説明

液体塗布装置及び方法並びに画像形成装置

【課題】塗布量の安定化を実現し、塗布ローラ面上に残る液体の析出を防止する。
【解決手段】塗布ローラ(11)の塗布面(11B)に当接することにより、該塗布面に液体を供給する液体保持ユニット(14)を備える液体塗布装置(10)において、塗布ローラ(11)の塗布面(11B)は弾性体で構成される。液体保持ユニット(14)における塗布ローラ(11)の回転方向下流側の当接部に計量ローラ(20)が設けられる。塗布ローラ(11)と計量ローラ(20)を回転させて塗布面(11B)に液体を供給しつつ当該塗布面から媒体(P)に液体を転写する。塗布終了後、塗布ローラ(11)を回転させながら計量ローラ(20)を停止させる駆動制御手段を備え、塗布ローラ(11)面上に残る液体を液体保持ユニット(14)に回収する。また、液体保持ユニット(14)における塗布ローラ(11)の回転方向上流側の当接部に回収ローラ(22)を設け、戻り液を確実に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体塗布装置及び方法に係り、特に、インクジェット記録装置におけるインク打滴前に色材の凝集促進等を目的として記録媒体に処理液を付与する手段として好適な液体塗布技術及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置の高画質化を図るため、インクの打滴に先立って多価金属塩水溶液や酸性水溶液等の処理液を記録媒体に付与し、インクと反応させることが提案されている。この処理液を記録媒体に付与する液体塗布機構として、特許文献1には、記録媒体に接触回転する塗布ローラと、該塗布ローラの周面(塗布面)に当接することでローラ面との間に形成される液体保持空間に塗布液を保持する液体保持部材と、を備えた液体塗布装置が開示されている。
【0003】
同文献1に記載の液体塗布装置は、塗布ローラを回転させることにより、液体保持空間から塗布ローラの周面に塗布液を供給しつつ、記録媒体上に塗布液を転写する構成であり、液体保持部材に保持される塗布液の蒸発を防止するために、塗布ローラの回転周面に対して入り口(戻り側)と出口にあたる部分に摺動負荷の低い当接部材(摺動シール部材)を備える構造となっている。
【特許文献1】特開2007−83180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された構造では、塗布ローラの回転によって液体保持部材の液体保持空間から塗布ローラの周面へ持ち出される液量は成り行きであり、塗布量が安定しないという問題がある。また、プリント停止(OFF)時に、塗布ローラの表面に付着している未塗布の液から溶解成分が析出する問題がある。
【0005】
さらに、塗布ローラの表面に付与された塗布液のうち、記録媒体に転写されずに残った未転写状態の塗布液が液体保持部材の戻り側の当接部材と接触することで、当該戻り側の接触部に塗布液が溜まり、オーバーフローする問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、塗布量の安定化、析出問題の解消、戻り液の回収を可能とする液体塗布装置及び方法並びにこれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る液体塗布装置は、媒体に液体を塗布する塗布面を有する塗布ローラと、前記塗布ローラの周面に当接することにより液体保持空間を形成し当該液体保持空間から前記塗布面に液体を供給する液体保持ユニットと、を備える液体塗布装置であって、前記塗布ローラの少なくとも前記塗布面は弾性体で構成され、前記液体保持ユニットには、前記塗布ローラの回転方向下流側の前記塗布ローラとの当接部に、規定量の液保持が可能な凹凸表面を有する計量ローラが設けられ、前記塗布ローラと前記計量ローラを回転させることにより前記液体保持ユニットから前記塗布面に液体を供給しつつ当該塗布面から前記媒体に液体を転写し、前記媒体への液体塗布終了後に前記塗布ローラを回転させながら前記計量ローラの回転を停止させる駆動制御手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、計量ローラによって一定量の液体が塗布ローラの塗布面に供給されるため、媒体への塗布量を安定化させることができる。また、液体塗布終了後に計量ローラを停止させて塗布面への液供給を停止しつつ、塗布ローラを回転させることで、ローラ面上に残る液体を液体保持ユニットに回収できる。これにより、媒体への未転写状態の液体が塗布ローラ表面上で析出することを防止できる。
【0009】
「媒体」は、液体の塗布を受ける被塗布媒体を総称したものであり、例えば、インクジェット記録装置における印字媒体、被画像形成媒体、被記録媒体、受像媒体、被吐出媒体、中間転写体、などが含まれる。媒体の形態や材質については、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、金属シート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
【0010】
本発明の一態様に係る液体塗布装置は、前記塗布ローラを回転駆動する駆動手段と、前記計量ローラの回転を抑制するブレーキ手段と、を備え、前記ブレーキ手段による制動が解除されると、前記計量ローラは前記塗布ローラの回転に従動することを特徴とする。
【0011】
かかる態様によれば、計量ローラを単独で回転駆動させる手段(モータや動力伝達機構)が不要であり、簡単な構造で計量ローラの回転駆動制御が可能である。
