液体噴射ヘッドの制御方法、制御装置および液体噴射装置
【課題】 粘度に応じた適確な駆動信号で圧力発生手段を駆動することにより液体の粘度が広い範囲で変化しても安定した吐出特性を得る液体噴射ヘッドの制御装置を提供する。
【解決手段】 駆動信号S1が第1の駆動信号S11と第2の駆動信号S12とを有しており、第1の駆動信号S11が、第1の収縮要素を含む先行パルス部と、メニスカスを引き込む第1の膨張要素およびノズル開口からインク滴を吐出させる第2の収縮要素を含む吐出パルス部とを有するとともに、第2の駆動信号12が、前記吐出パルス部と、メニスカスの残留振動を制振させる第2の膨張要素を含む制振パルス部とを有し、インクの粘度が第1の設定値以上の場合には第1の駆動信号S11で、粘度が第2の設定値以下の場合には第2の駆動信号S12で圧電素子300をそれぞれ駆動させる。
【解決手段】 駆動信号S1が第1の駆動信号S11と第2の駆動信号S12とを有しており、第1の駆動信号S11が、第1の収縮要素を含む先行パルス部と、メニスカスを引き込む第1の膨張要素およびノズル開口からインク滴を吐出させる第2の収縮要素を含む吐出パルス部とを有するとともに、第2の駆動信号12が、前記吐出パルス部と、メニスカスの残留振動を制振させる第2の膨張要素を含む制振パルス部とを有し、インクの粘度が第1の設定値以上の場合には第1の駆動信号S11で、粘度が第2の設定値以下の場合には第2の駆動信号S12で圧電素子300をそれぞれ駆動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体噴射ヘッドの制御方法、制御装置および液体噴射装置に関し、特に粘度が広い範囲で変化する液体を吐出させる場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置に搭載されノズル開口を介して液体を吐出する液体噴射ヘッドの代表例として、例えば圧電アクチュエーターの変位による圧力を利用してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドが知られている。この種のインクジェット式記録ヘッドは、一般に、ノズル開口に連通する圧力発生室が形成された流路形成基板の一方面側に圧電アクチュエーターを設け、この圧電アクチュエーターを変形させることで圧力発生室内のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるように構成してある。
【0003】
かかるインクジェット式記録ヘッドを搭載したインクジェット式記録装置の中には、熱により定着を促進できるインクを使用したものがある。この種のインクジェット記録装置のインクジェット式記録ヘッドには、その内部に、インクを乾燥、定着させるためのヒーターが備えられている。この場合、インクジェット式記録ヘッド内のインクの温度がヒーターによって低温から高温まで広い範囲に亘って幅広く変動する。これに伴い、インク粘度も幅広く変動する。ここで、インクの吐出特性は粘度により大きく変動する。したがって、粘度が幅広く変動するインクを固定された一種類の波形の駆動信号で吐出させた場合には吐出されるインク重量やインク速度のバラツキが生起され吐出特性の悪化を招来するという問題がある。
【0004】
一方、ノズル開口からインク滴を吐出させる吐出パルス部に先行させて先行パルス部を設けるとともに、吐出パルス部の後に制振パルス部を設けた駆動波形が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−322318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、駆動信号の電圧レベルを低減するとともに、液滴の吐出ばらつきを抑制することを目的として先行パルス部においてインクに発生させた振動を利用し、その振動に同期した状態でインク滴を吐出させている。
【0007】
しかしながら特許文献1においては、インク粘度と駆動波形との関連は示唆されていないばかりか、高粘度のインクの場合、圧力発生室の振動とメニスカスの振動を完全には同期させることができないという問題が残る。すなわち、広い範囲で変化する粘度に応じた適確な吐出特性を得ることができるものではない。
【0008】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑み、粘度に応じた適確な駆動信号で圧力発生手段を駆動することにより液体の粘度が広い範囲で変化しても安定した吐出特性を得ることができる液体噴射ヘッドの制御方法、制御装置および液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の態様は、駆動信号により駆動される圧力発生手段により圧力発生室の液体に圧力変化を生じさせ、前記圧力発生室内の液体をノズル開口を介して吐出させる液体噴射ヘッドの制御方法であって、前記駆動信号が第1の駆動信号と第2の駆動信号とを有しており、前記第1の駆動信号が、前記圧力発生室を収縮させる第1の収縮要素を含む先行パルス部と、前記第1の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させてメニスカスを引き込む第1の膨張要素および該第1の膨張要素の後に前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる第2の収縮要素を含む吐出パルス部とを有するとともに、前記第2の駆動信号が、前記吐出パルス部と、前記第2の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させて残留振動を制振させる第2の膨張要素を含む制振パルス部とを有し、前記液体の粘度が第1の設定値以上の場合には前記第1の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるとともに、前記粘度が第2の設定値以下の場合には前記第2の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御方法にある。
本態様によれば、所定の高粘度の液体を吐出する場合に使用される第1の駆動信号は、先行パルス部を有しているので、第1の収縮要素によりノズル開口側への圧力が付与されたメニスカスを次の吐出パルスにおける第1の膨張要素で反対側に引き込むことができる。すなわち、第1の膨張要素で勢いが付いたメニスカスを第1の膨張要素で一気に引き込むことができる。この結果、液体が高粘度であっても、先行パルス部の存在により吐出パルス部でのメニスカスの引き込み動作を良好に行うことができる。
【0011】
また、所定の低粘度の液体を吐出する場合に使用される第2の駆動信号は、制振パルス部を有しているので、第2の収縮要素でノズル開口から吐出された液体のメニスカスの戻りに伴う振動を、第2の収縮要素により圧力発生室が膨張されることにより、吸収させることができる。この結果、液体が低粘度であっても、制振パルス部の存在により制振パルス部でのメニスカスの振動を良好に抑制することができる。
【0012】
ここで、前記駆動信号が、さらに前記先行パルス部、吐出パルス部および制振パルス部を有する第3の駆動信号を有するとともに、前記液体の粘度が第1の設定値未満で、かつ第2の設定値を越える場合には前記第3の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるのが望ましい。この場合には、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間で液体の粘度に応じた直線補完を行なうことも可能になり、中間粘度領域ではあるが高粘度側の領域にある場合や、中間粘度領域ではあるが低粘度側の領域にある場合等も含め、さらに適確な粘度に応じた駆動信号とすることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、駆動信号により駆動される圧力発生手段により圧力発生室の液体に圧力変化を生じさせ、前記圧力発生室内の液体をノズル開口を介して吐出させる液体噴射ヘッドの制御装置であって、前記駆動信号が第1の駆動信号と第2の駆動信号とを有しており、前記第1の駆動信号が、前記圧力発生室を収縮させる第1の収縮要素を含む先行パルス部と、前記第1の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させてメニスカスを引き込む第1の膨張要素および該第1の膨張要素の後に前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる第2の収縮要素を含む吐出パルス部とを有するとともに、前記第2の駆動信号が、前記吐出パルス部と、前記第2の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させて残留振動を制振させる第2の膨張要素を含む制振パルス部とを有し、前記液体の粘度が第1の設定値以上の場合には前記第1の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるとともに、前記粘度が第2の設定値以下の場合には前記第2の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置にある。
