説明

液体噴射装置

【課題】廃液ユニットを着脱可能に設けつつ、当該廃液ユニットが不用意に引き抜かれることを防止できる装置を、低コストに得る。
【解決手段】インクジェットプリンター1は、装置背面に、記録ヘッドから打ち捨てられたインクを貯留する廃液ユニット21と、用紙搬送路を露呈させる為の開口を開閉する背面ユニット16と、をそれぞれ着脱可能に備えている。背面ユニット16が装着された状態では、背面ユニット16の一部である側端部16aが、廃液ユニット21の装置本体2aからの引き経路である手前側に位置するとともに、廃液ユニット21の一部を覆った状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被噴射媒体に対して液体噴射を行う液体噴射装置に関し、特に液体噴射ヘッドから打ち捨てられた廃液を貯留する廃液ユニットを備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例として記録装置があり、更に記録装置の一例としてインクジェットプリンターがある。インクジェットプリンターにおいては、インクジェット記録ヘッドから吐出されたインクは、全て被噴射媒体の一例としての記録用紙に着弾するとは限らず、意図的に所定の場所に打ち捨てられる場合がある。
【0003】
例えば、記録用紙に余白無く記録を行う、所謂縁無し記録を実行可能なインクジェットプリンターにおいては、インクジェット記録ヘッドと対向配置された支持部材(プラテン)の上面に溝が形成されており、この溝に、記録用紙の縁から外れた領域に吐出されるインクが打ち捨てられるようになっている。溝の底部にはインク排出穴が設けられており、溝に打ち捨てられたインクはこのインク排出穴から下方に排出され、廃液を貯留する廃液ユニットへと導かれる。
【0004】
また、縁無し記録の如何に拘わらず、インクジェットプリンターにおいてはインクジェット記録ヘッドをメンテナンスするメンテナンス手段が設けられている。メンテナンス手段は、インクジェット記録ヘッドをキャップするキャッピングユニットと、キャップ内に負圧を発生させるポンプユニットと、を備えて構成されており、インクジェット記録ヘッドのインク吐出孔からインクを吸引し、そして吸引したインクを廃液ユニットに向けて排出する様に構成されている。
【0005】
ここで、上述の様な廃インクの排出が繰り返されていくと、やがて廃液ユニットが廃液で満杯となる。そして廃液ユニットが満杯になると、それ以降の記録動作が実行できなくなる。特に、ビジネス用途のインクジェットプリンターは長寿命化が求められるので、廃液ユニットにおける廃インク貯留量の管理は重要となる。
【0006】
そこで、廃液ユニットをプリンター本体に対し着脱可能に設けるとともに、廃液ユニットが廃液で満杯になった際に、ユーザーが廃液ユニットを交換できる様にしたインクジェット記録装置が既に提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−234209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、インクジェットプリンターの製品寿命の中で廃液ユニットの交換頻度は、例えばインクカートリッジの交換頻度に比べて極めて少ないのが一般的である。一方、廃液ユニットは廃液を貯留するものであることから、交換時にユーザーの手を汚損したり、装置内部を汚損したりする虞がある。また、インクジェット記録ヘッドのメンテナンス実行中に不用意に廃液ユニットを取り外すと、廃液ユニットに廃液を導くインクチューブから廃液が装置内部に垂れ流されてしまう虞もある。
【0009】
加えて、ユーザーが廃液ユニットを交換するといった運用を行う場合には、インクジェットプリンターの制御部が廃液ユニットの廃液貯留量を把握し、廃液ユニットが満杯になった場合にその旨をユーザーに知らせる必要がある。その為には、例えば廃液ユニットに廃液貯留量に関する情報を保持する記憶手段(ICチップ)を設けるとともに、廃液が発生する動作を実行した際に、想定される廃液量に関する情報を前記記憶手段に対して書き込むことが考えられる。
【0010】
しかしながら前記記憶手段に対しての情報書き込み中に廃液ユニットが引き抜かれると、前記記憶手段に対して情報を正しく書き込むことができない。そうすると、廃液ユニットの廃液貯留量を正しく把握できなくなり、その結果装置内部で廃液が溢れ出る虞がある。
【0011】
従って以上の状況を鑑みると、廃液ユニットの着脱は、本来的に必要最小限にすることが好ましい。しかしながら廃液ユニットを着脱可能に構成すると、当該廃液ユニットはインクジェットプリンターの装置本体外面に露呈するので、ユーザーが誤って廃液ユニットを引き抜き易い。
