定箇所に当たって反射した光を受け取ることにより、上筐体1aが吐出位置にあることを検出する。一方で、上筐体1aが吐出位置から離れると、出射光が所定箇所から外れるため、筐体位置センサ121が反射光を受け取れなくなり、上筐体1aが吐出位置から離れていることを検出する。筐体位置センサ121は、検出した結果を示す信号を制御部100へと出力する。
【0025】
上筐体1aの正面(図1の紙面左手前側の面)には、吐出位置にある上筐体1aの回動を規制するロック機構70が設けられている。下筐体1bの正面には、上筐体1aの正面を覆う開閉可能なパネル1dが設けられている。上筐体1aが吐出位置にある際、パネル1dを開放することによってロック機構70が外部に露出する。これにより、ロック機構70の操作が可能となる。上筐体1aを吐出位置から離隔位置に回動させる場合は、まず、パネル1dを開放し、ロック機構70による規制を解除してから上筐体1aを回動させる。一方、元に戻す場合は、上筐体1aを離隔位置から吐出位置に戻してから、ロック機構70で上筐体1aの回動を規制し、パネル1dを閉める。
【0026】
ロック機構70の詳細な構成について図3及び図4を参照しつつ説明する。ロック機構70は、円柱状の回転部材71と、2つの連動部材73a,73bと、揺動部材74a,74bと、バネ76a,76bと、固定部材75a,75bと、軸部材75c、75dと、レバー83と、ソレノイド84とを含む。回転部材71と、連動部材73a,73bと、揺動部材74a,74bと、バネ76a,76bとは、上筐体1aに保持されている。固定部材75a,75bと、軸部材75c、75dとは、下筐体1bに保持されている。連動部材73a,73bは、長手方向一端がそれぞれ回転部材71の周面に連結されている。揺動部材74a,74bは、各連動部材73a,73bの長手方向他端に連結され、軸部材75c、75dと係合可能な凹部74c、74dをそれぞれ有している。バネ76a,76bは、一端が各揺動部材74a,74bの上端に連結されており、他端が筐体1aに固定されている。固定部材75a,75bは、下筐体1bから回転部材71に向かって突出している。軸部材75c、75dは、副走査方向に延出しており、固定部材75a、75bにそれぞれ固定され、凹部74c、74dと係合可能である。
【0027】
回転部材71の正面には、棒状のツマミ72が固定されている。ツマミ72は、ユーザが手動で回転させることができ、回転部材71と一体的に回転する。ツマミ72の回転中心には、ユーザが押下可能なボタン72bが設けられている。また、ツマミ72の回転を禁止するソレノイド84が設けられている。
【0028】
バネ76a,76bはそれぞれ揺動部材74a,74bの上端を回転部材71に近づく方向に付勢している。これにより、外力が付加されない状況において、ロック機構70の各部は、図3(a)に示すようにツマミ72が鉛直方向に延在した状態で、静止している。
【0029】
図4(a)に示すように、回転部材71には凹部711が形成されている。また、回転部材71と隣接して、レバー83とソレノイド84が筐体1aに支持されている。レバー83は支軸831を中心に、図4(a)に示す位置と、図4(b)に示す位置とに回動可能である。レバー83が図4(a)に示す位置にあるときに、レバー83の一端側に形成された凸部832と回転部材71の凹部711とが係合する。一方、レバー83の他端側は、ソレノイド84のアーム841に連結されている。ソレノイド84は、ロック制御部106(図10参照)により駆動されると、図4(b)に示すようにアーム841を引き込む。一方、ソレノイド84は、ロック制御部106により駆動されていないときは、図4(a)に示すようにアーム841を引き込まない。また、レバー83の他端側は、バネ85に連結されており、バネ85は、レバー83の凸部832が回転部材71の凹部711に近づく向きに、レバー83を付勢している。つまり、ソレノイド84がロック制御部106により駆動されていないときは、レバー83はバネ85の付勢力により、レバー83の凸部832が回転部材71の凹部711に近づくように付勢されている。ここで、図4(a)に示す状態が、回転禁止状態であり、図4(b)に示す状態が回転許可状態である。回転禁止状態の場合、ユーザがツマミ72を回動させようとしても、凹部711と凸部832とが係合しているため回転部材71は回転せず、その結果ツマミ72も回転しない。一方、回転許可状態の場合、アーム841の凸部832と回転部材71の凹部711との係合が解除される。このとき、ユーザがツマミ72を回動させると、凸部832と凹部711とは係合していないため、回転部材71は回動し、その結果ツマミ72も回動する。
【0030】
ツマミ72は、通常は図4(a)に示す回転禁止状態にあり、ロック制御部106によりソレノイド84が駆動されることによって、回転禁止状態から図4(b)に示す回転許可状態に切り換えられる。例えば、ジャム処理等を行うために、ユーザがボタン72bを押下すると、ロック機構70による規制が解除されることを示す規制解除信号が、ボタン72bに内蔵されたボタンセンサ86から制御部100に出力される。つまり、ボタンセンサ86は、ボタン72bが押下されると、検出信号(規制解除信号)を制御部100に出力する。制御部100は、規制解除信号を受信した場合、ソレノイド84を駆動する。これによりツマミ72が回転禁止状態から回転許可状態に切り換わる。
【0031】
ロック機構70は、図3(a)に示す状態において、揺動部材74a、74bの凹部74c、74dが、軸部材75c、75dにそれぞれ係合している。この係合によって、吐出位置にある上筐体1aが離隔位置に向かって回動しないように、上筐体1aの移動が規制されている。
【0032】
回転許可状態とされたツマミ72を、ユーザがバネ76a,76bの付勢力に抗して時計回りに回転させると、図3(b)に示すように連動部材73a、73bが移動する。連動部材73a、73bが移動すると、揺動部材74a、74bの凹部74c、74dが軸部材75c、75dから外れるように揺動部材74a、74bが揺動する。これにより、上記係合が解除され(即ち、吐出位置にある上筐体1aの移動規制が解除され)、ユーザが手動で上筐体1aを吐出位置から離隔位置に移動させることができる。上筐体1aが吐出位置から離隔し始めると、筐体位置センサ121の検出信号に基づき、上筐体1aが吐出位置から離隔したと制御部100が判断する。上筐体1aが吐出位置から離隔したと制御部100が判断すると、ロック制御部106は、ソレノイド84の駆動を停止する。