本態様によれば、第1の態様と同様に、液体が高粘度であっても、先行パルス部の存在により吐出パルス部でのメニスカスの引き込み動作を良好に行うことができ、また液体が低粘度であっても、制振パルス部の存在により制振パルス部でのメニスカスの振動を良好に抑制することができる。
【0014】
ここで、前記駆動信号が、さらに前記先行パルス部、吐出パルス部および制振パルス部を有する第3の駆動信号を有するとともに、前記液体の粘度が第1の設定値未満で、かつ第2の設定値を越える場合には前記第3の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるように構成するのが望ましい。この場合には、第2の態様と同様に、中間粘度領域ではあるが高粘度側の領域にある場合や、中間粘度領域ではあるが低粘度側の領域にある場合等も含め、さらに適確な粘度に応じた駆動信号とすることができる。
【0015】
また、前記制振パルス部における第2の膨張要素の始点から終点に至る第1の期間と前記第2の膨張要素に連続して前記圧力発生手段が一定に保持される平坦要素の始点から終点に至る第2の期間との和が、前記圧力発生室の固有振動の周期をTcとするとき、(5/13)Tc〜(10/13)Tcとなっているのが望ましい。この場合には第1の期間と第2の期間との合計時間が(Tc/2)程度になるので、第2の膨張要素と、前記平坦要素に連続して初期状態に戻す第3の収縮要素とが加振をすることになり、メニスカス振動を抑制する制振力が大きくなって低粘度の液体であっても残留振動が良好に抑制される。すなわち、Tcとの関係において最も安定した制振効果が発揮される。
【0016】
さらに、前記駆動信号の波形における第1の膨張要素の傾きD1と第2の膨張要素の傾きD2との関係がD2≧D1であるのが望ましい。この場合には、吐出に先立つメニスカスの引き込み時の傾斜よりも吐出後の制振のためのメニスカスの引き込み時の傾斜を同等以上とすることができるので、良好な制振効果を得ることができる。また、前記駆動信号の波形における第1の収縮要素の傾きD3と、前記制振パルス部における前記平坦要素に連続して初期状態に戻る第3の収縮要素の傾きD4との関係がD3≧D4であるのが望ましい。この場合には液体の吐出時の傾斜を制振時における初期状態への戻りに伴うメニスカスの制振時の傾斜に対し同等以上とすることができるので、良好な吐出特性と同時に良好な制振特性が担保される。
【0017】
本発明の他の実施の態様は、液体が充填される圧力発生室と、駆動信号の供給により前記圧力発生室内の液体に圧力変化を生じさせる圧力発生手段と、前記圧力変化に伴い前記圧力発生室内の液体を吐出させるノズル開口とを備えた液体噴射ヘッドと、上記制御装置とを有することを特徴とする液体噴射装置にある。
本態様によれば、高粘度から低粘度まで、広い粘度範囲に分散する粘度領域に合わせた適確な駆動波形で液体を吐出させることができるので、吐出液体の速度や吐出量等が安定し、良好な吐出特性が得られ、印刷等の品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】液体噴射装置の構成を示す模式的斜視図である。
【図2】実施の形態に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図3のA―A′線断面図である。
【図5】液体噴射装置の制御系の構成を示すブロック線図である。
【図6】本発明に係る液体噴射装置の第1の駆動信号の波形を示す波形図である。
【図7】本発明に係る液体噴射装置の第2の駆動信号の波形を示す波形図である。
【図8】本発明に係る液体噴射装置の第3の駆動信号の波形を示す波形図である。
【図9】液体噴射装置の制振機能を検証する駆動信号の波形を示す波形図である。
【図10】制振機能の検証により得られたデータを示す図表である。
【図11】制振機能の検証により得られた吐出安定性を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、インクジェット式記録装置(以下、記録装置ともいう)の一例を示す概略図である。図1に示すように、記録ヘッドユニット1A及び1Bは、液体吐出装置としてのインクジェット式記録装置Iに設けられている。すなわち、記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インクジェット式記録装置Iのキャリッジ3に搭載され、キャリッジ3は、インクジェット式記録装置Iの装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出する。本形態で使用するこれらのインクは熱により定着を促進できるものである。
【0020】
記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、キャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図1中は図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。また、本形態に係る記録装置Iは、熱により定着を促進できるインクを使用しているので、図示はしないがその記録ヘッドユニット1A,1Bの内部にはインクを乾燥、定着させるためのヒーターが内蔵されている。この場合、インクジェット式記録ヘッド内のインクの温度がヒーターの温度や環境温度によって低温から高温まで広い範囲に亘って変動する。これに伴い、インク粘度も幅広く変動する。
【0021】
図2は、図1に示す記録ヘッドユニット1A,1Bを内蔵するインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドともいう)の概略構成を示す分解斜視図であり、図3は、図2の平面図であり、図4は図3のA−A′線断面図である。
【0022】
図2〜図4に示すように、記録ヘッド10の流路形成基板11は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなり、本形態における振動部となる弾性膜50が形成されている。流路形成基板11には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板11の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板30のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。かくして本形態では、流路形成基板11に、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになり、圧力発生室12にインクが充填される。
【0023】
また、流路形成基板11の一方の面である開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。ここで、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等で好適に構成することができる。
【0024】
流路形成基板11の反対側の開口面には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば厚さ30〜50nm程度の酸化チタン等からなり弾性膜50等の第1電極60の下地との密着性を向上させるための密着層56が設けられている。なお、弾性膜50上に、必要に応じて酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜が設けられていてもよい。
【0025】
さらに、この密着層56上には、第1電極60と、厚さが2μm以下、好ましくは0.3〜1.5μmの薄膜である圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、本形態における圧力発生手段であり、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、密着層56、第1電極60及び必要に応じて設ける絶縁体膜が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50や密着層56を設けなくてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0026】
かかる圧電素子300の個別電極である第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、弾性膜50上や必要に応じて設ける絶縁体膜上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
【0027】
圧電素子300が形成された流路形成基板11上、すなわち、第1電極60、弾性膜50や必要に応じて設ける絶縁体膜及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板11の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板11の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板11に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板11と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、必要に応じて設ける絶縁体膜等)にマニホールド100と各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
