説明

液体吸収体、液体回収ユニットおよび液体噴射装置

【課題】 排出口から排出される液体に含有される泡を消失し、排出される液体を円滑に吸収して回収する液体吸収体およびその液体吸収体を備える液体回収ユニット、ならびにその液体回収容器を備える液体噴射装置を提供する。
【解決手段】 インク回収ユニット30の回収容器31内にあって、第1インク吸収体33の排出チューブ27側、すなわち収容凹部35内に消泡部材としての第2インク吸収体34を配設し、その第2インク吸収体34に、排出インクI内の泡Bを消失する消泡液36を浸透して含有させた。そして、排出口27aから排出される排出インクIに含まれる泡Bを、第2インク吸収体34に含有される消泡液36によって消失させ、泡Bを含有しない排出インクIを第1および第2インク吸収体33,34で吸収して回収するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吸収体、液体回収ユニットおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射装置には、記録媒体に対してインクを噴射するインクジェット式プリンタ(以下単に、プリンタという。)が知られている。このプリンタでは、インクの噴射不良を低減するために、インクを噴射する噴射ノズルから増粘したインクなどを吐出させるクリーニングが適宜行われている。
【0003】
このクリーニングでは、ノズルの形成されるノズル形成面をキャップで封止した後に、そのノズル形成面とキャップとで気密にされる空間(キャップ内)を吸引ポンプにより吸引している。つまり、クリーニングでは、インクの吐出方向側に負圧となる空間を形成し、その負圧を利用して増粘したインクなどをノズルから吐出させている。
【0004】
さて、こうしたクリーニングでは、一般に、ノズルから吐出されるインクは、吸引ポンプで吸引された後、液体回収ユニットとしてのインク回収ユニットに排出されている。そのインク回収ユニットには、インクを吸収するインク吸収体が収容されている。そして、そのインク吸収体が排出されるインク(以下単に、排出インクという。)を吸収することによって、吸引ポンプから排出されるインクを漏れないようにして回収している。
【0005】
ところが、このインク吸収体の吸収能力を超えるクリーニングが行われると、インク回収ユニット内が排出インクで満杯となり、ついにはインク回収ユニットからその排出インクが溢れ出してプリンタ内を汚染する問題となる。
【0006】
そこで、従来より、こうしたインク回収ユニットには、回収した排出インクを溢れ出すことなく適宜処理する提案がなされている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載される回収ユニットは、プリンタに着脱可能に装着され、かつ回収したインクの量(インク回収量)を記憶できるようになっている。そして、そのインク回収量に基づいて、インク回収ユニットが排出インクで満杯になったときには、そのインク回収ユニットを取り出して回収した排出インクを処理することができ、排出インクの漏洩によるプリンタ内の汚染を回避することができている。
【特許文献1】特開2001−341327
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記する排出インクには、増粘したインクと同時にキャップ内の大気が多量に含まれている。そのため、上記するようなインク回収ユニットでは以下の問題を生じる。すなわち、図9に示すように、インク回収ユニット101には、排出インクを排出する排出チューブ102の開口から、増粘したインクとともに多量の細かい泡103が排出される。これらの泡103は、インク回収ユニット101内のインク吸収体104に吸収されにくいため、図9に示すように、インク吸収体104の排出チューブ102側に蓄積され、やがて回収ユニット101から溢れ出すようになる。
【0008】
その結果、回収ユニット101をプリンタから取り出す際に、これら排出チューブ102近傍の泡103が飛び散って、プリンタ内を汚染する問題となる。しかも、こうした泡103の一部は、消失することなく増粘して固化するため、導入チューブ102開口やインク吸収体104の目詰まりを起こし、ひいてはインクの回収不良を招く虞がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、排出口から排出される液体に含有される泡を消失し、排出される液体を円滑に吸収して回収する液体吸収体およびその液体吸収体を備える液体回収ユニット、ならびにその液体回収容器を備える液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体吸収体は、液体と気体とを吸引して空間を減圧する吸引手段の排出口から排出される液体を吸収する液体吸収体において、前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡剤を備えた。
【0011】
