液体噴射装置
【課題】噴射特性の低下を防ぐことができる液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】液体を噴射する複数のノズルが一列に配置されたノズル列を複数有する液体噴射ヘッドと、複数の前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆うカバー部と、複数の前記ノズル列を用いて前記液体を噴射させる噴射動作を前記液体噴射ヘッドに対して行わせると共に、複数の前記ノズル列のうち一部の前記ノズル列を用いた前記噴射動作において前記液体の噴射に用いられる一部の前記ノズル列とは異なる前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆う被覆動作を前記カバー部に対して行わせる制御部とを備える。
【解決手段】液体を噴射する複数のノズルが一列に配置されたノズル列を複数有する液体噴射ヘッドと、複数の前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆うカバー部と、複数の前記ノズル列を用いて前記液体を噴射させる噴射動作を前記液体噴射ヘッドに対して行わせると共に、複数の前記ノズル列のうち一部の前記ノズル列を用いた前記噴射動作において前記液体の噴射に用いられる一部の前記ノズル列とは異なる前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆う被覆動作を前記カバー部に対して行わせる制御部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射装置として、例えば下記特許文献1に記載の印刷装置が知られている。印刷装置は、紙などの搬送媒体を搬送しつつ当該搬送媒体にインクを噴射して文字や画像等を記録する装置である。印刷装置は、インクを噴射する複数のノズル列が形成されたヘッドを有している。ヘッドを用いて噴射動作を行う際には、ノズル列毎にインクが噴射されるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−219567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、噴射動作を行う間、搬送媒体に付着していた埃などの異物がノズルに付着する場合がある。インクの噴射が行われないノズル列などは、ノズルに付着した異物がそのまま残留してしまい、ノズルが詰まりやすい。このようにノズルに異物が付着して残留すると、噴射特性が低下してしまうおそれがある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、噴射特性の低下を防ぐことができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズルが一列に配置されたノズル列を複数有する液体噴射ヘッドと、複数の前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆うカバー部と、複数の前記ノズル列を用いて前記液体を噴射させる噴射動作を前記液体噴射ヘッドに対して行わせると共に、複数の前記ノズル列のうち一部の前記ノズル列を用いた前記噴射動作において前記液体の噴射に用いられる一部の前記ノズル列とは異なる前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆う被覆動作を前記カバー部に対して行わせる制御部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、噴射動作において液体の噴射が行われてないノズル列がカバー部によって覆われることになるため、液体の噴射が行われないノズルに異物が付着するのを防ぐことができる。これにより、ノズルの詰まりを防ぐことができるので、噴射特性の低下を防ぐことができる。
【0008】
上記の液体噴射装置は、複数の前記ノズル列は、一方向に並んで設けられており、前記カバー部は、前記一方向に移動可能に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、複数のノズル列が一方向に並んで設けられており、カバー部が一方向に移動可能に設けられているため、ノズル列毎に被覆状態と被覆が解除された状態とを容易に切り替えることができる。
【0009】
上記の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドを保持して移動可能なキャリッジを更に備え、前記カバー部は、前記キャリッジに設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、液体噴射ヘッドを保持して移動可能なキャリッジを更に備え、カバー部がキャリッジに設けられているため、カバー部が液体噴射ヘッドに対して一体的に移動することになる。これにより、移動する液体噴射ヘッドに対してカバー部の位置合わせを容易に行うことができる。
【0010】
上記の液体噴射装置は、前記キャリッジは、前記液体噴射ヘッドのうち前記ノズル列が形成される面と、前記ノズル列から噴射される前記液体の噴射対象面との間に沿って前記カバー部を案内する案内部を有することを特徴とする。
本発明によれば、カバー部は、案内部により、液体噴射ヘッドのうちノズル列が形成される面と、ノズル列から噴射される液体の噴射対象面との間に沿って移動することになるため、液体噴射ヘッドの噴射動作の妨げになること無くノズル列を保護することができる。
【0011】
上記の液体噴射装置は、前記制御装置は、それぞれの前記ノズル列についての前記噴射動作における前記液体の噴射の有無に関する噴射データに基づいて、前記被覆動作を行わせることを特徴とする。
本発明によれば、噴射データによって噴射の行われないノズル列を求め、当該求めた結果によって
上記の液体噴射装置は、前記カバー部は、前記ノズル列毎に設けられた単位カバー部を有し、それぞれの前記単位カバー部は、独立して移動可能に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、カバー部がノズル列毎に設けられた単位カバー部を有し、それぞれの単位カバー部が独立して移動可能に設けられているため、ノズル列毎に被覆動作を行わせることができる。
【0012】
上記の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドは、複数設けられており、前記カバー部は、前記液体噴射ヘッド毎に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、液体噴射ヘッドが複数設けられている場合であっても、ヘッド毎にノズル列を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示す概略図。
【図2】本実施形態に係るヘッドの構成を示す概略底面図。
【図3】本実施形態に係るヘッドの構成を示す概略側面図。
【図4】本実施形態に係る制御系の構成を示すブロック図。
【図5】本実施形態に係る印刷装置の動作を示す図。
【図6】本実施形態に係る印刷装置の動作を示す図。