【0028】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0029】
このような保護基板30としては、流路形成基板11の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本形態では、流路形成基板11と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成してある。
【0030】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられており、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍が、貫通孔33内に露出するように構成してある。
【0031】
一方、保護基板30上には、後に詳述する制御装置(図2〜図4には図示せず)で制御されて圧電素子300を駆動する駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0032】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0033】
かかる記録ヘッド10では、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たす。その後、駆動回路120からの駆動信号にしたがい、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧が印加される。かくして弾性膜50、密着層56、第1電極60及び圧電体層70を撓み変形させることにより、振動部として機能する弾性膜50を介して各圧力発生室12内のインクに前記変形に伴う振動を伝達させる。この結果、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出される。かかるインクの吐出駆動動作に関しては後に詳述する。
【0034】
図5はインクジェット式記録装置Iの制御系を示すブロック線図である。同図に示すように、インクジェット式記録装置I内には、インクジェット式記録装置Iの制御を行う制御装置110が設けられている。制御装置110は、CPU111と、装置制御部112と、容量性負荷である圧電素子300の駆動回路であるヘッド制御部113とを備えている。
【0035】
さらに詳言すると、CPU111からキャリッジ3(図1参照)の移動を示す信号が装置制御部112に入力されると、装置制御部112は、駆動モーター6を駆動させてキャリッジ3をキャリッジ軸5に沿って移動させるとともに、CPU111からの記録シートS(図1参照)の搬送を示す信号が装置制御部112に入力され、装置制御部112は、供給ローラー23を駆動して記録シートS(図1参照)を搬送させる。
【0036】
一方、ヘッド制御部113には、CPU111からヘッドの駆動信号S1を生成するためのアナログ信号S2及び当該ヘッド制御部113の動作の制御を行う制御信号S3が入力される。この結果、ヘッド制御部113はインクジェット式記録ヘッド10の各圧電素子300に駆動信号S1を選択的に印加してインクを吐出させる。ここで、インクジェット式記録ヘッド10は図示しないドライバーICがCPU111からヘッド制御信号を供給されて各圧電素子300を選択的に駆動させる。
【0037】
ここで、ヘッド制御部113は、第1の駆動信号S11,第2の駆動信号S12および第3の駆動信号S13の3種類の駆動信号S1をインクの粘度に基づき選択して圧電素子300を適宜駆動させるようになっている。すなわち、インクの温度はインク温度検出部114で検出され、その情報がCPU111に逐次供給される。CPU111では検出されたインク温度に基づきその粘度を検出することで、粘度に応じた駆動信号S1が供給されるようヘッド制御部113を制御する。このとき形成される第1〜第3の駆動信号S11,S12,S13の波形を図6〜図8に示す。
【0038】
図6に示す第1の駆動信号S11は、圧力発生室12を収縮させる第1の収縮要素Pwc1を含む先行パルス部P1と、第1の収縮要素Pwc1の後に圧力発生室12を膨張させてメニスカスを引き込む第1の膨張要素Pwd1および第1の膨張要素Pwd1の後に圧力発生室12を収縮させてノズル開口21からインク滴を吐出させる第2の収縮要素Pwc2を含む吐出パルス部P2とを有している。すなわち、メニスカスを引き込み易くするための先行パルス部P1を有するものであり、高粘度のインクを吐出させる場合に適用する。
【0039】
図7に示す第2の駆動信号S12は、吐出パルス部P2と、第2の収縮要素Pwc2の後に圧力発生室12を膨張させて残留振動を制振させる第2の膨張要素Pwd2を含む制振パルス部P3とを有している。すなわち、第2の収縮要素Pwc2でインク滴を吐出したことに伴うメニスカスの振動を抑制するための制振パルス部P3を有するものであり、低粘度のインクを吐出させる場合に適用する。
【0040】
図8に示す第3の駆動信号S13は、先行パルス部P1、吐出パルス部P2および制振パルス部P3の全てのパルス部を有するものである。したがって、高粘度と低粘度との中間の粘度の場合に適用する。特に、高粘度と低粘度との間の粘度を線形補完する場合に有用なものとなる。この場合には、中間粘度領域ではあるが高粘度側の領域にある場合や、中間粘度領域ではあるが低粘度側の領域にある場合等も含め、さらに適確な粘度に応じた駆動信号S13とすることができる。
【0041】
なお、図6〜図8中、Pwh1,Pwh2,Pwh3,Pwh4は収縮要素と膨張要素とを繋ぐよう一定に保持される各平坦要素、Pwc3は制振のための第3の収縮要素である。
【0042】
CPU111は、検出されたインクの粘度に応じ、粘度が高粘度側の第1の設定値Th1以上の場合には第1の駆動信号S11が、粘度が低粘度側の第2の設定値Th2以下の場合には第2の駆動信号S12がヘッド制御部113を介して圧電素子300に供給されるように制御する。また、粘度が第1の設定値Th1未満で、かつ第2の設定値Th2を越える場合には第3の駆動信号S13がヘッド制御部113を介して圧電素子300に供給されるように制御する。
【0043】
ここで、本形態においては、第1の駆動信号S11における第1の膨張要素Pwd1の傾きD1と第2の膨張要素Pwd2の傾きD2との関係はD2≧D1となっている。これにより、吐出に先立つメニスカスの引き込み時の傾斜よりも吐出後の制振のためのメニスカスの引き込み時の傾斜を同等以上とすることができるので、インク滴の吐出後の良好な制振効果を得ることができる。
【0044】
また、第2の駆動信号S12における第2の収縮要素Pwc2の傾きD3と、制振パルス部P3における平坦要素Pwh4に連続して初期状態に戻る第3の収縮要素Pwc3の傾きD4との関係がD3≧D4となっている。これにより、吐出時の傾斜を制振時における初期状態への戻り時の傾斜に対し同等以上とすることができるので、良好な吐出特性と同時に良好な制振効果を得ることができる。
【0045】
さらに、制振パルス部P3における第2の膨張要素Pwd2の始点から終点に至る期間と第2の膨張要素Pwd2に連続する平坦要素Pwh4の始点から終点に至る期間との和が、圧力発生室12の固有振動の周期をTcとするとき、(5/13)Tc〜(10/13)Tcとなるように形成してある。この場合には、図9〜図11に基づき、後に詳述するようにTcとの関係において最も安定した制振効果が発揮される。
【0046】
図9は制振パルス部P3による吐出安定性を検証するために用いた駆動パルスを示す波形図である。この場合には、第3の駆動信号S13と同波形の信号を用い、各波形成分に対する電圧(Vc)および期間(μs)を図10に示す通りとした。実験は、圧力発生室12の固有振動の周期Tcが6.5(μsec)の場合において、第2の膨張要素Pwd2の始点から終点に至る期間T2と第2の膨張要素Pwd2に連続する平坦要素Pwh4の始点から終点に至る期間T3を、図11(a)に示すように調整し、それぞれの条件の下で、吐出安定性の指標である期間T1(ΔPwh3)を測定した。ここで、期間T1(ΔPwh3)は安定的な吐出が得られる平坦要素Pwh3の時間幅である。すなわち、例えば、平坦要素Pwh3が4.5μs〜5.5μsの時に安定的な吐出を得られる場合、期間T1(ΔPwh3)は1.0μsとなる。
【0047】
上述のごとき実験の結果、図11に示すように、第2の膨張要素Pwd2の期間T2と平坦要素Pwh4の期間T3の和が、(5/13)Tc〜(10/13)Tcの範囲において、期間T1(ΔPwh3)の長さを調整して吐出を確認した際に、安定的な吐出を得られる期間T1(ΔPwh3)の範囲が1μs以上となり、吐出安定性が確保されることが分かった。安定性が良好となる範囲が、(Tc/2)からずれる理由としては、圧電素子300の駆動に対してインクが追従するのに時間がかかるためであると考えられる。ただ、このように(T2+T3)が、(Tc/2)を挟んで(5/13)Tc〜(10/13)Tcの範囲に存在すれば第2の膨張要素Pwd2と第3の収縮要素Pwc3とが加振をすることになり、メニスカス振動を抑制する制振力が大きくなって低粘度のインクであっても残留振動が良好に抑制される。
【0048】
