液体噴射装置
【課題】液体のブリッジを液体噴射面のノズル配置領域から離して、ブリッジを形成する液体とノズル内の液体とが繋がるのを抑制する。
【解決手段】キャップ部材21の、リップ部21bに囲まれた部分を、インク噴射面4aのノズル配置領域46と対向するノズル対向部27aよりもさらに外側のノズル16が配置されていない領域45に張り出しておき、この張り出し部27bよりも先にノズル対向部27aをインク噴射面4aから遠ざかるようにキャップ部材21を傾ける。
【解決手段】キャップ部材21の、リップ部21bに囲まれた部分を、インク噴射面4aのノズル配置領域46と対向するノズル対向部27aよりもさらに外側のノズル16が配置されていない領域45に張り出しておき、この張り出し部27bよりも先にノズル対向部27aをインク噴射面4aから遠ざかるようにキャップ部材21を傾ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置において、液体噴射ヘッド内の液体流路に異物や気泡などが混入する、あるいは、ノズル内の液体が乾燥して増粘するなどして、ノズルからの液体噴射性能が低下した場合に、上記異物や気泡、あるいは、増粘した液体をノズルから強制的に排出させ、ノズルからの液体噴射性能を回復させる吸引パージが可能に構成されたものがある。例えば、特許文献1では、ノズルが開口する液体噴射面に密着するキャップ部材と、このキャップ部材に形成された吸引口に接続された吸引手段とを有し、液体噴射面にキャップ部材が密着した状態で、吸引手段を駆動することで、キャップ部材内を減圧してノズルから液体を吸い出し、液体噴射ヘッド内の異物や気泡などを液体とともに排出する吸引パージを実行している。
【0003】
ところで、上記吸引パージ後にキャップ部材を液体噴射面から離間させる際に吸引パージ後のキャップ部材内は負圧のため、液体噴射面に密着していたときの平行な姿勢のままキャップ部材を液体噴射面から離間させようとすると、キャップ部材が液体噴射面から勢いよく離れることになり、この勢いで液体が周囲に飛散する。また、キャップ部材と液体噴射面との間に液体が繋がった状態(ブリッジ)が発生することがあるが、このブリッジの位置が一定にはならない。
【0004】
そこで、液体噴射面からキャップ部材を離間させるときの上述のような液体の飛散を抑制し、ブリッジの形成する位置を一定にした液体噴射装置として、例えば、特許文献2には、キャップ部材をノズルが開口するインク噴射面に対して傾斜させながら離間させて、キャップ部材のインク噴射面から最後に離れる部分にインクのブリッジを局所的に形成することにより、インクの飛散を抑制したプリンタが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2008−221836号公報(図1)
【特許文献2】特開2009−190262号公報(図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のプリンタにおいては、印字品質や印字速度向上などを目的としたノズルの増大にともない、ノズル噴射面及びキャップ部材が大型化すると、このインクのブリッジを形成するインク量が増大しまう。そして、インクのブリッジがノズル噴射面まで濡れ広がり、インク噴射面のキャップ部材が最後に離れる部分の近くに配置されたノズルについては、キャップ部材離間後の大気開放時に、インクのブリッジを形成するインクが背圧によって上記ノズル内に入り込みやすくなる。このような排出されたインクは、液体噴射ヘッド内の異物や気泡、あるいは、増粘したインクとともに排出されたインクであり、また、泡立っている場合も多い。そのため、このようなインクがノズル内に吸い込まれると、その後の液体噴射動作に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
また、吸引パージ後に、インク噴射面に対してキャップ部材を傾けてインクブリッジが形成された状態で、吸引手段によってキャップ部材内に残存する液体を排出する場合に、インク噴射面のキャップ部材が最後に離れる部分に近接するノズル周囲のインクとインクブリッジが繋がってしまうと、キャップ部材内のインクの排出につられてノズル内のインクが無駄に排出されて、インクの排出量が増えてしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、液体のブリッジの形成位置を液体噴射面のノズルから極力離して、ブリッジを形成する液体とノズル内の液体とが繋がるのを抑制した液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズルが開口した液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドの前記液体噴射面に対して離接可能であり、前記複数のノズルを覆うことが可能なキャップ部材と、前記キャップ部材に形成された吸引口に接続され、前記キャップ部材が前記液体噴射面に接触した状態において、前記キャップ部材内を吸引し、前記ノズルから液体を排出する吸引パージを行う吸引手段と、を備え、前記キャップ部材は、前記液体噴射面に密着可能な環状のリップ部を含んでおり、前記キャップ部材の、前記リップ部に囲まれた部分は、前記液体噴射面の前記複数のノズルが配置されたノズル配置領域を覆うノズル対向部と、前記ノズル対向部よりも前記液体噴射面と平行な一方側に向かって張り出し、前記ノズル配置領域とは対向しない張り出し部とを形成しており、前記キャップ部材は、前記液体噴射面から離れるときに、前記ノズル対向部が前記張り出し部よりも先に前記液体噴射面から遠ざかるように傾くことが可能に構成されている。
【0010】
本発明における液体噴射装置によると、吸引手段による吸引パージを行った後に、キャップ部材を液体噴射面に対して傾斜状態で液体噴射面から離間させると、液体噴射面とキャップ部材のリップ部の最後に離れる部分との間において液体のブリッジが形成される。そこで、キャップ部材の、リップ部に囲まれた部分を、液体噴射面のノズル配置領域と対向するノズル対向部よりもさらに外側に張り出しておき、この張り出し部よりも先にノズル対向部を液体噴射面から遠ざかるようにキャップ部材を傾ける。すると、キャップ部材のノズルとは対向しない張り出し部を形成するリップ部が液体噴射面から最後に離れる位置となり、液体噴射面のノズル配置領域から離れた部分と張り出し部を形成するリップ部との間において液体のブリッジが形成されることになり、液体のブリッジの形成位置が液体噴射面のノズルから極力離れる。
【0011】
このように、液体のブリッジの形成位置が液体噴射面のノズルから離れることで、ブリッジを形成する液体とノズル配置領域に配置されたノズル内の液体とが繋がるのを抑制することができる。これにより、ノズル内から一旦排出された液体が逆流するのを防止することができる。また、吸引パージ後に、液体噴射面からキャップ部材を離して、吸引手段によってキャップ部材内に残存する液体を排出する、いわゆる空吸引を行う場合に、ブリッジを形成する液体とノズル内の液体とが繋がったままになり、ブリッジを形成する液体と繋がったノズル内の液体がキャップ部材内の液体の排出につられて無駄に排出されて液体の消費量が増えるのを抑制することができる。
【0012】
また、前記リップ部の前記張り出し部を形成する部分は、前記ノズル対向部から局所的に突出した形状をしていることが好ましい。
【0013】
これによると、ブリッジの形成位置が張り出し部を形成するリップ部の突出した先端部になり、液体噴射面との離間距離が1点において小さくなり、ブリッジを形成する液体が局所的に集中するので飛散しにくくなるとともに、吸引手段により吸引しやすくなる。また、突出した形状であることでリップ部の張り出し部を形成する部分の周長が短くなり、液体噴射面とのシール性が向上する。
【0014】
このとき、前記複数のノズルは、第1ノズル群と、前記第1ノズル群よりもノズル数が多い第2ノズル群とに区分されており、前記キャップ部材は、前記第1ノズル群を覆う第1キャップ部と、前記第2ノズル群を覆う第2キャップ部とを有し、前記張り出し部は、前記第2ノズル群を覆う前記第2キャップ部にのみ設けられていることが好ましい。
【0015】
第2キャップ部は覆うノズル数が多いため、大型化している。そこで、多くのノズルを覆うためにリップ部の周長が長く、ブリッジを形成する液体の量が多くなる第2キャップ部に対して張り出し部を設けることは好適である。
【0016】
そして、前記第1ノズル群に属する前記ノズルは、全て同じ種類の液体を噴射するものであり、前記第2ノズル群には、異なる種類の液体を噴射する複数種類の前記ノズルが含まれていることが好ましい。
【0017】
これによると、第2キャップ部は、異なる種類の液体を噴射する複数種類の前記ノズルを共通に覆っているため、吸引パージにおいて第2キャップ部内に複数種類の液体が排出されて混ざることになる。このように混ざった液体がブリッジを形成して、ノズル内の液体と繋がってノズル内に逆流するのを防止するために、ブリッジの形成位置が液体噴射面のノズル配置領域から離れるように第2キャップ部に対して張り出し部を設けることは好適である。
【0018】
また、前記キャップ部材内には、前記吸引パージ時における前記キャップ部材の変形を抑制するための、板状のキャップチップが収容されており、前記キャップチップの前記張り出し部内に収容された部分には、前記ノズル対向部に収容された部分よりも厚みが厚くなっている部分があることが好ましい。
【0019】
これによると、キャップ部材の張り出し部を形成するリップ部と液体噴射面との間に液体のブリッジが形成されるのに加えて、張り出し部内に収容されたキャップチップの厚みが厚くなっている部分と液体噴射面のノズルが配置されていない領域との間にも液体のブリッジが形成され、液体のブリッジがキャップ部材の内側に寄せられるため、ブリッジを形成する液体がキャップ部材外にこぼれにくくなる。
【0020】
このとき、前記キャップチップの厚みが厚くなった部分は、前記キャップ部材の前記張り出し部を形成する前記リップ部と隙間をあけて立設したリブであることが好ましい。
【0021】
これによると、リブとキャップ部材のリップ部との隙間に、ブリッジを形成する液体と繋がった液体が入り込んで保持されるため、ブリッジを形成する液体がキャップ部材外によりこぼれにくくなる。
【0022】
また、前記ノズル配置領域に配置された前記複数のノズルは、所定の一方向に並んだノズル列を形成しており、前記液体噴射ヘッドは、前記液体噴射面と直交する方向から見て、前記液体噴射面と反対側の面における前記ノズル配置領域よりも外側に配置された液体供給口と、前記液体供給口を覆うフィルタと、前記液体供給口と連通し、前記ノズル列方向に延在し、前記複数のノズルに共通に連通する共通液室とをさらに有し、前記キャップ部材の前記張り出し部は、前記吸引パージ時に、前記液体噴射面の、前記離接方向から見て前記フィルタと重なる領域と対向していることが好ましい。
【0023】
液体供給口は異物を除去するためにフィルタに覆われており、異物によりフィルタが塞がれて液体が流れにくくなりにくいように、液体供給口の径を大きくして、フィルタの表面積を大きくしている。そして、この液体供給口及びフィルタは、ノズル配置領域よりも外側に配置されており、これにより、液体噴射面はノズル配置領域に隣接してノズルが配置されていない領域を有することになる。この空いた領域と対向するようにキャップ部材の張り出し部を設けることで、液体噴射面のノズルが配置されていない領域を有効活用することができる。
【0024】
さらに、前記キャップ部材の前記吸引口は、前記張り出し部に形成されていることが好ましい。
【0025】
これにより、吸引口がブリッジを形成する液体に近くなるため、ブリッジを形成する液体を吸引しやすくなる。
【0026】
加えて、前記複数のノズルは、所定の一方向に並んだノズル列を形成しており、前記キャップ部材の前記張り出し部は、前記ノズル対向部から前記一方向に向かって張り出していることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
