説明

液体吐出装置

【課題】ノズル部先端に残った液体を充分に引き戻すことができ、ノズル部先端で液体が乾燥固化することを安定して抑制できる液体吐出装置の提供を目的とする。
【解決手段】液体を収容する容器の上部開口部に取り付けられ、シリンダ部16、及び、シリンダ部16の上方に付勢された状態で、シリンダ部16内に押し込まれるように設けられたピストン部18を有するポンプ体10と、ピストン部18の上方に接続され、液体を吐出するノズルヘッド体12と、ノズルヘッド体12を下方に押圧し、ノズルヘッド体12への押圧力を解除したとき、ノズルヘッド体12とピストン部18とを離間してノズルヘッド体12内の液体を引き戻す第1のバックサクション機構15を有する液体吐出装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドソープ等の液体製剤を収容する容器としては、液体を収容する容器から液体を吸い上げるポンプ体と、該ポンプ体で吸い上げられた液体を吐出するノズルヘッド体を有する液体吐出装置を備えたものが広く使用されている。
液体吐出装置としては、例えば、図8に例示した、ポンプ体110とノズルヘッド体112を有する液体吐出装置101が挙げられる。ポンプ体110は、シリンダ部114と、上方に付勢された状態でシリンダ部114に上方から押し込めるように設けられ、内部に流路116aが形成されたピストン部116と、ピストン部116を上方に付勢するためのコイルバネ118と、シリンダ部114の下方に形成された吸引口114aを開閉する弁体120と、を有する。ノズルヘッド体112は、ポンプ体110のピストン部116の上端に接続され、ピストン部116の流路116aと連通する流路122aが形成されたヘッド部122と、ヘッド部122から延出するように設けられ、ヘッド部122の流路122a内の液体を吐出するノズル部124とを有する。
【0003】
液体吐出装置101の使用時には、ノズルヘッド体112のヘッド部122をコイルバネ118による付勢力に抗して押し下げ、ポンプ体110のピストン部116をシリンダ部114内に押し込む。これにより、シリンダ部114内の液体が加圧され、該液体がノズルヘッド体112へと圧送されることで、ノズル部124から吐出される。その後、押し下げられたピストン部116の位置がコイルバネ118による付勢力によって復元する。このとき、ピストン部116の上昇に伴ってシリンダ部114内が負圧となって弁体120が引き上げられ、開いた吸引口114aから容器内の液体がシリンダ部114内に吸い上げられる。シリンダ部114内に液体が充分に吸い上げられると、吸引口114aが弁体120によって閉じられる。
【0004】
このような液体吐出装置101では、ポンプ体110を稼動させることによってノズルヘッド体112のノズル部124から液体を吐出した後、ノズル部124の先端に液体が残留し、該液体が乾燥固化してノズル部124の先端が目詰まりすることがある。ノズル部124の先端が目詰まりすると、その後使用する際に、ノズル部124から液体が意図せぬ方向へ吐出され、衣類や家具等を汚してしまう問題がある。
【0005】
そこで、ノズルヘッド体のノズル部に液体が残留して乾燥固化することを抑制する目的で、以下に示す液体吐出装置が提案されている。
(i)ポンプ体の動きに連動し、該ポンプ体の位置が復元したときにノズル部の開口を閉じるシャットオプピンや蓋が設けられた液体吐出装置(特許文献1〜4)。
(ii)ポンプ体に、該ポンプ体の位置が復元するときにノズルヘッド体内の液体を引き戻すバックサクション機構を有する液体吐出装置(特許文献5〜7)。
(iii)ノズルヘッド体のヘッド部の上部に設けられ、該ヘッド部内の流路と連通する空間を形成するドーム状の弾性体を用いたバックサクション機構を有する液体吐出装置(特許文献8及び9)。
【0006】
液体吐出装置(i)では、ノズル部を閉じることで、ノズル部先端で液体が乾燥固化することを抑制できる。
液体吐出装置(ii)では、ポンプ体の位置が復元するときにバックサクション機構によってポンプ体内の液体が引き戻され、それに伴ってノズルヘッド体内の液体が引き戻される。これにより、ノズル部の先端に液体が残留することが抑制される。
液体吐出装置(iii)では、ヘッド部を押し下げるときにドーム状の弾性体内の空間が押し潰され、ヘッド部の押圧を解除した後に弾性体の形状が復元し、このときに復元した空間内にヘッド部の流路内の液体が引き込まれ、それに伴ってノズル部内の液体が引き戻される。これにより、ノズル部の先端に液体が残留することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−131806号公報