【図7】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図8】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置PRT(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置PRTとしてインクジェット型の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0015】
図1に示す印刷装置PRTは、紙、プラスチックシートなどのシート状の媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、筐体PBと、媒体Mにインクを噴射するインクジェット機構IJと、当該インクジェット機構IJにインクを供給するインク供給機構SPと、媒体Mを搬送する搬送機構CVと、インクジェット機構IJの保全動作を行うメンテナンス機構MNと、これら各機構を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0016】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、媒体Mの搬送方向をX方向とし、当該媒体Mの搬送面においてX方向に直交する方向をY方向とし、X軸及びY軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0017】
筐体PBは、Y方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット機構IJ、インク供給機構SP、搬送機構CV、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、プラテン13が設けられている。プラテン13は、媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、筐体PBのうちX方向の中央部に配置されている。プラテン13は、+Z方向に向けられた平坦面13aを有している。当該平坦面13aは、媒体Mを支持する支持面として用いられる。
【0018】
搬送機構CVは、搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーターなどを有している。搬送機構CVは、筐体PBの−X側から当該筐体PBの内部に媒体Mを搬送し、当該筐体PBの+X側から当該筐体PBの外部に排出する。搬送機構CVは、筐体PBの内部において、媒体Mがプラテン13上を通過するように当該媒体Mを搬送する。搬送機構CVは、制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御されるようになっている。
【0019】
インクジェット機構IJは、インクを噴射するヘッドHと、当該ヘッドHを保持して移動させるヘッド移動機構ACとを有している。ヘッドHは、プラテン13上に送り出された媒体Mに向けてインクを噴射する。ヘッドHは、インクを噴射する噴射面Haを有している。噴射面Haは、Z方向に向けられており、プラテン13の支持面13aに対向するように配置されている。
【0020】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジCAを有している。ヘッドHは、当該キャリッジCAに固定されている。キャリッジCAは、筐体PBの長手方向(Y方向)に架けられたガイド軸8に当接されている。ヘッドH及びキャリッジCAは、プラテン13の+Z方向に配置されている。
【0021】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジCAの他、パルスモーター9と、当該パルスモーター9によって回転駆動される駆動プーリー10と、駆動プーリー10とはプリンタ本体5の幅方向の反対側に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジCAに接続されたタイミングベルト12とを有している。
【0022】
キャリッジCAは、当該タイミングベルト12に接続されている。キャリッジCAは、タイミングベルト12の回転に伴ってY方向に移動可能に設けられている。Y方向へ移動する際、キャリッジCAは、ガイド軸8によって案内されるようになっている。
【0023】
インク供給機構SPは、ヘッドHにインクを供給する。インク供給機構SPには、複数のインクカートリッジCTRが収容されている。本実施形態の印刷装置PRTは、インクカートリッジCTRがヘッドHとは異なる位置に収容される構成(オフキャリッジ型)である。インク供給機構SPは、ヘッドHとインクカートリッジCTRとを接続する供給チューブTBを有している。インク供給機構SPは、当該供給チューブTBを介してインクカートリッジCTR内に貯留されるインクをヘッドHに供給する不図示のポンプ機構を有している。
【0024】
メンテナンス機構MNは、ヘッドHのホームポジションに配置されている。このホームポジションは、媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域に設定されている。本実施形態では、プラテン13の+Y側にホームポジションが設定されている。ホームポジションは、印刷装置PRTの電源がオフである時や、長時間に亘って記録が行われない時などに、ヘッドHが待機する場所である。
【0025】
メンテナンス機構MNは、ヘッドHの噴射面Haを覆うキャッピング機構CPや、当該噴射面Haを払拭するワイピング機構WPなどを有している。キャッピング機構CPには、吸引ポンプなどの吸引機構SCが接続されている。吸引機構SCにより、キャッピング機構CPは、噴射面Haを覆いつつ当該噴射面Ha上の空間を吸引できるようになっている。ヘッドHからメンテナンス機構MN側に排出された廃インクは、廃液回収機構(不図示)において回収されるようになっている。
【0026】
図2は、キャリッジCA及びヘッドHを−Z側から見たときの構成を示す図である。
図2に示すように、噴射面Haには、上述したように複数のノズルNZがX方向に等ピッチで一列に配置されており、ノズル列NLが形成されている。ノズル列NLは、個々のノズルNZの配置された方向に直交する方向(Y方向)に等間隔で4列設けられている。
【0027】
各ノズル列NLに属するノズルNZからは、それぞれ同じ色のインクが噴射されるようになっている。一例として、本実施形態では、図2の最も−Y側のノズル列NL(ノズル列NLB)に属するノズルNZからはブラック(B)のインクが噴射され、−Y側から2番目のノズル列NL(ノズル列NLC)に属するノズルNZからはシアン(C)のインクが噴射され、+Y側から2番目のノズル列NL(ノズル列NLM)に属するノズルNZからはマゼンタ(M)のインクが噴射され、最も+Y側のノズル列NL(ノズル列NLY)に属するノズルNZからはイエロー(Y)のインクが噴射されるようになっている。
【0028】
