説明

液体回収装置、液体噴射装置

【課題】液体吸収材の目詰まりを抑制し、液体回収容器内に送出された液体を、液体回収容器内の液体吸収体の内部に浸透、吸収させる液体回収装置及びこれを備えた液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体回収装置11は、液体を噴射する液体噴射ヘッド9と、前記液体噴射ヘッド9から前記液体を吸引し送出する吸引送出部(キャップ12、チューブ13、ポンプ14)と、前記吸引送出部により送出された前記液体を回収する液体回収部15と、を備え、さらに前記液体回収部15に気体を送出する気体送出部(ポンプ14、チューブ16)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体回収装置、及びこれを備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射装置の一種として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)が知られている。このプリンターでは、インクの噴射不良を低減するために、インクを噴射するノズルから増粘したインクなどを排出させるクリーニングが行われている。このクリーニングは、ノズルが形成されたノズル形成面をキャップで覆った後に、そのノズル形成面とキャップとで形成されるキャップ内空間を、吸引ポンプにより吸引することで、ノズルからインクを排出させるものである。
【0003】
ノズルから排出されたインク(以下、廃インクという)は、廃インクタンクに回収される。廃インクタンクは、液体回収容器と、液体回収容器内部に収容されるインク吸収体(液体吸収体)と、を備えている。廃インクタンクに排出された廃インクは、インク吸収体に吸収される。
【0004】
廃インクは、インク吸収体内を浸透する。最近では、印刷速度の向上のためにノズル数を増やす傾向にあり、そのため廃インク量も増えている。それに伴い、インク吸収体の体積も大きくなる。すると、インク吸収体全体に渡ってインクが浸透しなくなるという問題が発生する。これは体積が大きいだけでなく、インクが浸透する過程でインク溶媒が蒸発して浸透しにくくなる原因も含まれている。
【0005】
そこで、従来、こうした液体回収容器では、インク溶媒の蒸発を抑制する提案がなされている(例えば、特許文献1)。この特許文献1記載の液体回収容器は、廃インクの排出口及びその近傍のインク吸収材(インク吸収体)をカバー部材で覆うことにより、液体回収容器内に排出されたインクの溶媒成分の蒸発を抑制し、廃インクのインク吸収材内部への拡散を促進するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−218846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1の液体回収容器では、インク溶媒の蒸発を抑制することで浸透力は向上するが、インク吸収材に廃インクが浸透する能力は限られている。
【0008】
必要な廃インク量を吸収できる大きさのインク吸収材を用意しても、インク吸収材の大きさが浸透力を越えていたら、廃インクはインク吸収材全体に浸透しなくなる。その結果、インク吸収材の一部に廃インクが貯まり、例えばプリンターが傾いた場合に、貯まった廃インクが液体回収容器の開口部から漏出してしまう虞があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、液体回収容器内に排出された液体(例えば、廃インク)を液体吸収体(例えば、インク吸収材)全体に浸透させ、吸収させる液体回収装置、及びこれを備えた液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0011】
本発明にかかる液体回収装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから前記液体を吸引し送出する吸引送出部と、前記吸引送出部により送出された前記液体を回収する液体回収部と、を備える液体回収装置であって、前記液体回収部に気体を送出する気体送出部を備えることを特徴とする。
【0012】
このような構成の液体回収装置では、液体噴射ヘッドから吸引し送出された液体は液体回収部に回収される。その液体回収部に気体を送出し、送出した気体の圧力により液体を拡散させることで、回収された液体を液体回収部の全体に拡散して回収することができる。
【0013】
上記に記載の液体回収装置において、前記液体回収部には、前記吸引送出部と接続する第1接続部と、前記気体送出部と接続する第2接続部とをそれぞれ有することを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、液体を送出する吸引送出部と気体送出部が別々に配置されるので、液体の送出圧力と気体の送出圧力を変えることができる。これにより、液体回収部全体に拡散するような気体の送出圧力を設定することが可能になる。
【0015】
