説明

液体噴射ヘッドの製造方法

【課題】保護基板を効率よく製造することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】液体噴射ヘッドの製造方法は、光透過性を有する第1基板160の第1面162に、感光性を有する第1膜110を成膜する工程と、第1面162とは反対側の第1基板の第2面164に、感光性を有する第2膜112を成膜する工程と、ハーフトーンマスクを用いて、第1膜110の第1部分110aおよび第2膜112の第2部分112aをともに感光させる第1光L1と、第1膜110の第3部分110bを感光させる第2光L2とを照射し、第1膜110および第2膜112を露光する工程と、現像された第1膜110および第2膜112をマスクとして、第1基板160をエッチングすることにより、第1基板160に貫通孔を形成し、かつ第1基板160の第1面162に凹部を形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出するための液体噴射ヘッドとして、例えばインクジェットプリンターに搭載されるインクジェット式記録ヘッドが知られている。インクジェット式記録ヘッドは、一般的に、ノズル孔が形成されたノズル板と、ノズル孔に連通する圧力発生室が形成された流路形成基板と、圧電素子等を含んで構成されたアクチュエーターと、を備えている。インクジェット式記録ヘッドは、アクチュエーターにより圧力発生室に圧力変化を生じさせることによって、インク滴をノズル孔から吐出する。
【0003】
このような液体噴射ヘッドでは、上述した部材に加え、圧電素子等を封止するための保護基板を備えたものが知られている。保護基板を備えた液体噴射ヘッドは、当該保護基板によって、例えば、圧電素子等を保護することができるため、信頼性が高く、取り扱いも容易である。例えば、特許文献1に開示された液体噴射ヘッドは、インクの流路となる貫通孔が形成された保護基板を備えている。
【0004】
保護基板の製造方法として、特許文献1には、保護基板用のウエハーの表裏両面に酸化シリコン膜を形成する工程と、この酸化シリコン膜をパターニングしてマスクを形成する工程と、当該マスクを用いてウエハーをエッチングして貫通孔を形成する工程と、を含む製造方法が記載されている。
【0005】
ここで、酸化シリコン膜をパターニングしてマスクを形成する工程では、例えば、まず、ウエハーの表面に形成された酸化シリコン膜を、フォトリソグラフィー技術を用いてパターニングする。次に、ウエハーの裏面に形成された酸化シリコン膜を、フォトリソグラフィー技術を用いてパターニングする。以上の工程により、マスクを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−118192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した工程では、フォトリソグラフィー工程を表裏両面に対してそれぞれ行わなければならず、また、アライメントずれが発生する場合があり、保護基板を効率よく形成することができないという問題があった。
【0008】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、保護基板を効率よく製造することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法は、
光透過性を有する第1基板の第1面に、感光性を有する第1膜を成膜する工程と、
前記第1面とは反対側の前記第1基板の第2面に、感光性を有する第2膜を成膜する工程と、
ハーフトーンマスクを用いて、前記第1膜の第1部分および前記第2膜の第2部分をともに感光させる第1光と、前記第1膜の第3部分を感光させる第2光とを照射し、前記第1膜および前記第2膜を露光する工程と、
露光された前記第1膜および前記第2膜を現像することにより、前記第1部分、前記第2部分、および前記第3部分を除去する工程と、
現像された前記第1膜および前記第2膜をマスクとして、前記第1基板をエッチングすることにより、前記第1基板に貫通孔を形成し、かつ前記第1基板の前記第1面に凹部を形成する工程と、
前記第1基板と、圧電素子が形成された第2基板とを、前記凹部に前記圧電素子が収容されるように接着して前記圧電素子を封止する工程と、
前記貫通孔を通る接続配線を介して、前記圧電素子と駆動回路とを電気的に接続する工程と、
を含む。
【0010】
このような液体噴射ヘッドの製造方法によれば、第1基板を加工して保護基板を製造する工程において、第1膜および第2膜を一括して露光することができるため、従来よりもフォトリソグラフィーの回数を減らすことができる。したがって、保護基板を効率よく製造することができる。
【0011】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、
前記第1膜は、感光性接着剤であり、
前記圧電素子を封止する工程では、前記第1膜を介して、前記第1基板と前記第2基板とが接着されてもよい。
【0012】
このような液体噴射ヘッドの製造方法によれば、第1膜が、第1基板をエッチングするためのマスクとしての機能と、第1基板と第2基板とを接着するための接着剤としての機能とを有している。そのため、第1膜を形成することで、例えば、第1基板をエッチングするためのマスクを形成する工程、および接着剤を成膜・パターニングする工程を省くことができる。したがって、製造工程を簡略化することができる。
【0013】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、
前記ハーフトーンマスクは、
光透過性を有する第3基板と、
前記第3基板の表面に形成された遮光性を有する第3膜と、
を有し、
前記第3膜は、
開口部と、
露光機の解像度より小さいスリットが形成されたスリット部と、
を有し、
前記開口部を通過した光が、前記第1光として照射され、
前記スリット部を通過した光が、前記第2光として照射されてもよい。
【0014】
このような液体噴射ヘッドの製造方法によれば、第1膜および第2膜を一括して露光することができる。
【0015】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、