【特許文献2】特開2005−103424号公報
【特許文献3】特開2006−016077号公報
【特許文献4】特開2006−306433号公報
【特許文献5】特開平9−038537号公報
【特許文献6】特開平9−173920号公報
【特許文献7】特開平9−290185号公報
【特許文献8】実開平5−013564号公報
【特許文献9】特開2007−050343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、液体吐出装置(i)は、構造が複雑となりコストが高くなる問題がある。
液体吐出装置(ii)では、容器内の液体を速やかに吸い上げる必要があることからポンプ体の構造に制約があり、該ポンプ体の動きに連動するバックサクション機構によって引き戻せる液体の量が少なく、ノズル部先端に液体が残留することを充分に抑制できないことがある。
液体吐出装置(iii)も、構造上、ノズル部先端から引き戻せる液体量が少なく、ノズル部先端に液体が残留することを充分に抑制できないことがある。
【0009】
本発明は、ノズル部先端に残った液体を充分に引き戻すことができ、ノズル部先端で液体が乾燥固化することを安定して抑制できる液体吐出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体吐出装置は、液体を収容する容器の上部開口部に取り付けられ、シリンダ部、及び、該シリンダ部の上方に付勢された状態で設けられ、内部に流路を有するピストン部を有し、前記ピストン部が前記シリンダ部内に上方から押し込まれるときに液体を上方に圧送し、前記ピストン部の位置が復元するときに前記シリンダ部内に液体を吸い上げるポンプ体と、
前記ピストン部の上方に設けられ、前記ピストン部の流路と連通する流路が形成され、液体を吐出するノズルヘッド体と、
前記ノズルヘッド体が上下可動な状態で、前記ノズルヘッド体と前記ピストン部とを連結し、かつ前記ノズルヘッド体を前記ピストン部の上方に付勢し、内部に流路が形成され、前記ノズルヘッド体を下方に押圧し、前記ノズルヘッド体への押圧力を解除したとき、前記ノズルヘッド体と前記ピストン部とを離間して前記ノズルヘッド体内の液体を引き戻す第1のバックサクション機構と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の液体吐出装置では、前記ポンプ体は、前記シリンダ部内に押し込まれた前記ピストン部の位置が復元するとき、前記ノズルヘッド体内の液体を内部に引き戻す第2のバックサクション機構を有し、前記ピストン部に対する付勢力は、前記ノズルヘッド体に対する付勢力よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体吐出装置は、ノズル部先端に残った液体を充分に引き戻すことができ、ノズル部先端で液体が乾燥固化することを安定して抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の液体吐出装置を上下方向に切断した断面図である。
【図2】図1の液体吐出装置のヘッド部を押し下げた様子を示す断面図である。
【図3】図2の液体吐出装置のピストン部の位置が復元した様子を示す断面図である。
【図4】本発明の他の液体吐出装置を上下方向に切断した断面図である。
【図5】図4の液体吐出装置のヘッド部を押し下げた様子を示す断面図である。
【図6】本発明の他の液体吐出装置を上下方向に切断した断面図である。
【図7】図6の液体吐出装置のヘッド部を押し下げた様子を示す断面図である。
【図8】従来の液体吐出装置の一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の液体吐出装置の一例を示して詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1〜3は、本発明の液体吐出装置の一例である液体吐出装置1を示した断面図である。液体吐出装置1は、容器に収容された液体を吸い上げて吐出する装置である。
液体吐出装置1は、図1に示すように、液体を収容する容器の上部開口部(図示せず。)に取り付けられ、該容器から液体を吸い上げて圧送するポンプ体10と;ポンプ体10から圧送される液体を吐出するノズルヘッド体12と;ポンプ体10を容器の上部開口部に装着するための装着キャップ14と;ノズルヘッド体12を押圧し、ノズルヘッド体12への押圧を解除したとき、ポンプ体10とノズルヘッド体12を離間してノズルヘッド体12内の液体を引き戻す第1のバックサクション機構15と;を有している。
