説明

液体圧送装置

【課題】 排気弁を閉じ給気弁を開いたときに、流入側逆止弁が閉弁する前に流入側逆止弁の入口側に回り込む作動蒸気量を低減する。
【解決手段】 作動蒸気導入口11に給気弁20を設け、作動蒸気排出口13に排気弁21を設け、液体流入口16に密閉容器2への液体の流れだけを許容する流入側逆止弁60を設け、液体排出口17に液体圧送先への流体の流れだけを許容する圧送側逆止弁75を設ける。流入側逆止弁60は入口部材61と出口部材62に入口63と出口64を形成し、入口63と出口64の間に環状弁座64を設け、環状弁座65の出口64側にディスク状弁体66を配置し、ディスク状弁体66を環状弁座65に付勢するコイルばね70を設け、ディスク状弁体66の入口63側に入口63の内周壁を摺接してディスク状弁体66が環状弁座65から離座したときに環状弁座65の上部を遮蔽する略半円筒状遮蔽部材71を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水や燃料等の液体を圧送する液体圧送装置に関するものである。本発明の液体圧送装置は、各種蒸気使用装置で発生した復水をボイラーや廃熱利用箇所に送る装置として特に適するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体圧送装置は、例えば特許文献1に開示されている。これは、密閉容器に作動蒸気導入口と作動蒸気排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられ、作動蒸気導入口に給気弁が設けられ、作動蒸気排出口に排気弁が設けられ、液体流入口に密閉容器への液体の流れだけを許容する流入側逆止弁が設けられ、液体排出口に液体圧送先への流体の流れだけを許容する圧送側逆止弁が設けられ、初めに排気弁を開き給気弁を閉じることにより流入側逆止弁を介して液体を密閉容器内に流入させ、次いで排気弁を閉じ給気弁を開くことにより密閉容器内に溜った液体を圧送側逆止弁を介して液体圧送先へ圧送するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−145290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の液体圧送装置は、排気弁を閉じ給気弁を開いたときに、流入側逆止弁が閉弁する前に作動蒸気導入口から密閉容器内に導入された作動蒸気の一部が流入側逆止弁の入口側に回り込むために、流入側逆止弁の入口側の蒸気使用装置等の負荷側が真空の場合、流入側逆止弁の入口側に回り込んだ蒸気が急凝縮してハンマを起こす問題点があった。
【0005】
したがって本発明が解決しようとする課題は、排気弁を閉じ給気弁を開いたときに、流入側逆止弁が閉弁する前に流入側逆止弁の入口側に回り込む作動蒸気量を低減できる、液体圧送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の液体圧送装置は、密閉容器に作動蒸気導入口と作動蒸気排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられ、作動蒸気導入口に給気弁が設けられ、作動蒸気排出口に排気弁が設けられ、液体流入口に密閉容器への液体の流れだけを許容する流入側逆止弁が設けられ、液体排出口に液体圧送先への流体の流れだけを許容する圧送側逆止弁が設けられ、初めに排気弁を開き給気弁を閉じることにより流入側逆止弁を介して液体を密閉容器内に流入させ、次いで排気弁を閉じ給気弁を開くことにより密閉容器内に溜った液体を圧送側逆止弁を介して液体圧送先へ圧送する液体圧送装置において、流入側逆止弁は弁ケーシングで入口と出口を形成し、入口と出口の間に環状弁座を設け、環状弁座の出口側にディスク状弁体を配置し、ディスク状弁体を環状弁座に付勢するばねを設け、ディスク状弁体の入口側に入口の内周壁を摺接してディスク状弁体が環状弁座から離座したときに環状弁座の上部を遮蔽する略半円筒状遮蔽部材を取り付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流入側逆止弁のディスク状弁体の入口側に入口の内周壁を摺接してディスク状弁体が環状弁座から離座したときに環状弁座の上部を遮蔽する略半円筒状遮蔽部材を取り付けたことにより、排気弁を閉じ給気弁を開いたときに作動蒸気導入口から密閉容器内に導入された作動蒸気が流入側逆止弁の環状弁座の上部から入口側へ回り込むことを半円筒状遮蔽部材により防止できるので、流入側逆止弁のディスク状弁体が環状弁座に着座する前に流入側逆止弁の入口側に回り込む作動蒸気量を低減できハンマを起こすことがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係わる液体圧送装置の断面図である。