なお、期間T1(ΔPwh3)の長さを調整した際に、安定的な吐出が得られる範囲が1μs以上であることを安定的な吐出であると判断する根拠は次の通りである。すなわち、ヘッドの製造によるばらつきにより圧力発生室12の固有振動の周期Tcにばらつきが存在すること、また制御の精度によって波形の時間長に誤差が生じてしまう虞があること、このようなばらつきを吸収して安定的な吐出を得るために、期間T1(ΔPwh3)は大きいことが望ましい。期間T1(ΔPwh3)が1μs程度あれば製品として問題が発生しないという過去の経験によるものである。さらに詳言すると、第2の収縮要素Pwc2で吐出されたインクのメニスカスの残留振動は平坦要素Pwh3を介して制振パルス部P3で制振されるが、効果的な制振を行うためには、第2の収縮要素Pwc2の終点と第2の膨張要素Pwd2の始点との間隔が肝要である。一方、この間隔は、ヘッドの特性のばらつきや、駆動信号S1のばらつき等を考慮する必要もある。そこで、期間T1(ΔPwh3)の長さを調整した際に、安定的な吐出が得られる範囲が最低1μsec以上あれば、前述の如きばらつきを吸収して効果的な制振機能を発揮させることが期待できるためである。
【0049】
上述の如く、本形態における第1の駆動信号S11は、先行パルス部P1を有しているので、第1の収縮要素Pwc1によりノズル開口21側への圧力が付与されたメニスカスを次の吐出パルス部P2における第1の膨張要素Pwd1で反対側に引き込むことができる。すなわち、先行パルス部P1で勢いが付いたメニスカスを第1の膨張要素Pwd1で一気に引き込むことができる。この結果、粘度が第1の設定値Th1以上の高粘度インクであっても、先行パルス部P1の存在により吐出パルス部P2でのメニスカスの引き込み動作を良好に行うことができ、第2の収縮要素Pwc2による安定したインクの吐出動作が担保される。
【0050】
また、第2の駆動信号S12は、制振パルス部P3を有しているので、第2の収縮要素Pwc2でノズル開口21から吐出されたインクのメニスカスの戻りに伴う残留振動を、第2の膨張要素Pwd2により圧力発生室12が膨張されることにより、吸収させることができる。この結果、インクが低粘度であっても、インク吐出後のメニスカスの振動を良好に抑制することができる。
【0051】
さらに第3の駆動信号S13は、先行パルス部P1、吐出パルス部P2および制振パルス部P3の全ての要素を有するので、粘度の中間領域での適切な吐出特性が担保される。
【0052】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、第3の駆動信号S13は必ずしも必要ではない。粘度が中間域にある場合には、最低限吐出パルス部があれば良いからである。ただ、第3の駆動信号S13を形成した場合には、中間粘度領域ではあるが高粘度側の領域にある場合や、中間粘度領域ではあるが低粘度側の領域にある場合等も含め、さらに適確な粘度に応じた圧電素子300の駆動を行うことが可能になる。
【0053】
上記実施の形態における記録装置Iは、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、薄膜型の圧電素子を用いた圧電アクチュエーターを具備するもので説明したが、これに限定する必要はない。例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子を用いた圧電アクチュエーター等を使用することもできる。また、インク定着用のヒーターを有するものに限定する必要もない。ただ、広い範囲でインク温度が変化し、これに伴いインク粘度も広い範囲で変化する場合により効果的なものである点については論を俟たない。
【0054】
さらに、図1に示す実施の形態は、記録シートSの搬送方向と交差する方向(主走査方向)に移動するキャリッジ3に記録ヘッドユニット1A,1Bを搭載し、記録ヘッドユニット1A,1Bを主走査方向に移動させながら印刷を行う、いわゆるシリアル型のインクジェット式記録装置であるがこれに限るものではない。記録ヘッドが固定されて記録シートSを搬送するだけで印刷を行う、いわゆるライン式のインクジェット記録装置であっても、勿論構わない。
【0055】
また、上記実施の形態では、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0056】
I 記録装置(インクジェット式記録装置)、 1A、1B 記録ヘッドユニット、 10 記録ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)、 12 圧力発生室、 21 ノズル開口、 110 制御装置、 111 CPU、 113 ヘッド制御部、 114 インク温度検出部、 300 圧電素子、 S1,S11,S12,S13 駆動信号、 P1 先行パルス部、 P2 吐出パルス部、 P3 制振パルス部、 Pwc1,Pwc2,Pwc3 第1〜第3の収縮要素、 Pwd1,Pwd2 第1〜第2の膨張要素、 Pwh1,Pwh2,Pwh3,Pwh4 第1〜第4の平坦要素
【技術分野】
【0001】
本発明は液体噴射ヘッドの制御方法、制御装置および液体噴射装置に関し、特に粘度が広い範囲で変化する液体を吐出させる場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置に搭載されノズル開口を介して液体を吐出する液体噴射ヘッドの代表例として、例えば圧電アクチュエーターの変位による圧力を利用してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドが知られている。この種のインクジェット式記録ヘッドは、一般に、ノズル開口に連通する圧力発生室が形成された流路形成基板の一方面側に圧電アクチュエーターを設け、この圧電アクチュエーターを変形させることで圧力発生室内のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるように構成してある。
【0003】
かかるインクジェット式記録ヘッドを搭載したインクジェット式記録装置の中には、熱により定着を促進できるインクを使用したものがある。この種のインクジェット記録装置のインクジェット式記録ヘッドには、その内部に、インクを乾燥、定着させるためのヒーターが備えられている。この場合、インクジェット式記録ヘッド内のインクの温度がヒーターによって低温から高温まで広い範囲に亘って幅広く変動する。これに伴い、インク粘度も幅広く変動する。ここで、インクの吐出特性は粘度により大きく変動する。したがって、粘度が幅広く変動するインクを固定された一種類の波形の駆動信号で吐出させた場合には吐出されるインク重量やインク速度のバラツキが生起され吐出特性の悪化を招来するという問題がある。
【0004】
一方、ノズル開口からインク滴を吐出させる吐出パルス部に先行させて先行パルス部を設けるとともに、吐出パルス部の後に制振パルス部を設けた駆動波形が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−322318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、駆動信号の電圧レベルを低減するとともに、液滴の吐出ばらつきを抑制することを目的として先行パルス部においてインクに発生させた振動を利用し、その振動に同期した状態でインク滴を吐出させている。
【0007】
しかしながら特許文献1においては、インク粘度と駆動波形との関連は示唆されていないばかりか、高粘度のインクの場合、圧力発生室の振動とメニスカスの振動を完全には同期させることができないという問題が残る。すなわち、広い範囲で変化する粘度に応じた適確な吐出特性を得ることができるものではない。
【0008】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑み、粘度に応じた適確な駆動信号で圧力発生手段を駆動することにより液体の粘度が広い範囲で変化しても安定した吐出特性を得ることができる液体噴射ヘッドの制御方法、制御装置および液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の態様は、駆動信号により駆動される圧力発生手段により圧力発生室の液体に圧力変化を生じさせ、前記圧力発生室内の液体をノズル開口を介して吐出させる液体噴射ヘッドの制御方法であって、前記駆動信号が第1の駆動信号と第2の駆動信号とを有しており、前記第1の駆動信号が、前記圧力発生室を収縮させる第1の収縮要素を含む先行パルス部と、前記第1の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させてメニスカスを引き込む第1の膨張要素および該第1の膨張要素の後に前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる第2の収縮要素を含む吐出パルス部とを有するとともに、前記第2の駆動信号が、前記吐出パルス部と、前記第2の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させて残留振動を制振させる第2の膨張要素を含む制振パルス部とを有し、前記液体の粘度が第1の設定値以上の場合には前記第1の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるとともに、前記粘度が第2の設定値以下の場合には前記第2の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御方法にある。