【0033】
一方、ユーザが上筐体1aを手動で離隔位置から吐出位置に復帰させると、バネ76a,76bの付勢力によって揺動部材74a、74bの凹部74c、74dと、軸部材75c、75dとの係合が自動的に復帰する。上筐体1aが吐出位置に復帰すると、筐体位置センサ121の検出信号に基づき、上筐体1aが離隔位置から吐出位置に復帰したと制御部100が判断する。なお、この時点で揺動部材74a、74bの凹部74c、74dと、軸部材75c、75dとの係合も復帰している。また、レバー83の凸部832と回転部材71の凹部711との係合も復帰している。これにより、ツマミ72は回転禁止状態となる。こうして、ロック機構70による上筐体1aの離隔位置への移動規制が開始される。
【0034】
上筐体1a及び下筐体1bには、上筐体1aが吐出位置にある状態において形成される用紙搬送経路の周辺に、以下の各構成が配置されている。プリンタ1内の鉛直方向及び副走査方向にほぼ中央には、図2に示すように、ヘッドユニット9が収容されている。ヘッドユニット9は、液体を吐出する2つのヘッド10と、ヘッド10を支持するメインキャリッジ3a及びサブキャリッジ3bとキャップ部材40(環状部材)とを有している。ヘッド10は、副走査方向に沿って所定の間隔で配列されつつサブキャリッジ3bに固定されている。副走査方向に関して上流側のヘッド10は前処理液を吐出し、下流側のヘッド10はブラックインクを吐出する。サブキャリッジ3bは、メインキャリッジ3aを介して上筐体1aに支持されている。メインキャリッジ3aは、サブキャリッジ3bを、鉛直方向に往復移動可能に支持している。メインキャリッジ3aは、サブキャリッジ3bを鉛直方向に移動させるキャリッジ移動機構3c(図10参照)を有している。
【0035】
各ヘッド10は、主走査方向に長尺なライン式であり、略直方体の外形形状を有する。各ヘッド10において、上面には、チューブが取り付けられるジョイントが設けられ、下面の吐出面10aには、多数の吐出口が開口している。ジョイントに取り付けられるチューブからは、プリンタ1内のいずれかに収容されたインクカートリッジからの液体が供給される。ヘッド10内には、ジョイントから流れ込んだ液体を吐出口まで供給する流路が形成されている。吐出面10aは、主走査方向及び副走査方向の両方に沿った平坦な面である。吐出面10aは、回転軸1xより下方に配置されている。
【0036】
ヘッドユニット9の下方には、図2に示すように、支持部60が設けられている。支持部60は、鉛直方向に吐出面10aと対向して配置されている。支持部60は、図2に示すように、支持部60は、ヘッド10とそれぞれ対向する2つの回転体63と、回転体63の周面に固定された2つのプラテン61(支持部材)及び2つの対向部材62と、2つの回転体63を回転可能に支持するフレーム11とを有している。支持部60は、回転体63を主走査方向の回転軸に関して回動する回転体回動機構60aを有している(図10参照)。
【0037】
プラテン61及び対向部材62は、共に主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aより一回り大きなサイズを有し、且つ、鉛直方向に互いに対向して配置されている。
【0038】
プラテン61の表面は、吐出面10aに対向しつつ用紙Pを支持する支持面61aであり、用紙Pを保持できるように材料や加工に工夫が施されている。例えば支持面61aに、弱粘着性のシリコン層を形成したり、副走査方向に沿ったリブを多数形成したりすることで、支持面61a上に載置された用紙Pの浮き等が防止される。また、プラテン61は、樹脂により構成されている。
【0039】
対向部材62は、水分を透過しない又は透過し難い材料から構成されている。例えば、対向部材62は、金属又はガラスにより形成される。対向部材62の表面は、平滑であって、吐出面10aに対向する対向面62aである。
【0040】
回転体63の回転により、支持面61aが吐出面10aに対向し且つ対向面62aが吐出面10aに対向しない第1状態(図1、図2、図7〜図9の状態)と、支持面61aが吐出面10aに対向せず且つ対向面62aが吐出面10aに対向する第2状態(図5(b)の状態)とが切り換わる。本実施形態において、制御部100は、用紙Pに向けて吐出口から液体を吐出して用紙Pに画像を記録するとき(後述)は第1状態、キャップ部材40により吐出面10aを封止するとき(後述)は第2状態となるように、回転体63の駆動を制御する。制御部100は、回転体63を回転させる際、まず、キャリッジ移動機構3cを制御してサブキャリッジ3bを上昇させ、回転体63と干渉しないように吐出面10aを上方に十分に退避させる。そして、制御部100は、回転体回動機構60aを制御して回転体63を回動させた後、キャリッジ移動機構3cを制御してサブキャリッジ3bを降下させ、吐出面10aを元の位置に戻させる。
【0041】
ヘッドユニット9は、各ヘッド10下端部の外周を環状に取り囲むキャップ部材40(環状部材)を有している。キャップ部材40は、ゴム等の弾性材料からなり、図5(a)に示すように、平面視で吐出面10aの外周を囲む環状形状を有する。キャップ部材40の下端には、断面視逆三角形状の突出部40aが形成されている。
【0042】
キャップ部材40は、図5(b)に示すように、キャップ移動機構41(移動機構)により上下に昇降可能である。キャップ移動機構41は、複数のギア41Gと、これらギア41Gを駆動する駆動モータ41Mとを有しており、これらのギア41Gの駆動によりキャップ部材40を鉛直方向に昇降させる。この昇降によって、キャップ部材40は、上筐体1aが吐出位置にある際に、突出部40aが吐出面10aよりも上方に位置する上昇位置(開放位置)(図7、8に示す位置)と、突出部40aが吐出面10aよりも下方に位置し対向面62aと当接する下降位置(封止位置)(図5(b)に示す位置)とを取り得る。キャップ部材40の昇降可能な距離は、上筐体1aが吐出位置にある際にキャップ部材40が対向面62aと当接することが可能な距離となっている。
【0043】