キャップ部材のノズルとは対向しない張り出し部を形成するリップ部が液体噴射面から最後に離れる位置となり、液体噴射面のノズル配置領域から離れた部分と張り出し部を形成するリップ部との間において液体のブリッジが形成されることになる。したがって、液体のブリッジの形成位置が液体噴射面のノズルから離れることで、ブリッジを形成する液体とノズル配置領域に配置されたノズル内の液体とが繋がるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。
【図2】インクジェットヘッドの平面図である。
【図3】(a)は図2のA部拡大図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図4】キャップ部材の平面図である。
【図5】図4のC−C線断面図である。
【図6】吸引パージを実行しているときのキャップ部材の第2キャップ部及びキャップ駆動機構の、搬送方向を含む鉛直面に関する断面図であり、(a)はキャッピング時、(b)はキャップ部材の離間時である。
【図7】変形例1におけるキャップ部材の平面図である。
【図8】変形例2におけるキャップ部材の平面図である。
【図9】変形例3におけるキャップ部材の平面図である。
【図10】変形例4におけるキャップ部材の平面図である。
【図11】変形例5における吸引パージを実行しているときのキャップ部材の第2キャップ部及びキャップ駆動機構の、搬送方向を含む鉛直面に関する断面図であり、(a)はキャッピング時、(b)はキャップ部材の離間時である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。
【0030】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1(液体噴射装置)は、記録用紙Pが載置されるプラテン2と、このプラテン2と平行な走査方向に往復移動可能なキャリッジ3と、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4(液体噴射ヘッド)と、記録用紙Pを走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送機構5と、インクジェットヘッド4の液体噴射性能の回復・維持に関する各種メンテナンス作業を行うメンテナンスユニット6などを有している。
【0031】
プラテン2の上面には図示しない給紙機構から供給された記録用紙Pが載置される。また、プラテン2の上方には、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール10、11が設けられ、キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10、11に沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。また、2本のガイドレール10、11は、プラテン2から走査方向に沿って図1の右方に離れた位置まで延在しており、キャリッジ3は、プラテン2上の記録用紙Pと対向する領域(記録領域)から、非記録領域である、プラテン2から右方向に離れた位置まで移動可能に構成されている。
【0032】
また、キャリッジ3には、2つのプーリ12、13間に巻き掛けられた無端ベルト14が連結されており、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が走行駆動されたときに、キャリッジ3は、無端ベルト14の走行にともなって走査方向に移動するようになっている。
【0033】
搬送機構5は、搬送方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18、19を有し、これら2つの搬送ローラ18、19によって、プラテン2に載置された記録用紙Pを搬送方向下流側(図1の前方)に搬送する。
【0034】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3の下部に取り付けられており、プラテン2の上面と平行な、インクジェットヘッド4の下面が、複数のノズル16が開口するインク噴射面4a(液体噴射面:図3(b)参照)となっている。そして、このインク噴射面4aの複数のノズル16から、プラテン2に載置された記録用紙Pに対してインクを噴射する。
【0035】
インクジェットヘッド4の具体的な構成について説明する。図2は、インクジェットヘッドの平面図である。図3(a)は図2のA部拡大図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。図2、図3に示すように、インクジェットヘッド4は、複数のノズル16及び複数のノズル16にそれぞれ連通する複数の圧力室34が形成された流路ユニット30と、流路ユニット30の上面に配置された圧電アクチュエータ31とを有している。
【0036】
図3(b)に示すように、流路ユニット30は4枚のプレートが積層された構造を有し、この流路ユニット30の下面(インク噴射面4a)には複数のノズル16が形成されている。図2に示すように、これら複数のノズル16は搬送方向に沿って配列され、走査方向に並ぶ4列のノズル列33を構成している。
【0037】
4列のノズル列33(33bk、33y、33c、33m)にそれぞれ属するノズル16(16bk、16y、16c、16m)からは、顔料インクであるブラックインクと、染料インクである3色のカラーインク(イエロー、シアン、マゼンタ)の、合計4色のインクがそれぞれ噴射される。なお、ブラックインクを噴射するノズル16bk(以下、ブラックノズル16bkともいう)が本願発明の第1ノズル群に属するノズル、3色のカラーインクを噴射する3種類のノズル16y、16c、16m(以下、カラーノズル16clともいう)が本願発明の第2ノズル群に属するノズルに相当する。
【0038】
また、流路ユニット30の下面(インク噴射面4a)において、ブラックのノズル列33bkと、カラー(イエロー)のノズル列33yとの間には、空いた領域37が存在しているが、この領域37は、後述するキャップ部材21の2つの第1、第2キャップ部26、27を仕切る仕切り壁21c(図4参照)が当接する領域になっている。
【0039】
また、流路ユニット30には、複数のノズル16にそれぞれ連通する複数の圧力室34が形成され、4列のノズル列33に対応して、複数の圧力室34も4列に配列されている。さらに、流路ユニット30には、それぞれ搬送方向に延在し、4列の圧力室列にブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクを供給する4本のマニホールド35が形成されている。なお、4本のマニホールド35は、ノズル16が配置された領域よりも搬送方向上流側に配置され、流路ユニット30の上面(インク噴射面4aと反対側の面)に形成された4つのインク供給口36に接続されている。
【0040】
そして、インク供給口36は、フィルタ38により覆われており、インク供給口36に接続されたインクタンク(図示せず)から導入されたインク中の異物を捕捉して、インク供給口36よりも下流側(具体的には、マニホールド35や圧力室34など)に異物が入り込んでしまうのを防止している。なお、異物によりフィルタ38が塞がれて目詰まりしてインクが流れにくくなりにくいように、インク供給口36の径を大きくして、フィルタ38の表面積を大きくしている。
【0041】
そして、複数のノズル16が搬送方向に並んだノズル列33を形成し、平面視で複数のノズル列33よりも搬送方向に関する外側にインク供給口36が配置されて、このインク供給口36とノズル列33とを連通させるために、インク供給口36から搬送方向に延びてノズル列33に属する複数のノズル16に連通するマニホールド35が形成されている。これにより、流路ユニット30の下面(インク噴射面4a)には、インク供給口36と平面視で重なる領域であって、ノズル16が配置されたノズル配置領域46から搬送方向(ノズル列方向)上流側に張り出し、ノズル16が配置されていない領域45が存在することになる。
【0042】
図3(b)に示すように、圧電アクチュエータ31は、複数の圧力室34を覆う振動板40と、この振動板40の上面に配置された圧電層41と、圧電層41の上面に複数の圧力室34に対応して配置された複数の個別電極42とを有している。圧電層41の上面に位置する複数の個別電極42は、圧電アクチュエータ31を駆動するドライバIC47とそれぞれ接続されており、ドライバIC47から複数の個別電極42に対して所定の駆動電圧が独立して印加されるようになっている。また、圧電層41の下面に位置する振動板40は金属材料で形成されており、圧電層41を挟んで複数の個別電極42と対向する共通電極の役割を果たす。なお、この振動板40はドライバIC47のグランド配線に接続されて常にグランド電位に保持される。
【0043】
この圧電アクチュエータ31は、ドライバIC47から、ある個別電極42と共通電極としての振動板40の間に所定の駆動電圧が印加されたときに、両者の間に挟まれた圧電層41の圧電変形(圧電歪)によって圧力室34の体積変化を生じさせ、圧力室34内のインクに圧力を付与する。このとき、上記圧力室34に連通するノズル16からインクが噴射されることになる。
【0044】
そして、インクジェットプリンタ1は、プラテン2上に載置された記録用紙Pに対して、キャリッジ3とともに走査方向(図1の左右方向)に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを噴射させるとともに、2つの搬送ローラ18、19によって記録用紙Pを搬送方向下流側に搬送することにより、記録用紙Pに所望の画像や文字などを印刷する。
【0045】
次に、メンテナンスユニット6について説明する。図1に示すように、メンテナンスユニット6は、プラテン2に対して走査方向一方側(図1の右側)に離れた位置(メンテナンス位置:図1に二点鎖線でキャリッジ3が示されているAの位置)に配置されている。このメンテナンスユニット6は、インクジェットヘッド4のインク噴射面4aに接触して複数のノズル16の開口を覆うことが可能なゴムなどの弾性材料からなるキャップ部材21と、キャップ部材21内に収容された2つのキャップチップ70、71(図4参照)と、キャップ部材21に接続された吸引ポンプ23(吸引手段)と、吸引パージ後にインク噴射面4aに付着したインクを拭き取るワイパー22などを有している。
【0046】
ワイパー22は、キャップ部材21よりもプラテン2側の位置に立設されており、吸引パージ後に、このワイパー22の先端がインク噴射面4aに接触した状態でキャリッジ3が走査方向に移動することによって、ワイパー22はインク噴射面4aに対して相対的に移動し、インク噴射面4aに付着したインクを拭き取る。
【0047】
次に、キャップ部材21について説明する。図4は、キャップ部材の平面図である。図5は、図4のC−C線断面図である。なお、図4においては、キャップ部材21によりキャッピングされたインクジェットヘッド4を仮想線で示している。また、図5においては、キャップ部材21によりキャッピングされたインクジェットヘッド4を実線で示している。図4、図5に示すように、キャップ部材21は、底壁部21aと、この底壁部21aの外周部に立設した環状のリップ部21bと、底壁部21aから立設した仕切り壁21cとを有しており、これら底壁部21a、リップ部21b及び仕切り壁21cは一体成型されている。
【0048】
リップ部21bに囲まれたキャップ部材21の内側空間には、底壁部21aから立設して搬送方向に延在する仕切り壁21cで仕切られることにより、1列のノズル列33bkを構成する複数のブラックノズル16bkを覆う大きさを有する第1キャップ部26と、3列のカラーのノズル列33y、33c、33mを構成する複数のカラーノズル16cl(16y、16c、16m)を覆う第2キャップ部27とが形成されている。
【0049】