本態様によれば、所定の高粘度の液体を吐出する場合に使用される第1の駆動信号は、先行パルス部を有しているので、第1の収縮要素によりノズル開口側への圧力が付与されたメニスカスを次の吐出パルスにおける第1の膨張要素で反対側に引き込むことができる。すなわち、第1の膨張要素で勢いが付いたメニスカスを第1の膨張要素で一気に引き込むことができる。この結果、液体が高粘度であっても、先行パルス部の存在により吐出パルス部でのメニスカスの引き込み動作を良好に行うことができる。
【0011】
また、所定の低粘度の液体を吐出する場合に使用される第2の駆動信号は、制振パルス部を有しているので、第2の収縮要素でノズル開口から吐出された液体のメニスカスの戻りに伴う振動を、第2の収縮要素により圧力発生室が膨張されることにより、吸収させることができる。この結果、液体が低粘度であっても、制振パルス部の存在により制振パルス部でのメニスカスの振動を良好に抑制することができる。
【0012】
ここで、前記駆動信号が、さらに前記先行パルス部、吐出パルス部および制振パルス部を有する第3の駆動信号を有するとともに、前記液体の粘度が第1の設定値未満で、かつ第2の設定値を越える場合には前記第3の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるのが望ましい。この場合には、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間で液体の粘度に応じた直線補完を行なうことも可能になり、中間粘度領域ではあるが高粘度側の領域にある場合や、中間粘度領域ではあるが低粘度側の領域にある場合等も含め、さらに適確な粘度に応じた駆動信号とすることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、駆動信号により駆動される圧力発生手段により圧力発生室の液体に圧力変化を生じさせ、前記圧力発生室内の液体をノズル開口を介して吐出させる液体噴射ヘッドの制御装置であって、前記駆動信号が第1の駆動信号と第2の駆動信号とを有しており、前記第1の駆動信号が、前記圧力発生室を収縮させる第1の収縮要素を含む先行パルス部と、前記第1の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させてメニスカスを引き込む第1の膨張要素および該第1の膨張要素の後に前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる第2の収縮要素を含む吐出パルス部とを有するとともに、前記第2の駆動信号が、前記吐出パルス部と、前記第2の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させて残留振動を制振させる第2の膨張要素を含む制振パルス部とを有し、前記液体の粘度が第1の設定値以上の場合には前記第1の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるとともに、前記粘度が第2の設定値以下の場合には前記第2の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置にある。
本態様によれば、第1の態様と同様に、液体が高粘度であっても、先行パルス部の存在により吐出パルス部でのメニスカスの引き込み動作を良好に行うことができ、また液体が低粘度であっても、制振パルス部の存在により制振パルス部でのメニスカスの振動を良好に抑制することができる。
【0014】
ここで、前記駆動信号が、さらに前記先行パルス部、吐出パルス部および制振パルス部を有する第3の駆動信号を有するとともに、前記液体の粘度が第1の設定値未満で、かつ第2の設定値を越える場合には前記第3の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるように構成するのが望ましい。この場合には、第2の態様と同様に、中間粘度領域ではあるが高粘度側の領域にある場合や、中間粘度領域ではあるが低粘度側の領域にある場合等も含め、さらに適確な粘度に応じた駆動信号とすることができる。
【0015】
また、前記制振パルス部における第2の膨張要素の始点から終点に至る第1の期間と前記第2の膨張要素に連続して前記圧力発生手段が一定に保持される平坦要素の始点から終点に至る第2の期間との和が、前記圧力発生室の固有振動の周期をTcとするとき、(5/13)Tc〜(10/13)Tcとなっているのが望ましい。この場合には第1の期間と第2の期間との合計時間が(Tc/2)程度になるので、第2の膨張要素と、前記平坦要素に連続して初期状態に戻す第3の収縮要素とが加振をすることになり、メニスカス振動を抑制する制振力が大きくなって低粘度の液体であっても残留振動が良好に抑制される。すなわち、Tcとの関係において最も安定した制振効果が発揮される。
【0016】
さらに、前記駆動信号の波形における第1の膨張要素の傾きD1と第2の膨張要素の傾きD2との関係がD2≧D1であるのが望ましい。この場合には、吐出に先立つメニスカスの引き込み時の傾斜よりも吐出後の制振のためのメニスカスの引き込み時の傾斜を同等以上とすることができるので、良好な制振効果を得ることができる。また、前記駆動信号の波形における第1の収縮要素の傾きD3と、前記制振パルス部における前記平坦要素に連続して初期状態に戻る第3の収縮要素の傾きD4との関係がD3≧D4であるのが望ましい。この場合には液体の吐出時の傾斜を制振時における初期状態への戻りに伴うメニスカスの制振時の傾斜に対し同等以上とすることができるので、良好な吐出特性と同時に良好な制振特性が担保される。
【0017】
本発明の他の実施の態様は、液体が充填される圧力発生室と、駆動信号の供給により前記圧力発生室内の液体に圧力変化を生じさせる圧力発生手段と、前記圧力変化に伴い前記圧力発生室内の液体を吐出させるノズル開口とを備えた液体噴射ヘッドと、上記制御装置とを有することを特徴とする液体噴射装置にある。
本態様によれば、高粘度から低粘度まで、広い粘度範囲に分散する粘度領域に合わせた適確な駆動波形で液体を吐出させることができるので、吐出液体の速度や吐出量等が安定し、良好な吐出特性が得られ、印刷等の品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】液体噴射装置の構成を示す模式的斜視図である。
【図2】実施の形態に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図3のA―A′線断面図である。
【図5】液体噴射装置の制御系の構成を示すブロック線図である。
【図6】本発明に係る液体噴射装置の第1の駆動信号の波形を示す波形図である。
【図7】本発明に係る液体噴射装置の第2の駆動信号の波形を示す波形図である。
【図8】本発明に係る液体噴射装置の第3の駆動信号の波形を示す波形図である。
【図9】液体噴射装置の制振機能を検証する駆動信号の波形を示す波形図である。
【図10】制振機能の検証により得られたデータを示す図表である。
【図11】制振機能の検証により得られた吐出安定性を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、インクジェット式記録装置(以下、記録装置ともいう)の一例を示す概略図である。図1に示すように、記録ヘッドユニット1A及び1Bは、液体吐出装置としてのインクジェット式記録装置Iに設けられている。すなわち、記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インクジェット式記録装置Iのキャリッジ3に搭載され、キャリッジ3は、インクジェット式記録装置Iの装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出する。本形態で使用するこれらのインクは熱により定着を促進できるものである。
【0020】
記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、キャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図1中は図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。また、本形態に係る記録装置Iは、熱により定着を促進できるインクを使用しているので、図示はしないがその記録ヘッドユニット1A,1Bの内部にはインクを乾燥、定着させるためのヒーターが内蔵されている。この場合、インクジェット式記録ヘッド内のインクの温度がヒーターの温度や環境温度によって低温から高温まで広い範囲に亘って変動する。これに伴い、インク粘度も幅広く変動する。
【0021】
図2は、図1に示す記録ヘッドユニット1A,1Bを内蔵するインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドともいう)の概略構成を示す分解斜視図であり、図3は、図2の平面図であり、図4は図3のA−A′線断面図である。
【0022】
