説明

液体噴射ヘッド

【課題】圧力発生室毎の液体の吐出性能のバラつきを抑制することが可能な液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】複数のノズル開口26を列設したノズルプレート25と、ノズル開口26それぞれに連通する圧力発生室35を形成した流路形成基板24と、圧力発生室35を封止する弾性板23と、を備えた流路ユニット17と、弾性板23に当接し、圧力発生室35に圧力変動を与える圧電振動子29を備えた振動子ユニット22と、から構成され、ノズル開口26から液滴を吐出させる記録ヘッドであって、弾性板23は、フィルム41と金属薄板40を積層して構成し、圧力発生室35に対向する金属薄板40に形成したアイランド部43を備え、アイランド部43は、その配列方向の幅を、ノズル開口26側の幅W1よりも圧電振動子29側の幅W2を大きく設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに係り、特に、圧力変動によってノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力発生室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズル開口から液滴として吐出させる液体噴射ヘッドとしては、例えば、インクジェット式記録装置(以下、単にプリンタという)等の画像記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等がある。
【0003】
例えば、上記の記録ヘッドは、中空状の圧力発生室を封止する弾性板に圧力発生素子を接合し、圧力発生素子を該圧力発生素子の長手方向に振動させることで、圧力発生室に圧力変動を与え、圧力発生室と連通したノズル開口から圧力発生室内の液体を吐出させている。
【0004】
弾性板は、フィルムと金属薄板とを積層させて構成されており、圧力発生室に対向した金属薄板の一部を、エッチング処理などによって除去することで、フィルム上に金属薄板が島状に残されたアイランド部が形成されている。そして、このアイランド部の表面、即ち弾性板には、圧力発生素子の先端が接着剤を介して接合される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−94684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アイランド部と圧力発生素子とを接合させる際に、互いの接合位置精度が悪いと、圧力発生素子の圧力変動に影響を及ぼすために、液体の吐出性能にバラつきが発生する虞があった。また、アイランド部と圧力発生素子とを接合する際に用いる接着剤が、その接合面間から液垂れすると、固着した接着剤が、アイランド部と共に振動する虞があり、同様に液体の吐出性能に影響することがあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧力発生室毎の液体の吐出性能のバラつきを抑制することが可能な液体噴射ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射ヘッドは、複数のノズル開口を列設したノズル形成部材と、前記ノズル開口に対応する圧力発生室を形成した流路形成基板と、前記圧力発生室を封止する弾性板と、を備え、流路形成基板を間にしてこれらを接合した流路ユニットと、
前記弾性板に当接し、前記圧力発生室に圧力変動を与える圧力発生素子を備えたアクチュエータユニットと、から構成され、
圧力発生素子の作動により前記ノズル開口から液滴を吐出させる液体噴射ヘッドであって、
前記弾性板は、フィルムと金属薄板を積層して構成され、
前記圧力発生室に対向する金属薄板に形成したアイランド部を備え、
前記アイランド部は、その配列方向の幅を、前記ノズル開口側の幅よりも前記圧力発生素子側の幅を大きく設定したことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、弾性板は、フィルムと金属薄板を積層して構成され、圧力発生室に対向する金属薄板に形成したアイランド部を備え、アイランド部は、その配列方向の幅を、ノズル開口側の幅よりも圧力発生素子側の幅を大きく設定したので、アイランド部の配列方向の幅をノズル開口側の幅よりも圧力発生素子側の幅を小さく設定した場合と比べて、圧力発生素子をアイランド部に接合する際の許容誤差を広くすることができる。そのため、圧力発生素子とアイランド部との要求位置精度を緩和し、歩留まりを向上させることができ、また圧力変動のバラつきを少なくして、圧力発生室毎の液体の吐出性能のバラつきを抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記アイランド部と前記圧力発生素子は、前記フィルムを介して接合されている構成とすることが望ましい。
【0011】