なお、3列のノズル列を構成するカラーノズル16clは、ノズル列が1列のブラックノズル16bkよりもノズルの数が多いことから、カラーノズル16clを共通に覆う大きさを有する第2キャップ部27は、ブラックノズル16bkを覆う第1キャップ部26よりも面積(内容積)が大きくなっている。そして、キャップ部材21は、後述するキャップ駆動機構25(図6参照)によりインク噴射面4aに対して離接し、インク噴射面4aに接触したときには、第1キャップ部26によりブラックノズル16bkを覆うとともに、第2キャップ部27によりカラーノズル16clを覆う。
【0050】
また、第2キャップ部27は、リップ部21bに囲まれた、インク噴射面4aのノズル配置領域46と対向するノズル対向部27aと、ノズル対向部27aから搬送方向上流側(ノズル配列方向の一方側)のノズル16が配置されていない領域45に向かって局所的に突出するように張り出した張り出し部27bとを有している。
【0051】
第1キャップ部26の底壁部の、ノズル配列方向における一端部(搬送方向上流側の端部)には吸引口28が形成されており、この吸引口28は、インク噴射面4aのノズル配置領域46と対向している。また、第2キャップ部27の張り出し部27bの底壁部には吸引口29が形成されており、この吸引口29は、インク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45と対向していている。
【0052】
これら2つの吸引口28、29は、それぞれチューブ50によって切り換えユニット24に接続され、さらに、切り換えユニット24は吸引ポンプ23と接続されている。切り換えユニット24はその内部に切換弁(図示省略)を有し、キャップ部材21がインクジェットヘッド4のインク噴射面4aと密着したキャッピング状態にあるときに、切り換えユニット24は、吸引ポンプ23を、第1キャップ部26と第2キャップ部27のいずれか一方に連通させる。その状態で、吸引ポンプ23により連通先のキャップ部26(27)内を吸引することで、そのキャップ部26(27)によって覆われたノズル16からインクを排出させる。すなわち、ブラックノズル16bkとカラーノズル16clの吸引パージがそれぞれ個別に行われるようになっている。
【0053】
また、キャップ部材21は、上記吸引パージ以外にも、インクジェットヘッド4を使用しない状態(インクを噴射しない状態)においても用いられる。このように、インクジェットヘッド4が使用されないときには、キャップ部材21がインク噴射面4aに接触してノズル16を覆うことによって、ノズル16を保護するとともに及びノズル16内のインクの乾燥を抑制する。
【0054】
キャップチップ70、71は、合成樹脂などからなり、第1キャップ部26と第2キャップ部27の外形に合わせた形状をしており、第1キャップ部26と第2キャップ部27内にそれぞれ収容されて、吸引パージ時にリップ部21bが減圧により内側に撓むのを抑制している。そして、図4、図5に示すように、第2キャップ部27内に収容されたキャップチップ71の張り出し部27bに配置された部分には、インク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45と対向して立設したリブ71aが形成されている。リブ71aは、走査方向に延在しており、リップ部21bの突出した先端部と搬送方向に関して隙間をあけて配置されている。
【0055】
そして、キャップ部材21は、インク噴射面4aと接触するリップ部21bの先端面が、インク噴射面4aに開口したノズル16の配列方向(搬送方向)に対して、ノズル対向部27aが張り出し部27bよりも先にインク噴射面4aから遠ざかるように傾動可能に構成されており、キャップ駆動機構25は、キャップ部材21を傾斜状態でインク噴射面4aから離間させる。
【0056】
このキャップ駆動機構25について説明する。図6は、吸引パージを実行しているときのキャップ部材の第2キャップ部及びキャップ駆動機構の、搬送方向を含む鉛直面に関する断面図であり、(a)はキャッピング時、(b)はキャップ部材の離間時をそれぞれ示す。図6(a)に示すように、キャップ駆動機構25は、所定のプロファイルを有するカム51と、カム51を回転駆動させるカム駆動モータ52と、キャップ部材21を収容するキャップホルダ53とを有している。キャップホルダ53は、上部が開口したボックス形状をしており、その内部にキャップ部材21が収容されている。また、キャップホルダ53の内底部にはコイルバネ54が設けられており、このコイルバネ54によってキャップ部材21は上方へ付勢されている。
【0057】
キャップ部材21は、その底壁部21aの一端部(ノズル配列方向における張り出し部27bが張り出した一方側の端部:搬送方向上流側の端部)において突出した係止突起21dを有している。一方、キャップホルダ53においてキャップ部材21の前記一端側には、係止突起21dに係合する突起状のストッパ55が設けられている。ストッパ55は係止突起21dに対して上方に位置しており、係止突起21dがストッパ55に当接することによって、コイルバネ54に付勢されるキャップ部材21の上方限界位置が規定されている。
【0058】
また、キャップ部材21の係止突起21dと反対側の端部には、図6(a)の紙面直交方向に延びる枢支軸56が設けられており、また、キャップホルダ53のストッパ55と反対側の端部には、枢支軸56をスライド自在に支持する軸受部57が設けられている。したがって、キャップ部材21は、図6(b)のように枢支軸56が軸受部57の天井部分に当接したときに、枢支軸56を中心に回動することによって、係止突起21d側の端部が、キャップホルダ53の内底面に当接する下方限界位置から、係止突起21dがストッパ55に当接する上方限界位置に至る間を移動可能になっている。
【0059】
上記のようにしてキャップ部材21を収容するキャップホルダ53の下面には、カム51の周面が当接している。カム51は、カム駆動モータ52により回転駆動され、カム51の位相(回転角度)に応じてキャップホルダ53(及びキャップ部材21)は昇降駆動されるようになっている。
【0060】
そして、インクジェットヘッド4がメンテナンス位置A(図1参照)にあるときに、カム51が反時計回りの方向に回転すると、カム51のプロファイルによってキャップホルダ53が押し上げられ、図6(a)のように、キャップ部材21がインク噴射面4aに接触し、ノズル16を覆ったキャッピング状態となる。この状態で吸引ポンプ23によってキャップ部材21内の吸引が行われると、キャップ部材21(第1キャップ部26、第2キャップ部27)内の圧力が低下してノズル16からキャップ部26,27内にインクが排出される(吸引パージ)。
【0061】
一方、図6(a)の状態から、カム51を時計回りの方向に回転させることにより、カム51のプロファイルに応じてキャップホルダ53が自重により下降する。このとき、キャップ部材21はコイルバネ54によって上方へ付勢される一方で、キャップ部材21の図中右端部は枢支軸56が、キャップホルダ53の軸受部57の天井部分に当接するため、キャップ部材21は、キャップホルダ53の下降にともなって図中右端部から先に離間する。これにより、図6(b)のように、キャップ部材21の接触面21eが、図中左端部が右端部よりも上方に位置した、ノズル配列方向(搬送方向)に対してノズル対向部27aが張り出し部27bよりも先にインク噴射面4aから遠ざかるように傾斜した姿勢で、インク噴射面4aから離間することになる。
【0062】
上記のように、傾斜状態でキャップ部材21をインク噴射面4aから離間させると、図6(b)のように、キャップ部材21が最後に離れる端部(図中左端部)とインク噴射面4aとの間に局所的にインクブリッジIaが形成される。このように、キャップ部材の外周部の一部にのみインクブリッジIaが形成されることで、インクブリッジIaが切れるときの周囲へのインクの飛散が抑制されることになる。
【0063】
また、キャップ部材21の、リップ部21bに囲まれた部分を、インク噴射面4aのノズル配置領域46と対向するノズル対向部27aよりもさらに外側に張り出しておき、この張り出し部27bよりも先にノズル対向部27aをインク噴射面4aから遠ざかるようにキャップ部材21を傾けている。すると、キャップ部材21のノズル16とは対向しない張り出し部27bを形成するリップ部21bがインク噴射面4aから最後に離れる位置となり、インク噴射面4aのノズル配置領域46から離れた部分と張り出し部27bを形成するリップ部21bとの間においてインクブリッジIaが形成されることになる。
【0064】
したがって、インクブリッジIaの形成位置がインク噴射面4aのノズル配置領域46(ノズル16)から離れることで、インクブリッジIaとノズル配置領域46に配置されたノズル16内のインクとが繋がるのを抑制することができる。これにより、ノズル16内にインクブリッジIaを形成するインクが逆流するのを防止することができる。また、吸引パージ後に、インク噴射面4aからキャップ部材21を離して、吸引ポンプ23による吸引を行い、吸引パージにおいてキャップ部材21内に排出されたインクを吸引して排出する、いわゆる空吸引を行う場合に、インクブリッジIaとノズル16内のインクとが繋がったままになり、インクブリッジIaと繋がったノズル16内のインクが排出されてインクの消費量が増えるのを抑制することができる。また、キャップ部材21が張り出し部27bの分だけ大型化することで、ブリッジを形成するインク量が増大してもキャップ部材21外にこぼれにくくなる。
【0065】
そして、ブリッジの形成位置が張り出し部27bを形成するリップ部21bの突出した先端部になり、インク噴射面4aとの離間距離が1点において小さくなり、インクブリッジIaが局所的に集中するので飛散しにくくなるとともに、吸引ポンプ23により吸引しやすくなる。また、突出した形状であることでリップ部21bの張り出し部27bを形成する部分の周長が短くなり、インク噴射面4aとのシール性が向上する。
【0066】
また、キャップ部材21(第2キャップ部27)内にキャップチップ71が配置されており、このキャップチップ71の張り出し部27bに配置された領域にリブ71aが立設していることで、キャップ部材21の張り出し部27bを形成するリップ部21bとインク噴射面4aとの間にインクブリッジIaが形成されるのに加えて、キャップ部材21内に収容されたキャップチップ71のリブ71aとインク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45との間にもインクブリッジIaが形成され、インクブリッジIaがキャップ部材21の内側に寄せられるため、インクブリッジIaを形成するインクがキャップ部材21外にこぼれにくくなる。さらに、リブ71aとリップ部21bとの隙間にインクブリッジIaを形成するインクと繋がったインクが入り込んで保持されるため、インクブリッジIaを形成するインクがキャップ部材21外によりこぼれにくくなる。
【0067】
さらに、多くのノズル16(カラーノズル16cl)を覆うためにリップ部21bの周長が長く、インクブリッジIaを形成するインクの量が多くなる第2キャップ部27に対して張り出し部27bを設けることは好適である。
【0068】
また、第2キャップ部27は、複数色の互いに異なるインクをそれぞれ噴射するカラーノズル16clを共通に覆っているため、吸引パージにおいて第2キャップ部27内に複数色のインクが排出されて混ざることになる。このように混色したインクがインクブリッジIaを形成して、ノズル16内のインクと繋がってノズル16内に逆流するのを防止するために、ブリッジの形成位置がインク噴射面4aのノズル配置領域46から離れるように第2キャップ部27に対して張り出し部27bを設けることは好適である。
【0069】
また、キャップ部材21がインク噴射面4aから離間すると、吸引ポンプ23により、キャップ部材21内に溜まったインクを吸引して排出する。なお、図6(b)のキャップ部材21の傾斜姿勢において、インク噴射面4aに近い側の端部(図中左端部)、すなわち、インク噴射面4aに対して最後に離れる端部、すなわちインクブリッジIaの形成位置の近くに吸引口28、29が設けられている。具体的に、吸引口29は、第2キャップ部27の張り出し部27bに形成されている。これにより、キャップ部材21内に溜まったインクを確実に排出できるようになる。