【0012】
また、廃液ユニットが不用意に引き出されることを防止すべく、例えば廃液ユニットを覆う開閉可能なカバーを設け、更にこのカバーの開閉を検知する専用のセンサーを設けることにより、少なくとも廃液ユニットが引き出される可能性を事前に検知し、そしてこれを検知した場合に即座にメンテナンスユニットの動作を停止させる様に構成することも考えられる。
【0013】
これにより、少なくともインクジェット記録ヘッドのメンテナンス実行中に廃液ユニットが引き抜かれることに起因する、装置内部での廃液の垂れ流しを防止することができる。しかしながらこの場合、装置の大幅なコストアップを招くし、滅多に交換が行われない廃液ユニットに対してこの様な構成を採用することは、資源の無駄という観点で好ましくない。
【0014】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、廃液ユニットを着脱可能に設けつつ、当該廃液ユニットが不用意に引き抜かれることを防止できる装置を、低コストに得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る液体噴射装置は、被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから打ち捨てられた廃液を貯留する廃液ユニットと、被噴射媒体を搬送する搬送路を露呈させる開口を開閉可能に設けられた開閉体と、を備えた液体噴射装置であって、前記廃液ユニットが、前記液体噴射装置の装置本体に対して着脱可能に設けられ、前記廃液ユニットが前記装置本体に装着されるとともに前記開閉体が前記開口を閉じた状態において、前記開閉体の少なくとも一部が前記廃液ユニットの引き抜き経路に位置するとともに前記廃液ユニットの少なくとも一部を覆っていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記廃液ユニットが前記装置本体に装着されるとともに前記開閉体が前記開口を閉じた状態において、前記開閉体の少なくとも一部が前記廃液ユニットの引き抜き経路に位置するとともに前記廃液ユニットの少なくとも一部を覆っているので、廃液ユニットを引き抜く為には、ユーザーは先ず開閉体を開放する必要がある。従ってこれにより、廃液ユニットが不用意且つ容易に引き抜かれることを防止できる。
【0017】
そしてこの開閉体は、紙ジャム処理の為に被噴射媒体の搬送路を露呈させる為のものであり、その開閉頻度が極めて少なく、且つ開閉のタイミングが不定期であることから、より一層効果的に、廃液ユニットが不用意且つ容易に引き抜かれることを防止することができる。
【0018】
尚、開閉体は紙ジャム処理の為に被噴射媒体の搬送路を露呈させる為のものであり、廃液ユニット専用のカバーではないので、装置のコストアップを招くこともない。
【0019】
そして、開閉体が紙ジャム処理の為に被噴射媒体の搬送路を露呈させる為のものであることから、開閉体が開口を開いた状態では被噴射媒体の搬送を正しく行うことができず、即ち開閉体が開口を開いた状態で被噴射媒体の搬送を行うと、ユーザーは開閉体が開口を開いていることを容易に知ることができる。
【0020】
その為、廃液ユニットが引き抜かれた状態のまま、継続して長い間被噴射媒体に対する記録動作が行われることを防止でき、これにより装置内部において廃液が多量に垂れ流されてしまうこともない。しかも、開閉体の開閉状態を検出する専用のセンサーを設ける必要もない。
【0021】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記廃液ユニットが、当該廃液ユニットを引き抜く際に手掛かりとなる手掛かり部を有し、前記開閉体が、前記開口を閉じた状態において前記手掛かり部を覆うことを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、廃液ユニットには当該廃液ユニットを引き抜く際に手掛かりとなる手掛かり部が形成されているが、この手掛かり部が、開閉体によって覆われることから、より一層効果的に、廃液ユニットが不用意且つ容易に引き抜かれることを防止することができる。
