説明

液体噴射装置

【課題】キャリッジ部を上向きに移動させる場合とキャリッジ部を下向きに移動させる場合とでキャリッジ部の移動に必要な力の差を小さくできる液体噴射装置を得る。
【解決手段】ケース2に設けられた上下一対のプーリー7;8と、前記プーリーに回転力を付与する駆動源(モーター9)と、前記上下一対のプーリーに掛け渡され、前記駆動源により回転する前記プーリーの回転力を受けることにより上下方向に往復動する無端ベルト10と、液体を噴射するヘッド21を有したキャリッジ部11と、錘12と、を備え、前記キャリッジ部11と前記錘12とが、前記無端ベルト10に取付けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射するヘッドを有したキャリッジ部を上下方向に往復移動させる構成の液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置として、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド(以下、ヘッドという)から印刷用紙等の被記録媒体に対してインク(液体)を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置(以下、プリンターという)が知られている。
従来、プリンターを設置台等の設置部に設置した状態においてヘッドを有したキャリッジ部を水平横方向に往復移動させて印刷を行う構成のプリンターが一般的であるが、プリンターを設置部に設置した状態においてヘッドを有したキャリッジ部を上下方向(重力方向)に往復移動させて印刷を行う構成のプリンターも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−286115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャリッジ部を上下垂直方向に往復移動させる構成のプリンターにおいては、キャリッジ部を上向きに移動させる場合とキャリッジ部を下向きに移動させる場合とでは、キャリッジ部の移動に必要な力が、2mg異なる(mはキャリッジ部の質量、gは重力加速度)。
従って、キャリッジ部を水平横方向に往復移動させて印刷を行うキャリッジ部制御手段を、キャリッジ部を上下方向に往復移動させる構成のプリンターに使用した場合、キャリッジ部を上向きに移動させる場合とキャリッジ部を下向きに移動させる場合とではキャリッジ部の移動に必要な力に差が生じるので、キャリッジ部の動きが異なってしまい、キャリッジ部の動作が不安定になる。キャリッジ部の動作が不安定であると、キャリッジ部を駆動させる駆動源であるモーターの劣化を早めたり、振動による騒音が増えたり、印字品質が悪くなる等の可能性がある。
印字品質に関しては、キャリッジ部を上向きに移動させる場合にのみ又はキャリッジ部を下向きに移動させる場合にのみ印刷を行わせる片方向印刷を行うようにすることで、印字品質を確保できる可能性はあるが、この場合、両方向印刷と比べて印刷速度が約1/2に低下してしまう。
本発明は、液体を噴射するヘッドを搭載したキャリッジ部を上下方向に往復移動させる構成の液体噴射装置において、キャリッジ部を上向きに移動させる場合とキャリッジ部を下向きに移動させる場合とでキャリッジ部の移動に必要な力の差を小さくできる液体噴射装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る液体噴射装置は、ケースに設けられた上下一対のプーリーと、前記プーリーに回転力を付与する駆動源と、前記上下一対のプーリーに掛け渡され、前記駆動源により回転する前記プーリーの回転力を受けることにより上下方向に往復動する無端ベルトと、液体を噴射するヘッドを有したキャリッジ部と、錘と、を備え、前記キャリッジ部と前記錘とが、前記無端ベルトに取付けられたので、キャリッジ部を上向きに移動させる場合とキャリッジ部を下向きに移動させる場合とでキャリッジ部の移動に必要な力の差を小さくでき、キャリッジ部の動作の安定性が向上する。
前記キャリッジ部が液体を収容した液体収容部を有し、前記錘の重量を、液体の量が最大の時の前記キャリッジ部の重量と液体の量が最小の時の前記キャリッジ部の重量との中間値の重量に一致させたので、キャリッジ部を上向きに移動させる場合とキャリッジ部を下向きに移動させる場合とでキャリッジ部の移動に必要な力の差をより小さくでき、キャリッジ部の動作の安定性がより向上する。
