説明

液体噴射装置

【課題】安定した払拭動作が可能な液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】液体を噴射する複数のノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記ノズル形成面のうちそれぞれ異なる領域を被う複数のキャップ部と、前記ノズル形成面に当接された状態で、前記ノズル形成面のうち異なる前記キャップ部によって覆われる前記領域をそれぞれ異なる方向に払拭する払拭動作を行う払拭部と、前記払拭動作に先立ち、前記液体噴射ヘッド及び前記払拭部のうち少なくとも一方の姿勢を前記払拭部の払拭方向に応じて調整する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置としてのインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)では、ノズルから噴射される液滴の良好な吐出状態を維持又は回復するためのメンテナンス処理を定期的に行っている。その具体的なメンテナンス動作として、例えば、噴射によりノズル面に付着してしまったインク(流体)等をワイパーで払拭することによってノズル面に付着した付着物を除去する払拭動作などがある。例えば特許文献1には、ヘッドのノズル面のうち隣接する2つの領域に対して、それぞれ反対の方向にワイパーを移動させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−128963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成においては、ワイパーをノズル面に接触させた場合、ワイパーの先端が当該ワイパーの移動方向の前方に曲がる場合がある。この状態で払拭動作を行うと、ワイパーの先端が移動方向の後方に再度曲がるように変形するため、ワイパーとノズル面との間で安定した当接状態を保持することが困難となり、安定した払拭動作を行う上で問題となっていた。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、安定した払拭動作が可能な液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、前記ノズル形成面のうちそれぞれ異なる領域を被う複数のキャップ部と、前記ノズル形成面に当接された状態で、前記ノズル形成面のうち異なる前記キャップ部によって覆われる前記領域をそれぞれ異なる方向に払拭する払拭動作を行う払拭部と、前記払拭動作に先立ち、前記液体噴射ヘッド及び前記払拭部のうち少なくとも一方の姿勢を前記払拭部の払拭方向に応じて調整する制御部とを備える。
【0007】
本発明によれば、ノズル形成面に当接された状態で、当該ノズル形成面のうち異なるキャップ部によって覆われる領域をそれぞれ異なる方向に払拭する払拭動作を行う払拭部を備え、払拭動作に先立ち、液体噴射ヘッド及び払拭部のうち少なくとも一方の姿勢を払拭部の払拭方向に応じて調整することとしたので、ノズル形成面と払拭部との間をスムーズに当接させることができる。これにより、安定した払拭動作を行わせることができる。
【0008】
上記の液体噴射装置において、複数の前記キャップ部は、前記ノズル形成面のうち互いに隣接する二つの領域をそれぞれ一つずつ覆うように配置され、前記払拭部は、隣接する前記二つの領域の間の位置から前記二つの領域のそれぞれを反対方向に払拭することが好ましい。
本発明によれば、複数のキャップ部がノズル形成面のうち互いに隣接する二つの領域をそれぞれ一つずつ覆うように配置され、払拭部が隣接する二つの領域の間の位置から当該二つの領域のそれぞれを反対方向に払拭することとしたので、一方の領域を払拭したときの他方の領域に液体が流れ込むのを防ぐことができる。
【0009】
上記の液体噴射装置において、前記払拭部は、板状に形成されており、前記制御部は、前記ノズル形成面に対する前記払拭部の傾斜角度を変化させることで前記姿勢を調整することが好ましい。
本発明によれば、払拭部が板状に形成されており、制御部がノズル形成面に対する払拭部の傾斜角度を変化させることで姿勢を調整することとしたので、板状の払拭部を払拭方向に沿った姿勢でノズル形成面に当接させることができる。
【0010】
上記の液体噴射装置において、前記制御部は、前記払拭部のうち前記ノズル形成面に当接される部分が前記払拭部の他の部分に比べて前記払拭方向の後方に傾くように前記姿勢を調整することが好ましい。
本発明によれば、払拭部のうちノズル形成面に当接される部分が払拭部の他の部分に比べて払拭方向の後方に傾くように姿勢が調整されるので、払拭動作中の払拭部の姿勢を安定させることができる。
【0011】
上記の液体噴射装置において、前記制御部は、前記払拭部の前記姿勢を調整する第一調整部を有することが好ましい。
本発明によれば、払拭部の姿勢を調整する第一調整部が設けられるので、払拭部の姿勢を調整することでノズル形成面と払拭部との間をスムーズに当接させることができる。これにより、安定した払拭動作を行わせることができる。
【0012】
上記の液体噴射装置において、前記制御部は、前記液体噴射ヘッドの前記姿勢を調整する第二調整部を有することが好ましい。
