説明

液体塗布具

【課題】塗布体の硬度および曲がり弾性力が適正で塗りムラ無く塗布性が良好な液体塗布具を提供する。
【解決手段】 先軸3が塗布体10先端部を突出状態で収容し、本体2先端に固定し、塗布体10は、塗付部分10aが吐出口24aからさらに先端へ突出させて、塗布面25鉛直方向視で先端が略円弧形状をなした略平面の塗布面25を有し、塗布面鉛直方向かつ軸芯方向断面を塗布面横方向から見て先細り形状の、扁平な液密性ある弾性体からなり、前記略平面の塗布面25の略上方向に開口する吐出口24aを、塗布面25略中央部に有し、該吐出口24aから塗布体先端までの距離Lは、1(mm)≦L≦20(mm)の寸法範囲内に、塗布面略中央部の幅Wは2(mm)≦W≦20(mm)の寸法範囲内に、かつ、前記塗布体先端より3(mm)の部分の垂直方向反発力が0.01(N)〜1.40(N)とした液体塗布具1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体内部の塗布液を加圧する液押圧手段を具備し、該液押圧手段の押圧により塗布液を本体先端の塗布体へと供給するようにした液体塗布具に係り、特に、皮膚や口腔などの軟質な被塗布体へ塗布液を塗布するための液体塗布具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料や薬品液等の塗布液を塗布する液体塗布具には、本体内に塗布液を収容し、先端に設けた塗布体にその塗布液を適時に供給するために、本体内部に設けられた液収容室内の塗布液を加圧するためにピストンおよびその繰り出し機構を有した液圧加圧機構、又は液押圧手段を有したものがある(特許第3081834号公報:特許文献1、実用新案登録第2603088号公報:特許文献2等参照)。
また、化粧用塗布具の塗布体に関して、塗布液の排出口(吐出口)よりも先方に突出させて塗布べらを設けたものが開示されており(実開昭61−67621号公報:特許文献3)、排出口より塗布べらに化粧用塗布液を供給してその塗布べらを弾性変形させつつ塗布液を塗り広げるものとされている。
また、液体化粧料の塗布具に関して、柔軟性のあるシリコン樹脂からなる塗布部本体に、塗布部外端面に斜めに接触面を設けたものが提案されている(実用新案登録第3109917号公報:特許文献4)。この塗布具においては、加圧されて送り出される化粧料の圧力により塗布部本体の吐出口が変形して化粧液が吐出すると共に、柔軟性のある塗布部本体によって塗布するときの接触感が快適で均一な塗り広げができるとされている。
【特許文献1】特許第3081834号公報
【特許文献2】実用新案登録第2603088号公報
【特許文献3】実開昭61−67621号公報
【特許文献4】実用新案登録第3109917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のような液体塗布具においては、使用者(ユーザ)が対象部分に塗布液を塗る場合に塗布体が硬く曲がり弾性力が有りすぎる場合、せっかく塗った塗布液を掻き取ってしまい塗りムラが生じたりする等、所望する塗り厚さが得られない問題点があり、逆に、塗布体が柔らかく曲がり弾性力が不足する場合、塗布体先端を押しつけて滑らせながら意図した箇所に進めにくく、また、意図した濃さ(塗り厚さ)で塗布液を塗れない等使用性の点が悪くなる問題点がある。
【0004】
これに対して、従来、使用性が良く塗りムラの少ない塗布体が提案されていなかった。
【0005】
また、塗布する塗布液が粘度範囲が広範囲の場合でも塗りムラ無く塗布性が良好な塗布体が望まれるが、従来は提案されていなかった。
【0006】
本発明は、斯かる問題点を解消するためになされたものであり、塗布体の硬度および曲がり弾性力が適正で塗りムラ無く塗布性が良好な液体塗布具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筒状をなす本体と、前記本体先端に設けられた塗布体と、少なくとも前記塗布体を覆うキャップとを備え、前記本体内部には粘度が1,000(mPa・s)〜100,000(mPa・s)の塗布液を収容する塗布液収容空間とを備え、
