説明

液体噴射ヘッド、および液体噴射記録装置

【課題】アクチュエータの製造ばらつきによる使用範囲の制限を小さくでき、かつ効果的にインク滴の着弾位置精度を向上することができる液体噴射ヘッド、および液体噴射記録装置を提供する。
【解決手段】所定電圧Vの駆動パルスEP1,EP2,EP3を、アクチュエータを動作させない休止時間幅T4,T5を設けながら電極に印加する制御回路基板と、制御回路基板によって電極に印加する駆動パルスを少なくとも1回発生させることで被記録媒体に到達する液滴の容量を変化させる制御手段とを備え、制御手段は、駆動パルスを1回発生させる場合のこの駆動パルスEP1の時間幅T1Aと、駆動パルスを2回以上発生させる場合の最後に発生させる最終駆動パルスEP2の時間幅T1とを異ならせていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体噴射ヘッド、および液体噴射記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被記録媒体に液体を噴射する装置として、インク室の複数のノズルから被記録媒体に向かってインク滴を噴射する液体噴射記録装置が知られている。このような液体噴射記録装置の中には、所謂インクジェット方式が採用されたインクジェットヘッドを備えたものがある。インクジェットヘッドには、インクが充填されるインク室を有しており、このインク室には、圧電素子を有するアクチュエータが設けられている。そして、圧電素子に所定電圧の駆動パルスを印加することによってインク室を伸縮させ、ノズルからインク滴が被記録媒体に向かって吐出する。
【0003】
ここで、駆動パルスの時間幅は、インク滴をノズルから吐出させるのに最も効率がよくなるように設定されている。
より詳しく、図8に基づいて説明する。
図8は、縦軸を1滴のインク滴の吐出速度とし、横軸を駆動パルスの時間幅とした場合のインク滴の吐出速度の変化を示すグラフである。
【0004】
同図に示すように、駆動パルスの時間幅がT1のときにインク滴の吐出速度が最大になり、駆動パルスの時間幅がT1より短かったり長かったりすると、時間幅T1の場合と比較してインク滴の吐出速度が遅くなる。これは、インク室にインクを充填する際、インクの流入によって圧力変動が生じるためである。そして、ノズル側へのインクの圧力が最大値になるタイミング(以下、最適吐出タイミングという)でインク滴を吐出させることにより、このインク滴の吐出速度が最大になる。
【0005】
また、液体噴射記録装置の中には、ノズルから微小な液滴を吐出させ、1以上の微小な液滴を空中で融合させて液滴の容量を1滴あたり数〜数十ピコリットル程度に変化させて被記録媒体に着弾させる装置がある。このような装置は、インク滴を被記録媒体へ噴射する際に、インク室に設けられたアクチュエータによってインク室を伸縮させる駆動信号を所定の休止時間ごとに連続的に複数回発生させるように構成されている。
【0006】
ここで、インク室を伸縮させる駆動信号を連続的に複数回、例えば3回発生させる場合、各駆動信号のパルスの時間幅を同一に設定しても1滴分のインク容量の吐出を行う場合のインク滴吐出速度、2滴分のインク容量の吐出を行う場合のインク滴吐出速度、3滴分のインク容量の吐出を行う場合のインク滴吐出速度のそれぞれに差異が発生する。このように、1滴吐出時と比較して2滴、3滴目のインク滴吐出時の吐出速度がそれぞれ速くなるのは、1滴吐出させたときのアクチュエータの駆動により発生した圧力変動の影響がインク室内に残り、その振動の余波が2滴、3滴目のインク滴吐出時に加わるためである。そして、1滴吐出時、2滴吐出時、3滴吐出時のそれぞれで発生した吐出速度の差は、インクジェットプリンタで印字した場合、インク滴の着弾位置の差として現れてしまい、印字物の画質を悪化させてしまう。
【0007】
このため、複数回発生させる駆動信号のうち、最終駆動パルスの信号波形と、最終駆動パルスの前に1回以上動作させる初期駆動パルスの信号波形を所定の関係を持つように異ならせるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
これによれば、例えば1滴分のインク容量の吐出を行う場合のインク滴吐出速度と、2滴分、3滴分などの複数滴分のインク容量の吐出を行う場合のインク滴吐出速度との差をなくし、インク滴の着弾位置精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−272952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、インク室を伸縮させる駆動信号を連続的に複数回、例えば3回発生させる場合、1滴、2滴、3滴それぞれのインク滴を吐出させるときの電圧に対するインク滴吐出速度の感度(以下、電圧感度という)が異なる。
【0010】
より詳しく、図9に基づいて説明する。
図9は、縦軸をインク滴吐出速度とし、横軸をアクチュエータの圧電素子に印加する電圧とした場合の、1滴、2滴、3滴それぞれの吐出速度の変化を示すグラフである。
同図に示すように、1滴、2滴、3滴それぞれのインク滴を吐出させるときの電圧感度が異なるので、2滴、3滴目のインク滴吐出時の吐出速度に対し、1滴目のインク滴吐出時の吐出速度は、速度変化の傾きが大きくなる。
【0011】
このため、圧電素子に印加する電圧を所定範囲W101内に設定した場合にあっては、1滴、2滴、3滴それぞれの吐出速度の変化が小さいものの、所定範囲W101よりも小さい電圧、または大きい電圧(範囲W102,W103参照)を圧電素子に印加しようとした場合、1滴、2滴、3滴それぞれの吐出速度の変化が大きくなってしまう。よって、アクチュエータの製造ばらつきに対応したり、印字速度を速めたりしにくく、効果的にインク滴の着弾位置精度を向上しにくいという課題がある。