【0012】
本発明の他の態様として、前記駆動制御手段は、前記液体塗布終了後、前記計量ローラを停止させた状態で前記塗布ローラを少なくとも1回転させることを特徴とする液体塗布装置を提供する。
【0013】
かかる態様によれば、塗布ローラ面上の未転写液体を確実に液体保持ユニットに回収することができる。
【0014】
本発明のさらに他の態様として、前記計量ローラは、表面に液保持用のセルを有するセル付きローラ、又は表面に液保持用の溝を有する溝付きローラであることを特徴とする液体塗布装置を提供する。
【0015】
液体保持ユニットにおける計量ローラとして、セル付きローラや螺旋溝付きローラを好適に用いることができる。
【0016】
また、本発明の他の態様に係る液体塗布装置として、前記液体保持ユニットには、前記塗布ローラの回転方向上流側の前記塗布ローラとの当接部に、規定量の液保持が可能な凹凸表面を有する回収ローラが設けられていることを特徴とする液体塗布装置を提供する。
【0017】
かかる態様によれば、液体保持ユニットに戻る塗布ローラの塗布面に付着している未転写液体を回収ローラによって確実に液体保持空間内に回収することができ、当該戻り部における液溜まりの発生やオーバーフローを防止することができる。
【0018】
前記回収ローラとして、計量ローラと同様に、表面に液保持用のセルを有するセル付きローラ、又は表面に液保持用の溝を有する溝付きローラを好適に用いることができる。
【0019】
前記目的を達成する本発明に係る画像形成装置は、上述した本発明の液体塗布装置と、前記液体塗布装置によって第1の液体が塗布された前記媒体に、第2の液体を打滴する液体吐出ヘッドと、を備えたことを特徴とする。
【0020】
「画像形成装置」は写真プリントやポスター印刷などのいわゆるグラフィック印刷の用途に限定されず、レジスト印刷装置、電子回路基板の配線描画装置、微細構造物形成装置など、画像として把握できるパターンを形成し得る工業用途の装置も包含する。
【0021】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、前記第2の液体は色材を含有するインクであり、前記第1の液体は前記色材を凝集させる作用を持つ凝集剤であることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、凝集剤の塗布量の精度を向上させることができ、凝集剤不均一による画像ムラ等を防止することができ、高品質の画像形成が可能である。なお、画像形成装置の一態様としてのインクジェット記録装置は、ドットを形成するためのインク液滴を吐出するノズル及び吐出圧を発生させる圧力発生手段(圧電素子や加熱素子など)を有する液体吐出ヘッド(「記録ヘッド」に相当)と、画像データから生成されたインク吐出データに基づいて記録ヘッドからの液滴の吐出を制御する吐出制御手段とを備え、ノズルから吐出した液滴によって記録媒体上に画像を形成する。
【0023】
また、前記目的を達成する本発明に係る液体塗布方法は、媒体に液体を塗布する塗布面を有する塗布ローラと、前記塗布ローラの周面に当接することにより液体保持空間を形成し当該液体保持空間から前記塗布面に液体を供給する液体保持ユニットと、を備えた液体塗布装置を用いて前記媒体に液体を塗布する液体塗布方法であって、前記塗布ローラの少なくとも前記塗布面は弾性体で構成され、前記液体保持ユニットには、前記塗布ローラの回転方向下流側の前記塗布ローラとの当接部に、規定量の液保持が可能な凹凸表面を有する計量ローラが設けられてなる前記液体塗布装置を用い、前記媒体への液体塗布時には、前記塗布ローラに回転駆動力を付与し、当該塗布ローラの回転とともに前記計量ローラを回転させ、当該回転する計量ローラを介して前記液体保持ユニットから前記塗布ローラの前記塗布面に前記液体を供給しつつ、当該液体が付着した前記塗布面を前記媒体に接触させて前記塗布面上の液体を前記媒体に転写し、前記媒体への液体塗布後に、前記計量ローラの回転を停止させた状態で前記塗布ローラを回転させ、前記塗布面に残る液体を前記液体保持ユニットに回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、塗布量の精度向上を達成できるとともに、媒体への未転写状態の液体を塗布ローラから回収でき、未転写状態の液体が塗布ローラ面上で析出することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0026】
図1は本発明の実施形態に係る液体塗布装置の要部構成を示す断面図である。同図に示すように、液体塗布装置10は、塗布対象の媒体Pに接触回転しながら塗布液を塗布する塗布ローラ11と、当該塗布ローラ11に対して媒体Pの搬送路を挟んで対向して配置されるカウンターローラ12と、塗布ローラ11の外周面11A(「塗布面」に相当)に処理液Lを供給する処理液付与ユニット14(「液体保持ユニット」に相当)と、を含んで構成される。
【0027】
媒体Pを挟む塗布ローラ11およびカウンターローラ12は、それぞれ媒体Pの搬送方向S(図1の下から上に向かう方向)と直交する軸線方向(図1において紙面に垂直方向、以下、「媒体Pの幅方向」という場合がある。)に沿う回転軸11B、12Bを有し、図示せぬローラ支持機構によりそれぞれ回転自在に支持されている。
【0028】