本実施形態では、キャリッジCAには、カバー部COVが設けられている。カバー部COVは、対向部71及び接続部72を有している。対向部71は、プラスチックなどの樹脂材料や、金属材料などによって矩形の板状に形成されている。対向部71は、噴射面Haに対向して配置される部分である。対向部71は、複数のノズル列NLのうち少なくとも一列を覆うことができる寸法に形成されている。本実施形態では、3列のノズル列NLを覆うことができるようにX方向及びY方向の寸法が規定されている。勿論、4列全てのノズル列NLを覆う寸法に形成されていても構わないし、2列若しくは1列のノズル列NLを覆う寸法に形成されていても構わない。
【0029】
接続部72は、対向部71の+X側の端辺及び−X側の端辺からそれぞれ+X側及び−X側に突出して設けられている。接続部72は、キャリッジCAの−Z側の面(縁部CAa)上に設けられたガイド部材Gに接続されている。ガイド部材Gは、カバー部COVの移動を案内する案内部である。ガイド部材Gは、キャリッジCAの縁部CAaの四辺のうちY方向に平行な二辺に設けられている。ガイド部材Gは、Y方向に平行に延在するように形成されている。
【0030】
カバー部COVには、カバー部移動機構ACTが設けられている。カバー部移動機構ACTは、制御装置CONTの制御により、カバー部COVをY方向に移動させる。カバー部移動機構ACTとしては、モーター装置やエアシリンダ装置などを用いることができる。接続部72は、カバー部COVのX方向への移動を規制すると共に、Y方向への移動が可能となるようにガイド部材Gに接続されている。このように、カバー部COVは、ノズル列NLの並ぶ方向(Y方向)に移動可能に設けられている。
【0031】
図3は、キャリッジCA及びヘッドHを+X側から見たときの構成を示す図である。
図3に示すように、対向部71は、ガイド部材Gにより、ヘッドHの噴射面Haの−Z側を移動するようになっている。このため、カバー部COVがヘッドHの−Z側の位置に移動しても対向部71の+Z側の面と噴射面Haとは接触せず、両者の間には一定間隔の隙間が形成されるようになっている。
【0032】
図4は印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置IP、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置MRなどが接続されており、上述した搬送機構CVや、ヘッド移動機構AC、メンテナンス機構MN、カバー部移動機構ACT等が接続されている。
【0033】
印刷装置PRTは、それぞれの圧電振動子38に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。この駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。駆動信号発生器62には、ヘッドHの圧電振動子38に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、各圧電振動子38に対して、個別に駆動信号を供給可能に設けられている。
【0034】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。
ヘッドHによる印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送機構CVによって媒体MをヘッドHの−Z側に配置させる。媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、ヘッドHを移動させつつ、印刷する画像の画像データの入力があるまで待機する。
【0035】
例えば、画像データがモノクロ印刷のデータである場合、制御装置CONTは、4つのノズル列NLのうちブラック(B)のインクを噴射するノズル列NLBに属するノズルNZに対して駆動信号を入力する。より具体的には、当該ノズルNZに係る駆動信号発生器62から圧電振動子38に駆動信号を入力する。このとき、他の3つのノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYに属するノズルNZには駆動信号が入力されず、噴射が行われないことになる。
【0036】
圧電振動子38に駆動信号が入力されると、圧電振動子38が伸縮する。圧電振動子38の伸縮により、圧力室46の容積が変化し、インクを収容した圧力室46の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズルNZからインクが噴射される。ノズルNZから噴射されたインクによって、媒体Mに所望の画像が形成される。
【0037】
このようにノズル列NLBのみを用いて噴射動作を行う間、媒体Mから埃などの異物が巻き上がる場合がある。ノズル列NLBに属するノズルNZでは、インクの噴射が行われているため、ノズルNZに異物が付着しても、インクの噴射と共にノズルNZの外部に排出される。
【0038】
一方、インクの噴射が行われないノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYのノズルNZには、巻き上がった異物が付着してそのまま残留してしまい、ノズルが詰まる場合がある。このようにノズルNZに異物が付着して残留すると、噴射特性が低下してしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、制御装置CONTがカバー部移動機構ACTを作動させ、インクの噴射が行われないノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYを覆うようにカバー部COVをY方向に移動させる。
【0039】
上記のように画像データがモノクロ印刷のデータである場合、制御装置CONTによって当該画像データの印刷にはノズル列NLBのみが用いられるように制御される。制御装置CONTは、噴射動作に用いるノズルを決定する判断をカバー部COVの移動にも利用する。つまり、制御装置CONTは、画像データに基づいてノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYが用いられないことを判断し、当該判断に基づいて、カバー部移動機構ACTを作動させ、噴射動作に用いられないノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYを覆うようにカバー部COVをY方向に移動させる。
【0040】
カバー部COVの移動動作において、当該カバー部COVは、噴射面Haと媒体Mの噴射対象面Maとの間の空間を移動する。すなわち、カバー部COVは、噴射面Ha及び噴射対象面Maに接触することなくノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYを覆うことになる。このため、以降の噴射動作が妨げられることなく、スムーズに行われる。
【0041】
カバー部COVの移動後、図5に示すように、カバー部COVによってノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYが覆われた状態となる。この状態で、制御装置CONTは、ノズル列NLBに属するノズルNZからインクを噴射させる。ノズルNZから噴射されたインクにより、媒体Mにはモノクロの画像が形成されることになる。一方、ノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYについては、カバー部COVで覆われているため、媒体Mから巻き上がった異物がこれらのノズル列NLに属するノズルNZに付着するのが抑制されることになる。
