液体噴射装置、液体噴射装置の制御方法及び制御プログラム
【課題】フラッシングを頻繁に行って罫線の位置ずれ量を減少させる方法の場合、フラッシングの回数分に応じてフラッシング量が増えることになり、それだけインクを無駄に消費してしまう。
【解決手段】ノズル開口から液滴を吐出して媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定部16aを有し、制御部16は、記録モード判定部16aによって第1の記録モードと判定された場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、第2の記録モードと判定された場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御する。
【解決手段】ノズル開口から液滴を吐出して媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定部16aを有し、制御部16は、記録モード判定部16aによって第1の記録モードと判定された場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、第2の記録モードと判定された場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置、液体噴射装置の制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンター等の液体噴射装置は、液体噴射ヘッドを記録紙(媒体)の搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させながら、液体噴射ヘッドのノズル開口からインク滴(液滴)を吐出させて記録紙に印刷する。このインク滴の吐出は、ノズル開口に連通した圧力発生室を膨張・収縮させることで行われる。このような液体噴射装置では、ノズル開口におけるインクの自由表面(メニスカス)が空気に晒されているため、ノズル開口を通じてインクの溶媒成分が蒸発し易くなる。その結果、ノズル開口付近でインクの増粘が進み、インク滴の飛翔方向にずれが生じることがある。
【0003】
このため、ノズル開口付近のインクの増粘を抑制する対策として、印刷動作中において一定時間が経過する毎に、インク滴を液体噴射ヘッドの外に強制的に吐出させるフラッシングを行い、ノズル開口付近の増粘したインクを排出する対策が広く行われる。また、メニスカスを微振動させることによってインクを撹拌する対策も広く行われる。このとき、インク滴が吐出されないように、インク滴の吐出方向と、この吐出方向とは反対側の引込方向とにメニスカスを交互に移動させて微振動を与える。このメニスカスの微振動もまた、圧力発生室を膨張・収縮させることによって行う。そして、メニスカスを微振動させることにより、ノズル開口付近のインクが撹拌されてインクの増粘が抑制される。例えば特許文献1では、ノズル開口付近のインクに増粘が生じていると判断された場合、メニスカスを微振動させた後にフラッシングを行うことにより、フラッシングを効果的に行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−42314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したインク滴の飛翔方向にずれが生じる現象は、例えば、搬送方向に沿った罫線をバンド印刷且つ双方向印刷によって印刷する場合に、罫線の繋ぎ目部分で顕著に現れる。また、同様の罫線をインターレース印刷且つ双方向印刷によって印刷する場合に、インク滴の飛翔方向のずれのために罫線の幅が拡大してしまうことがある。
【0006】
なお、バンド印刷(第1の記録モード)では、ノズル開口からインク滴を吐出して主走査方向の1回のパスで記録紙に画像を記録する。つまり、バンド印刷では、1回のパスでノズル列長さ分のバンド状のラスターライン(搬送方向に沿った複数のドットからなるドット列)が形成される。そして、各パスの間に行われる搬送動作では、記録紙がノズル列長さ分だけ搬送される。そして、各パスでの画像の記録と搬送動作とが交互に繰り返されることにより、バンド状のラスターラインが搬送方向につなぎ合わされて、印刷画像が形成される。
一方、インターレース印刷(第2の記録モード)では、ノズル開口からインク滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで記録紙に画像を記録する。つまり、インターレース印刷では、記録紙が搬送方向に一定の搬送量で搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで形成されたラスターラインにおけるドットの間隔を埋めるようなラスターラインを形成して、印刷画像が形成される。
【0007】
インク滴の飛翔方向のずれの問題に対応するために、フラッシングを頻繁に行って罫線の位置ずれを目立たなくする方法がある。また、各フラッシング間においてメニスカスに対して付与する微振動を強くすることで罫線の位置ずれを抑制する対応が考えられる。
【0008】
図17(a)は微振動電圧と罫線の位置ずれ量との関係を示すグラフであり、(b)は微振動電圧と必要とするフラッシング量(液体吐出量)との関係を示すグラフである。同図(a)に示すように、微振動電圧を高める程、罫線の位置ずれ量を減少させることができる。一方、同図(b)に示すように、微振動電圧を高める程、必要とするフラッシング量が増加してしまう。この理由は次の通りである。微振動電圧を高めてメニスカスの微振動を強くすることによって、増粘インクが攪拌されて空気に触れるインクの面積が大きくなる。その結果、溶媒成分の蒸発量が増えてインクが却って増粘することになり、フラッシング量が増加してしまう。
【0009】
したがって、フラッシングを頻繁に行って罫線の位置ずれ量を減少させる方法の場合、フラッシングの回数分に応じてフラッシング量が増えることになり、それだけインクを無駄に消費してしまう。また、各フラッシング間においてメニスカスに対して付与する微振動を強くする方法の場合についても、微振動電圧を高める程、フラッシング量が増えることになりインクを無駄に消費してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御部と、前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定部と、を有し、前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、前記制御部は、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、前記記録モード判定部によって前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、前記記録モード判定部によって前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することを特徴とする液体噴射装置。
【0012】
上記した液体噴射装置によれば、第1の記録モードの場合は主走査方向の1回のパスで媒体に画像を記録し、第2の記録モードの場合は主走査方向の複数回のパスで媒体に画像を記録する。そして、フラッシング動作を実行するときのノズル開口毎の液体吐出量について、第1の記録モードの場合は、制御部が、端部ノズル開口群よりも中央部ノズル開口群の方が少量になるように制御する。一方、第2の記録モードの場合は、制御部が、端部ノズル開口群と中央部ノズル開口群とが均一になるように制御する。
【0013】
従来の液体噴射装置では、ノズル開口付近のインクの増粘によってインク滴の飛翔方向にずれが生じることがある。その結果、インク滴の媒体への着弾位置がずれてしまい、記録した例えば罫線が主走査方向にずれることがある。このずれを抑制するために、フラッシングを頻繁に行う対応がある。
ここで、第1の記録モードの場合、1回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては気になってしまう。一方、第2の記録モードの場合、複数回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては第1の記録モードの場合ほどには気にならない。
【0014】
したがって、フラッシングの回数を多くできない第1の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することにより、搬送方向に沿った罫線の繋ぎ目部分の位置ずれを重点的に抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。また、フラッシングの回数を多くできる第2の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御して、罫線全体の位置ずれを抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
このように、第1の記録モード及び第2の記録モードのそれぞれに応じた対応により、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0015】
[適用例2]前記制御部は、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出しない程度に、前記ノズル開口におけるメニスカスの微振動を更に制御し、前記記録モード判定部によって前記第1の記録モードと判定された場合、前記制御部は、前記端部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与する微振動よりも、弱い微振動を前記中央部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御することを特徴とする上記液体噴射装置。
【0016】
上記した液体噴射装置によれば、第1の記録モードの場合、制御部が、端部ノズル開口群よりも弱い微振動を中央部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御する。これにより、例えば、搬送方向に沿った罫線の繋ぎ目部分で顕著に現れる位置ずれの問題と、この位置ずれに対処するために各ノズル開口における微振動を強くするほど、ノズル列全体の液体吐出量が多量になってしまう問題とに対処することができる。つまり、罫線の繋ぎ目部分を印刷する端部ノズル開口群に対して強い微振動を付与することにより、罫線の繋ぎ目部分の位置ずれを更に抑制することができる。また、中央部ノズル開口群に対しては、端部ノズル開口群に対してよりも弱い微振動を付与することから、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量を少量にすることができ、この結果、ノズル列全体の液体吐出量が多量になってしまう問題に対処することができる。
【0017】
[適用例3]前記記録モード判定部は、主走査方向の往路と復路との双方向で前記媒体に記録する双方向記録モードと、主走査方向の往路と復路とのいずれかの単方向で前記媒体に記録する単方向記録モードと、を更に判定し、前記制御部は、前記記録モード判定部によって前記単方向記録モードと判定された場合に、前記双方向記録モードと判定された場合よりも、弱い微振動を前記ノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御すると共に、前記フラッシング動作を実行するときに、前記双方向記録モードと判定された場合よりも、前記ノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することを特徴とする上記液体噴射装置。
【0018】
上記した液体噴射装置によれば、制御部が、単方向記録モードの場合は双方向記録モードの場合よりも弱い微振動をノズル開口のメニスカスに対して付与するように制御する。そして、フラッシング動作を実行するときに、制御部が、単方向記録モードの場合は双方向記録モードの場合よりもノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御する。
【0019】
単方向記録モードの場合、往路と復路とのいずれかの単方向で媒体に記録することから、インク滴の着弾位置が全て単方向にずれてしまい、例えば罫線全体が単方向にずれることがある。一方、双方向記録モードの場合、往路と復路との双方向で媒体に記録することから、インク滴の着弾位置が往路と復路とのそれぞれで逆方向にずれてしまい、第1の記録モードでは例えば罫線の繋ぎ目部分がずれたり、第2の記録モードでは例えば罫線の幅が拡大してしまったりすることがある。したがって、単方向記録モードの場合の方が双方向記録モードの場合よりもインク滴の着弾位置のずれの影響が少ないといえる。
【0020】
このため、インク滴の着弾位置のずれの影響が少ない単方向記録モードの場合、双方向記録モードの場合よりも弱い微振動をメニスカスに対して付与して、フラッシング動作時におけるノズル開口毎の液体吐出量を少量にすることができる。このように、単方向記録モード及び双方向記録モードのそれぞれに応じた微振動をメニスカスに対して付与して、その微振動に応じた液体吐出量に制御することにより、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0021】
[適用例4]媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、を有する液体噴射装置の制御方法であって、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御工程と、前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定工程と、を有し、前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、前記制御工程では、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、前記記録モード判定工程において前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、前記記録モード判定工程において前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
【0022】
上記した液体噴射装置の制御方法によれば、第1の記録モードの場合は主走査方向の1回のパスで媒体に画像を記録し、第2の記録モードの場合は主走査方向の複数回のパスで媒体に画像を記録する。そして、フラッシング動作を実行するときのノズル開口毎の液体吐出量について、第1の記録モードの場合は、制御工程において、端部ノズル開口群よりも中央部ノズル開口群の方が少量になるように制御する。一方、第2の記録モードの場合は、制御工程において、端部ノズル開口群と中央部ノズル開口群とが均一になるように制御する。
【0023】
従来の液体噴射装置では、ノズル開口付近のインクの増粘によってインク滴の飛翔方向にずれが生じることがある。その結果、インク滴の媒体への着弾位置がずれてしまい、記録した例えば罫線が主走査方向にずれることがある。このずれを抑制するために、フラッシングを頻繁に行う対応がある。
ここで、第1の記録モードの場合、1回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては気になってしまう。一方、第2の記録モードの場合、複数回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては第1の記録モードの場合ほどには気にならない。
【0024】
したがって、フラッシングの回数を多くできない第1の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することにより、搬送方向に沿った罫線の繋ぎ目部分の位置ずれを重点的に抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。また、フラッシングの回数を多くできる第2の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御して、罫線全体の位置ずれを抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
このように、第1の記録モード及び第2の記録モードのそれぞれに応じた対応により、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0025】
[適用例5]媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、を有する液体噴射装置の制御プログラムであって、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御機能と、前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定機能と、を有し、前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、前記制御機能では、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、前記記録モード判定機能において前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、前記記録モード判定機能において前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することをコンピューターに実行させることを特徴とする液体噴射装置の制御プログラム。
【0026】
上記した液体噴射装置の制御プログラムによれば、第1の記録モードの場合は主走査方向の1回のパスで媒体に画像を記録し、第2の記録モードの場合は主走査方向の複数回のパスで媒体に画像を記録する。そして、フラッシング動作を実行するときのノズル開口毎の液体吐出量について、第1の記録モードの場合は、制御機能において、端部ノズル開口群よりも中央部ノズル開口群の方が少量になるように制御する。一方、第2の記録モードの場合は、制御機能において、端部ノズル開口群と中央部ノズル開口群とが均一になるように制御する。
【0027】
従来の液体噴射装置では、ノズル開口付近のインクの増粘によってインク滴の飛翔方向にずれが生じることがある。その結果、インク滴の媒体への着弾位置がずれてしまい、記録した例えば罫線が主走査方向にずれることがある。このずれを抑制するために、フラッシングを頻繁に行う対応がある。
ここで、第1の記録モードの場合、1回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては気になってしまう。一方、第2の記録モードの場合、複数回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては第1の記録モードの場合ほどには気にならない。