【0012】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、アクチュエータの製造ばらつきによる使用範囲の制限を小さくでき、かつ効果的にインク滴の着弾位置精度を向上することができる液体噴射ヘッド、および液体噴射記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る液体噴射ヘッドは、アクチュエータの電極に所定電圧を印加して前記アクチュエータを変形動作させ、被記録媒体に液体を吐出する液体噴射ヘッドにおいて、前記所定電圧の駆動パルスを、前記アクチュエータを動作させない休止時間を設けながら前記電極に印加する印加手段と、前記印加手段によって前記電極に印加する駆動パルスを少なくとも1回発生させることで前記被記録媒体に到達する液滴の容量を変化させる制御手段とを備え、前記制御手段は、前記駆動パルスを1回発生させる場合のこの駆動パルスの時間幅と、前記駆動パルスを2回以上発生させる場合の最後に発生させる最終駆動パルスの時間幅とを異ならせていることを特徴とする。
【0014】
この場合、前記駆動パルスを1回発生させる場合のこの駆動パルスの時間幅を、前記最終駆動パルスの時間幅よりも長く設定してもよい。
また、前記駆動パルスを1回発生させる場合のこの駆動パルスの時間幅を、前記最終駆動パルスの時間幅よりも短く設定してもよい。
【0015】
このように構成することで、1滴目のインク滴の吐出タイミングを最適吐出タイミングからずらすことができる。この最適吐出タイミングをずらすことにより、1滴目のインク滴吐出速度と電圧感度とを変化させることができ、この結果、複数滴分のインク容量の差によるインク滴吐出速度の傾き差をなくすことができる。このため、アクチュエータの製造ばらつきによる使用範囲の制限を小さくでき、かつ効果的にインク滴の着弾位置精度を向上することができる。
【0016】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記駆動パルスを2回以上発生させる場合において、最後に発生させる最終駆動パルスの時間幅T1とし、前記最終駆動パルスの前に1回以上発生される初期駆動パルスの時間幅をTxとしたとき、前記初期駆動パルスの時間幅Txは、0.67T1≦Tx≦0.8T1を満たすように設定され、この際、前記最終駆動パルスの時間幅と前記初期駆動パルスの時間幅の時間差分だけ前記休止時間を異ならせ、各駆動パルスの時間幅と対応する各休止時間との合計時間を一定にしたことを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、2滴目以降のインク滴の吐出タイミングを最適吐出タイミングからずらすことができる。この最適吐出タイミングをずらすことにより、2滴目以降のインク滴吐出速度を変化させることができ、この結果、複数滴分のインク容量の差によるインク滴吐出速度の傾き差をなくすことができる。このため、アクチュエータの製造ばらつきによる使用範囲の制限を小さくでき、かつ効果的にインク滴の着弾位置精度を向上することができる。
【0018】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記駆動パルスを2回以上発生させる場合において、最後に発生させる最終駆動パルスの時間幅T1とし、前記最終駆動パルスの前に1回以上発生される初期駆動パルスの時間幅をTxとしたとき、前記初期駆動パルスの時間幅Txは、T1<Tx<1.2T1を満たすように設定され、この際、前記最終駆動パルスの時間幅と前記初期駆動パルスの時間幅の時間差分だけ前記休止時間を異ならせ、各駆動パルスの時間幅と対応する各休止時間との合計時間を一定にしたことを特徴とする。
【0019】
このように構成した場合であっても、2滴目以降のインク滴の吐出タイミングを最適吐出タイミングからずらすことができる。この最適吐出タイミングをずらすことにより、2滴目以降のインク滴吐出速度を変化させることができ、この結果、複数滴分のインク容量の差によるインク滴吐出速度の傾き差をなくすことができる。このため、アクチュエータの製造ばらつきによる使用範囲の制限を小さくでき、かつ効果的にインク滴の着弾位置精度を向上することができる。
【0020】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、アクチュエータの電極に所定電圧を印加して前記アクチュエータを変形動作させ、被記録媒体に液体を吐出する液体噴射ヘッドにおいて、前記所定電圧の駆動パルスを、前記アクチュエータを動作させない休止時間を設けながら前記電極に印加する印加手段と、前記印加手段によって前記電極に印加する駆動パルスを複数回発生させることで前記被記録媒体に到達する液滴の容量を変化させる制御手段とを備え、前記制御手段は、複数回の前記駆動パルスのうち、最後に発生させる最終駆動パルスの時間幅と、前記最終駆動パルスの前に1回以上印加される初期駆動パルスの時間幅とを異ならせるものであって、この際、前記最終駆動パルスの時間幅と前記初期駆動パルスの時間幅の時間差分だけ前記休止時間を異ならせ、各駆動パルスの時間幅と対応する各休止時間との合計時間を一定にし、前記最終駆動パルスの時間幅をT1とし、前記初期駆動パルスの時間幅をTxとしたとき、前記初期駆動パルスの時間幅Txは、0.67T1≦Tx≦0.8T1を満たすように設定されていることを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、複数回行われるインク滴の吐出動作において、各インク滴の吐出タイミングを最適吐出タイミングからずらすことができる。この最適吐出タイミングをずらすことにより、それぞれインク滴吐出速度を変化させることができ、この結果、複数滴分のインク容量の差によるインク滴吐出速度の傾き差をなくすことができる。このため、アクチュエータの製造ばらつきによる使用範囲の制限を小さくでき、かつ効果的にインク滴の着弾位置精度を向上することができる。