【図2】図1の流入側逆止弁のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1と図2を参照して説明する。本実施例の液体圧送装置1は密閉容器2内にフロート3と切替え弁4及びスナップ機構5が配されたものである。密閉容器2は本体部7と蓋部8が図示しないネジによって結合され、内部に液体溜空間10が形成されたものである。蓋部8には作動蒸気導入口11,作動蒸気排出口13,液体流入口16,液体排出口17が設けられている。作動蒸気導入口11の内側に給気弁20が取り付けられ、作動蒸気排出口13の内側に排気弁21が取り付けられている。給気弁20は弁ケース22と弁体23及び昇降棒24によって構成される。弁ケース22は軸方向に貫通孔を有し、貫通孔の上端面は弁座25として機能する。弁ケース22の中間部には前記した貫通孔と外部とを連通する4つの開口26が設けられている。給気弁20の弁ケース22の先端は作動蒸気導入口11の中にねじ込まれている。弁体23は球状で作動蒸気導入口11側にあり、昇降棒24の上端が当接することにより開閉される。昇降棒24は弁ケース22の貫通孔を通って密閉容器2側に抜け、連接板27に当接するようになっている。連接板27は動力伝達軸28に連結され、動力伝達軸28はスナップ機構5と連結されている。排気弁21は弁ケース29と弁体30と昇降棒31によって構成される。弁ケース29は軸方向に貫通孔を有し、貫通孔の内部に弁座32があり、弁座32の下から昇降棒31の上端に保持固定された弁体30が当接して開閉を行うものである。昇降棒31の下端はピンで弁軸操作棒28に連結されている。給気弁20と排気弁21で切替え弁4が構成され、給気弁20が開くと排気弁21は閉じ、給気弁20が閉じると排気弁21は開く。
【0010】
フロート3はフロートアーム34と揺動軸35を介してブラケット36によって支持されている。ブラケット36は図示しないネジによって密閉容器2の蓋部8に一体的に取り付けられている。スナップ機構5はフロートアーム34と副アーム37及び圧縮状態のコイルバネ38によって構成される。フロートアーム34は平行に対向した2枚の板よりなり、左端にフロート3が固着され、右側部が揺動軸35によって回転可能に支持されている。従って、フロート3は揺動軸35を中心として上下に揺動する。フロートアーム34の中央部に揺動軸35と平行な第1の軸39が掛け渡されている。第1の軸39に第1バネ受け部材40が回転可能に支持されている。また、揺動軸35には副アーム37が回転可能に支持されている。副アーム37は平行に対向した2枚の板よりなり、左端部に揺動軸35と平行な第2の軸41が掛け渡されている。第2の軸41に第2バネ受け部材42が回転可能に支持されている。第1及び第2のバネ受け部材40,42の間に圧縮状態のコイルバネ38が配置されている。フロートアーム34には半円状に長孔43が設けられ、長孔43内に揺動軸35と平行なストッパー軸44がブラケット36によって支持されている。ストッパー軸44は副アーム37の回転範囲を規制する。副アーム37の右端部に揺動軸35と平行な連結軸45が貫通して取り付けられ、連結軸45に動力伝達軸28の下端が連結されている。揺動軸35と平行でフロートアーム34の揺動範囲を規制するストッパー軸51,52がブラケット36によって支持されている。
【0011】
液体流入口16は外部から密閉容器2に向かって開く流入側逆止弁60を介して蒸気使用装置等の負荷に接続される。液体排出口17は密閉容器2から外部に向かって開く圧送側逆止弁75を介してボイラー等の液体圧送先へ接続される。流入側逆止弁60の弁ケーシングは入口部材61と出口部材62をねじ結合して作られている。入口部材61に入口63が形成され、出口部材62に出口64が形成されている。入口部材1の内端に環状弁座65が設けられている。環状弁座65の出口64側にディスク状弁体66が配置されている。ディスク状弁体66は中心の孔に弁棒67が嵌挿され溶接により取り付けられている。入口部材61に4本のリブを介して入口案内環68が設けられ、出口部材62に4本のリブを介して出口案内環69が設けられている。入口案内環68と出口案内環69により弁棒67が入口63と出口64の中心軸上を変位できるように案内される。出口部材62の4本のリブとディスク状弁体66の間にディスク状弁体66を環状弁座65に付勢するコイルばね70を設ける。ディスク状弁体66の入口63側に入口63の内周壁を摺接してディスク状弁体66が環状弁座65から離座したときに環状弁座65の上部を遮蔽する略半円筒状遮蔽部材71が溶接により取り付けられている。
【0012】