【0028】
したがって、フラッシングの回数を多くできない第1の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することにより、搬送方向に沿った罫線の繋ぎ目部分の位置ずれを重点的に抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。また、フラッシングの回数を多くできる第2の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御して、罫線全体の位置ずれを抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
このように、第1の記録モード及び第2の記録モードのそれぞれに応じた対応により、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0029】
[適用例6]媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行うと共に、前記ノズル開口から液滴を吐出しない程度に、前記ノズル開口におけるメニスカスの微振動を制御する制御部と、前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定部と、を有し、前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、前記制御部は、前記記録モード判定部によって前記第2の記録モードと判定された場合に、前記第1の記録モードと判定された場合よりも、弱い微振動を前記ノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御すると共に、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、前記第1の記録モードと判定された場合よりも、前記ノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することを特徴とする液体噴射装置。
【0030】
上記した液体噴射装置によれば、第1の記録モードの場合は主走査方向の1回のパスで媒体に画像を記録し、第2の記録モードの場合は主走査方向の複数回のパスで媒体に画像を記録する。そして、第2の記録モードの場合、制御部が、第1の記録モードの場合よりも弱い微振動をノズル開口のメニスカスに対して付与するように制御する。さらに、フラッシング動作を実行するときに、制御部が、第2の記録モードの場合は第1の記録モードの場合よりもノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御する。
【0031】
従来の液体噴射装置では、ノズル開口付近のインクの増粘によってインク滴の飛翔方向にずれが生じることがある。その結果、インク滴の媒体への着弾位置がずれてしまい、記録した例えば罫線が主走査方向にずれることがある。このずれを抑制するために、フラッシングを頻繁に行ったり、メニスカスに対して微振動を付与したりする対応がある。
ここで、第1の記録モードの場合、1回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては気になってしまう。一方、第2の記録モードの場合、複数回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては第1の記録モードの場合ほどには気にならない。
【0032】
したがって、フラッシングの回数を多くすることができる第2の記録モードの場合、第1の記録モードの場合よりも弱い微振動をメニスカスに対して付与して、フラッシング動作時におけるノズル開口毎の液体吐出量を少量にすることができる。このように、第1の記録モード及び第2の記録モードのそれぞれに応じた微振動をメニスカスに対して付与して、その微振動に応じた液体吐出量に制御することにより、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0033】
[適用例7]前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、前記制御部は、前記記録モード判定部によって前記第1の記録モードと判定された場合に、前記端部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与する微振動よりも、弱い微振動を前記中央部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御すると共に、前記フラッシング動作を実行するときに、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することを特徴とする上記液体噴射装置。
【0034】
上記した液体噴射装置によれば、第1の記録モードの場合、制御部が、端部ノズル開口群よりも弱い微振動を中央部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御する。そして、フラッシング動作を実行するときのノズル開口毎の液体吐出量について、制御部が、端部ノズル開口群よりも中央部ノズル開口群の方が少量になるように制御する。これにより、例えば、ノズル開口から液滴を吐出して搬送方向に沿った罫線を印刷する場合に、罫線の繋ぎ目部分で顕著に現れる位置ずれの問題と、この位置ずれに対処するために各ノズル開口における微振動を強くするほど、ノズル列全体の液体吐出量が多量になってしまう問題とに対処することができる。つまり、罫線の繋ぎ目部分を印刷する端部ノズル開口群に対して強い微振動を付与することにより、罫線の繋ぎ目部分の位置ずれを更に抑制することができる。また、中央部ノズル開口群に対しては、端部ノズル開口群に対してよりも弱い微振動を付与することから、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量を少量にすることができ、この結果、ノズル列全体の液体吐出量が多量になってしまう問題に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係るプリンターの構成を示す斜視図。
【図2】記録ヘッドの構成を示す断面図。
【図3】記録ヘッドに設けられた各ノズル開口の説明図。
【図4】プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図5】(a)記録紙に対してインク滴を吐出して画像等を記録する際に用いられる駆動信号の構成例を示す図、(b)微振動パルスを拡大した図。
【図6】プリンターの印刷動作における処理を示すフローチャート。
【図7】バンド印刷且つ双方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図。
【図8】従来の対応例であり、バンド印刷且つ双方向印刷において罫線の位置ずれに対応する例を示す図。
【図9】本実施形態の対応例であり、バンド印刷且つ双方向印刷において罫線の位置ずれに対応する例を示す図。
【図10】バンド印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図。
【図11】バンド印刷且つ単方向印刷において罫線の位置ずれに対応する例を示す図。
【図12】(a)〜(d)罫線を印刷する場合に、各ノズル開口において必要となるフラッシング量の例を示すグラフ。
【図13】インターレース印刷且つ双方向印刷における罫線幅の拡大の例を示す図。
【図14】インターレース印刷且つ双方向印刷において罫線幅の拡大に対応する例を示す図。
【図15】インターレース印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図。
【図16】インターレース印刷且つ単方向印刷において罫線の位置ずれに対応する例を示す図。
【図17】(a)微振動電圧と罫線の位置ずれ量との関係を示すグラフ、(b)微振動電圧と必要とするフラッシング量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本実施形態に係る液体噴射装置について、図面を参照して説明する。
【0037】
<プリンターの構成>
最初に、本実施形態に係る液体噴射装置の例として、プリンターの構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンター1の構成を示す斜視図である。同図に示すプリンター1は、インク滴(液滴)を噴射して記録紙等の媒体上にインクドットを形成することによって画像等を印刷するインクジェット式カラープリンターである。プリンター1は、記録ヘッド2(液体噴射ヘッド)が取り付けられると共にカートリッジ保持部3を有するキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設されたプラテン5と、キャリッジ4を記録紙8の搬送方向と交差する方向となる紙幅方向(主走査方向)に往復移動させるキャリッジ移動機構6(移動機構)と、キャリッジ4の移動に伴ってエンコーダーパルスを出力するリニアエンコーダー7と、記録紙8を搬送方向に搬送する紙送り機構9(搬送機構)(以上、図4参照)と、記録紙8を紙送り機構9側に供給する給紙機構17とを備えている。
【0038】
カートリッジ保持部3にはインクカートリッジ10が着脱可能に保持される。このインクカートリッジ10は、インクを貯留した箱状部材であり、液体貯留部材の一種である。本実施形態では、このインクカートリッジ10を、ブラックインクを貯留したブラックカートリッジと、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクのカラーインクを貯留したカラーカートリッジとから構成している。また、各インクの色材としては、例えば、耐候性に優れる顔料が用いられる。
【0039】
キャリッジ移動機構6は、プリンター1における主走査方向に架設されたガイド軸11と、主走査方向の一側に配設されたキャリッジ移動モーター12と、このキャリッジ移動モーター12の回転軸に接続され、キャリッジ移動モーター12によって回転駆動される駆動プーリー13と、駆動プーリー13とは反対側の主走査方向他側に配設された遊転プーリー14と、駆動プーリー13と遊転プーリー14との間に掛け渡され、キャリッジ4に接続されたタイミングベルト15とから構成される。キャリッジ移動モーター12は、キャリッジ移動機構6における駆動源として機能し、例えば、パルスモーターやDCモーターが用いられる。このキャリッジ移動モーター12は、制御部16(図4参照)により、その回転速度や回転方向等が制御される。そして、キャリッジ移動モーター12が回転すると、駆動プーリー13及びタイミングベルト15が回転し、キャリッジ4がガイド軸11に沿って記録紙8の紙幅方向に移動する。つまり、キャリッジ4は、制御部16による制御の下で主走査方向に往復移動される。
【0040】
リニアエンコーダー7は、記録ヘッド2の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力するように構成されている。そして、制御部16は、受信したエンコーダーパルスに基づいて記録ヘッド2の走査位置を認識できる。即ち、受信したエンコーダーパルスをカウントすることで、記録ヘッド2の位置を認識することができる。
【0041】
プラテン5は、記録紙8を案内するための板状部材である。このプラテン5の上面部において、周縁部分を除いた部分が周縁部分よりも一段低い窪部として形成されている。そして、この窪部内にはスポンジ等の吸液部材23が配設されている。また、窪部底面からは、上方に向かって支持突起24(ダイヤモンドリブとも呼ばれる)が隆設されている。この支持突起24は、記録紙8背面に当接してこの記録紙8を支持するものであり、先端部分が吸液部材23の表面よりも上方に突出している。プラテン5上において、記録紙8のサイズに応じた位置、具体的には、記録紙8の紙幅方向の端部よりもやや外側に外れた位置には、後述するフラッシング動作時の吐出インク滴を受けるフラッシングポジションとしてのインク受け部5´が複数設けられている。
【0042】
給紙機構17は、枚葉の記録紙8を複数枚収容し、下部に設けられた給紙ローラー(図示せず)により1枚ずつ紙送り機構9側に向けて繰り出す。この給紙機構17は、記録紙8の紙幅方向の一端部を突き当てる固定支持部18と、例えば、A3,B4,A4,B5等の記録紙8のサイズ(幅員)に応じて左右幅方向に移動可能であって記録紙8の紙幅方向の他端部に当接して記録紙8の位置を規定する位置決め部材19とを左右に備えている。
【0043】
紙送り機構9は、紙送り駆動源としての紙送りモーター25と、紙送りモーター25によって回転駆動される紙送りローラー26とから構成される。紙送りローラー26は、上下一対のローラーで構成されている。即ち、下側に位置する駆動ローラーと上側に位置する従動ローラー(ピンチローラー/図示せず)によって構成されている。駆動ローラーは上端部分をプラテン5の上面から露出させた状態でプラテン5内に配設されており、この露出した部分の上に、従動ローラーが駆動ローラー側に付勢された状態で配置される。そして、従動ローラーによって記録紙8を駆動ローラーに当接させ、この当接状態で駆動ローラーを回転することで記録紙8を紙送り方向に移動させる。
【0044】
また、記録ヘッド2の移動範囲内であってプラテン5よりも外側には、記録ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定してある。このホームポジションには、キャッピング機構27が設けられている。このキャッピング機構27は、キャップ部材によって記録ヘッド2のノズル面を封止し、ノズル開口28(図2参照)からのインク溶媒の蒸発を防止するものである。さらに、このキャッピング機構27は、フラッシング動作時にも用いられる。具体的には、フラッシング動作時において、キャップ部材がノズル開口28から吐出されたインク滴を受ける容器として用いられる。
【0045】
記録ヘッド2は、液体状のインクをインク滴の状態にしてノズル開口28から記録紙8に向けて吐出させる。この記録ヘッド2としては種々の態様が提案されているが、圧力発生素子を作動することで圧力室内のインクに圧力変動を生じさせ、この圧力変動を利用してノズル開口28からインク滴を吐出させる方式のものが一般的である。
【0046】
<記録ヘッドの構成>
次に、記録ヘッド2の構成について説明する。
図2は、記録ヘッド2の構成を示す断面図である。同図に示すように、記録ヘッド2は、ケース31と、このケース31内に収納される振動子ユニット32と、ケース31の先端面に接合される流路ユニット33等を備えている。ケース31は、例えば、エポキシ系樹脂を成型することで作成され、その内部には振動子ユニット32を収納するための収納空部34を有する。振動子ユニット32は、櫛歯状の圧電振動子35(圧力発生素子)を固定板36の表面に片持ち梁の状態で接合したものである。この圧電振動子35は、縦振動モードの圧電振動子であり、振動子電位に応じて自由端部が素子長手方向に伸縮する。即ち、充電によって素子長手方向に収縮し、放電によって素子長手方向に伸長する。
【0047】
流路ユニット33は、流路形成基板37の一方の面にノズルプレート38を、他方の面に弾性板39をそれぞれ接合した構成である。そして、この流路ユニット33には、リザーバ40と、インク供給口41と、圧力室42と、ノズル連通口43と、ノズル開口28とを設けている。そして、これらの各部により、インク供給口41から圧力室42及びノズル連通口43を経てノズル開口28に至る一連のインク流路が、ノズル開口28に対応して複数形成されている。また、ノズル開口28は複数列状に開設されており、1列に属する複数のノズル開口28がノズル列を構成する。
【0048】
図3は、記録ヘッド2に設けられた各ノズル開口28の説明図である。同図に示すように、各ノズル列K,C,M,Yでは、各色のインクを噴出するための噴出口であるノズル開口28を搬送方向に所定間隔にて並べることによって構成されている。本実施形態では、各ノズル列K,C,M,Yに180個のノズル開口28(#1〜#180)を備えている。そして、各ノズル列K,C,M,Yにおいて、搬送方向の両端部側に位置する40個のノズル開口28(#1〜#20,#161〜#180)を端部ノズル開口群とし、端部ノズル開口群以外の140個のノズル開口28(#21〜#160)を中央部ノズル開口群とする。
【0049】
図2に戻って、弾性板39にはダイヤフラム部44が設けられている。このダイヤフラム部44は圧力室42の一部を区画しており、圧電振動子35の先端面が接合される島部(厚肉部)と、この島部の周囲に設けられ、弾性を有する薄肉部とを有している。そして、圧電振動子35が素子長手方向に伸縮すると島部が変位する。この島部の変位によって圧力室容積が変動する。即ち、圧電振動子35が伸長すると圧力室容積が減少し、圧電振動子35が収縮すると圧力室容積が増加する。このような圧力室42の容積変化に伴って圧力室42内のインクに圧力変動が生じる。このため、この圧力変動を制御することでノズル開口28からインク滴を吐出させることができる。例えば、圧電振動子35を素子長手方向に収縮させた後、急激に伸長させることでインク滴を吐出させることができる。また、圧力室42内のインクに加える圧力変動パターンを変えることで、ノズル開口28からインク滴を吐出させない程度に、ノズル開口28におけるメニスカスを微振動させることができる。なお、この微振動の詳細については後述する。
【0050】
<プリンターの電気的構成>
次に、プリンター1の電気的構成について説明する。
図4は、プリンター1の電気的構成を示すブロック図である。同図に示すように、プリンター1は、プリンターコントローラー51と、プリントエンジン52とを備えている。プリンターコントローラー51は、ホストコンピューター等(図示せず)からの印刷データ等を受信する外部I/F(インターフェイス)53と、各種データの記憶等を行うRAM54と、各部の制御に用いられるプログラム等を記憶したROM55と、各部の電気的制御を行う制御部16と、クロック信号を発生する発振回路56と、周期一定のタイミングパルス(PTS:Print Timing Signal)を発生可能なタイマー回路57と、記録ヘッド2へ供給するための駆動信号を発生する駆動信号発生回路58と、印字データ及び駆動信号等をプリントエンジン52に送信するための内部I/F(インターフェイス)59と、を備えている。
【0051】
制御部16は、記録ヘッド2を主走査方向に往復移動させつつ、駆動信号を圧電振動子35へ供給して、記録ヘッド2による印刷動作(吐出動作)及びノズル開口28におけるメニスカスの微振動を制御する。このとき、制御部16は、ホストコンピューター等から送信された印刷データをドットパターンに対応した印字データに展開して記録ヘッド2に送信する。そして、記録ヘッド2では、受信した印字データに基づき、駆動信号中の駆動パルスが選択的に圧電振動子35に供給されて、インク滴の吐出やノズル開口28におけるメニスカスの微振動が行われる。また、制御部16は、プリンター1の電源投入後における印刷動作の開始前や、印刷動作中における一定の時間間隔毎に、記録ヘッド2をフラッシングポジション(インク受け部5´又はキャッピング機構27の何れか近い位置)まで移動させて、ノズル開口28からインク滴を強制的に空吐出させるフラッシング動作を行う。