本発明の液体吸収体によれば、液体と気体とを吸引する吸引手段の排出口から排出される液体を吸収する液体吸収体が、その液体に含まれる泡を排出口側で消失する消泡剤を備えるようになる。したがって、液体吸収体は、液体に含まれる泡を消失してその液体を吸収することができる。その結果、泡による液体吸収体の吸収能力の低下を回避することができ、吸引手段の排出口から排出される液体を液体吸収体へ円滑に吸収させることができる。
【0012】
本発明の液体吸収ユニットは、液体と気体とを吸引して空間を減圧する吸引手段の排出口から排出される液体を吸収する第1液体吸収体と、前記第1液体吸収体を収容して液体を回収する回収容器とを備えた液体回収ユニットにおいて、前記排出口から前記回収容器へと液体を回収する液体回収路の途中に、前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡部材を備えた。
【0013】
本発明の液体回収ユニットによれば、排出口から回収容器へと液体を回収する液体回収路の途中に、排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡部材を備えるようになる。したがって、排出口から排出される液体に含まれる泡を消泡手段で消失することができる。その結果、泡による第1液体吸収体の吸収能力の低下を回避することができ、吸引手段の排出口から排出される液体を円滑に吸収して回収することができる。そのうえ、液体回収ユニット近傍への泡の飛散を回避することができ、液体による汚染を解消することができる。
【0014】
この液体回収ユニットは、前記消泡部材が、前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡剤を含浸させた前記第1液体吸収体である。
この液体回収ユニットによれば、消泡部材としての第1液体吸収体が、液体に含まれる泡を消失する消泡剤を含浸するようになる。したがって、排出口から排出される液体に含まれる泡が第1液体吸収材で消失されて吸収されるようになる。その結果、泡による第1液体吸収体の吸収能力の低下を回避することができ、吸引手段の排出口から排出される液体を円滑に吸収して回収することができる。
【0015】
この液体回収ユニットは、前記消泡部材が、前記第1液体吸収体の前記排出口側に設けられ、前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡剤を含浸させた第2液体吸収体である。
【0016】
この液体回収ユニットによれば、消泡剤を含浸した消泡部材としての第2液体吸収体が、第1液体吸収体と排出口との間に備えられるようになる。したがって、第1および第2液体吸収体の双方に消泡剤を含有させる場合に比べて、消泡性を必要とする部位(例えば、排出口近傍)にのみ消泡剤を含浸させることができる。その結果、排出口から排出される液体を円滑に吸収して回収することができ、消泡剤の不要な消費を抑制して液体回収ユニットのコストを低減することができる。
【0017】
この液体回収ユニットは、前記排出口が、前記回収容器の外側に設けられ、前記第2液体吸収体が、前記回収容器の外側にあって前記排出口に設けられた。
この液体回収ユニットによれば、消泡部材としての第2液体吸収体が、回収容器の外側にあって排出口に設けられるようになる。したがって、排出口に第2液体吸収体を付設する簡便な構成によって、液体を円滑に吸収して回収することができ、しかも第2液体吸収体の体積に相当する分だけ液体を吸収することができ、液体回収ユニットの回収能力を向上することができる。
【0018】
この液体回収ユニットは、前記消泡部材が、前記排出口と連結し、前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡剤を塗装した内周面に沿って前記排出口から排出される液体を前記第1液体吸収体に導入する導入管である。
【0019】
この液体回収ユニットによれば、消泡部材としての導入管が、消泡剤を塗装した内周面に沿って排出口から排出される液体を第1液体吸収体に導入するようになる。したがって、内周面に消泡剤を塗装した導入管を付設する簡便な構成によって、排出口から排出される液体に含まれる泡を導入管、すなわち第1液体吸収体の上流で確実に消失することができる。
【0020】
この液体回収ユニットは、前記消泡部材が、前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡剤を塗布した壁面を前記第1液体吸収体側に備えたカバーである。
この液体回収ユニットによれば、消泡部材としてのカバーが、消泡剤を塗布した壁面を第1液体吸収体側に備えるようになる。したがって、排出口から排出される泡が、第1液体吸収体から回収容器の外側に向かって堆積される場合であっても、カバーの壁面によってその泡を消失することができ、第1液体吸収体に堆積される泡を飛散させることがなく液体を回収することができる。
【0021】
本発明の液体噴射装置は、液体貯留手段から供給される液体を液体噴射ノズルから噴射させる液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止する封止手段と、前記封止手段と前記ノズル形成面とで形成される空間内の液体と気体を吸引する吸引手段と、前記吸引手段の排出口から排出される液体を回収する回収手段とを備える液体噴射装置において、前記回収手段が、上記液体回収ユニットを備えた。