【0023】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記廃液ユニットには、当該廃液ユニットに貯留された廃液量に関する情報を保持する記憶手段が設けられ、前記廃液ユニットが前記液体噴射装置の装置本体に装着された際、前記記憶手段に対してアクセス可能に構成されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記廃液ユニットには廃液量に関する情報を保持する記憶手段が設けられ、前記廃液ユニットが前記液体噴射装置の装置本体に装着された際、前記記憶手段に対してアクセス可能となるので、前記廃液ユニット内の廃液が満杯になった場合にはその旨の警告をユーザーに対して発することができる。
【0025】
また、前記廃液ユニットが取り外された状態では、前記記憶手段にアクセスできない為、前記廃液ユニットの廃液貯留量を知る為の記憶手段を、前記廃液ユニットが装着されているか否かを検知する手段としても利用することができる。その結果、例えば前記廃液ユニットが装着されていない場合には、廃液が発生する処理動作を行わない様にすることで、装置内部で廃液が垂れ流されることを防止できる。
【0026】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記廃液ユニットは、付勢手段によって脱方向に付勢された状態に設けられるとともに、前記開口を閉じた状態にある前記開閉体と係合することによって前記装置本体における装着位置に留まる構成を備えることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、前記廃液ユニットは、付勢手段によって脱方向に付勢された状態に設けられるとともに、前記開口を閉じた状態にある前記開閉体と係合することによって前記装置本体における装着位置に留まる構成を備えるので、換言すれば前記廃液ユニットはそれ自身では単独で装着状態になることができない。よって、前記廃液ユニットに設けられた記憶手段を、当該廃液ユニットが装着されている否かを検出する手段としてのみならず、前記開閉体の開閉状態を検出する手段としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターを装置前方側から見た斜視図。
【図2】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面概略図。
【図3】本発明に係るインクジェットプリンターを装置後方側から見た斜視図。
【図4】本発明に係るインクジェットプリンターを装置後方側から見た斜視図。
【図5】本発明に係るインクジェットプリンターを装置後方側から見た斜視図。
【図6】背面ユニットの部分拡大斜視図。
【図7】背面ユニットとプリンター本体とが係合する部位の斜視図。
【図8】廃液ユニットの斜視図。
【図9】(A)、(B)は廃液ユニットを装着する装着部位の構造を模式的に示す説明図。
【図10】(A)、(B)は廃液ユニットを装着する装着部位の構造を模式的に示す説明図(他の実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0030】
図1は、本発明に係る液体噴射装置の一例としての、被記録媒体に記録を行う記録装置、そして更にその一例としてのインクジェットプリンター1を、装置前方側から見た斜視図である。また図2はインクジェットプリンター1の側断面概略図、図3〜図5はインクジェットプリンター1を装置後方側から見た斜視図であり、図3は「開閉体」としての背面ユニット16及び廃液ユニット21がともに装着された状態を、図4は背面ユニット16のみが引き抜かれた状態を、図5は双方が引き抜かれた状態を、それぞれ示している。
【0031】
また、図6は背面ユニット16の部分拡大斜視図、図7は背面ユニットとプリンター本体とが係合する部位の斜視図、図8は廃液ユニット21の斜視図、図9(A)、(B)は廃液ユニット21を装着する装着部位の構造を模式的に示す説明図である。尚、図9(A)は廃液ユニット21及び背面ユニット22の装着前(装着途中)の状態を、図9(B)は装着後の状態を示している。
【0032】
以下では先ず、インクジェットプリンター1の全体構成を概説する。図1〜図5において符号2は記録用紙にインクジェット記録を行う記録部を、符号3は記録部2の上部に設けられるスキャナ部を、符号4はスキャナ部3の上部に設けられる自動原稿搬送部を、それぞれ示しており、即ちインクジェットプリンター1はインクジェット記録機能に加えてスキャナ機能を備える複合機として構成されている。
【0033】
装置前面において符号5は記録用紙をセットする着脱可能な用紙カセットであり、符号6は記録が行われた用紙が排出される用紙排出口であり、符号7は排出された記録用紙を受ける排紙受けトレイである。
【0034】