【0022】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、アクチュエータの電極に所定電圧を印加して前記アクチュエータを変形動作させ、被記録媒体に液体を吐出する液体噴射ヘッドにおいて、前記所定電圧の駆動パルスを、前記アクチュエータを動作させない休止時間を設けながら前記電極に印加する印加手段と、前記印加手段によって前記電極に印加する駆動パルスを複数回発生させることで前記被記録媒体に到達する液滴の容量を変化させる制御手段とを備え、前記制御手段は、複数回の前記駆動パルスのうち、最後に発生させる最終駆動パルスの時間幅と、前記最終駆動パルスの前に1回以上印加される初期駆動パルスの時間幅とを異ならせるものであって、この際、前記最終駆動パルスの時間幅と前記初期駆動パルスの時間幅の時間差分だけ前記休止時間を異ならせ、各駆動パルスの時間幅と対応する各休止時間との合計時間を一定にし、前記最終駆動パルスの時間幅をT1とし、前記初期駆動パルスの時間幅をTxとしたとき、前記初期駆動パルスの時間幅Txは、T1<Tx<1.2T1を満たすように設定されていることを特徴とする。
【0023】
このように構成した場合であっても、複数回行われるインク滴の吐出動作において、各インク滴の吐出タイミングを最適吐出タイミングからずらすことができる。この最適吐出タイミングをずらすことにより、それぞれインク滴吐出速度を変化させることができ、この結果、複数滴分のインク容量の差によるインク滴吐出速度の傾き差をなくすことができる。このため、アクチュエータの製造ばらつきによる使用範囲の制限を小さくでき、かつ効果的にインク滴の着弾位置精度を向上することができる。
【0024】
本発明に係る液体噴射記録装置は、請求項1〜請求項7の何れかに記載の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを前記液体が噴射される被記録媒体に対向して往復移動させる移動機構と、前記被記録媒体をノズルと一定の距離をもって搬送する搬送機構とを備えることを特徴とする。
【0025】
このように構成することで、複数滴分のインク容量の差によるインク滴吐出速度の傾き差をなくし、アクチュエータの製造ばらつきによる使用範囲の制限を小さくできると共に、効果的にインク滴の着弾位置精度を向上することができる液体噴射記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、1滴目のインク滴の吐出タイミングを最適吐出タイミングからずらすことができる。この最適吐出タイミングをずらすことにより、1滴目のインク滴吐出速度と電圧感度とを変化させることができ、この結果、複数滴分のインク容量の差によるインク滴吐出速度の傾き差をなくすことができる。このため、アクチュエータの製造ばらつきによる使用範囲の制限を小さくでき、かつ効果的にインク滴の着弾位置精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態における液体噴射記録装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における液体噴射ヘッドを示し、(a)は斜視図、(b)は(a)の一部破断斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態における駆動パルスの波形を示す説明図であって、(a)は1滴分の駆動パルスの波形を示す図、(b)は2滴分の駆動パルスの波形を示す図、(c)は3滴分の駆動パルスの波形を示す図、(d)は3滴分の駆動パルスの波形を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態における1滴分、2滴分、3滴分それぞれの吐出速度の変化を示すグラフである。
【図5】本発明の第1実施形態の他の実施例における駆動パルスの波形を示す説明図であって、(a)は1滴分の駆動パルスの波形を示す図、(b)は2滴分の駆動パルスの波形を示す図、(c)は3滴分の駆動パルスの波形を示す図、(d)は3滴分の他の駆動パルスの波形を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態における駆動パルスの波形を示す説明図であって、(a)は1滴分の駆動パルスの波形を示す図、(b)は2滴分の駆動パルスの波形を示す図、(c)は3滴分の駆動パルスの波形を示す図、(d)は3滴分の他の駆動パルスの波形を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態における1滴分、2滴分、3滴分それぞれの吐出速度の変化を示すグラフである。
【図8】従来のインク滴の吐出速度の変化を示すグラフである。
【図9】従来の1滴、2滴、3滴それぞれの吐出速度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
(液体噴射記録装置)
次に、この発明の第1実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。
図1は、液体噴射記録装置を示す斜視図である。
液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送機構2、3と、被記録媒体Sにインク滴を噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4にインクを供給する液体供給手段5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている。
以下、副走査方向をX方向、主走査方向をY方向、そしてX方向およびY方向にともに直交する方向をZ方向として説明する。
【0029】
一対の搬送機構2、3は、それぞれ副走査方向に延びて設けられたグリッドローラ20,30と、グリッドローラ20,30のそれぞれに平行に延びるピンチローラ21,31と、詳細は図示しないがグリッドローラ20,30を軸回りに回転動作させるモータ等の駆動機構とを備えている。
【0030】
