説明

液体噴射装置

【課題】液体噴射ヘッドを保護することができ、かつキャップを液体噴射ヘッドの並列方向に対して平行移動することができる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ヘッド保護部材23は、サブキャリッジ26に対する取付側とは反対側の先端部23aに、液体噴射ヘッド18側から当該液体噴射ヘッド側とは反対側の外側に向けて液体噴射ヘッドの並列方向に対して上り傾斜した傾斜面23cを有し、先端部の先端面は、ヘッド固定部材における各液体噴射ヘッドのノズル形成面53に対し、同一面上又はヘッド固定部材から離隔する側に位置し、キャップ59、60のうちの一つがヘッド保護部材に対向すると共に残りのキャップがそれぞれ液体噴射ヘッドのノズル形成面に当接した状態において、ヘッド保護部材に対向したキャップを当該ヘッド保護部材に当接させることなく逃す凹部23dが傾斜面の一部に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルに連通する圧力室に圧力変動を与えて、圧力室内の液体をノズルから噴射させる液体噴射ヘッドを備えるインクジェット式プリンター等の液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体を噴射(吐出)可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液滴状のインクを記録紙等の記録媒体(着弾対象)に対して噴射・着弾させることで画像等の記録を行うインクジェット式プリンター(以下、単にプリンターという。)等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro
Luminescence)ディスプレイ、或いはFED(面発光ディスプレイ)等のディスプレイ製造装置においては、色材や電極等の液体状の各種材料を、画素形成領域や電極形成領域等に対して噴射するためのものとして、液体噴射装置が用いられている。
【0003】
近年、上記プリンターには、ノズルを複数列設してなるノズル群を有する記録ヘッドがサブキャリッジなどのヘッド固定部材に複数並べられて固定されたものを1つのヘッドユニットとしたものがある。また、このプリンターには、各記録ヘッドに対応してキャップが複数配置されたキャッピング機構を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。キャップは、例えば、エラストマー等の弾性材により上面(記録ヘッドのノズル形成面と対向する側の面)が開口したトレイ状に構成されている。そして、キャッピング機構は、記録ヘッドが記録媒体等に対して画像等の印刷を行わない休止状態にあるときや、記録ヘッドのノズルからインクや気泡等を強制的に吸引する吸引動作を行うときに、キャップの上端を記録ヘッドのノズル形成面に密接させて封止(キャッピング)するように構成されている。ノズル形成面にキャップが密接することで形成されるキャップ内の空部(以下、封止空部という。)は、排液チューブおよび吸引ポンプを通じて排液タンクに連通している。そして、吸引ポンプを作動させることで、排液チューブを通じて封止空部が負圧化され、これにより、ノズルからインクや気泡が封止空部内に排出されるようになっている。封止空部内に排出されたインク等は、排液チューブを通じて排液タンク側に排出される。
【0004】
また、サブキャリッジに記録ヘッドの側面やノズル形成面を保護する保護突起を形成したプリンターも提案されている。この保護突起は、キャリッジにおける記録ヘッドの並列方向の端部に設けられている。また、保護突起は、記録ヘッドの側面と平行に下方(記録動作時における記録媒体側)に向かって記録ヘッドのノズル形成面の近傍まで突出されており、保護突起の先端は、記録ヘッドのノズル形成面と同一面又はそれよりも下方に位置している。この保護突起を設けることで、記録紙等に対して記録ヘッドからインクを噴射させて画像等を印刷する際に、記録ヘッドに対して記録紙等が接触することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−273109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記プリンターでは、複数の記録ヘッドに対応する全てのキャップにインク吸引機能を持たせると構造が複雑になり、コストアップになっている。このため、複数の記録ヘッドに対応するキャップのうち一部のキャップにだけインク吸引機能を持たせ、記録ヘッドまたはキャップを、記録ヘッドの並列方向に相対的に移動させて、そのうちのインク吸引機能を有するキャップを吸引対象の記録ヘッドに当接させて吸引を行う構成を採用するものが開発されつつある。この構成によれば、全てのキャップに吸引機能を持たせなくても、全ての記録ヘッドに対して吸引処理(吸引動作)を行うことができる。しかしながら、このようなプリンターでは、何れかのキャップが保護突起に対向する状態で、キャッピングを行うと、キャップが保護突起と干渉する場合があった。この場合、キャップに付着していたインクが保護突起に移る虞がある。そして、保護突起に付着したインクが印刷中の記録紙等に垂れ落ちる可能性もあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体噴射ヘッドを保護することができ、かつキャップを液体噴射ヘッドの並列方向に対して平行移動することができる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射装置は、ノズル形成面に形成されたノズルから着弾対象に対して液体を噴射する液体噴射ヘッドが複数並列に取り付けられたヘッド固定部材を有する液体噴射ヘッドユニットと、
前記液体噴射ヘッドの並列方向の端に位置する液体噴射ヘッドに対して当該並列方向の外側に隣り合わせで配置され、当該液体噴射ヘッドの側面を保護する保護部材と、
前記ノズルを覆うキャップを、前記液体噴射ヘッドユニットにおける各液体噴射ヘッドと同数かつ各液体噴射ヘッドの配置間隔と同間隔で前記並列方向に列設させたキャップ群と、