上記に記載の液体回収装置において、前記液体回収部は、前記液体を吸収する液体吸収体と、前記液体吸収体を保持する液体回収容器を備え、前記液体回収容器は、前記第1接続部と前記第2接続部を備えるとともに、前記液体吸収体を露出する開口部を備え、前記液体回収部に前記液体を排出する液体排出部と前記液体回収部に前記気体を排出する気体排出部を前記液体回収部の水平方向の一端側に配置し、前記開口部を前記液体回収部の水平方向の他端側に配置することを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、液体排出部と気体排出部を液体回収容器における水平方向の一端側に配置し、液体回収容器の開口部を液体回収容器における水平方向の他端側に配置することで、液体排出部及び気体排出部と開口部は水平方向に離間した位置関係となる。液体は液体吸収体の内部では水平方向には浸透しにくく重力方向に浸透しやすい。気体排出部を開口部から水平方向で離間することで、排出された気体は開口部に向けて流れ、液体も気体の圧力により開口部に向かって浸透する。これにより、浸透しにくい水平方向にも浸透させることができ、液体回収体全体に浸透させることが可能となる。
【0017】
上記に記載の液体回収装置において、前記液体回収部は、前記液体回収容器と前記液体吸収体とで形成される空間部を有し、前記空間部に、前記液体排出部から前記液体が排出され、前記気体排出部から前記気体が排出されることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、空間部に液体や気体を排出することで、空間部が液体を受ける部分となり、気体を受ける部分となる。これにより、気体の圧力を空間部に直接的に与えることができ、気体の圧力を有効に用いることができる。
【0019】
上記に記載の液体回収装置において、前記空間部は1つの空間であることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、空間部が1つの空間である場合、排出された液体を受ける空間が大きくなる。これにより、空間に接する液体吸収体全体が液体を受ける部位となり、広い面積で液体を受けることができる。
【0021】
上記に記載の液体回収装置において、前記空間部は、前記液体排出部、及び前記気体排出部に対してそれぞれ形成され、前記気体排出部は前記液体排出部よりも重力方向下側に配置される。
【0022】
このような構成によれば、空間部が液体排出部、気体排出部に対してそれぞれ形成されている場合、液体が排出される部位と、気体による圧力をかける部位が別々になる。この場合、液体排出部より排出され、重力により液体吸収体に浸透して拡散した状態の液体に対して、液体排出部よりも重力方向下側に配置された気体排出部から気体による圧力をかけることで、液体吸収体の広い範囲に渡って圧力をかけることができ、排出された液体を液体吸収体全体に拡散浸透させることができる。
【0023】
本発明にかかる液体噴射装置は、上記に記載の液体回収装置を備えることを特徴とする。
【0024】
このような液体噴射装置によれば、上述の液体回収装置を備えることにより、液体吸収体の目詰まりを抑制するとともに液体回収容器内に排出された液体を、液体吸収体内部まで浸透させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態のインクジェット式プリンターの斜視図。
【図2】プリンターのメンテナンス機構の概略断面図。
【図3】第1実施形態の廃インクタンクの分解斜視図。
【図4】第2実施形態の廃インクタンクの断面図。
【図5】変形例の廃インクタンクの断面図。
【図6】変形例の廃インクタンクの断面図。
【図7】変形例の廃インクタンクの断面図。
【図8】変形例の廃インクタンクの分解斜視図。
【図9】変形例の廃インクタンクの断面図。
【図10】変形例のチューブの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る液体回収装置、及び該液体回収装置を備えた液体噴射装置の一実施形態を、インクジェット式プリンターを例に、図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、図1に記載した指示方向を基準とした場合の「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」と一致するものとする。また、本実施形態においては、上下方向は重力方向であり、左右方向は水平方向である。
【0027】
図1に示すように、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター1(以下、プリンター1という)は、フレーム2を有している。フレーム2には、プラテン3が設けられ、プラテン3上には、紙送りモーター4の駆動により記録用紙Pが給送されるようになっている。また、フレーム2には、プラテン3の長手方向(左右方向)と平行に、棒状のガイド部材5が設けられている。
【0028】
ガイド部材5には、キャリッジ6がガイド部材5の軸線方向(左右方向)に往復移動可能に支持されている。
キャリッジ6は、フレーム2内の後面に設けられたタイミングベルト7を介して、フレーム2内の後面に設けられたキャリッジモーター8に連結されている。そして、キャリッジ6は、キャリッジモーター8の駆動により、ガイド部材5に沿って往復移動されるようになっている。
【0029】
キャリッジ6には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド9が設けられるとともに、記録ヘッド9に対して液体としてのインクを供給するためのインクカートリッジ10が着脱可能に配置されている。そして、インクカートリッジ10内のインクは、記録ヘッド9へと供給され、記録ヘッド9からプラテン3上に給送された記録用紙Pに対して吐出され、印刷が行なわれるようになっている。
【0030】
なお、プリンター1の一端側に位置する非印刷領域(以下、ホームポジション領域とも言う)には、記録ヘッド9のクリーニング等を行なう、液体回収装置としてのメンテナンス機構11が設けられている。