液体供給手段5は、インクが収容された液体収容体50と、液体収容体50と液体噴射ヘッド4とを接続する液体供給管51とを備えている。液体収容体50は、複数設けられており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク50Y,50M,50C,50Bが並べて設けられている。インクタンク50Y,50M,50C,50BのそれぞれにはポンプモータMが設けられており、インクを液体供給管51を通じて液体噴射ヘッド4へ押圧移動できる。液体供給管51は、液体噴射ヘッド4(キャリッジユニット62)の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
【0031】
走査手段6は、副走査方向に延びて設けられた一対のガイドレール60,61と、一対のガイドレール60,61に沿って摺動可能なキャリッジユニット62と、キャリッジユニット62を副走査方向に移動させる駆動機構63とを備えている。駆動機構63は、一対のガイドレール60,61の間に配設された一対のプーリ64,65と、一対のプーリ64,65間に巻回された無端ベルト66と、一方のプーリ64を回転駆動させる駆動モータ67とを備えている。
【0032】
一対のプーリ64,65は、一対のガイドレール60,61の両端部間にそれぞれ配設されており、副走査方向に間隔をあけて配置されている。無端ベルト66は、一対のガイドレール60,61間に配設されており、この無端ベルト66に、キャリッジユニット62が連結されている。キャリッジユニット62の基端部62aには、複数の液体噴射ヘッド4が搭載されている。具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクに個別に対応する液体噴射ヘッド4Y,4M,4C,4Bが副走査方向に並んで搭載されている。
【0033】
(液体噴射ヘッド)
図2は、液体噴射ヘッドを示し、(a)は斜視図、(b)は(a)の一部破断斜視図である。
図2(a)、図2(b)に示すように、液体噴射ヘッド4は、被記録媒体S(図1参照)に対してインク滴を噴射する噴射部70と、噴射部70と電気的に接続された制御回路基板80と、噴射部70と液体供給管51との間に、それぞれ接続部93,94を介して介在された圧力緩衝器90とをベース41,42上に備えている。圧力緩衝器90は、液体供給管51から噴射部70へインクの圧力変動を緩衝しながら流通させるためのものである。なお、ベース41,42は一体成形とされていても構わない。
【0034】
噴射部70は、圧力緩衝器90に接続部72を介して接続された流路基板71と、主走査方向に並べて配置されたセラミック製のプレート等を有しインクを液滴として被記録媒体Sへと噴射させるアクチュエータ73と、アクチュエータ73と制御回路基板80とに電気的に接続されアクチュエータ73の圧電素子に対して駆動信号を伝送するためのフレキシブル配線74とを備えている。
制御回路基板80は、液体噴射記録装置1の本体制御部(不図示)からのピクセルデータ等の信号に基づいてアクチュエータ73の駆動パルスを生成する制御手段81を備えている。
【0035】
アクチュエータ73は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)から成るものであって、インクが充填される複数のインク室(不図示)を有している。各インク室を区画する不図示の壁には、電極が蒸着により設けられている。そして、この電極に所定電圧V(図3参照)の駆動パルスを印加することによってインク室の体積が増加した後、元の状態に戻るようになっている。また、アクチュエータ73の前端面には、ノズルプレートが設けられている。このノズルプレートには、各インク室に対応するように複数のノズル開口部(不図示)が形成されている。このノズル開口部を介してインク室に充填されたインクが液滴となって吐出される。
【0036】
(液体噴射記録装置の動作)
続いて、液体噴射記録装置1の動作について説明する。
まず、液体噴射記録装置1を作動させると、グリッドローラ20,30、およびピンチローラ21,31が回転して被記録媒体SがY方向に向けて搬送される。また、これと同時に駆動モータ67が回転して無端ベルト66を動作させる。これにより、キャリッジユニット62がガイドレール60,61にガイドされながらX方向に往復移動する。
そして、この間に、各液体噴射ヘッド4の噴射部70より4色のインクを被記録媒体Sに適宜吐出させることで、この被記録媒体Sに文字や画像等の記録が行われる。
【0037】
次に、液体噴射ヘッド4の動作について説明する。
キャリッジユニット62によって往復移動が開始されると、制御回路基板80の制御手段81によってアクチュエータ73の電極に所定電圧V(図3参照)の駆動パルスが印加される。この駆動パルスが印加されている間、アクチュエータ73の各インク室を区画する不図示の壁が変形し、インク室の容積が増大してインクが導入される。
【0038】
そして、インクによる圧力波が所定位置に到着したタイミング(詳細は後述する)で所定電圧Vをゼロにすると、変形した壁が元に戻り、一旦増大したインク室の容積が元の容積に戻る。この動作によって、インク室内部の圧力が増加し、インクが加圧される。この結果、インク室からインクが押出されるようにノズルプレートを介して吐出され、被記録媒体Sに文字や画像等の記録が行われる。
【0039】
ここで、制御手段81は、被記録媒体Sに記録させる文字データや画像データに基づいて、どのタイミングでアクチュエータ73の電極に所定電圧Vを印加するかを設定する2値信号を出力することで、各電極に印加する駆動パルスを複数回発生させて被記録媒体Sに到達するインク滴の容量を変化させる制御を行う。
【0040】
例えば、階調制御を行わない場合には2値データ(0または1)からなる文字データや画像データに基づいて各ノズル開口部(不図示)に対応した所定電圧Vの駆動パルスを印加、または停止を指示する信号が出力される。
また、例えば4階調の階調制御を行う場合には4値データ(0、1、2、3)からなる文字データや画像データに基づいて、各ノズル開口部(不図示)に対応する4種類の吐出容量(0滴、1滴分、2滴分、3滴分)に対応する駆動パルスの発生回数を指示する信号を出力する。