【0022】
本発明の液体噴射装置によれば、吸引手段で吸引した液体が上記液体回収ユニットを備える回収手段によって回収されるようになる。したがって、吸引手段で吸引した液体に含まれる泡を消失して回収することができる。その結果、泡による液体吸収体の吸収能力の低下を回避することができ、吸引手段の吸引した液体を円滑に回収することができる。そのうえ、泡の飛散を防止して各種構成手段の液体による汚染を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化したインクジェット式プリンタの第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。図1および図2は、インクジェット式プリンタを示す斜視図および要部概略断面図である。
【0024】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ10(以下単に、プリンタ10という。)は、逆T字形状に形成される左右1対の脚部11a,11bを備えている。その脚部11a,11bには、プリンタ10を移動可能にする前後1対のキャスタ12a,12bがそれぞれ設けられている。左右1対の脚部11a,11bは、本体ケースを支持固定している。
【0025】
本体ケースは、図1に示すように、その後部に給紙部15が設けられている。その給紙部15には、巻心15aに巻かれたターゲットとしての記録用紙Pが巻装されている。
【0026】
その本体ケース内には、図1に示すように、長手方向に沿って丸棒状のガイド軸16が架設されている。ガイド軸16には、キャリッジ17が長手方向に沿って移動可能に挿通支持されている。そのキャリッジ17は、図示しないキャリッジモータの駆動力を受けて、ガイド軸16に沿って左右方向(主走査方向X)に往復動するようになっている。
【0027】
その本体ケース内にあってキャリッジ17の下側には、ガイド軸16と平行にプラテン18が配設されている。プラテン18は、キャリッジ17と相対向するように配置され給紙部15から給紙されてくる記録用紙Pを支持する支持台である。そのプラテン18には、主走査方向Xと直行する方向(副走査方向Y)に記録用紙Pを給送する図示しない紙送り機構が設けられている。
【0028】
キャリッジ17の下部にあってプラテン18と相対向する位置には、図1に示すように、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が設けられている。その記録ヘッド19の一側面であって記録用紙Pと相対向する側の面には、図2に示すように、ノズル形成面19aが形成されている。そのノズル形成面19aには、液体としてのインクを噴射させる図示しない複数の液体噴射ノズルが形成されている。その記録ヘッド19の上部には、図2に示すように、バルブユニット20が設けられている。バルブユニット20は、記録ヘッド19にインクを供給するものであって、導入されるインクの圧力を調整して記録ヘッド19に供給するようになっている。なお、本実施形態では、4体のバルブユニット20を備え、それぞれ各色のインク(例えばシアン、マゼンタ、イエロ及びブラックの4色)を圧力調整して記録ヘッド19に供給可能にしている。
【0029】
図1に示すように、本体ケースの上側中央には、カートリッジホルダ21が設けられ、そのカートリッジホルダ21には液体貯留手段としての4体のインクカートリッジ22が装着されている。インクカートリッジ22は、略直方体状に形成される箱体であって、その内部には、それぞれ対応するインクが導出可能に貯留されている。そのインクカートリッジ22は、カートリッジホルダ21に装着されると、図1に示すように、インク供給チューブ23とそれぞれ連結されるようになっている。各インク供給チューブ23は、それぞれ対応するバルブユニット20に連結されて、インクカートリッジ22に貯留される各色のインクを対応するバルブユニット20へ供給可能にしている。すなわち、本実施形態のプリンタ10はオフキャリッジタイプのプリンタである。
【0030】
そして、画像データに基づいて作成される画像信号をプリンタ10に入力すると、プリンタ10は、紙送り機構を駆動して記録用紙Pを副走査方向Yに沿って給送し、キャリッジモータを駆動してキャリッジ17を主走査方向Xに往復移動する。同時に、プリンタ10は、往復動する記録ヘッド19の液体噴射ノズルから画像信号に基づく各色のインク滴を噴射して記録用紙P上に印刷を施す。
【0031】
図1に示すように、本体ケース内の右側には、印刷を施すことのない非印刷領域が設けられている。その非印刷領域には、クリーニング機構25が備えられている。そのクリーニング機構25には、図1に示すように、封止手段としてのキャップ26、排出チューブ27および吸引手段としての吸引ポンプ28が備えられている。また、本体ケース内にあってそのクリーニング機構25の下側には、回収手段および液体回収ユニットとしてのインク回収ユニット30が着脱可能に配設されている。