装着キャップ14は、その内周面にネジ部14aが形成され、その上面部の中央に円形状の開口部14bが形成されている。そして、この装着キャップ14は、ネジ部14aを容器の上部開口部の外周面に形成されたネジ部(図示せず。)に螺合することによって、容器の上部開口部に着脱自在に装着することが可能となっている。
【0015】
ポンプ体10は、容器内に垂下され、該容器から吸い上げた液体が充填されるシリンダ部16と;シリンダ部16の上方に付勢された状態で、シリンダ部16に上方から押し込めるように設けられ、内部に流路18aを有するピストン部18と;シリンダ部16の上部に設けられ、ピストン部18におけるシリンダ部16内に挿入される部分を支持する支持筒20と;ピストン部18の下端部に設けられた有底のピストンヘッド22と;シリンダ部16内のピストンヘッド22の外周部に取り付けられたガスケット24と;シリンダ部16内で圧縮された状態で配置され、ピストン部18及びピストンヘッド22を上方に付勢するコイルバネ26と;液体を吸引するためにシリンダ部16の下方に形成された吸引口16aを開閉する弁体28と;シリンダ部16の下端部に接続され、容器に収容された液体を吸い込む吸引パイプ30と;を有している。
ポンプ体10は、ピストン部18がシリンダ部16内に上方から押し込まれるときに、容器内の液体を上方に圧送し、ピストン部18の位置が復元するときにシリンダ部16内に液体を吸い上げるようになっている。
【0016】
シリンダ部16は、容器から吸い上げられた液体が充填されるポンプ室Pを形成するものである。シリンダ部16は、装着キャップ14の上面部の中央に設けられた開口部14b内に挿通されている。また、シリンダ部16の上部側には、容器の内部に空気を導入するための通気孔16bが設けられている。通気孔16bは、シリンダ部16の側面部を貫通した状態で、少なくとも1つ以上設けられている。
【0017】
ピストン部18は、内部に流路18aが形成されており、下方の一部がシリンダ部16内に挿入された状態で、さらに上方からシリンダ部16内に押し込めるように、シリンダ部16の上方に設けられている。また、ピストン部18は、シリンダ部16の上部に取り付けられた支持筒20の中央に形成された貫通孔20aに挿入され、外周側から上下可動に支持され、またコイルバネ26によって、ピストンヘッド22を介して上方に付勢された状態になっている。
ピストン部18の下端部には、流路18aが拡大された拡径部18bが設けられている。そして、コイルバネ26によって上方に付勢されるピストン部18は、支持筒20の貫通孔20a内に周方向に沿って形成された凸条の抜け止め部20bの下端と、後述のピストン部18の下端に設けられた上側ストッパー18cとが当接することで、支持筒18から抜け出ないようになっている。
【0018】
ピストンヘッド22は、内部に流路22aが形成されており、ピストン部18の拡径部18b内に差し込まれることによって、ピストン部18の流路18aと流路22aが連通している。また、ピストンヘッド22の下方側の側面部には、シリンダ部16のポンプ室Pの液体をピストンヘッド22の流路22a内に流入させる流入口22bが形成されている。
【0019】
ガスケット24は、シリンダ部16内におけるピストン部18の外側に液体が漏れ出さないように、シリンダ部16の内周面と、ピストンヘッド22の外周面にそれぞれ摺動可能に設けられている。ガスケット24は、ピストン部18の下端に設けられた上側ストッパー18cと、ピストンヘッド22における流入口22bよりも下方に設けられた下側ストッパー22cの間で上下可動になっている。
ガスケット24がピストンヘッド22の下側ストッパー22cに当接している状態では、ピストンヘッド22の流入口22bとシリンダ部16のポンプ室Pとの間の流路が塞がれ、ピストンヘッド22の流路22aとポンプ室Pの間での液体の流動が遮られる。
【0020】
コイルバネ26は、ピストンヘッド22の底部の外周面から突き出すように設けられた上側バネ受部22dと、シリンダ部16におけるポンプ室Pの下方に設けられた下側バネ受部16cとの間に圧縮された状態で配置されている。コイルバネ26の付勢力により、ピストン部18及びピストンヘッド22が上方に付勢された状態となっている。
【0021】