前記第2基板に流路を形成する工程と、
前記流路に連通するノズル孔が形成されたノズル板を設ける工程と、
をさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法は、
光透過性を有する第1基板の第1面に、感光性を有する第1膜を成膜する工程と、
前記第1面とは反対側の前記第1基板の第2面に、感光性を有する第2膜を成膜する工程と、
ハーフトーンマスクを用いて、前記第1膜の第1部分および前記第2膜の第2部分をともに感光させる第1光と、前記第1膜の第3部分を感光させる第2光とを照射し、前記第1膜および前記第2膜を露光する工程と、
露光された前記第1膜および前記第2膜を現像することにより、前記第1部分、前記第2部分、および前記第3部分を除去する工程と、
現像された前記第1膜および前記第2膜をマスクとして、前記第1基板をエッチングすることにより、前記第1基板に貫通孔を形成し、かつ前記第1基板の前記第1面に凹部を形成する工程と、
前記凹部に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して、前記第1基板と、圧電素子が形成された第2基板とを接着して、前記圧電素子を封止する工程と、
前記貫通孔を通る接続配線を介して、前記圧電素子と駆動回路とを電気的に接続する工程と、
を含む。
【0017】
このような液体噴射ヘッドの製造方法によれば、第1基板を加工して保護基板を製造する工程において、第1膜および第2膜を一括して露光することができるため、従来よりもフォトリソグラフィーの回数を減らすことができる。したがって、保護基板を効率よく製造することができる。さらに、第1基板の第1面に凹部を形成し、凹部に接着剤を塗布することができる。これにより、接着剤の広がりを制御することができ、より確実に接着剤を所望の領域に形成することができる。
【0018】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、
前記接着剤を塗布する工程は、液滴吐出法を用いて行われてもよい。
【0019】
このような液体噴射ヘッドの製造方法によれば、容易に接着剤を所望の領域に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す分解斜視図。
【図2】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す平面図。
【図3】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す断面図。
【図4】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図5】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図7】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図8】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図10】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図11】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図12】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】第2実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す平面図。
【図14】第2実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す断面図。
【図15】第2実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図16】第2実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図17】第2実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【図18】第2実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0022】
1. 第1実施形態
1.1. 液体噴射ヘッドの構成
まず、第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド100を模式的に示す分解斜視図である。図2は、液体噴射ヘッド100を模式的に示す平面図である。図3は、液体噴射ヘッド100を模式的に示す断面図である。なお、図3は、図2のIII−III線断面図である。また、図1では、便宜上、接続配線72の図示を省略している。図2では、便宜上、駆動回路70、接続配線72、およびコンプライアンス基板80の図示を省略している。
【0023】
液体噴射ヘッド100は、図1〜図3に示すように、ノズル板20と、流路形成基板30と、振動板40,42と、圧電素子50と、保護基板60と、駆動回路70と、コンプライアンス基板80と、を含むことができる。
【0024】
ノズル板20は、ノズル孔22を有する。ノズル孔22からは、インクが吐出される。ノズル板20には、例えば、複数のノズル孔22が設けられている。図1に示す例では、複数のノズル孔22は、一列に並んで形成されている。ノズル板20の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)が挙げられる。
【0025】
流路形成基板30は、ノズル板20上に設けられている。流路形成基板30の材質としては、例えば、シリコンが挙げられる。流路形成基板30がノズル板20と振動板40との間の空間を区画することにより、リザーバー(液体貯留部)34と、リザーバー34と連通する供給口36と、供給口36と連通する圧力発生室32と、が設けられている。図示の例では、リザーバー34と、供給口36と、圧力発生室32と、が区別されているが、これらはいずれも液体の流路であって、このような流路はどのように設計されても構わない。例えば、供給口36は、図示の例では流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計にしたがって任意に形成することができ、必ずしも必須の構成ではない。