前記塗布液収容空間を後端側から封止するピストン体と、
前記ピストン体後方から連結する軸状部材と、
前記軸状部材の外周部に備わる雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を中心に持ち、前記本体とは回転不能に設けられたネジ体と、
前記軸状部材と軸方向に摺動可能かつ相対回転方向には回動不能であって、前記本体とは回転可能に設けられた回転操作部材とを備えて、本体内部の塗布液を加圧する液体加圧機構を具備し、該液体加圧機構により塗布液を本体先端に設けられた塗布体へと供給するようにした液体塗布具において、
筒状構造の先軸が、塗布面の形成された塗布体先端部を突出させた状態で該塗布体を収容しかつ本体先端に固定し、
塗布体は、前記塗布液収容空間から塗布液の吐出口に通じるように連通路が塗布体の内部に形成されていると共に、塗布体先端部が、前記吐出口からさらに先端へ突出して設けられて、塗布面鉛直方向視で先端が略円弧形状をなした略平面の塗布面を有し、塗布面鉛直方向かつ軸芯方向断面を塗布面横方向から見て先細り形状の、扁平な液密性ある弾性体からなり、
前記略平面の塗布面の略上方向に開口する吐出口を、前記略平面の塗布面略中央部に有し、この吐出口から塗布体先端までの距離Lは、1(mm)≦L≦20(mm)の寸法範囲内にあり、
塗布面略中央部の幅Wは2(mm)≦W≦20(mm)の寸法範囲内にあり、かつ、前記塗布体は、その先端より3(mm)の部分の垂直方向反発力が0.01(N)〜1.40(N)であることを特徴とする液体塗付具である。
【0008】
また、本発明において、前記ネジ体および前記回転操作部材の噛み合わせ部に歯状のラチェットが形成されて、前記回転操作部材が前記ネジ体に対して一方向のみ回転規制することが好適である。
また、本発明において、前記ネジ体および前記回転操作部材の噛み合わせ部に歯状のラチェットが形成されて、前記回転操作部材が前記ネジ体に対して双方向に回転可能であることが好適である。
【0009】
また、本発明において、前記液密性のある弾性材は、ゴムまたはエラストマーからなることが好適である。
また、本発明において、前記液密性のある弾性材は、連続気泡を有しない弾性体からなることが好適である。
また、本発明において、塗布体には、前端が連通路に連通する中空部が内部に形成され、先軸の後端部内部にパイプ継手が嵌入し、このパイプ継手前端と先軸内側の段部とによって塗布体後端のフランジ部分を挟みつけて塗布体を本体先端に位置決めし、パイプ継手の中空内周部から塗布体の中空部内に中空のパイプ体を嵌入しており、塗布液収容空間内の塗布液が液体加圧機構によって加圧された際に、塗布液が、パイプ継ぎ手、パイプ体の内部および連通路を経由して吐出口から塗付面に出るようにしていることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体塗布具によれば、塗布体が、前記塗布液収容空間から塗布液の吐出口に通じるように連通路が塗布体の内部に形成されていると共に、塗布体先端部が、前記吐出口からさらに先端へ突出して設けられて、塗布面鉛直方向視で先端が略円弧形状をなした略平面の塗布面を有し、塗布面鉛直方向かつ軸芯方向断面を塗布面横方向から見て先細り形状の、扁平な液密性ある弾性体からなるものであって、前記塗布体を、その先端より3(mm)の部分の垂直方向反発力が0.01〜1.40(N)としたので、使用性がよく塗りムラの少ない塗布体とすることができるという優れた作用効果を奏する。
【0011】
本発明において、前記塗布体を、その先端より3(mm)の部分の垂直方向反発力を0.01〜0.70(N)とすれば、さらに、使用性がよく塗りムラの少ない塗布体とすることができる。特に、塗布液が1,000(mPa・s)〜100,000(mPa・s)の粘度範囲のものであるので、塗りムラが無く、塗布性良好な塗布体とすることができる。
【0012】