【0052】
さらに、制御部16は、印刷動作を行う際の記録モードを判定するための記録モード判定部16aを含んでいる。制御部16は、記録モード判定部16aにおける記録モードの判定結果に基づいて、記録ヘッド2を主走査方向に往復移動させながらノズル開口28からインク滴を吐出して記録紙8に対して画像等を印刷する。
【0053】
記録モード判定部16aは、ホストコンピューター等から送信された印刷データに含まれるコマンドに基づいて記録モードを判定する。記録モードには、バンド印刷(第1の記録モード)とインターレース印刷(第2の記録モード)とが含まれる。また、バンド印刷及びインターレース印刷のそれぞれには、記録ヘッド2を主走査方向に往復移動中に往路と復路との双方向で記録紙8に対して印刷する双方向印刷(双方向記録モード)、及び往路と復路とのいずれかの単方向で記録紙8に対して印刷する単方向印刷(単方向記録モード)の両方の記録モードが含まれる。
【0054】
ここで、バンド印刷では、1回のパスで全てのノズル開口28(#1〜#180)から同時に記録紙8に対してインクが吐出されてラスターラインを形成し、搬送方向に沿って画像等を印刷する。一方、インターレース印刷では、最初のパスにおいて、間隔をあけたノズル開口28(#1〜#180の一部)から記録紙8に対してインク滴が吐出されてドット間隔のあいたラスターラインを形成し、次のパス以降において、間隔をあけたノズル開口28から記録紙8に対してインク滴が吐出されてドット間隔を埋めるようにラスターラインを形成し、搬送方向に沿って画像等を印刷する。
【0055】
駆動信号発生回路58は、制御部16によって定められた波形形状の駆動信号を発生する。本実施形態におけるプリンター1は、液量の異なるインク滴を吐出することで大きさの異なるドットを記録紙8に形成する多階調記録が可能であり、大ドット、中ドット、小ドット、及び非吐出の4階調での印刷動作が可能に構成されている。
図5(a)は記録紙8に対してインク滴を吐出して画像等を記録する際に用いられる駆動信号の構成例を示す図であり、(b)は、(a)に示す微振動パルスVP1、微振動パルスVP2及び微振動パルスVP3を拡大した図である。同図(a)に示すように、駆動信号発生回路58は、微振動パルスVP1と、微振動パルスVP2と、微振動パルスVP3と、大ドット駆動パルスDP1と、小ドット駆動パルスDP2と、中ドット駆動パルスDP3との組を配置して構成される駆動信号COMを発生する。この駆動信号COMは、記録紙8に対してインク滴を吐出して画像等を印刷する際に用いられる。そして、記録ヘッド2が記録紙8上における印刷領域内で定速移動しているときに、駆動信号COMの駆動パルスが選択的に圧電振動子35に供給される。
【0056】
ここで、微振動パルスVP1,VP2,VP3は、非吐出のノズル開口28のメニスカスを微振動させるための駆動パルスである。具体的には、微振動パルスVP1は、全てのノズル開口28の各圧電振動子35に供給されて、各ノズル開口28(#1〜#180)のメニスカスを微振動させることができる。さらに、微振動パルスVP1は、各ノズル列K,C,M,Yにおける中央部ノズル開口群の各圧電振動子35に供給されて、中央部ノズル開口群となる各ノズル開口28(#21〜#160)のメニスカスを微振動させることもできる。一方、微振動パルスVP2は、端部ノズル開口群の各圧電振動子35に供給されて、端部ノズル開口群となる各ノズル開口28(#1〜#20,#161〜#180)のメニスカスを微振動させることができる。一方、微振動パルスVP3は、全てのノズル開口28の各圧電振動子35に供給されて、各ノズル開口28(#1〜#180)のメニスカスを微振動させることができる。
このように、各ノズル開口28の各圧電振動子35には、微振動パルスVP1,VP2,VP3のいずれかが供給されることになるが、前述した記録モード判定部16aにおける判定結果に基づいて、供給する微振動パルスが選択される。
【0057】
図5(b)に示すように、微振動パルスVP1は、基準電位VBから第1微振動電位VH1まで電位を上昇させる充電要素P11と、第1微振動電位VH1を短時間維持するホールド要素P12と、第1微振動電位VH1から基準電位VBまで電位を復帰させる放電要素P13とにより構成されている。一方、微振動パルスVP2は、基準電位VBから第2微振動電位VH2まで電位を上昇させる充電要素P21と、第2微振動電位VH2を短時間維持するホールド要素P22と、第2微振動電位VH2から基準電位VBまで電位を復帰させる放電要素P23とにより構成されている。一方、微振動パルスVP3は、基準電位VBから第3微振動電位VH3まで電位を上昇させる充電要素P31と、第3微振動電位VH3を短時間維持するホールド要素P32と、第3微振動電位VH3から基準電位VBまで電位を復帰させる放電要素P33とにより構成されている。
【0058】
これらの微振動パルスVP1,VP2,VP3が圧電振動子35に供給されると、それぞれの充電要素P11,P21,P31によって圧電振動子35が収縮して、インク滴が吐出されない程度に圧力室42が緩やかに膨張する。そして、それぞれのホールド要素P12,P22,P32によって圧力室42の膨張状態が僅かの間維持された後、それぞれの放電要素P13,P23,P33が供給されることにより、圧電振動子35が伸長して圧力室42が基準容積に復帰する。この圧力室42の一連の容積変動に伴って圧力室42内には圧力変動が生じ、この圧力変動によってノズル開口28のメニスカスに対して微振動を付与することができる。
【0059】
ここで、微振動パルスVP1の駆動電圧、即ち基準電位VBから第1微振動電位VH1までの電位差は、微振動パルスVP3の駆動電圧、即ち基準電位VBから第3微振動電位VH3までの電位差よりも高く設定されている。さらに、微振動パルスVP1の充電要素P11の傾きは、微振動パルスVP3の充電要素P31の傾きよりも急峻な傾きとなっている。このため、微振動パルスVP1の場合、ノズル開口28のメニスカスに対して微振動パルスVP3の場合よりも強い微振動を付与することができる。
また、微振動パルスVP2の駆動電圧、即ち基準電位VBから第2微振動電位VH2までの電位差は、微振動パルスVP1の駆動電圧、即ち基準電位VBから第1微振動電位VH1までの電位差よりも高く設定されている。さらに、微振動パルスVP2の充電要素P21の傾きは、微振動パルスVP1の充電要素P11の傾きよりも急峻な傾きとなっている。このため、微振動パルスVP2の場合、ノズル開口28のメニスカスに対して微振動パルスVP1の場合よりも強い微振動を付与することができる。
したがって、ノズル開口28のメニスカスに対して付与する微振動は、微振動パルスVP3、微振動パルスVP1、微振動パルスVP2の順で強くすることができる。(以降、微振動パルスVP2による微振動を強い微振動、微振動パルスVP1による微振動を弱い微振動、微振動パルスVP3による微振動を更に弱い微振動として表現する。)
【0060】
さらに、駆動信号発生回路58は、フラッシング動作に用いるフラッシング用駆動信号を発生する。このフラッシング用駆動信号は、複数種類のフラッシングパルス(図示せず)を含んで構成されており、フラッシング動作時において必要とするフラッシング量に応じて適宜選択される。このフラッシング量は、ノズル開口28のメニスカスに対して付与する微振動の強弱によって異なり、微振動を強くするほどフラッシング量が増加し、逆に、微振動を弱くするほどフラッシング量が減少する。
したがって、ノズル開口28毎のフラッシング量は、微振動パルスVP2による微振動を付与するノズル開口28、微振動パルスVP1による微振動を付与するノズル開口28、微振動パルスVP3による微振動を付与するノズル開口28の順で少量にすることができる。
【0061】
<プリンターにおける処理>
次に、プリンター1の印刷動作における処理について説明する。
図6は、プリンター1の印刷動作における処理を示すフローチャートである。
【0062】
先ず、制御部16は、ホストコンピューター等から外部I/F53を介して印刷データを受信する(ステップS10)。この印刷データには、記録紙サイズ、記録紙種類、解像度、記録モード、カラー調整等のコマンドが含まれる。
【0063】
次に、制御部16は、記録モード判定部16aにより、ステップS10において受信した印刷データに含まれるコマンドに基づいて、バンド印刷で印刷を行うのか、若しくはインターレース印刷で印刷を行うのかを示す記録モードを判定する(ステップS20)。
【0064】
バンド印刷の場合(ステップS20:バンド印刷)は、ステップS30へ進み、制御部16は、記録モード判定部16aにより、ステップS10において受信した印刷データに含まれるコマンドに基づいて、双方向印刷を行うのか、若しくは単方向印刷を行うのかを示す記録モードを判定する。
他方、インターレース印刷の場合(ステップS20:インターレース印刷)は、ステップS80へ進み、制御部16は、記録モード判定部16aにより、ステップS10において受信した印刷データに含まれるコマンドに基づいて、双方向印刷を行うのか、若しくは単方向印刷を行うのかを示す記録モードを判定する。
【0065】
バンド印刷且つ双方向印刷を行う場合(ステップS30:双方向印刷)は、制御部16は、記録ヘッド2に設けられた各ノズル列K,C,M,Yにおける中央部ノズル開口群の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1が供給されるように設定する。また、端部ノズル開口群の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP2が供給されるように設定する(ステップS40)。
【0066】
そして、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける中央部ノズル開口群の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1によるメニスカスの微振動を付与した場合に必要となるフラッシング量のフラッシングパルスが供給されるように設定する。また、端部ノズル開口群の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP2によるメニスカスの微振動を付与した場合に必要となるフラッシング量のフラッシングパルスが供給されるように設定する(ステップS50)。そして、ステップS130へ進む。
【0067】
他方、バンド印刷且つ単方向印刷を行う場合(ステップS30:単方向印刷)は、制御部16は、記録ヘッド2に設けられた各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1が供給されるように設定する(ステップS60)。
【0068】
そして、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1によるメニスカスの微振動を付与した場合に必要となるフラッシング量のフラッシングパルスが供給されるように設定する(ステップS70)。そして、ステップS130へ進む。
【0069】
インターレース印刷且つ双方向印刷を行う場合(ステップS80:双方向印刷)は、制御部16は、記録ヘッド2に設けられた各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1が供給されるように設定する(ステップS90)。
【0070】
そして、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1によるメニスカスの微振動を付与した場合に必要となるフラッシング量のフラッシングパルスが供給されるように設定する(ステップS100)。そして、ステップS130へ進む。
【0071】
他方、インターレース印刷且つ単方向印刷を行う場合(ステップS80:単方向印刷)は、制御部16は、記録ヘッド2に設けられた各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP3が供給されるように設定する(ステップS110)。
【0072】
そして、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP3によるメニスカスの微振動を付与した場合に必要となるフラッシング量のフラッシングパルスが供給されるように設定する(ステップS120)。そして、ステップS130へ進む。
【0073】
ステップS130では、制御部16は、記録ヘッド2を主走査方向に往復動させながら、各ノズル列K,C,M,Yの各圧電振動子35へ駆動信号を供給して印刷動作を実行させる。
【0074】
このとき、バンド印刷且つ双方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける中央部ノズル開口の各メニスカスに対して、微振動パルスVP1による弱い微振動を付与する。さらに、端部ノズル開口の各メニスカスに対して、微振動パルスVP2による強い微振動を付与する。一方、バンド印刷且つ単方向印刷の場合、及びインターレース印刷且つ双方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各メニスカスに対して、微振動パルスVP1による弱い微振動を付与する。一方、インターレース印刷且つ単方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各メニスカスに対して、微振動パルスVP3による更に弱い微振動を付与する。
【0075】
次に、制御部16は、フラッシング動作を実行する条件が成立したか否かを判定する(ステップS140)。ここでは、例えば、制御部16における計時時間が所定の時間間隔に到達したときに、フラッシング動作を実行する条件が成立したと判定する。
なお、本実施形態では、インターレース印刷におけるフラッシング動作の時間間隔を、バンド印刷における時間間隔よりも短く設定する。これは、フラッシング動作時の印刷中断による時間の遅れについて、ユーザーにとっては、1回のパスで画像等を印刷するバンド印刷に比べて複数回のパスで画像等を印刷するインターレース印刷の方が気にならないことによる。
【0076】
フラッシング動作を実行する条件が成立した場合(ステップS140:Yes)は、制御部16は、印刷動作を一旦中断してフラッシング動作を実行する(ステップS150)。そして、フラッシング動作の終了後、ステップS130に戻って印刷動作を繰り返す。
ここで、フラッシング動作では、制御部16は、記録ヘッド2をキャッピング機構27等のフラッシングポジションまで移動させて、ノズル開口28からインク滴を強制的に空吐出させ、増粘したインクを記録ヘッド2外に排出させる。
【0077】
このとき、バンド印刷且つ双方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける中央部ノズル開口群の各ノズル開口28から、微振動パルスVP1の場合に必要となるフラッシング量のインクを排出させる。さらに、端部ノズル開口群の各ノズル開口28から、微振動パルスVP2の場合に必要となるフラッシング量のインクを排出させる。
一方、バンド印刷且つ単方向印刷の場合、及びインターレース印刷且つ双方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28から、微振動パルスVP1の場合に必要となるフラッシング量のインクを排出させる。一方、インターレース印刷且つ単方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28から、微振動パルスVP3の場合に必要となるフラッシング量のインクを排出させる。即ち、バンド印刷且つ単方向印刷、及びインターレース印刷の場合は、中央部ノズル開口群のノズル開口28毎のインク吐出量と、端部ノズル開口群のノズル開口28毎のインク吐出量とが均一になるように制御する。
【0078】
他方、フラッシング動作を実行する条件が成立していない場合(ステップS140:No)は、ステップS130に戻って印刷動作を繰り返す。
【0079】
<罫線の位置ずれへの対応例>
次に、罫線の位置ずれに対応する例について説明する。
図7は、バンド印刷且つ双方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図である。同図では、バンド印刷且つ双方向印刷によって記録紙8上に罫線を印刷した結果、罫線に位置ずれが発生した例を示している。ここでは、1パス(往路)において罫線L1が印刷され、続いて記録紙8がノズル開口28(#1〜#180)のノズル列の長さ分だけ搬送された後、2パス(復路)において罫線L2が印刷されている。
【0080】
ここで、主走査方向における罫線L1,L2の正規の印刷位置をP0とした場合、罫線L1は、P0を基点にして往路方向にGaだけ位置ずれしている。一方、罫線L2は、P0を基点にして復路方向にGaだけ位置ずれしている。その結果、罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分の位置ずれが2Gaとなって目立つようになっている。これは、各ノズル開口28付近のインクが増粘することによってインク滴の吐出速度が遅くなり、記録紙8上へのインク滴の着弾位置が記録ヘッド2の移動方向にずれることによる。
【0081】
図8は、従来の対応例であり、バンド印刷且つ双方向印刷において、全てのノズル開口28に強い微振動を付与して、図7における罫線の位置ずれに対応する例を示す図である。同図では、全てのノズル開口28(#1〜#180)に対して微振動パルスVP2による強い微振動を付与して、バンド印刷且つ双方向印刷によって記録紙8上に罫線L1,L2を印刷している。
ここでは、この強い微振動の付与により、各ノズル開口28付近のインクの増粘が正常に保たれる。そして、図7において位置ずれしていた罫線L1,L2が、図8に示すように、正規の印刷位置P0に印刷されるようになっている。その結果、罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分のずれが完全に解消されている。
【0082】
図12(a)は、図8の条件で罫線L1,L2を印刷する場合に、各ノズル開口28において必要となるフラッシング量の例を示すグラフである。ここで、フラッシング量の値は、ノズル開口28から吐出するインク量を演算する際に用いる係数を示しており、値が大きくなるほどインク量が増加する。図12(a)に示すように、各ノズル開口28(#1〜#180)では、それぞれフラッシング量の値「10」が必要である。したがって、ノズル列(ノズル開口28(#1〜#180))でのフラッシング量の合計値は「1,800」(180×10)となる。
【0083】