【0042】
また、例えば画像データがカラー印刷のデータである場合、制御装置CONTは、4つのノズル列NLのうちノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYに属するノズルNZに対して駆動信号を入力する。このとき、ノズル列NLBに属するノズルNZには駆動信号が入力されず、噴射が行われないことになる。
【0043】
この場合においても同様に、制御装置CONTは、当該噴射動作で用いるノズル列NLを決定するための判断を、カバー部COVの移動にも利用する。つまり、制御装置CONTは、画像データに基づいてノズル列NLBが用いられないことを判断し、当該判断に基づいて、カバー部移動機構ACTを作動させ、噴射動作に用いられないノズル列NLBを覆うようにカバー部COVを移動させる。
【0044】
カバー部COVの移動後、図6に示すように、カバー部COVによってノズル列NLBが覆われた状態となる。この状態で、制御装置CONTは、ノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYに属するノズルNZからインクを噴射させる。ノズルNZから噴射されたインクにより、媒体Mにはカラーの画像が形成されることになる。一方、ノズル列NLBについては、カバー部COVで覆われているため、媒体Mから巻き上がった異物がノズルNZに付着するのが抑制されることになる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、噴射動作においてインクの噴射が行われてないノズル列NLがカバー部COVによって覆われることになるため、インクの噴射が行われないノズルNZに異物が付着するのを防ぐことができる。これにより、ノズルNZの詰まりを防ぐことができるので、噴射特性の低下を防ぐことができる。
【0046】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態においては、カバー部COVが複数のノズル列NLをまとめて覆う構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
【0047】
例えば図7に示すように、カバー部COVがノズル列NL毎に設けられた単位カバー部90を有し、それぞれの単位カバー部90がカバー部移動機構ACTによって独立して移動可能に設けられた構成であっても構わない。なお、図7に示す例においては、単位カバー部90がそれぞれ対向部71及び接続部72を有する構成となっている。この構成によれば、ノズル列NL毎に被覆動作を行わせることができる。これにより、例えば単色印字(一色のインクのみを用いた印刷)を行う場合、噴射に用いるノズル列NLとは異なるノズル列NLを確実に覆うことができる。また、図7に示す例においては、各単位カバー部90が1つのノズル列NLを覆う構成となっているが、これに限られることは無く、単位カバー部90が2つ以上のノズル列NLを同時に覆うことができる寸法に形成されている構成であっても構わない。
【0048】
また、上記実施形態においては、ヘッドHが1つ設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図8に示すように、複数のヘッド(ヘッドH1〜ヘッドH5)が設けられた構成であっても、本発明の適用は可能である。
【0049】
図8に示すように、ヘッドユニットHUは、複数(図8では5つ)のヘッドH1〜H5をユニット化することで構成されている。各ヘッドH1〜H5は、上記実施形態のヘッドHと同様の構成となっている。これらヘッドH1〜H5は、取付板91に取り付けられることでユニット化されている。
【0050】
また、カバー部COVは、このような5つのヘッドH1〜H5に対して、ヘッド毎に1つずつ設けられている。各カバー部COVは、対向部71及び接続部72を有している。各カバー部COVは、5つのヘッドH1〜H5のそれぞれに設けられた一対のガイド部材Gに接続されている。各カバー部COVは、カバー部移動機構ACTによって独立して移動可能に設けられている。
【0051】
このように、複数のヘッドH1〜H5が設けられている構成において、カバー部COVがヘッド毎に設けられているため、ヘッド毎にノズル列NL(ノズル列NLB、ノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLY)を保護することができる。これにより、噴射特性の低下を防ぐことができる。
【0052】
また、上記実施形態では、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。
【0053】
また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0054】
液体噴射装置の具体例としては、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0055】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
PRT…印刷装置 M…媒体 Ma…噴射対象面 CONT…制御装置 H、H1〜H5…ヘッド HU…ヘッドユニット Ha…噴射面 CA…キャリッジ NZ…ノズル NL、NLB、NLC、NLM、NLY…ノズル列 COV…カバー部 G…ガイド部材 CAa…縁部 ACT…カバー部移動機構 71…対向部 72…接続部 90…単位カバー部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射装置として、例えば下記特許文献1に記載の印刷装置が知られている。印刷装置は、紙などの搬送媒体を搬送しつつ当該搬送媒体にインクを噴射して文字や画像等を記録する装置である。印刷装置は、インクを噴射する複数のノズル列が形成されたヘッドを有している。ヘッドを用いて噴射動作を行う際には、ノズル列毎にインクが噴射されるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−219567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、噴射動作を行う間、搬送媒体に付着していた埃などの異物がノズルに付着する場合がある。インクの噴射が行われないノズル列などは、ノズルに付着した異物がそのまま残留してしまい、ノズルが詰まりやすい。このようにノズルに異物が付着して残留すると、噴射特性が低下してしまうおそれがある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、噴射特性の低下を防ぐことができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズルが一列に配置されたノズル列を複数有する液体噴射ヘッドと、複数の前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆うカバー部と、複数の前記ノズル列を用いて前記液体を噴射させる噴射動作を前記液体噴射ヘッドに対して行わせると共に、複数の前記ノズル列のうち一部の前記ノズル列を用いた前記噴射動作において前記液体の噴射に用いられる一部の前記ノズル列とは異なる前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆う被覆動作を前記カバー部に対して行わせる制御部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、噴射動作において液体の噴射が行われてないノズル列がカバー部によって覆われることになるため、液体の噴射が行われないノズルに異物が付着するのを防ぐことができる。これにより、ノズルの詰まりを防ぐことができるので、噴射特性の低下を防ぐことができる。