弁体28は、底部側が半球形状で、上部側が棒状になっており、その半球状の底部側でシリンダ部16の吸引口16aを閉じるようになっている。また、一旦押し下げられたピストン部18がコイルバネ26の付勢力によって上昇し、ポンプ室Pが拡張されて負圧になるのに伴ってポンプ室P内で上昇し、吸引口16aを開放するようになっている。
なお、弁体28の上昇は、ピストンヘッド22の下端に設けられた弁体受部22eによって規制されるようになっている。
【0022】
吸引パイプ30は、シリンダ部16の下端に取り付けられており、液体吐出装置1が装着される容器の底面近傍まで届くようになっている。これにより、液体吐出装置1による液体の吐出によって容器内の液体を使い切ることが容易になる。
【0023】
ノズルヘッド体12は、ピストン部18の上方に設けられ、内部に、ピストン部18の流路18aと連通する流路12aが形成されている。ノズルヘッド体12は、上方から押圧してピストン部18を押し下げるヘッド部32と、ヘッド部32から延出するノズル部34とを有しており、ヘッド部32及びノズル部34を通る流路12aを通じて液体を吐出できるようになっている。
ノズル部34は、ヘッド部32の側面部からほぼ水平方向に延出され、その先端部が下方に向かって僅かに屈曲した細長形状を有しており、ヘッド部32内の液体を吐出するようになっている。ノズル部34は、先端部が基端部よりも上方に位置するような形状としてもよい。これにより、ノズル部34の内部に残った液体が先端部に溜まって固形物となることをより容易に抑制できる。
【0024】
液体吐出装置1は、ノズルヘッド体12が上下可動な状態で、ノズルヘッド体12とピストン部18とを連結し、かつノズルヘッド体12をピストン部18の上方に付勢し、内部に流路36aが形成され、ノズルヘッド体12を下方に押圧し、ノズルヘッド体12への押圧力を解除したとき、ノズルヘッド体12とピストン部18とを離間してノズルヘッド体12内の液体を引き戻す第1のバックサクション機構15を有していることを特徴とする。
【0025】
第1のバックサクション機構15は、ノズルヘッド体12が上下可動な状態で、ノズルヘッド体12のヘッド部32とピストン部18を連結し、内部に流路36aが形成された連結部材36と;ノズルヘッド体12をピストン部18の上方に付勢するコイルバネ38と;連結部材36とコイルバネ38を囲うように、ノズルヘッド体12のヘッド部32の下端から下方に向かって形成された外枠筒部39と;を有している。
【0026】
連結部材36は、ノズルヘッド体12の流路12aの下端側と、ピストン部18の流路18aの上端側のそれぞれに、流路36aが連通するように設けられている。
コイルバネ38は、ピストン部18の上端18dと、連結部材36の上端部36bとの間に圧縮された状態で設けられている。これにより、ノズルヘッド体12は連結部材36を介してコイルバネ38によって上方に付勢された状態となっている。
また、外枠筒部39の外周面には、支持筒20の貫通孔20aの内周面に形成されたネジ部20cと螺合するネジ部39aが形成されている。これにより、運搬時等に、ヘッド部32を押し下げ、ピストン部18をシリンダ部16内に押し込んだ状態で、外枠筒部39と支持筒20を螺合して固定できるようになっている。
【0027】
第1のバックサクション機構15では、ノズルヘッド体12が、コイルバネ38によって上方に付勢された状態で、ピストン部18の上方で上下可動になっている。ノズルヘッド体12が押し下げられることで、ノズルヘッド体12がピストン部18に近づいて連結部材36の下端側がピストン部18内に押し込まれ、ノズルヘッド体12とピストン部18の間の流路が縮小される。また、押圧を解除することでコイルバネ38の付勢力によってノズルヘッド体12とピストン部18が離間するとき、連結部材36の位置が復元し、ノズルヘッド体12とピストン部18の間の流路が拡張する。
なお、コイルバネ38によって上方に付勢された連結部材36は、ピストン部18の上端側の内周面から流路18a内に向かって突き出すように形成された連結部材受部18eに、連結部材36の下端部36cが当接することで、ピストン部18から外れないようになっている。
【0028】
以下、液体吐出装置1の作用について説明する。
液体吐出装置1の使用前のピストン部18及びノズルヘッド体12は、図1に示すように、コイルバネ26及びコイルバネ38の付勢力によって最も上方に位置している。また、シリンダ部16の吸引口16aは弁体28によって閉じられており、ガスケット24がピストンヘッド22の下側ストッパー22cに当接し、ポンプ室Pとピストンヘッド22の流路22aとの間が塞がれている。