【0070】
さらに、上述したように、インク供給口36は異物を除去するためにフィルタ38に覆われており、異物によりフィルタ38が塞がれてインクが流れにくくなりにくいように、インク供給口36の径を大きくして、フィルタ38の表面積を大きくしている。そして、このインク供給口36及びフィルタ38は、ノズル列よりも外側に配置されており、これにより、インク噴射面4aはノズル配置領域46の外側に、ノズル16が配置されておらず、インク供給口36及びフィルタ38を配置する領域45を有することになる。この空いた領域45と対向するようにキャップ部材21の張り出し部27bを設けることで、インク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45を有効活用することができる。
【0071】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、上述した実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0072】
キャップ部材21の第2キャップ部27の張り出し部27bの形状は、ノズル対向部27aからノズル16の配置されていない領域45に張り出していれば、その形状はいかなる形状であってもよい。以下、いくつかの具体例を挙げて説明する。
【0073】
1)本実施形態においては、キャップ部材21の第2キャップ部27の張り出し部27bは、局所的に突出していたが、図7に示すように、キャップ部材121の第2キャップ部127は、矩形状のノズル対向部127aが走査方向の幅を変えずに搬送方向に張り出した形状の張り出し部127bであってもよい(変形例1)。なお、キャップチップの図示は省略しているが、上記変形例の形状に応じたキャップチップがキャップ部内には収容される。
【0074】
2)本実施形態においては、キャップ部材21の第2キャップ部27の張り出し部27bは、搬送方向中央が局所的に突出していたが、図8に示すように、キャップ部材221の第2キャップ部227は、ノズル対向部227aから走査方向の一方端部が局所的に突出した形状の張り出し部227bであってもよい(変形例2)。なお、キャップチップの図示は省略しているが、上記変形例の形状に応じたキャップチップがキャップ部内には収容される。これによると、張り出し部127bを形成することでリップ部21bに突出した角が形成されることがなく、シール性が低下しにくい。また、張り出し部127bは局所的に突出した形状であるため、上述したように吸引ポンプ23により吸引しやすく、インクブリッジIaを形成するインクがキャップ部材221からこぼれにくくなる。
【0075】
また、本実施形態においては、キャップ部材21は、ブラックノズル16bkを覆う第1キャップ部26とカラーノズル16clを覆う第2キャップ部27との2つのキャップ部に仕切り壁21cでわけられていたが、仕切り壁21cは設けられていなくてもよい(変形例3)。図9に示すように、キャップ部材321は、底壁部321aとその外周に立設した環状のリップ部321bとを有し、全てのノズル16を覆っている。そして、リップ部321bは、全てのノズル16と対向するノズル対向部327aとノズル対向部327aから張り出した張り出し部327bとを有している。そして、張り出し部327bは、局所的に突出している。なお、キャップチップの図示は省略しているが、上記変形例の形状に応じたキャップチップがキャップ部内には収容される。この場合、吸引ポンプ23に接続される吸引口329は1つでよく、切り換えユニット24を設ける必要もない。これにおいても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、張り出し部327bは、局所的に突出していなくてもよい。
【0076】
さらに、本実施形態においては、キャップ部材21の第2キャップ部27に張り出し部27bが形成され、第1キャップ部26には張り出し部27bは形成されていなかったが、第1キャップ部26にも張り出し部が形成されていてもよい(変形例4)。図10に示すように、キャップ部材421は、ブラックノズル16bkを覆う第1キャップ部426と、カラーノズル16clを覆う第2キャップ部427とを有している。そして、第1キャップ部426と第2キャップ部427は、ともに、ノズル16と対向するノズル対向部426a、427aと、ノズル対向部426a、427aから張り出した張り出し部426b、427bとを有している。なお、キャップチップの図示は省略しているが、上記変形例の形状に応じたキャップチップがキャップ部内には収容される。この場合、第1キャップ部426の張り出し部426bの底壁部の、インク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域と対向する部分に、吸引口が形成されているのが好ましい。なお、張り出し部426b、427bは、局所的に突出していてもよい。本変形例は、第1キャップ部426において、シール性よりも、インクブリッジIaとノズル16内のインクが繋がるのを抑制したいときに採用するのが好適である。
【0077】
また、本実施形態においては、キャップチップ71のリブ71aは、走査方向に延在しており、リップ部21bの突出した先端部と搬送方向に関して隙間をあけて配置されていたが、図11(a)に示すように、キャップチップ571は、インク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45と対向する部分571aの厚みが、インク噴射面4aのノズル配置領域46と対向する部分の厚みよりも厚くなっていればよい(変形例5)。この場合においても、図11(b)に示すように、キャップ部材21の張り出し部27bを形成するリップ部21bとインク噴射面4aとの間にインクブリッジIaが形成されるのに加えて、キャップ部材21内に収容されたキャップチップ571の厚みが厚い部分571aとインク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45との間にもインクブリッジIaが形成され、インクブリッジIaがキャップ部材21の内側に寄せられるため、インクブリッジIaを形成するインクがキャップ部材21外にこぼれにくくなる。
【0078】
さらに、本実施形態においては、キャップチップ71にリブ71aが形成されていたが、このリブ71aは形成されておらず、キャップチップ71のインク噴射面4aと対向する面は平面であってもよい。
【0079】
また、本実施形態においては、第1キャップ部26と第2キャップ部27がノズル配列方向と直交する方向(走査方向)に並んでいたことから、第2キャップ部27の張り出し部27bは、ノズル配列方向に張り出していたが、第1キャップ部26と第2キャップ部27がノズル配列方向に並んでいたり、キャップ部自体が複数ではなく、1つの場合には、張り出し部は、ノズル配列方向と直交する方向に張り出していてもよい。
【0080】
さらに、本実施形態において、キャップ部材21は、2つのキャップ部を有していたが、キャップ部の数は、1または3以上であってもよく、これらのキャップ部に適宜張り出し部が形成されていてもよい。
【0081】
上述した実施形態では、キャップ部材21の、インク噴射面4aから最後に離間する端部に、吸引ポンプ23と接続される吸引口28、29が形成されていたが、吸引口の形成位置は上記の位置に限られるものではない。
【0082】
また、本実施形態は、本発明を、記録用紙にインクを噴射して文字や画像などを記録するインクジェットプリンタに適用したものであるが、本発明の適用対象は、このような用途に使用されるものに限られない。すなわち、インク以外のさまざまな種類の液体をその用途に応じて対象に噴射する、種々の液体噴射装置に本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 インクジェットプリンタ
4 インクジェットヘッド
4a インク噴射面
16 ノズル
21 キャップ部材
23 吸引ポンプ
26 第1キャップ部
27 第2キャップ部
27a ノズル対向部
27b 張り出し部
45 領域
46 ノズル配置領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置において、液体噴射ヘッド内の液体流路に異物や気泡などが混入する、あるいは、ノズル内の液体が乾燥して増粘するなどして、ノズルからの液体噴射性能が低下した場合に、上記異物や気泡、あるいは、増粘した液体をノズルから強制的に排出させ、ノズルからの液体噴射性能を回復させる吸引パージが可能に構成されたものがある。例えば、特許文献1では、ノズルが開口する液体噴射面に密着するキャップ部材と、このキャップ部材に形成された吸引口に接続された吸引手段とを有し、液体噴射面にキャップ部材が密着した状態で、吸引手段を駆動することで、キャップ部材内を減圧してノズルから液体を吸い出し、液体噴射ヘッド内の異物や気泡などを液体とともに排出する吸引パージを実行している。
【0003】
ところで、上記吸引パージ後にキャップ部材を液体噴射面から離間させる際に吸引パージ後のキャップ部材内は負圧のため、液体噴射面に密着していたときの平行な姿勢のままキャップ部材を液体噴射面から離間させようとすると、キャップ部材が液体噴射面から勢いよく離れることになり、この勢いで液体が周囲に飛散する。また、キャップ部材と液体噴射面との間に液体が繋がった状態(ブリッジ)が発生することがあるが、このブリッジの位置が一定にはならない。
【0004】
そこで、液体噴射面からキャップ部材を離間させるときの上述のような液体の飛散を抑制し、ブリッジの形成する位置を一定にした液体噴射装置として、例えば、特許文献2には、キャップ部材をノズルが開口するインク噴射面に対して傾斜させながら離間させて、キャップ部材のインク噴射面から最後に離れる部分にインクのブリッジを局所的に形成することにより、インクの飛散を抑制したプリンタが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2008−221836号公報(図1)
【特許文献2】特開2009−190262号公報(図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のプリンタにおいては、印字品質や印字速度向上などを目的としたノズルの増大にともない、ノズル噴射面及びキャップ部材が大型化すると、このインクのブリッジを形成するインク量が増大しまう。そして、インクのブリッジがノズル噴射面まで濡れ広がり、インク噴射面のキャップ部材が最後に離れる部分の近くに配置されたノズルについては、キャップ部材離間後の大気開放時に、インクのブリッジを形成するインクが背圧によって上記ノズル内に入り込みやすくなる。このような排出されたインクは、液体噴射ヘッド内の異物や気泡、あるいは、増粘したインクとともに排出されたインクであり、また、泡立っている場合も多い。そのため、このようなインクがノズル内に吸い込まれると、その後の液体噴射動作に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