【0031】
このメンテナンス機構11は、図2に示すように、キャップ12と、チューブ13と、ポンプ14と、廃インクタンク15と、を備えている。
本実施形態では、キャップ12、チューブ13、ポンプ14を併せて吸引送出部に相当する。
【0032】
キャップ12は、非印刷時に記録ヘッド9を覆うことで、記録ヘッド9から噴射、または吸引された廃インクを受ける液体受け部として備えられている。キャップ12は、底面に備えられた孔とチューブ13を接続することで廃インクを送出することができる。
【0033】
チューブ13は、可撓性を有する部材(例えばゴムやエラストマー等の合成樹脂等)により形成されている。チューブ13は、キャップ12から廃インクタンク15に廃インクを送出する液体送出管として、一端側(上流側)13aがキャップ12に、他端側(下流側)13bが廃インクタンク15に接続される。また、チューブ13の途中にはポンプ14が備えられている。
【0034】
ポンプ14は、例えばチューブポンプであり、記録ヘッド9から噴射されたインク(廃インク)をキャップ12側から吸引して、廃インクタンク15側に送出する。
【0035】
廃インクタンク15は、液体回収部であり、図2および図3に示すように、略直方体形状に形成された液体回収容器17と、その内部に収容される液体吸収体18と、を備えている。
【0036】
液体回収容器17は、上壁17bと、側壁17cと、側壁17dと、底壁17eと、を備えている。液体回収容器17において立設する側壁17cには、外側に向けて突出した第1突出部19aと第2突出部20aが形成されている。
【0037】
第1突出部19a、第2突出部20aは中空円筒状であり、中空部分は液体回収容器17の内部に貫通して、外部と連通している。チューブ13の他端側13bは第1接続部19としての第1突出部19aに接続される。第2接続部20としての第2突出部20aには後述するチューブ16が接続される。
【0038】
第1突出部19aは、側壁17cにおいて、第2突出部20a(第2接続部20)よりも重力方向における下側に配置されている。第1突出部19aの液体回収容器17内側の端部は、液体排出部としての第1開口部19bが形成されている。したがって、ポンプ14により送出された廃インクは、チューブ13を介して、第1開口部19bから液体回収容器17内に送出され、液体吸収体18に吸収される。
【0039】
第2突出部20aには、チューブ16が接続される。また、第2突出部20aの液体回収容器17内側の端部には、気体排出部としての第2開口部20bが形成されている。
チューブ16は、可撓性を有する部材(例えばゴムやエラストマー等の合成樹脂等)により形成されている。チューブ16は、廃インクタンク15に気体(空気)を送出する気体送出管として、一端側(上流側)16aが大気に開放され、他端側(下流側)16bが廃インクタンク15の第2突出部20aに接続される。また、チューブ16の途中にはポンプ14が備えられている。
したがって、ポンプ14を駆動すると、上流側16aから空気を取り込み、チューブ16を介して、第2開口部20bから液体回収容器17内に排出される。
【0040】
液体吸収体18は、例えばスポンジやフェルト、不織布、パルプなどのインクの浸透性と保水性を兼ね備えた部材から形成されている。本実施形態においては、液体吸収体18は多孔質部材であるスポンジから形成されている。
液体吸収体18は、液体回収容器17の内側面に沿った略直方体形状であって、一部に凹部18aを有している。
【0041】
凹部18aは、第1開口部19b、および第2開口部20bと対向する液体吸収体18の部分が略直方体形状に切り欠かれている。この凹部18aにより、液体吸収体18と第1開口部19b、第2開口部20bとは接することなく離れている。
【0042】
図2に示すように、凹部18aは液体吸収体18の上面まで切り欠かれている。そして、凹部18aは液体回収容器17の上壁17bに覆われている。また、凹部18aの下側は、液体吸収体18の下面までは切り欠かいていない。第1開口部19bから少し下がった位置で切り欠かれ液体吸収体18の面18cを形成している。
図3に示すように、前後方向においては、凹部18aは液体吸収体18の側壁17c側の中央部が切り欠かれ、側面18b,18d,面18cを有して形成されている。
【0043】
なお凹部18aの変形例としては、図7に示す凹部18a’のように、上側は、液体吸収体18の上面まで必ずしも切り欠かなくてもよい。なお、下側は、液体吸収体18の下面まで切り欠いてもよい。また、前後方向は、液体吸収体18の一側面から、対向する側面まで切り欠いてもよい。
【0044】
液体回収容器17内には、凹部18aと、液体回収容器17の側壁17cと、上壁17bとにより、空間Sが形成されている。
なお、前述した凹部18aの変形例によっては図7のように、空間Sは凹部18a’と、側壁17cと、により形成される。
チューブ13から排出される廃インクと、チューブ16から排出される空気(気体)は、空間Sに排出される。
【0045】
ここで、チューブ13から排出され、第1開口部19bから空間Sに排出された廃インクの一部は、凹部18aを形成する側面18b,18dから吸収され、その他の廃インクは、重力によって空間S内を下方へ移動し、空間Sの重力方向下方に位置する液体吸収体18の面18cから吸収される。つまり、空間Sを取り囲む液体吸収体18の側面18b,18d、面18cは廃インクを受けるインク受け面(インク受け部)となる。
【0046】