また、本発明において、塗布体が、吐出口より先端までの距離Lが1≦L≦20(mm)の寸法範囲内に有り、かつ、吐出口より先端までの部分の幅Wが2≦W≦20(mm)の寸法範囲内に有る条件を超える場合は、対象面への塗布が難しく、逆にこの条件内であれば、塗布性が良好となる。塗布体の幅や長さは、上記条件の中で、適宜に選択するのが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1〜図13は本発明に係る液体塗布具を実施する形態の各例の説明図であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。
【0015】
図1は、実施形態1に係る液体塗布具の全体図、図2は塗布体の詳細説明図である。
【0016】
図1に示すように、実施形態1に係る液体塗布具1は、本体2内部の塗布液4を加圧する液体加圧機構(液押圧手段)6を具備し、該液体加圧機構6の押圧により塗布液4を本体先端の塗布体10へと供給するようにした液体塗布具1において、塗布体10は、弾性材からなり、本体内部と外部に通じる連通路24が形成され、塗布部分10aが、該連通路24の吐出口24aから更に先端へ突出して設けられており、前記塗布部分10aは、その先端より3(mm)の部分の垂直方向反発力が0.01〜1.40(N)である。
【0017】
塗布体10の塗布部分10aは、吐出口24aより先端までの距離Lが1≦L≦20(mm)の寸法範囲内に有り、かつ、吐出口24aより先端までの部分の幅Wが2≦W≦20(mm)の寸法範囲内に有る。
【0018】
また、塗布体10は、透明または半透明の材質からなるものとして連通路24内の塗布液を目視できるようにしたものである。
【0019】
さらに詳細に説明する。
図1および図2に示すように、実施形態に係る液体塗布具1は、筒状をなす本体2の先端に塗布体10を設け、前記本体2内部の収容空間(貯留タンク)2b内に収容した塗布液4を前記本体に取り付けた液体加圧機構6によって加圧することにより塗布液4を先端の塗布体10へと供給する。なお、液体加圧機構6に減圧をも可能な機能を付加して液体加減圧機構とし、塗布液4の押し出し・引き戻しを選択的に可能にした液体塗布具1とすることもできる。
【0020】
そして、この液体塗布具1において、液体加圧機構6は、前記本体2内部の塗布液収容空間2bに向けて前進・後退して収容空間内の容積を減少・増大させるピストン体35と、該ピストン体35の後部に軸状部材(「ネジ棒」とも称する)32の前部を係合して、この軸状部材32を使用者の操作力によって前後動させて前記ピストン体35を前進・後退動作させる駆動機構(回転操作部材31、軸状部材32,ネジ体34,繰出し体37等からなる)とを有している。
【0021】
詳細には、図1に示すように、液体塗布具1は主要部材として外筒である本体2、先軸3、塗布液4、液体加圧機構6、キャップ7、および塗布体10を有してなる。
【0022】
塗布体10は必要な塗布性能が得られるようにゴム、エラストマーあるいは独立気泡体等の弾性樹脂材で成形され、その塗布体10以外の部材は必要な気密性能や支持性能が得られる密度および剛性に設定されて、樹脂材または金属材によって構成されている。
【0023】
本体2は、概略筒状を呈し、その先端部に先細の本体小径部2aが形成され、本体小径部2aにキャップ7が着脱自在に嵌合される。本体2内と、先軸3後端部の、ピストン体35との囲まれる空間部分が、塗布液収容空間2bになっている。液体加圧機構6によって本体2内でピストン体35を前進させることによって、この塗布液収容空間2bの体積を減じて加圧し塗布体方向に塗布液4を送り出すようになっている。
【0024】
液体加圧機構6は、主要部材として回転操作部材31,軸状部材32,軸状部材32のネジ体34,および上記ピストン体35からなる。回転操作部材31(繰出し体37前端部が本体2後端に陥入し、繰出し体37後端部に操作用筒状つまみ31aが一定以上の回転力で相対回転可能に嵌入している)は全体が本体2に回転可能に設けられ、環状のネジ体34は本体2に回転不能に設けられている。ネジ体34および回転操作部材31(繰出し体37)同士の噛合せ部38は、歯状のラチェットが形成されて回転操作部材31がネジ体34に対して一方向のみに回転するように回転規制している。また、加減圧機構とする場合は回転規制せずにクリック感を伴うようにする。