【0041】
(駆動パルス)
より詳しく、図3に基づいて階調制御を行う場合の駆動パルスの波形について説明する。
図3は、制御手段によって生成される駆動パルスの波形を示す説明図であって、(a)は1滴分のインク容量を吐出する場合の駆動パルスの波形を示す図、(b)は2滴分のインク容量を吐出する場合の駆動パルスの波形を示す図、(c)は3滴分のインク容量を吐出する場合の駆動パルスの波形を示す図、(d)は3滴分のインク容量を吐出する場合の他の駆動パルスの波形を示す図である。
【0042】
図3(a)に示すように、1滴分のインク容量を吐出する場合、アクチュエータ73の電極(不図示)に印加する所定電圧Vの駆動パルスEP1の時間幅はT1Aに設定される。すなわち、電極に駆動パルスを印加すると、インク室を区画する不図示の壁が変形するが、この変形が時間幅T1Aの間持続される。そして、T1A経過後所定電圧Vの電位がゼロになり、不図示の壁が元に戻る。
【0043】
一方、図3(b)、図3(c)に示すように、階調表現するためのインク容量を変える場合、つまり、2滴分や3滴分のインク容量を吐出する場合において、最後に電極に印加される所定電圧Vの最終駆動パルスEP2、EP3の時間幅はT1に設定される。
ここで、最終駆動パルスEP2,EP3の時間幅T1は、図8に示す最も効率のよい吐出速度になる駆動パルスの時間幅T1、つまり、最適吐出タイミングと同一である。これに対し、1滴分のインク容量を吐出する場合の駆動パルスEP1の時間幅T1Aは時間幅T1よりも長く設定されている。このため、駆動パルスEP1の時間幅T1Aは、最適吐出タイミングからずれることになり、この分インク滴吐出速度が遅くなる。つまり、最適吐出タイミングからずれるということは、ノズルプレート側へのインクの圧力が最大値になるタイミングからずれたタイミングでインク滴を吐出することになるから、この分効率が低下してインク滴吐出速度が遅くなると共に、電圧感度も鈍る。
【0044】
また、2滴分のインク容量を吐出する場合、所定電圧Vの最終駆動パルスEP2よりも前に、1回の所定電圧Vの初期駆動パルスSP2がアクチュエータ73の電極に印加される。初期駆動パルスSP2の時間幅T2は、最終駆動パルスEP2の時間幅T1よりも短い。また、初期駆動パルスSP2は、最終駆動パルスEP2とは時間幅T4だけ間隔をあけて印加される。
【0045】
初期駆動パルスSP2は、最終駆動パルスEP2よりも印加時間が短いが、初期駆動パルスSP2で吐出されたインク滴と最終駆動パルスEP2で吐出されたインク滴は短時間に連続して吐出されるため、これらインク滴が不図示のノズルプレートと被記録媒体Sとの間の飛翔中に合体し、2滴分の大きなインク滴となって被記録媒体Sに着弾し、階調表現を可能にする。
【0046】
さらに、3滴分のインク容量を吐出する場合、所定電圧Vの最終駆動パルスEP3よりも前に、2回の所定電圧Vの初期駆動パルスSP3がアクチュエータ73の電極に印加される。初期駆動パルスSP3の時間幅T2,T3は、それぞれ最終駆動パルスEP3の時間幅T1よりも短い。そして、時間幅T2の初期駆動パルスSP3は、最終駆動パルスEP3とは時間幅T4だけ間隔をあけて印加される。また、時間幅T2と同じ時間幅T3の初期駆動パルスSP3は、時間幅T5だけ間隔をあけて印加される。
【0047】
初期駆動パルスSP3も、最終駆動パルスEP3よりも印加時間が短いが、初期駆動パルスSP3で吐出されたインク滴と最終駆動パルスEP3で吐出されたインク滴は短時間に連続して吐出されるため、これらインク滴が不図示のノズルプレートと被記録媒体Sとの間の飛翔中に合体し、3滴分の大きなインク滴となって被記録媒体Sに着弾し、階調表現を可能にする。
【0048】
ここで、各初期駆動パルスSP2,SP3、駆動パルスEP1、および各最終駆動パルスEP2,EP3の立ち上がりタイミングt1,t3,t5は、時間t1の2倍の周期で一定としている。また同一タイミングで吐出すべき複数のノズル開口部においては、駆動パルスEP1、および最終駆動パルスEP2,EP3の印加タイミングt5が一致(同期)するように制御されている。
【0049】
すなわち、図3(a)〜(c)は、(a)〜(c)それぞれがあるノズル開口部から1滴分、2滴分、3滴分のインク量を吐出する際の駆動波形を示すものであるが、そのほかに、(a)〜(c)の時間軸が一致するものとして、記録位置が同一線上に並ぶ複数の異なるノズル開口部で1滴分、2滴分、3滴分のインク量のインク滴を吐出する場合のタイミングを示すものとしてとらえることもできる。
【0050】
また、2滴分、3滴分のインク滴を吐出する場合において、最終駆動パルスEP2,EP3の時間幅T1と、初期駆動パルスSP2,SP3の時間幅T2,T3との関係を、例えば、所定電圧Vが共通で、図3に示すように
T1/2=T2=T3・・・(1)
を満たすように設定することが望ましい。各時間幅T1,T2,T3を、式(1)を満たすように設定することにより、2滴分、3滴分のインク容量時の吐出速度をほぼ同一に設定することができる。
【0051】
より詳しく、図4に基づいて説明する。
図4は、縦軸をインク滴吐出速度とし、横軸をアクチュエータ73の圧電素子に印加する電圧とした場合の、1滴分、2滴分、3滴分それぞれの吐出速度の変化を示すグラフである。
同図に示すように、2滴、3滴それぞれのインク滴を吐出させるときの電圧感度がほぼ同一、つまり2滴、3滴目のインク滴吐出時の吐出速度、およびこの吐出速度の変化の傾きは、ほぼ同一になっていることが確認できる。
【0052】
これは、初期駆動パルスSP2,SP3の時間幅T2,T3が式(1)を満たすということは、図8のグラフから分かるように最終駆動パルスEP2,EP3の時間幅T1で駆動した場合より遅いインク滴吐出速度となり、また、初期駆動パルスSP2,SP3によっては、アクチュエータ73のインク室内の圧力変化の影響が次に吐出の際に残りにくく、その振動の余波があまり加わらないため、複数回吐出を行っても、インク滴吐出速度の差が大きくならないからである。