また、ポンプ14により送出された空気は、チューブ16から排出され、第2開口部20bから空間Sに排出される。空間Sは閉じた空間のため、空気が排出されると、空間S内は加圧される。
【0047】
液体回収容器17は、第1開口部19bと第2開口部20bを、左右方向(水平方向)の一端側である側壁17cに配置し、空間Sの側壁17cから左右方向(水平方向)に離れた他端側の上部に開口部としての第3開口部17aを有している。
第3開口部17aは、液体吸収体18を露出するように上壁17bに開口されている。
【0048】
このため空間S内に第2開口部20bより排出された空気は、空間Sから第3開口部17aに向かって進む。言い換えると、空間Sから離れた方向に加圧されることになる。
したがって、第2開口部20bから排出された空気の圧力を受けて、第1開口部19bから排出された廃インクも、空間Sから第3開口部17aに向かって進む。言い換えれば、廃インクは空間Sから離れた方向に拡散浸透する。
【0049】
ここで、本実施形態では、第3開口部17aを、第1開口部19b、及び第2開口部20bより上側で、水平方向へ離間した位置に形成した。第3開口部17aは、液体回収容器17に蓋をする上壁17bにおいて、第1開口部19b、第2開口部20bが設けられた側壁17cと対向する側壁17d側に、側壁17dと隙間を開けるようにして形成した。
【0050】
第3開口部17aは空間Sから離れているため、空間Sの上部や、空間Sから第3開口部17aまでの液体吸収体18は、上壁17bで覆われた状態となる。よって、液体回収容器17内に排出された空気は、第3開口部17a以外から液体回収容器17の外部に漏れ出す虞が少ない。したがって、液体回収容器17全体に空気を行き渡らせることができ、液体吸収体18全体に廃インクを浸透させることができる。
【0051】
また、空間Sの上部や空間Sから第3開口部17aまでの液体吸収体18が、上壁17bと接することで覆われることにより、排出され、吸収された廃インクの、溶媒成分の蒸発を抑制できる。こうすることにより、空間S付近の液体吸収体18内において、廃インクが固化することを抑制し、目詰まりを抑制できる。また、インクは、溶媒成分が蒸発しない状態の方が液体吸収体18内を浸透しやすいため、インクの固化を抑制することにより、排出された空気による廃インクの液体吸収体18内部への浸透をさらに促進することができる。
【0052】
液体吸収体18に吸収された廃インクの溶媒の一部は蒸発し、蒸発した溶媒気体は第3開口部17aから排出される。こうすることで、液体吸収体18に吸収保持された廃インクの容量を減少させることができ、より多くの廃インクを液体吸収体18に排出することができる。
【0053】
ここで、液体回収容器17において第3開口部17aを形成する位置は、上述の位置に限られず、液体回収容器17の形状や廃インクタンク15のプリンター1内での配置によって適宜選択可能である。例えば、側壁17dの上端部付近に形成してもよいし、上壁17bと側壁17dの両方に設けてもよい。
また、第3開口部17aの大きさも同様に、液体回収容器17の形状や、チューブ16を介して液体回収容器内に排出される空気量に応じて形成することが可能であり、例えば、気体の送出量が多ければ大きく、少なければ小さく形成することが可能である。
【0054】
また、第3開口部17aの大きさは、第3開口部17aから蒸発する廃インクの量との関係により形成しても良い。例えば、蒸発量を抑えたい場合は小さく、増やしたい場合は大きく形成しても良く、適宜形成可能である。
ただし、チューブ16から排出された直後の空気の外部への漏れ出しを抑えるため、第3開口部17aは、側壁17cと離間する方向側(側壁17cと対向する側壁17d側)に設けられることが好ましい。
【0055】
なお、本実施形態における第2開口部20bは、側壁17cにおいて、第1開口部19bよりも重力方向における上側に配置されている。よって、第1開口部19bから空間S内に排出された廃インクが、空間S内を移動する場合、誤って第2開口部20bからチューブ16に流れ込み、外部へ漏出する虞が少ない。
【0056】
次に、メンテナンス機構11の作用について説明する。
記録ヘッド9のクリーニングを行なう場合、まずキャリッジ6を、ホームポジション領域であるメンテナンス機構11の上部へ移動させた状態で、図示しない昇降装置によりキャップ12を上昇させ、記録ヘッド9(ノズル形成面9a)をキャップ12により覆う。続いて、ポンプ14を駆動させる。これにより、キャップ12内に負圧を発生させ、この負圧により記録ヘッド9の各ノズル9b内のインクが吸引される。そして、吸引されたインクは、キャップ12、及びチューブ13を介して、廃インクタンク15の空間Sに排出される。
【0057】
空間Sに排出された廃インクは、空間S内を形成する液体吸収体18の側面18b,18d、面18cに吸収される。このとき、空間Sには、チューブ16を介して、ポンプ14により圧力が加えられた空気が排出される。したがって、液体吸収体18に吸収された廃インクは、排出された空気の圧力を受けて、液体吸収体18の内部へ拡散浸透する。
【0058】
さらに、空間Sは、液体吸収体18における凹部18aと、液体回収容器17の側壁17cと上壁17bにより形成され、第3開口部17aと離間して設けられている。したがって、空間Sに排出された空気は、第3開口部17aに向かって流れる。廃インクも第3開口部17aに向かって拡散浸透する。本来は空間Sから離間して浸透しにくい領域に向かって廃インクを浸透させることができる。つまり、液体吸収体18全体に廃インクを浸透させることができる。
【0059】