使用時には、図2に示すように、ノズルヘッド体12のヘッド部32を上方から押圧し、コイルバネ26とコイルバネ38の付勢力に抗してノズルヘッド体12とピストン部18を押し下げ、ピストン部18をシリンダ部16内に押し込む。
このとき、ノズルヘッド体12が下降することでノズルヘッド体12とピストン部18とが接近し、その分だけ連結部材36の下端側がピストン部18内に押し込まれ、ノズルヘッド体12とピストン部18の間の流路が縮小される。また、ピストン部18が下降することで、シリンダ部16内のポンプ室Pが縮小され、ポンプ室P内に充填された液体が加圧された状態となる。ガスケット24は、ピストンヘッド22がピストン部18と共に押し下げられることで、ピストンヘッド22の下側ストッパー22cから離れ、ピストン部18の上側ストッパー18cに当接し、ピストン部18によって押し下げられていく。これにより、シリンダ部16内のポンプ室Pとピストンヘッド22の流路22aが連通し、ポンプ室P内の液体がピストンヘッド22の流入口22bから流路22a内に流入する。ピストンヘッド22の流路22a内に流入した液体は、ピストン部18の流路18aを通じてノズルヘッド体12へと圧送され、ノズルヘッド体12の流路12aを通ってノズル部34から吐出される。
【0029】
その後、ノズルヘッド体12のヘッド部32の押圧を解除すると、コイルバネ26とコイルバネ38の付勢力によって、押し下げられたノズルヘッド体12とピストン部18が上昇し、それらの位置が復元する。ピストン部18及びピストンヘッド22が上昇するとき、その途中でピストンヘッド22の下側ストッパー22cにガスケット24が当接し、ポンプ室Pとピストンヘッド22の流路22aとの間を塞いだ状態となる。このようにピストン部18が上昇してシリンダ部16内のポンプ室Pが拡張されると、ポンプ室P内に負圧が発生し、該負圧によって弁体28が上昇して吸引口16aが開放される。これにより、容器に収容された液体が吸引パイプ30を通じて吸い上げられ、シリンダ部16のポンプ室P内に充填される。また、このとき容器内の液体が減少するのに伴って、支持筒20とピストン部18との間の隙間、及び通気孔16bを通じて、外部の空気が容器内に導入される。ピストン部18の位置が復元され、ポンプ室P内に充分な量の液体が吸い上げられると、シリンダ部16のポンプ室P内が常圧に戻り、弁体28が下降して吸引口16aが閉じられる。
また、第1のバックサクション機構15によってノズルヘッド体12内の液体が引き戻される。具体的には、ノズルヘッド体12及び連結部材36がコイルバネ38の付勢力によって上昇してその位置が復元すると、連結部材36の下端側がピストン部18の流路18aから抜け出し、ノズルヘッド体12とピストン部18の間に流路36aが復元される。これにより、ノズルヘッド体12とピストン部18の間の流路36a部分に負圧が発生し、該負圧によってノズル部34の先端部分から液体が引き戻される。
【0030】
液体吐出装置1においては、コイルバネ26によるピストン部18に対する付勢力は、コイルバネ38によるノズルヘッド体12に対する付勢力よりも大きいことが好ましい。これにより、ノズルヘッド体12を上方から押圧したときに、ピストン部18よりもノズルヘッド体12の方が先に押し下げられるようになる。また、コイルバネ26とコイルバネ38の付勢力によってノズルヘッド体12とピストン部18の位置が復元するとき、図3に示すように、ノズルヘッド体12よりも先にピストン部18が上昇してその位置が復元する。
前述した液体吐出装置(ii)では、特に、ノズルヘッド体を完全に押し下げずに液体を吐出させた場合、ピストン部の上下動が部分的になることから、その上下動に連動して稼動するバックサクション機構の働きが不充分となり、ノズル部先端から引き戻せる液体量が非常に少なくなる。
これに対し、液体吐出装置1では、ピストン部18を押し下げずにノズルヘッド体12のみが押し下げられた場合、ノズル部34の先端から引き戻した液体が再びノズル部34の先端方向に移動するだけで、ノズル部34から液体が吐出されない。液体を吐出させるためには、ピストン部18を押し下げてポンプ体10を稼動させる必要がある。このとき、コイルバネ26の付勢力がコイルバネ38の付勢力よりも大きいと、ピストン部18を完全に押し下げない場合であっても、液体が吐出されるときにはノズルヘッド体12が充分に押し下げられている状態となるので、ノズルヘッド体12の上下動に連動する第1のバックサクション機構15が充分に働きやすい。
【0031】