【0008】
上記の液体噴射装置は、複数の前記ノズル列は、一方向に並んで設けられており、前記カバー部は、前記一方向に移動可能に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、複数のノズル列が一方向に並んで設けられており、カバー部が一方向に移動可能に設けられているため、ノズル列毎に被覆状態と被覆が解除された状態とを容易に切り替えることができる。
【0009】
上記の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドを保持して移動可能なキャリッジを更に備え、前記カバー部は、前記キャリッジに設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、液体噴射ヘッドを保持して移動可能なキャリッジを更に備え、カバー部がキャリッジに設けられているため、カバー部が液体噴射ヘッドに対して一体的に移動することになる。これにより、移動する液体噴射ヘッドに対してカバー部の位置合わせを容易に行うことができる。
【0010】
上記の液体噴射装置は、前記キャリッジは、前記液体噴射ヘッドのうち前記ノズル列が形成される面と、前記ノズル列から噴射される前記液体の噴射対象面との間に沿って前記カバー部を案内する案内部を有することを特徴とする。
本発明によれば、カバー部は、案内部により、液体噴射ヘッドのうちノズル列が形成される面と、ノズル列から噴射される液体の噴射対象面との間に沿って移動することになるため、液体噴射ヘッドの噴射動作の妨げになること無くノズル列を保護することができる。
【0011】
上記の液体噴射装置は、前記制御装置は、それぞれの前記ノズル列についての前記噴射動作における前記液体の噴射の有無に関する噴射データに基づいて、前記被覆動作を行わせることを特徴とする。
本発明によれば、噴射データによって噴射の行われないノズル列を求め、当該求めた結果によって
上記の液体噴射装置は、前記カバー部は、前記ノズル列毎に設けられた単位カバー部を有し、それぞれの前記単位カバー部は、独立して移動可能に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、カバー部がノズル列毎に設けられた単位カバー部を有し、それぞれの単位カバー部が独立して移動可能に設けられているため、ノズル列毎に被覆動作を行わせることができる。
【0012】
上記の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドは、複数設けられており、前記カバー部は、前記液体噴射ヘッド毎に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、液体噴射ヘッドが複数設けられている場合であっても、ヘッド毎にノズル列を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示す概略図。
【図2】本実施形態に係るヘッドの構成を示す概略底面図。
【図3】本実施形態に係るヘッドの構成を示す概略側面図。
【図4】本実施形態に係る制御系の構成を示すブロック図。
【図5】本実施形態に係る印刷装置の動作を示す図。
【図6】本実施形態に係る印刷装置の動作を示す図。
【図7】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図8】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置PRT(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置PRTとしてインクジェット型の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0015】
図1に示す印刷装置PRTは、紙、プラスチックシートなどのシート状の媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、筐体PBと、媒体Mにインクを噴射するインクジェット機構IJと、当該インクジェット機構IJにインクを供給するインク供給機構SPと、媒体Mを搬送する搬送機構CVと、インクジェット機構IJの保全動作を行うメンテナンス機構MNと、これら各機構を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0016】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、媒体Mの搬送方向をX方向とし、当該媒体Mの搬送面においてX方向に直交する方向をY方向とし、X軸及びY軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0017】
筐体PBは、Y方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット機構IJ、インク供給機構SP、搬送機構CV、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、プラテン13が設けられている。プラテン13は、媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、筐体PBのうちX方向の中央部に配置されている。プラテン13は、+Z方向に向けられた平坦面13aを有している。当該平坦面13aは、媒体Mを支持する支持面として用いられる。
【0018】
搬送機構CVは、搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーターなどを有している。搬送機構CVは、筐体PBの−X側から当該筐体PBの内部に媒体Mを搬送し、当該筐体PBの+X側から当該筐体PBの外部に排出する。搬送機構CVは、筐体PBの内部において、媒体Mがプラテン13上を通過するように当該媒体Mを搬送する。搬送機構CVは、制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御されるようになっている。
【0019】
インクジェット機構IJは、インクを噴射するヘッドHと、当該ヘッドHを保持して移動させるヘッド移動機構ACとを有している。ヘッドHは、プラテン13上に送り出された媒体Mに向けてインクを噴射する。ヘッドHは、インクを噴射する噴射面Haを有している。噴射面Haは、Z方向に向けられており、プラテン13の支持面13aに対向するように配置されている。