前記キャリッジ部の移動動作に起因する液体噴射装置の揺れを抑制する揺れ抑制手段を備えたので、キャリッジ部の移動動作に起因する液体噴射装置の揺れを抑制できる。
前記揺れ抑制手段は、前記ケースの上部に設けられた揺れ抑制用錘と、前記キャリッジ部の移動に伴って液体噴射装置に加わる回転モーメントを減少させる方向に前記揺れ抑制用錘を移動させる駆動制御手段とを備えたので、ケースを設置部に固定することなく、キャリッジ部の移動動作に起因する液体噴射装置の揺れを抑制できる。
前記揺れ抑制手段は、前記キャリッジ部に形成された貫通孔に前記錘及び前記無端ベルトを通過させた構成としたので、キャリッジ部の移動動作に起因する液体噴射装置の揺れを抑制できて、揺れ抑制手段を設けるためのスペースが不要となるので、液体噴射装置の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターを示す正面図(実施形態1)。
【図2】プリンターを示す正面図(実施形態5)。
【図3】(a)はキャリッジ機構、(b)は(a)のA−A断面を示す図(実施形態6)。
【図4】(a)はキャリッジ機構、(b)は(a)のA−A断面を示す図(実施形態6)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組合せのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【0008】
実施形態1
図1に基づいて、実施形態1のプリンターの全体構成を説明する。
プリンター1は、ケース2と、キャリッジ機構3と、被記録媒体給排手段4と、制御手段5とを備える。
ケース2は、キャリッジ機構3、被記録媒体給排手段4、制御手段5を収容する筐体である。尚、図1のケース2の前面開口6には例えば当該前面開口6を開閉する図外の開閉扉が設けられる。
【0009】
キャリッジ機構3は、ケース2に設けられた一対のプーリー7;8と、一対のプーリー7;8のうちのいずれかのプーリーに回転力を付与する駆動源の一例としてのモーター9と、一対のプーリー7;8に掛け渡された無端ベルト(タイミングベルト)10と、無端ベルト10に取付けられたキャリッジ部11と、無端ベルト10に取付けられた錘12と、ケース2に設けられたキャリッジ部ガイド手段13と、ケース2に設けられた錘ガイド手段14とを備える。
【0010】
一対のプーリー7;8のうちの一方のプーリー8はケース2の一端側に設けられ、他方のプーリー7はケース2の他端側に設けられる。そして、ケース2の一端部2aを設置台などの設置部2Zに設置した場合に、一方のプーリー8が下のプーリーとなり、他方のプーリー7が上のプーリーとなる。
即ち、プリンター1は、ケース2の一端部2aが設置部2Zに設置された場合にケースの上下側に位置する上下一対のプーリー7;8を備え、一対のプーリー7;8に無端ベルト10が掛け渡され、インク(液体)を噴射するヘッド21を有したキャリッジ部11が無端ベルト10に取付けられて上下垂直方向に往復移動して紙等の被記録媒体24に印刷を行う構成である。
プーリー7;8は、円筒15の外周面に無端ベルトの歯と噛合う図外の歯を備えた構成である。プーリー7;8の円筒15の両端縁には円筒15の中心線と直交する方向に延長する円環状のフランジ16が円筒15と同軸状に設けられる。このフランジ16は、プーリーの歯に掛け渡された無端ベルト10がプーリー7;8から外れることを防止するためのベルト外れ防止部として機能する。
所謂駆動プーリーとなる例えば下のプーリー8は、図外のモーターマウントを介してケース2に固定されたモーター9により回転する回転軸17がプーリー8の筒孔に連結されて回転軸17と一緒に回転するように構成されたプーリー(中心軸が移動しない定プーリー)である。
所謂従動プーリーとなる上のプーリー7は、ケース2に設けられた軸18がプーリー7の筒孔に連結され、プーリー7が軸18の中心を回転中心として回転可能に構成されたプーリー(中心軸が移動しない定プーリー)である。
【0011】
無端ベルト10は、内周面19に図外の斜歯又は直歯のような歯が形成され、この無端ベルト10の歯とプーリー7;8の歯とが噛合うように上下一対のプーリー7;8に掛け渡され、モーター9からの回転力を受けて回転するプーリー8の回転力を受けて上下垂直方向に往復動する構成である。即ち、無端ベルト10は、プーリー8を一方方向に回転させることにより、一方方向に回転するように送られ、プーリー8を他方方向に回転させることにより、他方方向に回転するように送られる構成である。
【0012】