符号8は、紙ジャム発生時に用紙搬送路を露呈させる為の前面カバーであり、符号9は電源ボタンや各種印刷設定・記録実行を行う操作ボタン、印刷設定内容や印刷画像のプレビュー表示などを行う表示部、等を備えて成る操作パネルである。更に、装置上部において符号10は原稿セット用トレイを示しており、符号11は排出された原稿を受ける原稿受けトレイを示している。
【0035】
続いて図2を参照しながら記録部2における用紙搬送経路について概説する。尚、図2は記録部2の構成を模式的に示したものであり、全ての構成を示すものではなく、説明に不要な構成要素は図示を省略している。
【0036】
記録部2は2つの用紙給送経路を備えており、1つは装置下部に設けられた用紙カセット5からの用紙給送経路であり、他の1つは装置背面側(図2において右側)に設けられた支持部材30からの用紙給送経路である。尚、破線P1は用紙カセット5から送り出される用紙の通過軌跡を示し、破線P2は支持部材30から送り出される用紙の通過軌跡を示している。
【0037】
用紙カセット5と対向する位置に設けられた符号36で示すローラーは給送ローラーであり、この給送ローラー36は実線と仮想線(符号36’)で示す様に用紙カセット5に対し進退可能に設けられ、用紙カセット5に収容された用紙の最上位のものと接して回転することで、当該最上位の用紙を下流側に送り出す。送り出された用紙は、大径の反転ローラー39によって湾曲反転させられた後、搬送駆動ローラー45及び搬送従動ローラー46に到達する。尚、符号40は反転ローラー39との間で用紙をニップすることにより用紙の分離を行う分離ローラーを示している。
【0038】
一方、支持部材30は用紙を傾斜姿勢に支持するとともに、上部の図示しない揺動軸を中心に揺動することで、支持している用紙の最上位のものを給送ローラー31に圧接させる。給送ローラー31は、回転することにより、圧接している用紙を下流側へ送り出す。尚、符号32は給送ローラー31との間で用紙をニップすることにより用紙の分離を行う分離ローラーを示している。
【0039】
搬送駆動ローラー45及び搬送従動ローラー46は、下流側へと用紙を精密送りするローラー対であり、このローラー対の下流側にはインクジェット式の記録ヘッド49と、用紙を支持する支持部材47とが対向配置されている。
【0040】
記録ヘッド49は、主走査方向(図2の紙面表裏方向)に往復動可能なキャリッジ48の底部に設けられ、主走査方向に移動しながら用紙に対してインクを吐出することにより記録が行われる。
【0041】
尚、キャリッジ48のホーム位置(不図示)には、図示を省略するメンテナンスユニットが設けられている。このメンテナンスユニットは、記録ヘッド49をキャップするキャップユニット(不図示)と、このキャップユニットに負圧を発生させるポンプユニットと、を備えており、記録ヘッド49をキャップした状態で当該キャップ内に負圧を生じさせることにより、インク吐出ノズル(不図示)からインクを吸引する。そして吸引されたインクは、廃液として、図示を省略するチューブを介して後述する廃液ユニット21へと導かれる。
【0042】
次に、記録ヘッド49の下流側において、符号52は用紙の浮きを防止する従動ローラーであり、符号53は回転することにより用紙を排出する排出駆動ローラーであり、符号54は排出駆動ローラー53との間で用紙をニップする排出従動ローラーである。これらローラー対により、記録の行われた用紙は、排紙受けトレイ7に向けて排出される。
【0043】
以上がインクジェットプリンター1の大略構成であり、以下、廃液ユニット21の特に取り付け構造について詳説する。
図3〜図5に示す様に、装置背面には背面ユニット16と、廃液ユニット21とがインクジェットプリンター1(記録部2)の装置本体2aに対して着脱可能に設けられている。
【0044】
廃液ユニット21は、上述した様に記録ヘッド49から打ち捨てられた廃液を貯留する為のボックス状の構成要素であり、装置本体2aを構成する筐体2bに形成された開口2cに装着される。廃液ユニット21が装置本体2aに装着されると、廃液ユニット21に設けられた廃インク受け入れ口(不図示)と、装置本体2a側に設けられた廃インク排出口(不図示)とが接続し、廃液ユニット21内部に廃インクが導入可能な状態となる。
【0045】
廃液ユニット21は、図8に示す様に手前右側に、廃液ユニット21を装置本体2aから引き出す際に手掛かりとなる凹部(手掛かり部)21aが形成されている。ユーザーは、この凹部21aに指を差し入れることで、廃液ユニット21を装置本体2aから引き出せる様になっている。尚、廃液ユニット21を引き出す為の手掛かりとなる部分は凹部21aのみであり、その他に手掛かりとなる凹部、突起等は形成されていない。