図9は、本実施形態の対応例であり、バンド印刷且つ双方向印刷において、中央部ノズル開口群に弱い微振動、端部ノズル開口群に強い微振動を付与して、図7における罫線の位置ずれに対応する例を示す図である。同図では、中央部ノズル開口群(ノズル開口28(#21〜#160))に対して微振動パルスVP1による弱い微振動を付与し、端部ノズル開口群(ノズル開口28(#1〜#20,#161〜#180))に対して微振動パルスVP2による強い微振動を付与して、バンド印刷且つ双方向印刷によって記録紙8上に罫線L1,L2を印刷している。
【0084】
ここでは、中央部ノズル開口群への弱い微振動の付与により、中央部ノズル開口群付近のインクの増粘が少し抑制される。そして、図7において位置ずれしていた罫線L1,L2が、図9に示すように、中央部ノズル開口群の印刷部分である罫線L12,L22については、罫線L12がP0を基点にして往路方向にGbだけ位置ずれし、罫線L22がP0を基点にして復路方向にGbだけ位置ずれしている。この位置ずれGbは、図7における位置ずれGaよりも小さい位置ずれとなっている。
また、端部ノズル開口群への強い微振動の付与により、端部ノズル開口群付近のインクの増粘が正常に保たれる。そして、図7において位置ずれしていた罫線L1,L2が、図9に示すように、端部ノズル開口群の印刷部分である罫線L11,L13,L21,L23については、正規の印刷位置P0に印刷されるようになっている。これらの結果、罫線L11,L13と罫線L12との間、及び罫線L21,L23と罫線L22との間では少し位置ずれが残るものの罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分の位置ずれについては解消されている。
【0085】
図12(b)は、図9の条件で罫線L1,L2を印刷する場合に、各ノズル開口28において必要となるフラッシング量の例を示すグラフである。同図に示すように、中央部ノズル開口群(ノズル開口28(#21〜#160))では、それぞれフラッシング量の値「5」が必要である。また、端部ノズル開口群(ノズル開口28(#1〜#20,#161〜#180))では、それぞれフラッシング量の値「10」が必要である。したがって、ノズル列(ノズル開口28(#1〜#180))でのフラッシング量の合計値は「1,100」(140×5+40×10)となる。
【0086】
図10は、バンド印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図である。同図では、バンド印刷且つ単方向印刷によって記録紙8上に罫線を印刷した結果、罫線に位置ずれが発生した例を示している。ここで、主走査方向における罫線L1,L2の正規の印刷位置をP0とした場合、罫線L1,L2は共にP0を基点にして往路方向にGaだけ位置ずれしている。その結果、罫線L1,L2全体の往路方向の位置ずれがあるが、罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分の位置ずれは発生していない。
【0087】
図11は、バンド印刷且つ単方向印刷において、全てのノズル開口28に弱い微振動を付与して、図10における罫線の位置ずれに対応する例を示す図である。同図では、全てのノズル開口28(#1〜#180)に対して微振動パルスVP1による弱い微振動を付与して、バンド印刷且つ単方向印刷によって記録紙8上に罫線L1,L2を印刷している。
ここでは、全てのノズル開口28への弱い微振動の付与により、各ノズル開口28付近のインクの増粘が少し抑制される。そして、図10において共に往路方向に位置ずれしていた罫線L1,L2全体が、図11に示すように、P0を基点にして往路方向にGbだけ位置ずれしている。この位置ずれGbは、図10における位置ずれGaよりも小さい位置ずれとなっている。
【0088】
図12(c)は、図11の条件で罫線L1,L2を印刷する場合に、各ノズル開口28において必要となるフラッシング量の例を示すグラフである。同図に示すように、各ノズル開口28(#1〜#180)では、それぞれフラッシング量の値「5」が必要である。したがって、ノズル列(ノズル開口28(#1〜#180))でのフラッシング量の合計値は「900」(180×5)となる。
【0089】
図13は、インターレース印刷且つ双方向印刷における罫線幅の拡大の例を示す図である。同図では、インターレース印刷且つ双方向印刷によって記録紙8上に罫線を印刷した結果、罫線の幅が拡大した例を示している。ここでは、ノズル開口28の一部からのインク滴の吐出を往路のパス(奇数番目)と復路のパス(偶数番目)とで繰り返すことによって罫線L3が印刷されている。
【0090】
ここで、主走査方向における罫線L3の正規の印刷位置をP0とし、罫線L3の走査方向の正規の幅をP1とした場合、罫線L3の印刷位置は正しいが、罫線L3の幅がP1よりも拡大している。これは、各ノズル開口28付近のインクが増粘することによってインク滴の吐出速度が遅くなり、記録紙8上へのインク滴の着弾位置が、往路では往路の移動方向にずれて、逆に復路では復路の移動方向にずれることによる。また、着弾位置したインク滴のドット間隔が正規のドット間隔より広くなることにより、記録紙8に印刷された罫線の画像が、正常に印刷された罫線の画像よりもやや不鮮明になっている。
【0091】
図14は、インターレース印刷且つ双方向印刷において、全てのノズル開口28に弱い微振動を付与して、図13における罫線幅の拡大に対応する例を示す図である。同図では、全てのノズル開口28(#1〜#180)に対して微振動パルスVP1による弱い微振動を付与して、インターレース印刷且つ双方向印刷によって記録紙8上に罫線L3を印刷している。この弱い微振動の付与により、各ノズル開口28付近のインクの増粘が正常に保たれる。その結果、図13において拡大していた罫線L3の幅と不鮮明な罫線L3の画像とが、図14に示すように、正規の幅のP1となり、鮮明な画像となっている。
【0092】
図14の条件で罫線L3を印刷する場合に、各ノズル開口28において必要となるフラッシング量の例については、図12(c)に示すフラッシング量の例を示すグラフがそのまま適用できる。したがって、各ノズル開口28(#1〜#180)では、それぞれフラッシング量の値「5」が必要であり、ノズル列(ノズル開口28(#1〜#180))でのフラッシング量の合計値は「900」(180×5)となる。
【0093】
図15は、インターレース印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図である。同図では、インターレース印刷且つ単方向印刷によって記録紙8上に罫線を印刷した結果、罫線に位置ずれが発生した例を示している。ここでは、ノズル開口28の一部からのインク滴の吐出を往路のみの単方向のパスで繰り返すことによって罫線L3が印刷されている。
【0094】
ここで、主走査方向における罫線L3の正規の印刷位置をP0とした場合、罫線L3はP0を基点にして往路方向にGaだけ位置ずれしている。これは、インクの増粘によってインク滴の吐出速度が遅くなり、各パス(往路)においてインク滴の着弾位置が往路の移動方向にずれることによる。
【0095】
図16は、インターレース印刷且つ単方向印刷において、全てのノズル開口28に更に弱い微振動を付与して、図15における罫線の位置ずれに対応する例を示す図である。同図では、全てのノズル開口28(#1〜#180)に対して微振動パルスVP3による更に弱い微振動を付与して、インターレース印刷且つ単方向印刷によって記録紙8上に罫線L3を印刷している。この更に弱い微振動の付与により、各ノズル開口28付近のインクの増粘が正常に保たれる。その結果、図15において位置ずれしていた罫線L3が、図16に示すように、正規の印刷位置P0に印刷されるようになっている。
【0096】
図12(d)は、図16の条件で罫線L3を印刷する場合に、各ノズル開口28において必要となるフラッシング量の例を示すグラフである。同図に示すように、各ノズル開口28(#1〜#180)では、それぞれフラッシング量の値「2.5」が必要である。したがって、ノズル列(ノズル開口28(#1〜#180))でのフラッシング量の合計値は「450」(180×2.5)となる。
【0097】
上述したように、バンド印刷且つ双方向印刷における罫線の位置ずれ(図7参照)に対応するために、従来の対応例(図8参照)と本実施形態の対応例(図9参照)とを示した。従来の対応例の場合、全てのノズル開口28に対して強い微振動を付与することにより、罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分の位置ずれを完全に解消することができる。しかしながら、フラッシング動作の際のフラッシング量の合計値が「1,800」となり、インクが多量に消費されてしまう問題が生じてしまう。
一方、本実施形態の対応例の場合、中央部ノズル開口群に対して弱い微振動を付与し、端部ノズル開口群に対して強い微振動を付与している。これにより、中央部ノズル開口群の印刷部分と端部ノズル開口群の印刷部分との間で少し位置ずれが残るものの、罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分のずれを解消することができ、罫線L1,L2全体については位置ずれが目立たない罫線にすることができる。さらに、フラッシング動作の際のフラッシング量の合計値が「1,100」となり、従来の対応例に比べてインクの消費を節減することができる。
【0098】
また、バンド印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれ(図10参照)に対応するために、バンド印刷且つ単方向印刷における対応例(図11参照)を示した。この対応例の場合、全てのノズル開口28に対して弱い微振動を付与している。これにより、罫線L1,L2全体の往路方向の位置ずれを少なくすることができる。また、フラッシング動作の際のフラッシング量の合計値が「900」となり、上記した双方向印刷における対応例に比べてインクの消費を更に節減することができる。
【0099】
また、インターレース印刷且つ双方向印刷における罫線幅の拡大(図13参照)に対応するために、インターレース印刷且つ双方向印刷における対応例(図14参照)を示した。この対応例の場合、全てのノズル開口28に対して弱い微振動を付与している。これにより、拡大していた罫線L3の幅を正規の幅にすることができる。また、フラッシング動作の際のフラッシング量の合計値が「900」となり、上記したバンド印刷且つ双方向印刷における対応例に比べてインクの消費を節減することができる。
【0100】
また、インターレース印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれ(図15参照)に対応するために、インターレース印刷且つ単方向印刷における対応例(図16参照)を示した。この対応例の場合、全てのノズル開口28に対して更に弱い微振動を付与している。これにより、位置ずれしていた罫線L3を正規の印刷位置に位置付けることができる。また、フラッシング動作の際のフラッシング量の合計値が「450」となり、上記したインターレース印刷且つ双方向印刷における対応例に比べてインクの消費を更に節減することができる。
【0101】
上述したように、印刷動作を行う際の記録モードが、バンド印刷であるかインターレース印刷であるか、さらにそれぞれが双方向印刷であるか単方向印刷であるかに応じて、各記録モードの組み合わせに適当な微振動を各ノズル開口28に対して付与している。これにより、フラッシング動作の際のフラッシング量を少量に節減することができ、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0102】
なお、上述した実施形態では、各ノズル列K,C,M,Yにおけるノズル開口28の個数を180個としたが、これには限られず、例えば90個であったり360個であったりしても良い。
【0103】
また、上述した実施形態では、液体噴射装置の例としてインクジェット式カラープリンターについて説明したが、これには限られない。例えば、カラーフィルター製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造型機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置等のインクジェット技術を応用した各種の液体噴射装置に適用しても良い。
【0104】
また、上述した実施形態では、CMYKの4色のインクを使用して印刷する例を説明したが、これには限られない。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト、クリア等、CMYK以外の色のインクを用いて印刷を行っても良い。
【0105】
また、上述した実施形態では、圧力発生素子として圧電振動子35を用いた記録ヘッド2の例を示したが、これには限られない。例えば、圧力発生素子として、撓み振動モードの圧電振動子、静電アクチュエーター、磁歪素子、発熱素子等を用いても良い。
【符号の説明】
【0106】
1…プリンター、2…記録ヘッド、3…カートリッジ保持部、4…キャリッジ、5…プラテン、5´…インク受け部、6…キャリッジ移動機構、7…リニアエンコーダー、8…記録紙、9…紙送り機構、10…インクカートリッジ、11…ガイド軸、12…キャリッジ移動モーター、13…駆動プーリー、14…遊転プーリー、15…タイミングベルト、16…制御部、16a…記録モード判定部、17…給紙機構、18…固定支持部、19…位置決め部材、23…吸液部材、24…支持突起、25…紙送りモーター、26…紙送りローラー、27…キャッピング機構、28…ノズル開口、31…ケース、32…振動子ユニット、33…流路ユニット、34…収納空部、35…圧電振動子、36…固定板、37…流路形成基板、38…ノズルプレート、39…弾性板、40…リザーバ、41…インク供給口、42…圧力室、43…ノズル連通口、44…ダイヤフラム部、51…プリンターコントローラー、52…プリントエンジン、53…外部I/F、54…RAM、55…ROM、56…発振回路、57…タイマー回路、58…駆動信号発生回路、K,C,M,Y…ノズル列、DP1…大ドット駆動パルス、DP2…小ドット駆動パルス、DP3…中ドット駆動パルス、Ga,Gb…位置ずれ、L1,L2,L3,L11,L12,L13,L14,L21,L22,L23,L24…罫線、P0…正規印刷位置、P1…正規幅、P11,P21,P31…充電要素、P12,P22,P32…ホールド要素、VB…基準電位、VH1…第1微振動電位、VH2…第2微振動電位、VH3…第3微振動電位、VP1,VP2,VP3…微振動パルス。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置、液体噴射装置の制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンター等の液体噴射装置は、液体噴射ヘッドを記録紙(媒体)の搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させながら、液体噴射ヘッドのノズル開口からインク滴(液滴)を吐出させて記録紙に印刷する。このインク滴の吐出は、ノズル開口に連通した圧力発生室を膨張・収縮させることで行われる。このような液体噴射装置では、ノズル開口におけるインクの自由表面(メニスカス)が空気に晒されているため、ノズル開口を通じてインクの溶媒成分が蒸発し易くなる。その結果、ノズル開口付近でインクの増粘が進み、インク滴の飛翔方向にずれが生じることがある。
【0003】
このため、ノズル開口付近のインクの増粘を抑制する対策として、印刷動作中において一定時間が経過する毎に、インク滴を液体噴射ヘッドの外に強制的に吐出させるフラッシングを行い、ノズル開口付近の増粘したインクを排出する対策が広く行われる。また、メニスカスを微振動させることによってインクを撹拌する対策も広く行われる。このとき、インク滴が吐出されないように、インク滴の吐出方向と、この吐出方向とは反対側の引込方向とにメニスカスを交互に移動させて微振動を与える。このメニスカスの微振動もまた、圧力発生室を膨張・収縮させることによって行う。そして、メニスカスを微振動させることにより、ノズル開口付近のインクが撹拌されてインクの増粘が抑制される。例えば特許文献1では、ノズル開口付近のインクに増粘が生じていると判断された場合、メニスカスを微振動させた後にフラッシングを行うことにより、フラッシングを効果的に行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−42314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したインク滴の飛翔方向にずれが生じる現象は、例えば、搬送方向に沿った罫線をバンド印刷且つ双方向印刷によって印刷する場合に、罫線の繋ぎ目部分で顕著に現れる。また、同様の罫線をインターレース印刷且つ双方向印刷によって印刷する場合に、インク滴の飛翔方向のずれのために罫線の幅が拡大してしまうことがある。
【0006】
なお、バンド印刷(第1の記録モード)では、ノズル開口からインク滴を吐出して主走査方向の1回のパスで記録紙に画像を記録する。つまり、バンド印刷では、1回のパスでノズル列長さ分のバンド状のラスターライン(搬送方向に沿った複数のドットからなるドット列)が形成される。そして、各パスの間に行われる搬送動作では、記録紙がノズル列長さ分だけ搬送される。そして、各パスでの画像の記録と搬送動作とが交互に繰り返されることにより、バンド状のラスターラインが搬送方向につなぎ合わされて、印刷画像が形成される。
一方、インターレース印刷(第2の記録モード)では、ノズル開口からインク滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで記録紙に画像を記録する。つまり、インターレース印刷では、記録紙が搬送方向に一定の搬送量で搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで形成されたラスターラインにおけるドットの間隔を埋めるようなラスターラインを形成して、印刷画像が形成される。
【0007】
インク滴の飛翔方向のずれの問題に対応するために、フラッシングを頻繁に行って罫線の位置ずれを目立たなくする方法がある。また、各フラッシング間においてメニスカスに対して付与する微振動を強くすることで罫線の位置ずれを抑制する対応が考えられる。
【0008】
図17(a)は微振動電圧と罫線の位置ずれ量との関係を示すグラフであり、(b)は微振動電圧と必要とするフラッシング量(液体吐出量)との関係を示すグラフである。同図(a)に示すように、微振動電圧を高める程、罫線の位置ずれ量を減少させることができる。一方、同図(b)に示すように、微振動電圧を高める程、必要とするフラッシング量が増加してしまう。この理由は次の通りである。微振動電圧を高めてメニスカスの微振動を強くすることによって、増粘インクが攪拌されて空気に触れるインクの面積が大きくなる。その結果、溶媒成分の蒸発量が増えてインクが却って増粘することになり、フラッシング量が増加してしまう。
【0009】