上記構成によれば、アイランド部と圧電振動子が、フィルムを介して接合されているので、アイランド部の圧電振動子側がフィルムに保護されることとなり、圧力発生素子を弾性板に接合する際に用いる接着剤が、互いの接合面間から液垂れしたとしても、接着剤がアイランド部に付着して固着することを防止できる。このため、接着剤がアイランド部の外周を覆うことを防止でき、弾性板の弾性率がアイランド部に対向する圧力発生室毎に変化することを抑えることができる。したがって、圧力発生室毎の液体の吐出性能のバラつきを抑制することができる。
【0012】
上記構成において、前記弾性板は、前記フィルムが前記金属薄板の両面を挟んだ状態で積層して形成されている構成とすることが望ましい。
【0013】
上記構成によれば、フィルムが金属薄板の両面を挟んでいるので、フィルム間にアイランド部が収容されるので、アイランド部を保護することができる。そのため、圧力発生素子による圧力変動を各アイランド部が確実に圧力発生室に伝えるので、圧力発生室毎の液体の吐出性能のバラつきを抑制することができる。
【0014】
上記構成において、前記弾性板は、一方の面にフィルムを接合した金属薄板をエッチング処理した後に、他方の面にフィルムを接合することによって形成されている構成とすることが望ましい。
【0015】
上記構成によれば、弾性板は、一方の面にフィルムを接合した金属薄板をエッチング処理した後に、他方の面にフィルムを接合すればよいので、従来のエッチング処理によって、アイランド部をフィルムで挟んだ弾性板を容易に作製することができる。
【0016】
上記構成において、前記圧力発生素子側の前記フィルムには、大気開放孔が設けられていることが望ましい。
【0017】
上記構成によれば、圧力発生素子側のフィルムには、大気開放孔が設けられているので、フィルム間の空間と外側の空間とを大気開放孔を通して連通させることができ、その結果、フィルム間の空間の容積が周りの温度や大気圧に左右されることがなく、圧力発生室内のコンプライアンスが環境に依存しないようになる。
【0018】
上記構成において、前記圧力発生素子側の前記フィルムが、気体を透過する材料で形成されていることが望ましい。
【0019】
上記構成によれば、圧力発生素子側のフィルムが、気体を透過する材料で形成されているので、フィルム間の空間の気体がその外側の空間に透過できるようにして、フィルム間の空間と外側の空間とのバランスを保つことができる。その結果、圧力発生室内のコンプライアンスが環境に依存しないようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面等を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、本実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」という)を例に挙げて説明する。
【0021】
図1はインクジェット式記録装置の斜視図である。まず、第1の実施形態における記録ヘッドを搭載するインクジェット式記録装置(以下、プリンタという)の概略構成について、図1を参照して説明する。例示したプリンタ1は、記録紙等の記録媒体(着弾対象物)2の表面へ液体状のインクを吐出して画像等の記録を行う装置である。このプリンタ1は、インクを吐出する記録ヘッド3(本発明における液体噴射ヘッドの一種に相当)と、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4と、キャリッジ4を主走査方向(図1に符号Xで示す)に移動させるキャリッジ移動機構5と、記録媒体2を副走査方向(主走査方向に直交する方向。図1に符号Yで示す)に移送するプラテンローラ6等を備えている。ここで、上記のインクは、本発明の液体の一種であり、インクカートリッジ7に貯留されている。このインクカートリッジ7は、記録ヘッド3に対して着脱可能に装着される。
【0022】
上記のキャリッジ移動機構5はタイミングベルト8を備えている。そして、このタイミングベルト8はDCモータ等のパルスモータ9により駆動される。従って、パルスモータ9が作動すると、キャリッジ4は、プリンタ1に架設されたガイドロッド10に案内されて、主走査方向X(記録紙2の幅方向)に往復移動する。
【0023】
次に、記録ヘッド3の構成について説明する。ここで、図2はキャリッジ4に取り付けられる記録ヘッド3の分解斜視図である。例示した記録ヘッド3は、カートリッジ基台15(以下、「基台」という)と、ヘッドケース16と、流路ユニット17と、振動子ユニット22(本発明におけるアクチュエータユニットの一種に相当)等から概略構成されている。
【0024】
基台15は、例えば合成樹脂によって成型されており、図2に示すように、その上面にはフィルタ18を介在させた状態でインク導入針19が取り付けられる。そして、基台15に取り付けられたインク導入針19にはインクカートリッジ7が装着される。
【0025】
上記インク導入針19が取り付けられる面とは反対側となる基台15の他面には、回路基板20が取り付けられる。この回路基板20は、例えば後述する圧電振動子29(図3参照)への駆動信号の供給を制御するためのドライブ回路や、プリンタ本体側との接続のためのコネクタ、インク供給用の貫通孔等を備えている。そして、この回路基板20は、パッキンとして機能するシート部材21を介して基台15に取り付けられている。