【0032】
キャップ26は、図2に示すように、上側を開口した箱体状に形成され、本体ケース内
に配設される図示しない昇降機構によって、上下方向に沿って往復動可能に支持されている。そのキャップ26の底面には、その上下方向に貫通する吸引孔26aが形成されている。また、そのキャップ26の内側には、シート状に形成された吐出インク吸収体26bが配設されている。さらに、キャップ26の上縁には、可撓性部材からなる四角枠状の外枠26cが形成されている。
【0033】
そして、記録ヘッド19が非印刷領域に移動しキャップ26が上動すると、キャップ26の外枠26cが記録ヘッド19に当接してノズル形成面19aを封止する。これによって、キャップ26内には、ノズル形成面19aを密閉する空間、すなわちキャップ内空間が形成される。
【0034】
そのキャップ26の底面に形成される吸引孔26aには、図2に示すように、排出チューブ27が接続されている。排出チューブ27は、空気やインク等の流路であって、吸引ポンプ28を介してキャップ内空間とインク回収ユニット30とを連通可能にしている。その吸引ポンプ28は、図示しないポンプモータにて稼動するポンプである。そして、吸引ポンプ28が稼動すると、キャップ内空間の気体が吸引されて吸引ポンプ28の吸引能力と相対する負圧が形成される。この負圧によって、記録ヘッド19内にある増粘したインク等が液体噴射ノズルからキャップ内空間(吐出インク吸収体26b)に向かって吐出される。その吐出されたインク等はキャップ内空間の気体とともに吸引ポンプ28および排出チューブ27を介してインク回収ユニット30に排出される。
【0035】
このように、クリーニング機構25は、キャップ26内を負圧にすることによって、増粘したインク等を液体噴射ノズルから吐出させて、記録ヘッド19内のクリーニングを行う。同時に、クリーニング機構25は、吐出されたインク等を吸引ポンプ28に吸引させ、インク回収ユニット30内に排出する。
【0036】
次に、上記クリーニングで排出されるインクを回収するインク回収ユニット30について、図3〜図5に従って説明する。図3および図4は、インク回収ユニット30を示す斜視図および側断面図であり、図5はインク回収ユニット30の作用を説明する側断面図である。
【0037】
図3に示すように、インク回収ユニット30には、回収容器31、カバー32、第1液体吸収体としての第1インク吸収体33、消泡部材および第2液体吸収体としての第2インク吸収体34が備えられている。
【0038】
その回収容器31は、図3に示すように、その上側を開口した箱体である。その回収容器31内には、4個の第1インク吸収体33が収容されている。第1インク吸収体33は、高分子材料からなる多孔質の板材で形成され、図4に示すように、その上面中央を凹設して凹部33aが形成されている。そして、図3に示すように、4個の第1インク吸収体33が、それぞれ凹部33aを上側にして重ね合わせて回収容器31内に配設される。これにより、回収容器31内に、各第1インク吸収体33の凹部33aによって収容凹部35を形成している。
【0039】
収容凹部35内には、図3および図4に示すように、消泡部材としての第2インク吸収体34が配設されている。第2インク吸収体34は、高分子材料からなる多孔質の板材で形成されている。その第2インク吸収体34の厚さは、図4に示すように、その上面34aが第1インク吸収体33の上面よりも低くなるように形成されている。第2インク吸収体34には、図4に示すように、消泡液36が含浸されている。
【0040】
消泡液36は、消泡剤、防腐剤、アルカリ調整剤および保湿剤からなる液体であって、
排出チューブ27から排出される泡Bを消失するものである。なお、本実施形態における消泡剤は、例えば、シリコーン界面活性剤としてのポリエーテル変性シリコーンなどであって、製品としてKF−6017(商標、信越化学工業株式会社)が挙げられ、消泡液36の0.1重量%を構成している。また、防腐剤は、第2インク吸収体34に吸収されるインク成分(例えば、インク顔料)の変性を抑制するものであり、例えばチアゾリン系化合物であって、製品としてプロキセルXL2(商標、アビシア株式会社)が挙げられ、消泡液36の0.3重量%を構成している。さらに、アルカリ調整剤は、インク成分の再分散性を得るためのものであり、例えばトリエタノールアミンが挙げられ、消泡液36の1.0重量%を構成している。ならびに、保湿剤は、インクおよび消泡液36の各種成分の乾燥を抑制するものであって、例えばグリセリンが挙げられ、消泡液36の98.6重量%を構成している。ちなみに、これら消泡液36を構成する各種成分の重量比率、ならびに消泡液36を構成するこれら各種成分は、排出チューブ27から排出される泡Bを消失するものであればよく、これに限定されず変更してもよい。
【0041】