【0046】
次に、開閉体としての背面ユニット16は、用紙搬送路(本実施形態では、搬送駆動ローラー45の上流側部分)を露呈させる開口23を開閉するユニット体であり、当該背面ユニット16が装置本体2aに装着された状態では、開口23が閉じられた状態となっている。
【0047】
仮に紙ジャムが生じた場合には、前方の前面カバー8、或いは背面ユニット16を取り外す(開口23を開放する)ことで、用紙搬送路が露呈する。特に本実施形態では、前面カバー8を開放することにより搬送駆動ローラー45から下流側(図2において左側)の用紙搬送路が露呈し、背面ユニット16を取り外す(開口23を開放する)ことで搬送駆動ローラー45から上流側(図2において右側)の用紙搬送路が露呈する様になっている。
【0048】
尚、本実施形態では背面ユニット16は用紙搬送路を形成するガイド部材41と、反転ローラー40とを含んでおり、背面ユニット16を取り外すことで用紙搬送路が大きく開放される様になっている。
【0049】
背面ユニット16は、両サイドにロック部材17を有しており、このロック部材17の端部に形成された操作ボタン部17aを内側に押し込むことで、背面ユニット16の装置本体2aに対するロック状態が解除される様になっている。
【0050】
図7は背面ユニット16に設けられるロック部材17と、装置本体2aに設けられるフレーム18との関係を示すものである。尚、図7においては、背面ユニット16を構成するその他の部材は説明の便宜上図示を省略している。ロック部材17は、背面ユニット16において矢印a方向にスライド可能に設けられるとともに、コイルばね19によって両サイドから外側に突出する方向(図7に示す例では左方向)に付勢された状態に設けられている。
【0051】
ロック部材17には係止フック17bが形成されており、この係止フック17bが、フレーム18に形成された凹部18aに入り込むことで、背面ユニット16が装置本体2aに対してロックされる様になっている。従ってロック部材17の操作ボタン部17aを、コイルばね19の付勢力に抗して押し込むことにより(図7に示す例では右方向)、係止フック17bが凹部18aから外れ、背面ユニット16を装置本体2aから取り外すことが可能となる。尚、図7は一方側のロック構造を示しているが、他方側に設けられたロック構造も同様な構成である。
【0052】
次に、廃液ユニット21の装着構造について説明する。廃液ユニット21の一方側側面には、図8に示す様に廃液ユニット21に貯留された廃液の量に関する情報を保持するICチップ22が設けられており、廃液ユニット21が装置本体2aに装着された状態では、図9(B)に示す様に装置本体2a側に設けられた接点24と電気的に接触することで、インクジェットプリンター1の制御部(不図示)はICチップ22にアクセス可能となる。
【0053】
制御部(不図示)は、例えば記録ヘッド49のメンテナンスを実行する際、想定されるインク排出量を、ICチップ22に保持された累積廃液量を示す数値にインクリメントする。これにより制御部(不図示)は、廃液ユニット21に貯留された廃インクの量を把握することができ、当該廃インク量が廃液ユニット21の廃インク貯留可能量の上限或いは上限よりやや少ない交換水準に達した場合には、ユーザーに対して廃液ユニット21の交換を促す警告を出す。
【0054】
尚、廃液ユニット21が取り外された状態では、ICチップ22にアクセスできない為、制御部(不図示)は、ICチップ22へのアクセス可否によって廃液ユニット21が装着されているか否かを検知することができる。その結果、例えば廃液ユニット21が装着されていない場合には、廃インクが発生する処理動作(例えば、記録ヘッド49のメンテナンス動作)を行わない様にすることで、装置内部で廃インクが垂れ流されることを防止できる。
【0055】
一方、廃液ユニット21の他方側側面には図9(A)、(B)に示す様に凹部21bが形成されており、装置本体2a側にはこの凹部21bに入り込む付勢手段としての板ばね25が設けられている。廃液ユニット21が装置本体2aに装着された状態では、凹部21bに板ばね25が入り込むことで、廃液ユニット21の装着状態が保持される様になっている。加えて、この板ばね25は廃液ユニット21を図9の右上方向に付勢するので、ICチップ22と接点24との接触状態が良好に保たれる様になっている。
【0056】