【0026】
ヘッドケース16は、基台15に固定されるものであり、後述する圧電振動子29を有する振動子ユニット22を収容するためのケーシングである。このため、ヘッドケース16には、振動子ユニット22を収容可能な収容空部32(図3参照)が形成されている。そして、振動子ユニット22は、この収容空部32内に挿入され、接着等によって固定されている。そして、ヘッドケース16の基台15の取付面とは反対側の先端面には、流路ユニット17が接着剤等により固定されている。
【0027】
流路ユニット17は、弾性板23、流路形成基板24、及びノズルプレート25(本発明におけるノズル形成基部材の一種に相当)を積層した状態で接着剤等で接合して一体化することにより作製されている。
【0028】
ノズルプレート25は、例えばステンレス製の薄板から作製された部材であり、このノズルプレート25には、プリンタ1のドット形成密度に対応したピッチで微細なノズル開口26が列状に形成されている。
【0029】
ヘッドケース16の先端部には、さらにノズルプレート25の外側からその周縁部を包囲するようにヘッドカバー27が取り付けられる。このヘッドカバー27は、例えば金属製の薄板部材によって作製されている。このヘッドカバー27は、流路ユニット17やヘッドケース16の先端部を保護すると共に、ノズルプレート25の帯電を防止する機能を有する。
【0030】
図3は、記録ヘッド3の要部断面図である。上記の振動子ユニット22は、圧力発生手段としての圧電振動子群30と、この圧電振動子群30が接合される固定板31と、圧電振動子群30に回路基板20からの駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブル(図示せず)等から構成される。本実施形態の圧電振動子群30は、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子29(本発明における圧力発生素子の一種に相当)を備える。各圧電振動子29は、固定端部が固定板31上に接合され、自由端部が固定板31の先端面よりも外側に突出している。即ち、各圧電振動子29は、所謂片持ち梁の状態で固定板31上に取り付けられている。また、各圧電振動子29を支持する固定板31は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。なお、圧力発生手段としては、上記圧電振動子以外にも、静電アクチュエータ、磁歪素子等を用いることができる。
【0031】
ヘッドケース16の内部には、上記の振動子ユニット22を収納可能な収納空部32を、ヘッドケース16の高さ方向を貫通させた状態で形成している。そして、固定板31の背面を、収納空部32を区画するケース内壁面に接着することで、振動子ユニット22は収納空部32内に収納・固定されている。
【0032】
流路形成基板24は、共通インク室33となる空部、インク供給口34となる溝部、及び、圧力発生室35となる空部を隔壁で区画した状態で各ノズル開口26に対応させて複数並べて形成した板状の部材である。この流路形成基板24は、例えば、シリコンウェハーをエッチング処理することによって作製される。上記の各圧力発生室35は、ノズル開口26の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、共通インク室33は、ヘッドケース16の高さ方向を貫通して形成されたインク連通路37を介してインク導入針19内に設けられたインク導入路(図示せず)と連通し、インクカートリッジ7に貯留されたインクが導入される室である。そして、この共通インク室33に導入されたインクは、インク供給口34を通じて各圧力発生室35に供給される。
【0033】
図4は、弾性板の構成を説明する断面図である。
弾性板23は、ステンレス鋼等の金属薄板40上に、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂からなり弾性変形可能なフィルム41を、ラミネート加工した複合板材であり、列設された圧力発生室35を一連に封止する。
【0034】
本実施形態の弾性板23のフィルム41は、図4に示すように、金属薄板40の一方の面に接合したフィルム41aに加えて、もう1枚のフィルム41bを金属薄板40の他方の面に接合した状態で備えている。そのため、フィルム41a,金属薄板40,フィルム41bを順に積層した三層構造をなしている。即ち、弾性板23は、フィルム41a,41bが金属薄板40の両面を挟んだ状態で積層して形成されている。なお、本発明の弾性板23は、金属薄板40と、1枚のフィルム41aと、で構成した二層構造をなしていても良い。
【0035】
また、弾性板23の圧力発生室35に対応する部分には、アイランド部43が形成されている。アイランド部43は、金属薄板40の一部をエッチングなどによって環状に除去することで、フィルム41のみの薄肉部に囲まれた島状に形成されている。詳しくは、アイランド部43は、圧力発生室35の平面形状と同様に、ノズル開口26の列設方向と直交する方向に細長いブロック状に形成されている。また、アイランド部43の配列方向(ノズル開口26の列設方向)の幅は、ノズル開口26側の幅(図4に符号W1で示す)よりも圧力発生室35側の幅(図4に符号W2で示す)の方が大きくなるように形成されている。なお、この弾性板23の作製方法の詳細については後述する。