を備え、
該キャップ群は、前記液体噴射ヘッドユニットの各液体噴射ヘッドに対し前記並列方向に平行移動可能に構成され、かつ、前記ノズル形成面に当接する状態に変換可能であり、
前記保護部材は、先端部に、前記液体噴射ヘッド側から当該液体噴射ヘッド側とは反対側の外側に向けて上り傾斜した傾斜面を有し、
前記キャップのうちの一つが前記保護部材に対向すると共に残りのキャップがそれぞれ液体噴射ヘッドのノズル形成面に当接した状態において前記保護部材に対向したキャップを当該保護部材に当接させることなく逃す凹部が、前記傾斜面の一部に設けられたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、キャップのうちの一つが保護部材に対向し、残りのキャップがそれぞれ液体噴射ヘッドのノズル形成面に当接した状態においても、保護部材の凹部の内側にキャップが逃されるので、保護部材がキャップと干渉することが防止される。これにより、キャップに付着した液体が保護部材に付着することが抑制される。また、液体噴射ヘッドユニットに対してヘッド並列方向の側方から着弾対象が接触したときに保護部材は着弾対象を傾斜面に沿って下方、即ち、ヘッド固定部材から遠ざかる方に逃がすことができ、着弾対象が当接した際の衝撃を緩和することができる。このように、保護部材は、液体噴射ヘッドの保護機能を確保しつつも、キャッピング時にキャップと干渉しない構成である。このため、キャップ群のうち少なくとも1つのキャップに対して吸引手段を設け、液体噴射ヘッドとキャップ群とを相対的に移動させることで、ヘッド固定部材における全ての液体噴射ヘッドに対して吸引動作が可能な構成を採用することができる。即ち、キャップ群における全てのキャップに吸引手段を備える必要がなく、構造を簡略化できる。
【0010】
上記構成において、前記凹部は、前記ノズル形成面に平行な面に対して前記傾斜面より急な第1凹部傾斜面と、該第1凹部傾斜面より前記液体噴射ヘッドの並列方向に対して外側に形成され、前記ノズル形成面に平行な面に対して前記傾斜面より緩やかな第2凹部傾斜面と、を有することが望ましい。
【0011】
この構成によれば、万一、当該凹部内に着弾対象が進入した場合に当該着弾対象を下方に逃す機能を保護部材に持たせることができる。即ち、保護部材は凹部内に進入した着弾対象を第1凹部傾斜面および第2凹部傾斜面に沿って下方に逃がすことができ、着弾対象が凹部内で当接した際の衝撃を緩和することができる。
【0012】
上記各構成において、前記キャップ群を構成するキャップのうち少なくとも一つは、前記ノズル形成面に当接した状態で、吸引手段による吸引力によって当該ノズル形成面のノズルから液体を吸引可能に構成されたことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プリンターの内部構成の一部を示す斜視図である。
【図2】プリンターの正面図である。
【図3】プリンターの平面図である。
【図4】プリンターの右側面図である。
【図5】キャリッジアセンブリーの平面図である。
【図6】キャリッジアセンブリーの正面図である。
【図7】キャリッジアセンブリーの右側面図である。
【図8】キャリッジアセンブリーの底面図である。
【図9】図5におけるA−A線断面図である。
【図10】ヘッドユニットの斜視図である。
【図11】ヘッドユニットの平面図である。
【図12】ヘッドユニットの正面図である。
【図13】ヘッドユニットの下面図である。
【図14】ヘッドユニットの右側面図である。
【図15】キャリッジアセンブリーの構成をより簡略化して示した断面図である。
【図16】記録ヘッドの構成を説明する斜視図である。
【図17】(a)ヘッド保護部材の底面図、(b)B−B線拡大断面図、(c)C−C線拡大断面図である。
【図18】ヘッドユニットおよびキャップ群の説明図であり、(a)キャップ群が各記録ヘッドに当接した状態の側面図、(b)キャップ群が各記録ヘッドから離間した状態の側面図、(c)キャップ群が横に移動して記録ヘッドに当接した状態の側面図、(d)領域Dの拡大断面図である。
【図19】その他の実施形態におけるヘッドユニットおよびキャップ群の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンターと略記する)に適用した場合を例示する。
【0015】
図1はプリンター1の内部構成の一部を示す斜視図、図2はプリンター1の正面図、図3はプリンター1の平面図、図4はプリンター1の右側面図である。例示したプリンター1は、記録用紙、布、フィルム(何れも図示せず)等の記録媒体(本発明における着弾対象の一種)に向けて、液体の一種であるインクを噴射する。このプリンター1は、フレーム2の内部にキャリッジアセンブリー3(ヘッドユニット保持部材の一種)を、記録媒体の送り方向に交差する方向である主走査方向(図1中に符号Xで示す)に往復移動可能に搭載している。プリンター1の背面側のフレーム2の内壁には、当該フレーム2の長手方向に沿って長尺な上下一対のガイドロッド4a,4bが互いに間隔を空けて平行に取り付けられている。キャリッジアセンブリー3は、その背面側に設けられた軸受け部7(図7参照。)等にガイドロッド4a,4bが嵌合することで、これらのガイドロッド4a,4bに対して摺動可能に支持されている。
【0016】
フレーム2の背面側であって主走査方向Xの一端側(図3における右端部)には、キャリッジアセンブリー3を移動させるための駆動源としてのキャリッジモーター8が配設されている。このキャリッジモーター8の駆動軸は、フレーム2の背面側から内面側に突出しており、その先端部分には、駆動プーリー(図示せず)が接続されている。この駆動プーリーは、キャリッジモーター8の駆動により回転される。また、この駆動プーリーに対して主走査方向Xにおける反対側(図3における左端部)の位置には、遊転プーリー(図示せず)が設けられている。これらのプーリーには、タイミングベルト9が架け渡されている。このタイミングベルト9には、キャリッジアセンブリー3が接続されている。そして、キャリッジモーター8が駆動されると、駆動プーリーの回転に伴ってタイミングベルト9が回動し、キャリッジアセンブリー3がガイドロッド4a,4bに沿って主走査方向Xに移動する。