記録ヘッド9のクリーニング終了後、プリンター1が印刷休止状態となった場合、ノズル形成面9aとキャップ12とで形成された空間は、チューブ13、空間S、チューブ16を介し、大気と連通される。こうすることにより、メンテナンス機構11やプリンター1周辺の環境温度が変化し、キャップ12内の圧力が変化して膨張した場合でも、圧力変動を緩和し、記録ヘッド9の各ノズル9bに形成されたインクのメニスカスを破壊することを防止できる。
【0060】
したがって、上記第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0061】
(1)上記第1実施形態では、液体回収装置としてのメンテナンス機構11は、ポンプ14の駆動により、チューブ16を介して液体回収容器17内に空気を排出させる。よって、チューブ16が存在せず、液体回収容器17内に排出された廃インクが垂れ流し状態で液体吸収体18に吸収される場合とは異なり、高い圧力を、排出された廃インクに与えることができ、液体回収容器17内に排出された廃インクを液体吸収体18の内部に浸透させることができる。
【0062】
(2)上記第1実施形態では、第2接続部20を第1接続部19よりも重力方向上側に配置した。したがって、第1接続部19から液体回収容器17内に排出された廃インクが、誤って第2接続部20や第2接続部20に接続されるチューブ16に流れ込む虞がない。
【0063】
(3)上記第1実施形態では、液体回収容器17内には、第1接続部19および第2接続部20を備える液体回収容器17を構成する壁の一部と、液体吸収体18と、により空間Sが形成され、この空間S内に廃インク及び空気が排出される。したがって、空間Sが存在しない場合に比べ、排出された廃インクが付着する液体吸収体18の面積を増やすことができる。さらに、空間S内にはチューブ16から空気が排出されるため、排出された空気を用いて、空間S内部に拡がった廃インクを液体吸収体18の内部に浸透させることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る一実施形態を具体化した第2実施形態について、図4に従って説明する。
【0065】
尚、以下の説明では、その便宜上、第1実施形態と差異のある箇所について説明し、同様の箇所については、同一の符号を付して、その説明を省略するものとする。図4に示すように、本実施形態においては、第1実施形態における液体送出管としてのチューブ13および気体送出管としてのチューブ16を液体回収容器17内に挿入することを特徴としている。
【0066】
本実施形態の液体回収容器17の側壁17cには、第1実施形態と同様に、第1突出部19aおよび第2突出部20aが形成されている。ここで、本実施形態では、第1突出部19aの中空部分をチューブ13が通過することで液体回収容器17内に挿入され、第2突出部20aの中空部分をチューブ16が通過することで液体回収容器17内に挿入される。各チューブを挿入することで、液体回収容器17と各チューブは接続される。
そのため、本実施形態においても第1突出部19aが第1接続部19となり、第2突出部20aが第2接続部20となる。第1突出部19aの内径とチューブ13の外形はほぼ等しい。第2突出部20aの内径とチューブ16の外形はほぼ等しい。これらの第1突出部19a、第2突出部20aとチューブ13,16の間に隙間があると、廃インクや空気が漏れるので良くない。隙間がある場合には、隙間を埋めたりシールしたりする部材を有してもよい。
【0067】
本実施形態における第1突出部19aは、上記第1実施形態と異なり、液体回収容器17の側壁17cにおいて、第2突出部20aよりも重力方向における上側(側壁17cの上端近傍)に形成されている。
【0068】
液体吸収体38は、チューブ13の外径と略同一の内径を有する凹部38aと、チューブ16の外径と略同一の内径を有する凹部38bを有している。チューブ13は凹部38aに挿入され、チューブ16は凹部38bに挿入されることで、液体吸収体38の内部に挿入される。
第2実施形態では、チューブ13の開口部13dが廃インクの排出部(液体排出部)となり、凹部38aがインク受け面(インク受け部)になる。また、チューブ16の開口部16dが空気の排出部(気体排出部)となる。
【0069】
ここで、本実施形態では、チューブ13の開口部13dが、チューブ16の開口部16dよりも重力方向上側に配置されるよう、第1挿入部としての凹部38aおよび第2挿入部としての凹部38bを形成した。また、凹部38aおよび凹部38bは、液体吸収体38において、左右方向の右側に位置する。チューブ13を介して液体吸収体38に排出された廃インクは、開口部13dから主に重力方向下側に浸透する。一部の廃インクは、排出圧力や、自然の浸透力により左右方向にも浸透するが、重力方向への浸透より浸透しにくい。そのため、図4において、左右方向で右側、上下方向で下側にインクは溜まりやすくなる。
しかし、本実施形態では、チューブ13の開口部13dよりも重力方向下側にチューブ16の開口部16dが配置されているので、下側に溜まりやすいインクに、下側から第3開口部17aの方向へ空気の圧力を加えることができる。
したがって、液体吸収体38内に排出された廃インクを、液体吸収体38全体にまで、浸透させることができる。
【0070】
したがって、上記第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(4)上記第2実施形態では、チューブ13の開口部13dをチューブ16の開口部16dよりも重力方向上側に配置した。こうすることにより、チューブ13を介して排出され、液体吸収体38内を重力方向下方に移動する廃インクに対して、液体吸収体48内を水平方向に廃インクが浸透するように、空気の圧力を加えることができる。したがって、液体吸収体38内に排出された廃インクを、液体吸収体38全体に浸透させることができる。