塗布ローラ11の外周面11Aは弾性部材で構成されており、当該塗布ローラ11は媒体Pの幅方向について、媒体Pの幅寸法以上のローラ幅を有する。塗布ローラ11は、図示せぬローラ駆動機構によって回転力が付与され、図1の時計回り方向に駆動される。ローラ駆動機構は、動力源となるローラ駆動モータと、該モータの動力を塗布ローラ11の回転軸11Bに伝達する動力伝達機構(歯車伝動機構やベルト伝動機構など)を含むものである。
【0029】
カウンターローラ12は、塗布ローラ11のローラ幅と同等或いはそれ以上のローラ幅を有し、不図示の付勢手段によって塗布ローラ11の外周面11Aに向けて付勢されている。塗布ローラ11とカウンターローラ12のニップ部に搬送された媒体Pは、塗布ローラ11の回転力(図1における時計回り方向の回転)により、搬送方向Sに搬送される。
【0030】
処理液付与ユニット14は、処理液貯留部16の空間を形成する凹部18A形状を有する空間形成基材18と、塗布ローラ11の外周面に当接するセル(窪み)付きローラ20、22とを備える。
【0031】
図1の下側に示した第1のセル付きローラ20(「計量ローラ」に相当)は、塗布ローラ11の外周面11Aに一定量の処理液を供給するローラであり、処理液貯留部16から塗布ローラ11が出て行く出口部分(つまり、塗布ローラ11の外周面11Aに対する処理液の出口部分)のシール部材を兼ねる。
【0032】
一方、図1の上側に示した第2のセル付きローラ22(「回収ローラ」に相当)は、塗布ローラ11の外周面11Aから処理液を回収するローラであり、処理液貯留部16に塗布ローラ11が戻る入り口部分(つまり、塗布ローラ11の外周面11Aに残存する処理液の戻り口部分)のシール部材を兼ねる。
【0033】
セル付きローラ20、22は、その外周表面にピラミッド型(図2(a)参照)や格子型(角錐台型)(図2(b)参照)などに彫られた精密な液保持用のセルが所定の密度で多数形成されたローラであり、一般に、アニロックスローラ、プレシジョンローラ、グラビアローラなどとも呼ばれる。
【0034】
ローラ面上におけるセルの形状や配列形態は特に限定されないが、回転方向に対して直交しない斜め方向の線に沿ってセルが並ぶ形態が好ましい。例えば、図1に示す本実施形態におけるセル付きローラ20,22のセルは、ピラミッド型150線(インチ当たり)の幾何学的セルが完全に機械彫刻されている。なお、セラミック層にレーザ光を照射して微細なセルを彫刻(レーザ彫刻)した場合、そのセル形状の断面部は半円形となるが、セル表面は彫刻パターンのセル角度により、ハニカムパターン、ダイヤパターン、へリカルパターンなど、解け出たセラミック同士が隣のセルとの干渉で変化する(ローテック株式会社ホームページ<http://www.rolltech.jp/furekiso.htm>[平成20年1月24日検索]参照)。
【0035】
セルの形状、深さ、セル容積、密度等は、媒体Pに塗布すべき液量(塗布後の液膜の厚さ)に応じて適宜選択される。
【0036】
2つのセル付きローラ20,22は、塗布ローラ11の回転(接線)方向に所定の間隔を隔てて配置され、空間形成基材18に回転自在に支持されている。セル付きローラ20,22には、それぞれを単独で自転駆動させるための駆動手段を設けることを必要としないが、出口側(供給側)のセル付きローラ20には電気的に制御可能なブレーキ機構(図1中不図示、図6の符号74参照)が設けられている。詳細は後述するが、媒体Pに処理液を塗布する際、つまり、塗布ローラ11の外周面11Aに処理液を供給する際には、セル付きローラ20のブレーキを解除して塗布ローラ11の回転に従動させる。一方、塗布終了後は当該供給側のセル付きローラ20の回転を停止させ、塗布ローラ11面への新たな処理液の供給を停止する。
【0037】
上記のセル付きローラ20,22を備えた空間形成基材18の背後には、バネ部材などの付勢部材26が設けられており、当該付勢部材26の付勢力によって処理液付与ユニット14は塗布ローラ11の外周面11Aに向けて付勢されている。塗布ローラ11の表面は弾性部材で構成されているため、処理液付与ユニット14を押しつけた状態では、セル付きローラ20又は22と接触する塗布ローラ11の一部が変形する(図3参照)。
【0038】
これにより、2つのセル付きローラ20,22が塗布ローラ11の外周面11Aに押し付けられて当接(密着)した状態となる。このような当接状態では、塗布ローラ11の外周面11Aと、セル付きローラ20,22及び空間形成基材18の凹部18Aによって閉塞された処理液貯留部16(「液体保持空間」ともいう。)が形成される。そして、この密閉された液保持空間(処理液貯留部16)に処理液Lが充填される。
【0039】
図3は、セル付きローラ20(又は22)と塗布ローラ11の接触部の拡大図であり、ローラ軸に直交する断面を模式的に示したものである。図示のように、セル付きローラ20(又は22)表面の回転搬送方向(塗布ローラ11との接触点における接線方向)に対して複数のセル21に跨った距離の所定量の幅領域(D)塗布ローラ11が押し潰される。この塗布ローラ11の変形により、セル付きローラ20(又は22)のセル21とセル21の間の腹の部分23と塗布ローラ11の表面が接触してシール機能を有する。したがって、塗布ローラ11とセル付きローラ20,22が停止状態の時は、処理液が外に漏れ出ることが防止される。
【0040】
図4は、処理液付与ユニット14をセル付きローラ20,22側から見た平面図である。セル付きローラ20,22は、塗布ローラ11(図1参照)の液体塗布幅と同等のローラ幅WRSを有し、その両端には処理液貯留部16の側壁を構成するシール部材28、28が設けられている。空間形成基材18に固設されたシール部材28,28とセル付きローラ20,22の接触面30には、図示していない弾性摺動部材が設けられており、この弾性摺動部材がシール機能を有していることで、液漏れなくセル付きローラ20,22の回転が可能となっている。