【0026】
リザーバー34は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板40,42に設けられた貫通孔38を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー34内のインクは、供給口36を介して、圧力発生室32に供給される。圧力発生室32は、振動板40,42の変形により容積が変化する。圧力発生室32はノズル孔22と連通しており、圧力発生室32の容積が変化することによって、ノズル孔22からインク等が吐出される。
【0027】
なお、リザーバー34および供給口36は、圧力発生室32と連通していれば、流路形成基板30とは別の部材(図示せず)に設けられていてもよい。
【0028】
振動板40,42は、流路形成基板30上に形成されている。振動板40,42は、可撓性を有し、圧電体層54の動作によって変形(屈曲)することができる。これにより、圧力発生室32の容積を変化させることができる。図示の例では、振動板40,42は、2層であるが、その層数は特に限定されない。振動板40の材質は、例えば、酸化シリコンであり、振動板42の材質は、例えば、酸化ジルコニウムである。
【0029】
なお、図示はしないが、振動板40,42を設けずに、第1電極52が振動板であってもよい。すなわち、第1電極52が、圧電体層54に電圧を印加するための一方の電極としての機能と、圧電体層54の動作によって変形することのできる振動板としての機能と、を有していてもよい。
【0030】
圧電素子50は、流路形成基板30上に設けられている。圧電素子50は、駆動回路70に電気的に接続され、駆動回路70の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板40,42は、圧電体層54の動作によって変形し、圧力発生室32の内部圧力を適宜変化させることができる。
【0031】
圧電素子50は、第1電極52と、圧電体層54と、第2電極56と、を有している。
【0032】
第1電極52は、振動板42上に形成されている。第1電極52の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第1電極52の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下とすることができる。また、第1電極52の平面形状は、第2電極56が対向して配置されたときに両者の間に圧電体層54を配置できる形状であれば、特に限定されず、例えば、矩形である。
【0033】
第1電極52の材質は、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物(SrRuOx:SRO)、ランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiOx:LNO)などである。第1電極52は、例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
【0034】
第1電極52の機能の一つとしては、第2電極56と一対になって、圧電体層54に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体層54の下方に形成された下部電極)となることが挙げられる。第1電極52は、図示の例では、複数の圧電素子50の共通電極である。第1電極52は、例えば、配線(図示しない)を介して、駆動回路70と電気的に接続されている。
【0035】
圧電体層54は、第1電極52上に形成されている。圧電体層54は、図示の例では、第1電極52上および振動板42上に形成されている。圧電体層54の厚さは、例えば、300nm以上3000nm以下とすることができる。
【0036】
圧電体層54は、圧電材料によって形成される。そのため、圧電体層54は、第1電極52および第2電極56によって電圧が印加されることで変形することができる。この変形により振動板40,42は、変形(屈曲)することができる。これにより、圧力発生室(流路)32に圧力変化を生じさせることができる。
【0037】
圧電体層54の材質は、一般式ABOで示されるペロブスカイト型酸化物(例えば、Aは、Pbを含み、Bは、ZrおよびTiを含む。)が好適である。このような材料の具体例としては、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、チタン酸バリウム(BaTiO)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO)などが挙げられる。
【0038】
第2電極56は、圧電体層54上に形成されている。第2電極56は、第1電極52に対向して配置されている。第2電極56の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下とすることができる。第2電極56の平面形状は、第1電極52に対向して配置されたときに両者の間に圧電体層54を配置できる形状であれば、特に限定されず、例えば、矩形である。第2電極56の材質は、例えば、第1電極52の材質として列挙した上記材料である。
【0039】
第2電極56の機能の一つとしては、圧電体層54に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体層54の上方に形成された上部電極)となることが挙げられる。第2電極56は、配線58および接続配線72を介して、駆動回路70と電気的に接続されている。
【0040】
保護基板60は、流路形成基板30の上方に設けられている。図示の例では、保護基板60は、振動板42上、および配線58上に接着剤10を介して接合されている。さらに、保護基板60は、図示はしないが、第1電極52上に接着剤10を介して接合されている。
【0041】