【0017】
フレーム2の背面の内壁には、リニアスケール10(エンコーダーフィルム)が、主走査方向Xに沿ってガイドロッド4a,4bと平行に張設されている。リニアスケール10は、透明な樹脂製フィルムによって作製された帯状(バンド状)部材であり、例えば、透明なベースフィルムの表面に帯幅方向を横断する不透明なストライプが複数印刷されたものである。各ストライプは、同じ幅とされ、帯長手方向に一定ピッチで形成されている。また、キャリッジアセンブリー3の背面側には、このリニアスケール10のストライプを光学的に読み取るためのリニアエンコーダーが設けられている(図示せず。)。リニアエンコーダーは、例えば、互いに対向配置された一対の発光素子と受光素子とによって構成され、リニアスケール10の透明部分での受光状態とストライプ部分での受光状態の差異に応じてエンコーダーパルスを出力するようになっている。即ち、リニアエンコーダーは位置情報出力手段の一種であり、キャリッジアセンブリー3の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向Xにおける位置情報として出力する。これにより、プリンター1の制御部(図示せず)は、このリニアエンコーダーからのエンコーダーパルスに基づいてキャリッジアセンブリー3の走査位置を認識しながら、ヘッドユニット17による記録媒体に対する記録動作を制御することができる。そして、プリンター1は、主走査方向Xの一端側のホームポジション(キャリッジアセンブリー3が駆動していないときの待機位置)から反対側の端部(フルポジション)へ向けてキャリッジアセンブリー3が移動する往動時と、フルポジションからホームポジション側にキャリッジアセンブリー3が戻る復動時との双方向で記録紙上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録処理が可能に構成されている。
【0018】
図3に示すように、キャリッジアセンブリー3には、ヘッドユニット17の各記録ヘッド18に各色のインクを供給するためのインク供給チューブ14と、駆動信号等の信号を供給するための信号ケーブル15が接続されている。また、後で詳説するが、ホームポジションで待機するキャリッジアセンブリー3の下方には、各記録ヘッド18のノズル形成面53をキャッピングするキャップ群が設けられている。その他、プリンター1には、図示しないが、インクを貯留したインクカートリッジ(液体供給源)が着脱可能に取り付けられるカートリッジ装着部、記録紙を搬送する搬送部等が設けられている。
【0019】
図5はキャリッジアセンブリー3の平面(上面)図、図6はキャリッジアセンブリー3の正面図、図7はキャリッジアセンブリー3の右側面図、図8はキャリッジアセンブリー3の底面図である。また、図9は図5におけるA−A線断面図である。なお、図5は、キャリッジカバー13が外された状態を図示している。キャリッジアセンブリー3は、後述するヘッドユニット17(本発明における液体噴射ヘッドユニットの一種。)を内部に搭載するキャリッジ本体12と、このキャリッジ本体12の上部開口を塞ぐキャリッジカバー13とから成り上下に分割可能な中空箱体状の部材である。キャリッジ本体12は、略矩形状の底板部12aと、当該底板部12aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した側壁部12bとから成り、これらの底板部12a及び側壁部12bに囲まれた空間内にヘッドユニット17を収容する。図8に示すように、底板部12aには、収容されたヘッドユニット17の各記録ヘッド18のノズル形成面53(図16参照)を露出させるための底部開口19が開設されている。そして、ヘッドユニット17をキャリッジ本体12内に収容した状態では、底板部12aの底部開口19から各記録ヘッド18のノズル形成面53が、キャリッジ本体12の底部よりも下方(記録動作時における記録媒体側)に突出する。
【0020】
キャリッジ本体12とヘッドユニット17との間には、当該キャリッジ本体12に収容されたヘッドユニット17の姿勢を調整するための偏心カム21(図9および図15参照)が複数設けられている。そして、キャリッジ本体12には、これらの偏心カム21を回転させるための調整レバー20が複数設けられている。これらの調整レバー20の操作により、偏心カム21が回転してその回転中心から外周面までのカム径が増減し、このカム径の増減によって、キャリッジ本体12に収容されたヘッドユニット17のキャリッジ本体12に対する位置や傾きなどの姿勢を調整することができるように構成されている。
【0021】
図10はヘッドユニット17の斜視図であり、(a)は流路部材24が取り付けられた状態、(b)は流路部材24が外された状態をそれぞれ示している。また、図11はヘッドユニット17の平面図(上面図)、図12はヘッドユニット17の正面図、図13はヘッドユニット17の下面図、図14はヘッドユニット17の右側面図である。そして、図15は、説明を容易にするためキャリッジアセンブリー3の構成をより簡略化して示した断面図である。なお、図15の構成は模式的に示したものであるため、各部材の形状や位置関係が実際とは異なる場合がある。
【0022】