本発明によれば、液体噴射ヘッドの姿勢を調整する第二調整部が設けられるので、液体噴射ヘッドの姿勢を調整することでノズル形成面と払拭部との間をスムーズに当接させることができる。また、払拭部と液体噴射ヘッドの両方の姿勢をそれぞれ調整することもできる。これにより、安定した払拭動作を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の全体構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る印刷装置の一部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る印刷装置の一部の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係る印刷装置の制御装置の構成を示すブロック図。
【図5】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図6】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図7】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図8】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図9】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図10】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図11】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図12】本実施形態に係る印刷装置の動作の過程を示す図。
【図13】本実施形態に係る印刷装置の他の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置PRT(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置PRTとしてインクジェット型の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0015】
図1に示す印刷装置PRTは、例えば、紙、プラスチックシートなどのシート状の媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、筐体PBと、媒体Mにインクを噴射するインクジェット部IJと、当該インクジェット部IJにインクを供給するインク供給部ISと、媒体Mを搬送する搬送部CVと、インクジェット部IJの保全動作を行うメンテナンス部MNと、これら各部を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0016】
筐体PBは、一方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット部IJ、インク供給部IS、搬送部CV、メンテナンス部MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、プラテン13が設けられている。プラテン13は、媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、媒体Mに向けられた平坦な支持面13aを有している。当該支持面13aは、媒体Mを支持する面である。
【0017】
搬送部CVは、搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーターなどを有している。搬送部CVは、媒体Mがプラテン13上を通過するように当該媒体Mを筐体PBの短手方向に搬送する。搬送部CVは、制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御される。
【0018】
インクジェット部IJは、インクを噴射するヘッドHと、当該ヘッドHを保持して移動させるヘッド移動部ACとを有している。ヘッドHは、プラテン13上に送り出された媒体Mに向けてインクを噴射する。ヘッドHは、インクを噴射するノズル形成面Haを有している。ノズル形成面Haは、支持面13aに向けられた状態で配置されている。
【0019】
ヘッド移動部ACは、ヘッドHを筐体PBの長手方向に移動させる。ヘッド移動部ACは、ヘッドHを固定させるキャリッジ4を有している。キャリッジ4は、筐体PBの長手方向に架けられたガイド軸8に当接されている。ヘッド移動部ACは、当該キャリッジ4をガイド軸8に沿って移動させる部、例えばパルスモーター9、駆動プーリー10、遊転プーリー11及びタイミングベルト12などを有している。
【0020】
メンテナンス部MNは、媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域(ホームポジション)に設けられている。メンテナンス部MNは、ヘッドHのノズル形成面Haを覆うキャッピング部CPや、当該ノズル形成面Haを払拭するワイピング部(払拭部)WPなどを有している。
【0021】
インク供給部ISは、ヘッドHにインクを供給する。インク供給部ISには、複数のインクカートリッジICが収容されている。本実施形態の印刷装置PRTは、インクカートリッジICがヘッドHとは異なる位置に収容される構成(オフキャリッジ型)である。
【0022】
インク供給部ISは、各インクカートリッジICの内部の圧力を個別に調整可能な圧力調整部6を有している。インク供給部ISは、ヘッドHとインクカートリッジICとを接続する供給チューブTBを有している。供給チューブTBは、インクカートリッジIC毎に設けられている。