【0036】
このように構成されたアイランド部43には、フィルム41aを介して圧電振動子29の自由端部の先端が接合され、この部分がダイヤフラム部として機能する。
また、弾性板23は、共通インク室33となる空部の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部としても機能する。このコンプライアンス部として機能する部分については、エッチングにより弾性フィルム41aだけにしている。
【0037】
この記録ヘッド3は、圧電振動子29を素子長手方向に伸縮させると、アイランド部43が圧力発生室35に近接する方向或いは離隔する方向に移動する。これにより、圧力発生室35の容積が変化し、圧力発生室35内のインクに圧力変動が生じる。この圧力変動によってノズル開口26からインク滴(液滴の一種)が吐出(噴射)される。
【0038】
次に、弾性板23の作製方法について説明する。図5は本発明の弾性板の作製過程を説明する断面図である。
まず、一方の面に接着剤等によりフィルム41aを接合した金属薄板40をエッチングすると、図5(a)に示すように、金属薄板40の厚み方向だけでなく、平面方向にもエッチングが進行するために、断面から見た場合には金属薄板40はフィルム41aから離れるに従って徐々に幅が狭くなる台形形状で、上面から見た場合(図示せず)には、フィルムに接着していない面が接着している面よりも面積が小さくなる形状となる。このようにして、金属薄板40の一部をエッチングなどによって除去することで、アイランド部43が島状に形成される。そして、このアイランド部43の配列方向の幅は、フィルム41aから離れるに従って徐々に小さくなっている。
【0039】
次に、エッチング処理した金属薄板40のフィルム41aから離れた表面、即ち、フィルム41aを接合した金属薄板40の他方の面に、図5(b)に示すように、フィルム41bを接着剤等により接合する。最後に、このように構成された弾性板23を、図5(c)に示すように、金属薄板40の厚み方向(上下)を反転させた向きで流路ユニット17に配設すると、図4に示すように、アイランド部43の配列方向の幅を、ノズル開口26側の幅W1よりも圧電振動子29側の幅W2を大きく設定した弾性板23が流路ユニット17に組み付けられる。
【0040】
このように、上記記録ヘッド3では、弾性板23は、フィルム41a,41bと金属薄板40を積層して構成され、圧力発生室35に対向する金属薄板40に形成したアイランド部43を備え、アイランド部43は、その配列方向の幅を、ノズル開口26側の幅W1よりも圧電振動子29側の幅W2を大きく設定したので、アイランド部43の配列方向の幅をノズル開口26側の幅W1よりも圧電振動子29側の幅W2を小さく設定した場合と比べて、圧電振動子29をアイランド部43に接合する際の許容誤差を広くすることができる。そのため、圧電振動子29とアイランド部43との要求位置精度を緩和し、歩留まりを向上させることができ、また圧力変動のバラつきを少なくして、圧力発生室35毎のインクの吐出性能のバラつきを抑制することができる。
【0041】
また、アイランド部43と圧電振動子29が、フィルム41bを介して接合されているので、アイランド部43の圧電振動子29側がフィルム41bに保護されることとなり、圧電振動子29を弾性板23に接合する際に用いる接着剤が、互いの接合面間から液垂れしたとしても、接着剤がアイランド部43に付着して固着することを防止できる。このため、接着剤がアイランド部43の外周を覆うことを防止でき、弾性板23の弾性率がアイランド部43に対向する圧力発生室35毎に変化することを抑えることができる。したがって、インクの吐出性能のバラつきを抑制することができる。
【0042】
また、フィルム41a,41bが金属薄板40の両面を挟んでいるので、フィルム41a,41b間にアイランド部43が収容されるので、アイランド部43を保護することができる。そのため、圧電振動子29による圧力変動を各アイランド部43が確実に圧力発生室35に伝えるので、圧力発生室35毎のインクの吐出性能のバラつきを抑制することができる。
【0043】
また、弾性板23は、一方の面にフィルム41aを接合した金属薄板40をエッチング処理した後に、他方の面にフィルム41bを接合すればよいので、従来のエッチング処理によって、アイランド部43をフィルム41a,41bで挟んだ弾性板23を容易に作製することができる。
【0044】
次に、弾性板の他の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態における弾性板を説明する断面図である。第2の実施形態における弾性板23のフィルム41bには、該フィルム41bの厚さ方向を貫通する複数の貫通孔44(本発明における大気開放孔の一種に相当)が設けられている。即ち、フィルム41aとフィルム41b間の空間が、弾性板23の圧電振動子29側の空間と連通している。そのため、フィルム41a,41b間の空間を大気と同じ状態とすることができる。