ヘッドユニット17は、複数の記録ヘッド18等をユニット化したものであり、これらの記録ヘッド18が複数並列に取り付けられるサブキャリッジ26(本発明におけるヘッド固定部材の一種。)と、流路部材24と、を備えている。サブキャリッジ26は、記録ヘッド18が固定される板状のベース部26aと、このベース部26aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した起立壁部26bと、から上面が開口した中空箱体状に形成されている。これらのベース部26aと四方の起立壁部26bとから囲まれた空間が、記録ヘッド18の少なくとも一部(主にサブタンク37)を収容する収容部35(図15参照)として機能する。本実施形態のサブキャリッジ26は、金属、例えばアルミニウムにより作製されており、剛性が高められている。ベース部26aの略中央部分には、複数の記録ヘッド18を挿通可能な(即ち、各記録ヘッド18に共通な1つの)ヘッド挿通開口28が開設されている。このためベース部26aは、額縁状の枠体となっている。このベース部26aの下面(記録時の記録媒体に対向する側の面)に、各記録ヘッド18の取り付け位置に対応して、止着穴29(雌ネジ部)が開設されている(図12参照)。本実施形態において、止着穴29は、1つの記録ヘッド18の取り付け位置に対し、ヘッド挿通開口28を間に挟んで、ノズル列方向に対応する方向の両側に、スペーサー32の取付穴に対応して2つずつ、合計4箇所設けられている。なお、この止着穴29の構造(即ち、穴径、深さ、及びネジピッチ)は、後述する止着穴41の構造と共通化されている。
【0023】
スペーサー32は、合成樹脂から成る部材であり、1つの記録ヘッド18に対して両側のフランジ部52a(図16参照)の上面(サブタンク37側の面)にそれぞれ1つずつ、合計2つ取り付けられる。このスペーサー32の幅方向(記録ヘッド18に取り付けられた状態におけるノズル列に直交する方向)の中央部分には、記録ヘッド18のスペーサー取付穴54に対応してヘッド用挿通穴(図示せず)が開設されている。また、スペーサー32の幅方向の両端部には、サブキャリッジ26に設けられた止着穴29に対応して、取付穴(図示せず)がそれぞれ開設されている。即ち、スペーサー32には、1つのヘッド用挿通穴と2つの取付穴が各々設けられている。このスペーサー32は、記録ヘッド18がサブキャリッジ26に取り付けられる前の段階で、それぞれの記録ヘッド18の両側のフランジ部52aに、スペーサー固定ネジ27によってそれぞれ締結される。
【0024】
また、図10等に示すように、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bのうちの3つには、側方に向けてフランジ部30が突設されている。フランジ部30には、キャリッジ本体12の底板部12aとヘッドユニット17の取り付け位置に開設された図示しない3箇所の取り付けネジ穴に対応して、挿通穴31がそれぞれ開設されている。そして、キャリッジ本体12の底板部12aの各取り付けネジ穴に、それぞれ対応する挿通穴31の位置を合わせた状態で、ヘッドユニット固定ネジ22を、挿通穴31を通じて取り付けネジ穴に止着する(螺着する)ことで、キャリッジ本体12内部にヘッドユニット17が収容・固定される。なお、上述したように、ヘッドユニット17をキャリッジ本体12に対して本固定する前の段階で、上記の調整レバー20の操作により、キャリッジ本体12に対するヘッドユニット17の位置や傾きなどの姿勢が調整される。また、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bの上端面には、流路部材24を固定するための固定ネジ穴33が合計4箇所設けられている。
【0025】
流路部材24は、上下方向が薄い箱体状の部材であり、例えば、合成樹脂により作製される。この流路部材24の内部には、各記録ヘッド18のサブタンク37(後述)の流路接続部38にそれぞれ対応した各色のインク分配流路(図示せず)が区画形成されている。この流路部材24の上面には、チューブ接続部34が設けられている。図11に示すように、このチューブ接続部34の内部には、各色のインクに対応した導入口39が複数設けられている。各導入口39は、それぞれ対応する色のインク分配流路に連通している。そして、チューブ接続部34に上記のインク供給チューブ14が接続されると、インク供給チューブ14内の各色のインク供給路と、それぞれ対応する導入口39とが液密状態で連通する。これにより、インクカートリッジ側からインク供給チューブ14を通じて送られてきた各色のインクが、導入口39を通じて流路部材24内のインク分配流路にそれぞれ導入される。この流路部材24の四隅には、サブキャリッジ26の固定ネジ穴33に対応する流路挿通穴(図示せず)が、それぞれ板厚方向を貫通した状態で形成されている。流路部材24がサブキャリッジ26に固定される際に、流路部材止着ネジ45が流路挿通穴を通じて固定ネジ穴33に止着(螺合)される。
【0026】
また、図12及び図15に示すように、流路部材24の下面において、各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38に対応する位置には、下方に向けて延出した接続流路40が設けられている。この接続流路40は、それぞれ対応する色のインク分配流路に連通する導出路(図示せず)が内部に形成された中空筒状の部材である。この接続流路40は、各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38にそれぞれ挿入されて液密状態で連結されるように構成されている。そして、流路部材24内部のインク分配流路を通ったインクは、接続流路40と流路接続部38を介して各記録ヘッド18のサブタンク37に供給される。つまり、インク供給チューブ14とサブタンク37とは、流路部材24を介在させて相互に接続されている。
【0027】
本実施形態におけるヘッドユニット17では、図15に示すように、合計5つの記録ヘッド18(18a〜18e)が、サブタンク37(後述)をヘッド挿通開口28の下方から挿通させて収容部35内に収容し、且つ、ベース部26aとの間にそれぞれスペーサー32(図12参照)を介在させた状態で、ヘッド固定ネジ(図示せず。本発明におけるヘッド固定手段の一種)を、スペーサー32の取付穴を通じて止着穴29に螺合することによって、図13に示すように互いに間隙(図15中に符号dで示す)を空けてノズル列に直交する方向(主走査方向Xと同方向であって、本発明における並列方向に相当。以下、符号Xで示す)に横並びで、ベース部26aにそれぞれ着脱可能な状態で固定される。また、並列方向Xの一端側(図15において右端側)に位置する記録ヘッド18に対して当該並列方向Xの外側には、当該記録ヘッド18の側面を保護するように隣り合わせで配置されたヘッド保護部材23(本発明における保護部材の一種)が取り付けられている。なお、ヘッド保護部材23については、後で詳述する。また、上記のヘッド固定ネジの構造(即ち、直径、長さ、及びネジピッチ)は、ヘッド保護部材固定ネジ42の構造と共通化されている。