キャリッジ部11は、キャリッジ20と、キャリッジ20に搭載されるヘッド21、図外のインク収容部、インク収容部に収容されたインク、図外のその他の部品とを備えた構成である。その他の部品は、例えば、キャリッジ部11の位置制御のためのエンコーダー、被記録媒体24の先端や幅を検出するための検出器等である。
本発明においては、上下垂直方向に往復移動するキャリッジ20、キャリッジ20に搭載されたヘッド21、インク、その他の部品の集合体をキャリッジ部11と呼ぶ。
尚、ヘッド21は、例えば、ピエゾ素子を制御してノズルからインクを噴射させる構成である。
【0013】
キャリッジ部11のキャリッジ20が上下のプーリー7;8の回転中心を通る線22を境界とする左右の領域のうちの一方の領域内で上下往復動する無端ベルト10の外周面23に取付けられることによって、キャリッジ部11が一方の領域内で上下のプーリー7;8の間を上下垂直方向に往復移動可能に設けられる。
錘12が上下のプーリー7;8の回転中心を通る線22を境界とする左右の領域のうちの他方の領域内で上下往復動する無端ベルト10の外周面23に取付けられることによって、錘12が他方の領域内で上下のプーリー7;8の間を上下垂直方向に往復移動可能に設けられる。
さらに、キャリッジ部11及び錘12が、無端ベルト10の外周面23において無端ベルト10の外周面23を周方向に半周する距離を隔てた位置に取付けられた構成、即ち、無端ベルト10のキャリッジ20が取付けられた位置から無端ベルト10を半周した位置に錘12が取付けられた構成とすることにより、キャリッジ部11の移動範囲を最大とできるので好ましい。換言すれば、キャリッジ部11の重心と錘12の重心とが、上下一対のプーリー7:8間の中央地点を通過する水平線上に位置されるように、キャリッジ20と錘12とが無端ベルト10の外周面23に取付けられる。
前記キャリッジ部駆動用のモーター9、上下一対のプーリー7:8、無端ベルト10が、キャリッジ部11を上下垂直方向に往復移動させるキャリッジ部搬送手段として機能する。
【0014】
キャリッジ部ガイド手段13及び錘ガイド手段14は、例えば、ケース2の上下垂直方向に延長するようにケース2に設けられたガイド軸、あるいは、ガイドレールにより構成される。
キャリッジ20は、キャリッジ部ガイド手段13に係合してキャリッジ部ガイド手段13上をスライドする図外の係合部を備える。
錘12は、錘ガイド手段14に係合して錘ガイド手段14上をスライドする係合部を備える。
キャリッジ部ガイド手段13を備えたことにより、キャリッジ部11は、有端ベルト10の往復動に伴って一定の姿勢を保ちながら規定の経路を経由して上下垂直方向に往復移動することが可能となる。即ち、キャリッジ部ガイド手段13は、ケース2に設けられてキャリッジ部11が一定の姿勢を保ちながら規定の経路を経由して上下垂直方向に往復移動可能なようにキャリッジ部11をガイドする手段である。
錘ガイド手段14を備えたことにより、錘12は、有端ベルト10の往復動に伴って一定の姿勢を保ちながら規定の経路を経由して上下垂直方向に往復移動することが可能となる。即ち、錘ガイド手段14は、ケース2に設けられて錘12が一定の姿勢を保ちながら規定の経路を経由して上下垂直方向に往復移動可能なように錘12をガイドする手段である。
換言すれば、キャリッジ部ガイド手段13を備えたことで、キャリッジ部11ががたつくことなくスムーズに移動するようになり、錘ガイド手段14を備えたことで、錘12ががたつくことなくスムーズに移動するようになる。
【0015】
キャリッジ部11の重量と錘12の重量とを同じ重量にする。
ヘッド21にインクを供給する方法として、オンキャリッジ方式とオフキャリッジ方式とが知られている。オンキャリッジ方式は、キャリッジ20にヘッドを搭載するとともに図外のインクカートリッジ(液体収容部)を着脱自在に搭載し、インクカートリッジからヘッド21へとインクが供給される方式である。一方、オフキャリッジ方式は、キャリッジ20外のケース2等に所定個所にインクタンクを設置し、インク供給用のチューブ等により形成された図外のインク供給路及びヘッド21内の図外のインク貯留部を介してヘッド21にインクを供給する方式である。