したがって、フラッシングを頻繁に行って罫線の位置ずれ量を減少させる方法の場合、フラッシングの回数分に応じてフラッシング量が増えることになり、それだけインクを無駄に消費してしまう。また、各フラッシング間においてメニスカスに対して付与する微振動を強くする方法の場合についても、微振動電圧を高める程、フラッシング量が増えることになりインクを無駄に消費してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御部と、前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定部と、を有し、前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、前記制御部は、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、前記記録モード判定部によって前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、前記記録モード判定部によって前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することを特徴とする液体噴射装置。
【0012】
上記した液体噴射装置によれば、第1の記録モードの場合は主走査方向の1回のパスで媒体に画像を記録し、第2の記録モードの場合は主走査方向の複数回のパスで媒体に画像を記録する。そして、フラッシング動作を実行するときのノズル開口毎の液体吐出量について、第1の記録モードの場合は、制御部が、端部ノズル開口群よりも中央部ノズル開口群の方が少量になるように制御する。一方、第2の記録モードの場合は、制御部が、端部ノズル開口群と中央部ノズル開口群とが均一になるように制御する。
【0013】
従来の液体噴射装置では、ノズル開口付近のインクの増粘によってインク滴の飛翔方向にずれが生じることがある。その結果、インク滴の媒体への着弾位置がずれてしまい、記録した例えば罫線が主走査方向にずれることがある。このずれを抑制するために、フラッシングを頻繁に行う対応がある。
ここで、第1の記録モードの場合、1回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては気になってしまう。一方、第2の記録モードの場合、複数回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては第1の記録モードの場合ほどには気にならない。
【0014】
したがって、フラッシングの回数を多くできない第1の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することにより、搬送方向に沿った罫線の繋ぎ目部分の位置ずれを重点的に抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。また、フラッシングの回数を多くできる第2の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御して、罫線全体の位置ずれを抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
このように、第1の記録モード及び第2の記録モードのそれぞれに応じた対応により、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0015】
[適用例2]前記制御部は、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出しない程度に、前記ノズル開口におけるメニスカスの微振動を更に制御し、前記記録モード判定部によって前記第1の記録モードと判定された場合、前記制御部は、前記端部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与する微振動よりも、弱い微振動を前記中央部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御することを特徴とする上記液体噴射装置。
【0016】
上記した液体噴射装置によれば、第1の記録モードの場合、制御部が、端部ノズル開口群よりも弱い微振動を中央部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御する。これにより、例えば、搬送方向に沿った罫線の繋ぎ目部分で顕著に現れる位置ずれの問題と、この位置ずれに対処するために各ノズル開口における微振動を強くするほど、ノズル列全体の液体吐出量が多量になってしまう問題とに対処することができる。つまり、罫線の繋ぎ目部分を印刷する端部ノズル開口群に対して強い微振動を付与することにより、罫線の繋ぎ目部分の位置ずれを更に抑制することができる。また、中央部ノズル開口群に対しては、端部ノズル開口群に対してよりも弱い微振動を付与することから、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量を少量にすることができ、この結果、ノズル列全体の液体吐出量が多量になってしまう問題に対処することができる。
【0017】
[適用例3]前記記録モード判定部は、主走査方向の往路と復路との双方向で前記媒体に記録する双方向記録モードと、主走査方向の往路と復路とのいずれかの単方向で前記媒体に記録する単方向記録モードと、を更に判定し、前記制御部は、前記記録モード判定部によって前記単方向記録モードと判定された場合に、前記双方向記録モードと判定された場合よりも、弱い微振動を前記ノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御すると共に、前記フラッシング動作を実行するときに、前記双方向記録モードと判定された場合よりも、前記ノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することを特徴とする上記液体噴射装置。
【0018】
上記した液体噴射装置によれば、制御部が、単方向記録モードの場合は双方向記録モードの場合よりも弱い微振動をノズル開口のメニスカスに対して付与するように制御する。そして、フラッシング動作を実行するときに、制御部が、単方向記録モードの場合は双方向記録モードの場合よりもノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御する。
【0019】
単方向記録モードの場合、往路と復路とのいずれかの単方向で媒体に記録することから、インク滴の着弾位置が全て単方向にずれてしまい、例えば罫線全体が単方向にずれることがある。一方、双方向記録モードの場合、往路と復路との双方向で媒体に記録することから、インク滴の着弾位置が往路と復路とのそれぞれで逆方向にずれてしまい、第1の記録モードでは例えば罫線の繋ぎ目部分がずれたり、第2の記録モードでは例えば罫線の幅が拡大してしまったりすることがある。したがって、単方向記録モードの場合の方が双方向記録モードの場合よりもインク滴の着弾位置のずれの影響が少ないといえる。
【0020】
このため、インク滴の着弾位置のずれの影響が少ない単方向記録モードの場合、双方向記録モードの場合よりも弱い微振動をメニスカスに対して付与して、フラッシング動作時におけるノズル開口毎の液体吐出量を少量にすることができる。このように、単方向記録モード及び双方向記録モードのそれぞれに応じた微振動をメニスカスに対して付与して、その微振動に応じた液体吐出量に制御することにより、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0021】
[適用例4]媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、を有する液体噴射装置の制御方法であって、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御工程と、前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定工程と、を有し、前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、前記制御工程では、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、前記記録モード判定工程において前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、前記記録モード判定工程において前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
【0022】
上記した液体噴射装置の制御方法によれば、第1の記録モードの場合は主走査方向の1回のパスで媒体に画像を記録し、第2の記録モードの場合は主走査方向の複数回のパスで媒体に画像を記録する。そして、フラッシング動作を実行するときのノズル開口毎の液体吐出量について、第1の記録モードの場合は、制御工程において、端部ノズル開口群よりも中央部ノズル開口群の方が少量になるように制御する。一方、第2の記録モードの場合は、制御工程において、端部ノズル開口群と中央部ノズル開口群とが均一になるように制御する。
【0023】
従来の液体噴射装置では、ノズル開口付近のインクの増粘によってインク滴の飛翔方向にずれが生じることがある。その結果、インク滴の媒体への着弾位置がずれてしまい、記録した例えば罫線が主走査方向にずれることがある。このずれを抑制するために、フラッシングを頻繁に行う対応がある。
ここで、第1の記録モードの場合、1回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては気になってしまう。一方、第2の記録モードの場合、複数回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては第1の記録モードの場合ほどには気にならない。
【0024】
したがって、フラッシングの回数を多くできない第1の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することにより、搬送方向に沿った罫線の繋ぎ目部分の位置ずれを重点的に抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。また、フラッシングの回数を多くできる第2の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御して、罫線全体の位置ずれを抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
このように、第1の記録モード及び第2の記録モードのそれぞれに応じた対応により、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0025】
[適用例5]媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、を有する液体噴射装置の制御プログラムであって、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御機能と、前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定機能と、を有し、前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、前記制御機能では、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、前記記録モード判定機能において前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、前記記録モード判定機能において前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することをコンピューターに実行させることを特徴とする液体噴射装置の制御プログラム。
【0026】
上記した液体噴射装置の制御プログラムによれば、第1の記録モードの場合は主走査方向の1回のパスで媒体に画像を記録し、第2の記録モードの場合は主走査方向の複数回のパスで媒体に画像を記録する。そして、フラッシング動作を実行するときのノズル開口毎の液体吐出量について、第1の記録モードの場合は、制御機能において、端部ノズル開口群よりも中央部ノズル開口群の方が少量になるように制御する。一方、第2の記録モードの場合は、制御機能において、端部ノズル開口群と中央部ノズル開口群とが均一になるように制御する。
【0027】
従来の液体噴射装置では、ノズル開口付近のインクの増粘によってインク滴の飛翔方向にずれが生じることがある。その結果、インク滴の媒体への着弾位置がずれてしまい、記録した例えば罫線が主走査方向にずれることがある。このずれを抑制するために、フラッシングを頻繁に行う対応がある。
ここで、第1の記録モードの場合、1回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては気になってしまう。一方、第2の記録モードの場合、複数回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては第1の記録モードの場合ほどには気にならない。
【0028】
したがって、フラッシングの回数を多くできない第1の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することにより、搬送方向に沿った罫線の繋ぎ目部分の位置ずれを重点的に抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。また、フラッシングの回数を多くできる第2の記録モードの場合、端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御して、罫線全体の位置ずれを抑制すると共に、インクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
このように、第1の記録モード及び第2の記録モードのそれぞれに応じた対応により、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0029】
[適用例6]媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行うと共に、前記ノズル開口から液滴を吐出しない程度に、前記ノズル開口におけるメニスカスの微振動を制御する制御部と、前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定部と、を有し、前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、前記制御部は、前記記録モード判定部によって前記第2の記録モードと判定された場合に、前記第1の記録モードと判定された場合よりも、弱い微振動を前記ノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御すると共に、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、前記第1の記録モードと判定された場合よりも、前記ノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することを特徴とする液体噴射装置。
【0030】
上記した液体噴射装置によれば、第1の記録モードの場合は主走査方向の1回のパスで媒体に画像を記録し、第2の記録モードの場合は主走査方向の複数回のパスで媒体に画像を記録する。そして、第2の記録モードの場合、制御部が、第1の記録モードの場合よりも弱い微振動をノズル開口のメニスカスに対して付与するように制御する。さらに、フラッシング動作を実行するときに、制御部が、第2の記録モードの場合は第1の記録モードの場合よりもノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御する。
【0031】
従来の液体噴射装置では、ノズル開口付近のインクの増粘によってインク滴の飛翔方向にずれが生じることがある。その結果、インク滴の媒体への着弾位置がずれてしまい、記録した例えば罫線が主走査方向にずれることがある。このずれを抑制するために、フラッシングを頻繁に行ったり、メニスカスに対して微振動を付与したりする対応がある。
ここで、第1の記録モードの場合、1回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては気になってしまう。一方、第2の記録モードの場合、複数回のパスで媒体に画像を記録することから、フラッシングの回数を多くした場合、フラッシング時の印刷中断による遅れがユーザーにとっては第1の記録モードの場合ほどには気にならない。
【0032】
したがって、フラッシングの回数を多くすることができる第2の記録モードの場合、第1の記録モードの場合よりも弱い微振動をメニスカスに対して付与して、フラッシング動作時におけるノズル開口毎の液体吐出量を少量にすることができる。このように、第1の記録モード及び第2の記録モードのそれぞれに応じた微振動をメニスカスに対して付与して、その微振動に応じた液体吐出量に制御することにより、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0033】
[適用例7]前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、前記制御部は、前記記録モード判定部によって前記第1の記録モードと判定された場合に、前記端部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与する微振動よりも、弱い微振動を前記中央部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御すると共に、前記フラッシング動作を実行するときに、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することを特徴とする上記液体噴射装置。
【0034】
上記した液体噴射装置によれば、第1の記録モードの場合、制御部が、端部ノズル開口群よりも弱い微振動を中央部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御する。そして、フラッシング動作を実行するときのノズル開口毎の液体吐出量について、制御部が、端部ノズル開口群よりも中央部ノズル開口群の方が少量になるように制御する。これにより、例えば、ノズル開口から液滴を吐出して搬送方向に沿った罫線を印刷する場合に、罫線の繋ぎ目部分で顕著に現れる位置ずれの問題と、この位置ずれに対処するために各ノズル開口における微振動を強くするほど、ノズル列全体の液体吐出量が多量になってしまう問題とに対処することができる。つまり、罫線の繋ぎ目部分を印刷する端部ノズル開口群に対して強い微振動を付与することにより、罫線の繋ぎ目部分の位置ずれを更に抑制することができる。また、中央部ノズル開口群に対しては、端部ノズル開口群に対してよりも弱い微振動を付与することから、中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量を少量にすることができ、この結果、ノズル列全体の液体吐出量が多量になってしまう問題に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係るプリンターの構成を示す斜視図。