【0071】
なお、チューブ13と凹部38a、チューブ16と凹部38dは略同じ寸法としたが、それぞれ凹部のほうが大きくしても良い。
【0072】
第2実施形態は図5のような構成としても同様の効果が得られる。
図5と図4は、第2突出部20a、チューブ16、第3開口部17aは同じ位置関係であるが、第1突出部19aとチューブ13の位置が異なる。第1突出部19aは、第2突出部20aを有する側壁17cと対向する側壁17dに備えられている。第1突出部19aは、第3開口部17aに近い側の側壁17dに形成されることになる。そして、チューブ13は第1突出部19a内に挿入されている。チューブ13の先端の開口部13dは第3開口部17aから左右方向で離れた位置である。図4に比べ、図5ではチューブ13が液体吸収体38内に挿入されている長さが大きい。
【0073】
図5のような構成では、廃インクが排出される場所は、図4と同じような位置関係となる。つまり、開口部13dは開口部16dより上下方向で上側、左右方向では右側にあり、第3開口部17aに対し左右方向で離れている。また、開口部13dと開口部16dは左右方向では近い位置関係にある。
このような位置関係であれば、開口部13dから排出された廃インクは主に重力方向に沿って下側へ浸透し、開口部16dからの空気の圧力により第3開口部17aに向けて浸透するため、液体吸収体38全体に浸透する。
【0074】
ここで、液体回収容器17内に挿入されたチューブ13の長さ(側壁17dの内側から開口部13dまでの水平距離)をL1、液体回収容器17内に挿入されたチューブ16の長さ(側壁17cの内側から開口部16dまでの水平距離)をL2、側壁17dの内側から側壁17cの内側までの水平距離をL3とする。
【0075】
そして、L1がL3の3分の2以上、L3未満にすることで開口部13dは第3開口部17aから左右方向で離れた位置となる。また、L1+L2<L3とすることで、開口部13dは開口部16dより右側となる。
【0076】
ここで、本願の思想について述べる。本願にかかる前述の実施形態は、従来、自然の浸透力により廃インクタンク15内の液体吸収体18,38に廃インクを浸透させていたのに対し、廃インクタンク15に気体を排出して加圧することで、液体吸収体18,38の隅々までインク(液体)を浸透させる。
【0077】
このとき、液体排出部19b、13dと、気体排出部20b、16dは別々に設けている。従来でも液体の排出時に圧力はかかる。しかし、液体排出の圧力では十分に浸透せず、浸透を補助するために気体によるより大きい圧力をかける。液体排出部19b、13dと、気体排出部20b、16dを別々に設けることで、必要な圧力をかけることが可能になる。
【0078】
本実施形態の廃インクタンク15は、液体吸収体18,38とそれを保持する液体回収容器17を備える。液体回収容器17には第3開口部17aがあり、第3開口部17aは液体吸収体18,38が外部から見える状態に露出している。第3開口部17aに対し液体排出部19b、13d、及び気体排出部20b、16dは水平方向で一端側と他端側に配置されている。言い換えると、第3開口部17aと液体排出部19b、13d、及び気体排出部20b、16dは水平方向に離間している。
液体回収容器17には第3開口部17aの他に開口部はない。そのため、排出された気体は第3開口部17aに向かって流れ、その気体の流れにより液体も第3開口部17aに向かって流れる。この作用によって、液体は浸透しにくい水平方向にも浸透し、液体吸収体18全体に渡って浸透することになる。
【0079】
気体排出部20b、16dは液体の浸透しにくい方向に気体が流れるような位置に配置する。液体排出部19b、13dを水平方向の一端側に配置した場合、気体排出部20b、16dも同じ側に配置し、第3開口部17aを他端側に配置するのが好ましい。
液体排出部19b、13dと、気体排出部20b、16dの上下方向の関係は、凹部18a、38a、38bによる。1つの凹部18aの場合、液体は凹部18aの側面18b,18dや面18cなどで広く受ける。その凹部18aに気体を排出すると、広く受けた廃インクに対して圧力をかけるので、全体に浸透しやすくなる。この場合、気体排出部20bは凹部18a内であればどの位置でも作用は同じになる。凹部が38a,38bのように2つの場合、気体の圧力は液体を受ける凹部38aに効果的に作用できない。そこで、凹部38aから重力方向に沿って下側に浸透したインクに対して圧力をかけられるよう、気体排出部16dを液体排出部13dより下側に位置させる。
【0080】
(変形例)
次に、第1、2実施形態についての変形例を、図6に従って説明する。
【0081】
尚、以下の説明では、その便宜上、第2実施形態と差異のある箇所について説明し、同様の箇所については、同一の符号を付して、その説明を省略するものとする。図6に示すように、本実施形態においては、前述の各実施形態における液体吸収体38が、重力方向に複数積層された多孔質部材を有することを特徴としている。
【0082】
本実施形態においては、液体吸収体38は、上側に配置された第1吸収体61と下側に配置された第2吸収体62とを備えている。そして、第1吸収体61は、チューブ13とチューブ16が挿入される。
【0083】