インク供給方式がオフキャリッジ方式である場合、ヘッド21のインク貯留部に貯留されるインク量は一定なので、上下垂直方向に往復移動するキャリッジ部11の重量は変わらない。よって、当該キャリッジ部11の重量と同じ重量の錘12を設けるだけでよい。ただし、オフキャリッジ方式の場合、キャリッジ部11の移動に伴ってインク供給用のチューブも動くので、キャリッジ部11の重量にインク供給用のチューブの重量の一部が加味される。従って、厳密には、錘12の重量を、キャリッジ部11の重量にインク供給用のチューブの重量の一部を加味した合計の重量に一致させることにより、キャリッジ部11を上向きに移動させる場合とキャリッジ部11を下向きに移動させる場合とでキャリッジ部11の移動に必要な力を同じにでき、キャリッジ部11の安定動作を実現できるプリンター1を得ることができるので好ましい。
【0016】
一方、インク供給方式がオンキャリッジ方式である場合、キャリッジ20に着脱可能に装着されるインクカートリッジ内のインク量が変化するので、キャリッジ部11の重さも変わる。従って、インク供給方式の場合、キャリッジ部11の重さが変化するのに応じて錘12の重さも変化させる必要がある。
例えば、容器と容器内に収容される液体とによって錘12を形成し、容器内に液体を給排することで錘12の重さを変化させるようにする。あるいは、インクカートリッジを装着した状態のキャリッジ部11の最大重量時の重さと錘12の重さとを同じにしておき、消費したインク量と同じ量のダミーインクのような液体をインクカートリッジに追加したり、キャリッジ20に設けた貯留室に貯留することで、錘12の重量とキャリッジ部11の重量とを同じ重量に保つように制御する。
液体の給排制御は、インクの残量を検出する制御手段5がインクの残量に応じて制御する構成とすればよい。
このように、オンキャリッジ方式である場合でも、錘12の重量とキャリッジ部11の重量とを同じ重量に保つようにすることで、キャリッジ部11を上向きに移動させる場合とキャリッジ部11を下向きに移動させる場合とでキャリッジ部11の移動に必要な力を同じにでき、キャリッジ部11の安定動作を実現できるプリンター1を得ることができる。
【0017】
被記録媒体給排手段4は、例えば、被記録媒体24を載せるホッパー25と、ホッパー25に載置された被記録媒体24を挿入する挿入口26と、ホッパー25に載置された被記録媒体24をプリンター1内に取込むローラー27、プリンター1内に取込まれた被記録媒体24をヘッド21のノズル面と対向する位置に送る図外のローラー、ヘッド21のノズルから吐出されたインクが被記録面に着弾されたことにより印刷が終了した被記録媒体24を排出するローラー28等により構成される。各ローラーの回転軸が、図外のローラー駆動用のモーターからの回転力を図外のギヤ伝達機構等を介して受けることにより、各ローラーが回転駆動される。
【0018】
実施形態1によれば、設置部2Zに設置された状態でキャリッジ部11を上下垂直方向(重力方向)に往復移動させて印刷を行う構成のプリンター1が構成され、当該プリンター1において、上下一対のプーリー7;8に掛け渡された無端ベルト10に、キャリッジ部11と錘12とを取付け、キャリッジ部11の重量と錘12の重量とを同じ重量にしたので、キャリッジ部11を上向きに移動させる場合とキャリッジ部11を下向きに移動させる場合とでキャリッジ部11の移動に必要な力を同じにでき、キャリッジ部11の安定動作を実現できるプリンター1を得ることができる。よって、キャリッジ部11を駆動させる駆動源であるモーターの劣化、振動による騒音を抑制でき、印字品質も向上する。さらに、上下両方方向印刷を行えるので、印刷速度の低下も抑制できる。
【0019】
尚、錘12を備えない特許文献1のような従来構成のプリンターにおいて、キャリッジ部11を上向きに移動させる場合とキャリッジ部11を下向きに移動させる場合とでモーター9の駆動トルクを異ならせるように制御することも考えられるが、制御ロジックが複雑になってしまう。
実施形態1では、上述した複雑な制御ロジックを採用したキャリッジ制御手段を用いずに、キャリッジ部11を水平横方向に往復移動させて印刷を行う一般的な制御ロジックを採用したキャリッジ制御手段を用いて、キャリッジ部11の安定動作を実現できるプリンター1を得ることができる。
【0020】
実施形態2
インク供給方式がオンキャリッジ方式である場合において、キャリッジ部11の重量と錘12の重量とを常に同じにするには、構成及び制御が複雑となる。従って、錘12の重量を、搭載可能なインク量のインクを搭載したキャリッジ部11の重量と一致させるようにしたり、錘12の重量をインクを搭載していない状態のキャリッジ部11の重量と一致させるようにしてもよい。