以上説明した液体吐出装置1では、ポンプ体10におけるピストン部18の動きとは別に、ピストン部18に対してノズルヘッド体12が上下動することによって第1のバックサクション機構15が機能する。第1のバックサクション機構15の働きは、ポンプ体10の構造によって制約されないため、簡便な構成でもノズル部34の先端から充分に液体を引き戻すことができ、ノズル部34先端で液体が乾燥固化することを安定して抑制できる。
また、コイルバネ26による付勢力をコイルバネ38による付勢力よりも大きくすることで、ピストン部18を完全に押し下げずに液体を吐出させた場合でも、ノズルヘッド体12が充分に押し下げられることになり、ノズルヘッド体12の動きに連動して機能する第1のバックサクション機構15が充分に働く。
【0032】
[他の実施形態]
なお、本発明の液体吐出装置は、前記液体吐出装置1には限定されない。
液体吐出装置1以外の形態としては、ポンプ体が、シリンダ部内に押し込まれたピストン部の位置が復元するときにノズルヘッド体内の液体を内部に引き戻す第2のバックサクション機構を有する液体吐出装置が好ましい。
第2のバックサクション機構としては、ポンプ体に設けられ、ポンプ体の動きに連動してノズルヘッド体内の液体を引き戻すものであればよく、例えば、特開平9−038537号公報、特開平9−173920号公報、特開平9−290185号公報等に記載のバックサクション機構が挙げられる。
【0033】
例えば、図4に例示した液体吐出装置2が挙げられる。液体吐出装置2において液体吐出装置1と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
液体吐出装置2は、図4に示すように、前記ピストン部18の代わりに、底面に開口部18fが形成され、該底面側に流路18aが拡張された拡径部18bが形成され、コイルバネ26を受け止める上側バネ受部18gが設けられたピストン部18Aを有し、ピストンヘッド22及びガスケット24を有していない。また、弁体28の代わりに、上側の棒状部分が長く、該棒状部分がピストン部18Aの開口部18fから流路18a内に挿入される第1の弁体28Aを有している。さらに、ピストン部18Aの拡径部18b内において、第1の弁体28Aの棒状部分に沿って上下に摺動可能な、開口部18fを開閉する第2の弁体40からなる第2のバックサクション機構41を有している。それ以外は、液体吐出装置1と同じである。
【0034】
第2の弁体40は、第1の弁体28Aの棒状部分に沿って上下に摺動し、ピストン部18Aの開口部18fを開閉する弁本体40aと、弁本体40aの上部に形成され、ピストン部18Aの拡径部18bの内周面側に突き出すように形成された複数の板状ガイド部40bとを有している。シリンダ部16内の液体は、開口部18fから流路18a内に流入し、拡径部18bの内周面と第2の弁体40の弁本体40aとの間、複数の板状ガイド部40bの間を通過して上方に流動できるようになっている。
液体吐出装置2では、この第2の弁体40の動きによって第2のバックサクション機構41が働くようになっている。
【0035】
液体吐出装置2の使用時は、図5に示すように、ノズルヘッド体12とピストン部18Aを押し下げると、液体吐出装置1と同様に、ノズルヘッド体12とピストン部18Aが近接し、またシリンダ部16内のポンプ室Pが縮小されて、ポンプ室P内に充填された液体が加圧された状態となる。ピストン部18Aが押し下げられる途中で、ピストン部18Aの拡径部18bの上側の端面と第2の弁体40の板状ガイド部40bの上端が当接し、開口部18fが開放された状態で、ピストン部18Aによって第2の弁体40が押し下げられていく。これにより、ポンプ室P内の液体が開口部18fからピストン部18の流路18a内に流入し、ノズルヘッド体12へと圧送され、ノズルヘッド体12の流路12aを通ってノズル部34から吐出される。
その後、ノズルヘッド体12への押圧を解除すると、コイルバネ26とコイルバネ38の付勢力によって、押し下げられたノズルヘッド体12とピストン部18Aが上昇し、それらの位置が復元する。ピストン部18Aが上昇するとき、その途中でピストン部18Aの開口部18fが第2の弁体40によって塞がれ、第2の弁体40がピストン部18Aと共に上昇していく。このとき、ピストン部18Aの開口部18fが第2の弁体40によって塞がれるまでは、第2のバックサクション機構41によってノズルヘッド体12内の液体が引き戻される。具体的には、このときにはピストン部18Aの流路18aとポンプ室P内が連通した状態となっているため、ポンプ室Pが拡張されて負圧が発生することで、ピストン部18Aの流路18a内の液体がポンプ室P内へと引き戻され、それによってノズルヘッド体12内の液体が内部に引き戻される。