キャップ部材40が下降位置を取り、対向面62aと当接すると、図5(b)に示すように、対向面62aに突出部40aの先端が当接することによって吐出面10aを封止する、すなわち、吐出面10aと対向面62aとの間に形成される吐出空間V1が、外部空間V2から隔離される。これにより、吐出面10aの吐出口近傍の液体の乾燥が抑制される。なお、キャップ部材40の開放位置は、図7(a)に示すように、突出部40aの下端が後述のリブ31yの下端より上方に位置するように調整されている。
【0044】
下筐体1b内の最下部には、図2に示すように、支持部60に向かって用紙Pを供給する給紙ユニット1cが収容されている。給紙ユニット1cは、給紙トレイ20、給紙ローラ21及び給紙ローラ21を駆動する駆動モータを有する。給紙トレイ20は下筐体1bに対して図2の左方から副走査方向に着脱可能である。給紙トレイ20は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収容可能である。給紙ローラ21は、給紙トレイ20内の用紙Pのうち最も上方のものを、図2の左方に向かって送り出す。
【0045】
給紙ローラ21から供給された用紙Pは、矢印R1に示す搬送経路に沿って、支持部60へと搬送される。搬送機構50は、搬送ガイド31a、搬送ローラ対22、搬送ガイド31b、搬送ローラ対23、紙粉除去ユニット90及び搬送ガイド31cを有している(図7参照)。これらの構成は、矢印R1に沿って上流から下流へと上記の順に配置されている。また、搬送機構50は、各搬送ローラ対を駆動する駆動モータを有している。矢印R1に沿った経路は、上方に向かいつつ、副走査方向に関して下筐体1bの外側(図2の左方)に凸となったU字状に湾曲している。以下、この経路を湾曲経路R1と称する。搬送ガイド31a〜31cは、湾曲経路R1を規定しており、この経路に沿って用紙Pを案内する。
【0046】
搬送ローラ対22は、搬送ガイド31aと搬送ガイド31bとの間に設けられ、搬送ローラ対23は、搬送ガイド31bと搬送ガイド31cとの間に設けられている。搬送ローラ対22は、従動ローラ22a及び駆動ローラ22b(搬送ローラ)を有している。搬送ローラ対23は、従動ローラ23a及び駆動ローラ23b(搬送ローラ)を有している。従動ローラ22a及び23aは、湾曲経路R1の外側に配置されている。駆動ローラ22b及び23bは、湾曲経路R1の内側に配置されている。駆動ローラ22b及び23bは、それぞれ駆動モータによって駆動される。従動ローラ22a及び23aは、駆動ローラ22b及び23bの回動に伴って回動する。搬送ローラ対22は、給紙ローラ21から送られた用紙Pを従動ローラ22a及び駆動ローラ22b間に挟みこみながら、搬送ガイド31a及び31bに沿って搬送ローラ対23へと搬送する。搬送ローラ対23は、搬送ローラ対22からの用紙Pを従動ローラ23a及び駆動ローラ23b間に挟みこみながら、搬送ガイド31b及び31cに沿って後述のレジローラ対24へと搬送する。
【0047】
搬送ローラ対23の近傍には、紙粉除去ユニット90が設けられている(図7参照)。紙粉除去ユニット90は、スポンジ部材91、オーガ部材92及び紙粉を貯めるシュート部材93を有している。スポンジ部材91は、従動ローラ23aの外表面に当接している。従動ローラ23aは、表面がフッ素樹脂により被覆されているなど、表面に電荷が蓄積しやすくなっていることが好ましい。搬送ローラ対23が回転すると、従動ローラ23aとスポンジ部材91とが擦れ合い、従動ローラ23aが帯電する。これにより、用紙Pに付着した紙粉が従動ローラに吸着される。そして、従動ローラ23aに吸着した紙粉は、スポンジ部材91によってローラ表面からシュート部材93内へとこそぎ落とされる。なお、シュート部材93の下面は、湾曲経路R1に面しており、搬送ローラ対22からの用紙Pを後述のレジローラ対24へと案内する。つまり、シュート部材93は、搬送ガイド31cとしても機能する。
【0048】
オーガ部材92は、シュート部材93内の上部に配置されている。オーガ部材92は、図6に示すように、主走査方向に沿って延びる円柱状の回転軸92aと、回転軸92aの表面から径方向に突出する羽根部92b及び92cとを有している。羽根部92bは、主走査方向に関して回転軸92aの中央部から一端に向かって、回転軸92aの周囲を取り巻きながら螺旋状に連続的に延びている。羽根部92cは、主走査方向に関して回転軸92aの中央部から他端に向かって、羽根部92bとは逆周りの螺旋状に連続的に延びている。回転軸92aを回動させると、羽根部92b及び92cが、シュート部材93内に蓄積した紙粉を、主走査方向に関して両側へとかき出す。
【0049】
搬送機構50は、さらに、搬送ガイド31d(ガイド部)及びレジローラ対24を有している(図7、図8(a)参照)。レジローラ対24は従動ローラ24a及び駆動ローラ24bを有している。従動ローラ24aは、搬送ガイド31dに回転可能に支持されている。駆動ローラ24bは、モータによって駆動される。駆動ローラ24bは、支持部60より上流側の搬送経路において、支持部60に最も近い搬送ローラである。レジローラ対24は、所定のレジ掛け時間の間、搬送ローラ対23によって搬送されてきた用紙Pの前端を無回転状態で挟持する。これにより、用紙Pの前端がレジローラ対24に挟持された状態でその傾きが補正される。以下、レジローラ対24によって用紙Pの傾きを補正することを斜行補正と称する。所定のレジ掛け時間が経過した後、レジローラ対24の回転が開始され、斜行補正された用紙Pが副走査方向に沿って送り出される。
【0050】
搬送ガイド31dの副走査方向に関して上流側の下面は、搬送ローラ対23からの用紙Pを、副走査方向に沿って、レジローラ対24に向かって案内する(図8(a)参照)。一方、搬送ガイド31dの下端部であって、副走査方向下流側(支持部60に近い側)の端部には、下流側に向かって突出する突出部31xが設けられている。突出部31xの下端には、さらに下流側に向かって突出するリブ31yが形成されている。突出部31xは、副走査方向に関してレジローラ対24よりも下流であって、ヘッドユニット9よりも上流側に配置されている。
【0051】