【図2】記録ヘッドの構成を示す断面図。
【図3】記録ヘッドに設けられた各ノズル開口の説明図。
【図4】プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図5】(a)記録紙に対してインク滴を吐出して画像等を記録する際に用いられる駆動信号の構成例を示す図、(b)微振動パルスを拡大した図。
【図6】プリンターの印刷動作における処理を示すフローチャート。
【図7】バンド印刷且つ双方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図。
【図8】従来の対応例であり、バンド印刷且つ双方向印刷において罫線の位置ずれに対応する例を示す図。
【図9】本実施形態の対応例であり、バンド印刷且つ双方向印刷において罫線の位置ずれに対応する例を示す図。
【図10】バンド印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図。
【図11】バンド印刷且つ単方向印刷において罫線の位置ずれに対応する例を示す図。
【図12】(a)〜(d)罫線を印刷する場合に、各ノズル開口において必要となるフラッシング量の例を示すグラフ。
【図13】インターレース印刷且つ双方向印刷における罫線幅の拡大の例を示す図。
【図14】インターレース印刷且つ双方向印刷において罫線幅の拡大に対応する例を示す図。
【図15】インターレース印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図。
【図16】インターレース印刷且つ単方向印刷において罫線の位置ずれに対応する例を示す図。
【図17】(a)微振動電圧と罫線の位置ずれ量との関係を示すグラフ、(b)微振動電圧と必要とするフラッシング量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本実施形態に係る液体噴射装置について、図面を参照して説明する。
【0037】
<プリンターの構成>
最初に、本実施形態に係る液体噴射装置の例として、プリンターの構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンター1の構成を示す斜視図である。同図に示すプリンター1は、インク滴(液滴)を噴射して記録紙等の媒体上にインクドットを形成することによって画像等を印刷するインクジェット式カラープリンターである。プリンター1は、記録ヘッド2(液体噴射ヘッド)が取り付けられると共にカートリッジ保持部3を有するキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設されたプラテン5と、キャリッジ4を記録紙8の搬送方向と交差する方向となる紙幅方向(主走査方向)に往復移動させるキャリッジ移動機構6(移動機構)と、キャリッジ4の移動に伴ってエンコーダーパルスを出力するリニアエンコーダー7と、記録紙8を搬送方向に搬送する紙送り機構9(搬送機構)(以上、図4参照)と、記録紙8を紙送り機構9側に供給する給紙機構17とを備えている。
【0038】
カートリッジ保持部3にはインクカートリッジ10が着脱可能に保持される。このインクカートリッジ10は、インクを貯留した箱状部材であり、液体貯留部材の一種である。本実施形態では、このインクカートリッジ10を、ブラックインクを貯留したブラックカートリッジと、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクのカラーインクを貯留したカラーカートリッジとから構成している。また、各インクの色材としては、例えば、耐候性に優れる顔料が用いられる。
【0039】
キャリッジ移動機構6は、プリンター1における主走査方向に架設されたガイド軸11と、主走査方向の一側に配設されたキャリッジ移動モーター12と、このキャリッジ移動モーター12の回転軸に接続され、キャリッジ移動モーター12によって回転駆動される駆動プーリー13と、駆動プーリー13とは反対側の主走査方向他側に配設された遊転プーリー14と、駆動プーリー13と遊転プーリー14との間に掛け渡され、キャリッジ4に接続されたタイミングベルト15とから構成される。キャリッジ移動モーター12は、キャリッジ移動機構6における駆動源として機能し、例えば、パルスモーターやDCモーターが用いられる。このキャリッジ移動モーター12は、制御部16(図4参照)により、その回転速度や回転方向等が制御される。そして、キャリッジ移動モーター12が回転すると、駆動プーリー13及びタイミングベルト15が回転し、キャリッジ4がガイド軸11に沿って記録紙8の紙幅方向に移動する。つまり、キャリッジ4は、制御部16による制御の下で主走査方向に往復移動される。
【0040】
リニアエンコーダー7は、記録ヘッド2の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力するように構成されている。そして、制御部16は、受信したエンコーダーパルスに基づいて記録ヘッド2の走査位置を認識できる。即ち、受信したエンコーダーパルスをカウントすることで、記録ヘッド2の位置を認識することができる。
【0041】
プラテン5は、記録紙8を案内するための板状部材である。このプラテン5の上面部において、周縁部分を除いた部分が周縁部分よりも一段低い窪部として形成されている。そして、この窪部内にはスポンジ等の吸液部材23が配設されている。また、窪部底面からは、上方に向かって支持突起24(ダイヤモンドリブとも呼ばれる)が隆設されている。この支持突起24は、記録紙8背面に当接してこの記録紙8を支持するものであり、先端部分が吸液部材23の表面よりも上方に突出している。プラテン5上において、記録紙8のサイズに応じた位置、具体的には、記録紙8の紙幅方向の端部よりもやや外側に外れた位置には、後述するフラッシング動作時の吐出インク滴を受けるフラッシングポジションとしてのインク受け部5´が複数設けられている。
【0042】
給紙機構17は、枚葉の記録紙8を複数枚収容し、下部に設けられた給紙ローラー(図示せず)により1枚ずつ紙送り機構9側に向けて繰り出す。この給紙機構17は、記録紙8の紙幅方向の一端部を突き当てる固定支持部18と、例えば、A3,B4,A4,B5等の記録紙8のサイズ(幅員)に応じて左右幅方向に移動可能であって記録紙8の紙幅方向の他端部に当接して記録紙8の位置を規定する位置決め部材19とを左右に備えている。
【0043】
紙送り機構9は、紙送り駆動源としての紙送りモーター25と、紙送りモーター25によって回転駆動される紙送りローラー26とから構成される。紙送りローラー26は、上下一対のローラーで構成されている。即ち、下側に位置する駆動ローラーと上側に位置する従動ローラー(ピンチローラー/図示せず)によって構成されている。駆動ローラーは上端部分をプラテン5の上面から露出させた状態でプラテン5内に配設されており、この露出した部分の上に、従動ローラーが駆動ローラー側に付勢された状態で配置される。そして、従動ローラーによって記録紙8を駆動ローラーに当接させ、この当接状態で駆動ローラーを回転することで記録紙8を紙送り方向に移動させる。
【0044】
また、記録ヘッド2の移動範囲内であってプラテン5よりも外側には、記録ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定してある。このホームポジションには、キャッピング機構27が設けられている。このキャッピング機構27は、キャップ部材によって記録ヘッド2のノズル面を封止し、ノズル開口28(図2参照)からのインク溶媒の蒸発を防止するものである。さらに、このキャッピング機構27は、フラッシング動作時にも用いられる。具体的には、フラッシング動作時において、キャップ部材がノズル開口28から吐出されたインク滴を受ける容器として用いられる。
【0045】
記録ヘッド2は、液体状のインクをインク滴の状態にしてノズル開口28から記録紙8に向けて吐出させる。この記録ヘッド2としては種々の態様が提案されているが、圧力発生素子を作動することで圧力室内のインクに圧力変動を生じさせ、この圧力変動を利用してノズル開口28からインク滴を吐出させる方式のものが一般的である。
【0046】
<記録ヘッドの構成>
次に、記録ヘッド2の構成について説明する。
図2は、記録ヘッド2の構成を示す断面図である。同図に示すように、記録ヘッド2は、ケース31と、このケース31内に収納される振動子ユニット32と、ケース31の先端面に接合される流路ユニット33等を備えている。ケース31は、例えば、エポキシ系樹脂を成型することで作成され、その内部には振動子ユニット32を収納するための収納空部34を有する。振動子ユニット32は、櫛歯状の圧電振動子35(圧力発生素子)を固定板36の表面に片持ち梁の状態で接合したものである。この圧電振動子35は、縦振動モードの圧電振動子であり、振動子電位に応じて自由端部が素子長手方向に伸縮する。即ち、充電によって素子長手方向に収縮し、放電によって素子長手方向に伸長する。
【0047】
流路ユニット33は、流路形成基板37の一方の面にノズルプレート38を、他方の面に弾性板39をそれぞれ接合した構成である。そして、この流路ユニット33には、リザーバ40と、インク供給口41と、圧力室42と、ノズル連通口43と、ノズル開口28とを設けている。そして、これらの各部により、インク供給口41から圧力室42及びノズル連通口43を経てノズル開口28に至る一連のインク流路が、ノズル開口28に対応して複数形成されている。また、ノズル開口28は複数列状に開設されており、1列に属する複数のノズル開口28がノズル列を構成する。
【0048】
図3は、記録ヘッド2に設けられた各ノズル開口28の説明図である。同図に示すように、各ノズル列K,C,M,Yでは、各色のインクを噴出するための噴出口であるノズル開口28を搬送方向に所定間隔にて並べることによって構成されている。本実施形態では、各ノズル列K,C,M,Yに180個のノズル開口28(#1〜#180)を備えている。そして、各ノズル列K,C,M,Yにおいて、搬送方向の両端部側に位置する40個のノズル開口28(#1〜#20,#161〜#180)を端部ノズル開口群とし、端部ノズル開口群以外の140個のノズル開口28(#21〜#160)を中央部ノズル開口群とする。
【0049】
図2に戻って、弾性板39にはダイヤフラム部44が設けられている。このダイヤフラム部44は圧力室42の一部を区画しており、圧電振動子35の先端面が接合される島部(厚肉部)と、この島部の周囲に設けられ、弾性を有する薄肉部とを有している。そして、圧電振動子35が素子長手方向に伸縮すると島部が変位する。この島部の変位によって圧力室容積が変動する。即ち、圧電振動子35が伸長すると圧力室容積が減少し、圧電振動子35が収縮すると圧力室容積が増加する。このような圧力室42の容積変化に伴って圧力室42内のインクに圧力変動が生じる。このため、この圧力変動を制御することでノズル開口28からインク滴を吐出させることができる。例えば、圧電振動子35を素子長手方向に収縮させた後、急激に伸長させることでインク滴を吐出させることができる。また、圧力室42内のインクに加える圧力変動パターンを変えることで、ノズル開口28からインク滴を吐出させない程度に、ノズル開口28におけるメニスカスを微振動させることができる。なお、この微振動の詳細については後述する。
【0050】
<プリンターの電気的構成>
次に、プリンター1の電気的構成について説明する。
図4は、プリンター1の電気的構成を示すブロック図である。同図に示すように、プリンター1は、プリンターコントローラー51と、プリントエンジン52とを備えている。プリンターコントローラー51は、ホストコンピューター等(図示せず)からの印刷データ等を受信する外部I/F(インターフェイス)53と、各種データの記憶等を行うRAM54と、各部の制御に用いられるプログラム等を記憶したROM55と、各部の電気的制御を行う制御部16と、クロック信号を発生する発振回路56と、周期一定のタイミングパルス(PTS:Print Timing Signal)を発生可能なタイマー回路57と、記録ヘッド2へ供給するための駆動信号を発生する駆動信号発生回路58と、印字データ及び駆動信号等をプリントエンジン52に送信するための内部I/F(インターフェイス)59と、を備えている。
【0051】
制御部16は、記録ヘッド2を主走査方向に往復移動させつつ、駆動信号を圧電振動子35へ供給して、記録ヘッド2による印刷動作(吐出動作)及びノズル開口28におけるメニスカスの微振動を制御する。このとき、制御部16は、ホストコンピューター等から送信された印刷データをドットパターンに対応した印字データに展開して記録ヘッド2に送信する。そして、記録ヘッド2では、受信した印字データに基づき、駆動信号中の駆動パルスが選択的に圧電振動子35に供給されて、インク滴の吐出やノズル開口28におけるメニスカスの微振動が行われる。また、制御部16は、プリンター1の電源投入後における印刷動作の開始前や、印刷動作中における一定の時間間隔毎に、記録ヘッド2をフラッシングポジション(インク受け部5´又はキャッピング機構27の何れか近い位置)まで移動させて、ノズル開口28からインク滴を強制的に空吐出させるフラッシング動作を行う。
【0052】
さらに、制御部16は、印刷動作を行う際の記録モードを判定するための記録モード判定部16aを含んでいる。制御部16は、記録モード判定部16aにおける記録モードの判定結果に基づいて、記録ヘッド2を主走査方向に往復移動させながらノズル開口28からインク滴を吐出して記録紙8に対して画像等を印刷する。
【0053】
記録モード判定部16aは、ホストコンピューター等から送信された印刷データに含まれるコマンドに基づいて記録モードを判定する。記録モードには、バンド印刷(第1の記録モード)とインターレース印刷(第2の記録モード)とが含まれる。また、バンド印刷及びインターレース印刷のそれぞれには、記録ヘッド2を主走査方向に往復移動中に往路と復路との双方向で記録紙8に対して印刷する双方向印刷(双方向記録モード)、及び往路と復路とのいずれかの単方向で記録紙8に対して印刷する単方向印刷(単方向記録モード)の両方の記録モードが含まれる。
【0054】
ここで、バンド印刷では、1回のパスで全てのノズル開口28(#1〜#180)から同時に記録紙8に対してインクが吐出されてラスターラインを形成し、搬送方向に沿って画像等を印刷する。一方、インターレース印刷では、最初のパスにおいて、間隔をあけたノズル開口28(#1〜#180の一部)から記録紙8に対してインク滴が吐出されてドット間隔のあいたラスターラインを形成し、次のパス以降において、間隔をあけたノズル開口28から記録紙8に対してインク滴が吐出されてドット間隔を埋めるようにラスターラインを形成し、搬送方向に沿って画像等を印刷する。
【0055】
駆動信号発生回路58は、制御部16によって定められた波形形状の駆動信号を発生する。本実施形態におけるプリンター1は、液量の異なるインク滴を吐出することで大きさの異なるドットを記録紙8に形成する多階調記録が可能であり、大ドット、中ドット、小ドット、及び非吐出の4階調での印刷動作が可能に構成されている。
図5(a)は記録紙8に対してインク滴を吐出して画像等を記録する際に用いられる駆動信号の構成例を示す図であり、(b)は、(a)に示す微振動パルスVP1、微振動パルスVP2及び微振動パルスVP3を拡大した図である。同図(a)に示すように、駆動信号発生回路58は、微振動パルスVP1と、微振動パルスVP2と、微振動パルスVP3と、大ドット駆動パルスDP1と、小ドット駆動パルスDP2と、中ドット駆動パルスDP3との組を配置して構成される駆動信号COMを発生する。この駆動信号COMは、記録紙8に対してインク滴を吐出して画像等を印刷する際に用いられる。そして、記録ヘッド2が記録紙8上における印刷領域内で定速移動しているときに、駆動信号COMの駆動パルスが選択的に圧電振動子35に供給される。
【0056】
ここで、微振動パルスVP1,VP2,VP3は、非吐出のノズル開口28のメニスカスを微振動させるための駆動パルスである。具体的には、微振動パルスVP1は、全てのノズル開口28の各圧電振動子35に供給されて、各ノズル開口28(#1〜#180)のメニスカスを微振動させることができる。さらに、微振動パルスVP1は、各ノズル列K,C,M,Yにおける中央部ノズル開口群の各圧電振動子35に供給されて、中央部ノズル開口群となる各ノズル開口28(#21〜#160)のメニスカスを微振動させることもできる。一方、微振動パルスVP2は、端部ノズル開口群の各圧電振動子35に供給されて、端部ノズル開口群となる各ノズル開口28(#1〜#20,#161〜#180)のメニスカスを微振動させることができる。一方、微振動パルスVP3は、全てのノズル開口28の各圧電振動子35に供給されて、各ノズル開口28(#1〜#180)のメニスカスを微振動させることができる。
このように、各ノズル開口28の各圧電振動子35には、微振動パルスVP1,VP2,VP3のいずれかが供給されることになるが、前述した記録モード判定部16aにおける判定結果に基づいて、供給する微振動パルスが選択される。
【0057】
図5(b)に示すように、微振動パルスVP1は、基準電位VBから第1微振動電位VH1まで電位を上昇させる充電要素P11と、第1微振動電位VH1を短時間維持するホールド要素P12と、第1微振動電位VH1から基準電位VBまで電位を復帰させる放電要素P13とにより構成されている。一方、微振動パルスVP2は、基準電位VBから第2微振動電位VH2まで電位を上昇させる充電要素P21と、第2微振動電位VH2を短時間維持するホールド要素P22と、第2微振動電位VH2から基準電位VBまで電位を復帰させる放電要素P23とにより構成されている。一方、微振動パルスVP3は、基準電位VBから第3微振動電位VH3まで電位を上昇させる充電要素P31と、第3微振動電位VH3を短時間維持するホールド要素P32と、第3微振動電位VH3から基準電位VBまで電位を復帰させる放電要素P33とにより構成されている。
【0058】
これらの微振動パルスVP1,VP2,VP3が圧電振動子35に供給されると、それぞれの充電要素P11,P21,P31によって圧電振動子35が収縮して、インク滴が吐出されない程度に圧力室42が緩やかに膨張する。そして、それぞれのホールド要素P12,P22,P32によって圧力室42の膨張状態が僅かの間維持された後、それぞれの放電要素P13,P23,P33が供給されることにより、圧電振動子35が伸長して圧力室42が基準容積に復帰する。この圧力室42の一連の容積変動に伴って圧力室42内には圧力変動が生じ、この圧力変動によってノズル開口28のメニスカスに対して微振動を付与することができる。
【0059】