【0025】
前記軸状部材32の外周部の雄ネジと、ネジ体34の中心部孔に形成された雌ネジが螺合する。また、軸状部材32は横断面視して異形のカム形状を呈し、回転操作部材31の繰出し体37の係合部39の中心部孔が前記軸状部材32外周部に対応した異形のカム形状に形成されており、軸状部材32が係合部39の中心部孔に挿通して、軸状部材32が回転操作部材31に軸方向に摺動可能かつ相対回転不能に係合している。軸状部材32の先端部はピストン体35に連結され、回転操作部材所定方向(実施形態では右回転方向)に回転すると軸状部材32がネジ体34を介してピストン体35を伴って本体2の先端方向に向けて前進しピストン体35の前進によって本体2(の塗布液収容空間2b)内の塗布液4を加圧して塗布体10に送る。
【0026】
〔先軸3〕
図1に示すように、先軸3は先細りに縮径した筒状構造を呈して形成され、その前後に開放した内部空間に塗布体10を、その先端部を突出させた状態に収容し、その収容状態で本体2に固定する。
【0027】
先軸3の後方部外周に形成された環状の嵌合凹部3aが、本体小径部2a内面に形成された嵌合凸部に圧入嵌合し、先軸3が本体2から抜けだすことを防止している。また、先軸3外周の鍔部3bが本体小径部2a前端面に当接する。また、先軸3後端部内部にパイプ継手12が嵌入しており、このパイプ継手12前端と先軸の内側の段部とによって塗布体10後端のフランジ状部分を挟み付けて塗布体10の位置決めをしている。パイプ継手12の中空内周部から塗布体10中空部内には、中空のパイプ体13が嵌入しており、この塗布体10の中空部前端が連通路24に連通している。
【0028】
〔塗布体10〕
液体塗布具1の塗布体10は弾性材からなり、図1〜図2に示すように、塗布体10は、本体2内と外部に通じる連通路24が形成され、塗布液4が液体加圧機構6によって加圧された際に、前記パイプ継手12、パイプ体13から連通路24を経由して塗布液が塗布部分10aに出るようになっている。
【0029】
塗布体10は、先軸3先方から突出して露出する先端部が、両面(上面、下面)テーパ部21、22で、偏平な先細り形状となっている。上面のテーパ部21に連通路24の吐出口24aが開口している。この塗布体10の塗布部分10aは、連通路24の吐出口24aから更に先端へ突出して設けられる。
【0030】
本発明では、塗布体10は全体が弾性体であっても良く、また、塗布部分10aのみが弾性体から構成されていても良い。塗布部分10aの材質としては弾性材からなり、ゴム、エラストマー等の弾性材を上げることができる。また塗布部分10aの材質は液密性のある限り、例えば、連続気泡を有しない弾性体であれば何ら問題なく使用することができる。
【0031】
例えば、
(1)ゴムとしては、NBR、シリコンゴム、EPDM、フロロシリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、クロロブレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム等がある。
(2)エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ウレタン系エラストマー等がある。
(3)独立気泡体としては、ポリエチレンフォーム、塩ビフォーム、ポリスチレンフォーム等ある。
【0032】
図2に詳細に示すように、塗布体10において、塗布部分10aは吐出口24aの開口位置から更に先方に延在する部分であり、平面部25として形成される。連通路24は先軸3から軸方向にまっすぐに延び、上面テーパ部21近傍でその上面テーパ部21側に「く」字状に曲がって露出して吐出口24aが開口する。連通路24および吐出口24aは、横断面形状が半円形に形成されている。