【0023】
図2は、キャッピング部CPを+X側から見たときの構成を示す図である。図2には、キャッピング部CPとヘッドとの関係を説明するため、ヘッドHの構成についても示している。
図2に示すように、ヘッドHのノズル形成面Haには、複数のノズルNZが形成されている。当該複数のノズルNZは、ブラックインクを噴射するブラックノズルNBと、カラーインクを噴射するカラーノズルNC、NM、NYとを有している。ブラックノズルNB及びカラーノズルNC、NM、NYは、図2のX方向に一列に並んで配置されている。このように、ノズル形成面Haには、ブラックノズルNBが形成された第一領域41と、カラーノズルNC、NM、NYが形成された第二領域42とがY方向に隣接して配置されている。
【0024】
キャッピング部CPは、第一キャップ部51及び第二キャップ部52を有している。第一キャップ部51及び第二キャップ部52は、一体的に形成されており、Z方向に移動可能に設けられている。第一キャップ部51と第二キャップ部52とは、仕切り部50によって仕切られている。第一キャップ部51は、ノズル形成面Haの第一領域41を封止する。第二キャップ部52は、ノズル形成面の第二領域42を封止する。
【0025】
第一キャップ部51及び第二キャップ部52は、ポンプなどの吸引部53に接続されている。第一キャップ部51は、接続管54を介して吸引部53に接続されている。第二キャップ部52は、接続管55を介して吸引部53に接続されている。接続管54と接続管55とは、三方弁56を介して接続されている。三方弁56は、吸引部53の接続先を第一キャップ部51と第二キャップ部52との間で切り替える。このため、第一キャップ部51及び第二キャップ部52は、それぞれ封止した領域を独立して吸引可能である。
【0026】
図3は、ワイピング部WPを+X側から見たときの構成を示す図である。図3には、ワイピング部WPとヘッドHとの関係を説明するため、ヘッドHの構成についても示している。
図3に示すように、ワイピング部WPは、ワイパー61、ワイパー駆動部(第一調整部)62及びワイパー保持部62を有している。
【0027】
ワイパー61は、矩形の板状に形成されている。ワイパー61は、樹脂材料などの材料を用いて弾性変形可能に形成されている。ワイパー61は、ワイパー保持部62によって保持されている。ワイパー61は、+Z側の先端部61aがノズル形成面Haに向けられている。ワイパー61は、ノズル形成面Haに垂直に立った状態で配置されている。
【0028】
ワイパー駆動部62は、ワイパー61の位置及び姿勢を調整する。具体的には、ワイパー駆動部62は、ワイパー61をZ方向に移動させてノズル形成面Haに当接させるとともに、ワイパー61をX軸周りの方向(θX方向)に回動させることでノズル形成面Haに当接される姿勢を調整する。ワイパー駆動部62による駆動動作は、制御装置CONTによって制御される。
【0029】
図4は印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置IP、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置MRなどが接続されており、上述した搬送部CVや、ヘッド移動部AC、メンテナンス部MN等が接続されている。制御装置CONTは、メンテナンス部MNのうち例えばキャッピング部CPやワイピング部WP(ワイパー駆動部62)などを制御可能である。
【0030】
ヘッドHは、ノズルNZごとに設けられた圧電振動子を有している。制御装置CONTは、当該圧電振動子に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器に接続されている。駆動信号発生器には、ヘッドHの圧電振動子に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器は、各圧電振動子に対して、個別に駆動信号を供給可能に設けられている。
【0031】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。制御装置CONTは、印刷装置PRTの動作として、ヘッドHによる印刷動作や、メンテナンス部MNによるヘッドHのクリーニング動作などを行わせる。
【0032】
ヘッドHによる印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送部CVによって媒体MをヘッドHの−Z側に配置させる。媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、ヘッドHを移動させつつ、印刷する画像の画像データに基づいてノズルNZに係る駆動信号発生器から圧電振動子に駆動信号を入力する。圧電振動子に駆動信号が入力されると、圧電振動子が伸縮し、ノズルNZからインクが噴射される。ノズルNZから噴射されたインクによって、媒体Mに所望の画像が形成される。
【0033】
次に、クリーニング動作を行わせる場合を説明する。クリーニング動作は、ヘッドHの吐出特性を確保するために行われる。制御装置CONTは、上記クリーニング動作として、キャッピング部CPを用いた吸引動作を行わせる。
【0034】