【0020】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジCAを有している。ヘッドHは、当該キャリッジCAに固定されている。キャリッジCAは、筐体PBの長手方向(Y方向)に架けられたガイド軸8に当接されている。ヘッドH及びキャリッジCAは、プラテン13の+Z方向に配置されている。
【0021】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジCAの他、パルスモーター9と、当該パルスモーター9によって回転駆動される駆動プーリー10と、駆動プーリー10とはプリンタ本体5の幅方向の反対側に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジCAに接続されたタイミングベルト12とを有している。
【0022】
キャリッジCAは、当該タイミングベルト12に接続されている。キャリッジCAは、タイミングベルト12の回転に伴ってY方向に移動可能に設けられている。Y方向へ移動する際、キャリッジCAは、ガイド軸8によって案内されるようになっている。
【0023】
インク供給機構SPは、ヘッドHにインクを供給する。インク供給機構SPには、複数のインクカートリッジCTRが収容されている。本実施形態の印刷装置PRTは、インクカートリッジCTRがヘッドHとは異なる位置に収容される構成(オフキャリッジ型)である。インク供給機構SPは、ヘッドHとインクカートリッジCTRとを接続する供給チューブTBを有している。インク供給機構SPは、当該供給チューブTBを介してインクカートリッジCTR内に貯留されるインクをヘッドHに供給する不図示のポンプ機構を有している。
【0024】
メンテナンス機構MNは、ヘッドHのホームポジションに配置されている。このホームポジションは、媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域に設定されている。本実施形態では、プラテン13の+Y側にホームポジションが設定されている。ホームポジションは、印刷装置PRTの電源がオフである時や、長時間に亘って記録が行われない時などに、ヘッドHが待機する場所である。
【0025】
メンテナンス機構MNは、ヘッドHの噴射面Haを覆うキャッピング機構CPや、当該噴射面Haを払拭するワイピング機構WPなどを有している。キャッピング機構CPには、吸引ポンプなどの吸引機構SCが接続されている。吸引機構SCにより、キャッピング機構CPは、噴射面Haを覆いつつ当該噴射面Ha上の空間を吸引できるようになっている。ヘッドHからメンテナンス機構MN側に排出された廃インクは、廃液回収機構(不図示)において回収されるようになっている。
【0026】
図2は、キャリッジCA及びヘッドHを−Z側から見たときの構成を示す図である。
図2に示すように、噴射面Haには、上述したように複数のノズルNZがX方向に等ピッチで一列に配置されており、ノズル列NLが形成されている。ノズル列NLは、個々のノズルNZの配置された方向に直交する方向(Y方向)に等間隔で4列設けられている。
【0027】
各ノズル列NLに属するノズルNZからは、それぞれ同じ色のインクが噴射されるようになっている。一例として、本実施形態では、図2の最も−Y側のノズル列NL(ノズル列NLB)に属するノズルNZからはブラック(B)のインクが噴射され、−Y側から2番目のノズル列NL(ノズル列NLC)に属するノズルNZからはシアン(C)のインクが噴射され、+Y側から2番目のノズル列NL(ノズル列NLM)に属するノズルNZからはマゼンタ(M)のインクが噴射され、最も+Y側のノズル列NL(ノズル列NLY)に属するノズルNZからはイエロー(Y)のインクが噴射されるようになっている。
【0028】
本実施形態では、キャリッジCAには、カバー部COVが設けられている。カバー部COVは、対向部71及び接続部72を有している。対向部71は、プラスチックなどの樹脂材料や、金属材料などによって矩形の板状に形成されている。対向部71は、噴射面Haに対向して配置される部分である。対向部71は、複数のノズル列NLのうち少なくとも一列を覆うことができる寸法に形成されている。本実施形態では、3列のノズル列NLを覆うことができるようにX方向及びY方向の寸法が規定されている。勿論、4列全てのノズル列NLを覆う寸法に形成されていても構わないし、2列若しくは1列のノズル列NLを覆う寸法に形成されていても構わない。
【0029】
接続部72は、対向部71の+X側の端辺及び−X側の端辺からそれぞれ+X側及び−X側に突出して設けられている。接続部72は、キャリッジCAの−Z側の面(縁部CAa)上に設けられたガイド部材Gに接続されている。ガイド部材Gは、カバー部COVの移動を案内する案内部である。ガイド部材Gは、キャリッジCAの縁部CAaの四辺のうちY方向に平行な二辺に設けられている。ガイド部材Gは、Y方向に平行に延在するように形成されている。
【0030】
カバー部COVには、カバー部移動機構ACTが設けられている。カバー部移動機構ACTは、制御装置CONTの制御により、カバー部COVをY方向に移動させる。カバー部移動機構ACTとしては、モーター装置やエアシリンダ装置などを用いることができる。接続部72は、カバー部COVのX方向への移動を規制すると共に、Y方向への移動が可能となるようにガイド部材Gに接続されている。このように、カバー部COVは、ノズル列NLの並ぶ方向(Y方向)に移動可能に設けられている。
【0031】
図3は、キャリッジCA及びヘッドHを+X側から見たときの構成を示す図である。
図3に示すように、対向部71は、ガイド部材Gにより、ヘッドHの噴射面Haの−Z側を移動するようになっている。このため、カバー部COVがヘッドHの−Z側の位置に移動しても対向部71の+Z側の面と噴射面Haとは接触せず、両者の間には一定間隔の隙間が形成されるようになっている。
【0032】
図4は印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置IP、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置MRなどが接続されており、上述した搬送機構CVや、ヘッド移動機構AC、メンテナンス機構MN、カバー部移動機構ACT等が接続されている。
【0033】
印刷装置PRTは、それぞれの圧電振動子38に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。この駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。駆動信号発生器62には、ヘッドHの圧電振動子38に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、各圧電振動子38に対して、個別に駆動信号を供給可能に設けられている。
【0034】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。