第1吸収体61は、第2吸収体62と比較して細孔径の大きな(低密度の)多孔質部材により形成されている。多孔質部材における液体保持力の大きさは、細孔径の大きさが小さいほど(密度が高いほど)大きく、細孔径が大きいほど(密度が低いほど)小さくなる。また、多孔質部材内に気体が排出される場合、細孔径が大きいほど(密度が低いほど)、気体は多孔質部材内を流通し易くなる。したがって、第1吸収体61は第2吸収体62より、排出されたインク及び空気を浸透及び流通させやすい。また、第2吸収体62は第1吸収体61よりも厚みが薄く、体積も小さい。
【0084】
このような構成により、密度の違いによる気体流通量の違いから、チューブ16から排出された空気は高密度の第2吸収体62には流れにくく、低密度の第1吸収体61内を優先的に流れる。よって、チューブ13から排出され、第1吸収体61内に吸収された廃インクは、チューブ16から排出された空気により浸透圧力を加えられ、第1吸収体61内全体に浸透する。こうすることで、第1吸収体61のチューブ13の開口部13d周辺に廃インクが滞留することを抑制し、開口部13d周辺でのインク固化による第1吸収体61の目詰まりを抑制できる。また、第1吸収体61の下に第1吸収体61より薄い第2吸収体62を配置することで、第1吸収体61全体に広がった廃インクを受けることができる。そして、第2吸収体62は下にあるために重力と保持力により第1吸収体61から廃インクを移動させる。また、第2吸収体62を薄くすることで、途中で浸透しなくなることも抑制できる。
【0085】
第1実施形態において、空間Sを、液体吸収体18における凹部18aと、液体回収容器17の側壁17cと、上壁17bとにより形成した。図7に示すように、空間Sの重力方向上側を液体吸収体18が覆うように凹部18aを形成し、凹部18aと側壁17cとにより空間Sを形成してもよい。こうすることにより、空間S内に排出された廃インクが上壁17b側に飛散した場合でも、空間Sの重力方向上側に位置する液体吸収体18により、廃インクを吸収することができる。
【0086】
また、図8に示すように、第1実施形態において、重力方向に境界面が存在するように液体吸収体18を複数分割して液体回収容器17内に収容してもよい。なお、第3開口部17aの形状も、四角形には限らず、図8に示すような半円形でもよい。第3開口部17aは廃インクの蒸発を促すものであり形状は限定しない。
【0087】
また、第2実施形態において、第1接続部19および第2接続部20を液体回収容器17の側壁17cまたは側壁17dに形成したが、図9に示すように、第1接続部19を液体回収容器17の重力方向上側に位置する上壁17bの中央付近に形成し、第2接続部20を、液体回収容器の重力方向下側に位置する底壁17eにおける側壁17c側および側壁17d側に、それぞれ1つずつ形成してもよい。こうすることにより、第1接続部19側から排出され、液体吸収体38内を重力により下方に浸透し、底壁17e周辺に浸透した廃インクに対して、第2接続部20側から排出される気体によって、重力方向上側の液体吸収体38に浸透する浸透圧力を与えることができる。
よって、第2接続部20が存在しない、いわゆる垂れ流し状態とは異なり、上壁17b側の液体吸収体38における、第1接続部19よりも側壁17c側および側壁17d側に位置する領域の液体吸収体18にインクを浸透させることができる。なお、図9において、第2接続部20を底壁17eではなく、側壁17cと17dの下部にそれぞれ設けてもよい。図9において、チューブ13,16、凹部38a,38bは省略している。
【0088】
各実施形態において、チューブ13、及びチューブ16を介して廃インク及び空気の吸引・送出を行なう場合、同一のポンプ14を用いたが、チューブごとに別々のポンプを設け、液体および気体の吸引・送出を行なってもよい。この場合、液体送出用のポンプと気体送出用のポンプを備えることになる。
本実施形態では、気体送出用のポンプ14とチューブ16を併せて気体送出部と呼ぶ。同一のポンプ14を用いた場合、液体送出部のポンプ14が気体送出部のポンプ14でもある。気体送出用のポンプと液体送出用のポンプを別々に設けることにより、液体および気体ごとに吸引力や送出力を調整することができる。
【0089】
また、各実施形態においてチューブ13とチューブ16は同じ径で描いているが、これに限定されるものではない。チューブ16から排出された空気の圧力により、廃インクは吸収体全体に拡散させるため、チューブ16からの空気の圧力の方がチューブ13からの廃インクの排出圧力より大きいことが望ましい。そのため、同一のポンプ14を用いるならばチューブ16の内径の方がチューブ13より大きい。異なるポンプを用いるならば、液体を送出するポンプより空気を送出するポンプの圧力の方が大きい。
【0090】
また、各実施形態において、複数のチューブ13を用いてインクの吸引・送出を行ってもよい。こうすることにより、チューブ13が1つの場合に比べ、インクの吸引・送出量を増やすことができる。同様に、複数のチューブ16を用いて、気体の吸引・送出を行ってもよい。インクが液体吸収体全体に浸透しにくい領域が存在する場合、浸透しにくい領域に向けて加圧するようにチューブ16を配置するとよい。
【0091】
また、各実施形態において、チューブ13は、端部に開口部13dを有しているが、これに限られるものではない。同様に、チューブ16の端部に開口部16dを有しているが、これに限られるものではない。例えば、図10に示すように、チューブ13またはチューブ16の側面に開口部13dまたは16dを有してもよい。こうすることにより、廃インクの排出方向、または気体の排出方向を多方向に変えることができる。よって、液体吸収体38全体に浸透させやすくなる。