突出部31xの下面(ガイド面)は、副走査方向下流側に向かうにつれて、鉛直方向に関して吐出面10aから離隔し、プラテン61の支持面61aに向かうように、下方に向かって傾斜している。レジローラ対24から副走査方向に送り出された用紙Pは、突出部31xの下面に沿って案内され、支持面61aへと斜め下方に向かう(図8(b)参照)。案内された用紙Pは、支持面61aに支持されつつ、副走査方向に沿って上流側のヘッド10の下方近傍へと搬送される。なお、上記の通り、キャップ部材40が開放位置にあるときには、キャップ部材40の下端は、リブ31yの下端より上方に配置される。この場合、リブ31yを通過した用紙Pが、キャップ部材40に引っかかりにくい。
【0052】
ヘッドユニット9の周辺には、図2に示すように、副走査方向に沿って用紙Pを案内する搬送ガイド32a及び32b、用紙Pを搬送ガイド32a及び32bに沿って搬送する搬送ローラ対25及び26、並びに、用紙Pを上方から抑える抑えローラ33及び34が設けられている。搬送ガイド32a、搬送ローラ対25及び抑えローラ33は、2つのヘッド10間に配置され、搬送ガイド32b、搬送ローラ対26は、下流側のヘッド10より下流に配置されている。レジローラ対24から搬送された用紙Pは、上流側のヘッド10の下方を通過し、搬送ガイド32aに案内されつつ、搬送ローラ対25によって下流側のヘッド10へとさらに搬送される。下流側のヘッド10の下方を通過した用紙Pは、搬送ガイド32bによって案内されつつ、搬送ローラ対26によってさらに下流側へと搬送される。
【0053】
搬送ローラ対26から排紙部1eの上端までの間には、矢印R3〜R5に沿った搬送経路が形成されている。この搬送経路は、搬送ローラ対26から上方に向かいつつ、副走査方向に上筐体1aの外側(図2の右方)に向かって凸となるようにU字状に湾曲している。この搬送経路には、その上流から下流に向かって、搬送ガイド33a、搬送ローラ対27、搬送ガイド33b及び搬送ローラ対28が順に設けられている。また、搬送ローラ対26〜28同士の間には、湾曲した経路の内側から用紙Pを抑える複数の抑えローラ35が設けられている。搬送ガイド33a及び33bは、湾曲した搬送経路に沿って用紙Pを案内する。搬送ローラ対27及び28は、搬送ガイド33a及び33bに沿って用紙Pを搬送すると共に、排紙部1eへと送り出す。
【0054】
以上のように、プリンタ1内には給紙ユニット1cから排紙部1eへと向かう矢印R1〜R5に沿った搬送経路が形成されている。この搬送経路は、図2に示すように、逆S字の概略形状を有する。具体的には、この搬送経路は、給紙ユニット1cから左方に向かい、そこから上方にU字状に湾曲すると共に、ヘッド10と支持部60との間では右方に向かい、プリンタ1の右端部において上方にU字状に湾曲して、プリンタ1の上端部において左方の排紙部1eに向かっている。
【0055】
さらに、プリンタ1内には、矢印R1〜R5に沿った上記の経路以外の搬送経路として、再搬送経路及び手差搬送経路が形成されている。再搬送経路は、矢印R1〜R4に沿って一旦搬送ローラ対28まで達した用紙Pを、排紙部1eに排出せず後戻りさせて、矢印T1〜T3に沿って再び支持部60の上流側へと搬送する経路である。再搬送経路には、その上流から下流に向かって、搬送ガイド95a、搬送ローラ対96、搬送ガイド95b、搬送ローラ対97及び搬送ガイド95cが順に設けられている。また、搬送ローラ対27及び28は、矢印R4及びR5とは逆方向に用紙Pを再搬送できるよう、逆回転が可能に構成されている。
【0056】
搬送ローラ対27及び28によって逆方向に搬送された用紙Pは、矢印T1に沿って、ほぼ鉛直下方へと搬送ローラ対96に向かう。搬送ローラ対96及び73は、搬送ローラ対27及び28から逆搬送された用紙Pを、搬送ガイド95a〜71cに沿って、矢印T1及びT2の方向に、湾曲経路R1の途中部へと搬送する。搬送された用紙Pは、湾曲経路R1に途中から合流し、再び搬送ローラ対23へと向かう。搬送ローラ対97から搬送ローラ対23までの経路は、副走査方向に関して下筐体1bの外側に向かって凸となるようにU字状に湾曲している。搬送ローラ対23は、支持部60に向かって用紙Pを搬送する。このようにヘッド10へと用紙Pが再搬送されることにより、すでに画像が形成された表面とは逆の表面が吐出面10aと対向する。
【0057】
手差搬送経路は、手差しされた用紙を搬送する経路である。図2の状態からパネル1dを開放すると、図1に示すように、開放されたパネル1dの上面に、装置正面から手差しした用紙を支持するトレイ部81が形成される。トレイ部81に支持された用紙Pは、搬送ローラ82によって、図2の矢印Uに沿って搬送される。そして、湾曲経路R1に途中から合流し、搬送ローラ対23へと向かう。
【0058】
以下、制御部100の構成について図10を参照しつつ説明する。制御部100は、記録制御部101、給紙制御部102、搬送制御部103、筐体位置判断部104、キャップ移動制御部105及びロック制御部106を有している。制御部100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)の他、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )、I/F(Interface)、I/O(Input/Output Port)等を有している。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAMには、プログラム実行時に必要なデータが一時的に記憶される。ASICでは、画像データの書き換え、並び替え等(例えば、信号処理や画像処理)が行われる。I/Fは、外部装置(プリンタ1に接続されたPC等)とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。これらは、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとCPU等のハードウェアとが協働して機能することにより、以下に説明する記録制御部101等の各機能部が実現するように構成されている。
【0059】
記録制御部101は、画像データに基づいて用紙Pに向けて液体を吐出するように、ヘッド10を制御する。給紙制御部102は、給紙トレイ20に収容された用紙Pを給紙ローラ21によって送り出すように給紙ローラの駆動モータを制御する。
【0060】