【0028】
図16は、記録ヘッド18(液体噴射ヘッドの一種)の構成を説明する斜視図である。なお、基本的な構造等は各記録ヘッド18で共通であるため、サブキャリッジ26に取り付けられる5つの記録ヘッド18のうちの1つを代表として示している。
【0029】
記録ヘッド18は、ノズル51に連通する圧力室を含むインク流路を形成する流路ユニットや、圧力室内のインクに圧力変動を生じさせる圧電振動子或いは発熱素子などの圧力発生手段(何れも図示せず)をヘッドケース52に備えている。この記録ヘッド18は、プリンター1の制御部側からの駆動信号を圧力発生手段に印加して圧力発生手段を駆動することにより、ノズル51からインクを噴射して記録紙等の記録媒体に着弾させる記録動作を行うように構成されている。各記録ヘッド18のノズル形成面53には、インクを噴射するノズル51が複数列設されてノズル列56(ノズル群の一種)が構成され、このノズル列56がノズル列に直交する方向に2列並べて形成されている。1つのノズル列56は、例えば360dpiのピッチで開設された360個のノズル開口から成る。また、ノズル列56は、記録ヘッド18がホームポジションに待機して駆動していない(即ち、記録紙等の記録媒体に対して画像等の印刷を行わない)場合、後述する保湿キャップ59または吸引キャップ60によって覆われることで、保湿される。これにより、ノズル51からインクの溶媒が蒸発することが抑制されて、インクの増粘が防止される。
【0030】
ヘッドケース52は、中空箱体状部材であり、その先端側には、ノズル形成面53を露出させた状態で流路ユニットを固定している。また、ヘッドケース52の内部に形成された収容空部内には圧力発生手段などを収容し、ノズル形成面53とは反対側の基端面側(上面側)には、流路ユニット側にインクを供給するためのサブタンク37が装着されている。また、ヘッドケース52の上面側におけるノズル列方向の両側には、側方に向けて突出したフランジ部52aがそれぞれ形成されている。このフランジ部52aには、上記したスペーサー32のヘッド用挿通穴に対応して、スペーサー取付穴54がそれぞれ開設されている。フランジ部52aにスペーサー32を取り付ける際に、このスペーサー取付穴54にスペーサー固定ネジ27が挿通される。
【0031】
上記サブタンク37は、流路部材24からのインクを記録ヘッド18の圧力室側に導入する部材である。サブタンク37は、内部の圧力変動に応じてバルブを開閉し、圧力室側へのインクの導入を制御する自己封止機能を有している。このサブタンク37の後端面(上面)におけるノズル列方向の両端部に、上記流路部材24の接続流路40が接続される流路接続部38が設けられている。この流路接続部38には図示しないリング状のパッキンが嵌め込まれており、このパッキンにより接続流路40との液密性が確保される。また、サブタンク37の内部には、圧力発生手段に駆動信号を供給するための駆動基板(図示せず)が2枚設けられており、各駆動基板に電気的に接続された2枚のフレキシブルケーブル55(配線部材)がサブタンク37の後端面側にそれぞれ引き出されている。このフレキシブルケーブル55は、上記の信号ケーブル15と接続されて、当該信号ケーブル15を通じてプリンター1の制御部から送られてくる駆動信号等を、駆動基板を介して圧力発生手段側に供給する。
【0032】
ヘッド保護部材23は、記録動作時における記録紙等から記録ヘッド18(特に、並列方向Xの端に位置する記録ヘッド18の側面)を保護する部材であり、例えば、合成樹脂から作製されている。本実施形態においては、合計1つのヘッド保護部材23が、並列方向Xに記録ヘッド18と横並びで、ベース部26aに着脱可能な状態でネジ留め(固定)されている。つまり、ヘッド保護部材23は、サブキャリッジ26における記録ヘッド18の並列方向Xの端に位置する記録ヘッド18(ここでは、記録ヘッド18a)の外側に配置される。なお、ベース部26aに取り付けられたヘッド保護部材23と、当該ヘッド保護部材23に隣接する記録ヘッド18(ここでは、並列方向の端に位置する記録ヘッド18a)との間には、間隙d(記録ヘッド18同士の間隙dと同じ間隔)が設けられている。この間隙dは、この間隙内への記録紙(例えば、0.3mm)等の侵入を抑制可能な範囲内(例えば、約0.2mm以下)の大きさに設定されている。即ち、ヘッド保護部材23と記録ヘッド18aとの間隔は、サブキャリッジ26に取り付けられている記録ヘッド18同士の間隔に揃えられている。
【0033】
また、図13に示すように、このヘッド保護部材23の平面視における各寸法(ノズル列方向の奥行き、及び、ノズル列に直交する方向の幅)が、記録ヘッド18の対応する各寸法と同程度に揃えられている。ベース部26aの下面には、ヘッド保護部材23の取り付け位置に対応して、止着穴41が開設されている。本実施形態において、止着穴41は、ヘッド保護部材23の取り付け位置に対し、ヘッド挿通開口28を間に挟んで、ノズル列方向に対応する方向の両側に横並びに2つずつ合計4箇所設けられており、ヘッド保護部材固定ネジ42を止着穴41に螺合することによって、ヘッド保護部材23を固定している。なお、上述したように、この止着穴41の構造は、止着穴29の構造と共通化されており、ヘッド保護部材23の取り付け位置における各止着穴41の相対的な配置位置も、1つの記録ヘッド取り付け位置における各止着穴29の相対的な配置位置関係と同様となっている。このため、ヘッド保護部材23の取り付け位置は、ベース部26a(サブキャリッジ26)における記録ヘッド18の並列方向Xの端に位置する記録ヘッド18aの外側だけに限られずに、各記録ヘッド18の取付位置にも着脱可能である。つまり、止着穴29と止着穴41とが共通化されており、また、ヘッド固定ネジとヘッド保護部材固定ネジ42とが共通されているので、ヘッド保護部材23を記録ヘッド18の取付位置に配置して、当該取り付け位置に設けられた各止着穴29にそれぞれヘッド保護部材固定ネジ42を止着することで、当該取り付け位置にヘッド保護部材23を固定することができる。また、ヘッド保護部材固定ネジ42の締結を解除すれば、当該取り付け位置からヘッド保護部材23を取り外すことができる。