ここで、図3、図9(B)に示すように、背面ユニット16が装着された状態では、背面ユニット16の一部である側端部16aが、廃液ユニット21の装置本体2aからの引き経路である手前側に位置するとともに、廃液ユニット21の一部を覆った状態となる。更に本実施形態では、側端部16aは、廃液ユニット21を引き抜く際の手掛かりとなる凹部(手掛かり部)21aを覆い隠す様になっている。
【0057】
この様な構成により、背面ユニット16が装着された状態では、廃液ユニット21は引き抜くことができず、廃液ユニット21を引き抜く為には先ず背面ユニット16を取り外す(開口23を開放する)必要がある。
【0058】
以下、この様に構成されたことによる作用効果を説明する。廃液ユニット21の交換頻度は、例えばインクカートリッジ(不図示)の交換頻度に比べて極めて少ないが、廃液ユニット21は廃インクを貯留するものであることから、交換時にユーザーの手を汚損したり、装置内部を汚損したりする虞がある。また、記録ヘッド49のメンテナンス動作実行中に不用意に廃液ユニット21を取り外すと、廃液ユニット21へ廃インクを導くインクチューブ(不図示)から、廃インクが装置内部に垂れ流されてしまう虞もある。
【0059】
加えて、ICチップ22への情報書き込み中に廃液ユニット21が引き抜かれると、ICチップ22に対して情報を正しく書き込むことができない。そうすると、廃液ユニット21の廃インク貯留量を正しく把握できなくなり、その結果装置内部で廃インクが溢れ出る虞がある。
【0060】
従って廃液ユニット21の着脱は、本来的に必要最小限且つ適切な時期に行うことが好ましく、不用意且つ容易に引き抜かれるべきではない。そこで本発明では、紙ジャム処理という非定期且つ発生頻度の低いイベント発生時に取り外されることとなる背面ユニット16によって、廃液ユニット21の一部を覆う様に構成したことから、廃液ユニット21が不用意且つ容易に引き抜かれることを防止できる様になっている。
【0061】
尚、背面ユニット16は紙ジャム処理の為に用紙搬送路を露呈させる為のものであり、廃液ユニット21専用のカバーではないので、装置のコストアップを招くこともない。
【0062】
そして、背面ユニット16が紙ジャム処理の為に用紙搬送路を露呈させる為のものであることから、背面ユニット16が開いた状態では用紙の搬送を正しく行うことができず、即ち背面ユニット16が開いた状態で用紙搬送を行うと、用紙は開口23から出てきてしまう為、ユーザーは背面ユニット16が開いていることを容易に知ることができる。
【0063】
その為、廃液ユニット21が引き抜かれた状態のまま、継続して長い間用紙に対する記録動作が行われることを防止でき、これにより装置内部において廃インクが多量に垂れ流されてしまうこともない。しかも、背面ユニット16の開閉状態を検出する専用のセンサーを設ける必要もない。
【0064】
加えて、本実施形態では廃液ユニット21を引き抜く際に手掛かりとなる凹部21aが、背面ユニット16によって覆われることから、より一層効果的に、廃液ユニット21が不用意且つ容易に引き抜かれることを防止することができる。
【0065】
続いて、図10を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。図10(A)、(B)は、図9(A)、(B)に対応する図であるが、図10(A)、(B)に示す実施形態が図9(A)、(B)に示す実施形態と異なるのは、廃液ユニット21’が、付勢手段としてのコイルばね26によって脱方向(引き抜き方向)に付勢された状態に設けられるとともに、閉状態にある背面ユニット16の側端部16aと係合することによって、装置本体2aにおける装着位置に留まる様構成されている点である。
【0066】
即ち、本実施形態において廃液ユニット21は、それ自身では単独で装着状態になることができず、必ず背面ユニット16と係合する(押される)必要がある。よって、廃液ユニット21に設けられたICチップ22を、廃液ユニット21が装着されている否かを検出する手段としてのみならず、背面ユニット16の開閉状態を検出する手段としても利用することができる。
【0067】
尚、背面ユニット16を装着状態にロックする係止フック17bの配設位置から、廃液ユニット21を覆う側端部16bまでの距離は、廃液ユニット21を確実に保持する観点において短いほうが好ましい。本実施形態では、係止フック17bの位置は、ICチップ22と接点24との接触位置よりも装置外側(図9において左側)に設定されている。これにより、廃液ユニット21を覆う側端部16bに非常に近い位置で背面ユニット16がロックされることとなり、廃液ユニット21を確実に装着位置に保持することができる。
【0068】