ピストン部18Aの開口部18fが第2の弁体40によって塞がれた後は、ポンプ室Pに発生する負圧によって第1の弁体28Aが上昇して吸引口16aが開放され、容器に収容された液体が吸引パイプ30を通じて吸い上げられる。
さらに、液体吐出装置2では、液体吐出装置1と同様に第1のバックサクション機構15が働き、さらにノズルヘッド体12内の液体が引き戻される。
【0036】
このように、液体吐出装置2は、第1のバックサクション機構15と第2のバックサクション機構41の両方が機能するため、液体吐出装置1に比べてノズル部34の先端から引き戻せる液体の量が多く、ノズル部34の先端で液体が乾燥固化して目詰まりすることをより安定して抑制できる。
また、液体吐出装置2のような、ポンプ体の動きに連動して働く第2のバックサクション機構を有する装置では、ピストン部に対する付勢力がノズルヘッド体に対する付勢力よりも大きいことが好ましい。つまり、この例では、コイルバネ26による付勢力がコイルバネ38による付勢力よりも大きいことが好ましい。これにより、液体吐出装置1の項で説明したように、ピストン部18Aの押し下げが不完全な場合でも、ノズルヘッド体12の動きに連動して機能する第1のバックサクション機構15が充分に働きやすくなる。
また、コイルバネ26による付勢力がコイルバネ38による付勢力よりも大きいと、第1のバックサクション機構15が第2のバックサクション機構41よりも後に働くことになる。ノズル部34内の液体は、一旦引き戻されても、その後にノズル部34の内壁面に残った液体が重力によってノズル部34の先端に集まり、ノズル部34を閉塞することがある。しかし、第1のバックサクション機構15を第2のバックサクション機構41よりも後から機能させることで、内壁面に残った液体がノズル部34の先端に集まっても、その集まった液体を第1のバックサクション機構15によって引き戻せるので、ノズル部34が目詰まりすることをより安定して抑制できる。また、この場合でも、ノズル部34の先端に集まった液体を引き戻すのにコイルバネ26による付勢力を小さくする必要がないので、ポンプ体10による液体の吸い上げは速やかに行える。
【0037】
また、前記第2のバックサクション機構を有する液体吐出装置2以外の液体吐出装置としては、例えば、図6に例示した液体吐出装置3が挙げられる。液体吐出装置3において液体吐出装置1と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
液体吐出装置3は、図6に示すように、前記ピストン部18の代わりに、流路18aの途中に直径が狭まった狭径部18hが形成され、その下方に拡径部18bが形成されたピストン部18Bを有している。また、前記ピストンヘッド22の代わりに、流路22aの直径が狭まった狭径部22fが形成され、その狭径部22fの下方に流入口22bが形成されたピストンヘッド22Aを有し、ガスケット24を有していない。また、ピストンヘッド22の流路22a内に、狭径部22fの上側の開口を開閉する球状の第2の弁体42からなる第2のバックサクション機構43を有している。それ以外は、液体吐出装置1と同じである。
第2の弁体42は、ピストン部18Bの狭径部18hの下端側に当接し、それ以上は上に行かないようになっている。
液体吐出装置3では、この第2の弁体42の動きによって第2のバックサクション機構43が働くようになっている。
【0038】
液体吐出装置3の使用時は、図7に示すように、ノズルヘッド体12とピストン部18Bを押し下げると、液体吐出装置1と同様に、ノズルヘッド体12とピストン部18Bが近接し、またシリンダ部16内のポンプ室Pが縮小されて、ポンプ室P内に充填された液体が加圧された状態となる。ポンプ室P内の液体は、流入口22bから狭径部22f内に流入し、第2の弁体42を押し上げて流路22aを通り、ノズルヘッド体12へと圧送され、ノズルヘッド体12の流路12aを通ってノズル部34から吐出される。