保護基板60の材質は、光透過性を有していれば特に限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス等である。保護基板60が光透過性を有していることにより、保護基板60を流路形成基板30の上方に設けた後であっても、圧電素子50を容易に確認することができる。
【0042】
保護基板60には、保護基板60を厚さ方向に貫通する貫通孔64,66が形成されている。
【0043】
貫通孔64は、配線58の端部が露出するように形成されている。露出した配線58の端部は、貫通孔64内を通る接続配線72を介して、駆動回路70と電気的に接続されている。また、貫通孔64は、第1電極52の端部が露出するように形成されている。露出した第1電極52の端部は、貫通孔64を通る配線(図示しない)を介して、駆動回路70と電気的に接続されていてもよい。
【0044】
貫通孔66は、流路形成基板30のリザーバー34と連通している。すなわち、貫通孔66は、液体の流路であり、リザーバー34とともに、インクを一時貯留する液体貯留部を構成している。保護基板60には、インク導入路(図示しない)が形成されており、このインク導入路から貫通孔66にインクが供給される。
【0045】
また、保護基板60には、圧電素子50を収容するための凹部62が形成されている。すなわち、保護基板60は、圧電素子50を封止するための封止板として機能することができる。凹部62の深さは、圧電素子50を収容できる大きさであれば限定されず、例えば、2〜5μm程度である。保護基板60が圧電素子50を保護しているため、液体噴射ヘッド100は、信頼性が高く、取り扱いが容易である。
【0046】
駆動回路70は、保護基板60上に設けられている。駆動回路70は、圧電素子50を駆動することができる。具体的には、駆動回路70は、第1電極52および第2電極56との間に電圧を印加して(駆動信号を与えて)、圧電素子50を駆動することができる。
【0047】
コンプライアンス基板80は、保護基板60上に設けられている。コンプライアンス基板80は、封止膜82と、固定板84と、を有している。封止膜82は、可撓性を有している。封止膜82は、貫通孔66の一方側の開口を封止している。封止膜82としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムを用いることができる。固定板84は、封止膜82を固定している。固定板84の材質は、例えば、ステンレス鋼である。
【0048】
なお、上記の例では、液体噴射ヘッド100がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
【0049】
1.2. 液体噴射ヘッドの製造方法
次に、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4〜図12は、本実施形態に係る液体噴射ヘッド100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0050】
まず、保護基板60の製造方法について説明する。
【0051】
図4に示すように、光透過性を有する第1基板160の第1面162に、感光性を有する第1膜110を成膜する。第1基板160は、後述する工程で凹部62、貫通孔64,66が形成され、保護基板60となる。したがって、第1基板160の材質は、上述した保護基板60の材質と同じである。第1基板160の形状は、例えば、板状である。第1膜110は、例えば、感光性接着剤である。第1膜110は、例えば、紫外線を照射することで現像液に対する溶解性が変化し、熱により硬化することができる。また、第1膜110は、後述する第1基板160をエッチングする工程で用いられるエッチング液に対して強い耐性を有していることが望ましい。第1膜110の材質は、例えば、感光剤が添加されたエポキシ樹脂や感光剤が添加されたポリイミド樹脂である。
【0052】
第1膜110の成膜は、例えば、スピンコート法により行われる。また、第1膜110を成膜した後に、熱処理を行ってもよい。なお、上述した第1膜110の材質からなるシートを第1基板160の第1面162に貼り付けることによって、第1面162に第1膜110を成膜してもよい。
【0053】
図5に示すように、第1基板160の第1面162とは反対側の第1基板160の第2面164に、感光性を有する第2膜112を成膜する。第2膜112は、例えば、公知のフォトレジストである。
【0054】
第2膜112の成膜は、第1膜110と同様に行われる。また、第2膜112を成膜した後に、熱処理(プリベーク)を行ってもよい。これにより、第2膜112を固化させることができる。
【0055】
図6に示すように、ハーフトーンマスク1を用いて、第1膜110の第1部分110aおよび第2膜112の第2部分112aをともに感光させる第1光L1と、第1膜110の第3部分110bを感光させる第2光L2とを照射し、第1膜110および第2膜112を露光する。さらに、ハーフトーンマスク1を用いて、第1膜110の第4部分110cと、第2膜112の第5部分112cとをともに感光させる第3光L3を照射し、第1膜110および第2膜112を露光する。
【0056】
ハーフトーンマスク1は、図6に示すように、光透過性を有する第3基板2と、第3基板2の表面に形成された遮光性を有する第3膜3と、を有している。第3膜3は、開口部3a,3cと、露光機(図示しない)の解像度より小さいスリットが形成されたスリット部3bと、を有している。開口部3aを通過した光が第1光L1として照射され、スリット部3bを通過した光が第2光L2として照射される。また、開口部3cと通過した光が第3光L3として照射される。なお、第1光L1と第3光L3とは、ともに開口部3a,3cを通過する光であり、第1光L1の光量と第3光L3の光量は、例えば、同じである。
【0057】
第3基板2の材質は、光透過性を有していれば限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス等である。
【0058】