以上説明した実施形態は一例であり、これに限られないことは言うまでもない。例えば、本実施形態では背面ユニット16は装置本体2aに対して着脱することで、用紙搬送路を露呈させる開口23を開閉するが、背面ユニット16を例えば装置本体2aに対して回動可能に或いはスライド可能に設け、回動することで或いはスライドすることで開口23を開閉する様に構成しても良い。
【0069】
また、背面ユニット16は用紙搬送路を露呈させる開口を開閉するものであり、廃液ユニット21はこの様な背面ユニット16と係合するが、これに限らず他の開閉体(例えば、インクカートリッジの装着口を開閉するカバーなど、プリンターに設けられたその他の開閉体)の一部を、廃液ユニット21の引き抜き経路に位置するとともに廃液ユニット21の少なくとも一部を覆う様に構成しても良い。
【0070】
また、以上の通り本実施形態では本発明を液体噴射装置の一例としての記録装置、そして更にその一例としてのインクジェットプリンターに適用したが、その他液体噴射装置一般に適用することも可能である。
【0071】
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンター、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含むものである。
【0072】
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0073】
1 インクジェットプリンター、2 記録部、2a 装置本体、2b 筐体、2c 開口、3 スキャナ部、4 自動原稿搬送部、5 用紙カセット、6 用紙排出口、7 排紙受けトレイ、8 前面カバー、9 操作パネル、10 原稿セット用トレイ、11 原稿受けトレイ、16 背面ユニット(開閉体)、16a 側端部、17 ロック部材、17a 操作ボタン部、17b 係止フック、18 フレーム、18a 凹部、19 コイルばね、20 フレーム、21 メンテナンスボックス、21a 凹部、21b 凹部、22 ICチップ、23 開口、24 接点、25 板ばね、26 コイルばね、30 用紙支持部材、31 給送ローラー、32 分離ローラー、36 給送ローラー、39 反転ローラー、40 分離ローラー、41 ガイド部材、45 搬送駆動ローラー、46 搬送従動ローラー、47 支持部材、48 キャリッジ、49 インクジェット記録ヘッド、52 従動ローラー、53 排出駆動ローラー、54 排出従動ローラー、P1、P2 記録用紙、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドから打ち捨てられた廃液を貯留する廃液ユニットと、
被噴射媒体を搬送する搬送路を露呈させる開口を開閉可能に設けられた開閉体と、を備えた液体噴射装置であって、
前記廃液ユニットが、前記液体噴射装置の装置本体に対して着脱可能に設けられ、
前記廃液ユニットが前記装置本体に装着されるとともに前記開閉体が前記開口を閉じた状態において、前記開閉体の少なくとも一部が前記廃液ユニットの引き抜き経路に位置するとともに前記廃液ユニットの少なくとも一部を覆っている、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、前記廃液ユニットが、当該廃液ユニットを引き抜く際に手掛かりとなる手掛かり部を有し、
前記開閉体が、前記開口を閉じた状態において前記手掛かり部を覆うことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体噴射装置において、前記廃液ユニットには、当該廃液ユニットに貯留された廃液量に関する情報を保持する記憶手段が設けられ、前記廃液ユニットが前記液体噴射装置の装置本体に装着された際、前記記憶手段に対してアクセス可能に構成されている、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴射装置において、前記廃液ユニットは、付勢手段によって脱方向に付勢された状態に設けられるとともに、前記開口を閉じた状態にある前記開閉体と係合することによって前記装置本体における装着位置に留まる構成を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−179729(P2012−179729A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42296(P2011−42296)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】