【0041】
空間形成基材18の背面側には、処理液貯留部16の空間に連通する貫通孔による液体供給口34と液体排出口36とが形成されている。図5に示すように、液体供給口34と液体排出口36にはそれぞれ処理液の供給流路44と回収流路46が接続されており、ポンプ48の駆動により、処理液貯留部16に対する処理液の供給および処理液貯留部16からの処理液の強制排出が可能となっている。
【0042】
図5は、処理液付与ユニット14に接続される処理液供給装置40の概略構成図である。処理液供給装置40は、処理液41を貯蔵する貯蔵タンク42と、該貯蔵タンク42から処理液付与ユニット14の液体供給口34に処理液を導く供給流路44と、処理液付与ユニット14の液体排出口36から貯蔵タンク42に処理液を戻す回収流路46と、ポンプ48と、供給流路44の途中に設けられる切換弁(ここでは、三方弁)50と、を含んで構成される。
【0043】
供給流路44の一端は処理液付与ユニット14の液体供給口34に連結され、他端は貯蔵タンク42の液層内に繋がっている。この供給流路44は、切換弁50により、流路の開閉、大気との連通、遮断を切り換えることができる。
【0044】
回収流路46の一端は処理液付与ユニット14の液体排出口36に連結され、他端は貯蔵タンク42の液層内に繋がっている。ポンプ48は、回収流路46の途中(好ましくは、貯蔵タンク42の近く)に設けられ、図5の矢印方向に液体または空気を強制的に流動させる流れを発生させる。
【0045】
貯蔵タンク42には、大気連通口52が設けられており、当該大気連通口52には、大気との連通および遮断を切り換える大気連通弁54が設けられている。
【0046】
<制御系の説明>
図6は、本実施形態に係る液体塗布装置10の制御系の構成を示すブロック図である。
【0047】
図6において、制御部60(「駆動制御手段」に相当)は、液体塗布装置10の全体を統括して制御する制御手段である。制御部60は、所定のプログラムに従い各種の処理を実行するCPU(Central Processing Unit)61と、前記プログラムや各種データなどを格納するROM(Read OnlyMemory)62と、各種の処理に用いられるデータなどを一時的に格納するRAM(Random Accessmemory)63を含んで構成されている。
【0048】
入力操作部66は、所定の指令あるいはデータの入力などに用いるキーボード、マウス(あるいは各種スイッチなど)を含んで構成されている。表示部68は、入力操作部66とともにユーザインターフェースを構成するものであり、制御部60と連携して各種の表示を行う。表示部68は、例えば、液晶表示装置によって構成される。
【0049】
液体塗布装置10は、媒体P(図1参照)の幅サイズ(搬送方向Sに直交する幅方向のサイズ)を検出するためのセンサ(媒体サイズ検出用センサ)、媒体Pの位置を検出するセンサ(媒体位置検出用センサ)、その他、各部の動作状態を検出するセンサなどを含む検出部70を備える。検出部70からの信号は制御部60に送られ、ローラ駆動その他の動作制御に利用される。
【0050】
また、液体塗布装置10は、塗布ローラ11(図1参照)を駆動するローラ駆動モータ72、ポンプ48(図5参照)、大気連通弁54、切換弁50、ブレーキ機構74、並びにこれら各要素に対応する駆動回路80、82、84、86、88を備えており、制御部60はプログラムにしたがって各駆動回路80〜88に制御信号を送り、各要素の動作を制御する。
【0051】
次に、上記のごとく構成された液体塗布装置10の動作について説明する。
【0052】
図7は、液体塗布装置10の動作シーケンスを示すフローチャートである。当該動作は図7で説明した制御部60の制御によってプログラムに従い実行される。
【0053】
まず、本シーケンスの開始時における初期状態では処理液貯留部16に処理液は導入されておらず、空(カラ)の状態であるため、ステップS10では、処理液付与ユニット14の処理液貯留部16に処理液を充填する工程を実行する。この充填工程は、供給流路44の切換弁50を供給流路側(供給流路44を開通させる状態)にするとともに、貯蔵タンク42の大気連通弁54を開け、貯蔵タンク42を大気連通させた状態でポンプ48を一定時間駆動する。
【0054】
これにより、内部の空気が貯蔵タンク42へと送られ、貯蔵タンク42から大気へ排気されるとともに、供給流路44、処理液貯留部16、回収流路46の各部に処理液が充填される。こうして、処理液貯留部16と接する塗布ローラ11に対して処理液を供給できる状態になる。かかる初期充填が完了する時間を見込んでポンプ48の駆動時間が設定されている。所定時間駆動後、ポンプ48は停止される。
【0055】
その後、塗布開始指令の有無を判断する(ステップS12)。塗布開始指令の信号は、媒体Pの搬送に連動して発せられる。媒体Pが塗布ローラ11とカウンターローラ12のニップ部に到達するタイミングで処理液の塗布が開始されるように、所定の時間差で塗布開始指令信号が発せられる。
【0056】
塗布開始指令が入力され、ステップS12においてYES判定となると、ポンプ48を作動させるとともに(ステップS14)、塗布ローラ11を図1の時計回り方向に回転させるローラ駆動を開始する(ステップS16)。この塗布ローラ11の回転により、セル付きローラ20,22は従動回転する。
【0057】