開口部3a,3cは、例えば、第3膜3に形成された貫通孔である。開口部3aは、図3に示す貫通孔64に対応する位置および形状に形成されている。開口部3cは、図3に示す貫通孔66に対応する位置および形状に形成されている。スリット部3bには、露光機(図示しない)の解像度より小さいスリットが形成されている。これにより、スリット部3bが露光機からの光Lの一部を遮るため、光量が開口部3a、3cより少なくなり、中間露光ができる。図示の例では、スリット部3bには、複数のスリットが形成されている。スリット部3bは、図3に示す凹部62に対応する位置および形状に形成されている。第3膜3の材質は、例えば、遮光性を有していれば特に限定されず、例えば、Cr等の金属である。
【0059】
露光機からの光(例えば紫外線)Lは、開口部3aを通過し、第1光L1として、第1膜110の第1部分110aを照射する。そして、第1光L1は、第1基板160を透過し、第2膜112の第2部分112aを照射する。そのため、第1光L1によって、第1部分110aおよび第2部分112aが、感光する。第1光L1は、第1面162の垂線に沿って下方に向かって第1膜110に入射する。そのため、第1部分110aの直下に第2部分112aが位置する。すなわち、第1部分110aと第2部分112aとは、第1基板160を挟んで対向している。
【0060】
また、光Lは、スリット部3bを通過し、第2光L2として、第1膜110の第3部分110bを照射する。第2光L2は、光量が少ないため、第2膜112では、第2膜112を感光させるために必要な光量が得られない。そのため、第2光L2によって、第3部分110bが感光し、第2膜112は感光しない。
【0061】
また、光Lは、開口部3cを通過し、第3光L3として、第1膜110の第4部分110cを照射する。そして、第3光L3は、第1基板160を透過し、第2膜112の第5部分112cを照射する。そのため、第3光L3によって、第4部分110cおよび第5部分112cが、感光する。第3光L3は、第1面162の垂線に沿って下方に向かって第1膜110および第2膜112に入射する。そのため、第4部分110cの直下に第5部分112cが位置する。すなわち、第4部分110cと第5部分112cとは、第1基板160を挟んで対向している。
【0062】
このように、ハーフトーンマスク1を用いることにより、第1部分110a、第2部分112a、第3部分110b、第4部分110c、第5部分112cを一括して露光することができる。すなわち、第1膜110と第2膜112を一括して露光することができる。第1膜110および第2膜112を露光した後に、熱処理(ポストベーク)を行ってもよい。
【0063】
なお、ハーフトーンマスク1は、上述した構成に限定されない。例えば、全遮光膜(例えば、クロム層)および半遮光膜(例えば、酸化クロム層)を用いたハーフトーンマスクであってもよい。すなわち、スリット部3bに変えて、反遮光膜を設けたハーフトーンマスクを用いてもよい。
【0064】
図7に示すように、露光された第1膜110および第2膜112を現像することにより、第1部分110a、第2部分112a、および第3部分110bを除去する。さらに、第4部分110cおよび第5部分112cを除去する。
【0065】
現像は、露光された第1膜110および第2膜112を現像液に浸すことにより行われる。これにより、第1部分110a、第2部分112a、第3部分110b、第4部分110c、および第5部分112cを一括して除去することができる。現像液は、例えば、有機アルカリであるTMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)水溶液である。本工程により、第1部分110aが除去されて第1面162の第1領域162aが露出し、第2部分112aが除去されて第2面164の第2領域164aが露出し、第3部分110bが除去されて第1面162の第3領域162bが露出し、第4部分110cが除去されて第1面162の第4領域162cが露出し、第5部分112cが除去されて第2面164の第5領域164cが露出する。
【0066】
図8に示すように、現像された第1膜110および第2膜112をマスクとして、第1基板160をエッチングすることにより、第1基板160に貫通孔64,66を形成し、かつ第1基板160の第1面162に凹部62を形成する。
【0067】
エッチングは、第1基板160をエッチング液に浸すことにより行われる。エッチング液は、例えば、フッ化水素酸である。このエッチングでは、第1基板160が、第1面162の第1領域162aおよび第2面164の第2領域164aからエッチングされ、貫通孔64が形成される。また、第1基板160が、第1面162の第3領域162bからエッチングされ、凹部62が形成される。また、第1基板160が、第1面162の第4領域162c、および第2面164の第5領域164cからエッチングされ、貫通孔66が形成される。
【0068】
なお、凹部62の深さは、例えば、以下のようにして調整できる。まず、第1基板160をエッチング液に浸す。そして、凹部62が所望の深さになったときに、凹部62をエッチング液に対して耐性のある膜(図示しない)で覆う。その後、第2領域164aおよび第5領域164cからエッチングを進め、貫通孔64,66を形成する。
【0069】
図9に示すように、第2膜112を除去する。なお、第1膜110は、後述する工程において、接着剤10として用いられるため、本工程において、除去しない。
【0070】
以上の工程により、保護基板60を製造することができる。
【0071】
図10に示すように、第2基板130上に振動板40,42、および圧電素子50を形成する。第2基板130は、後述する工程において、液体の流路32,34,36が形成され、流路形成基板30となる。
【0072】
振動板40は、例えば、シリコンからなる第2基板130を熱酸化処理することにより形成される。振動板42は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により形成される。
【0073】
圧電素子50の製造方法について説明する。
【0074】
まず、振動板42上に第1電極52を、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより導電層(図示せず)を成膜し、該導電層をパターニングすることによって形成する。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われる。
【0075】