実施形態2によれば、キャリッジ部11の重量と錘12の重量とを常に同じにするための構成及び制御を備える必要が無くなるので、構成及び制御を簡単にできる。また、インクカートリッジ内のインクの増減に伴う、錘12の重量とキャリッジ部11の重量との最大差を、キャリッジ部11に搭載可能なインク量の重量に抑えることができるので、キャリッジ部11を上向きに移動させるのに必要な力とキャリッジ部11を下向きに移動させるのに必要な力との差を小さくでき、キャリッジ部11の安定動作を実現できるプリンター1を得ることができる。
【0021】
実施形態3
インク供給方式がオンキャリッジ方式である場合において、錘12の重量を、インクの量が最大の時のキャリッジ部11の重量とインクの量が最小の時のキャリッジ部11の重量との中間値の重量に一致させた。換言すれば、錘12の重量を、キャリッジ部11の最大重量時におけるインク量の1/2の量のインクを搭載したキャリッジ部11の重量に一致させた構成とした。
実施形態3によれば、インクカートリッジ内のインクの増減に伴う、錘12の重量とキャリッジ部11の重量との最大差を、実施形態2の構成と比較して1/2に抑えることができるので、インクの増減による影響をより小さくできて、キャリッジ部11の安定動作を実現できるプリンターを得ることができる。
【0022】
実施形態4
実施形態1乃至3においては、キャリッジ部11と錘12とが別々の直線上を上下に移動する構成であるので、キャリッジ部11が移動するとプリンター1に回転モーメントが生じ、キャリッジ部11が移動する方向にプリンター1が回転しようとする力が加わりやすくなる。このため、キャリッジ部11の移動の際にプリンター1が揺れやすくなる。
そこで、キャリッジ部11の移動動作に起因するプリンター1の揺れを抑制する揺れ抑制手段を備えた構成とする。
揺れ抑制手段としては、例えば、ケース2を固定具等で設置部2Zに固定する構成とすることで、キャリッジ部11の移動動作に起因するプリンター1の揺れを抑制でき、印字品質を向上できる。
【0023】
実施形態5
実施形態4で説明したような、ケース2を固定具等で設置部2Zに固定する構成の揺れ抑制手段の場合、設置部2Zに固定具を取付けることができなかったり、取付けられたとしても、設置部2Z、ケース2に取付跡が残る可能性がある。
そこで、図2に示すように、ケース2の上部に揺れ抑制手段30を設けた構成とした。
ケース2は、キャリッジ部11が上下に往復移動するように設置部2Zに設置された場合に、キャリッジ機構3が配置収容された部分の上部に揺れ抑制手段30が配置収容される部分を備えた構成である。例えば、キャリッジ機構3、被記録媒体給排手段4、制御手段5を収容するメインケース部31と、揺れ抑制手段30を収容するサブケース部32とを備えた構成である。
尚、図2のメインケース部31の前面開口33には例えば当該前面開口33を開閉する図外の開閉扉が設けられ、サブケース部32の前面開口34には例えば当該前面開口34を開閉する図外の開閉扉又は蓋が設けられる。
【0024】
揺れ抑制手段30は、ケース2におけるキャリッジ機構3が配置収容された部分の上部に設けられた一対のプーリー35;36と、一対のプーリー35;36に掛け渡された無端ベルト37と、無端ベルト37に取付けられた揺れ抑制用錘38と、揺れ抑制用錘38のガイド手段39と、揺れ抑制用錘38を水平方向に往復移動させる図外の駆動制御手段とを備える。
一対のプーリー35;36は、上述した上下一対のプーリー7;8と同じ構成であり、プーリー35;36の回転中心となる軸40;41がプーリー7の回転軸17及びプーリー8の軸18と同じ方向を向くように設置され、かつ、軸40;41が同一水平面上に位置するように互いに一定間隔隔てて配置される。
また、プーリー35とプーリー36との間の中心位置を、垂直上下方向に移動するキャリッジ部11の真上に位置させる。
無端ベルト37は無端ベルト10と同じ構成である。
ガイド手段39は、例えば、ケース2の水平方向に延長するようにケース2に設けられたガイド軸、あるいは、ガイドレールにより構成される。
揺れ抑制用錘38は、ガイド手段39に係合してガイド手段39上をスライドする図外の係合部を備える。
ガイド手段39を備えたことにより、揺れ抑制用錘38は、無端ベルト37の水平往復動に伴って一定の姿勢を保ちながら規定の経路を経由して水平方向に往復移動することが可能となる。
駆動制御手段は、キャリッジ駆動用のモーター9の回転力を受けてプーリー35;36のうちのいずれかのプーリーに伝達する伝達機構を備えた機械制御式構成、あるいは、プーリー35;36のうちのいずれかのプーリーを駆動するために設けられた揺れ抑制手段専用の図外のモーターと、当該モーターを電気的に制御する制御手段5とを備えた電気制御式構成により実現できる。