【0053】
また、式(1)を満たす場合、初期駆動パルスSP2,SP3と最終駆動パルスEP2,EP3との間の休止時間(アクチュエータを動作させない時間)T4、および初期駆動パルスSP3,SP3同士の間の休止時間幅T5は、
T4=T5=T1+(T1−T2)=3×T2=3×T3・・・(2)
を満たす。これは、最終駆動パルスEP2,EP3と比べて初期駆動パルスSP2,SP3の時間が短くなった分(T1−T2)を休止時間に加えたものを新たな休止時間としたことを意味する。具体的には、例えば時間幅T1が7.6μsecである場合には、時間幅T2,T3は3.8μsecで時間幅T4,T5は11.4μsecとなる。
【0054】
ここで、1滴分のインク容量を吐出する場合の駆動パルスEP1の時間幅T1Aは、時間幅T1よりも長く設定されており、最適吐出タイミングからずれてインク滴の吐出速度が遅くなっている。すなわち、駆動パルスEP1によって吐出されたインク滴の吐出速度は、図9に示す1滴分の吐出速度の速度変化の傾きよりも小さくなる。
このため、図4に示すように、1滴のインク滴を吐出させるときの電圧感度は、2滴、3滴それぞれのインク滴を吐出させるときの電圧感度とほぼ同一になることが確認できる。つまり、1滴のインク滴吐出速度、およびこの吐出速度の変化の傾きと、2滴、3滴目のインク滴吐出時の吐出速度、およびこの吐出速度の変化の傾きとがほぼ同一になることが確認できる。
【0055】
(効果)
したがって、上述の第1実施形態によれば、1滴のインク滴の吐出タイミングを最適吐出タイミングからずらすことにより、1滴のインク滴吐出速度を2滴、3滴目のインク滴吐出時の吐出速度、およびこの吐出速度の変化の傾きに合わせることができる。このため、複数滴分のインク容量の差によるインク滴吐出速度の傾き差を小さくすることができる。
具体的には、例えば、インク滴吐出速度の基準ラインK1(図4における2点鎖線参照)に対して、±10%程度の範囲H1に、複数滴分のインク容量の差によるインク滴吐出速度の傾き差を収めることが可能になる。よって、効果的にインク滴の着弾位置精度を向上することができる。
また、図4に示すように、電極に印加する所定電圧Vが小さい場合や大きい場合であっても、1滴、2滴、3滴それぞれのインク滴の吐出速度に差異が生じないので、アクチュエータ73の製造ばらつきに対応可能な使用範囲W1(図4参照)を広げることができる。
【0056】
なお、上述の第1実施形態では、3滴のインク滴を吐出する場合において、図3(c)に示すように、所定電圧Vの初期駆動パルスSP3をアクチュエータ73の電極に印加する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、図3(d)に示すような初期駆動パルスSP3’をアクチュエータ73の電極に印加してもよい。
【0057】
ここで、図3(d)に示すように、初期駆動パルスSP3’の時間幅T2a,T3aを、所定電圧Vは共通で、
T2a=T3a=T1×(3/2)・・・(3)
を満たすように設定することが望ましい。各時間幅T2a,T3aを、式(3)を満たすように設定することにより、休止時間幅T4a,T5aが短くなることになる。これにより、初期駆動パルスSP3’と休止時間幅T4a,T5aの合計をT1時間の2倍で一定とすることができるので、上述の図3(c)に示す場合と同様の効果を奏することができる。
なお、図3において図示しないが、2滴のインク滴を吐出する場合において、図3(b)のSP2のT2の幅を図3(d)の初期駆動パルスSP3’の幅T2aとすることも可能である。
【0058】
また、上述の第1実施形態では、駆動パルスEP1の時間幅を、時間幅T1よりも長いT1Aに設定し、1滴分のインク滴の吐出タイミングを最適吐出タイミングからずらすことにより、1滴分のインク滴吐出速度を2滴、3滴目のインク滴吐出時の吐出速度、およびこの吐出速度の変化の傾きに合わせる場合について説明した。
しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、図5に示すように、駆動パルスEP1の時間幅を、時間幅T1よりも短いT1Bに設定してもよい。このように構成した場合であっても、1滴分のインク滴の吐出タイミングを最適吐出タイミングからずらすことができ、1滴分のインク滴吐出速度を2滴、3滴目のインク滴吐出時の吐出速度、およびこの吐出速度の変化の傾きに合わせることができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を図1、図2を援用し、図6に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
この第2実施形態において、液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送機構2、3と、被記録媒体Sにインク滴を噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4にインクを供給する液体供給手段5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている点、液体噴射ヘッド4は、インク滴を噴射する噴射部70と、噴射部70と電気的に接続された制御回路基板80と、噴射部70と液体供給管51との間に介在された圧力緩衝器90とをベース41,42上に備えている点、制御回路基板80は、アクチュエータ73の駆動パルスを生成する制御手段81とを備えている点等の基本的構成は、前述した第1実施形態と同様である。
【0060】
ここで、第1実施形態と第2実施形態との相違点は、制御手段81により生成される駆動パルスの波形が異なる点にある。
より詳しく、図6に基づいて説明する。