【0034】
そして、このヘッド保護部材23は、図15,17に示すように、サブキャリッジ26に対する取付側と反対側(記録時における記録媒体に対向する側)の先端部23aに、記録ヘッド18(18a)側から当該記録ヘッド18側とは反対側の外側に向けて記録ヘッド18の並列方向Xに対して上り傾斜した傾斜面23cを有している。換言すると、傾斜面23cは、ヘッド保護部材23の先端部23aにおいてノズル形成面53と平行に形成された先端面23bから、記録ヘッド18側とは反対側のヘッド保護部材23の側面に向けて斜めに欠截されて形成されている。ここで、先端部23aの先端面23bは、サブキャリッジ26における各記録ヘッド18のノズル形成面53に対しサブキャリッジ26から離隔する側に位置している。このため、記録紙等からの衝撃から隣接する記録ヘッド18を保護し、サブキャリッジ26に対して位置決め(アライメント)された記録ヘッド18が位置ズレすることを抑制することができる。なお、先端部23aの先端面23bは、サブキャリッジ26における各記録ヘッド18のノズル形成面53に対し、同一面上に形成してもよい。要は、ヘッド保護部材23が記録ヘッド18の側面を覆って保護できればよい。
【0035】
また、傾斜面23cの一部にはサブキャリッジ26側に凹んだ凹部23dが設けられている。本実施形態では、記録ヘッド18の並列方向Xに直交する方向において、同方向の両側に傾斜面23cを残した状態で、当該両側の傾斜面23cの間(中央部)に凹部23dが開口している。この凹部23dの並列方向Xに直交する方向の開口寸法L1は、ヘッド保護部材23の同方向の寸法より幅狭、かつ後述する保湿キャップ59または吸引キャップ60の同方向の寸法より幅広になっている(例えば、並列方向Xに直交する方向において、ヘッド保護部材23の幅が61.7mm、凹部23dの幅が59.7mm、保湿キャップ59または吸引キャップ60の幅が56mm。)。また、凹部23dの並列方向Xに投影した開口寸法L2は、傾斜面23cの同方向に投影した寸法と揃えられている。すなわち、本実施形態の傾斜面23cは、ヘッド保護部材23の先端部23aにおいて、凹部23dを挟んで両側に形成されている。さらに、この凹部23dの内面は、傾斜勾配が互いに異なる第1凹部傾斜面23eおよび第2凹部傾斜面23fにより形成されている。第1凹部傾斜面23eは、第2凹部傾斜面23fより記録ヘッド18の並列方向Xに対して内側に形成されており、ノズル形成面53に平行な面に対して傾斜面23cより急な斜面となっている(例えば、ノズル形成面53に対して、傾斜面23cの傾斜角度が23.3度、第1凹部傾斜面23eの傾斜角度が55度)。この第1凹部傾斜面23eの傾斜下端は先端面23bに連続し、第1凹部傾斜面23eの傾斜上端は第2凹部傾斜面23fの傾斜下端に連続している。一方、第2凹部傾斜面23fは、第1凹部傾斜面23eより記録ヘッド18の並列方向Xに対して外側に形成されており、ノズル形成面53に平行な面に対して傾斜面23cより緩やかな斜面となっている(例えば、ノズル形成面53に対して、第2凹部傾斜面23fの傾斜角度が12.4度)。この第2凹部傾斜面23fの傾斜下端は第1凹部傾斜面23eの傾斜上端に連続し、第2凹部傾斜面23fの傾斜上端はヘッド保護部材23の側面に連続している。つまり凹部23dは、図17(c)に示すように、並列方向X断面における正面視において、傾斜面23cより内側で三角形状の空間に区画形成されている。
【0036】
次にキャップ群58について説明する。キャップ群58は、ホームポジションで待機するキャリッジアセンブリー3の下方に設けられており、記録ヘッド18のノズル形成面53に対してノズル51を覆って密閉するキャップを、ヘッドユニット17における各記録ヘッド18と同数かつ各記録ヘッド18の配置間隔と同間隔で並列方向Xに列設されている。本実施形態において、キャップ群58のうちの一つは、ノズル形成面53をキャッピングした状態でノズル51からインクを吸引可能に構成された吸引キャップ60となっており、この他のキャップは、吸引機能を有さない保湿キャップ59となっている。これらのキャップ59,60は、記録ヘッド18のノズル形成面53に当接する上面側が開口した断面凹状のトレイ状部材であり、何れも、例えばエラストマー等の弾性を有する樹脂材料により同一の寸法・形状に作製されている。また、キャップ59,60は、開口面側の先端縁の外側角部にR(或いはテーパー)を形成している。保湿キャップ59は、ホームポジションに位置する記録ヘッド18のノズル形成面53に開口面側の先端縁を当接させてノズル51(ノズル列56)を覆うことで、ノズル51近傍のインクが乾燥して増粘することを抑制する(言い換えると、ノズル51近傍のインクを保湿する)。吸引キャップ60は、保湿キャップ59と同様に、開口面側の先端縁を、ホームポジションに位置する記録ヘッド18のノズル形成面53に当接させてノズル51(ノズル列56)を覆うことで、ノズル近傍のインクが乾燥して増粘することを抑制すると共に、ノズル51のインクを、図示しないポンプによる吸引力によって吸引可能な吸引手段62を備えている点で、保湿キャップ59と異なっている。吸引手段62は、一端が吸引キャップ60の開口面側に開口し、他端が後述するキャップ支持部材61の下面に開口する連通路62aと、キャップ支持部材61の下部で連通路62aと液密に連通するチューブ(図示せず)と、吸引キャップ60が記録ヘッド18のノズル形成面53に当接してキャッピング(封止)した状態においてチューブおよび連通路62aを介して吸引キャップ60の封止空部内を負圧化するポンプ等と、から構成されている。つまり、吸引キャップ60は、駆動していない記録ヘッド18のノズル51を密閉して保湿するだけでなく、記録ヘッド18が長期間駆動されていない場合やインクカートリッジを交換したときに記録ヘッド18内の流路にインクを充填する場合に実行される吸引動作において、ノズル51のインクを吸引手段62により吸引することが可能である。