搬送制御部103は、プリンタ1内に形成された3つの搬送経路に沿って用紙Pを搬送するように、搬送機構50及び搬送ローラ対の駆動モータを制御する。第1の搬送経路に関しては、搬送制御部103は、搬送機構50を制御して、給紙ユニット1cから供給された用紙Pを図2の矢印R1及びR2に沿って支持部60へと搬送させる。さらに、搬送制御部103は、搬送ローラ対25〜28の駆動モータを制御して、用紙Pを矢印R2〜R5に沿って支持部60から排紙部1eへと搬送させる。
【0061】
第2の搬送経路に関しては、搬送制御部103は、トレイ部81に手差しされた用紙を湾曲経路R1に向かって矢印Uに沿って搬送するように、搬送ローラ82の駆動モータを制御する。そして、搬送制御部103は、これによって湾曲経路R1に途中から合流させた用紙を、搬送ローラ対23〜28の駆動モータを制御して、第1の搬送経路と同様の経路に沿って搬送させ、排紙部1eへと排出させる。
【0062】
第3の搬送経路に関しては、搬送制御部103は、搬送ローラ対27、28、72及び73の駆動モータを制御して、第1又は第2の搬送経路に沿って一旦搬送ローラ対28まで搬送された用紙を、矢印T1〜T3に沿って湾曲経路R1まで戻させる。その後は、第1及び第2の搬送経路と同様に、搬送ローラ対23〜28を制御して、用紙を排紙部1eへと排出させる。
【0063】
記録制御部101、搬送制御部103及び給紙制御部102は、用紙P又は手差し用紙(以下、用紙等とする)の供給及び搬送とヘッド10からの液体吐出とを同期させながら制御する。これにより、用紙等が上記の第1又は第2の搬送経路に沿って搬送されつつ、ヘッド10の下方近傍を通過する際にヘッド10から用紙等へと液体が吐出され、用紙等上に所望の画像が形成される。画像が形成された用紙等は、排紙部1eに排出される。あるいは、画像が形成された用紙等は、第3の搬送経路に沿って湾曲経路R1へと戻され、再びヘッド10の下方近傍を通過すると共に、ヘッド10から吐出された液体によって画像が形成される。このとき、用紙等は、最初にヘッド10の下方近傍を通過した際とは逆の表面がヘッド10と対面する。したがって、用紙等には、すでに画像が形成された表面とは逆の表面に画像が形成される。これにより両面に画像が形成された用紙等が、排紙部1eへと排出される。
【0064】
筐体位置判断部104は、筐体位置センサ121からの検出結果を示す信号に基づいて、上筐体1aが吐出位置にあるか否かを判断する。キャップ移動制御部105は、キャップ移動機構41を制御して、封止位置と開放位置との間でキャップ部材40の位置を切り換える。用紙等に画像を形成する制御を実行する際は、キャップ移動制御部105は、キャップ部材40を対向面62aから離隔させる。キャップ移動制御部105は、キャップ部材40の位置を示すフラグを保持しており、キャップ部材40の位置を切り換えるごとにこのフラグを更新する。また、キャップ移動制御部105は、後述のとおり、ロック機構70や筐体位置センサ121からの検出信号に基づいて、キャップ移動機構41を制御する。
【0065】
ロック制御部106は、ソレノイド84の駆動を制御する。ロック制御部106がソレノイド84を駆動するとアーム841はソレノイド84に引き込まれ、ソレノイド84を駆動しないときアーム841はソレノイド84に引き込まれない。ユーザがボタンを押下することによりボタンセンサ86が検知信号(規制解除信号)を出力すると、ロック制御部106は、ソレノイド84を駆動する。ソレノイド84が駆動されると、アーム84がソレノイド84に引き込まれて、図4(b)に示すように回転許可状態となる。その後、筐体位置判断部104が、上筐体1aが吐出位置にないと判断すると、ロック制御部106は、ソレノイド84の駆動を停止する。
【0066】
この他、制御部100は、キャリッジ移動機構3c、回転体回動機構60a等の制御を行う。
【0067】
なお、ヘッドユニット9及びヘッド10を制御する記録制御部101は、本発明における記録部に対応する。搬送機構50及びこれを制御する搬送制御部103は、本発明における搬送部に対応する。給紙ユニット1c及びこれを制御する給紙制御部102は、本発明における供給部に対応する。ロック機構70及びこれを制御するロック制御部106は、本発明における規制手段に対応する。筐体位置センサ121及び筐体位置判断部104は、本発明における判断手段に対応する。キャップ移動制御部105は、本発明における移動制御手段に対応する。
【0068】
ところで、上筐体1aが吐出位置から離隔位置へと移動する際、上筐体1aに収容された各構成は、回転軸1xを中心に回動することとなる。例えば、ヘッドユニット9もそのような構成の一つである。一方、ヘッド10の吐出面10aは、上述のとおり、回転軸1xより下方に配置されている。このため、ヘッドユニット9の下端部は、上筐体1aが吐出位置から移動するのに伴い、図2の斜め上方(矢印Qに示す方向)に移動することとなる。したがって、ヘッドユニット9の下端部が下筐体1b側の構成と干渉するのを避けるため、ヘッドユニット9の下端部と下筐体1b側の構成とが、副走査方向に関して隙間を隔てて配置される必要がある。なお、後述の隙間Gは、このような隙間の一例である(図8(a)参照)。
【0069】
上記のように、上筐体1a側の構成と下筐体1b側の構成との境界領域では、互いの構成が干渉しないように隙間を設けなければならない場合がある。これは、湾曲経路R1近傍やレジローラ対24において、上筐体1a側の構成と下筐体1b側の構成とを分ける場合においても同様である。仮に、湾曲経路R1の近傍において上筐体1a側と下筐体1b側とを分けるとする。例えば、紙粉除去ユニット90近傍で分けるとすると、紙粉除去ユニット90を上筐体1a側とし、搬送ローラ対23を下筐体1b側とすることが考えられる。この場合、シュート部材93と搬送ローラ対23とが干渉しないように、上記のような干渉防止用の隙間をシュート部材93とローラとの間に形成しなければならない。
【0070】