次に、第1電極52上に、圧電体層(図示しない)を成膜する。圧電体層は、例えば、ゾルゲル法、MOD(Metal Organic Deposition)法により成膜される。より具体的には、圧電体の前駆体層をスピンコートで成膜し、酸素雰囲気中で750℃程度で焼成することにより、前駆体層を結晶化させる。この成膜・焼成工程を複数回繰り返すことにより、所望の膜厚を有する圧電体層を得ることができる。
【0076】
次に、圧電体層上に第2電極層を成膜する。第2電極層は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法により成膜される。次に、圧電体層上に、所望の形状を有するレジストを形成し、第2電極層および圧電体層をエッチングする。これにより、圧電体層54、および第2電極56が形成される。
【0077】
以上の工程により、圧電素子50を製造することができる。
【0078】
次に、第2電極56上、圧電体層54の側方、振動板42上にわたって配線58を形成する。配線58は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより導電層(図示せず)を成膜し、該導電層をパターニングすることによって形成される。
【0079】
図11に示すように、第2基板130に圧力発生室32、供給口36、およびリザーバー34を形成する。すなわち、第2基板130に流路を形成する。
【0080】
圧力発生室32、リザーバー34、供給口36の形成は、例えば、高濃度アルカリ水溶液を用いたウェットエッチング(異方性エッチング)により行われる。エッチングは、第2基板130の所定の領域を、その厚さ方向に振動板40が露出するまでエッチング除去することにより行われる。このとき、例えば、振動板40をエッチングストッパーとして用いてもよい。
【0081】
図12に示すように、第2基板130の下に、圧力発生室(流路)32に連通するノズル孔22が形成されたノズル板20を設ける。
【0082】
具体的には、ノズル孔22が形成されたノズル板20を、ノズル孔22が圧力発生室32に対応するように位置合わせし、その状態で接合する。ノズル板20の接合は、例えば接着剤による接着法や、融着法などを用いることができる。ノズル孔22は、例えば、プレス加工等により形成することができる。
【0083】
図3に示すように、第1基板160と、圧電素子50が形成された第2基板130とを、凹部62に圧電素子50が収容されるように接着して圧電素子50を封止する。本工程では、第1膜110(接着剤10)を介して、第1基板160(保護基板60)と第2基板130(流路形成基板30)とが接着される。
【0084】
なお、ここでは、図12に示すノズル板20を設けてから、第1基板160と第2基板130とを接着したが、圧電素子50を第2基板130に形成した後に、第1基板160と第2基板130とを接着し、その後、第2基板130に圧力発生室32、供給口36、リザーバー34を形成し、ノズル板20を設けてもよい。
【0085】
第1基板160と第2基板130とは、圧電素子50が凹部62に収容され、配線58の端部が貫通孔64内で露出し、貫通孔66とリザーバー34とが連通するように接着される。接着は、接着剤10を用いて行われる。本工程では、接着剤10を介して、保護基板60を、振動板42上、配線58上、第1電極52上に接着する。接着剤10の硬化は、例えば、熱処理により行われる。
【0086】
次に、保護基板60上に駆動回路70を接合する。
【0087】
次に、貫通孔64を通る接続配線72を介して、圧電素子50と駆動回路70とを電気的に接続する。本工程は、例えば、ワイヤーボンディング等により行われる。具体的には、例えば、まず、接続配線72の一方の端を駆動回路70に接続する。そして、接続配線72を貫通孔64に挿し込み、配線58の端部に接続する。このようにして、圧電素子50と駆動回路70とを電気的に接続する。
【0088】
次に、保護基板60上にコンプライアンス基板80を接合する。
【0089】
以上の工程により、液体噴射ヘッド100を製造することができる。
【0090】
液体噴射ヘッド100の製造方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0091】
液体噴射ヘッド100の製造方法では、ハーフトーンマスク1を用いて、第1膜110の第1部分110aおよび第2膜112の第2部分112aをともに感光させる第1光L1と、第1膜110の第3部分110bを感光させる第2光L2とを照射し、第1膜110および第2膜112を露光する。これにより、保護基板60を製造する工程において、第1膜110および第2膜112を一括して露光することができるため、従来よりもフォトリソグラフィーの回数を減らすことができる。したがって、保護基板60を効率よく製造することができる。
【0092】
液体噴射ヘッド100の製造方法では、圧電素子50を封止する工程において、第1膜110を介して、第1基板160と第2基板130とが接着される。すなわち、第1膜110は、第1基板160をエッチングするためのマスクとしての機能と、第1基板160と第2基板130とを接着するための接着剤10としての機能とを有している。そのため、第1膜110を形成することで、例えば、第1基板160をエッチングするためのマスクを形成する工程、および接着剤10を成膜・パターニングする工程を省くことができる。したがって、製造工程を簡略化することができる。
【0093】
液体噴射ヘッド100の製造方法では、ハーフトーンマスク1は、光透過性を有する第3基板2と、第3基板2の表面に形成された遮光性を有する第3膜3と、を有し、第3膜3は、開口部3aと、露光機の解像度より小さいスリットが形成されたスリット部3bと、を有し、開口部3aを通過した光が第1光L1として照射され、スリット部3bを通過した光が第2光L2として照射される。これにより、第1膜110および第2膜112を一括して露光することができる。したがって、例えば、製造工程を簡略化することができる。
【0094】
1.3. 液体噴射ヘッドの製造方法の変形例
次に、本実施形態に係る液体噴射ヘッド100の製造方法の変形例について説明する。以下、上述した液体噴射ヘッド100の製造方法の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0095】