セル付きローラ20のセル形状は、媒体Pに塗布する処理液量に応じて設定されており、セルの容積によって常時安定した一定量の処理液が計量されて空間形成基材18内の処理液が塗布ローラ11表面上に供給される。
【0058】
こうして、塗布ローラ11の外周面11Aに処理液が層状態となって付着する。塗布ローラ11の周面上に付着した処理液は塗布ローラ11の回転とともに、カウンターローラ12との当接部に送られる。
【0059】
次いで、媒体搬送機構によって媒体Pが搬送されることにより、塗布ローラ11とカウンターローラ12の間に媒体Pが供給される。両ローラ11,12間にニップされた媒体Pは、塗布ローラ11の回転力によって搬送されるとともに、ローラ間を通過する際に、塗布ローラ11の外周面の処理液が媒体Pに転写される(ステップS18)。
【0060】
このステップS18における塗布工程の様子を図8に示す。なお、同図における処理液層の厚みは実際の比率よりも過大に強調して描かれている。図8に示すように、セル付きローラ20を介して塗布ローラ11の外周面11Aに供給された処理液90は、塗布ローラ11の回転により、媒体Pの片側面と接触し、媒体Pに塗布される。塗布ローラ11とカウンターローラ12に挟まれた媒体Pは、塗布ローラ11の回転力によって搬送方向Sに搬送される。こうして、塗布ローラ11とカウンターローラ12の間を通過した媒体P上には一定量の処理液92が付与される。
【0061】
塗布ローラ11から媒体Pへの処理液の転写性を高めるために、塗布ローラ11の表面自由エネルギーを媒体Pの表面自由エネルギーよりも小さいものとすることが望ましい。すなわち、次の[数1]で示す不等式の関係となるような材料が塗布ローラ11の表面部材として適用される。
【0062】
[数1] 塗布ローラ11の表面自由エネルギー<媒体Pの表面自由エネルギー
セル付きローラ20によって塗布ローラ11の外周面11A上に供給された処理液90の全てが媒体P上に転写されることが理想的であるが、実際には媒体Pとの接触後の塗布ローラ11面に未転写の処理液が残留することがある。
【0063】
この未転写の残留処理液93は、セル付きローラ22を介して処理液付与ユニット14の処理液貯留部16に回収される。
【0064】
上述した媒体Pへの塗布動作が実行されると、制御部60は塗布動作の終了タイミングの判断を行う(図7のステップS20)。媒体Pの全面に塗布を行う場合、媒体Pが通過し終えるまで、ステップS20の判断はNO判定となり、ステップS18に戻る。
【0065】
媒体Pの後端が通過するタイミングが検知される、或いは指定枚数のジョブの終了が検知されるなど、必要な塗布範囲の塗布工程が終了したと判断した場合(ステップS20においてYES判定時)、ポンプ48を停止させ(ステップS22)、残存処理液回収処理(ステップS24)を行う。
【0066】
この残存処理液回収処理は、塗布ローラ11の周面に残った処理液を処理液付与ユニット14に回収する動作を行う。すなわち、出口側のセル付きローラ20にブレーキをかけて当該セル付きローラ20のみ回転を停止させ、塗布ローラ11を回転させながら戻り側のセル付きローラ22を従動回転させて、残存処理液の回収を行う。
【0067】
塗布ローラ11面上の残存処理液を全て回収するためには、少なくとも、出口側のセル付きローラ20にブレーキをかけたときに当該セル付きローラ20と接している塗布ローラ11の位置が戻り側のセル付きローラ22の位置に到達するまでの間、塗布ローラ11を回転させることが必要である。実質的には、セル付きローラ20を止めた状態で塗布ローラ11を1回転させれば十分である。これにより、塗布ローラ11の周面に残存する処理液の析出を防止することができる。
【0068】
なお、カウンターローラ12の表面はフッ素コーティングなど撥液性が高いものであり、塗布ローラ11とカウンターローラ12の接触によって、カウンターローラ12の表面に処理液が付着しにくい構成となっている。両ローラの表面部材における自由表面エネルギーの関係を適切に設計することにより、カウンターローラ12への処理液の付着を防止できる。好ましくは、塗布ローラ11およびカウンターローラ12の少なくとも一方に両者の相対距離を可変する移動機構を設け、両者を離間させた状態で上記の残存処理液回収処理(ステップS24)を実施することによって、カウンターローラ12面への処理液の付着を防止する構成を採用する。
【0069】
残存処理液回収処理(ステップS24)が終了したら、塗布ローラ11を停止させ(ステップS26)、ステップS12に戻る。
【0070】
ステップS12において、塗布開始指令が新たに入力されていれば、上述したステップS14〜ステップS26の処理を繰り返す。その一方、ステップS12において、塗布開始指令が入力されていなければ、ステップS30に進み、塗布の終了指令の有無を判定する(ステップS30)。終了指令は、タイマーなどの時間管理によって規定の待機時間を経過したら自動的に終了指令が発せられる態様、指定した媒体枚数の塗布が終了することによって発せられる態様、入力操作部66からの操作による態様、装置の電源OFF操作など様々な態様があり得る。
【0071】
終了指令が入力されなければ、ステップS12に戻る。ステップS30において終了指令が入力されると、ステップS32の後処理工程へと進む。この後処理工程(ステップS32)は、処理液付与ユニット14の処理液貯留部16およびこれに繋がる供給流路44、回収流路46内の処理液を貯蔵タンク42に回収する動作を行う。
【0072】