【0033】
通常の使用状態の液体塗布具1においては、使用者が、塗布体10を下方または横方向に向けた状態として液体加圧機構6を操作することによって、塗布液収容空間2b内の塗布液4を加圧する。加圧されて連通路24の吐出口24aから塗布液4が吐出する。その吐出した塗布液4は、一旦、上面テーパ部21側に出て平面部25側に流れていき平面部25に一時保持される。この平面部25における塗布液4の保持量は、その使用する化粧品の種類に応じたものである。
【0034】
そして、使用者は、平面部25を、塗布を所望する対象部位に平面部25を適宜の押圧力で押しつけて塗布液を塗りつけるものである。
【0035】
また、塗布体10は、透明または着色された半透明の材質からなるものとして連通路内の塗布液を目視できるようにしたものである。
【0036】
次に、上記した実施の形態の作用を説明する。
【0037】
〔塗布体の垂直方向反発力を設定した場合の使用感および塗布性能〕
図3は塗布体10の反発力設定の説明図、図4は塗布体10の材質を種々のものにした比較例1〜2、実施例1〜9の反発力の測定説明図、図5は比較例1〜2、実施例1〜8の使用感および塗りムラの測定結果例説明図、図6は塗りムラの評価方法説明図、図7は塗りムラの評価基準説明図、図8は塗布体の幅Wおよび塗布部分からの長さ説明図、図9は塗りムラの評価説明図である。
【0038】
実施形態の塗布体10は、その塗布部分10aが、その先端より3(mm)の部分の垂直方向反発力を0.01〜1.40(N)に設定したものである。
【0039】
この塗布部分10aの反発力は、図3に示すように、フォースゲージ40によって検出した。このフォースゲージ40は、受け皿のある検出端部40aが加わる力の強さによって後退動して、その力を検出する(表示部40bに数値(N)を表示)ものである。
【0040】
具体的には、図4〜図5に示すように、各樹脂製品(Q100F〜エラストマー試作材料)を材料にして各塗布体を形成したものを比較例1〜2、実施例1〜9とした。
【0041】
これら比較例1〜2と実施例1〜9について、図3に示すように、その塗布部分の先端から3(mm)の部分を検出端部40aに横方向(検出端部40aの進退方向の垂直方向)から滑らせるように接しさせた状態として、この状態下で、検出端部40aが塗布部分から受ける力(N)を測定した。
【0042】
なお、各例においては材質(形状)もそれぞれ変えて塗布体を作成したものである。
比較例1:軟質ポリプロピレン(軟質PP:商品名キャタロイ、グレード名Q100F、サンアロマー(株)製を用いた)
比較例2:データ5(熱可塑性樹脂製品)
実施例1:データ4(熱可塑性樹脂製品)
実施例2:軟質ポリプロピレン(軟質PP:商品名ニューコン、グレード名NNT2005、日本ポリプロ(株)製を用いた)
実施例3:データ3(熱可塑性樹脂製品)
実施例4:データ2(熱可塑性樹脂製品)
実施例5:熱可塑性ポリウレタン(エラストマー樹脂の一種:商品名PANDEX、グレード名T−8375、ディーアイシーバイエルポリマー(株)製を用いた)
実施例6:実施例5と同様素材を用いてへら状に成形した。
実施例7:データ1(熱可塑性樹脂製品)
実施例8:シリコン材で硬度50度のもの(comp)
実施例9:エラストマー試作材料
【0043】
データ1〜データ5は、塗布部分から受ける力(N)のデータの面で、各実施例に使用した樹脂製品の間に位置する弾性力を得られるように、熱可塑性樹脂材製品を発明者が調整して塗布体を作成したものである。
【0044】
実際に塗布する塗布体の先端部分の弾性力を測定した結果は図4〜図5に示す。
【0045】
また、これら塗布体の各例によって実際に塗った際の使用感および塗りムラの発生評価価を行った。評価結果を図5に示す。
【0046】
この使用感の評価においては、バルクを塗布体の各例で試験者が肌に塗って使用感を評価した。図5の使用感評価は、「◎」:良好、「○」:やや良好、「△」:普通、「黒△」:やや硬くて使いにくさ有り、「×」:硬く使いにくいというものである。