吸引動作において、制御装置CONTは、まず、キャッピング動作を行わせる。制御装置CONTは、ヘッドHをホームポジションに移動させ、ヘッドHとキャッピング部CPとを対向させる。このとき、ブラックノズルNBと第一キャップ部51とを対向させると共に、カラーノズルNC、NM、NYと第二キャップ部52とを対向させる。その後、制御装置CONTは、キャッピング部CPをヘッドH側へ移動させてノズル形成面Haを押圧させる。この動作により、ノズル形成面HaのうちブラックノズルNBが形成された第一領域41が第一キャップ部51によって封止され、カラーノズルNC、NM、NYが形成された第二領域42が第二キャップ部52によって封止される。
【0035】
この状態で、制御装置CONTは、吸引部53を用いて吸引動作を行わせる。本実施形態では、第一キャップ部51と第二キャップ部52とで独立して吸引動作を行わせることができる。ここでは、まずカラーノズルNC、NM、NYの吸引動作を行う場合を例に挙げて説明する。
【0036】
制御装置CONTは、吸引部53と接続管55とが接続されると共に、吸引部53と接続管54とが接続されないように、三方弁56を調整する。その後、制御装置CONTは、吸引部53を用いて第二キャップ部52の内部を吸引させる。この動作により、図5に示すように、カラーノズルNC、NM、NYからカラーインクD1が噴射される。
【0037】
吸引動作の後、制御装置CONTは、ワイピング部WPを用いて払拭動作を行わせる。まず制御装置CONTは、吸引動作を行ったカラーノズルNC、NM、NYが設けられた第二領域42に対して払拭動作を行わせる。払拭動作を行わせるのに先立ち、制御装置CONTは、ワイパー61の姿勢を調整させる。具体的には、制御装置CONTは、図6に示すように、ワイパー駆動部63を用いてワイパー61を図中反時計回りに回動させる。このときの回動角度は、例えば5°〜10°程度である。この動作により、ワイパー61の先端部61aがワイパー保持部62に対して−Y側に配置されるように当該ワイパー61がノズル形成面Haに対して傾いた状態となる。
【0038】
ワイパー61を回動させた後、制御装置CONTは、ワイピング部WPを+Z側へ移動させ、ワイパー61の先端部61aをノズル形成面Haに当接させる。このとき、図7に示すように、制御装置CONTは、先端部61aをノズル形成面Haのうち第一領域41と第二領域42との間に当接させる。
【0039】
ワイパー61をノズル形成面Haに当接させた後、制御装置CONTは、図8に示すように、ヘッドHを−Y側へ移動させ、ワイパー61とヘッドHとを相対的に移動させる。この動作により、ノズル形成面Haに当接されたワイパー61は、ヘッドHの移動に伴って第二領域42を払拭する。当該払拭動作におけるワイパー61の払拭方向は、ヘッドHの移動方向とは逆向き(+Y方向)となる。つまり、ワイパー61は、第一領域41と第二領域42との間の位置から第二領域42側へ+Y方向にノズル形成面Haの第二領域42を払拭する。
【0040】
このように、制御装置CONTは、払拭動作に先立ち、ワイパー61の先端部61aがワイパー61の他の部分に比べて払拭方向の後方に配置されるようにワイパー61を傾けたことになる。図8に示すように、払拭動作においてはワイパー61の先端部61aは払拭方向の後方へ変形するため、安定した払拭動作が行われる。
【0041】
一方、ブラックノズルNBのクリーニング動作を行う場合、制御装置CONTは、上記同様のキャップ動作を行わせる。その後、制御装置CONTは、吸引部53と接続管54とが接続されると共に、吸引部53と接続管55とが接続されないように、三方弁56を調整する。この状態で、制御装置CONTは、吸引部53を用いて第一キャップ部51の内部を吸引させる。この動作により、図9に示すように、ブラックノズルNBからブラックインクD2が噴射される。
【0042】
次に、制御装置CONTは、吸引動作を行ったブラックノズルNBが設けられた第一領域41に対して払拭動作を行わせる。払拭動作を行わせるのに先立ち、制御装置CONTは、ワイパー61の姿勢を調整させる。具体的には、制御装置CONTは、図10に示すように、ワイパー駆動部63を用いてワイパー61を図中時計回りに回動させる。このときの回動角度は、例えば5°〜10°程度である。この動作により、ワイパー61の先端部61aがワイパー保持部62に対して+Y側に配置されるように当該ワイパー61がノズル形成面Haに対して傾いた状態となる。
【0043】
ワイパー61を回動させた後、制御装置CONTは、ワイピング部WPを+Z側へ移動させ、ワイパー61の先端部61aをノズル形成面Haに当接させる。このとき、図11に示すように、制御装置CONTは、先端部61aをノズル形成面Haのうち第一領域41と第二領域42との間に当接させる。
【0044】
ワイパー61をノズル形成面Haに当接させた後、制御装置CONTは、図12に示すように、ヘッドHを+Y側へ移動させ、ワイパー61とヘッドHとを相対的に移動させる。この動作により、ノズル形成面Haに当接されたワイパー61は、ヘッドHの移動に伴ってノズル形成面Haを払拭する。当該払拭動作におけるワイパー61の払拭方向は、ヘッドHの移動方向とは逆向き(−Y方向)となる。つまり、ワイパー61は、第一領域41と第二領域42との間の位置から第一領域41側へ−Y方向にノズル形成面Haの第一領域41を払拭する。このため、第一領域41を払拭する場合には、上記の第二領域42の払拭時と比べて、ノズル形成面Haに対して反対方向にワイパー61が移動することになる。
【0045】