上述した液体噴射ヘッド100の製造方法では、第1膜110が感光性を有する接着剤であったが、第1膜110は、接着剤でなくてもよい。第1膜110は、例えば、第2膜112と同様の材質であってもよい。すなわち、第1膜110は、公知のフォトレジストであってもよい。
【0096】
これにより、図9に示す、第2膜112を除去する工程では、図示はしないが、第1膜110も除去される。そして、第1基板160と第2基板130とを接着する工程(図3参照)では、第1基板160の所定の領域に接着剤10を形成し、その後、この接着剤10を介して、第1基板160と第2基板130とが接着される。
【0097】
2. 第2実施形態
2.1. 液体噴射ヘッドの構成
次に、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド200の構成について、図面を参照しながら説明する。図13は、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド200を模式的に示す平面図である。図14は、液体噴射ヘッド200を模式的に示す断面図である。なお、図14は、図13のXIV−XIV線断面図である。以下、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド200において、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0098】
液体噴射ヘッド200では、保護基板60に複数の凹部260が設けられている。凹部260の深さは、例えば、1〜3μm程度である。この凹部260には、接着剤10が埋め込まれている。保護基板60は、この接着剤10を介して、流路形成基板30と接着されている。接着剤10は、例えば、振動板42上、配線58上、第1電極52上に位置している。接着剤10の高さは、例えば、圧電素子50の高さよりも大きく、例えば、3〜10μm程度である。これにより、保護基板60に凹部62(図3参照)を設けることなく、圧電素子50を封止することができる。
【0099】
圧電素子50は、接着剤10と保護基板60とによって囲まれた空間262に配置されている。圧電素子50は、図13に示すように、平面視において、周囲を接着剤10に囲まれている。
【0100】
2.2. 液体噴射ヘッドの製造方法
次に、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド200の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図15〜図18は、液体噴射ヘッド200の製造工程を模式的に示す断面図である。以下、上述した液体噴射ヘッド100の製造方法の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0101】
図15に示すように、光透過性を有する第1基板160の第1面162に、感光性を有する第1膜110を成膜する。次に、第1基板160の第1面162とは反対側の第1基板160の第2面164に、感光性を有する第2膜112を成膜する。第1膜110および第2膜112は、例えば、公知のフォトレジストである。
【0102】
図16に示すように、ハーフトーンマスク1を用いて、第1膜110の第1部分110aおよび第2膜112の第2部分112aをともに感光させる第1光L1と、第1膜110の第3部分110bを感光させる第2光L2とを照射し、第1膜110および第2膜112を露光する。さらに、ハーフトーンマスク1を用いて、第1膜110の第4部分110cと、第2膜112の第5部分112cとをともに感光させる第3光を照射し、第1膜110および第2膜112を露光する。
【0103】
ハーフトーンマスク1のスリット部3bは、図14に示す凹部260に対応する位置および形状に形成されている。
【0104】
次に、露光された第1膜110および第2膜112を現像することにより、第1部分110a、第2部分112a、および第3部分110bを除去する。さらに、第4部分110cおよび第5部分112cを除去する。
【0105】
図17に示すように、現像された第1膜110および第2膜112をマスクとして、第1基板160をエッチングすることにより、第1基板160に貫通孔64,66を形成し、かつ第1基板160の第1面162に凹部260を形成する。
【0106】
次に、第1膜110および第2膜112を除去する。
【0107】
次に、第2基板130上に圧電素子50を形成する工程、第2基板130に圧力発生室32、供給口36、およびリザーバー34を形成する工程、ノズル孔22が形成されたノズル板20を設ける工程を、上述した液体噴射ヘッド100の製造方法と同様に行う。
【0108】
図18に示すように、凹部260に接着剤10を塗布する。接着剤10の塗布は、例えば、液滴吐出法を用いて行われる。液滴吐出法としては、例えば、ディスペンサを用いる方法や、インクジェット法が挙げられる。液滴吐出法は、接着剤10を液滴として、凹部260に供給する。液滴吐出法によれば、接着剤10の形状を液滴の単位で制御できる。さらに、マスクを用いることなく、接着剤10を所望の領域に塗布することができる。
【0109】
本工程では、凹部260に接着剤10を塗布することにより、接着剤10の広がりを制御することができ、より確実に接着剤を所望の領域に形成することができる。接着剤10としては、例えば、熱によって硬化する熱硬化型の接着剤、または、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型の接着剤を用いることができる。
【0110】
図14に示すように、接着剤10を介して、第1基板160と、圧電素子50が形成された第2基板130とを接着して、圧電素子50を封止する。
【0111】
接着は、接着剤10を用いて行われる。本工程では、接着剤10を介して、保護基板60を、振動板42上、配線58上、第1電極52上に接着する。接着剤10の硬化は、例えば、熱処理、または紫外線を照射することにより行われる。
【0112】