しかしながら、シュート部材93は、湾曲経路R1の外側境界を規定するものである。したがって、このような部材とローラとの間に隙間を空けると、湾曲経路R1の外側境界に隙間を形成することになる。一方、用紙Pは、湾曲経路R1に沿って湾曲する際、湾曲状態から元に戻ろうとする。このため、湾曲経路R1の外側に隙間があると、その隙間に用紙Pの先端が引っかかりやすい。したがって、紙粉除去ユニット90の近傍で上筐体1a側と下筐体1b側とを分けるのは好ましくない。また、紙粉除去ユニット90の近傍にこのような境界を設けると、搬送ローラ対23と紙粉除去ユニット90とが離隔する際、その間から除去された紙粉が装置内にこぼれて汚染の原因となるおそれもある。このように、紙粉除去ユニット90に上筐体1a側と下筐体1b側の境界を設けることは、用紙Pの詰まりを防止する観点からも好ましくない。これは、湾曲経路R1近辺に配置された他の構成においても同様である。
【0071】
一方で、レジローラ対24において上筐体1a側と下筐体1b側とを分けるとすると、従動ローラ24aを上筐体1a側とし、駆動ローラ24bを下筐体1b側とすることが考えられる。この場合も上記と同様、上筐体1aの移動に伴い、従動ローラ24aが図2中、左斜め上に移動する。このため、従動ローラ24aと他の構成との間に隙間を形成しなければならず、この隙間は用紙Pの詰まりの原因となるおそれがある。さらに、レジローラ対24は、ヘッド10へと用紙Pを搬送する直前に用紙Pを斜行補正する手段である。したがって、従動ローラ24aが駆動ローラ24bから離隔するように構成すると、ローラの位置を精密に調整できず、斜行補正の精度が十分に確保できなくなるおそれがある。
【0072】
以上を考慮し、本実施形態においては、上筐体1a内の構成と下筐体1b内の構成とが、図2の二点鎖線Bを境界として区分されている。二点鎖線Bは湾曲経路R1の近辺を通っていないので、湾曲経路R1近辺の構成同士の間には干渉防止用の隙間を設ける必要がない。つまり、用紙Pの詰まりの原因となるような隙間を湾曲経路R1の近傍に設ける必要がない。
【0073】
具体的には、下筐体1bには、パネル1d、搬送ローラ82及び紙粉除去ユニット90、搬送ローラ対22及び23、搬送ガイド31a〜31d、並びに、レジローラ対24が収容されている。ローラ対は、従動ローラも駆動ローラも下筐体1bに収容されている。また、下筐体1bには、支持部60、搬送ローラ対25のうち、下側の駆動ローラ25b等も収容されている。一方、上筐体1aには、ヘッドユニット9、搬送ガイド32a、抑えローラ33や、搬送ローラ対25のうち、上側の従動ローラ25a等が収容されている。このような収容区分により、上筐体1aが離隔位置に移動すると、各構成は、図7に示すように配置されることとなる。
【0074】
一方で、ヘッドユニット9は上筐体1a側に、搬送ガイド31dは下筐体1b側に配置されるため、搬送ガイド31dとヘッドユニット9(より詳しくは、キャップ部材40)との間には、図8(a)に示すように、副走査方向に関して互いを隔てる隙間Gが形成されている。ここで、隙間Gは、用紙Pの搬送経路の近傍に形成されているため、用紙Pの詰まりの原因になるおそれがあるとも考えられる。しかしながら、搬送ガイド31dは、上記のとおり、支持面61aに向かって斜め下方に用紙Pを案内する。この方向は、搬送経路の上方に配置された隙間Gとは異なる方向である。したがって、用紙Pは、隙間Gには引っかかりにくい。
【0075】
具体的には、隙間Gは、搬送ガイド31dの側面とキャップ部材40の側面との間に形成されている。搬送ガイド31dの下端部には、ヘッドユニット9に向かって突出する突出部31xが形成されているので、隙間Gは、突出部31xとキャップ部材40とに挟まれた部分(矢印Wで指した部分)において、一部狭くなっている。隙間Gの大きさや形状は、上筐体1aが吐出位置と離隔位置との間で移動する際、キャップ部材40が開放位置にある状態(図8(a)の状態)に保持されることを前提に、ヘッドユニット9と搬送ガイド31dとが干渉しないように調整されている。
【0076】
このような隙間Gが形成されていることにより、上筐体1aが吐出位置から離隔位置まで移動する際、キャップ部材40は、図8(a)→図8(b)→図9(a)→図9(b)の順に移動し、隙間Gを通過する。例えば、図8(b)の状態では、キャップ部材40の左端部が、隙間Gに対応する領域に掛かっている。図9(a)の状態では、キャップ部材40の左下端部が隙間Gに対応する領域に掛かっている。図9(b)の状態では、キャップ部材40を含め、ヘッドユニット9の全体が隙間Gから完全に離隔している。このように、ヘッドユニット9の一部(キャップ部材40)が隙間Gに対応する領域を通過することで、ヘッド10が搬送ガイド31dと干渉せず、円滑に移動できる。
【0077】
ところで、キャップ部材40が封止位置にある際に、ユーザが上筐体1aを移動させようとすることは十分考えられる。このとき、キャップ部材40が封止位置にある状態のまま上筐体1aが移動すると、ヘッドユニット9と突出部31xとが干渉する可能性が高い。隙間Gは、上記のとおり、キャップ部材40が開放位置にある状態で上筐体1aが移動することを前提とし、これによって、幅が狭く構成されているためである。
【0078】
そこで、本実施形態では、キャップ移動制御部105が、ロック機構70からの規制解除信号に基づき、キャップ移動機構41を制御して、キャップ部材40を封止位置から開放位置へと移動させる。具体的には、制御部100は、図11に示す制御を実行する。まず、ロック制御部106は、ロック機構70から規制解除信号が出力されたか否かを判断する(S1)。規制解除信号が出力されていないと判断された場合(S1、No)には、制御部100は、制御を一旦終了する。ロック制御部106は、その後、S1からの処理ルーチンを定期的に実行し、規制解除信号が出力されたか否かを監視する。
【0079】
規制解除信号が出力されたと判断された場合(S1、Yes)には、キャップ移動制御部105は、キャップ部材40が封止位置及び開放位置のいずれにあるかを判断する(S2)。キャップ移動制御部105は、上記のとおり、キャップ部材40の状態を示すフラグを保持しており、このフラグに基づいてS2の判断を実行する。キャップ部材40が開放位置にあると判断された場合(S2、No)、ロック制御部106は、ソレノイド84を駆動する。その後、上筐体1aが吐出位置にないと判断されると、ロック制御部106はソレノイド84の駆動を停止する。筐体位置判断部104は、上筐体1aが吐出位置から移動した後、吐出位置に復帰したか否かを判断する(S6)。そして、キャップ移動制御部105は、上筐体1aが吐出位置に復帰したと判断されるまで、処理を待機する(S6、No)。つまり、上筐体1aが吐出位置に復帰したと判断されるまで、キャップ移動制御部105は、キャップ部材40が開放位置を維持するように制御する。上筐体1aが吐出位置に復帰したと判断されると、制御部100は、制御を終了する。このように、上筐体1aが吐出位置に復帰したと判断されるまで処理を待機するので、この間、キャップ部材40を開放位置に確実に保持できる。