ヘッドHによる印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送機構CVによって媒体MをヘッドHの−Z側に配置させる。媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、ヘッドHを移動させつつ、印刷する画像の画像データの入力があるまで待機する。
【0035】
例えば、画像データがモノクロ印刷のデータである場合、制御装置CONTは、4つのノズル列NLのうちブラック(B)のインクを噴射するノズル列NLBに属するノズルNZに対して駆動信号を入力する。より具体的には、当該ノズルNZに係る駆動信号発生器62から圧電振動子38に駆動信号を入力する。このとき、他の3つのノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYに属するノズルNZには駆動信号が入力されず、噴射が行われないことになる。
【0036】
圧電振動子38に駆動信号が入力されると、圧電振動子38が伸縮する。圧電振動子38の伸縮により、圧力室46の容積が変化し、インクを収容した圧力室46の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズルNZからインクが噴射される。ノズルNZから噴射されたインクによって、媒体Mに所望の画像が形成される。
【0037】
このようにノズル列NLBのみを用いて噴射動作を行う間、媒体Mから埃などの異物が巻き上がる場合がある。ノズル列NLBに属するノズルNZでは、インクの噴射が行われているため、ノズルNZに異物が付着しても、インクの噴射と共にノズルNZの外部に排出される。
【0038】
一方、インクの噴射が行われないノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYのノズルNZには、巻き上がった異物が付着してそのまま残留してしまい、ノズルが詰まる場合がある。このようにノズルNZに異物が付着して残留すると、噴射特性が低下してしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、制御装置CONTがカバー部移動機構ACTを作動させ、インクの噴射が行われないノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYを覆うようにカバー部COVをY方向に移動させる。
【0039】
上記のように画像データがモノクロ印刷のデータである場合、制御装置CONTによって当該画像データの印刷にはノズル列NLBのみが用いられるように制御される。制御装置CONTは、噴射動作に用いるノズルを決定する判断をカバー部COVの移動にも利用する。つまり、制御装置CONTは、画像データに基づいてノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYが用いられないことを判断し、当該判断に基づいて、カバー部移動機構ACTを作動させ、噴射動作に用いられないノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYを覆うようにカバー部COVをY方向に移動させる。
【0040】
カバー部COVの移動動作において、当該カバー部COVは、噴射面Haと媒体Mの噴射対象面Maとの間の空間を移動する。すなわち、カバー部COVは、噴射面Ha及び噴射対象面Maに接触することなくノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYを覆うことになる。このため、以降の噴射動作が妨げられることなく、スムーズに行われる。
【0041】
カバー部COVの移動後、図5に示すように、カバー部COVによってノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYが覆われた状態となる。この状態で、制御装置CONTは、ノズル列NLBに属するノズルNZからインクを噴射させる。ノズルNZから噴射されたインクにより、媒体Mにはモノクロの画像が形成されることになる。一方、ノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYについては、カバー部COVで覆われているため、媒体Mから巻き上がった異物がこれらのノズル列NLに属するノズルNZに付着するのが抑制されることになる。
【0042】
また、例えば画像データがカラー印刷のデータである場合、制御装置CONTは、4つのノズル列NLのうちノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYに属するノズルNZに対して駆動信号を入力する。このとき、ノズル列NLBに属するノズルNZには駆動信号が入力されず、噴射が行われないことになる。
【0043】
この場合においても同様に、制御装置CONTは、当該噴射動作で用いるノズル列NLを決定するための判断を、カバー部COVの移動にも利用する。つまり、制御装置CONTは、画像データに基づいてノズル列NLBが用いられないことを判断し、当該判断に基づいて、カバー部移動機構ACTを作動させ、噴射動作に用いられないノズル列NLBを覆うようにカバー部COVを移動させる。
【0044】
カバー部COVの移動後、図6に示すように、カバー部COVによってノズル列NLBが覆われた状態となる。この状態で、制御装置CONTは、ノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLYに属するノズルNZからインクを噴射させる。ノズルNZから噴射されたインクにより、媒体Mにはカラーの画像が形成されることになる。一方、ノズル列NLBについては、カバー部COVで覆われているため、媒体Mから巻き上がった異物がノズルNZに付着するのが抑制されることになる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、噴射動作においてインクの噴射が行われてないノズル列NLがカバー部COVによって覆われることになるため、インクの噴射が行われないノズルNZに異物が付着するのを防ぐことができる。これにより、ノズルNZの詰まりを防ぐことができるので、噴射特性の低下を防ぐことができる。
【0046】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態においては、カバー部COVが複数のノズル列NLをまとめて覆う構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
【0047】
例えば図7に示すように、カバー部COVがノズル列NL毎に設けられた単位カバー部90を有し、それぞれの単位カバー部90がカバー部移動機構ACTによって独立して移動可能に設けられた構成であっても構わない。なお、図7に示す例においては、単位カバー部90がそれぞれ対向部71及び接続部72を有する構成となっている。この構成によれば、ノズル列NL毎に被覆動作を行わせることができる。これにより、例えば単色印字(一色のインクのみを用いた印刷)を行う場合、噴射に用いるノズル列NLとは異なるノズル列NLを確実に覆うことができる。また、図7に示す例においては、各単位カバー部90が1つのノズル列NLを覆う構成となっているが、これに限られることは無く、単位カバー部90が2つ以上のノズル列NLを同時に覆うことができる寸法に形成されている構成であっても構わない。