また、吸引パージ後に、インク噴射面に対してキャップ部材を傾けてインクブリッジが形成された状態で、吸引手段によってキャップ部材内に残存する液体を排出する場合に、インク噴射面のキャップ部材が最後に離れる部分に近接するノズル周囲のインクとインクブリッジが繋がってしまうと、キャップ部材内のインクの排出につられてノズル内のインクが無駄に排出されて、インクの排出量が増えてしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、液体のブリッジの形成位置を液体噴射面のノズルから極力離して、ブリッジを形成する液体とノズル内の液体とが繋がるのを抑制した液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズルが開口した液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドの前記液体噴射面に対して離接可能であり、前記複数のノズルを覆うことが可能なキャップ部材と、前記キャップ部材に形成された吸引口に接続され、前記キャップ部材が前記液体噴射面に接触した状態において、前記キャップ部材内を吸引し、前記ノズルから液体を排出する吸引パージを行う吸引手段と、を備え、前記キャップ部材は、前記液体噴射面に密着可能な環状のリップ部を含んでおり、前記キャップ部材の、前記リップ部に囲まれた部分は、前記液体噴射面の前記複数のノズルが配置されたノズル配置領域を覆うノズル対向部と、前記ノズル対向部よりも前記液体噴射面と平行な一方側に向かって張り出し、前記ノズル配置領域とは対向しない張り出し部とを形成しており、前記キャップ部材は、前記液体噴射面から離れるときに、前記ノズル対向部が前記張り出し部よりも先に前記液体噴射面から遠ざかるように傾くことが可能に構成されている。
【0010】
本発明における液体噴射装置によると、吸引手段による吸引パージを行った後に、キャップ部材を液体噴射面に対して傾斜状態で液体噴射面から離間させると、液体噴射面とキャップ部材のリップ部の最後に離れる部分との間において液体のブリッジが形成される。そこで、キャップ部材の、リップ部に囲まれた部分を、液体噴射面のノズル配置領域と対向するノズル対向部よりもさらに外側に張り出しておき、この張り出し部よりも先にノズル対向部を液体噴射面から遠ざかるようにキャップ部材を傾ける。すると、キャップ部材のノズルとは対向しない張り出し部を形成するリップ部が液体噴射面から最後に離れる位置となり、液体噴射面のノズル配置領域から離れた部分と張り出し部を形成するリップ部との間において液体のブリッジが形成されることになり、液体のブリッジの形成位置が液体噴射面のノズルから極力離れる。
【0011】
このように、液体のブリッジの形成位置が液体噴射面のノズルから離れることで、ブリッジを形成する液体とノズル配置領域に配置されたノズル内の液体とが繋がるのを抑制することができる。これにより、ノズル内から一旦排出された液体が逆流するのを防止することができる。また、吸引パージ後に、液体噴射面からキャップ部材を離して、吸引手段によってキャップ部材内に残存する液体を排出する、いわゆる空吸引を行う場合に、ブリッジを形成する液体とノズル内の液体とが繋がったままになり、ブリッジを形成する液体と繋がったノズル内の液体がキャップ部材内の液体の排出につられて無駄に排出されて液体の消費量が増えるのを抑制することができる。
【0012】
また、前記リップ部の前記張り出し部を形成する部分は、前記ノズル対向部から局所的に突出した形状をしていることが好ましい。
【0013】
これによると、ブリッジの形成位置が張り出し部を形成するリップ部の突出した先端部になり、液体噴射面との離間距離が1点において小さくなり、ブリッジを形成する液体が局所的に集中するので飛散しにくくなるとともに、吸引手段により吸引しやすくなる。また、突出した形状であることでリップ部の張り出し部を形成する部分の周長が短くなり、液体噴射面とのシール性が向上する。
【0014】
このとき、前記複数のノズルは、第1ノズル群と、前記第1ノズル群よりもノズル数が多い第2ノズル群とに区分されており、前記キャップ部材は、前記第1ノズル群を覆う第1キャップ部と、前記第2ノズル群を覆う第2キャップ部とを有し、前記張り出し部は、前記第2ノズル群を覆う前記第2キャップ部にのみ設けられていることが好ましい。
【0015】
第2キャップ部は覆うノズル数が多いため、大型化している。そこで、多くのノズルを覆うためにリップ部の周長が長く、ブリッジを形成する液体の量が多くなる第2キャップ部に対して張り出し部を設けることは好適である。
【0016】
そして、前記第1ノズル群に属する前記ノズルは、全て同じ種類の液体を噴射するものであり、前記第2ノズル群には、異なる種類の液体を噴射する複数種類の前記ノズルが含まれていることが好ましい。
【0017】
これによると、第2キャップ部は、異なる種類の液体を噴射する複数種類の前記ノズルを共通に覆っているため、吸引パージにおいて第2キャップ部内に複数種類の液体が排出されて混ざることになる。このように混ざった液体がブリッジを形成して、ノズル内の液体と繋がってノズル内に逆流するのを防止するために、ブリッジの形成位置が液体噴射面のノズル配置領域から離れるように第2キャップ部に対して張り出し部を設けることは好適である。
【0018】
また、前記キャップ部材内には、前記吸引パージ時における前記キャップ部材の変形を抑制するための、板状のキャップチップが収容されており、前記キャップチップの前記張り出し部内に収容された部分には、前記ノズル対向部に収容された部分よりも厚みが厚くなっている部分があることが好ましい。
【0019】
これによると、キャップ部材の張り出し部を形成するリップ部と液体噴射面との間に液体のブリッジが形成されるのに加えて、張り出し部内に収容されたキャップチップの厚みが厚くなっている部分と液体噴射面のノズルが配置されていない領域との間にも液体のブリッジが形成され、液体のブリッジがキャップ部材の内側に寄せられるため、ブリッジを形成する液体がキャップ部材外にこぼれにくくなる。
【0020】
このとき、前記キャップチップの厚みが厚くなった部分は、前記キャップ部材の前記張り出し部を形成する前記リップ部と隙間をあけて立設したリブであることが好ましい。
【0021】
これによると、リブとキャップ部材のリップ部との隙間に、ブリッジを形成する液体と繋がった液体が入り込んで保持されるため、ブリッジを形成する液体がキャップ部材外によりこぼれにくくなる。
【0022】
また、前記ノズル配置領域に配置された前記複数のノズルは、所定の一方向に並んだノズル列を形成しており、前記液体噴射ヘッドは、前記液体噴射面と直交する方向から見て、前記液体噴射面と反対側の面における前記ノズル配置領域よりも外側に配置された液体供給口と、前記液体供給口を覆うフィルタと、前記液体供給口と連通し、前記ノズル列方向に延在し、前記複数のノズルに共通に連通する共通液室とをさらに有し、前記キャップ部材の前記張り出し部は、前記吸引パージ時に、前記液体噴射面の、前記離接方向から見て前記フィルタと重なる領域と対向していることが好ましい。
【0023】
液体供給口は異物を除去するためにフィルタに覆われており、異物によりフィルタが塞がれて液体が流れにくくなりにくいように、液体供給口の径を大きくして、フィルタの表面積を大きくしている。そして、この液体供給口及びフィルタは、ノズル配置領域よりも外側に配置されており、これにより、液体噴射面はノズル配置領域に隣接してノズルが配置されていない領域を有することになる。この空いた領域と対向するようにキャップ部材の張り出し部を設けることで、液体噴射面のノズルが配置されていない領域を有効活用することができる。
【0024】
さらに、前記キャップ部材の前記吸引口は、前記張り出し部に形成されていることが好ましい。
【0025】
これにより、吸引口がブリッジを形成する液体に近くなるため、ブリッジを形成する液体を吸引しやすくなる。
【0026】
加えて、前記複数のノズルは、所定の一方向に並んだノズル列を形成しており、前記キャップ部材の前記張り出し部は、前記ノズル対向部から前記一方向に向かって張り出していることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
キャップ部材のノズルとは対向しない張り出し部を形成するリップ部が液体噴射面から最後に離れる位置となり、液体噴射面のノズル配置領域から離れた部分と張り出し部を形成するリップ部との間において液体のブリッジが形成されることになる。したがって、液体のブリッジの形成位置が液体噴射面のノズルから離れることで、ブリッジを形成する液体とノズル配置領域に配置されたノズル内の液体とが繋がるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。
【図2】インクジェットヘッドの平面図である。
【図3】(a)は図2のA部拡大図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図4】キャップ部材の平面図である。
【図5】図4のC−C線断面図である。
【図6】吸引パージを実行しているときのキャップ部材の第2キャップ部及びキャップ駆動機構の、搬送方向を含む鉛直面に関する断面図であり、(a)はキャッピング時、(b)はキャップ部材の離間時である。
【図7】変形例1におけるキャップ部材の平面図である。
【図8】変形例2におけるキャップ部材の平面図である。
【図9】変形例3におけるキャップ部材の平面図である。
【図10】変形例4におけるキャップ部材の平面図である。
【図11】変形例5における吸引パージを実行しているときのキャップ部材の第2キャップ部及びキャップ駆動機構の、搬送方向を含む鉛直面に関する断面図であり、(a)はキャッピング時、(b)はキャップ部材の離間時である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。
【0030】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1(液体噴射装置)は、記録用紙Pが載置されるプラテン2と、このプラテン2と平行な走査方向に往復移動可能なキャリッジ3と、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4(液体噴射ヘッド)と、記録用紙Pを走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送機構5と、インクジェットヘッド4の液体噴射性能の回復・維持に関する各種メンテナンス作業を行うメンテナンスユニット6などを有している。
【0031】
プラテン2の上面には図示しない給紙機構から供給された記録用紙Pが載置される。また、プラテン2の上方には、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール10、11が設けられ、キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10、11に沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。また、2本のガイドレール10、11は、プラテン2から走査方向に沿って図1の右方に離れた位置まで延在しており、キャリッジ3は、プラテン2上の記録用紙Pと対向する領域(記録領域)から、非記録領域である、プラテン2から右方向に離れた位置まで移動可能に構成されている。
【0032】
また、キャリッジ3には、2つのプーリ12、13間に巻き掛けられた無端ベルト14が連結されており、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が走行駆動されたときに、キャリッジ3は、無端ベルト14の走行にともなって走査方向に移動するようになっている。
【0033】
搬送機構5は、搬送方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18、19を有し、これら2つの搬送ローラ18、19によって、プラテン2に載置された記録用紙Pを搬送方向下流側(図1の前方)に搬送する。
【0034】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3の下部に取り付けられており、プラテン2の上面と平行な、インクジェットヘッド4の下面が、複数のノズル16が開口するインク噴射面4a(液体噴射面:図3(b)参照)となっている。そして、このインク噴射面4aの複数のノズル16から、プラテン2に載置された記録用紙Pに対してインクを噴射する。
【0035】