【0080】
S2において、キャップ部材40が封止位置にあると判断された場合(S2、Yes)、キャップ移動制御部105は、キャップ部材40を開放位置へと移動させるようにキャップ移動機構41を制御する(S3)。その後、ロック制御部106は、ソレノイド84を駆動する。その後、上筐体1aが吐出位置にないと判断されると、ロック制御部106はソレノイド84の駆動を停止する。次に、筐体位置判断部104は、上筐体1aが吐出位置から移動した後、吐出位置に復帰したか否かを判断する(S4)。そして、上筐体1aが吐出位置に復帰したと判断されるまで、キャップ移動制御部105は処理を待機する(S4、No)。つまり、上筐体1aが吐出位置に復帰したと判断されるまで、キャップ移動制御部105は、キャップ部材40が開放位置を維持するように制御する。上筐体1aが吐出位置に復帰したと判断されると(S4、Yes)、キャップ移動制御部105は、キャップ移動機構41を制御して、キャップ部材40を封止位置へと移動させる(S5)。これにより、キャップ部材40が封止位置にあるときに、規制解除信号が受信された場合には、キャップ部材が開放位置に移動した後に、ロック機構70による上筐体1aの規制が解除される。そのため、ヘッドユニット9と搬送ガイド31dとの干渉をより確実に回避することができる。
【0081】
以上説明した本実施形態によると、搬送ガイド31dとヘッドユニット9(より詳しくは、キャップ部材40)との間に干渉防止用の隙間Gが形成されているため、上筐体1aが移動する際、搬送ガイド31dとヘッドユニット9とが干渉しにくい。一方、搬送ガイド31dは、用紙Pを隙間Gから離隔する方向に案内する。このため、用紙Pは、隙間Gとは異なる方向に案内されることとなるので、隙間Gには用紙Pが侵入しにくい。つまり、搬送ガイド31dとヘッドユニット9との干渉防止用の隙間Gを設けた場合でも、搬送ガイド31dがこの隙間には用紙Pが侵入しないように用紙Pを案内するため、用紙Pの詰まりが生じにくい。
【0082】
また、上筐体1a側と下筐体1b側との境界が湾曲経路R1近傍には設けられていないため、U字状の湾曲経路R1の途中に干渉防止用の隙間を設ける必要がなく、用紙Pの詰まりが生じにくい。例えば、紙粉除去ユニット90の近辺に境界を設ける必要がなく、上筐体1aの回動の際、紙粉除去ユニット90内の構成同士が干渉しあったり、紙粉がこぼれたりしない。また、搬送ローラ対22〜23やレジローラ対24のいずれにおいても、従動ローラも駆動ローラも下筐体1b側に収容されるため、これらのローラが互いに離隔することもなく、用紙の搬送制度が低下することもない。特に、レジローラ対24による斜行補正の精度が低下しない。
【0083】
また、搬送ガイド31dの下端部であって、プラテン61に近い側の端部に突出部31xが設けられている。これによって、隙間Gの幅が一部狭くなっている(図8(a)の矢印Wが指す部分)。上筐体1aが移動する際、ヘッドユニット9(キャップ部材40)は、図2の矢印Qに沿って図中左斜め上方へと向かう。つまり、ヘッドユニット9は、上方へと向かいつつ搬送ガイド31dに近づく。したがって、ヘッドユニット9は、搬送ガイド31dの下端部であって、プラテン61に近い側の端部に形成された突出部31xとは、干渉しにくい。一方、隙間Gに幅の狭い部分が形成されていることにより、用紙Pがこの隙間Gに引っかかりにくくなっている。つまり、突出部31xを、搬送ガイド31dの下端部であって、プラテン61に近い側の端部に形成することにより、ヘッドユニット9との干渉は回避しつつ、用紙Pの詰まりを抑制できる。
【0084】
また、隙間Gの大きさ、形状は、キャップ部材40が開放位置にある状態で上筐体1aが移動することを前提として調整されている。これにより、キャップ部材40が封止位置にあるまま上筐体1aが移動することを前提とする場合と比べて、隙間Gの幅を小さく抑えることができる。これは、装置全体のコンパクト化に寄与する。
【0085】
また、ロック機構70が解除される際、キャップ移動制御部105が、規制解除信号と筐体位置センサ121からの信号とに基づき、上筐体1aが吐出位置に復帰するまで確実にキャップ部材40を開放位置に保持する。このため、キャップ部材40が封止位置のまま上筐体1aが移動してしまい、キャップ部材40と搬送ガイド31dとが干渉してしまうことが確実に防止される。
【0086】
なお、本実施形態において回転軸1xが、上筐体1aの図2中右端部に配置されているのは、用紙搬送経路との位置関係上、以下の理由による。用紙Pの搬送経路は、図2において、逆S字の概略形状を有している。このような搬送経路によると、本実施形態のように、排紙部1eへのアクセスは図2中左方から行うと共に、給紙トレイ20の着脱も左方から行う構成となる。一方で、回転軸1xが上記の位置に配置されることにより、上筐体1aを回動させると、プリンタ1において図2中左端部が開放される。このため、ヘッド10と支持部60との間に用紙Pが詰まった場合、図2中左方から詰まった用紙Pの処理を行うことができる。このように、回転軸1xを上記の位置に配置すると、排紙部1eへのアクセス、給紙トレイ20の着脱及び用紙詰まりの処理のいずれにおいても同じ方向から行う構成となり、操作性が向上する。
【0087】
また、本実施形態では、回転軸1xが吐出面10aより上方に配置されている。これは、回転軸1xが上方にあると、上筐体1aが回動した際、上筐体1aの図2中右端(装置後部)が右方にせり出しにくくなる。このため、装置後方のスペースが小さくなり、装置の設置面積を小さく抑えることができるからである。
【0088】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0089】
例えば、上述の実施形態では、回転体63によりプラテン61と対向部材62との位置が切り換わる構成となっている。しかし、プラテンが固定されており、他の部材と切り換わったりしない構成であってもよい。この場合は、本発明における支持部材の役割と対向部材の役割とを固定のプラテンが兼ねることとなる。