図2〜図4に示すように、記録ヘッド10の流路形成基板11は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなり、本形態における振動部となる弾性膜50が形成されている。流路形成基板11には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板11の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板30のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。かくして本形態では、流路形成基板11に、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになり、圧力発生室12にインクが充填される。
【0023】
また、流路形成基板11の一方の面である開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。ここで、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等で好適に構成することができる。
【0024】
流路形成基板11の反対側の開口面には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば厚さ30〜50nm程度の酸化チタン等からなり弾性膜50等の第1電極60の下地との密着性を向上させるための密着層56が設けられている。なお、弾性膜50上に、必要に応じて酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜が設けられていてもよい。
【0025】
さらに、この密着層56上には、第1電極60と、厚さが2μm以下、好ましくは0.3〜1.5μmの薄膜である圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、本形態における圧力発生手段であり、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、密着層56、第1電極60及び必要に応じて設ける絶縁体膜が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50や密着層56を設けなくてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0026】
かかる圧電素子300の個別電極である第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、弾性膜50上や必要に応じて設ける絶縁体膜上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
【0027】
圧電素子300が形成された流路形成基板11上、すなわち、第1電極60、弾性膜50や必要に応じて設ける絶縁体膜及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板11の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板11の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板11に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板11と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、必要に応じて設ける絶縁体膜等)にマニホールド100と各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
【0028】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0029】
このような保護基板30としては、流路形成基板11の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本形態では、流路形成基板11と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成してある。
【0030】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられており、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍が、貫通孔33内に露出するように構成してある。
【0031】
一方、保護基板30上には、後に詳述する制御装置(図2〜図4には図示せず)で制御されて圧電素子300を駆動する駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0032】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0033】
かかる記録ヘッド10では、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たす。その後、駆動回路120からの駆動信号にしたがい、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧が印加される。かくして弾性膜50、密着層56、第1電極60及び圧電体層70を撓み変形させることにより、振動部として機能する弾性膜50を介して各圧力発生室12内のインクに前記変形に伴う振動を伝達させる。この結果、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出される。かかるインクの吐出駆動動作に関しては後に詳述する。
【0034】
図5はインクジェット式記録装置Iの制御系を示すブロック線図である。同図に示すように、インクジェット式記録装置I内には、インクジェット式記録装置Iの制御を行う制御装置110が設けられている。制御装置110は、CPU111と、装置制御部112と、容量性負荷である圧電素子300の駆動回路であるヘッド制御部113とを備えている。
【0035】
さらに詳言すると、CPU111からキャリッジ3(図1参照)の移動を示す信号が装置制御部112に入力されると、装置制御部112は、駆動モーター6を駆動させてキャリッジ3をキャリッジ軸5に沿って移動させるとともに、CPU111からの記録シートS(図1参照)の搬送を示す信号が装置制御部112に入力され、装置制御部112は、供給ローラー23を駆動して記録シートS(図1参照)を搬送させる。
【0036】
一方、ヘッド制御部113には、CPU111からヘッドの駆動信号S1を生成するためのアナログ信号S2及び当該ヘッド制御部113の動作の制御を行う制御信号S3が入力される。この結果、ヘッド制御部113はインクジェット式記録ヘッド10の各圧電素子300に駆動信号S1を選択的に印加してインクを吐出させる。ここで、インクジェット式記録ヘッド10は図示しないドライバーICがCPU111からヘッド制御信号を供給されて各圧電素子300を選択的に駆動させる。
【0037】
ここで、ヘッド制御部113は、第1の駆動信号S11,第2の駆動信号S12および第3の駆動信号S13の3種類の駆動信号S1をインクの粘度に基づき選択して圧電素子300を適宜駆動させるようになっている。すなわち、インクの温度はインク温度検出部114で検出され、その情報がCPU111に逐次供給される。CPU111では検出されたインク温度に基づきその粘度を検出することで、粘度に応じた駆動信号S1が供給されるようヘッド制御部113を制御する。このとき形成される第1〜第3の駆動信号S11,S12,S13の波形を図6〜図8に示す。
【0038】
図6に示す第1の駆動信号S11は、圧力発生室12を収縮させる第1の収縮要素Pwc1を含む先行パルス部P1と、第1の収縮要素Pwc1の後に圧力発生室12を膨張させてメニスカスを引き込む第1の膨張要素Pwd1および第1の膨張要素Pwd1の後に圧力発生室12を収縮させてノズル開口21からインク滴を吐出させる第2の収縮要素Pwc2を含む吐出パルス部P2とを有している。すなわち、メニスカスを引き込み易くするための先行パルス部P1を有するものであり、高粘度のインクを吐出させる場合に適用する。
【0039】
図7に示す第2の駆動信号S12は、吐出パルス部P2と、第2の収縮要素Pwc2の後に圧力発生室12を膨張させて残留振動を制振させる第2の膨張要素Pwd2を含む制振パルス部P3とを有している。すなわち、第2の収縮要素Pwc2でインク滴を吐出したことに伴うメニスカスの振動を抑制するための制振パルス部P3を有するものであり、低粘度のインクを吐出させる場合に適用する。
【0040】
図8に示す第3の駆動信号S13は、先行パルス部P1、吐出パルス部P2および制振パルス部P3の全てのパルス部を有するものである。したがって、高粘度と低粘度との中間の粘度の場合に適用する。特に、高粘度と低粘度との間の粘度を線形補完する場合に有用なものとなる。この場合には、中間粘度領域ではあるが高粘度側の領域にある場合や、中間粘度領域ではあるが低粘度側の領域にある場合等も含め、さらに適確な粘度に応じた駆動信号S13とすることができる。
【0041】
なお、図6〜図8中、Pwh1,Pwh2,Pwh3,Pwh4は収縮要素と膨張要素とを繋ぐよう一定に保持される各平坦要素、Pwc3は制振のための第3の収縮要素である。
【0042】
CPU111は、検出されたインクの粘度に応じ、粘度が高粘度側の第1の設定値Th1以上の場合には第1の駆動信号S11が、粘度が低粘度側の第2の設定値Th2以下の場合には第2の駆動信号S12がヘッド制御部113を介して圧電素子300に供給されるように制御する。また、粘度が第1の設定値Th1未満で、かつ第2の設定値Th2を越える場合には第3の駆動信号S13がヘッド制御部113を介して圧電素子300に供給されるように制御する。