【0047】
また、各粘度における塗りムラの発生評価に関して、塗布液のバルクはメイクアップ化粧料などの一般的な粘度として(ずり速度5(sec-1)において)10,000(mPa・s)を中心に試験を行った。粘度範囲をその1/10の1,000(mPa・s)と10倍である100,000(mPa・s)で試験を行った。
【0048】
また、塗りムラの評価試験は、図6に示すように、厚さ3(mm)の非吸収面42にバルク44を滴下し、非吸収面に沿って一定速度で塗布体を移動させることによって、バルクを塗布体10によって塗りのばした。
【0049】
塗りのばされたバルク44の状態を観察して「◎」、「○」、「△」、「黒△」、「×」の5段階の評価を行った。この評価基準は、図7に示すように、評価「◎」:良好(塗布面に塗布液がムラ無く均一に塗り広がった状態)から、評価「×」:不良(塗布面の塗布液を塗布体で掻き取られて、全く塗り伸ばせない状態のもの)までとした。評価「○」〜「黒△」は、それら中間であって、程度によって評価した。
【0050】
また、塗布体の移動は早めの速度(150mm/sec)と遅めの速度(50mm/sec)で行った。
【0051】
評価結果は、図5に示したように、比較例1〜2では、使用感が硬く、各粘度での塗りムラも悪くいずれの評価も悪かった。
【0052】
これに対して、実施例1では、使用感はやや硬く、塗りムラがやや生じやや不均一であったがカスレは生じていない。
【0053】
実施例2〜9では、使用感は普通から良好であり、塗りムラがやや生じるから全く生じていない。したがって、本発明において、前記塗布部分を、その先端より3(mm)の部分の垂直方向反発力が0.01〜1.4(N)とすることによって、使用性がよく塗りムラの少ない塗布体とすることができる。
【0054】
特に実施例4〜9では、使用感が良好で、かつ、塗布液の粘度に関わらずに塗りムラが無く、良好な塗布特性を有しているので、特に好ましい。
【0055】
したがって、前記塗布体の塗布部分を、その先端より3(mm)の部分の垂直方向反発力が0.01〜0.70(N)とすれば、さらに、使用性がよく塗りムラの少ない塗布体とすることができる。特に、塗布液が1,000(mPa・s)〜100,000(mPa・s)の粘度範囲のものである場合に、塗りムラが無く、塗布性良好な塗布体となる。
【0056】
〔塗布体の塗布部分の寸法設定による塗布性能〕
図8に示すように、実施形態の塗布体10の塗布部分10aが、吐出口24aより先端までの距離Lが1≦L≦20(mm)の寸法範囲内に有り、かつ、吐出口24aより先端までの部分の幅Wが2≦W≦20(mm)の寸法範囲内に有るものとしている。この場合の評価を図9に示している。
【0057】
塗布部分10aの幅Wと長さLの関係が上記範囲を超えるものでは、塗布するのが難しく、範囲内のものでは塗布性が良好であった。
【0058】
なお、塗布部分10aの幅Wと長さLは上記範囲内で塗布対象に合わせて適宜選択することが望ましい。
【0059】
〔塗布体の材質を透明または半透明にする〕
実施形態においては、図2に示すように、塗布体10は、透明または半透明の材質からなるものとして連通路内の塗布液を目視できるようにした。塗布液と異なる色に着色して半透明にすることがさらに好適である。
【0060】
このようにすることによって、本体内部の塗布液タンクが見えなくても塗布体に供給された塗布液の色を透明または半透明の塗布体を透かして見ることできる。また、塗布液が出てくる様子を目視によって確認することができ、使用開始時に塗布液の出過ぎを防止することができる。
【0061】
次に、実施形態の変形例を説明する。
【0062】
前記実施形態における、液体塗布具の塗布体10は、図1、図2の他、図10〜図13に示す変形例1〜変形例6のように、種々に変形実施できる。その他、液体塗布具の全体構成は図1〜図2の実施形態と同様であり、同一部分に同一の符号を付している。
【0063】