【0037】
本実施形態のキャップ群58は、図18に示すように、4つの保湿キャップ59と、ヘッド並列方向Xにおいて他端部(図18における左端)に設けられた1つの吸引キャップ60から構成されている。ホームポジションに位置した各記録ヘッド18a〜18eのノズル形成面53をそれぞれキャッピングする場合、各記録ヘッド18a〜18eのうち並列方向Xに対して一端部に位置するヘッド保護部材23とは反対側の他端部に位置する記録ヘッド18eに対向する位置に吸引キャップ60が配置され、残りの4つの記録ヘッド18a〜18dにそれぞれ対向する位置に保湿キャップ59が配置される。以下、各記録ヘッド18a〜18dとキャップ群58のヘッド並列方向Xにおける相対位置を基準位置と言う。
【0038】
また、キャップ群58は、キャップ支持部材61に固定されている。このキャップ支持部材61は、図示しない移動機構により上下動が可能に構成されており、記録ヘッド18に対してキャッピングや吸引動作を行わないときは、下側に移動して保湿キャップ59および吸引キャップ60が各記録ヘッド18のノズル形成面53から離間し(第1の状態)、記録ヘッド18に対してキャッピングや吸引動作を行うときは、上側に移動して保湿キャップ59または吸引キャップ60がホームポジションに待機する各記録ヘッド18のノズル形成面53に当接する(第2の状態(キャッピング状態))ように構成されている。
【0039】
次に、上記のように構成されたプリンター1が長時間駆動されていない場合等に行われる吸引動作について説明する。まず、キャップ群58は、上述した基準位置で待機している。なお、キャップ群58は、記録ヘッド18の動作状況に応じて、保湿キャップ59および吸引キャップ60が各記録ヘッド18のノズル形成面53から離間した第1の状態となっている場合もあるし、保湿キャップ59および吸引キャップ60がノズル形成面53に当接した第2の状態となっている場合もある。以下では、プリンター1が長時間駆動されていない場合において第2の状態から吸引動作に移るケースについて説明する。この状態で一定時間駆動していないことをプリンター1の制御部が認識すると、プリンター1は吸引ポンプを駆動して、吸引キャップ60が当接している吸引対象の記録ヘッド18eのノズル51のインクを吸引させる(図18(a))。記録ヘッド18eに対する吸引動作が終了したならば、次に、キャップ支持部材61を下方に移動させることで、プリンター1は記録ヘッド18a〜18eからキャップ群58を離間させる(第1の状態。図18(b))。この状態で、キャリッジアセンブリー3を記録ヘッド18の並列方向Xに対してホームポジションより内側(フルポジション側)に、並列する記録ヘッド18の1ピッチ分だけ基準位置から平行移動させる。これにより、吸引キャップ60が次の吸引対象である記録ヘッド18dに対向し、保湿キャップ59のうち並列方向Xにおける一端部に位置する保湿キャップ59がヘッド保護部材23に対向する。この位置からキャップ支持部材61を上方に移動させて第2の状態に変換させる。これにより、保湿キャップ59または吸引キャップ60が記録ヘッド18a〜18dのノズル形成面53に当接する(図18(c))。このとき、保湿キャップ59がヘッド保護部材23に向けて上昇するが、保湿キャップ59の一部がヘッド保護部材23の凹部23d内に収容されて、ヘッド保護部材23の先端面23bおよび傾斜面23cよりもサブキャリッジ26側に逃されるため、保湿キャップ59とヘッド保護部材23は当接しない(図18(d))。この状態で、吸引キャップ60は、吸引対象である記録ヘッド18dに当接しており、この記録ヘッド18dのノズル51のインクを吸引する。残りの記録ヘッド18a〜18cについても同様の動作を繰り返すことで、吸引キャップ60により吸引動作を行うことができる。そして、プリンター1は、全ての記録ヘッド18a〜18eの吸引動作が終わると、キャップ支持部材61を下方に移動させて第1の状態に変換する。その後、キャリッジアセンブリー3をホームポジションに移動させて基準位置に戻すと共に、再びキャップ支持部材61を上方に移動させて第2の状態に戻る。或いは、キャリッジアセンブリー3をホームポジション側から記録ポジション側(フルポジション側)に移動させて、記録媒体に対する印刷処理に移行する。なお、本実施形態では、キャリッジアセンブリー3を並列方向Xに平行移動させたが、キャップ支持部材61に平行に移動する機構を設けて、キャップ群58を平行移動させてもよい。要は、キャップ群58がヘッドユニット17の各記録ヘッド18に対し並列方向Xに相対的に平行移動可能に構成されていればよい。
【0040】
このように、本実施形態のプリンター1は、吸引キャップ60が待機状態で当接する記録ヘッド18e以外の記録ヘッド18a〜18dに当接した状態、言い換えると、キャップ群58を構成する保湿キャップ59のうちの一つが保護部材23に対向し、残りの保湿キャップ59または吸引キャップ60がそれぞれ記録ヘッド18のノズル形成面53に当接した第2の状態において、ヘッド保護部材23に対向した保湿キャップ59または吸引キャップ60がヘッド保護部材23と当接することなく逃されるように傾斜面23cの一部に凹部23dを設けているので、ヘッド保護部材23はキャップ59,60と干渉することが無い。これにより、キャップ59,60に付着したインクがヘッド保護部材23に付着することが抑制される。その結果、ヘッド保護部材23に付着したインクが記録紙等に垂れ落ちたり、ヘッド保護部材23に接触した記録紙等にインクが付着したりすることが防止される。また、ヘッド保護部材23は傾斜面23cを形成しているので、ヘッドユニット17に対してヘッド並列方向Xの側方から記録紙等が接触してきたときに、当該記録紙等を傾斜面23cに沿って下方、即ち、サブキャリッジ26側から遠ざかる方向に逃がすことができ、記録紙等が当接した際の衝撃を緩和することができる。このように、ヘッド保護部材23は、記録ヘッド18に対する保護機能を確保しつつも、キャッピング時にキャップと干渉しない構成である。このため、上記のように、キャップ群58のうち少なくとも1つのキャップに対して吸引手段を設け、記録ヘッド18とキャップ群58とを相対的に移動させることで全ての記録ヘッドに対して吸引動作が可能な構成を採用することができる。即ち、吸引動作等を行う場合でも、記録ヘッド18に対応する全てのキャップに吸引手段62を備える必要がなく、構造を簡略化できる。さらに、ヘッド保護部材23の凹部23dは、傾斜面23cと同じ方向に傾斜した第1凹部傾斜面23eおよび第2凹部傾斜面23fにより形成したので、万一当該凹部23d内に記録紙等が進入したとしても、記録紙等を第1凹部傾斜面23eおよび第2凹部傾斜面23fに沿って下方に逃がすことができ、記録紙等が当接した際の衝撃を緩和することができる。