インクジェットヘッド4の具体的な構成について説明する。図2は、インクジェットヘッドの平面図である。図3(a)は図2のA部拡大図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。図2、図3に示すように、インクジェットヘッド4は、複数のノズル16及び複数のノズル16にそれぞれ連通する複数の圧力室34が形成された流路ユニット30と、流路ユニット30の上面に配置された圧電アクチュエータ31とを有している。
【0036】
図3(b)に示すように、流路ユニット30は4枚のプレートが積層された構造を有し、この流路ユニット30の下面(インク噴射面4a)には複数のノズル16が形成されている。図2に示すように、これら複数のノズル16は搬送方向に沿って配列され、走査方向に並ぶ4列のノズル列33を構成している。
【0037】
4列のノズル列33(33bk、33y、33c、33m)にそれぞれ属するノズル16(16bk、16y、16c、16m)からは、顔料インクであるブラックインクと、染料インクである3色のカラーインク(イエロー、シアン、マゼンタ)の、合計4色のインクがそれぞれ噴射される。なお、ブラックインクを噴射するノズル16bk(以下、ブラックノズル16bkともいう)が本願発明の第1ノズル群に属するノズル、3色のカラーインクを噴射する3種類のノズル16y、16c、16m(以下、カラーノズル16clともいう)が本願発明の第2ノズル群に属するノズルに相当する。
【0038】
また、流路ユニット30の下面(インク噴射面4a)において、ブラックのノズル列33bkと、カラー(イエロー)のノズル列33yとの間には、空いた領域37が存在しているが、この領域37は、後述するキャップ部材21の2つの第1、第2キャップ部26、27を仕切る仕切り壁21c(図4参照)が当接する領域になっている。
【0039】
また、流路ユニット30には、複数のノズル16にそれぞれ連通する複数の圧力室34が形成され、4列のノズル列33に対応して、複数の圧力室34も4列に配列されている。さらに、流路ユニット30には、それぞれ搬送方向に延在し、4列の圧力室列にブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクを供給する4本のマニホールド35が形成されている。なお、4本のマニホールド35は、ノズル16が配置された領域よりも搬送方向上流側に配置され、流路ユニット30の上面(インク噴射面4aと反対側の面)に形成された4つのインク供給口36に接続されている。
【0040】
そして、インク供給口36は、フィルタ38により覆われており、インク供給口36に接続されたインクタンク(図示せず)から導入されたインク中の異物を捕捉して、インク供給口36よりも下流側(具体的には、マニホールド35や圧力室34など)に異物が入り込んでしまうのを防止している。なお、異物によりフィルタ38が塞がれて目詰まりしてインクが流れにくくなりにくいように、インク供給口36の径を大きくして、フィルタ38の表面積を大きくしている。
【0041】
そして、複数のノズル16が搬送方向に並んだノズル列33を形成し、平面視で複数のノズル列33よりも搬送方向に関する外側にインク供給口36が配置されて、このインク供給口36とノズル列33とを連通させるために、インク供給口36から搬送方向に延びてノズル列33に属する複数のノズル16に連通するマニホールド35が形成されている。これにより、流路ユニット30の下面(インク噴射面4a)には、インク供給口36と平面視で重なる領域であって、ノズル16が配置されたノズル配置領域46から搬送方向(ノズル列方向)上流側に張り出し、ノズル16が配置されていない領域45が存在することになる。
【0042】
図3(b)に示すように、圧電アクチュエータ31は、複数の圧力室34を覆う振動板40と、この振動板40の上面に配置された圧電層41と、圧電層41の上面に複数の圧力室34に対応して配置された複数の個別電極42とを有している。圧電層41の上面に位置する複数の個別電極42は、圧電アクチュエータ31を駆動するドライバIC47とそれぞれ接続されており、ドライバIC47から複数の個別電極42に対して所定の駆動電圧が独立して印加されるようになっている。また、圧電層41の下面に位置する振動板40は金属材料で形成されており、圧電層41を挟んで複数の個別電極42と対向する共通電極の役割を果たす。なお、この振動板40はドライバIC47のグランド配線に接続されて常にグランド電位に保持される。
【0043】
この圧電アクチュエータ31は、ドライバIC47から、ある個別電極42と共通電極としての振動板40の間に所定の駆動電圧が印加されたときに、両者の間に挟まれた圧電層41の圧電変形(圧電歪)によって圧力室34の体積変化を生じさせ、圧力室34内のインクに圧力を付与する。このとき、上記圧力室34に連通するノズル16からインクが噴射されることになる。
【0044】
そして、インクジェットプリンタ1は、プラテン2上に載置された記録用紙Pに対して、キャリッジ3とともに走査方向(図1の左右方向)に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを噴射させるとともに、2つの搬送ローラ18、19によって記録用紙Pを搬送方向下流側に搬送することにより、記録用紙Pに所望の画像や文字などを印刷する。
【0045】
次に、メンテナンスユニット6について説明する。図1に示すように、メンテナンスユニット6は、プラテン2に対して走査方向一方側(図1の右側)に離れた位置(メンテナンス位置:図1に二点鎖線でキャリッジ3が示されているAの位置)に配置されている。このメンテナンスユニット6は、インクジェットヘッド4のインク噴射面4aに接触して複数のノズル16の開口を覆うことが可能なゴムなどの弾性材料からなるキャップ部材21と、キャップ部材21内に収容された2つのキャップチップ70、71(図4参照)と、キャップ部材21に接続された吸引ポンプ23(吸引手段)と、吸引パージ後にインク噴射面4aに付着したインクを拭き取るワイパー22などを有している。
【0046】
ワイパー22は、キャップ部材21よりもプラテン2側の位置に立設されており、吸引パージ後に、このワイパー22の先端がインク噴射面4aに接触した状態でキャリッジ3が走査方向に移動することによって、ワイパー22はインク噴射面4aに対して相対的に移動し、インク噴射面4aに付着したインクを拭き取る。
【0047】
次に、キャップ部材21について説明する。図4は、キャップ部材の平面図である。図5は、図4のC−C線断面図である。なお、図4においては、キャップ部材21によりキャッピングされたインクジェットヘッド4を仮想線で示している。また、図5においては、キャップ部材21によりキャッピングされたインクジェットヘッド4を実線で示している。図4、図5に示すように、キャップ部材21は、底壁部21aと、この底壁部21aの外周部に立設した環状のリップ部21bと、底壁部21aから立設した仕切り壁21cとを有しており、これら底壁部21a、リップ部21b及び仕切り壁21cは一体成型されている。
【0048】
リップ部21bに囲まれたキャップ部材21の内側空間には、底壁部21aから立設して搬送方向に延在する仕切り壁21cで仕切られることにより、1列のノズル列33bkを構成する複数のブラックノズル16bkを覆う大きさを有する第1キャップ部26と、3列のカラーのノズル列33y、33c、33mを構成する複数のカラーノズル16cl(16y、16c、16m)を覆う第2キャップ部27とが形成されている。
【0049】
なお、3列のノズル列を構成するカラーノズル16clは、ノズル列が1列のブラックノズル16bkよりもノズルの数が多いことから、カラーノズル16clを共通に覆う大きさを有する第2キャップ部27は、ブラックノズル16bkを覆う第1キャップ部26よりも面積(内容積)が大きくなっている。そして、キャップ部材21は、後述するキャップ駆動機構25(図6参照)によりインク噴射面4aに対して離接し、インク噴射面4aに接触したときには、第1キャップ部26によりブラックノズル16bkを覆うとともに、第2キャップ部27によりカラーノズル16clを覆う。
【0050】
また、第2キャップ部27は、リップ部21bに囲まれた、インク噴射面4aのノズル配置領域46と対向するノズル対向部27aと、ノズル対向部27aから搬送方向上流側(ノズル配列方向の一方側)のノズル16が配置されていない領域45に向かって局所的に突出するように張り出した張り出し部27bとを有している。
【0051】
第1キャップ部26の底壁部の、ノズル配列方向における一端部(搬送方向上流側の端部)には吸引口28が形成されており、この吸引口28は、インク噴射面4aのノズル配置領域46と対向している。また、第2キャップ部27の張り出し部27bの底壁部には吸引口29が形成されており、この吸引口29は、インク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45と対向していている。
【0052】
これら2つの吸引口28、29は、それぞれチューブ50によって切り換えユニット24に接続され、さらに、切り換えユニット24は吸引ポンプ23と接続されている。切り換えユニット24はその内部に切換弁(図示省略)を有し、キャップ部材21がインクジェットヘッド4のインク噴射面4aと密着したキャッピング状態にあるときに、切り換えユニット24は、吸引ポンプ23を、第1キャップ部26と第2キャップ部27のいずれか一方に連通させる。その状態で、吸引ポンプ23により連通先のキャップ部26(27)内を吸引することで、そのキャップ部26(27)によって覆われたノズル16からインクを排出させる。すなわち、ブラックノズル16bkとカラーノズル16clの吸引パージがそれぞれ個別に行われるようになっている。
【0053】
また、キャップ部材21は、上記吸引パージ以外にも、インクジェットヘッド4を使用しない状態(インクを噴射しない状態)においても用いられる。このように、インクジェットヘッド4が使用されないときには、キャップ部材21がインク噴射面4aに接触してノズル16を覆うことによって、ノズル16を保護するとともに及びノズル16内のインクの乾燥を抑制する。
【0054】
キャップチップ70、71は、合成樹脂などからなり、第1キャップ部26と第2キャップ部27の外形に合わせた形状をしており、第1キャップ部26と第2キャップ部27内にそれぞれ収容されて、吸引パージ時にリップ部21bが減圧により内側に撓むのを抑制している。そして、図4、図5に示すように、第2キャップ部27内に収容されたキャップチップ71の張り出し部27bに配置された部分には、インク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45と対向して立設したリブ71aが形成されている。リブ71aは、走査方向に延在しており、リップ部21bの突出した先端部と搬送方向に関して隙間をあけて配置されている。
【0055】
そして、キャップ部材21は、インク噴射面4aと接触するリップ部21bの先端面が、インク噴射面4aに開口したノズル16の配列方向(搬送方向)に対して、ノズル対向部27aが張り出し部27bよりも先にインク噴射面4aから遠ざかるように傾動可能に構成されており、キャップ駆動機構25は、キャップ部材21を傾斜状態でインク噴射面4aから離間させる。
【0056】
このキャップ駆動機構25について説明する。図6は、吸引パージを実行しているときのキャップ部材の第2キャップ部及びキャップ駆動機構の、搬送方向を含む鉛直面に関する断面図であり、(a)はキャッピング時、(b)はキャップ部材の離間時をそれぞれ示す。図6(a)に示すように、キャップ駆動機構25は、所定のプロファイルを有するカム51と、カム51を回転駆動させるカム駆動モータ52と、キャップ部材21を収容するキャップホルダ53とを有している。キャップホルダ53は、上部が開口したボックス形状をしており、その内部にキャップ部材21が収容されている。また、キャップホルダ53の内底部にはコイルバネ54が設けられており、このコイルバネ54によってキャップ部材21は上方へ付勢されている。
【0057】