【0025】
駆動制御手段が機械制御式構成の場合について説明する。
伝達機構は、ベルト伝達機構又はギヤ伝達機構により構成すればよい。
上下一対のプーリー7;8のうちの上のプーリー7を所謂駆動プーリーとし、下のプーリー8を所謂従動プーリーとし、モーター9により回転するプーリー7の回転軸17と例えば一方のプーリー(例えばプーリー35)の軸40とを伝達機構で連結する。
例えば、プーリー35は、ケース2に図外の軸受けを介して回転可能に設けられた軸40がプーリー35の筒孔に連結されて軸40とプーリー35とが一緒に回転するように構成され、プーリー36は、ケース2に設けられた軸41がプーリー36の筒孔に連結され、プーリー36が軸41の中心を回転中心として回転可能に構成される。
そして、揺れ抑制用錘38をキャリッジ部11の移動に伴う無端ベルト10の回転方向とは逆の方向に移動させる伝達機構を構成する。即ち、キャリッジ部11の移動に伴ってプリンター1に加わる回転モーメントを減少させる方向に揺れ抑制用錘38を移動させる伝達機構を構成する。
例えば、図2に示すように、キャリッジ部11のキャリッジ20が上下のプーリー7;8の回転中心を通る線22を境界とする左右の領域のうちの左の領域内で上下往復動する無端ベルト10の外周面23に取付けられている場合を例にして説明すると、以下のように動作する伝達機構を構成する。
即ち、キャリッジ部11が上部に位置するとき揺れ抑制用錘38が左部に位置し、キャリッジ部11が上部から下部に移動するのに伴って揺れ抑制用錘38を左部から右部に移動させ、キャリッジ部11が下部に位置するとき揺れ抑制用錘38が右部に位置し、キャリッジ部11が下部から上部に移動するのに伴って揺れ抑制用錘38を右部から左部に移動させるような伝達機構を設ける。つまり、キャリッジ部11が上方向に移動するのに連動して揺れ抑制用錘38を左方向に移動させ、かつ、キャリッジ部が下方向に移動するのに連動して揺れ抑制用錘38を右方向に移動させる伝達機構を設ける。
【0026】
駆動制御手段が電気制御式構成の場合、例えば、一方のプーリー35は、図外のモーターマウントを介してケース2に固定された図外のモーターにより回転する軸40がプーリー35の筒孔に連結されて軸40とプーリー35とが一緒に回転するように構成され、他方のプーリー36は、ケース2に設けられた軸41がプーリー36の筒孔に連結され、プーリー36が軸40の中心を回転中心として回転可能に構成される。
そして、制御手段5が、キャリッジ駆動用のモーター9の回転方向制御に応じて揺れ抑制手段専用のモーターの回転方向制御を行って、上述した機械制御式構成の場合と同じように揺れ抑制用錘38を移動させる。
【0027】
実施形態5によれば、実施形態4で説明したようなケース2を固定具等で設置部2Zに固定する構成の揺れ抑制手段を設けてケース2を設置部2Zに固定することなく、当該揺れ抑制手段を使用することによる上述した問題を解消できるとともに、キャリッジ部11が移動する方向にプリンター1が回転しようとする力を抑制できて、キャリッジ部11の移動動作に起因するプリンター1の揺れを抑制でき、印字品質を向上できる。
【0028】
実施形態6
図3;図4に示すように、キャリッジ部11に、錘12が取付けられている側の無端ベルト10を通過させるための貫通孔45を形成し、この貫通孔45に錘12及び無端ベルト10を通過させた構成の揺れ抑制手段50を設けた。
即ち、上下のプーリー7;8の回転中心を通る線22を境界とする左右の領域のうちの一方の領域内で上下往復動する無端ベルト10及び錘12が、他方の領域内で上下往復動するように無端ベルトに取付けられたキャリッジ部11の貫通孔を通過可能なように構成された。
実施形態6の構成の場合、錘ガイド手段14は設けない。また、キャリッジ20には、例えば、キャリッジ部ガイド手段13に係合する係合部としての係合貫通孔46が形成され、キャリッジ部11がキャリッジ部ガイド手段13の一例としてのガイド軸をスライドして移動する構成とされる。
図3に示すように、キャリッジ部11の貫通孔45の内面と無端ベルト10の外周面23とを連結した構成、図4に示すように、キャリッジ部11のキャリッジ20の外面と無端ベルト10の内周面19とを連結した構成とすることができる。尚、錘12は、図3;4に示すように、無端ベルト10の内周面19に連結してもよいし、無端ベルト10の外周面23に連結してもよい。