第1インク吸収体33および第2インク吸収体34を収容した回収容器31の上側の開口部には、図3に示すように、カバー32が配設されている。カバー32は、図3に示すように、その上側から下側までを貫通する多数の貫通孔32aが格子状に形成される板部材である。そのカバー32は、図3および図4に示すように、回収容器31に対して着脱可能に配設されている。そのカバー32にあって第2インク吸収体34(収容凹部35)と相対向する位置には、図3に示すように、円環状のガイド部32bが形成されている。円環状のガイド部32bの直上位置には、排出チューブ27の排出口27aが配設されている。この排出口27aの配置位置は、ガイド部32bに連設された図示しない支持部材にて排出チューブ27が支持されて位置決めされている。
【0042】
そして、これらカバー32(ガイド部32b)、第2インク吸収体34および第1インク吸収体33によって、排出口27aから回収容器31にインクを回収する液体回収路としてのインク回収路が形成されている。
【0043】
次に、上記インク回収ユニット30の作用について説明する。
今、ポンプモータを駆動してクリーニングを開始すると、図5に示すように、排出チューブ27内には、液体噴射ノズルから吐出されるインクとキャップ内空間にある大気によって、多量の細かい泡Bを含むインク(排出インクI)が形成される。この排出インクIは、排出口27aから排出され、図5に示すように、ガイド部32bを介して収容凹部35内(第2インク吸収体34の上面34a)に吐出される。
【0044】
このとき、第2インク吸収体34の上面34aに吐出される排出インクIの泡Bには、第2インク吸収体34に含有される消泡液36(消泡剤)が付着する。泡Bに付着する消泡剤(消泡液36)は、泡Bの泡膜にあって付着した周囲の表面張力を低下させる。消泡液36によって一部の表面張力が低下する泡膜は、その消泡液36の付着した周囲の以外の表面張力によって瞬時に引き伸ばされて破れる。
【0045】
すなわち、排出インクIに含まれる泡Bは、第2インク吸収体34に含浸されている消泡液36によって、その泡膜が瞬時に破られ消失する。その結果、第2インク吸収体34の上面34aに吐出された排出インクIは、図5に示すように、消泡液36によって泡Bを消失させながら、第2インク吸収体34内方に向かって吸収されるようになる。そして、第2インク吸収体34に吸収された排出インクIは、第1インク吸収体33の毛細管力や排出インクIの自重などによって第1インク吸収体33内に吸収される。
【0046】
これにしたがい、排出口27aから排出される排出インクIは、第2インク吸収体34に含浸されている消泡液36によって、泡Bを消失させながら第1および第2インク吸収
体33,34に吸収され、インク回収ユニット30内に円滑に回収される。
【0047】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、第1インク吸収体33に形成した収容凹部35に消泡液36を含浸した第2インク吸収体34を配設し、その第2インク吸収体34に向けて排出インクIを排出させた。従って、第2インク吸収体34に含浸した消泡液36によって、排出インクIに含まれる泡Bを消失させることができる。その結果、排出チューブ27の排出口27aから排出される泡Bの蓄積と飛散を回避することができる。そのため、プリンタ10内の泡Bによる汚染を解消することができ、しかも第1および第2インク吸収体33,34、ならびに排出口27aの目詰まりを防止して、排出インクIを円滑に回収することができる。
【0048】
(2)本実施形態によれば、排出口27a側に配設される第2インク吸収体34にのみ消泡液36を含浸した。従って、第1および第2インク吸収体33,34の双方に消泡液36を含浸する場合に比べて、消泡性を必要とする部位、すなわち排出口27a近傍にのみ消泡液36を含浸させることができる。その結果、不要な消泡液36の消費を回避することができ、インク回収ユニット30のコスト、ひいてはプリンタ10のコストを低減することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について以下に説明する。なお、この第2実施形態では、第1実施形態に記載する第2インク吸収体34の形状とその配置位置を変更したものであり、その他の点では第1実施形態と同一の構成になっている。そのため以下では、第2インク吸収体34について詳細に説明する。図6は、第2実施形態におけるインク回収ユニット30を示す側断面図である。
【0049】
図6に示すように、排出チューブ27の排出口27aには、消泡部材としての第2インク吸収体34が取着されている。第2インク吸収体34は、高分子材料からなる多孔質材で形成され、図3に示す円環状のガイド部32bの内径と略同じ外径からなる円盤状に形成されている。その第2インク吸収体34には、第1実施形態に示す消泡液36が含浸されている。
【0050】
これによると、排出口27aから排出される排出インクIは、図6に示すように、第2インク吸収体34に含浸された消泡液36によって、その泡Bを消失させて第2インク吸収体34に吸収される。そして、排出インクIは、第2インク吸収体34を通過して収容凹部35(第1インク吸収体33)に排出される。
【0051】