【0048】
また、上記実施形態においては、ヘッドHが1つ設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図8に示すように、複数のヘッド(ヘッドH1〜ヘッドH5)が設けられた構成であっても、本発明の適用は可能である。
【0049】
図8に示すように、ヘッドユニットHUは、複数(図8では5つ)のヘッドH1〜H5をユニット化することで構成されている。各ヘッドH1〜H5は、上記実施形態のヘッドHと同様の構成となっている。これらヘッドH1〜H5は、取付板91に取り付けられることでユニット化されている。
【0050】
また、カバー部COVは、このような5つのヘッドH1〜H5に対して、ヘッド毎に1つずつ設けられている。各カバー部COVは、対向部71及び接続部72を有している。各カバー部COVは、5つのヘッドH1〜H5のそれぞれに設けられた一対のガイド部材Gに接続されている。各カバー部COVは、カバー部移動機構ACTによって独立して移動可能に設けられている。
【0051】
このように、複数のヘッドH1〜H5が設けられている構成において、カバー部COVがヘッド毎に設けられているため、ヘッド毎にノズル列NL(ノズル列NLB、ノズル列NLC、ノズル列NLM及びノズル列NLY)を保護することができる。これにより、噴射特性の低下を防ぐことができる。
【0052】
また、上記実施形態では、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。
【0053】
また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0054】
液体噴射装置の具体例としては、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0055】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
PRT…印刷装置 M…媒体 Ma…噴射対象面 CONT…制御装置 H、H1〜H5…ヘッド HU…ヘッドユニット Ha…噴射面 CA…キャリッジ NZ…ノズル NL、NLB、NLC、NLM、NLY…ノズル列 COV…カバー部 G…ガイド部材 CAa…縁部 ACT…カバー部移動機構 71…対向部 72…接続部 90…単位カバー部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズルが一列に配置されたノズル列を複数有する液体噴射ヘッドと、
複数の前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆うカバー部と、
複数の前記ノズル列を用いて前記液体を噴射させる噴射動作を前記液体噴射ヘッドに対して行わせると共に、複数の前記ノズル列のうち一部の前記ノズル列を用いた前記噴射動作において前記液体の噴射に用いられる一部の前記ノズル列とは異なる前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆う被覆動作を前記カバー部に対して行わせる制御部と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
複数の前記ノズル列は、一方向に並んで設けられており、
前記カバー部は、前記一方向に移動可能に設けられている
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体噴射ヘッドを保持して移動可能なキャリッジを更に備え、
前記カバー部は、前記キャリッジに設けられている
請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記キャリッジは、前記液体噴射ヘッドのうち前記ノズル列が形成される面と、前記ノズル列から噴射される前記液体の噴射対象面との間に沿って前記カバー部を案内する案内部を有する
請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記カバー部は、前記ノズル列毎に設けられた単位カバー部を有し、
それぞれの前記単位カバー部は、独立して移動可能に設けられている
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体噴射ヘッドは、複数設けられており、
前記カバー部は、前記液体噴射ヘッド毎に設けられている
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズルが一列に配置されたノズル列を複数有する液体噴射ヘッドと、
複数の前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆うカバー部と、
複数の前記ノズル列を用いて前記液体を噴射させる噴射動作を前記液体噴射ヘッドに対して行わせると共に、複数の前記ノズル列のうち一部の前記ノズル列を用いた前記噴射動作において前記液体の噴射に用いられる一部の前記ノズル列とは異なる前記ノズル列のうち少なくとも一列を覆う被覆動作を前記カバー部に対して行わせる制御部と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
複数の前記ノズル列は、一方向に並んで設けられており、
前記カバー部は、前記一方向に移動可能に設けられている
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体噴射ヘッドを保持して移動可能なキャリッジを更に備え、
前記カバー部は、前記キャリッジに設けられている
請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記キャリッジは、前記液体噴射ヘッドのうち前記ノズル列が形成される面と、前記ノズル列から噴射される前記液体の噴射対象面との間に沿って前記カバー部を案内する案内部を有する
請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記カバー部は、前記ノズル列毎に設けられた単位カバー部を有し、
それぞれの前記単位カバー部は、独立して移動可能に設けられている
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体噴射ヘッドは、複数設けられており、
前記カバー部は、前記液体噴射ヘッド毎に設けられている
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−61811(P2012−61811A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209623(P2010−209623)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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