その後、ノズルヘッド体12の押圧を解除すると、コイルバネ26とコイルバネ38の付勢力によって、押し下げられたノズルヘッド体12とピストン部18Bが上昇し、それらの位置が復元する。ピストン部18Bが上昇すると同時に第2の弁体42も徐々に下降し、ピストン部18Bの上昇の途中で狭径部22fの上側の開口が第2の弁体42で塞がれる。このとき、狭径部22fの上側の開口が第2の弁体42によって塞がれるまでは、第2のバックサクション機構43によってノズルヘッド体12内の液体が引き戻される。具体的には、このときには、ピストン部18Bの流路18aとポンプ室P内が連通した状態となっているため、ポンプ室Pが拡張されて負圧が発生することで、ピストン部18Bの流路18a内の液体がピストンヘッド22の流路22aを通じてポンプ室P内へと引き戻され、それによってノズルヘッド体12内の液体が内部に引き戻される。
狭径部22fの上側の開口が第2の弁体42によって塞がれた後は、ポンプ室Pに発生する負圧によって弁体28が上昇して吸引口16aが開放され、容器に収容された液体が吸引パイプ30を通じて吸い上げられる。
さらに、液体吐出装置3では、液体吐出装置1と同様に、第1のバックサクション機構15が機能し、ノズルヘッド体12内の液体がさらに引き戻される。
【0039】
液体吐出装置3は、液体吐出装置2と同様に、第1のバックサクション機構15と第2のバックサクション機構43の両方が機能するため、液体吐出装置1に比べてノズル部34の先端から引き戻せる液体の量が多く、ノズル部34の先端で液体が乾燥固化して目詰まりすることをより安定して抑制できる。
また、液体吐出装置3においても、液体吐出装置2と同様の理由から、ピストン部に対する付勢力がノズルヘッド体に対する付勢力よりも大きいことが好ましい。
【0040】
また、本発明の液体吐出装置は、液体吐出装置1〜3以外の液体吐出装置であってもよく、前述の第1のバックサクション機構を有するものであれば各部分の形状は特に限定されない。
液体吐出装置1〜3では、連結部材36の下端側がピストン部の流路内に出たり入ったりすることで、ノズルヘッド体12とピストン部18の間の流路が拡張及び縮小するようになっていたが、ピストン部18の上端側が連結部材36の流路36a内に出たり入ったりすることで、ノズルヘッド体12とピストン部18の間の流路が拡張及び縮小するようになっていてもよい。
また、本発明の液体吐出装置におけるノズルヘッド体は、ヘッド部から延出するノズル部を有していなくてもよい。この場合も、吐出口付近の液体を内部に引き戻すことで、吐出口付近で液体が乾燥固化して目詰まりすることを抑制できる。
【符号の説明】
【0041】
1〜3 液体吐出装置
10 ポンプ体
12 ノズルヘッド体
14 装着キャップ
15 第1のバックサクション機構
16 シリンダ部
18,18A,18B ピストン部
20 支持筒
22,22A ピストンヘッド
24 ガスケット
26 コイルバネ
28 弁体
28A 第1の弁体
30 吸引パイプ
32 ヘッド部
34 ノズル部
36 連結部材
38 コイルバネ
40,42 第2の弁体
41,43 第2のバックサクション機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器の上部開口部に取り付けられ、シリンダ部、及び、該シリンダ部の上方に付勢された状態で設けられ、内部に流路を有するピストン部を有し、前記ピストン部が前記シリンダ部内に上方から押し込まれるときに液体を上方に圧送し、前記ピストン部の位置が復元するときに前記シリンダ部内に液体を吸い上げるポンプ体と、
前記ピストン部の上方に設けられ、前記ピストン部の流路と連通する流路が形成され、液体を吐出するノズルヘッド体と、
前記ノズルヘッド体が上下可動な状態で、前記ノズルヘッド体と前記ピストン部とを連結し、かつ前記ノズルヘッド体を前記ピストン部の上方に付勢し、内部に流路が形成され、前記ノズルヘッド体を下方に押圧し、前記ノズルヘッド体への押圧力を解除したとき、前記ノズルヘッド体と前記ピストン部とを離間して前記ノズルヘッド体内の液体を引き戻す第1のバックサクション機構と、を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ポンプ体は、前記シリンダ部内に押し込まれた前記ピストン部の位置が復元するとき、前記ノズルヘッド体内の液体を内部に引き戻す第2のバックサクション機構を有し、
前記ピストン部に対する付勢力は、前記ノズルヘッド体に対する付勢力よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−60217(P2013−60217A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199691(P2011−199691)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】