従って、排出口27aから排出される泡Bの蓄積と飛散とを回避することができ、ひいてはプリンタ10内の泡Bによる汚染、ならびに第1および第2インク吸収体33,34と排出口27aの目詰まりを解消することができる。しかも、第2インク吸収体34を回収容器31の外側に配設するため、回収容器31内の容積に相対するインク量に加えて、この第2インク吸収体34の吸収できるインク量の分だけインク回収ユニット30の吸収能力を向上することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について以下に説明する。なお、この第3実施形態では、第1実施形態に記載する第2インク吸収体34を変更したものであり、その他の点では第1実施形態と同一の構成になっている。そのため以下では、その変更点ついて詳細に説明する。図7は第3実施形態におけるインク回収ユニット30を示す側断面図である。
【0052】
図7に示すように、排出チューブ27の排出口27aとガイド部32bとの間には、消
泡部材としての導入管40が配設されている。導入管40は、排出口27aから排出される排出インクIを収容凹部35内(第1インク吸収体33)に導入する管であって、その内周面には、図7に示すように、消泡剤41が塗装されている。消泡剤41は、第1実施形態に示す消泡液36と同じく、排出インクIに含まれる泡Bの泡膜と接触してその表面張力を低下させ、泡Bを消失させるものである。
【0053】
これによると、排出口27aから排出される排出インクIは、図7に示すように、導入管40を通過する際に、その内壁に塗装されている消泡剤41によって泡Bを消失させる。よって、導入管40は、泡Bを含まない排出インクIを凹部33aに排出する。
【0054】
従って、排出口27aから排出される泡Bの蓄積と飛散を回避することができ、ひいてはプリンタ10内の泡Bによる汚染、ならびに第1および第2インク吸収体33,34、排出口27aの目詰まりを解消することができる。しかも、排出チューブ27の一部を導入管40に置き換えることによって、排出インクIの流路抵抗を損なうことなく、回収容器31(第1インク吸収体33)の上流側で確実に泡Bを消失させることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態について以下に説明する。なお、この第4実施形態では、第1実施形態に記載する第2インク吸収体34を変更したものであり、その他の点では第1実施形態と同一の構成になっている。そのため以下では、その変更点ついて詳細に説明する。図8は第4実施形態におけるインク回収ユニット30を示す側断面図である。
【0055】
図8に示すように、消泡部材としてのカバー32(ガイド部32b)の内壁面には、消泡剤43が塗布されている。消泡剤43は、第1実施形態に示す消泡液36と同じく、排出インクIに含まれる泡Bの泡膜と接触してその表面張力を低下させ、泡Bを消失させるものである。
【0056】
従って、排出口27aから排出される排出インクIは、図8に示すように、多量の泡Bを含んだ状態でガイド部32bを通って収容凹部35内(第1インク吸収体33)に吐出される。すると、収容凹部35内には、図8に示すように、多量の泡Bがガイド部32bに向かって蓄積される。そして、蓄積される泡Bがガイド部32bの内壁面に当接すると、その泡Bは、内壁面に塗布される消泡剤43によって消失される。すなわち、収容凹部35内に排出される泡Bは、この消泡剤43によって、ガイド部32bの高さ位置よりも高く堆積することを規制され、収容凹部35内に捕獲される。
【0057】
従って、カバー32の内壁面に消泡剤43を塗布する簡便な構成によって、排出口27aから排出される泡Bを収容凹部35(回収容器31)内に捕獲することができ、ひいてはプリンタ10内の泡Bによる汚染を解消することができる。
【0058】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、消泡剤をポリエーテル変性シリコーンとして具体化したが、フッ素系化合物やシリコン系化合物からなる消泡剤であってもよく、また一般的な界面活性剤であってもよい。さらには、これら複数の消泡剤や界面活性剤を混合するものであってもよく、液体に含有される泡を消失するものであればよい。
【0059】
・上記第1および第2実施形態では、消泡剤を保湿剤等によって溶解した消泡液36を形成し、その消泡液36を第2液体吸収体に含浸させる構成にした。これを変更し、排出インクIと第2インク吸収体34との界面、すなわち第2インク吸収体34の上面34aに消泡剤を塗布する構成にしてもよい。
【0060】
・上記第1実施形態では、第2インク吸収体34に消泡液36を含浸させる構成にしたが、第2インク吸収体34を使用することなく、第1インク吸収体33の凹部33a近傍に消泡液36を直接含浸させる構成にしてもよい。
【0061】
・上記第4実施形態では、ガイド部32bの内周面に消泡剤43を塗布したが、これに限らず、例えば、カバー32に形成される貫通孔32aの内壁面に塗布してもよく、回収容器31の内壁面に塗布してもよい。