当該回収動作は、切換弁50を大気開放するとともに、貯蔵タンク42の大気連通弁54を開け、ポンプ48を一定時間駆動することによって行う。各部内に残った処理液を全て貯蔵タンク42に流入させるために十分なポンプ駆動時間が設定される。
【0073】
回収動作後は、大気連通弁54を閉じるとともに、切換弁50を閉じ、供給流路44を遮断するとともに、大気との連通を遮断する。これにより、貯蔵タンク42を大気から遮断し、蒸発や外部流出を防止する。
【0074】
<画像形成装置への適用例>
図9は本発明による液体塗布装置を備えた画像形成装置の一例に係るインクジェット記録装置の構成図である。
【0075】
このインクジェット記録装置110は、記録媒体112(図1で説明した「媒体P」に相当)を供給する給紙部114と、給紙部114から送りされた記録媒体112に処理液を塗布する処理液塗布部116と、処理液塗布後の記録媒体112にインクを打滴するインク打滴部118と、インク打滴部118によって画像形成された記録媒体112が排出される排出トレイ120を備えている。
【0076】
給紙部114には、所定サイズの枚葉紙による複数枚の記録媒体112が装填される給紙カセットを用いる方式が採用されている。複数種類のサイズの用紙を供給できるように、複数の給紙カセットを設けてもよい。また、枚葉紙に代えて、ロール紙(連続紙)を用い、カッターによって適宜のサイズに切断する態様も可能である。
【0077】
給紙部114に載置された記録媒体112は、給紙ローラ130によって1枚ずつ繰り出され、搬送路132に送られる。搬送路132の経路中に設けられた処理液塗布部116には、図1〜図8で説明した液体塗布装置10の構成が採用されている。図9中、図1〜図8で説明した液体塗布装置10と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。なお、図9では、図示の便宜上、液体塗布装置10のうち処理液付与ユニット14の部分のみを示した。
【0078】
処理液塗布部116の塗布ローラ11によって処理液が塗布された記録媒体112は、搬送ローラ対134,135によりプラテン136上を搬送される。
【0079】
インク打滴部118は、処理液付与ユニット14よりも媒体搬送方向の下流に設けられている。本例のインク打滴部118は、イエロー(Y),マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応したインクジェット方式の記録ヘッドによって構成されている。図には示されていないが、各色の記録ヘッドには、それぞれ図示せぬインクタンクから対応する色のインクが供給される。
【0080】
インク打滴部118の各色の記録ヘッドは、それぞれ記録媒体112における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
【0081】
各色の記録ヘッドは記録媒体112の搬送方向と直交する方向(図9の紙面に垂直な方向)に延在するように固定設置され、プラテン136上の記録媒体112に向けてそれぞれ対応する色インクの液滴を吐出する。
【0082】
このように、記録媒体112の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、記録媒体112の搬送方向(副走査方向)について、記録媒体112と記録ヘッドを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体112の画像形成領域に画像を記録することができる。
【0083】
フルライン型のヘッドに代えて、記録媒体112の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドを採用する態様も可能であるが、フルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、シリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0084】
また、本例では、CMYKの4色の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する記録ヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0085】
本例のインクジェット記録装置110で使用するインクとしては、液体の溶媒に色材が分子の状態(イオンの状態でもよい)で溶解している染料インク、液体の溶媒に色材が微小な塊の状態で分散している顔料インクなどが挙げられる。
【0086】
一方、処理液は、インクと混合した場合に色材の凝集体を生成する液体である。具体的には、インクと反応してインク中の色材を析出あるいは不溶化させる処理液、インク中の色材を含む半固体状の物質(ゲル)を生成する処理液等が挙げられる。
【0087】
インクと処理液との反応を引き起こす手段は、インク中のアニオン性の色材と処理液中のカチオン性の化合物を反応させる方法、互いにpHの異なるインクと処理液を混合させることでインクのpHを変化させてインク中の顔料の分散破壊を起こし顔料を凝集させる方法、処理液中の多価金属塩との反応によりインク中の顔料の分散破壊を起こし顔料を凝集させる方法、などがある。
【0088】
例えば、本実施形態のインク打滴部118から打滴されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する処理液の例は、凝集処理剤として多価金属塩、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体、酸性液体、カチオン性界面活性剤などを含んでなるものである。このような処理液によって記録媒体112上の色材の凝集を促進することにより、記録濃度の向上と、ブリーディングの軽減または防止が可能となる。