【0043】
ここで、本形態においては、第1の駆動信号S11における第1の膨張要素Pwd1の傾きD1と第2の膨張要素Pwd2の傾きD2との関係はD2≧D1となっている。これにより、吐出に先立つメニスカスの引き込み時の傾斜よりも吐出後の制振のためのメニスカスの引き込み時の傾斜を同等以上とすることができるので、インク滴の吐出後の良好な制振効果を得ることができる。
【0044】
また、第2の駆動信号S12における第2の収縮要素Pwc2の傾きD3と、制振パルス部P3における平坦要素Pwh4に連続して初期状態に戻る第3の収縮要素Pwc3の傾きD4との関係がD3≧D4となっている。これにより、吐出時の傾斜を制振時における初期状態への戻り時の傾斜に対し同等以上とすることができるので、良好な吐出特性と同時に良好な制振効果を得ることができる。
【0045】
さらに、制振パルス部P3における第2の膨張要素Pwd2の始点から終点に至る期間と第2の膨張要素Pwd2に連続する平坦要素Pwh4の始点から終点に至る期間との和が、圧力発生室12の固有振動の周期をTcとするとき、(5/13)Tc〜(10/13)Tcとなるように形成してある。この場合には、図9〜図11に基づき、後に詳述するようにTcとの関係において最も安定した制振効果が発揮される。
【0046】
図9は制振パルス部P3による吐出安定性を検証するために用いた駆動パルスを示す波形図である。この場合には、第3の駆動信号S13と同波形の信号を用い、各波形成分に対する電圧(Vc)および期間(μs)を図10に示す通りとした。実験は、圧力発生室12の固有振動の周期Tcが6.5(μsec)の場合において、第2の膨張要素Pwd2の始点から終点に至る期間T2と第2の膨張要素Pwd2に連続する平坦要素Pwh4の始点から終点に至る期間T3を、図11(a)に示すように調整し、それぞれの条件の下で、吐出安定性の指標である期間T1(ΔPwh3)を測定した。ここで、期間T1(ΔPwh3)は安定的な吐出が得られる平坦要素Pwh3の時間幅である。すなわち、例えば、平坦要素Pwh3が4.5μs〜5.5μsの時に安定的な吐出を得られる場合、期間T1(ΔPwh3)は1.0μsとなる。
【0047】
上述のごとき実験の結果、図11に示すように、第2の膨張要素Pwd2の期間T2と平坦要素Pwh4の期間T3の和が、(5/13)Tc〜(10/13)Tcの範囲において、期間T1(ΔPwh3)の長さを調整して吐出を確認した際に、安定的な吐出を得られる期間T1(ΔPwh3)の範囲が1μs以上となり、吐出安定性が確保されることが分かった。安定性が良好となる範囲が、(Tc/2)からずれる理由としては、圧電素子300の駆動に対してインクが追従するのに時間がかかるためであると考えられる。ただ、このように(T2+T3)が、(Tc/2)を挟んで(5/13)Tc〜(10/13)Tcの範囲に存在すれば第2の膨張要素Pwd2と第3の収縮要素Pwc3とが加振をすることになり、メニスカス振動を抑制する制振力が大きくなって低粘度のインクであっても残留振動が良好に抑制される。
【0048】
なお、期間T1(ΔPwh3)の長さを調整した際に、安定的な吐出が得られる範囲が1μs以上であることを安定的な吐出であると判断する根拠は次の通りである。すなわち、ヘッドの製造によるばらつきにより圧力発生室12の固有振動の周期Tcにばらつきが存在すること、また制御の精度によって波形の時間長に誤差が生じてしまう虞があること、このようなばらつきを吸収して安定的な吐出を得るために、期間T1(ΔPwh3)は大きいことが望ましい。期間T1(ΔPwh3)が1μs程度あれば製品として問題が発生しないという過去の経験によるものである。さらに詳言すると、第2の収縮要素Pwc2で吐出されたインクのメニスカスの残留振動は平坦要素Pwh3を介して制振パルス部P3で制振されるが、効果的な制振を行うためには、第2の収縮要素Pwc2の終点と第2の膨張要素Pwd2の始点との間隔が肝要である。一方、この間隔は、ヘッドの特性のばらつきや、駆動信号S1のばらつき等を考慮する必要もある。そこで、期間T1(ΔPwh3)の長さを調整した際に、安定的な吐出が得られる範囲が最低1μsec以上あれば、前述の如きばらつきを吸収して効果的な制振機能を発揮させることが期待できるためである。
【0049】
上述の如く、本形態における第1の駆動信号S11は、先行パルス部P1を有しているので、第1の収縮要素Pwc1によりノズル開口21側への圧力が付与されたメニスカスを次の吐出パルス部P2における第1の膨張要素Pwd1で反対側に引き込むことができる。すなわち、先行パルス部P1で勢いが付いたメニスカスを第1の膨張要素Pwd1で一気に引き込むことができる。この結果、粘度が第1の設定値Th1以上の高粘度インクであっても、先行パルス部P1の存在により吐出パルス部P2でのメニスカスの引き込み動作を良好に行うことができ、第2の収縮要素Pwc2による安定したインクの吐出動作が担保される。
【0050】
また、第2の駆動信号S12は、制振パルス部P3を有しているので、第2の収縮要素Pwc2でノズル開口21から吐出されたインクのメニスカスの戻りに伴う残留振動を、第2の膨張要素Pwd2により圧力発生室12が膨張されることにより、吸収させることができる。この結果、インクが低粘度であっても、インク吐出後のメニスカスの振動を良好に抑制することができる。
【0051】
さらに第3の駆動信号S13は、先行パルス部P1、吐出パルス部P2および制振パルス部P3の全ての要素を有するので、粘度の中間領域での適切な吐出特性が担保される。
【0052】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、第3の駆動信号S13は必ずしも必要ではない。粘度が中間域にある場合には、最低限吐出パルス部があれば良いからである。ただ、第3の駆動信号S13を形成した場合には、中間粘度領域ではあるが高粘度側の領域にある場合や、中間粘度領域ではあるが低粘度側の領域にある場合等も含め、さらに適確な粘度に応じた圧電素子300の駆動を行うことが可能になる。
【0053】
上記実施の形態における記録装置Iは、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、薄膜型の圧電素子を用いた圧電アクチュエーターを具備するもので説明したが、これに限定する必要はない。例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子を用いた圧電アクチュエーター等を使用することもできる。また、インク定着用のヒーターを有するものに限定する必要もない。ただ、広い範囲でインク温度が変化し、これに伴いインク粘度も広い範囲で変化する場合により効果的なものである点については論を俟たない。
【0054】
さらに、図1に示す実施の形態は、記録シートSの搬送方向と交差する方向(主走査方向)に移動するキャリッジ3に記録ヘッドユニット1A,1Bを搭載し、記録ヘッドユニット1A,1Bを主走査方向に移動させながら印刷を行う、いわゆるシリアル型のインクジェット式記録装置であるがこれに限るものではない。記録ヘッドが固定されて記録シートSを搬送するだけで印刷を行う、いわゆるライン式のインクジェット記録装置であっても、勿論構わない。
【0055】
また、上記実施の形態では、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0056】
I 記録装置(インクジェット式記録装置)、 1A、1B 記録ヘッドユニット、 10 記録ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)、 12 圧力発生室、 21 ノズル開口、 110 制御装置、 111 CPU、 113 ヘッド制御部、 114 インク温度検出部、 300 圧電素子、 S1,S11,S12,S13 駆動信号、 P1 先行パルス部、 P2 吐出パルス部、 P3 制振パルス部、 Pwc1,Pwc2,Pwc3 第1〜第3の収縮要素、 Pwd1,Pwd2 第1〜第2の膨張要素、 Pwh1,Pwh2,Pwh3,Pwh4 第1〜第4の平坦要素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号により駆動される圧力発生手段により圧力発生室の液体に圧力変化を生じさせ、前記圧力発生室内の液体をノズル開口を介して吐出させる液体噴射ヘッドの制御方法であって、
前記駆動信号が第1の駆動信号と第2の駆動信号とを有しており、
前記第1の駆動信号が、前記圧力発生室を収縮させる第1の収縮要素を含む先行パルス部と、前記第1の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させてメニスカスを引き込む第1の膨張要素および該第1の膨張要素の後に前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる第2の収縮要素を含む吐出パルス部とを有するとともに、
前記第2の駆動信号が、前記吐出パルス部と、前記第2の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させて残留振動を制振させる第2の膨張要素を含む制振パルス部とを有し、