【0062】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタとして具体化したが、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造や、有機ELディスプレイ等の画素形成に利用される液体噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態のインクジェット式プリンタを示す斜視図。
【図2】同じく、インクジェット式プリンタを示す要部断面図。
【図3】同じく、回収ユニットを示す斜視図。
【図4】同じく、回収ユニットを示す断面図。
【図5】同じく、回収ユニットを示す断面図。
【図6】第2実施形態の回収ユニットを示す側断面図。
【図7】第3実施形態の回収ユニットを示す側断面図。
【図8】第4実施形態の回収ユニットを示す側断面図
【図9】従来の回収ユニットを示す断面図。
【符号の説明】
【0064】
10…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、19…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、19a…ノズル形成面、22…液体貯留手段としてのインクカートリッジ、26…封止手段としてのキャップ、27…排出チューブ、27a…排出口、28…吸引手段としての吸引ポンプ、30…回収手段および液体回収ユニットとしてのインク回収ユニット、31…回収容器、32…消泡部材としてのカバー、33…第1液体吸収体としての第1インク吸収体、34…消泡部材および第2液体吸収体としての第2インク吸収体、36…消泡液、40…消泡部材としての導入管、41,43…消泡剤、B…泡、P…ターゲットとしての記録用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と気体とを吸引して空間を減圧する吸引手段の排出口から排出される液体を吸収する液体吸収体において、
前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡剤を備えたことを特徴とする液体吸収体。
【請求項2】
液体と気体とを吸引して空間を減圧する吸引手段の排出口から排出される液体を吸収する第1液体吸収体と、前記第1液体吸収体を収容して液体を回収する回収容器とを備えた液体回収ユニットにおいて、
前記排出口から前記回収容器へと液体を回収する液体回収路の途中に、前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡部材を備えたこと特徴とする液体回収ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載する液体回収ユニットにおいて、
前記消泡部材は、
前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡剤を含浸させた前記第1液体吸収体であることを特徴とする液体回収ユニット。
【請求項4】
請求項2に記載する液体回収ユニットにおいて、
前記消泡部材は、
前記第1液体吸収体の前記排出口側に設けられ、前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡剤を含浸させた第2液体吸収体であることを特徴とする液体回収ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載する液体回収ユニットにおいて、
前記排出口は、前記回収容器の外側に設けられ、
前記第2液体吸収体は、前記回収容器の外側にあって前記排出口に設けられたことを特徴とする液体回収ユニット。
【請求項6】
請求項2に記載する液体回収ユニットにおいて、
前記消泡部材は、
前記排出口と連結し、前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡剤を塗装した内周面に沿って前記排出口から排出される液体を前記第1液体吸収体に導入する導入管であることを特徴とする液体回収ユニット。
【請求項7】
請求項2に記載する液体回収ユニットにおいて、
前記消泡部材は、
前記排出口から排出される液体に含まれる泡を消失する消泡剤を塗布した壁面を前記第1液体吸収体側に備えたカバーであることを特徴とする液体回収ユニット。
【請求項8】
液体貯留手段から供給される液体を液体噴射ノズルから噴射させる液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止する封止手段と、前記封止手段と前記ノズル形成面とで形成される空間内の液体と気体とを吸引する吸引手段と、前記吸引手段の排出口から排出される液体を回収する回収手段とを備える液体噴射装置において、
前記回収手段は、請求項2〜6のいずれか1つに記載する液体回収ユニットを備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−21451(P2006−21451A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202336(P2004−202336)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】