【0089】
インク打滴部118からのインク打滴により画像が形成された記録媒体112(記録済みの媒体)は、排出ローラ対144,145によって、排出トレイ120に排出される。
【0090】
なお、記録媒体112の搬送路132には記録媒体112の先端を検出する媒体先端検出センサ151、152が配置されている。第1の媒体先端検出センサ151は、塗布ローラ11の給紙側入口の近傍に配置されている。第2の媒体先端検出センサ152は、インク打滴部118の給紙側入口の近傍に配置されている。
【0091】
これらセンサ(151,152)によって記録媒体112の位置を検出して、処理液の塗布タイミングやインクの打滴タイミングが制御される。
【0092】
<セル付きローラの回転動作制御>
表1にインクジェット記録装置110における各動作モードにおける塗布ローラ11,セル付きローラ20,22の動作状態を示す。
【0093】
【表1】

【0094】
(1.プリント時モード)
プリント時の場合、セル付きローラ20のブレーキを解除し、塗布ローラ11を回転させる。このとき、図8で説明したように、供給側のセル付きローラ20は塗布ローラ11とともに回転し、所定量の処理液が計量されて塗布ローラ11の周面に供給される。また、回収側(戻り側)のセル付きローラ22も塗布ローラ11に従動して回転するため、記録媒体112に対して未転写状態の処理液が仮に塗布ローラ11上に残っても、当該残存処理液は処理液貯留部16に戻される。このため、特許文献1の構造で課題となっている当接部材とローラ間で発生する液溜まりの問題を解消することができる。
【0095】
(2.プリント停止直後のメンテナンスモード)
記録媒体112への処理液の塗布が終了した直後の時点では、塗布ローラ11の表面に処理液が付着している。特に、塗布ローラ11表面のセル付きローラ20当接位置からカウンターローラ12当接位置までの区間は、未塗布状態の処理液が残存する。そこで本実施形態では、塗布終了後、セル付きローラ20にブレーキをかけ、セル付きローラ20を停止させた状態で、塗布ローラ11を回転させ、戻り側のセル付きローラ22を従動回転させる。つまり、供給側のセル付きローラ20のみを回転停止させる。
【0096】
こうすることで、セル付きローラ20からの新たな処理液の供給を停止する一方、戻り側のセル付きローラ22にて残存処理液を処理液貯留部16へ回収する。これによって塗布ローラ11に残存した処理液が回収されて、塗布ローラ11表面の処理液の析出を防止することができる。この動作は、図7のフローチャートで説明した残存処理液回収(ステップS24)の工程に相当している。
【0097】
なお、このローラ面から残存処理液を回収する動作は、処理液の析出防止の観点から必要に応じて実施すればよい。例えば、複数枚の連続印刷(連続塗布)の場合など、短時間で次の塗布が実施されるような場合には、1枚塗布ごとに毎回残存処理液回収を実施する必要はない。連続印刷の終了時や印刷ジョブの入力待ち受け中など、一定時間の放置が見込まれる状況において、当該回収動作を実施する制御を行うことが効率的である。処理液の揮発性や含有成分の安定性など、処理液の性質に応じて放置許容時間が設定される。
【0098】
(3.プリントOFFモード)
上記した「プリント停止直後のメンテナンスモード」を実施した後のプリントOFF時には、全てのローラ(11、20、22)の回転が停止し、かつ塗布ローラ11の表面に処理液が残存していない。
【0099】
<他の実施形態>
上述したセル付きローラ20,22に代えて、溝付きローラを使用することもできる。
【0100】
図10は、螺旋溝付きローラ220の外周面の拡大図である。螺旋溝付きローラ220は、その外周面にダイスの転造やワイヤの巻き付けなどにより、ほぼその回転方向に沿って液保持用の溝(窪み)が形成されたローラである。
【0101】
螺旋溝付きローラ220の溝形状、ピッチa、溝深さb等は、塗布すべき液量(塗布後の液膜の厚さ)に応じて適宜選択される。
【0102】
図11は、溝付きローラの溝形状を例示する概要図である。なお、図11では、溝形状の特徴を分かりやすくするため、溝形状や溝のピッチ等を簡略化して示している。図11に示すように溝形状としては、螺旋状(図11(a))の他、独立溝(図11(b))や左右溝(図11(c))、多条螺旋(不図示)などがある。
【0103】
図12は、溝付きローラの外周面の断面形状(ローラ軸と平行な面による切断面)を表す概要図である。図12に示すように外周面の断面形状としては、S字状曲面(図12(a))の他、山部を平面にした形状(図12(b))または谷部を平面にした形状(図12(c))、山部と谷部を平面にした形状(図12(d))などがある。特に、山部を平面にすれば耐磨耗性が向上し、また、谷部を平面にすれば溝内に多くの液体が入り込んでローラ外周面に多くの液体を付着させることができる。
【0104】
上述の実施形態では、印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを得る装置にも広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施形態に係る液体塗布装置の要部構成を示す断面図
【図2】セル付きローラのセル形状の例を示した拡大斜視図
【図3】セル付きローラと塗布ローラの接触部の拡大図