図6は、制御手段によって生成される駆動パルスの波形を示す説明図であって、(a)は1滴分のインク容量を吐出する場合の駆動パルスの波形を示す図、(b)は2滴分のインク容量を吐出する場合の駆動パルスの波形を示す図、(c)は3滴分のインク容量を吐出する場合の駆動パルスの波形を示す図、(d)は3滴分のインク容量を吐出する場合の他の駆動パルスの波形を示す図である。
【0061】
図6(a)、図6(b)、図6(c)に示すように、1滴分のインク容量を吐出する場合、アクチュエータ73の電極に印加する所定電圧Vの駆動パルスEP11の時間幅は、2滴分や3滴分のインク容量を吐出する場合において、最後に電極に印加される所定電圧Vの最終駆動パルスEP21,EP31の時間幅と同様にT1に設定される。
また、図6(b)、図6(c)に示すように、2滴分のインク容量を吐出する場合、最終駆動パルスEP21よりも前に、1回の初期駆動パルスSP21がアクチュエータ73の電極に印加される。初期駆動パルスSP21の時間幅T2Aは、最終駆動パルスEP21の時間幅T1よりも短く、かつ最終駆動パルスEP21とは時間幅T4Aだけ間隔をあけて印加される。
【0062】
初期駆動パルスSP21は、最終駆動パルスEP21よりも印加時間が短いが、所定電圧Vの初期駆動パルスSP21で吐出されたインク滴と所定電圧Vの最終駆動パルスEP21で吐出されたインク滴は短時間に連続して吐出されるため、これらインク滴が不図示のノズルプレートと被記録媒体Sとの間の飛翔中に合体し、2滴分の大きなインク滴となって被記録媒体Sに着弾し、階調表現を可能にする。
【0063】
さらに、3滴分のインク容量を吐出する場合、最終駆動パルスEP31よりも前に、2回の初期駆動パルスSP31がアクチュエータ73の電極に印加される。初期駆動パルスSP31の時間幅T2A,T3Aは、それぞれ最終駆動パルスEP31の時間幅T1よりも短い。そして、時間幅T2Aの初期駆動パルスSP31は、最終駆動パルスEP31とは時間幅T4Aだけ間隔をあけて印加される。また、時間幅T2Aと同じ時間幅T3Aの初期駆動パルスSP31は、時間幅T5Aだけ間隔をあけて印加される。
【0064】
初期駆動パルスSP31も、最終駆動パルスEP31よりも印加時間が短いが、所定電圧Vの初期駆動パルスSP31で吐出されたインク滴と所定電圧Vの最終駆動パルスEP31で吐出されたインク滴は短時間に連続して吐出されるため、これらインク滴が不図示のノズルプレートと被記録媒体Sとの間の飛翔中に合体し、3滴分の大きなインク滴となって被記録媒体Sに着弾し、階調表現を可能にする。
【0065】
ここで、2滴分、3滴分のインク滴を吐出する場合において、最終駆動パルスEP21,EP31の時間幅T1と、初期駆動パルスSP21,SP31の時間幅T2A,T3Aとの関係は、所定電圧Vが共通で、図6(c)に示すように
0.67T1≦T2A=T3A≦0.8T1・・・(4)
を満たすように設定されている。
【0066】
各時間幅T1,T2A,T3Aを式(4)を満たすように設定することにより、2滴分、3滴分のインク容量時の吐出速度をほぼ同一に設定することができる。また、各時間幅T1,T2A,T3Aを式(4)を満たすように設定することにより、時間幅T2A,T3Aは、前述の第1実施形態における時間幅T2,T3(図3参照)よりも長く設定され、これら時間幅T2,T3よりも時間幅T1に近い値に設定されたことになる。このため、初期駆動パルスSP21,SP31、および最終駆動パルスEP21,EP31によって吐出された2滴分、3滴分の吐出速度は、図9に示す2滴分、3滴分の吐出速度の速度変化の傾きよりも大きくなる。
このため、図7に示すように、2滴、3滴それぞれのインク滴を吐出させるときの電圧感度は、1滴のインク滴を吐出させるときの電圧感度とほぼ同一になることが確認できる。
【0067】
ここで、各時間幅T1,T2A,T3Aが式(4)を満たす場合、初期駆動パルスSP21,SP31と最終駆動パルスEP21,EP31との間の休止時間(アクチュエータを動作させない時間)T4A、および初期駆動パルスSP31,SP31同士の間の休止時間幅T5Aは、
T4A=T5A=T1+(T1−T2A)・・・(5)
を満たす。これは、最終駆動パルスEP21,EP31と比べて初期駆動パルスSP21,SP31の時間が短くなった分(T1−T2A)を休止時間に加えたものを新たな休止時間としたことを意味する。
【0068】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、例えば、インク滴吐出速度の基準ラインK2(図7における2点鎖線参照)に対して、±10%程度の範囲H2に、複数滴分のインク容量の差によるインク滴吐出速度の傾き差を収めることが可能になる。
【0069】
なお、上述の第2実施形態では、3滴のインク滴を吐出する場合において、図6(c)に示すように、所定電圧Vの初期駆動パルスSP31をアクチュエータ73の電極に印加する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、図6(d)に示すような初期駆動パルスSP31’をアクチュエータ73の電極に印加してもよい。
【0070】
ここで、図6(d)に示すように、最終駆動パルスEP21の時間幅T1と、初期駆動パルスSP31’の時間幅T2B,T3Bとの関係は、
T1<T2B=T3B<1.2T1・・・(5)
を満たすように設定されている。
これにより、2滴、3滴それぞれのインク滴を吐出させるときの電圧感度を、1滴のインク滴を吐出させるときの電圧感度とほぼ同一にすることができるので、上述の第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0071】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、1滴、2滴、3滴分のインク容量の吐出についての説明をしたが、これに限られるものではなく、インク滴量の上限の制限は特にない。
【符号の説明】
【0072】
1 液体噴射記録装置
2 搬送機構(移動機構)
3 搬送機構(移動機構)
4 液体噴射ヘッド
73 アクチュエータ
80 制御回路基板(印加手段)