このように、制御装置CONTは、払拭動作に先立ち、ワイパー61の先端部61aがワイパー61の他の部分に比べて払拭方向の後方に配置されるようにワイパー61を傾けたことになる。図12に示すように、払拭動作においてはワイパー61の先端部61aは払拭方向の後方へ変形するため、安定した払拭動作が行われる。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、ノズル形成面Haに当接された状態で、当該ノズル形成面Haのうち第一キャップ部51及び第二キャップ部52によって覆われる第一領域41及び第二領域42をそれぞれ異なる方向(反対方向)に払拭する払拭動作を行うワイピング部WPを備え、払拭動作に先立ち、ワイピング部WPの姿勢を払拭方向に応じて調整することとしたので、ノズル形成面Haとワイピング部WPとの間をスムーズに当接させることができる。これにより、安定した払拭動作を行わせることができる。
【0047】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、払拭動作に先立ちワイピング部WPの姿勢を払拭方向に応じて調整する構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図13に示すように、ヘッドHを図中時計回り又は反時計回り(X軸周り)に回動させる回動部(第二調整部)70が設けられた構成であっても構わない。
【0048】
図13には、第二領域42を払拭する場合におけるヘッドHの傾斜状態が示されている。図13に示すように、この場合には、ヘッドHを−Y側に移動させるため、ノズル形成面Haに対してワイパー61の先端部61aが払拭方向(+Y方向)の後方に傾くようにヘッドHの姿勢が調整される。これに対して、第一領域41を払拭する場合には、ヘッドHを+Y側に移動させるため、ノズル形成面Haに対してワイパー61の先端部61aが払拭方向(−Y方向)の後方に傾くように、ヘッドを図中反時計回りに回動させる。なお、図13に示す構成においては、ワイピング部WP及びヘッドHの両方を傾けるようにしても構わない。
【0049】
上記実施形態では、印刷方式としてインクジェット方式を採用した印刷装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の方式の印刷装置に変更することもできる。また、印刷装置に限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等、他の記録装置であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。
【0050】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。
【0051】
ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
PRT…印刷装置 MN…メンテナンス部 CONT…制御装置 H…ヘッド Ha…ノズル形成面 CP…キャッピング部 WP…ワイピング部 NZ…ノズル NB…ブラックノズル NC、NM、NY…カラーノズル 41…第一領域 42…第二領域 51…第一キャップ部 52…第二キャップ部 61…ワイパー 62…ワイパー駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズルが形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドと、
前記ノズル形成面のうちそれぞれ異なる領域を被う複数のキャップ部と、
前記ノズル形成面に当接された状態で、前記ノズル形成面のうち異なる前記キャップ部によって覆われる前記領域をそれぞれ異なる方向に払拭する払拭動作を行う払拭部と、
前記払拭動作に先立ち、前記液体噴射ヘッド及び前記払拭部のうち少なくとも一方の姿勢を前記払拭部の払拭方向に応じて調整する制御部と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
複数の前記キャップ部は、前記ノズル形成面のうち互いに隣接する二つの領域をそれぞれ一つずつ覆うように配置され、
前記払拭部は、隣接する前記二つの領域の間の位置から前記二つの領域のそれぞれを反対方向に払拭する
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記払拭部は、板状に形成されており、
前記制御部は、前記ノズル形成面に対する前記払拭部の傾斜角度を変化させることで前記姿勢を調整する
請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記払拭部のうち前記ノズル形成面に当接される部分が前記払拭部の他の部分に比べて前記払拭方向の後方に傾くように前記姿勢を調整する
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記払拭部の前記姿勢を調整する第一調整部を有する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記液体噴射ヘッドの前記姿勢を調整する第二調整部を有する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−218238(P2012−218238A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84668(P2011−84668)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】