【0045】
このように、第2の実施形態の弾性板23では、圧電振動子29側のフィルム41bには、大気開放孔44が設けられているので、フィルム41a,41b間の空間と外側の空間とを大気開放孔44を通して連通させることができ、その結果、フィルム間の空間の容積が周りの温度や大気圧に左右されることがなく、圧力発生室35内のコンプライアンスが環境に依存しないようになる。
【0046】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
例えば、第2の実施形態のように弾性板23は、フィルム41bに大気開放孔44を設けるだけでなく、フィルム41bを、気体を透過する材料で形成していても良い。即ち、フィルム41a,41b間の空間を大気と同じ状態にすることができれば、どのような形態であっても良い。この弾性板23によれば、フィルムが、気体を透過する材料で形成されているので、フィルム間の空間の気体がその外側の空間に透過できるようにして、フィルム間の空間と外側の空間とのバランスを保つことができる。その結果、圧力発生室内のコンプライアンスが環境に依存しないようになる。
【0047】
以上は、液体噴射装置の一種であるプリンタ1を例に挙げて説明したが、本発明は他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタを製造するディスプレー製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーやFED(面発光ディスプレー)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1の実施形態におけるプリンタの構成を説明する斜視図である。
【図2】記録ヘッドの構成を説明する分解斜視図である。
【図3】記録ヘッドの内部構造を説明する部分断面図である。
【図4】弾性板の構成を説明する断面図である。
【図5】弾性板の作製過程を説明する断面図であり、(a)は金属薄板をエッチングした状態を示す断面図、(b)はフィルムが金属薄板を挟んだ状態を示す断面図、(c)は(b)を反転させた状態を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態における弾性板を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0049】
3…記録ヘッド,17…流路ユニット,22…振動子ユニット,23…弾性板,24…流路形成基板,25…ノズルプレート,26…ノズル開口,29…圧電振動子,35…圧力発生室,40…金属薄板,41a,41b(41)…フィルム,43…アイランド部,44…貫通孔,W1…ノズル開口側の幅,W2…圧力発生素子側の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル開口を列設したノズル形成部材と、前記ノズル開口に対応する圧力発生室を形成した流路形成基板と、前記圧力発生室を封止する弾性板と、を備え、流路形成基板を間にしてこれらを接合した流路ユニットと、
前記弾性板に当接し、前記圧力発生室に圧力変動を与える圧力発生素子を備えたアクチュエータユニットと、から構成され、
圧力発生素子の作動によりノズル開口から液滴を吐出させる液体噴射ヘッドであって、
前記弾性板は、フィルムと金属薄板を積層して構成され、
前記圧力発生室に対向する金属薄板に形成したアイランド部を備え、
前記アイランド部は、その配列方向の幅を、前記ノズル開口側の幅よりも前記圧力発生素子側の幅を大きく設定したことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記アイランド部と前記圧力発生素子は、前記フィルムを介して接合されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記弾性板は、前記フィルムが前記金属薄板の両面を挟んだ状態で積層して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記弾性板は、一方の面にフィルムを接合した金属薄板をエッチング処理した後に、他方の面にフィルムを接合することによって形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記圧力発生素子側の前記フィルムには、大気開放孔が設けられていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記圧力発生素子側の前記フィルムが、気体を透過する材料で形成されていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−73081(P2009−73081A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245172(P2007−245172)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】