81 制御手段
EP1,EP11 駆動パルス
EP2,EP3,EP21,EP31 最終駆動パルス
S 被記録媒体
SP2,SP3,SP3’、SP21,SP31,SP31’ 初期駆動パルス
T1,T1A,T2,T2a,T3,T3a 時間幅
T4,T4A,T4a,T4B,T5,T5A,T5a,T5B 休止時間幅
T2A,T3A,T2B,T3B 時間幅(時間幅Tx)
V 所定電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの電極に所定電圧を印加して前記アクチュエータを変形動作させ、被記録媒体に液体を吐出する液体噴射ヘッドにおいて、
前記所定電圧の駆動パルスを、前記アクチュエータを動作させない休止時間を設けながら前記電極に印加する印加手段と、
前記印加手段によって前記電極に印加する駆動パルスを少なくとも1回発生させることで前記被記録媒体に到達する液滴の容量を変化させる制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記駆動パルスを1回発生させる場合のこの駆動パルスの時間幅と、
前記駆動パルスを2回以上発生させる場合の最後に発生させる最終駆動パルスの時間幅とを異ならせていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記駆動パルスを1回発生させる場合のこの駆動パルスの時間幅を、前記最終駆動パルスの時間幅よりも長く設定したことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記駆動パルスを1回発生させる場合のこの駆動パルスの時間幅を、前記最終駆動パルスの時間幅よりも短く設定したことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記駆動パルスを2回以上発生させる場合において、
最後に発生させる最終駆動パルスの時間幅T1とし、前記最終駆動パルスの前に1回以上発生される初期駆動パルスの時間幅をTxとしたとき、前記初期駆動パルスの時間幅Txは、
0.67T1≦Tx≦0.8T1
を満たすように設定され、
この際、前記最終駆動パルスの時間幅と前記初期駆動パルスの時間幅の時間差分だけ前記休止時間を異ならせ、各駆動パルスの時間幅と対応する各休止時間との合計時間を一定にしたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記駆動パルスを2回以上発生させる場合において、
最後に発生させる最終駆動パルスの時間幅T1とし、前記最終駆動パルスの前に1回以上発生される初期駆動パルスの時間幅をTxとしたとき、前記初期駆動パルスの時間幅Txは、
T1<Tx<1.2T1
を満たすように設定され、
この際、前記最終駆動パルスの時間幅と前記初期駆動パルスの時間幅の時間差分だけ前記休止時間を異ならせ、各駆動パルスの時間幅と対応する各休止時間との合計時間を一定にしたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
アクチュエータの電極に所定電圧を印加して前記アクチュエータを変形動作させ、被記録媒体に液体を吐出する液体噴射ヘッドにおいて、
前記所定電圧の駆動パルスを、前記アクチュエータを動作させない休止時間を設けながら前記電極に印加する印加手段と、
前記印加手段によって前記電極に印加する駆動パルスを複数回発生させることで前記被記録媒体に到達する液滴の容量を変化させる制御手段とを備え、
前記制御手段は、
複数回の前記駆動パルスのうち、最後に発生させる最終駆動パルスの時間幅と、
前記最終駆動パルスの前に1回以上印加される初期駆動パルスの時間幅とを異ならせるものであって、
この際、前記最終駆動パルスの時間幅と前記初期駆動パルスの時間幅の時間差分だけ前記休止時間を異ならせ、各駆動パルスの時間幅と対応する各休止時間との合計時間を一定にし、
前記最終駆動パルスの時間幅をT1とし、前記初期駆動パルスの時間幅をTxとしたとき、
前記初期駆動パルスの時間幅Txは、
0.67T1≦Tx≦0.8T1
を満たすように設定されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項7】
アクチュエータの電極に所定電圧を印加して前記アクチュエータを変形動作させ、被記録媒体に液体を吐出する液体噴射ヘッドにおいて、
前記所定電圧の駆動パルスを、前記アクチュエータを動作させない休止時間を設けながら前記電極に印加する印加手段と、
前記印加手段によって前記電極に印加する駆動パルスを複数回発生させることで前記被記録媒体に到達する液滴の容量を変化させる制御手段とを備え、
前記制御手段は、
複数回の前記駆動パルスのうち、最後に発生させる最終駆動パルスの時間幅と、
前記最終駆動パルスの前に1回以上印加される初期駆動パルスの時間幅とを異ならせるものであって、
この際、前記最終駆動パルスの時間幅と前記初期駆動パルスの時間幅の時間差分だけ前記休止時間を異ならせ、各駆動パルスの時間幅と対応する各休止時間との合計時間を一定にし、
前記最終駆動パルスの時間幅をT1とし、前記初期駆動パルスの時間幅をTxとしたとき、
前記初期駆動パルスの時間幅Txは、
T1<Tx<1.2T1
を満たすように設定されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを前記液体が噴射される被記録媒体に対向して往復移動させる移動機構と、
前記被記録媒体をノズルと一定の距離をもって搬送する搬送機構とを備えることを特徴とする液体噴射記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−148479(P2012−148479A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8913(P2011−8913)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】