【0092】
また、各実施形態において、ポンプ14はチューブポンプを備えたが、これに限られるものではない。例えば、ギアポンプやピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなど、液体や気体の吸引および送出ができるものであれば適宜選択可能である。
【0093】
また、各実施形態においては、チューブ16の一端側(上流側)は大気に開放され、そこから吸引した空気を送出するようになっていたが、別に気体供給室を設け、そこに接続されたチューブ16を介して気体を送出してもよい。例えば、液体として水性インクを用いる場合であれば、インクの溶媒成分である水分の蒸発により、インク成分の固化が起こってしまうため、通常の大気に含まれる水蒸気よりも多量の水蒸気を含む気体を送出することで、インク固化を抑制することができる。
【0094】
また、空気中に含まれる酸素等によりインク成分が変質し、固化することを抑制するため、化学反応を起こしにくい、例えば、窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスを、送出する気体として用いてもよい。さらに、紫外線照射によりインクを硬化させ、記録を行なう、紫外線照射型インクジェットプリンターに用いるインクの場合、周辺の酸素存在量を通常大気に含まれる量よりも多くすることにより、インクの溶媒成分の蒸発を抑制することができる。したがって、上記のようなインクを用いる場合、通常の大気に含まれる酸素よりも多量の酸素を含む気体を用いてもよい。
【0095】
上述の変形例を含む各実施形態では、液体噴射装置の一種として、インクジェット式のプリンター1が採用されているが、インク以外の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用しても良い。例えば、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。
【0096】
また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。
【0097】
また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0098】
液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を、分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置などが挙げられる。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸、又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1…プリンター、9…記録ヘッド、11…メンテナンス機構、12…キャップ、13…液体送出管としてのチューブ、14…ポンプ、15…液体回収部としての廃インクタンク、16…気体送出管としてのチューブ、17…液体回収容器、17a…第3開口部、18…液体吸収体、19…第1接続部、19b…液体排出部としての第1開口部、20…第2接続部、20b…気体排出部としての第2開口部、38…液体吸収体、S…空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから前記液体を吸引し送出する吸引送出部と、
前記吸引送出部により送出された前記液体を回収する液体回収部と、を備える液体回収装置であって、
前記液体回収部に気体を送出する気体送出部を備える
ことを特徴とする液体回収装置。
【請求項2】
前記液体回収部には、前記吸引送出部と接続する第1接続部と、前記気体送出部と接続する第2接続部とをそれぞれ有することを特徴とする請求項1に記載の液体回収装置。
【請求項3】
前記液体回収部は、前記液体を吸収する液体吸収体と、前記液体吸収体を保持する液体回収容器を備え、
前記液体回収容器は、前記第1接続部と前記第2接続部を備えるとともに、前記液体吸収体を露出する開口部を備え、
前記液体回収部に前記液体を排出する液体排出部と前記液体回収部に前記気体を排出する気体排出部を前記液体回収部の水平方向の一端側に配置し、前記開口部を前記液体回収部の水平方向の他端側に配置することを特徴とする請求項2に記載の液体回収装置。
【請求項4】
前記液体回収部は、前記液体回収容器と前記液体吸収体とで形成される空間部を有し、
前記空間部に、前記液体排出部から前記液体が排出され、前記気体排出部から前記気体が排出されることを特徴とする請求項3に記載の液体回収装置。
【請求項5】
前記空間部は1つの空間であることを特徴とする請求項4に記載の液体回収装置。
【請求項6】
前記空間部は、前記液体排出部、及び前記気体排出部に対してそれぞれ形成され、前記気体排出部は前記液体排出部よりも重力方向下側に配置されることを特徴とする請求項4に記載の液体回収装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体回収装置を備えることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−66567(P2012−66567A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130981(P2011−130981)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】