次に、保護基板60上に駆動回路70およびコンプライアンス基板80を接合する工程、貫通孔64を通る接続配線72を介して、圧電素子50と駆動回路70とを電気的に接続する工程を、上述した液体噴射ヘッド100の製造方法と同様に行う。
【0113】
以上の工程により、液体噴射ヘッド200を製造することができる。
【0114】
液体噴射ヘッド200の製造方法は、以下の特徴を有する。
【0115】
液体噴射ヘッド200の製造方法では、第1基板160の第1面162に凹部260を形成し、凹部260に接着剤10を塗布する。これにより、接着剤10の広がりを制御することができ、より確実に接着剤を所望の領域に形成することができる。
【0116】
液体噴射ヘッド200の製造方法では、接着剤10を塗布する工程が、液滴吐出法を用いて行われる。液滴吐出法によれば、接着剤10の形状を液滴の単位で制御できる。さらに、マスクを用いることなく、接着剤10を所望の領域に塗布することができる。したがって、容易に接着剤10を所望の領域に塗布することができる。
【0117】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0118】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0119】
L 光、L1 第1光、L2 第2光、L3 第3光、1 ハーフトーンマスク、
2 第3基板、3 第3膜、3a,3c 開口部、3b スリット部、10 接着剤、
20 ノズル板、22 ノズル孔、30 流路形成基板、32 圧力発生室、
34 リザーバー、36 供給口、40,42 振動板、50 圧電素子、
52 第1電極、54 圧電体層、56 第2電極、58 配線、60 保護基板、
62 凹部、64,66 貫通孔、70 駆動回路、72 接続配線、
80 コンプライアンス基板、82 封止膜、84 固定板、100 液体噴射ヘッド、110 第1膜、110a 第1部分、110b 第3部分、110c 第4部分、
112 第2膜、112a 第2部分、112c 第5部分、130 第2基板、
160 第1基板、162 第1面、162a 第1領域、164a 第2領域、
162b 第3領域、162c 第4領域、164c 第5領域、164 第2面、
200 液体噴射ヘッド、260 凹部、262 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する第1基板の第1面に、感光性を有する第1膜を成膜する工程と、
前記第1面とは反対側の前記第1基板の第2面に、感光性を有する第2膜を成膜する工程と、
ハーフトーンマスクを用いて、前記第1膜の第1部分および前記第2膜の第2部分をともに感光させる第1光と、前記第1膜の第3部分を感光させる第2光とを照射し、前記第1膜および前記第2膜を露光する工程と、
露光された前記第1膜および前記第2膜を現像することにより、前記第1部分、前記第2部分、および前記第3部分を除去する工程と、
現像された前記第1膜および前記第2膜をマスクとして、前記第1基板をエッチングすることにより、前記第1基板に貫通孔を形成し、かつ前記第1基板の前記第1面に凹部を形成する工程と、
前記第1基板と、圧電素子が形成された第2基板とを、前記凹部に前記圧電素子が収容されるように接着して前記圧電素子を封止する工程と、
前記貫通孔を通る接続配線を介して、前記圧電素子と駆動回路とを電気的に接続する工程と、
を含む、液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1膜は、感光性接着剤であり、
前記圧電素子を封止する工程では、前記第1膜を介して、前記第1基板と前記第2基板とが接着される、液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ハーフトーンマスクは、
光透過性を有する第3基板と、
前記第3基板の表面に形成された遮光性を有する第3膜と、
を有し、
前記第3膜は、
開口部と、
露光機の解像度より小さいスリットが形成されたスリット部と、
を有し、
前記開口部を通過した光が、前記第1光として照射され、
前記スリット部を通過した光が、前記第2光として照射される、液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記第2基板に流路を形成する工程と、
前記流路に連通するノズル孔が形成されたノズル板を設ける工程と、
をさらに含む、液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
光透過性を有する第1基板の第1面に、感光性を有する第1膜を成膜する工程と、
前記第1面とは反対側の前記第1基板の第2面に、感光性を有する第2膜を成膜する工程と、
ハーフトーンマスクを用いて、前記第1膜の第1部分および前記第2膜の第2部分をともに感光させる第1光と、前記第1膜の第3部分を感光させる第2光とを照射し、前記第1膜および前記第2膜を露光する工程と、
露光された前記第1膜および前記第2膜を現像することにより、前記第1部分、前記第2部分、および前記第3部分を除去する工程と、
現像された前記第1膜および前記第2膜をマスクとして、前記第1基板をエッチングすることにより、前記第1基板に貫通孔を形成し、かつ前記第1基板の前記第1面に凹部を形成する工程と、
前記凹部に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して、前記第1基板と、圧電素子が形成された第2基板とを接着して、前記圧電素子を封止する工程と、
前記貫通孔を通る接続配線を介して、前記圧電素子と駆動回路とを電気的に接続する工程と、
を含む、液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記接着剤を塗布する工程は、液滴吐出法を用いて行われる、液体噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−187891(P2012−187891A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55176(P2011−55176)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】