前記液体の粘度が第1の設定値以上の場合には前記第1の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるとともに、前記粘度が第2の設定値以下の場合には前記第2の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドの制御方法において、
前記駆動信号が、さらに前記先行パルス部、吐出パルス部および制振パルス部を有する第3の駆動信号を有するとともに、
前記液体の粘度が第1の設定値未満で、かつ第2の設定値を越える場合には前記第3の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御方法。
【請求項3】
駆動信号により駆動される圧力発生手段により圧力発生室の液体に圧力変化を生じさせ、前記圧力発生室内の液体をノズル開口を介して吐出させる液体噴射ヘッドの制御装置であって、
前記駆動信号が第1の駆動信号と第2の駆動信号とを有しており、
前記第1の駆動信号が、前記圧力発生室を収縮させる第1の収縮要素を含む先行パルス部と、前記第1の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させてメニスカスを引き込む第1の膨張要素および該第1の膨張要素の後に前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる第2の収縮要素を含む吐出パルス部とを有するとともに、
前記第2の駆動信号が、前記吐出パルス部と、前記第2の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させて残留振動を制振させる第2の膨張要素を含む制振パルス部とを有し、
前記液体の粘度が第1の設定値以上の場合には前記第1の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるとともに、前記粘度が第2の設定値以下の場合には前記第2の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載する液体噴射ヘッドの制御装置において、
前記駆動信号が、さらに前記先行パルス部、吐出パルス部および制振パルス部を有する第3の駆動信号を有するとともに、
前記液体の粘度が第1の設定値未満で、かつ第2の設定値を越える場合には前記第3の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載する液体噴射ヘッドの制御装置において、
前記制振パルス部における第2の膨張要素の始点から終点に至る第1の期間と前記第2の膨張要素に連続して前記圧力発生手段が一定に保持される平坦要素の始点から終点に至る第2の期間との和が、前記圧力発生室の固有振動の周期をTcとするとき、(5/13)Tc〜(10/13)Tcとなっていることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載する液体噴射ヘッドの制御装置において、
前記駆動信号の波形における第1の膨張要素の傾きD1と第2の膨張要素の傾きD2との関係がD2≧D1であることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載する液体噴射ヘッドの制御装置において、
前記駆動信号の波形における第2の収縮要素の傾きD3と、前記制振パルス部における前記平坦要素に連続して初期状態に戻る第3の収縮要素の傾きD4との関係がD3≧D4であることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置。
【請求項8】
液体が充填される圧力発生室と、駆動信号の供給により前記圧力発生室内の液体に圧力変化を生じさせる圧力発生手段と、前記圧力変化に伴い前記圧力発生室内の液体を吐出させるノズル開口とを備えた液体噴射ヘッドと、
請求項3〜請求項7の何れか一項に記載する制御装置とを有することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項1】
駆動信号により駆動される圧力発生手段により圧力発生室の液体に圧力変化を生じさせ、前記圧力発生室内の液体をノズル開口を介して吐出させる液体噴射ヘッドの制御方法であって、
前記駆動信号が第1の駆動信号と第2の駆動信号とを有しており、
前記第1の駆動信号が、前記圧力発生室を収縮させる第1の収縮要素を含む先行パルス部と、前記第1の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させてメニスカスを引き込む第1の膨張要素および該第1の膨張要素の後に前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる第2の収縮要素を含む吐出パルス部とを有するとともに、
前記第2の駆動信号が、前記吐出パルス部と、前記第2の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させて残留振動を制振させる第2の膨張要素を含む制振パルス部とを有し、
前記液体の粘度が第1の設定値以上の場合には前記第1の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるとともに、前記粘度が第2の設定値以下の場合には前記第2の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドの制御方法において、
前記駆動信号が、さらに前記先行パルス部、吐出パルス部および制振パルス部を有する第3の駆動信号を有するとともに、
前記液体の粘度が第1の設定値未満で、かつ第2の設定値を越える場合には前記第3の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御方法。
【請求項3】
駆動信号により駆動される圧力発生手段により圧力発生室の液体に圧力変化を生じさせ、前記圧力発生室内の液体をノズル開口を介して吐出させる液体噴射ヘッドの制御装置であって、
前記駆動信号が第1の駆動信号と第2の駆動信号とを有しており、
前記第1の駆動信号が、前記圧力発生室を収縮させる第1の収縮要素を含む先行パルス部と、前記第1の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させてメニスカスを引き込む第1の膨張要素および該第1の膨張要素の後に前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる第2の収縮要素を含む吐出パルス部とを有するとともに、
前記第2の駆動信号が、前記吐出パルス部と、前記第2の収縮要素の後に前記圧力発生室を膨張させて残留振動を制振させる第2の膨張要素を含む制振パルス部とを有し、
前記液体の粘度が第1の設定値以上の場合には前記第1の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させるとともに、前記粘度が第2の設定値以下の場合には前記第2の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載する液体噴射ヘッドの制御装置において、
前記駆動信号が、さらに前記先行パルス部、吐出パルス部および制振パルス部を有する第3の駆動信号を有するとともに、
前記液体の粘度が第1の設定値未満で、かつ第2の設定値を越える場合には前記第3の駆動信号で前記圧力発生手段を駆動させることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載する液体噴射ヘッドの制御装置において、
前記制振パルス部における第2の膨張要素の始点から終点に至る第1の期間と前記第2の膨張要素に連続して前記圧力発生手段が一定に保持される平坦要素の始点から終点に至る第2の期間との和が、前記圧力発生室の固有振動の周期をTcとするとき、(5/13)Tc〜(10/13)Tcとなっていることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載する液体噴射ヘッドの制御装置において、
前記駆動信号の波形における第1の膨張要素の傾きD1と第2の膨張要素の傾きD2との関係がD2≧D1であることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載する液体噴射ヘッドの制御装置において、
前記駆動信号の波形における第2の収縮要素の傾きD3と、前記制振パルス部における前記平坦要素に連続して初期状態に戻る第3の収縮要素の傾きD4との関係がD3≧D4であることを特徴とする液体噴射ヘッドの制御装置。
【請求項8】
液体が充填される圧力発生室と、駆動信号の供給により前記圧力発生室内の液体に圧力変化を生じさせる圧力発生手段と、前記圧力変化に伴い前記圧力発生室内の液体を吐出させるノズル開口とを備えた液体噴射ヘッドと、
請求項3〜請求項7の何れか一項に記載する制御装置とを有することを特徴とする液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−31968(P2013−31968A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169621(P2011−169621)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]