ここで、微振動パルスVP1の駆動電圧、即ち基準電位VBから第1微振動電位VH1までの電位差は、微振動パルスVP3の駆動電圧、即ち基準電位VBから第3微振動電位VH3までの電位差よりも高く設定されている。さらに、微振動パルスVP1の充電要素P11の傾きは、微振動パルスVP3の充電要素P31の傾きよりも急峻な傾きとなっている。このため、微振動パルスVP1の場合、ノズル開口28のメニスカスに対して微振動パルスVP3の場合よりも強い微振動を付与することができる。
また、微振動パルスVP2の駆動電圧、即ち基準電位VBから第2微振動電位VH2までの電位差は、微振動パルスVP1の駆動電圧、即ち基準電位VBから第1微振動電位VH1までの電位差よりも高く設定されている。さらに、微振動パルスVP2の充電要素P21の傾きは、微振動パルスVP1の充電要素P11の傾きよりも急峻な傾きとなっている。このため、微振動パルスVP2の場合、ノズル開口28のメニスカスに対して微振動パルスVP1の場合よりも強い微振動を付与することができる。
したがって、ノズル開口28のメニスカスに対して付与する微振動は、微振動パルスVP3、微振動パルスVP1、微振動パルスVP2の順で強くすることができる。(以降、微振動パルスVP2による微振動を強い微振動、微振動パルスVP1による微振動を弱い微振動、微振動パルスVP3による微振動を更に弱い微振動として表現する。)
【0060】
さらに、駆動信号発生回路58は、フラッシング動作に用いるフラッシング用駆動信号を発生する。このフラッシング用駆動信号は、複数種類のフラッシングパルス(図示せず)を含んで構成されており、フラッシング動作時において必要とするフラッシング量に応じて適宜選択される。このフラッシング量は、ノズル開口28のメニスカスに対して付与する微振動の強弱によって異なり、微振動を強くするほどフラッシング量が増加し、逆に、微振動を弱くするほどフラッシング量が減少する。
したがって、ノズル開口28毎のフラッシング量は、微振動パルスVP2による微振動を付与するノズル開口28、微振動パルスVP1による微振動を付与するノズル開口28、微振動パルスVP3による微振動を付与するノズル開口28の順で少量にすることができる。
【0061】
<プリンターにおける処理>
次に、プリンター1の印刷動作における処理について説明する。
図6は、プリンター1の印刷動作における処理を示すフローチャートである。
【0062】
先ず、制御部16は、ホストコンピューター等から外部I/F53を介して印刷データを受信する(ステップS10)。この印刷データには、記録紙サイズ、記録紙種類、解像度、記録モード、カラー調整等のコマンドが含まれる。
【0063】
次に、制御部16は、記録モード判定部16aにより、ステップS10において受信した印刷データに含まれるコマンドに基づいて、バンド印刷で印刷を行うのか、若しくはインターレース印刷で印刷を行うのかを示す記録モードを判定する(ステップS20)。
【0064】
バンド印刷の場合(ステップS20:バンド印刷)は、ステップS30へ進み、制御部16は、記録モード判定部16aにより、ステップS10において受信した印刷データに含まれるコマンドに基づいて、双方向印刷を行うのか、若しくは単方向印刷を行うのかを示す記録モードを判定する。
他方、インターレース印刷の場合(ステップS20:インターレース印刷)は、ステップS80へ進み、制御部16は、記録モード判定部16aにより、ステップS10において受信した印刷データに含まれるコマンドに基づいて、双方向印刷を行うのか、若しくは単方向印刷を行うのかを示す記録モードを判定する。
【0065】
バンド印刷且つ双方向印刷を行う場合(ステップS30:双方向印刷)は、制御部16は、記録ヘッド2に設けられた各ノズル列K,C,M,Yにおける中央部ノズル開口群の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1が供給されるように設定する。また、端部ノズル開口群の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP2が供給されるように設定する(ステップS40)。
【0066】
そして、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける中央部ノズル開口群の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1によるメニスカスの微振動を付与した場合に必要となるフラッシング量のフラッシングパルスが供給されるように設定する。また、端部ノズル開口群の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP2によるメニスカスの微振動を付与した場合に必要となるフラッシング量のフラッシングパルスが供給されるように設定する(ステップS50)。そして、ステップS130へ進む。
【0067】
他方、バンド印刷且つ単方向印刷を行う場合(ステップS30:単方向印刷)は、制御部16は、記録ヘッド2に設けられた各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1が供給されるように設定する(ステップS60)。
【0068】
そして、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1によるメニスカスの微振動を付与した場合に必要となるフラッシング量のフラッシングパルスが供給されるように設定する(ステップS70)。そして、ステップS130へ進む。
【0069】
インターレース印刷且つ双方向印刷を行う場合(ステップS80:双方向印刷)は、制御部16は、記録ヘッド2に設けられた各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1が供給されるように設定する(ステップS90)。
【0070】
そして、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP1によるメニスカスの微振動を付与した場合に必要となるフラッシング量のフラッシングパルスが供給されるように設定する(ステップS100)。そして、ステップS130へ進む。
【0071】
他方、インターレース印刷且つ単方向印刷を行う場合(ステップS80:単方向印刷)は、制御部16は、記録ヘッド2に設けられた各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP3が供給されるように設定する(ステップS110)。
【0072】
そして、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各圧電振動子35に対して、微振動パルスVP3によるメニスカスの微振動を付与した場合に必要となるフラッシング量のフラッシングパルスが供給されるように設定する(ステップS120)。そして、ステップS130へ進む。
【0073】
ステップS130では、制御部16は、記録ヘッド2を主走査方向に往復動させながら、各ノズル列K,C,M,Yの各圧電振動子35へ駆動信号を供給して印刷動作を実行させる。
【0074】
このとき、バンド印刷且つ双方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける中央部ノズル開口の各メニスカスに対して、微振動パルスVP1による弱い微振動を付与する。さらに、端部ノズル開口の各メニスカスに対して、微振動パルスVP2による強い微振動を付与する。一方、バンド印刷且つ単方向印刷の場合、及びインターレース印刷且つ双方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各メニスカスに対して、微振動パルスVP1による弱い微振動を付与する。一方、インターレース印刷且つ単方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28の各メニスカスに対して、微振動パルスVP3による更に弱い微振動を付与する。
【0075】
次に、制御部16は、フラッシング動作を実行する条件が成立したか否かを判定する(ステップS140)。ここでは、例えば、制御部16における計時時間が所定の時間間隔に到達したときに、フラッシング動作を実行する条件が成立したと判定する。
なお、本実施形態では、インターレース印刷におけるフラッシング動作の時間間隔を、バンド印刷における時間間隔よりも短く設定する。これは、フラッシング動作時の印刷中断による時間の遅れについて、ユーザーにとっては、1回のパスで画像等を印刷するバンド印刷に比べて複数回のパスで画像等を印刷するインターレース印刷の方が気にならないことによる。
【0076】
フラッシング動作を実行する条件が成立した場合(ステップS140:Yes)は、制御部16は、印刷動作を一旦中断してフラッシング動作を実行する(ステップS150)。そして、フラッシング動作の終了後、ステップS130に戻って印刷動作を繰り返す。
ここで、フラッシング動作では、制御部16は、記録ヘッド2をキャッピング機構27等のフラッシングポジションまで移動させて、ノズル開口28からインク滴を強制的に空吐出させ、増粘したインクを記録ヘッド2外に排出させる。
【0077】
このとき、バンド印刷且つ双方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける中央部ノズル開口群の各ノズル開口28から、微振動パルスVP1の場合に必要となるフラッシング量のインクを排出させる。さらに、端部ノズル開口群の各ノズル開口28から、微振動パルスVP2の場合に必要となるフラッシング量のインクを排出させる。
一方、バンド印刷且つ単方向印刷の場合、及びインターレース印刷且つ双方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28から、微振動パルスVP1の場合に必要となるフラッシング量のインクを排出させる。一方、インターレース印刷且つ単方向印刷の場合、制御部16は、各ノズル列K,C,M,Yにおける全てのノズル開口28から、微振動パルスVP3の場合に必要となるフラッシング量のインクを排出させる。即ち、バンド印刷且つ単方向印刷、及びインターレース印刷の場合は、中央部ノズル開口群のノズル開口28毎のインク吐出量と、端部ノズル開口群のノズル開口28毎のインク吐出量とが均一になるように制御する。
【0078】
他方、フラッシング動作を実行する条件が成立していない場合(ステップS140:No)は、ステップS130に戻って印刷動作を繰り返す。
【0079】
<罫線の位置ずれへの対応例>
次に、罫線の位置ずれに対応する例について説明する。
図7は、バンド印刷且つ双方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図である。同図では、バンド印刷且つ双方向印刷によって記録紙8上に罫線を印刷した結果、罫線に位置ずれが発生した例を示している。ここでは、1パス(往路)において罫線L1が印刷され、続いて記録紙8がノズル開口28(#1〜#180)のノズル列の長さ分だけ搬送された後、2パス(復路)において罫線L2が印刷されている。
【0080】
ここで、主走査方向における罫線L1,L2の正規の印刷位置をP0とした場合、罫線L1は、P0を基点にして往路方向にGaだけ位置ずれしている。一方、罫線L2は、P0を基点にして復路方向にGaだけ位置ずれしている。その結果、罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分の位置ずれが2Gaとなって目立つようになっている。これは、各ノズル開口28付近のインクが増粘することによってインク滴の吐出速度が遅くなり、記録紙8上へのインク滴の着弾位置が記録ヘッド2の移動方向にずれることによる。
【0081】
図8は、従来の対応例であり、バンド印刷且つ双方向印刷において、全てのノズル開口28に強い微振動を付与して、図7における罫線の位置ずれに対応する例を示す図である。同図では、全てのノズル開口28(#1〜#180)に対して微振動パルスVP2による強い微振動を付与して、バンド印刷且つ双方向印刷によって記録紙8上に罫線L1,L2を印刷している。
ここでは、この強い微振動の付与により、各ノズル開口28付近のインクの増粘が正常に保たれる。そして、図7において位置ずれしていた罫線L1,L2が、図8に示すように、正規の印刷位置P0に印刷されるようになっている。その結果、罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分のずれが完全に解消されている。
【0082】
図12(a)は、図8の条件で罫線L1,L2を印刷する場合に、各ノズル開口28において必要となるフラッシング量の例を示すグラフである。ここで、フラッシング量の値は、ノズル開口28から吐出するインク量を演算する際に用いる係数を示しており、値が大きくなるほどインク量が増加する。図12(a)に示すように、各ノズル開口28(#1〜#180)では、それぞれフラッシング量の値「10」が必要である。したがって、ノズル列(ノズル開口28(#1〜#180))でのフラッシング量の合計値は「1,800」(180×10)となる。
【0083】
図9は、本実施形態の対応例であり、バンド印刷且つ双方向印刷において、中央部ノズル開口群に弱い微振動、端部ノズル開口群に強い微振動を付与して、図7における罫線の位置ずれに対応する例を示す図である。同図では、中央部ノズル開口群(ノズル開口28(#21〜#160))に対して微振動パルスVP1による弱い微振動を付与し、端部ノズル開口群(ノズル開口28(#1〜#20,#161〜#180))に対して微振動パルスVP2による強い微振動を付与して、バンド印刷且つ双方向印刷によって記録紙8上に罫線L1,L2を印刷している。
【0084】
ここでは、中央部ノズル開口群への弱い微振動の付与により、中央部ノズル開口群付近のインクの増粘が少し抑制される。そして、図7において位置ずれしていた罫線L1,L2が、図9に示すように、中央部ノズル開口群の印刷部分である罫線L12,L22については、罫線L12がP0を基点にして往路方向にGbだけ位置ずれし、罫線L22がP0を基点にして復路方向にGbだけ位置ずれしている。この位置ずれGbは、図7における位置ずれGaよりも小さい位置ずれとなっている。
また、端部ノズル開口群への強い微振動の付与により、端部ノズル開口群付近のインクの増粘が正常に保たれる。そして、図7において位置ずれしていた罫線L1,L2が、図9に示すように、端部ノズル開口群の印刷部分である罫線L11,L13,L21,L23については、正規の印刷位置P0に印刷されるようになっている。これらの結果、罫線L11,L13と罫線L12との間、及び罫線L21,L23と罫線L22との間では少し位置ずれが残るものの罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分の位置ずれについては解消されている。
【0085】
図12(b)は、図9の条件で罫線L1,L2を印刷する場合に、各ノズル開口28において必要となるフラッシング量の例を示すグラフである。同図に示すように、中央部ノズル開口群(ノズル開口28(#21〜#160))では、それぞれフラッシング量の値「5」が必要である。また、端部ノズル開口群(ノズル開口28(#1〜#20,#161〜#180))では、それぞれフラッシング量の値「10」が必要である。したがって、ノズル列(ノズル開口28(#1〜#180))でのフラッシング量の合計値は「1,100」(140×5+40×10)となる。
【0086】
図10は、バンド印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図である。同図では、バンド印刷且つ単方向印刷によって記録紙8上に罫線を印刷した結果、罫線に位置ずれが発生した例を示している。ここで、主走査方向における罫線L1,L2の正規の印刷位置をP0とした場合、罫線L1,L2は共にP0を基点にして往路方向にGaだけ位置ずれしている。その結果、罫線L1,L2全体の往路方向の位置ずれがあるが、罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分の位置ずれは発生していない。
【0087】
図11は、バンド印刷且つ単方向印刷において、全てのノズル開口28に弱い微振動を付与して、図10における罫線の位置ずれに対応する例を示す図である。同図では、全てのノズル開口28(#1〜#180)に対して微振動パルスVP1による弱い微振動を付与して、バンド印刷且つ単方向印刷によって記録紙8上に罫線L1,L2を印刷している。
ここでは、全てのノズル開口28への弱い微振動の付与により、各ノズル開口28付近のインクの増粘が少し抑制される。そして、図10において共に往路方向に位置ずれしていた罫線L1,L2全体が、図11に示すように、P0を基点にして往路方向にGbだけ位置ずれしている。この位置ずれGbは、図10における位置ずれGaよりも小さい位置ずれとなっている。
【0088】
図12(c)は、図11の条件で罫線L1,L2を印刷する場合に、各ノズル開口28において必要となるフラッシング量の例を示すグラフである。同図に示すように、各ノズル開口28(#1〜#180)では、それぞれフラッシング量の値「5」が必要である。したがって、ノズル列(ノズル開口28(#1〜#180))でのフラッシング量の合計値は「900」(180×5)となる。
【0089】
図13は、インターレース印刷且つ双方向印刷における罫線幅の拡大の例を示す図である。同図では、インターレース印刷且つ双方向印刷によって記録紙8上に罫線を印刷した結果、罫線の幅が拡大した例を示している。ここでは、ノズル開口28の一部からのインク滴の吐出を往路のパス(奇数番目)と復路のパス(偶数番目)とで繰り返すことによって罫線L3が印刷されている。
【0090】
ここで、主走査方向における罫線L3の正規の印刷位置をP0とし、罫線L3の走査方向の正規の幅をP1とした場合、罫線L3の印刷位置は正しいが、罫線L3の幅がP1よりも拡大している。これは、各ノズル開口28付近のインクが増粘することによってインク滴の吐出速度が遅くなり、記録紙8上へのインク滴の着弾位置が、往路では往路の移動方向にずれて、逆に復路では復路の移動方向にずれることによる。また、着弾位置したインク滴のドット間隔が正規のドット間隔より広くなることにより、記録紙8に印刷された罫線の画像が、正常に印刷された罫線の画像よりもやや不鮮明になっている。
【0091】
図14は、インターレース印刷且つ双方向印刷において、全てのノズル開口28に弱い微振動を付与して、図13における罫線幅の拡大に対応する例を示す図である。同図では、全てのノズル開口28(#1〜#180)に対して微振動パルスVP1による弱い微振動を付与して、インターレース印刷且つ双方向印刷によって記録紙8上に罫線L3を印刷している。この弱い微振動の付与により、各ノズル開口28付近のインクの増粘が正常に保たれる。その結果、図13において拡大していた罫線L3の幅と不鮮明な罫線L3の画像とが、図14に示すように、正規の幅のP1となり、鮮明な画像となっている。
【0092】