【0090】
また、上述の実施形態では、ロック機構70からの信号を規制解除信号としている。しかし、ロック機構70からの信号ではなく、用紙搬送経路における用紙Pの詰まりの発生を検出する信号が、規制解除信号として制御部100へと出力されてもよい。具体的には、例えば、用紙が正常に搬送されたか否かを監視する用紙センサからの信号や、搬送ローラ対22〜28の駆動モータからの信号等に基づいて、制御部100が用紙詰まりの発生を検知する。これによって用紙詰まりの発生を検知した場合、制御部100は、そのとき用紙センサ等から出力された信号を規制解除信号とみなして図11の処理を行う。
【0091】
また、本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等の各種液体吐出装置に適用可能である。ヘッドは、インク以外の液体を吐出するものでもよい。
【符号の説明】
【0092】
22-28 搬送ローラ対
31a-31d 搬送ガイド
71a-71c 搬送ガイド
1 プリンタ
1a 上筐体
1b 下筐体
1c 給紙ユニット
1d パネル
1e 排紙部
1x 回転軸
9 ヘッドユニット
10 ヘッド
10a 吐出面
24 レジローラ対
31x 突出部
40 キャップ部材
41 キャップ移動機構
50 搬送機構
60 支持部
61 プラテン
62 対向部材
70 ロック機構
90 紙粉除去ユニット
100 制御部
101 記録制御部
102 給紙制御部
103 搬送制御部
104 筐体位置判断部
105 キャップ移動制御部
121 筐体位置センサ
G 隙間
P 用紙
R1 湾曲経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に向かって液体を吐出する吐出面を有し、前記吐出面と平行な第1方向に長尺な液体吐出ヘッドを含む記録部と、
記録媒体を供給する供給部と、
前記吐出面に対向して記録媒体を支持する支持部材と、
前記供給部から前記支持部材に向かうU字状の湾曲経路を規定して記録媒体を案内する搬送ガイド、及び、前記搬送ガイドに沿って記録媒体を搬送する搬送ローラを含み、前記吐出面と平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向に記録媒体を搬送する搬送部と、
前記記録部を収容した第1筐体と、
前記供給部と、前記支持部材と、前記搬送機構とを収容した第2筐体とを備えており、
前記第1筐体は、
前記第1方向に沿った回転軸を中心に回動可能で、且つ、前記支持部材に支持された記録媒体に向かって前記記録部が液体を吐出する吐出位置と、前記吐出位置よりも前記記録部と前記支持部材とが離隔した離隔位置とを取りうるように構成され、
前記回動軸は、
前記第1筐体が前記吐出位置にある際に、前記吐出面と直交する第3方向に関して前記支持部材に対して前記吐出面よりも離隔した位置であって、前記第2方向に関して前記記録部よりも下流側の位置に配置されており、
前記搬送ガイドは、
前記第2方向において前記搬送ローラよりも下流側かつ前記記録部よりも上流側に配置され、前記第2方向下流側に向かうにつれて前記第3方向のうちの前記吐出面から前記支持部材に向かうように傾斜したガイド面を含み、前記ガイド面に沿って記録媒体を案内するガイド部を有しており、
前記ガイド部は、
前記第1筐体が前記吐出位置にある際に、前記第2方向に関して前記記録部と隙間を隔てて対向しており、
前記記録部は、
前記第1筐体が前記吐出位置と前記離隔位置との間で移動する際に、前記隙間に対応する領域を通過することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ガイド部において前記第2方向下流側の端部であって前記第3方向に関して前記支持部材に近い側の端部が、前記第2方向に向かって突出していることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記記録部は、前記吐出面の周囲を取り囲む環状部材をさらに備え、
前記吐出面と対向可能な対向部材と、
前記環状部材を前記対向部材に当接させて前記吐出面を封止する封止位置と、前記環状部材を前記対向部材から離隔させる開放位置とを取り得るように、前記環状部材を前記第3方向に関して移動させる移動機構と、
前記吐出位置にある前記第1筐体の回動を規制する規制手段と、
前記規制手段による規制が解除されることを示す規制解除信号を受信した場合に、前記環状部材が前記開放位置をとるように前記移動機構を制御する移動制御手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記開放位置は、前記第1筐体が前記吐出位置にある際に、前記第3方向に関して前記環状部材が前記対向面に対して前記ガイド部よりも離隔した位置であることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1筐体が前記吐出位置にあるか否かを判断する判断手段をさらに備え、
前記移動制御手段は、
前記規制解除信号を受信した場合に、前記判断手段により前記第1筐体が前記吐出位置にないと判断された後に前記吐出位置にあると判断されるまでの間、前記環状部材が前記開放位置をとるように前記移動機構を制御する請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第2筐体が、
前記搬送ローラとの間に記録媒体を挟み込み、前記搬送ローラの回動に伴って回動する従動ローラを収容していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第2筐体が、
前記U字状の湾曲経路において前記供給部よりも下流側かつ前記搬送ローラよりも上流側に配置され、記録媒体に付着した異物を除去する異物除去手段を収容していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−28131(P2013−28131A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167035(P2011−167035)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】