キャップ部材21は、その底壁部21aの一端部(ノズル配列方向における張り出し部27bが張り出した一方側の端部:搬送方向上流側の端部)において突出した係止突起21dを有している。一方、キャップホルダ53においてキャップ部材21の前記一端側には、係止突起21dに係合する突起状のストッパ55が設けられている。ストッパ55は係止突起21dに対して上方に位置しており、係止突起21dがストッパ55に当接することによって、コイルバネ54に付勢されるキャップ部材21の上方限界位置が規定されている。
【0058】
また、キャップ部材21の係止突起21dと反対側の端部には、図6(a)の紙面直交方向に延びる枢支軸56が設けられており、また、キャップホルダ53のストッパ55と反対側の端部には、枢支軸56をスライド自在に支持する軸受部57が設けられている。したがって、キャップ部材21は、図6(b)のように枢支軸56が軸受部57の天井部分に当接したときに、枢支軸56を中心に回動することによって、係止突起21d側の端部が、キャップホルダ53の内底面に当接する下方限界位置から、係止突起21dがストッパ55に当接する上方限界位置に至る間を移動可能になっている。
【0059】
上記のようにしてキャップ部材21を収容するキャップホルダ53の下面には、カム51の周面が当接している。カム51は、カム駆動モータ52により回転駆動され、カム51の位相(回転角度)に応じてキャップホルダ53(及びキャップ部材21)は昇降駆動されるようになっている。
【0060】
そして、インクジェットヘッド4がメンテナンス位置A(図1参照)にあるときに、カム51が反時計回りの方向に回転すると、カム51のプロファイルによってキャップホルダ53が押し上げられ、図6(a)のように、キャップ部材21がインク噴射面4aに接触し、ノズル16を覆ったキャッピング状態となる。この状態で吸引ポンプ23によってキャップ部材21内の吸引が行われると、キャップ部材21(第1キャップ部26、第2キャップ部27)内の圧力が低下してノズル16からキャップ部26,27内にインクが排出される(吸引パージ)。
【0061】
一方、図6(a)の状態から、カム51を時計回りの方向に回転させることにより、カム51のプロファイルに応じてキャップホルダ53が自重により下降する。このとき、キャップ部材21はコイルバネ54によって上方へ付勢される一方で、キャップ部材21の図中右端部は枢支軸56が、キャップホルダ53の軸受部57の天井部分に当接するため、キャップ部材21は、キャップホルダ53の下降にともなって図中右端部から先に離間する。これにより、図6(b)のように、キャップ部材21の接触面21eが、図中左端部が右端部よりも上方に位置した、ノズル配列方向(搬送方向)に対してノズル対向部27aが張り出し部27bよりも先にインク噴射面4aから遠ざかるように傾斜した姿勢で、インク噴射面4aから離間することになる。
【0062】
上記のように、傾斜状態でキャップ部材21をインク噴射面4aから離間させると、図6(b)のように、キャップ部材21が最後に離れる端部(図中左端部)とインク噴射面4aとの間に局所的にインクブリッジIaが形成される。このように、キャップ部材の外周部の一部にのみインクブリッジIaが形成されることで、インクブリッジIaが切れるときの周囲へのインクの飛散が抑制されることになる。
【0063】
また、キャップ部材21の、リップ部21bに囲まれた部分を、インク噴射面4aのノズル配置領域46と対向するノズル対向部27aよりもさらに外側に張り出しておき、この張り出し部27bよりも先にノズル対向部27aをインク噴射面4aから遠ざかるようにキャップ部材21を傾けている。すると、キャップ部材21のノズル16とは対向しない張り出し部27bを形成するリップ部21bがインク噴射面4aから最後に離れる位置となり、インク噴射面4aのノズル配置領域46から離れた部分と張り出し部27bを形成するリップ部21bとの間においてインクブリッジIaが形成されることになる。
【0064】
したがって、インクブリッジIaの形成位置がインク噴射面4aのノズル配置領域46(ノズル16)から離れることで、インクブリッジIaとノズル配置領域46に配置されたノズル16内のインクとが繋がるのを抑制することができる。これにより、ノズル16内にインクブリッジIaを形成するインクが逆流するのを防止することができる。また、吸引パージ後に、インク噴射面4aからキャップ部材21を離して、吸引ポンプ23による吸引を行い、吸引パージにおいてキャップ部材21内に排出されたインクを吸引して排出する、いわゆる空吸引を行う場合に、インクブリッジIaとノズル16内のインクとが繋がったままになり、インクブリッジIaと繋がったノズル16内のインクが排出されてインクの消費量が増えるのを抑制することができる。また、キャップ部材21が張り出し部27bの分だけ大型化することで、ブリッジを形成するインク量が増大してもキャップ部材21外にこぼれにくくなる。
【0065】
そして、ブリッジの形成位置が張り出し部27bを形成するリップ部21bの突出した先端部になり、インク噴射面4aとの離間距離が1点において小さくなり、インクブリッジIaが局所的に集中するので飛散しにくくなるとともに、吸引ポンプ23により吸引しやすくなる。また、突出した形状であることでリップ部21bの張り出し部27bを形成する部分の周長が短くなり、インク噴射面4aとのシール性が向上する。
【0066】
また、キャップ部材21(第2キャップ部27)内にキャップチップ71が配置されており、このキャップチップ71の張り出し部27bに配置された領域にリブ71aが立設していることで、キャップ部材21の張り出し部27bを形成するリップ部21bとインク噴射面4aとの間にインクブリッジIaが形成されるのに加えて、キャップ部材21内に収容されたキャップチップ71のリブ71aとインク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45との間にもインクブリッジIaが形成され、インクブリッジIaがキャップ部材21の内側に寄せられるため、インクブリッジIaを形成するインクがキャップ部材21外にこぼれにくくなる。さらに、リブ71aとリップ部21bとの隙間にインクブリッジIaを形成するインクと繋がったインクが入り込んで保持されるため、インクブリッジIaを形成するインクがキャップ部材21外によりこぼれにくくなる。
【0067】
さらに、多くのノズル16(カラーノズル16cl)を覆うためにリップ部21bの周長が長く、インクブリッジIaを形成するインクの量が多くなる第2キャップ部27に対して張り出し部27bを設けることは好適である。
【0068】
また、第2キャップ部27は、複数色の互いに異なるインクをそれぞれ噴射するカラーノズル16clを共通に覆っているため、吸引パージにおいて第2キャップ部27内に複数色のインクが排出されて混ざることになる。このように混色したインクがインクブリッジIaを形成して、ノズル16内のインクと繋がってノズル16内に逆流するのを防止するために、ブリッジの形成位置がインク噴射面4aのノズル配置領域46から離れるように第2キャップ部27に対して張り出し部27bを設けることは好適である。
【0069】
また、キャップ部材21がインク噴射面4aから離間すると、吸引ポンプ23により、キャップ部材21内に溜まったインクを吸引して排出する。なお、図6(b)のキャップ部材21の傾斜姿勢において、インク噴射面4aに近い側の端部(図中左端部)、すなわち、インク噴射面4aに対して最後に離れる端部、すなわちインクブリッジIaの形成位置の近くに吸引口28、29が設けられている。具体的に、吸引口29は、第2キャップ部27の張り出し部27bに形成されている。これにより、キャップ部材21内に溜まったインクを確実に排出できるようになる。
【0070】
さらに、上述したように、インク供給口36は異物を除去するためにフィルタ38に覆われており、異物によりフィルタ38が塞がれてインクが流れにくくなりにくいように、インク供給口36の径を大きくして、フィルタ38の表面積を大きくしている。そして、このインク供給口36及びフィルタ38は、ノズル列よりも外側に配置されており、これにより、インク噴射面4aはノズル配置領域46の外側に、ノズル16が配置されておらず、インク供給口36及びフィルタ38を配置する領域45を有することになる。この空いた領域45と対向するようにキャップ部材21の張り出し部27bを設けることで、インク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45を有効活用することができる。
【0071】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、上述した実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0072】
キャップ部材21の第2キャップ部27の張り出し部27bの形状は、ノズル対向部27aからノズル16の配置されていない領域45に張り出していれば、その形状はいかなる形状であってもよい。以下、いくつかの具体例を挙げて説明する。
【0073】
1)本実施形態においては、キャップ部材21の第2キャップ部27の張り出し部27bは、局所的に突出していたが、図7に示すように、キャップ部材121の第2キャップ部127は、矩形状のノズル対向部127aが走査方向の幅を変えずに搬送方向に張り出した形状の張り出し部127bであってもよい(変形例1)。なお、キャップチップの図示は省略しているが、上記変形例の形状に応じたキャップチップがキャップ部内には収容される。
【0074】
2)本実施形態においては、キャップ部材21の第2キャップ部27の張り出し部27bは、搬送方向中央が局所的に突出していたが、図8に示すように、キャップ部材221の第2キャップ部227は、ノズル対向部227aから走査方向の一方端部が局所的に突出した形状の張り出し部227bであってもよい(変形例2)。なお、キャップチップの図示は省略しているが、上記変形例の形状に応じたキャップチップがキャップ部内には収容される。これによると、張り出し部127bを形成することでリップ部21bに突出した角が形成されることがなく、シール性が低下しにくい。また、張り出し部127bは局所的に突出した形状であるため、上述したように吸引ポンプ23により吸引しやすく、インクブリッジIaを形成するインクがキャップ部材221からこぼれにくくなる。
【0075】
また、本実施形態においては、キャップ部材21は、ブラックノズル16bkを覆う第1キャップ部26とカラーノズル16clを覆う第2キャップ部27との2つのキャップ部に仕切り壁21cでわけられていたが、仕切り壁21cは設けられていなくてもよい(変形例3)。図9に示すように、キャップ部材321は、底壁部321aとその外周に立設した環状のリップ部321bとを有し、全てのノズル16を覆っている。そして、リップ部321bは、全てのノズル16と対向するノズル対向部327aとノズル対向部327aから張り出した張り出し部327bとを有している。そして、張り出し部327bは、局所的に突出している。なお、キャップチップの図示は省略しているが、上記変形例の形状に応じたキャップチップがキャップ部内には収容される。この場合、吸引ポンプ23に接続される吸引口329は1つでよく、切り換えユニット24を設ける必要もない。これにおいても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、張り出し部327bは、局所的に突出していなくてもよい。
【0076】
さらに、本実施形態においては、キャップ部材21の第2キャップ部27に張り出し部27bが形成され、第1キャップ部26には張り出し部27bは形成されていなかったが、第1キャップ部26にも張り出し部が形成されていてもよい(変形例4)。図10に示すように、キャップ部材421は、ブラックノズル16bkを覆う第1キャップ部426と、カラーノズル16clを覆う第2キャップ部427とを有している。そして、第1キャップ部426と第2キャップ部427は、ともに、ノズル16と対向するノズル対向部426a、427aと、ノズル対向部426a、427aから張り出した張り出し部426b、427bとを有している。なお、キャップチップの図示は省略しているが、上記変形例の形状に応じたキャップチップがキャップ部内には収容される。この場合、第1キャップ部426の張り出し部426bの底壁部の、インク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域と対向する部分に、吸引口が形成されているのが好ましい。なお、張り出し部426b、427bは、局所的に突出していてもよい。本変形例は、第1キャップ部426において、シール性よりも、インクブリッジIaとノズル16内のインクが繋がるのを抑制したいときに採用するのが好適である。