図10の変形例1に係る塗布体10Aは、上面テーパ部21に段差が無く、吐出口24aの後方から平面部25にかけて一体的に平坦に形成されている。吐出口24aは常時開口状態になっている。
【0064】
図11の変形例2に係る塗布体10Cは、上面テーパ部21に段差が無いが、上面テーパ部21と下面テーパ部22とが先軸3に近い後部側がえぐれたように細くなり、それより前方では、吐出口24aの後方から平面部25にかけて一体的に平坦に形成されている。吐出口24aは常時開口状態になっている。
【0065】
図12の変形例3に係る塗布体10Dは、上面テーパ部21に段差が無く、吐出口24aの後方から平面部25にかけて一体的に平坦に形成されているが、下面テーパ部22が下開きの弧状に形成されており、塗布体10が全体的に側面視で後方から前方にかけて下反り形状を呈している。吐出口24aは常時開口状態になっている。
【0066】
この変形例3に係る塗布体10Dにおいては、吐出口24aから出た塗布液4が後方側も含めて滞留して上記変形例3の塗布体よりも多くの塗布液を上面テーパ部21に保持することがしやすく、また、対象部位に塗布に際して塗布体の基端から先端にかけて広い範囲で密着させやすく、広く塗り広げることが可能である。
また、下面テーパ部22の弧状の設定によって塗布体10D全体の弾性を柔らかくすることができる。
【0067】
図13(a)〜(c)は、変形例4〜6に係る塗布体10E〜10Gであり、上面テーパ部21に開口する吐出口24aを種々に変えた各例である。
【0068】
図13において(a)に示す変形例5の塗布体10Eは吐出口24aが半円形で前方に塗布液が出やすい。また、(b)に示す変形例6の塗布体10Fは吐出口24aが円形で前後に塗布液が出やすい。また、(c)に示す変形例7の塗布体10Gは吐出口24aが矩形のものである。
これらの変形例において、連通路24は上面テーパ部21近傍で上面テーパ部21に「く」の字形状に曲がっているが、連通路24を軸方向にまっすぐ延ばして吐出口24aを形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る液体塗布具を実施する形態の一例であって、実施形態1に係る液体塗布具の縦断した全体図である。
【図2】実施形態に係る塗布体の詳細説明図である。
【図3】塗布体の反発力設定の説明図である。
【図4】塗布体の材質を種々のものにした比較例1〜2、実施例1〜9の反発力の測定説明図である。
【図5】比較例1〜2、実施例1〜9の使用感おびよび塗りムラの測定結果例説明図である。
【図6】塗りムラの評価方法説明図である。
【図7】塗りムラの評価基準説明図である。
【図8】塗布体の幅Wおよび塗布部分の長さLの説明図である。
【図9】塗りムラの評価説明図である。
【図10】液体塗布具の塗布体の変形例1の説明図であって、(a)は上面テーパ部側からの側面視図、(b)該テーパ部の側面視図である。
【図11】液体塗布具の塗布体の変形例2の説明図であって、(a)は上面テーパ部側からの側面視図、(b)該テーパ部の側面視図である。
【図12】液体塗布具の塗布体の変形例3の説明図であって、(a)は上面テーパ部側からの側面視図、(b)該テーパ部の側面視図である。
【図13】(a)〜(c)は液体塗布具の塗布体の変形例4〜6の説明図であって、上面テーパ部側からの各側面視図ある。
【符号の説明】
【0070】
1 液体塗布具
2 本体
2a 本体小径部
2b 塗布液収容空間
3 先軸
3a 嵌合凹部
3b 鍔部
4 塗布液
6 液体加圧機構
7 キャップ
10 塗布体
10A〜10G 塗布体
10a 塗布部分
12 パイプ継手
13 パイプ体
21 上面テーパ部
22 下面テーパ部
23 肩部
24 連通路
24a 吐出口
25 平面部
31 回転操作部材
32 軸状部材
34 ネジ体
35 ピストン体
37 繰出し体
38 噛合わせ部
39 係合部
40 フォースゲージ
40a 検出端部
40b 表示部
42 非吸収面