【0041】
ところで、本発明は、上記した第1の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。例えば、図19に示す第2の実施形態では、記録ヘッド18a〜eを挟んで並列方向Xに対して両側にヘッド保護部材23を備えている。
【0042】
詳しく説明すると、第2の実施形態のヘッド保護部材23は、記録ヘッド18の並列方向Xにおいて一側端に位置する記録ヘッド18aの外側に配置されると共に、他側端に位置する記録ヘッド18eの外側に配置される。このとき、第1の実施形態と同様に、ヘッド保護部材23は、両側ともにサブキャリッジ26に対する取付側と反対側(記録時における記録媒体に対向する側)の先端部23aに、各記録ヘッド18側から外側に向けて記録ヘッド18の並列方向Xに対して上り傾斜した傾斜面23cを有している。また、凹部23dも、傾斜勾配が互いに異なる第1凹部傾斜面23eおよび第2凹部傾斜面23fにより形成されている。つまり、図19に示すように、2つのヘッド保護部材23は、記録ヘッド18を挟んで左右対称に形成されている。このため、ヘッドユニット17は、記録動作時において、両側から送られてくる記録紙等から記録ヘッド18を保護することができる。なお、その他の点については第1の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0043】
また、上記各実施形態では、吸引キャップ60が1つだけ設けられていたが、これには限られず、複数の吸引キャップ60を設けても良い。要は、キャップ群58を構成するキャップのうち少なくとも一つに吸引キャップ60を備えていれば良い。さらに、上記各実施形態では、ヘッド保護部材23がサブキャリッジ26のベース部26aに着脱可能な状態でネジ留めされている構成を例示したが、これには限られず、ヘッド保護部材23をサブキャリッジ26のベース部26aに一体的に形成しても良い。また、上記各実施形態では、記録紙に対して記録ヘッド18を往復移動させながらインクの噴射を行う構成を例示したが、これには限られない。例えば、記録ヘッド18の位置を固定した状態で、当該記録ヘッド18に対して記録紙を移動させながらインクの噴射を行う構成を採用することもできる。
【0044】
以上は、液体噴射装置の一種であるプリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置、有機EL(Electro
Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置、バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…プリンター、17…ヘッドユニット、18…記録ヘッド、23…ヘッド保護部材、23c…傾斜面、23d…凹部、23e…第1凹部傾斜面、23f…第2凹部傾斜面、26…サブキャリッジ、51…ノズル、56…ノズル列、58…キャップ群、59…保湿キャップ、60…吸引キャップ、d…間隙、X…並列方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル形成面に形成されたノズルから着弾対象に対して液体を噴射する液体噴射ヘッドが複数並列に取り付けられたヘッド固定部材を有する液体噴射ヘッドユニットと、
前記液体噴射ヘッドの並列方向の端に位置する液体噴射ヘッドに対して当該並列方向の外側に隣り合わせで配置され、当該液体噴射ヘッドの側面を保護する保護部材と、
前記ノズルを覆うキャップを、前記液体噴射ヘッドユニットにおける各液体噴射ヘッドと同数かつ各液体噴射ヘッドの配置間隔と同間隔で前記並列方向に列設させたキャップ群と、
を備え、
該キャップ群は、前記液体噴射ヘッドユニットの各液体噴射ヘッドに対し前記並列方向に平行移動可能に構成され、かつ、前記ノズル形成面に当接する状態に変換可能であり、
前記保護部材は、先端部に、前記液体噴射ヘッド側から当該液体噴射ヘッド側とは反対側の外側に向けて上り傾斜した傾斜面を有し、
前記キャップのうちの一つが前記保護部材に対向すると共に残りのキャップがそれぞれ液体噴射ヘッドのノズル形成面に当接した状態において前記保護部材に対向したキャップを当該保護部材に当接させることなく逃す凹部が、前記傾斜面の一部に設けられたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記ノズル形成面に平行な面に対して前記傾斜面より急な第1凹部傾斜面と、該第1凹部傾斜面より前記液体噴射ヘッドの並列方向に対して外側に形成され、前記ノズル形成面に平行な面に対して前記傾斜面より緩やかな第2凹部傾斜面と、を有することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記キャップ群を構成するキャップのうち少なくとも一つは、前記ノズル形成面に当接した状態で、吸引手段による吸引力によって当該ノズル形成面のノズルから液体を吸引可能に構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−51341(P2012−51341A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197836(P2010−197836)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】