【0077】
また、本実施形態においては、キャップチップ71のリブ71aは、走査方向に延在しており、リップ部21bの突出した先端部と搬送方向に関して隙間をあけて配置されていたが、図11(a)に示すように、キャップチップ571は、インク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45と対向する部分571aの厚みが、インク噴射面4aのノズル配置領域46と対向する部分の厚みよりも厚くなっていればよい(変形例5)。この場合においても、図11(b)に示すように、キャップ部材21の張り出し部27bを形成するリップ部21bとインク噴射面4aとの間にインクブリッジIaが形成されるのに加えて、キャップ部材21内に収容されたキャップチップ571の厚みが厚い部分571aとインク噴射面4aのノズル16が配置されていない領域45との間にもインクブリッジIaが形成され、インクブリッジIaがキャップ部材21の内側に寄せられるため、インクブリッジIaを形成するインクがキャップ部材21外にこぼれにくくなる。
【0078】
さらに、本実施形態においては、キャップチップ71にリブ71aが形成されていたが、このリブ71aは形成されておらず、キャップチップ71のインク噴射面4aと対向する面は平面であってもよい。
【0079】
また、本実施形態においては、第1キャップ部26と第2キャップ部27がノズル配列方向と直交する方向(走査方向)に並んでいたことから、第2キャップ部27の張り出し部27bは、ノズル配列方向に張り出していたが、第1キャップ部26と第2キャップ部27がノズル配列方向に並んでいたり、キャップ部自体が複数ではなく、1つの場合には、張り出し部は、ノズル配列方向と直交する方向に張り出していてもよい。
【0080】
さらに、本実施形態において、キャップ部材21は、2つのキャップ部を有していたが、キャップ部の数は、1または3以上であってもよく、これらのキャップ部に適宜張り出し部が形成されていてもよい。
【0081】
上述した実施形態では、キャップ部材21の、インク噴射面4aから最後に離間する端部に、吸引ポンプ23と接続される吸引口28、29が形成されていたが、吸引口の形成位置は上記の位置に限られるものではない。
【0082】
また、本実施形態は、本発明を、記録用紙にインクを噴射して文字や画像などを記録するインクジェットプリンタに適用したものであるが、本発明の適用対象は、このような用途に使用されるものに限られない。すなわち、インク以外のさまざまな種類の液体をその用途に応じて対象に噴射する、種々の液体噴射装置に本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 インクジェットプリンタ
4 インクジェットヘッド
4a インク噴射面
16 ノズル
21 キャップ部材
23 吸引ポンプ
26 第1キャップ部
27 第2キャップ部
27a ノズル対向部
27b 張り出し部
45 領域
46 ノズル配置領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズルが開口した液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドの前記液体噴射面に対して離接可能であり、前記複数のノズルを覆うことが可能なキャップ部材と、
前記キャップ部材に形成された吸引口に接続され、前記キャップ部材が前記液体噴射面に接触した状態において、前記キャップ部材内を吸引し、前記ノズルから液体を排出する吸引パージを行う吸引手段と、を備え、
前記キャップ部材は、前記液体噴射面に密着可能な環状のリップ部を含んでおり、
前記キャップ部材の、前記リップ部に囲まれた部分は、前記液体噴射面の前記複数のノズルが配置されたノズル配置領域を覆うノズル対向部と、前記ノズル対向部よりも前記液体噴射面と平行な一方側に向かって張り出し、前記ノズル配置領域とは対向しない張り出し部とを形成しており、
前記キャップ部材は、前記液体噴射面から離れるときに、前記ノズル対向部が前記張り出し部よりも先に前記液体噴射面から遠ざかるように傾くことが可能に構成されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記リップ部の前記張り出し部を形成する部分は、前記ノズル対向部から局所的に突出した形状をしていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記複数のノズルは、第1ノズル群と、前記第1ノズル群よりもノズル数が多い第2ノズル群とに区分されており、
前記キャップ部材は、前記第1ノズル群を覆う第1キャップ部と、前記第2ノズル群を覆う第2キャップ部とを有し、
前記張り出し部は、前記第2ノズル群を覆う前記第2キャップ部にのみ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記第1ノズル群に属する前記ノズルは、全て同じ種類の液体を噴射するものであり、
前記第2ノズル群には、異なる種類の液体を噴射する複数種類の前記ノズルが含まれていることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記キャップ部材内には、前記吸引パージ時における前記キャップ部材の変形を抑制するための、板状のキャップチップが収容されており、
前記キャップチップの前記張り出し部内に収容された部分には、前記ノズル対向部に収容された部分よりも厚みが厚くなっている部分があることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記キャップチップの厚みが厚くなった部分は、前記キャップ部材の前記張り出し部を形成する前記リップ部と隙間をあけて立設したリブであることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記ノズル配置領域に配置された前記複数のノズルは、所定の一方向に並んだノズル列を形成しており、
前記液体噴射ヘッドは、前記液体噴射面と直交する方向から見て、前記液体噴射面と反対側の面における前記ノズル配置領域よりも外側に配置された液体供給口と、前記液体供給口を覆うフィルタと、前記液体供給口と連通し、前記ノズル列方向に延在し、前記複数のノズルに共通に連通する共通液室とをさらに有し、
前記キャップ部材の前記張り出し部は、前記吸引パージ時に、前記液体噴射面の、前記離接方向から見て前記フィルタと重なる領域と対向していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記キャップ部材の前記吸引口は、前記張り出し部に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記複数のノズルは、所定の一方向に並んだノズル列を形成しており、
前記キャップ部材の前記張り出し部は、前記ノズル対向部から前記一方向に向かって張り出していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズルが開口した液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドの前記液体噴射面に対して離接可能であり、前記複数のノズルを覆うことが可能なキャップ部材と、
前記キャップ部材に形成された吸引口に接続され、前記キャップ部材が前記液体噴射面に接触した状態において、前記キャップ部材内を吸引し、前記ノズルから液体を排出する吸引パージを行う吸引手段と、を備え、
前記キャップ部材は、前記液体噴射面に密着可能な環状のリップ部を含んでおり、
前記キャップ部材の、前記リップ部に囲まれた部分は、前記液体噴射面の前記複数のノズルが配置されたノズル配置領域を覆うノズル対向部と、前記ノズル対向部よりも前記液体噴射面と平行な一方側に向かって張り出し、前記ノズル配置領域とは対向しない張り出し部とを形成しており、
前記キャップ部材は、前記液体噴射面から離れるときに、前記ノズル対向部が前記張り出し部よりも先に前記液体噴射面から遠ざかるように傾くことが可能に構成されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記リップ部の前記張り出し部を形成する部分は、前記ノズル対向部から局所的に突出した形状をしていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記複数のノズルは、第1ノズル群と、前記第1ノズル群よりもノズル数が多い第2ノズル群とに区分されており、
前記キャップ部材は、前記第1ノズル群を覆う第1キャップ部と、前記第2ノズル群を覆う第2キャップ部とを有し、
前記張り出し部は、前記第2ノズル群を覆う前記第2キャップ部にのみ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記第1ノズル群に属する前記ノズルは、全て同じ種類の液体を噴射するものであり、
前記第2ノズル群には、異なる種類の液体を噴射する複数種類の前記ノズルが含まれていることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記キャップ部材内には、前記吸引パージ時における前記キャップ部材の変形を抑制するための、板状のキャップチップが収容されており、
前記キャップチップの前記張り出し部内に収容された部分には、前記ノズル対向部に収容された部分よりも厚みが厚くなっている部分があることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記キャップチップの厚みが厚くなった部分は、前記キャップ部材の前記張り出し部を形成する前記リップ部と隙間をあけて立設したリブであることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記ノズル配置領域に配置された前記複数のノズルは、所定の一方向に並んだノズル列を形成しており、
前記液体噴射ヘッドは、前記液体噴射面と直交する方向から見て、前記液体噴射面と反対側の面における前記ノズル配置領域よりも外側に配置された液体供給口と、前記液体供給口を覆うフィルタと、前記液体供給口と連通し、前記ノズル列方向に延在し、前記複数のノズルに共通に連通する共通液室とをさらに有し、
前記キャップ部材の前記張り出し部は、前記吸引パージ時に、前記液体噴射面の、前記離接方向から見て前記フィルタと重なる領域と対向していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記キャップ部材の前記吸引口は、前記張り出し部に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記複数のノズルは、所定の一方向に並んだノズル列を形成しており、
前記キャップ部材の前記張り出し部は、前記ノズル対向部から前記一方向に向かって張り出していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−35175(P2013−35175A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171666(P2011−171666)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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