図14の条件で罫線L3を印刷する場合に、各ノズル開口28において必要となるフラッシング量の例については、図12(c)に示すフラッシング量の例を示すグラフがそのまま適用できる。したがって、各ノズル開口28(#1〜#180)では、それぞれフラッシング量の値「5」が必要であり、ノズル列(ノズル開口28(#1〜#180))でのフラッシング量の合計値は「900」(180×5)となる。
【0093】
図15は、インターレース印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれの例を示す図である。同図では、インターレース印刷且つ単方向印刷によって記録紙8上に罫線を印刷した結果、罫線に位置ずれが発生した例を示している。ここでは、ノズル開口28の一部からのインク滴の吐出を往路のみの単方向のパスで繰り返すことによって罫線L3が印刷されている。
【0094】
ここで、主走査方向における罫線L3の正規の印刷位置をP0とした場合、罫線L3はP0を基点にして往路方向にGaだけ位置ずれしている。これは、インクの増粘によってインク滴の吐出速度が遅くなり、各パス(往路)においてインク滴の着弾位置が往路の移動方向にずれることによる。
【0095】
図16は、インターレース印刷且つ単方向印刷において、全てのノズル開口28に更に弱い微振動を付与して、図15における罫線の位置ずれに対応する例を示す図である。同図では、全てのノズル開口28(#1〜#180)に対して微振動パルスVP3による更に弱い微振動を付与して、インターレース印刷且つ単方向印刷によって記録紙8上に罫線L3を印刷している。この更に弱い微振動の付与により、各ノズル開口28付近のインクの増粘が正常に保たれる。その結果、図15において位置ずれしていた罫線L3が、図16に示すように、正規の印刷位置P0に印刷されるようになっている。
【0096】
図12(d)は、図16の条件で罫線L3を印刷する場合に、各ノズル開口28において必要となるフラッシング量の例を示すグラフである。同図に示すように、各ノズル開口28(#1〜#180)では、それぞれフラッシング量の値「2.5」が必要である。したがって、ノズル列(ノズル開口28(#1〜#180))でのフラッシング量の合計値は「450」(180×2.5)となる。
【0097】
上述したように、バンド印刷且つ双方向印刷における罫線の位置ずれ(図7参照)に対応するために、従来の対応例(図8参照)と本実施形態の対応例(図9参照)とを示した。従来の対応例の場合、全てのノズル開口28に対して強い微振動を付与することにより、罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分の位置ずれを完全に解消することができる。しかしながら、フラッシング動作の際のフラッシング量の合計値が「1,800」となり、インクが多量に消費されてしまう問題が生じてしまう。
一方、本実施形態の対応例の場合、中央部ノズル開口群に対して弱い微振動を付与し、端部ノズル開口群に対して強い微振動を付与している。これにより、中央部ノズル開口群の印刷部分と端部ノズル開口群の印刷部分との間で少し位置ずれが残るものの、罫線L1と罫線L2との繋ぎ目部分のずれを解消することができ、罫線L1,L2全体については位置ずれが目立たない罫線にすることができる。さらに、フラッシング動作の際のフラッシング量の合計値が「1,100」となり、従来の対応例に比べてインクの消費を節減することができる。
【0098】
また、バンド印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれ(図10参照)に対応するために、バンド印刷且つ単方向印刷における対応例(図11参照)を示した。この対応例の場合、全てのノズル開口28に対して弱い微振動を付与している。これにより、罫線L1,L2全体の往路方向の位置ずれを少なくすることができる。また、フラッシング動作の際のフラッシング量の合計値が「900」となり、上記した双方向印刷における対応例に比べてインクの消費を更に節減することができる。
【0099】
また、インターレース印刷且つ双方向印刷における罫線幅の拡大(図13参照)に対応するために、インターレース印刷且つ双方向印刷における対応例(図14参照)を示した。この対応例の場合、全てのノズル開口28に対して弱い微振動を付与している。これにより、拡大していた罫線L3の幅を正規の幅にすることができる。また、フラッシング動作の際のフラッシング量の合計値が「900」となり、上記したバンド印刷且つ双方向印刷における対応例に比べてインクの消費を節減することができる。
【0100】
また、インターレース印刷且つ単方向印刷における罫線の位置ずれ(図15参照)に対応するために、インターレース印刷且つ単方向印刷における対応例(図16参照)を示した。この対応例の場合、全てのノズル開口28に対して更に弱い微振動を付与している。これにより、位置ずれしていた罫線L3を正規の印刷位置に位置付けることができる。また、フラッシング動作の際のフラッシング量の合計値が「450」となり、上記したインターレース印刷且つ双方向印刷における対応例に比べてインクの消費を更に節減することができる。
【0101】
上述したように、印刷動作を行う際の記録モードが、バンド印刷であるかインターレース印刷であるか、さらにそれぞれが双方向印刷であるか単方向印刷であるかに応じて、各記録モードの組み合わせに適当な微振動を各ノズル開口28に対して付与している。これにより、フラッシング動作の際のフラッシング量を少量に節減することができ、フラッシング動作時においてインクを無駄に消費してしまう問題に対処することができる。
【0102】
なお、上述した実施形態では、各ノズル列K,C,M,Yにおけるノズル開口28の個数を180個としたが、これには限られず、例えば90個であったり360個であったりしても良い。
【0103】
また、上述した実施形態では、液体噴射装置の例としてインクジェット式カラープリンターについて説明したが、これには限られない。例えば、カラーフィルター製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造型機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置等のインクジェット技術を応用した各種の液体噴射装置に適用しても良い。
【0104】
また、上述した実施形態では、CMYKの4色のインクを使用して印刷する例を説明したが、これには限られない。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト、クリア等、CMYK以外の色のインクを用いて印刷を行っても良い。
【0105】
また、上述した実施形態では、圧力発生素子として圧電振動子35を用いた記録ヘッド2の例を示したが、これには限られない。例えば、圧力発生素子として、撓み振動モードの圧電振動子、静電アクチュエーター、磁歪素子、発熱素子等を用いても良い。
【符号の説明】
【0106】
1…プリンター、2…記録ヘッド、3…カートリッジ保持部、4…キャリッジ、5…プラテン、5´…インク受け部、6…キャリッジ移動機構、7…リニアエンコーダー、8…記録紙、9…紙送り機構、10…インクカートリッジ、11…ガイド軸、12…キャリッジ移動モーター、13…駆動プーリー、14…遊転プーリー、15…タイミングベルト、16…制御部、16a…記録モード判定部、17…給紙機構、18…固定支持部、19…位置決め部材、23…吸液部材、24…支持突起、25…紙送りモーター、26…紙送りローラー、27…キャッピング機構、28…ノズル開口、31…ケース、32…振動子ユニット、33…流路ユニット、34…収納空部、35…圧電振動子、36…固定板、37…流路形成基板、38…ノズルプレート、39…弾性板、40…リザーバ、41…インク供給口、42…圧力室、43…ノズル連通口、44…ダイヤフラム部、51…プリンターコントローラー、52…プリントエンジン、53…外部I/F、54…RAM、55…ROM、56…発振回路、57…タイマー回路、58…駆動信号発生回路、K,C,M,Y…ノズル列、DP1…大ドット駆動パルス、DP2…小ドット駆動パルス、DP3…中ドット駆動パルス、Ga,Gb…位置ずれ、L1,L2,L3,L11,L12,L13,L14,L21,L22,L23,L24…罫線、P0…正規印刷位置、P1…正規幅、P11,P21,P31…充電要素、P12,P22,P32…ホールド要素、VB…基準電位、VH1…第1微振動電位、VH2…第2微振動電位、VH3…第3微振動電位、VP1,VP2,VP3…微振動パルス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、
前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御部と、
前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定部と、を有し、
前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、
前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、
前記制御部は、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、
前記記録モード判定部によって前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、
前記記録モード判定部によって前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出しない程度に、前記ノズル開口におけるメニスカスの微振動を更に制御し、
前記記録モード判定部によって前記第1の記録モードと判定された場合、前記制御部は、前記端部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与する微振動よりも、弱い微振動を前記中央部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記記録モード判定部は、主走査方向の往路と復路との双方向で前記媒体に記録する双方向記録モードと、主走査方向の往路と復路とのいずれかの単方向で前記媒体に記録する単方向記録モードと、を更に判定し、
前記制御部は、前記記録モード判定部によって前記単方向記録モードと判定された場合に、前記双方向記録モードと判定された場合よりも、弱い微振動を前記ノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御すると共に、前記フラッシング動作を実行するときに、前記双方向記録モードと判定された場合よりも、前記ノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、を有する液体噴射装置の制御方法であって、
前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御工程と、
前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定工程と、を有し、
前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、
前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、
前記制御工程では、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、
前記記録モード判定工程において前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、
前記記録モード判定工程において前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
【請求項5】
媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、を有する液体噴射装置の制御プログラムであって、
前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御機能と、
前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定機能と、を有し、
前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、
前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、
前記制御機能では、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、
前記記録モード判定機能において前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、
前記記録モード判定機能において前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することをコンピューターに実行させることを特徴とする液体噴射装置の制御プログラム。
【請求項1】
媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、
前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御部と、
前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定部と、を有し、
前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、
前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、
前記制御部は、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、
前記記録モード判定部によって前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、
前記記録モード判定部によって前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出しない程度に、前記ノズル開口におけるメニスカスの微振動を更に制御し、
前記記録モード判定部によって前記第1の記録モードと判定された場合、前記制御部は、前記端部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与する微振動よりも、弱い微振動を前記中央部ノズル開口群のノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記記録モード判定部は、主走査方向の往路と復路との双方向で前記媒体に記録する双方向記録モードと、主走査方向の往路と復路とのいずれかの単方向で前記媒体に記録する単方向記録モードと、を更に判定し、
前記制御部は、前記記録モード判定部によって前記単方向記録モードと判定された場合に、前記双方向記録モードと判定された場合よりも、弱い微振動を前記ノズル開口におけるメニスカスに対して付与するように制御すると共に、前記フラッシング動作を実行するときに、前記双方向記録モードと判定された場合よりも、前記ノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、を有する液体噴射装置の制御方法であって、
前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御工程と、
前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定工程と、を有し、
前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、
前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、
前記制御工程では、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、
前記記録モード判定工程において前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、
前記記録モード判定工程において前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
【請求項5】
媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送方向に並ぶ複数のノズル開口を列設したノズル列が形成されて、圧力発生素子の作動により、前記ノズル開口に連通する圧力室内の液体圧力を変化させて前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向と交差する主走査方向に往復移動させる移動機構と、を有する液体噴射装置の制御プログラムであって、
前記圧力発生素子に駆動信号を供給して、前記ノズル開口から液滴を吐出する制御を行う制御機能と、
前記ノズル開口から液滴を吐出して前記媒体に記録を行う際の記録モードを判定する記録モード判定機能と、を有し、
前記ノズル列は、前記搬送方向の端部側に位置する前記ノズル開口からなる端部ノズル開口群と、前記端部ノズル開口群以外の前記ノズル開口からなる中央部ノズル開口群とを含み、
前記記録モードは、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の1回のパスで前記媒体に画像を記録する第1の記録モードと、前記ノズル開口から液滴を吐出して主走査方向の複数回のパスで前記媒体に画像を記録する第2の記録モードと、を含み、
前記制御機能では、前記ノズル開口から液滴を強制的に吐出させるフラッシング動作を実行するときに、
前記記録モード判定機能において前記第1の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量よりも、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量が少量になるように制御し、
前記記録モード判定機能において前記第2の記録モードと判定された場合、前記端部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量と、前記中央部ノズル開口群のノズル開口毎の液体吐出量とが均一になるように制御することをコンピューターに実行させることを特徴とする液体噴射装置の制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−106394(P2012−106394A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256548(P2010−256548)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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