【図4】処理液付与ユニットの平面図
【図5】処理液付与ユニットに接続される処理液供給装置の概略構成図
【図6】本実施形態に係る液体塗布装置の制御系の構成を示すブロック図
【図7】液体塗布装置の動作シーケンスを示すフローチャート
【図8】液体の塗布工程の様子を示す説明図
【図9】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図
【図10】螺旋溝付きローラの外周面の拡大図
【図11】溝付きローラの溝形状を例示する説明図
【図12】溝付きローラの外周面の断面形状を例示する説明図
【符号の説明】
【0106】
10…液体塗布装置、11…塗布ローラ、11A…外周面、12…カウンターローラ、14…処理液付与ユニット、16…処理液貯留部、18…空間形成基材、20…セル付きローラ、21…セル、22…セル付きローラ、60…制御部、72…ローラ駆動モータ、74…ブレーキ機構、110…インクジェット記録装置、112…記録媒体、118…インク打滴部、P…媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を塗布する塗布面を有する塗布ローラと、前記塗布ローラの周面に当接することにより液体保持空間を形成し当該液体保持空間から前記塗布面に液体を供給する液体保持ユニットと、を備える液体塗布装置であって、
前記塗布ローラの少なくとも前記塗布面は弾性体で構成され、
前記液体保持ユニットには、前記塗布ローラの回転方向下流側の前記塗布ローラとの当接部に、規定量の液保持が可能な凹凸表面を有する計量ローラが設けられ、
前記塗布ローラと前記計量ローラを回転させることにより前記液体保持ユニットから前記塗布面に液体を供給しつつ当該塗布面から前記媒体に液体を転写し、前記媒体への液体塗布終了後に前記塗布ローラを回転させながら前記計量ローラの回転を停止させる駆動制御手段を備えていることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体塗布装置において、
前記塗布ローラを回転駆動する駆動手段と、
前記計量ローラの回転を抑制するブレーキ手段と、を備え、
前記ブレーキ手段による制動が解除されると、前記計量ローラは前記塗布ローラの回転に従動することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体塗布装置において、
前記駆動制御手段は、前記液体塗布終了後、前記計量ローラを停止させた状態で前記塗布ローラを少なくとも1回転させることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体塗布装置において、
前記計量ローラは、表面に液保持用のセルを有するセル付きローラ、又は表面に液保持用の溝を有する溝付きローラであることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体塗布装置において、
前記液体保持ユニットには、前記塗布ローラの回転方向上流側の前記塗布ローラとの当接部に、規定量の液保持が可能な凹凸表面を有する回収ローラが設けられていることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体塗布装置において、
前記回収ローラは、表面に液保持用のセルを有するセル付きローラ、又は表面に液保持用の溝を有する溝付きローラであることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体塗布装置と、
前記液体塗布装置によって第1の液体が塗布された前記媒体に、第2の液体を打滴する液体吐出ヘッドと、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、
前記第2の液体は色材を含有するインクであり、前記第1の液体は前記色材を凝集させる作用を持つ凝集剤であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
媒体に液体を塗布する塗布面を有する塗布ローラと、前記塗布ローラの周面に当接することにより液体保持空間を形成し当該液体保持空間から前記塗布面に液体を供給する液体保持ユニットと、を備えた液体塗布装置を用いて前記媒体に液体を塗布する液体塗布方法であって、
前記塗布ローラの少なくとも前記塗布面は弾性体で構成され、
前記液体保持ユニットには、前記塗布ローラの回転方向下流側の前記塗布ローラとの当接部に、規定量の液保持が可能な凹凸表面を有する計量ローラが設けられてなる前記液体塗布装置を用い、
前記媒体への液体塗布時には、前記塗布ローラに回転駆動力を付与し、当該塗布ローラの回転とともに前記計量ローラを回転させ、当該回転する計量ローラを介して前記液体保持ユニットから前記塗布ローラの前記塗布面に前記液体を供給しつつ、当該液体が付着した前記塗布面を前記媒体に接触させて前記塗布面上の液体を前記媒体に転写し、
前記媒体への液体塗布後に、前記計量ローラの回転を停止させた状態で前記塗布ローラを回転させ、前記塗布面に残る液体を前記液体保持ユニットに回収することを特徴とする液体塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−220001(P2009−220001A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66436(P2008−66436)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】