【0029】
実施形態6によれば、錘12がキャリッジ部11の重心位置又は重心位置に近い位置を通過するように構成でき、錘12の重心及びキャリッジ部11の重心が同一の直線上を通過して上下動したり、錘12の重心及びキャリッジ部11の重心が互いに近い直線上を通過して上下動するので、キャリッジ部11が移動する方向にプリンター1が回転しようとする力が加わりにくくなる。よって、キャリッジ部11が移動する方向にプリンター1が回転しようとする力を抑制できて、キャリッジ部11の移動動作に起因するプリンター1の揺れを抑制でき、印字品質を向上できる。
また、実施形態6によれば、ケース内に揺れ抑制手段50を設けるためのスペースを不要とでき、実施形態5で説明したようなケースの上部に新たに追加する必要がある揺れ抑制手段30を設ける構成と比べて、プリンター1の小型化が図れる。
【0030】
尚、キャリッジ部11や錘12;38をガイドするガイド手段は必ずしも設けなくてもよい。
また、実施形態では、設置部2Zに設置された状態でキャリッジ部11を上下垂直方向に往復移動させて印刷を行う構成のプリンターに本発明を適用したプリンター1を説明したが、本発明は、設置部2Zに設置された状態でキャリッジ部11を上下斜め方向に往復移動させて印刷を行う構成のプリンターに適用してもよい。
また、錘12の重さは、キャリッジ部11の2倍より小さい重量にすれば、錘12を備えない構成に比べて、キャリッジ部11を上向きに移動させる場合とキャリッジ部11を下向きに移動させる場合とでキャリッジ部11の移動に必要な力の差を小さくでき、キャリッジ部11の安定動作を実現できるプリンター1を得ることができる。
【0031】
実施形態は、インクジェット式のプリンターを例として説明したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。尚、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは上記実施形態で説明したような一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 プリンター、2 ケース、3 キャリッジ機構、7;8 プーリー、
9 モーター(駆動源)、10 無端ベルト、11 キャリッジ部、12 錘、
30 揺れ抑制手段、38 揺れ抑制用錘、45 貫通孔、50 揺れ抑制手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに設けられた上下一対のプーリーと、
前記プーリーに回転力を付与する駆動源と、
前記上下一対のプーリーに掛け渡され、前記駆動源により回転する前記プーリーの回転力を受けることにより上下方向に往復動する無端ベルトと、
液体を噴射するヘッドを有したキャリッジ部と、
錘と、を備え、
前記キャリッジ部と前記錘とが、前記無端ベルトに取付けられたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記キャリッジ部が液体を収容した液体収容部を有し、前記錘の重量を、液体の量が最大の時の前記キャリッジ部の重量と液体の量が最小の時の前記キャリッジ部の重量との中間値の重量に一致させたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記キャリッジ部の移動動作に起因する液体噴射装置の揺れを抑制する揺れ抑制手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記揺れ抑制手段は、前記ケースの上部に設けられた揺れ抑制用錘と、前記キャリッジ部の移動に伴って液体噴射装置に加わる回転モーメントを減少させる方向に前記揺れ抑制用錘を移動させる駆動制御手段とを備えたことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記揺れ抑制手段は、前記キャリッジ部に形成された貫通孔に前記錘及び前記無端ベルトを通過させた構成としたことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−158004(P2012−158004A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17643(P2011−17643)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】