上記の液体圧送装置1の動作は次の通りである。まず液体圧送装置1の外部配管は作動蒸気導入口11が高圧の蒸気源に接続され、作動蒸気排出口13は蒸気循環配管に接続される。液体流入口16は外部から密閉容器2に向かって開く流入側逆止弁60を介して蒸気使用装置等の負荷に接続され、液体排出口17は密閉容器2から外部に向かって開く圧送側逆止弁75を介してボイラー等の液体圧送先へ接続される。本実施例の液体圧送装置1の液体溜空間10内に復水が無い場合はフロート3が底部に位置する。このとき、切替え弁4における給気弁20が閉じられ、排気弁21が開かれている。また、流入側逆止弁60が開かれ、圧送側逆止弁75が閉じられている。そして、蒸気使用装置等の負荷内で復水が発生すると、復水は水頭圧により液体流入口16から液体圧送装置1に流下して、液体溜空間10内に溜る。液体溜空間10内に溜った復水によってフロート3が浮上すると、フロートアーム34が揺動軸35を中心に時計回り方向に回転し、コイルバネ38との連結部である第1の軸39が上方に移動して揺動軸35と第2の軸41を結ぶ線の延長線上に近付き、コイルバネ38が圧縮変形する。そしてフロート3が更に浮上して第1の軸39が揺動軸35と第2の軸41を結ぶ線の延長線上を越えると、コイルバネ38が急激に変形を回復し、副アーム37が反時計回り方向に回転して連結軸45が上方にスナップ移動する。その結果、連結軸45に連結された動力伝達軸28が上側にスナップ移動し、給気弁20が開かれると共に排気弁21が閉じられる。給気弁20が開かれると共に排気弁21が閉じられると作動蒸気導入口11から密閉容器2内に作動蒸気が導入され、内部の圧力が上昇し、流入側逆止弁60が閉じられ、圧送側逆止弁75が開かれる。液体溜空間10に溜った復水は、蒸気圧に押されて液体排出口17から圧送側逆止弁75を介して外部のボイラーや廃熱利用装置へ排出される。この給気弁20が開かれると共に排気弁21が閉じられたときに、作動蒸気導入口11から密閉容器2内に導入された作動蒸気が流入側逆止弁60の環状弁座65の上部から入口63側へ回り込むことを半円筒状遮蔽部材71により防止できるので、流入側逆止弁60のディスク状弁体66が環状弁座65に着座する前に流入側逆止弁60の入口63側に回り込む作動蒸気量を低減できハンマを起こすことがない。
【0013】
復水の排出によって復水溜空間10内の水位が低下すると、フロート3が降下して、フロートアーム34が揺動軸35を中心に反時計回り方向に回転し、コイルバネ38との連結部である第1の軸39が下方に移動して揺動軸35と第2の軸41を結ぶ線の延長線上に近付き、コイルバネ38が圧縮変形する。そしてフロート3が更に降下して第1の軸39が揺動軸35と第2の軸41を結ぶ線の延長線上を越えると、コイルバネ38が急激に変形を回復し、副アーム37が時計回り方向に回転して連結軸45が下方にスナップ移動する。その結果、連結軸45に連結された動力伝達軸28が下側にスナップ移動し、給気弁20が閉じられると共に排気弁21が開かれる。給気弁20が閉じられると共に排気弁21が開かれると、圧送側逆止弁75が閉じられ、流入側逆止弁60が開かれる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、各種蒸気使用装置で発生した復水をボイラーや廃熱利用箇所に送る復水圧送装置に限らず、温水や燃料等の液体を圧送する液体圧送装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 液体圧送装置
2 密閉容器
3 フロート
4 切替え弁
5 スナップ機構
10 液体溜空間
11 作動蒸気導入口
13 作動蒸気排出口
16 液体流入口
17 液体排出口
20 給気弁
21 排気弁
28 動力伝達軸
60 流入側逆止弁
61 入口部材
62 出口部材
63 入口
64 出口
65 環状弁座
66 ディスク状弁体
70 コイルばね
71 半円筒状遮蔽部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器に作動蒸気導入口と作動蒸気排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられ、作動蒸気導入口に給気弁が設けられ、作動蒸気排出口に排気弁が設けられ、液体流入口に密閉容器への液体の流れだけを許容する流入側逆止弁が設けられ、液体排出口に液体圧送先への流体の流れだけを許容する圧送側逆止弁が設けられ、初めに排気弁を開き給気弁を閉じることにより流入側逆止弁を介して液体を密閉容器内に流入させ、次いで排気弁を閉じ給気弁を開くことにより密閉容器内に溜った液体を圧送側逆止弁を介して液体圧送先へ圧送する液体圧送装置において、流入側逆止弁は弁ケーシングで入口と出口を形成し、入口と出口の間に環状弁座を設け、環状弁座の出口側にディスク状弁体を配置し、ディスク状弁体を環状弁座に付勢するばねを設け、ディスク状弁体の入口側に入口の内周壁を摺接してディスク状弁体が環状弁座から離座したときに環状弁座の上部を遮蔽する略半円筒状遮蔽部材を取り付けたことを特徴とする液体圧送装置。

【図1】
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【図2】
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