44 バルク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなす本体と、前記本体先端に設けられた塗布体と、少なくとも前記塗布体を覆うキャップとを備え、前記本体内部には粘度が1,000(mPa・s)〜100,000(mPa・s)の塗布液を収容する塗布液収容空間とを備え、
前記塗布液収容空間を後端側から封止するピストン体と、
前記ピストン体後方から連結する軸状部材と、
前記軸状部材の外周部に備わる雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を中心に持ち、前記本体とは回転不能に設けられたネジ体と、
前記軸状部材と軸方向に摺動可能かつ相対回転方向には回動不能であって、前記本体とは回転可能に設けられた回転操作部材とを備えて、本体内部の塗布液を加圧する液体加圧機構を具備し、該液体加圧機構により塗布液を本体先端に設けられた塗布体へと供給するようにした液体塗布具において、
筒状構造の先軸が、塗布面の形成された塗布体先端部を突出させた状態で該塗布体を収容しかつ本体先端に固定し、
塗布体は、前記塗布液収容空間から塗布液の吐出口に通じるように連通路が塗布体の内部に形成されていると共に、塗布体先端部が、前記吐出口からさらに先端へ突出して設けられて、塗布面鉛直方向視で先端が略円弧形状をなした略平面の塗布面を有し、塗布面鉛直方向かつ軸芯方向断面を塗布面横方向から見て先細り形状の、扁平な液密性ある弾性体からなり、
前記略平面の塗布面の略上方向に開口する吐出口を、前記略平面の塗布面略中央部に有し、この吐出口から塗布体先端までの距離Lは、1(mm)≦L≦20(mm)の寸法範囲内にあり、
塗布面略中央部の幅Wは2(mm)≦W≦20(mm)の寸法範囲内にあり、かつ、前記塗布体は、その先端より3(mm)の部分の垂直方向反発力が0.01(N)〜1.40(N)であることを特徴とする液体塗付具。
【請求項2】
前記ネジ体および前記回転操作部材の噛み合わせ部に歯状のラチェットが形成されて、前記回転操作部材が前記ネジ体に対して一方向のみ回転規制することを特徴とする請求項1に記載の液体塗布具。
【請求項3】
前記ネジ体および前記回転操作部材の噛み合わせ部に歯状のラチェットが形成されて、前記回転操作部材が前記ネジ体に対して双方向に回転可能であることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布具。
【請求項4】
前記液密性のある弾性材は、ゴムまたはエラストマーからなることを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の液体塗布具。
【請求項5】
前記液密性のある弾性材は、連続気泡を有しない弾性体からなることを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の液体塗布具。
【請求項6】
塗布体には、前端が連通路に連通する中空部が内部に形成され、
先軸の後端部内部にパイプ継手が嵌入し、このパイプ継手前端と先軸内側の段部とによって塗布体後端のフランジ部分を挟みつけて塗布体を本体先端に位置決めし、
パイプ継手の中空内周部から塗布体の中空部内に中空のパイプ体を嵌入しており、
塗布液収容空間内の塗布液が液体加圧機構によって加圧された際に、塗布液が、パイプ継ぎ手、パイプ体の内部および連通路を経由して吐出口から塗付面に出るようにしていることを特徴とする請求項1から5のうちの1項に記載の液体塗布具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−268300(P2007−268300A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159851(P2007−159851)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【分割の表示】特願2006−61190(P2006−61190)の分割
【原出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】